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ユビキタスネットワーク時代のセンサーシステム

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ユビキタスネットワーク時代のセンサーシステム
NRI 技術創発
ユビキタスネットワーク時代のセンサーシステム
野村総合研究所
情報技術調査室
藤吉 栄二 (ふじよしえいじ)
情報技術本部にてIT動向の調査と分析を行うITアナリスト。現在は、ユビキタス関連技術
のうち、無線、モバイルに関わる技術全般の調査、研究に 従事。具体的には、携帯無線、
無線LAN、ICカード、RFID、センサーなど。
1.センサー活用を加速するIT環境の現状......................................................... 13
2.身近にあるセンサー........................................................................................ 14
3.ネットワークとの連携が新しいサービスを創出......................................... 16
4.センサーのロードマップ................................................................................ 17
5.標準化動向と先進的サービス/研究事例..................................................... 21
6.センサーシステム構築の留意点.................................................................... 29
7.豊かな社会システム実現に向けて................................................................ 32
要旨
センサーは家電などの身近な機器に既に利用されており、決して新しい技術ではないが、ユ
ビキタスネットワークの進展にともない、センサーは新しい付加価値を生む情報ツールという
位置づけから期待が高まりつつある。近年はセンサーが取得した情報を流通させる基盤となる
固定/無線双方の通信ネットワークの整備が急速に進んでおり、一部では既にサービスが提供
されている。今後はネットワークを活用し、センサー規模を拡大した場合のシステムの対応と
既存の情報システムとの連携、そしてプライバシーなどの利用者の安全性の配慮が課題となる
であろう。
本稿ではセンサーの概要、技術動向をもとに普及に向けてのロードマップを紹介し、あわせ
て今後の課題を考察する。
キーワード:ブロードバンド、センサー、アドホックネットワーク、RFID、ビルオートメーション、ITS
Sensors are already used in familiar instruments such as home electric appliances, so it is not a
new technology at all. However, along the progress of Ubiquitous Network, sensors as
information tools that produce new added value are receiving high attention.
In the recent years both fixed and wireless network infrastructures that are the foundation for
distribution of information detected by sensors are rapidly improving. In some area services are
already being provided.
In using networks from now on, in case of enlarging scale of sensors, correspondence of systems
and coordination with existing systems, as well as user safety issues such as privacy etc. will be
in subject of focus.
This article is going to introduce sensors and the road map to their popularization based on
technology trends, as well as studying future issues.
Keywords:Broadband, Sensor, Ad-hoc network, RFID, Billding automation, ITS
12
レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
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ユビキタスネットワーク時代のセンサーシステム
1.センサー活用を加速するIT環境の現状
(1)通信ネットワークの普及
2003年、日本のブロードバンド加入数は
1,
000万を越え、2004年4月末時点で約1,
500
コンを用いて人がネットワークに接続するだ
けではなく、様々な機器がネットワークに繋
がって新たな付加価値を生むユビキタスネッ
トワーク社会の実現が期待されている。
万加入(DSLは1,
150万加入、CATVは262万
加入、FTTHは1
24万加入)に達している。ま
(2)e-Japanとセンサー
た、インターネットアクセス可能な携帯電話
2001年、政府は5年以内に世界最先端のIT
(PHS含 む)の 加 入 数 は、2004年 4 月 末 で
国家となることを目標としてe-Japan戦略を
7,
025万加入となり、携帯電話の8割強がイ
策定した。具体的には、国民が安価にインタ
ンターネット接続対応端末である
(総務省発表)
。
ーネットに常時接続することを可能にするた
インターネットの前身であるアメリカ国防
めのネットワークインフラ、電子商取引の制
総省によるアーパネットの研究開始が1969年、
度基盤と市場ルールの整備、2003年からの電
本格的なインターネット時代の幕明けとなる
子政府の実現などが掲げられた。
WebブラウザのMosaicの登場が1994年であ
2003年にはe-Japan戦略のフェーズ2に相
る。1999年にはNTTドコモが iモードサービ
当するe-Japan戦略Ⅱが公開されている。本
スを開始し、2001年にはソフトバンクBBが
戦略では、e-Japan戦略で進められたネット
定額/低額でのADSLサービスを開始し、イ
ワーク基盤の整備を受け、IT利活用に的を絞
ンターネットはこの4、5年で学術研究対象
り、医療、食、生活、中小企業金融、知、就
から、消費者の日常生活のツールとして浸透
労/労働、行政サービスの7分野における具
したことになる。
体的な取り組み施策を提示している。
消費者向けインターネットサービスの普及
e-Japan戦略Ⅱの特徴を一言で述べるなら
は、IT技術の発展を推し進め、ネットワーク
ば、「IT利活用の実現」であり、生活者がメ
の整備範囲をさらに広げている。具体的には、
リットを享受できるようなITの利用促進策
ADSLやFTTHなどの固定系ネットワーク、
を検討、実現しようというものであるといえ
携帯電話の無線ネットワークが日本全国に広
よう。生活者が安心、安全、元気な社会を享
く張り巡らされることとなったほか、高機能
受できるか否かは、ネットワークインフラの
な携帯電話や無線LAN搭載のPDA、ノート
みならず、人やモノ、環境の状況をきめ細か
パソコンなどのワイヤレスITデバイスも広
く取得し、社会に還元できるようなツールと
く提供されている。このように、ネットワー
してのITの導入が必要になる。そのため、様
ク環境が急速に整備されつつある現在、パソ
々な情報を取得し、企業システム、社会シス
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テムの高度化に寄与できる可能性を有したセ
料センサー、油圧センサー、冷却液の温度計
ンサーへの期待が集まっている。
など車が走るための基本機能を保つための各
種センサーを有しているのみならず、運転を
2.身近にあるセンサー
快適に行うための様々なセンサーが用いられ
(1)身近に存在するセンサー
ている。一例をあげれば、エアコン用温度セ
我々の日常生活において、センサーは既に
ンサー、カーナビゲーション用GPS、ワイパ
様々な局面で利用されている。特に、家電製
ー作動用雨感知センサー、タイヤ空気圧計測
品や自動車は、機器の制御にセンサーを利用
センサーなどがある。
している製品の典型例である。たとえば、エ
その他、防犯用の人感知センサーや火災検
アコンは、温度センサーによる室内外の気温
知のための煙センサーなど枚挙にいとまがな
計測、風量/冷却(暖房)温度の最適値設定
い。そこで、以降では、情報システムに新た
をリアルタイムで行い、屋内を設定温度まで
な付加価値をもたらす機能の1つとしてセン
冷却(暖房)している。また自動車には、燃
サーを捉え、その概要と基本機能を説明する。
イメージ
(指紋や顔など
イメージ情報)
属性情報のセンシング
RFID、バーコード等の
媒体へのアクセス
ID
(氏名、住所など)
(利用例)ヒト、モノ、
動物の管理など
個体状況のセンシング
個体状況を利用
状況
(体温、暑/寒さ)(利用例)ナビゲーション、
セキュリティなど
コード(EPC、
ユビキタスID)
センサー
(センシング)
状況
(位置、存在)
環境
環境
(温度、湿度、 (圧力、加速度、
etc)
降雨量、輝度etc)
環境情報のセンシング
環境情報をモニタし、フィードバック
(利用例)ビルオフィスオートメーション、地球環境モニタ
図1 センシング情報の分類
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ユビキタスネットワーク時代のセンサーシステム
(2)センサー対象の分類
た情報を情報システムにおいて処理できるよ
前述のように、センサーは様々な用途で利
うに電気的情報に変換する。センサーデバイ
用されている。本稿では、センサーが取得す
スは、検出する情報の特性と変換量の違いに
る情報の活用とセンサーのロードマップを作
より様々な種類が存在する。一般的には物理
成するにあたり、
「属性情報」
「個体状況」
「環
センサーと化学センサーの2つに分類され、
境情報」の3つに分類した(図1参照)。
代表例を表1に紹介した。
属性情報とは、対象が何であるかを示す情
物理センサーとは、温度センサーや加速度
報 で あ り、具 体 的 に は 人 の 氏 名 や 住 所 や、
センサー、画像センサーのように、伝導率の
JANコードなどの商品アイテム情報、EPCコ
違いや速度変化率、電位差など物理的な変化
ードに代表される個品情報などがある。
をとらえて電気信号に変換したものが多く、
個体状況に関する情報とは、車の移動速度
などの物理的運動量に関する情報や、ある場
所に「いるか、いないか」などの存在情報な
どが相当する。
既に我々の生活において数多く利用されてい
る。
化学センサーは、ガスやイオン分解などの
化学変化による情報検出を行うものを意味す
環境情報とは、気温や湿度などの気象情報
るが、反応物質の補充や反応素子がセンシン
や環境に室内温度などの屋内環境情報が相当
グ対象と接することによる劣化、交換の発生
する。
など、企業や大学の研究機関などでは利用さ
これらの情報要素には、適用されるアプリ
ケーションによって様々な意味が付与される。
たとえば、個人の顔画像はID情報、すなわち、
れているものの、汎用性とコストの面で課題
も多い。
最近では、個々のセンサーの検出精度の更
属性情報として分類され、入出管理における
なる向上以外にも、複数のセンシング機能を
個人認証などのセキュリティアプリケーショ
組み合わせて多機能化させたデバイスを開発
ンに利用されるほか、顔画像を連続的に収集
したり、電磁誘導原理を用いた磁気センサー
して喜怒哀楽を表現させ、アミューズメント
とICチップを組み合わせてよりインテリジ
で利用するなど、センシングした情報は利用
ェントなセンサーデバイス(たとえばRFIDな
環境や利用方法に応じて様々な意味を持つ。
ど)を開発するなどの研究活動が進められて
いる。
(3)センサーデバイス
情報の取得、すなわち、センシングを行う
センサーデバイスは、実世界において取得し
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3.ネットワークとの連携が
囲が拡大していることを意味している。
新しいサービスを創出
また、ネットワークに接続する端末もパソ
(1)家庭におけるネットワーク
コンや携帯電話に留まらない。最近では、家
サービスの進展
庭用ゲーム機やビデオレコーダ、湯沸しポッ
「1.センサー活用を加速するIT環境の現
ト、自動販売機、カーナビゲーションなど様
状」で述べたように、2000年以降、ADSLや
々な機器がネットワークに接続している。た
FTTHなどの固定系アクセス、iモードに代表
とえば家庭用ゲーム機は、家庭にまで敷設さ
される携帯インターネット、あるいは無線
れたADSLやFTTHなどに接続し、遠隔地に
LANなどのモバイル利用を可能とする無線
いるプレイヤーとの対戦を実現している。そ
系アクセスの消費者層への利用が急速に拡大
のほか、家庭内に設置したWebカメラで取得
している。すなわち、これまでのネットワー
した画像を、携帯電話を利用して閲覧し、家
ク利用は、主に企業内システム、あるいは、
に異常がないことを確認することが可能であ
企 業 間 取 引 分 野 な ど のB2B(Business to
るほか、湯沸しポットのサービスの例では、
Business)であったものが、消費者層へも拡
ポット下部に内蔵された無線接続端末を通じ
大し、家庭、屋外へネットワークアクセス範
て給湯の回数を定期的に管理サーバに送信し、
分類
化学センサー
物理センサー
種類
検出原理
代表的な用途
ガスセンサー
イオン吸着(半導体型)、熱伝導率変化(熱式) 害物質検知、災害検知
味覚センサー
脂質高分子膜
消費期限設定、苦味検査
イオンセンサー
イオン識別
電解質検査
バイオセンサー
酵素反応や微生物の呼吸
食品、医療、環境計測
温度センサー
ゼーベック効果、温度特性、放射測定
環境、モノ、人の体温
湿度センサー
誘電率、容量変化
部屋、乾燥機等家電制御
加速度センサー
加速度−力変換
衝撃、振動、傾斜、ジャイロ
位置角度センサー
抵抗変化、光電変換、磁気結合
人、モノの位置、姿勢
圧力センサー
ピエゾ抵抗効果、圧電効果、容量変化
風圧、ガス圧、防犯
指紋センサー
凹凸、容量値変換
個人認証
光センサー
光導電効果(CdS)
光起電力効果(フォトダイオード)
照度計、煙センサ、人体検知
画像センサー
光起電力効果
映像情報取得
超音波センサー
圧電効果
物体検知、非破壊検査
磁気センサー
磁気抵抗効果、ホール効果、磁力
超伝導(SQUID)
スイッチ、電流測定
表1 センサーデバイスの種類
出所)
『センサエージェント』
(海文堂出版刊)
、
『ユビキタスサービスネットワーク技術』
(電気通信協会刊)を参考にNRI作成
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ユビキタスネットワーク時代のセンサーシステム
一人暮らしのお年寄りの安否を、第三者が給
できない付加価値をネットワークを通じて共
湯回数をネットワーク越しに知ることによっ
有、あるいは、新たな情報を付与してフィー
て確認することが可能である。
ドバックするシステムの一例である。
今後は、白物家電を含めたあらゆる家庭用
機器がネットワークに接続され、我々の生活
に役立つサービスを提供することが期待され
4.センサーのロードマップ
(1)センサーシステムロードマップ
センサーがもたらすインパクトを計る指標
る。
として、今後の動向を整理する。NRIでは、
(2)ネットワークとの融合による
新サービスの実現
これまでのセンサーの利用は、温度情報の
センサーに関する技術の動向、今後出現する
アプリケーション、システムへのインパクト
という観点でロードマップを作成した。NRI
モニタとエアコン制御設定、不法侵入者検知
が描くセンサーシステムロードマップでは、
時のアラーム呼び出しなど、局所的かつ情報
企業システムや社会システムに変革をもたら
のやりとりも一方向的なものであった。今後
すような新しい付加価値の提供と既存の情報
は、表1で紹介したような様々なセンサーが
システムへのインパクトという観点から、セ
ネットワークに接続されることにより、これ
ンサーが取得する情報に着目し、全体像を俯
まで実現されなかった新しいサービスが現れ
瞰している。そこで、本ロードマップでは、
てくる。アプリケーションの全体像は後述す
前述の取得情報の3つのカテゴリー、すなわ
るが、たとえば、遠隔地をブロードバンドネ
ち、
「属性情報」
「個体状況」
「環境情報」の3
ットワークで結び、カメラで取得した画像を
分野における今後の変化を示すこととした
モニタしながら専門医による治療方法を指示
(図2参照)。以下にそれぞれ3つのセンシン
するような遠隔医療での利用や、自動車の移
グ情報分野の動向を紹介する。
動状況、運転状況をモニタし、きめの細かい
リアルタイムでの渋滞予測回避案内の提供を
①属性情報
するITS(Intelligent Transport Systems:高
RFID(ICタグ、電子タグともいう)やIC
度道路交通システム)の研究などもセンサー
カードなどの媒体を用いてモノや人に関わる
利用のアプリケーションの一例である。これ
属性情報を取り扱い、商品流通や商品決済な
らのアプリケーションは、ネットワークを通
どのサービスを提供する分野が今後の市場の
じて複数の端末、あるいは拠点を接続し、セ
主流となる。RFIDでは、サプライチェーン
ンシングを行う。その場だけでは得ることの
での利用普及を目指し、欧米の小売業界や日
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用雑貨品ベンダーから構成された業界団体で
連携など、様々なサービス連携を実現してい
あるEPCglobal(旧Auto-IDセンター)と、T-
く。RFIDは商材管理コード(JANコードな
Engineフォーラムに設置されたユビキタス
ど)の代替として利用するだけでなく、入出
IDセンターの2つの団体が、センサーとして
荷検品や物流の仕分け、製造、商品流通履歴
のRFIDデバイスのみならず、プラットフォ
管理(トレーサビリティ)の情報入出力イン
ーム全体の標準化にむけて研究活動を推進す
ターフェイスとしてなど、実環境における物
る。ICカード分野では、関東や関西エリアで
理作業の効率化に寄与すると期待されている。
既に利用が広まっている交通乗車券(関東で
しかしながら、コスト(バーコードと比較
はSuicaカード、関西ではICOCAカード)が、
してデバイスコスト高)、業界構造(欧米と比
駅コンビニや沿線エリアで電子マネーとして
較すると日本は商品調達の仕組みが複雑)、
利用さるほか、Edy(非接触ICカードを利用
技術(無線読取精度とセキュリティ、ネット
した電子マネーサービス)に代表される電子
ワーク上の高トラフィック対応)などが課題
マネーカードも、ポイントカード(ロイヤリ
となり、国内のサプライチェーン分野におけ
ティカード)機能、マイレージサービスとの
るRFID利用普及は諸外国の対応状況を注視
∼2003
環境情報の
センシング
2004
2005
2006
ビルオートメーション
(業界独自仕様)
2007
2008∼
広域ワイヤレスセンサーシステム
ビルオフィスオートメーション
(IPを用いた相互接続遠隔モニタ制御等)
▲松下;EMIT(IP接続ミドルウェア)
▲BACnet、LonTalkなど
空調関連の制御系プロトコル
ホームセキュリティ
◆SmartDust
環境埋め込み(据付)型
センサーの普及期
環境ばらまき型
のセンサー
※1
▲慶應SFC(SmartSpace)
個体状況の
センシング
個体の運動状況を
用いて環境をモニタ
ホーム/オフィスセキュリティ
▲携帯+指紋センサー
アクセスコントロール
▲EPCglobal
属性情報の
センシング
ホームヘルスケア
ローカルシステム
(独自プロトコル)
※2
参考)IPv6-ITS(プローブカー)
◆ID+個別属性(場所)情報
◆ID+モニタデータ(体温など)
▲DoD-RFID利用
▲ウォルマート、テスコ
パレットケースでRFID利用
国内でのRFIDの普及期
オープンシステム検討期
ユビキタスID
システム稼動
欧米でのID型RFID本格化(ロジスティクス)
EPCglobal ◆IPを用いたオープンシステムの導入
本格化
※1 慶應SFC:慶應義塾大学湘南キャンパス
※2 DoD:米国防総省
図2 センサーシステムのロードマップ
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ユビキタスネットワーク時代のセンサーシステム
しながらの展開となる。
送システム監視制御、ホームオートメーショ
ン分野でも利用実績のあるLonWorksなどが
②個体状況
標準技術として浸透しつつある。
個体状況に関する情報サービスは、既に様
後者の例では、アクセスポイントを介さず
々な局面で提供されている。ただし、センシ
に複数のデバイスを無線接続するアドホック
ング情報に関するオープンプラットフォーム
ネットワーク技術(IETF(Internet Engineering
の採用よりも、クローズドなシステムを用い
Task Force)のMANET(Mobile Ad-hoc Net-
たサービスが主流である。たとえば、属性情
works)ワーキンググループにて検討中)な
報と個体状況の情報を組み合わせて、家やオ
どのネットワーク構築のための基礎研究が進
フィスの安全管理に利用したり、環境情報と
められている。広域な屋外環境に多数の無線
属性情報を組み合わせて医療分野で利用する
デバイスを散布して環境情報を取得するよう
といった複合的、かつ、局所的な利用が今後
な利用法が期待されており、ネットワークル
も様々な局面で広がると期待される。
ーティングプロトコルの検討以外に、デバイ
スの小型化、長寿命対応の実現など実用化に
③環境情報
は時間を要するであろう。
計測した温度情報や湿度情報、CO2量など
の情報の利活用に関する研究が進んでいる。
(2)センサーを用いたアプリケーション
情報システムとの連携で注目すべき分野とし
ここまで、センサーを用いて取得する情報
ては、たとえば、空調機や照明などの環境機
の分類、ならびに様々なセンサーデバイスを
器をモニタ、制御するビルオートメーション
紹介した。一方、ユーザから見れば、
「センサ
(あるいはビルマネジメントという)分野での
ーで何ができるのか」
「センサーの利用によ
プラットフォーム標準化活動、実環境の気象
ってどれほど生活の役に立つのか」といった
データを用いて地球環境の将来を予測する大
アプリケーションの視点が重要になる。
学などの研究機関を中心としたシュミレーシ
そこで、センサーを用いたアプリケーショ
ョン、環境計測インフラ構築のためのネット
ンを図3に分類した。具体的には、管理対象
ワーク構築のような基礎研究分野である。
によって、たとえば、人や動物などの有機生
前者のビルオートメーション分野では、米
物か、モノや建物などの構造物か、あるいは
国ASHRAE(米国設備学会)が提唱したデー
環境そのものかによってアプリケーションは
タ通信プロトコルであるBACnetや、米エシ
分類でき、システム設計者は情報の管理対象
ェロン社が開発し、エネルギー監視制御や輸
の違いと取得情報の種類を元にセンサーデバ
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ヘルスケアサービス
イスを選定し、システムを構築することとな
る。縦軸はセンシングを行うネットワーク規
血圧情報や排泄物の成分分析結果をセン
模の大きさで、横軸はセンシングによって行
ターに送信することで個人の状況情報を
われる管理対象の違いで整理している。以下
把握し、家庭にいながら健康管理を行う。
にその概要を示す。
②動物に関する情報を収集、利用
生態調査、ペット管理
①人に関する情報を収集、利用
セキュリティサービス
GPSによる位置情報やRFIDによる属性
たとえば、子供やお年寄りにGPS機能搭
情報を組み合わせて、希少生物の生態調
載の小型機器を持たせ、位置情報とID情
査やペットの不法投棄防止、血統管理な
報を利用しながら、誘拐や迷子などの万
どに利用する。
が一の事故に備える。
入退出情報の管理や不法侵入者検知
③モノに関する情報を収集、利用
セキュリティサービス
家やオフィスビルなどのローカルエリア
において、カメラ画像や指紋センサーを
車やオートバイにGPS端末を取り付け、
用いて属性情報を取得し、安全を確保す
位置情報を取得して盗難時の追跡などに
る。
利用する。
ネットワーク
システムの規模
大(広域)
環境モニタリング
(温度センサーによる
気温CO2モニタ)
セキュリティ、ヘルスケア
セキュリティ
(GPS機器などを利用した
(GPSを利用した
盗難品追跡など)
迷子探索など)
トレーサビリティ
ビルオートメーション
(バーコード、RFID、GPSを利用した
商品移動履歴管理)
(温度輝度センサーによる
ビルエネルギー管理)
イベントサービス
(RFID、GPSなどを利用して
情報提供など)
生態調査、ペット管理など
(バーコード、RFID、GPSを利用して
動物の調査、管理を行う)
小(ローカル)
ホームオートメーション
オフィスコラボレーション
セキュリティ、ヘルスケア
(温度輝度センサーによる
家のエネルギー管理)
(バーコード、RFIDなどを用いて
資産管理、コンテンツ共有など)
(カメラ、赤外線センサーなどで
オフィス、宅内のモニタ、入出管理)
環境
モノ
動物
人
センシング対象
図3 センサーによって実現する様々なアプリケーション
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トレーサビリティ(商品流通履歴管理)
消費財や物流用ケースにRFIDを貼り付
5.標準化動向と先進的サービス/研究事例
(1)標準化動向
け、属性情報と流通経路情報を取得しな
ロードマップにおいて示したように、企業
がらその流通生産履歴情報をデータベー
情報システム、社会システムにおいてセンサ
スに記録していく。
ーを利用する場合には、デバイス、プラット
オフィスコラボレーション
フォームの標準化の有無が重要な要素になる。
オフィス機器や書籍、ファイルに貼り付
なぜならば、オープンシステム化の推進によ
けたバーコードやRFIDによるオフィス
って、調達システムコストの低減、マルチベ
周りの機器、情報管理の高度化(不正持
ンダー化による機器選択の容易性、既存情報
ち出しなどのセキィリティに限らず、資
システムとの相互接続が可能になるからであ
産管理やナレッジマネージメントでの利
る。
用)を実現する。
前述したとおり、主にIT業界、ユーザ企業
を巻き込んでセンシング情報に関するプラッ
④環境に関する情報を収集、利用
ビルオートメーション
トフォームの標準化が進んでいるものは、属
性情報であるIDシステムの標準化と環境設
家やビルなどローカルエリアにおいて、
備機器プロトコルの標準化の2つである。具
照度や室内温度、屋外気温を計測し、照
体的には、属性情報利用のプラットフォーム
明機器のオン/オフ自動制御、ブライン
の標準化としてT-Engineフォーラム(ユビキ
ド動作、空調機の温度設定を行うことで
タスIDセンター)とEPCglobalという2つの
省エネルギーに寄与する。
組織が、ビルオートメーションのための標準
環境モニタと予測
化活動であるBACnet、LonWorksなどに相
屋外の各地点にセンサーを配置すること
当する。ここではこれらの標準化に関わる組
により、地域レベルあるいは地球レベル
織の概要と技術標準の検討範囲、今後の動向
での環境情報をモニタし、人工衛星や気
を紹介する。
象レーダなど超広域の気象観測からは得
ることの難しい、よりきめの細かい、か
つよりリアルタイム性の強い気象関連デ
ータを収集する。
①属性情報に関わる標準化活動
属性情報であるIDに関する技術標準を検
討し、国内のみならず世界的にも注目を浴び
ている組織がEPCglobalとT-Engineフォーラ
ムである。概要を表2に示した。
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NRI 技術創発
EPCglobalは、1
999年、米マサチューセッ
点に特徴がある。なお、従来Auto-IDセンタ
ツ工科大学内にAuto-IDセンターという名で、
ーが設置されていた米マサチューセッツ工科
次世代のバーコードシステムとしてのRFID
大学を含む世界6カ国(中国、スイス、オー
システム技術(EPCネットワーク技術)を研
ストラリア、イギリス、日本(慶應義塾大学))
究する機関として設立され、2003年11月の組
の大学研究機関は、Auto-IDlabsと改称し、技
織改編によって現在の呼称となった。具体的
術的側面からEPCネットワークの研究を実施
に は、EPCglobalは 米 国 コ ー ド セ ン タ ー
している。
(UCC)、国際EAN協会などサプライチェー
EPCネットワークを構成する技術要素は、
ンに関わる標準化組織による出資により設立
商 品 識 別 子 と し てePCコ ー ド(electric
運営され、RFID用のIDコードの発番と管理、
Product Code)、イ ン タ ー ネ ッ ト のDNS
ならびに普及啓蒙活動を実施している。米国
(Domain Name Service)のように取得したコ
小売最大手のウォルマート、英テスコなどの
ードの参照先を指示するONS(Object Name
小売業社のほか、P&G、コカ・コーラ、ジレ
Service)、参照先のサーバで情報を記述する
ットなどの消費財ベンダーが多数参画し、サ
た め の 言 語 で あ るPML(Physical Markup
プライチェーン色を強めた組織となっている
Language)を 基 本 構 成 要 素 と し、そ の 他、
概要
主催
デバイス
EPCglobal
EPCglobal
(米国コードセンター、国際EAN協会に
よる合資会社)
IDのbit数
T-Engineフォーラム(ユビキタスIDセンター)
TRONプロジェクト
64bit、96bit、
(128bit、256bitも検討中)
128bit、256bit∼
想定する利用形態
バーコードの置き換え
ICカード、RFIDタグ、バーコードなどID
媒体全般
設計におけるコンセプト
標準仕様として、ePC(物体へのコード
体系)、ONS(DNSベースのネームサー
ビス)、PML(記述言語)を規定する
T-Engineアーキテクチャに基づく
セキュリティ技術に対す
る考え方
・セキュリティは利用形態に応じた方式
を検討中(決済後にタグが利用できな
くなるkillコマンドなど)
・セキュリティアーキテクチャである
eTRONによるハードウェア設計によ
る耐タンパ確保
・リアルタイムPKIの実現
支援団体
米国コードセンター、国際EAN協会
ウォルマート、P&G、コカ・コーラ、
ジレット、アクセンチュアなど
参画団体
キヤノン、三井物産、大日本印刷、凸版
日本参加企業
印刷、東レ、NTT持株、NTTコムウェア、
(Auto-IDセン
オムロン、
(NECは2
0
0
4年5月、EPCglobal
ター時メンバー)
に参加)
主要企業
NEC、日立製作所、NTTドコモ、デンソー、
日本ユニシス、大日本印刷、凸版印刷な
ど計3
2
9社(20
0
4年3月1
9日現在)
・A会員:7
8社
・B会員:1
4
3社
・e会員:9
9社
表2 EPCglobalとT-Engineフォーラム(ユビキタスIDセンター)
22
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ユビキタスネットワーク時代のセンサーシステム
RFIDのエアプロトコルやリーダ管理プロト
ーキテクチャの検討と標準化を推進する組織
コル、セキュリティなど、RFIDを用いたネッ
として設立された。T-Engineフォーラム内
トワーク型管理システム全般が検討対象とな
に設置されたユビキタスIDセンターは、ID
っている。EPCglobalが利用するシステムの
の発行管理、システム運営を行っている。当
概観図を図4に示す。
フォーラムが提唱するシステムの特徴は、
なお、欧米の大手小売業者と米国防総省は
RFIDにとどまらず、IDの伝達媒体としてバ
EPCglobalの技術を用いて2005年からパレッ
ーコードから非接触ICカードまでを対象と
トやケース単位での物流管理を行うと表明し
している点と、情報の開示提供手段としてユ
ているほか、ePCコードは今後小売業界のバ
ビキタスコミュニケータと呼ばれる独自の
ー コ ー ド 標 準 と な るGTIN(Global Trade
ID読み取り、コンテンツ表示、ネットワーク
Item Number)をサポートするため、欧米を
接続機能を有したデバイスを開発提供してい
中心としたサプライチェーン分野における
る点にある。図5にシステムの概観図を示す。
T-Engineフォーラムは、シンガポール、韓
RFIDの利用が一層加速するであろう。
他方、T-Engineフォーラムは、2002年6月
国、中国の政府、大学研究機関との交流/共
にTRONプロジェクトの一環としてTRONア
同研究を進めており、今後はアジア地域での
①製品コードの伝達
ePC
Savant
サーバ
Reader
RFIDタグ
アプリケーション
(ERPやCRMなど)
ePC (electric Product Code)
フォーマット
・製造業者ID
・商品、製品ID
・シリアル番号
ONS サーバ
ePC
インターネット
②IPアドレス変換
PMLデータ
EPC Information
Service (EPC-IS)
ePC
製品情報
DB
③製品情報の入手
図4 EPCネットワークの基本構成
出所)http://www.epcglobalinc.org/
23
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NRI 技術創発
展開とユビキタスコミュニケータを用いた新
ら推測されるように、分散型システムの特徴
しいサービスの実現が期待される。
を活かしてIDの相互連携、アプリケーション
EPCglobalとT-Engineフォーラムが研究を
の共用など、相互利用による負荷分散とシス
進めるシステムは、拠点別のサーバを参照す
テム構築コスト削減も実現できるであろう。
る分散型のシステム構成となっており、一見
すると類似しているため、新聞雑誌等では両
②環境情報に関連した標準化活動
者がそれぞれ自身のRFIDシステムのデファ
環境情報に関わる標準化活動してはビルシ
クトスタンダード化を目指し、対立している
ステム用ネットワークに関する標準化が進め
ように紹介されるものも多い。しかしながら、
られており、一部ではシステムの採用が始ま
参画メンバーの違いや高機能なIDリーダの
っている。標準化の対象範囲は、センサー取
提供の違いなどから、EPCglobalはサプライ
得データ、各種設備機器の制御信号をネット
チェーン高度化に、ユビキタスIDセンターは
ワークで伝達するためのプロトコルの標準化
消費者をも含めたユビキタスコンピューティ
である。
ング環境の実現に貢献していくものと予測さ
旧来型のビルシステムは、建築時のビル制
れる。また組織の対比表とシステム構成図か
御系システムがビルトインで組み込まれるこ
RFIDタグ、
バーコードなど
アドレス解決サーバ
①ucode伝達
ucode
128bitコード
(拡張256bit、・・)
②アドレス解決
ユビキタスコミュニケータ
eTRON
(セキュリティ
プロトコル)
③製品情報の入手
DB
CA:認証サーバ
(セキュリティ要求に応じて利用)
製品情報サーバ
製品情報
図5 ユビキタスIDセンター システムの基本構成
出所)http://www.uidcenter.org/
24
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ユビキタスネットワーク時代のセンサーシステム
ともあり、単一ベンダー、拡張性のなさ、高
ムと空調機器などのビル設備機器のリプレイ
コスト構造であった。そのほか、省エネルギ
スタイミングが異なることもあり、それら課
ーに関する国際的な取り組みである気候変動
題の解決策としてシステムにおける情報入出
枠組条約第3回締約国会議(COP3:京都会
力インターフェイスの標準化が必要であった。
議)により、CO2排出量の削減への対応が求
ビルオートメーションに関する標準化は、
められている。したがって、ビルシステムの
ASHRAE(米国設備学会)が研究を進める
初期投資コスト、ライフサイクルコストの低
BACnetと 米 エ シ ェ ロ ン 社 が 進 め る
減を実現するためには、標準化の推進による
LonWorksが代表例である。両規格とも10年
システムコスト削減と管理効率の向上が望ま
近い歴史を持つ技術であるが、ISO化の実現
しいという背景が存在した。また、管理セン
や、国内での採用事例の広がりはここ数年の
ターで用いられるコンピューティングシステ
話である(詳細は表3を参照)。これらの標準
概要
提唱元
BACnet
ASHRAE(米国設備学会)
設立(提唱年) 19
95年
標準化への対応
ANSI、ISO規格化(2004年1月にISO化)
米エシェロン社
1
9
8
0年代後半(1
9
9
2年製品出荷開始)
デファクト制御
ネットワーク対応のためのニューロン
チップ(数百円)
、ネットワークトラン
シーバ(数千円)支払いが必要
利用に関しては
適用ネットワーク
LonWorks
Ethernet、ARCnet、MS/TP、RS232C、 TPマルチドホップ、パワーライン、
TCP/IP
TPフリートポロジ
呼称
BACnet、BACnet/IP
LonTalk
オブジェクト
通信データをネットワーク上可視的に
標準的なオブジェクト化して装置間の
インターオペラビリティを実現。6群
18個のきめの細かいオブジェクトを標
準化
通信データをネットワーク変数(nv)
としてシンプルにオブジェクト化して
ノード間のインターオペラビリティを
実現。nvにはLonMarkの構造が定義済
の標準nvのSNVTとユーザ定義のnvが
ある。約1
1
0個のSNVTが定義済
インターネッ
ト、イントラ
ネット拡張
イ ー サ ネ ッ トUDP/IPプ ロ ト コ ル に て
BACnet/IPにより、IPルータを用いて拡
張可
イーサネットUDP/IPプロトコルにてイ
ー サ ネ ッ ト −LonTalkル ー タ(Java応
用)を用いて拡張可
プロトコル
USA:68社、日本:2
8社、カナダ:8社、 Open System Alliance(OSA)プログラ
ドイツ:6社、スイス:5社
ム:国内では、NTTデータ、富士電機シ
計1
23社(組織含む)
ステムズがマスターパートナー
メンバーシップ
日本:トキメック、ダイキン工業、
IEIEJ、ホーチキ、三菱電機、
三菱重工業、山武ビルシステム、
日立、東芝、明電舎、富士通他
LonMark Interoperability Association
(LonMark協会:インターオペラビリティ
認定)
:計41社:NTTデータ、富士電機、横
河電機がスポンサ
表3 ビルオートメーションに関する標準化活動(代表例)
出所)日本建設技術資料 IPv6普及・高度化推進協議会公開資料など
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NRI 技術創発
化活動の推進により、これまでスタンドアロ
たプラットフォームを開発している。現在は
ンで利用されて、独自のプロトコルで制御さ
スタートアップの段階であり、システムの詳
れてきた空調機器、照明、監視機器などの工
細は不明であるが、本システムは名刺大の無
業製品が、PCと同様にTCP/IPネットワー
線IDカードであるUbitagとタグ用リーダに
クに接続され、集中もしくは拠点ごとに分散
相当するUbisense Sensor、およびソフトウ
制御することが可能となった。たとえば、六
ェアから構成される。UWBの特徴は、無線
本木ヒルズではLonWorks制御ポイント約1
7
機器との干渉の影響を受けづらいことと、位
万点、ノード数は約16,
500ノードに達し、世
置測定が容易なことである。Ubisense社は、
界最大規模のLonWorksビルオートメーショ
その利点を活かして、オフィスや病院などの
ンシステムを構築している。
監視エリアを任意に設定して入室管理を行っ
しかしながら、ビルオートメーション分野
たり、エリア内での行動履歴を把握するなど
におけるこれらの標準化の推進においては、
のセキュリティソリューションや、カルテや
制御目的、監視目的ごとに独自プロトコルが
貸し出し禁止書籍などの資産管理に利用する
既にデファクトとして混在していたり、対応
などのワークプレイス利用のソリューション
機種が少ないなど課題は多い。あらゆるセン
を提供している。
サーデバイス、機器がIP化されるとネットワ
位置情報の測定手段としては、屋外であれ
ーク接続が容易になるが、IPアドレスを豊富
ばGPS、屋内であればUWBのほか、超音波、
に有し、デバイスレベルで強固なセキュリテ
無線LAN、赤外線、Bluetooth、RFIDなど様
ィを設定可能なIPv6の実用化を待たねばな
々な無線技術が利用可能である。特に屋内で
らないであろう。
位置検出を行う場合には、GPSに相当する機
器をエリア内各所に設置しなければならない
(2)先進サービス、研究事例
ここではセンサーデバイスとネットワーク
ため、無線技術の選択に関しては要求される
検出精度と導入コストのトレードオフとなる。
技術を利用した先進事例、研究活動などを紹
介する。各事例の概要の一覧を表4に示した。
②SmartDustプロジェクト
SmartDustは米国のカリフォルニア大学バ
①英Ubisense社
ークレー校による研究プロジェクトである。
イギリスのベンチャー企業であるUbisense
数mmの超小型基板上に温度センサーや速度
社は、次世代の無線技術であるUWB(ウルト
センサー、光センサーなどを搭載して各種情
ラワイドバンド)を用いて位置情報を利用し
報を取得し、無線通信によって情報を伝達す
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ユビキタスネットワーク時代のセンサーシステム
管理対象
事例(国)
研究/
実用
GPS機能付きの携帯電話、専用端
末を保有し、迷子の際に管理セン 位置情報、
機器のID
ターが捜索。
専用端末、
携帯電話
GPS、
CDMA
みまもりほっとライン
(象印:日本)
実用
定期的に給湯回数を管理センタ
ーに送信。遠隔地に住む親類が 給湯回数、
機器のID
状況を確認可能。
給湯ぽっと
DoPa
研究
UWB無線技術を用いてタグを有 位置情報、
した利用者の入出等を管理。
タグID
MediaCup(独)
研究
コーヒーカップ下部のセンサー
が利用状況を把握。カップが空
になると自動的にコーヒーを沸 タグID
かしたり、複数カップの集合状況
からオフィスの利用状況を把握
するなど。
Metro Future Store
Initiative(独)
実用
ショッピングカートに据え付け
る専用端末の無線LANを利用し 位置情報
て位置測量を実施、商品探索時に
棚まで誘導する。
在宅ヘルスケアシステ
ム(松下電器:日本)
研究
電子健康モニター端末で取得し 血圧、体温、
電子健康モニ ADSLやFTTH
た血圧、体温状況をセンターで管 体重、血糖など タ
など家庭用ア
理。遠隔からの健康診断に利用。
クセス
生態調査
(大学研究期間)
研究
希少動物や移動性の動物の行動
専用端末
把握など学術研究としての生態 存在情報、
位置情報など
調査に利用。
アクティブ
RFID
GPS機器等
ペット管理
(世界各国)
実用
ペットの皮下にRFIDを埋め込み、 ID
血統管理や迷子、盗難防止に利用。
RFID
実用
緊急時の車載の専用端末のボタ
ンを押下すると、センター側で事 位置情報、ID 専用端末
故車両の位置情報を把握し、救急
対応を行う。
GPS
その他
ココセコム
(セコム:日本)
実用
専用車載端末を搭載し、万が一の
盗難の際に、センターにて車両を 位置情報、ID 専用端末
捜索する。
GPS、
CDMA
TRACE
(NEC:日本)
実用
列車用コンテナにRFIDを装着し、
フォークリフトのGPS情報とと 位置情報、ID タグ(コンテ GPS、RFID
ナ+RFID)
もに、各地でコンテナ入出荷情報
をセンターにて管理する。
EMITホームシステム
(松下電工:日本)
実用
家庭内に設置し各センサーで異 画像、熱、煙、 カメラ、煙セ 携帯電話、
常を検知、携帯電話によるモニ その他
ンサなど
その他
タ、玄関施錠などを実現。
自動検針
(東京ガス:日本)
実用
各住宅のガス検針器にネットワ
ーク接続機器をつけ、センターや 液量、圧力
遠隔地から自動検針。
プローブカー
(ITS協議会他:日本)
研究
乗用車、タクシー、バスの走行状 速度、ブレーキ
況から詳細地域ごとの渋滞情報、 動作、ワイパー 自動車
気象情報を把握する。
動作その他
DoPa、
無線LAN
SmartDust(米)
研究
超小型(数mm角)の基板上にセ
ンサーを取り付け、環境情報を取 温度、明度
得する。
専用端末
無線
SensorWeb
研究
温度センサー付きの無線端末を
広大なエリアにばら撒き、ネット 温 度、湿 度、 専用端末
(pod)
ワークを構築、環境情報を取得。 照度など
無線
HELPNET(日本緊急
通報サービス:日本)
環境
通信
実用
人
モノ
センシングに (セ ン サ ー と
よって取得さ なる)センシ
れる情報
ング媒体
ココセコム
(セコム:日本)
Ubisense(英)
動物
サービス、研究の概要
タグ
(Ubitag)
コーヒー
カップ
専用端末
(PSA)
RFID
計量メータ
UWB
赤外線
無線LAN
電話回線、特
定省電力無
線、PHSなど
表4 センサー利用のサービス、研究例
出所)総務省ユビキタスセンサーネットワーク研究会資料を参考にNRI作成
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NRI 技術創発
るワイヤレスセンサーシステムの研究を実施
③プローブカー実証実験
プローブカーは、自動車を移動体の交通観
している。
研究の対象はセンサーデバイスに留まらず、
測モニタリング装置と捉え、きめ細かな交通
センサーデバイス実装用OS(TinyOS)、複数
流や交通行動、位置情報、車両挙動さらには
センサーによるアドホックなネットワーク構
気候や自然に係わる状況をモニタリングする
築の研究など様々であり、研究成果の一部は
システムをいう(図6参照)。次世代自動車交
CrossBow Technology社 やDust社 か ら 既 に
通システム(ITS)の検証項目として大学、
提供されている。想定されるアプリケーショ
企業その他研究機関において検討が進められ
ンとしては、小型かつ無線通信の特徴を活か
ている。
して、土壌や空気などの環境モニタリングや、
WIDEプロジェクトでは、2
000年度のプロ
プラント監視、ビルオートメーションにおけ
ーブカープロジェクトにおいて、車両走行状
る環境センサーなど様々なアプリケーション
態(走行時速、ワイパー、ABS)を取得集積
が想定されている。
して道路走行情報、降雨情報などを調査する
実験を実施している。また、ITS協議会が、
情報センター
所管省庁など
通過情報
ISPなど
速度、ブレーキ動作
ワイパー動作など
リアルタイム
リアルタイム渋滞予測
到着予測
図6 プローブカーシステム概要
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ユビキタスネットワーク時代のセンサーシステム
④SensorWebプロジェクト
2001年度には経済産業省の支援を請けて行っ
米国NASAのJPL(ジェット推進研究所)
たITS実証実験のうち、名古屋地区での実証
実験では、タクシー3
2社(1,
570台)に車載
で進められている研究活動である。具体的に
機を搭載し、業務用サービス、乗客向け情報
は、センサー付きの機器「pod」が相互に通
提供サービス、プローブ情報提供サービスを
信して広域なネットワークを構築し、気温や
提供する検証試験を実施している。
土壌温度などをリアルタイムでモニタ可能な
システムの研究を実施している。現在は様々
2004年10月に名古屋で開催される「世界
ITS会議愛知・名古屋2
004」においても、プ
な場所にpodを設置して技術研究だけでなく、
ローブカーの実証実験が計画されており、セ
生態学の研究も同時に実施しており、将来的
ンサーを付けた自動車(プローブカー)から
には宇宙空間や地球外の惑星において、環境
位置、車速、ブレーキを踏んだ時間などをデ
情報を無人でかつ広域にモニタリングするた
ータとして収集、蓄積。これらのデータを活
めのネットワークを構築できる技術の確立を
用して、曜日別や時間帯別で細かな渋滞予測
目指している。
を行い、最短時間ルート提示など高度な経路
6.センサーシステム構築の留意点
案内システムを構築する予定である。
ここでは、センサーを用いたシステムを設
計する際の留意点を整理したい。まずは一般
①センサーの選定 ②センシング方法
アプリ
ケーション
ヒト
動物
モノ
セ
ン
シ
ン
グ
媒
体
デ
ー
タ
収
集
器
アプリ
ケーション
DB
センターシステム
環境
DB
③ネットワーク
(通信プロトコル)
マネージメント
対象
DB
情報サービス
センシングシステム
(ローカルシステム)
④フィルタリング
⑤アクセス権限
図7 センサーシステムの概観
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NRI 技術創発
的なセンサーシステムの概観を述べ、ケース
ススタディを記述する。
③ネットワーク(通信プロトコル)
SmartDustやSensorWebな ど の 広 域 環 境
モニタに代表されるように、複数センサーデ
(1)センサーシステムの概観
バイス分散協調的に動作させる場合には、デ
センサーを用いたシステムの概要図を図7
バイス間の連携をはかり最終的に情報収集を
に示した。一般的には、通常の情報システム
行うための通信ネットワークに関する検討が
構築の考え方が適用可能であり、下記にセン
必要になる。たとえば、広域な環境で無線通
サーシステム構築における検討の手順を示す。
信を行う場合のアドホックネットワーク(あ
るはメッシュネットワーク)技術の採用、ビ
①センサーの選定
「2.身近にあるセンサー」「4.センサーの
ルオートメーション分野における業界標準プ
ロトコルなどが相当する。
ロードマップ」で述べたように、情報の取得
方法とセンシングを行ってサービスを提供す
る対象によっておのずと利用するセンサーも
④フィルタリング
取得した情報をローカルアプリケーション
決まる。たとえば、商品管理の場合はRFID、
で処理する場合、あるいは、センターシステ
不法侵入検知の場合はカメラなどがあげられ
ムに送信もしくは共有するなど、下位で得ら
る。なお、図中に記載したセンシング媒体と
れた情報を上位の処理に引き渡す場合に、不
データ収集器はセンサーデバイスとなる端末
要な情報を処分し、必要な情報を送信するな
の種類とサービスによっては必ずしも分離さ
どの情報の選定/分別方法に関する検討であ
れるわけではない。
る。特にセンサーを利用してきめの細かい管
理を実現しようとすればするほど情報の取得
②センシング/制御方法
属性情報や環境情報をどのようなタイミン
間隔が短く、情報量も大量になるため、注意
が必要になる。
グで取得するかを意味する。たとえば、イベ
ントが発生した場合に情報を取得する、定期
⑤アクセス権限
的な周期で情報を取得する、他のセンサー機
センシングした情報を基に、他社のサービ
器あるいは他の機器からの信号をトリガーに
ス、アプリケーションとの連動を図る場合の
情報を取得するなどの方法が考えられる。
情報の受け渡し、公開に関する取り決めの決
定を意味する。特に、現在注目を浴びている
RFIDなどはセンシングしたIDを基にネット
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ユビキタスネットワーク時代のセンサーシステム
ワークを経由して情報サーバにアクセスし、
を取得し、店舗やビルの照明、空調などの環
受発注処理や履歴管理に利用することが可能
境機器制御を行うビルオートメーションへの
であるため、ビジネスモデルの検討を含めて
適用を、松下電工株式会社汐留本社ビル事例
企業間連携のあり方を議論する必要がある。
を参考に考察する(以下、各種公開資料を参
考に作成した)。
(2)ケーススタディ
2003年4月にオープンした松下電工株式会
社本社ビルは、地下2階から地上3階までを
センサーを用いたシステムを検討してみる。
ロードマップにおいて紹介したように、流通
ショールームとし、その上の階はオフィスビ
業において今後重要な役割を果たすRFIDに
ルとなっている。センサーを用い、フロアご
関しては、
『技術創発Vol.
3』
「RFIDを利用す
とに環境のモニタならびにシステム制御を統
るシステムの基盤設計」にて詳細に記述され
合的に行うビルオートメーションシステムは
ているのでそちらを参照されたい。ここでは
22階、23階の2フロアで採用している(図8
センサーを用いて温度や照度などの環境情報
参照)
。同フロアで実施しているビルオート
RS485(EMIT)
松下電工本社
汐留ビル
22F 23F
LonWorks
em
サーバ
BACnet(IEIEJ/p)TCP/IP
イ
ン
ト
ラ
ネ
ッ
ト
︵
TCP/IP
松
下
電
工
門
真
第
二
別
館
照明設備
人感センサー
調光照明器具
明るさセンサー
LonWorks
空調設備
ファンコイル
コントローラ
ファンコイル
ユニット
温度センサ
湿度センサ
VAV
コントローラ
空調機
コントローラ
VAV
アクチュエータ
エアハンドリング
ユニット
防災システム
オフィスのPCから
照明空間をダウンロード
セキュリティ
システム
セキュリティ
システム
イ
ン
タ
ー
ネ
ッ
ト
空調設備 照明設備
NMAST
︶
ルータ
em
電力量計測 空調機熱量計測
フロア統合コントローラ
防災
システム
ルータ
防災センター
セキュリティシステム
防災システム
中央監視HIM
ルータ
防犯MIU
ビルエネルギー
マネジメントシステム
図8 松下電工株式会社 汐留本社ビル センサー制御設備概観(公開資料を参考に作成)
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NRI 技術創発
メーションシステムの構成を述べる。
EMIT計測ネットワークを統合するとともに、
スケジュール制御、協調制御などのアプリケ
①センサーデバイス
ーションに対応する。
用いるセンサーデバイスは人感センサー、
照度センサー、温湿度センサー、日射量計で
あり、制御対象は照明機器、空調、電動ブラ
インドである。
⑤その他
ビルエネルギーマネージメントシステムで
は、従来型の計測結果の集計のほか、消費エ
ネルギー実績管理や需要予測を実現している。
②センシング/制御方法
オフィスワーカー1人の最小執務空間が
このような各種センサーの利用、制御機器
1.
6m×1.
6mであることから、フロアを3.
2m
の連携によって、日中の照明に使う消費電力
×3.
2mのモジュールに分割し、それをセン
を約50%削減し、その他のビルの構造そのも
シング単位、あるいは制御単位としている。
のの省エネルギー対応を含めて汐留ビル全体
人感センサーによる人の存在検知、空調の制
で約20%に省エネルギーを実現している。
御、照明の制御はその倍数を単位として実施
されている。また、空調、照明によるエネル
ギー消費量と日射量の計算を行いながら、電
動ブラインドの角度制御を行い、採光してい
る。
7.豊かな社会システム実現に向けて
(1)課題
「5.標準化動向と先進的サービス/研究事
例」「6.センサーシステム構築の留意点」に
てセンサーを用いたアプリケーション、シス
③ネットワーク
フロア内の空調照明設備用ネットワークに
テムの一例を紹介したが、普及に向けては課
題も多い。
LonWorksを採用、計測監視ネットワークに
たとえば、属性情報を利用するRFIDシス
は 松 下 電 工 のEMITを 作 用 し、フ ロ ア 間 は
テムの場合には、バーコードの代替として利
BACnetを利用し、ルータ経由でオフィスの
用するにはコスト高であるほか、IDと情報参
TCP/IPイントラネットと接続している。
照先のアドレスマッチングを行う機能
(EPCglobalが提唱するONSなど)は、実運用
④フィルタリング
時には大量のトラフィックが発生すると見込
本ケースでは、フロア統合コントローラが
まれ、インターネットのDNS以上に厳しい機
相 当 す る。LonWorks制 御 ネ ッ ト ワ ー ク と
能要求が発生すると思われる。(注:ウォルマ
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ユビキタスネットワーク時代のセンサーシステム
ート社は2005年1月からEPCglobal仕様に準
かかるものと思われる。
拠したRFIDシステムを導入するが、当初は
ONSを利用しないと表明している。
)
また、2
0
03年度は最終消費財のRFID利用
(2)センサーシステムを利用した
豊かな社会実現のために
に関してプライバシー侵害の声があがり、一
以上センサーを用いたアプリケーションの
部で購入ボイコット運動が発生し、RFID推
可能性、システム構築における視点と課題、
進団体、行政がそれぞれプライバシーへの対
サービス提供における課題を整理した。
応に関する声明やガイドラインを表明し、米
今後は標準化活動による前述の技術的課題
国ではRFIDの利用を規制する州法が成立す
解決のほかに次の取り組みが必要である。
るまでに至っている。
①教育や啓蒙によるセンサー利用のメリット
次に、ビルオートメーションの分野に関し
の提示
ては、これまでの機器別の制御からフロアご
センサーを利用することにより、日々の業
とに各種機器を統合して制御する事例の萌芽
務がどれだけ効率化するか、我々の生活がい
が出始めた状況である。一般的には、既存の
かに豊かなものになるかといった将来像と還
機器制御プロトコルを実装したシステムが独
元される利益の大きさをわかりやすく示すべ
立に稼動している状況であり、省エネルギー
きである。新技術を利用する場合には、初期
ビルの実現には、ビル全体でシステムを採用
投資コストの課題から導入を躊躇する傾向が
する、さらには複数拠点をセンターと結び一
あるが、中長期的な視点で導入効果を算出し、
括管理するなど、情報システム並の汎用性が
その結果を共有することが重要となる。
実現できることが望ましい。さらに、電力消
②システムの改善とガイドラインの導入
費実績を元に将来的なコスト予測を行ったり、
先の回転扉の悲しい事故の教訓としていえ
他のインフラと統合して、たとえば、セキュ
ることでもあるが、人の生活、利便性を向上
リティ機器を接続して出退勤管理と連動する
するための手段としてセンサーを利用する場
などの機能が実現すれば、省エネ以外の付加
合には注意が必要である。これは管理対象が
価値を生むことができるだろう。なお、個別
人に限った問題ではないが、センサーは本来、
機器のレベルで細かいセンシング、制御を実
情報の取得と制御を人に代わって、かつきめ
施するには末端デバイスにIPv6を実装する
細かく実施してくれるためのキーデバイスと
ことが望ましいが、個別機器へのIPv6の実装
して機能する。したがって、きめの細かな管
と、大量に発生するであろうセンシングデー
理が可能な分、その利用方法を誤れば時とし
タの処理を行う基盤の構築には多少の時間が
て人命に関わる重大な結果を招く可能性があ
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NRI 技術創発
る。したがって、正規のオペレーションを実
施しているかどうかの定期的な確認作業を行
うことは無論のこと、より効果的な成果を与
●参考文献●
[1]センサエジェント調査研究委員会編集
『センサエージェント』海文堂出版、
200
3.
9月発行
えるようなシステムのバージョンアップ、運
[2]三宅功、斉藤洋著『ユビキタスサービスネ
用基準を定めたガイドラインの導入による安
ットワーク技術』電気通信協会、2
0
03年9
全体制の確保に努めるべきである。
月発行
現在、総務省において開催されている「ユ
ビキタスセンサーネットワーク技術に関する
調査研究会」では、様々なアプリケーション
の可能性、克服すべき技術課題、社会的受容
のための制度面のあり方を議論しており、eJapan戦略Ⅱの推進剤としてセンサーがどの
様な役割を果たすのかといった期待を含めて
その成果に注目したい。
[3]EPCglobal ホームページ
http://www.epcglobalinc.org/
[4]ユビキタスIDセンターホームページ
http://www.uidcenter.org/
[5]BACnetホームページ
http://www.bacnet.org/
[6]Echelon Corp.ホームページ
http://www.echelon.com/
[7]松下電工汐留ビルホームページ
http://shiodome.nais.jp/
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