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技術開発小委員会資料の説明(PDF形式:3505KB)

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技術開発小委員会資料の説明(PDF形式:3505KB)
金属素材競争力強化検討会
技術開発小委員会資料
平成27年 6月 3日
経済産業省製造産業局
鉄鋼課・非鉄金属課
1
1.技術開発の考え方
(1)本小委員会について
(2)現行の技術開発施策
(3)出口を見据えた技術開発戦略
(4)素材横断的な共通基盤の整備
2.素材の垣根を越えた基盤(協調領域)
(1)材料設計技術
(2)製造技術
(3)分析・評価技術
(4)人材育成
(5)その他の基盤領域
2
1.技術開発の考え方
(1)本小委員会について
(2)現行の技術開発施策
(3)出口を見据えた技術開発戦略
(4)素材横断的な共通基盤の整備
2.素材の垣根を越えた基盤(協調領域)
(1)材料設計技術
(2)製造技術
(3)分析・評価技術
(4)人材育成
(5)その他の基盤領域
3
本検討会での議論を踏まえた「金属素材競争力強化プラン」の策定
金属素材競争力強化検討会
 鉄鋼・非鉄産業を併せた金属素材産業が将来に亘り国際競争力を維持・強化していくための方策を「金属素
材競争力強化プラン」として策定するための検討会。
 特に「技術開発戦略」、「デジタルデータ(国内製造基盤強化戦略の内訳)」、「資源有効活用(グローバル戦
略の内訳)」の3テーマについて、金属素材産業としての協業・連携を含む今後の取組のあり方を議論。
検討会体制
金属素材競争力強化検討会
(5/21, 6/11)
技術開発小委員会(6/3)
・素材開発、製造プロセス技術の高度化、エネルギー多消
費産業構造の転換のための省資源・省エネ技術開発を
加速すべく、基盤となる協調領域の整備・深化を検討。
デジタルデータ小委員会(6/2)
・デジタル化が及ぼす変革に適切に対応し競争力強化が
図られるよう、企業間や官民での対応の方向性を整理
し、施策推進のための枠組を検討。
資源有効活用小委員会(5/26)
・低品位原料の利用拡大への技術開発や鉄・非鉄スク
ラックのリサイクル促進の方策について検討。
検討会テーマ
①技術開発戦略
・対象領域の特定
・技術開発プロジェクトの立案
②国内製造基盤強化戦略
・デジタルデータの活用
・産業事故の防止
・事業再編等
・省エネ・地球環境問題への対応
・サプライチェーン強靱化
③グローバル戦略
・経済連携、通商摩擦への対応
・技術流出への対応
・資源の有効活用
等
金
属
素
材
競
争
力
強
化
プ
ラ
ン
ユ
ー
ザ
ー
企
業
の
意
見
も
踏
ま
え
つ
つ
策
定
。
参加企業
・高炉
・特殊鋼電炉
・普通鋼電炉
・非鉄金属
4
現行の金属素材に関する技術開発政策
 成長分野において潜在需要の高い金属素材を見極め、性能面・価格面で徹底的にこだわった
技術開発を行うとともに、レアメタル・レアアース等の原料供給リスクの低減に取り組んでいる。
金属素材産業の競争力強化
成
長
分
野
の
下
支
え
FY25~
革新的新構造材料等技術開発(FY26 48億円)
輸送機器の軽量化を軸としたチタン合金、マグネシウム合金等の高性能材料、異種材料の接合技術等の開発
成長分野における
需要拡大
レアメタル・
レアアース対策
未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発(FY26 20.6億円)
熱損失を低減し有効利用するための断熱技術、蓄熱技術、熱回収技術、熱マネジメント技術の開発
FY24~
次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発(FY26 30億円)
レアアースフリーでありながら従来より強力な磁性体の開発、高効率な次世代自動車向けモーターの実現
FY19~
希少金属代替材料開発プロジェクト(FY26 5.2億円)
供給リスクの高い鉱種について、代替材料開発・リサイクルに資する
基盤技術の開発、実用化の支援
リ
ス
ク
の
低
減
レアメタル・レアアース等の代替材料・高純度化技術
開発(FY24補正 3億円)
レアメタル・レアアースの代替材料技術開発や低品位
鉱石の高純度化技術開発の支援。
レアアース供給
リスクの高まり
時代に即した原料供給リスクの低減に取り組む
レアアース・レアメタル使用量削減・利用部品代替支援
事業(FY23補正 85億円)
主にジスプロシウムについて、短期的に使用量低減・リ
サイクルを実現する技術開発の支援
レアアース等利用産業等設備導入事業
(FY22補正 420億円)
使用量低減・リサイクルに資する国内設備投資の支援
2012(FY24)
2020(FY32)
5
社会的要請とのマッチングによる重点的新素材開発
 各産業分野の産業戦略に基づき、その社会的要請(ニーズ)を洗い出した「出口指向マップ(Blue map) 」と、
新素材(シーズ)を一覧で示した「素材指向マップ(Red map)」をマッチングし、今後の新素材開発の重点分
野を絞り込んでいくことが重要。
社会的要請(出口・製品)から要求技術とそれを満たす新素
材候補を抽出
出口指向マップ(Blue map)
社会要請
新エネルギー
省エネルギー
環境負荷低減
環境保全
環境浄化
・・・
階層化
出口
(製品・主部品)
要求・律速技術
燃料電池
太陽電池
熱電変換
パワー半導体
・・・
階層化
高効率
軽量
コンパクト
高強度
耐久性
断熱性
防音性
・・・
ジルコニア系セラミックス
・・・
階層化
素材候補
ステンレス鋼
アモルファス合金
フッ素系高分子材
素材指向マップ(Red map)
新素材
炭素繊維
素材候補として新素材を適用した場合の効果を評価
セルロースナノファイバー
水駆動プラスチック
アクアマテリアル
超ハイテン鋼 ・・・
階層化
新素材
(大分類)
発現機能
構造材料
機能性材料(化学的機能)
機能性材料(熱的機能)
機能性材料(生体機能)
・・・
階層化
高強度
耐食性
発光性
軟磁性
導電性
耐熱性
生体適合性
・・・
市場規模※
・・・
階層化
技術課題
用途・出口
技術動向
関係者
学術競争力※
産業競争力※
6
各項目の技術開発フェーズ
【◎:実用化,○:開発,△:基礎研究,×:未着手,-:不要】
 Blue map, Red mapを基に、出口(市場)を見据えた上で金属素材の技術開発フェーズを整理。個別領域の
技術課題の抽出へ。
 市場を問わず垣根を越えた協調領域としての技術開発を整理。
 技術開発は知財戦略/標準化戦略も含めた一体的な産業政策としての展開へ。
素材開発
市場分野
(例1)
マテリアルズ・イン
フォマティクス
(例2)
異種材
接合
(例3)
分析・
評価
鉄鋼
アルミ
マグネ
チタン
銅
シリ
コン
車体
◎
○
○
×
-
-
-
-
◎
-
△
△
×
モーター
◎
-
-
-
◎
-
◎
-
-
-
△
-
×
部品
◎
◎
◎
×
◎
-
-
◎
◎
◎
△
△
×
鉄道
構体
◎
◎
○
-
-
-
-
-
-
-
△
△
×
航空
機
構体
-
◎
△
○
-
-
-
-
◎
-
△
△
△
エンジン
◎
-
-
○
-
-
-
△
△
-
△
△
△
タービン
◎
-
-
◎
-
-
-
○
△
-
×
×
×
モーター
◎
-
-
-
◎
-
◎
-
-
-
×
×
×
燃料電池
◎
△
△
◎
◎
-
◎
○
-
-
×
×
×
触媒
◎
-
-
-
-
-
◎
◎
-
-
×
×
△
ビル
◎
○
-
○
-
-
-
-
-
-
×
×
×
橋梁
◎
○
-
-
-
-
-
-
◎
-
×
×
×
住宅用資材
◎
◎
-
◎
◎
-
-
-
-
◎
×
×
×
海洋資源開発
◎
-
-
-
-
-
◎
-
-
-
×
×
×
情報通信機器
◎
◎
◎
-
-
◎
-
◎
◎
◎
×
×
×
医療分野
◎
-
○
◎
-
-
-
○
◎
◎
×
×
×
自動
車
発電
分野
社会
インフラ
希少
元素
ファイン
セラミックス
FRP
樹
脂
7
ユーザーニーズの高度化と多様化(ユーザー業界からの声①)
【自動車メーカーからの声】
(1)素材間の協調への期待
・鉄だけでもアルミだけでもダメで、組合せによる相乗効果が重要。鉄・非鉄の素材メーカーがそれぞれ協調して研究開発を行う
ことができれば、もっと良いものを作ることができる。垣根を越えた連携に期待(マルチマテリアル・異種材接合等)。各素材(Fe,
Al, Mg, Ti)の良い点を最適配置することは考えられないか。
・企業間の連携によって開発スピードを加速していただきたい。大学との共同研究も基盤強化という点では重要であるが、企業
間連携によってこれまでにない相乗効果や開発のスピードアップを期待したい。
(2)素材加工技術としてのAM(Additive Manufacturing)
・今後のAdditive Manufacturingの展開に着目しており、金属素材も板材だけではなく、粉としての提供に期待している。傾斜機
能等による高付加価値化が図れないか。樹脂に金属微粒子を混ぜると剛性が増す報告もあるので、化学メーカーと金属材料
メーカーが共同で素材を開発するようにならないか。金属関係者と化学関係者の協働は海外では活発に行われている。
・自動車の場合、短納期・大量生産可能な素材でないと適用不可と思われているかもしれないが、適材適所での使い方を考え
ている。AMはスループットが遅いと言われるが、それを上回る魅力的な機能、例えば制震性能などが付加されるのであれば、
費用対効果を考えた上で、装置を多く並べて量産することも考え得る。
(3)LCA(Life Cycle Assessment)の重要性
・LCAの概念が非常に重要。製造段階のLCAは金属素材を作る時のLCAも考える必要があり、自動車メーカーだけでは評価が
困難。素材メーカーが材料を提供する際には、製品の省エネに寄与できるかという視点も必要である。
・欧州ではホットスタンプだが、加熱工程が入らないハイテンの方がLCAで考えると有利なのは明らか。日本のメーカーはホット
スタンプ並の強度をもったハイテンも開発してくれるはず。日本の鉄鋼メーカーの技術力は非常に優れている。
(4)マテリアルズ・インフォマティクス
・マテリアルズ・インフォマティクスは自動車メーカーが思いもつかないものを生み出すことを期待。これまでの暗黙知を広げるよ
うなヒントが生まれればよい。新機能の提案などを期待している。
【鉄道車両メーカーからの声】
・高速車両は軽量化、在来線車両は低コスト化の方向性であり、素材メーカーにはその方向性に沿った研究開発を期待。
・アルミ車両構体の場合、幅広・薄肉でかつ短納期の製品提供を期待。日本には幅550mm程度以上の押出が無い。外国には
700mm以上の幅の中空形材を押し出せる設備もある。コスト低減のために700mm以上を押し出せる装置が国内にあると良い。
・異種材接合の技術が確立することは、設計の自由度も上がるため重要。
・き裂進展や疲労強度、溶接部のデータ収集は、車両メーカーだけでは困難。
8
ユーザーニーズの高度化と多様化(ユーザー業界からの声②)
【発電プラントメーカーからの声】
・大型部材(Ni基耐熱合金等)については、ヨーロッパの素材メーカーは試行錯誤しながら作製してくるが、国内メーカーには、
製造を受けてもらえないことがある。これだと技術的ノウハウの蓄積が海外に流れてしまい、もったいない。
・高温高圧タービンや水素関連機器材料に興味あり。それらに関連する条件でのデータ等があれば、可能な限り材料メーカー
には開示をお願いしたい。また、ユーザー側で国の支援を得られるならデータを収集し公開してもよいのではないか。マテリア
ルズ・インフォマティクスをするにもデータの収集は重要。
・プラスチックと鉄の融合等、機械屋が最初から無理と思っているような材料を作ってくれれば設計の幅も広がる。
【建設メーカーからの声】
・鉄鋼材への要求として、より高く、スパンもより長い構造とし、鉄の利点を活かすことが挙げられる。その際に、強度のみなら
ず剛性が高いことが重要。圧延技術を工夫し結晶配向等の制御により、現行の剛性よりも2、3割でも高くなればインパクトは
大きい。
・新材料・新素材に大きな期待を抱いている。例えば、金属・樹脂系のAM(Additive Manufacturing)やレジンコンクリートなど
が構造物に使えるようになれば、長超高層ビルや大スパン構造物、浮体構造物等の形体も大きく変わる可能性がある。
・建設分野はどうしても明日、明後日の延長で話をする文化有り。これに対し、素材メーカー側から将来の素材の可能性を基に、
もう少し先のスパンの話を提供してもらえると、建設メーカーと素材メーカーの双方向の協働が進むのでは。
【医療機器メーカーからの声】
・医療分野で素材に求める物性は、特に生体適合性、耐薬品性、耐食性であり、金属素材では現状使用できる素材は限られ
ている。これらの分野で使用可能な素材は、特に樹脂については外国製品が強い印象がある。
・最近の製品は大量生産では無いため、必要な部品も多品種で少量になる。これらの社会要請に対応するための生産(小ロッ
ト)に対応して欲しい。
・コスト、強度、軽量等の要求を兼ね備えた次世代材料には期待する。
9
第1回金属素材競争力強化検討会(H27.5/21, 技術開発関連について委員の主なコメント)
【材料設計・開発】
・2030年という長いスパンを考えると、第一原理計算などを
使った理知的な検討を考えていくべきである。マテリアルサイ
エンスのベースを作る作業は共同で開発できるのではないか。
・マテリアルズ・インフォマティクスは是非、使いたい。関連する
共通データが必要である。
・自社では使用することが無いデータであっても、他社では重
要な場合があり、オープンにして互いに使い合うことも考えら
れる。
【エネルギーコスト】
・CO2排出削減、エネルギーコスト、人材確保・育成に関して
共通で議論する意義がある。
・技術力や原料コストで勝っていても、エネルギーコストが高い
点が問題。
・エネルギーコストが重荷になっている。
・エネルギー(熱)回収技術などを共有したい。
【マルチマテリアル化】
・汎用材を利用した高機能化や、マルチマテリアル化、素材間
のクロスオーバーにより技術を高めていければ。
・自動車向けのアルミニウムは話題になっている。マルチマテ
リアルは投資家の関心を得られるだろう。長期的な投資の観
点からは、世界を変えるような革新的な材料に関心が高い。
【分析・評価技術】
・技術開発は企業の国際競争力の源泉。個社戦略との関係も
あり、開発を共同で進めるのは難しい面もあるが、例えば、分
析・評価分野、IT開発などは協調可能。
・共通の課題は分析・評価や、基盤技術であれば協調でき、レ
ベルアップできる。
・検査・評価と合わせて標準化も重要である。
【人材育成】
・人材育成は必要である。大学からでは遅く、もっと前から良
い人材を育成することが必要ではないか。
・環境対応、人材等の基盤部分はお互いにデータを出し合っ
て共有すべきでは。
・ものづくりに関する管理ができる人材など、横断的に見る取
組みが重要である。
【川上と川下産業と縦断的連携】
・素材企業とユーザー企業が早い段階からニーズを共有し共
に開発を進めることが重要。
・2030年を見据えてユーザーとの摺り合わせが必要。
・付加価値についてはユーザーと話をして摺り合わせを行うこ
とが重要。
【素材全般について】
・高付加価値材料はまだ競争力を維持・向上可能である。
・素材の革新、機能設計の革新、プロセスの革新のどれかが
ゼロだと何も生まれない。
【座長のコメント】
・今後の在り方を考える上で、非常に示唆に富んだ議論である。技術開発に関しては、分析・解析・接合など分野を超えて共有で
きる部分があるのではないか。一方、各社でそれぞれの事情があり、協調と競合をそれぞれどのようにバランスをとるかが重要。
・2030年に向けてどうブレークスルーするかが重要。横の繫がりだけでなく、縦の繫がりをより深めることで日本の企業の強みを
10
発揮できる。エネルギーコスト、設備更新、人材育成等の課題があり、産学官連携で解決していく必要がある。
技術開発小委員会における主な論点(案)
鉄鋼・非鉄各業界(個別領域)
市場
・自動車
・鉄道車両
・航空機
・発電/新エネルギ分野
・社会インフラ
(ビル,橋梁等)
・住宅用資材
(建材・内装)
・化成品製造プラント
・燃料電池,太陽電池
・海洋資源開発
・船舶, 造船
・情報通信機器・素子
・医療分野
(ステント等)
・環境関連事業
(大気浄化等)
機能
=
素材開発
・高強度,靱性, 高剛性, 硬度性
・疲労, 信頼性, 長寿命,
・耐衝撃性
・摺動(低摩擦性, 耐摩耗性)
・塑性加工性, 易成形性,切削性
・接合性, 溶接性
・耐食性,耐熱衝撃性
・耐熱性,難燃性, 熱伝導性,
・放熱性, 蓄熱性, 焼結性
・軟磁性,硬磁性, 低損失性
・電磁波吸収性, 電磁気シールド性,
・導電性,熱電特性, 生体適合性,
・耐水素脆化,
・吸着吸蔵性(CO2固定化)
・表面(界面)反応性
軽量化, 低コスト, 複合機能,
傾斜機能,リサイクル性
×
・従来鋼,DP鋼, TRIP鋼,
・TWIP鋼, ハイテン鋼,
・ホットスタンプ材, 工具鋼
・マルテンサイト鋼, 耐熱鋼,特殊鋼
・電磁鋼板,磁性材料
・アルミ合金, 複層アルミ合金
・マグネシウム
・チタン合金, Ni基合金
・金属間化合物
・銅, シリコン
・セラミックス(ジルコニア,アルミナ, SiC,
Si3N4, CMC)
・多孔性材料,
・低環境負荷材料
・省レアメタル材
合金設計, 粒径制御
不純物制御
製造プロセス
×
・良質コークス製造, 高品質焼結鉱製造
・純酸素/高CO2利用高炉開発
・スラグ資源化/高度利用
・低品位資源活用技術
・高速/高純度/高清浄精錬技術
・無欠陥高速鋳造
・スクラップリサイクル技術(鉄・非鉄)
・高炉スラグ,製鋼スラグ熱回収システム
・省エネ型アルミパネル製造
・アルミ材低温精錬技術
・マグネシウム低コスト化
・チタン材一貫製造技術
・微細加工技術
・表面処理(改質)技術
各業界内のキーワード
反応制御(熱, 化学, 酸化・還元)
電磁力・マイクロ波・超音波活用
塑性加工, 省エネルギー製造
業界の垣根を越えた基盤(協調領域)
共通基盤
①材料設計技術(企業が活用し易いマテリアルズ・インフォマティクス)
②製造技術(異種材接合、Additive Manufacturing)
③分析・評価技術、④人材育成、⑤その他(予防保全、資源有効活用、エネルギー回収、LCA)
ユーザーからの期待
・マルチマテリアル化(素材の組合せによる相乗効果)
・企業間連携による開発の加速
・素材の高機能化(傾斜機能による付加価値化)
1.技術開発の考え方
(1)本小委員会について
(2)現行の技術開発施策
(3)出口を見据えた技術開発戦略
(4)素材横断的な共通基盤の整備
2.素材の垣根を越えた基盤(協調領域)
(1)材料設計技術 (企業が活用し易いマテリアルズ・インフォマティクス)
(2)製造技術
(3)分析・評価技術
(4)人材育成
(5)その他の基盤領域
12
マテリアルズ・インフォマティクスの概念
 情報科学と材料科学を融合した材料設計手法。データ駆動型の材料研究手法であり、計算、実験で蓄積
したデータベースを元にして、計算(シミュレーション)にて結果を予測.
 既存材料を越える新たな材料を膨大なデータから発掘。新規材料を予測し、材料開発期間の大幅短縮が
期待。
データベースを活用
した計算による予測
既存データ
ベース
シミュレー
ション
実験データ
活用
計算データ
データマイ
ニング
目的に応じた
データベース
構築
試行
実験的
検証
データ
解析
物質探索
反映
蓄積
論文データ
実験的手法による
検証
物性予測
新理論
構築
特許データ
13
マテリアルズ・インフォマティクスの海外動向
 海外では米国のMaterial Genome Initiativeを皮切りにマテリアルズ・インフォマティクスの研究開発が加速し
ている。世界的に有効活用する方向性に。
 実験をせずに、計算のみで従来型研究と同様の開発成果を得る事例も現れている。
米国 FORD: 材料特性の変動を考慮した
凝固シミュレーションに応用
韓国: 燃料電池の電解質開発で韓国企業が活用
出典:Integrated Computational Materials Engineering: A
Transformational Discipline for Improved Competitiveness and
National Security," National Academies Press (Sep.24, 2008)
出典:文科省資料
米国
Material Genome Initiativeとして実施中。製造分野の競争力強化の一環として、材料の重要性に着目。
2011年に提唱。材料開発短縮、低コスト化のためのデータベースを重視。
2014年12月にStrategic Planを発表。1億ドル以上/年の研究開発資金を投入。
欧州
マルチスケールシミュレーション重視(デファクト化によってソフトウェア産業で優位に)
中国
Chjina MGI(中国版 Material Genome Initiative)として実施。中国科学院・中国工学院が連携して着手。
韓国
Creative Materials Discovery Projectとして実施。2015年から10年計画で立ち上げ予定
14
マテリアルズ・インフォマティクスの国内動向
 文科省 元素戦略にてマテリアルズインフォマティクスを実施。データベースはNIMSにて整備。公開を前提。
 内閣府 SIP革新的構造材料にてマテリアルズ・インテグレーションとして実施。
文部科学省
内閣府 SIP革新的構造材料
溶融凝固に着目したシミュレーションと
データベースを構築予定
文部科学省 元素戦略プロジェクトでの成果例
膨大な元素の種類・組合せから高機能物質を発見(二次電池正極)
正極材料LiFePO4の3種類の陽イオンを他の元素で置換した2000の計算を実施。結晶の体積変化に着目して新材料を発見。
新材料(Fe1-xZrx)(P1-2xSi2x)O4は、従来品に比べておよそ6倍のサイクル寿命。(京大、A社)
15
企業が活用しやすいマテリアルズ・インフォマティクス(案)
(統合型材料開発システム/マテリアルズ・インテグレーション)
 計算機性能の飛躍的向上と材料開発競争の激化を受け、情報科学と材料科学を融合した材料設計手法が
今後さらに進展するものと推測。素材戦略(新製造プロセスの探索等)や開発期間の短縮へ期待
 ただし、企業が保有するデータはノウハウの塊であり、公開・共有は困難。データの共有/制限付が可能な
マテリアルズ・インフォマティクス(インテグレーション)の基盤と、非共有でも活用が可能な基盤設計が重要
物質の高効率探索,特性発現の原理解明,材料設計へ
マルチスケール解析・シミュレーション 【計算科学】
材料データベースとして蓄積
各種実験【実験科学】
第一原理計算【計算科学】
共有可能データ
A社
非共有データ
プラットフォーム提供
制限付データ
B社
非共有データ
C社
非共有データ
同左
同左
データマイニング
(統計的手法,AI等)
同左
同左
新たな組織制御等を推測
同左
同左
(材料データベースとの接続)
16
1.技術開発の考え方
(1)本小委員会について
(2)現行の技術開発施策
(3)出口を見据えた技術開発戦略
(4)素材横断的な共通基盤の整備
2.素材の垣根を越えた基盤(協調領域)
(1)材料設計技術
(2)製造技術 (異種材接合、Additive Manufacturing)
(3)分析・評価技術
(4)人材育成
(5)その他の基盤領域
17
マルチマテリアル化
 ユーザー企業(例:自動車)の素材利用の方向性には、①鉄鋼材料の徹底改善に加えて、部
分的な置き換え(②非鉄金属化、③樹脂化、④新素材化)の方向性が存在
 今後、より最適な材料を最適な場所に配置する方向性は加速
部位
フレーム
系
車
関体 外板・外
連部 装 系
品
る車
重重
量に
比占
率め
20%
1
鉄からの素材置き換え方向性
鉄における
徹底改善
2
アルミ
各種
フレーム部材
(ハイエンド
車種中心)
マグネシウム
チタン
シート部品
足周り
関連
22%
サスペンション中心
パワートレイン
関連
25%
各種
エンジン部品
電装品・
その他
9%
ハーネス
樹脂
CFRP
(ハイエンド
車種中心)
パネル(外板)
(ハイエンド
バンパー・
車種中心)
バックドアモジュール
ドアトリム・
インバネなど
(ハイエンド
車種中心)
11%
内装 系
3 樹脂化 4 新素材化
非鉄金属化
ハイテン
13%
自動車のマルチマテリアル化
素材置換
サスペンション中心
トランスミッションケース
シリンダブロック
マフラー、
コンロッド
インマニ、
燃料タンク
プロペラ
シャフト
特に車体部品 車体部品、パワートレイン向けを中心としたア パワートレイ 量産車向けは
ン周辺など、 プロペラシャ
ルミ化が中心
での採用が中
心
(一部にマグネ化などの萌芽的な動きも存在) 機能部品への フト等一部機
採用中心
能品
出典:新構造材料技術研究組合
(出所)平成25年度経済産業省委託調査(ADL)を基に作成
出典:国際自動車工業連合会(OICA) 「Steel Perspectives for The Automotive Industry」
18
異種材接合
 異なる素材を適所に配置するには、異種材接合技術は大切な要素技術。異なる素材を組み合わせて新し
い価値を追求することで素材間の垣根を越えた開発へ。
 素材ごとに組み合わせの難易度は異なるが、例えば、鉄とアルミのテーラードブランク工法等の技術開発
が進む過程で、プレス加工メーカー等からのニーズも変化していく可能性がある。
 今後、FSW,FSJや接着、表面改質技術、新接合技術などの高度化が挙げられる。
素材組み合わせ毎の接合方法と難易度
鉄
一般鋼材 ハイテン材
鉄
一般
鋼材
アルミ
樹脂
テーラードブランク工法
CFRP
•溶接
•溶接
•溶接(困難) •接着
•リベットなど (困難)
•接着
(困難)
-
•溶接
•溶接(困難) •接着
•リベットなど (困難)
•接着
(困難)
アルミ
-
-
•溶接
•接(困難)
(やや困難)
•接着
(困難)
樹脂
-
ハイテン
材
CFRP
-
凡例
困難
容易
-
-
•接着
•接着
-
-
-
•接着
 異種材料間の接合は、きちんと強度を持たせることが
特に難しい。そのため、機構として独立しているフタ物
(ボンネット、トランクリッジ)やサスのアームは、アルミ
/CFRP化が比較的しやすい。
 アルミは熱伝導率が高いため、スポット溶接のように
熱をかける溶接は難しい。
(自動車部品メーカー)
(出所)平成25年度経済産業省委託調査(ADL)、大阪府立産業技術総合研究所HP等より作成
 板厚や材質の異なる複数の鋼板をプレス成形前
に溶接し, 1 枚のブランクとするテーラードブラン
クは軽量化に向けた一つのソリューション。
 鉄とアルミなど、異なる素材を一枚のブランクとす
る技術等も開発中。
19
異種材接合の海外動向
フォードの事例 F150のオールアルミ化と接合技術
 フォードのピックアップトラックF150では、7,000のス
ポット溶接を4,000のリベット接合へ。
米エネルギー省(DOE) Lightweight Material Project
 異種アルミニウム合金の高速溶接接合
(パシフィック·ノースウエスト国立研究所)
【研究パートナー】
・自動車:GM
・自動車部品:TWB
Company LLC
・材料業:Alcoa
アルミ
【研究開発予算】
(FY12-14)
・$0.9M (DOE)
・$1.5M以上 (産業界)
ハイテン
出所: Ford 社HP
欧州車の素材構成の変化
マルチマテリアル軽量ビークルプロジェクト
SPR JOINT VALIDATION
出所: OICA 「Steel Perspectives for The Automotive Industry」
出典:三井物産戦略研究所 「自動車構造材の軽量化と多様化」
・自動車:フォード
・部品:Vehma
International
出典:DOE VEHICLE TECHNOLOGIES OFFICE:
LIGHTWEIGHT MATERIALS FOR CARS AND TRUCKS
20
Additive Manufacturing




適材適所の配置にはAdditive Manufacturing(3Dプリンタ-)を活用することも有効
現在はスループットが遅いが、装置の高速化に関する国家PJが国内・国外共に進行中
キーとなる材料技術はプロセスに適した粉末の開発
小型・可搬式が開発されれば、現場での製造や修理分野への展開等も考えられる。
米国
America Makesを中心に基礎・応用研究、人材育成、技術移転等を実施。DOD等による軍事応用研究(戦
闘機開発等)も活発。
ドイツ
Fraunhofer ILT、IWS、Paderborn大学等を中心にAdditive Manufacturingの研究開発を推進。
英国
カタパルト政策の一環としてMTC(Manufacturing Technology Center)を設置、Additive Manufacturingの研
究開発を推進。
日本
経済産業省PJ「次世代型産業用3Dプリンタ開発及び超精密3次元造形技術開発」(19億円:27年度)で29
年度を目標に世界最高速・最高精度の3Dプリンタを開発
傾斜機能材料
Fe
Al
組成が
連続的
に変化
複層積層材料
複層積層テーラード材料
Fe
c
c
c
c
c
c
c
c
c
c
c
c
Al
~100mm
プロセスが高度化(高速化、マルチマテリアル積層、傾斜機能材料等)されれば高付加価
値な部位には採用もあり得る(ユーザー企業の声)
21
1.技術開発の考え方
(1)本小委員会について
(2)現行の技術開発施策
(3)出口を見据えた技術開発戦略
(4)素材横断的な共通基盤の整備
2.素材の垣根を越えた基盤(協調領域)
(1)材料設計技術
(2)製造技術
(3)分析・評価技術 (広範囲・高分解能
(4)人材育成
(5)その他の基盤領域
/ 迅速・コンパクト)
22
分析・評価技術: 広範囲・高分解能
 日本の素材産業は「製品が高品質」として認知されている。今後も他がまねできない性能・品質を追求
する必要があり、分析・評価技術は重要との認識。
 共通基盤として、個社では活用法を含めて開発が困難である大型設備を利用した分析技術の高度化
が必要。
 摩擦・摩耗等の複雑系の解析等まだ取り組むべき課題もあり、鉄鋼・非鉄の枠を超えて取り組むこと
で研究開発が加速。
 小型の中性子線源を用いた回折装置等による計測を可能とするための技術開発も併せて取り組む。
大型施設(J-PARC・SPring-8)
出所:
J-PARK HP
放射光を用いた蛍光X
線分析ではごく微量元
素の検出も可能
出所: SPring-8 HP
中性子線回折とX線回折の違い
 X線はナトリウムより重い元素の構造を調べるのに適してる。
 中性子線は 重い元素ばかりでなく、水素、リチウム、酸素、
フッ素等の軽い元素の挙動や構造の 解析に適している。
 中性子は磁気を保有しているため、物質の磁気構造を解析
することが可能である。
 中性子線回 折では、原子量が同じで質量数が異なる同位
元素の解析に適している。
 X 線の侵入深さは数μm~1mm、中性子の侵入深さは数
cm~
中性子は特に軽元素の分析が可能となることから
今まで課題とされていなかった水素等の分布も計測
可能
23
分析・評価技術: 広範囲・高分解能
 中性子線の活用技術は鉄鋼業界が先行して推進中であり、非鉄金属業界でも軽元素分析の
重要性が高まっている。
中性子利用鉄鋼評価技術の基礎検討に係る研究
平成18 年、(一社)日本鉄鋼協会の産発プロジェクトとしてスタート。中性子を用いた鉄鋼の微細組織解析評価、欠陥
検査、強度・破壊評価に関する他ではできない技術を探索し、世界に先駆けて評価・研究開発に利用する。
①応力の物体深層部あるいはバルク平均値の評価
②製造プロセス中および特性発現中の時分割その場測定
③ミクロ組織の定量的測定
④鋼中の水素の探索その場測定
研究チーム
茨城大学,物質材料研究機構,原子力研究開発機構,JFEスチール,新日本製鉄,神戸製鋼所,JFE条鋼,大同特殊鋼,住友金属工業
小型中性子源による鉄鋼組織解析法 研究会
日本鉄鋼協会の研究会として活動(H26.3~H29.2)。
NEDO 「革新的新構造材料等研究開発
鉄鋼分野にて散乱解析や析出物の定量化に着手
24
分析・評価技術: 迅速・コンパクト
 製品の出荷検査等様々な場面で目視検査が行われているが、高速なその場欠陥検査法(高速超音
波探傷法等)も信頼性確保のためには重要。
 近年のコンピューターの進化によって、高速測定や画像を解析する技術による迅速検査が進歩。
製品検査(表面状態)の現状
日本は、高品質・高信頼なものづくりで世界最高の技術水準を有するが、
 アジア新興国等に競争優位な生産性の向上が必須
 グローバル化に伴い、とくに海外では品質・信頼性に関するがリスク顕在化
 ほとんどの生産現場では旧来の人手に頼った官能検査が多く残されている
官能検査の問題点(製造業の抱える共通の問題)
生産現場
• 品質の確保・安定化が困難
• 生産性の低下
• 上流工程へのフィードバックが困難
取引関係
• 曖昧な基準による品質トラブル
• 過度の不良発生(過剰品質問題)
グローバル展開
• 国内品質のトランスファーが困難
• 現地調達・現地生産にリスク増大
• 海外でも人件費が高騰
官能検査は、生産性向上、品質・信頼性の確保にボトルネックになっている。変革が必要。
• 検査の自動化・システム化
• 客観的な評価
• 共通の物差しでつながる
25
分析・評価技術: 迅速・コンパクト
 製品検査の自動化により、品質・信頼性のつながる化で競争力のある安心・安全なものづくりの実現へ。
 品質の安定化、ユーザー企業との数値を共有した管理でコストの削減。
 プリント配線板外観検査
(
○
主見
観た
的目
評の
判
価断
)
 自動車エンジン欠陥検査
• 穴の中
の検査
• めっきムラ
×
• 曖昧な欠陥
0.5mm
• 汚れ等と
の分離
<限度見本との比較による目視検査>
日本のWS50% • IEC標準化を推進中
A社PC
B社(中小)のWS100%
150
金めっきの施された
プリント基板の例
Z値
光散乱
(
客数
観値
的化
評
価(
Z
))
100
50
良
品
0
測定技術
系列2
-50
不
良
品
偏光解析
特徴量抽出
<光計測と画像・統計処理による自動検査>
欠陥
アクティブ計測
金めっき小型外観検査装置試作機
(高さ35cm✕幅16cm✕奥行21cm)
解析
系列1
-100
-150
-200
数値化
システム化
共通化(標準化)
品質・信頼性のビッグデータの活用・繋がる化
 精密加工部品仕上げ検査
• 複雑加工面の仕
上げ
 価格競争力向上
(生産性)
 Japanブランド力強化
(品質・信頼性)
 リスク低減
(グローバル化)
 半導体ウエハ潜傷検査
• サブμmの潜傷
エッチング後
• オイル付着
C社(国内大手)
D社の自動車用マイコンWS1位
26
1.技術開発の考え方
(1)本小委員会について
(2)現行の技術開発施策
(3)出口を見据えた技術開発戦略
(4)素材横断的な共通基盤の整備
2.素材の垣根を越えた基盤(協調領域)
(1)材料設計技術
(2)製造技術
(3)分析・評価技術
(4)人材育成 (知のイメージ戦略/連携/循環/地域活性化)
(5)その他の基盤領域
27
金属素材産業の未来を支える技術系人材の減少
 金属素材産業の技術的基盤を支える大学院における材料工学を選考する学生数は急速に減少。
学生のみならず研究者、大学の講座数も減少の傾向。
 いわゆる「理工系離れ」の逆風もあるが、それに加えて、数学科など他の理工系学問領域に比べた
埋没感も強まっており、産業界からも「絶滅危惧学科」として存立が懸念されている状況
材料工学分野の
志願者数×募集定員数の推移
1996
(人)
8000
20,000
1992年
出願者数(人)
「絶滅危惧学科」
アンケート結果
金属学会の会員推移
7000
6000
2000
15,000
7421
学生会員
正会員等
5340
5000
4000
2004
3000
10,000
2014年
2012
2000
2008
1000
志願倍率5倍ライン
5,000
0
1,000
2,000
3,000
0
4,000
募集定員数(人)
(出所)リクルート カレッジマネジメント190 (2015) 資料を基に作成
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
(出所)金属学会
(出所)産業競争力懇話会(2010)
「産業基盤を支える人材の
育成と技術者教育」より抜粋
(注)企業21社64名へのアンケート調査
での回答数
28
人材育成 (産学連携・分野間横断交流等)の方向性(案)
 金属素材分野の理工系人材(学生、大学講座数、研究者)が減少する中で、育成すべき人材の質(専
門力/異分野融合/価値発見力/価値創造力)を見据えて、産業界から人材育成を積極的に支援。
 金属素材に関する知・技の伝承・育成の方向性について、①知のイメージ戦略、②知の連携、③知の
循環、④知による地域活性化、の観点から素材分野横断で検討する必要有り。
①知のイメージ戦略
価値発見力(*1) 重視
(学術的な価値の見極め)
(市場での価値の見極め)
②知の連携
リサーチャー
(大学の研究者・
理工系学生)
マネージャー
(企業の経営・企画層)
①知の
イメージ戦略
専門力
重視
異分野融合
重視
国研・公設試等
④知による
地域活性化
③知の循環
テクニシャン・
エンジニア
(企業の技能・専門職)
(価値の具現化)
シニア・エンジニア
(企業の技能・管理職)
価値実現力(*2) 重視
(具現化した価値の応用・展開)
(*1)
価値発見力:観察力、関連づける力、人と繋がる力、など
(*2)
価値実現力:達成への執念、自己管理力、計画力、など
(出典: 経済産業省作成)
【金属素材分野の道を志す若手人材の確保】
・「工学」とは何か、その重要性や、金属素材の波及
分野等を中・高等教科書の文言へ(文科省へ提言)
・素材の重要性に興味を抱かせる文化の醸成
・初/中/高等教育での金属素材産業の魅力伝承
・進路指導の要である高校教員へのPR
②知の連携
【金属素材分野の研究者・技能者育成支援】
・寄付講座(共同研究講座)の活用促進
・企業が講師を派遣する教育プログラムや、ICTを
活用した教育プログラムの支援
・実践型教育、インターンシップ、奨学金制度等
③知の循環
【分野間横断交流による頭脳循環】
・クロスアポイントメント制度(※)の活用
・国研、公設試等を橋渡しとした人材交流
・製造現場に必要な知、統計、情報学等の分野交流
④知による地域活性化
【地域密着型の魅力ある環境整備】
・地域の特性を活かした技能者の育成
・雇用創出と地域活性化に向けた環境整備
(工場・研究所とその周辺の教育機関)
※クロスアポイントメント制度:研究者等が大学、公的研究機関、企業で、
2つ以上の機関に雇用されつつ、各機関の役割に応じて研究・開発及
び教育への従事を可能とする制度
1.技術開発の考え方
(1)本小委員会について
(2)現行の技術開発施策
(3)出口を見据えた技術開発戦略
(4)素材横断的な共通基盤の整備
2.素材の垣根を越えた基盤(協調領域)
(1)材料設計技術
(2)製造技術
(3)分析・評価技術
(4)人材育成
(5)その他の基盤領域
(予防保全、資源・エネルギー有効活用、LCA)
30
予防保全 ―デジタルデータの活用―
 センサの低廉化、コンピュータ技術の高度化等に加え、非構造化データ(業務日誌などのテキスト)を含めた
ビッグデータ分析の技術が進展することで、保安システムはより安全で柔軟な対応にできる可能性あり
 また、設備稼働時間を高めることが日本の国際競争力を高めるため、事故の未然予測も求められる。
具体的には、①ブレークダウン事故等対応・定期保全中心から、②事故等予知対応・予防保全中心に高度化
が図られる方向へ
①ブレークダウン事故等対応・定期保全中心
②事故等予知対応・予防保全中心
ブレークダウン
事故等対応:
定期保全
(時間基準):
事故等予知対応:
予防保全
(状態基準等):
緊急事態が起きてから
対処
計画に従い、設備の定
期更新や、定期的な検
査などのメンテナンス
リアルタイムに運転・設備
等のデータの状況を全体
的に分析し、未然に故
障・事故を予測して対応
設備・材料のスペック、利
用頻度、修繕履歴等の
データを蓄積・分析し、余
寿命を予測して適時・適
切なメンテナンス
ほとんどの事業者は第①段階
(規制の体系も①を前提)
最新のITを活用することで
高度なレベルで実現
(出所)経済産業省作成
31
予防保全 ―デジタルデータの活用―
 プラントにおけるデータ活用により今後事故が起こりそうな箇所の特定と予防対応を行っている企業有り。
 事故の未然防止により設備稼働時間を上げ国際平均にキャッチアップを図る(日本:設備稼働率92%→
国際平均:97%)。
 配管の腐食・金属疲労・クリープ変形などをデジタルデータとして蓄積。分析と組合わせ材料開発へ活用
も可能。データ共有も有効。
リスクの見落とし対策:事故等予知対応
運転データ分析
ビッグデータの活用の流れ
異なる装置間のデータ関係
モデルを自動作成
運転データ間の相関性をモニターし、通常と違
うデータを検出した場合に早期アラームを発出。
従来ベテラン運転員の経験で察知や見逃して
いたようなリスクを顕在化
⇒ 運転員の経験や判断の補完
予測モデルと実績値をもとに
規則性の乱れを検知
実績値
異常検知
予測モデル
従来の「運転システム」と「熟練者の現場力」
による安全管理を補完・補強する「第三の目」。
関係モデル
設備の老朽化対策:予防保全
運転・保守データ分析
圧力や温度などが警報閾
値を超えた状態になってか
ら対応するのではなく、熟練
者の暗黙知である各計測点
間の相関性の異常を早期
に検出して、適切に対応を
することにより、緊急事態を
事前に回避する。
リアルタイムデータ
実測データから設備の腐食進展を予測
長期腐食率=
(初期肉厚-検査時肉厚)/(検査年月-設置年月)
運転データ及び保守データから、故障箇所を予測して計画補修を実施。
漏洩・火災等の事故が発生する前に、データ予測に基づく補修を実施
することから、連続安全運転が可能となるとともに、保安レベルも向上
出典:資源エネルギー庁 平成26年度石油精製環境分析・情報提供事業報告書
(出所)経済産業省作成
32
エネルギーの有効活用
 現在 鉄鋼業の未利用熱エネルギー(いわゆる排熱)は1次エネルギーの4%程度に相当。効率の良さは世界
最高水準。
 一方、依然として固体顕熱(製品、コークス等)、液体顕熱(スラグ)および気体顕熱(COG、LDG等)が未利
用熱として存在。その適当な回収方法が無いことや、既存の水蒸気発生では温度低下を引き起こし大きなエ
クセルギー損失を伴うことが課題。
 任意の温度域で熱回収できる潜熱蓄熱技術や化学蓄熱技術、熱電変換型の蓄熱技術、低温熱源の周辺地
域への熱供給、等の技術開発が望まれる。
製鉄プロセスにおける未利用排熱量
出典 経済産業省「平成24年度 中小企業支援調査
(鉄鋼業における未利用エネルギーの有効活用及び省エネルギー実態調査」
33
エネルギーの有効活用: 国内技術開発例
 鉄鋼・非鉄の各業界で種々の取り組みが推進。温度域等に着目することで、共通の熱有効利用技
術への取り組みが可能。
(例えば200℃以下の排熱を効率的に有効利用する技術開発等は協調可能な領域と認識)
JFEスチール(株)の取り組み
•連続鋳造装置に最大出力10kWの熱電変換モ
ジュール
•最終的には100kWクラスでの実用化の目処を
付ける計画
アルミニウム業界の取り組み
•溶解炉にリジェネバーナーを設置。
連続鋳造設備への熱電発電システム設置イメージ
(出典 JFEホームページ)
NEDO 未利用熱エネルギーの革新的活用技術開発
【低温】 オーガニックランキンサイクル、ヒートポンプ、高密度蓄熱材
【中温】 熱電素子、高温ヒートポンプ
【高温】 高強度断熱材
温度域にあった要素技術の活用
34
LCAを考慮した素材開発
 エネルギー多消費産業であることから、LCAへの意識は高い。
 ユーザー企業側からも製品のLCAを考えた上で有利な素材というような付加価値をもった素材の開発
が期待されている。
 マルチマテリアル化とともに複合素材の分離・リサイクル技術の開発は重要。
鉄鋼業界のLCAの取り組み
アルミニウム業界のLCAの取り組み
・世界鉄鋼協会による世界共通のLCI方法論が確立。
・高張力鋼はホットスタンプ材と比較して強度は低いが、冷間プレス加
工が可能であり、環境負荷が低い。しかし、高強度になるほどプレス成
形性が低下する課題がある。
・LCA上の高付加価値を保持したまま、ホットスタンプ材に相当する強度
及び加工性を有する高強度鋼の開発が望まれる。
・新材料の開発において元素の添加を行う場合、リサイクル時に添加し
た元素を分離する必要があり、エネルギー負担が生じる場合がある。
・可能な限りリサイクル性に優れた元素を採用するなど、製品のLCAを
考慮した材料開発が期待される。
・エネルギー多消費産業であるためLCAへの意識は高い。
・平均的な板材1トンあたりの圧延工程で必要とされるエネルギー原
単位は、国際的な水準以上。国際的平均値16.2GJ/tonに対し我が
国は15.4GJ/ton(2006年) ((社)日本アルミニウム協会 LCA日本
フォーラムLCAデータベース)
・アルミニウム圧延業界において「低炭素社会実行計画」を策定中。
・省エネルギーの取組みのベストプラクティスの水平展開
・電気抵抗炉のガス化燃料転換による省エネ
・透過X線、蛍光X線、レーザーを利用した高速自動選別装置を用い
た水平リサイクルシステム(アルミ缶からアルミ缶、PS印刷版からPS
印刷版、サッシからサッシ、自動車から自動車等)
マルチマテリアル化とリサイクル性
マルチマテリアル化
異種材
高強度接合
優れたリサイクル性
複合素材(分離困難)
Fe
相反する課題
単一材料
マルチマテリアル化が進むことでリサイクルが困
難となる事も想定される
Al
傾斜組成材
接合部
分離
別の成分が
混入
分離回収・リサイクルに関する取り組みの必要性
相反する課題を解決するためにはリサイクル技術(システム)と接着接合技術の協力した取り組みが必要
本小委員会においてご議論いただきたいポイント(案)
素材の垣根を越えた基盤(協調領域)の方向性(案)
(1)材料設計技術
 新素材の設計・開発期間の短縮を可能とする「マテリアルズ・インフォマティクス」の推進
の検討
(2)製造技術
 異種材接合技術、Additive Manufacturingの検討
(3)分析・評価技術
 広範囲・高分解能の分析・評価技術/迅速・コンパクトの分析・評価技術の検討
(4)人材育成
 金属素材に関する知・技のイメージ戦略、連携、循環、地域活性化の検討
(5)その他の基盤領域
 デジタルデータを用いた予防保全、エネルギーの有効活用技術、LCAの考慮に関する
検討
36
【参考】 素材企業・ユーザー企業の連携
 業界を枠を超えて複数の素材メーカー・ユーザーメーカーが密接に連携することが重要
 素材間の枠を超えた総合的技術開発することは金属産業のみならず、ユーザーメーカーに
新たな設計思想を与え、競争力強化へ
ユーザー側からの要望
現在は個々の材料メーカーが所有している
材料ラインナップで研究開発を行っている
「個々の材料メーカーの枠を
超えた提案をして欲しい」
鉄とアルミ
鉄とマグネシウム
アルミとマグネシウム
鉄とチタン
鉄と樹脂
鉄とセラミック 等
米国の取組み
USCAR
(United States Council Automotive
Research LLC)
USAMP
(United States Automotive Materials
Partnership LLC)
クライスラー、フォード、GMの産業パートナーシップ
ミッション:
自動車関連材料、材料プロセスにおける直接的、非競争的
な研究開発を実施。
 会員企業の非競争的なニーズを把握した新しいプロジェクト
を定義
 研究開発の優先順位は、自動車材料のサプライヤーに対し
てリーダーシップとガイダンスを提供
 自動車材料における共同R&Dのための技術的なニーズを
政府機関に提供
37
Fly UP