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ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期

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ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期
不動産リサーチレポート
ジャパン・クオータリー
2016 年第 4 四半期
2016 年 10 月
ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 359 号
(加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取
引業協会)
当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありま
せん。当資料は、信頼できる情報をもとに Deutsche Asset Management が作成して、日本国内ではドイチェ・
アセット・マネジメント株式会社がこれを配布しております。本書記載の内容については、日本国内ではドイ
チェ・アセット・マネジメント株式会社がお問い合わせの窓口となりますので、ご質問などございましたらド
イチェ・アセット・マネジメント株式会社の担当者までご連絡願います。本資料および本資料中の情報は事前
の同意がない限り、その全部又は一部をコピーすることや、配布することはできません。
当資料に記載のデータや見通し等は記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するもの
ではありません。また、経済・市況の分析等やこれらに基づく将来の見通し等は、当社の運用方針、投資判断
とは何ら関係がありません。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として
記載したものであり、その銘柄または企業の株式等の売買を推奨するものではありません。
Deutsche Asset Management (Japan) Limited
Financial Instruments Business Operators
Director of the Kanto Local Finance Bureau (Kinsho) No. 359
(Member of The Investment Trusts Association, Japan Investment Advisers Association and Type II Financial
Instruments Firms Association)
This document does not constitute an offer or solicitation of specific financial products or services. Certain fees
or other costs may be incurred if the financial products, services or investment strategies described in this
document are purchased or acquired. There is a risk of capital loss associated with the financial products,
services and investment strategies described in this document, and the value of any investment in same may
decrease due to market or economic trends, price fluctuations or otherwise. Please evaluate the financial
products and services and read the Explanatory Documents, the Prospectus and other related documents
carefully prior to purchasing or investing in such products and services.
2
ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
目
次
1
まとめ
4
2
経済・金融・投資家動向
5
2.1
マクロ経済情勢
5
2.2
不動産投資市場・価格
7
2.3
J-REIT
3
不動産ファンダメンタルズ
10
13
3.1
オフィス
13
3.2
商業施設
16
3.3
住 宅
17
3.4
物流施設
18
バックナンバー
20
注意事項
本レポートの日本語版と英語版は発行のタイミングが異なるため、内容・データが一部異なることがあります
のでご了承願います。
本件に関するお問い合わせ先
ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社 広報担当
Tel: 03-5156-5000
ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
3
1 まとめ
経済・金融・投資家動向: 本章では国内マクロ経済動向や不動産投資市場、キャップレート、投資リターンなど
について直近の動向と今後の見通しを分析している。2016 年第 3 四半期の実質 GDP は、英国が国民投票に
より EU を離脱すると決定したことで一時的に円高が進み、輸出産業の収益が悪化したことから 0%台前半の低
成長にとどまった可能性があるとみられる。年後半は消費の持ち直しなども期待されるが、2016 年通期の成長
率は 0.6%程度の伸びにとどまるものと予想される。
2016 年 9 月までの 12 ヶ月間における不動産売買高は約 4.2 兆円と前年同期比約 19%の減少となった。価格
の高騰で都心部の物件の取引が減少し、地方物件もこの落込みをカバーできていない。買い手の顔ぶれでは
国内法人が安い調達コストを利用して取得額を保っており、2016 年 4 月以降の J-REIT による取引占有率も
50%を超える状況が続いた一方、円高の影響もあって入札競争力で劣る外資系の物件取得は細っている。長
期金利を政策目標とする金融政策によって J-REIT 指数の上値は重くなっているものの、ほかの金融商品と比
べた REIT の利回りの高さは引き続き魅力的で、REIT 指数には下げ止まりの兆しがみられる。
不動産ファンダメンタルズ: 本章ではオフィス・商業施設・住宅・物流施設の 4 セクターそれぞれにおける市場フ
ァンダメンタルズの動向について概観している。2016 年 9 月末時点の都心 5 区 のオフィスビルの平均空室率
は 3.7%と 8 年ぶりの低水準となった。これに伴い、平均募集賃料も前年同期比 4.2%増と 10 四半期連続での
上昇を続けた。ただし外資系金融機関などのオフィス需要は依然として低迷しており、A クラスビルでは賃料が
軟調に推移する局面が続いている。
2016 年 1 月-6 月の訪日外国人数は前年同期比で 28.2%増加の 1,171 万人と過去最高となったが、足元の円
高の影響もあり 8 月には増加率が 12.8%まで減速してきている。都心部の商店街では店舗賃料が軟化してい
るほか、百貨店やショッピングセンターでは既存店の売り上げが前年を下回る展開が続いている。2016 年第 3
四半期の首都圏分譲マンションの平均販売価格は 5,627 万円と、過去 20 年で最高の水準で高止まりしている。
もっとも都心部以外の需要は価格に敏感なこともあり販売戸数は前年同期比 11.4%減と、ほぼ 2 年以上にわた
り減少傾向が続いている。物流施設では 2016 年第 2 四半期の平均空室率が東京でやや改善したのに対し、
大阪では過去最大の新規供給が行われ、前期比 2.2 ポイント悪化の 3.6%となった。2017 年に向けて、東京圏、
大阪圏いずれにおいても大量の新規供給が予定されているため、空室率は今後もしばらく上昇傾向が続くもの
とみられる。
4
ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
2 経済・金融・投資家動向
2.1
マクロ経済情勢
2016 年第 3 四半期の実質 GDP は、英国の EU 離脱の国民投票の結果を受けて一時円高が進んだことから、輸出産
業の収益が悪化し、0%台前半の成長にとどまった可能性があるとみられる。年末に向けては消費の緩やかな回復が
見込まれ、2016 年通年では 0.6%程度の伸びになるものと予想されている。
図表 1: 実質 GDP 成長率と株価の推移
Q1
Q2
Q3
日経平均(前年同期比、右軸)
Q4
E:Deutsche Asset Management 推定値(文中全ての図表同様)、F:Deutsche Asset Management 予想値(文中全ての図表同様、詳細については末尾の免責事項を参照)
出典: 内閣府、Bloomberg、ドイツ証券の資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
日銀短観による 2016 年 9 月の業況判断指数 DI(国内大企業・全産業ベース、黄線)は、6 月から横ばいの 12 ポイン
トとなった。夏場の円高の影響で、造船・重機・生産用機械などの輸出産業や小売の景況感が悪化した一方、熊本地
震の影響が収束してきたこともあり自動車産業の景況感は前期の予測より概ね改善した。2016 年 8 月の景気動向指
数先行 CI(青線)は 100.0 ポイントで前期比 1.2 ポイント増とやや持ち直した。
図表 2: 景気動向指数(先行指数)と日銀短観
景気動向指数 先行CI (左軸)
(2010年=100)
日銀短観 大企業DI (右軸)
DI業況判断指数:
('良い' - '悪い', % ポイント)
126
50
先行き
113
25
100
0
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
-50
1993
74
1992
-25
1991
87
出典: 日本銀行、内閣府の資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
日経平均は、6 月の英国の国民投票後に円高傾向が強まった影響により一時的に 15,000 円を割るなど一旦弱含ん
だが、7 月の参院選での与党の勝利や日銀の新たな金融緩和政策の発表が好感され 9 月には再び 17,000 円台まで
回復した。円相場も、2016 年 9 月末には 1 ドル=101 円台まで円高が進んだが、米連邦準備理事会(FRB)による 12
月の利上げの可能性が高まっていることから、その後やや円安傾向に転じている。
ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
5
図表 3: 日経平均と円相場の推移
日経平均(左軸)
円相場(右軸)
¥20,000
¥120
アベノミクス
¥15,000
¥100
¥10,000
¥80
2016.09
2016.03
2015.09
2015.03
2014.09
2014.03
2013.09
2013.03
2012.09
¥60
2012.03
2011.09
2010.09
2010.03
2009.09
2009.03
2008.09
2008.03
2007.09
2007.03
2006.09
¥5,000
2011.03
2011.10
円相場75円台
(史上最高値)
2008.09
リーマンショック
出典: Bloomberg の資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
日銀は 2016 年 9 月、政策目標を「通貨量」から「金利」に切り替え、短期のマイナス金利の水準は維持しつつも長期
金利を 0%程度に誘導する「長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策」を打ち出した。これを受けて、10 年物国債の
利回りはそれまでのマイナス圏から 2016 年 9 月末には 0%近辺まで上昇した。消費者物価指数(コア CPI)は原油安
の影響を受けて軟調に推移しており足元では-0.3%、食料及びエネルギーを除いた指数(日銀版コアコア CPI)はプラ
ス 0.3%程度となっている。今後 2017 年にはコア CPI が 0.7%程度まで上昇する可能性があるものの、日銀が目標と
する 2%の達成は中期的にも難しいのではないかとの予想も出ている。
.
図表 4: 超短金利と消費者物価指数推移
E:Deutsche Asset Management 推定値、F:Deutsche Asset Management 予想値
出典: Bloomberg、ドイツ証券の資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
6
ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
2.2
不動産投資市場・価格
日銀短観によると 2016 年 9 月の金融機関の不動産・大企業向け貸出態度 DI(黄線)は 6 月の 28 ポイントからやや
低下の 26 ポイントと、融資環境は引き続き良好ながらも過熱する不動産価格に対するレンダーの警戒感が反映され
た。もっとも、2016 年 6 月の不動産業の設備投資向け新規融資額は前年同期比 25%の増加となっており、企業の設
備投資が伸び悩むなかで、銀行も不動産業向け融資に頼らざるを得ない構図もみられ、今後も融資の引き上げで取引
が冷え込むような事態は想定されていない。
図表 5: 不動産向け新規融資の増減と金融機関の貸出指標の推移
出典: 日本銀行の資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
2016 年 9 月までの 12 ヶ月間における国内収益不動産売買額は速報で約 4.2 兆円と前年同期比 19%の減少となっ
た。価格の高騰で都心部の物件の取引が少なくなっているうえ、周辺部や地方物件の取引もこの落ち込み分をカバー
しきれていない。取引利回りは引き続き下げ圧力がある一方、入札価格が売り主の希望価格に満たずに取引が成立し
ない事例や、取引が成約するまでに優先交渉権が二転三転するケースもみられる。
図表 6: 収益不動産売買高と金融機関の不動産向け貸出指標の推移
E:Deutsche Asset Management 推定値
出典: 日本銀行、都市未来研究所、Real Capital Analytics のデータをもとに Deutsche Asset Management 作成
図表 7 の左図はセクター別のキャップレートを示している。実勢価格を織り込んだ TMAX キャップレートは 2016 年 9
月期に 4.75%と引き続き低水準となったほか、東京オフィスの鑑定キャップレートも 3.74%(速報ベース)と幾分下落基
調にあるが、これまでの一本調子の下げ傾向はトーンダウンしている。キャップレートの低下は地方やオフィス以外の
セクターにも波及しつつあるが、何れも低下ペースは減速している。
ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
7
一方、2016 年 6 月の東京のオフィスビル実取引における平均イールド・スプレッド(国債金利とキャップレートの差)は
国債金利の低下もあって 2015 年末から 60bps 増加の 490bps と過去最高水準になっている。スプレッドが 300bps
台で推移するニューヨークやロンドン市場に比べ、スプレッドでみた東京市場の魅力は高いといえる。
図表 7:鑑定キャップレートと世界主要市場のオフィス・イールドスプレッド
鑑定キャップレート
東京オフィス(鑑定)
大阪オフィス(鑑定)
東京マンション(鑑定)
大阪マンション(鑑定)
TMAX(実勢ベース)
オフィス取引イールドスプレッド
東京
ニューヨーク
ロンドン
香港
シンガポール
シドニー
6%
6.5%
5.5%
4%
5.0%
3%
4.5%
2%
4.0%
1%
3.5%
0%
3.0%
-1%
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
5%
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
速報値
6.0%
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
注: データは将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
出典: 不動産証券化協会、Real Capital Analytics、TMAX のデータをもとに Deutsche Asset Management 作成
日米両国で長期金利に先高観が増したことから 2016 年 9 月以降 REIT の上値は重くなり、東証 REIT 指数は 10 月
に入り 1,800 ポイントを割り込む展開が続いている。もっとも他の金融商品と比べた REIT の利回りの高さは引き続き
魅力で、J-REIT 指数も下げ止まりの兆しがある。一方、実物の資産価格の指標となる東京都心部 A クラスビルの
2016 年 6 月の床単価 インデックスは 756 万円/坪と前年同期比で約 6%の下落となり、2008 年のピーク時と比べると
34%低い水準にある。REIT 指数に比べると資産価格指数の一時的な落ち込みが大きかったことから、今後資産価格
指数はもう一度強含む可能性がある。
図表 8: REIT 指数と不動産価格の推移
出典: 大和不動産鑑定、Bloomberg のデータをもとに Deutsche Asset Management 作成
今年 7 月以降の主な不動産取引は以下の通りで、J-REIT や日系企業による大型取引が目立った。最も高額だった取
引は UIG アセットマネジメントの三菱ふそうトラック・バスの事業拠点ポートフォリオ取得(推定 1,000 億円超)、
これに三井不動産ロジスティクスパークやさくら総合リートなど新規の REIT 上場に伴うポートフォリオ取引
が続いた。野村不動産マスターファンドがトップリートと合併した際に取引された NEC 本社ビルの持ち分
50%(545 億円)とヒュリックリートによる御茶ノ水ソラシティの部分買収(153 億円)は、判明する中ではキ
ャップレートが最も低い 3.9%となった。最も坪単価が高額だったのは海外投資家による心斎橋 GiGO(ギー
8
ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
ゴー)の取得で床単価は 1 平米当り 412 万円(1 坪当り 1,361 万円)となった。今期は、三井不動産ロジステ
ィクスパークやさくら総合リートに加え、大江戸温泉リートとマリモ地方創生リートも新規上場しており、過
熱する都心部のオフィスや商業施設を避け、アセットの種類や投資地域に特色を持った REIT が誕生したのが
特徴といえる。
図表 9: 2016 年 7 月以降に取引・発表された主な国内不動産取引
種別
物件名称 (取得割合 %)
NEC 本社ビル
オフィス
商業
物流
住宅
単価
( 億円)
(百万円/㎡)
キ ャッフ ゚
レー ト
場所
取引
年月
取得主
545
0.75
3.9%
港
16年9 月
推500
272
1.01
-
中央
16年7 月
イデラ・キャピタル(中)
-
4.3%
中央
16年9 月
野村不動産マスターファンド
梅田ゲートタワー(5-20階)
御茶ノ水ソラシティの8.7%
190
1.56
4.3%
153
-
3.9%
大阪
千代田
16年9 月
16 年10月
アクティビアプロパティーズ
ヒュリックリート
田辺ビル
139
0.38
-
大阪
16 年10月
シャープ
イオンモール東浦など 2 物件
153
-
-
愛知ほか
16年8 月
ヤマダ電機
ららぽーと新三郷の持分50%
151
0.22
5.0%
埼玉
16年7 月
フロンティア不動産投資法人
新宿東口ビル
130
2.59
-
新宿
16年9 月
芙蓉総合リース
心斎橋GiGo
120
4.12
-
大阪
16年9 月
海外投資家
イオンモール香椎浜の51%
MFLP久喜など 9物件
102
0.13
5.7%
福岡
16年9 月
GK Double 05
755
-
-
埼玉ほか
16年9 月
三井不動産ロジスティックパーク
GLP厚木Ⅱなど 4 物件
427
0.27
4.7%
神奈川ほか
16年9 月
GLP
新木場物流センター
153
0.31
5.0%
江東
16年7 月
日本ロジスティックスファンド
賃貸マンション20物件
516
-
5.3%
大阪ほか
16年7 月
サムティ・レジデンシャル投資法人
ジャパンホテルリート
晴海アイランドトリトンスクエア オフィスタワーY
晴海アイランドトリトンスクエアオフィスタワーY (3-15階)
ホテルビスタグランデ大阪など 3物件
ホテル/ヘルスケア ネストホテル大阪心斎橋など 10物件
大江戸温泉物語レオマリゾート など 9 物件
三菱ふそうトラック・バスの事業拠点170物件
ポートフォリオ
取得額
野村不動産マスターファンド
472
-
5.0%
大阪ほか
16年7 月
273
-
-
大阪ほか
16年8 月
いちごホテルリート
268
-
4.9%
香川ほか
16年9 月
大江戸温泉リート
1,000超
-
-
江東ほか
16年7 月
UIGアセットマネジメント
成信ビルなど 18 物件
575
-
-
新宿ほか
16年9 月
さくら総合リート
アルティザ仙台花京院など 17 物件
162
-
-
宮城ほか
16年8 月
マリモ地方創生リート
注: 取得主が黄色は J-REIT による取得、グレーは外資系による取得を示したものです。個別の物件や企業名はあくまでも参考として記載したもので、その企業の株式や証券等の売買を推奨するも
のではありません。取得額は推定値を含みます。一部の取引は完了しておらず、優先交渉権が与えられただけのものも含みます。
出典: 日経不動産マーケット情報、各社公表資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
2016 年 9 月末までの過去 12 ヶ月間の収益不動産取引額1を都市別にまとめると図の通りで、東京の取引額は約 233
億ドルと 3 期連続で横ばいとなった。東京はニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、サンフランシスコ、に次いで世界第
5 位であり、アジア太平洋地域では依然として最大の取引市場となった。過去 1 年の買い手の顔ぶれでは J-REIT が
東京の取引全体の 38%、一方外資勢による取得は 13%にとどまったとみられ、物件取得では低利の融資を最大限に
利用できる REIT や国内法人に分がある構図となった。大阪の取引額は約 47 億ドルと商業、物流施設やホテルの取
引が活況で、アジア太平洋地域では第 9 位となり、北京・ソウルなどアジア主要国の首都に次ぐ水準となっている。
図表 10: 世界の都市別収益不動産売買取引額ランキング (過去 12 ヶ月)
注: 開発用地を除く
出典: Real Capital Analytics のデータをもとに Deutsche Asset Management 作成
1
ここでは持ち家の取引や開発用地の売買は、キャッシュフローを生まない取引のため含めていない。
ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
9
実物不動産インデックスによるトールリターン2は 2009 年後半から上昇、2010 年からプラスで推移しており、2016 年 5
月は前年同期比 0.6 ポイント増の年 9.0%(速報値、図表 11 左図)と改善した。セクター別にみると物流セクターが
9.7%で最も高く、それ以外のオフィス・商業・住宅セクターは何れも 8%前後のリターンとなった。
図表 11: 実物不動産投資の年間トータルリターン推移 (レバレッジ前)
年間トータルリターン
トータルリターン
セクター別総合リターン
インカムリターン
キャピタルリターン
15%
オフィス
商業
住宅
物流
15%
速報
10%
5%
5%
0%
0%
-5%
-5%
-10%
-10%
-15%
-15%
速報
2003
2005
2008.06
2008.12
2009.06
2009.12
2010.06
2010.12
2011.06
2011.12
2012.06
2012.12
2013.06
2013.12
2014.06
2014.12
2015.06
2015.12
2016.05
2003
2005
2008.06
2008.12
2009.06
2009.12
2010.06
2010.12
2011.06
2011.12
2012.06
2012.12
2013.06
2013.12
2014.06
2014.12
2015.06
2015.12
2016.05
10%
注: データは将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
出典: MSCI Real Estate –IPD(左表)、不動産証券化協会(右表)のデータをもとに Deutsche Asset Management 作成
2.3
J-REIT
マイナス金利の導入により相対的に利回りの高い REIT は投資家の評価を集めている一方、9 月の日銀政策発表以
降は長期金利がやや上昇基調にあるため、価格が軟調に推移する局面が増えている。10 月 20 日現在、日経平均が
年初来 9.4%の下落となっているのに対し、東証 REIT 指数は 1,787 ポイントで年初比 2.2%の上昇と、辛うじてプラス
を維持している。ただし年末に向けて米国での利上げ観測が強まっていることを受けて、REIT 指数は日本を含め各国
とも上値が重くなる地合いにある。
図表 12: REIT インデックス(短期推移と長期国際比較)
東証 REIT 指数と日経平均比較(5 年)
REIT 指数の国際比較(10 年)
(円)
J-REIT
US-REIT
A-REIT (豪州)
S-REIT (シンガポール)
20,000
2,000
350
J-REITインデックス (左軸)
1,700
17,000
1,400
日経平均 (右軸) 14,000
1,100
11,000
300
250
200
150
100
2016.09
2015.09
2014.09
2013.09
2012.09
2011.09
2010.09
2009.09
2008.09
2007.09
2016.10
2016.04
2015.10
2015.04
2014.10
2014.04
2013.10
2013.04
2012.10
2012.04
2011.10
2011.04
2010.10
2010.04
(09年3月=100)
50
2006.09
8,000
800
注: 参照インデックスは東証リート・インデックス、 FTSE NAREIT All Equity REITS Index (US-REIT), S&P/ASX 200 A-REIT Index (豪州 REIT), FTSE ST REIT Index (シンガポール REIT)
出典: Bloomberg の資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
2
投資家が投資のベンチマークとして利用する収益指標で、賃料収入による運用利回りと鑑定評価に基づくキャピタル・ゲインを加えたレバレッジ前の収益
率。「総合収益率」と同義。
10
ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
2016 年 8 月の J-REIT 平均分配金利回りは J-REIT 指数が軟調に推移したことを受けて前期比 22bps 上昇して
3.54%(オフィス型 REIT に限れば 3.15%)となった。長期金利が 0%近辺にあることから、国債利回りとの差(スプレッ
ド)は 360bps(オフィス型 REIT に限れば 321bps)へと広がった。分配金・配当スプレッドは米国 REIT、英国 REIT と
もに 270bps 程度となっており、この点で比較すると J-REIT の投資妙味は高いといえる。
図表 13: J-REIT 分配金利回り
出典: 三井住友トラスト基礎研究所、Bloomberg の資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
J-REIT の新規上場は 2016 年 7 月-10 月の 4 ヶ月間でマリモ地方創生リート投資法人、三井不動産ロジスティクスパ
ーク投資法人、大江戸温泉リート投資法人、さくら総合リート投資法人の 4 件となった。4 月以降の J-REIT による
IPO・増資額は計 4,119 億円、物件取得額は約 7,400 億円となった。このほか私募 REIT では 6 月に大和ハウス工業
の D&F ロジスティクス投資法人が有明の物件を含む資産 700 億円弱で運用を開始、8 月にもニッセイプライベートリ
ート投資法人が丸ノ内ガーデンタワーの持ち分を含む 300 億円で運用を開始するなど、複数の新規銘柄が運用を開
始した。
図表 14: J-REIT の資金調達と物件取得額
直近の主要増資一覧
J- REIT 銘柄
(兆円)
1.0
投資法人債
第三者割当増資
J-REIT物件取得額
(純増額)
公募増資
(億円)
時期
増資額
GLP
2016年5月
297
いちごホテルリート
2016年7月
167
大和証券オフィス
2016年7月
80
SIAリート
2016年8月
80
4-8月
2,147
合計
2,771
その他増資合計
IPO
新規上場のREIT
0.5
J- REIT 銘柄
2001.09
2002.03
2002.09
2003.03
2003.09
2004.03
2004.09
2005.03
2005.09
2006.03
2006.09
2007.03
2007.09
2008.03
2008.09
2009.03
2009.09
2010.03
2010.09
2011.03
2011.09
2012.03
2012.09
2013.03
2013.09
2014.03
2014.09
2015.03
2015.09
2016.03
2016.09
0.0
時期
増資額
三井不動産ロジスティクスパーク
2016年8月
さくら総合リート
2016年9月
557
342
スターアジア不動産リート
2016年4月
248
大江戸温泉リート
2016年8月
104
マリモ地方創生リート
2016年7月
97
合計
1,348
上場予定のREIT :
リスト(総合)、森トラスト(ホテル)
注: 増資額は上限額。個別の物件や企業名はあくまでも参考として記載したもので、その企業の株式や証券等の売買を推奨するものではありません。
出典: ニッセイアセットマネジメント、 不動産証券化協会、Real Capital Analytics、各社公表資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
図表 15 は国内収益不動産の取引額(自己居住用住宅などを除く)及び J-REIT の物件取得額・売却額をそれぞれ示
している。2016 年 4 月-9 月の不動産取引額は都心部での取引が低調になったことなどから速報ベースで約 1.4 兆円、
前年同期比約 33%の下落と大きく減少している。この間、J-REIT の取引に占める割合は 16 年 3 月期に続いて 2 期
連続で 50%を超えとなるなど、調達コストで有利な国内法人の強さが浮き彫りとなった。
ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
11
図表 15: 収益不動産取引額の推移と J-REIT の取得割合
出典: 不動産証券化協会、都市未来研究所、Real Capital Analytics の資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
白色:Deutsche Asset Management 推定による暫定値
12
ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
3
不動産ファンダメンタルズ
3.1
オフィス
2016 年 9 月末時点の都心 5 区 のオフィスビルの平均空室率は前年同期比 0.8 ポイントの減少の 3.7%と、8 年ぶり
の低水準となった。大型ビルの新規供給が限られたなかでオフィスの需給均衡の目安となる空室率 5%も 15 ヶ月連続
で下回っている。竣工 1 年未満の新規ビル 25 棟の平均空室率は 12.2%と前期比で 7 ポイント、前年同期比では約
26 ポイントの大幅な改善となるなど、需給バランスは引き締まってきている。
図表 16: 都心 5 区の平均空室率と新築ビルの空室率の推移
新築ビルの空室率 (右軸)
11 %
ビル名
32 %
平均空室率(左軸)
9%
16 %
2015
2016.09
2014
2013
2012
2011
2010
1%
2009
1%
2008
2%
2007
3%
2006
4%
2005
5%
2004
8%
2003
7%
2002
2016年以降
(Log表)
新宿ガーデンタワー
JR新宿ミライナタワー
大手町フィナンシャルシティ・グランキューブ
東京ガーデンテラス紀尾井町
六本木グランドタワー
京橋エドグラン
住友不動産麻布十番プロジェクト
GINZA SIX
大手町パークビルディング
内幸町二丁目プロジェクト
赤坂インターシティーAIR
目黒駅前地区再開発 オフィス棟
新日比谷プロジェクト
西品川一丁目再開発事業
浜松町二丁目計画A街区
ニッセイ浜松町クレアタワー
TGMM芝浦計画A棟
〃 B棟
虎ノ門トラストシティ ワールドゲート
大手町二丁目再開発A棟
〃 B棟
渋谷駅南街区 再開発
〃 道玄坂街区
丸の内3-2計画
虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー
虎ノ門ヒルズ ステーションタワー
竣工
階数
2016/3
2016/3
2016/4
2016/5
2016/10
2016/10
2016/12
2017/1
2017/1
2017/5
2017/8
2017/11
2018/1
2018/1
37
32
31
36
40
32
10
13
29
21
38
27
35
24
42
29
31
36
36
35
32
35
18
30
36
-
2018
2018
2019
2018
2018
2018
2018
2018
2019
2022
延床㎡
(オフィス部)
55,817
55,000
108,330
110,000
103,620
66,590
33,571
38,000
60,710
57,500
79,200
47,223
115,500
130,656
計270,000
51,900
101,400
118,400
計210,000
173,250
97,152
45,000
58,900
89,100
94,000
174,800
出典: 三鬼商事(左段)、三幸エステート、各社公表資料(右段)をもとに Deutsche Asset Management 作成
個別の物件や企業名はあくまでも参考として記載したもので、その企業の株式や証券等の売買を推奨するものではありません。
2016 年 9 月の東京都心 3 区3のオフィス空室率は前年同期比 1.3 ポイント低下の 2.9%と、2009 年以来の低い水準
で推移した。基準階面積別で見ると 50-100 坪、100-200 坪クラスのビルの空室率は前年同期比でそれぞれ僅かに低
下し 4.4%、3.1%となったのに対し、200 坪以上の大規模ビルでは 2.3%とほぼ横ばいで推移した。価格交渉力の指標
となるフリーレント期間は 2016 年 6 月で前年同期比 0.4 ポイント低下の平均 2.8 ヶ月と、今回はオーナー側に有利な
方向に進んだ。
図表 17: 東京都心 3 区の基準階面積別オフィス空室率の推移
基準階 50~100坪のビル
基準階 100~200坪のビル
基準階 200坪以上のビル
平均
(ヶ月)
フリーレント月数(右軸)
8
10%
6
5%
4
0%
2
-5%
0
1996.09
1997.03
1997.09
1998.03
1998.09
1999.03
1999.09
2000.03
2000.09
2001.03
2001.09
2002.03
2002.09
2003.03
2003.09
2004.03
2004.09
2005.03
2005.09
2006.03
2006.09
2007.03
2007.09
2008.03
2008.09
2009.03
2009.09
2010.03
2010.09
2011.03
2011.09
2012.03
2012.09
2013.03
2013.09
2014.03
2014.09
2015.03
2015.09
2016.03
2016.09
15%
出典: ザイマックス不動産総合研究所、三幸エステートの資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
3
千代田区、中央区、港区を指す。
ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
13
過去のデータをみると東京都心のオフィスビルでは空室率と賃料上昇幅に相関(正確には逆相関)関係がみられる。
2016 年 9 月の都心 3 区の基準階 200 坪以上のオフィス空室率は 2.7%と自然空室率の 5%を割っており、これに伴
い成約賃料も 3 四半期連続の上昇となっている。
図表 18: 東京都心 3 区のオフィス空室率と成約賃料の推移 (基準階 200 坪以上)
成約賃料増加率 (前期比、3期移動平均)
空室率 (右軸)
8%
1%
4%
3%
0%
5%
-4%
7%
回復
-8%
9%
:賃料が増加に転じた時点
2016.09
2015.09
2014.09
2013.09
2012.09
2011.09
2010.09
2009.09
2008.09
2007.09
2006.09
2005.09
2004.09
2003.09
2002.09
2001.09
2000.09
1999.09
1998.09
1997.09
11%
1996.09
-12%
出典: ニッセイ基礎研究所、三幸エステートの資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
都心 5 区の平均オフィスの賃料は前年同月比 4.2%増と 10 四半期連続で上昇している。新築ビルでも前年同月比で
は 0.8%増(黄線)と 5 四半期連続で上昇となったが、月次でみれば下落するケースが増えている。これまで高額な賃
料を支えてきた外資系金融機関などのオフィス需要は依然として低迷しているだけに特に A クラスビルでは賃料が軟
調で、足元の賃料は直近のピークである 2015 年第 3 四半期から 6.1%の下落となっている。
図表 19: 東京都心 5 区の基準階面積別オフィス募集賃料の推移
予想
(円/坪/月)
50,000
プライム賃料、丸の内・大手町
基準階200坪以上
40,000
Aクラスビル
30,000
新築ビル
基準階100坪以上
10,000
平均
基準階100坪以上
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008.03
2008.06
2008.09
2008.12
2009.03
2009.06
2009.09
2009.12
2010.03
2010.06
2010.09
2010.12
2011.03
2011.06
2011.09
2011.12
2012.03
2012.06
2012.09
2012.12
2013.03
2013.06
2013.09
2013.12
2014.03
2014.06
2014.09
2014.12
2015.03
2015.06
2015.09
2015.12
2016.03
2016.06
2016.09
2016.12F
20,000
F:Deutsche Asset Management 予想値
出典: 三幸エステート、ニッセイ基礎研究所の資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
国内主要都市でもオフィスの空室率は引き続き改善傾向にある。2016 年 9 月の空室率は札幌が 3.8%、福岡が 5.0%、
大阪が 5.8%、名古屋が 6.7%といずれも長期的な平均値である 8%を下回り、とりわけ札幌と福岡は約 20 年ぶりの
低水準となった。2016 年後半はいずれの都市も大型オフィスの新規供給はなく、引き続き空室率の回復が期待される
が、名古屋では 2017 年に複数の新規供給が予定されており、現在の好調な需給バランスへの影響が注目されている。
14
ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
図表 20: 国内主要都市のオフィス空室率の推移
札幌
大阪
(%)
福岡
東京
2016年以降
名古屋
ビル名
15
10
2016.09
2015
2016.03
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2000
2001
1999
1998
0
1997
5
大名古屋ビルヂング
JPタワー名古屋
JRJP博多ビル(福岡)
シンフォニー豊田ビル(名古屋)
JRゲートタワー(名古屋)
中之島フェスティバルタワー・ウエスト(大阪)
グローバルゲート・ウエスト(名古屋)
グローバルゲート・イースト(名古屋)
MM21-32街区オフィス計画1(横浜)
MM21-32街区オフィス計画2(横浜)
錦二丁目計画(名古屋)
新南海会館ビル(大阪)
札幌創世1.1.1区
梅田3丁目計画(大阪)
梅田1丁目1番地計画(大阪)
竣工
階数
2015/10
2015/11
2016/4
2016/6
2017
2017
34
40
12
25
46
41
36
17
15
6
21
29
28
40
42
2017
2017
2018
2018
2018
2019
2022
延床㎡
(オフィス部)
65,000
80,000
44,000
15,444
45,030
67,750
計157,000
計55,578
45,586
34,650
35,112
120,000
270,000
出典: 三鬼商事(左段)、三幸エステート、各社公表資料(右段)をもとに Deutsche Asset Management 作成
個別の物件や企業名はあくまでも参考として記載したもので、その企業の株式や証券等の売買を推奨するものではありません。
ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
15
3.2
商業施設
2016 年 1 月-6 月の訪日外国人数は前年同期比で 28.2%増加の 1,171 万人と過去最速のペースで 1,000 万人を突
破したが、円高の影響もあり 8 月には増加率が 12.8%まで減速してきている。2016 年第 2 四半期の消費額も前年同
期比で 7.3%増の約 1 兆円となったが、直近 3 四半期は拡大ペースが減速している。2016 年第 1 四半期の都心商業
施設の賃料は新宿で 1.9%の微増となったものの、それ以外の地域では横ばいまたは軟調に推移した。
図表 21: 東京都心と大阪の主要商業地の商業施設の平均募集賃料の推移
外国人消費額(右軸)
(円/坪/月)
銀座
表参道
新宿
渋谷
池袋
心斎橋(大阪)
(兆円)
Q2 2016
Q1 2016
Q4 2015
Q3 2015
Q2 2015
Q1 2015
Q4 2014
Q3 2014
Q2 2014
Q1 2014
Q4 2013
Q3 2013
Q2 2013
Q1 2013
Q4 2012
Q3 2012
Q2 2012
Q1 2012
Q4 2011
Q3 2011
Q2 2011
Q1 2011
0.0
Q4 2010
0
Q3 2010
0.5
Q2 2010
12,000
Q1 2010
1.0
Q4 2009
24,000
Q3 2009
1.5
Q2 2009
36,000
注: オフィス賃料は東京都心 5 区の基準階面積 100 坪以上の平均(図表 17 のベンチマーク)
出典: スタイルアクト、日経不動産マーケット情報、観光庁の資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
2016 年第 3 四半期の百貨店の売上高は、軟調な株価や円高の影響で富裕層や訪日客の高級品離れが進み、東京・
大阪地区の合計が前年同期比-2.9%と 3 期連続の減少となった。夏場の台風の影響などもあって客足も伸びなかった
ことから、ショッピングセンターやチェーンストアの売上高もそれぞれ 2.3%、3.7%の減少、これまで安定的に売上高を
伸ばしてきたコンビニでも減速の兆しがみられた。
図表 22: 形態別小売売上高の前年同期比推移 (%)
ショッピングセンター (13都市)
百貨店 (東/阪)
チェーンストア (全国)
コンビニ
15%
(全て既存店ベース)
10%
5%
0%
-5%
-10%
出典: 日本ショッピングセンター協会、日本百貨店協会、日本チェーンストア協会の資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
16
ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
2016.09
2016.06
2016.03
2015.12
2015.09
2015.06
2015.03
2014.12
2014.09
2014.06
2014.03
2013.12
2013.09
2013.06
2013.03
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
-15%
住 宅
3.3
2016 年第 3 四半期の首都圏分譲マンションの平均販売価格は 5,627 万円と前年同期比で 2.9%低下したものの、過
去の平均販売価格である 4,500 万円を 25%上回る水準で高止まりしている。一方、供給戸数は前年同期比 11.4%減
の 8,707 戸と、2014 年初以来の減少傾向が 2 年以上にわたり続いている。住宅ローン金利の低下が一巡したうえ、相
続税対策や外国人による投資需要も一段落しているだけに、今後も販売価格の上昇は抑えられるとみられる一方、高
騰する用地取得費や高止まりする建設費を考えると、今後の価格の落ち込みも限定的になるものと思われる。
図表 23: 首都圏新築分譲マンションの平均価格と販売戸数増加率の推移
(万円)
平均販売価格
販売戸数増加率(前年同期比)
(%)
75%
5,500
50%
5,000
25%
4,500
0%
4,000
-25%
3,500
-50%
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
6,000
02
04
06
08
09
10
11
12
13
14
15
16
出典: 不動産経済研究所の資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
2016 年第 3 四半期の東京 3 区の高級賃貸マンションの募集賃料(黄線)は前年同期比 6.6%増と 2 期連続の増加と
なり堅調だったが、より広い範囲の 5 区と 23 区の募集賃料統計ではそれぞれ同 0.9%、2.4%の減少に転じるなど低
調に推移し明暗を分けた。
図表 24: 東京都心における賃貸住宅賃料と空室率の推移
オフィス平均賃料
23区住宅賃料
5区住宅賃料
3区住宅賃料
12%
9%
6%
3%
0%
-3%
2016.09
2016.06
2016.03
2015.12
2015.09
2015.06
2015.03
2014.12
2014.09
2014.06
2014.03
2013.12
2013.09
2013.06
2013.03
2012.12
2012.09
2012.06
2012.03
2011.12
2011.09
-6%
出典: ケン不動産投資顧問、リーシング・マネジメント・コンサルティング、タス、三鬼商事の資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
17
物流施設
3.4
2016 年第 2 四半期の物流施設の空室率は、東京で前期比 0.2 ポイント低下の 3.4%となったのに対し、大阪では前
期比で 2.2 ポイント悪化の 3.6%となった。高品質な物流施設に対する需要は非常に旺盛ながらも、過去最大規模の
新規供給が行われたため、これを吸収するのに一定の時間を要しているものとみられる。平均賃料は東京、大阪いず
れも前期比横ばいで推移した。
図表 25: 賃貸物流施設の空室率及び募集賃料推移
マルチテナント型物流施設の空室率推移
東京圏
20%
大型物流施設の募集賃料推移
大阪圏
予想
15%
(円/坪、月)
4,800
予想
東京圏 賃料
4,200
10%
3,600
5%
3,000
大阪圏 賃料
2008.06
2008.12
2009.06
2009.12
2010.06
2010.12
2011.06
2011.12
2012.06
2012.12
2013.06
2013.12
2014.06
2014.12
2015.06
2015.12
2016.06
2016.12F
2008.06
2008.12
2009.06
2009.12
2010.06
2010.12
2011.06
2011.12
2012.06
2012.12
2013.06
2013.12
2014.06
2014.12
2015.06
2015.12
2016.06
2016.12F
2,400
0%
F:予想値(一五不動産)、注: 延床面積 10,000m2 以上のマルチテナント型賃貸物流施設、募集面積1,000m2 以上の賃貸物流施設が調査対象
出典: 一五不動産情報サービスの資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
2016 年の東京圏の賃貸物流施設の供給量は 1.7 百万平方メートル、大阪圏でも 0.7 百万平方メートルといずれも過
去最高の新規供給水準で、大阪では 2017 年もさらに高い水準の供給が見込まれている。このため新規テナントの獲
得には時間のかかる物件も増えており、今後 1 年ほどは需給バランスが調整される局面となり、空室率も上昇するも
のとみられる。
図表 26:賃貸物流施設の新規供給及び空室率推移
東京圏
大阪圏
新規供給(左軸)
空室率(右軸)
新規供給(左軸)
空室率(右軸)
(百万m2)
(百万m2)
2.0
15% 1.0
予想
15%
予想
F:予想値(日経不動産)
出典: 一五不動産情報サービス、日経不動産マーケットの資料をもとに Deutsche Asset Management 作成
18
ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
18F
17F
15
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14
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11
10
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08
07
0%
06
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05
0%
04
0.0
18F
3%
17F
0.2
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16F
0.4
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6%
13
0.4
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6%
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9%
09
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04
1.6
免責事項
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ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
19
バックナンバー
版
Vol
1
特集のテ ー マ
発行年月
第2四半期
08年6月
賃料データの謎を読み解く
第3四半期
08年9月
クレジット・クランチ
3
第4四半期
08年12月
復活するか、J-REIT市場
4
第1四半期
09年3月
東京の魅力度を測る
第2四半期
09年7月
日本の住宅市場
6
第3四半期
09年10月
歴史は繰り返す?「2003年問題」当時と現在の比較
7
第4四半期
10年1月
ビルの価格指標に「取引単価」を
8
第1四半期
10年4月
なぜ不動産投資が必要か(ポートフォリオ理論からの説明)
第2四半期
10年7月
安全志向が強い国内投資家と資本市場
10
第3四半期
10年10月
四半期アップデート
11
第4四半期
11年1月
拡大するクロスボーダー取引と取り残される日本
12
第1四半期
11年4月
東日本大震災と日本の不動産市場への影響
第2四半期
11年7月
地価データの本当の使い方
14
第3四半期
11年10月
四半期アップデート
15
第1四半期
12年1月
J-REITの今後の10年
第2四半期
12年4月
四半期アップデート
17
第3四半期
12年7月
四半期アップデート
18
第4四半期
12年10月
内向き志向の強い日本の不動産市場
19
第1四半期
13年1月
住宅ローン減税は需要を喚起できるか?
第2四半期
13年4月
四半期アップデート
21
第3四半期
13年7月
急速に変革が進むアジア太平洋地域の物流不動産
22
第4四半期
13年10月
四半期アップデート
23
第1四半期
14年1月
クロスボーダー投資と日本市場の課題
第2四半期
14年4月
四半期アップデート
25
第3四半期
14年7月
四半期アップデート
26
第4四半期
14年10月
四半期アップデート
27
第1四半期
15年1月
四半期アップデート
第2四半期
15年4月
私募REITの国際比較と今後の可能性
29
第3四半期
15年7月
四半期アップデート
30
第4四半期
15年10月
四半期アップデート
31
第1四半期
16年1月
アベノミクス―三本の矢の成果
第2四半期
16年4月
四半期アップデート
第3四半期
16年7月
マイナス金利がもたらす地殻変動
2
2008年
5
2009年
9
2010年
13
2011年
16
2012年
20
2013年
24
2014年
28
2015 年
32
33
20
2016 年
ジャパン・クオータリー 2016 年第 4 四半期 | 2016 年 10 月
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