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ダイジェスト版 - 知床自然センター

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ダイジェスト版 - 知床自然センター
 知床財団がお届けする 知床の自然情報誌SEEDS(シーズ)
公益財団法人 知床財団 発行日 2015年10月15日
SEEDS
No
No.228
o.228
o.228
2015
秋号
自然特集
カラフトマスを釣る
活動レポート
IWMCとタウンミーティング
知床・人・インタビュー第24回
桜井あけみさん
スタッフの本棚 第18回
青春を山に賭けて
知床財団購買部
ひぐまのごはんで絵を描く
知床財団この一品 第7回
写真:遡上するカラフトマス。水面から背ビレが見える。
行き過ぎたピンテ文化
活動レポート
IWMC とタウンミーティング
¦ 文 - 増田 泰 事務局長/石名坂 豪 保護管理研究係長 ¦
札幌
in
石名坂 豪
有 し、知 床 の 次 の
年に向けた提
年前
ムでの英語発表や現地視察のコー
と 同 様 に、今 回 も 学 会 シ ン ポ ジ ウ
の で す。知 床 財 団 の 職 員 は
言をまとめる目的で企画されたも
10
The
私 た ち は、学 会 の よ う な 場 で〝
専門分野の人々へ知床の自然を科
学 的 に 伝 え る〟こ と は、〝ひ ろ く
一 般 の 人 々 に 分 か り 易 く 伝 え る〟
す。各 種 学 会 へ の 出 席 は﹁知 床 を
ことと等しく重要と考えていま
は 日 本 哺 乳 類 学 会 と の 合 同 で、7
知 り、守 り、伝 え る﹂現 地 実 動 部
隊としての知床財団の存在感を示
本の北東端にいる私たちがその道
す よ い 機 会 で す。ま た、普 段 は 日
際、札 幌 コ ン ベ ン シ ョ ン セ ン タ ー
や 知 見 を 共 有 し た り、あ る い は 議
の専門家と直接顔を合わせて情報
﹁知 床・イ エ ロ ー ス ト ー ン
野生
の知床シン
IWMC
もあるのです。
ヵ国から
47
7/31 - 8/3
知床タウンミーティング
現地視察
7/29
IWMC での知床関連シンポジウム
番目のセッションとして開
公園における野生動物の保全と管
理、2 0 1 5 年 版
イエロース
ト ー ン、シ ホ テ ア リ ン お よ び 知 床
の 経 験 と 知 識 の 共 有﹂の 演 者 の 一
人として、﹁知床国立公園におけ
------では、知
IWMC
- - -発
- 表までの裏話
実は私、今回の
床財団が独自事業で取り組んでい
る ト ド 調 査 の 結 果 を ま と め て、ポ
スター発表をするつもりでいまし
た。と こ ろ が、知 床 シ ン ポ ジ ウ ム
でのエゾシカに関する口頭発表と
い う 大 役 を い た だ い た た め、﹁ズ
ボ ラ な 自 分 に は ト ド と シ カ、水 陸
両方の英語でのとりまとめは無
理!﹂と 早 々 に 判 断、エ ゾ シ カ 1
本に絞った次第です。
分弱の英語口頭発表
と、などについても紹介しました。
成果で植生が回復しつつあるこ
知床の一部の地区では捕獲事業の
シ カ 捕 獲 業 務 を 担 っ て い る こ と、
ま た、知 床 財 団 は 現 場 で の エ ゾ
とを述べました。
カ 管 理 の 時 代﹂に 突 入 し て い る こ
に よ り 開 始 さ れ、最 近 は﹁エ ゾ シ
でもエゾシカの捕獲事業が環境省
ら 知 床 岬 を 皮 切 り に、国 立 公 園 内
そ の 結 果 に 基 づ き、2 0 0 7 年 か
い て 様 々 な 議 論 が 行 わ れ た こ と、
れ た 専 門 家 に よ る 助 言 機 関※に お
て き た こ と、2 0 0 4 年 に 設 置 さ
の森林や草原の姿が著しく変わっ
エ ゾ シ カ の 個 体 数 が 急 増 し、知 床
次 い で こ の よ う な 保 護 の 結 果、
ていた歴史に、まず触れました。
近 ま で 長 く﹁保 護 の 時 代﹂が 続 い
ス ジ カ 猟 が 禁 止 だ っ た よ う に、最
1997年まで可猟区の中でもメ
年 代 に 知 床 へ 再 分 布 し た こ と や、
り、阿 寒 方 面 に 生 き 残 っ て い た 集
私は
団 が 約 1 0 0 年 を 経 て、1 9 7 0
治時代の豪雪で一旦絶滅状態とな
発 表 で は、知 床 の エ ゾ シ カ が 明
を行いました。
タイトルで
る エ ゾ シ カ の 保 全 と 管 理﹂と い う
知床
の口頭発表セッションが開かれま
86
し た︵ポ ス タ ー 発 表 は 2 7 0 点︶
。
ン シ ョ ン セ ン タ ー 内 の 会 場 で、
1 2 0 2 人 が 参 加 し、札 幌 コ ン ベ
今回の学会には
発表の内容
仕事に還元できる数少ない機会で
論 し て、そ れ ら を 私 た ち の 普 段 の
ました。今回の
ポ ジ ウ ム や、知 床 へ 移 動 し た 後 の
年間に知床で何
現地視察とタウンミーティング
は、
﹁そ の 後 の
が 起 き、ど の よ う に 変 わ っ た の
か?課 題 は 何 か?﹂に つ い て、海
外の世界自然遺産に関わっている
研究者を含む関係者間で認識を共
発表に使ったスライドの一部
と銘打ったシンポジウムが開かれ
を め ぐ る 2 つ の 国 立 公 園 の 物 語﹂
内 の、奇 し く も 全 く 同 じ 会 場 で、
︵第9回国際哺乳類学会︶の
IMC9
年前の2005年に開催された
月 に 札 幌 で 開 か れ ま し た。実 は、
開 催 し て い る 国 際 学 会 で す。今 年
物 学 会︶が 数 年 お き に 世 界 各 地 で
︵ア メ リ カ 野 生 動
Wildlife Society
会 議﹂と 訳 さ れ て い ま す。
の 略 で、
﹁国 際 野 生 動 物 管 理 学 術
﹁ IWMC
﹂と は、 International ディネート等に携わりました。
Wildlife Management Congress って?
IWMC
10
催 さ れ た シ ン ポ ジ ウ ム﹁知 床 国 立
54
10
| SEEDS | 6 |
| SEEDS | 7 |
札幌
25
10
※知床世界自然遺産地域科学委員会 エゾシカ・陸上生態系ワーキンググループ
知床
タウンミーティング
世 界 自 然 遺 産 で は、 先 輩 に あ た
るイエローストーン国立公園で活
躍 さ れ て い る 専 門 家 か ら、直 接 お
話を聞く機会は普段はなかなかあ
り ま せ ん。そ こ で せ っ か く の 機 会
で す か ら、札 幌 で の 学 会 後、イ エ
ローストーンの専門家に知床まで
お 越 し い た だ き、知 床 の 住 民 が 互
タウンミーティングの様子
会場ではゲストと参加者という
区 別 な く 同 じ テ ー ブ ル を 囲 み、顔
を見合わせながらのミーティング
で し た。第 1 部 で は 最 初 に 米 国 地
理研究所上席野生生物研究員のフ
ラ ン ク・ヴァ ン・マ ネ ン さ ん か ら
イエローストーンにおけるクマ管
理の現状について紹介いただきま
した。
続いて両町の高校生からの報告
が あ り、羅 臼 高 校 か ら は 羅 臼 町 の
現 況 と、幼 稚 園 か ら 小 中 高 校 ま で
いの現状についての情報を交換し
タウン
た り、意 見 を 述 べ 合 う 場
ありました。
休憩をはさんだ後の第2部で
知床での現地視察
タ ウ ン ミ ー テ ィ ン グ に 先 駆 け て、
知 床 で の 現 地 視 察 が あ り ま し た。
参 加 者 は、知 床 五 湖 の 高 架 木 道、
岩 尾 別 川 河 口、ウ ト ロ 高 原 の 農 地、
斜 里 町 ル シ ャ 地 区、羅 臼 町 ル サ 地
区、同 海 岸 町 地 区、羅 臼 ビ ジ タ ー
セ ン タ ー 等 を 訪 ね ま し た。ル シ ャ
地 区 で は、夏 の 餌 不 足 に よ っ て 激
ヤ セ し、ほ と ん ど 動 け な い 状 態 の
親 子 グ マ を 見 ま し た。こ れ に は、
地 元 の 高 校 生 を は じ め、視 察 参 加
者の皆さんは大変衝撃を受けてい
ま し た。こ の よ う な 夏 の 餌 不 足 は、
増えすぎたエゾシカがヒグマの好
む植物を先に食いつくしたことや、
生 活 圏 が 近 接 し た 知 床 で は、そ の
﹁シ カ に よ る 植 生 破 壊 で ヒ グ マ の
つ き あ い 方 の 難 し さ を 感 じ た﹂
、
温暖化によるカラフトマスの遡上
状況を考慮した独自の管理手法を
餌 と な る 植 物 が 減 り、影 響 を 受 け
は な く、国 全 体 で 考 え な く て は な
生動物の管理は町や北海道だけで
て い る こ と に 衝 撃 を 受 け た﹂、﹁野
また、シカについては、イエロー
ら な い 問 題﹂と い っ た 彼 ら の 感 想
た の も ま た、そ の 土 地 の 広 大 さ と
で最終的にオオカミを再導入でき
トーンにおいて賛否両論がある中
え る で し ょ う。そ し て イ エ ロ ー ス
を加えた点ではある意味同じと言
し た。手 法 は 違 い ま す が、人 が 手
の数を調節する試みを行ってきま
捕獲することで増えすぎたシカ類
一 方 で 知 床 で は、人 自 ら が シ カ を
た オ オ カ ミ を 人 の 手 で 再 導 入 し、
本来の捕食者でありながら絶滅し
く、そ れ ら を 参 考 に し て 知 床 の 地
事例をそのまま模倣するのではな
今 回 改 め て 感 じ た こ と は、海 外 の
もに、頼もしく思われたようです。
て い る 姿 を 見 て、感 心 さ れ る と と
動物との関係について真剣に考え
皆 さ ん も、地 元 高 校 生 が 人 と 野 生
し く な り ま し た。海 外 の 専 門 家 の
て吸収してくれたりしたことに嬉
を見て得たものを自分のものとし
状 況 を 見 聞 き し た り、実 際 の 現 場
を 聞 い て、次 の 若 い 世 代 が 海 外 の
理 的、社 会 的 条 件 に マ ッ チ し た 独
視 察 の 後、﹁ル シ ャ で 痩 せ た ヒ グ
見 て、考 え ま し た。ル シ ャ の 現 地
ん と 行 動 を 共 に し、実 際 に 現 場 を
で は、地 元 高 校 生 も 専 門 家 の 皆 さ
現地視察とタウンミーティング
やらなければならないことであ
で す。こ れ ら は ま さ に 知 床 財 団 が
いかなければならないということ
来その任を担う次の世代を育てて
然 遺 産 を 守 っ て い く た め に は、将
い と い う こ と と、持 続 的 に 世 界 自
自の仕組みを作らなければならな
マ を 見 て、人 が 手 を 出 す べ き で な
す目標となりました。
年に向けて我々のめざ
り、次 の
や り た い と 思 っ た。野 生 動 物 と の
いとわかっていてもどうにかして
せん。
いう知床との違いなのかもしれま
ストーンではこの
年、シ カ 類 の
ました。
見出す必要があるとの指摘があり
は、会 場 全 体 で 質 疑 と 意 見 交 換 を
行いました。
間 に 抱 え る 課 題 は、知 床 も イ エ
マやシカといった野生動物と人の
交 流 の 中 で 見 え て き た も の は、ク
イエローストーンの専門家との
∼イエローストーンと知床∼
4日間の交流からみえたもの
止キャンペーンについての発表が
なって取り組むヒグマえさやり禁
里からは町において官民一体と
存 す る こ と の 難 し さ に つ い て、斜
羅臼町特有の事情を抱える中で共
らは人とヒグマの生活圏が接する
最 後 に 地 元 を 代 表 し て、羅 臼 か
した。
学習成果についての発表がありま
学 習﹂﹁知 床 自 然 概 論﹂か ら 得 た
学 ぶ 独 自 カ リ キ ュ ラ ム﹁知 床 自 然
里高校からは知床世界自然遺産を
何 か と い う 発 表 が あ り ま し た。斜
るために自分たちでできることが
紹 介、そ し て ヒ グ マ と の 共 存 を 図
一貫して行われているクマ学習の
ム が 導 入 さ れ た こ と は、過 去 と 比
カ ロ ー 博 士 は、
﹁こ の よ う な シ ス テ
知 床 を 訪 問 し て い る デ ー ル・マ ッ
通 過 し ま し た が、こ れ ま で 何 度 も
ムイワッカのマイカー規制区間を
ま た、ル シ ャ 地 区 へ の 途 上、カ
ます。
の遅れに原因があると疑われてい
ました。
地元高校生にも参加していただき
さ ら に 今 回 は、将 来 の 知 床 を 担 う
ミ ー テ ィ ン グ を 開 催 し ま し た。
増田 泰
べ る と 非 常 に 感 慨 深 い﹂と コ メ ン
ローストーンも同じであるという
石名坂
in
トしていました。
ことでした。
ク マ に つ い て い え ば、イ エ ロ ー
ストーンにおいても過去には餌付
け の 問 題 や、ク マ を 見 た い 観 光 客
の過度なクマへの接近といった知
床 と 同 様 の 課 題 を 抱 え、紆 余 曲 折
を経て解決方法を見出してきた歴
史 が あ り ま し た。一 方 で、知 床 と
の 大 き な 違 い は 土 地 の 広 さ で す。
広大なイエローストーンでは保護
区 と 人 の 生 活 圏 は 離 れ て お り、保
護区内でクマの人慣れが進んで
も、保 護 区 外 の 居 住 エ リ ア へ の 直
接 的 影 響 は あ ま り あ り ま せ ん。イ
エ ロ ー ス ト ー ン の 専 門 家 も、こ れ
ほどヒグマが高密度に生息してい
ながら知床でほとんど事故がない
こ と は む し ろ 驚 き で、ク マ と 人 の
羅臼町の高校生による発表
意見交換の様子
カラフトマスが遡上する岩尾別川河口を視察する
エクスカーション参加者たち
ミログラトフカ川での調査風景
カワウソの足跡
10
マネン氏によるイエローストーンのクマ管理の紹介
| SEEDS | 8 |
| SEEDS | 9 |
カワウソのフン
10
イエローストーン国立公園
活動レポート
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