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上野貴彦さん

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上野貴彦さん
社会学部4年
そして上野さんは、あの﹁3・ ﹂を
マドリード滞在中に迎えた。未曾有の災
います﹂
語のブラッシュアップにもなったと思
果的にはいい経験でしたよ。スペイン
習得したスペイン語で頑張りました。結
はありませんでした。もっぱら独学で
ましたが、僕はそこまで英語が得意で
グローバルとは、自分の場所が広がり、人を知る喜び。
を履修しました﹂
そこに終わりはありません
上 野 貴 彦 さん
スペイン企業﹁ベルヘ社﹂への
インターンシップで、
スペイン人の温かさにふれた
地中海の国々、特にイタリアの歴史
や言語に、なぜか惹かれていた。その
興味が﹁行きたい﹂という思いに変わっ
たのは、高校時代。語学を学ぶために
外国語大学の受験も考えたが、社会科
学のディシプリン︵学科︶を学ぶことで、
より深いかかわり方ができるのではと、
一橋大学に進学した。上野さんは、入
学当時から一橋大学の留学制度に関心
があり、思いを現実にできる仕組みと
害はスペインでも大きく報道され、津波
の映像が繰り返し映し出された。ショッ
クを受けた上野さんら日本人に、スペイ
ン人のスタッフは温かく接してくれた。
﹁本気で同情し、心から心配してくれ
ました。彼らの温かいハートにふれた
ことは、忘れられません﹂
提携するスペイン・マドリードのベルヘ
ションは原則英語。ほかのメンバーは
しました。スタッフとのコミュニケー
﹁ベルへ社では、新しい会計ソフトの
マニュアルをつくるという仕事を体験
就職に不利になるかもしれない﹂との
も留学することになる。
﹁1年遅れると
また、ベルへ社へのインターンシッ
プ経験後に、イタリア・トレント大学へ
ローカルな独自性を持ちながら、
開放的。
幸福に対して
社での5週間のインターンシップ・プロ
帰国子女が多く、不自由なく話してい
で、スペインの非上場企業のなかでは
グラムに参加することになったのだ。ベ
明確な自分軸を持つ人々
﹁僕が入学した当時は、まだイタリア
に提携大学はなかったのです。それな
ルヘ社は海運業からスタートした企業
第二の規模を誇る総合商社である。
ら地中海と接点のあるフランスへの留
上野さんの海外渡航の夢は、2年生の
ときに実現することになる。一橋大学が
学を目指そうと、1年次はフランス語
して注目していたという。
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思いが、頭をかすめはしたが、イタリ
て感じられるようになった。
に、イタリアという国の個性が実感とし
づけるようになりました。気づきは理
内を旅しても、小さな違いに敏感に気
ラーノ氏と話をする機会を得た。
﹁自分がいる場所、友だちや知り合い
がいる場所が、シームレスに広がって
﹁イタリアは経済が停滞し、財政的に
厳しいですよね。それを否定的にみる
がいたのですが、体格のよさをかわれて
でくれるのです。ブラジルからの留学生
外国人もウェルカムどころか、呼び込ん
はないのです。たとえば、祭りですね。
学生の特権とヨーロッパの主要都市
にアクセスしやすい利便性を活かして、
なり、友だちを紹介してあげたいとい
景などを見ると、自分自身の体験と重
解への第一歩だと思います﹂
アへの留学を経験したいという気持ち
日本人も多いと思います。その一方で
祭りで重要な役を割り当てられました﹂
上野さんは積極的に行動範囲を広げて
う気持ちになるという。
のほうがずっと強かった。
スローフードの考え方、幸福指数の高
街角の店やカフェでも、スペイン語
圏の人のスペイン語のオーダーに、店
いった。デュッセルドルフでは現地で
いること。それがグローバルだと思い
さなど、イタリア人の生き方への共感
員がイタリア語で応えるといった光景
活躍する如水会OB・ОG の歓待を受
﹁地域の独立性の高い、クローズドな
社会ですが、門戸を閉ざしているわけで
もある。これはどういうことなのだろ
は、ごく普通のこと。人々の肌合いも、
﹁人をより深く知ると、人を知る楽し
さがさらに深くなることも、留学で実
ました﹂
で一杯やる毎日が一番だね﹄とい
くつもりだ。
事務局の仕事にもフルにかかわってい
野さん。卒論もあって忙しい日々だが、
を専門的に学ぼうと思い始めている上
に興味を持ち、地中海諸国の移民問題
役割を担っている。さらに国際社会学
など、さまざまな面からサポートする
きや帰国したとき、キャリア形成の際
︶﹂ の 学 生 事 務
Students Association
局長を務めている。学生が留学すると
University Exchange Program
上野さんは今、留学と留学生を支援
す る 組 織﹁ H E P S A︵ Hitotsubashi
ている、と僕は思います﹂
す。興味を持った段階で、留学は始まっ
と受け身で行くものでもないと思いま
たとえば、学生の交流パーティーで、
留学生がなかなか打ち解けられない光
的な区切りはついても、問題意識は現
ます。もう一つ強く感じたのは、留学
は終わらないということ。物理的・時間
う? イ タ リ ア と は ど ん な 国 な の だ ろ
西欧的な合理性とはやや違う。自分の
け、一橋大学の精神を改めて感じた。ト
感したことですね。しかし、留学は特
うような大らかさ。それまで漠然
留学とは、
人とのふれあいを楽しむ体験。
トレント大学へ書類を送ったが、お
国柄なのか、どんな教科が学べるのか、
生活スタイルに愛着があり、故郷がナ
レントでは村上春樹作品を初めてイタ
で集められるし、イタリア語の準備を
ンとイタリアの違いが、イタリア
在につながっているのです﹂
どのような準備が必要かといった情報
ンバーワンという誇りを持っている。
別なことではないし、勧められたから
する時間が増えたと思えばいい、と。
で暮らすうちに、はっきりと見え
僕のなかで、
留学は永遠に終わらない
がなかなか届かなかった。だが、焦り
リア語に翻訳した、ジョルジョ・アミト
う? と、自分の目で確かめたいと思い
はなかったという。それもイタリアと
﹃大都市や富もいいだろう。でも、オ
﹁
レは仕事帰りにお気に入りのバー
﹁イタリアに詳しい先生が、いろいろ
とアドバイスをしてくれました。週末
てきました﹂
いう国の一面。情報はインターネット
は避けて到着したほうがいいというこ
地に暮らすということ、その行為
学業ももちろん大切だが、留学
の成果はそれだけではない。その
としか理解していなかったスペイ
とでしたので、月曜日に出発したので
すが、ミラノの空港に着いたら、市街
地へアクセスする電車がストライキで
止まっていました︵笑︶
﹂
自体が何かを変えるきっかけにな
ると上野さんは思っている。
﹁街の雰囲気や、トレントの人の
喋り方など、言葉にしがたい何か
上野さんが留学したトレントは、ミラ
ノよりもオーストリアのほうが近い北部
しており、留学生を含めさまざまな国の
をつかむ感覚が身についた気がし
の都市。大学と連携した地場産業が発展
人々が生活している。その一員として過
ます。実際、帰ってきてからは国
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ごし、地域とのかかわりが増えるうち
トレントの友人たちとパブリックビューイングでEUROを観戦。大いに盛り上がりました
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