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動植物の生息・生育状況、学識経験者聞き取り結果(PDF

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動植物の生息・生育状況、学識経験者聞き取り結果(PDF
1 動植物の生息・生育状況(文献調査確認種等一覧及び確認位置図)
項 目
哺乳類
鳥 類
両生類
爬虫類
魚 類
全科種数
10科
34種 (57%)
※絶滅種1種を含む
56科
9科
16科
324種 (80%)
13種 (68%)
59種 (83%)
昆虫類 319科 3,868種 (39%)
植 物 151科 1,820種 (83%)
合 計
6,118種
希少種数
6 科 14 種
28 科 76 種
1科
1種
9 科 22 種
51 科 97 種
65 科 193 種
403 種
外来種数
4 科 10 種
4科
3科
4種
4種
7 科 14 種
14 科 18 種
59 科 315 種
分布状況
経年変化
・位置情報がわかるものは、34種が確認された。円山、藻岩山での
確認種数が多い一方、南西部山地や市街地での調査データが少な
く、確認種数も少ない。
・希少種は、円山、藻岩山で多く確認されている。外来種は、円山、
藻岩山、野幌森林公園で多く確認されている。
・位置情報がわかるものは、52科254種が確認された。鳥類は確認箇
所や範囲が広かったため、札幌市内の全域において分布が把握さ
れた。西岡水源池、円山、藻岩山、豊平川、野幌森林公園、モエ
レ沼公園、新川等での確認種数が多い一方、市街地での確認種数
が少ない。
・希少種は、円山、藻岩山、西岡水源池や北東部の市街化調整区域
で多く確認されている。外来種は、豊平川、円山、藻岩山や北東
部の市街化調整区域で確認されている。
・位置情報がわかるものは、13種が確認された。西岡水源池、円山、
藻岩山、野幌森林公園での確認種数が多い一方、南西部山地や市
街地での調査データが少なく、確認種数も少ない。
・希少種は、市内の河川や沢、池沼で確認されている。外来種は、
西岡水源池で多く確認されている。
・位置情報がわかるものは、16科57種が確認された。豊平川、厚別
川、新川等での確認種数が多い一方、南西部山地の河川や市街地
の河川での調査データが少なく、確認種数も少ない。
・希少種は、豊平川、厚別川上流で多く確認されている。外来種は、
豊平川、厚別川、石狩川や平地系市街化調整区域を流れる河川で
多く確認されている。
・位置情報がわかるものは、304科3,541種が確認された。円山、野
幌森林公園での確認種数が多い。
・希少種は、円山、野幌森林公園で多く確認されている。外来種は、
藻岩山、野幌森林公園で多く確認されている。
・位置情報がわかるものは、135科1,279種が確認された。円山、藻
岩山、野幌森林公園、手稲山、国営滝野すずらん丘陵公園、藻南
公園、定山渓、百松沢等での確認種数が多い一方、市街地や南区
の東部等での確認種数が少ない。
・希少種は、円山、藻岩山、定山渓天狗岳、野幌森林公園等で多く
確認されている。外来種は、市街地、北区、円山等で多く確認さ
れている。
・市内の生物種の増減に係る傾向(10年間毎に分類群毎の確認種数を集計して比較)
各年代での調査精度や頻度等のデータのばらつきが大きいため、一概に評価できないと考え
られるが、今回の調査からは種数の減少傾向はうかがえない。
365種
※全科種数のうち括弧内は、札幌市環境白書(1997)に記載のあった道内での確認種数を母数とし、本業務で把握された種数の割合を示す。
※希少種の選定基準は以下のとおりである。
「文化財保護法」(昭和 25 年法律第 214 号):特別天然記念物、天然記念物
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(平成 4 年法律第 75 号):国内希少野生動植物種、緊急指定種
「北海道文化財保護条例」(昭和 30 年北海道条例第 83 号)
「北海道希少野生動植物の保護に関する条例」(平成 13 年北海道条例第 4 号)
環境省(2006)「鳥類、爬虫類、両生類及びその他無脊椎動物のレッドリストの見直しについて」及び、
環境省(2007)「哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物 I 及び植物 II のレッドリストの見直しについて」
:絶滅、野生絶滅、絶滅危惧 IA 類、絶滅危惧 IB 類、絶滅危惧 II 類、準絶滅危惧、情報不足、絶滅のおそれのある地域個体群
北海道(2001)「北海道の希少野生生物 北海道レッドデータブック 2001」
:絶滅種、絶滅危機種、絶滅危惧種、絶滅危急種、希少種、留意種、地域個体群
※外来種の選定基準は以下のとおりである。
北海道(2010)「北海道の外来種リスト –北海道ブルーリスト 2010」
:A1、A2、A3、B、C、D、E、h、K
40
300
哺乳類
250
30
200
20
150
100
10
50
0
0
1930 1950 1960 1970 1990 2000
15
鳥類
1930 1950 1960 1970 1990 2000
60
両生類・ 爬虫類
50
10
魚類
40
30
5
20
10
0
0
1930 1950 1960 1970 1990 2000
3000
1800
昆虫類
2500
1930 1950 1960 1970 1990 2000
1500
2000
1200
1500
900
1000
600
500
300
0
0
1930 1950 1960 1970 1990 2000
植物
1930 1950 1960 1970 1990 2000
・円山及び藻岩山における植物相の経年変化(下記文献により比較)
調査範囲や時期等の条件が異なることから、一概には言えないが、帰化植物数の増加傾向が
うかがえる。
600
500
円山の植物相
全種
帰化植物
400
300
200
100
0
1958
1992
調査者
山本岩亀
舘脇操
舘脇操
原松次編著
札幌市博物館活動センター
2000-2003
調査年
1913
1929
1958
1992
2000
2003
800
700
600
500
400
300
200
100
0
藻岩山の植物相
1913
1929
全種
帰化植物
1992
文献名
藻岩山植物分布及同目録
藻岩山植物目録
札幌円山の自然科学的研究
札幌の植物−目録と分布表−
藻岩原始林・円山原始林の植物
リスト及び収集資料目録
2000-2003
円山
藻岩山
○
○
○
○
○
○
○
哺乳類
鳥 類
両生類・爬虫類
魚 類
昆虫類
植 物
全 種
■ 15種、■ 610種、■ 1115種、 ■ 838種、■ 3969種、■ 7099種、 ■ 12種、■ 34種、■ 56種、
■ 1620種、■ 2125種
■ 100130種、■ 131161種
■ 78種、■ 910種
■ 1267種、■ 268533種、
800種、■ 8011066種、
■ 19種、■ 1017種、■ 1826種、 ■ 534■ 10671333種
■ 2734種、■ 3543種
■ 1174種、■ 175347種、
■ 348521種、■ 522694種、
■ 695868種
希少種
■ 19種、■ 1017種、■ 1826種、 ■ 1種
■ 2734種、■ 3543種
■ 14種、■ 57種、■ 811種、
■ 1214種、■ 1518種
■ 19種、■ 1017種、■ 1826種、 ■ 112種、■ 1323種、■ 2434種、
■ 2734種、■ 3543種
■ 3545種、■ 4657種
■ 12種、■ 34種、■ 56種、
■ 78種、■ 910種
■ 1種、■ 2種
■ 12種、■ 3種、■ 45種、
■ 6種、■ 78種
■ 1種、■ 2種、■ 3種、
■ 4種、■ 5種
外来種
■ 12種、■ 34種、■ 56種、
■ 78種、■ 910種
■ 1種、■ 4種
■ 133種、■ 3465種、■ 6697種、
■ 98129種、■ 130161種
2 学識経験者聞き取りの結果
【まとめ】
重要な種としては、絶滅が危惧される種と近年その生息環境が縮小している種が指摘された。
重要な環境としては、豊平川、薪炭採取等の伐採が行われなくなり成熟した二次林、過去か
ら保全されてきた円山、藻岩山、近年減少したため特殊な生物相の減少が懸念される低地部の
湿地等が指摘された。
重要な植生としては、樹林地、草地、湿地、河川、湖沼に加え、市街地にみられる過去の環
境が保存されている緑地や緩衝緑地の重要性も指摘された。
その他の指摘としては、環境の変化をモニタリングし、柔軟に対応する必要性や、生物多様
性の積極的創出、有識者やコーディネーターの必要性、札幌としての環境の管理方針の設定等、
現在の環境の適切な維持管理及び生物多様性の向上とその基本方針について意見が出された。
【分類群別にみた保全が必要と考えられる種】
分類群
保全が必要と考えられる種
哺乳類
すべての哺乳類
鳥類
生態系上位種
草原性鳥類(シマアオジ、チュウヒ、オオジシギ、アカモズ、ウズラ)
両生類、は虫類
エゾサンショウウオ、エゾアカガエル、ニホントカゲ
魚類、甲殻類
サケ科魚類(上流域:オショロコマ、中下流域:サクラマス、サケ)、市内河
川で自然繁殖するサケ、サクラマス
エゾホトケドジョウ、アユ、カワシンジュガイ、ニホンザリガニ
昆虫類
昆虫類全般、10 年単位で減少の目立つ昆虫類、草原性チョウ類、カミキリ類、
オサムシ類、ゲンゴロウ類
植物、植生
レッドデータブック対象種、特に指定を受けていないが生育環境が縮小して
地域における確認が少なくなっていく植物、森林伐採のような大きな撹乱後
に成立したササ林床をもつ二次林のような場所でササに被圧されている春植
物等。
原 松次編著「札幌の植物」
(北海道大学図書刊行会)
,13 頁に示されている
種(20 箇所、73 種類)、ヒンジモ、モウセンゴケ、ミズゴケ、タヌキモ、ネナ
シカズラ等、湿地や水辺の植物。
【まとめ】
札幌市において多くの動植物の保全すべき種が提案された。
レッドデータブック対象種はもとより、縮小しつつある環境で生息・生育している種(草
原性鳥類、草原生昆虫類、二次林の植物等)に着目するべきであるという意見が出された。
河川環境において自然繁殖する魚類の重要性が指摘された。
【考察】
・生物多様性の観点からは、天然記念物やレッドデータブック対象種等の保護上重要な
種に加え、普通にみられる種であっても、草原の縮小等生息環境の縮小に影響を受け
ている鳥類や遷移の進行により生育地が減少している春植物等、さらには、現在良好
に自然性が維持されている環境について着目すべきとの意見にまとめられる。
【分類群別にみた保全が必要と考えられる場所】
分類群
保全が必要と考えられる場所
哺乳類
市内における様々な樹林地
鳥類
豊平川(河川敷、石狩川との合流点)、石狩川、茨戸川の河畔草原、北東部の
原野・湿地、北大構内、西岡水源池、白旗山、新川の河畔林、手稲前田公園、
藤の沢、真駒内丘陵地、屯田水辺のふれあい広場を中心とした一帯、福移湿
地
両生類、は虫類
みどりの基本計画に示される「山地丘陵地のみどり(里山)」の区域、平岡公
園南部の遊水地を含めた樹林地(このほか、観音沢周辺、百松沢周辺、市街
地内の両生類生息地も保全が望ましい)
魚類、甲殻類
豊平川(上、中、下流域、石狩川との合流点)
、豊平川の支流を含む水系、石
狩川に合流する各支川の下流域、琴似発寒川上流域、精進川上流域、西岡水
源池
昆虫類
藻岩、円山(特にスギ植林、エノキ)、豊平川流域(河畔林と草地)、池、湿
地、草原環境
植物、植生
円山、藻岩山等重要性が認識されている地域のほか、長く手入れ(撹乱)の
行われていない二次林等、有明の滝、硬石山、篠路、真栄、滝野公園、砥石
山、東部緑地、屯田、中沼、西岡公園、野幌森林公園、春香山、百松沢、豊
平峡、北大構内、星置、真駒内公園、東米里、北大植物園、東区のサッポロ
さとらんど南側の小さな湿地、モエレ沼の東の中沼、北区の篠路町福移、旧
豊平川周辺
景観
市街地に多数ある緩衝緑地(住宅地にある自然緑地は、市民や子供達の身近
な自然として貴重な存在だが、手入れされていない緑地も多い。
)
【まとめ】
生物多様性の保全上重要な場所につい
ては、分類群を問わず豊平川の重要性を
指摘する意見が多かった。
次に多いのは、伐採が行われなくなり
成熟した二次林が分布する地域でまとめ
られる樹林地、3 番目は円山、藻岩山の
市街地に隣接する樹林地であった。
植生別に見た回答では、樹林地を重要
と考える意見が多く、次に草地と市街地
の緑地、次いで湿地と河川・湖沼であっ
た。
0
2
4
件 数
6
8
10
12
豊平川
伐採が行われなくなった二次林
円山、藻岩山
低地部の湿地・湖沼
生物多様性の保全上重要な地域
件 数
0
2
4
6
8
10
樹林
草地
湿地
河川・湖沼
市街地内緑地
生物多様性の保全上重要な植生
【考察】
・豊平川は、水域における魚類の多様性、樹林地・草地における動植物の多様性が高く、ま
た、コリドーとしての機能を持つこと、市街地の中心部を流下することから市民の生活圏
に隣接しており、自然との触れ合いがしやすいこと等から、重要度が高い環境である。
・時間の経過した樹林地は、その構成種や林床植物の種類が多く、さらにはそれに依存する
昆虫類等の多様性が高い環境であること、市街地に比較的隣接しており市民による自然と
のふれあいが行いやすい場所であること等から、札幌市における生物多様性の保全上重要
なエリアである。
・樹林地のほか、草地(河畔草原、湿地)や市街地の緑地も、旧豊平川周辺等の過去の環境
が保存されていたり、シマアオジ等の全国的に減少している種が生息している等、生きも
のの重要な生息・生育地として機能していることから、札幌市における生物多様性の保全
上重要なエリアである。
【その他指摘事項】
【現状の把握、モニタリングに関すること】
・札幌市内に分布している動植物種の生息状況を把握して、計画的な保全対策を策定すべき。そのため
に、稀少な生物の生息している環境や生物多様性のホットスポットを抽出して、その環境が維持される
ように残すこと。
・河跡湖であるモエレ沼や茨戸川には外来種が数多く生息することから、在来種への影響や今後の動向
をモニタリングする必要がある。
・環境変化に弱い両生類、特に在来種であるエゾサンショウウオとエゾアカガエルの生息状況を把握す
ること。
・近年、外来種であるトノサマガエルやアズマヒキガエル等が急速に分布を広げて生態系に変化を与え
ている。これらの外来種の生息状況を把握することも必要
・戦略策定の基礎となる札幌市の生物相について、系統的な調査を行いどこにどんな生物が生息あるい
は生育しているのかを把握し、データベース(GISと連携させて)を作成することが必要。
・天然記念物として保護されている藻岩山や円山について、その生物相や植生について現況を把握し、
今後の変化をモニタリングできるようにすることが必要(可能な事項については,過去の資料と照らし
変化を把握)。
【市民参加に関すること】
・学術的検討と実際に効力を発揮するための市民の活動の接点が重要。
・豊平川をとりまく歴史や人や生物とのつながりをもっと多くの人が知ることのできる取り組みが今後
必要だと思う。
・人と自然が触れ合える機会を増やす ⇒ 例)平岡公園、滝野すずらん丘陵公園等での活動等
【保全方法に関すること】
・市の面積の約 60%が森林であるのに対し、草原湿地は 1∼2%まで減少している。草原湿地環境の積極
的な復元、創出が急務。同時にPRが必要。その地域の原風景を生かした自然再生をはかる必要がある。
・市街地等の身近な自然における生物多様性の保全・創出と丘陵地から山地にかけての自然のままの生
物多様性が維持されている地域の保全をきちんと分けて考える施策が必要。
・緑地の規模拡大
・人の動線管理と盗掘防止
・河川コリドーの整備
・植林地の自然林への誘導(おもにカラマツ林等)⇒なるべくミズナラ等広葉樹へ誘導
・冬季伐採時の後継木の保全
・さとらんどは旧泥炭地に立地している。第 3 地区は手付かずのはずで原野のままだったと記憶してい
る。ここで湿地を復元し、ふれあいの場をつくれないか。
・雪捨て場周辺は春∼夏季の気温上昇が妨げられるため雪田植生のような環境が成立する。雪捨て場周
辺での特殊なビオトープがあってもいいと考える。
・基本的に生物の生息環境が保全されれば多様性は維持されると考える。
・札幌周辺では珍しい色々な昆虫類が採集できる。守るべき。哺乳類等も大事だが、種数・個体数が多
い昆虫類を守ることが大事と考える。
・在来種の移植放流が生物多様性を破壊する要因になっていると考えられるので、これ以上、本来オシ
ョロコマが生息しない市内の河川にオショロコマが移植されたり、系統不明のヤマメが放流されたりす
ることがないよう、何らかの措置が必要。
・市内の川で自然繁殖するサケ・サクラマスの産卵場所・生息環境を復元・造成するような試みも期待
する
【推進体制に関すること】
・生物多様性地域戦略を策定しても動かす人がいないと意味がない。生態学を専門とする人材を配置す
べき。または、有識者と行政を結びつけるコーディネーターを配置する。
・アクション・プランの策定とその実行
・実行機関の構築(例えば、サケ科学館の研究機関あるいは自然史博物館としての機能化)
【まとめ】
・環境変化のモニタリングの必要性(在来種・外来種)
・いきものの生息・生育環境の積極的創出
・市民参加の促進(ふれあい、活動、間に立つ有識者やコーディネーター)
・管理方針の設定(ゾーニングによる施策の区分、移植放流、盗掘防止、植林地の自然林への誘導)
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