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韓国社会における「最底辺の在外同胞」としての在日コリアン

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韓国社会における「最底辺の在外同胞」としての在日コリアン
韓国社会における「最底辺の在外同胞」としての在日コリアン
金雄基
*
[email protected]
<ABSTRACT>
The purpose of this thesis is to clarify the fact that Koreans living in Japan are considered the least important of all
Korean people residing overseas by the Korean nation and societies in which people with Korean nationality are found.
Korea has around 7.2 million overseas residents including both those who possess its nationality and those who do not.
In the case of Koreans living in Japan, although they continue to maintain Korean nationality, their situation is unique
in that their migration to Japan occurred as a result of the Japanese colonization of Korea.
Among many aspects of civil rights, this thesis focuses on South Korea’s welfare policy for its overseas residents.
The study found that Koreans in Japan are the only overseas residents who are excluded from most of welfare
programs in Korea. In spite of their Korean nationality, Koreans in Japan are excluded from most welfare available to
domestic residents because they are the only overseas population without a record of being issued a Korean Resident
Registration Number. At the same time, they are also excluded from welfare available to foreign citizens because they
possess Korean nationality. However, hardly any of the Koreans in Japan have perceived this problem because they are
no longer informed about Korean society owing to the loss of ethnic language and culture. This inequality derives from
the government’s unawareness of the existence of Koreans in Japan at the time when the policymaking process
occurred.
Exclusion from the government’s welfare policy has serious implications for their life in their motherland. As the
population of Koreans being repatriated from Japan to Korea grows, their exclusion from Korea’s welfare has
increasingly come under the spotlight. Government practices, for example the fact that they have started forcing
Koreans in Japan to adhere to obligations expected of Korean nationals, such as conscription, are unfair.
Two Koreans in Japan recently sued the government in the Constitutional Court of Korea. This lawsuit is the second
case in which Koreans in Japan are pursuing civil rights in their motherland. Although the lawsuit is still in process,
the National Human Rights Commission of Korea has issued a recommendation that the government should amend its
welfare policy. Koreans in Japan have started attempting an exodus from the status of the lowest ranked overseas
residents. In other words, they have started their re-incorporation into the nation of Korea.
Key words: Koreans in Japan; Overseas Korean; Overseas Korean Nationals; Civil Rights; multiculturalism;
Constitutional Petition
1)
Ⅰ. はじめに
2015年に国交正常化50周年を迎えた韓日関係は冷え切ったまま終わろうとしていたが、年の瀬も押
し迫った12月28日、極めて尖鋭な両国間の歴史問題である慰安婦問題をめぐる政府間交渉が妥結に
至った。日本国内では政府予算から10億円が韓国側に拠出されることに一部反発する向きがあるもの
の、国際社会において韓国側が今後、問題提起しないとする「不可逆性」までも認めさせたことから
外交的勝利と言えよう。一方、韓国側は総理の謝罪を引き出したとはいえ、被害当事者の意向を蔑ろ
にしていたことが明らかになっただけでなく、今後予想される世論の反発を抑える役割も担うことになる
* 弘益大学校商経大学国際経営(中国・日本)専攻助教授。
2 日本學報 第106輯(2016.2)
など、外交的成果については懐疑的と言わざるを得ない。そもそも人権や正義の問題を外交交渉の場
に委ねたこと自体、100%の成果を求めることは難しいのは自明なことであるが、それはともかく、強硬
な反発という形ではあれ、この問題に対する韓国国民の関心は極めて高いと言える。
一方、同じ時期に韓日間のもう一つの歴史問題である在日コリアン1)の存在が顧みられたことはほと
んどなかったと言えよう。韓日基本条約の付属条約である日本国に居住する大韓民国国民の法的地位
及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定(以下、在日韓国人地位協定)によって日本におけ
る居住権が定められるなど、国交正常化によって直接的な影響を受けた当事者であるにもかかわら
ず、その存在感は極めて希薄である。在日コリアン自身は両国間の架け橋を自負2)しているだけに皮
肉と言わざるを得ない。
2012年8月以降、ニューカマーと呼ばれる1965年以降日本に定住する新定住者の集住地域である
新大久保が嫌韓デモの現場となったことから、大統領や外務当局による日本政府に対する憂慮の表明
が数次にわたって行われるなど、韓国政府としては異例とも言える関心を表明したが、世論の日本に
対する怒りや反発の高まりとは裏腹に、恒常的差別による直接の被害者かつ自国民である在日コリアン
の安寧に対する関心は副次的なものに過ぎなかった。1992年のLA暴動当時、米国籍もしくはその取
得に積極的な在米コリアンに対して韓国社会が示した関心に比してもその差は歴然である。3)
では、こうした在日コリアンの韓国社会における法的・社会的地位はいかなるものであろうか。韓日
間の人的移動がますます盛んになる中、在日コリアンも例外ではないはずなのだが、約720万人に達
する大韓民国の在外同胞の中の一集団として在日コリアンを見る際、80万人以上が韓国内に居住して
いるとされている中国朝鮮族4)をはじめとする他国の在外同胞とは対照的に母国における定住に極めて
消極的という特徴5)を持っている。
1) 本稿では日本による植民地支配の影響によって日本へと移住・定住する朝鮮民族の総体を指す用語として「在日コリアン」
を使用する。「在日朝鮮人」が歴史的用語であることには筆者も同意するところであるが、そこには解放後、北朝鮮・朝鮮
総連への支持を自己のアイデンティティとしている政治的性向が混在している点を否定することはできない。この点を看過も
しくは度外視したまま歴史的用語と主張するのには無理があると言わざるを得ない。よって、多様な政治的属性を網羅する
総体を指す用語として、少なくとも政治的中立性を志向する最善の用語として「在日コリアン」を使用する。
2) これまで、多くの在日コリアン著名人が韓日の架け橋たる自負を表明している。一例として大韓民国民団(以下民団)中央本
部呉公太団長は2015年新年辞で民団の役割について次のように語っている。『韓日国交正常化50周年の節目の年を迎
えました。冷え込んだ韓日関係を払拭するためにも、早期に両国首脳が直接会って胸襟を開くことが急がれます。韓日の
架け橋の役割を担う民団が韓日友好の雰囲気づくりに努力しなければなりません』。『統一日報』、2015年1月1日。
3) 韓国外務部傘下の在外同胞財団が明智大青少年活動研究所と(株)韓国リサーチに依頼した『在外同胞に対する内国人の
認識調査』によると、2009年に比べ、2013年における韓国人の在外同胞全般に対する好感度は低下傾向にあり、とりわけ
在日コリアンに対する好感度は29.8%と、2009年43.7%から大きく低下(13.9%)している。これは在米コリアン61.3%(2009)
➡55.0%(2013)<6.3%>、中国朝鮮族26.4%(2009)➡14.9%<12.0%>、ロシア・CIS地域16.8%(2009)➡13.3%(2013)<
3.5%>などに比しても顕著である。「内国民の在外同胞好感度、米国、豪州、欧州順在外同胞財団、「2013年度在外
同胞に対する内国民認識調査」結果(내국민 재외동포 호감도 미국 호주 유럽 순 재외동포재단, 「2013년도 재
외동포에 대한 내국민 인식조사」결과 )」, 『OK Times』, 2013年2月5日。
4) 2015年11月末現在のデータをもとに韓国法務省外国人・出入国政策本部が発表した『出入国・外国人政策統計月報(출입
국・외국인정책 통계월보)』、2015年11月号によると、韓国内に合法的に居住している中国朝鮮族は647,805名と外国籍
同胞全体(753,580名)のうちの86.0%を占めており、非正規(不法)滞在者を含めると80万名を上回っていると言われている。
韓国日報は朝鮮族3人中1人が韓国に滞在しているとしており、定住化傾向が強まっているとしている。「国内朝鮮族80万
名…異邦人ではない異邦人(국내 조선족 80만명… 이방인 아닌 이방인)」、『韓国日報』、2015年12月19日。
金雄基 / 韓国社会における「最底辺の在外同胞」としての在日コリアン 3
それにもかかわらず、韓国籍を維持している者が依然として多数を占めている状況が持続する限りに
おいては、在日コリアンの権利状況に関する考察は国籍の所在する韓国における権利状況と日本に
おけるそれを合わせて考慮しないことには完結しない。しかしながら、このような問題意識はこれまでほ
とんど持たれてこなかった。
韓国における在日コリアンの権利状況に関する論考は極めて少なく、文京洙や趙慶喜、韓榮恵が
行っている程度である。まず、文は在日コリアンは国民国家の枠を超えた存在とし、多重国籍に関す
る論議の始まった韓国社会における国民という概念の変化が在日コリアンに新たな可能性を開くと予見
している。6)ただし、在日コリアンが韓国社会に影響を及ぼし得る存在という論点からは論じられていな
い。これに対して趙は韓国社会において現実に暮らす在日コリアンの立場から論じており、韓国国内
の行政システムが在日コリアンが度外視されたまま設計されてきたことを挙げ、社会的認知を受けること
が困難な「透明人間」的状況に置かれていることを論じている。7)一方、韓の論考8)は在日コリアンの
母国定住の動機や国籍に対する認識などについての聞き取り調査をまとめたものであるが、その対象
は朝鮮籍から韓国国籍への国籍変更者に限定されている。
本稿は在日コリアンの権益状況のうち、韓国におけるそれに関する考察であり、対象を韓国の在外
国民であると同時に日本の特別永住権者である在日コリアンとしている点で趙の論考と同一である。し
かし、韓国社会における内国人以外の構成員、すなわち、在日コリアン以外の在外同胞や外国人の
権利状況との相対比較から見た在日コリアンの地位に着目する点に本稿の意義が存在する。また、在
日コリアンが今日、いかなる論理や実践をもって韓国社会における「最底辺の在外同胞」とも言うべき
地位を克服しようとしているのかについても論じていきたい。なお、上述の通り、在日コリアンの権益状
況は韓日双方のそれを合わせて鑑みる必要があり、本稿もこの点を念頭に置いているが、論議の混乱
を避けるため、本稿は韓国に関する内容に限定することとする。9)
本稿の構成であるが、まずⅡ章において、韓国の急速な多文化社会化と在外同胞の多様化の進展
5) 韓国国籍、日本国籍を問わず、在日コリアンの母国における長期滞在は日本人および他国の在外同胞に比して極めて低
率に留まっている。過去に韓国の戸籍に登載されていたが、外国の国籍を取得した者に取得資格のある在外同胞査証(F
4)の取得者は2013年時点で中国朝鮮族159,324名、在米コリアン44,999名、在加コリアンは13,507名であるのに対し、在日
コリアンは828名に留まっている。韓国法務省外国人・出入国政策本部、前掲資料。また、海外において韓国籍を維持
し、在外国民として韓国内に居住する者が行う在外国民国内居所申告者数(20122014)も在日コリアン14,861名であるのに
対し、在米コリアン36,423名、在加コリアン11,111名となっており、地理的条件や人口数を鑑みた際、韓国籍を持つ在日コ
リアンの母国定住もまた、他国の在外同胞に比して活発とは言い難い状況となっている。国家統計ポータル、「居住国別/
行政区域別居所申告者数(국가통계포털, 「거주국별/행정구역별 거소신고자수)」, 2015年8月31日。http://kosis.kr/st
atisticsList/statisticsList_01List.jsp?vwcd=MT_ZTITLE&parmTabId=M_01_01#SubCont (2015年12月23日検索)
6) 文京洙、「<在日>,“国民”の狭間を生きて」、『立命館言語文化研究』、第20卷第3號、2009年2月、145150頁。
7) 趙慶喜、「在韓在日朝鮮人の現在 曖昧な「同胞」の承認にむけて」、『インパクション』185號、2012年6月、152161頁。
8) 韓榮恵、「在韓在日朝鮮人:本国との新しい関係“朝鮮”から“韓国”に“国籍変更”した在日3世を中心に」、『移民政
策研究』、第3号、2011年、123139頁。
9) 拙稿、「「1965年体制」と在日コリアン強い政治性が生んだ政治的脆弱性(졸고, ‘1965년체제’와 재일코리안강한
정치성이 낳은 정치적 취약성)」、『日本文化学報(일본문화학보)』、第68輯、2016年2月、275-291頁においても
筆者は在日コリアンと韓国との関係性について論じているが、こちらは歴史的経緯や日本における権益状況の構造的限界
などに焦点を置いており、本稿とは相互補完的な関係にある。
4 日本學報 第106輯(2016.2)
について論ずる。Ⅲ章では、このような状況の中、韓国社会はいかに制度設計を行い、在日コリアン
が韓国社会において制度的に周辺化されていったのかに関する考察を行う。Ⅳ章では、こうして権利
から疎外される一方、国民としての義務は強化されるようになった在日コリアンが「最底辺の在外同
胞」とも言うべき地位の克服に対していかなる取り組みを行っているのかについて論ずる。
Ⅱ. 韓国社会における在外同胞の多様化の進展と在日コリアンの周辺化
在日コリアンがわずか2世代目にして民族言語と文化を喪失した理由が同化政策や民族教育に対
する弾圧という日本側の事情にある点についてはこれまで数多く論じられてきたが、北朝鮮への帰還同
胞の実態が知られてきたことに加え、1970年代から80年代にかけて、これらの継承にとって有為な、
少なくとも120名を上回る2・3世の母国修学生が朴正熙政権末期のいわゆる維新政権から全斗煥政
権に至る政情によって国家保安法違反の政治犯に捏造され、母国に対する失望や恐怖から人的往来
の途絶えたという母国側の事情も合わせて考慮されるべきである。2世が中心となった1970年代から既
に在日コリアンの日本における定住性は強まっていたが、母国との往来が断絶とも言える状態にまで深
刻化したのには、こうした要因も作用している。
在日コリアンとは対照的に、在米コリアンの母国への逆移民、すなわち韓国への帰還が本格化し始
めたのが1980年代であり、韓国社会の認識における在外同胞の典型が在日から在米へと移行したのも
この時期である。人種的理由などから米国社会における立身出世に限界を感じた1.5世や2世の多くの
高学歴者が韓国で専門職やホワイトカラーとして活躍を始め、米国に戻ったり、もしくは第3国で就業
機会を見つけることも含めて、母国を足場としたキャリアパスが構築されている。彼らにとってメリットとな
るのが二重言語や二重文化であるのは言うまでもない。こうした状況を制度的に支えているのが、金大
中政権当時の在外同胞の出入国と法的地位に関する法律(以下、在外同胞法)の施行と李明博政権当
時の二重国籍を許容する国籍法改正である。彼らの韓国での活動上の制約は取り払われつつある。
1988年ソウルオリンピック以降、南北間の外交競争において韓国が優位に立ったことが中国やソ連と
の国交正常化に繋がり、これらの国の国籍を持つ中国朝鮮族や旧ソ連(CIS)同胞が1900年代以降、大
挙として韓国に流入を始めた。とりわけ韓国在住の朝鮮族人口は2015年に80万人に達したと言われる
程である。日本と同様に韓国社会においても忌避の対象となっている建設業や飲食サービス業といっ
た、いわゆる3D(日本で言う3K)産業に従事する労働者不足を埋める存在として彼らは今や必要不可欠
な存在となっており、定住志向が高まりと高学歴化の進展に伴って社会的発言力も増してきている。
そこに至る背景として、韓国内のNGO団体などとの緊密な連携による政治力の向上や在外同胞法
違憲訴訟勝訴10)による外国国籍同胞11)としての地位の獲得を挙げることができる。ソウル市加里峰洞
10) ここに至るまでの経緯については、鄭雅英、「韓国の在外同胞移住労働者中国朝鮮族労働者の受け入れ過程と現状
分析」、『立命館国際地域研究』、第26号、2008年2月、8384頁に簡潔に整理されている。
11) 外国国籍同胞としての地位は、在外同胞ビザ(F4)や訪問就業ビザ(H2)などで韓国に入国する外国国籍の在外同胞に
与えられる韓国国内での法的地位であり、滞在期間や就業可能な職種、家族同伴が制限されている訪問就業ビザに比し
金雄基 / 韓国社会における「最底辺の在外同胞」としての在日コリアン 5
や大林洞には彼らの集住地域すら形成されている程である。これらを可能とするのも二重言語と二重文化
である。一方、スターリン時代に極東地域から現在のウズベキスタン、カザフスタンなど、中央アジアに強
制移住させられた上に民族教育も弾圧されていた時期のあるCIS同胞は中国朝鮮族ほどには母国語・文化
の保持ができていないものの、彼らもまた、就労や進学の機会を母国で得ていることには変わりない。
在外同胞法上、韓国国籍を有する在外国民と外国国籍である外国国籍同胞の地位は同等12)とされ
ており、在外同胞を専担する準政府機関である外務部傘下の在外同胞財団もまた、この定義を是とし
ている。しかし、在外国民としての地位しか有さない、すなわち居住国においても外国人である在日コ
リアンから見ると、このような定義は不当と言わざるを得ない。なぜなら、外国国籍同胞は韓国におい
て一般外国人より出入国行政などの優遇を受けるだけでなく、後述の通り、外国人に対する多文化支
援に関連する福祉受給権も有するなど、「一段上の外国人」であるのに対し、在日コリアンは在外国
民と位置づけられて国民としての権利から排除を受ける一方、外国人としての権利は国民であるゆえ、
当然皆無という「一段下の国民」であり、これらは同列とされているからである。現状においては、在
日コリアンが金科玉条のように韓国国籍(朝鮮籍も含む)を守り続けてきた歴史的経緯や価値観は、少
なくとも母国においては何ら意味を持ち得ていない状況にある。
さらに付言すると、在米コリアンなど、出生地主義を採る国家に居住する在外同胞は二重国籍法の
施行によって内国人と同等の権利を有することが可能である。日本と同様、血統主義を採る国家に暮
らす在外同胞もまた、そのほとんどが国民としての権利の根拠となる住民登録番号の発給を韓国で受
けた経歴を過去に有していることから、その効力を復活させることで内国人としての権利を回復すること
が可能13)となる。つまり、在日コリアンは現状において、韓国社会の中で内国人はおろか、世界720
万人の外国国籍者を含めた在外同胞をのうち、最も劣悪な権利状況にあり、言わば「最底辺の在外
同胞」と表現しても過言でない状況に置かれている。
Ⅲ.「最底辺の在外同胞」としての在日コリアン
ここでは韓国社会における「最底辺の在外同胞」と言える在日コリアンが住民として、いかに行政
制度から排除されているのかについて検討を行う。本稿において、社会生活における様々な分野を全
て、在外同胞ビザは就業や金融取引などの経済行為をはじめとする多くの制限が緩和されている永住ビザ(F5)に準じた
在留資格である。中国朝鮮族による在外同胞法違憲訴訟の最大の成果は、大韓民国成立以前に移住した彼らにも在外
同胞ビザの取得機会が開かれた点にある。
12) 在外同胞法は在外同胞の定義に関して、第2条第1項で「大韓民国の国民として外国の永住権を取得した者、もしくは永
住を目的として外国に居住している者(以下、『在外国民』とする)」と、同条第2項で「大韓民国の国籍を保有していた
者(大韓民国政府樹立前に国外に移住した同胞を含む)、もしくは直系卑屬として外国国籍を取得した者のうち、大統領令
によって定められている者(以下、『外国国籍同胞』とする)」という2つの範疇を併記している。つまり、韓国で在外同
胞としての地位を得るに際して韓国国籍の有無は関係ないことがわかる。
13) 在日コリアンもまた、永住帰国の手続を行うことで韓国における住民としての地位を得ること自体は可能であるが、日本の
永住権もしくは永住性を認めた滞在ビザを放棄することを韓国外務部に申告することが前提となっていることから抵抗感が
強い。
6 日本學報 第106輯(2016.2)
て網羅するのは限界があるので、福祉受給権の分野を中心に論じたい。その際、韓国社会における
他の構成員(内国人、他国の在外同胞、一般外国人)との比較考察を行うこととする。
まず、なぜ在日コリアンがこのような状況に置かれるのかについて、世界170カ国に暮らす720万人
に達する韓国の在外同胞における在日コリアンの特殊性について整理したい。在日コリアンは韓国の
在外同胞の中で、中国朝鮮族やCIS同胞と同様、日本の朝鮮植民地化という非自発的な移住経緯を
持っている。しかし、日本が血統主義を採用していることから、世代を超えて韓国国籍を継承していく
集団14)であり、彼らとは異なる範疇にあると共に、在米コリアンをはじめとする、居住国の国籍取得に
積極的な解放後の自発的経済移民とも異なっている。よって、<表1>からもわかる通り、韓国の在外
同胞の中で在日コリアンは独自の範疇に属している。韓国の法制度が在日コリアンという、第3の範疇
を度外視したまま、韓国国籍と住民登録の有無を基準として制度設計を続けていることが問題の根本
的な原因である。
<表1> 大韓民国の在外同胞の分類
移民経緯/国籍
自発的
非自発的
(日本の植民地支配との関連性)
韓国国籍
外国国籍
解放後における経済移民
(ほとんどが住民登録法施行以降)
在日コリアン
中国朝鮮族・CIS同胞
出典:筆者作成 次に、在日コリアンに与えられる韓国内の法的地位は「在外国民」、すなわち韓国国籍を持って
はいるものの、国民(内国人)に対する福祉受給権や政治参加などの諸権利によって構成される市民権
の制約を受ける地位と定義することができる。2012年大統領選挙における民団の要望事項であり、朴
槿恵候補の公約でもあった在外国民用住民登録制度が2015年1月22日から施行された。しかし、現
状においては、在外国民の主観部署が外国人を扱う法務部から内国人を扱う行政自治部に移管され
たことのみを意味しており、権利と義務に関する面では何ら改善が行われていない。過去、日本の外
国人登録法によって法務省の管轄下にあった在日コリアンからすれば、韓国においても同様の措置が
なされるようになったことで、ひとまず「自尊心」の面では肯定的と言えるかもしれない。しかし、後述
の通り、内国人と同様、住民登録制度に編入されはしたものの、敢えて「在外国民用」であることが
住民登録証に明記され、権利制限の根拠となっている。Ⅳ章で詳細に論じるが、既存の法令を改正
してまでも在外国民に対する制約を維持していることからもわかるように、韓国行政は海外に永住権を
14)『毎年約1万人の在日コリアンが日本に帰化している』ことを挙げて、遠からず日本に同化し、消滅するだろうという論議が
韓国で行われることが多々ある。しかし、2005年以降、帰化者の数が1万名を上回ったことは一度もない事実はこのような
指摘に根拠がないことを示している。例えば2010年は6,668人、2011年5,656人、2012年5,581人である。民団ホームペー
ジ。https://www.mindan.org/kr/shokai07.php#22 <2015年12月23日検索>) 実際のところ、帰化よりも深刻な問題は二重国
籍者の問題である。韓日間の夫婦の間に生まれた子どもには本来、両国の国籍が存在しているが、日本の出生届が韓国
国籍を自動的に担保するものではなく、親が韓国公館に出生届を出すことで初めて韓国国籍が得られることから、多くの韓
日ダブルの子どもたちが日本国籍のみを持つ状況になっていると考えられる。
金雄基 / 韓国社会における「最底辺の在外同胞」としての在日コリアン 7
持つ者、もしくはそのおそれのある者に対し、明確に権利制限を行う意思を持っている。
在外国民である在日コリアンが韓国で十分な市民権の保障を受けるには、海外移住法による「永住
帰国」手続を経た上で住民登録を行う必要がある。その際、他の在外国民と同様、在日コリアンた、
日本での永住権の放棄を求められる。15)しかし、在日コリアンの永住権とは、経済的機会を求めて自
発的に海外に定着した結果としての権利とは異なり、日本の朝鮮植民地化による非自発的移住とい
う、歴史的経緯が反映された特別永住権であるという点で問題と言える。ましてや特別永住制度をめぐ
る交渉における当事者の一方は他でもない韓国政府である。特別永住制度は単に在日コリアンの居住
権を保障する手段(「追い出されない権利」)に留まるだけでなく、植民地支配の責任を回避し続けて
いる日本政府が自ら整備した唯一の補償的制度という意味合いも込められている。よって、在日コリア
ンの立場からすると、特別永住権の放棄は、自らに内在する歴史性と民族性を構成するアイデンティ
ティの放棄を意味することになる。実際、韓国に定住している在日コリアンの多くがこのような理由から
特別永住権の放棄をためらう一方で、子どもたちにもその地位を相続させている。16)現政権は日本と
の間の歴史問題の解決を掲げて首脳会談も実施してこなかった程であるが、その日本から母国に渡っ
てきた同胞に対しては、歴史問題の証左である特別永住権を放棄しなければ権利から排除するという
罰を与えるという自己矛盾を冒しているのである。
このような在日コリアンの韓国社会における位相は、他の在外同胞との比較によってより鮮明にな
る。李明博政権当時の2010年に改正された国籍法によって、出生地主義を採る米国などで出生したこ
とで国籍を取得した在外国民が韓国での居住を希望する場合、その国の国籍者としての権利(外国人
としての権利)の行使を留保するという誓約(外国国籍不行使誓約)さえすれば、内国人と同一の地位を
得ることができるようになった。17)また、2011年からは韓国国籍を離脱した満65歳以上の外国国籍同
胞に対しても同様の条件で韓国国籍の回復を可能とした。現在、在米コリアン社会を中心として、年
齢引き下げの要求が殺到している状況を鑑みた際、その政治力の影響もあり、漸進的にではあれ、
引き下げに向かうと思われる。すなわち、彼らには米国等の国籍を維持したまま、韓国においても住
民登録を行い、韓国の市民権が内国人と同様に保障されることを意味している。
日本以外の血統主義を採る国家に暮らす在外同胞の場合も、「実質的に」在日コリアンほどには
制約を受けない状況にある。法的には内国人が90日以上海外に居住する際には、在外国民登録法
によって、在日コリアンと同様に在外国民へと法的地位が変更されることになっている。しかし、在外
15) 海外移住法施行規則第5条第1項。
16) クァク・ジンソン、「カネがほしければ日本人になれ?祖国の「侮辱」 (곽진성, 「돈 받고 싶으면 일본인이 되라? 
조국의 ‘모욕’)」, 『OhmyNews』, 2012年6月29日。 http://www.ohmynews.com/NWS_Web/view/at_pg.aspx?CNTN_CD
=A0001748825 (2015年12月 23日検索)当然ながら、在日コリアンが特別永住権を放棄しない理由を歴史問題にのみ求める
ことはできない。内国人と婚姻し、韓国に定着している多くの在日コリアン女性らによれば、特別永住権の放棄が困難な理
由について、『特別永住権を放棄したら、(日本にいる)家族と生き別れになり、万が一、夫と離婚したら(韓国では)全く縁
故がなくなるため』としている。こうした説明は、世代経過が他の在外同胞に比べて早いことから、韓国国内に親戚をはじめ
とする人的ネットワークが希薄という在日コリアンの特徴を裏付けている。筆者による在日コリアン女性に対するインタビュー、
2015年9月11日、京畿道一山市。
17) 国籍法第13条第1項。
8 日本學報 第106輯(2016.2)
<図1> 韓国の各行政部署による多文化支援政策
部署別事業遂行
多
文
化
家
族
政
策
委
員
会
女性家族部
多文化家族支援総括および暴力被害移住女性支援
法務部
外国人出入国審査および滞在・帰化許可などの管理
教育部
多文化家庭子女の学校教育支援
文化体育
観光部
雇用労働部
多文化の受容性を高め、韓国語教育内容統合支援
結婚移民者就業支援、職業相談および訓練
出典: 女性家族部ブログ.
国民登録法には罰則規定がなく、強制力も持たない。よって、「バカ正直に」同法に従って住民登
録証を返納したり、「運悪く」公権力による住民登録の職権抹消措置に引っかからない限り、相当数
の内国人が住民登録を維持したまま、海外に居住しているのが現実である。18)したがって、国民健康
保険をはじめとする福祉受給や金融取引などの経済行為を行う際にも、当然不利益は生じない。19)甚
18) 本来なら韓国から海外に90日以上留学している留学生も住民登録が抹消されて然るべきである。海外留学経験経歴のある
内国人は自らの住民登録が留学中に抹消されていたかを想起してみるとよい。
19) このような状況は、米国永住権を所持したことで住民登録証を返納し、韓国に暮らしているある主婦によるブログの内容に
よってもわかる。「私は大韓民国で生まれ、短い帰還の外国生活を除けばずーっとここで暮らしてきた大韓民国国民だ。に
もかかわらず、私は大韓民国の国民として認められず、当然、謳歌することのできるはずの権利すら自ら放棄して暮らすこと
が多かった。その理由は2008年、米国永住権を得たことで住民登録証を返納したからだ。(在外国民はPR旅券の発給を受
けることで、住民登録証を外務部に返納しなければならないというので、そうしたのだが…わざわざこの様に守ることはなかっ
た…後になってわかったㅠㅠㅠ)言うならば、あまりに正直に(ㅋㅋㅋ)国家の言う通りにしたのに、このことによって、私たち
の家族はこの国でとてもつらい暮らしをしている愚か者だったのだ…事業をしている夫は…米国永住権を放棄するしかなく、
私は住民登録証の代わりに、以前、発給を受けた運転免許証や旅券で認証できないものは放棄するしかなかった。私のよ
うな人がこの地で堂々と社会生活をするなら外国人居所証(在外国民国内居所登録証の間違い。以下同様。筆者註)を必ず
作らなければならないが、外国人居所証を作るとなると、私がこれまでこの国で暮らしてきて住民登録番号で利用してきた銀
行や官公庁、インターネットなどの全てのものが外国人居所証番号に変わらねばならない。住民登録番号と外国人居所証が
自 動 連 携 し て い な い の で 5 0 余 年 の 私 が な く な り 、 私 は 新 た に 外 国 人 と し て 登 録 さ れ る と い う こ と だ 」 http://blog.naver.com/mesites58/220483907348 (2015年12月23日検索)この主婦の状況こそが、まさしく在日コリアンが韓国
で置かれている状況なのであるが、以下の2点において異なっている。まず、在日コリアンは住民登録証の発給を受けた経
歴がないので、彼女が言及しているように住民登録証を返納しないまま、内国人の権利を享受するという選択は存在しな
い。また、抹消された住民登録番号による金融取引などの経済行為に対する言及があるが、発給経歴そのものがない在日
コリアンには不可能なことである。つまり、在日コリアンは権利制限を受ける国民である在外国民制度の適用を唯一、厳格に
金雄基 / 韓国社会における「最底辺の在外同胞」としての在日コリアン 9
だしくは、住民登録を職権抹消されたとしても、金融取引に際しては、多くの場合において抹消された
住民登録番号の提示によって可能である。すなわち、実質的に実効性のある権利制限を受けている
在外国民は、住民登録番号の発給経歴のない在日コリアンだけなのである。
次に、外国国籍者である中国朝鮮族とCIS同胞との比較を行う。在日コリアンと同様、非自発的移
住経緯を持っているものの、彼らは韓国からすれば、居住国である中国およびCIS(ウズベキスタン、
カザフスタン、ロシアなど)国家の国籍を有する厳然たる外国人である。しかし、上述の通り、憲法訴
訟勝訴によって、彼らもまた、在外同胞法による外国国籍同胞としての法的地位が与えられている。
同法第2条により、彼らの地位は在日コリアンを含む在外国民と同等である。すなわち、韓国国籍を
守り続けてきた在日コリアンの努力の母国からの対価は、外国籍を持つ彼らと同等の法的地位に過ぎ
ないのである。
<表2> 韓国における福祉受給権に関する在外同胞間の差異 (育児関連支援基準)
属性
育児支援 (内国人対象)
自発的海外移住者
多文化支援 (外国人対象)
O(国籍状況により、どちらか一方の受給可)
外国国籍同胞
X
O
在日コリアン
X
X
出典:筆者作成
自国民である在外国民でさえ権利制限を受けている状況を考慮すれば、外国国籍同胞が内国人向
けの福祉受給や政治参加に制約を受けるのは自然な流れと考えられなくもないが、その代わり、彼ら
には外国人としての福祉受給権と政治参加が保障されている。すなわち、一般外国人と同様、彼らは
女性家族部、保健福祉部をはじめとする各行政部署が管轄している移住女性に対する韓国語教育や
その子どもたちに対する二重言語教育や学習支援をはじめとする様々な多文化支援(<図1>参照)の
対象となっている。20)また、外国国籍を維持したまま、韓国の永住権を取得して3年が経過すれば外
国人地方参政権も保障される。一方、在日コリアンは韓国国籍者であるゆえ、多文化支援からも排除
されており、参政権についても2007年に在日コリアン李健雨らによる憲法訴訟で勝訴するまでは完全
に排除されていた。海外に暮らす在外国民は現在も国会議員選地方区の参政権は停止されたままで
ある。<表2>は福祉受給権に関する在外同胞間の受給状況の違いを示したものであるが、ここからも
わかる通り、在日コリアンの権利状況は外国国籍を含めた在外同胞の中で、まさしく「最底辺の在外
同胞」のそれと言うしかない状況に置かれているのである。21)
受ける存在なのである。
20) 支援の対象となった移住女性の場合、韓国国籍を取得した後も支援の対象となる。
21) 在日コリアンの不利益は権利の側面に留まらない。国民としての義務に関してはむしろ強化されている。2012年6月、韓
国兵務庁は在外国民に対する兵役義務強化を意図した改正を行い、事実上の免除に当たる兵役賦課上限年齢までの持
続的猶予を可能とする「在外同胞2世」制度の適用が厳格化された。これによって、1994年1月1日以降出生した韓
国国籍の在日コリアン男性も満18歳から満37歳の間に通算3年(365日×3)以上韓国に滞在した時点で「在外同胞2
世」としての扱いが取り消され、兵役義務において内国人男性と同様の扱いを受けることとなった。筆者の聞き取りに対
10 日本學報 第106輯(2016.2)
Ⅳ.地位改善のための実践
上述の通り、ここでは在日コリアンの韓国社会における権利状況が2015年1月の在外国民用住民登
録制度施行後においても劣悪なまま維持されている状況について論ずることする。それと共に、このよ
うな状況に対する異議申し立てとして、現在、韓国に定住している在日コリアン当事者による福祉受給
権からの排除に対する違憲訴訟についても触れたい。
<表3> 保健福祉部が作成した「2015保育事業指針」
題目
支援対象
保育料/
養育手当
2014年度
2015年度
支援資格のない者
支援資格のない者
国外移住者(現地移住者、移民出国者), 国籍
喪失者
④ 国籍喪失者
 市民権の取得によって国籍を喪失し、住民
番号が抹消された児童
 永住権取得、居住旅券保有、長期滞在な
どの理由により、住民登録が抹消された児童
 市民権の取得によって国籍を喪失し、住民
番号が抹消された児童
⑤ 住民登録法第6条第1項3号22)によって住民
番号の発給を受けたり、同法第19条第4項23)
によって在外国民として登録・管理されている
者
出典:当事者が撮影した原本をもとに筆者が翻訳
小学生の息子と幼稚園生の娘(いずれも韓国国籍と日本の特別永住権を所持)を韓国国内で育てて
いる、ある在日コリアン女性(夫は内国人)が保育料と養育手当の受給を居住地の区庁にて申請したとこ
ろ、区庁側は保健福祉部が作成した「2015保育事業指針」(<表3>)を根拠に拒否事由の説明を
行った。24)また、これを受けて保健福祉部に対し民願(政府や区庁などの行政機関に行政処理を求め
ること)を提起したところ、保健福祉部側は同様の理由をEメールで送信することで正式に支給を拒否し
た。彼女の家族は内国人と同様、納税の義務を果たしているだけでなく、兵役も履行しなければなら
ない。2012年6月の兵役法改正により、彼女の息子の場合、満6歳までに両親と共に韓国を出国し、
継続して海外で居住したとしても、他の在外国民と同様、満18歳から満37歳までの間に通算3年以
し、兵務庁担当者は『在日同胞を念頭に置いた改正』であることを強調している。拙稿、「韓国兵役行政と在日コリア
ン」、(特活)コリアNGOセンター主催セミナー、大阪市立青少年センター、2014年2月14日。
22) 在外国民用住民登録に関する条文。在外国民の定義を次の通りに行っている。在外国民: 在外同胞法第2条第1項によ
る住民であり、「海外移住法」第12条による永住帰国申告をしていない者のうち、次の各目に該当する場合。1. 住民登
録が抹消されている者が帰国後再登録申告を行う場合、2. 住民登録のなかった者が帰国後、初めて住民登録申告を行う
場合
23) 条文は次の通り。市長・郡守もしくは区庁長は住民登録されている居住者もしくは居所不明者が「海外移住法」第6条に
よって海外移住申告をして出国、もしくは同法第4条第3号によって現地移住をした場合には第6条第1項第3号の在外
国民と区分し、登録・管理しなければならない。
24) 筆者による在日コリアン女性に対するインタビュー、2015年9月11日、京畿道一山市。
金雄基 / 韓国社会における「最底辺の在外同胞」としての在日コリアン 11
上、韓国に滞在すれば兵役義務も賦課される状況にある。
ここからわかるのは在外国民を福祉の対象から排除する韓国政府の明確な意思である。保育事業指
針の2015年における改変事項には、支援対象に含まれない者(支援資格のないもの)の中に、住民登
録法第6条第1項3号によって在外国民用住民登録番号の発給を受けたり、同法第19条第4項の規定
によって在外国民として登録・管理されている者については、内国人を対象とする保育料や育児支援
を受給対象から除外するとの内容が含まれている。これは在外国民用住民登録制度の施行に合わ
せ、その番号の発給を受けて韓国国内に居住する在外国民を支援の対象から継続して排除するため
の変更を意味している。<表3>「2015保育事業指針」はその証拠である。このような行政行為は、在
外国民の国内居住上の不便をなくすという趣旨で設けられた在外国民用住民登録制度の趣旨に反して
いるだけでなく、「権利は義務の対価給付」という、子どもの権利を論ずるのには不適切な主張を
もってしても矛盾している。
一方、2011年ごろから多文化支援(主として外国籍者対象)からの排除25)に対する是正を求める問題
提起26)が行われていた時期があったが、その中心となっていたのは、やはり母国言語・文化への適応
が不十分なまま子育てを行っている、類似した家族状況にある在日コリアン女性らだった。当時は在
外国民用住民登録制度の施行が論議されていた時期だったこともあり、その施行後に実効性を見極
め、内国人用の養育支援の適用を模索する方向で活動を留保していた。
保健福祉部による明確な排除意思の表明によって、韓国国籍の在日コリアンは内国人向けの育児
支援からも外国人向けの多文化支援からも排除される状況が確定した。これを受けて、2015年11月、
上記の在日コリアン女性ら2人が憲法裁判所に韓国政府を相手どって提訴を行ったのであり、同訴訟
は2015年2月現在、係留中である。
憲法違反の是非を争う憲法裁判所の特性上、訴状の中で原告側は国家が侵害している権利とし
て、憲法10条人間の尊厳と価値、同第11条財産権、同第34条第1項人間らしい生活を営む権利お
よび子どもに教育を受けさせる権利、同第36条第1項婚姻と家族生活の保障、同第36条第2項母性
の保護と保健権といった憲法上の各条項を挙げている。27)一方、上記訴訟に関連した報道で、教育
部幼児教育政策課関係者は、『居住国で永住権を持つ在外国民は住民番号が付与されても、基本
的に除外の対象』であり、『永住権を持つ国家に永久に居住するという意思を明らかにしているの
で、これを放棄すれば支援できる』としている。28)このような認識からは在日コリアンの特別永住権と
25) 韓国の多文化政策における在外同胞の排除に対し、韓国の多文化問題の専門家もその誤りを次のように指摘している。
『韓国社会の多文化に対する認識は主として多文化家族を中心に形成されており、その政策もまた、家族を単位として展開
されている。これに伴い、女性家族部が行っている事業の場合、その受給対象を募集するにあたって、家族制度の中に収
まらない移住労働、留学生、在外同胞などは除外している。韓国政府が認識しているこのような誤った認識は…』パク・ジョ
ンデ、パク・ジヘ、「韓国多文化政策の分析と発展方案研究(박종대, 박지해, 「한국 다문화정책의 분석과 발전 방안
연구)」, 『문화정책논총(文化政策論叢)』、第28巻第1号、2014、52頁。 26) クァク・ジンソン、前掲記事。シン=ユン・ドンウク、「韓国国民なのに住民番号がないの?(신윤동욱, 「한국 국민인데 주
민번호가 없다고?」)」、『ハンギョレ21(한겨레21)』、第973号、2013年8月9日では活動の中心となっていた在日コリア
ン女性の主張が紹介されている。
27) 請求人代理人による憲法訴願審判請求書、2015年11月、2頁。
12 日本學報 第106輯(2016.2)
自発的移民の結果として得た一般的な永住権との差異に対する認識など全くうかがえない。
こうした状況の中、2015年11月26日、韓国国家人権委員会は上述の訴訟における請求人とは別途
の韓国に定住する在日コリアンの子どもに対して保育料や幼児学費の支援が行われないのは平等権の
侵害に当たると判断し、保健福祉部長官と教育部長官に対し、韓国に居住する在外国民の子どもにも
保育料・幼児学費を支援するよう勧告した。29)日本で出生した孫が韓国に在住して保育園に通ってい
るものの、在外国民であることを理由に保育料の支援対象から除外されたのは不当とする祖父の陳情
を国家人権委員会が受け入れたのである。
報道資料によれば、保育費支援について保健福祉部は『国内永住居住の意思が不明確な在外国
民に対してまで拡大して支給するのには、社会的合意および慎重な検討が必要』と主張30)しており、
共同で事業を展開している教育部の見解も、『乳幼児学費は大韓民国に永住帰国意思のある内国人
を支援するのが原則であり、在外国民はその特性上、主たる居住地が大韓民国ではないので、現在
保育料および家庭養育手当など、他の部署の類似した福祉サービスも在外国民の受給資格を認めて
いない』点などを考慮し、保健福祉部と同様、支援対象ではないと主張している。31)しかし、同委員
会は在外国民の幼児を平等に処遇するかについて、社会的合意は必要ないとの見解を示した。ま
た、「乳幼児保育法」と「幼児教育法」における保育費・幼児学費支援について、在外国民幼児を
除外するという規定がない点などを挙げ、国内に居住する在外国民幼児が保育園・幼稚園を利用する
場合、支援対象から排除される理由はないと判断した。さらには、同幼児が韓国に定住しているにも
かかわらず、内国人幼児が受けられる支援から除外されるのは、韓国が批准した国連「児童の権利
に関する条約」(子どもの権利条約)にも反していると指摘している。32)内国人はおろか、外国人や難
民も対象となっている育児教育支援33)から在外国民、とりわけ、受給機会が完全に遮断されている在
日コリアンは母国政府を相手に国際人権規範に権利の根拠を求めねばならない程に深刻な状況にあ
る。34)日本政府がヘイトスピーチ規制法制定に消極的であることを在日コリアンが国連人権規約委員
会などに問題提起せざるを得ない状況と何一つ変わらないのである。
上述の訴訟に関連して12月には憲法裁判所に対し、公開弁論開催を求める嘆願書提出運動が行
われた。約800名の個人と在外同胞問題に関連する韓国内外の学界や機関が多数参加しており、中
28) カン・ソンチョル、「「子どもの保育料をください」…母国で憲法訴願を出した在日同胞(강성철, “자녀 보육료 달라”…모
국서 헌법소원 낸 재일동포)」, 『聯合ニュース(연합뉴스)』, 2015年11月17日。 http://www.yonhapnews.co.kr/bulletin/
2015/11/17/0200000000AKR20151117039300371.HTML (2015年12月23日検索)
29) 韓国国家人権委員会報道資料、「国内居住在外国民幼児に保育料・育児学費支援排除は差別(国家人権委員会報道資
料、「국내거주 재외국민 유아에게 보육료・유아학비 지원배제는 차별」)」、2015年11月26日。
30) 上掲資料。
31) 上掲資料。
32)「居住在外国民にも保育料支援すべき=韓国人権委が勧告(국내거주 재외국민 유아에 보육료 지원배제는 차별)」、
『聯合ニュース(연합뉴스)』、2015年11月26日。 http://www.yonhapnews.co.kr/bulletin/2015/11/26/0200000000AKR2015
1126051900004.HTML(2015年12月23日検索)
33) 李範俊、「「在日同胞保育料差別」、前憲法裁判官が糺す('재일동포 보육료 차별' 전직 헌법재판관이 바로잡는
다)」、『週刊京郷(주간경향)』、2015年10月20日。
34) 前掲憲法訴願審判請求書もこの点を主張している。
金雄基 / 韓国社会における「最底辺の在外同胞」としての在日コリアン 13
でも在日コリアン弁護士協会(LAZAK)は123名の会員全員が参加して違憲意見書を提出している。35)
同意見書もまた、「2015保育事業指針」はこれまで論じてきた諸主張を憲法違反を指弾している。と
りわけ、『結果として、日本の特別永住権を有する同胞に対し、韓国で保育料及び養育手当を受給
するために特別永住権を放棄させ、もしくは、日本国籍を取得させようとするものであって、日本の植
民地支配と在日同胞に対する差別・同化の歴史を、在日同胞の祖国が自ら消し去ろうとするもの』との
主張は重要である。なぜなら、在日コリアンにとって、この点は自明であると共に自らの存在意義のか
かっている問題である一方、既に論じた通り、韓国政府にはこれに対する認識すら欠如しているからで
ある。今後の訴訟の争点は単に手当の支給対象に在外国民を含めるか否かという次元に留まらず、韓
国政府に対し、在日コリアンという存在を念頭に置いた上で制度設計を行う必要性を認識させることに
あると言ってよいだろう。
Ⅴ.おわりに
外国籍者として日本に暮らしている以上、たとえ漸進的に韓国国籍者は減少していくとはいえ、国
籍の存在する国や社会における地位に無自覚なまま、市民権の担保されていない外国人住民という立
場にのみ傾倒して日本での差別解消をいくら主張したところで十分な説得力は持ちえないのではない
か。筆者はこのように考えるが、こうした認識は合理性に欠けるものなのだろうか。本稿で考察してきた
母国における劣悪な地位は、在日コリアンが日本における地位向上を図る上においても足枷となって
はいないだろうか。
在日コリアンと母国の間に横たわる悲劇的な歴史的経緯を鑑みたとしても、それをもって母国の事情
を度外視してもかまわないということにはなり得ないはずである。また、偏狭なナショナリズムを否定する
ことには筆者も同意するところであるが、こうした批判もまた、国家と個人の関係性を度外視する免罪符
にはなり得ない。国家の枠組みの中でフルメンバーとして市民権を享受している者によるナショナリズム
批判と、国家や制度、そして政治に振り回され続けてきた在日コリアンのそれとの間では次元が異なっ
て然るべきである。居住国と国籍の存する国家双方の制度に常に認識しつつ矛盾点を認識し、是正し
ていくための実践が必要なのではないか。
特に在日コリアンの場合、その権利状況を論ずるにあたっては韓国と日本の「足し算」ではなく、
「掛け算」の関係にあるという認識が必要である。具体的に言うと、母国に帰還できない程の劣悪な
権利状況が日本定住以外の選択肢を喪失させ、他国の在外同胞が積極的に母国という資源を活用し
ているのとは対照的に、唯一、母国と断絶し、居住国に閉じ込められる状況が生み出されていると
いった形で相互に作用し合っているのである。
しかし、無権利の外国である日本とは異なり、在日コリアン自身による憲法訴願によって勝ち取った
35) 李範俊、「「在日同胞差別」を廃止してください('재일동포 차별'을 폐지해 주세요)」、『週刊京郷(주간경향)』、
2015年12月15日。
14 日本學報 第106輯(2016.2)
在外国民国政参政権という形で政治参加が可能なのが母国韓国であり、いかにそれを行使していくの
かに関する思案と実践も可能な状況にある。差し当たり、母国の言語や文化を回復するための資源を
母国から引き出すことを目指すのは、その社会を理解する上でも緊要である。
本稿は在日コリアンの位相に関する考察であり、母国である韓国における権利状況を対象としている
が、その際、現在進行中の憲法訴願を対象に含めたゆえ、限界が生じていることについては筆者も認
識しているところである。それにもかかわらず、論議の対象に含めたのは、韓日修交50周年という時点
における在日コリアンの韓国における地位について、最も根本的かつ網羅的に論考を行うことが可能と
判断したからである。ゆえに今後、訴訟が進展した時点で別途の論考を行う必要性を認識しており、
今後の課題としたい。
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<요 지>
본고의 목적은 재일코리안이 한국사회에서 ‘밑바닥의 재외동포’로 취급받고 있다는 점을 제시하는 데 있으
며, 한국정부가 추진하고 있는 복지정책 측면에서 고찰했다. 이때 대한민국의 재외동포라는 관점에서 재일코
리안을 인식해 여타 재외동포들과 비교를 해보았다.
재일코리안은 이주경위가 일제강점이라는 비자발적 이주라는 점에서 중국 조선족이나 고려인과 동일하나
한국국적을 유지하고 있다는 점에서 차이가 있다. 또한, 재미코리안으로 대표되는 해방후 자발적 이민과도 경
위가 다르다. 즉 재일코리안은 독자적인 범주의 재외동포이다. 그럼에도 불구하고 그동안 한국정부의 정책설
계과정에서는 도외시되어온 것이다.
그것이 여실히 드러나는 것이 복지정책이며, 특히 아동복지와 관련된 것이다. 내국인을 대상으로 하는 육아
교육지원에서는 한국국적을 유지해왔음에도 불구하고 주민등록이 없다는 이유로 배제되고 외국인을 대상으로
하는 다문화지원에서는 한국국적이 걸림돌이 되어 역시 배제되고 있다. 이처럼 재일코리안은 복지정책에서
완전히 배제되고 있으며, 이 같은 재외동포는 재일코리안이 유일하다. 한편으로 정부는 병역제를 비롯한 국민
으로서의 의무는 강화하고 있다.
최근 재일코리안의 모국 정착에 따라 이 같은 문제점의 영향을 받게 되는 이들이 늘어나기 시작했다. 이들
가운데 정부를 상대로 헌법소원을 제기한 재일코리안이 있으며, 소송은 현재 진행 중이다. 국가인권위원회는
동일한 사례에 대해 시정권고를 정부에게 내렸다. 이번 소송은 재일코리안이 국가를 상대로 시민권적 권리를
촉구한 두 번째 일이며, 동시에 이들이 국민국가 대한민국사회에 편입되어가는 과정이기도 한 것이다.
주제어: 재일코리안, 재외동포, 재외국민, 시민권, 다문화주의, 헌법소원
■ 투 고 : 2015. 12. 31.
■ 심 사 : 2016. 01. 15.
■ 심사완료 : 2016. 01. 30.
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