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1 - 国立障害者リハビリテーションセンター

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1 - 国立障害者リハビリテーションセンター
平成28年度 サービス管理責任者指導者養成研修会
共通講義「サービス提供者と関係機関との連携」
サービス管理責任者指導者養成研修テキスト
「サービス提供者と関係機関の連携」
〈共通講義〉
平成28年9月14日
名古屋市総合リハビリテーションセンター
自立支援部長(障害者支援施設施設長)
鈴木 智敦
平成27年度サービス管理責任者指導者養成研修 共通講義「サービス提供者と関係機関の連携」
日本相談支援専門員協会 代表/社会福祉法人鶴ヶ島市社会福祉協議会 事務局次長
菊本 圭一氏 資料に一部追加等
1
はじめに・・・
都道府県研修削除スライド
この資料は、サービス管理責任者指導者研修(国研修)
受講者(都道府県でサービス管理責任者の企画・講師を
担う方)へ、連携の意味・連携の重要性を再認識していた
だくために用意したものです。
都道府県研修では、各地の実践事例や各分野での連携
実践を講義に加えていただき、地域の特徴が現れた資料
へと加筆・修正し、準備をしてください。
※都道府県で使用する場合は、このスライドぺージを除外してください。
また、各スライドの点線吹き出し
についても、都道府県の印刷用
からは、削除されているほうが読みやすいかと思います。
2
都道府県研修削除スライド
1.なぜ連携が必要か
各都道府県サービス管理責任者研修の受講者には、
障害者総合支援法等で求められている、各関係機関
との連携により、障害児者のニーズに沿ったサービス
提供をしてく意味と、担う役割について確認をします。
3
1.なぜ連携が必要か
(1)サービス管理責任者は、なぜ連携が必要か
(2)サービス事業者の責務(法的位置づけ)
4
(1)サービス管理責任者は、なぜ連携が必要か
(整理してみる)
5
ずっと必要・大切だといわれ続けている『連携』
そもそも『連携』とは?
れんけい【連携】
( 名 ) スル 〔「連絡提携れんらくていけい」の意〕
○連絡を密に取り合って,一つの目的のために一緒に物事
をすること。
「 -プレー」 「父母と教師の-を密にする」 「関係諸機関が-して研究開発を行う」
〔同音語の「連係・連繫」は物事と物事,人と人との間のつな
がりのことであるが,それに対して「連携」は連絡を取り合っ
て一緒に物事を行うことをいう〕 大辞林 第三版の解説
他にもこんなに
多職種連携、地域連携、地域医療連携、医療介護福祉連携、産官学連携、教育連
携、他部門連携、大学連携、官民連携、産学連携、公民連携……
6
もっと根本・もっと本質
そもそも、なぜ『連携』をしようとしているのか?
戻るところ・立ち返るところ
戻るところ・立ち返るところ
・誰もが、住み慣れた(
希望する)地域で安心
して暮らし続けられる。
・24時間365日の安心
を実現するため。
・個々の障害児者の
ニーズを支える(満た
す)ため。
障害者基本法 第一条 (目的)
この法律は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのつとり、
全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害者の自立及び社会
参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のた
めの施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。
障害者総合支援法 第一条 (目的)
この法律は、障害者基本法の基本的な理念にのっとり、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、児童福祉法
その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって、障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会
生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付、地域生活支援事業その他の支援を総合的に行い、もって障害者及び障害児の福祉の
増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。
7
なぜ連携が必要なのか?……挙げてみる
どんな時に連携が必要だと思うか? 挙げさせてみる。(例:小さなGWとkJ法)
障害児者のニーズに基づいた、サービス提供をするため以下の
ような場合に、連携が必要不可欠になる。
○障害児者ニーズは、常に変化するもの。新たなニーズへの対応ができない場合。
○個別支援計画書に「実現できなかったニーズ」、「反映できなかったニーズ」がある場合。
○事業所としての関わりが部分的で、生活の全体像が見えない場合。
○複数のサービスを使い分けて、生活している利用者の場合。
○拙速が大切なニーズと、時間を掛けて間違いのない結果をだすニーズを混同している場
合。
○複合的なニーズを有し、サービスが有効かつ効果的に使われていない場合。
○意思疎通やニーズ表出が難しく、ベストインタレスト(最善の利益を生み出す決定)を、追
求しにくい場合。
○専門的なアセスメントが必要な場合。(医療・保健・教育など)
※一担当者や一事業所の限界を知るということ
○その他……
8
なぜ連携が必要なのか?……整理してみる
連携の必要性を見る3つの軸
①利用者のニーズ
に関する軸
連携の必要性の例を挙げてみる
・ライフサイクルや成長、重度化等あらたなニーズやニーズの変化が生じてきている場合
・複合的なニーズや複数のサービスを使い分けて生活している場合
・満足度が低い場合やサービスがマンネリ化してしまっている場合
・意思疎通やニーズの表出が難しく、ベストインタレスト(最善の利益を生み出す決定)の
追求が必要な場合
・家族ニーズや、その他の周辺環境に巻き込まれてしまっている場合 など
②支援者・事業所・組織
に関する軸
・あらたなニーズやニーズの変化に対応できにくい場合
・個別支援計画書に「実現できなかったニーズ」、「反映できなかったニーズ」がある場合
・事業所としてのかかわりが部分的で、生活の全体像が見えない場合
・緊急な対応や時間をかけての取り組みなどの混在や混乱、対応が困難な場合 など
※連携によるより質の高い効果的な支援、一担当者や一事業所の限界を知る。
※連携は、①、②、③にとって大きなメリット(人材・事業所の質の向上と地域の底上げ)
③関係機関・地域・まち
に関する軸
・専門的アセスメントや関わりが必要な場合(医療・保健・教育など)
・社会参加や地域生活における様々な関わりが必要な場合
・事業所間で対応の統一や混乱をさせない支援ができていない場合
・地域にニーズを支える資源がない場合
・連携の土俵にのっていない場合 など
・3つに整理がされる。(5つも可)
・相互に関連している。
法・制度・責務・ささえる仕組み
9
(2)サービス事業者の責務等(法的位置づけ)
10
サービス事業者の責務(法的位置づけ)
指定障害福祉サービス事業者、指定障害者支援施設等の設置者
及び指定相談支援事業者の責務(障害者総合支援法第42条(抄))
第42条
1 指定障害福祉サービス事業者及び指定障害者支援施設等の設置者
は、障害者等が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、
障害者等の意思決定支援に配慮するとともに、市町村、公共職業安定
所その他の職業リハビリテーションの措置を実施する機関、教育機関そ
の他の関係機関との緊密な連携を図りつつ、障害福祉サービスを当該
障害者等の意向、適性、障害の特性その他の事情に応じ、常に障害者
者等の立場に立って効果的に行うように努めなければならない。
2 指定事業者等は、その提供する障害福祉サービスの質の評価を行う
ことその他の措置を講ずることにより、障害福祉サービスの質の向上に
努めなければならない。
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社会福祉法
第76条(利用契約の申込み時の説明)
社会福祉事業の経営者は、その提供する福祉サービスの利用を希望する
者からの申込みがあつた場合には、その者に対し、当該福祉サービスを
利用するための契約の内容及びその履行に関する事項について説明する
よう努めなければならない。
第78条(福祉サービスの質の向上のための措置等)
社会福祉事業の経営者は、自らその提供する福祉サービスの質の評価を
行うことその他の措置を講ずることにより、常に福祉サービスを受ける者
の立場に立つて良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなけれ
ばならない。
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障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービス事業者の人員、
設備及び運営に関する基準(抄)(療養介護計画の作成等)
第58条
指定療養介護事業所の管理者は、サービス管理責任者に指定療養介護に係る個別支援
計画(以下この章において「療養介護計画」という)の作成に関する業務を担当させるもの
とする。
2 サービス管理責任者は、療養介護計画の作成に当たっては、適切な方法により、利用
者について、その有する能力、その置かれている環境及び日常生活全般の状況等の評
価を通じて利用者の希望する生活や課題等の把握(以下この章において「アセスメント」
という。)を行い、利用者が自立した日常生活を営むことができるように支援する上での適
切な支援内容の検討をしなければならない。
3 アセスメントに当たっては、利用者に面接して行わなければならない。この場合におい
て、サービス管理責任者は、面接の趣旨を利用者に対して十分に説明し、理解を得なけ
ればならない。
4 サービス管理責任者は、アセスメント及び支援内容の検討結果に基づき、利用者及び
その家族の生活に対する意向、総合的な支援の方針、生活全般の質を向上させるため
の課題、指定療養介護の目標及びその達成時期、指定療養介護を提供する上での留意
事項等を記載した療養介護計画の原案を作成しなければならない。この場合において、
当該指定療養介護事業所が提供する指定療養介護以外の保健医療サービス又はその
他の福祉サービス等との連携を含めて療養介護計画の原案に位置付けるよう努めなけ
ればならない。
13
障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービス事業者の人員、
設備及び運営に関する基準(抄)(療養介護計画の作成等)
第58条(続き)
5 サービス管理責任者は、療養介護計画の作成に係る会議(利用者に対する指定療
養介護の提供に当たる担当者等を招集して行う会議をいう。)を開催し、前項に規定す
る療養介護計画の原案の内容について意見を求めるものとする。
6 サービス管理責任者は、第四項に規定する療養介護計画の原案の内容について利
用者又はその家族に対して説明し、文書により利用者の同意を得なければならない。
7 サービス管理責任者は、療養介護計画を作成した際には、当該療養介護計画を利
用者に交付しなければならない。
8 サービス管理責任者は、療養介護計画の作成後、療養介護計画の実施状況の把握
(利用者についての継続的なアセスメントを含む。 以下「モニタリング」という。) を行う
とともに、少なくとも六月に一回以上、療養介護計画の見直しを行い、必要に応じて療
養介護計画の変更を行うものとする。
9 サービス管理責任者は、モニタリングに当たっては、利用者及び家族等との連絡を継
続的に行うこととし、特段の事情のない限り、次に定めるところにより行わなければなら
ない。
一 定期的に利用者に面接すること。
二 定期的にモニタリングの結果を記録すること。
10 第二項から第七項までの規定は、第八項に規定する療養介護計画の変更について
準用する。
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指定障害福祉サービス事業者の人員、設備及び運営に関する基準
事業者の業務基準(一部抜粋)には療養介護計画のみでなく、そ
の他の連携するサービスな
ども位置付ける義務がある
(療養介護計画の作成等)(58条-4)
「当該指定療養介護事業所が提供する指定療養介護以外の保健医療サービス又はその
他の福祉サービス等との連携を含めて療養介護計画の原案に位置付けるよう努めなけ
ればならない」
指定共同生活援助のサービス管理責任者の責務(210条の6-3)、
「利用者が自立した社会生活を営むことができるよう指定生活介護事業者等との連絡調
自立した生活のための日中
整を行うこと」
活動等との連絡調整
また指定自立訓練の地域生活への移行のための支援(161条)では、
「…指定就労移行支援事業者その他の障害福祉サービス事業を行う者等と連携し、必要
な調整を行わなければならない」とあります。
これは、
自立訓練からの就労移行や
その他障害福祉サービスな
・支援を行う上で共通の支援目標があること
ど受け皿との連携調整
・その内容を相互に連絡調整(周知・確認)する必要があること
・就労移行や地域生活移行の際には、押し出す側と受け止める側と
の相互の連絡調整が必要であると業務基準に明示しています。
15
基準における連携の位置付け
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス事業等の人員、設備及び運営に関する基準(抄)
•
指定共同生活介護事業
– サービス管理責任者の責務(210条の6)
• 一 利用申込者の利用に際し、その者に係る指定障害福祉サービス事業者等に対する照会等により、その者の身体及び精神の状況、当該指
定共同生活援助事業所以外における指定障害福祉サービス等の利用状況等を把握すること。
• 二 利用者の身体及び精神の状況、その置かれている環境等に照らし、利用者が自立した日常生活を営むことができるよう定期的に検討する
とともに、自立した日常生活を営むことができると認められる利用者に対し、必要な支援を行うこと。
• 三 利用者が自立した社会生活を営むことができるよう指定生活介護事業所等との連絡調整を行うこと。
• 四 他の従業者に対する技術指導及び助言を行うこと。
各事業別に、調整・連携その他、事業所・サビ管等の役割が位
•
指定自立訓練(機能訓練)
置付けられているため各自で法や指定基準の確認を
– 地域生活への移行のための支援(161条)
• 指定自立訓練(機能訓練)事業者は、利用者が地域において自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、第175条第1項に規
定する指定就労移行支援事業者その他の障害福祉サービス事業を行う者等と連携し、必要な調整を行わなければならない。
•
指定就労移行支援事業
– 求職活動の支援等の実施(181条)
• 2 指定就労移行支援事業者は、公共職業安定所、障害者就業・生活支援センター及び特別支援学校等の関係機関と連携して、利用者の
意向及び適性に応じた求人の開拓に努めなければならない
– 職場への定着のための支援の実施(182条)
• 指定就労移行支援事業者は、利用者の職場への定着を促進するため、障害者就業・生活支援センター等の関係機関と連携して、利用 者
が就職した日から6月以上、職業生活における相談等の支援を継続しなければならない。
•
指定就労継続支援A型事業
– 実習(193条)
• 2 指定就労継続支援A型事業者は、前項の実習の受け入れ先の確保に当たっては、公共職業安定所、障害者就業・生活支援センター及
び特別支援学校等の関係機関と連携して、利用者の就労に対する意向及び適性を踏まえて行うよう努めなければならない
– 求職活動の支援等の実施(194条)
• 2 指定就労継続支援A型事業者は、公共職業安定所、障害者就業・生活支援センター及び特別支援学校等の関係機関と連携して、利用
者の就労に関する意向及び適性に応じた求人の開拓に努めなければならない
– 職場への定着のための支援等の実施(195条)
• 指定就労継続支援A型事業者は、利用者の職場への定着を促進するため、障害者就業・生活支援センター等の関係機関と連携して、利用
者が就職した日から6月以上、職業生活における相談等の支援の継続に努めなければならない。
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準(抄)
•
指定障害者支援施設等業
– 指定障害福祉サービス事業者等との連携等(15条)
• 指定障害者支援施設等は、施設障害福祉サービスの提供に当たっては、地域及び家庭との結びつきを重視した運営を行い、市町村、他の
指定障害福祉サービス事業者等その他の保健医療サービス又は福祉サービス等を提供する者等との連携に努めなければならない。
16
• 2 指定障害者支援施設等は、施設障害福祉サービスの提供の終了に際しては、利用者又はその家族に対して適切な援助を行うとととも
に、保健医療サービス又は福祉サービス等を提供する者との密接な連携に努めなければならない。
都道府県研修削除スライド
2.連携の視点(整理した3つの軸を紐解く)
(地域の社会資源を知り、使い、改善し、広げる)
各都道府県サービス管理責任者研修の受講者には、
より具体的で日々の業務に近い表現方法で、連携に
対する視点を揃えます。
また、日々の業務に埋もれ疲弊し、あるいは慢心し
ている受講者も含まれていることが想定されます。
ですので、実務の振り返りや検証に役立つ内容を
伝え、実践に生かすことを確認します。
17
2.連携の視点(整理した3つの軸を紐解く)
①利用者のニーズに関する軸
・ライフサイクルや成長等あらたなニーズやニーズの変化が生じてきている
・複合的なニーズや複数のサービスを使い分けて生活している場合
・満足度が低い場合やサービスがマンネリ化してしまっている場合
・意思疎通やニーズの表出が難しく、ベストインタレスト(最善の利益を生み出す決定)の
追求が必要な場合
・家族ニーズや、その他の周辺環境に巻き込まれてしまっている場合
②支援者・事業所・組織に関する軸
・あらたなニーズやニーズの変化に対応できにくい場合
・個別支援計画書に「実現できなかったニーズ」、「反映できなかったニーズ」がある場合
・事業所としてのかかわりが部分的で、生活の全体像が見えない場合
・緊急な対応や時間をかけての取り組みなどの混在や混乱、対応が困難な場合
※連携によるより質の高い効果的な支援、一担当者や一事業所の限界
※連携は、①、②、③にとって大きなメリット(人材・事業所の質の向上と地域の底上げ)
③関係機関・地域・まちに関する軸
・専門的アセスメントや関わりが必要な場合(医療・保健・教育など)
・社会参加や地域生活における様々な関わりが必要な場合
・事業所間で対応の統一や混乱をさせない支援ができていない場合
・地域にニーズを支える資源がない場合
・連携の土俵にのっていない場合 など
○利用者の個別性・多様なニーズに答えていくた
めには、個人や事業所として、完結したサービス
提供のみでは対応が難しくなる。
→(1)完結型支援からオープン型支援へ
○対応できないニーズや新たな地域社会との繋
がり、俯瞰的な生活全体像を見ながらの支援に
は機関等連携が不可欠となる。
→(2)個別支援計画書は連携ツール
○連携はニーズに応えることをベースにしながら
も、支援者や事業所の質の向上や地域のネット
ワークによる支援の底上げにも繫がる。
→(3)連携の意味を考える(専門性とチー
ム力を高める)
○連携を考える場合、実は事業所・組織の部門
間連携等と類似する。事業所内のチームワーク
→(4)事業所内(組織)、部門間連携を考
える
○そのためには、サービス担当者会議や事例検
討等のOJTや他者との関わり、人材育成が重要
となる。
→(5)さまざまな会議等の活用
→3.協議会等の活用と活性化
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2.連携の視点(整理した3つの軸を紐解く)
(地域の社会資源を知り、使い、改善し、広げる)
(1)完結型支援からオープン支援へ(ケアマネジメント体制の構築・強化)
・利用者の個別性・多様なニーズに答えていくためには、個人や事業所として、完結したサービス提供のみでは
対応が難しくなる。
(2)個別支援計画書は連携ツール
・対応できないニーズや新たな地域社会との繋がり、俯瞰的な生活全体像を見ながらの支援には機関等連携
が不可欠となる。
(3)連携の意味を考える(専門性とチーム力を高める)
・連携はニーズに応えることをベースにしながらも、支援者や事業所の質の向上や地域のネットワークによる支
援の底上げにも繫がる。
(4)事業所内(組織内)連携、部門間連携を考える
・連携を考える場合、実は事業所・組織の部門間連携等と類似する。事業所内のチームワーク。
(5)さまざまな会議等の活用
19
・そのためには、個別支援会議、サービス担当者会議や事例検討等のOJTや他者との関わり、人材育成が重
要となる。
サービス管理責任者はなぜ連携が必要か
運営基準の位置づけ
個別支援計画を作成し、サービス提供のプロセス全体を管理する
他の従業者に対する技術指導及び助言(チーム力の向上)
関係者や機関と連携して、
利用者のニーズに対する必要で質の高い支援を
総合的に協働して行う
20
(1)完結型支援からオープン支援へ①
多職種連携、様々な人の協働により、多面的に物事をとらえること
・人の生活を多面的に捉え、多職種協働で行うことを基本と考える。
・同じものを見ていても、価値観や視点の違いにより、見ているものは同
固定電話からガラケー、スマートフォンなど、時代に合わせて、サー
じでも、見えていない時がある。
ビス内容も支援手法も変化する。ICT活用なども。
・黒電話から携帯電話へ(ニーズや時代に合わせて常に変化する福祉サ
事業所・組織業務の効率化・QC活動。
ービス)
メイド・サーバンド症候群の防止。
・今までの業務を見直し、業務の無駄や行わないことも見つけながら、支
援会議の開催、個別支援計画書の作成、モニタリング、エバリュエーショ
ン(evaluation)等を定期的に行なう体制を作る。
・抱え込みや過剰な支援がないかなどのチェックが常に行える体制(チー
ムアプローチ強化と権利擁護)
・サービス向上を絵に描いた餅にしないための、重要な体制・システムづ
くりと捉える。
組織内・組織外のチーム作り。フォロー体制等による、バーンアウト
やモチベーションの低下を防ぐ。
21
(1)完結型支援からオープン支援へ②
○ケアマネジメント体制の強化と構築
・最初(サービス提供開始時)に着ていた洋服(サービス)も、本人や周り
の環境に変化が生じ、サイズの合わない洋服(サービス)になっている場
合があります。(地域に点在し、変化する社会資源を点検する)
・変化がない場合に、原因を本人だけに求めない(事例共有や事例検討
を定期的に実施する)
・満足度が上がらない場合、ケアマネジメントプロセスに沿って、原因を
探っていくことが重要。
・モニタリングを通じて、サービス提供や計画の内容を、変更する勇気を
持つこと。(提供しているサービスの否定にはあたらない)
22
例えば………ある事例
•
•
•
•
•
•
•
30代 男性 知的(軽度)・視覚(弱視)・言語障害。
幼少期タンスの上のテレビが落ちてきて頭部強打、受障。
特別支援学校から、老舗の授産(⇒就労B)、自宅から自転車で通所。
最近、ミスも多く作業効率の低下。注意しうなずくが…
所長は、ちゃんとやらせなさいと。
繰り返しているうちに、行きたがらなくなりやめてしまった。
…自宅ではこもりがちに→→→母親にあたるように→→
①どんなことが考えられるか?
②実は…
※これは…この後の、連携、チーム、専門性にもつながる
23
(2)個別支援計画書は連携ツール
~サービス等利用計画と個別支援計画~
24
~サービス等利用計画と個別支援計画~
地域社会での普通の暮らし
福祉
施策
労働
施策
住宅
施策
関係者の連携によるネットワーク
(自立支援協議会)
まちづくり
施策
バス
行政
映画館
地域移行
入所施設
安心して暮らせる住まいの場
グループホーム
自宅
レストラン
病院
C
個別
デパート
支援
計画
商店街
B
医療機関
学校
個別 相談支援事業者
支援
日常生活を支える相談支援
計画
障害福祉サービス事業所
A
宅建業者
個別
支援
計画
郵便局
公園
サービス等利用計画(土台となる計画)
医療・健康
金銭面
趣味・遊び
相談相手 対人関係
【サービス等利用計画】
銀行
サービス担当者会議
住まい 日常生活 日中活動
・生活全般を見な
がら本人の願い
をかなえるために
、必要なアセスメ
ントをさらに深め
、個別なニーズに
対し、より具体的
な支援内容を盛
り込んだもの
障害者就業・
企業
サービス等利用計画よりも
生活支援センター
密度が濃く、オリジナリ
ティ溢れる計画
電車
アパート
希望・
ニー
ズ
アセスメントや計画の濃さ・
深さ。具体的な内容。
連携
【個別支援計画】
安全 家族希望
地域状況等々
・生活全般をア
セスメントし本人
の願いを中心に
生活や支援の
全体像、将来像
を考慮しながら
トータルに示し
たもの
幅の広い相談支援専門員のアセスメント(生活の幅)
25
(2)個別支援計画書は連携ツール①
○サービス等利用計画書と個別支援計画書を何かに例えると…
◇建築業界において、「設計図」とは、設計者がお客や公的機関に提出
する為に作成する図面で、お客さんのニーズに沿って作成された部屋の広
さや高さ、仕上げ、形状がわかる図面です。
◇「施工図」は、設計図を元にして、壁の厚さ、芯の振分け、天板の巾、
材料の厚さ、高さなど 実際の現場を管理する人が必要な寸法を決定しな
がら作成する図面です。
この図面を元に、各職種が材料の手配、加工などを行います。
◇実は、建築は設計図ではなく施工図によって具現化するものであり、
施工図が品質に直接的影響を及ぼす重要なものとなっています。
◇ひとつの家を作り上げるには、複数の職種の仕事がうまく調和してい
なければなりません。 大工さん、建具屋さん、クロス屋さん、設備屋さん、
電気屋さん等、複数に及びます。
26
(2)個別支援計画書は連携ツール②
設計図を翻訳・具体化した施工図により、それぞれの職人さんが具体的
な寸法や形状、材料など理解し、発注・制作が具体的に進むことになりま
す。施工図の出来・不出来は、建築の出来栄えや善し悪し、効率にも左右
することになります。
上記の「設計図」を「サービス等利用計画書」に、「施工図」を「個別支援計
画書」に置き換えると、「サービス等利用計画書」と「個別支援計画書」の関
係性が理解しやすくなります。
まだまだ、サービス事業者が先に関わりを持ち本人との関わりも情報も
多く持っていることでしょう。しかし、後から関わる相談支援専門員は不要
ではなく、支援を受ける人について重要な経過管理者となります。また、幅
広に地域の情報が集まり、事業所間の連携や齟齬の改善など、チームと
して役割分担し協働していくことが大切です。
自事業所で相談支援を持っている場合、あなたの仲間の相談支援専門
員さんは、何かに苦しんでいませんか?
27
サービス管理責任者の連携イメージ
-Aさんの事例から-
相談支援専門員による支援
終結
モニタリング・
評価
サービス利用
サービス等利用計画の作成
サービス担当者会議
○本人や環境に関する
諸情報を共有し、ニー
ズ、支援方針を確認する
・・・見立て
終了時評価
中間評価と修正
個別支援計画の実施
個別支援計画の作成
アセスメント
相談支援時の状況把握
サービス管理
責任者
サービス等利用計画案の作成
相談受付
Aさん
アセスメント・
課題分析
相談支援
専門員
サービス管理責任者による支援
本人に混乱を起こさせな
いような障害特性の理
解、適切な支援方法の
共有
○サービスの提供状
況、目標の達成状況、
本人の状況について
の評価を共有する
・・・手立て
28
設計図
施工図
29
総合的なニーズ
「パン屋さんで働いて、
ホームで暮らしたい」
サービス等
(設計図)
利用計画書
個別支援
計画書
個別ニーズ
「パン屋さんで働きたい」
(施工図)
個別支援
計画書
個別ニーズ
「ホームで暮らしたい」
(施工図)
連携
30
計画の流れ関係性①
相談支援専門員
サービス管理責任者
希望する生活像(総合的なニーズ)
サービス等利用計画
希望する生活像
(総合的なニーズ)
事
業
所
1
受けたい支援(身近なニーズを含む)
個別支援計画 A
受けたい支援
(身近なニーズ)
A
希望する生活像(総合的なニーズ)
受けたい支援
(身近なニーズ)
事
業
所
2
受けたい支援(身近なニーズを含む)
個別支援計画 B
B
希望する生活像(総合的なニーズ)
受けたい支援
(身近なニーズ)
C
事
業
所
3
受けたい支援(身近なニーズ)
個別支援計画 C
31
計画の流れ関係性②
相談支援専門員
サービス管理責任者
サービス等利用計画
希望する生活像(総合的なニーズ)
卒業と同時に就職はできなかったけれど、
早く就職をしたい。また、自分らしい生
活スタイルを作りたい。
就職するための
支援を受けたい
個別支援計画
就労移行支援事業所
希望する生活像(総合的なニーズ)
個別支援計画
週末にスイミ
ングに通いたい
A
B
行動援護 サービス提供事業所
希望する生活像(総合的なニーズ)
卒業生と定期的
に同窓会で会い
たい
インフォーマルサービス
家族
友人
先生の協力・助け合い
32
計画の流れ関係性③
サービス管理責任者
希望する生活像(総合的なニーズ)
個別支援計画
A
就労移行支援事業所
作業
月曜日から金曜日 9時から15時
詳細で
具体的指示
送迎
乗降場までは徒歩 毎朝8時30分
詳細で
具体的指示
就職するための支
援を受けたい
サービス管理責任者
希望する生活像(総合的なニーズ)
ヘルパー
個別支援計画
B
行動援護サービス提供事業所
毎週土曜日
午後1時から4時
週末にスイミ
ングに通いたい
家族との外出
2ヶ月に1度
詳細で
具体的指示
詳細で
具体的指示
特にプランなし
希望する生活像(総合的なニーズ)
インフォーマルサービス
家族
友人
先生の協力・助け合い
卒業生と定期的
に同窓会で会い
たい
学校で培った人間関係を継続し、新たな経験の
共有や共感をする場 (情報交換)
33
(2)個別支援計画書は連携ツール③
○個別支援計画書の視点や質的変化を意識する(モニタリングの重要性)
・最初からすべてを網羅し、完璧な計画書は作ろうとしない。スモールステ
ップで、少しずつ積み上げて行くイメージを持ち、成功体験や役割を意識す
ることが重要となります。
・つなげるだけではなく、一緒に考える姿勢が必要(つなげてもうまくいかな
い場合)
・相談支援専門員とサービス管理責任者が、モニタリングのための会議等
で一緒に考えることで、新たな解決方法やつなぎ先(連携先)を得たり、気
づきが生まれます。
34
サービス等利用計画・個別支援計画の視点や質的変化
利用の時期
サービス利用
後 期
支援の方向性
将来の生活設計型
行ったり来たりを保障する
サービス利用
中 期
生きがいや可能性追求型
行ったり来たりを保障する
サービス利用
初 期
リスク・安定中心型
個
別
性
が
高
ま
り
質
が
ア
ッ
プ
35
ともに考える姿勢が重要
36
(3)連携の意味を考える
【チームとは】
○ある特定の目的のために、多様な人材が集まり
協働を通じて相乗効果を生み出す少人数の集合体
○専門性とチーム力を高める
・連携することによりグループを作るのではなく、チームを作る。(支援目標
の明確化と共有)
○チームに必要な三つの条件
・目的や目標がある
・ルールや決まりごとがある
・目的、目標が成し遂げられる人材が揃っている
+プラス、「モチベーション」
○連携することは、See→Think→Plan→Doのプロセスを回しながら、業
務に当たること。(画一的なサービスではなく、包括的なアセスメントをきち
んと行って、利用者の状況に応じた個別性の高いサービスを提供する。)
37
グループではなく
チームを作る
38
(3)連携の意味を考える
○メイド・サーバント症候群(Maid-Servant Syndrome)
・誰かが考えたことを、指示された通りにやらされているのは、「メイド・サーバント的支援」
といえるかもしれません。これは、もともと、施設ケアスタッフは世話をすることを仕事と
思い何から何まで手を出してしまう(メイドさんや召使いになりきっている状態を比喩した
用語)。また、施設入所者もケアしてもらうことを期待して受動的になってしまいます。
・ケアスタッフがメイド・サーバント的支援に陥ると、仕事の結果に責任を持ちません。「結
果が悪かったのは指示をした方が悪い、自分はいわれた通りにきちんとやったのだから
」と考えてしまいがちです。
・一方、入所者も決まったスケジュールにあてがわれるサービスの中、受動的で自己決定
をすることもなく、興味関心を失うことなどの弊害があげられた。
◇ケアスタッフがメイド・サーバント症候群(的支援)に陥らないためにも、定期的に自分の
仕事を検証する機会が必要となります。支援者全員で楽しみながら本人のゴールを目
指したいものです。
39
(3)連携の意味を考える
・一方、利用者に対しても自分の新たな可能性を見つけるきっかけにもなり
ます。(多角的視点からのストレングス支援やエンパワメント)
・質の高いサービスとは何か、サービスの質の向上に終わりはなく、常に
変化、向上させていくということがとても重要です。
(マンネリやパタナリズムの打破)
・定期的に提供しているサービスを振返り・検証を行なうことができる体制
作りが必要となります。一人に頼らず、チームで行なう。
(チームアプローチの強化と徹底)
・「エビデンス ベース プラクティス」(EBP) エビデンスをベースにした実
践がとても重要となる。
・人材の育成、強化(チームのどこが強いところか弱いところか)
40
(4)事業所内(組織内)連携、部門間連携を考える
41
あなたの事業所(組織)は大丈夫?
~こんなことは起きてない??~
これも
チームづくり
さまざまな職種が協力し連携し合って一人の利用者を支援しています。外部との連携がうまくいかない所は内部の
連携も…。
送迎を兼務する生活支援員、相談員、ケアスタッフ、看護師、理学療法士等などが連携して一人の利用者を支援し
ます。事業所業務を一人のスタッフがすべてこなすことはないでしょう。人員配置基準も含めスタッフ間でお互いに助
け合いながら、チームとして気持ちよく業務を進めたいはずです。
○「中での健康管理があるから病院への送迎はやりません」
「排泄介助や入浴介助は、看護業務ではないのでやりません」ときっぱり言い切る看護師。
○「免許をとったら、送迎までやらされるから、とると損よね」と同じ生活支援員なのに。
○「この利用者何をしても文句ばっかりなのよ。相談員さん相談にのってあげて、
あなたの仕事でしょ」と吐き捨てるようなケアスタッフ。
○家族からの苦情の電話に「その日は自分はお休みでしたからよく分かりません」と答える生活支援員。
○「あなたたちは、リハのこと何も知らないでしょ、こっちの言った通りにしてくれればいい」
と上から目線のセラピスト。
○「しかたないだろ、現場でなんとかしてくれ」と話も聞いてくれない総務事務担当
連携の意味やチーム作り、中から外へ。中が難しいときは、外部の人材をうまく使うことも必要でしょう
42
以下6枚のPPは、あくまで参考です。(引用先は各PPについています)
組織内連携の5つの壁、それを打破する3つのキーワードがわかりやすく解説してありま
す。こうしたものも、フォローアップの研修などでうまく活用してみるといいと思います。
都道府県研修削除スライド
(4)1. なぜ部門間の協力がうまく進まないのか 解説
私たちが働く会社の中にも、組織の壁がたくさんあります。お互いに協力したいという気持ちはあっても、知らず
知らずのうちに壁が出来てしまうのです。このような壁は、なぜ生じてしまうのでしょうか。また、その壁を乗り越え
て協力し合うためには、何をすべきでしょうか。部門を率いるミドルマネージャーに焦点を当てて考えます。
(4)1-1. 組織の壁を形成する5つの要因
「組織の壁を形成する要因は、○○○○だ。」
•「相互の方針のずれ」…相手部門と方針や関心がずれていること。
•「相手部門の能力・人手不足」…期待する能力が相手部門になかったり、あったとしても忙しくて余
裕がないことです。
•「自己の連携構築力不足」…自分自身のことで、連携をマネジメントする能力が足りないこと。
•「部門重視の制度」…評価制度等の各種制度が部分最適を助長するものになってしまっていること。
•「心理的なわだかまり」…感情面のこと
富士ゼロクス総合教育研究所 人材開発白書
富士ゼロックス総合教育研究所 研究室長
首都大学東京大学院ビジネススクール非常勤講師 坂本雅明
43
都道府県研修削除スライド
(4)1-2. 組織の壁の根底にあるものは利害の不一致
富士ゼロクス総合教育研究所 人材開発白書
富士ゼロックス総合教育研究所 研究室長
首都大学東京大学院ビジネススクール非常勤講師 坂本雅明
○最も障害に感じているのが「相互の方針のず
れ」です。お互いの部門の利害や関心ごとが一
致していなければ、当然のことながら協力を取り
付けることは難しくなります。
○しかし、それ以外にも理由がありました。「同じ
会社・事業部だから方向性は同じだろう。だから、
言えば分かってくれるだろう」という安易な気持ち
で、連携を進めようとしていたのです。会社や事
業部が同じでも、機能が異なれば必ず利害や優
先順位が異なります。ケースでいえば、技術部
門と営業部門あるいは生産部門とは、大きな方
向性では一致していましたが、細部になると対立
点が顕在化しました。こうした現実から目を背け、
自分の都合だけで連携を進めようとする姿勢が
問題なのです。
2番目の問題は「相手部門の能力・人手不足」で
す。これは「相互の方針のずれ」に通じるところ
があります。相手部門は、相手部門の方針や計
画の下で人員・工数計画をたて、また人材育成
をしています。そこに割り込んで入っていこうとす
るのですから、人や時間を融通し兼ねるのは当
然のことです。
5に近いほど障害に感じており、1に近いほど障害に感じていません。3は「障害になっているともいないとも
いえない」という中立的な回答です。
44
都道府県研修削除スライド
(4)1-3. 周りを巻き込むために(1)_臆せずに一歩踏み出す
この方法は、利害対立を解決できるものではありませんが、最も基本的なことです。
ある研究結果を紹介します。2000年代半ばのことです。組織行動学者のフランシス・フリンらが「他人がどのくらい頼みに応じ
てくれるか」という調査をするために、学生アルバイトを募集して、大学近くの街角で通行人に実際に頼みごとをしました注3。依
頼に応じてくれる人の目標人数を決め、その目標に達するために何人に頼む必要があるのかを調べたのです。複数のアルバ
イトにこの調査をしてもらい、最終的に依頼人数の平均を出しました。
依頼内容と目標人数は以下の3つです。
•5-10分程度の短いアンケートを、5人に回答してもらう。
•3人から携帯電話を借りて、電話をさせてもらう。
•1人に、3ブロック先の体育館まで連れて行ってもらう。
富士ゼロクス総合教育研究所 人材開発白書
富士ゼロックス総合教育研究所 研究室長
首都大学東京大学院ビジネススクール非常勤講師 坂本雅明
さらに興味深いことがあります。調査の完遂率です。このような調査の完遂率は、通常は100%です。しかし、アルバ
イト内容の説明を聞いた後に拒否したり、あるいは何人かの通行人に断られてしまったことで気持ちがなえてしまい、
途中で止めてしまう人が続出したといいます。この事実から言えることは、“人は頼むことが嫌いだ”ということです。
では、なぜ頼むのが嫌なのでしょうか。堂々巡りになってしまいますが、相手が頼みに応じてくれないと思い込んでい
るからです。しかし、調査結果からも分かるように、人は思ったよりも頼みに応じてくれます。この堂々巡りを断ち切る
45
ためには、まずは思い切って頼んでみることが大切です。
都道府県研修削除スライド
なぜ部門間の協力が進まないのか
周りを巻き込む3つの方法―
(4)1-4. 周りを巻き込むために(2)_相手のメリットを訴える
他部門を巻き込んで成果を上げ
ている優秀なマネージャーを1人
思い浮かべてもらい、各項目が
どの程度当てはまるかを5段階で
回答してもらいました。その回答
結果をスコアが高い順に並べた
のが、以下の図です。
富士ゼロクス総合教育研究所 人材開発白書
富士ゼロックス総合教育研究所 研究室長
首都大学東京大学院ビジネススクール非常勤講師 坂本雅明
46
都道府県研修削除スライド
さきの棒グラフの下に別の棒グ
ラフを重ねたのが次の図(図表
4)です。これは、自部門の力だ
けで成果を上げている優秀なマ
ネージャーを一人思い浮かべて
いただき、同じ質問に回答しても
らった結果です。右側の棒グラ
フはギャップの大きさを表してい
ます。このギャップが大きい項目
こそが、巻き込み力のあるマ
ネージャーの特徴的な行動です。
まず、2番目にギャップが大きかった「(12)すべての関係者がWin-Winになる方法を考えている」に着目します。
組織の壁は利害の不一致がもとで形成されることが多いことを思い出せば、この項目の重要性が理解できるで
しょう。利害が一致していない場合は、自分のメリットや思いをいくら熱く語っても意味がありません。相手にとっ
てのメリットを訴えなければ首を縦に振ってもらえないのです。
とはいうものの、そもそも利害が対立しているのに、相手のメリットを考えることは容易ではありません。そこでヒ
ントを1つだけ紹介します。範囲を広げてみてください。時間的にも空間的にも狭い範囲で考えている限りは、ア
イデアも限定されてしまいます。
富士ゼロクス総合教育研究所 人材開発白書
富士ゼロックス総合教育研究所 研究室長
首都大学東京大学院ビジネススクール非常勤講師 坂本雅明
47
都道府県研修削除スライド
(4)1-5. 周りを巻き込むために(3)_信頼残高を増やす
ところがどんなに相手のメリットを訴えても、なかなか納得してもらえないこともあります。依頼する前に勝負が
付いていることもあるのです。
相手が協力依頼に応じるかどうかは、依頼内容だけでなく、依頼する人でも判断します。実際、私どもが実施し
たインタビュー調査では、「よくわからないけど、この人が言っているのなら間違いないだろう」とか、逆に「言って
いることは正しいかもしれないけど、何かありそうだなぁ」という意見が散見されました。
ここでもう一度、図表4に戻ります。最もギャップが大きい項目は、「(5)他部門からの依頼に積極的に応えてい
る」でした。人間関係を信頼の度合いで示した“信頼残高”注4という言葉があります。銀行の預金残高をメタ
ファーにした言葉であり、信頼に足りる行動をすれば残高は増え、裏切れば減ってしまいます。図表4は、いざと
いうときに協力を取り付けられるよう、日ごろから信頼残高を増やす努力が必要だということを示唆しているので
す。
例えば、新商品の開発に没頭するあまりに、他部門から依頼のあった既存商品の改良や不具合対応を先送り
してしまったりといった行動は信頼残高を減少させます。他の部門からの依頼をないがしろにしてきたにもかか
わらず、他の部門に協力を求めることは、少し虫が良すぎます。他の部門の人は「いざというときに梯子をはず
されるかもしれない」と感じることでしょう。普段から信頼残高を増やすための努力をしていれば、営業部長と生
産部長も前向きに知恵を絞ってくれたかもしれません。
いかがでしたでしょうか。
マネージャーにとって、部門間の連携は自部門とは違った切り口からマネジメントを進める必要があります。
部門が違えば利害が異なるという前提に立ち、それぞれの立場を尊重しながら巻き込んでいくことが重要といえ
るでしょう。
部門間のマネジメントで壁にぶつかりそうなときは、ぜひ今回お伝えしたポイントを思い返して取り組んでいただ
ければ幸いです。
富士ゼロクス総合教育研究所 人材開発白書
https://www.fujixerox.co.jp/support/xdirect/magazine/rp1508/15081a.html
富士ゼロックス総合教育研究所 研究室長
首都大学東京大学院ビジネススクール非常勤講師 坂本雅明 48
参考資料
(4)2-1情報の共有化・効率化(システム化)…基本台帳
49
参考資料
(4)2-2情報の共有化・効率化(システム化)…利用相談状況
利用者氏名・利用開始予定日・相談受付日・施設見学日・各課相談日・障害診断書依頼・障害診断書作成日・受託会議日・サービス申請日・
認定調査日・受給決定委・利用前状況・紹介経路・2F(病棟)利用有無・利用サービス・手帳有無・HSP・計画相談事業所・担当者・窓口相談
50
(5)さまざまな会議の活用
51
(5)さまざまな会議の活用
• 利用者のニーズを充足するために、連携の視点と軸を整理していくと、支
援者・事業所・組織及び関係機関・地域・まちの軸の中で、連携をしていく
ための場の設定と実践が重要(不可欠)となる。
• また、この『場』は、双方における連携を強化するとともに、それぞれの人
材育成やサービスの質の向上、地域の活性化にもつながるものである。
• 職場では、朝会(ミーティング)、グループ会議、QC活動等々様々な会議
がある中に、「個別支援計画作成会議」が含まれる。
• また、本人(利用者)を通した関係機関との連携実践は、「サービス担当
者会議」となる。
• 次のステップとして基幹相談支援センターや(自立支援)協議会等を利用
した検討・会議などが、地域づくりやまちづくりへとつながるものとなる。
研修では、個別支援計画作成会議やサービス担当
者会議等ロールプレイなどを通じた実感が効果的
52
なぜ「他者との“かかわり”」なのか
富士ゼロクス総合教育研究所 人材開発白書2009要約版より
社会人の能力開発の70%以上は経験によって説明できるといわれている。つまり、教育
や研修が社会人の成長に寄与しうる部分はわずかであり、そのほとんどが職場での業務
経験を通じてもたらされるというのである。
しかしながら、単に業務を経験しさえすれば成長できるわけではない。実際、成長につな
がるような経験もあれば、そうでない経験もある。あるいは、同じ経験をしたとしても、成長
できる人もいればできない人もいる。それでは、業務経験を通じて成長していくためにはど
うすればいいのだろうか。
業務経験を本人の成長に結びつけるための重要な要素の一つとして、我々は「他者との
“かかわり”」に着目した。
哲学者であり教育思想家でもあるデューイ(Dewey, J)は、経験とは自分を取り巻く環境と
の相互作用であるといい、発達心理学者のヴィゴツキー(Vygotsky, L. S.)は、個人の限界
を超えるためには周囲の人々との相互作用が欠かせないと説明している。つまり、業務経
験を通じて成長するためには、「他者」という触媒が欠かせないといえる。社会人は、他者
からアドバイスを受けたり、他者と切磋琢磨したりして、あるいは他者をロールモデルとし
たり、反面教師にしたりし て、さまざまなことを学び取り、自己成長を遂げていくのである。
これは、さまざまな会議の中におけるさまざまな「関係者との“かかわり”」
に置き換えることができる。
53
サービス管理責任者のつながる支援と深める支援を学ぶ
つながる支援
サービス担当者会議
サビ管
相談支援
専門員
(生活訓練)
生活訓練職員
サビ管(GH)
Sさん
市町村
・サービス管理責任者は、相談支援専門員等と連携して、
個別支援の課題を解決するためのチームをつくり、地域
でサポートするためのネットワークを組織する。相談支援
専門員によるサービス担当者会議に参加する。
ピアサポート
叔母さん
精神科病院
相談支援専門員によるサービス利用計画は、トータルプラン
深める支援
・サービス管理責任者は、サービス利用計画をもとに、
事業所内で個別支援会議を開き、個別支援計画(生
活プラン)を作成する。
個別支援会議
サビ管
(GH)
世話人
世話人
Sさん
世話人
叔母さん
相談支援
専門員
サービス管理責任者による個別支援計画、生活プラン
平成27年度 サービス管理責任者研修テキスト分野別講義「アセスメントとサービス提供の基本姿勢」<地域生活(知的・精神)>
54
(5)さまざまな会議の活用(人材育成)
•
サービス管理責任者等の関係者が、熱心に支援に取り組むほど、無
意識に内に偏った・こもった・閉ざされた・囲い込みの支援となる傾向が
あります。そこで、「岡目八目」という囲碁からでた言葉で考え直してみま
すは。「岡目八目」は、他人の囲碁を横から見ていると、対局者よりも冷
静でいられるために、八目置かせるくらい有利というところから転じて、
傍観者(第三者)のほうが当事者よりも物事の是非を、的確に判断でき
るという意味です。
•
ですので、サービス担当者会議の司会進行役は関係当事者ではない
方が効果的で、今後この役割を相談支援専門員が中心に担うことが想
定されます。当事者から見れば、相談支援専門員は自分のための支援
者のひとりであり、サービス管理責任者にとっては大事なパートナーと
なります。
55
(5)さまざまな会議の活用(人材育成)
• 具体的には、(自立支援)協議会・サービス担当者会議・事例検討会等
、さまざまな場面で、横のつながりを持ち、自己の実践を振り返ることや
支援内容の客観的な評価・可視化につながるものと考えられます。事業
所レベルから捉えれば、ベテランのサービス管理責任者だけが参加す
るのではなく、その連携を学ぶ機会として、中堅職員等の育成対象職員
を参加や同席させることで人材育成が促進されます。
56
(5)さまざまな会議の活用(人材育成)
会議等において業務を検証する、具来的なポイント
• 概要の確認(要約・見立て)
• 当事者主体と動機付け
• アセスメントの精度
• ニーズの焦点化(優先度・重要度)
• フォーマル、インフォーマルサービスの確認
• リスクマネジメントからストレングスマネジメント
• 弱みの中にも、強みはある
• 環境因子を考慮している
• チームアプローチが意識されている
• 地域課題の有無
57
都道府県研修削除スライド
3.障害福祉計画と(自立支援)協議会の活用
各都道府県サービス管理責任者研修の受講者には、
・連携する機会がなかった
・連携を必要としなかった
・連携は調整が伴うので大変そうだ
・・・と消極的に思っている方もいるでしょう。
連携のリアリティを高める対応策として、受講者の対象地域
の障害福祉計画、(自立支援)協議会、社会資源マップ等を
事前に調査作成しておくことで、研修効果が高まります。
また、具体的な活動状況の発表が、効果を発揮するかもしれ
ません。
58
3.障害福祉計画と(自立支援)協議会の活用
(1)障害福祉計画について
(2)(自立支援)協議会の活用
実践の見える化、社会化
59
(1)障害福祉計画について
障害福祉計画と基本指針
○ 基本指針(厚生労働大臣)では、障害福祉計画の計画期間を3年としており、これに
即して、都道府県・市町村は3年ごとに障害福祉計画を作成している。
H24
第1期計画期間
18年度~20年度
第2期計画期間
21年度~23年度
H25
H26 H27
第3期計画期間
24年度~26年度
H28
H29
第4期計画期間
27年度~29年度
平成23年度を目標
第1期の実績を踏 つなぎ法による障害者
障害者総合支援法の
として、地域の実情に まえ、第2期障害福 自立支援法の改正等を 施行等を踏まえ、平成29
応じた数値目標及び 祉計画を作成
踏まえ、平成26年度を目 年度を目標として、第4
障害福祉サービスの
標として、第3期障害福 期障害福祉計画を作成
見込量を設定
祉計画を作成
計画
作成
・・・3年ごとに障害福祉計画の作成
計画
作成
都道府県・市町村
基本指針
見直し
・・・3年に1回、基本指針の見直し
基本指針
見直し
厚生労働大臣
60
成果目標と活動指標の関係
(成果目標)
(
基本指針の理念)
自立と共生の社会を実現
障害者が地域で暮らせる社会に
施設入所者の地域生活への移行
○ 地域生活移行者の増加
○ 施設入所者の削減
入院中の精神障害者の地域生活への移行
○ 入院後3ヶ月時点の退院率の上昇
○ 入院後1年時点の退院率の上昇
○ 在院期間1年以上の長期在院者数の減少
(活動指標)
(都道府県・市町村)
○ 生活介護の利用者数、利用日数
○ 自立訓練(機能訓練・生活訓練)の利用者数、利用日数
○ 就労移行支援の利用者数、利用日数
○ 就労継続支援(A型・B型)の利用者数、利用日数
○ 短期入所(福祉型、医療型)の利用者数、利用日数
○ 共同生活援助の利用者数
○ 地域相談支援(地域移行支援、地域定着支援)の利用者数
○ 施設入所支援の利用者数 ※施設入所者の削減
(都道府県・市町村)
○ 自立訓練(生活訓練)の利用者数、利用日数
○ 就労移行支援の利用者数、利用日数
○ 就労継続支援(A型・B型)の利用者数、利用日数
○ 短期入所(福祉型、医療型)の利用者数、利用日数
○ 共同生活援助の利用者数
○ 地域相談支援(地域移行支援、地域定着支援)の利用者数
障害者の地域生活の支援
○ 地域生活支援拠点の整備
福祉施設から一般就労への移行
○ 福祉施設利用者の一般就労への移行者の増加
○ 就労移行支援事業の利用者の増加
○ 就労移行支援事業所の就労移行率の増加
(都道府県・市町村)
○ 就労移行支援の利用者、利用日数
○ 就労移行支援事業等から一般就労への移行者数(就労移
行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型)
(都道府県)
○ 公共職業安定所におけるチーム支援による福祉施設の利
用者の支援件数
○ 委託訓練事業の受講者数
○ 障害者試行雇用事業の開始者数
61
○ 職場適応援助者による支援の対象者数
○ 障害者就業・生活支援センター事業の支援対象者数
(2)(自立支援)協議会の活用
・「協議会」に参加し、地域の課題(社会資源の過不足・質等)
を、関係者と共有する。
・対応に苦慮していることがある場合、事例検討やスーパービ
ジョン(評価・検証)等に参加したり、自ら企画する。
・「協議会」の意味を考え直し、誤解を取り除く(陳情ではなく協
働の場)。
・「協議会」は、実認識のデータから出発して、課題達成のため
のポイントはなにかを、地域(チーム)で考えだそうとするもの。
・「協議会」では、実効策をアイデアとして、全員で受け入れ、そ
れらを原材料として、今までの活動を変更したり、柔軟な対応
に変更すること。
62
個別支援から(自立支援)協議会へ
マクロ
(自立支援)協議会
1:無限
メゾ
基幹センター
1:複数
ミクロ
個別相談
1:1
参考:野中猛 小澤温
63
個別支援から協議会へ
マクロ
(自立支援)協議会
メゾ
事例共有(レビュー)
事例検討
ミクロ
個別支援
(相談支援)
メゾレベルでニーズ
キャッチする
段階イメージ
参考:野中猛 小澤温
64
都道府県研修削除スライド
4.サービス事業者の具体的連携イメージ
各都道府県サービス管理責任者研修の受講者には、
対象地域の地域特性を踏まえながら、具体的な実践
を伝えます。他県の先進地事例を伝えることも効果的
ですが、地元地域の実践を伝えることも効果的です。
どちらにしても、研修受講者の地域性を「できない理
由」にしないで、地域の可能性を信じ、創意工夫するこ
とが重要なことを確認します。
65
4.サービス事業者の具体的連携イメージ
サービス管理責任者は、個別支援会議による多様な視点を取り入れることで、第三
者的な視点や権利擁護視点による評価・検証の機会を得るとともに、利用者ニーズ
に沿った個別支援計画を策定していくことが可能になる。
(1)事例概要 サービス管理責任者による具体的な連携
・事例Ⅰ 意思決定支援を考える
・事例Ⅱ サービス管理責任者の一番大切な仕事はなにか?
・事例Ⅲ 協議会を活用したサービス管理責任者の関係づくり
66
ニーズ表出が難しい人を皆で考え
るシステムや方法
67
ある事業所での取組み
・介護職は、ただ手伝う人ではなく、その人の能力を引き出して、セルフケア
領域を広げることを業務として重視することを目標にする。
・介護職がQCサークル活動で考案したツール。「スマイル指数」により、支援
者の感性をあげる
・コミュニケーションを取りづらい方などを対象者として、満足度を推し量る
・日中活動・食事・排泄・送迎などの支援場面を中心に評価
・1キャハ「キャハ」が単位
・年間を四半期に分けて調査(1回10日間程度)
・対象者(15〜20名程度)の「心地よい」「不快」などを表情や目線など、本人
が示す定義を作成し、スタッフが一人一人の定義を理解して行う。結果は
支援会議へ
・常にベストインタレストを意識した直接支援。支援を工夫し、環境を整え、自
68
己決定できる力を削がない、身につけてもらうための努力を惜しまない。
調査対象者の紹介
効果の確認~Aさん~
Aさんの対策結果
送迎
景色の見やすい位置に乗車すると、動く景色を見ている。
食事
食べたい物を目で追ったり、2種類の食べ物を見て頂くと、片方をじっ
と見つめて選ぶことが出来る。
活動
食べ物(かきあげ丼とソースカツ丼)を選んでいる様子
69
創作物や人の動きを目線で追いかける事が多い。
菊本 圭一氏 報告事例資料を1枚にまとめ
●スマイル指数導入前
支援の全体目標
ニーズ
余暇活動への参加
創作活動や色々な活動に参加して頂き、A様にとっての楽しみを増やして頂けるように支援
していく。
支援目標
サービス内容
提供先
できることや興味 レクリエーションや外出行事等に参加して頂くことで、興味の
全通所
のある活動を増や ある活動を増やしていく。また、外出等で摂食を伴う場合は、
スタッフ
します
誤嚥等に十分注意する。
●スマイル指数導入後
支援の全体目標
ニーズ
各種場面において選択できる可能性が見えてきているため、自己選択できる環境を増やし、
A様の意思表出を読み取りながら、生活できるよう支援していく。
支援目標
選択できる環境
色々な事を自分で選 を増やす事で、
びながら生活したい A様にとっての
と思っているようで 楽しみやできる
ある。
ことを増やして
いきます。
サービス内容
提供先
①選択食・ランチ外出時に、自身の好きな物を選んで頂く。
②通所支援での活動のみではなく、入所支援・日帰り支援にて実施
されている活動を実際に見学・参加して頂き、表情等により興味の
全通所
ある活動かを把握する。
③A様の出来る事を担当スタッフ及び通所支援スタッフで纏める。 スタッフ栄
養士
各種活動参加時には、纏めた内容を基にA様自身が実施出来るよう、
看護師
支援を行なう。(見学のみの参加にはならないよう注意する)
ST
④選択時の表情や目線の動き等を観察すると同時に、A様が選んだ
活動に参加している時の表情や実施内容の把握を行っていく。
⑤ 外出等で摂食を伴う場合は、誤嚥等に十分注意する
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支援方法を常に工夫し、
環境を整え
自己決定できる力を削がない視点
意思の表出
意思の疎通
希望・選択肢・体験
意志の決定
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ゆるい?自己決定
(※立岩・斉藤から引用)
ゆるい?自己決定を保障する仕組み
・何度も選び直せること
・他人との関係性で決定できること
・ある程度のリスクを補完すること
・選択の幅や条件を広げること
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Best Interest
ベスト インタレスト
本人のために最高の利益を生み出す決定
・生活上に起こりうる、すべてのことを決定できないと考えるか
・生活上に起こりうることの、一部は決定できるができない部分
もあると考えるか
上記の考え方により、支援方法は大きく異なっていくはず。
・一組織や一担当者による偏った支援方針を、できるだけ排除
する仕組み作りが求められています。
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意思決定支援ガイドライン(案)の概要
平成26年度障害者総合福祉推進事業
「意思決定支援の在り方並びに成年後見制度の利用促進の在り方
に関する研究事業」
意思決定支援の定義
参考資料
意思決定支援とは、知的障害や精神障害(発達障害を含む)等で意思決定に困難を抱える障害者が、日常生活や社会生活等に関して
自分自身がしたい(と思う)意思が反映された生活を送ることが可能となるように、障害者を支援する者(以下「支援者」と言う。)が行う支
援の行為及び仕組みをいう。
意思決定を構成する要素
1 障害者の態様(好み、望み、意向、障害の特性等)
2 意思決定の内容(領域)
(1)生活の領域(食事、更衣、移動、排泄、整容、入浴、余暇、社会参加等)
(2)人生の領域(住む場所、働く場の選択、結婚、障害福祉サービスの利用等)
(3)生命の領域(健康上の事項、医療措置等)
3 人的・社会的・物理的環境等(関係者が、本人の意思を尊重しようとする態度で接しているか、慣れ親しんだ場所か等)
意思決定支援の基本的原則(イギリスの2005年意思能力法の5大原則を参考)
1 能力を欠くと確定されない限り、人は、能力を有すると推定されなければならない。
2 本人の意思決定を助けるあらゆる実行可能な方法は功を奏さなかったのでなければ、意思決定ができないとは見なされて
はならない。
3 人は、単に賢明でない判断をするという理由のみによって意思決定ができないと見なされてはならない。
4 意思決定能力がないと評価された本人に代わって行為をなし、意思決定するにあたっては、本人のベストインタレスト(最善
の利益)に適するように行わなければならない。
5 そうした行為や意思決定をなすにあたっては、本人の権利や行動の自由を制限する程度がより少なくてすむような選択肢
が他にないか、よく考えなければならない。
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意思決定支援における合理的配慮
参考資料
1 本人の年齢、障害の態様、特性、意向、心情、信念、好みや価値観、過去から現在の生活様式等に配慮する。
2 意思決定支援を行うにあたっては、内容についてよく説明し、結果を含めて情報を伝え、あらゆる可能性を考慮する。
3 本人の日常生活、人生及び生命に関する領域等意思決定支援の内容に配慮する。
4 本人が自ら参加し主体的に関与できる環境をできる限り整える。
5 家族、友人、支援者、法的後見人等の見解に加え、第三者の客観的な判断が可能となる仕組みを構築する。
意思決定支援における留意点
1 意思決定と情報
・決定を行うに当たって必要な情報を、本人が十分理解し、保持し、比較し、実際の決定に活用できるよう提供すること。
・本人が自己の意思決定を表出、表現できるよう支援すること。
・本人が表明した意思をサービス提供者等に伝えること。
・本人の意思だと思われるものを代弁すること。
2 情報提供の留意点
・本人への情報提供については、支援者の態度・方法・技術によって大きく異なることを理解すること。
・できるだけ解りやすい方法、手段にて情報を伝える(手話、伝達装置、絵文字、コミュニケーションカード、スケジュール等含む)
・情報提供に関しては、ステップを踏んで確認しながら行う。
・予測される副次的出来事(リスクも含む)について伝える
・決定の結果についての責任を伝える。
3 意思決定支援における最善の利益の判断
・事案について、複数の決定によるメリットとデメリットを可能な限り挙げて相互に比較検討して結論を導くこと。
・事案の決定について、どちらか一つということでなく二つを融合して一つ高い段階において決定を図っていくこと。
・本人にとって、自由の制限がより少ない方法を選択すること。
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意思決定支援ガイドライン(案)の概要(各論)
参考資料
1 障害福祉サービス事業所等における意思決定支援の考え方
(1)意思決定支援と代弁者
重度の知的障害者等は、支援者が本人にとって最善の利益を考え判断することしかできない場合もある。その場合は、事
実を根拠として本人の意思を丁寧に理解し、代弁する支援者が求められる。これらの者がいない場合には、機関相談支援
センターの相談員等が、本人を担当する相談支援専門員とは別に第三者の代弁者となることができる。
(2)日常の支援場面における意思決定支援
障害福祉サービス等の職員は、利用者に対する直接支援の全てに意思決定支援の要素が含まれている。本人の意思の
確認に基づく支援を行った結果がどうだったかについて記録しておくことが、今後の根拠をもった意思決定支援に役立てるこ
とができるため、記録の仕方や内容について、意思決定支援の観点から検討することが有用である。
(3)大きな選択に係る意思決定支援
「人生の大きな選択」などの場面における意思決定支援は、本人の意思確認を最大限の努力で行うことに加え、本人に
関わる関係者が集まり、現在及び過去の本人の日常生活の場面における表情や感情、行動などの支援機関における記録
等の情報やこれまでの生活歴、人間関係等様々な情報を交換し判断の根拠を明確にしながら、より自由の制限の少ない生
活への移行を原則として、本人の最善の利益の観点から意思決定支援を進める必要がある。
これらの場面において、本人の支援に関係する者や代弁者等の参加により意思決定支援会議を開き、意思決定支援の
内容や結果と判断の根拠を記録しておくことが必要である。
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参考資料
2 意思決定支援の仕組み
(1)意思決定支援の責任者の配置
意思決定支援計画作成に中心的に関わり、意思決定支援のための会議を企画・運営し、事業所内の意思決定支援の仕
組みを作る等の役割を担う。サービス管理責任者との兼務も考えられる。
(2)意思決定支援計画の作成
障害者の意向、・好み、障害の態様や特性、意思決定の内容及び人物・物理的環境、意思決定支援の原則等に十分配慮
して行うことが必要。計画は、PDCAサイクルを繰り返すことによって、それぞれの意思決定の内容を改善していくことになる。
3 意思決定支援のプロセス
(1)アセスメント
本人の状態、決定する内容、その人的・物理的環境等を適切に把握。利用者の決定能力、自己理解、心理的状況、意向や
好み、望み、これまでの生活史、将来の方向性を含め多角的かつ客観的に把握すること。
(2)意思決定支援計画の作成・・・・アセスメントの結果、個別支援計画やサービス等利用計画等の情報から課題及びニーズを
整理した上で、個別の意思決定支援計画を作成すること。
(3)意思決定支援の実施
プログラム等により具体的に意思決定支援を実施。特に支援開始時・終了後の職員間での意思の疎通・情報の共有を十分
図ることが大切。また、実践をフィードバックして知見を集積し、整理することにより意思決定支援の標準化を図ることも重要。
支援の経過・状況・結果等については記録として残すこと。
(4)実施状況の把握(モニタリング)
意思決定支援の実施状況の把握(モニタリング)を適宜行い、必要に応じて意思決定支援計画の変更(修正)を行う。
(5)意思決定支援実施の評価とフォロー
意思決定支援後における評価とフォローについては、意思決定後の本人の状態、状況の変化について把握するとともに、
本人の生活や人生がどのように変わり、本人の満足度を含めた評価を行うことが重要である。
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参考資料
4 意思決定支援会議の開催
意思決定支援責任者は、個々の利用者のための意思決定計画の作成、事業所内における意思決定支援の仕組みの構築、
自立支援協議会等外部機関等の連携の情報の共有のために、意思決定支援会議の企画及び運営を効率的に行う役割がある。
その際、本人及び保護者が意思決定支援会議に参加できるよう説明を行うとともに必要な支援を行う。
5 職員の知識・技術の向上
(1)意思決定支援責任者及び職員等の知識・技術の向上
意思決定支援責任者及び職員の知識・技術の教条は、意思決定支援の向上に直結するものであり、意思決定支援責任
者及び職員の理念的理解、基本的態度の醸成並びに知識・技術の向上への取り組みを促進させることが重要である。
(2)研修受講機会等の提供
意思決定支援責任者及び職員の資質向上を図るため、研修を実施する等の措置を講じなければならない。
6 利用者と保護者等に対する説明責任等
・利用者と保護者に対して、意思決定支援計画、意思決定支援会議の内容についての丁寧な説明を行う。
・事業所においては、利用者及び保護者等からの苦情について、迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓
口を設置する等の必要な措置を講じる必要がある。
・関係機関等に利用者又はその家族等に関する情報を提供する際は、同意を得ておかなければならない。
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7 意思決定支援における連携
付
箋
参考資料
(1)相談支援事業との連携
サービス担当者会議に参画する意思決定支援責任者は、サービス等利用計画(案)や個別支援計画に連動した意思決定
支援計画を念頭に置いて、利用者の最善の利益の観点から意見を述べることが重要。
(2)学校との連携
児童の生活、発達支援の連続性を確保するために、学校との連携を積極的に図る必要がある。児童の意思決定に関して
学校との間で情報を共有しておく必要がある。
(3)医療機関等との連携
医療的なケアに関する意思決定支援の必要が生じることを考慮して、主治医等との連携体制を整えておく必要があるこ
とから、普段から障害特性の理解や障害特性に応じた意思決定支援方法に関して共通理解を図っておくこと。
(4)自立支援協議会との連携
地域における意思決定支援の仕組みを構築していくために(地域自立支援)協議会権利擁護部会等へ積極的に参加する。
(5)成年後見人等との連携
後見人、保佐人、補助人等は、意思決定支援に関するチームの一員としてその役割を果たしていくことが重要。
(6)当事者団体等との連携
本人の意思決定をエンパワメントする観点から、当事者団体のメンバーからの支援を積極的に活用することも重要。
8 意思決定支援における危機管理
意思決定支援に際して生ずるリスクに対して、危機管理(リスクマネジメント)の観点から対応していくことが必要である。
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事例Ⅱ サービス管理責任者の
一番大切な仕事はなにか?
(どんな事業所にも、絶対に守らねばならないことがある)
・権利侵害・権利擁護という視点(事故や権利侵害が発生した場合)
・止めて直すか、運転しながら直すか、何かを捨てるか
・事故が起こった場合には、例外事項、マニュアルの不備だけと考えな
い。原因は絶対にあるものと捉え、個人だけではなく事業所環境にも
広げて検証する。
・問題の処理方針を決めることにより、基本方針を再考する。
・常に相談支援専門員や外部の関係者(第三者委員等)との連携を念
頭に置き、一事業所や一担当者で抱え込まない。
※個別支援計画書に書き込めない対応は、すべて虐待といえる(引用
:佐藤彰一)
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事例Ⅲ ある自立協での取組み
・ある協議会では、サービス提供事業所同士の関係性が非常に弱く、顔
の見える関係がなかった。一方、下記のような地域課題が散見され、
協議会での検討が始まった。
・地域が広域で、サービス事業所へのアクセス格差が非常に顕著であっ
た。
・児童系サービスの不足もあった(特に長期休暇中)
そこで、事業所同士の連携や顔の見える関係性強化のため、下記の
ような具体的な取組みを始めた。
・協議会主催による、事業所見学会及び交流会
・協議会主催による、事業所の垣根を越え、夏の児童イベントを実施。
※会議室で検討することだけが、協議会のあり方ではなく、目標を持ち
それに向かって取り組むプロセスが重要となる。巻き込む力を具体化
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都道府県研修削除スライド
最後に
各都道府県サービス管理責任者研修では、地域の
連携事例を加え、リアリティのある資料提供をしてくだ
さい。
一方、講義だけでは、実践を変えていくには動機付
けが弱いでしょう。演習による個別支援計画策定(ケ
アマネジメント技術)・ロールプレイ・グループワークに
より、連携を疑似体験し、利用者ニーズに対する支援
の偏り=パターナリズムに気付き振り返る、きっかけ
づくりを研修全体で確認してください。
82
ご清聴ありがとう
ございました
83
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