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為替レート
四半期経済予測 SA107
(社)日本経済研究センター
為替レート
基調として続く円高圧力
為替レートは4月以降、105 円−110 円のボックス圏内での値動きとなっている。
累積経常黒字や物価に代表されるファンダメンタルズは、今後も円高基調が続くことを
示唆している。今後、日本の景気が緩やかに回復することも踏まえると、長期的には円高
圧力は高い。しかし、短期的には日米金利格差が拡大する影響の方が強く働く。今後は、
2000 年中旬にかけて、ゼロ金利解除の観測から一次的に円高が進む。しかし、ゼロ金利政
策が維持されるとすると年末にかけて再び円安に向かい、ゼロ金利解除が再び視野にはい
る 2001 年1−3月に再び、円高傾向がはっきりしてくると予測される。当面は、ボック
ス圏内での値動きとなろう。 (野口 哲也)
(野口 哲也)
1.足元の動向――ボックス圏内での値動き
日本の景気回復期待感から、4月の為替レートは3ヵ月ぶりの円高水準である 102 円台
後半でスタートした。しかし、4月3日の日銀短観発表直後に日銀による円売り・ドル買
い介入が行われ、105 円台後半まで円安となった。この時の介入額は約 130 億ドルとみら
れ、1日の介入規模としては過去最大のものだった。4月中旬には速水日銀総裁によるゼ
ロ金利政策解除に関する発言や、G7で円高に関する懸念が盛り込まれなかったことが、
円買い安心感を生み、103 円台前半まで円高が進んだ。しかし、下旬になると米国の利上
げ観測や、米系ファンドの経営不振の報道が流れ、円資産売却に伴うドル買い観測からド
ルが値を戻し、108 円台後半まで円安が進んだ。5月 16 日に米連邦公開市場委員会(FO
MC)で 0.5%の利上げが決定された後も、ドルは堅調に推移した。中旬に再度、速水日
銀総裁がゼロ金利政策解除について言及したこと、また、米国で過去最大規模の貿易赤字
が発表されたことにより、一気に 106 円台前半まで円高となった。下旬には日本の 99 年
10−12 月期GDPの下方修正や、第百生命破たんの報道を受けて若干ドルは値を戻し、
107 円半ばまで円安となった。6月に入ると、米国の景気減速を示す指標がいくつか発表
され、また日本の 2000 年1−3月期のGDP成長率が大幅に増加するとの観測から、一
時 105 円台前半まで円高が進んだ。しかし、GDPの成長率がコンセンサスの下限であっ
たことなどから、再び 106 円台に値を戻した(図1)。
ドル以外の通貨との関係を含む円の実効為替レートを日経通貨インデックスで見ると2
月にいったん減価したものの、その後は緩やかに増価している(図2)。
2.今後の予測――緩やかな円高局面
累積経常黒字に代表されるファンダメンタルズは、今後も大きな流れとして為替が円高
方向に進むことを示唆している。一方、短期的な市場の関心は米国の金融引き締めがどこ
まで進められかという点と、日本のゼロ金利政策がいつ解除になるかという点に注がれて
1
四半期経済予測 SA107
(社)日本経済研究センター
いる。
長期的にはファンダメンタルズ要因、景気要因から円高圧力は根強いものと予想される
が、短期的には金利格差の拡大要因の影響が大きい。今後の展開としては、2000 年中旬に
かけて、ゼロ金利解除の観測から一次的に円高が進む。しかし、ゼロ金利政策が維持され
るとすると年末にかけて再び円安に向かい、ゼロ金利解除が再び視野にはいる 2001 年1
−3月に再び、円高傾向がはっきりしてくると予測される(図3、4)。
3.購買力平価からみた円ドルレートの推移――根強い円高圧力
長期的な為替相場の流れを説明する理論として、購買力平価説が用いられる。これは、
「変動為替相場制のもとで長期的な為替レートの均衡水準を決定するのは、一国通貨の購
買力である」と主張した理論で、通貨の購買力はその国の物価水準の逆数に比例するとい
う考え方である。
実際の円に対するドルの動きについて、73 年を基準としてみると、ドルが大幅に増価し
た 80 年代前半を除き、変動相場制導入以降の長期的なトレンドをある程度追っているこ
とがわかる。要因としては、米国の物価上昇速度が日本に比べ速かったことが挙げられる
(図5)。
表1 為替総括表
予測
1999
年度/四半期
4-6
円/米ドル
7-9
10-12
2000
1-3
4-6
7-9
10-12
2001
1-3
4-6
7-9
10-12
1-3
2000
予測
(F.Y.)
2001
予測
(F.Y.)
111.54
107.05
107.75
米ドル/ユーロ
1.057
1.048
1.039
0.987
0.920
0.940
0.970
1.000
1.020
1.040
1.060
1.080
1.033
0.96
1.05
独マルク/米ドル
1.851
1.866
1.883
1.981
2.126
2.081
2.016
1.956
1.917
1.881
1.845
1.811
1.895
2.04
1.86
仏フラン/米ドル
6.206
6.253
6.319
6.645
7.130
6.978
6.762
6.560
6.431
6.307
6.188
6.074
6.356
6.86
6.25
米ドル/英ポンド
1.607
1.601
1.631
1.607
1.587
1.575
1.575
1.563
1.563
1.550
1.550
1.538
1.612
1.58
1.55
135.82 120.09 108.62 105.68
97.70
98.70 103.79 110.00 111.18 111.28 114.48 115.56
117.55
102.55
113.13
57.84
円/ユーロ
120.94 113.61 104.54 107.07 106.20 105.00 107.00 110.00 109.00 107.00 108.00 107.00
1999
実績
(F.Y.)
円/独マルク
65.34
60.88
55.52
54.05
49.95
50.46
53.08
56.24
56.86
56.88
58.54
59.08
58.95
52.43
円/仏フラン
19.49
18.17
16.54
16.11
14.89
15.05
15.82
16.77
16.95
16.97
17.45
17.62
17.58
15.63
17.25
194.33 181.91 170.54 172.06 168.54 165.38 168.53 171.93 170.37 165.85 167.40 164.57
179.71
168.59
167.05
101.10
円/英ポンド
円名目実効為替レート
84.08
89.98
97.82
96.89 101.10 101.65
99.70 100.27 100.04 100.64 101.43 102.29
92.19
100.68
円実質実効為替レート
84.15
89.68
96.36
94.35
95.18
95.26
91.14
96.19
94.94
ドル名目実効為替レート 118.75 117.09 114.13 116.81 114.45 112.95 113.05 112.44 112.26 111.68 111.20 110.79
116.69
113.22
111.48
ドル実質実効為替レート 120.97 120.10 118.17 122.04 119.59 118.46 118.97 118.55 118.34 117.91 117.40 117.17
120.32
118.89
117.71
97.46
97.11
95.01
94.56
94.66
( 注 ) 1 . 期中 平 均 値
2 . 円及 び ド ルの 名 目 、実 質 実 質為 替 レ ート は IFS統 計 の それ ぞ れ neu,rec( 95年= 100
3 . 対ユ ー ロ 固定 レ ー トは 1.95583独マ ル ク 、6.55957仏 フ ラン で あ る。
( 資 料) 日 本 銀行 「 物 価指 数 月 報」 「 国 際収 支 統 計月 報 」
大 蔵 省「 外 国 貿易 概 況 」
IMF, International Financial Statistics, Direction of Trade Statistics
2
95.27
四半期経済予測 SA107
(社)日本経済研究センター
図1 為替レートの推移
(円/ドル)
150
140
130
120
110
100
90
1/5
98
2/27 4/21 6/16
98
98
98
8/7
98
10/1 11/25 1/21 3/16 5/13
98
98
99
99
99
7/5
99
8/26 10/21 12/15 2/10
99
99
99
00
4/5
00
5/31
00
(資料)日本経済新聞
図2 円・ドルレートと円の実効為替レートの動向
図2 円・ドルレートと円の実効為替レートの動向(月次)
・ドルレートと円の実効為替レートの動向(月次)
(1995=100)
120
円の実効為替レート
(日経通貨インデックス)
円高
110
100
90
80
円安
70
60
円・ドルレート(逆数)
50
95/1
95/5
95/9
96/1
96/5
96/9
97/1
97/5
97/9
98/1
98/5
98/9
99/1
99/5
(注)円・ドルレート(逆数)={1/(円・ドルレート/95年の円・ドルレート)}×100
(資料)日本経済新聞
99/9
00/01 00/05
(年/月)
図3 日米実質金利差と為替レート
(%)
-2
(円/ドル)
80
-1
100
0
120
1
2
140
金利差
3
5
86/1
160
為替レート
4
180
88/1
90/1
92/1
94/1
96/1
実 質 金 利 差 = (米 10年 債 − % RCL(米 消 費 者 物 価 指 数 ))
− (最 長 期 国 債 利 回 り − % RCL(消 費 者 物 価 指 数 ))
(資料)日本経済新聞
3
98/1
00/1
( 年 度 /四 半 期 )
四半期経済予測 SA107
(社)日本経済研究センター
図4 インフレ率格差と為替レート
(%)
(円/ ドル)
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
86/1
80
円 レ− ト(右目 盛 )
100
120
140
イ ンフ レ率 格差
160
180
88/1
90/1
92/1
94/1
96/1
98/1
00/1
消 費者 物価 上昇 率格 差= %RCL(米消 費者 物価 指数 )−%RCL(消費 者物 価指 数)
(年度 /四半期)
(資料 )日本経済新 聞
図5 円ドルレートと購買力平価(73
図5 円ドルレートと購買力平価(73 年4年4-6月基準)
6月基準)
円/ドル
80
円ドルレート
130
輸出デフレータによる
購買力平価
180
230
卸売物価指数による
購買力平価
280
330
消費者物価指数による
購買力平価
380
73/1Q 75/1Q 77/1Q 79/1Q 81/1Q 83/1Q 85/1Q 87/1Q 89/1Q 91/1Q 93/1Q 95/1Q 97/1Q 99/1Q 01/1Q
(資料)日本経済新聞
(年度/四半期)
4
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