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【コーディネート業務に関する事業報告書】
[一般]様式 16
事業主体
対象住宅
団
地
NPO 法人『人・家・街
安全支援機構』
略称〈LSO〉
「松が丘」住宅団地(大阪府高槻市松が丘 1 丁目~4 丁目)
当該住宅団地を対象として区域内の既存住宅実態の把握及び住み替え住宅
の流通・活用に関する情報の提供・蓄積と相談対応実施により流通促進を行
事業概要
った。また既存住宅の利活用に関する意向の把握とともに生活利便サービス
や子育て支援、介護支援関連サービスに対する住民ニーズを調査・把握し課
題解決にむけた魅力あるまちづくりに貢献する事業を住民と共に展開した。
1. 対象住宅団地の概要
(1) 「松が丘」住宅団地の地域特性
当該団地は、最寄り駅である JR 高槻駅までのバス約 10 分を含めても、大阪へも京都へも 30
分程度で出られる非常に利便性の良い地域である。最寄り駅までの市営バスも、朝の通勤時間帯
には約 3 分に 1 本運行している。また郊外に位置していることにより、自然が非常に豊かな地域
であり、子育てにも適している。さらに、市内には医科・歯科診療所が約 450 と大学病院などの
専門医療を担う病院も整備されており、子どもを持つ親や高齢者にも安心して暮らせる地域にな
っている。
図1
松が丘住宅団地の立地
表1
松が丘住宅団地人口統計情報
松が丘 1 丁目
松が丘 2 丁目
松が丘 3 丁目
松が丘 4 丁目
1,417
1,566
1,471
1,077
5,531
226
691
558
437
1,952
18.8%
44.1%
37.9%
40.6%
35.3%
560
680
641
493
2,374
人口
65 歳以上
65 歳以上割合
世帯
出典:高槻市 HP
統計情報(人口・統計書)平 成 25 年 3 月 デ ー タ
1
合計
住 民 基本 台 帳 の人 口 及 び世 帯 数 を、 電 子 計算機 で 集計した 結 果(概数 )
(2) 居住者の現状
当該団地は、主に昭和 40 年代に分譲された戸建住宅の集合団地で、現在 1,762 世帯、約 4,100
人が居住している。住民の約 60%が 65 歳以上であり、高齢者率は大阪府平均の 23.7%(総務省
「人口統計」平成 24 年度)を 36pt 以上上回り、顕著な高齢化が進んでいる。公共交通機関であ
るバスが頻繁に通っているが、坂道が多く、自家用車が無いと買い物や病院通いは厳しい。
また、旧耐震基準で建てられた住宅が約 1,000 戸有り、耐震化・リフォームの必要な住宅が多数
存在している。
(3) 空き家の発生状況・発生見通し
当該団地の空き家率を調査したところ、5.2%(総住宅件数 1,808、空き家件数 94)であった。
今後の見通しとしては、上記(1)で示したように当該団地では顕著な高齢化が進んでおり、今
後空き家が増加することが推測できる。
(4) 持ち家の流通状況(件数、取引価格等)
不動産取引情報提供サイトのレインズに登録されている当該団地の取引事例数は、2011 年度
25 件、2012 年度 34 件、2013 年度 27 件 2014 年度 27 件であった。取引価格は、場所・区画の形
状・築年数・現状有姿渡し又はリフォーム渡しなどにもよるが、約 1,400 万円~2,700 万円とな
っている。
2. 事業の背景と目的
(1) 事業の背景
少子高齢化が進んでいることを原因の一つとして、全国的に空き家率が高くなっているという
問題に対し、上記 1 で示したように当該住宅団地でも高齢化が進んでいることにより、今後空き
家がさらに増えていくことが予測される。空き家が増えることによる弊害としては、老朽化によ
る建物の倒壊、不法侵入など不審者の出入りによる治安の悪化、ゴミの不法投棄や建物の老朽化
による景観の悪化など様々なものが考えられる。そのため当該住宅団地においても、「住宅団地
型既存住宅流通促進モデル事業」の対象住宅団地として、モデル事業取り組みの対象となると判
断した。地方公共団体との連携として高槻市からの推薦もいただき、関連事業者の協力と大学と
の連携により住民生活の基盤となる住まいの「健全性」、地域社会における「安全性」、また住民
にとっての「利便性」という総合的なまちづくりを意識した流通促進モデルの取り組みを推進す
る。
(2) 事業の目的
住宅団地型既存住宅流通促進モデル事業として、当該住宅団地において住民の方々の声を聴く
ための活動を重視し、ニーズや意向を把握したうえでモデル事業の推進を図る。子育てがしやす
く若い世代が入居しやすい環境づくり、高齢者が安心して生き生きと暮らせる安全で安心なまち
づくりを目指して、「松が丘
元気・未来プロジェクト」と称しモデル事業を推進する。今回の取
り組みでは、アンケート調査や相談会・ワークショップを通じて現状を具体的に把握・共有し地
域のコミュニティが活性化されることにより、閑静な住宅街と豊かな自然、通勤の利便性や優れ
た子育て環境など「松が丘の魅力」が再認識できると考えている。当プロジェクト活動が地域と
連携してその魅力を広く内外に伝え住宅団地型既存住宅の流通が促進される理想的なまちづく
りに貢献することを目的とする。
2
3. 事業の内容
(1) 事業概要・手順と取り組み体制
1) 事業概要
今期の事業では、大阪府高槻市の松が丘住宅団地を対象住宅団地とし、既存住宅の流通促進モ
デル事業として、「子育てがしやすく若い世代が入居しやすい環境づくり」、「高齢者が安心して
生き生きと暮らせる安全で安心なまちづくり」を目指したプロジェクトをPDCAマネジメント
サイクルに沿って計画的に遂行する。現状把握としては、自治会の協力のもと、対象地区住民へ
のアンケート調査による現状把握を行い、住民のニーズと意向に沿った各施策の展開により既存
住宅の流通モデルを促進する活動である。
2) 手順
① 事業計画
モデル事業の基本計画時点で、現状把握に用いる手法としては、自治会協力のもと住民へのア
ンケート調査と全戸訪問による聞き取り調査を行なう方法を基本とした。住民のニーズ・意向を
実際に把握した上で、空き家状況を正確に把握しインスペクション希望者への対応と住民からの
各種の相談対応を計画し、周知の後開催を行なうよう推進することとした。今事業の必須事項に
挙げられている「対象区域内の住宅実態把握」としては、まず自治会長に同行を願い当グループ
のメンバーが実際に対象地区を歩いて現地調査を行なうタウンウォークを行なうこととする。そ
の上で、「生活利便サービス等ニーズの調査・把握」項目に対し、自治会協力のもと住民へのア
ンケート調査からニーズ・課題の抽出を行なう。「住民の利活用の意向把握」項目については、
アンケート調査の実施と併せ回収方法に工夫を加え、当グループスタッフによる全戸訪問による
回収と、回収時にインスペクションに関する意向や内容説明を行なうという対策を施すこととし
た。
ここで導きだされる情報を整理するとともに「住宅流通活用に関する情報提供・相談対応」と
して、相談窓口・相談会の開催、ワークショップの開催、市民フォーラムの開催と計画化を行な
った。平成 27 年度のモデル事業活動計画の当初計画のまとめを次の図 2 に記す。
図2
当初計画
4 月~6 月
① 現状・課題・ニーズの把握のためのアンケート配布・回収・分析
5 月~
② 全戸訪問による インスペクション・住宅履歴情報登録開始
7 月~
③ 住み替え支援・空き家空き地対策
9月
④ 交流拠点づくり・相談窓口開設・ボランティア活動開始
9 月~
⑤ 流通活性化策として ワークショップの開催
9 月~
⑥ 生活支援サービス関連として、他地区の見学ツアーの開催
9 月~
⑦ 住民ニーズに基づき利便サービス業者誘致交渉開始
3
10 月
⑧ 流通活性化策として
市民フォーラムの開催
9 月 or10 月
⑨ 流通活性化案として
住民フェアーの開催
② 実施実績
平成 27 年度活動の開始時に、区域内住宅の利活用の実態を実際に確認する意味合いも含め、
平成 27 年 4 月に当グループメンバー6 名が自治会長同行のもとでタウンウォークを行った。それ
に加え、平成 27 年 4 月には「生活利便サービス等ニーズの調査・把握」と「住民の利活用の意
向把握」を目的として住民へのアンケート調査を行った。当グループのメンバーによる 1,762 戸
の全戸訪問によるアンケート調査とインスペクション内容の説明を同時に行った。不在による郵
送返信を含めると合計で 941 件の回収で回収率は 53,41%となった。また、平成 27 年 6 月と 7 月
にアンケートの集計や考察を踏まえ自治会との意見交換会を開催し、情報共有や当事業の考え方
や進め方など様々な議論を行った。
7 月より地域とのコミュニケーション強化を目的として、自治会館を活用して「住まいと暮ら
しのよろず相談室」を開設した。当グループのスタッフが毎週水曜日と日曜日に自治会館内に駐
在し窓口コーナーを設置し相談対応に応じた。「住民の利活用の意向把握」については、アンケ
ート内での設問による聞き取りと、全戸訪問時のインスペクション説明時に直接確認を行なった。
インスペクション依頼申し込み実績は 49 件となり依頼の検査・点検を実施した。アンケート調査
や自治会意見交換会などを通じて、日常の暮らし・老後の暮らしに関して困っていることの上位
事項に、「坂道や段差」と「買い物と病院への通院への不安」また「日常生活における利便施設
不足」があげられた。そこでコミュニティバスに関する話題が取り上げられたため、他地区の先
行取り組み事例視察ツアーとして、9 月に兵庫県佐用町への視察ツアーを計画し、当該団地住民
30 名、高槻市職員 2 名、スタッフ 8 名の計 40 名参加で実施した。
住民の皆様へ活動と情報が届いた頃として 9 月と 10 月に関西大学社会安全学部准教授越山賢
治氏を招いたワークショップを開催し 1 回目 23 名、2 回目 14 名の計 37 名に参加いただいた。さ
らに自治体と連携した施策として高槻市と当グループの連携により市民フォーラムを開催し、平
成 27 年 10 月開催の第 1 回目は67名の参加と 15 名の個別相談、平成 28 年 1 月開催の 2 回目は
30 名の参加と 6 組の個別相談となった。
対象地域の自治会と住民とのコミュニケーションが図れてきたところで、専門家による住まい
と暮らしのよろず相談会を開催し具体的な相談対応を開始した。平成 28 年 1 月開催の第 2 回目
では 6 名の相談に対応した。
アンケート調査や意見交換会で課題としてあげられた、地域の住民が気軽に活用できる身近な
利便施設として、みんなの家「風の森」を開設した。この施設には地域の空き家が利用されてお
り、空き家対策としても成功事例となり得る。松が丘地区の交流拠点となり、インスペクション
からリフォームに限らず、日常生活の様々な情報交換や相談の拠点となるよう活性化をはかるこ
ととする。これら平成 27 年度実施実績のまとめを次の図 3 に記す
図3
実施実績
4月2日
① 現状把握・実情視察として自治会長とタウンウォーク
4 月 25~29 日 ② アンケート回収・インスペクション内容説明を目的に戸別訪問
4
6 月 14 日
③ 現状や課題整理を踏まえ
北清水連合意見交換会
7月4日
④ 現状や課題整理を踏まえ
松が丘意見交換会
7 月 22 日~
⑤ 専門家による相談対応
住まいと暮らしのよろず相談室開設
8 月 29 日
⑥ 地域ニーズより、他地区の視察
9月6日
⑦ 松が丘意見交換会
9 月 12 日
⑧ 関西大学と連携した
10 月 4 日
⑨ 高槻市と連携した
10 月 17 日
⑩ 関西大学と連携した
12 月 1 日
⑪ ホームページバージョンアップ
兵庫県佐用町視察ツアー実施
第 1 回ワークショップ開催
第 1 回高槻市民フォーラム開催
第 2 回ワークショップ開催
12 月 1~20 日 ⑫ 「松が丘の魅力リーフレット」配布を目的に戸別訪問
1 月 13 日
⑬ 専門家による相談対応
第 1 回住まいと暮らしのよろず相談会開催
1 月 16 日
⑭ 専門家による相談対応
第 2 回住まいと暮らしのよろず相談会開催
1 月 23 日
⑮ 住民フェアー開催
1 月 30 日
⑯ ワークショップ報告会
1 月 30 日
⑰ 高槻市と連携した
2 月 11 日
⑱ もちつき大会開催
第 2 回高槻市民フォーラム開催
3) 取り組み体制
当該モデル事業への平成 27 年度の取り組みは、代表者であるNPO法人『人・家・街
安全
支援機構』4 名の事務局員を中心に、大学や自治体と連携し、各企業・組織の協力を得て実施した。
この産・官・学の連携・協力による街づくりというところが、今事業の最大の特徴であると考え
ている。
平成 27 年度の事業実施体制を次の図 4 に記す。
5
図4
事業実施体制図
「松が丘」住宅団地の住民・空き家所有者
協力し合って安心・安全なまちづくり
産・官・学の連携
コーディネーター
NPO 法人『人・家・街
安全支援機構』
事務局(4 名常駐)
:コーディネート、相談窓口、住民ニーズ・意識調査、
空き家実態調査、生活利便施設の利活用の考察
会
員(55 社所属)
:マーケティング・インスペクション・リフォーム・不動産仲介等
※採択後、地元不動産会社とネットワーク構築
連携
協力
学
関西大学
NPO 法人 住宅長期保証
・安全・安心コミュニティ形成に
対する研究
産
一般社団法人
官
高槻市
・自治会との調整
・床下蟻害・不朽調査
シーエムシー会
株式会社
地域計画建築事務所
・講演会・イベントへの参加
住宅保証機構株式会社
・相談会への後援、データ提供
株式会社日本住宅保証検査機構
など
・住宅履歴情報蓄積
支援センター
・コンサルティング業務
・アンケート作成・分析等
・住民ニーズ・意識調査
・住宅瑕疵保証
株式会社住宅あんしん保証
関西アーバン銀行
・ワンストップサービス
構築のための金融機関
(2) 事業の内容と成果
1) 対象区域内の住宅の利活用実態把握
① 対象区域内タウンウォーク
まずは、事業推進メンバーが該当住宅団地内自治会長に同行頂き、町内タウンウォークを実施。
目的は、「松が丘住宅」の現状・魅力・課題再確認のための現地視察とし、成果としては、自治会
長からのヒアリングにより現状や課題などの確認や整理ができた。下記に、自治会長からのヒア
リングと現地視察にて確認できたことを記載する。
当該自治会では、住居者カードに、名前、要支援者、要介護者、緊急連絡先を記入し耐火金庫
に保管している。また安否確認書に全世帯の住所と氏名を記入し、45 の班長が保管している。同
時に空き家情報も把握している。※自治会費の徴収時に空き家を確認できている。
6
また、松が丘住宅団地の魅力については
ア、松が丘の魅力は静かでバスの便が良く空気が良い。
イ、ここは良い人達が住んでおり、コミュニケーションが取りやすい。
ウ、開発から 50 年経過。80 代の方も多いが子供が安心して暮らせるまち。
エ、大丸ピーコック、サンデー(スーパーマーケット)があり買い物には便利。
松が丘住宅団地で困っていることについては
ア、坂道が多く高齢者にとって買い物にでるのも困難。
イ、イベントに参加できない人の参加を促すには、どうしたらよいのかわからない。
ウ、ゴミ集積場の金属の不法抜き取りが問題になっている。
エ、ゴミ集積場の問題など市の清掃課には相談しているが対策が困難。
オ、集中ゲリラ豪雨時の防災についての対策
カ、独り住まいの方に対して、向こうからヘルプが来ない限り何もできないので、実際の対応
をどうしたらよいのか
キ、高齢化問題、坂道が多く買物も含め生活の移動が困難
写真 1
町内タウンウォークの様子
写真 2
自然豊かな景観
写真 3
松が丘自治会掲示板
写真 4
地域内空き家の様子
② 対象区域内空き家住宅状況把握(平成 27 年 4 月全戸訪問実施)
当該区域内の「空き家状況把握」「生活利便サービス等ニーズの調査」「住宅利活用意向把握」
を目的としたアンケート調査を実施した。NPO 法人「人・家・街
7
安全支援機構」
(以下 LSO 表記)
の会員建築士が全戸訪問による回収と目的説明を行なった。
訪問確認により、平成 27 年 4 月時点での空き家状況などは下記の表 2 が示すとおり、住宅件
数 1,808 件、空き家 94 件、空き家率 5.2%であった。また、空き家の持ち主にアンケートや売却
意向などを記した DM を送ったが反応は得られなかった。
表2
空き家と経年経過状況
自治会
住宅
空き家
売り家
空き地・売り地
件数
件数
件数
件数
伊藤忠松が丘 1 丁目
98
2
0
1
松が丘 1 丁目
79
4
0
1
松が丘グリーンポリス
554
28
3
2
松が丘
804
58
2
4
松が丘住宅
209
2
2
0
64
0
0
0
1,808
94
7
8
松風台
合計
図5
空き家地図(青が空き家、赤が空き地)
写真 5
空き家情報
2) 生活利便サービス等ニーズの調査・把握
① ニーズの調査・把握のためのアンケート調査実施(平成 27 年 4 月実施)
「松が丘住宅が持続的に良好な住環境を保つための事業検討のためのアンケートのお願い」と
題し、全 35 問の設問と住まいや住環境に関する自由記述欄を設け、各自治会の協力のもと 1,762
世帯へ配布し LSO 調査員が基本全戸直接訪問による回収を行った。
回収率は、訪問期間中不在であったため便送返信になってしまった件数も含め、53.41%(1,762
件配布、941 件回収)であった。アンケートの配布数・回収数・回収率に関しての詳細は下記表
3 に記載。
8
表3
自治会別アンケート配布数・回収数・回収率
自治会名
配布部数
回収数
(自治会名簿世帯数)
イートピア松が丘
59
イートピア ABC
119
回収率
35
19.66%
伊藤忠松が丘 1 丁目
86
46
53.49%
松が丘 1 丁目
61
28
45.90%
松が丘グリーンポリス
505
220
43.56%
松が丘
690
230
33.33%
松が丘住宅
178
65
36.52%
64
36
56.25%
松風台
不明(返信用封筒)
281
合計
図6
1,762
地域別訪問住宅件数の地図
写真 6
941
53.41%
戸別訪問時の様子
② アンケート分析からの考察
住宅の検査に関する状況に関しては、当該住宅の多くが築後 20~30 年程度経過しているが、
知識不足や金銭的な問題で耐震性や劣化状況に関する検査等を受けていないことが今調査によ
って明らかになった。7 割以上の住民が今後も当該団地に住み続けたいと答えていることを踏ま
えると、住民に対し、住宅の適切な維持管理とリフォームに関する知識を得られる機会を提供し、
安全性に関しても金銭的にも安心して住み続けることができる街づくりが必要であると考えら
れる。
日常の暮らし・老後の暮らしに関しては、日常生活で最も困っていることとして、「坂道や段
差」といった地形的なバリアと、日常生活における「利便施設不足」である。老後の暮らしにお
ける不安点としても、「足腰が弱り買い物や通院などができなくなる」という回答が多いことか
ら、坂道の多いまちにおいて高齢者も安心して移動できるような環境改善や機能導入が必要であ
るといえる。
まちの機能に関しては、「図書館があるくつろげるスペース」や「地域住民が気軽に集まり談
話・交流できるスペース」といった地域住民が集まり交流できる場の必要性が、幅広い年齢層よ
9
り挙げられた。
空き家問題に関しては、特に防災・防犯といった面で不安を感じている方が多くみられ、適切
な管理や撤去が求められている。また高齢化が進んでいることから、当該住宅団地の今後の持続
性を考慮すると、若年層の転入促進を進めることも必要とされている。
自由記述欄にみられるニーズの中から、当グループは「交通利便性とコミュニティバスへのニ
ーズ」「生活を支え利便性を高める街の機能としての利便施設」について、他自治体での成功事
例視察ツアーと空き家対策の一環ともなる「利便施設
みんなの家(風の森)」開設を取組み事
業に加え実施した。これら住民の生活利便サービス等のニーズへの対応の詳細については、5)
にて記述する。
3) 住宅の利活用に関する意向把握
① インスペクション(住宅の現状調査)内容説明訪問実施(平成 27 年 4 月、9 月)
生活利便サービス等アンケート回収訪問と同時にインスペクション内容の説明を実施。全戸に
対して、LSO 会員の住宅検査技術者が住宅実態調査や住宅診断の補助制度等の紹介を行った。
その結果、1,762 世帯の中より、49 件のインスペクション依頼と 40 件の「いえかるて」の依頼
があった。インスペクションと「いえかるて」の内容などに関しては下記②にて詳しく説明する
自治会別の依頼状況は下記表 4 参照。
表4
自治会別インスペクション実施件数
自治会
松風台
平成 28 年 2 月 19 日最終結果
世帯数
インスペクション
いえかるて
(自治会名簿より)
実施件数
依頼数
64
4
3
松が丘住宅
178
1
1
松が丘
690
14
13
松が丘グリーンポリス
505
24
18
松が丘 1 丁目
61
3
3
伊藤忠松が丘 1 丁目
86
3
2
119
0
0
59
0
0
1,762
49
40
イートピア ABC
イートピア松が丘
合計
写真 7
訪問調査員
写真 8
10
訪問時の様子
② インスペクション実施
49 件のインスペクションを実施した。また、インスペクション実施者に対して、住宅履歴情報
「いえかるて」を勧めたが、個人情報が表に出て、将来売却するときに不利になるのではないか
等の不安をお持ちの方もおられ、「いえかるて」登録希望者は 40 件に留まった。
「いえかるて」とは、対象となる建物に関する書類(図面、仕様書等)や写真であり、その住
宅がいつどのように建てられたかという情報だけでなく、いつどのような修繕や増築・改築を行
ったかという情報やインスペクションの結果も蓄積されるサービスである。このことにより信頼
性が上がり、資産価値の向上にもつながると考えられている。またこれらの情報により、住宅の
状態をより正確に知ることができるようになるので、専門家からより適切な修繕などのアドバイ
スを受けることができるようになる。
49 件のインスペクション依頼に対して、既存住宅現状検査を実施した。当インスペクションは、
基礎・外壁等の住宅の部位毎に生じているひび割れ・欠損といった劣化事象及び不具合事象の状
況を、目視を中心とした非破壊調査により把握し、その調査・検査結果を依頼主に報告するとい
った内容になっている。さらに、インスペクションの実施により 3 件のリフォームも発生した。
写真 9
「いえかるて」の案内
写真 10
インスペクションの様子
写真 11
インスペクションの様子
4) 住宅流通活用に関する情報提供・相談対応
① 住まいと暮らしよろず相談室開設(平成 27 年 7 月 22 日より毎週水曜日・日曜日)
暮らしやすいまちをするという目的平成 27 年 7 月 22 日より毎週水曜日と日曜日に松が丘自治
会館にて住まいと暮らしのよろず相談室を開設した。下記表 4 にその内容と対応を記す。
11
表5
主な相談内容と対応
写真 12
相談者
相談内容
対応
60 代
マイホームを打った際の
居住用の 3000 万控除は、
特例について教えてほし
居住しなくなってから 3
い
年後の年末までに売却す
よろず相談室チラシ
れば適応可能である
60 代
所有している不動産を改
国土交通省から発行され
修して賃貸することを考
ている助成金・補助金の資
えている。その際の助成金
料を渡した。
に関して教えてほしい
70 代
友人のご子息が戸籍から
戸籍法をベースに、分籍や
いなくなっており、何が起
養子縁組に関する話を伝
きたのかもどうすればよ
えた。ご子息の移転先の所
いのかもわからない。
在地を知りたいのであれ
ば専門の先生を紹介する
と伝えた
② 第 1 回、第 2 回、第 3 回ワークショップ開催
(平成 27 年 9 月 12 日、10 月 17 日、平成 28 年 1 月 30 日)
9 月と 10 月に、関西大学社会安全学部の越山准教授を招き、
「町の安全と安心の育て方」
「まち
の課題・解決方法の考え方」といったテーマで 2 回のワークショップを行った。越山准教授の講
義のあと、住民の皆様と地域の問題点などを地図上で示して意見交換をしていただき、さらに解
決に向けた方策のアイデアについてのディスカッションをグループに分かれ行うといった形式
のワークショップを開催した。各グループに一人ずつ関西大学社会安全学部の学生が参加した。
これに関しての総括として、平成 28 年 1 月 30 日に再び越山准教授を招き、ワークショップ報告
会を開催した。ワークショップでの各グループのディスカッションの内容を関西大学の学生たち
がまちづくり事業の提案としてまとめ、発表を行った。地域住民の方々は若い学生とまちづくり
についてディスカッションを行うことが新鮮で良かったという声が多々聞こえた。
写真 13
講義の様子
写真 14
12
ワークショップの様子
写真 15
ワークショップ開催チラシ
写真 16
ワークショップ報告会チラシ
写真 17
学生によるまちづくり事業の提案
写真 18
学生によるまちづくり事業の提案
13
③ 第 1 回、第 2 回高槻市民フォーラム開催(平成 27 年 10 月 4 日、平成 28 年 1 月 30 日)
平成 27 年 10 月と平成 28 年 1 月に、「中古住宅の賢い選び方と購入術」というテーマで、市民
フォーラムを開催した。一級建築士、防災士、市の都市創造部の方々などの専門家を講師として
招き、基本的な住宅の購入術から耐震化などの補助金に関する専門的なことまで様々な有用な知
識を住民の方々に共有していただいた。また、専門家による講義の後は、事前に予約を行った方
が優先ではあるが、その専門家の方々に個別にそれぞれの不動産に関する悩みなどを相談する時
間を設けた。
第 1 回目の参加者は 67 人で、講演後の個別相談には 15 組が参加し、第 2 回目は参加者が 30
人で、個別相談は 6 組、各専門家がそれぞれ悩みに対し助言を行った。フォーラム後、参加者に
は簡単なアンケートに答えていただき、回答者の半数以上が今フォーラムに関して好印象を示し
ており、また自由記述欄では今後もこのようなフォーラムを継続的に開催してほしいという意見
が複数見られた。下記表 6 に講演テーマと講演者の一覧を記載する
表6
市民フォーラム講演テーマと講演者
司会
松元
正博
LSO 理事/防災士
山下
幸子
山下 FP 企画
代表
「後悔しないための住宅購入術」
前田
講演
政登己
株式会社マエダハウジング
代表取締役
「中古住宅購入の魅力と落とし穴」
大石
正美
LSO
専務理事/株式会社シーエムシー一級建築士事務所
「郊外住宅に住まう魅力」
河田
真一
司法書士河田法務事務所
所長
「司法書士から見た中古住宅購入時に気を付けること」
高槻市
説明制度
都市創造部
住宅課
「高槻市 3 世代ファミリー定住支援補助金について」
高槻市
都市創造部
審査指導課
「耐震化に関する助成制度について」
写真 19
講演の様子
写真 20
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講演の様子
代表取締役
写真 21 講演の様子
写真 22
個別相談の様子
写真 23
写真 24
市民フォーラム開催のチラシ裏
市民フォーラム開催のチラシ表
④ ホームページアップグレード(平成 27 年 12 月 1 日)
平成 27 年 12 月 1 日にホームページのアップグレードを行った。松が丘住宅団地のインスペク
ションへの補助金の情報や、どのような専門家が協力・連携しているかなど、今事業で行ってい
る様々なサービスを、住民の方々にわかりやすく掲載した。またホームページ内にメールで申し
込み可能な相談窓口を設け、オンラインでの相談会の申し込みやインスペクションの依頼なども
出来るようにした。「そもそも誰に相談したらよいのかわからない」という方でも安心してスム
ーズに相談できるように心がけて作成を行った。このホームページに関しては、今事業での成果
を基にしてさらに情報量やできることを増やし、定期的にアップグレードを行っていく予定であ
る。
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写真 25
トップページ
写真 26
専門家に関する情報ページ
⑤ 「松が丘の魅力リーフレット」作成・配布(平成 27 年 12 月 1 日~20 日)
「郊外に住まう」をテーマに松が丘住宅団地の魅力をまとめ、第一段階として現在実際に住ん
でいる地域の方々にそれらの魅力を再確認していただくために、「松が丘の魅力リーフレット」
を作成し、住まい各戸へ配布した。今事業では第 1 段階までだが、今後第 2 段階として、対外的
に配布し、転入数増加につながるよう勧めていこうと考えている。
リーフレットの内容としては、高槻市長の挨拶をはじめ、松が丘の自然豊かな地域環境、充実
した医療環境、子育てのしやすさなどが盛り込まれている。さらに、アンケート調査により明ら
かになった住民の声も取り入れた内容となっている。
写真 27
「松が丘の魅力リーフレット」表紙
写真 28
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住民の方々の声のページ
⑥ 住まいと暮らしよろず相談会開催(平成 28 年 1 月 13 日、16 日)
中古住宅流通活性化を促進することを目的とし、相続や住み替え、リフォーム等で悩んでいる
当該団地の住民に対し,弁護士、司法書士、税理士、宅地建物取引士等の専門家を招き、事前予
約制で相談会を開催した。1 月 13 日の 1 回目では 4 名、1 月 16 日の 2 回目では 2 名の参加があ
った。相談内容とその対応に関しての詳細は下記表 5 に記載。相談会後の相談者の感想としては、
「誰に相談すればわからなかった」「胸のつかえがとれた」などといった声が聞こえ、開催した
意義のある相談会であった。今後もそれぞれの専門家が引き続き相談内容について解決していく
予定である。
表7
相談会における相談内容とそれに対する専門家の対応
相談者
相談者 A(80 代男性)
相談内容
専門家対応
田舎の土地の固定資産税が負担にな
手続きや必要書類、費用について説
っているため手放したい。田舎の寺
明。地元である高槻に知り合いの司
が引き取ってくれると言っている
法書士がいるので、その先生に頼む
が、この場合の手続きについて教え
とのこと。
てほしい。
相談者 B(80 代男性)
夫婦ともに高齢なので、どちらかが
相続税の計算について基礎的なこ
残されたとき等にどのような手続き
とから説明し、理解してもらった。
を取るべきか教えてほしい。
相談者 C(70 代男性)
死亡した親族からの不動産等の資産
譲渡所得税の概算の説明を、名義変
の譲渡を受ける際の名義変更の手続
更については他の相続人と話し合
きや税金に関して教えてほしい。
って決める必要があることを説明
した。また、ほかの相続人の了解な
く宅地化等を進めた場合、問題にな
る可能性があることを伝えた。
相談者 D(70 代男性)
住宅の基礎に亀裂があり不安を感じ
ている。この家に対してどのような
選択肢があるのかを教えてほしい。
相談者 E(年齢未記入男性) 親族が残した不動産に対して相続人
他の相続人に売却して、その代金を
が 10 人ほどいる。また筆界特定であ
法定相続分通りで分配する提案を
ることが判明したため、どのように
する。まずは土地の価格の見積もり
対応したらよいか教えてほしい。子
を行い、手続きに見合う土地かどう
どもにこれらの問題を残したくない
かを判断するべきであると伝えた。
認知症である父の不動産を、老朽化
家賃の滞納などがないのであれば、
のため売却もしくは解体しようと考
借主に対して契約解除を行うこと
えている。しかし、賃貸住宅として
は難しい。住宅の老朽化などの事情
その不動産を貸し出しているため、
を説明し、出て行ってもらえるよう
借主に対してどのように交渉すれば
交渉すべきである。また、相談者が
よいか教えてほしい。
青年後継人となり交渉窓口となる
相談者 F(60 代男性)
べきであるということを伝えた。
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写真 29
住まいと暮らしのよろず相談会チラシ
写真 30
相談会の様子
5) アンケート調査により明らかになった生活利便サービス等のニーズへの対応
① 意見交換会(平成 27 年 6 月 14 日、7 月 4 日、9 月 6 日)
当グループの主要メンバーと各自治会の会長の方々による意見交換会を実施した。当事業の事
業計画の内容やその進捗状況の報告に加え、アンケート調査により明らかになった住民の生活利
便サービス等のニーズへの対応に関する意見交換会を実施した。生活利便サービスに関する一つ
目のニーズであった「交通利便性とコミュニティバスへのニーズ」に関して、当グループが他自
治体での事例を調査したところ、兵庫県佐用町の「まちづくり・コミュニティバス」の取組みが
非常に魅力的であったため、佐用町バス視察ツアーを企画・提案し、実施することが決まった。
このツアーに関しての詳細は下記②で記述する。また、二つ目のニーズとして挙がった「生活を
支え利便性を高める街の機能としての利便施設」についても、空き家対策の一環ともなる「利便
施設
みんなの家(風の森)」開設を取組み事業に加え、意見交換も踏まえ提案し、実施するこ
とに決まった。この利便施設に関しての詳細は、下記③にて記述する。
写真 31 意見交換会の様子
写真 32
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意見交換会の様子
② 佐用町バス視察ツアー(平成 27 年 8 月 29 日)
アンケート調査の結果、坂道の多い当該住宅団地の生活利便性を高めるためにコミュニティバ
スが必要であると感じている住民の方が多数いたため、コミュニティバスの取り入れ成功事例と
して兵庫県佐用町の「江川ふれあいバス」の視察ツアーを平成 27 年 8 月 29 日に実施した。当該
住宅団地の各自治会の会長や会員 30 名、高槻市職員 2 名、当事業運営スタッフ 8 名の計 40 名が
参加した。
当ツアーは、兵庫県佐用町でのコミュニティバス取り入れの成功事例の視察が主な目的だが、
他自治体の総合的なまちづくりの考え方や運営方法も視察できるよう、佐用町の企画防災課まち
づくり企画室の方々をはじめ地域のまちづくり協議会の方々など、コミュニティバス運営を含む
地域のまちづくりの中核を担っている方々との意見交換や交流の機会も設けた。
兵庫県佐用町の所在地や人口などの基本的な情報を下記図 5 に記した
図7
兵庫県佐用町の立地
・人口:19,265 人
・65 歳以上:34%
・兵庫県と岡山県の県境
・大阪より車で 2 時間
ツアー後に感想や意見を聞くためのアンケート調査を行ったところ、アンケートに回答があっ
た参加者の大半が今ツアーに大変満足若しくは満足であったと回答していた(大変満足 11 名、
満足 7 名、やや不満 4 名、不満 0 名)。視察目的であった佐用町のコミュニティバスに関しては、
運営方法などは参考になったと答えている方が多数いたが、佐用町と当該住宅団地では、市営バ
スの充実度合など環境の違いが多々見られるため、必要かどうかを判断しかねるという意見も
多々見られた。しかし、このまま当該団地の高齢化進めば、将来的に必要になってくる可能性は
あるという意見も見られた。コミュニティバス以外にも意見交換や交流会により充実したツアー
であったと感じた参加者が多く見られた。特に、当該住宅団地よりも高齢化が進んでいる佐用町
の、高齢者に対する福祉関連の対策や対応や行っている事業などに関して質問をしていた方が多
数見られた。
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写真 33
バス視察ツアー旅程表
写真 35 佐用町による説明
③ 生活利便施設
写真 34
バス視察ツアーアンケート報告書
写真 36
佐用町の方々との意見交換会
みんなの家「風の森」(平成 28 年 1 月 23 日)
「生活を支え利便性を高める街の機能としての利便施設」として、松が丘住宅団地の空き家を
利用し「利便施設
みんなの家(風の森)」を平成 28 年 1 月 23 日に開設した。手順としては、
空き家調査によって建物の候補を絞り、次にインスペクションにより空き家の状態を調べた。実
際に傷んでいるところや白蟻による重大な被害などもあった。その後リフォームを行い、地域の
住民が安心して安全に集える施設づくりを行った。
オープン以降、地域の住民の方々がお茶会や健康マージャン、パッチワーク作りなどで利用し
ている。また、地域でいらなくなった本や絵本を持ち寄り、簡易図書館として大人から子どもま
で利用している。
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写真 37
「風の森」改修前
写真 38
「風の森」改修後
6) 地域住民同士の交流促進のための活動
① 住民フェアー(平成 28 年 1 月 23 日)
地域の住民の方々の交流のために、平成 28 年 1 月 23 日に住民フェアーを開催した。マジシャ
ンやアロマセラピストの方々を招き、なるべく多くの地域住民の方々が集い楽しんで交流してい
ただけるようなイベントづくりを心掛けた。当日は、22 名の子どもを含む 130 名の地域住民の方々
が参加した
写真 39
住民フェアーチラシ
写真 40
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住民フェアーチラシ
写真 41 マジックショーを見ている参加者たち
写真 42
風船をもらっている子どもたち
② もちつき大会(平成 28 年 2 月 11 日)
地域住民の交流を目的としたもちつき大会を平成 28 年 2 月 11 日に開催した。
当日は、当初想定していた 300 人分の紙皿や割り箸などが途中で不足し、さらに 100 人分ほど
補充することにもなったほど、子どもから大人までたくさんの地域住民の方々に参加していただ
けた。
写真 43
もちつき大会チラシ
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写真 44
子どもの参加者の様子
写真 45
もちつきの様子
4. 今後の取組み課題
約 1 年間「松が丘」住宅団地で積極的に活動を行ったことにより、様々な課題が見つかった。
まず、当該住宅団地だけに言えることではないが、インスペクションにより住宅の状態を把握し、
その状態に適したリフォームを行い、そのデータを蓄積していくという適切な住宅の維持管理の
大切さを理解していない方が多く存在している。これらの情報を周知する活動として、全戸訪問
によるインスペクションの内容説明を実施した。これにより、住民の住宅の適切な維持管理に対
する意識は確実に向上してきた。インスペクション実施件数が 1 年目にして 49 件もあったこと
からもそれがうかがえる。しかし、それでも全戸で 1,762 世帯存在する当該住宅団地では約 3%
でしかなく、今後も継続してこれらのイベントを開催していく必要があると考える。長い年月同
じ住宅に住めるようになることが、結果として空き家発生率の向上を抑えることにつながると考
えているからである。
次に、高齢化が進んでいる当該団地において、アンケートやワークショップで明らかになった、
「坂道が多い」ことや「買い物が不便」であることなどのまちの課題を解決し住みよいまちづく
りをしていくことが今後さらに重要になっていくと予想できる。今年度は視察のみにとどまった
が、コミュニティバスや、ワークショップにて住民の方々と考えた「松が丘ベンチマップの提案」
など、少しでも生活利便性向上サービスを取り入れていく必要がある。
住民の方々との情報共有や、住民の方々からの相談窓口としてインターネットサイトの構築が
必要であると感じていたため、ホームページのアップデートを行った。まだまだ当グループのホ
ームページ経由でできることや情報が不足していると考えており、来年度も定期的に更新を行い、
より有用な情報を継続的に増やしていくことが必要であると考える。
当事業は、産・官・学の連携によるまちづくりということを最大の特徴としてきたが、その中
でもさらに「産」の部分で連携・協力を強化していく必要があると考えている。また本事業で開
設・開催した不動産に関する相談室や相談窓口では、各相談者の悩みや問題は多義にわり、一専
業領域で解決が図れることではないということを実感した。不動産にかかわる各専門士業者たち
は、他士業者の領域については門外漢であり、その連携がなされていないのが実態であると考え
られる。各専門士業者同士の連携を行うためには、相談スキルを持った者が、専門領域を把握し
たうえで、コーディネート、プロデュースすることが必要である。当事業では、代表者である NPO
法人 LSO がこの役割を担っていた。
このようにワンストップサービスと呼ばれる、安心できる戸建て・マンションの紹介から、自
宅の建て替え・住み替え、リフォーム、さらには土地探しから注文住宅、資金計画やローン・税
金などの相談も含めて、不動産に関するすべてのことが一か所でわかる仕組みを構築していくこ
とが、今後不動産に関して不安を抱えている住民の方々にとって必要であると考える。
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5. 次年度の展開
今回の「松が丘」住宅団地を対象住宅団地として取り組んだモデル事業で当グループは、「松
が丘
元気・未来プロジェクト」として、地域のニーズを具体的に把握したうえで、様々な活動
を展開した。住民アンケートからの課題や意見交換会での活発な意見交換からも様々な課題や意
見もあげられ、解決方法を地域の皆様と一緒に考え実施・展開へと進める活動を続けることがで
き大きな成果が残せたと実感している。また、この1年間に地域の方々と信頼関係を築き上げる
こともできたと考えている。
地域での空き家情報も明確に把握でき、地域でのイベント活動の進め方も住民の方々と共有で
きてきたため、今後は地域の方々が主体となり、イベントや空き家の活性化について継続的に活
動を続けていただけるようサポートを継続していく予定である。好評だった官民連携をしての市
民フォーラムや地域での住民フェアーなどは、継続することでより意識が高まることと考えてい
るので、それらに関してのサポートの継続も考えている。本年度の活動を通じ、空き家の状況把
握やインスペクション検査による現状再認識など、「松が丘」住宅団地地域の意識も高まりつつ
あることが確認できたため、今後は様々な相談に対応できるワンストップサービスなどの構築に
より既存住宅の流通促進へ貢献を続けたいと考えている。また、ホームページやリーフレットな
どによる情報発信で、松が丘の魅力と当プロジェクト活動を広く社会に伝えることができ、新し
い世代の来訪や移り住みの促進に貢献できた。さらに様々な自治体から空き家対策・既存住宅流
通促進について相談を受け、来年度には他の自治体とも取り組みを検討していく。
■事業主体の概要・連絡先
設立時期
平成 16 年 6 月
代表者名
河田 恵昭
連絡先担当者名
大石 正美
連絡先
住所
〒530‐0001
電話
06‐6456‐1010
ホームページ
大阪市北区梅田 2‐5‐5 横山ビル 8 階
http://www.npo-lso.info
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