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第11回(1月12日)

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第11回(1月12日)
現代数学への流れ
浪川 幸彦
January 12, 2007
4 非ユークリッド幾何学へ−公理とは何か?−
4.3 球面幾何学
4.3.2 球面三角法
球の半径は任意とする。
Proposition 4.3.3 (球面正弦法則). 球面三角形の三つの角を A, B, C ,対する辺の長さを a, b, c
とすれば,
sin a
sin b
sin c
=
=
sin A
sin B
sin C
Proposition 4.3.4 (球面余弦法則). 上と同じ仮定の下に,
cos a = cos b cos c + sin b sin c cos A, etc.
Exercise 1. a = a0 /R, b = b0 /R, c = c0 /R と置いて,球の半径を無限大に持って行くと,平
面での正弦法則,余弦法則が得られることを示せ。
a2
, etc. (a → 0) を用いよ。
2
Remark. この事実に最初に気付いたのも Lambert である。
Hint. sin a ≈ a, etc., cos a ≈ 1 −
4.3.3 測地線
二つの問題を考えよう:
• 曲線あるいは曲面の中にいる人間が,自分のいる空間が「曲がっている」ことをどう
知るか?
1
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2
• 大円はなぜ「直線」なのだろうか?
これらの問題には,力学的に答えることができる。
• 中で等速運動してみればよい(「束縛力」が働く)
• 束縛力以外の力が働かない状態での運動の軌跡が大円になる(一般に「測地線」とよ
ばれるもの)。
詳細については例えば「ベクトル解析」(岩堀長慶著,裳華房)を参照。
Remark. 測地線はもう一つ「最短距離」を与える,という「幾何学的な」解釈がある。それは
変分問題を解くオイラー方程式の解として測地線の方程式を与えることとなる。これによっ
ても大円が得られる。両者は,ダランベールの最小作用の原理が運動方程式を与えるという
解析力学の考え方を通して実はつながっている。
5 幾何学と対称性
幾何学で対称性が大きな役割を果たしていることはよく知られている。例えば平面幾何で,
正多角形は他の多角形より高い対称性を持っている。その立場から見ると,じつは円と直線
とは,回転および平行移動というずば抜けて高い対称性を持っていることを以前注意した。
ここでもう少し視点を拡げて,ある概念を保つ対称性を考えてみよう。ユークリッド幾何
学では「合同」という概念がある。これは「移動」によって重なる図形のことである。逆に
言うと,移動の全体は「合同な図形」を保つ対称性なのである。「移動」によって様々の概
念が保たれる。「長さ」「角度」「直線」「円」「平行線」「円と接線」等々。
では逆に「長さ」を保つような平面の変換(連続写像で逆を持つもの)は「移動」に限る
のだろうか? 証明は易しくないが,答はイエスである。では「角度」は? 答はノーであ
る。拡大・縮小は明らかに角度を保つ。「直線」になるとこれは一般の線型変換で不変であ
る。そこでこうした「対称性」に着目して,それによって様々な幾何学を特徴付けようと言
う画期的なアイデアを提出したのが Felix Klein である。これは彼が Erlangen 大学に就任し
たとき (1872) に提出した「計画書」に述べられているもので,一般に「エルランゲン・プロ
グラム」と呼ばれている。ここでその一部を紹介しよう。
5.1 アフィン変換
「対称性」の候補を,上で出てきた一般の線型変換を含む形に拡張しておく。本来は非ユー
クリッド幾何学などが実現できるように空間や変換をもっと拡張しておくべきなのだが,こ
こでは平面上のアフィン変換と呼ばれるものまでに止める。興味ある読者は Klein の原著(の
翻訳),あるいは深谷賢治「双曲幾何」(岩波書店)などを読まれたい。
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Definition 5.1.1. 次のように表される平面の変換をアフィン変換と呼ぶ:
!
!
x
ax + by + e
7→
, (ad − bc 6= 0).
y
cx + dy + f
これはベクトルで表示すれば:
!
x
x=
7→ Ax + b,
y
A=
a b
c d
!
, b=
e
f
!
.
また次のように行列表示もできる:
 

 
x
a b e
x
 

 
y  7→  c d f  y  .
1
0 0 1
1
アフィン変換を表すには (A, b) と書く。A = E の場合を(ベクトル b による)平行移動と
いう。
Proposition 5.1.2. アフィン変換 (A, b) において,次の条件は同値である:
1)ユークリッド幾何での「移動」である;
2)2点間の「距離」を変えない;
3)A が「直交行列」(t AA = E )
前回のレポートについて
●第2回レポートを今日返却できませんでした。次回採点の上返却します。
質問・意見に対するお答え
● Riemann 予想という話が出たが,それは何か。
答:素数の分布に関係した,ゼータ関数と呼ばれる複素関数の性質についての予想です。数
学での未解決問題の最も有名で重要なものといえましょう。簡単に書くことができないので,
ウェブページなどを参照して下さい。
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4
第3回レポート
●課題:次の二つの課題について答えて下さい:
1.この講義の中で何を学んだか,初回に自分が書いたレポートを参照してそれと比較しな
がら記せ。また特に興味を持った内容が何であったか,あるいは数学についてのイメージに
どんな変化があったかなどを加えてもよい。単なる「感想」(面白かった,難しかった)だ
けではなく,自らを振り返った客観的かつ具体的記述が必要;
2.数学に関する書物を一冊読んで,その中で最も印象に残った内容を紹介すると共に,そ
こから数学の見方,考え方として何を学んだかを記せ。このとき書誌情報(本の著者(編者),
題名,出版社,出版年)を必ず記すこと。書物として,教科書,演習書のたぐいは認められ
ない。また「数学セミナー」等の雑誌については特定テーマについての特集増刊号であれば
認める;
さらに,講義の内容と関係あるテーマについて自由研究をした報告を歓迎する。提出したも
のにはボーナス点を与える。
●仕様:A4 横書き,
(ワープロ印刷)10∼12 ポイント,30∼40 行,4 ページ以上(表紙を含
む),
(手書き)6 ページ以上(表紙を含む)
[ワープロ印刷を推奨する]
;表紙を必ず付け,題
名(1.内容に相応しい題を考える),書誌情報(2.
),学生番号,氏名を明記すること。
●提出期限:2月2日(金)授業時間修了時。初回レポートと共に
●提出方法:1)メールによる送付(推奨)
:添付ファイルとして。ファイルは pdf ファイル
とする。このときメールの subject とファイル名は「学生番号」とするとともに,メール本文
の中に氏名を記す。名無しのメールは受け付けない。メールによる提出で受け取った場合に
は必ず受領の返事を出すので,もし送付後3日以上経っても受領通知が来ない場合には問い
合わせて下さい。この場合初回レポートは別途2)3)の方法で提出して下さい。
2)共通教育事務室廊下に設置するレポート提出箱に投函
3)講義時に提出
連絡
次週19日はセンター入試準備のため休講です
連絡先等
• 研究室:理1号館 506 号室
• オフィスアワー:木曜日 11:30∼12:30(それ以外の場合は事前にアポを)
• E-mail : [email protected]
• Tel.: (052-789-) 4746
• Website : http://www.math.nagoya-u.ac.jp/˜namikawa/
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