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パブリックアートの公共交通への導入 による地域活性化に関する研究

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パブリックアートの公共交通への導入 による地域活性化に関する研究
有澤誠研究会 JRE プロジェクト 2009 年秋学期 Term paper
パブリックアートの公共交通への導入
による地域活性化に関する研究
~ひたちなか海浜鉄道湊線における「みなとメディアミュージアム」を事例として~
総合政策学部 3 年 学籍番号 70702096 ログイン名
ログイン名 s07209io
緒方 伊久磨
目次
1.はじめに
2.研究背景
2.1.メディアアート
2.2.ひたちなか海浜鉄道
3.みなとメディアミュージアムの研究概要及び研究目的
4.研究成果報告
5.来年度以降への展望
6.謝辞
7.参考文献
1.はじめに
今回の活動報告は、2009 年度春学期の活動報告「公共交通活性化に関する実践的研究」の延長と
して2009年8月に茨城県ひたちなか市にて実施した
「みなとメディアミューシアム」
事例に基づき、
公共交通を含めた地域全体の活性化に資する方策に関する研究を中心に 2009 年度秋学期に行った
活動及び成果発表をまとめたものである。
2.研究背景
現在、地球環境問題の改善を目的として、低炭素社会の構築に向けた様々な取り組みがなされて
おり、
その一環として公共交通機関の整備と利用促進に向けた様々な政策が進められている。
だが、
その一方、少子高齢化やモータリゼーションの発達により、公共交通利用者が減少し経営難に直面
している路線も数多くある。このような路線の中には、長期的に採算回復が望めないという理由か
ら廃止されるものも多い。また、近年では路線廃止だけにとどまらず、公共交通機関を運営する企
業自体が倒産し、公共交通機関が地域全体から撤退してしまう例もある。
例えば、2006 年 4 月 26 日に廃止された北海道の「北海道ちほく高原鉄道」は、施設の老朽化な
どにより経営安定基金が底をつくことが決定的になったことから、第三セクターの補助を行ってい
た沿線市町村のうち北見市が廃止の方針を打ち出し、協議会において3町が経営存続を望んだもの
の最終的に廃止が決定した。また、2007 年 3 月 31 日に廃止された宮城県の「くりはら田園鉄道」
は、宮城県が赤字補填の打ち切りを通達したことがきっかけで廃止となった。2008 年 4 月 1 日に廃
止となった兵庫県の「三木鉄道」も三木市長選挙において経営改善策を行っていた現職市長が落選
したことが原因で廃止されている。さらに、2008 年 12 月 28 日に廃止された宮崎県の「高千穂鉄道」
に至っては、経営改善策の成功をうけて 2003 年から利用者数の増加が図れていたにも関わらず、
2005 年 9 月 6 日に台風によって路線が被害を受けたために、復旧費用の負担ができないことが原因
となって廃止された。
しかしながら、公共交通機関は地域社会の重要な基盤であり、地域住民間の移動だけでなく来訪
者の移動手段の確保という重要な公共財的役割を持っているため、地域から公共交通機関が撤退す
ることは、その地域に大きなダメージを与え地域活性化を阻害する大きな要因となる。また、駅や
バスターミナルなど地域の公共交通機関の玄関口には地域の顔としての役割があり、その玄関口か
ら広がる中心市街地によって地域コミュニティが生成されている。故に、公共交通機関が撤退する
ことはその地域のコミュニティ減少につながり、ひいては地域全体の活力減少につながる可能性が
ある。
そこで、上記のような公共交通機関に対し比較的低予算で行えて且つコミュニティ生成の効果の
ある地域活性化策のパブリックアートの導入を行うことにより、地域活性化に資する新たな公共交
通活性化の形態を作ることが可能ではないかと考えた。
2.1.パブリックアート
パブリックアートは比較的低予算で行える地域活性化策として日本各地で導入されている。パブ
リックアートには様々な主体や形態が存在するが、地元との融和が十分に図れていないものがツー
ルとしての本来の意義を失い芸術公害として批判されたこともあった。PAが公共の場として十分
に機能するためには地域住民にとって関心の持てる作品になることが重要である。NPOなどの地
域主導で行われている取り組みですら他の地域住民の関心を引けず失敗する例も多い。それゆえ、
PAの持つ集客力・コミュニティ生成力を高め地域振興に資するものにするためには、地域住民に
とってより身近な存在となる手法をもちいなければならないと考えた。
今回の研究では、パブリックアートの地域コミュニティ活性化に資する可能性の検証を行うため
に、
「地域性」及び「インタラクション」の有無が地域活性化に対してどのような影響を与えるかに
ついても検証を行った。
2.2.ひたちなか海浜鉄道
今回、研究対象とした「ひたちなか海浜鉄道」は、茨城県ひたちなか市の勝田駅と阿字ヶ浦駅を
結ぶ 14.3km の路線で、茨城交通が運営していたが 2008 年 3 月を以って廃線する意向を示した。し
かし、地域住民が「おらが湊鐡道応援団」を結成し生活交通手段として存続を求め、ひたちなか市
が過半数を出資する形で「ひたちなか海浜鉄道」が設立され存続された第三セクター鉄道である。
「おらが湊鐡道応援団」
はひたちなか市商工会議所那珂湊支所が全面的に支援を行う団体であり、
現在も湊線の活性化を促進させる活動に取り組んでいる。
図1:ひたちなか海浜鉄道湊線(マピオンより)
3.みなとメディアミュージアムの研究概要及び研究目的
「みなとメディアミュージアム」は、茨城県ひたちなか市にある第三セクター「ひたちなか海浜
鉄道湊線」
をフィールドとして、
列車内や駅構内及び周辺においてアートの展示を行うことにより、
地域の顔としての駅の役割を再復活させ地域のコミュニティ再生を促進させることを目的としてい
る。
また、
沿線地域の方々が利用者の大多数を占めている本路線に他地域からの利用者を呼び込み、
公共交通活性化を図ることも目的としている。
今回、フィールドとして選んだ「ひたちなか海浜鉄道湊線」もまた、一時茨城交通が廃線決定を
したものの、地域住民の請願により、ひたちなか市が出資して第三セクターとして存続したが、他
地域と同様に第三セクター化後も採算回復が見られていない鉄道の一つである。そこで、公共交通
機関をフィールドとしてパブリックアートを導入することにより、街のコミュニティ再生を促進さ
せ、また街に他地域からの人々を呼び込むことにより、
「公共交通活性化を軸とした地域活性化」と
いう新たな地域活性化政策の実証例となれるのではないかと考えた。
図2:みなとメディアミュージアムのポスター(上)とロゴ(下)
4.研究成果報告
今回の研究に関しては様々な機会にて成果報告をさせていただいた。まず、2009 年 11 月のOR
Fにてブース展示及び研究発表を行った。
図3:ORFにて発表した論文
今回は論文発表だけでなく、メディアからも多くの反響をいただき活動のブロードキャストを図
ることができた。テレビでは地元の「ケーブルテレビ茨城」から取材をいただき、新聞社は茨城県
を拠点とする常陽新聞に取り上げていただいた。また、ラジオはIBS茨城放送から取材され反響
が大きかったため期間中に 2 度目の直接取材もして頂いた。さらに、交通新聞社より紙面の 1 面を
割いて「公共交通機関の新たな活性化策の事例」として取り上げて頂いた。
図4:ラジオ茨城放送で放映された際のWEB記録(スクーピーレポート)
今回の発表では「シンポジウム・研究ネットワーク基金」や「学習研究奨励金」などの基金を頂
いて活動を行った。今学期は、その頂いた支援金に関する報告書も作成した。以下は、湘南藤沢学
会の「シンポジウム・研究ネットワーク基金」の報告書である。
図5:報告書1
図6:報告書2
6.謝辞
本研究をするにあたり、有澤誠教授には多大なご支援を頂いた。研究だけでなく様々な面で学生
生活をサポートして頂き、非常に感謝しております。来年度の卒業プロジェクトでもご迷惑をおか
けするかもしれないしれませんが、ご指導ご鞭撻どうぞよろしくお願いいたします。
7.参考文献・参考サイト
1.国土交通省 地域公共交通活性化・再生総合事業 (平成20年度)
2.国土交通省 総合政策局 交通計画課 地域公共交通の活性化・再生への事例集
2.1.事例 ひたちなか市 茨城交通湊線 地域を挙げての鉄道存続への取り組み
2.2.事例 和歌山市・紀ノ川市 和歌山電鐡貴志川線 地域の取り組みと事業者の公募
で存続した地方鉄道
3.国土交通省 地域公共交通の活性化・再生への取組みのあり方 報告書
4.国土交通省 第三セクターの輸送実績・経営実績
5.高千穂あまてらす鉄道 (http://www.torokko.jp/) 2010 年1月 14 日現在
6.ひたちなか海浜鉄道 (http://www.hitachinaka-rail.co.jp/htdocs/) 2010 年1月 14 日
現在
7.おらが湊鐡道応援団 (http://minatrain.club.officelive.com/default.aspx) 2010 年 1
月 14 日現在
8. MMM みなとメディアミュージアム-ひたちなか海浜鉄道がメディアアートの博物館にhttp://mmm.sfc.keio.ac.jp/ 2009 年 12 月 10 日閲覧
9. 国土交通省「今後取り組む鉄道整備のあり方」
http://www.mlit.go.jp/kisha/oldmot/kisha00/koho00/tosin/tetuseibi/tetuseibi2_.htm 2009 年 12 月
10 日閲覧
10. 地下鉄にアートを-ニューヨーク MTA の試み-
ニッセイ基礎研究所 社会研究部門 吉本 光宏(芸術文化プロジェクト担当)1996 年
http://www.nli-research.co.jp/report/report/1999/05/li9905b.pdf 2009 年 12 月 10 日 閲覧
11.地域の力とアートエネルギー 橋本敏子 学陽書房 1997 年 2 月
12.LRTがもたらす都市景観への役割と貢献 柄谷 友香(名城大学 准教授)
http://www.env.go.jp/earth/suishinhi/wise/j/pdf/J07H0051290.pdf 2009年12月10日 閲覧
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