【政策研のページ】世界売上上位100品目を対象にした上市期間

世界売上上位 100 品目を対象にした
上市期間
政策研の
ページ
患者の医薬品アクセスを考えるうえで、医薬品の上市時期は重要な指標の一つと考えられ
ることから、医薬産業政策研究所では、世界的に広く使用され需要が高いといえる世界売
上上位品目を対象にして、各国における医薬品のアクセス状況を継続的に集計分析してい
ます。ここでは2010年の世界売上上位100品目を対象にした医薬品アクセス状況を紹
介します。
ジア各国別にみたものです。
上市までの平均期間と未上市品目数
2007年の調査1）では、世界初上市時期の早い品目
が各国に上市されることにより、上市までの平均期
図1は、2010年 世 界 売 上 上 位100品 目 の う ち、
1981年以前に世界で初上市されたためにデータが
間が長くなることが示されました。特に日本でその
影響が大きかったことが分析されていましたが、今
回実施した2010年の調査では、多くの国で平均期
間が短縮されている中で、日本においては、未上市
揃わない品目や同一成分の重複および検査試薬を除
いた92品目を対象として、世界初上市から各国上市
までの平均期間と未上市品目数を、先進国およびア
（年）
8.0
〈世界初上市から各国上市までの平均期間（年）
〉
6.9
7.0
6.4
6.0
5.5 5.5
5.2
4.8
4.7 4.7
5.0
4.0
2004
6.2
2007
2010
5.2
4.6
3.9
3.9
4.2 4.4
4.3
3.9
3.4
3.5
3.0 3.1
3.9
3.6
3.3
3.5
3.0
3.1 3.1 3.3 3.0
3.0
2.8 3.0 3.0
2.5
2.0
2.2
1.9 2.1 2.0
1.6 1.6 1.5 1.4 1.5 1.7 1.4 1.7
1.4 1.3 1.4 1.3 1.2 1.4 1.2
1.0
0.0
日本 バングラデシュ パキスタン マレーシア インドネシア 台湾
香港
韓国 シンガポール タイ フィリピン フランス デンマーク スウェーデン スイス
ドイツ
イギリス
0.9
米国
（品目数）
40
30
〈各国における未上市品目数〉
36 36
35
31
2004
28
2007
2010
27
25
25
23
21
22
20
20
19
20
18
15 14
15
15
11
11
13 13 12
10
9 10
5 5 6
日本 バングラデシュ パキスタン マレーシア インドネシア 台湾
11 12
11
9 10
9 9
9
5
0
15
香港
7
5 5 5
7 7 6
5
3 4
韓国 シンガポール タイ フィリピン フランス デンマーク スウェーデン スイス
2 2 1
1 1 2
2
0 1
ドイツ
イギリス
米国
図1 世界初上市から各国上市までの平均期間と未上市品目数（2004年/2007年/2010年売上上位品目）
注１：2004年対象88品目、2007年対象90品目、2010年対象92品目。
注２：バングラデシュ、パキスタン、マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピンの2007年数値については、過去調査データをもとに再
集計している。
出所：©2012 IMS Health. IMS LifeCycle・IMS WorldReviewをもとに作成
（転写・複製禁止）。
1）医薬産業政策研究所.「2007年売上上位品目からみた医薬品アクセス−未上市品目の分析とドラッグラグ−」政策研ニュースNo.25
（2008年7月）
。
JPMA News Letter No.149(2012/05)
38
世界売上上位100品目を対象にした上市期間
除外対象品目
（集計対象23品目）
日本
新規対象品目
（集計対象21品目）
6.4
（14）
4.1
（16）
デンマーク
3.5
（20）
1.7
（21）
フランス
3.4
（20）
1.7
（18）
ドイツ
2.4
（20）
香港
韓国
2.2
（19）
1.8
（19）
2.8
（20）
3.7
（19）
5.5
（20）
イギリス
10.0
3.6
（20）
2.1
（20）
スイス
米国
3.2
（18）
4.7
（20）
スウェーデン
台湾
1.7
（22）
3.0
（18）
1.8
（19）
1.8
（20）
1.1
（22）
2.3
（21）
5.0
0.0
5.0
10.0
平均期間（年）
図2 世界初上市から各国2）上市までの平均期間
（2007年/2010年売上上位100品目のうち入れ替わり25品目）
注： 括弧内の数値は、対象のうち、各国で上市されている品目数
（各国ごと
の集計対象品目数）
。
出所：図１に同じ。
品目数は前回同様に少なくなっているものの、平均
期間の差はほとんどみられませんでした。
2007年と2010年の集計対象品目の比較
集 計 対 象 品 目 の 違 い に つ い て み て み ま し ょ う。
2010年の売上上位100品目では、2007年売上上
位100品目と25品目が入れ替わっていますが、デ
ータの不揃いや重複の除外等を反映すると、2007
年の集計対象より23品目が除外され、2010年では
21品目が新たな集計対象となります。除外対象品目
2）
と新規対象品目別に各国 上市までの平均期間を比較
したものが図2になります。多くの国で除外対象品目
の平均期間は長く、新規対象品目の平均期間は短く
なっていることがわかります。
これは、除外対象品目のうち、半数以上の15品目
が1995年以前に世界で初上市された品目であるの
に対し、新規対象品目の世界初上市年は、1995年
以前が2品目、1996∼2000年が10品目、2001
∼2006年が11品目と、ここ15年以内に世界で初
上市された品目に置き換わっていたことが影響して
います。特に日本については、上市されるまでに10
年近くの期間を要した品目が、除外対象品目の中で
は4品目ありましたが、新規対象品目では1品目と少
なかったため、その差が大きくなっています。
未上市品目の上市
次に、前回調査時に未上市であった品目が上市す
ることにより平均期間に与える影響をみてみます。
2）
表１ 世界初上市から各国 上市までの平均期間
（2007年/2010年共通対象品目、
うち2008年以降上市品）
平均期間
（年）
上市数
日本
7.9
10
香港
15.5
2
台湾
4.9
2
ドイツ
5.9
1
韓国
4.7
1
デンマーク
−
0
フランス
−
0
スウェーデン
−
0
スイス
−
0
イギリス
−
0
米国
−
0
出所：図１に同じ。
表1は、2007年売上上位100品目と、2010年売
上上位品目で共通している75品目（うち集計対象69
品目）の中で、前回調査時（2008年4月）以降に上市
された品目の上市品目数と平均期間を示したもので
す。日本の上市数は10品目と多く、その平均期間は
7.9年でした。また香港、台湾でそれぞれ2品目、ド
イツ、韓国で1品目が上市され、その他の先進国につ
いては前回調査時に対象の多くがすでに上市してい
たこともあり、今回の調査時点では、2008年以降
に上市された品目はありませんでした。
まとめ
2010年世界売上上位100品目を対象にした調査
を2007年調査結果と比較すると、世界で早くから
上市されていた品目が、比較的近年に世界で初上市
された品目に置き換わったことによる期間短縮の効
果が大きく、多くの国で平均期間が短くなっていま
した。香港、インドネシアなど、一部の国では平均
期間が長くなっていますが、香港については、世界
初上市が早い2品目がこの3年の間に上市したことに
よる期間拡大の効果が大きかったためと思われます。
日 本 に つ い て は、 対 象 品 目 の 入 れ 替 わ り に よ り、
0.48年期間は短縮されましたが、未上市品が上市す
ることにより0.46年拡大され、結果としては2007
年調査時の4.7年（4.68年）から0.02年短縮されて
4.7年（4.66年）となり、前回調査時とほぼ同様の平
均期間となりました。
（医薬産業政策研究所 研究員 大久保 昌美）
2）ここでは、2007年調査時対象と同様の国
（先進国およびアジア地域のうち韓国、台湾、香港）を対象にしている。
世界売上上位100品目を対象にした上市期間
JPMA News Letter No.149(2012/05)
39