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香港発・とくしまブランド海外協力店の 活用で本県産品のグローバル展開へ

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香港発・とくしまブランド海外協力店の 活用で本県産品のグローバル展開へ
上海駐在員だより
香港発・とくしまブランド海外協力店の
活用で本県産品のグローバル展開へ
香港の優位性
客である。一人あたりの GDP で香
ムという状態が訪れている。香港の
港が 31,500 米ドルに対し、中国は
外食産業の 2010 年の総売上高は約
中 国 の 特 別 行 政 区・ 香 港 は、20
4,300 米ドルとまだ7倍もの差があ
9000 億円と言われており、飲食店
世紀、イギリスの支配下の時代から
り、中国人にとって香港はまさにあ
数は 1 万 1000 店、うち日本食レス
中国大陸と諸外国の間の中継貿易港
こがれの地。香港で、中国人観光客
トランは約 700 店舗ある。日本食レ
として発展してきた。一方で中国
は「食」に「ショッピング」に「娯楽」
ストランだけの市場規模でいうと約
が 1980 年を境に、改革開放政策を
に消費し、そこで得た様々なトレン
600 億円。食材費規模では 150 億円
掲げて資本主義経済を導入し、2001
ドや情報を本土に持ち帰る。そうい
とされている(以上は JETRO 香港
年 に は WTO に 加 盟 す る な ど、 世
う意味から、香港で「火がつく」
「人
調べ)同時に約8割の日本食店舗が
界に開かれる国へと変貌していくな
気が出る」ということは、その後の
一二年でめまぐるしく変わるという
か、国内の上海、広州、深圳などが
中国市場への広がりにおいても大き
激しい競争状態にある。
運輸インフラを整備し情報・産業ハ
な意味を持つ。
ブとしての機能を充実させて、中国
また、香港は貿易面でも依然、魅
国内の新しい「窓口」として飛躍
力的な都市で、関税は基本的に無
的に発展してきた。そして相対的に
税、さらに中国本土なら規制のあ
1997 年に英国領から中国に返還さ
る農林畜水産物の輸出も、香港へ
れた香港のプレゼンス(存在価値)
ならば問題なく輸出ができる。ち
の低下が指摘されていた。
なみに日本からの農林畜水産物等
しかしながら、現在にいたるまで
の食料品輸出は、国・地域別では
香港は中国本土にはない優位性を
香港が第1位に位置し、約 25%の
維持している。特に経済発展に伴い
シェアを誇っている。日本にとっ
消費者として躍進してきた中国人そ
て香港は非常に重要な都市である。
のものを観光・サービス産業で大き
く取り込んでいる。700 万人しか人
口のいない香港には、世界から毎
年 3000 万人の観光客が訪れるが、
そのうち約 1800 万人が中国人観光
香港の日本食事情
香港人の日本好きということも相
まって現在、香港では日本食ブー
人気レストランをとく
しまブランド海外協力
店第一号として登録
そんな香港のなかでも有数の商業
地区である尖沙咀(チムシャーツイ)
地域は、昼夜を問わず地元民や観光
客で賑わい、多様な文化が混じり合
った街で、日本食店舗も多い。そし
てこの地域の一角に本県三好市ゆか
りのオーナー清水淳司氏の経営する
創作料理店「ファームキッチンベジ」
がある。
この店は香港のランチレストラ
ン・ベスト 10 にも選ばれた超人気
店で、地元では女性層を中心に「一
度は行っておきたい店」として話題
になっている。先日、徳島県はこの
店を「とくしまブランド海外協力店」
の第一号として登録した。
近代的外観のビル内に喧噪から遮
断されたような静かな店の入り口脇
には、日本の新鮮野菜の直売スペー
スが設けられていて、そこで直接野
菜を買うこともできる。店内の席数
は70席で、屋外にウッドデッキの
スペースもある。日本からの直送野
菜を食材に織り交ぜながら、昼はラ
ンチ(800 円程度)
、夜は食べ飲み
入口側から見た店内 奥は野外デッキ
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企 業 情 報 と く し ま No.346
放題(3000 円程度)で料理を提供
(公財)とくしま産業振興機構上海事務所(徳島県上海事務所) 所長 山川 誠
しており、常に満席状態が続いてい
い」と感じることになる。
る。清水氏は「東日本大震災後はお
結局、清水氏の「新鮮でおいし
客さんがゼロに近い日が続いた。よ
い日本の野菜を落ち着いた雰囲気
うやく持ち直し、今では年末の予約
の店内でじっくり味わってもらい
も入っている状態」と言う。
たい」との思いが店のトータルコ
ンセプトになっていて、そのこと
が従業員や料理を通じて店内に浸
人気の秘密
透している。
このお店の人気の秘密は次の点
本県産品のグローバル
展開へ
が考えられる。
一つ目は、店内の雰囲気。
まずは清潔感。店内の天井、壁、
床、テーブル、それから従業員の衣
現在、この店頭や店内メニューで
服、メニュー表と、どこを見ても
徳島ブランドの「なると金時」や「阿
清潔。また、高い天井に埋められた
波尾鶏」
「春にんじん」などが提供
小さな電球と木を基調とした椅子
されている。清水氏は「徳島の物を
とテーブルがエコでやさしい雰囲
気を醸しだし、電球の光はテーブル
の食材にしっかりと照明をあてる
また、客層のよさ。外の通りに
は店のシンプルな看板が一枚ある
だけなので、店の所在は少々わか
りにくい。その上、通りからエス
カレーターで一階分昇った後、踊
り場でエレベーターに乗り換えて、
さらに一階昇るというプロセスを
踏むため、この店に本気で来る目
的でないと店にはたどり着けない。
このことが、逆に店の「雰囲気を壊
さない客層を集める」という思いに
もつながっているような気がする。
二つ目は、飽きさせないメニュー
協力店の登録証を手にした清水オーナー
客レベルとコミュニケーション力
が従業員全員に浸透している。笑
顔はもちろん、従業員は付かず離
れずで接触してくる。微妙に食べ
方に説明を要する品がメニューに
ちりばめられ、従業員はさりげな
く説明にやってくる。
四つ目は、お得感。一つ一つの品
が一手間一工夫されている上、上品
できれいな盛りつけで高級感を演
出し、顧客は「意外と安い」と思っ
てしまう。もちろん、新鮮な日本
食材を食べられ、さらに夜は食べ
放題なので、十分それだけでも「安
提供してくれれば、どんどんレスト
ランで試していきたい」と語ってお
り、既に新聞報道等を見た県内の生
産者や企業から、農畜産品や調味料、
加工品の試用、さらには店内の雰囲
気に合うインテリアなどを、店内に
置いてもらえないかなど、問い合わ
せを受けている。清水氏は香港市内
で卸業も営んでおり、そごうなど地
元百貨店への販売チャネルも持って
いるので、今後、この「とくしまブ
ランド海外協力店」の第一号店と強
く連携しながら、本県産品の販路開
拓のグローバル展開を支援していけ
ればと考えている。
づくり。野菜のせいろ蒸し、五穀
米のランチ、枝豆のクリームコロ
ッケ、アボガドマグロ丼、肉・魚
の日替わりたたき料理、サラダバ
ーなどの人気メニューの他、メニ
ューは頻繁にリニューアルされる。
顧客にオーダーされる品のデータ
を集計し、生き残っていく品と消
えていく品が分かれていく。さら
に若いシェフ同士に競争をさせた
上で、新しいメニューが加わって
いく。顧客は行くたびに、新規メ
ニューに目を惹きつけられ思わず
新しい一品を頼んでしまう。
三つ目は、従業員の質。高い接
入口脇の日本野菜直売スペース
企 業 情 報 と く し ま No.346
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