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GPSを用いた位置制御方法とその装置

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GPSを用いた位置制御方法とその装置
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 制御対象の位置指令値と制御対象のGP
S位置信号とを比較し、位置指令値との偏差信号で制御
対象の位置をフィードバック制御している時にGPS位
置信号が大きくジャンプする異常値を検知したら、その
ジャンプした信号と同じ値のジャンプ信号をフィードバ
ック制御のループ外で前記GPS位置信号と比較する前
の位置指令値に足し合わせて見かけ上制御偏差が変化し
ないようにし、その後、前記フィードバック制御のルー
プ外で位置指令値に足し合わせたジャンプ信号を減衰さ 10
せて制御対象の操作量が急激に変動しないようにするG
PSを用いた位置制御方法。
【請求項2】 位置指令値に足し合わせた信号を減衰さ
せる減衰パラメータを任意に設定して減衰速度を好まし
い速度に設定するようにしたことを特徴とする請求項1
2
記載のGPSを用いた位置制御方法。
【請求項3】 制御対象の位置指令値をコントローラに
入力し、該制御対象の位置をGPS位置信号で検知し、
該GPS位置信号を前記位置指令値と比較手段で比較し
て該位置指令値との偏差信号を前記コントローラに入力
することによりフィードバック制御するGPS位置制御
システムにおいて、
前記位置指令値をコントローラに入力する経路の前記G
PS位置信号を位置指令値と比較する比較手段の上流側
に、前記GPS位置信号のジャンプを検知する信号ジャ
ンプ検知部と、該ジャンプした位置信号と同じジャンプ
信号を前記フィードバック制御のループ外で前記位置指
令値に足し合わせて見かけ上制御偏差が変化しないよう
にした後、足し合わせたジャンプ信号を減衰させる信号
減衰部とを有する指令値生成部を設けて前記制御対象の
(2)
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操作量が急激に変動しないようにしたことを特徴とする
GPS位置制御システムにおける制御装置。
【請求項4】 信号減衰部に、位置指令値に足し合わせ
た信号を減衰させる減衰パラメータを任意に設定できる
機能を具備させたことを特徴とする請求項3記載のGP
S位置制御システムにおける制御装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、GPS位置信号
を利用して誘導制御や位置制御を行う船舶や飛行機、車
両等における位置制御方法とその装置に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】従来か
ら、GPS(global positioning system)、DGPS
(この明細書では総称して「GPS」という)によって
船舶や飛行機、車両等の位置制御が行われているが、近
年、GPSの精度向上にともなってGPS位置信号を利
用した誘導制御や位置制御が行われるケースが増加して
いる。
【0003】このGPSは、複数の人工衛星を使って三
角測量の原理で高精度な位置を特定するものであるが、
使用している衛星を他の衛星に切換える時に、位置信号
が数mから数十mジャンプする、GPS位置信号の跳躍
(以下「ジャンプ」ともいう)という現象がある。
【0004】このようなGPS位置信号のジャンプを生
じると、GPS信号を利用して位置制御を行うシステム
においては急激な位置偏差を生じたと認識し、その位置
へ制御対象を移動させるために操作量を急激に変動させ
たりして、制御系に悪影響をおよぼしてしまう。
【0005】そこで、この現象による誤差を除去しよう
とする従来技術として、特開平8−68849号報記載
の発明がある。この発明は船舶の航法装置に関するもの
であり、最適推定フィルタ部で最も確からしい船舶の状
態値を推定演算し、船位跳躍処理部でGPSにおける測
位データの跳躍が判定され、位置信号からかかる跳躍を
除去することにより、GPSに起因する誤差を除去して
正確に自船の位置を測位しようとしている。その詳細
は、まず、その変化率を計測し、その変化率に判定値
(変化率の上限)を与えてGPSデータ跳躍現象の発生
を判定する。次に、判定値を超えた場合には、最適推定
フィルタの修正量をゼロにしてGPSデータの跳躍によ
る影響を除去している。つまり、この発明は、GPSデ
ータ跳躍により、GPS測位に関する緯度・経度の変化
率が増大したとき、最適推定フィルタへの修正量を調整
することで問題を回避する最適推定フィルタに関する特
許である。
【0006】しかしながら、このように信号ジャンプ分
を除去してしまうと、真値からずれた場所を推定位置と
してしまう恐れがある。しかも、常にジャンプ分を除去
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すると、制御対象が真値から大きくずれてしまうおそれ
もある。
【0007】
【課題を解決するための手段】そこで、前記課題を解決
するために、本願発明に係る位置制御方法は、制御対象
の位置指令値と制御対象のGPS位置信号とを比較し、
位置指令値との偏差信号で制御対象の位置をフィードバ
ック制御している時にGPS位置信号が大きくジャンプ
する異常値を検知したら、そのジャンプした信号と同じ
値のジャンプ信号をフィードバック制御のループ外で前
記GPS位置信号と比較する前の位置指令値に足し合わ
せて見かけ上制御偏差が変化しないようにし、その後、
前記フィードバック制御のループ外で位置指令値に足し
合わせたジャンプ信号を減衰させて制御対象の操作量が
急激に変動しないようにしている。このGPS位置信号
の異常値は、今回値と前回値の差でジャンプ(跳躍)現
象の発生を判定できる。そして、GPS位置信号には手
を加えずに位置指令値を補正して制御偏差を見かけ上変
化させないようにすることにより、船体位置の指令値が
大きく変動するのを避けることができ、その後、指令値
の補正値を少しずつ減衰させてGPS位置信号となるよ
うに修正することにより、GPSの測位精度を保持して
常にGPS位置信号による真値に近い場所に位置制御す
ることができる。
【0008】 前記位置指令値に足し合わせた信号を減
衰させる減衰パラメータを任意に設定して減衰速度を好
ましい速度に設定するようにすれば、制御対象やジャン
プ量等に応じて減衰速度を好ましい速度(時間)に設定
することができる。
【0009】 また、本願発明に係る位置制御装置は、
制御対象の位置指令値をコントローラに入力し、該制御
対象の位置をGPS位置信号で検知し、該GPS位置信
号を前記位置指令値と比較手段で比較して該位置指令値
との偏差信号を前記コントローラに入力することにより
フィードバック制御するGPS位置制御システムにおい
て、前記位置指令値をコントローラに入力する経路の前
記GPS位置信号を位置指令値と比較する比較手段の上
流側に、前記GPS位置信号のジャンプを検知する信号
ジャンプ検知部と、該ジャンプした位置信号と同じジャ
ンプ信号を前記フィードバック制御のループ外で前記位
置指令値に足し合わせて見かけ上制御偏差が変化しない
ようにした後、足し合わせたジャンプ信号を減衰させる
信号減衰部とを有する指令値生成部を設けて前記制御対
象の操作量が急激に変動しないようにしている。この制
御装置によれば、GPS位置信号の異常値を検知したと
しても、通常のフィードバック制御のループの外に設け
た指令値生成部で位置指令値を補正して制御偏差を見か
け上変化しないようにするので、フィードバック制御ル
ープに影響を及ぼすことなく、制御対象の操作量が急激
に変動するのを防止することができる。これにより、G
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PSの測位精度を保持して常にGPS位置信号による真
値に近い場所に位置制御することができる。
【0010】さらに、信号減衰部に、位置指令値に足し
合わせた信号を減衰させる減衰パラメータを任意に設定
できる機能を具備させれば、制御対象やジャンプ量等に
応じて減衰速度を好ましい速度(時間)に設定できる装
置を構成することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本願発明の一実施形態を図
面に基づいて説明する。図1は本願発明の一実施形態を
示す制御装置のブロック図である。制御対象は位置制御
を行う対象物であり、船舶や飛行機、車両等であるが、
この実施形態では、船舶を例に説明する。
【0012】図示するように、位置指令値1がコントロ
ーラ2に入力され、このコントローラ2でアクチュエー
タ3を駆動することにより、制御対象である船体4が位
置制御される。この制御している船体4の位置は、GP
S5を用いて検知した位置信号6で検知され、この位置
信号6が比較手段7に入力され、位置指令値1との偏差
信号8(ずれ量)が前記コントローラ2に入力されて、
フィードバック制御されている。
【0013】そして、前記位置指令値1をコントローラ
2へ入力する経路9と、位置信号6を比較手段7へフィ
ードバックする経路10との間に、位置信号6がジャン
プする異常値(以下「ジャンプ信号」という)を検知し
たら、その時のジャンプ信号によって位置指令値1が急
激に変化しないようにする指令値生成部11が設けられ
ている。
【0014】この指令値生成部11には、GPS5で検
知した位置信号6がジャンプしたか否かを判断する信号
ジャンプ検知ロジック12と、この信号ジャンプ検知ロ
ジック12で検知したジャンプ信号を受けて前記位置指
令値1に信号を出力する信号減衰ロジック13とが設け
られている。
【0015】前記信号ジャンプ検知ロジック12は、G
PS5の位置信号6を常時監視しており、前回の位置信
号6との差からジャンプ信号Δkを検知した場合、その
ジャンプ信号Δkに同期させて、位置指令値1を同じ値
分ジャンプさせるように信号減衰ロジック13を介して
信号Yk(例えば、数値信号)が出力される。これによ
り、位置偏差が急激に変化しないようにしている。つま
り、前記GPS5の位置信号6に大きな変化がない通常
の場合には、この信号ジャンプ検知ロジック12から位
置指令値1側に出力される信号はゼロであり、異常値を
検知した場合にのみ、そのジャンプ信号Δkと同じ値の
信号Ykが信号減衰ロジック13を介して出力される。
【0016】前記信号減衰ロジック13は、前記信号ジ
ャンプ検知ロジック12から位置指令値1へ付加したジ
ャンプ信号Δkと同じ他の信号Ykを、ジャンプ前の値
まで長い時間をかけて少しずつ滑らかに減衰させるもの
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である。つまり、前記信号ジャンプ検知ロジック12で
異常値を検知したら、そのジャンプ信号Δk分の値を位
置指令値1に足し合わせて位置信号に大きな変化がなか
ったようにした後、その位置指令値1を、ジャンプ信号
Δk分を足し合わせる前の位置指令値1にまで滑らかに
戻していくように制御している。
【0017】図2は位置信号ジャンプ時の時系列推移の
一例を示すグラフである。このグラフでは、GPS位置
信号と位置指令値と位置偏差の時系列推移を横軸に示し
ている。図1に示す構成には、その符号を付して説明す
る。
【0018】GPS5で検知した位置信号6をフィード
バック経路10から比較手段7に入力している制御状態
で、c点で、位置信号が予め設定された判定値以上とな
る異常値を検知したら、その異常値をジャンプ信号Δk
と判断し、そのジャンプ信号Δkと同じ値の信号Δk分
が位置指令値へ足し合わされる。そのため、このc点で
ジャンプ信号が発生したとしても、コントローラ2に入
力される位置偏差(偏差信号8)に大きな変化を生じる
ことはない。この時のGPS位置信号のジャンプは信号
ジャンプ検知ロジック12で検知され、検知されたジャ
ンプ信号Δkと同じ値の信号Ykが位置指令値1へ出力
されると共に、信号減衰ロジック13に記憶される。
【0019】そして、位置指令値1に足し合わされたジ
ャンプ信号Δk分が、信号減衰ロジック13によって時
間と共に緩やかに減衰させられる。つまり、信号ジャン
プ検知ロジック12がジャンプ信号Δkを検知した場
合、信号減衰ロジック13は、まず入力信号をそのまま
出力し、時間と共にそれを減衰させるような関数または
アルゴリズムとなっている。
【0020】図3は、このような制御装置の指令値生成
部における処理の流れを示すフローチャートである。こ
のフローチャートに基づいて指令値生成部11における
処理の流れを詳細に説明する。
【0021】kはサンプル数であり、1サイクル毎に1
を加算している状態で(e) 、信号ジャンプ検知ロジック
12でジャンプ発生の有無を検知し(f) 、ジャンプ発生
として「YES」を検知した場合、位置指令値1へ出力
する信号Ykをそのジャンプ信号Δkと同じ値とし(g)
、その信号Ykを出力する(h) 。
【0022】そして、次のサイクルでジャンプ発生の有
無を検知し(f) 、ジャンプ発生が「NO」の場合、所定
の減衰パラメータpを前回出力信号Yk-1 に掛けて信号
Ykを算出し(i) 、その信号Ykを出力して(h) 、ジャ
ンプ発生時にジャンプ信号Δkと同じ値で出力した信号
Ykを減衰させていく。
【0023】その後は、信号Ykを減衰させるように、
前回の出力信号Yk-1 に減衰パラメータpを掛けた値の
Ykが算出されて(i) 出力される(h) 。
【0024】このようなフローチャートで構成された信
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号減衰ロジック13により、位置指令値1に足し合わさ
* ジャンプ信号Δkを適宜設定すれば、それぞれの制御状
れたジャンプ信号Δk分が時間と共に緩やかに減衰する
態において、好ましい制御を行うことができる。
ように戻される。
【0030】また、上述した実施形態は一実施形態であ
【0025】なお、減衰信号Ykは、前回のサンプル時
り、本願発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は
刻の信号Yk-1 と前々回のサンプル時刻の信号Yk-2 と
可能であり、本願発明は上述した実施形態に限定される
を用いて、「Yk=p・Yk-1 +q・Yk-2 (0<p
ものではない。
<1,0<q<1) p,q:減衰パラメータ」のよう
【0031】
に定めてもよい。この減衰信号Ykは、制御対象や制御
【発明の効果】本願発明は、以上説明したような形態で
量に応じて決定すればよい。
実施され、以下に記載するような効果を奏する。
【0026】図4は減衰パラメータを決定する信号減衰 10 【0032】位置指令値の制御信号に大きな変動を生じ
ロジックの出力例を示すグラフである。このグラフは、
ることなく、常にGPS位置信号による真値に近い場所
ジャンプ信号Δを1に正規化したときの信号減衰ロジッ
で制御対象を位置制御することが可能となる。
クの出力例を示すものである。横軸はT時間間隔でサン
【図面の簡単な説明】
プリングした時のサンプル数kを表し、縦軸は出力信号
【図1】本願発明の一実施形態を示す制御装置のブロッ
Ykを表している。このグラフに示すパラメータpは、
ク図である。
出力信号Ykの減衰の早さを表すパラメータであり、0
【図2】位置信号の時系列推移例を示すグラフである。
<p<1の範囲で設定され、値が小さい程、減衰が速く
【図3】図1に示す制御装置の指令値生成部における処
なっている。この信号減衰ロジックによって出力される
理の流れを示すフローチャートであ
信号Ykは位置指令値1に足し合わされるので、位置指
【図4】減衰パラメータを決定する信号減衰ロジックの
令値1の変化に対する制御系の応答特性を考慮してパラ 20 出力例を示すグラフである。
メータpが調整される。
【符号の説明】
【0027】以上説明したように、この位置制御装置に
1…位置指令値
よれば、GPS位置信号6の今回値と前回値との差でG
2…コントローラ
PSデータのジャンプ現象の発生を判定し、船体位置の
3…アクチュエータ
位置指令値を変更するだけであり、フィードバックルー
4…船体
プの特性が崩れず、また制御性能が変わらない点で優れ
5…GPS
ており、位置信号6がジャンプしても船体4を制御する
6…位置信号
アクチュエータ3が船体4の位置を移動させるために急
7…比較手段
激な操作を行ったりしない。
8…偏差信号
【0028】しかも、GPSデータには手を加えずに位 30 9…経路
置補正値を補正し、位置偏差を見かけ上変化させないよ
10…経路
うにしているので、GPSの測位精度を保持し、常に真
11…指令値生成部
値に近い場所で制御することができる。
12…信号ジャンプ検知ロジック
【0029】なお、上述した実施形態では船舶を例に説
13…信号減衰ロジック
明したが、飛行機や地上ビークル等の車両の場合でも、*
【図1】
(5)
特許3502031
【図2】
【図3】
【図4】
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フロントページの続き
(72)発明者
(72)発明者
(72)発明者
(72)発明者
河野 行伸
兵庫県明石市川崎町1番1号 川崎重工
業株式会社 明石工場内
中島 健一
兵庫県明石市川崎町1番1号 川崎重工
業株式会社 明石工場内
斎藤 泰夫
兵庫県神戸市中央区東川崎町3丁目1番
1号 川崎重工業株式会社 神戸工場内
池田 浩
兵庫県神戸市中央区東川崎町3丁目1番
1号 川崎重工業株式会社 神戸工場内
(56)参考文献
特開 平9−44244(JP,A)
特開 平5−288824(JP,A)
特開 平8−68849(JP,A)
特開 平9−5417(JP,A)
特開2000−131088(JP,A)
特開 平8−43516(JP,A)
7
(58)調査した分野(Int.Cl. ,DB名)
G01S 5/00 - 5/14
G01C 21/00
G05D 1/00 - 1/12
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