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テキストをダウンロードします - 日商簿記Web講座のAccounting Japan

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テキストをダウンロードします - 日商簿記Web講座のAccounting Japan
にこにこ日商簿記検定試験2級商業簿記講座テキスト
目次
日商簿記検定試験の受験方法など・[02 分]・・・・・・・・・・・・1
1.伝票会計・[35 分]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
2.帳簿組織(Ⅰ)・[30 分]・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
3.帳簿組織(Ⅱ)・[35 分]・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27
4.銀行勘定調整表・[15 分] ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45
5.特殊商品売買取引・[40 分] ・・・・・・・・・・・・・・・・ 53
6.固定資産取引・[35 分] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68
7.手形取引・[15 分] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81
8.有価証券の取引・[25 分] ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86
9.株式の発行・[25 分]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・97
10.社債の発行・[25 分]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 107
11.税金[15 分]・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・122
12.剰余金の処分・[15 分]・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 127
13.精算表の作成・[45 分]・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 131
14.英米式と大陸式・[20 分]・・・・・・・・・・・・・・・・・ 147
15.財務諸表の作成・[55 分]・・・・・・・・・・・・・・・・・ 155
16.本支店会計・[35 分]・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・184
17.仕訳 30 問・[65 分]・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ 204
[・・分]Net 講座の時間である。
この章では,3つの内容を学習する。
① 日商簿記検定試験 2 級の内容
② この講座の内容
③ 伝票式簿記

最初に,学習の仕方を説明する。

インターネットにアクセスして,本講座にアクセスする。

テキストのダウンロードの個所から,テキストを印刷し,テキストを読む。

解説を理解する。

例題や練習問題が表れるから,解答する。

採点する。

繰り返しながら,学習を進める。

わからなくなったら,ストップボタンを効率的に操作する。
1
受験手続が終わった時点では,学習は 90%程度終えておく必要がある(理由:受験放棄の受
験生が多い)。
2級の商業簿記検定試験の範囲と内容
日商簿記検定試験2級の範囲
商業簿記
工業簿記
第1問
第2問
第3問
第4問
20点
20点
20点
20点
仕訳
帳簿組織
財務諸表の作成
精算表
本支店会計
第5問
20点
原価計算
仕訳・勘定への記入
財務諸表の作成
日商簿記検定試験は 100 点満点,商業簿記は 3 問,配点は 60 点。工業簿記は 2 問,配点は
40 点。合格点は 70 点である。商業簿記の出題は,上の図解から明らかなように 3 つのグループ
に分かれる。
3 級の商業簿記は,個人商店の簿記
2 級の商業簿記は,個人商店の簿記と株式会社の簿記が混在
2 級の商業簿記の本講座の全体像
1)伝票会計
2)帳簿組織(Ⅰ)
3)帳簿組織(Ⅱ)
4)銀行勘定調整表
5)固定資産取引
6)特殊商品売買取引
7)手形取引
8)有価証券取引
9)社債の発行
10)株式の発行
11)税金
12)剰余金の処分
13)精算表
2
14)英米式と大陸式
15)財務諸表の作成
16)本支店会計
17)仕訳復習問題
受験手続開始前に
全体で学習時間は,1 日 1 時間の学習で 1 週間を確保(本講座の学習で全体像が分かる)
。
繰り返し,2 回程度の学習,受験 1 週間前(1 日 3 時間)→過去の試験問題(3 回分程度:
間違った点に集中)
正直:50 時間程度で,2級商業簿記は得意科目になるはず。
3
1 章 伝票会計
この章では,帳簿の仕組みである帳簿組織を勉強する。とくに,本章では総勘定元帳へ
の転記の省力化(記帳:仕訳,転記の事務作業を省くこと)を学習する。
記入問題
50%
推定問題
50%
試算表作成問題
65%
推定問題
35%
伝票会計
40%
帳簿組織
特殊仕訳帳
60%
2 級の商業簿記では第 2 問では,この章で勉強する伝票式簿記と次の2つの章で学習する
特殊仕訳帳は,帳簿組織として出題される。
出題頻度は伝票式簿記が 40%,特殊仕訳帳制度が 60%である。この講座では,帳簿組織
を最初に配置したが,これを理解すると,商業簿記 2 級の範囲は 30%を終えたことになる。
特殊仕訳帳制度の方が難しい。難しいが,特殊仕訳帳を理解すると 20 点がとれる。
3 級の簿記では,正解紙片,つまり伝票で仕訳をした。この作業を起票,そして仕訳の都
度,総勘定元帳に,1つ1つ転記する仕方を学習した。1つ1つ総勘定元帳に転記するこ
とを個別転記という。具体的には,3 級の簿記は,3 伝票制と 5 伝票制の帳簿組織であった。
3伝票制による記帳プロセス(3級)
取 引
入金取引
入金伝票
出金取引
出金伝票
その他の取引
振替伝票
総勘定元帳
5伝票制による記帳プロセス(3級)
取 引

入金取引
入金伝票
出金取引
出金伝票
仕入取引
仕入伝票
売上取引
売上伝票
その他の取引
振替伝票
総勘定元帳
3伝票制とは,3 種類の伝票,つまり入金伝票,出金伝票,振替伝票を使用して取引
4
を1つ1つ起票し,起票の都度,総勘定元帳に1つ1つ個別転記する帳簿組織であ
る。

5伝票制とは,入金伝票,出金伝票,振替伝票のほかに,仕入伝票と売上伝票を使
用して取引を1つ1つ起票し,起票の都度,総勘定元帳に1つ1つ個別転記する帳
簿組織である。
3級の商業簿記の伝票の特徴:5伝票制と個別転記
2級の伝票式簿記では,何を学習するのか。下のような帳簿組織を学習する。
5伝票制による記帳プロセス(2級)
入金取引
入金伝票
出金取引
出金伝票
仕入取引
仕入伝票
売上取引
売上伝票
その他の取引
振替伝票
集計
取 引
合計転記
仕訳日計表
総勘定元帳
個別転記
補助元帳
伝票式簿記の記帳には,特徴が2つある。
① 上の矢印を見る。総勘定元帳への転記にあたっては,仕訳日計表という仕訳集計表を利
用して,総勘定元帳に合計転記をする。
② 下方向への矢印を見る。補助元帳,つまり得意先元帳や仕入先元帳へは,起票の都度,
得意先元帳や仕入先元帳へ個別転記をする。
仕訳日計表の様式を示す。様式は3級商業簿記で学習した合計試算表の様式に似ている。
5
仕訳日計表
平成X年x月x日
借 方
元丁
勘定科目
現 金
62
元丁
貸 方
仕 入
売 上
仕訳日計表は,中央に勘定科目,それぞれ左右に借方と貸方,ここには金額を記入する。
そして,それぞれの横に元丁という欄がある。元丁とは総勘定元帳の勘定口座のページ数
という意味である。どのように,仕訳日計表は,作成するのか。お店が帳簿組織として5
伝票制を用いていたとする。各伝票の金額の集計手順は,
① 入金伝票は,現金を入金した時に起票するから,起票した入金伝票の集計金額は
現金の増加となる。集計金額は,仕訳日計表の現金勘定の借方に記入する。
② 出金伝票は,現金を出金した時に起票する。出金伝票の集計金額は現金の減少と
なる。その集計金額は,仕訳日計表の現金勘定の貸方に記入する。
③ 仕入伝票は,商品を仕入れた時に起票する。仕入伝票の集計金額は商品の仕入の
合計である。集計金額は仕訳日計表の仕入勘定の借方に記入する。
④ 仕入勘定の貸方には,仕入伝票の返品額を記入する。
⑤ 売上伝票は商品を売り上げた時に起票するから,売上伝票の集計金額は売上の合
計である。集計金額は,仕訳日計表の売上勘定の貸方に記入する。
⑥ 売上勘定の借方には,売上伝票の返品額を記入する。
⑦ ここが難しいところである。入金伝票,出金伝票,仕入伝票,売上伝票,振替伝
票に記載されている勘定科目の金額を集計して,たとえば売掛金の借方と貸方に
合計額を記入する。
⑧ 仕訳日計表の元丁欄には,これから転記する転記先の総勘定元帳の勘定口座の帳
簿の番号を記入する。
6
次の 4 月 1 日の伝票から,仕訳日計表を作成しなさい。
入金伝票
貸付金
No.101
160
入金伝票
売掛金
(山口商店)
No.102
売上伝票
売掛金
(仙台商店)
売上伝票
売掛金
戻り
720
No.401
出金伝票
買掛金
(厚木商店)
No.201
出金伝票
買掛金
(渋谷商店)
No.202
560
仕入伝票
買掛金
値引き
360
振替伝票
受取手形
No.301
680
No.302
(渋谷商店)
20
No.501
320
960
No.402
(山口商店)
90
仕入伝票
買掛金
(渋谷商店)
売掛金
振替伝票
買掛金
(仙台商店)
320
No.502
(渋谷商店)
支払手形
250
250
仕訳日計表
平成X年4月1日
借 方
元丁
勘定科目
現 金
受取手形
売掛金
貸付金
支払手形
買掛金
売 上
仕 入
元丁
41
貸 方
例題1は,伝票の枚数を数えると 4 月 1 日に 10 枚の伝票を起票し,問題はこの 10 枚の
伝票をもとに仕訳日計表を作成しなさいという問題である。
① 入金伝票は 2 枚ある。入金伝票 No.101 と No.102 から集計金額は¥880。現金勘定の借
方合計は¥880 となる。
③ 出金伝票は 2 枚ある。出金伝票 No.201 と No.202 から集計金額は¥920。現金勘定の貸
方合計は¥920 となる。
④ 仕入伝票 No.301 から仕入合計は¥680 となる。
⑤ 仕入伝票 No.302 は赤字であるから値引きである。
⑥ 売上伝票から売上合計は,No.401 から¥960 となる。
7
⑦ 売上伝票 No.402 は赤字であるから戻りである。
⑧ 買掛金の借方集計は,伝票番号 No.201,No.202,No.302,No.502 から¥1,190 とな
る。
⑨ 買掛金の貸方は,仕入伝票 No.301 から¥680 である。
⑩ 売掛金の貸方は,伝票番号 No.101,No.402,N.o501 から¥1,130 となる。
⑪ 売掛金の借方は,伝票番号 No.401 から¥960 である。
⑫ 入金伝票 No.101 は貸付金,振替伝票の No.501 と No.502 が残った。転記する。
合計額¥4,120 を記入する。これで,仕訳日計表を完成することができる。検算もできる。
仕訳日計表
平成X年4月1日
借 方
元丁
880
320
960
1,190
90
680
4,120
勘定科目
現 金
受取手形
売掛金
貸付金
支払手形
買掛金
売 上
仕 入
41
元丁
貸 方
920
1,130
160
250
680
960
20
4,120
仕訳日計表から総勘定元帳への転記を,現金勘定を例に説明する。
現 金
平成
摘 要
4 1 前月繰越
仕丁
借方
400
貸方
借 貸
借
1
残高
400
現金勘定を見る。
① 月と日には,転記元の仕訳日計表を作成した月と日を記入する。
② 借方と貸方には,仕訳日計表の現金勘定の金額を記入する。
③ 摘要欄には,転記元になった仕訳日計表と記入する。3 級の商業簿記では相手勘定科
目であった。
④ 仕丁欄には,仕訳日計表の頁数を記入する。
8
次の 4 月 1 日に作成した仕訳日計表から,現金勘定(丁数番号 1)に転記しな
さい。
仕訳日計表
平成X年4月1日
借 方
元丁
880
1
320
960
1,190
90
680
4,120
平成
摘 要
4 1 前月繰越
仕丁
☑
勘定科目
現 金
受取手形
売掛金
貸付金
支払手形
買掛金
売 上
仕 入
41
元丁
1
貸 方
920
1,130
160
250
680
960
20
4,120
総勘定元帳
現 金
借方
貸方
400
借 貸
借
現 金
平成
摘 要
仕丁
4 1 前月繰越
〃 仕訳日計表
41
〃
〃
〃
借方
400
880
1
残高
400
1
貸方
借 貸
借
〃
920
〃
残高
400
1,280
360
仕訳日計表の現金勘定のみ表示し,元帳へ合計転記する。
仕訳日計表の現金勘定の借方は¥880 である。仕訳日計表の元丁欄に1と記入し,現金勘
9
定の借方に金額を合計転記する。日付は 4 月 1 日,摘要は仕訳日計表から転記しているか
ら仕訳日計表と記入する。
仕丁には,仕訳日計表のページ数の 41。借貸欄には残高が貸借どちらにあるかを記入す
る。現金は借方残高であるから借,残高は¥1,280 となる。
仕訳日計表の現金勘定の貸方は,¥920 である。同じ合計転記の作業を繰り返す。
次に補助元帳へ転記してみる。これは個別転記である。例題1を使用する。
例題3:次の 4 月 1 日の伝票から,仕入先元帳の渋谷商店に転記しなさい。
入金伝票
貸付金
No.101
160
入金伝票
売掛金
(山口商店)
No.102
売上伝票
売掛金
(仙台商店)
売上伝票
売掛金
戻り
平成
4 1
平成
4 1
720
No.401
出金伝票
買掛金
(厚木商店)
No.201
出金伝票
買掛金
(渋谷商店)
No.202
摘 要
前月繰越
摘 要
前月繰越
560
仕入伝票
買掛金
値引き
360
振替伝票
受取手形
960
No.402
(山口商店)
90
仕入伝票
買掛金
(渋谷商店)
仕丁
仕丁
680
No.302
(渋谷商店)
20
No.501
320
売掛金
振替伝票
買掛金
No.301
(仙台商店)
320
No.502
(渋谷商店)
支払手形
250
250
渋谷商店
借方
貸方
借 貸
800
貸
仕入先元帳
渋谷商店
借方
貸方
借 貸
800
貸
10
1
残高
800
1
残高
800
平成
4 1
〃
〃
〃
〃
摘 要
前月繰越
出金伝票
仕入伝票
仕入伝票
振替伝票
仕丁
202
301
302
502
渋谷商店
借方
貸方
借 貸
800
貸
360
〃
680
〃
20
〃
250
〃
1
残高
800
440
1,120
1,100
850
伝票から渋谷商店への買掛金の増減取引を探し出す。4 枚ある。渋谷商店への買掛金の増
減に関する取引は,出金伝票 No.202,仕入伝票 No.301, No.302,振替伝票 No.502 の 4 枚
の伝票である。
まず,日付を記入する。
借方と貸方には,金額を記入する。
仕入先元帳の渋谷商店勘定の摘要欄には,各伝票の名前を記入する。
仕丁欄には,伝票番号を記入する。
残高を計算し,記入する。
借貸には,残高が借方か貸方にあるか否かを記入する。
他の伝票は,一括して転記する。
仕訳日計表,元帳への転記,補助元帳への転記の問題を組み込んだ練習問題にチャレン
ジする。少し,伝票枚数を増やす(最近の試験では伝票枚数:24 枚)
。
大町商店は,毎日の取引を入金伝票,出金伝票,振替伝票,仕入伝票,売上伝票に記入
し,これを 1 日分ずつ集計して仕訳日計表を作成し,この仕訳日計表から各関係元帳に転
記している。同店の平成 XX 年2月1日の取引について作成された次の伝票に基づいて,下
記の設問に答えなさい。なお,同店は商品の仕入と売上はすべて掛けで行っている。
① 仕訳日計表を作成しなさい。②総勘定元帳および仕入先元帳の諸勘定に転記しなさい。
11
入金伝票
売掛金
(福井商店)
No.111
No.241
90,000
出金伝票
買掛金
(横浜商店)
入金伝票
No.112
出金伝票
No.242
貸付金
20,000
消耗品費
1,000
入金伝票
売掛金
(富山商店)
No.113
No.243
80,000
出金伝票
買掛金
(品川商店)
入金伝票
No.114
出金伝票
No.244
借入金
50,000
当座預金
20,000
売上伝票
売掛金
(福井商店)
No.521
振替伝票
受取手形
売上伝票
売掛金
(富山商店)
150,000
No.522
120,000
売上伝票
No.523
売掛金
(福井商店)
戻り
12,000
70,000
振替伝票
買掛金
No.411
100,000
仕入伝票
買掛金
(品川商店)
仕入伝票
買掛金
値引き
45,000
No.412
85,000
No.413
(品川商店)
3,000
No.351
40,000
売掛金
振替伝票
買掛金
仕入伝票
買掛金
(横浜商店)
(富山商店)
40,000
No.352
(品川商店)
支払手形
32,000
32,000
No.353
(横浜商店)
売掛金
(新橋商店)
25,000
25,000
仕訳日計表
平成XX年2月1日
借 方
元丁
勘定科目
現 金
当座預金
受取手形
売掛金
貸付金
支払手形
買掛金
借入金
売 上
仕 入
消耗品費
12
元丁
34
貸 方
総勘定元帳
現 金
平成xx年
2
摘 要
1 前月繰越
仕丁
☑
借 方
貸 方
300,000
101
借 貸
借
300,000
売掛金
平成xx年
2
摘 要
1 前月繰越
仕丁
☑
借 方
501
貸 方
600,000
借 貸
借
2
摘 要
1 前月繰越
仕丁
借 方
貸 方
☑
200,000
借 貸
貸
2
摘 要
1 前月繰越
仕丁
借 方
貸 方
☑
150,000
借 貸
貸
借 方
元丁
240,000 101
20,000
40,000
270,000 501
175,000
12,000
185,000
1,000
943,000
勘定科目
現 金
当座預金
受取手形
売掛金
貸付金
支払手形
買掛金
借入金
売 上
仕 入
消耗品費
34
元丁
101
貸 方
136,000
501
247,000
20,000
32,000
185,000
50,000
270,000
3,000
943,000
13
仕2
残 高
150,000
仕訳日計表
平成XX年2月1日
仕1
残 高
200,000
品川商店
平成xx年
残 高
600,000
仕入先元帳
横浜商店
平成xx年
残 高
仕訳日計表は,問題文からすべての伝票を集計することは要求されていない。総勘定
元帳に現金勘定と売掛金勘定があるから,この 2 つのみである。
現金勘定は,借方には4枚の入金伝票を集計して¥240,000,貸方は 4 枚の出金伝票を
集計して¥136,000.と記入する。
売上は全部掛売上と問題文で指定されている。2 枚の売上伝票から売掛金の借方は
270,000。売掛金の貸方は入金伝票 No.111,113,振替伝票 No.351,353,売上伝票 No.523 から
¥247,000。
仕訳日計表の元丁欄は,現金勘定が 101,売掛金の元丁欄は 501 と記入し転記を開始す
る。
すべて,伝票を集計して,仕訳日計表の当座預金は出金伝票 No.244 から¥20,000,
受取手形は,振替伝票 No.351 から¥40,000,
貸付金は,入金伝票 No.112 から¥20,000,
支払手形は,振替伝票 No.352 から¥32,000,
買掛金の借方は出金伝票 No.241 と No. 243,振替伝票 No.352 と No.353,仕入伝票
No.413 を集計して¥175,000。
借入金は,入金伝票 No.114 から¥50,000,
売上は 2 枚の売上伝票から貸方が¥270,000,
借方は,戻りがあるから売上伝票 No.523 から¥12,000,
仕入の借方は,2 枚の仕入伝票から¥185,000,
貸方は,戻しがあるから仕入伝票 No.413 から¥3,000,
消耗品費勘定は出金伝票 No.242 から¥1,000 に記入する。
そして,合計金額を記入する。どこに,採点個所があるか公表されていないから,全部
記入する。
総勘定元帳
現 金
平成xx年
2
1
〃
〃
摘 要
前月繰越
仕訳日計表
〃
仕丁
☑
34
〃
借 方
貸 方
300,000
240,000
136,000
101
借 貸
借
〃
〃
売掛金
平成xx年
2
1
〃
〃
摘 要
前月繰越
仕訳日計表
〃
仕丁
☑
34
〃
借 方
300,000
540,000
404,000
501
貸 方
600,000
270,000
247,000
14
残 高
借 貸
借
〃
〃
残 高
600,000
870,000
623,000
仕入先元帳
横浜商店
平成xx年
2
摘 要
仕丁
借 方
貸 方
200,000
借 貸
1
前月繰越
☑
貸
200,000
〃
出金伝票
241
70,000
〃
130,000
〃
振替伝票
353
25,000
〃
105,000
〃
仕入伝票
411
〃
205,000
100,000
品川商店
平成xx年
2
仕1
残 高
摘 要
仕丁
借 方
貸 方
☑
150,000
借 貸
仕2
残 高
1
前月繰越
貸
150,000
〃
出金伝票
243
45,000
〃
105,000
〃
振替伝票
352
32,000
〃
73,000
〃
仕入伝票
412
〃
158,000
〃
〃
413
〃
155,000
85,000
3,000
上半分に仕訳日計表,そしてその下半分に現金勘定と売掛金勘定を配置した。仕訳日計表の科
目欄は,売掛金までである。
現金勘定は 101,売掛金勘定は 501,仕訳日計表は 34 になっている。現金勘定の借方と売掛金
の借方のみ,合計転記する。
具体的には,仕訳日計表の元帳欄は 101 と記入し,現金勘定の借方へ合計転記を開始する。日
付は〃,金額は借方に 240,000,残高は 540,000,摘要は転記元の仕訳日計表,仕丁は 34 と記入
する。
現金勘定の貸方に転記する。
仕訳日計表の元帳欄は 501 と記入し,売掛金勘定の借方へ合計転記を開始する。日付は〃,金
額は借方に 270,000,残高は 870,000,摘要は転記元の仕訳日計表,仕丁は 34 と記入する。
売掛金の貸方に転記する。
○伝票から仕入先元帳への個別転記を説明する。
最初に,練習問題の 17 枚の伝票をパソコン画面に登場させる(パソコン画面を見る)。
伝票から横浜商店と品川商店の買掛金の増減取引を見つけ出す。横浜商店は 3 枚,品川
商店は 4 枚,計 7 枚ある。
横浜商店への買掛金を支払った出金伝票 No.241 で仕入先元帳への転記を説明する。
日付は〃,金額は 70,000,貸方残高は 130,000,摘要は出金伝票,仕丁は伝票番号の 241
である。横浜商店については,振替伝票 No.353 と仕入伝票 No.411 もある。
転記の結果はパソコン画面の通りである(パソコン画面を見る)。
一方,品川商店については,伝票枚数は 4 枚ある。
15
出金伝票 No.243 で転記を説明する。
転記の結果は,日付は〃,金額は 45,000,貸方残高は 105,000,摘要は出金伝票,仕丁
は伝票番号の 243 である。品川商店については,振替伝票 No.352 と仕入伝票 No.412,
No.413 もある。転記の結果は,通りである(パソコン画面を見る)。
注意すべき点は次のとおりである。
伝票式簿記では,推定問題も出題されている。何か今までの勉強と違ってデータが欠け
ている。約 5 分費やしてとく。
当社は伝票によって取引を記帳し,毎日,仕訳日計表(省略)を作成し,総勘定元
帳と補助元帳に転記している。①から⑩までに金額を記入しなさい。
入金伝票
当座預金
No.101 入金伝票
売掛金
④
(X商店)
出金伝票
買掛金
(Y商店)
No.102 売上伝票
③
No.201 出金伝票
⑤
No.202 仕入伝票
買掛金
6,000 (Y商店)
支払手形
15,000
No.401
⑦
1
13,000
X商店
5/1 売上伝票No.301 (②) 5/1 入金伝票No.102 (③)
当座預金
4/1 前期繰越 12,000 5/1 日計表
2
(⑥)
Y商店
5/1 出金伝票No201 (⑧) 5/1 仕入伝票No.401 (⑨)
売掛金
6,000 5/1 日計表
(②)
3
12,000
4/1 前期繰越
5/1 日計表
現金
5,000 5/1 日計表
(①)
X商店
No.301
現金残高は12,000である。
4/1 前期繰越
5/1 日計表
4/1 日計表
5/1 日計表
5/1 日計表
買掛金
4
(⑤) 4/1 前期繰越 3,000
5/1 日計表
(⑦)
支払手形
5
(⑩) 4/1 前期繰越 10,000
仕入
10,000
6
売上
5/1 日計表
7
(②)
16
例題には,仕訳日計表がない。これに気付くことが正解をだせるか否かのポイントにな
る。また,○文字数字が順に並んでいない。○文字数字を順に解いていくと正解を出すこ
とができる。
合計転記
伝票
日計表
総勘定元帳
個別転記
補助元帳
① から解く。
総勘定元帳の現金残高は,
文章で摘要として¥12,000 となっている。
前期繰越¥5,000
+①-日計表摘要として¥13,000=注として¥12,000 であるから,現金勘定の①は
¥20,000 となる。
② 掛売上は,売上伝票 No.301 の¥15,000 が仕訳日計表に集計される。そして,仕訳日
計表から売上勘定と売掛金勘定に合計転記される。ゆえに,②は¥15,000 となる。
②の 3 か所を埋めることができる。
③ 売掛金勘定の貸方に摘要として日計表¥12,000 とあるから,③は¥12,000 となる。
④ ①を¥20,000,③を¥12,000 と推定しましたから,入金伝票の④は¥8,000 となる。
⑤ 現金勘定の貸方側に摘要として日計表¥13,000 とある。これは,出金伝票 2 枚を集
計した金額であるから No.201 は¥7,000 となる。さらに,解答作業を進める。
⑥ 入金伝票の④を¥8,000 と推定する。¥8,000 が仕訳日計表に記載され,当座預金勘
定の⑥は¥8,000 となる。
⑦ 仕入勘定の借方側に摘要として日計表¥10,000 とある。仕入伝票 No.401 の金額は
¥10,000 となる。
⑧ 得意先元帳と仕入先元帳へは,伝票から個別転記する。摘要欄は伝票番号を記載する。
⑧は出金伝票 No.201 であるから,¥7,000 となる。
⑨ は,仕入伝票 No.401 を¥10,000 と推定したから,⑨は¥10,000 となる。
⑩ ⑩は,出金伝票 No.202 から¥6,000 となる。
伝票式簿記の推定問題は,検定試験では 3 ページの解答用紙を盛り込んで出題される。
単純な推定問題を解いた。
2つおさらい。転記に当たっての注意点である。
17
18
この章でも,帳簿の仕組みは異なるが,記帳の省力化の問題を取り扱う。
① 仕訳の省力化
② 元帳への転記の省力化(合計転記)
③ 補助元帳への転記(個別転記)
3級の商業簿記では,帳簿組織として考えたのは,次のような帳簿の仕組みである。
取引が発生すると仕訳帳で仕訳をし,元帳に転記をする。仕訳の都度,転記するから個
別転記という。仕訳帳が 1 つしかないから,単一仕訳帳制度という。仕訳帳に記帳された
取引について,次のような補助記入帳(現金出納帳,当座預金出納帳,仕入帳,売上帳,
受取手形記入帳,支払手形記入帳)へも記入することを学習した。
1つ目の課題は,何とかして,仕訳帳への記入を省力化できないか。
2つ目の課題は,総勘定元帳への転記を省力化できないか。
金額欄でよく生じる勘定科目を特別欄に設けて金額を記入し,合計額で転記をすれば,
元帳への転記は省力化できる。
この合計転記とは,日々の取引については仕訳の都度,総勘定元帳へは転記せず,月末
に一括して総勘定元帳へは転記する転記の仕方である。
そのために,現金出納帳の様式を画面のように工夫する。
19
現金出納帳
平成
年
摘 要
入金
1
出金
繰越
1
平成
年
勘定科目
摘 要
元
丁
平成
金 額
年
勘定科目
摘 要
元
丁
金 額
1
平成
年
勘定科目 摘 要
元
丁
売掛金
諸 口
平成
年
勘定科目 摘 要
元
丁
買掛金 諸 口
一番上の現金出納帳は,3級で学習した現金出納帳である。おこずかい帳と同じである。
中央は,勘定式の現金出納帳である。現金出納帳で,現金取引は仕訳できる。
下の現金出納帳は,転記の省力化のために工夫した現金出納帳である。この形式が重要
である。借方に売掛金,貸方に買掛金,さらに諸口欄がある。現金の増加は売掛金の回収
が多いであるから,売掛金の欄を特別に設ける。現金の減少には,買掛金の支払が多いか
ら,買掛金の欄を特別に設ける。
日々の仕訳時点では転記せず,月末にまとめて,合計転記をするためこの欄に金額を記
入する。
このように,現金の増減に関する取引は,補助記入帳を仕訳帳に格上げし,普通仕訳帳
ではなく格上げした補助記入帳で仕訳をする。仕訳帳に格上げした帳簿を特殊仕訳帳とい
う。現金出納帳を当座預金出納帳としても同じである。仕訳帳には,普通仕訳帳と特殊仕
訳帳があるから,複数仕訳帳制度という。
今後,現金出納帳は,下の様式の現金出納帳で解説。帳簿の仕組みを図解する。
20
② 複数仕訳帳制度では,取引の正解,普通仕訳帳で行う場合と現金出納帳で行う場合があ
る。
③ 元帳への転記は,日々の取引の仕訳時点で行う個別転記と月末時点で行う合計転記を行
う場合がある。
補助記入帳としての現金出納帳を特殊仕訳帳にした場合,現金出納帳でどのように仕訳
するか。
① 取引のうち,入金取引は現金出納帳の借方に,出金取引は貸方で仕訳をする。
② 日付欄への記入:取引が生じた日付を記入する。
③ 勘定科目欄への記入:現金出納帳で仕訳をするから,相手勘定科目は勘定科目欄に記
入する。
④ 相手勘定科目が特別欄にある場合:取引の金額は特別欄に記入する。
⑤ 相手勘定科目が特別欄にない場合:取引の金額は諸口欄に記入する。
⑥ 摘要欄への記入:摘要欄には,取引の内容を要約して記入する。
⑦ 元丁欄への記入:総勘定元帳の口座番号,あるいは✔印を記入する。
どんな場合に,✔印を記入するか,特殊仕訳帳が理解できているか,元丁欄への記入
を見ればわかる。
次の出金取引と入金取引を現金出納帳に記入しなさい。
5 月 2 日大阪商店(仕入先元帳 No.1)に対する買掛金(勘定口座 No.11)¥150 を現金(勘
定口座 No.1)で支払った。
8 日福岡商店
(得意先元帳 No.1)
に商品¥270 を現金で販売した
(売上勘定口座 No.30)
。
21
現金出納帳
平成
年
勘定科目
摘 要
元
丁
売掛金 諸 口
平成
年
1
勘定科目
摘 要
元
丁
買掛金 諸 口
現金出納帳
平成
年
勘定科目
5 8 売上
摘 要
元
丁
売掛金 諸 口
福岡商店 30
270
平成
年
5
1
勘定科目
2 買掛金
摘 要
元
丁
大阪商店 ✔
買掛金 諸 口
150
解説
2日は出金取引。ゆえに,特殊仕訳帳の現金出納帳の貸方で仕訳する。8日は入金取引
である。ゆえに現金出納帳の借方で仕訳する。
2日は,日付欄は5月2日,勘定科目は相手勘定科目であるから買掛金,金額は¥150,
元丁欄には✔マーク。✔マークの意味は月末に合計転記するということである。2 日は転記
しない。
8日は,5月8日と記入し,勘定科目は相手勘定科目であるから売上,金額は¥270,元
丁欄には 30。30 と記入する意味は,ここから総勘定元帳 30 番の売上勘定に,取引を仕訳
した時に個別転記するということである。
下の取引を仕訳しない。
5月 13 日 島根商店(仕入先元帳 No,2)に対する買掛金¥50 を現金で支払った。
19 日 札幌商店(得意先元帳 No.1)より売掛金¥200 を現金で回収した。
20 日 島根商店から商品¥350 を現金で仕入れた(仕入勘定口座 No.40)
。
22 日 福岡商店(得意先元帳 No.2)への売掛金¥100 を現金で回収した。
28 日 札幌商店に商品¥200 を現金で販売した(売上勘定口座 No.31)
。
(元帳の現金の前月繰越額は¥100,売掛金勘定口座 No.3,買掛金の繰越高は省略している)
22
現金出納帳
平成
勘定科目
年
5
8 売上
摘 要
元
丁
売掛金 諸 口
福岡商店 30
270
平成
年
5
1
勘定科目
2 買掛金
摘 要
元
丁
大阪商店 ✔
買掛金 諸 口
150
1
平成
年
5
8
19
22
28
勘定科目
売上
売掛金
売掛金
売上
摘 要
元
売掛金 諸 口
丁
福岡商店 30
札幌商店 ✔
福岡商店 ✔
札幌商店 30
270
200
100
平成
年
5
勘定科目
2 買掛金
13 買掛金
20 仕入
摘 要
元
買掛金 諸 口
丁
大阪商店 ✔
島根商店 ✔
150
50
島根商店 40
200
(1)特別欄へ金額を記入した場合:月末に合計転記をするために✔印を記入する。
(2)諸口欄へ金額を記入した場合:仕訳時点で個別転記をするために転記先の元帳番号を記
入する。
23
350
現金出納帳を締め切りなさい。
1
平成
年
5
8
19
22
28
平成
年
5
8
19
22
28
31
〃
〃
勘定科目
売上
売掛金
売掛金
売上
勘定科目
売上
売掛金
売掛金
売上
福岡商店 30
札幌商店 30
福岡商店 30
3
1
前月繰越 ✔
2 買掛金
13 買掛金
20 仕入
摘 要
元
買掛金 諸 口
丁
大阪商店 ✔
島根商店 ✔
150
50
島根商店 40
350
現金出納帳
1
平成
元
買掛金 諸 口
丁
年
270
5
200
100
札幌商店 30
売掛金
現金
勘定科目
200
元
売掛金 諸 口
丁
福岡商店 ✔
5
200
100
福岡商店 ✔
札幌商店 ✔
年
270
札幌商店 ✔
摘 要
平成
元
売掛金 諸 口
丁
摘 要
300
200
300
770
100
870
勘定科目
摘 要
2 買掛金
13 買掛金
20 仕入
大阪商店 ✔
31
〃
〃
買掛金
現金
島根商店 ✔
150
50
島根商店 40
11
1
次月繰越 ✔
350
200
200
550
320
870
解説
締め切る日付は,月末の5月 31 日である。
特別欄には,売掛金がある。まず,摘要欄に売掛金と書き,借方特別欄に記入されてい
る売掛金の金額を集計する。集計結果は¥300。売掛金番号3へ合計転記をする。¥300 を
諸口欄にスライドさせて,借方の入金額を集計する。集計金額¥770 は,現金勘定へ合計転
記する。
現金勘定への合計転記は,現金出納帳から転記する。摘要欄には現金出納帳。仕丁欄は
転記元の帳簿名の番号『現1』である。現金出納帳 1 頁から転記したという意味である。
借方欄,残高欄などへ記入する。
一方,貸方に特別欄の買掛金がある。日々の買掛金取引は転記しない。月間の買掛金の
金額を集計する。¥200 を総勘定元帳の買掛金勘定 11 へ合計転記する。集計金額を諸口欄
24
にスライドさせて,貸方の出金額を集計する。¥550 を現金勘定へ合計転記する。
現金勘定の貸方への転記は,現金出納帳から転記しているから現金出納帳。仕丁欄は転
記元の帳簿名の番号『現1』である。貸方欄,残高欄などへ記入する。
例題2の問題文から前月繰越が¥100,次月への繰越金額¥320 を計算し,帳簿を締め切る。
色々な補助記入帳を特殊仕訳帳にすることができるが,締め切りの方法の原理は同じで
ある。
例題 3 の現金出納帳への記入結果を現金勘定へ転記しなさい。
平成
摘 要
5 1 前月繰越
仕丁
✔
平成
摘 要
仕丁
5 1 前月繰越
✔
31 現金出納帳 現1
〃
〃
〃
総勘定元帳
現 金
借方
貸方
100
借 貸
借
1
残高
100
総勘定元帳
現 金
借方
貸方
借 貸
100
借
770
〃
550
〃
1
残高
100
870
360
細々したことを3つ学習
① 補助元帳が設けられている場合の記帳方法
② 現金収入帳と現金支払帳
③ 当座預金出納帳
補助元帳が設けられている場合,現金出納帳の元丁欄から補助元帳へ個別転記をするた
めに,元丁欄には「得1」
,あるいは「仕 1」と記入する。得1とは,得意先元帳の番号,
仕1とは,仕入先元帳の番号のことである。商店名が明示されている。
25
平成
年
5
8
19
22
28
31
〃
〃
勘定科目
売上
売掛金
売掛金
売上
摘 要
元
丁
福岡商店
30
現金出納帳
1
平成
元
買掛金 諸 口
丁
売掛金 諸 口
札幌商店 得1
福岡商店 得2
30
売掛金
3
現金
1
前月繰越 ✔
270
200
100
札幌商店
300
200
300
770
100
870
年
5
勘定科目
摘 要
2 買掛金
13 買掛金
20 仕入
大阪商店 仕1
31
〃
〃
買掛金
現金
島根商店 仕2
島根商店
150
50
40
11
1
次月繰越 ✔
350
200
200
550
320
870
特殊仕訳帳としての現金出納帳は,簿記の検定試験では借方と貸方を分割して出題され
ることもある。現金出納帳の借方を切り離した現金収入帳,貸方を切り離した現金支払帳
である。
現金収入帳
1
平成
元
勘定科目 摘 要
売掛金 諸 口
年
丁
現金支払帳
2
平成
元
勘定科目 摘 要
買掛金 諸 口
年
丁
現金出納帳ではなく,特殊仕訳帳として当座預金出納帳が出題されることもある。記帳
手順は,特殊仕訳帳としての現金出納帳と同じである。
当座預金出納帳
平成
勘定科目
年
摘 要
元
丁
金 額
26
平成
年
勘定科目
1
摘 要
元
丁
金 額
特殊仕訳帳としての現金出納帳に,次の取引を記入して締切り,総勘定元帳にも転記し
なさい。なお,補助元帳の番号は次のとおりであるが,転記する必要はない。秋田商店:
No.1,東京商店:No.2,青森商店:No.11,大阪商店:No.12。
5 月 1 日 現金の前月繰越高\200
8 日 秋田商店より売掛金\100 を現金で回収した。
10 日 青森商店に対する買掛金\50 を現金で支払った。
15 日 東京商店に商品\300 を販売し,代金は現金で受け取った。
18 日 大阪商店に対する買掛金\100 を現金で支払った。
20 日 大阪商店より商品\200 を現金で仕入れた。
現金出納帳
平成
年
勘定科目
摘 要
元
丁
売掛金 諸 口
平成
年
1
勘定科目
摘 要
元
丁
買掛金 諸 口
現金出納帳
平成
年
5
勘定科目
摘 要
元
丁
8 売掛金
15 売上
秋田商店 得1
31
〃
〃
売掛金
現金
東京商店
売掛金 諸 口
100
30
3
1
前月繰越 ✔
300
100
100
400
200
600
27
平成
年
1
勘定科目
5 10 買掛金
18 買掛金
20 仕入
31
〃
〃
摘 要
元
丁
青森商店 仕11
大阪商店 仕12
40
11
1
次月繰越 ✔
買掛金 諸 口
50
100
大阪商店
買掛金
現金
150
200
150
350
250
600
この章は,前の章に引き続き,特殊仕訳帳を学ぶ。
① 現金出納帳以外の補助記入帳の特殊仕訳帳化
② 複数の特殊仕訳帳を設けた場合,特殊仕訳帳の間での記入の注意点
③ 簿記検定試験対策
仕入帳と売上帳には,勘定式はない。減少の取引は赤字記入をして,仕入帳の場合は貸
方戻し,売上帳の場合は借方戻りの仕訳をできるようにする。様式を示しておく。
下の仕入帳と売上帳には,勘定科目欄と元丁欄,そして特別欄がある。仕訳ができ,合
計転記ができることがわかる。
仕入帳への記帳手順を表示す。記帳手順は,現金出納帳とほぼ同じである。仕入帳での
仕訳,そして締め切りを集中的に学習する。
① 日付欄への記入:取引が生じた日付を記入する。
② 勘定科目欄への記入:仕入取引の正解,借方が仕入となる。仕入帳の勘定科目欄に
は貸方の相手勘定科目名を記入して仕訳をする。
③ 特別欄として買掛金勘定が設けられている場合:金額は特別欄の買掛金欄に記入し,
他の条件による仕入取引の場合,金額は諸口欄に記入する。
28
④ 元丁欄への記入:特別欄に金額を記入した場合,合計転記であるから✔,諸口欄に
金額を記入した場合,個別転記である。諸口欄に金額を記入した場合でも,特殊仕
訳帳の特殊科目になっている場合には,二重転記を避けるため✔印を元丁欄に記入
する。また,補助元帳がある場合,個別転記のため「仕 1」というように記入する。
ここが入り組んでいる。
⑤ 摘要欄への記入:摘要欄には,取引の細々したことを記入する。
⑥ 戻しの場合の記入:赤字で記入する。
仕入帳
平成
年
勘定科目
摘 要
1
元
買掛金 諸 口
丁
次は,仕入帳の締め切り手順を解説。締め切り手順は,若干,現金出納帳の締め切り手
順と異なる。赤字記入されている『仕入戻し』
,がある場合に注意。
① 日付欄への記入:日付欄に,仕入帳を締め切る日付を記入する。
② 特別欄の記入金額:特別欄の記入金額を集計し,摘要欄に掛仕入高と記入し,スライ
ドさせて諸口欄にも集計金額を記入する。赤字記入の仕入戻し高は,集計しない。
③ 元丁欄:転記先の勘定口座の番号を記入する。特別欄が買掛金になっているから,買
掛金の口座番号である。合計転記する。
④ 諸口欄の記入金額:諸口欄の金額を合計し,摘要欄に総仕入高と書き,合計金額を記
入する。合計転記する。
⑤ 元丁欄:転記先の元帳番号を記入する。
⑥ 仕入戻し:朱記記入した仕入戻しがある場合には,合計額を計算し,摘要欄に「仕入
戻し高」
,諸口欄に合計金額を記入する。
⑦ 元丁欄:転記先の元帳番号を記入する。記入の仕方は,買掛金口座番号/仕入口座番
号。この意味を正確に理解する。
⑧ 純仕入高の表示:
「純仕入高」を計算し,仕入帳を締め切る。
合計線と締め切り線の記入の仕方の解説
特別欄に記入されている買掛金を集計するから合計線を記入する。買掛金勘定へ合計転
記し,記入を打ち切る。締切線を記入する。締切線は2本線である。
次に,掛けによる仕入れと他の条件による仕入れを合計する。合計線の記入である。こ
れが総仕入高となる。総仕入高から仕入戻しは引き算するから,計算結果は純仕入高とな
29
る。記入を終えるから合計線と締め切り線を記入する。
次の取引を仕入帳に記入し,補助元帳にも記入しなさい(別に現金出納帳を特殊仕訳帳
として用いている)
。
(買掛金口座番号 10,仕入口座番号 40)
5 月 11 日 東京商店(仕入先元帳 No.1)から掛で商品(T コート 100 枚@\300,Y コート 50 枚
@\400)を仕入れた。
20 日 東京商店から仕入れた商品のうち,品違いのため Y コートをすべて返品した。
22 日 東京商店から現金で商品(Y コート 50 枚@\400)を仕入れた。
仕入帳
平成
年
勘定科目
摘 要
仕入帳
1
元
丁
買掛金
諸 口
1
平成
元
勘定科目
摘 要
買掛金 諸 口
年
丁
5 11 買掛金
東京商店 掛
仕1 50,000
Tコート 100枚@ ¥300
Yコート 50枚@ ¥400
20 買掛金
東京商店 掛
仕1 20,000
Yコート 50枚@ ¥400
22 現金
東京商店 現金
✔
20,000
31
買掛金
10 50,000 50,000
〃
総仕入高
40
70,000
〃
仕入戻し高 10/40
20,000
〃
純仕入高
50,000
30
仕入帳に記入すべき日々の取引は,例題の問題文から3つある。
日付欄に 11 日と記入する。11 日は,掛仕入である。仕訳の相手勘定科目は買掛金である。
摘要は取引の細々した内容を記入する。特別欄に買掛金欄がある。¥50,000 と記入する。
補助元帳が設けられていなければ,✔印。例題では補助元帳がある。
「仕1」と記入する。
補助元帳の東京商店に個別転記する。買掛金勘定へは,月末にまとめて合計転記する。11
日には転記しない。
20 日は,返品取引である。貸方記入の意味で,赤字で記入する。金額は Y コート¥20,000。
もちろん,補助元帳の東京商店の買掛金は減少する。そのため,
「仕1」と赤字記入して 20
日に個別転記する。
22 日は,¥20,000 の現金仕入取引である。諸口欄に¥20,000 と金額を記入する。元丁欄
には✔印を記入する。問題文では現金出納帳が特殊仕訳帳になっている。✔印の意味は,
個別転記しないということである。現金は,現金出納帳から月末にまとめて,合計転記す
る。
仕入帳を締め切る。
特別欄の買掛金を集計すると¥50,000。¥50,000 を買掛金勘定に合計転記する。元丁は
買掛金の口座番号 10。右側に¥50,000 にスライドさせ,総仕入高は¥70,000,元丁は仕入
の口座番号 40。仕入勘定に合計転記する。
20 日の返品は¥20,000 である。
元丁に 10/40 と記入して合計転記する。
返品であるから,
10/40 と記入する意味は,仕入が減少し,買掛金の額も減少させるということである。記入
は,純仕入高を計算して終わる。
売上帳の記帳の仕方は,仕入帳と同じである。下の例題については,現金出納帳も特殊
仕訳帳になっていること,補助元帳があることにシャーペンで記号を付ける。ここが重要
である。
次の取引を売上帳に仕訳しなさい。なお,補助元帳(大宮商店→No.2)を設けており,
別に現金出納帳を特殊仕訳帳として利用している。
(売掛金口座番号3,売上口座番号 30)
6 月 15 日 横浜商店に現金で商品(T コート 50 枚@¥400)を売り上げた。
27 日 大宮商店に掛で商品(Y コート 50 枚@¥450)を売り上げた。
28 日 大宮商店に掛売上した上の商品のうち,品質不良につき 20 枚が返品された。
31
売上帳
平成
年
勘定科目
1
元
丁
摘 要
売掛金
売上帳
平成
勘定科目
年
6 15 現金
1
摘 要
30
〃
横浜商店 現金
Tコート 50枚 @¥400
大宮商店 掛
Yコート 50枚 @¥450
大宮商店 掛
Yコート 20枚 @¥450
掛売上高
総売上高
〃
〃
売上戻り高
純売上高
27 売掛金
28 売掛金
諸 口
元
丁
✔
売掛金
諸 口
20,000
得2
22,500
得2
9,000
3
30
22,500
22,500
42,500
9,000
33,500
15 日は,現金入金による売上取引である。売上帳では日付は 15 日,相手勘定科目は現金,
金額¥20,000 は諸口に記入し,現金の入金は現金出納帳からまとめて合計転記するから,
元丁欄には,転記しないから✔印。
27 日は,¥22,500 の掛売上取引である。相手勘定科目は売掛金,売掛金欄に¥22,500。
得意先元帳に 27 日に個別転記するから大宮商店の「得2」
。
28 日は掛売上の返品取引である。赤字記入する。
32
合計転記のために,売上帳を締め切る。
15 日から 28 日までの日々の取引の仕訳が,正解の上方向に示されている。
日付は 30 日。摘要欄と金額は,売掛金¥22,500,スライドさせて総売上高は¥42,500,
売上戻りは¥9,000,純売上高が¥33,500。合計転記するために元丁欄に元帳の口座番号を
記入して,売上帳を締め切る。特に,売上戻りの元丁欄への記入に注意。
手形を受け取った場合,手形を振り出した場合,手形記入帳で仕訳する。
受取手形記入帳にしろ,支払手形記入帳にしろ,手形が増加した場合にのみ,記入する。
手形の満期日や支払期日には,現金で受け取ったり,支払ったりするから,現金出納帳で
手形の減少は,仕訳をすることになる。特別欄が設けてある場合には,特別欄記入金額は,
月末に合計転記する。
受取手形記入帳
平成
勘定科目 摘 要
年
1
元
売掛金 諸 口
丁
支払手形記入帳
2
平成
元
勘定科目 摘 要
買掛金 諸 口
年
丁
特殊仕訳帳の相互間の関係で注意すべき点を1つ解説しておく。1つの取引を複数の特
殊仕訳帳で仕訳する場合にはどうすべきか。図解と勘定記入で説明する。
図解による解説
まず,現金による仕入取引は,仕入帳と現金出納帳に記入する。仕入帳と現金出納帳に
は相手勘定科目の欄がある。何も対策を講じないと個別転記する。仕入帳と現金出納帳は,
月末にも合計転記される。個別転記と合計転記によって,2回元帳に転記されるから,1
つの取引が2つの特殊仕訳帳に記帳される場合,日々の取引の仕訳時点では,元丁欄に✔
33
印をつけて,個別転記をせず,月末にのみ合計転記を行い,二度,元帳に転記されるのを
防止する。このことを二重転記の防止という。
勘定記入による解説
取引仕訳
(借方)仕入 20,000
(貸方)現金
20,000
1
平成
年
10
勘定科目
摘 要
5 現金
31
元
丁
1
仕入
買掛金
諸 口
20,000
40
平成
年
勘定科目 摘 要
10 5 仕入
20,000
31
元
丁
買掛金
諸 口
40
20,000
現金 1
20,000
1
平成
年
10
勘定科目
摘 要
5 現金
31
元
丁
✔
仕入
買掛金
20,000
40
諸 口
20,000
20,000
平成
年
勘定科目 摘 要
✔
10 5 仕入
31
元
丁
現金
買掛金
20,000
1
諸 口
20,000
20,000
上は,二重転記が生じる場合,下は二重転記が生じる場合を回避した場合である。現金
仕入は,現金出納帳と仕入帳の2種類の特殊仕訳帳に記入する。そして月末に合計転記す
る。ここまでは OK である。
日々の取引の仕訳では,勘定科目欄に記入した相手勘定は,元丁に勘定番号を記入して,
元帳に個別転記する。元帳に,二重転記が生じる。危険である。
そのため,元丁欄に✔印を記入する。✔印の意味は,日々の取引では個別転記しないと
いう意味である。個別転記しない。
では,2級の簿記の検定試験では,如何なる問題が出題されるのか。3つある。
① 単純な記帳問題
② 試算表の作成問題
③ 推定問題
単純な記帳問題から挑戦する。
東海商店は,普通仕訳帳のほかに現金出納帳,仕入帳および売上帳を特殊仕訳帳として
使用し,特殊仕訳帳から総勘定元帳への合計転記は毎月末に行っている。よって,次の取
引を解答用紙の現金出納帳,仕入帳および売上帳に記入して締切りなさい。現金の元帳番
34
号1(前月繰越¥150,000)
,受取手形2,売掛金3,備品8,支払手形 11,買掛金 12,売
上 21,仕入 31
10 月 20 日 九州商店へ商品\30,000 を売上げ,代金は同店振出,当店宛の約束手形で受
取った。
22 日 関東商店へ買掛金\20,000 を現金で支払った。
24 日 四国商店より売掛金\25,000 を現金で回収した。
26 日 関東商店より商品\15,000 を仕入れ,代金は掛とした。
28 日 中国商店へ商品\10,000 を売上げ,代金は現金で受取った。
30 日 備品\5,000 を購入し,代金は現金で支払った。
〃
東北商店より商品\20,000 を仕入れ,代金は関西商店振出,当店宛の約束手形
を裏書譲渡して支払った。
現金出納帳
平成
勘定科目
年
10 1 売上
5 売掛金
摘 要
平成
元
売掛金 諸 口
勘定科目
丁
年
15,000 10 5 仕入
35,000
7 買掛金
10 受取手形
31
10,000
売掛金
現金
摘 要
15 支払手形
31
前月繰越
1
元
買掛金 諸 口
丁
10,000
25000
15,000
買掛金
現金
次月繰越
過去問である。
帳簿組織として普通仕訳帳のほかに現金出納帳,仕入帳および売上帳が特殊仕訳帳にな
っている。
元丁欄を推定→次に 20 日からの取引を仕訳特殊仕訳帳で仕訳→最後に帳簿を締め切るとい
う手順で解ける。よい問題である。
35
15 日までの取引が不完全であるが記帳されている。そこで,元丁欄に記入して,記帳を
完全にする。
10 月 1 日 二重転記を避けるため。 ✔印を現金出納帳と売上帳に記入する。
10 月 5 日 合計転記をするため。✔印
10 月 5 日 二重転記を避けるため。✔印を現金出納帳と仕入帳に記入する。
10 月7日 特別欄から,合計転記をするため。✔印。
10 月 10 日 2 と元丁欄に記入し,受取手形勘定へ個別転記する。
10 月 10 日 合計転記をするために。 ✔印
10 月 15 日 買掛金は合計転記をするため。✔印
10 月 15 日 11 と元丁に記入し,支払手形勘定へ個別転記する。
特別欄への記入の場合は✔印,2つの特殊仕訳帳に記入する場合,二重転記を避けるた
めに✔印に注意する。
20 日から 30 日までの7つの取引を記入する。
10 月 20 日
仕訳:
(借方)受取手形 30,000
(貸方)売上
30,000
売上帳に記入する。20 日に元帳 2 番に個別転記である。
22 日
仕訳:
(借方)買掛金 20,000
(貸方)現金
20,000
現金出納帳に記入する。まとめて合計転記である。
24 日
仕訳:
(借方)現金 25,000
(貸方)売掛金
25,000
現金出納帳に記入する。まとめて合計転記である。
26 日
仕訳:
(借方)仕入 15,000
(貸方)買掛金
15,000
仕入帳に記入する。まとめて合計転記である。
28 日
仕訳:
(借方)現金 10,000
(貸方)売上
36
10,000
現金出納帳と売上帳に記入する。二重転記を避ける。
30 日
仕訳:
(借方)備品 5,000
(貸方)現金
5,000
現金出納帳に記入する。元帳 8 番に 30 日に個別転記する。
30 日
仕訳:
(借方)仕入 20,000
(貸方)受取手形
20,000
仕入帳に記入する。30 日に元帳 2 番に個別転記する。
3つの特殊仕訳帳を締め切る。
現金出納帳
1
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
✔
まず,現金出納帳を締め切る。一括して表示する。皆さんは,数回現金出納帳を締め切っ
ているから,この締め切りの仕方は完全に理解しているはずである。
上の仕入帳を締め切る。一括して,金額や元丁欄に記入してみる。
最後に,上の売上帳を締め切る。
もうひとつ,パズルのような過去の2級商業簿記の検定試験問題を皆さんと一緒に解い
てみる。
37
千代田商会は,当座預金出納帳,売上帳,仕入帳,受取手形記入帳および支払手形記入帳
を特殊仕訳帳として使用している。これら特殊仕訳帳の取引記録は,1 週間ごとに一括して
合計仕訳され,それにもとづき合計転記が行われている。ただし,諸口欄の個々の内訳記
録は取引発生のつど個別転記されている。
次に示したこの 1 週間の記録にもとづき,(a)~(h)の金額を求めなさい。
なお,これら特殊仕訳帳に記入された取引を普通仕訳帳で合計仕訳を行ったさいの二重仕
訳金額は¥15,940 であった。
a
b
c
d
e
f
g
h
a
b
c
d
e
f
g
h
1,260
6,980
260
2,610
6,980
23,390
5,090
13,920
正解
正解
単調な解答作業になるが解く。1 つの取引が2つの特殊仕訳帳に記帳されている。特殊仕
訳帳には,特別欄がある。
(a)から順に解いていく。
まず,売上帳の当座預金欄(a)から解く。売上帳の勘定科目欄に当座預金と記載されて
38
いる。これは当座預金出納帳の収入欄にも売上とあるから,売上帳の当座預金(a)は¥1,260
となる。
次に(b)を解く。
(a)がわかりました。売上帳の合計¥38,900=[(29,980-440+1,260
+(b)+1,120]であるから,単純に計算して,売上帳(b)の受取手形欄は¥6,980 となる。
受取手形記入帳の(e)も¥6,980 になる。受取手形記入帳の合計(f)は,単純に計算して,
¥23,390 となる。
仕入帳の特別欄当座預金(d)に解答作業を進める。当座預金出納帳の支出欄,仕入欄
に¥2,610 とあるから,単純に計算して,仕入帳の(d)は¥2,610 である。
(d)がとける
と(c)の仕入戻しは,¥260 となる。
支払手形記入帳の特別欄(g)と(h)が残りました。
(g)は仕入帳の支払手形欄に¥5,090
とあるから,仕入欄(g)は¥5,090,買掛金欄(h)は,単純に計算して,¥13,920 となる。
すらすら解答ができた皆さんは,特殊仕訳帳制度は理解できている。
さて,最後に特殊仕訳帳制度のもとで残高試算表を作成しなさいという問題が残った。
3級の簿記検定試験では,次のような問題が第3問で出題される。すこし,古い試験問題
である。
2級の第2問でも同じような問題が出題される。
39
検定試験で出題される3級と2級の残高試算表の作り方は,①特殊仕訳帳があること,
②元帳へは合計転記があることに違いがある。作り方は同じである。テキストを見ながら
解説。
次の 11 月 1 日の残高試算表,
(A)11 月中の特殊仕訳帳の記入内容と (B)普通仕訳帳の記
入内容の資料に基づき,11 月末の残高試算表を作成しなさい。
40
41
42
パソコン画面は狭いため,画面を切り変えながら解説したが,紙の上では一度に消去・
集計ができる。
解答の手順
皆さんは,月初残高試算表,そして取引が 11 月中発生し,それを普通仕訳帳と特殊仕訳
帳で仕訳をし,元帳に転記し,元帳の残高を集計して,月末の残高試算表を作成する。
11 月中の特殊仕訳帳の記入内容のデータから,二重転記になる記入を消す。1 つは,1 つ
の取引で2つの特殊仕訳帳に記入する仕訳である。
現金出納帳では売上欄の¥96,000,仕入帳の当座預金欄¥41,000,売上帳の当座預金欄
¥96,000,支払手形記入帳の仕入欄¥27,000,受取手形記入帳の売上欄¥57,000 が二重転
記になる。消去した結果は,以下のとおりである。
43
1 つの取引が普通仕訳帳と特殊仕訳帳に記入される仕訳も消去する。普通仕訳帳の 12 日
の当座預金¥287,000,18 日の当座預金¥14,070 ,25 日の当座預金¥123,000 も二重入さ
れる。消去した結果は,以下のとおりである。
後は,単調な作業である。残高試算表の借方と貸方に仕訳の金額を書き込み,加算・減
算すれば,勘定科目ごとの残高が計算できる。その結果,残高試算表が出来上がる。
44
この章では,下の2つの内容を学習する。本章の学習目標は次の通りである。
① ①
仕訳問題の出題傾向の分析
② 銀行勘定調整表の作成
さて,仕訳問題は,検定試験の第1問出題される。配点は5個計 20 点,まず,出題頻度
から示すことにする。
仕訳問題での出題頻度
24
17
15
10
8
8
7
11
図表の中にある数字が,出題の比率である。まとめておくことにする。
① 固定資産:売却,修繕,改良,買い替え,火災による滅失,生産高比例法
② 商品の特殊な販売方法:委託販売,受託販売,未着品取引
③ 会社会計:株式の発行,社債の発行・償還,剰余金の配当
④ 有価証券:端数利息
⑤ 税金:法人税,消費税
-出題頻度が高いのは,固定資産に関する問題が挙げられる。固定資産の売却,修繕,改
良,買い替え,火災による滅失がある。新しい減価償却の計算方法,これを生産高比例法
というが,これも重要である。固定資産に関する出題頻度は 24%,ゆえに,固定資産に関
する取引の仕訳問題は,毎回出題される。
商品の特殊な販売方法に関する取引の仕訳も出題される。委託販売,受託販売,未着品
取引などがある。出題頻度は 17%であり,ゆえに,商品の特殊な販売方法に関する取引の
仕訳も,ほぼ,毎回出題される。
2 級の商業簿記の特徴は,すでに説明したが,株式会社の簿記も含まれている。株式の発
45
行,社債の発行・償還,剰余金の処分があげられる。
はすう
有価証券については,端数利息の問題が出題され,これは 2 回に 1 回は出題される。
手形,特に為替手形の特殊な利用方法に関する仕訳もよく出題される。
株式会社の簿記では,法人税や消費税の問題を学習する必要がある。また,当座預金の
問題も出題され,これは,精算表の作成問題では必ず含まれている。
その他は,こまごました内容の問題である。
仕訳の問題は,検定試験問題の第 3 問目の精算表の作成問題でも登場する。精算表の修
正記入欄で,どのように修正仕訳をするかこれも含めて学習を進める。
銀行勘定調整表は当座預金勘定調整表と考えればイメージがわきやすい。お店の取引で
は,銀行と当座預金契約を締結し,代金の決済には小切手を振出し支払うか,また売買代
金は小切手で受入れ,銀行に預け入れをする。
さて,お店の当座預金勘定の残高と銀行の当座預金口座の金額が,いろいろな理由によ
って金額が一致しないこともある。このために,銀行に預けてある当座預金の出入の明細
書である残高証明書を銀行に発行してもらい,月末あるいは決算に際して,お店の帳簿の
当座預金勘定の正しい残高を調べる。
なぜ,一致しないのか。6つに大別できる。
お店
当座預金
銀行
当座預金
不一致の原因
修正仕訳が必要
修正仕訳が不要
○ 誤記入
○ 未渡小切手
○ 連絡未達
○ 時間外預入
○ 未取立小切手
○ 未取付小切手
Ⅰ)
○誤記入
取引を間違って仕訳をした。お店は,正しい仕訳をして正しいお店の当座預金勘定残高
46
に帳簿を直さなければならない。修正仕訳が必要となる。
みわた
○未渡小切手
未渡小切手とは,実際に作成した小切手を相手先に渡していない小切手のことである。
小切手を相手先に渡していない。渡していない事実が判明した場合,小切手振出時の仕訳
の反対の仕訳をする。
○連絡未達
銀行からお店に連絡が届いていない。しかし,実際には当座預金の残高が増減している
から,仕訳が必要となる。
Ⅱ)
○時間外預入
お店が銀行の営業時間終了後に銀行の夜間金庫に小切手を預け入れる場合である。銀行
では,翌日に入金の処理をするから,修正正解不要である。
とりたて
○未取立小切手
小切手を受取った場合,お店では帳簿で入金処理して銀行に預け入れる。しかし,実際
に,銀行がその小切手の金額を回収していない小切手のことである。時間が経てば,銀行
は,小切手代金の取立をする。修正正解不要である。
とりつけ
○未取付小切手
小切手を振出して相手方に渡したが,相手方が銀行に小切手を呈示しておらず,実際に
銀行の支払いが終わっていない小切手のことである。相手方が銀行に小切手を呈示すれば
不一致はなくなる。したがって,修正正解不要である。
例題
お店の当座預金帳簿残高は 266,000 円,銀行残高証明書の残高は 289,000 円,不一致原
因は次の通りだった。必要な修正仕訳を行いなさい。なお,仕訳不要の場合は「仕訳なし」
とすること。
① 得意先 B 商店より売掛金の回収として同店振出しの小切手 10,000 円を受け取り,ただ
ちに当座に預け入れた。しかし,銀行では翌日入金としていた。
(時間外入金)
② 仕入先 D 商店に対する買掛金の支払として振り出した小切手 20,000 円が,まだ未取付
であった。
(未取付小切手)
③ 得意先 A 商店より売掛金の回収分 30,000 円が当座に振り込まれていた。
(振込通知の未
達)
④ 約束手形の取立手数料 15,000 円が,当座預金から差し引かれていた。
(引落未通知)
⑤ 消耗品 20,000 円を購入した際に誤って 2,000 円として記帳していた。
(誤記入)
⑥ 得意先 C 商店に対する買掛金 16,000 円の支払のため,小切手を振り出した。しかしま
47
だ C 商店に渡されていなかった。
(未渡小切手)
借方
金額
貸方
金額
①
②
③
④
⑤
⑥
① と②は,時間外入金と未取付小切手である。当店は仕訳をしている。ゆえに修正正解不
必要である。③と④は銀行からの未通知である。修正正解必要である。⑤は誤記入,⑥
は未渡小切手である。これらも修正仕訳が必要になる。
お店の当座預金勘定と銀行の当座預金口座に記入してみる。これらを使って銀行勘定調
整表は作成する。
お店
当座預金
266,000
30,000
16,000
銀行
15,000
18,000
48
当座預金
289,000
10,000
20,000
練習問題1
次の取引を仕訳し,精算表に記入しなさい。
[決算整理事項その他]
1.当座預金の帳簿残高と銀行の残高証明書の金額は一致していなかったため,不一致の原
因を調べたところ,次の事実が判明した。
(1)以前に受け取り,銀行に取立依頼していた得意先振出しの約束手形の代金\14,000 が当
座預金の口座に振り込まれていた。しかし,この通知が銀行から届いていなかった。
(2)買掛金の支払いのために\9,000 の小切手を振り出し,当座預金の減少として記帳してい
た。しかし,仕入先にはまだ小切手を渡していなかった。
精算表
試算表
勘定科目
現金預金
受取手形
買掛金
借方
92,500
修正記入
貸方
借方
貸方
損益計算書
貸借対照表
借方
借方
貸方
貸方
43,000
105,000
精算表
勘定科目
現金預金
受取手形
買掛金
試算表
借方
92,500
貸方
修正記入
借方
14,000
9,000
43,000
貸方
損益計算書
貸借対照表
借方
借方
貸方
貸方
14,000
9,000
105,000
銀行勘定調整表の作成方法には,3つある。具体的には,①両者区分調整法,②企業残
高調整法,③銀行残高調整法である。
49
銀行勘定
調整表
両者区分
調整法
企業残高基
準法
銀行残高基
準法
両者区分調整法とは,お店の帳簿残高と銀行の口座残高に対して調整を行い,一致する
ように整える方法である。右側の2つの方法,企業残高調整法,銀行残高調整法は出題さ
れたことがないから,解説は省略する。
銀行勘定調整表(両者区分調整法)
○○銀行△△支店
平成X年X月X日
当座預金勘定残高
(加算)
項目
(減算)
項目
111,000 残高証明書残高
(加算)
19,000 項目
(減算)
3,500 項目
126,500
修正仕訳調整項目
165,000
11,000
50,000
126,500
仕訳なし調整項目
両者区分調整法による銀行勘定調整表の作成手順を示す。
① 銀行勘定調整表は,当座預金を預けてある銀行の支店ごとに作成すること。
② 中央を境にして,左側にはお店の当座預金勘定残高,右側には銀行から入手した残高
証明書の残高を記入すること。
③ 左側には修正仕訳,右側には仕訳なしの各項目と金額を記入すること。
④ 最後の行の,左側と右側の金額は一致すること。
練習問題2
当座預金帳簿残高 266,000 円,銀行残高証明書の残高は 289,000 円,不一致原因は次の
通りだった。両者区分調整法による銀行勘定調整表を作成しなさい。
①得意先 B 商店より売掛金の回収として同店振出しの小切手 10,000 円を受け取り,ただち
50
に当座に預け入れたが,銀行では翌日入金としていた。
(時間外入金)
②仕入先 D 商店に対する買掛金の支払として振り出した小切手 20,000 円が,まだ未取付で
あった。
(未取付小切手)
③得意先 A 商店より売掛金の回収分 30,000 円が当座に振り込まれていた。
(振込通知の未
達)
① 約束手形の取立手数料 15,000 円が当座預金から差し引かれていた。
(引落未通知)
⑤消耗品 20,000 円を購入した際に誤って 2,000 円として記帳していた。
(誤記入)
⑥仕入先 C 商店に対する買掛金 16,000 円の支払のため,小切手を振り出したが,まだ C 商
店に渡されていなかった。
(未渡小切手)
銀行勘定調整表(両者区分調整法)
○○銀行△△支店
当座預金勘定残高
(加算)
(減算)
平成X年X月X日
残高証明書残高
(加算)
(減算)
銀行勘定調整表(両者区分調整法)
当座預金帳簿残高
(加算)
③売掛金回収未記入
⑥未渡小切手
(減算)
④支払手数料
⑤誤記入
修正残高
266,000 銀行残高証明書残高
(加算)
30,000 ①時間外入金
16,000
(減算)
15,000 ②未取付小切手
18,000
279,000
289,000
10,000
20,000
279,000
左側は,お店側の当座預金残高である。正しい残高にするために修正仕訳を行った項目
と金額が加算・減算される。
右側は,銀行口座の残高に対する調整である。時間外入金は加算,未取付小切手は,相
手方が銀行に小切手を呈示しておらず,実際に銀行の支払いが終わっていない小切手のこ
とである.呈示すれば銀行口座の残高は減算される。
51
5章 特殊商品売買
本章では次の内容を学習する。
① 未着品
② 委託販売・受託販売
③ 試用販売
④ 予約販売
⑤ 割賦販売
3級の商業簿記では,売上高の計上時点として,次の2つの要件が整ったときに売上高
を計上する仕訳を学習した。
①
商品が相手方に引き渡されこと
②
対価として商品よりも現金・売掛金などの現金に近い貨幣性資産を獲得したこと
このような販売を,一般商品売買とよぶ。
大阪商店は名古屋商店に商品¥100,000 を掛で売上げた。取引の仕訳をしなさい。
借方
金額
貸方
金額
売主側
掛代金を支払期日前の一定期間内に現金で支払うと,その支払いの一部分を免除される
ことがある。これは一種の利息の払い戻しの額である。買主の側からは仕入割引,売主の
側からは売上割引と呼ばれている。
次の取引を仕訳しなさい。
得意先A社に対して掛で商品¥100,000 を販売していたが,期日前に回収したため,2%
の割引を行い,残額は小切手で回収した。
52
借方
金額
貸方
金額
次の取引を仕訳しなさい。
得意先山手商店から当座預金に,2週間前の売上にかかわる売掛金の振込みがあった。
この振込額は,売上後2週間以内に代金が決済されていたので,当初の契約通り売上高
¥500,000 の3%を控除した額である。
借方
金額
貸方
金額
練 習 問 題 で は 掛 代 金 の 早 期 受 け 取 り に つ い て は ,3 %の 割 引 と い う 条 件 が 付 さ れ
て いる 。
割 引 額 は ¥ 500,000 × 3 % = ¥ 15,000 と な る 。 差 額 の 入 金 額 は , ¥ 485,000
( ¥500,000-¥15,000) で あ る 。
では,一般的な販売方法と異なって,別の販売方法があるのだろうか。販売する商品は
同じである。ただ,販売方法が異なる。これを特殊商品売買とよぶ。
特殊商品売買取引の仕訳をするには,販売方法を理解することが重要である。次のよう
な販売方法がある。
53
未着品販売:遠隔地に商品を販売する場合,運送業者から貨物代表証券(陸運会社の場合:
貨物引換証,船会社の場合:船荷証券)を受取るが,商品が届く前に当該貨物代表証券を
売却する販売方法
委託販売:商品の販売を他人に委託し,手数料を払って販売する販売方法
受託販売:委託販売を受託者からみた場合の販売方法
試用販売:商品を取引先に発送して,一定期間,使用してもらい,取引先が買取りの意思
表示をしたときに,初めて売買契約が成立すると考える販売方法
予約販売:代金を先に受取って,あとから商品を引き渡す販売方法
割賦販売:商品を引き渡した後,売上代金を月賦,年賦等の方法により,数回に分けて定
期的に販売代金を回収する販売方法
通常の販売:商品を引き渡した日,または出荷・発送した日
委託販売:受託者が商品を販売した日(売上計算書が送付されている場合,売上計算書が
到達した日)
試用販売:買取りの意思表示があった日
予約販売:予約代金のうち,商品を引き渡した日
割賦販売:商品を引き渡した日(原則的方法である)
,あるいは割賦金の入金日,回収期限
の到来日
未着品販売取引
遠隔地から商品を仕入れる場合,商品が届く前に,運送業者から受け
取った貨物代表証券を売却する販売方法である。
たとえば,沖縄商店は,海運会社を使用して,北海道商店から商品を仕入れようとする。
北海道商店は,商品を海運会社に引き渡すと貨物代表証券を発行してもらう。そして,北
海道商店は,沖縄商店に貨物代表証券を郵送する。
貨物代表証券には,①陸運運送の場合の貨物引換証,②海上運送の場合の船荷証券があ
54
る。貨物代表証券の性格は,商品の引き換え券である。未着品という勘定科目を利用して
仕訳する。商品の運送途中で,沖縄商店はこの貨物代表証券を券のまま売却もできる。
遠隔地売買の場合,次の4つの時点での取引に対する仕訳を学ぶ必要がある。
①
売主の荷送人が,運送会社から発送品と引き換えに貨物代表証券を受取った場合
②
買主の荷受人が,荷送人から送られてきた貨物代表証券を受取った場合
③
荷受人が貨物代表証券と引き換えに商品を受取った場合
④
荷受人が運送途中に,貨物代表証券を売却した場合
次の取引について,仕訳を示しなさい。
① 沖縄商店は,北海道商店から掛で仕入れたA商品¥50,000 およびB商品¥70,000 の船
荷証券を受け取った。
② 沖縄商店は,B商品の船荷証券を¥80,000 で大阪商店に掛で売却した。
③ 沖縄商店は,A商品が到着したので船荷証券と引替えに引き取った。なお,引取運賃,
¥6,500 は現金で支払った。
④
大阪商店は,B商品が到着したので船荷証券と引替えにこれを引き取り,引取運賃
¥7,000 を現金で支払った。
借方
金額
貸方
金額
①
②
③
④
沖縄商店が商品の買主の荷受人,北海道商店が商品の売主の荷送人である。そして,遠
隔地売買でAとBの2通の船荷証券がある。Bの船荷証券は,大阪商店に運送途中に券の
まま売却した。一方,Aの商品は,船荷証券と引き換えに受取った。
55
①は,沖縄商店の仕訳。船荷証券を受取った時の仕訳である。運送途中に商品があるこ
とを表すために,仕入勘定ではなく,未着品勘定を用いて仕訳する。
②は,沖縄商店が船荷証券を掛で売却した場合の仕訳である。売上原価の計算のための
仕訳も必要である。
②では転売先の大阪商店の仕訳も必要である。
③は,沖縄商店の仕訳。A船荷証券と引き換えに商品を受取った場合の仕訳である。引
取運賃 6,500 円は諸掛かりである。
④は,大阪商店の仕訳。③と同じような仕訳をする。
次の取引を仕訳しなさい。
旭 川 商 事 株 式 会 社 は ,発 注 し た 仕 入 原 価 ¥ 940,000の 商 品 に つ い て ,か ね て 受
け 取 っ て い た 貨 物 引 換 証 を ,得 意 先 網 走 商 店 に ¥ 1,200,000で 掛 け 販 売 し た 。 な
お ,こ れ に と も な う 売 上 原 価は,仕入勘定に振り替える。
借方
金額
貸方
金額
遠隔地に商品を発送する場合には,陸上運送業者から貨 物 引 換 証( こ れ は 運送品
56
の引渡請求権を表章する有価証券である)を 受 取 る 。問 題 文 で は ,貨 物 引 換 証 を 掛 販
売 し た 時 の 仕 訳 が 要 求 さ れ て い る 。 売 値 は 120万 円 , そ の 原 価 は 94万 円 で あ る 。
問 題 文 の な お 文 以 下 に も 注 意 し て 仕 訳 を す る 。 2つの仕訳があるが,下の段の仕訳
94万円は,売上原価を計算するための仕訳である。
貨物代表証券は,運 送 品 の 引 換 請 求 権 を 表 す と 表 現 し た 。 貨物代表証券と 為 替 手
形 をセ ッ ト に し て 利 用 す る と 現 金 化 に す る こ と が で き る 。 こ の 為 替 手 形 を
じ こ う け か わ せ て が た
自己受為替手形という。
自己受為替手形とは,自分が指図人(受取人)になっている手形を自分が振
に が わ せ
出 し ,名 宛 人( 引 受 人 )に 引 き 受 け て も ら う 為 替 手 形 を い う 。荷 為 替 と も い う 。
①
鹿児島商店が商品を北海道商店に海運会社を使って,商品を送ろうとする。商品を引
き渡すと,海運会社は貨物代表証券を発行する。
②
鹿児島商店は入手した貨物代表証券を担保にして,自己受為替手形を発行して銀行で
割引し現金を手に入れる。
③
銀行は,北海道商店に通知する。北海道商店は貨物代表証券がないと商品を受取れな
い。為替手形の引受をする。そして,貨物代表証券を入手する。
⑤
北海道商店は貨物代表証券と引き換えに,商品を入手する。
次の取引を仕訳しなさい。
①
鹿児島商店は,北海道商店から注文のあった商品¥700,000 を陸送で発送し,貨物引換
証を担保として鹿児島銀行で北海道商会宛の為替手形¥560,000 を振り出して割引き,割引
料¥5,000 を差し引かれ,手取金を当座預金とした。
②
北海道商店は,鹿児島銀行北海道支店から上記の為替手形の呈示を受けたので,小切手
を振り出して支払い,貨物引換証を受け取った。
借方
金額
①
57
貸方
金額
②
鹿児島商店の仕訳
北海道商店の仕訳
①は売上代金と荷為替との差額 14 万円が売掛金,また②は貨物引換証の金額 70 万円と
小切手振出しの金額との差額 14 万円が買掛金となる。
委託販売:他人に商品の販売を委託し,手数料を払って販売する販売方法
受託販売:委託販売を受託者からみた場合の販売方法
商人が遠隔地に商品を販売するには,どのようにするか。遠隔地に店舗を新設して得意
先を開拓するには危険が伴う。遠隔地に問屋等を見つけて,販売した部分については,販
売手数料を支払う販売方法が考えれらる。問屋とは取次を営業としておこなう商人のこと
である。
販売の依頼主を委託者,販売を請け負うものを受託者と呼ぶ。
委託販売と受託販売はセットで学習する。
① 委託者は遠隔地で商品を販売したいと考える。運送会社を利用して商品を発送する。
委託者側では,手持商品と区別するため,運送した商品を積送品勘定で仕訳処理し,運
58
賃・保険料などは積送品の原価に含める。
②
受託者は送られてきた商品を受取る。しかし,商品は入手したが商品の所有権は受託
者にはない。ゆえに,受託者が商品を受取っても商品を仕入れた正解しない。受託者は商
品を販売するが,受取るのは販売手数料のみである。受託販売で生じた債権・債務は委託
者に帰属する。受託者は債権・債務を受託販売勘定で処理する。
③
受託者は受託した商品を販売しました。受託者は電話で販売が成功したと委託者に報
告したり,計算書を作成して委託者に連絡する。委託者が販売の事実を知るのはこの時点
であるから,売上計上の仕訳をする。
し
き
この計算書を売上計算書,あるいは仕切り計算書という。
委託販売・受託販売で注意すべき点:
① 委託した商品の所有権は委託者,受託者は単に販売の取次をすること
②
販売にあたって生じた債権・債務は,最終的に委託者に帰属し,受託者は販売手数
料のみを受け取ること
③
委託者が委託した商品の販売が行われた事実を知るのは受託者から売上の通知(売
上計算書:仕切精算書−の送付)があった時点であること
:次の取引を仕訳しなさい。
①
鹿児島商店は,委託販売のために青森商店へ商品(原価¥24,000,売価¥30,000)を
積送し,運賃・保険料などの諸掛¥1,000 を現金で支払った。
②
上記商品を販売委託された青森商店は,積送された商品を受け取り,その半分を八戸
商店に掛売りした。
③
青森商店は,鹿児島商店に対して上記の商品に関する売上計算書を作成して送付する
とともに,手取金は小切手を振り出して送金した。なお,売上計算書では,売上高¥15,000
から販売手数料¥l,500 を差し引いて手取金を計算してある。
④ 鹿児島商店は,上記の売上計算書を受け取った。
⑤
鹿児島商店は,青森商店から上記の手取金を小切手で受け取り,ただちに当座預金と
した。
借方
金額
①
②
59
貸方
金額
③
④
⑤
問題文から,鹿児島商店が委託者,青森商店は受託者である。取引を図解するとわかり
やすい。
①鹿児島商店の仕訳:積送品は原価が¥24,000 と諸掛¥1,000 で¥25,000 となる。ゆえに,
② 青森商店の仕訳:受託者の仕訳である。
半分¥15,000 を掛で売上げた。
受託販売 15,000。
③ 青森商店の仕訳:受託者は¥1,500 の手数料を受取る。小切手で送金した。
受託者は,売上計上の正解しない。
④は鹿児島商店の仕訳:売上計算書が届いたから,委託者は売上計上の仕訳をする。
2番目の仕訳¥12,500 も忘れないように。積送品売上の原価計上の仕訳をする。
⑤は鹿児島商店の仕訳:この仕訳も問題ない。
:次の取引を仕訳しなさい。
①広島商店は,委託販売のため商品(原価¥200,000,売価¥300,000)を委託先仙台商店に発
送した。なお,そのさいに発送運賃¥4,000 を現金で支払った。
②他店より販売を委託されていた商品を¥60,000 で掛売りした。
借方
金額
①
②
60
貸方
金額
①:委 託 販 売 の た め に 商 品 を 発 送 し た 時 に は , 委 託 販 売 の 性 格 か ら 売 上
の 計 上 の 正 解 し な い 。¥200,000 は積 送品勘定に振り替えておき,受託者から売り上げ
たという通知があった場合に売上の仕訳をする。発 送 運 賃 ¥4,000 は 積送品原価に算入し
て仕訳する。
解説②:練習問題では受託商店側の仕訳が要求されている。商品の所有権は委託者側
にあり,そのため,受託者が掛売りしても,仕訳としては売上に計上しない。
お客や取引先に商品を発送して,一定期間,試しに使ってもらい,お客や
取引先がその商品について買取りの意思表示をしたときに,初めて売買契約が成立する
販売方法である。
買取りの意思表示をしたときに,売上の計上の仕訳をする。試用販売については,対
照勘定法と手持商品区分法がある。
① お店がお客に,試用販売のために,商品を渡す。
② お店に対して,お客が試用販売商品を気に入り買取りの意思表示をする。
対照勘定法と手持商品区分法で仕訳してみる。
たいしゃくつい
対照勘定法(貸 借 対の勘定で処理)
試用品発送時点
61
買取意思表示時点
たいしゃくつい
対照勘定法は,貸 借 対の勘定で処理する。試用販売では,試用品を試送しても買い取っ
てもらえるか不明である。そのため,お店では試送している事実をメモとして記録に残し,
売価(30,000 円)で記録に残す。
買取の意思表示があった時に売上として仕訳をし,対照勘定法によるメモ書きの仕訳を
取り消す。
手持商品区分法
試用品発送時点
買取意思表示時点
手持商品区分法は,商品を試送した時に手持商品と試送品を区別する方法である。発送
時点で試用品を計上する。買取の意思表示があった時に売上として仕訳をし,売上原価を
計算する。
:対照勘定法では売価(30,000 円)で記帳,手持商品区分法では原価(20,000 円)
で記帳する。
次の取引を仕訳しなさい。対照勘定法による。
① 試用販売のため,売価¥30,000 の商品を発送した。
②
上記商品について買取の意思表示を受けた。
62
次の取引を仕訳しなさい。
試用販売のため顧客に試送していたA商品 10 個(原価@¥5,000,売価@7,000)のうち, 6
個について買い取りの意思表示があり,残りについては返品されてきた。
なお,当社は,試用販売の記帳について,試用品勘定を用いて手許商品と区分して処理す
る方法によっており,売上計上のつど試用品の原価を仕入勘定に振り替える処理を行って
いる。
借方
金額
貸方
金額
試用販売の収益計上時点は,相手方の試用品に対する買取の意思表示である。その部分を
掛売上に計上する。計算は売価@7,000×6個が計上売上高となる。問題文の後段,なお書き
文の内容(手許商品区別法)に従って,仕訳もする必要がある。
予約販売とは,代金を先に受取って,あとから商品を引き渡す販売方法である。引き渡
した商品の部分についてのみ,売上高を計上する。事例としては定期券の販売がある。
予約販売取引は,取引の内容も仕訳も比較的単純である。
次の一連の取引の仕訳をしなさい。
① 月刊誌の年間購読(年間 12 冊,1 冊@1,000 円)の予約を募集したところ,10 名からの予
約があり,年間購読料を現金で受け取った。
② 予約者に 1 月分を発送した。
63
借方
金額
貸方
金額
①
②
@1,000 円×12 冊分×10 名=120,000 円
@1,000 円×10 名;10,000 円
次の取引を仕訳しなさい。
西 東 京 ( 株 ) は , ゲ ー ム ソ フ ト の 新 発 売 に 先 立 ち , 単 価 ¥ 3, 1 5 0 ( 消 費 税
¥ 1 5 0 を 含 む ) で 予 約 を 受 け 付 け て い た が ,本 日 , 400本 分 の ソ フ ト を 予 約 客
に 発 送 し た 。 な お ,昨 日 ま で に 500本 分 の 予 約 が あ り ,代 金 の 全 額 を 受 け 取 っ て
いる。
借方
金額
貸方
金額
予 約 金 を 受 取 っ た 場 合 に は,す で に前 受 金 勘 定 を 用 い て 仕 訳 を し てい る 。 予 約 商
品 の 発 送 時 点 で 売 上 を 計 上 し , こ の 前 受 金 と 相 殺 す る 。 売 上 高 は ( 400 本 分 ×
¥ 3 , 1 50 )となる。
かっぷ
割賦販売
割賦販売とは,商品を引き渡した後,売上代金を月賦,年賦等の方法により,数回に分
けて定期的に回収する販売方法である。月賦販売が典型的事例。
64
① 当店はお客に商品を掛で販売した。
② 代金の支払いは数回の分割払いである。割賦販売である。
2つの仕訳の方法がある。
販売基準:この方法は通常の商品と同様に,引き渡した時に売上を計上する。掛売上と
同じ仕訳をする。原則は販売基準である。
回収基準:割賦販売は分割払いであるから,回収が長期に及ぶ。分割払の途中で代金の
回収ができないこともある。そのため,売上の計上を慎重に行うため,販売代金を回収し
た時点で売上として計上の仕訳をする。対照勘定法と未実現利益控除法が認められている。
対照勘定法のみ学習する。
対照勘定法では割賦販売した商品を売価で備忘記録しておく方法である。次のような仕
訳をする。
商品(売価:¥200,000)を引き渡した時点(10 回の月賦)
入金があった場合
例題:次の取引を,販売基準と回収基準(対照勘定法)で仕訳をしなさい。
①
商品¥30,000(原価¥24,000)を毎月均等額払いの 6 か月月賦で売り上げた。
②
1 回目の月賦代金を現金で受け取った。
借方
金額
貸方
金額
借方
金額
貸方
金額
①
②
①
②
65
販売基準
回収基準(対照勘定法)
次の取引を仕訳しなさい。
中 国 物 産 は ,商 品 ¥ 70,000 (原 価 ¥ 50,000) を 毎 月 末 ¥ 7,000の 均 等 額 払 い の
約 束 で 売 り 渡 した 。 (回 収 基 準に よ り対 照 勘定 を 用 いて 処 理 ) 。
借方
金額
貸方
金額
割賦販売では,代金は数回に分けて支払われる。原則は販売基準である。しかし,回収基
準も認められている。練習問題では,回収基準の理解が求められている。
回 収 基 準で は ,割賦 商 品の 発 送 では な く ,現 金 の入 金 を もっ て 売上 高 を計 上 す る。
割賦商品の引 渡 時点 で は, 対 照 勘定 (対 の 勘定 )で仕 訳 をし , 備忘 記 録と す る 。
次の〔資料Ⅰ〕は,平成 23 年 3 月中の取引である。
〔資料Ⅰ〕の仕訳をしなさ
い。
〔資料Ⅰ〕
:平成 23 年 3 月中の取引(一部)
1.貨物引換証の受入高(掛)¥50,000。
2.貨物引換証(原価¥25,000)の売上高(掛)¥40,000。売上げた貨物引換証の原価は,
仕入勘定に振り替える。
3.商品の仕入高¥180,000(このうち,貨物引換証の引換えによるもの¥30,000。これ以
外の仕入商品の代金は掛けとした)。
66
4.商品の委託先への積送高¥150,000。
5.委託先における販売高は¥210,000。委託先が計上した手数料は¥27,000。積送品売上
高は,委託先の手取金額で計上する。売上げた積送品原価¥160,000 は,仕入勘定に振り替
える。委託先からの送金高¥140,000
6.商品(原価¥210,000)の割賦販売高¥300,000。なお,割賦販売商品は,利益率 30%で
販売している。割賦販売に係る売上の計上は,回収基準によっており,販売時に割賦販売
契約割賦仮売上勘定の対照勘定を用いて記帳する。割賦代金の現金回収高¥220,000。
借方
金額
貸方
金額
1
2
3
4
5
6
1 掛けによる貨物引換証(商品の引換券)¥50,000 の受入れである。
2
貨物引換証を券のまま売上げた。未着品売上勘定を使用して仕訳し ,問題文では,
¥25,000 の売上原価を計算する仕訳も要求されている。
3 内訳は,貨物引換証の引換えによる商品の仕入が,¥30,000 あり,そのほかは,一般商
品売買の¥150,000 である。
4 この商店は,委託販売をしており,委託販売のための商品の送付の仕訳が必要となる。
67
委託販売をしていることを表現するために積送品勘定で仕訳する。
5 積送品売上
委託販売をしており,ス手数料¥27,000 を差し引いた金額¥183,000 が,積送品売上となる。
積送品原価は仕入勘定へ振り替える。
6 割賦販売
正解を出すポイントは,回収基準にきづくこと,備忘記録で仕訳していることである。
68
本章では次の内容を学習する。
①減価償却の計算方法として定率法と生産高比例法
②固定資産の売却(期首売却・期中売却・期末売却)
③除却・廃棄,買換え
④改良と修繕
⑤滅失
⑥建設仮勘定
3 級の商業簿記では,固定資産の取得や決算整理事項として,減価償却を勉強した。おさ
らいをしておくことにする。
○次の取引を仕訳しなさい。
営業用の軽自動車¥700,000 を 1 台購入し,自動車税等の諸費用¥200,000 も含めた合計
金額の 20%を現金で支払い,残金は 10 日後に支払うこととした。
借方
金額
貸方
金額
仕訳のポイント:
軽自動車は,①車両運搬具という勘定科目を用いて仕訳すること,②自動車税等の諸費
用は,固定資産の取得原価に含めることが重要である。
2級の商業簿記で新しく学習する定率法とは,一定の割合で減価償却費を計算する減価
償却の方法である。計算方法は,以下のようになる
(取得原価―減価償却累計額)×償却率=1年分の減価償却費の額
簿価
69
生産高比例法とは,固定資産の利用度合に応じて減価償却費を計上する減価償却の方法
である。計算方法は,次のようになる。
(取得原価―残存価額)×当期の利用量=1年分の減価償却費の額
総利用量
例題
次の有形固定資産の減価償却費を計算しなさい。なお,建物は定率法,自動車は生産高
比例法で減価償却する。
(1)建物
取得原価¥100,000,償却率 20%,減価償却累計額残高¥36,000
(2)自動車
取得原価¥800,000,残存価額は取得原価の 10%
総見積走行可能距離 100,000km,当期実績走行距離 20,000km
(1)建物
¥
(2)自動車
¥
例題は,減価償却費の計算をしなさいという問題である。問題文から計算に必要なデータ
を拾い集めて,計算式にあてはめる。
(1)は,建物で定率法である。
(¥100,000(取得原価)-¥36,000(減価償却累計額))
×20%(償却率)=¥12,800(減価償却費)
20,000km(当期実績走行距離)
(2)は,自動車で生産高比例法である。
(¥800,000(取得原価)-¥800,000×10%(残存価額)
)×
=¥144,000(減価償却費)
100,000km(総見積走行可能距離)
次の取引を仕訳しなさい。
決算にさいし,営業用の車両(取得原価¥3,500,000,車両減価償却累計額¥1,638,000,間
接法で記帳)に対し生産高比例法により減価償却を行った。この車両の残存価額は取得原
価の 10%,見積総走行可能距離は 250,00Okm,当期の実際走行距離は 30,00Okm であった。仕
訳しなさい。
借方
金額
70
貸方
金額
生産高比例法とは,すでに解説したように,資産の利用度に応じて固定資産の取
得原価を費用化する減価償却の方法である。
生産高比例法による減価償却費の金額は,計算式にあてはめて次のようになる。
〔(¥3,500,000-¥350,000)〕×30,00Okm
250,00Okm=¥378,000
次の資料に基づき,精算表の修正記入欄を完成しなさい。
有形固定資産については,次の要領で減価償却を行う。
建物:耐用年数 30 年,残存価額は取得原価の 10%として,定額法により計算する。
備品:償却率年 20%とし,定率法により行う。
精算表は,次の通りである。
精算表
勘定科目
試算表
借方
建物
300,000
備品
50,000
貸方
建物減価累計額
72,000
備品減価累計額
18,000
修正記入
借方
貸方
損益計算書
貸借対照表
借方
借方
貸方
貸方
建物減価償却費
備品減価償却費
固定資産に減価償却費の計算式を適用すると建物は定額法であるから,減価償却費は
¥9,000,備品は定率法であるから減価償却費は¥6,400 となる。そして,これらの金額を
修正記入欄に記載し,精算表を完成させる。
精算表
勘定科目
試算表
借方
建物
300,000
備品
50,000
貸方
修正記入
借方
貸方
71
損益計算書
貸借対照表
借方
借方
貸方
貸方
建物減価累計額
72,000
9,000
備品減価累計額
18,000
6,400
建物減価償却費
9,000
備品減価償却費
6,400
注意:2級の商業簿記の精算表作成問題では,次に学習する固定資産を期中に購入した
とか,売却したとか,火災にあったとか,建設中の建物が完成したとか,そのような問題
が含まれている。月割計算の知識が必要になるので,注意しておく。
じょきゃく
:除 却 と廃棄とは,いずれも,固定資産を事業上の用途からはずし,使用
しないことである。
除却とは処分する固定資産に若干の価値がある場合,廃棄とは,不用であるからゴミと
して捨て去ることである。除却の場合,除却した固定資産に若干の価値があり,これは,
貯蔵品勘定で仕訳する。除却の場合には固定資産除却損,廃棄の場合には固定資産廃棄損
が生じることもある。
次の取引を仕訳しなさい。
備品:ボツクス(取得原価¥60,000,減価償却累計額¥54,000)を除却した。まだ使用可能
なので倉庫に保管してある。その処分価値は,¥4,000 と見積もられる。
借方
金額
貸方
金額
例題は,除却のケースである。固定資産の簿価は,取得原価¥60,000-減価償却累計額
72
¥54,000=¥6,000 となる。廃棄した備品は処分価値があるから,貯蔵品勘定で金額¥4,000
で仕訳をしておく。簿価¥6,000 と貯蔵品の価値¥4,000 との差額が,固定資産除却損
¥2,000 となる。
次の取引を仕訳しなさい。
新 潟 商 事 ( 株 ) は , 平 成 22年 度 期 首 に , 設 備 更 新 の た め , 保 有 す る 備 品
( 取 得 原 価 ¥ 1,200,000 ),減 価 償 却 累 計 額 ¥ 6 7 5 , 0 0 0 ,間 接 法 に よ り 記 帳 )
を 除 却 し た 。 こ の 備 品 の 処 分 価 値 は ¥ 120,000 と見積られた。
借方
金額
貸方
金額
問 題 文 か ら 備 品 の 処 分 価 値 ¥ 120,000 は , 貯 蔵 品 勘 定 で 仕 訳 処 理 す る こ と
が重要である。
備 品 の 簿 価 ¥ 525,000 は , ¥ 1 , 2 0 0 , 0 0 0( 取 得 原 価 ) - ¥ 675,000( 減 価 償
却累計額)で計算する。
そ し て 備 品 の 簿 価 ¥ 525,000 と 備 品 の 処 分 価 値 ( ¥ 120,000 ) と の 差 額
¥ 405,000 は , 固 定 資 産 除 却 損 で 仕 訳 を す る 。
:売却とは,使用中の固定資産をお店の外部に売ってしまうことである。
:
固定資産は,時間あるいは利用に応じて,その固定資産の価値は減価する。減価部分を
一括して評価する方法が減価償却である。3 級の商業簿記では,減価償却は月割計算すると
いう考え方も学習した。そして,売却した場合,固定資産売却損益を計算する。
売却価額-売却時点での簿価=固定資産売却益または固定資産売却損
固定資産を期中あるいは期末時点で売却した場合は,月割計算で決算末から売却時点ま
73
での減価償却費も計算する。
次の取引を仕訳しなさい。
当期(会計期間 4 月 1 日~3 月 31 日)の翌期の 6 月 20 日に備品(取得原価¥60,000,
減価償却累計額¥12,000)を売却し,代金 50,000 円は現金で受け取った。なお,当該備品
の減価償却方法は定率法(償却率年 20%,間接法で記帳)である。
借方
金額
貸方
金額
例題では,減価償却の計算方法は定率法と,正解間接法で仕訳している。
決算日後,3か月使用してから備品を売却した。6 月には 20 日しか使用していないが月
割計算では 1 カ月として計算する。ゆえに,4 月から 6 月までの 3 カ月分の減価償却費を計
算する。そして,固定資産売却益¥4,400 を計算する。計算式は次の通りである。
(¥60,000-¥12,000)×20%×
3
=2,400(減価償却費)
12
¥50,000-(¥48,000-¥2,400) =¥4,400(固定資産売却益)
次の取引を仕訳しなさい。
高山商店(年1回, 3月末決算)は,平成 22 年5月 31 日に備品を¥3,000,000 で売却し,
代金のうち 1/3 を現金で受け取り,残額は翌月 20 日に受け取ることとした。この備品は,平
成 20 年7月1日に購入(購入代価¥3,960,000,直接付随費用¥40,000)した固定資産であ
る。残存価額は取得原価の 10%,耐用年数は8年,償却方法は定額法,記帳方法は直接法によ
っている。当期分の減価償却費も月割計算により合わせて計上すること。
74
借方
金額
貸方
金額
① 売 却 備 品 の 取 得 原 価は , 問 題 文 か ら¥3,960,000(購入代価)+¥40,000(直接付随
費用)=¥4,000,000(取得原価)となる。
②前期までの減価償却累計額は,売却備品を平成 20 年7月に購入したから,平成 22 年3
月までの 21 カ月分の減価償却の計算がなされているはずである。つまり,
〔(¥4,000,000-¥400,000)÷8年〕×21 カ月分=¥787,500 となる。
直接法であるから,前期末の備品の簿価は
¥4,000,000-¥787,500=¥3,212,500(前期末の備品の簿価)
となっている。
③当期の減価償却費の計上額は,月割計算で 5 月までの 2 カ月分:したがって,当期の
減価償却費の計上額:
〔(¥4,000,000-¥400,000)÷8〕×2カ月=¥75,000(当期の減価償却費の計上額)
④最後に,固定資産売却損は,次のようになる。
¥3,000,000(売却価額)-(¥3,212,500(前期までの減価償却)+¥75,000(当期の2
カ月分の減価償却費))=¥137,500(固定資産売却損)
買換えとは,使用している固定資産を下取りに出して,新しい固定資産と置き換えるこ
とである。たとえば,使用しているA車両を下取りに出して,新B車両を購入するという
事例が考えられる。買換えのときの正解,旧車両の売却時の仕訳を考え,そして新車両を
購入した時の仕訳を考え,2つを合体させて買い替えの場合の仕訳を考える。
75
1 つ注意点:
新旧固定資産の取得原価は相殺してはならない。相殺すると,取引の実態が分からなく
なる。
次の取引を仕訳しなさい。
営業用車両(取得原価¥3,000,000,残存価額¥300,000,前期末における減価償却累計額
¥2,295,000,生産高比例法による減価償却,見積総走行可能距離 180,000Km)を下取りさ
せて,新たな営業用車両(購入価額¥3,600,000 を購入した。なお,旧車両の当期の走行距
離は 15,000 Km,下取り価額は¥200,000 で,購入価額との差額は月末に支払うこととした。
借方
金額
貸方
金額
問題文をよく読むと,問題文には,正解を解くキーワードが含まれている。4 つ
ある。
①生産高比例法による減価償却の計算
②当期分の減価償却をすること:つまり月割計算
③固定資産の買い替え:つまり新旧固定資産の取得原価を相殺しないこと
④月末未払い
旧営業用車両に対する当期分の減価償却費を生産高比例法によって計算する。
〔(¥3,000,000-¥300,000)÷180,000Km〕×15,000 Km=¥225,000
故に,下取時点での減価償却の累計は¥2,295,000(過年度分)+¥225,000(当期分)
=¥2,520,000
76
固定資産売却損益:
(¥3,000,000-¥2,520,000)-下取り額¥200,000=¥280,000
月末支払額(:つまり未払金)は,次のようになる。
新営業車両の購入価額¥3,600,000-旧営業用車両下取価額¥200,000=¥3,400,000
有形固定資産に対しては,固定資産を修繕したり,改良したりする場合がある。
修繕とは,収益的支出ともいわれ,固定資産の価値や性能を現状維持するための支出で
ある。家の雨漏りを直すような支出で,修繕費という勘定科目で仕訳をする。
改良とは,資本的支出ともいわれ,固定資産の価値や性能を高めたり,耐用年数を延長
させる支出で,階段をつけるような支出である。固定資産の原価に加算する仕訳をする。
修繕と改良は厳密に区別して,仕訳しなければならない。
次の取引を仕訳しなさい。
工場の屋根を補修し,その工事代金については,¥500,000 の小切手を振り出して支払っ
た。なお,補修費用の 40%は,改良のための支出とみなされる。
借方
金額
貸方
金額
工事代金については,¥500,000 のうち,資本的支出は小切手の振出金額の 40%の
¥200,000,収益的支出はその 60%の¥300,000 となる。
次の取引を仕訳しなさい。
当期首に営業用建物(取得原価¥5,000,000,残存価額¥500,000,耐用年数 20 年,定額
法による減価償却,間接法により記帳)の修繕を行い,代金¥700,000 のうち¥400,000)
については小切手を振り出して支払い,残額は月末に支払うこととした。
なお,このうち¥250,000 については建物の耐震構造を強化する効果があると認められた。
77
また,修繕引当金の残高は¥300,000 である。
借方
金額
貸方
金額
①修繕代金の¥700,000 うち¥400,000 は小切手による支払,¥300,000 は月末支払であ
る。未払金¥300,000 と仕訳をする。
②修繕代 金 の ¥700,000 のうち,耐震構造の強化¥250,000 が資 本 的 支 出 , 残 り
¥450,000 が収 益 的支 出で あ る 。収 益 的 支出 ¥450,000 のう ち ,修繕引当金¥300,000
が設定されている。ゆえに,当期の修繕費は¥150,000 となる。
固定資産は,火災・地震にあって,消滅することがある。2つのケースが考えられる。
①固定資産に保険がつけられていない場合,直ちに火災損失が確定する。
②固定資産に保険がつけられていた場合がある。保険がつけられていた場合には,火災
発生から受取保険金額が確定するには,査定に時間がかかる。火災未決算という勘定科目
で仕訳をする。受取保険金額の確定時点で火災損失の金額を明らかにする。火災により利
益を得ることもある。保険差益という勘定科目で仕訳をする。
●建物(取得原価¥100,000,減価償却累計額¥36,000)が火災により焼失した。仕訳し
なさい。
借方
金額
78
貸方
金額
●建物(取得原価¥100,000,減価償却累計額¥36,000)が火災により焼失した。なお,
この建物には¥80,000 の火災保険がかけられていた。仕訳しなさい。
借方
金額
貸方
金額
火災発生時点には,保険会社から保険金がいくら支払われるかわからない。とりあえず,
火災未決算という勘定科目で仕訳処理をする。火災未決算は,資産勘定である。
●上記火災につき,保険会社から連絡があり,保険金¥60,000 を支払う旨の通知があっ
た。
借方
金額
貸方
金額
●簿価¥64,000 の固定資産が焼失し,¥60,000 の支払額が確定した。¥60,000 でなく,
¥70,000 の受取額が確定した。
79
借方
金額
貸方
金額
4つのケース(パソコン画面を見よ)をまとめておくことにする。最近,固定資産が火
災あったケースがよく,仕訳問題で出題されるようになった。
次の取引を仕訳しなさい。
本日(5月 15 日),火災により焼失した建物(取得原価¥2,000,000,残存価額¥200,000,
耐用年数 10 年,間接法により記帳)について請求していた保険金¥1,400,000 を支払う旨の
連絡を保険会社から受けた。なお,当該建物は,当期首(4月 1 日)からさかのぼって4年
前に取得したものであり, 4月 1 日の火災により焼失したさいに,期首時点の簿価の全額を
未決算勘定に振り替えていた。
借方
金額
貸方
金額
焼失前の建物の減価償却累計額は,固定資産を 4 年前に取得したから,次のよう
に計算しているはずである。
。
4月1日の焼失時点では,次のような仕訳がなされているはずである。
80
5月1日に受取るはずの保険金¥1,400,000 と未決算 1,280,000 との差額¥120,000 は,
保険差益(特別利益)で仕訳をする。
建設会社や工務店に,店舗,工場,倉庫などの建設を依頼する場合がある。工事中に工
事代金の一部を支払った場合に使用するのが,建設仮勘定である。建設中の建物が完成し,
引き渡しを受けた場合には建物勘定に振替える。
次の取引を仕訳しなさい。
①河合建設に,営業所用の建物の新築を請け負わせ,請負代金の一部¥3,000,000 を小切
手を振り出して支払った。
②上記の建物が完成して引渡しを受け,請負代金の残金¥12,000,000 を小切手を振り出
して支払った。
借方
金額
貸方
金額
次の取引を仕訳しなさい。
株式会社宮城は,建設中の営業用店舗の完成にともない工事代金の残額¥7,000,000 を小
切手を振り出して支払い,店舗の引渡しを受けた。なお,この店舗に対しては工事代金とし
てすでに¥14,000,000 の支出を行っている。
借方
金額
81
貸方
金額
正解を出すコツは,なお文を読み,その前の文章を読む。
建設途中の建物に対する支払は,なお文から,建設仮勘定を用いて次のように仕
訳をしていることがわかる。
建設仮勘定は建物が完成し,引き渡しをうけた場合には建物勘定へ振替える。この練習
問題では,問題文から引き渡しと同時に工事代金の残額¥7,000,000 を小切手も振り出して
支払っている。
82
本章では次の内容を学習する。
① 手形の裏書きと割引
こうかい
② 手形の不渡りと更改
約束手形は支払期日になると現金なりるから経済的価値を持っている。また,約束手形を
受取期日前に他の人に譲渡したり,銀行で割り引いて現金にすることもできる。現在勉強
している2級の商業簿記では,すでに貨物代表証券をセットにした自己受け為替手形も学
習した。荷為替の問題であった。
学習内容の全体を図解する。
裏書の時――――偶発債務―――無事決済
――――無事決済されなかったとき―不渡り
手形
割引の時――――偶発債務――――無事決済
――――無事決済されなかったとき―不渡り
さて,お店は,持っている約束手形を裏書きして仕入代金の決済のために他のお店に渡
したりする。手形の場合,他の人に手形という債権を譲渡する場合,譲渡の方法として,
手形の裏面に記名,押印をして渡す。これを裏書きという。
割引とは,金融機関が手形に記載された支払期日前に支払期日までの利子相当額を差し
引き残った残金を支払い,その手形を買い取ることをいう。
もしそれらの約束手形の支払人が期日になっても手形金額を支払わない場合,当店には,
どのような責任が生じるか。
手形について,細々した内容は,手形法という法律によって規制されている。
「満期において支払いなきときは,所持人は裏書人その他の債務者に対してその請求権を
う
行うこと得」
(手形法 43 条)
つまり,約束手形を持っている人は,約束手形の振出人が支払期日に手形金額を支払わ
83
そきゅうこう
ない場合,裏書人などに手形金額の支払いを請求できる。これを手形の遡及効という。ひ
よっとしたら,手形の振出人が支払期日に手形金額を支払わない時,①裏書きした場合,
②割り引いた場合,裏書人や割り引いたお店には,将来支払い義務が発生するかもしれな
い。簿記の言葉では,偶発債務という。
2級の商業簿記では,この偶発債務を仕訳の中に取り入れる。偶発債務は,金融負債と
して時価評価する。
約束手形の裏書時,割引時,そして無事決済された時点での仕訳を示しておく。
次の取引の仕訳を行いなさい。
(1)買掛金の支払いのために,
名古屋商店から受け取った約束手形¥10,000 を裏書譲渡した。
なお,この裏書に係る保証債務の時価は手形金額の 2%とする。
(2)上記の手形が,無事決済された。
借方
金額
貸方
金額
1
2
●裏書時
●決済時
簡単に解説。約束手形を裏書譲渡した場合,偶発債務が発生することがあるかもしれな
い。2%の保証債務費用を計上し,将来の偶発債務の発生に備えておく。そして,支払時点
に無事決済された場合,保証債務取崩益を計上する。
次の取引の仕訳を行いなさい.
(1)銀行で手持の約束手形¥10,000 を割引き,割引料¥1,000 を差し引かれた金額を当座預
金とした。この割引きに係る保証債務の時価は,約束手形金額の 3%とする。
84
(2)上記の手形が,無事決済された。
借方
金額
貸方
金額
1
2
●割引時
●決済時
簡単に解説。約束手形を割引した場合,まず銀行に手形を売却した仕訳をする。しかし,
偶発債務が発生することがあるかもしれない。3%の保証債務費用を計上し,それに備えて
おく。そして,支払時点に何のトラブルもなく約束手形が決済された場合,保証債務取崩
益¥
を計上する。
手形の振出人が約束手形の支払期日に,手形金額を支払わない場合がありうる。理由は,
ふ わ た り
振出人のお店が倒産したり,振出人の店主が夜逃げした。手形の不渡りという。
手形の不渡りとは,約束手形の支払期日が到来しても,振出人が手形金額を支払わない
ことをいう。一旦,不渡手形とする。そして,手形保持人は裏書人などに手形金額の支払
いの法的請求をする。この請求手続きを進めるにはお金がかかる。これらの金額も不渡手
形に含める。
そして,最終的に,どうしても振出人が手形金額を支払わない場合,貸し倒れの仕訳を
する。手形の不渡りでも,相手方と交渉したら,一部分あるいは全額が回収されるかもし
れない。不渡りの場合,ただちに,貸し倒れの正解しない。
次の取引を仕訳しなさい。
かねて山梨商店より裏書譲渡されていた約束手形¥300,000 が不渡りになった。ただちに,
85
償還請求の諸費用¥35,000 とともに,山梨商店に請求した。なお,諸費用は現金で支払った。
正解
借方
金額
貸方
金額
資金不足の場合,約束手形の所持人は約束手形の受取人の承諾を得て,支払期日を延長す
ることもありうる。この場合,所持人は新しい約束手形を作成し,古い約束手形と交換す
こうかい
る。これを手形の更改という。
次の取引について,当店の立場からの仕訳を行いなさい。
得意先名古屋商店から同店振出,当店宛ての約束手形¥430,000 について,手形の更改の
申し入れがあった。それに応じ,当店は旧手形を引渡して新手形を受け取った。なお,支
払期日延長にともなう利息¥2,000 は新手形の額面に加えた。
借方
金額
貸方
金額
約束手形の更改の取引である。借方の受取手形は新しい約束手形,貸方の受取手形は古
い約束手形である。
次の取引を仕訳しなさい。
横浜商店より売掛金の決済のために受け取り,過日,銀行で割引に付していた,同店振出
86
し,当店宛ての約束手形¥600,000 が満期日に支払拒絶されたため,同銀行より償還請求を
受け,小切手を振り出して決済した。また,期日後利息¥2,O00 は現金で支払い,手形金額と
ともに京浜商店に対し支払請求をした。
借方
金額
貸方
金額
練習問題の文章から,銀行より割引手形(振出人は横浜商店,金額は¥600,000)が
満期日に支払われなかったため,割引人である当店は銀行から償還請求を受けた。期
日後利息¥2,O00 も含めて,不渡手形勘定で仕訳する。
次の取引を仕訳しなさい。
得意先岡山商店に対して前期に償還請求をしていた不渡手形の額面¥500,000 と償還請
求費用¥18,000 のうち,¥150,000 を現金で回収した。残額は回収の見込みがなく,貸倒
れの処理をした。なお,貸倒引当金が¥300,000 設定されていた。
借方
金額
貸方
不渡手形として償還請求費用¥18,000 を含め,すでに
(借)不渡手形
518,000
(貸)受取手形
として,仕訳がなされている。
87
518,000
金額
練習問題はその後の仕訳を要求している。現金¥150,000 の回収,貸倒引当金¥300,000
を取り崩し, ¥518,000 との差額¥68,000 は貸倒損失とする。
88
本章では次の内容を学習する。
①売買目的の有価証券の購入・売却・期末評価
②端数利息
③満期保有目的債券の購入・期末評価
3 級の商業簿記では,売買目的の有価証券の購入と売却,決算時点での評価を学習した。
2級の商業簿記では,さらに売買目的有価証券以外の有価証券についても細々したことを
学習する。まず,有価証券の取引の対象になる有価証券が問題になる。
簿記の立場から,有価証券の種類と内容を表にしておく。保有目的からの分類が重要で
ある。
図表1
有価証券の種類と内容
図表 1 から,有価証券は,有価証券を保有する目的から4つに分類する。2級の商業簿
記では,最初の売買目的有価証券;時価の変動により利益を得ること目的として保有する
株式と社債と,満期保有目的債券;満期まで保有する意思を持って保有する社債が重要で
ある。
89
図表を若干説明すると保有目的によって,有価証券は分類され,そして端数利息の問題
が生じるケース,さらに期末評価が問題になる。
さて,お店は余裕資金があると株式や社債を購入して余裕資金を運用するかもしれない。
株の場合,お店は株価が上昇すれば,保有有価証券を売却するかもしれない。このような
目的で保有した有価証券を売買目的有価証券という。株と社債がある。購入と売却につい
て,学習する。
お店は売買目的有価証券を購入した場合,3級の商業簿記の知識をもとにして,次のよ
うな仕訳をする。
次の取引を仕訳しなさい。
売買目的で日本商工株式会社の株式 2,000 株を 1 株につき¥200 で購入し,
手数料¥5,000
とともに小切手を振り出して支払った。
借方
金額
90
貸方
金額
取得原価=購入代価+附随費用
この計算式に,例題文から必要なデータをあてはめて,購入代価は\400,000,支払手数
料¥5,000 は,附随費用として,売買目的有価証券の取得原価に含める。取得原価¥405,000
となる。
売買目的有価証券は,同一銘柄の株式を数回に分けて取得することもある。売買目的有
価証券には市場価格がある。そして,数回に分けて購入した場合,購入した売買目的有価
証券の単価は異なるはずである。
売却した売買目的有価証券の購入単価は,総平均法を利用して計算する。次の例題で購
入単価を計算し,有価証券売却益を計算した場合の仕訳を考える。
次の取引を仕訳しなさい。
当期に売買目的で購入していた日本商工株式会社の株式 10,000 株(6,000 株は 1 株につ
き¥250,4,000 株は¥280 で購入)のうち 3,000 株を 1 株につき¥300 で売却し,代金は
小切手で受け取った。なお,株式の1株当たり単価は,総平均法によるものとする。
借方
金額
貸方
金額
総平均法で売却した売買目的有価証券の購入単価を計算する。6,000 株×¥250+4,000 株
×¥280 を 10,000 株で割って,総平均法による購入単価は¥262 となる。
ゆえに,
売却した 3,000 株の売買目的有価証券の取得原価は¥262×3,000 株で¥786,000。
売却代金は 3,000 株×¥300 で¥900,000 であるから,
有価証券売却益は¥114,000 となる。
91
次の取引を仕訳しなさい。
当期中に3回に分けて取得した同一銘柄の売買目的有価証券 500 株のうち 300 株を 1 株
¥6,850 で売却した。なお,代金は当座預金口座に振り込まれた。この有価証券は,第1回
目 200 株を1株¥6,600 で,第2回目は 200 株を1株¥7,000 で,第3回目は 100 株を1株
¥6,400 で,それぞれ買い付けている。同社は,総平均法で売買目的有価証券の記帳処理を
している。
借方
金額
貸方
金額
売買目的有価証券については,問題文から総平均法で平均単価を計算する。
1回目から3回目までの全部の売買目的有価証券の取得価額は¥3,360,000,全株数は 500
株であるから平均単価は¥6,720 となる。そのうち 300 株を売却したから,
有価証券売却益は,
¥6,850×300 株(売却代金)-¥6,720×300 株(取得原価)=¥39,000(有価証券売却益)
となる。
また,会計期間中に複数回,売買目的有価証券を売買した場合,有価証券売却益や有価
証券売却損がでることもある。損益計算書には,売却益と売却損を相殺して純額で表示す
る。
売買目的有価証券の中に社債がある。社債とは,企業が資金調達のために発行する有価
証券のことをいう。社債は,証券市場で売買される。ここでは,社債が証券市場で売買さ
れる面を学習する。
りふだ
社債券には,社債の利払いを示す利札が付いている。社債の保有者は,半年に 1 回,社
債の利払日が到来すると社債券から利札を切り離して,利札を金融機関に提出して,利息
92
を受け取りる。ここまでは,3級の簿記で学習済である。2級の商業簿記で学習する新し
い問題に入る。
さて,証券市場での社債の売買に際して,社債の利払日の翌日から次の利払日の間に,
つまり中間日に社債を売買した場合,利札の利息は誰のものか。
りふだ
利札は,社債の利払日の翌日から次の利払日の間に社債を売買しても,利札は社債の買
主のものになる。
社債の売買では,利札の処理は利払いの翌日から社債購入日までの利息分を社債の買主
が売主に支払い,利払日に利札に表示されている利息を買主が全額を受け取る。
はすう
端数利息あるいは経過利子ともいう。つまり,利札の利子を日割計算で売主と買主がなか
よく,受け取る。
次の取引の仕訳をしなさい。
6月 12 日に売買目的でA社社債(額面金額¥100,000)を@¥100 につき@¥96 で買い入
れ,代金は端数利息とともに小切手を振り出して支払った。同社債の利率は年 3.65%であ
り,利払日は3月末日である。
借方
金額
貸方
金額
例題 1 は社債の買主の仕訳が要求されている。端数利息の計算期間は,日割計算するか
ら,4月の30日,5月の31日,6月の12日の計73日である。社債の利息は年 3.65%
であるから,日割計算して,端数利息(経過利子)は¥730 となりる。図解するとパソコン
画面のようになる。
93
仕訳では(借)有価証券利息¥730 となっているが,マイナス収益という意味である。
そして,社債の利払日に買主は社債利息全額を受け取り,損益計算書には買主の実質的取
り分が計上されることになりる。
次の取引の仕訳をしなさい。
6月 12 日に売買目的で所有していたA社社債(額面金額¥100,000,帳簿価額¥97,000)
を@¥100 につき@¥96 で売却し,代金は端数利息とともに小切手で受け取った。同社債の
利率は年 3.65%あり,利払日は3月末日である。
借方
金額
貸方
金額
例題2は社債の売主の仕訳である。端数利息¥730 は,売主が受け取る。
売買目的有価証券の期末評価にもふれておく。売買目的有価証券は,時価評価する。帳
簿価額と比較して
時価が上昇の場合→有価証券評価益
時価が下落の場合→有価証券評価損
仕訳の仕方には,切離し法と洗い替え法がありる。洗い替え法は難しいであるが,2級
では出題されたことはない。
次の取引の仕訳をしなさい。
平成 22 年 12 月 12 日に売買目的で京都株式会社の社債
(額面総額¥4,000,000 を額面¥100
につき¥96.55)で買い入れ,代金は証券会社への手数料¥9,000 および端数利息ともに小
切手を振り出して支払った。なお,この社債の利率は年 1.285%,利払日は3月末日と9月
末日の年2回である。また,端数利息の金額については,1 年を 365 日として日割で計算す
る。
94
借方
金額
貸方
金額
練習問題 1 は簿記検定試験で出題された仕訳問題である。練習問題1では社債の買主
側の仕訳が要求されている。購入価額(¥3,862,000)の計算,手数料¥9,000 の売買目
的有価証券の取得原価への算入,端数利息の計算¥10,280 が正確な仕訳を出すかぎとなり
る。端数利息は,前回の利払日の翌日 10 月 1 日から社債購入日 12 月 12 日までの 73 日と
なる。
次の取引の仕訳をしなさい。
平成 23 年2月 23 日,
売買目的で保有している額面総額¥1,000,000 の社債
(利率年3%,
利払日は3月末と9月末の年2回,期間5年,償還日は平成 24 年3月 31 日)を,額面¥100
につき¥98 の裸相場で売却し,売却代金は端数利息とともに受け取り,直ちに当座預金と
した。なお,この社債は,平成 22 年 12 月 12 日に額面¥100 につき¥98 の裸相場で買い入
れたものであり,端数利息は 1 年を 365 日として日割りで計算する。
借方
金額
貸方
金額
この練習問題2も検定試験で出題された仕訳問題である。購入した場合と売却した場合
の2つの知識が要求されている。解説にも時間が必要となる。
95
最初に,なお文以下で売買目的有価証券の取得原価を計算する。取得原価は¥980,000。
はだか そ う ば
問題文の売買目的有価証券の 裸 相場とは権利を含まない値段のことである。経過利子は含
まない。
本問の社債の経過利子(端数利息:10 月 1 日から 2 月 23 日までの 146 日で¥12,000)は,
売主側に帰属する。有価証券利息¥12,000 として仕訳する。売却した売買目的有価証券の
取得原価は¥980,000。有価証券売却損¥20,000 と計算できる。
満期保有目的債券とは,利息等を得るために,満期まで保有することを意図した債券で
ある。この場合の債券とは社債を意味する。2級で初めて学習する内容である。満期保有
目的債券は売却を目的として保有することはないから,期末評価は時価ではない。
過去の試験問題を分析したところ,満期保有目的債券は,精算表の作成問題で出題され
る。
満期保有目的債券は,社債の額面金額と取得原価が異なることがある。これについては,
社債の額面金額と取得原価の差額は,償却原価法で処理する。
償却原価法の償却とは減価償却とは全く異なる。強調しておく。
償却原価法の償却とは,満期保有目的債券の取得原価を切り上げる方法である。社債の
満期日に社債の所持人は,社債の額面金額をうけとることが出来る。そのため,年ごとに
社債の取得原価を切り上げる。取得原価と額面金額の差は,金利調整分と考えることがで
きる。金利調整分は毎年発生し,累積し,社債の償還日に全額を一括して受け取る。
たとえば,取得原価¥95,000, 額面金額¥100,000,償還期間は5年という事例を考えてく
ださい。満期保有目的債券としての社債の帳簿価額は,¥95,000。償却原価法の償却の仕
訳で,毎年¥1,000 ずつ増加し,5年目の終わり,つまり償還期日に,満期保有目的債券と
しての社債の帳簿価額は,額面金額¥100,000 になるわけである。
毎年の期末の仕訳
償却原価法の定義
償却原価法とは,社債の額面金額と取得原価が異なるとき,その差額分を社債の取得日
から満期日までの間に取得原価に加算して,額面金額に近づけていく方法
96
満期保有目的債券の購入時点,そして例題を使って償却原価法の2つの理解を深める。
次の一連の取引の仕訳をしなさい。
00
(1) 当期首に A 社社債(償還期間 5 年)を一口@¥100 につき@¥97 で 100口取得し,手数
料¥100 とともに小切手を振り出して支払った。当社は当該債券を満期まで保有する予
定である。
(2)決算をむかえた。上記(1)の社債について額面金額と取得原価の差額は金利の調整と認め
られるため,償却原価法を適用する。
(1)の仕訳
この例題は,満期保有目的債券の取得の問題である。問題文から満期保有目的債券で,
その取得原価は,@¥97×100 口+¥100(手数料)=¥9,800 (@¥98)ということがわかる。
(2)の仕訳
金利調整差額は
1
(@100 円-@¥98)×100 口=¥200
問題文から償還期間は 5 年ということがわかるから,1 年間の金利調整差額は
¥200÷5 年=¥40
:次の資料を利用して,精算表を完成しなさい。
保有有価証券の内訳
帳簿価額
時価
保有目的
A 社株式
¥65,000
¥61,000
売買目的
B 社株式
¥52,000
¥57,500
売買目的
C 社社債
¥47,000
¥45,000
満期保有目的
なお,C 社社債(額面総額¥50,000,償還日までの残余の期間は当期を含めて 3 年間)は2年
前に取得したものであり,償却原価法により評価する。
97
借方
金額
貸方
金額
A 社株式の時価は下落,B 社株式の時価は上昇である。上昇あるいは下落を無視して,売
買目的有価証券の期末時点での評価は,時価評価である。与えられた資料から帳簿価額は
¥117,000,A 社株式と B 社株式の時価は¥118,500 である。ゆえに,¥1,500 の有価証券評
価益を計上する。
一方,満期保有目的債券には,償却原価法を適用する。額面価額¥50,000 と帳簿価額
¥47,000 の差額が金利調整差額¥3,000。残りを 3 年間で調整するので,有価証券利息は
¥1,000 となる。
上の売買目的有価証券と満期保有目的債券の2つの仕訳を記入した結果,精算表は次の
ようになる。
98
本章では,株式の発行の取引の仕訳を学習する。

会社の設立に関する取引

増資に関する取引

繰延資産に関する取引

合併に関する取引
2級の商業簿記の特徴は,個人商店の簿記と株式会社の簿記が混在していることにある。
9章以降は,株式会社の商業簿記を学習する。
日本における株式会社の数は 260 万社といわれている。いたるところに,株式会社があ
る。現在,皆さんは簿記の勉強をパソコンを使用して学習している。パソコン,パソコン
を購入した電気店は株式会社である。プリンターを製造しているのは株式会社である。
数人の人たちが,株式会社を作りたいと考える。まず,元手である資金を出す。資金を
出した人を株主と呼び,資金を出したことと引き換えに,出資した証明書である株券をも
らう。そして,出した資金を集めた会社を経営する人を選任する。その会社を経営する人
を取締役とよび,取締役たちは集まって会議を持つ。この会議を取締役会といい,会社の
基本方針などを決める。たとえば株式会社を代表する社長も決める。1 年間活動すると,利
益がでたり,損失がでたりする。
1 年に 1 回,資金を出した株主に集まってもらい,決算書を承認するか,稼いだ損益をど
うするか,また次の年も同じ取締役たちで株式会社を経営するか株主たちに決めてもらう。
これが株式会社の所有者たちが集まる株主総会である。損益をどうするかについては,11
章で学習する。
もとで
株式会社では,資金,つまり元手を集めるために,株式と有限責任という工夫をしてい
る。元手は細分化され,株主は出資したお金以上には責任は負わない。細分化された単位
を株式,出資額以上の責任を負わないことを株主有限責任の原則という。株式会社が倒産
しても株式会社の所有者である株主は,責任は負わない。
個人商店では,元手は資本金と呼び,株式会社では,この元手は,いろいろに分類する。
99
図表 1
株式会社の資本

貸借対照表の資産から負債を引いたものが,純資産である。

資本金とは,会社法が定める法律上の資本のことである。

会社法で定める資本以外に株式会社の資本には,資本剰余金と利益剰余金がある。
資本剰余金は元手,利益剰余金は儲けである。

資本準備金には,株式払込剰余金と合併差益がある。

利益剰余金は利益準備金と任意積立金があり,任意積立金には色々なものがある。

繰越利益剰余金は,11 章で説明する。
学習をすすめるにあたって,株式払込剰余金,合併差益,利益準備金の用語は,暗記す
る。
さて,株主となる人から資金を集めた時にどのように仕訳の処理をするか。
会社設立時
増資時
原則的処理
例外的処理
原則的処理
例外的処理
100
仕訳処理は,会社の設立時点で2つ,その後,資本金を増やす時点で2つ,計4パター
ンがあることがわかる。会社の資本金は,会社設立時に会社の発行できる資本の額を決め,
じゅけん
会社の設立の時に1/4以上を発行する。この制度を授権資本制度とよび,会社の設立後,
株式会社は必要に応じて,取締役会の決議により新株を発行して残りの資本を増やす。こ
れを増資いう。
まず,原則的処理である。株主からの払込金額をすべて資本金にする処理である。例外
的処理は,株主となる人が振り込んだ払込金額の1/2まで資本金としないである。これら
の処理は会社法で規定されている。
(資本金の額及び準備金の額)
会社法第 445 条
1項 株式会社の資本金の額は,この法律に別段の定めがある場合を除き,設立又
は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をし
た財産の額とする。
かか
2項 前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は,資本金として計
上しないことができる。
3項 前項の規定により資本金として計上しないこととした額は,資本準備金とし
て計上しなければならない。
次の取引を仕訳しなさい。
株式 100 株を 1 株あたり¥@60,000 で発行し,払込金額は当座預金とした。なお,資本金
の額は,会社法が定める原則的な金額とする。
借方
金額
101
貸方
金額
原則的処理は,株主となる人が払い込んだ金額がそのまま,資本金の金額となる。
計算式は 100 株×\60,000=\6,000,000 である。
ゆえに,\6,000,000 が,資本金の金額になる。
次の取引を仕訳しなさい。例外的処理である。
株式 100 株を 1 株あたり¥@60,000 で発行し,払込金額は当座預金とした。なお,資本金
の額は,会社法で認められる最低額とする。
借方
金額
貸方
金額
問題文では,
「会社法で認められる最低額」とあるから,例外的処理である。これは,1/
2まで資本金にしないとする規定である。株式払込剰余金とする。
計算式は 100 株×\60,000=\6,000,000 である。資本金と株式払込剰余金が1/
2ずつとなる。
増資の問題について,説明する。会社設立後,経営活動がうまくいっていたとする。会
社は,取締役会の決議により,授権資本の範囲内で,新株を発行して資金調達を考える。
新株発行の手順は,パソコン画面の通りである。矢印線が時間。
図表2
増資の手順
会社が新株発行の決定をし,株主の募集をする。会社は,申込のキャンセルがでると困
る。ゆえに,引き受けたい人は申込証拠金を添えて,新株の申し込みをする。そして,会
102
社は申込人に対して新株の割り当てをする。会社は,抽選に外れた人に申込証拠金を返却
する。仕訳処理としては,申込証拠金が振り込まれた場合,割り当てた場合が問題になる。
次の取引を仕訳しなさい。
株式 100 株を 1 株あたり¥@50,000 で発行することとなり,
そのすべての申し込みを受け,
別段預金とした。
借方
金額
貸方
金額
株式申込証拠金は,割り当てが済むまでは,別段預金とする。割り当て時点で,別段預
金は当座預金,株式申込証拠金は資本金になる。その後,2つの仕訳が考えられる。
次の取引を仕訳しなさい。
払込期日となり,払い込まれた金額(¥5,000,000)を全額当座預金とした。なお,資本
金の額は,会社法が定める原則的な金額とする。
借方
金額
貸方
金額
次の取引を仕訳しなさい。
払込期日となり,払い込まれた金額(¥5,000,000 円)を全額当座預金とした。なお,資
本金の額は,会社法で認められる最低額とする。
103
借方
金額
貸方
金額
次の取引を仕訳しなさい。
京葉株式会社は,設立にあたって発行可能株式総数 600 株のうち 150 株を 1 株¥75,000
で発行し,その全額について引受け・払込みを受け,払込金については当座預金とした。
ただし,会社法に規定する最低限度額を資本金に計上することとした。
借方
金額
貸方
金額
会社設立時点での株式の発行である。授権資本は¥45,000,000 である。資本金に組
み入れる額については,会社法 445 条2項と3項に定めがある。払込金額の2分の
1まで資本金としないことの規定である。
計算式は,150 株×¥75,000=¥11,250,000 で半分づつわけて,資本金と株式払込剰余金
とする。例外的処理である。
次の取引を仕訳しなさい。
新株 500 株を1株につき¥60,000 で発行し,その全額を,申込期日までに当座預金に振り
込まれていた株式申込証拠金により充当した。なお,発行価額のうち会社法の規定に定め
る最低限度額を資本金に組み入れた。
104
借方
金額
貸方
金額
練習問題2は ,増資の 場合の取引で ある。株式申込証拠金を 会社法 の規定にした
っがって処理した場合である。会社法の規定を使いこなせるようにする。これも例
外的処理である。
設立や増資に際して,費用を支払った場合の仕訳処理について説明をする。創立費と株
式交付費がある。
ていかん
:中身は定款の作成費,発起人への報酬,設立登記費用
:中身は株主募集費,証券会社に対する手数料,変更登記費
株式交付費を例にとって,株式交付費を支払った会計期間ではなく,将来の期間の費用
にする考え方を解説。
増資によって,会社には資金が入ってくる。その資金を運用して収益が生まれる。株式
交付費,たとえば¥300 は将来の収益に対応させるのが合理的である。そこで,いったん,
株式交付費を発生した会計期間の費用ではなく,資産¥300 に計上して繰延べ,それを 3
年間で徐々にとり崩して,効果のおよぶ将来の期間の収益に対応させて¥100 ずつ費用にす
る。会計独特の繰延資産償却の考え方である。
会計のルールで,繰延資産に計上できる費用と償却期間は定められている。残存価額は,
ゼロ,定額法,直接法を適用して償却する。
105
次のような繰延資産もある。

資金調達のために証券発行に関するもの・・中身は,株式発行費(償却3年)
,社債
発行費(社債の償還期限内)

企業活動の基盤形成に関するもの・・・・中身は,創立費(償却5年)
,開業費(償
却5年)

将来の収益増加や費用節減に関するもの・・・・中身は,開発費(償却5年)
カッコ内は償却期間である。覚える必要がある。
繰延経理した場合と決算時点で,償却した場合を表示する。
繰延経理
●会社設立(期首)にあたり,株式発行費用¥300,000 を現金で支払った。なお,これは繰
延資産として処理する。
●新株発行にあたり,株式発行費用¥180,000 を現金で支払った。なお,これは繰延資産と
して処理する。
●決算となり,上記創立費を償却期間5年の定額法により月割償却する。
●決算となり,上記株式交付費を償却期間3年の定額法により月割償却する。
まず,繰延資産としての,創立費と株式交付費は,会社設立,増資の問題と組み合わせ
て仕訳問題で出題される。繰延資産償却,つまり創立費償却と株式交付費償却は,精算表
の作成問題で出題される。
15 回分の過去問を調査。仕訳問題としては 4 回,精算表は7回出題されている。決算整
理事項として繰延資産償却が出されたのは 7 回のうち5回である。10 章で学習する社債発
行費償却が 40%,株式交付費償却は 60%である。精算表作成問題では,繰延資産償却が決
106
算整理事項として組み込まれている。
次の決算整理事項に基づき精算表を作成しなさい。会計期間は 1 年,決算日は
3月 31 日である。
決算整理事項

繰延資産として計上している株式交付費は当期の 9 月 1 日に増資したさいに生じた
ものである。その効果のおよぶ期間は 3 年間(36 か月間)と見積もり,定額法によ
り月割りで償却する。
決算整理事項を整理記入で仕訳し,損益計算書と貸借対照表を作り上げると下のように
なる。
精算表
勘定科目
株式交付費
株式交付費償却
試算表
借方
貸方
修正記入
借方
貸方
損益計算書
借方
貸方
貸借対照表
借方
貸方
9,000
精算表
勘定科目
株式交付費
株式交付費償却
試算表
借方
貸方
修正記入
借方
9,000
貸方
損益計算書
貸借対照表
借方
借方
1,750
1,750
貸方
貸方
7,250
1,750
株式交付費の償却期間は,3年間である。9 月 1 日に発生しました。月割計算する。1 年
分が¥3,000 であるから,7 か月分¥1,750 を償却する。
株式の発行は,資金調達,すなわち増資の場合に限定されるわけではない。株式の発行
は,合併の場合にも行う。合併は販売市場の拡大,組織の合理化のために行われる。合併
には,新設合併と吸収合併がある。
107
新設合併:A社とB社の2つの会社が,別にC社という新会社を作り,消滅するA社と
B社がC社という新会社に移るような場合である。
吸収合併:A社がB社をとり込んでA社にすることである。B社の資産および負債はA
社にとりこまれて,B社の株主にはA社の株式が発行されてA社の株主になる。この場合,
B社の純資産に対して株式が発行される。純資産以上の株式が発行される場合とそうでな
い場合がある。

純資産以上の株式を発行する場合→のれん

純資産以上の株式を発行しない場合→合併差益
会社の経営には,規制当局の色々な許認可が必要であるから,吸収合併がほとんどであ
る。
次の取引について,存続会社の仕訳をしなさい。
中央商事株式会社は,東京産業株式会社を吸収合併し,¥8,200,000 の資産と¥3,600,000
の負債を引き継ぐとともに,東京産業株式会社の株主に対して株式 80 株(1 株の払込金額は
¥50,000 とし,その全額を資本金とする)と現金¥1,000,000 を交付した。なお,合併にあ
たって消滅会社から引き継いだ資産と負債は,便宜上,それぞれ諸資産および諸負債とい
う勘定科目を用いて仕訳を行うものとする。
借方
金額
貸方
金額
東京産業株式会社の純資産は,¥8,200,000(諸資産)-¥3,600,000(諸負債)で
¥ 4,600,000 で あ る 。 こ の 純 資 産 を 株 式 ¥ 4,000,000 と 合 併 交 付 金 ¥ 1,000,000 , 計
¥5,000,000 で購入した。ゆえに,のれんは,¥400,000 となる。のれんは,超過収益力で
ある。
108
この章では,社債について 3 つの内容を学習する
① 社債の発行,利払日,決算日の簿記処
理
② 社債の満期償還の処理
③ 買入償還の処理
償還とは,社債発行によって借り入れた資金を返済することをいう。8 章では,社債の購
入者側の仕訳を学習したが,10 章では社債の発行者側の仕訳を学習する。
株式会社が,企業外部から資金調達をする 1 つの方法に社債の発行がある。社債は,見
たことがないかもしれない。
まず,社債で勉強すべき内容を図解しながら,解説。
社債に関に関して学習すべきは,まず社債を発行する取引,そして社債の発行には,色々
な費用がかかる。費用の支払いの仕訳を学習する。例題 1 で挑戦する。
社債には,一定の利息が支払われる。その仕訳を学習する。例題2で挑戦する。社債を
額面金額以下で発行した場合,社債は額面金額で償還する。そのため,償却原価法という
方法によって,社債の金額を切り上げていく方法を学習する。社債発行費は繰延資産に計
上することができる。その償却を学習する。例題3で挑戦する。
最後に社債の発行によって調達した資金は,返済する必要がある。償還の問題を取り扱
う。買入償還と満期償還がある。例題4で挑戦する。
109
社債の発行方法には,3 つの方法がある。
平価発行:額面金額で発行する方法(発行価額=額面金額)
う ちぶ
打歩発行:額面金額より高い価額で発行する方法(発行価額>額面金額)
割引発行:額面金額より低い価額で発行する方法(発行価額<額面金額)
くちすう
社債の一般的な発行方法は,割引発行である。社債の単位は,口数で表現する。たとえ
ば,市場の金利が 3.1%とする。そして社債の利率が3%とする。この場合,社債は売れな
い。そこで,額面金額¥100 より引き下げて,発行価額の単価を 1 口¥95 にする。金利は3%
÷95 円=3.15%になる。社債の実質金利 3.15%が市場金利3%よりも高くなる.
会社は,社債を証券市場で売って,資金を借り入れることができる。また,社債の発行に
際して,手数料や社債の印刷費も必要になる。これらの費用は,社債発行費という勘定科
目で仕訳処理する。そして,繰延資産として計上し,社債の償還期間内で均等額の償却を
し,費用として計上する。
次の取引を仕訳しなさい。
×5年 1 月 1 日
会社は,社債総額¥5,000,000(償還期限 5 年,年利率 4.5%,利払日は 6 月,12 月の
末日)を額面@¥100 につき@¥98 で発行し,払込金額は当座預金とした。なお,社債発
行に要した費用¥150,000 は,現金で支払った。
借方
金額
貸方
取引を図解
110
金額
仕訳が要求されているのは,×5年 1 月 1 日時点である。
会社が,額面金額¥5,000,000 の社債を発行している。社債の口数は,¥5,000,000÷@
¥100=50,000 口である。額面金額が 1 口¥100,発行価額は 1 口¥98,払込まれた金額は,
¥98×50,000 口で¥4,900,000 となる。この払込金額¥4,900,000 は,会社では,当座預金
としている。社債の発行に要した費用は¥150,000 で,現金で支払った。
次の取引を仕訳しなさい
浦和商事(決算年1回, 3月末日)は, 4月 1 日に額面総額¥16,000,000 の社債を年利率
2.6% (利払い年2回, 3月と9月の末日)
,償還期限8年,払込金額@¥98.50 の条件で発
行し,払込金は当座預金とした。
なお,社債発行のための諸費用¥650,000 については,現金で支払った。120回
借方
金額
貸方
取引を図解
111
金額
浦和商事は,額面金額¥16,000,000 の社債を割引発行した。額面金額¥16,000,000 の社
債の口数は 160, 000 口である。1 口¥100 の社債を¥98.5 で割引発行している。払込金額
は¥15,760,000。社債発行のための費用¥650,000 は現金で支払った。
利払日とは,社債利息(クーポン)の支払日のことである。社債は,社債券を持ってい
る人に,一定の利息を支払う必要がある。会社は,半年に 1 回,社債の利息を支払う。
次の取引を仕訳しなさい。
会社は,×5年6月 30 日第 1 回目の利払日につき,社債利息を小切手を振り出して支払
った。社債総額は,¥5,000,000(年利率 4.5%,利払日は 6 月,12 月の末日)である。
借方
金額
貸方
社債利息の計算式
¥5,000,000×4.5%(年利率)÷2(年 2 回)=¥112,500
112
金額
決算日には,3 つの仕訳処理を行う。

償却原価法の適用

社債発行費の償却

社債利息の計上
 償却原価法の適用:額面金額よりも低い価額で社債を発行し,社債の償還期限が到来し
た場合,社債の発行会社は額面金額で返済する。決算日に発行価額と社債の額面金額の
差額を償還期間で均等額ずつ社債の金額を増加させる。増加分は金利調整差額,つまり
社債利息と考え,この方法を償却原価法と呼ぶ。
たとえば,額面金額@¥100 の社債を発行価額@¥95,償還期間 5 年を考える。
計算式で表すと,
(¥100-¥95)÷5 年間=¥1となる。
仕訳
(借)社債利息 1
(貸)社債
1
つまり,¥1ずつ社債は額面金額に近づいてゆき,5 年後に¥100 になる。そして,¥100
で返済する。
 社債発行費の償却:社債発行費は,社債を発行した期間に割り振って,費用として計上
することもできる。決算日に,償還期限内に,定額法で,記帳方法は直接法で仕訳する。
仕訳
(借)社債発行費償却 xxxx
(貸)社債発行費 xxxx
 社債利息について,説明は不要。
次の取引を仕訳しなさい。
×5 年 12 月 31 日
第2回目の利払日につき,社債利息¥112,500 は小切手を振り出して支払った。なお,本
日 決 算 に つ き , 社 債 の 額 面 金 額 と 払 込 金 額 の 差 額 ( 額 面 価 額 ¥ 5,000,000, 発 行 価 額
¥4,900,000,償却年限 5 年)は償却原価法(定額法)により処理する。また社債発行費
¥150,000 については,全額を支出した期の費用とせずに,償還期間で定額法により月割償
却する。
借方
金額
113
貸方
金額
取引を図解。
3 つの仕訳が要求されている。
 社債利息の支払いである。社債利息:クーポン¥112,500 は,小切手支払である。
 償却原価法を適用した仕訳である。額面金額¥5,000,000 と発行価額¥4,900,000 の
差額¥100,000 を 5 年(償還期間)で償却する。
 社債発行費¥150,000 の5年償却の仕訳である。
償還とは,社債発行によって借り入れた資金を返済することをいう。満期日に償還する
場合,満期以前に資金にゆとりがでたため償還する場合がある。買入償還の場合,社債償
還損益が発生することもある。
満期償還の場合
次の取引を仕訳しなさい。
×9年 12 月 31 日
社債(帳簿価額¥4,980,000)が満期となったので,全額償還し,最終回の利息(額面価
額¥5,000,000,年利率 2.6%,利払い年2回, 3月と9月の末日)
)とともに小切手を振り出
して支払った。なお,社債発行費の償却を行う(社債発行費¥150,000 の 5 年償却)
。
114
借方
金額
貸方
金額
満期償還の問題。社債の利払日は 9 月末日,決算日は 12 月末で異なっている。社債の帳
簿価額は問題文から,¥4,980,000 と与えられている。社債利息は,例題 3 で計算した。問
題文から最終回の社債利息 9 月末では支払っていない。12 月末に支払った。クーポンとし
ての社債利息は¥112,500,償却原価法を適用した社債利息は¥20,000 である。
仕訳では,合わせて同じ社債利息勘定を使用する。社債発行費償却¥30,000 は,5 年間
の定額法による償却。
次の取引を仕訳しなさい。
平成 17 年4月 1 日に,償還期限5年,年利率 1.2%(利払日は9月末および3月末の年
2回)で,額面¥100 につき¥97.50 で発行した総額¥5,000,000 の社債が満期となり,当
期分の利息を含めて,平成 22 年3月 31 日に小切手を振り出して全額償還をした。
なお,同日の決算にさいして,毎期末に行われている社債の評価替えを償却原価法(定
額法)により行った。
借方
金額
115
貸方
金額
問題文が長いから,上のように図解。平成 17 年 4 月に社債を発行し,平成 22 年 3 月が
満期償還である。償還日が決算日となっている。社債は割引発行しているから,償却原価
法を適用した場合の社債利息は,¥25,000 となる。
計算式は,[¥5,000,000(社債の額面総額)-¥4,875,000(発行価額)]÷5 年(償還期
限)で計算する。
一番下の社債利息は,半年分の社債利息¥30,000 である。この社債利息は,クーポン分
である。
計算式は,¥5,000,000(社債の額面総額)×1.2%(年利率)÷2(半年分)=¥30,000
(社債利息)
買入償還とは,社債の償還日前に,社債を買い入れて償還する場合である。買入償還の
理解に加えて,社債償還損益が発生する場合もあるということを覚えておけば,正しい仕
訳をすることができる。
社債償還損益=社債の帳簿価額-社債の買入価額
次の取引を仕訳しなさい。
名古屋商事(年 1 回3月末日決算)は,平成 22 年3月 31 日に額面総額¥3,000,000 の社
たんか
債を額面 @ ¥100 について@¥99 で買入償還し,現金で支払った。なお,この社債は,平
成 19 年4月 1 日に, 額面@¥100 につき@¥98 で発行したものである。当該社債の償還期
間は5年であり,社債の評価方法は償却原価法を採用している。
借方
金額
116
貸方
金額
発行時点の社債の価額は¥2,940,000,1 年間分の償却原価法を適用した場合の社債の増
価は¥12,000,2 年目末の社債の帳簿価額は¥2,964,000 になっている。
3 年目の決算日に償却原価法 1 年間分による社債利息を計上する。最初の仕訳である。償
却原価法を適用した後の社債の帳簿価額は,¥2,976,000 となる。
この¥2,976,000 の帳簿価額の社債を買入償還した。社債の発行口数は 30,000 口,1 口
@¥99 で買入償還した。ゆえに,社債償還益は¥6,000 となる。
会計期間 4 月 1 日から 3 月 31 日までの A 社の平成 23 年 3 月決算にかかわ
る精算表を作成しなさい。
社債は平成 18 年 1 月 1 日に,償還期限 7 年,年利率 1.8%(利払日:6 月末および 12 月
末)額面¥100 につき¥97.90 で発行されたものである。償却原価法としての定額法により
社債の評価替えを行う。あわせて,社債利息の当期の未払分を計上した。
精算表
勘定科目
社債
社債利息
試算表
借方
貸方
1,983,500
修正記入
借方
貸方
27,000
未払利息
117
損益計算書
借方
貸方
貸借対照表
借方
貸方
決算整理仕訳
(借)社債利息 6,000
(貸)社債
6,000
(借)社債利息 9,000
(貸)未払利息
9,000
この 2 つの決算整理仕訳を精算表に記入するとパソコン画面参照
この回の合格率は,12.4%になっている。上の仕訳が採点個所になっていると思われる。
精算表は 6 か所が採点個所,1 つ間違えると,当期純利益も採点個所になっているから,悲
惨なことになるわけである。
この問題の厄介な点は,社債発行日と決算日が異なっていること,社債の発行口数がわ
かっていないことである。社債の発行時点での差額は,¥100-¥97.90=¥2.1×発行口数,
これが金利調整差額の総額である。
平成 18 年の 3 か月,
平成 22 年 3 月決算までの 48 カ月,
計 51 か月について償却原価法を適用した結果,社債の帳簿価額は¥1,983,500 となってい
る。償還期限 7 年の 84 か月に償却原価法を適用しなければならないと考えれば,99.175%
償却している。ゆえに,社債の口数は 20,000 口と考えることもできる。
7 年が社債の償還期限であるから,償却原価法を適用した場合の社債利息は¥6,000,利
払日が 12 月末である。ゆえにクーポンとしての 3 カ月分の社債利息,費用の見越しの仕訳
をする。
118
本章では,次の取引の仕訳を学習する。

法人税等

消費税
国民や住民が安心して生活していくためには,公共サービスや公共施設が必要である。
このために,国や地方公共団体は,国民や住民に税金を課している。会社も税金を支払う。
納税は,国民の3大義務の1つである。
会社が課せられる税金は,次の3つ。
法人税:国が法人としての会社に対して課す税金
住民税:都道府県および市町村がその住民である個人および会社に対して課す税金
事業税:事業活動をしている個人や会社に対して,都道府県が課す税金
とう
法人税,住民税,事業税の3つをあわせて,法人税等という。いずれも会社の所得に課
せられる税金という意味で共通の性格を有している。どんなふうに,会社に法人税等が課
されるか。
上の図の説明

まず,横軸が時間である。決算日が2つ,その間に中間申告,税金の納付がある。

1年決算の会社は,会計期間の半年が経過した日から2カ月以内に中間申告を行う。
税額は,前年度の法人税額の2分の1あるいは中間日の仮決算にもとづいて計算した
半年分の法人税等額を中間納付する。

会計年度末には,1年分の法人税等額を計算する。

そして,確定申告を行う。税額はすでに中間納付しているから,差額を確定申告で納
付する。
119
次の取引を仕訳しなさい。
(1)平成×1 年 11 月 30 日,中間申告を行い,法人税¥1,200,000,住民税¥500,000,事業
税¥200,000 を小切手を振り出して中間納付した。
(2)平成×2 年 3 月 31 日,決算を行い,法人税額は¥2,600,000, 住民税額は¥1,100,000,
事業税額は¥350,000 と確定した。
(3)平成×2 年 5 月 31 日,確定申告を行い,上記の法人税,住民税,事業税について,中
間納税額を差し引いた残りの税額を小切手を振り出して納付した。
借方
金額
貸方
金額
(1)
(2)
(3)
(1)の中間申告時点での仕訳,
(2)の決算時点での仕訳,
(3)の確定申告時点での仕訳
例題の(1)から(3)の取引に対する正解,セットで理解
この会社は1年決算会社である。決算日は3月末,11 月 30 日が中間申告の日である。
(1) の取引は,中間申告時点での中間納付の仕訳である。仮払法人税等の性格は,仮
払金と考えてよい。仮払法人税等の金額は,
法人税¥1,200,000+住民税¥500,000+事業税¥200,000=¥1,900,000
120
したがって,正解,画面のようになる。
(2) の取引は,決算時点での仕訳で,税額が¥4,050,000 と確定しました。計算は,
法人税額¥2,600,000+ 住民税額¥1,100,000+事業税額¥350,000=¥4,050,000。
すでに¥1,900,000 を(1)で中間申告している。ゆえに,未払分は¥2,150,000 と
なる。したがって,正解,画面のようになる。
(3) の取引は,未払分の法人税等¥2,150,000 を確定申告で納付した時の仕訳である。
したがって,正解画面のようになる。
平 成 23 年 3 月 31 日 に 決 算 を 行 っ た 結 果 , 法 人 税 額 が ¥ 3,500,000, 住 民 税 額 が
¥1,700,000,事業税額が¥480,000 となることが確定した。これらの税額のうち法人税は
¥1,500,000,住民税は¥650,000,事業税は¥260,000 をそれぞれ中間納付している。
借方
金額
貸方
金額
法人税,住民税,事業税を合わせた勘定科目が,法人 税 等 で ある 。仕訳 の金 額 は , 問題
文から計算する。
中間申告額
¥1,500,000(法人税)+¥650,000(住民税)+¥260,000(事業税)
確定申告額
¥3,500,000(法人税額)+¥1,700,000(住民税額)+¥480,000(事業税額)
未納付額
¥5,680,000(確定申告額)-¥2,410,000(中間申告額)=¥3,270,000(未納付額)
消費税は,物品(財貨)やサービスの消費に対して,国が課す税金である。税込方式と税
抜方式がある。税込方式は個人事業者や中小会社,税抜方式は大きな会社で行われている
ようである。
121
税込方式:

消費税を物品やサービスの購入価格,販売価格の中に含めて記帳

納付すべき税額:決算時に消費税額を計算し,消費税の額を租税公課勘定の借方と未
払消費税勘定の貸方に記入する
税抜方式

物品・サービスの購入時点:購入価格に消費税を上乗せ
仮払消費税

物品・サービスの販売時点:販売価格に消費税を上乗せ
仮受消費税
そうさい

決算時:仮受消費税と仮払消費税を相殺して消費税額を計算

確定申告・納付時点:
消費税に関する取引を図解
消費税を取り巻く関係者をパソコン画面に登場させる。当社が中央に,左右に仕入先と
消費者がいる。
税抜方式では商品を仕入れた時に,商品を販売した時に消費税を別建てで仕訳する。決
算時点で支払った消費税額と受け取った消費税額を相殺して,確定申告の時に税務署に納
付すべき消費税額とする。
次の一連の取引を税抜方式で仕訳しなさい,
(1) 商品を¥10,000 の価格で仕入れ,代金は¥500 の消費税とともに小切手を振り出して
支払った。
(2) 上記の商品を¥12,000 の価格で販売し,¥600 の消費税とともに,受け取った代金は
すぐに当座預金に預け入れた。
(3) 決算を行い,上記の商品売買取引にかかわる消費税の納付額を計算しこれを確定した。
(4) 確定申告を行い,上記の消費税の納付額を小切手を振り出して納付した。
借方
金額
貸方
(1)
(2)
122
金額
借方
(3)
(4)
(1):仕入時点での仕訳
(2):販売時点での仕訳
(3):決算時点での仕訳
(4):納付時点での仕訳
例題の(1)から(4)の取引に対する正解,セットで理解。
(1) は,消費税を支払った時の仕訳である。区別して別々の勘定科目で仕訳する。(2)は消費
税を受け取った時の仕訳である。区別して別々の勘定科目で仕訳する。(3)は決算時に納税
額を計算するための仕訳である。仮受消費税と仮払消費税との差額が納税額になる。 (4)
が納税した時の仕訳である。
練習問題1と2は,過去の試験問題である。
次の取引を仕訳しなさい。
決算にさいして,消費税の納付額を計算し,これを確定した。なお,本年度の消費税仮払分
は¥100,000,消費税仮受分は¥150,000 であり,消費税の会計処理は税抜方式によっている。
123
借方
金額
貸方
金額
消 費 税 の 仕訳処理には,①税込方式,②税抜方式がある。この練習問題は,税抜方式で
ある。商品の仕入時には仮払消費税, 商品の販売時点で受取った消費税は,仮受消費税で
仕訳する。決算時点で,仮払消費税と仮受消費税は相殺し,差額が納付税額になる。
次の取引を仕訳しなさい。
ア パ レ ル 青 山 は ,決 算 に あ た り ,商 品 売 買 取 引 に 係 る 消 費 税 の 納 付 額 を 計 算 し ,
こ れ を 確 定 し た 。 な お ,消 費 税 の 仮 払 分 は ¥ 15,400,仮 受 分 は ¥ 18,200で あ り ,
当 社 は 消 費 税 の 会計処理として税込方式を採用している。
消 費 税 の 会計処理には,①税込方式,②税抜方式がある。税込方式では消費税を含め
て費用と収益を計上し,納付べき消費税額は,決算時点で租税公課として仕訳 する。
まだ,確定申告していないから,未払消費税となる。
124
本章では,次の内容を学習する。

決算で当期純利益がでた場合

決算で当期純損失が発生した場合
個人商店の所有者は,お店の店主である。1 年間営業活動をして得た当期純利益は,お店
を経営する店主のものである。当期純利益は,資本金勘定へ振り替える。
一方,株式会社の所有者は株主である。株式会社を経営した結果得た利益は,だれのも
のか。
一旦,株式会社があげた当期純利益は,株式会社のものになる。そして,株主たちが決算
日後 3 か月以内にあつまって,当期純利益の処分を決める。
図表 1
剰余金の処分
株式会社では,決算になると帳簿を締め切り,当期純利益を確定する。確定した当期純
利益は,とりあえず,繰越利益剰余金勘定へ振り替える。ここで,仕訳が必要になる。そ
して,その後開催される株主総会の普通決議で,株主たちが社外流出部分と社内留保部分
に分け,残額は未処分のまま繰り越される。ここで仕訳が必要になる。企業資産の社外流
出部分が配当である。配当支払時点での仕訳も必要になる。
会社法は,株主への配当が生じた場合,社外流出部分の1/10 を利益準備金として積み立
てるように強制している(会社法 445 条4項)
。会社法 445 条の規定は,株式会社には仕入
先などの債権者もいるため,会社債権者のための規定である。そして,強制的な利益剰余
金の積み立ては,資本準備金と利益準備金の合計が資本金の1/4に達すれば,必要はない。
計算式は,次のとおりである。
125
次の取引について仕訳を行いなさい。なお,会計期間は 3 月 31 日を決算日とする 1 年で
ある。
1.第 1 期決算にあたり,当期純利益¥2,600,000 を計上した。
2.株主総会(×22 年 6 月 30 日)において,次の剰余金の配当,処分が承認された。
なお,財源はすべて繰越利益剰余金である。利益準備金¥120,000 株主配当金¥1,200,000
別途積立金¥700,000
3.第 2 期決算にあたり,当期純利益¥2,800,000 を計上した。
4.株主総会(×23 年 6 月 30 日)において,次の剰余金の配当,処分が承認された。
なお,財源はすべて繰越利益剰余金である。利益準備金 会社法規定の最低額
株主配当金¥1,300,000
別途積立金¥100,000
また,当社の資本金は¥50,000,000,資本準備金は¥6,000,000,利益準備金は¥6,400,000
であった。
借方
金額
1
2
3
4
1の仕訳
2の仕訳
3の仕訳
4の仕訳
126
貸方
金額
図解
取引1は,第 1 期決算にあたって,確定した当期純利益¥2,600,000 を繰越利益剰余金に
振り替える。
取引2は,決算日後,3 か月以内に開催される株主総会で剰余金の処分が確定した時の仕
訳である。利益準備金要積立額は,株主配当金¥1,200,000 の1/10 である。この利益準備
金要積立額¥120,000 は,問題文に示されている。処分が確定しない¥580,000 はそのまま
にしておく。
取引3は,第 2 期決算で当期純利益を計上した時の仕訳である。解説は不要。
取引4が,一番重要である。すでに学習した利益準備金要積立額の計算式の理解が必要
である。
決算で当期純損失が出た場合,どうするのか。繰越利益剰余金勘定に振替え,株主総会
でどうするか株主たちが考える。
当期純損失の発生の場合
1)決算において,当期純損失 2,000,000 円が計上された。
2)株主総会において,繰越利益剰余金 2,000,000 円(借方残)につき,任意積立金 1,800,000
円を取り崩し,これをてん補した。なお,残額は次期に繰り越すこととした。
借方
金額
1と2の仕訳
127
貸方
金額
株式会社では,当期純損益は費用・収益を損益勘定に振り替えて確定し,当期純
損益は,繰越利益剰余金勘定に振り替える。
株式会社千代田商会は,当期の決算を行った結果, ¥7,500,000 の当期純損失を計上した。
借方
金額
貸方
金額
¥7,500,000 の損失の計上は,株式会社の純 資産 を減少させる。そして ,繰越利益剰
余金勘定は,純資産の増減を記録する勘定である。¥7,500,000 の当期純損失は,繰越利
益剰余金勘定へ振り替える。
平成 23 年6月 25 日に開催された株主総会で,以下のように繰越利益剰余金の処分が行わ
れた。なお,同社の資本金は¥10,000,000 であり,資本準備金は¥2,000,000,利益準備金は
¥400,000 がそれぞれ既に積み立てられている。
配当金 ¥1,500,000 新築積立金 ¥500,000 利益準備金 会社法の定める必要額
借方
金額
128
貸方
金額
会 社 法 に よ る 利 益 剰 余 金 設 定 額 の 規 定 は,暗 記 し て お く 必 要 が あ る 。 利 益 剰 余 金
設定額を¥150,000 と解答した皆さんは間違。
129
本章では,次の取引の仕訳を学習する。
●3級で学習した精算表が基礎
●新たな決算整理事項
棚卸減耗費と棚卸評価損:
●引当金
すでに学習で習得した知識
①銀行勘定調整表の作成で発見した事項
②売買目的有価証券の期末評価
③満期保有目的債券の期末評価
④減価償却(定率法と生産高比例法)
⑥ 延資産の償却
本章:2つの知識を学習
①売上原価の計算
②引当金の計上
売上原価の計算(棚卸減耗と棚卸評価損)
3級の商業簿記:売上原価の計算のための仕訳
あり
期首商品有高
あり
期末商品有高
売上原価の計算
期首商品棚卸高+当期仕入高-期末商品棚卸高=売上原価
3級の商業簿記での想定:期末商品に数量の不足も,商品の値段の値下がりもない場合
○棚卸減耗
130
数量の不足の減耗とは,あるべき数量が不足(理由:盗難など)
在庫数量の調べ方
継続記録法:日々の商品の受取数量と払い出し数量を帳面に記帳して,期末の在庫数
量を把握
たなおろし
棚 卸 計算法:期末に,在庫のおいてある現場に行って,商品の在庫数量を数えて調査
たなおろし
例:継続記録法では 100 個,棚 卸 計算法では 80 個。ゆえに、20 個が棚卸減耗
計算式
原価性の有無:仕訳の仕方が異なる。
○棚卸評価損
期末の在庫商品が品質低下により価格が値下がりしている場合
例:単価¥100 の商品が時価で¥80 になっているような場合
計算式
次の決算整理事項にもとづいて決算整理仕訳を示しなさい。売上原価は仕入勘定で計算
すること。
資料:
商品の期末棚卸高は,次のとおりである。
帳簿棚卸数量 4個 実地棚卸数量 3個
1 個あたり単価:原価¥1,000
時価¥900
なお,棚卸減耗費は売上原価に算入し,棚卸評価損は,売上原価に算入しない場合。
借方
金額
131
貸方
金額
(借) 繰越商品
4,000
(貸)仕 入
4,000
(借) 棚卸減耗費
1,000
(貸)繰越商品
1,000
(借) 棚卸評価損
(借)
300
1,000
仕入
(貸)繰越商品
(貸)棚卸減耗費
300
1,000
棚卸減耗費と棚卸評価損の 2 つが発生
次のような図を作成して面積計算で解く
100円
原価
商品評価損
90円
時価
棚卸減耗費
B/S価額
実地数量 帳簿数量
3個
4個
作図の仕方
① 横軸に,数量を記入。一番外側が帳簿数量(4 個)
,その内側が実地数量(3 個)
② 縦軸に価格を記入。一番外側が原価(¥100),その内側が時価(¥90)
③ 棚卸減耗費(¥1,000)
:数量不足×原価
④ 棚卸評価損(¥300)
:値下がり分×実地数量
⑤ 棚卸減耗費は売上原価に算入し,棚卸評価損は,売上原価に算入しない場合
商品の期末棚卸高は,次のとおりである。売上原価は「仕入」で計算する。ただし,棚
卸減耗費と棚卸評価損は,独立の勘定科目として表示する。
帳簿棚卸数量 1,000 個 1 個あたり単価:原価¥50
実地棚卸数量
980 個 (970 個の時価は¥60, 10 個の時価は¥30。なお,10 個の時
価下落は,品質低下を原因とするものである。
132
970個
¥50
原価
¥30
品質低下
棚卸減耗費
B/S価額
実地数量
980個
帳簿数量
1,000個
まず,ボックスに問題文の情報を記入。970 個は時価が¥60 に上昇しているが無視する。
低価法。
低価法:期末の時価と帳簿価額を比較して,いずれか低い方で評価する棚卸資産の評価
方法
問題文は独立科目として表示するように要求。期末商品棚卸高は¥50,000,棚卸減耗費
はピンク部分の¥1,000,品質低下に伴う棚卸評価損は黄色い部分の¥200。独立の科目と
して表示するように要求。
① 将来の特定の費用または損失であること
② その発生が当期以前の事象に属すること
③ 発生の可能性が高いこと
④ 金額を合理的に見積もることができること
4つの条件に合致する場合に,当期の費用として計上できるもの
例:
修繕引当金:有形固定資産について,将来行われる修繕の原因がそれ以前の各期におけ
る資産の使用にある点を考慮して,将来の修繕費の見積額のうち当期の負担分を当期の費
用として計上するために設定する引当金
退職給付引当金: 退職給付引当金とは従業員が将来退職するに際して,企業が支払わな
ければならない退職給付の支給に備えて設定する引当金
133
引当金学習:
① 決算時点で引当金を計上する仕訳
② 取り崩した場合の仕訳
① 20xl 年3月 31 日,当期に行うべき修繕を次期に延期したので,決算にあたり当期負担
分の定期修繕費\400,000 を引当金として計上した。
②
20xl 年 11 月4日,前年度分も含めて定期的修繕を行い,代金\850,000 は月末に支払
うこととした。
借方
金額
貸方
金額
①
②
3月 31 日は決算時点で,修繕引当金\400,000 を計上。11 月4日は定期修繕を行った場
合の仕訳。代金の未払いは,\850,000。3月 31 日に設定した修繕引当金を取り崩し,残り
が修繕費\450,000。もちろん,貸方は未払金\850,000。
2級精算表の作成(基本形)
2級の商業簿記の精算表を作成(基本形)にチャレンジ
134
1)商品の期末有高は以下のとおりである。なお,売上原価の計算は仕入の行で行う。
たんか
帳簿棚卸高は 20 個 原価は @ ¥100
たんか
実地棚卸高 15 個 時価は @ ¥80(正味売却価額)
棚卸減耗費は売上原価に算入しない。
(2)受取手形と売掛金の期末残高に対して貸倒引当金を設定する。なお,貸倒実績率は1%
とする。
(3)売買目的有価証券(時価¥2,000)を時価法により評価する。
(4)備品について定率法(償却率 0.2)により減価償却費を計上する。
つきわり
(5)株式交付費は当期首に支出したものであり,3年間で定額法により月割償却する。
借方
金額
精算表を見る。試算表の借方に期首商品は¥2,500。
期首商品の決算整理仕訳
決算整理事項
(1)の期末商品をボックスで表示
135
貸方
金額
¥100
原価
¥80
時価
棚卸評価損
B/S価額
実地数量
15個
棚卸減耗費
帳簿数量
20個
決算整理仕訳
コメント [m1]:
独立の勘定科目表示(仕訳)
(2)
決算整理事項を見る。そして修正記入前の売上債権は¥5,000。貸倒引当金残高は¥30,
貸倒実績率は1%。ゆえに¥20 を積み増し¥50 とする。
決算整理仕訳
売上債権:受取手形と売掛金を合わせた日商簿記検定試験 1 級で出題される用語
貸倒実績率:日商簿記検定試験 1 級で出題される専門用語
(3)
試算表の借方から売買目的有価証券は¥1,500
(3)から時価が¥2,000
決算整理仕訳
(4)
減価償却方法は定率法
(¥5,000-¥1,000)×0.2=¥800
決算整理仕訳
136
(5)
繰延資産として,試算表から株式交付費¥300:本年から3年間で償却
決算整理仕訳
決算整理仕訳の記入
137
決算整理仕訳と精算表の完成:パソコン画面の解説を見る
検定試験の出題:40 行の精算表が出題
過去の精算表作成問題で出題された決算整理事項
銀行勘定調整表
貸し倒れ
貸倒れの見積もり
売買目的有価証券
満期保有目的債券
期末棚卸資産の評価
商品減耗損
商品評価損
独立科目表示
減価償却
定額法
定率法
月割計算
繰延資産
償却原価法
費用繰延
費用見越し
収益見越し
126
○
○
○
2
1
124
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
121
○
○
○
2
1
119
○
○
○
2
1
116
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
3
○
○
○
○
138
○
2
1
○
○
○
○
検定試験の精算表作成問題から,決算整理事項のみ抽出
[決算整理事項その他]
1.当座預金の帳簿残高と銀行の残高証明書の金額は-致していなかった。不-致の原因
を調べたところ,次の事実が判明した。
(1)買掛金の支払のために\8,000 の小切手を振り出して仕入先に渡していた。しかし仕
入先では,この小切手の取立てをまだ行っていなかった。
(2)銀行に取立依頼していた得意先振出しの約束手形の決済代金として\15,000 が当座預
金の口座に振り込まれていた。しかし,この通知が銀行から届いていなかった。
借方
金額
貸方
金額
(1)は未取立小切手。当店は記帳済。仕入先が銀行に取り立て依頼をすれば,銀行は,
当店の当座預金\8,000 を減少させる。
ゆえに,当店は何もしない。
(2)は連絡未達。当店は,\15,000 の入金の仕訳。
2.売掛金のうち\10,000 は得意先が倒産したため回収不能であることが判明した。なお,
\8,000 は前期から繰り越したものであり,残りの\2,000 は当期の売上取引から生じたもの
である。
借方
金額
139
貸方
金額
回収不能といえども,前期部分と当期部分の回収不能を区別して仕訳。
前期部分\8,000 には,貸倒見積もりが貸倒引当金として設定。当期部分\2,000 には,貸
倒引当金は未設定。注意して仕訳すること。
3.受取手形と売掛金の期末残高に対して,3%の貸倒れを見積もる。決算前の受取手形勘
定残高は¥90,000,売掛金勘定残高は¥180,000,貸倒引当金残高は¥9,700 であった。
借方
金額
借方
金額
3
与えられたパソコン画面の資料3から,単純に引当金の見積額を計算してはならない。
注意;
既に説明した決算整理仕訳で受取手形勘定残高と売掛金勘定残高が修正されている。印
刷した1-(2)と2の仕訳を見てください。
受取手形については,約束手形の決済代金¥15,000 の当座預金口座への預け入れの通知
が当店に届いていない。
売掛金については,当期分の貸し倒れと前期分の貸し倒れ計¥10,000 があった。
受取手形勘定残高:¥90,000-¥15,000 =¥75,000
売掛金勘定残高:¥180,000-¥10,000 =¥170,000
正しい貸倒引当金残高
(¥75,000+¥170,000)×0.03(償却率)=¥7,350
当期末の貸倒引当金¥7,350-(期首の貸倒引当金¥9,700-当期に貸れ倒たもの¥8,000)
=¥5,650 (積み増し部分)
この¥5,650 が貸倒引当金繰入額
140
4.有価証券の内訳は、次のとおりである。
帳簿価額
時価
保有目的
A社株式
\57,800
\56,500
売買目的
B社株式
\65,100
\67,200
売買目的
C社社債
\49,850
\49,800
満期保有目的
なお,C社社債(額面総額\50,000,利率年2%,償還日までの残余の期間は当期を含め
て3年間)については,償却原価法(定額法)により評価する。
借方
金額
貸方
金額
4
保有目的の違いにきづくことが重要。
売買目的のA社株式とB社株式の帳簿価額および時価のそれぞれの合計額を比較。A社
株式は時価が下落,B社株式は時価が上昇。合計額で,帳簿価額と時価を比較。
帳簿価額 ¥57,800(A社株式)+¥65,100(B社株式) =¥122,900
時価
¥65,500(A社株式)+¥67,200(B社株式) =¥123,700
比較して,時価の方の金額が¥800 大きいので,有価証券評価益¥800 を計上
¥123,700-¥122,900 =¥800
次に満期保有目的債券
C社社債は,満期保有目的債券→償却原価法(定額法)による処理。
額面総額と帳簿価額の差額 ¥50,000-¥49,850 =¥150
¥150 ÷3年=¥50 を帳簿価額に加算。¥50 の有価証券利息が発生
5.商品の期末棚卸高は,次のとおりである。なお,売上原価は「仕入」の行で計算する。
棚卸減耗費と棚卸評価損は,独立の科目として表示する。
帳簿棚卸高 数量 700 個
原価 @\90
実地棚卸高 数量 690 個
うち 650 個の正味売却価額@¥115
40 個の正味売却価額@ ¥72
141
商品の期首棚卸高 ¥61,000
借方
金額
貸方
金額
ボックス法で,ピンク部分の棚卸減耗費とイエロー部分の棚卸評価損を計算し,決算整理
仕訳に備える。
¥90
原価
¥72
品質低下
650個
棚卸減耗費
B/S価額
実地数量
690個
帳簿数量
700個
前期からの繰越商品残高¥61,000 を仕入勘定に振り替え。また,期末帳簿棚卸高を仕入
勘定から繰越商品勘定に振り替え。
,
期末帳簿棚卸高の金額:700 個×¥90 =¥63,000
独立の科目表示
棚卸減耗費:(700 個-690 個)×¥90 =¥900
棚卸評価損は,原価よりも正味売却価額が低い 40 個について評価損を計上。650 個は,
時価が@¥115 に上昇。時価上昇を無視
計算式
棚卸評価損:40 個×(¥90-¥72)=¥720
6.有形固定資産の減価償却は,次の要領で行う。
建物(取得価額\4,000,000)
:耐用年数は 30 年,残存価額は取得原価の 10%として,定額法
142
により計算する。
備品(取得価額\1,000,000):償却率は年 20%として,定率法により計算する。減価償却累
計額 341,600。
なお,建物のうち\1,000,000 は当期の 12 月1日に購入したものであり,他の建物と同-の
要領により月割りで減価償却を行う。
借方
金額
貸方
金額
建物の減価償却方法:定額法
建 物 は , 当 期 に 入 手 し た も の \3,000,000 と 従 来 か ら 引 き 続 い て 使 用 し て き た も の
\1,000,000→別々に償却費の計算
前期からの建物(取得価額\3,000,000-残存価額\300,000)÷耐用年数 30 年=\90,000
当期取得の建物\1,000,000 について,月割り計算
(\1,000,000-100,000)÷30 年×(4ヵ月÷12 ヵ月)(12 月から3月まで)=\10,000
ゆえに,建物減価償却費合計額:\90,000 +\10,000 =\100,000
備品は定率法。計算式に当てはめて,
備品:(\700,000-\341,600)×0.2=\71,680。 この2つが減価償却費
7.繰延資産として計上している株式交付費(\9,000)は,前期の期首に増資したさいに生じ
たものである。増資後3年間にわたり定額法により償却する。
借方
金額
143
貸方
金額
株式交付費\9,000 は3年間の均等償却
前期首の増資に際して発生
ゆえに,1 年分は償却済。残額\6,000 は,2年分。ゆえに,
当期期首の株式交付費残高:\6,000 ÷2年=\3,000
8.支払保険料¥8,280 は,当期の9月1日に向こう1年分(12 か月分)の保険料を一括
して支払ったものである。
借方
金額
貸方
金額
9月1日に 12 ヵ月分の保険料¥8,280 を支払済
当店は3月末が決算期。来期分(4月から8月までの5ヵ月分)つまり\8,280×5ヵ月
÷12 ヵ月=\3,450 が費用の前払い分。
9.支払利息は借入金の利息であるが,当期分の未計上額が\880 ある。
借方
金額
貸方
金額
問題文は,\880 の未払いがあるとしか記載されていない。ゆえに,上の仕訳となる。
144
145
本章で学習する目標
帳簿の締め切り法(英米式と大陸式)
株式会社の帳簿記入の学習をする。帳簿記入の手順は、下記のとおりである。
手順の説明
1) 決算整理前残高試算表:日々の取引を仕訳し元帳に記入した勘定,とくに総勘定元帳の
各勘定口座の残高をまとめた表
2) 1 年の終わり:決算。株式会社で記帳している帳簿記入の結果が会社の経済的実態を表
示していない場合,経済的実態を表しているように決算時点で帳簿記入に修正を加える(決
算整理事項)
。
決算整理事項の例:
 銀行勘定調整表の作成過程で発見した事項
 貸倒の見積もり
 売買目的有価証券の期末評価
 満期保有目的債券の期末評価
 棚卸減耗費と棚卸評価損を含む場合の売上原価の計算
 減価償却(定率法と生産高比例法)
 繰延資産の償却(創立費償却・株式交付費償却など)
 引当金の計上
 費用・収益の見越し・繰延べ
これらの事項について決算整理仕訳をして,日々の帳簿記入の結果を修正。修正した
結果をまとめたのが決算整理後残高試算表
3)素早く 1 年の経営活動の結果を知りたいため,ワークシートを使用して帳簿外で損益
146
計算書や貸借対照表を作成(精算表)
4)この 14 章では,決算の次の段階である帳簿の締め切りを学習。帳簿には日々の取引を
仕訳する仕訳帳と転記をする総勘定元帳がある。帳簿の締め切りとは,帳簿への記入を打
ち切ること
5)財務諸表,貸借対照表や損益計算書の作成(次の章で学習)
。
決算に際して登場する3つの仕訳
・決算整理仕訳:決算整理事項についての仕訳
・決算振替仕訳:ある勘定の残高を別の勘定へ移し替える仕訳
・再振替仕訳:翌年期首に経過勘定についてする仕訳
2つの帳簿締切法は,収益勘定と費用勘定の締切方法が同じです。
3級の簿記:個人商店の簿記:当期純利益は店主のもの
2級の簿記:株式会社の簿記:当期純利益は会社のもの
個人商店か株式会社の帳簿記入かにより,仕訳に差が表れる。
締切手順
●損益勘定を新設
●収益・費用勘定の残高について決算振替仕訳を行い,各残高を損益勘定に振り替え
●振り替えられた損益勘定の差額で当期純利益を算定,決算振替仕訳を行い,繰越利益剰
余金勘定(資本)に振り替え
●収益・費用の諸勘定の締め切り
A社の決算整理をした後の各勘定の残高(一部)は次のとおりである。帳簿を締め
切りなさい。
147
締切りの手順に従って,最初に損益勘定を新設。
総勘定元帳に,収益勘定や費用勘定がばらばらに配置されていると,当期純利益の計算
が厄介,新設した損益勘定に収益や費用の残高を集める。
収益勘定の残高¥100 を損益勘定に振り替え
決算振替仕訳:
売上勘定と損益勘定に¥100 を転記
費用勘定の残高を損益勘定に振り替え
決算振替仕訳:
148
費用勘定と損益勘定へ¥30 と¥10 を転記
損益勘定には収益と費用が集まる。当期純利益¥60 と計算し,株式会社の場合,¥60 を
繰越利益剰余金勘定に振り替え
決算振替仕訳:
損益勘定と繰越利益剰余金へ転記
それぞれ,売上勘定,仕入勘定,減価償却費勘定,借方と貸方の合計額を計算し,合計
線と締め切り線を記入して,元帳を締め切り。損益勘定についても同じ締切りの作業を繰
り返す。
記入結果
英米式も大陸式もここまでは同じ。次からの
の帳簿締め
切りでの作業が異なる。
英米式の資産勘定,負債勘定,資本勘定の帳簿の締め切りは,仕訳をせずに元帳に直接
記入して締め切る。
149
英米式
① 資産・負債・資本勘定を締め切り。具体的には残高が生じる反対の側に「次期繰越」と
朱記し,貸借を一致させて,各勘定を締め切り。
② 次期繰越の記入が正しく記帳されたか調べるために,繰越試算表を作成。
③ 次期期首に「前期繰越」と記入(開始記入)
。
資産勘定,負債勘定,資本勘定の残高を計算
現金勘定について,赤字で摘要欄に次期繰越,残高¥400 を記入。そして,合計額¥500
を記入し,合計線と締切線を記入。そして、次期繰越は、前期からの繰越。
買掛金¥150,資本金¥300,繰越利益剰余金¥80 へと同じ作業を進める。
150
① 左の繰越利益剰余金勘定は決算整理前の勘定,右の繰越利益剰余金勘定は決算整理
後の勘定
② 前期繰越の¥70 は期首の 4 月 1 日の残高である。その後,期中に株主総会が開催
され,前期の当期純利益を処分。利益準備金¥20 と株主配当金¥30 に表れている。
③ 右の繰越利益剰余金勘定の損益¥60 は,当期 3 月 31 日で算定された当期純利益。
繰越試算表の作成
次期繰越の金額は,当期の各勘定の残高を次期に残高として繰り越すという意味。帳簿
に直接残高を記入するから,金額を間違えることもある。そのために,繰越試算表なる試
算表を作成。繰越試算表は,元帳の次期繰越の金額を一覧表にして作成する。作成の方法
は,繰越試算表の中央には勘定科目,借方と貸方には残高を記入。
繰越試算表の合計金額は,貸借一致していない。その理由は、問題文で勘定が一部分で
と指示されているように,すべての勘定科目が表示されていないため。しかし,合計金額
は必ず一致。
151
資産勘定,負債勘定,資本勘定の大陸式による帳簿の締め切りは,決算振替仕訳をして
元帳を締め切り。
大陸式の帳簿締め切りの手順
●決算残高勘定を新設
●決算振替仕訳を行い,資産・負債・資本勘定の残高を決算残高勘定に振り替え
●開始仕訳を行い,開始記入
英米式と比較すると,大陸式の帳簿の締め切り特徴は,仕訳をして帳簿を締め切ること
にある。
A株式会社の資産・負債・資本勘定を大陸式で締め切りなさい。
決算残高勘定を新設
現金勘定の残高¥530,買掛金勘定の残高¥150,資本金勘定の残高¥300, 繰越利益剰余金
の残高¥80 を決算残高勘定に振り替え
決算振替仕訳:
現金勘定と決算残高勘定へ転記
決算振替仕訳:
152
買掛金勘定,資本金勘定,繰越利益剰余金勘定,決算残高勘定へ決算振替仕訳を転記。
合計金額,合計線,締め切り線を記入し,当期の帳簿締め切りを終了。
次に,開始仕訳
開始仕訳:
開始仕訳:
これで,大陸式による株式会社の帳簿の締め切りは終了
153
まとめ:株式会社における大陸式の帳簿締め切り
●損益勘定を新設
●決算振替仕訳を行い,収益・費用勘定の残高を損益勘定に振り替え
●損益勘定の差額で当期純利益を算定し,決算振替仕訳を行い,当期純利益を繰越利益剰
余金勘定(資本)に振り替え
●収益・費用勘定そして損益勘定を締め切り
●決算残高勘定を新設
●決算振替仕訳を行い,資産・負債・資本勘定の残高を決算残高勘定に振り替え
●資産・負債・資本勘定,そして決算残高勘定を締め切り
●開始仕訳(開始記入)
30 回分を簿記検定試験の問題を調査。しかし帳簿の締切りは未出題
154
本章の学習目標
財務諸表の作成方法の学習
2級の商業簿記では,9 章から株式会社の簿記を対象にして、学習している。
株式会社で財務諸表が必要になるのは,2つの場合である。
株式会社では 1 年に 1 回株主総会を開催して,会社があげた利益を会社の基本の出資者
である株主たちに分配する。会社の経営実態がどうなっているか財務諸表で報告し決算書
類に株主の承認を得る。
また,法人税を納付する場合には,損益計算書の損益額が納税額の計算の基礎データに
なる。
作成する財務諸表は,株式会社の規模により異なる。2級の商業簿記は中小規模の株式
会社を対象にする。作成する財務諸表は,株式会社が自分勝手な形式で作成するものでは
ない。社会が認めた一定のルールに基づいて,わかりやすく作成し,関係者に提供しなけ
ればならない。
本章では,損益計算書と貸借対照表について,作成と表示のルールを学習する。
最初に,損益計算書から始める。損益計算書の様式には,勘定式と報告式の損益計算書
がある。
かしかた
かりかた
勘定式とは,紙面を左右に二区分して複式簿記の原理に従い,貸方に収益項目,借方側
に費用項目を記載する方式である。
しかし,一般の人たちは複式簿記を知らないため,一般の人に知ってもらうために報告
式が採用される。報告式の損益計算書は,3 つの区分,営業損益,経常損益,純損益の 3 つ
の部分から成り立っている。報告式の損益計算書の概要を説明する。
155
しゅ
商業簿記の対象とするのは,商品を売買する会社である。商品の売買が会社の主たる活
動である。
まず、売上高を示し,売上高に対応する売上原価を対応させ,差額として,売上総利益
を表示する。売上総利益から,販売費及び一般管理費を差し引いて,営業利益を表示する。
この営業利益は,会社の本業の利益を示す。この部分は,営業損益の部と呼ばれる。
次に,営業活動に付随する金融活動から生じる営業外収益と営業外費用を表示する。金
融活動によって生じる収益とか費用は,受取利息とか支払利息を考えればよい。加算・減
算した結果,経常利益を表示する。経常とは臨時に対応する用語で,反復的に生じるとい
う意味である。そのような性格を有する収益や費用を表示する。当期の業績の良否が判断
され、経常損益の部と呼ばれる。
最後に,臨時的な損益の項目や過年度の修正項目つまり特別利益や特別損失を表示し,
税引前当期純利益を表示し,法人税等を控除して当期純利益を表示する。純損益の部と呼
ばれる。
156
損益計算書
自平成23年4月1日 至平成24年3月31日
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
売上高
売上原価
1 期首商品棚卸高
2 当期仕入高
合 計
3 期末商品棚卸高
1,090,000
51,000
650,000
701,000
60,000
641,000
600
1,980
4 棚卸減耗費
5 棚卸評価損
売上総利益
販売費及び一般管理費
1 給料
2 退職給付引当金繰入
3 貸倒引当金繰入
4 減価償却費
5 支払保険料
営業利益
営業外収益
1 受取利息
営業外費用
1 有価証券評価損
2 支払利息
経常利益
特別損失
1 固定資産売却損
税引前当期純利益
法人税等
当期純利益
295,150
15,000
750
126,000
3,600
1,400
3,000
800
643,580
446,420
440,500
5,920
1,400
3,800
3,520
150
3,370
1,685
1,685
もう少し,報告式の損益計算書の細部を説明する。
商企業の場合,売上げた商品の売上原価が分るように表示する。期首商品棚卸高¥51,000
を記載し,次に当期仕入高¥650,000 を表示し,それから期末商品棚卸高を引いて売上原価
を計算する。上の表には,棚卸減耗費や棚卸評価損が表示されている。これは売上原価の
内訳科目として表示する場合の表示方法である。棚卸減耗費¥600 や棚卸評価損¥1,980 の
金額は加算する。そして,売上高¥1,090,000 から売上原価¥643,580 を減算して,売上総利
益¥446,420 を計算する。
次が,販売費及び一般管理費である。商品の販売や代金の回収,経営管理活動によって
生じる費用項目を表示する。計上する勘定科目は,1つ1つ,コツコツ覚える。売上総利
157
益¥446,420 から販売費及び一般管理費¥440,500 を引き算して、営業利益¥5,920 を表示す
る。営業利益は,本来の営業活動から生まれた利益である。本業の利益とも言う。
この箇所には,金融活動によって生じた収益や費用項目を表示する。これが営業外収益
や営業外費用といわれるものである。これも,1つ1つ,勘定科目は,コツコツ覚える。
営業利益¥5,920 から営業外収益¥1,400 と営業外費用¥3,800 加算・減算して,経常利益
¥3,520 を計算する。経常利益は,当期の業績を示す利益である。
会社には,当期の業績を示さない前期や臨時的な収益項目や費用も生じることがある。
これらを特別利益や特別損失という。これら勘定科目もコツコツ暗記する。固定資産売却
損¥150 は,特別損失である。経常利益¥3,520 から特別利益や特別損失を加算・減算して
税引前当期純利益¥3,370 を表示し,
法人税等¥1,685 を計算・控除して,
当期純利益¥1,685
を表示する。
表示過程は,全体,そして細部について解説したので、理解できたはずである。
貸借対照表の説明に移る。勘定式と報告式が貸借対照表の様式にもある。勘定式の貸借
対照表は,複式簿記の原理に従い,資産は借方,負債と純資産は貸方側に対照表示する。
報告式の貸借対照表は,2 級の簿記検定試験では出題されないから省く。
資産側は,上から順番に流動資産,固定資産,繰延資産,貸方側は,上から順番に流動
負債,固定負債,純資産を配列する。流動,固定とは何か。
貸借対照表の貸方が株式会社の資金の調達源泉,借方が資金の運用形態である。ゆえに,
資産と負債を流動項目とか固定項目に分けるのは,資金の調達源泉と資金の運用形態の2
つの関係をより明確に表示するためである。
資産と負債を流動と固定に分けるには,2つの基準がある。
営業循環基準:営業循環基準が原則である。商品売買の場合,商品を仕入れて商品を販
売して代金を回収する。この営業循環サイクルに入る資産・負債を流動資産あるいは流動
負債とする。現金預金,受取手形,売掛金,商品を流動資産,支払手形と買掛金を流動負
債とするのは,営業循環基準を適用しているためである。
158
きさん
1 年基準:営業循環サイクルに入らない項目については,決算日から起算して,1 年以内
に履行期が到来する資産・負債は流動項目,1 年を超える履行期については,資産・負債は
り こ う き
固定項目とする基準である。履行期というのは,難しい用語かもしれない。たとえば,長
期借入金が固定負債に入るのは 1 年基準を適用したためである。
長期借入金の支払期日は,
決算日の翌日から 1 年以上後に,返済の期日が到来する。
もう少し,勘定式の貸借対照表の様式の細部を説明する。
平成24年3月31日
資産の部
流動資産
現金預金
受取手形
売掛金
計
貸倒引当金
有価証券
商 品
前払費用
流動資産合計
固定資産
建物
Ⅰ
1
2
3
4
5
6
Ⅱ
1
Ⅰ
34,900
28,000
44,500
72,500
1,450
1,000,000
420,000
2 備品
600,000
備品減価償却累計額
216,000
固定資産合計
建物減価償却累計額
資産合計
1
2
3
4
71,050
118,000 Ⅱ
57,420
1
3,600
2
284,970
580,000 Ⅰ
Ⅱ
384,000
1
964,000 Ⅲ
1
2
3
12,448,970
負債の部
流動負債
支払手形
買掛金
未払利息
未払法人税等
流動負債合計
固定負債
長期借入金
退職給付引当金
固定負債合計
負債合計
純資産の部
資本金
資本剰余金
資本準備金
利益準備金
利益準備金
62,000
配当平均積立金
57,000
繰越利益剰余金
14,485
純資産合計
負債及び純資産合計
22,000
37,000
800
1,685
61,485
200,000
114,000
314,000
375,485
700,000
40,000
133,485
873,485
12,448,970
全体を見てみると,流動と固定の順番に資産と負債が配列されている。流動性配列法と
いう。
① 有価証券:仕訳では,売買目的有価証券という勘定科目を使用した。しかし,貸借対
照表の表示では,売買目的有価証券でなく有価証券という勘定科目を使用する。
② 商品:仕訳では,繰越商品という勘定科目を使用した。しかし,貸借対照表の表示で
は,商品という勘定科目を使用する。
③ 貸倒引当金や減価償却累計額は,対象になった勘定科目から引き算するという形式で
表示する。
つまり貸倒引当金の記載方式には,2つある。
1)受取手形や売掛金の勘定科目ごとに債権額から貸倒引当金を控除する方法
2)受取手形や売掛金の勘定科目別ごとに区分表示せず,売上債権額の全体から貸
倒引当金を控除する方法
159
減価償却累計額も同じである。
前払費用や未払費用も流動資産や流動負債に表示されている。しかし,1 年基準を適用し
て固定資産や固定負債に表示されることもある。たとえば,3 年分を前払いしたような事例
である。
もう一度,画面に財務諸表の作成のプロセスを表示させる。
まず,決算整理前残高試算表を作成し,決算整理仕訳をし,決算整理後残高試算表を 2
区分して,財務諸表を作成する。2 つ問題をとく。1つは過去問レベル以下,もうひとつは
過去問である。
次の決算整理前残高試算表,決算整理事項をもとに損益計算書と貸借対照表を作成しな
さい。ただし,決算日は,平成 24 年3月 31 日とする。
160
決算修正前残高試算表
借方
34,900
28,000
45,000
121,000
51,000
1,000,000
600,000
650,000
295,150
7,200
150
2,832,400
勘定科目
現金預金
受取手形
売掛金
売買目的有価証券
繰越商品
建 物
備 品
支払手形
買掛金
長期借入金
退職給付引当金
貸倒引当金
建物減価償却累計額
備品減価償却累計額
資本金
資本準備金
利益準備金
配当平均積立金
繰越利益剰余金
売 上
受取利息
仕 入
給 料
支払保険料
固定資産売却損
貸方
22,000
37,000
200,000
99,000
1,200
390,000
120,000
700,000
40,000
62,000
57,000
12,800
1,090,000
1,400
2,832,400
決算整理事項
(1)決算にあたって調査したところ,得意先が倒産していたため売掛金¥500 は回収不能
であることが判明した。なお,回収不能となった売掛金は前期から繰り越されたものであ
る。
(2)受取手形と売掛金の期末残高に対して2%の貸倒れを見積もる。なお,貸倒引当金の
設定は,差額補充法によって行う。
(3)売買目的有価証券について評価替を行う。決算日における有価証券の時価は,
¥118,000 である。
(4)商品の期末棚卸高は,次のとおりである。
数量
単価
帳簿棚卸高 1,000 個
@¥60
実地棚卸高
@¥58
990 個
なお,棚卸減耗費と商品評価損は売上原価の内訳科目として表示する。
(5)建物と備品について次の要領で減価償却を行う。
建物:耐用年数は 30 年,残存価額は取得原価の 10%として定額法で減価償却を行う。
備品:償却率は,年 20%として定率法で減価償却を行う。
(6)退職給付引当金は,¥15,000 を計上する。
(7)支払保険料¥7,200 は,平成×23 年 10 月 1 日に向こう 1 年分の保険料を支払ったも
161
のである。
(8)長期借入金の利息¥800 の支払期日が到来していないため,未払いとなっている。
(9)税引前当期純利益の 50%に相当する金額を法人税等として計上する。
162
例題では,決算整理前残高試算表があり,決算整理事項があり,財務諸表を作成する。
皆さんは,例題を解答する方針を決める。
財務諸表の作成問題をいくつか解いてみたら,決算整理後残高試算表の作成を省略して
かまわない。
借方
金額
貸方
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
163
金額
決算整理仕訳をする。
(1)決算にあたって調査したところ,得意先が倒産していたため売掛金¥500 は回収不能
であることが判明した。貸倒引当金¥1,200 があり,回収不能となった売掛金は前期から繰
り越されたものである。
決算整理仕訳は,
解説
決算整理前残高試算表には,貸倒引当金¥1,200 がある。決算整理事項から,前期部分の
売掛金¥500 が回収不能になっている(注意)
。
(2)受取手形と売掛金の期末残高に対して2%の貸倒れを見積もる。なお,貸倒引当金の
設定は,差額補充法によって行う。
決算整理仕訳は,
解説
(1)の仕訳の結果,売掛金残高は¥45,000 から¥44,500,貸倒引当金は¥1,200 から¥700
になっている。受取手形は\28,000,差額補充法で2%の貸倒を見積もるということであるか
ら,計算式は、次のようになる。
(¥28,000+¥44,500)×0.02-¥700=¥750
(3)売買目的有価証券について評価替を行う。決算日における有価証券の時価は,
¥118,000 である。
決算整理仕訳は,
解説
決算整理前残高試算表には,売買目的有価証券¥121,000 がある。値下がりした。時価が
¥118,000 になっている。ゆえに、上のように¥3,000 の有価証券評価損を計上する。
(4)商品の期末棚卸高は,次のとおりである。
数量
帳簿棚卸高 1,000 個
単価
@¥60
164
実地棚卸高
990 個
@¥58
なお,棚卸減耗費と商品評価損は売上原価の内訳科目として表示する。
期首商品棚卸高は¥51,000
期首商品棚卸高の決算整理仕訳は,
期末商品棚卸高の決算整理仕訳は,
解説
ここが一番,この例題では,間違いやすい個所である。
期首商品棚卸高¥51,000 の仕訳は,3級で学習した仕訳と同じ。
期末商品棚卸高の仕訳が厄介。棚卸減耗と評価損が発生している。棚卸減耗費と評価損
は,問題文から売上原価の内訳科目として表示するように要求。紙の上にボックス法利用
して,棚卸減耗費¥600 と棚卸評価損¥1,980 を計算する。計算式は,
棚卸減耗費は,
(帳簿棚卸高の 1,000 個-実地棚卸高の 990 個)×¥60=¥600
棚卸評価損は,
(¥60-\58)×実地棚卸高の 990 個=¥1,980
(5)建物と備品について,次の要領で減価償却を行う。
建物(取得原価¥1,000,000):耐用年数は 30 年,残存価額は取得原価の 10%として定額
法で減価償却を行う。
備品(取得原価¥600,000 減価償却累計額¥120,000):償却率は,年 20%として定率法で
減価償却を行う。
決算整理仕訳は,
解説
減価償却費の計算 ha,
難しくない。減価償却については,建物は,問題文から定額法,備品は定率法である。
決算 整理前残 高試算表から ,計算に 必要なデータ を拾い出 す。建物の取 得原価 は
¥1,000,000,残りのデータは決算整理事項で与えられている。残存価額は取得原価の 10%,
165
耐用年数は 30 年である。
減価償却費の計算式は,
建物:
(取得原価の¥1,000,000-残存価額の¥100,000)÷耐用年数の 30 年=¥30,000
備品は¥600,000,減価償却累計額が¥120,000,償却方法は定率法,償却率は,年 20%である。
減価償却費の計算式は,
備品:
(取得原価の¥600,000-減価償却累計額の¥120,000)×償却率の 0.2=¥96,000
次に,(6)から(8)の決算整理事項対して決算整理仕訳をする。易しいので解説はしない。
決算整理事項(6)は,退職給付引当金¥15,000 を計上する。
決算整理仕訳は,
(7)支払保険料¥7,200 は,平成×23 年 10 月 1 日に向こう 1 年分の保険料を支払ったも
のである。決算日は平成×24 年3月 31 日である。
決算整理仕訳は
(8)長期借入金の利息¥800 の支払期日が到来していないため,未払いとなっている。
決算整理仕訳は
となる。
(9)の仕訳は後でする。
決算整理事項の仕訳が終了。
166
決算整理後残高試算表
借方
34,900
28,000
44,500
118,000
57,420
1,000,000
600,000
3,600
641,000
295,150
3,600
150
750
3,000
600
1,980
126,000
15,000
800
2,974,450
勘定科目
現金預金
受取手形
売掛金
売買目的有価証券
繰越商品
建 物
備 品
前払保険料
支払手形
買掛金
長期借入金
退職給付引当金
貸倒引当金
建物減価償却累計額
備品減価償却累計額
未払利息
資本金
資本準備金
利益準備金
配当平均積立金
繰越利益剰余金
売 上
受取利息
仕 入
給 料
支払保険料
固定資産売却損
貸倒引当金繰入
有価証券評価損
棚卸減耗費
棚卸評価損
減価償却費
退職給付引当金繰入
支払利息
貸方
22,000
37,000
200,000
114,000
1,450
420,000
216,000
800
700,000
40,000
62,000
57,000
12,800
1,090,000
1,400
2,974,450
決算整理前残高試算表に決算整理仕訳の結果を記入して,決算整理後残高試算表を作成
する。上の決算整理後残高試算表の上のイエロー部分,下のピンク部分をもとに,貸借対
照表と損益計算書を作成する。
当期の売上高¥1,090,000 を損益計算書に移動させる。
次に売上原価を表示する。売上原価の表示が一番厄介。期首商品棚卸高¥51,000 と当期
仕入高¥650,000 は,決算整理前残高試算表に表示されている。
表示されている決算整理後残高試算表を使用してはならない。期末商品棚卸高は決算整
理事項から¥60,000,そして決算整理後残高試算表から棚卸減耗費¥600 と棚卸評価損
¥1,980 を移動させる。売上原価の内訳科目として表示する。加算する。売上原価¥643,580
が計算された。売上高から売上原価を引き算して売上総利益¥446,420 を計算し表示する。
販売費及び一般管理費に属する勘定科目と金額を損益計算書に移動させる。販売費及び
一般管理費の合計額は¥440,500 となる。そして,売上総利益¥446,420 から引き算して営
167
業利益¥5,920 を計算する。営業損益計算の部である。
営業外収益と営業外費用を損益計算書に移動させる。営業利益¥5,920 に営業外収益と営
業外費用を加算・減算させて,経常利益が¥3,520 を表示させる。経常損益計算の部である。
つぎに,純損益計算の部を表示する。特別損失である固定資産売却損¥150 を移動させる。
固定資産売却損が発生したのは,過去の減価償却計算が間違っていたため。税引前当期純
利益¥3,370 が計算された。
税引前当期純利益が計算できたら,(9)の決算整理仕訳をする。
決算整理事項は,(9)税引前当期純利益の 50%に相当する金額を法人税等として計上する。
税引前当期純利益が¥3,370 となる。
ゆえに,
法人税等の納付税額¥1,685 を計算できる。
決算整理仕訳は
法人税等の表示には,法人税等の仕訳の金額を使用する。未払法人税等¥1,685 は貸借対
照表の作成に使用するからメモ書き。当期純利益¥1,685 を記入して,損益計算書を完成さ
せることができた。
168
貸借対照表の作成に移行。
貸借対照表の表示に際して,注意すべき点
○流動性配列法を使用して,資産と負債は流動と固定に分けて,流動資産,固定資産,
繰延資産,そして流動負債,固定負債,純資産と順に配列する。例題では繰延資産はない。
○売買目的有価証券と繰越商品は,勘定科目の名称を有価証券と商品に変更して貸借対
照表を作成する。
○貸倒引当金と建物減価償却累計額と備品減価償却累計額は、控除方式で表示する。
○決算整理後残高試算表から勘定科目の名称を変更して,売買目的有価証券¥118,000 と
繰越商品¥57,420 の金額を移し替える。
○貸倒引当金¥1,450 と貸倒の見積もりの設定対象になった受取手形の金額¥28,000 と
売掛金の金額¥44,500 を移し替える。
○建物・備品と各減価償却累計額,すなわち建物減価償却累計額¥420,000 と備品減価償
却累計額¥384,000 の金額を移し替える。
残りの金額を移し替える。
○流動資産に属する勘定科目の金額を移し替える。現金預金¥34,900,前払費用¥3,600
がある。借方側に金額を移動させます。
合計金額を記入し,貸借対照表の借方側を完成させる。
○流動負債と固定負債の勘定科目の金額を移し替え る。支払手形¥22,000,買掛金
¥37,000,未払利息¥800 がある。固定負債については,長期借入金¥200,000 と退職給付
引当金¥114,000 がある。
○純資産の部に属する勘定科目の金額を移し替える。資本金¥700,000 から繰越利益剰余
金 12,800 がある。そのままの金額で移動させる。合計額を計算して,金額をスライドさせ
る。
○未払法人税等¥1,685 は注意。
○空白になっている合計額を記入します。負債と純資産の貸借対照表の貸方側を完成さ
せる。
結果として,下のような貸借対照表が作成できたと思う。
169
――――――――――――――――――――――――
財務諸表作成問題は検定試験でよく出題されるか。財務諸表作成問題は5回に1回,つ
まり 20%弱の出題頻度である。しかも,損益計算書の作成問題がほとんどである。練習問
題は,過去の試験問題である。先の例題と練習問題を解ければ,財務諸表作成問題の理解
は十分。
次の決算整理前残高試算表,決算時に発見した事項および決算整理事項にもとづいて,
損益計算書を完成しなさい。なお,会計期間は平成 23 年 4 月1日から平成 24 年3月 31 日
までの1年である。
決算整理前残高試算表
170
平成24年3月31日
決算時に発見した事項
決算にあたって調査したところ,次の事実が判明したため,適切な処理を行う。
1.前受金は予約販売受付時に代金の全額を受け取ったもので,当期中に予約品の一部が
入荷し(この入荷の取引は記,帳済み),これを予約客に¥160,000 で売り渡していた。しか
し,この売上の記帳が行われていなかった。
2.決算にあたって不用となった備品(取得原価:¥200,000,平成 19 年 4 月 1 日取得,減
価償却方法は他の備品と同じ方法による)を除却する。この備品の処分価値は,¥50,000
である。
3.過年度に貸倒れとして処理していた川崎商店に対する売掛金の一部¥60,000 を小切手
で回収していた。しかし,この記帳が行われていなかった。
決算整理事項
1.売上債権の期末残高に対して3%の貸倒引当金を差額補充(調整)法によって計上する。
2.期末商品棚卸高は,次のとおりである。
171
帳簿棚卸高数量 380 個 原価@¥950
実地棚卸高数量 360 個うち 290 個の時価@¥960,70 個時価@¥890
なお,棚卸減耗費および商品評価損については,売上原価の内訳科目として処理する。
3.売買目的有価証券の内訳は,次のとおりである。決算にあたって,時価法により評価
替えをする。
帳簿価額
時価
A社株式 ¥182,560 ¥228,230
B社株式 ¥397,440 ¥477,210
C社社債 ¥321,000 ¥319,000
4.固定資産の減価償却を以下のとおり行う。
建物: 定額法:耐用年数 30 年 残存価額:取得原価の 10%
備品: 定率法:償却率 20%
5.社債(額面総額:¥1,500,000,期間:5年,利率:年 5.4%,利払日: 5月と 11 月の末日
の年2回)は,平成 22 年 12 月1日に額面¥100 につき¥97.50 で発行したものである。償
却原価法(定額法)を適用して評価替えを行うとともに,社債利息の未払分を計上する。
また,社債発行費は,この社債を発行したさいに計上したもので,繰延資産として処理し
ている。社債償却期間にわたって定額法により償却する。
6.のれんは平成 21 年4月1日に徳島商事を買収したさいに生じたもので,10 年間にわた
って毎期均等額を償却している。
7.保険料については毎年同額を7月1日に支払っている。
8.消耗品の未消費分は¥18,000 である。
9.短期貸付金は 11 月1日に利率年 6.6%,貸付期間 10 か月で貸し付けたものである。当
期分の利息を計上する。
10.税引前当期純利益の 40%を法人税,住民税及び事業税に計上する。
172
決算時に発見した事項
借方
金額
貸方
1
2
3
173
金額
決算整理事項
借方
金額
貸方
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
174
金額
解説
問題文を理解したはずですから,決算時に発見した事項について,正しい決算整理仕訳
をする。
決算時に発見した事項
決算にあたって調査したところ,次の事実が判明したため,適切な処理を行う。本問では
3つある。
1.前受金は予約販売受付時に代金の全額を受け取ったものである。当期中に予約品の一
部が入荷し(この入荷の取引は記帳済み),これを予約客に¥160,000 で売り渡していた。
しかし,この売上の記帳が行われていなかった。
決算整理仕訳
解説
決算整理前残高試算表には,前受金¥500,000 がある。このうち,¥160,000 は売り渡し
ていた。でも未記入。
2.決算にあたって不用となった備品(取得原価:¥200,000,平成 19 年4月1日取得,減
価償却方法は他の備品と同じ方法による)を除却する。この備品の処分価値は,
¥50,000 である。決算年度は平成 23 年度であり,備品は 定率法,償却率 20%である。
備品の除却時の仕訳
175
解説
決算は 1 年決算で,19 年度,20 年度,21 年度,22 年度に定率法で備品に対して減価償
却している。減価償却費の計算式
平成 19 年度:¥200,000×20%=¥40,000
平成 20 年度:(¥200,000-¥40,000) ×20%=¥32,000
平成 21 年度:(¥200,000-¥40,000-¥32,000) ×20%=¥25,600
平成 22 年度:(¥200,000-¥40,000-¥32,000-¥25,600) ×20%=20,480
ゆえに,23 年 3 月 31 日の備品の減価償却累計額は
¥40,000+¥32,000+¥25,600+¥20,480=¥118,080
本問では,平成 23 年度が会計期間。平成 23 年度も備品は 1 年間使用している。ゆえに,
平成 23 年度の減価償却費を計算する。
平成 23 年度:(¥200,000-¥40,000-¥32,000-¥25,600-¥20,480) ×20%=¥16,384
じょきゃく
かんじょう
この備品の処分価値¥50,000 は,除 却 である。貯蔵品勘 定 で仕訳する。減価償却累計額
が¥118,080,平成 23 年度の減価償却費は¥16,384,貯蔵品は¥50,000 である。差額が固
定資産売却損¥15,536 となる。
固定資産の除却は,簿記検定試験第 1 問の仕訳問題でも出題される。
3.過年度に貸倒れとして処理していた川崎商店に対する売掛金の一部¥60,000 を小切手
で回収していた。しかし,この記帳が行われていなかった。
決算整理仕訳
解説
当期に貸し倒れた売掛金¥60,000 は,過年度に貸倒れ処理していた。
つぎに,決算整理事項に対して決算整理仕訳をする。例題と大きく異なる点は,社債に
対する償却原価法の理解が求められている点にある。
売上債権の期末残高に対して3%の貸倒引当金を差額補充(調整)法によって計上する。
176
決算整理仕訳
解説
決算整理前残高試算表には,貸倒引当金¥21,000,受取手形¥213,000,売掛金¥287,000
もどしいれ
もどしいれ
がある。引当金の見積額は3%で,この問題では戻 入 になる。戻 入 は,マイナス貸倒引当金
である。
2.期末商品棚卸高は,次のとおりである。
帳簿棚卸高数量 380 個 原価@¥950
実地棚卸高数量 360 個うち 290 個の時価@¥960,70 個時価@¥890
なお,棚卸減耗費および商品評価損については,売上原価の内訳科目として処理する。
期首商品棚卸高¥321,000 である。
期首商品棚卸高の決算整理仕訳
期末商品棚卸高の決算整理仕訳
です。
期末商品棚卸高の一部分は時価が@¥960 に値上がり,一部分が@¥890 に値下がりであ
る。値下がり@¥890 の部分についてのみ,低価法を適用する。棚卸減耗費¥19,000 と棚
卸評価損¥4,200 を計算する。問題文では,これらは売上原価の内訳科目として処理するよ
うに要求されている。
3.売買目的有価証券の内訳は次のとおりである。決算にあたって時価法により評価替え
をする。すべて,売買目的で保有している。
帳簿価額
時価
A社株式 ¥182,560 ¥228,230
B社株式 ¥397,440 ¥477,210
C社社債 ¥321,000 ¥319,000
決算整理仕訳
177
解説
すべて,売買目的で保有していることに注意。C社社債に対しては,償却原価法を使用
しない。
4.固定資産の減価償却を以下のとおり行う。
建物: 定額法:取得原価¥2,800,000 耐用年数 30 年
残存価額:取得原価の 10%
備品: 定率法:取得原価¥900,000,内¥200,000 は 23 年度除却,償却率 20%
決算整理仕訳
解説
先に学習した決算時に発見した事項で,備品(¥200,000,備品減価償却累計額¥118,080)
が除却されている。注意。
減価償却費の計算
建物:(¥2,800,000-¥280,000)÷30 年=¥84,000
備品:
{(¥900,000-¥200,000) -(¥408,480-¥118,080)}×0.2=¥81,920
5.社債(額面総額:¥1,500,000,期間:5年,利率:年 5.4%,利払日: 5月と 11 月の末日
の年2回)は,平成 22 年 12 月1日に額面¥100 につき¥97.50 で発行したものである。償
却原価法(定額法)を適用して評価替えを行うとともに,社債利息の未払分を計上する。
また,社債発行費は,この社債を発行したさいに計上したものである。繰延資産として処
理しており,社債償却期間にわたって定額法により償却する。残高試算表の金額は
¥112,000。
決算整理仕訳
解説
長文は,図解する。3つの金額を計算する必要がある。
りくつ
社債に関する問題は,理屈で考える。残高試算表の社債は¥1,465,000 になっている。平
成 22 年度に償却原価法を適用した結果である。平成 22 年 12 月1日社債を発行した時点で
は,社債は 15,000 口×¥97.50=¥1,462,500。4 か月分,償却原価法を適用した結果,
ぞうか
¥1,465,000 になっている。
社債に 1 年分の償却原価法を適用すると,
¥7,500 の社債の増価
178
となる。
未払利息は,12 月から3月までの4カ月分である。正確に未払分¥27,000 を計算する。
繰延資産としての社債発行費は,4か月分償却した結果,平成 22 年度に¥112,000 になっ
ている,社債は期間が5年で、あと4年8カ月償却する必要がある。平成 23 年度に1年分
¥24,000 を繰延資産償却する。
6.のれんは,平成 21 年4月1日に徳島商事を買収したさいに生じたもので,10 年間にわ
たって毎期均等額を償却している。
決算整理仕訳
解説
決算整理前残高試算表の「のれん」勘定は,¥336,000 である。¥336,000 は2年分のれ
んを償却した結果である。あと8年残っている。ゆえに,1年分ののれん償却額は,¥42,000
となる。
保険料については、毎年同額を7月1日に支払っている。
決算整理仕訳
解説
短文だが,間違えやすい。決算整理前残高試算表の保険料は¥168,000 である。問題文の
毎年同額の保険料支払いの意味を解釈する。この¥168,000 には,期首に3カ月分を再振替
仕訳をし,7 月 1 日に 12 か月分を支払っている事実が含まれている。その結果,決算整理
前残高試算表の¥168,000 は 15 カ月分の保険料である。割り算すると 1 カ月分の保険料は
¥11,200 となり、決算時点で3か月分が前払いになっている。¥42,000 という金額を使用
して仕訳した皆さんがいるかもしれない。
8.消耗品の未消費分は、¥18,000 である。
決算整理仕訳
179
解説
決算整理前残高試算表の消耗品の金額は,¥92,500 である。会社はまず,購入時点で消
耗品¥92,500 は,全額を資産として計上し,期末に費消した部分を一括,消耗品費に計上
する。未消費分は¥18,000 である。出題の意図では,消耗品についての簡便法による仕訳
を理解しているかである。
9.短期貸付金(¥800,000)は 11 月1日に利率年 6.6%,貸付期間 10 か月で貸し付けたも
のである。当期分の未収利息を計上する。
決算整理仕訳
解説
5カ月分の未収部分の利息を計算する。
未収部分¥22,000 の計算
短期貸付金¥800,000×6.6%(年)÷12×5 か月
決算整理後残高試算表を作成する。この決算整理後残高試算表は,決算整理前残高試算
表に、決算にて発見した事項と決算整理事項に対する仕訳を合体させて,作成する。
決算整理後残高試算表から損益計算書の作成に必要なデータを抽出し、損益計算書を作
る。
180
平成24年3月31日
889,980
213,000
287,000
1,024,440
337,800
18,000
800,000
2,800,000
700,000
294,000
88,000
33,600
22,000
50,000
6,732,000
826,000
134,400
756,000
125,000
54,000
182,304
15,536
19,000
4,200
34,500
24,000
42,000
74,500
16,581,260
現金預金
受取手形
売掛金
売買目的有価証券
繰越商品
消耗品
短期貸付金
建 物
備 品
のれん
社債発行費
前払保険料
未収利息
支払手形
買掛金
前受金
貸倒引当金
建物減価償却累計額
備品減価償却累計額
貯蔵品
社 債
未払社債利息
資本金
利益準備金
繰越利益剰余金
売 上
有価証券利息
受取配当金
償却債権取立益
貸倒引当金戻入
有価証券評価益
受取利息
仕 入
給 料
保険料
支払地代
水道光熱費
社債利息
減価償却費
固定資産売却損
棚卸減耗費
棚卸評価損
社債利息
社債発行費償却
のれん償却
消耗品費
258,000
124,000
340,000
15,000
1,092,000
372,320
1,472,500
27,000
3,000,000
84,000
33,000
9,438,000
56,000
58,000
60,000
6,000
123,440
22,000
16,581,260
この損益計算書を作成することによって皆さんが使用できる勘定科目も飛躍的に増加す
る。
① 売上高¥9,438,000 を損益計算書に移し替える。
② 売上原価のデータを移します。期首商品棚卸高は決算整理前残高試算表の金額
¥321,000 を使う。仕入高は¥6,732,000 である。期末商品棚卸高は¥361,000 である。
これは,帳簿棚卸高数量 380 個×原価¥950 を使用する。棚卸減耗費¥19,000 と棚卸
181
評価損¥4,200 は売上原価の内訳科目として表示する。売上原価に加算する。売上原
価¥6,755,000 はスライドさせ,売上総利益¥2,682,800 を計算する。
③ 販売費及び一般管理費に属する費用科目,給料からのれん償却を移動させる。合計額
¥2,140,204 を記入し,営業利益¥542,596 を表示させる。
④ 営業外収益の収益項目を移動させる。受取利息,有価証券利息,受取配当金,有価証
券評価益が営業外収益である。¥259,440 を記入する。
⑤ 営業外費用の費用項目を移動させる。社債利息,社債発行費償却が営業外費用である。
¥112,500 スライドさせる。経常利益は,¥542,596 となる。
⑥ 特別利益に属する項目の金額を移動させる。償却債権取立益,貸倒引当金戻入が特別
利益である。
⑦ 特別損失に属する項目の金額を移動させる。固定資産売却損が特別損失である。税引
前当期純利益¥740,000 となる。
⑧ 法人税等が残った。決算整理事項 10 の仕訳をし,損益計算書が完成させる。
10.税引前当期純利益の 40%を法人税,住民税及び事業税に計上する。
182
決算整理仕訳は
183
本支店会計
本章で学習する目標

本支店会計とは,何か

本支店間の取引

本支店間の商品取引

内部利益の控除

本支店合併財務諸表の作成
本支店会計とは
さて,株式会社が 1 個所で経営活動していると,売上高を増やすにも限界が出る。そこ
で,別の場所に支店を設けると,支店の周りの地域の人たちが新規のお客になるから,売
上高が増える。このようにして,株式会社では,支店を設けて売上高を増やす。本支店会
計は,株式会社に限られるわけではない。しかし,本店 1 つ,支店 1 つのモデルを想定し
て,説明する。
さらに,本店が支店を設けた場合,支店の責任者に支店の経営の権限を与えた方が,株
式会社としては,より売上高が増える。帳簿も付けさせ,支店の責任者の業績評価もする。
パソコン画面を見る。
本店と支店は,外部の得意先や仕入先と取引をする。この取引を外部取引という。また,
本店と支店との間でも取引をする。この取引を内部取引という。
本支店間で取引をした場合,支店勘定や本店勘定を持ちいて,帳簿記入をする。
例題1 本店と支店間の取引について仕訳をしなさい。
1. 本店は,支店に現金¥20,000 を送り,支店は現金¥20,000 を受け取った。
2. 本店は,支店の買掛金¥100,000 を小切手を振り出して支払った。支店は,本店から
その旨の報告を受け取った。
3. 本店は,支店の従業員の出張旅費¥80,000 を現金で立て替え払いした。支店は,本店
から,この立て替え払いの通知を受け取った。
184
解答用紙
借方
金額
貸方
金額
1
2
3
正解
1.
2.
3.
解説
1.
取引の中身は,本店から支店への現金¥20,000 の送金である。本店では現金がなくなり,
支店では現金が増える。ゆえに,本店側では,貸方は現金¥20,000 の減少。支店側は,借
方は現金¥20,000 の増加となる。
かりかた
では,本店側の借方側の仕訳の勘定科目は,どうすべきか。支店という科目を使用し,
かしかた
金額は¥20,000。一方,支店側の貸方側の仕訳の勘定科目はどうすべきか。本店という科
目を使用し,金額は¥20,000 とする。本店側では,支店勘定,支店側では本店勘定を利用
して,仕訳する。
2.
2 の取引は,送金以外の取引である。本店は,支店の買掛金¥100,000 を小切手を振り出
かしかた
して支払っている。本店側の貸方勘定科目と金額は,本店の当座預金¥100,000 の減少。支
かりかた
店側の借方勘定科目と金額は,支店の買掛金¥100,000 の減少である。
185
かりかた
では,本店の借方側の仕訳の勘定科目は,どうすべきか。支店とし,金額は¥100,000 であ
る。本店勘定の金額は,¥100,000 となる。
3.
本店の現金¥80,000 がなくなり,支店では支店負担の出張旅費¥80,000 が発生する。ゆ
かりかた
かしかた
かしかた
えに,本店側では借方支店¥80,000,貸方は現金¥80,000。支店側では貸方本店¥80,000
かりかた
となる。借方は,支店の旅費¥80,000 とする。
本店に設けた支店勘定と,支店に設けた本店勘定の性格はどのように考えるべきか。
パソコン画面を見る。
たいしゃく
決算時点で,支店勘定の残高と本店勘定の残高は,貸 借 ,逆で一致する。
振替価格
本店が,支店に商品を送付する場合,一定の利益を加算して送る場合がある。この利益
を内部利益といい,送る際の価額を振替価格という。振替価格は業績評価のために,使用
する。
1. 本店は,商品(原価¥20,000)に利益 10%を加算して,支店に送り,支店はこの商品
を受け取った。
仕訳は,
です。
企業外部への売り上げや企業外部からの仕入と区別するために,本店側では,支店へ売
上勘定,支店側では,本店より仕入勘定を使用して仕訳をする。
皆さんと一緒に練習問題を解いてみる。
練習問題
① 次に示す取引の仕訳を本店と支店の立場から仕訳しなさい。
(1)本店は,支店の開設に際し,現金¥8,000 を送付し,支店はこれを受け取った。
186
(2)支店は,本店の売掛金¥6,000 を現金で回収し,本店はこの連絡を受けた。
(3)本店は,支店の買掛金¥7,000 を現金で立替払いし,支店はこの連絡を受け取った。
(4)支店は,本店の営業費¥2,000 を現金で支払い,本店はこの連絡を受けた。
(5)本店は,仕入れた商品¥10,000 に 10%の利益を加算して,支店へ送った。そして,支
店はこれを受け取った。
解答用紙
本店側の仕訳
借方
金額
貸方
金額
借方
金額
貸方
金額
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
支店側の仕訳
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
正解
本店側の仕訳
支店側の仕訳
187
本店側の仕訳と支店側の仕訳を支店勘定と本店勘定に転記すると,下記のようになる。
支店
8,000
6,000
7,000
11,000
本店
2,000
2,000
8,000
6,000
7,000
11,000
本店の支店勘定は¥30,000,支店の本店勘定残高は¥30,000 となる。¥30,000 は,本支
そうさい
店合併財務諸表の作成で相殺消去する。
これで,本支店合併財務諸表を学習する準備が整った。
本支店合併財務諸表の作成
どのように会社全体の財務諸表は,作成するのか。本店と支店がある場合の会社全体の
財務諸表を,本支店合併財務諸表という。
本支店合併財務諸表の作成の仕方の全体図は,下記の通りである。
本店
決算整理
前試算表
未達取引
決算整理仕訳
合算
支店
決算整理
前試算表
未達取引
決算整理仕訳
合併財
務諸表
の作成
内部取引の相殺
内部利益の控除
本店と支店は,決算整理前残高試算表をそれぞれ作成する。決算直前の取引,たとえば
現金書留のように,本店では現金書留で送金し,これを帳簿に記帳したが,支店に現金書
留が届いていない取引もある
また,本店では商品を支店に送付したが,支店に商品が届いていない取引もある。これ
188
らの取引により支店勘定と本店勘定の金額は一致しない。
みたつ
到着していない取引を未達取引という。本支店合併財務諸表を作成する場合,処理して
みたつ
けっさん び
いない側では到達したとみなして,決算日に未達取引は仕訳をする。
未達取引:
① 送金取引
② 商品の発送取引
③ その他
例題 決算日に次の未達事項が判明した。未達事項の仕訳をしなさい。
未達事項
① 支店から本店へ送金した現金¥600 が,本店へ未達であった。
本店へ未達である。ゆえに,本店側で仕訳する。
②本店から支店へ商品¥1,600 を発送したが,支店へ未達であった。
支店へ未達である。支店側で仕訳する。
③支店で本店の売掛金¥3,200 を回収したが,その通知が本店へ未達であった。
本店へ未達である。本店側で仕訳する。
④ 本店で支店の買掛金¥1,200 を立替払いしたが,その通知が支店へ未達であった。
支店へ未達である。支店側で仕訳する。仕訳は,
⑤ 本店で支店の営業費¥800 を立替払いしたが,その通知が支店へ未達であった。
支店へ未達である。支店側で仕訳する。
次に,決算整理仕訳をする。検定試験での本支店会計での決算整理事項についての仕訳は,
比較的簡単である。前の章で,決算整理仕訳を学習したので,省略する。
さて,本店から支店に利益を加算して送った商品が,決算日に企業外部に販売されていな
189
いこともある。本店から支店に商品の保管場所が移動しただけで,利益が獲得できるとは,
おかしな話である。未実現の内部利益という。
企業外部に販売されていない商品に対する未実現の内部利益は,配当には充当できない。
本支店間の商品売買取引に振替価格を使用している場合,決算日に,商品の棚卸高から内
部利益を控除する。
内部利益の控除が,本支店会計では,難しい箇所である。
なぜ控除するか,控除する理由を考えてみる。支店の売上原価勘定が下のようになって
いたとする。
期首,期末ともに, 支店の商品棚卸高には,20%の内部利益が含まれている。前期から繰
り越してきた支店の期首商品棚卸高¥3,000 に含まれる内部利益は,計算すると¥500 であ
る。この内部利益は,前期には,販売されていまないから未実現である。
しかし,当期に,支店は,この期首商品を販売によって,当期に,この内部利益は実現
するはずである。支店の期首商品棚卸高¥3,000 から¥500 円を差し引く,つまり控除する
と,売上原価は¥500 円減少する。売上原価が少なくなれば, 当期に,¥500 円の内部利益
が実現する。
一方,支店の期末商品棚卸高¥6,000 には, 20%つまり¥1,000 の内部利益が含まれてい
る。支店の期末商品棚卸高から¥1,000 を控除すれば,売上原価が¥1,000 は増えるはずで
ある。ゆえに,内部利益を控除する。未達事項があれば,この商品にも内部利益が含まれて
いる。未達事項の商品から内部利益も控除する。
例題 内部利益を計算し,控除しなさい。
未達事項
1. 本店から支店への商品発送高¥36,000
決算整理事項:商品の棚卸高は,パソコン画面の通りである。
2.商品の棚卸高
190
期首商品棚卸高
期末商品棚卸高
本店
¥80,000
¥90,000
支店
¥35,000
¥30,000
注 1)本店は,支店に商品を発送する際に,原価に対して 20%の利益を加算している。
注 2)支店の期首商品棚卸高¥35,000 のうち,¥30,000 は本店より仕入れたものである。
注 3)支店の期末商品棚卸高¥30,000 のうち,¥18,000 は本店より仕入れたものである。
解説
ミスをさけるために,本店の期首と期末の商品棚卸高のデータを消す。
まず,注 2 より,支店の期首商品棚卸高¥30,000 には,内部利益が原価の 20%含まれて
いる。ゆえに,
¥30,00×0.2÷1.2=¥5,000
支店の期首商品棚卸高に含まれる内部利益は,¥5,000 となる。
次に,注 3 より,支店の期末商品棚卸高¥18,000 にも,内部利益が原価の 20%含まれて
いる。未達事項¥36,000 にも,内部利益 20%が含まれている。ゆえに,あわせて,
(期末商品棚卸高¥18,000+未達事項¥36,000)×0.2÷1.2=¥9,000
内部利益は,¥9,000 となる。
この内部利益の控除の仕方については,次のように会計のルールで定められている。
損益計算書:
支店の期首商品棚卸高に含まれている内部利益は, 支店の期首商品棚卸高から控除する。
支店の期末商品棚卸高に含まれている内部利益は, 支店の期末商品棚卸高から控除する。
本支店合併財務諸表は,本店が作成するものである。そして,内部利益の控除は,本支
店合併財務諸表の作成過程で,本店の経理部が控除する。
支店の帳簿は,本店に送られるわけではない。支店の期末商品棚卸高は,次期の期首の
支店の商品棚卸高になる。皆さんは内部利益が控除されていると考えるかもしれない。こ
のように考えることは,大きな間違いである。ゆえに,前期に支店の商品棚卸高から内部
利益を控除しても,次期の期首の支店の商品棚卸高には,内部利益が含まれたままである。
ゆえに,控除する。
さて,本店と支店の財務諸表を合算して,単純な本支店合併財務諸表の作成から説明す
る。
例題
残高試算表,未達事項,期末整理事項をもとにして,本支店財務諸表を作成しなさい。
会計期間は 1 年とする。
191
A.残高試算表
借方
現金預金
繰越商品
建物
支店
仕入
本店より仕入
営業費
残高試算表
本店
支店
貸方
200
100 支払手形
100
30 本店
200
減価償却累計額
205
資本金
300
120 繰越利益剰余金
20 売上
50
80 支店へ売上
1,055
350
本店
支店
150
85
35
60
255
50
400
230
140
1,055
350
B.未達事項
1. 支店は本店へ現金¥50 を送金したが,本店へは未達であった。
2. 本店は支店へ商品¥120 を送ったが,支店へは未達であった。
C.期末整理事項
1.期末商品棚卸高は,次のとおりである。
本店: ¥250 支店: ¥50
注1.本店は支店へ商品を発送する際に,原価に対し 20%の内部利益を加算している。
2.支店の期首商品棚卸高のうち,¥12 は本店から仕入れたものである。
3.支店の期末商品棚卸高のうち,¥36 は本店から仕入れたものである。なお,支店の期末商品棚卸高に
未達分は含まれていない。
2.建物に対し,定額法で減価償却を行う(耐用年数 20 年,残存価額は取得原価の 10%)
解答用紙
192
未達事項がある。ゆえに,支店勘定と本店勘定,支店へ売上と本店より仕入の金額が一
致していない。さらに,問題文の残高試算表の繰越商品は,期首商品棚卸高である。内部
利益が含まれている。支店の期首商品棚卸高¥30 には,本店より仕入れた部分¥12 と企業
外部より仕入れた商品棚卸高が¥18 含まれている。
まず,手順に従って,未達事項の仕訳をする。
支店では送金の仕訳をした現金¥50 が,決算時点で本店には届いていない。本店では届
いたとみなして,入金¥50 の取引の仕訳をする。
仕訳は,
となる。
本店では,支店に発送した商品¥120 が支店に届いていない。決算時点で,支店に届いた
とみなして仕訳する。
仕訳は,
つぎに,決算整理事項について決算整理仕訳を行う。建物について定額法,間接法によ
り減価償却費を計算し,仕訳をする。残高試算表のデータ,建物¥200 と決算整理事項のデ
ータ,耐用年数と残存価額を利用して,定額法で減価償却費は¥9 となる。
仕訳は,
さらに,相殺消去の問題に移る。残高試算表から支店勘定と本店勘定,支店へ売上と本
店より仕入に金額を記入する。未達事項の仕訳を転記すると,下のようになる。
試算表
支店
205 未達
50
支店へ売上
試算表
140
本店
試算表
未達
試算表
未達
35
120
本店より仕入
20
120
そうさい
なお,支店勘定と本店勘定,そして支店へ売上と本店より仕入勘定を相 殺 する。
そうさい
相 殺 の仕訳は,
193
さらに,内部利益を控除する。本店と支店の商品の移動については,注1から原価に,
20%の内部利益が加算されている。
残高試算表の支店の期首商品棚卸高¥30 には,
注2から本店からの仕入分が¥12 である。
支店の期首商品棚卸高¥12 に含まれる内部利益は,計算すると¥2 である。
残高試算表の支店の期末商品棚卸高¥50 には,注3から本店からの仕入が¥36 である。
未達事項2に¥120 の商品がある。ゆえに,支店の期末商品棚卸高¥156 に含まれる内部利
益は,計算すると¥26 となる。内部利益の控除の仕方は,直接控除法で支店の期首商品棚
卸高と期末商品棚卸高から,それぞれ,控除する。
解答用紙の本支店合併損益計算書を完成させる。
本店と支店の企業外部との売上高の金額を合計する。¥400 と¥230 で¥630 となる。合
併損益計算書の売上高に¥630 と記入する。¥630 を損益計算書に移し替える。
売上原価の記入をする。残高試算表から期首商品棚卸高は¥130 となる。支店の期首商品
棚卸高¥30 に本店仕入分¥12 があり,計算すると¥2 の内部利益が含まれている。¥2 を
控除する。ゆえに,期首商品棚卸高は,¥128 となる。
残高試算表から当期仕入高は,本店¥300 と支店¥120 を合計して¥420 である。¥420
を移動させる。
期末商品棚卸高は,画面には表示されていないが,決算整理事項から本店¥250,支店¥50
である。支店の期末商品棚卸高のうち本店仕入分は¥36 である。未達事項¥120 にも内部
利益が含まれている。計算して,¥26 の内部利益を控除する。
売上高と売上原価から,売上総利益は¥476 となる。
営業費は,本店¥50 と支店¥30 を合わせて¥130 である。
決算整理事項として,減価償却費¥9を計上する。ゆえに,当期純利益は,¥337 となる。
本支店合併損益計算書が完成する。
本支店貸借対照表は,残高試算表から作成する。
貸借対照表の作成と表示で注意する科目は,商品と繰越利益剰余金である。
① 現金預金は,未達事項によって本店が¥250 に修正,支店が¥100 である。合計して¥350
となる。
② 商品は,期末商品棚卸高である。科目名を繰越商品にしてはならない。期末整理事項か
194
ら本店と支店を合算して¥300。未達事項が¥120 である。金額は,合計して¥420 であ
る。しかし,支店の期末商品棚卸高に内部利益¥26 が,含まれている。ゆえに,金額は,
¥394 となる。
③ 決算整理事項で減価償却費¥9 を計上した。間接法で仕訳し,資産合計は¥875 である。
④ 支払手形は,本店と支店分を合計して¥235 円である。流動負債,負債合計を記入する。
⑤ 資本金は,¥255 である。
⑥ 残高試算表の繰越利益剰余金は,¥50 である。すでに計算した本支店合併損益計算書の
当期純利益は,
¥337 でした。期首の内部利益¥2を引き算する。繰越利益剰余金は¥385
となる。純資産合計は¥640,負債及び純資産合計は¥875 である。これで,本支店貸借
対照表が完成する。
正解
資産の部
Ⅰ 流動資産
1 現金預金
2 商品
流動資産合計
Ⅱ 固定資産
1 建物
2 減価累計額
固定資産合計
資産合計
350
394
200
69
貸借対照表
負債の部
Ⅰ 流動負債
1 支払手形
流動負債合計
744
負債合計
Ⅰ 株主資本
1 資本金
131
2 利益剰余金
131
繰越利益剰余金
純資産合計
875
負債及び純資産合計
235
235
235
255
385
640
875
本試験レベルの過去問を解いてみる。
練習問題
次の資料(A)
,
(B)および(C)にもとづいて,本支店合併の損益計算書および貸借対
照表を完成しなさい。なお,会計期間は 1 年,決算日は 3 月 31 日である。また,本店から
支店への商品の発送にあたっては,原価に 20%の利益を加算した金額を振替価格としてい
る。
(A) 本店および支店の決算整理前残高試算表
195
借方
現金預金
売掛金
売買目的有価証券
繰越商品
支店
建物
仕入
本店より仕入
営業費
支払利息
本店
355,400
410,000
82,940
238,000
615,000
900,000
1,465,000
残高試算表
支店
貸方
119,000 買掛金
198,000 借入金
24,700 本店
65,000 貸倒引当金
建物減価償却累計額
281,660
12,000
500,000
?
?
116,200
2,800
4,360,000
1,789,700
繰越内部利益
資本金
利益剰余金
繰越利益剰余金
売上
支店へ売上
本店
324,000
500,000
1,200
216,000
?
1,000,000
95,000
146,000
?
225,000
4,360,000
支店
?
100,000
?
800
60,000
953,900
1,789,700
(B)未達事項
1.支店が本店へ送金した現金¥50,000 が,本店に未達である。
2.本店が支店へ発送した商品¥12,000 が,支店に未達である。
3.本店が支店の売掛金¥40,000 を回収したが,その通知が支店に未達である。
4.支店が本店の買掛金¥30,000 を決済したが,その通知が本店に未達である。
5.本店が支店の営業費¥25,000 を支払ったが,その通知が支店に未達である。
(C)決算整理事項
1.本支店ともに売掛金の期末残高に対して3%の貸倒れを見積もる。貸倒引当金の設定は,
差額補充法による。
2.売買目的有価証券の内訳は次のとおりである。
本店
支店
A社株式
B社株式
帳簿価額
時価
帳簿価額
時価
¥53,750 ¥56,500 ¥29,190 ¥28,770
¥10,500 ¥11,300 ¥14,200 ¥13,700
3.商品の期末棚卸高は次のとおりである。ただし,支店の期末棚卸高には未達分は含ま
れていない。
本店の期末棚卸高¥252,000
支店の期末棚卸高¥58,000(このうち¥22,200 は,本店より仕入れた商品である)
なお,支店の期首棚卸高のうち¥31,800 は,本店より仕入れた商品である。
4.本支店ともに建物の減価償却を,耐用年数は 30 年,残存価額は取得原価の 10%として,
定額法により行う。
5.営業費の前払額が,本店に¥1,200,支店に¥850 ある。
6.利息の未払額が,本店に¥650,支店に¥300 ある。
196
解答用紙
損益計算書
Ⅰ 売上高
Ⅱ 売上原価
1 期首商品棚卸高
2 当期商品仕入高
合計
3 期末商品棚卸高
売上総利益
Ⅲ 販売費及び一般管理費
1 営業費
2 貸倒引当金繰入
3 減価償却費
営業利益
Ⅳ 営業外収益
1 有価証券評価益
Ⅴ 営業外費用
1 支払利息
当期純利益
貸借対照表
資産の部
Ⅰ 流動資産
1 現金預金
2 売掛金
貸倒引当金
3 売買目的有価証券
4 商品
5 前払営業費
流動資産合計
Ⅱ 固定資産
1 建物
減価償却累計額
固定資産合計
資産合計
負債の部
Ⅰ 流動負債
1 買掛金
2 借入金
3 未払利息
流動負債合計
負債合計
Ⅰ 株主資本
1 資本金
2 利益剰余金
3 繰越利益剰余金
純資産合計
負債及び純資産合計
197
解説
(A)の決算整理前残高試算表の金額に,借方2か所,貸方4か所,計6か所にわからな
い金額がある。まず,これらの金額を推定する。
決算整理前残高試算表から,支店の期首商品棚卸高は,¥65,000 である。支店の期首商
品棚卸高には,決算整理事項3のデータから,企業外部からの仕入れ分と本店からの仕入
れ分が含まれている。本店仕入分の支店の期末商品¥31,800 には,内部利益 20%が加算さ
れている。
計算すると,内部利益は¥5,300 である。繰越内部利益に¥5,300 と記入する。
支店へ売上¥225,000 と本店より仕入の金額は,未達事項の仕訳をすると一致する。未達
事項の2に¥12,000 とある。ゆえに,本店より仕入は,¥213,000 となる。
支店の仕入の金額は,借方合計金額から,逆算で¥551,000 と推定できる。
本店の売上高は,繰越内部利益¥5,300 と計算したから,合計金額から 逆算して,
¥1,847,500 と計算できる。なぜ,繰越内部利益が本店側にあるのか,これは 1 級の簿記で
学習する。
決算整理前残高試算表の支店側の買掛金と,本店勘定の金額が推定できない。本店勘定
の金額は,未達事項の仕訳をして,本店勘定と買掛金の金額を推定する。
未達事項を読んで,未達事項に対する仕訳をする。
(B)未達事項
1.支店が本店へ送金した現金¥50,000 が,本店に未達である。仕訳は,
貸
2.本店が支店へ発送した商品¥12,000 が,支店に未達である。仕訳は,
3.本店が支店の売掛金¥40,000 を回収したが,その通知が支店に未達である。仕訳は,
4.支店が本店の買掛金¥30,000 を決済したが,その通知が本店に未達である。仕訳は,
198
5.本店が支店の営業費¥25,000 を支払ったが,その通知が支店に未達である。仕訳は,
未達事項の正解
50,000
(貸)支店
50,000
2.支店(借)本店より仕入 12,000
(貸)本店
12,000
40,000
1.本店(借)現金
3.支店(借)本店
40,000
(貸)売掛金
4.本店(借)買掛金
30,000
(貸) 支店
5.支店(借)営業費
25,000
(貸)本店
30,000
25,000
残高試算表の支店勘定と本店勘定に未達取引の仕訳を転記し,本店勘定の金額を推定する。
本店
支店
支店
615,000
50,000
30,000
本店
40,000
?
12,000
25,000
支店の本店勘定は,¥538,000,合計金額から逆算して買掛金は¥137,000 となる。
そうさい
支店勘定と本店勘定を相殺しておく。
本店より仕入¥225,000 と支店へ売上¥225,000 も相殺する。相殺仕訳は,
さらに,決算整理事項の仕訳をする。これまでの仕訳により,与えられた決算整理前残
高試算表は,パソコン画面のようになっている。ブルーの数字は修正されたもの,文字の
上に線があるのは,相殺消去されたものである。
(C)決算整理事項は,
1.本支店ともに,売掛金の期末残高に対して3%の貸倒れを見積もる。貸倒引当金の設定
は,差額補充法による。
199
貸倒の見積もりの計算に際して注意すべきは,未達取引3で,すでに,売掛金¥40,000
が回収されている。差額補充法である。
計算式は
(本店分¥410,000+支店分¥198.000-未達取引分¥40,000)×0.03-(貸倒引当金残高
の本店分¥1,200+支店分¥800)=¥15,040
となる。決算整理仕訳は,
2.売買目的有価証券の内訳は,A社株式には評価益¥3,550,B社株式には評価損¥920
が発生している。
合わせて,¥2,630 の評価益を計上する。
決算整理仕訳は,
3.本支店ともに建物の減価償却を,耐用年数は 30 年,残存価額は取得原価の 10%として,
定額法により行う。
減価償却費は,3 級の簿記の知識を利用して,仕訳は,
4.を飛ばして,
前払,未払の決算整理仕訳をする。
5.営業費の前払額が,本店に¥1,200,支店に¥850 ある。
6.利息の未払額が,本店に¥650,支店に¥300 ある。
決算整理事項に対する仕訳は,
内部利益の控除を考えてみる。
① 支店の期首商品棚卸高には,内部利益¥5,300 が含まれていることについては,すでに
説明した。
② 支店の期末商品棚卸高には,幾らの内部利益が,含まれているのか。
問題文の2つのデータを使用する。
未達事項 2 には,次のような文章がある。
200
2.本店が支店へ発送した商品¥12,000 が,支店に未達である。未達取引である。
決算整理事項3には,次のような文章がある。
支店の期末棚卸高¥58,000(このうち¥22,200 は,本店より仕入れた商品である)
ゆえに,未達取引¥12,000 と期末商品棚卸高¥22,200 の2つに 20%の内部利益,つまり
計算すると¥5,700 の内部利益が含まれている。
この本支店合併財務諸表の作成問題は,単純な本支店合併財務諸表の作成の知識に付け
加えて,15 章で学習した財務諸表の作成に対する知識を要求しているところにある。
損益計算書を完成させる過程を説明する。
すでに,損益計算書の様式は,15 章で説明した。
まず,売上高は,本店の外部売上高¥1,847,500 と支店の外部売上高¥953,900 を合計し
て,会社全体の売上高は,¥2,801,400 となる。
次に,売上原価を表示する。
期首商品棚卸高は,本店の期首商品棚卸高¥238,000 と支店の期首商品棚卸高¥65,000
を合計して,繰越内部利益を引き算して,¥297,700 である。
当期の仕入高は,本店の外部仕入高¥1,465,000 と支店の外部仕入高¥551,000 を合計し
て,会社全体の売上高は¥2,016,000 となる。
期末商品棚卸高は,本店の棚卸高¥252,000 と支店の棚卸高¥58,000 を合計して,さら
に未達事項¥12,000 も足し算して,内部利益¥5,700 を引き算して,会社全体の期末商品
棚卸高は,¥316,300 となる。
その結果,売上原価は¥1,997,400 となる。売上総利益も計算する。売上総利益は,売上
高-売上原価であるから,¥804,000 となる。
販売費及び一般管理費の個所を記入する。営業費,貸倒引当金繰入,減価償却費は決算
整理事項の仕訳の金額を使用する。
営業利益¥326,150 が計算できる。
営業外収益には有価証券評価益¥2,630,営業外費用には支払利息¥15,750 がある。当期
純利益は、¥313,030 となる。
最後に,貸借対照表も完成させる。
解き方を説明する。
① 貸借対照表は,流動性配列法である。資産と負債は,流動資産,固定資産,流動負債
固定負債と順に配列する。
② 貸借対照表の金額は,本店と支店の科目の金額を合計して,会社全体の金額を表示す
201
る。
③ 売 掛 金 ¥568,000 と 貸倒 引 当 金 ¥ 17,080 , 建物 ¥ 1,400,000 と 減価 償却 累 計 額
¥318,000 は,控除形式で表示する。
④ 繰越商品の科目は,商品に科目の名称を変更する。期末商品棚卸高に含まれる内部利
益¥5,700 が,控除されている。
⑤ 前払営業費¥2,050 と未払利息¥950 は,決算整理事項の仕訳で生じたものである。
⑥ 繰越利益剰余金の金額は,残高試算表の¥146,000 と損益計算書で計算した当期純利
益¥313,030 を加算した金額が表示する。
貸借対照表が,完成した。
正解
損益計算書
Ⅰ 売上高
Ⅱ 売上原価
1 期首商品棚卸高
297,700
2 当期商品仕入高
2,016,000
合計
2,313,700
3 期末商品棚卸高
316,300
売上総利益
Ⅲ 販売費及び一般管理費
1 営業費
420,810
2 貸倒引当金繰入
15,040
3 減価償却費
42,000
営業利益
Ⅳ 営業外収益
1 有価証券評価益
2,630
Ⅴ 営業外費用
1 支払利息
15,750
当期純利益
202
2,801,400
1,997,400
804,000
477,850
326,150
2,630
15,750
313,030
貸借対照表
資産の部
Ⅰ 流動資産
1 現金預金
2 売掛金
568,000
貸倒引当金
17,040
3 売買目的有価証券
4 商品
5 前払営業費
流動資産合計
Ⅱ 固定資産
1 建物
1,400,000
減価償却累計額
318,000
固定資産合計
資産合計
負債の部
Ⅰ 流動負債
524,400
1 買掛金
2 借入金
550,960
3 未払利息
110,270
316,300
2,050
流動負債合計
1,503,980
負債合計
Ⅰ 株主資本
1 資本金
1,082,000
2 利益剰余金
3 繰越利益剰余金
1,082,000
純資産合計
2,585,980
負債及び純資産合計
203
431,000
600,000
950
1,031,950
1,031,950
1,000,000
95,000
459,030
1,554,030
2,585,980
注)スマホと類似の問題(日商簿記検定試験 2 級商業簿記より出題)を使用しています
が、同じ問題を繰り返して解いても、時間の無駄使いになります。スマホの仕訳 20 問は通
勤や通学時間、このPC講座はご自宅での学習というように、使い分けて時間を効率的に
使用してください。お願いします。
問題1.本日,かねてより商品販売の委託を受けている那覇商店が取り組んだ荷為替手形
¥150,000 を取引銀行から呈示された。そのため,当店はこの荷為替手形を引き受け,貨物
代表証券(那覇商店の仕入原価¥200,000,売価¥250,000)を受け取った。
なお,販売を委託された商品は,未だ到着していない。
借方
金額
貸方
金額
この取引では,那覇商店,取引銀行,当店が登場。委託者が那覇商店,受託者が当店。
那覇商店が取り組んだ荷為替手形は,取引銀行が持っている。取引銀行は当店に手形の呈
示。
当店はこの荷為替手形¥150,000 を引き受けて,
取引銀行から貨物代表証券を受け取る。
呈示された荷為替手形の引き受けは,この為替手形の支払人になる。ゆえに,貸方は支
払手形。
一方,貨物代表証券の受け取りについて,皆様は未着品で仕訳するように考えるかもし
れない。しかし,問題文の取引は受託販売。受託販売で生じた債権・債務は,受託販売勘
定で仕訳。借方に受託販売勘定があるのは,そのため。
問題2.かねて販売と代金回収の委託を受けていた商品 20 個(売価@¥80,000)のうち,
本日 12 個を販売し,代金は掛けとした。なお,当社は,販売価額の 15%を販売手数料とし
て受け取ることとなっており,販売のつど収益を計上する。
借方
金額
204
貸方
金額
取引の中身は,受託販売。当店が受託者。受託した商品は 20 個。当店は,そのうち 12 個
の受託した商品を他店に販売した。
計算式
販売価額は
12 個×@¥80,000=¥960,000
当店の受け取る手数料は,販売価額の 15%。したがって,計算式
¥960,000(販売価額)×15%(手数料)=¥144,000 の受取手数料
当店は
¥960,000(販売価額)-¥144,000(受取手数料)=¥816,000。当店は,¥816,000 を商
品の委託者に支払う義務が生じる。受託販売勘定で仕訳。
貸方が受託販売勘定。借方は掛け販売であるから売掛金。
問題3.かねて予約を受けていた A 商品(売価¥760,000)と長崎商店から販売を委託され
ていた B 商品(売価¥560,000)を岐阜商店に売り渡し,発送費¥5,000 については現金で
支払った。A 商品については予約受付時に代金の全額を予約金として受け取っており,B 商
品の代金については全額掛けとした。
なお,発送費のうち¥2,000 については,長崎商店負担分である。
借方
金額
205
貸方
金額
取引が入り組んでいる。問題文は,本文の商品の販売となお文の運賃の仕訳からなりた
っている。
取引は,2つある。
A 商品の売価¥760,000 は,予約金を受け取っている。単純に売り上げたと考える。前受
そうさい
金と相殺する。
B 商品は受託販売商品。B 商品売価¥560,000 は,当店保有の商品を売り上げたわけでは
ない。受託した商品の販売である。ゆえに、売上勘定で仕訳することはできない。受託販
売勘定で仕訳する。
次が,発送費¥5,000 の仕訳。¥5,000 を分解。¥5,000 のうち,委託されている商品の販
売に伴って生じる発送費¥2,000 は当店が負担するものではない。ゆえに,受託販売勘定で
仕訳する。発送費¥3,000 は当店負担。
問題4.東京商店に商品(原価¥200,000,売価¥300,000)を毎月末均等額払いの 6 か月月
賦の条件で売り渡した。なお,当社は割賦販売において,販売基準を採用している。
借方
金額
貸方
金額
数回に分けて代金を回収する販売形態が,割賦販売。問題文では,販売基準で仕訳する
ように要求されている。原則的な仕訳処理であり、貸方割賦売上としているのは,割賦販
売による売上を明示するため。
問題5.当期首に営業用建物(取得原価¥5,000,000,残存価額¥500,000,耐用年数 20 年,
定額法による減価償却,間接法により記帳)の修繕を行った。修繕代金¥700,000 のうち
¥400,000 については小切手を振り出して支払い,残額は月末に支払うこととした。
なお,このうち¥250,000 については,建物の耐震構造を強化する効果があると認められ
た。また,修繕引当金の残高は¥300,000 である。
206
借方
金額
貸方
金額
問題文には,本文となお文がある。
耐震構造の強化¥250,000 は資本的支出であり,建物勘定で仕訳する。
修繕部分¥450,000 の内訳は, 修繕引当金¥300,000 があるから,修繕引当金の取り崩しが
¥300,000,残りが修繕費¥150,000。
問題6.営業用車両(取得原価¥3,000,000,残存価額¥300,000,前期末における減価償却
累計額¥2,295,000,生産高比例法による減価償却,見積総走行可能距離 180,000km)を下
取りさせて,新たな営業用車両(購入価額¥3,600,000)を購入した。
なお,旧車両の当期の走行距離は 15,000km,下取り価額は¥200,000 で,購入価額との
差額は月末に支払うこととした。
借方
金額
貸方
金額
固定資産の買い替えの取引。旧車両の売却を考え,次に新車両の取得を考え,解答を導
207
き出す。
旧車両の売却
旧車両は,生産高比例法による減価償却をしている。減価償却累計額は¥2,295,000。当
期も使用している。そこで,当期部分の減価償却費は,計算式を利用して月割計算して
¥225,000 となる。ゆえに,
旧車両の売却の仕訳
(借)車両減価償却累計額
2,295,000
減価償却費
225,000
現金
200,000
固定資産売却損
280,000
3,000,000
(貸)車両
次に,新車両¥3,600,000 の購入の仕訳は,問題文を読んで,支払条件を考える。
新車両の購入の仕訳
(借)車両
3,600,000
(貸)現金
200,000
未払金
3,400,000
2 つ合わせた仕訳が,正解の仕訳。現金勘定¥200,000 は相殺しない。最終的な仕訳では,
そうさい
新旧車両の取得原価は相殺して表示してはならない。
問題7.かねて振り出していた約束手形¥200,000 について,得意先の倒産により支払期日
までに資金を用立てることが難しくなった。そのため,手形の所持人である大分商店に対
して手形の更改を申し入れ,同店の了承を得て,旧手形と交換して,新手形を振り出した。
なお,支払期日延長にともなう利息¥4,000 は現金で支払った。
借方
金額
貸方
金額
こうかい
手形の更改,つまり書き換えの仕訳をする。
更改では,旧手形を廃棄して,新手形を交付。支払期日延長にともなう利息¥4,000 は,
手形金額に含める場合と含めない場合がある。本問では手形金額に含めない場合である。
借方の支払手形¥200,000 は旧手形,貸方の支払手形は新手形。
208
問題8.平成 21 年 12 月 12 日に売買目的で社債(額面総額¥4,000,000)を額面¥100 につ
き¥96.55 で買い入れ,代金は証券会社への手数料¥9,000 および端数利息ともに小切手を振
り出して支払った。
なお,この社債の利率は年 1.285%,利払日は 3 月末日と 9 月末日の年 2 回である。また,
端数利息の金額については,1 年を 365 日として日割で計算する。
借方
金額
貸方
金額
売買目的有価証券の購入の取引。
売買目的有価証券の購入価額:
売買目的有価証券の購入単価¥96.55×40,000 口+代金は証券会社への手数料¥9,000=
¥3,871,000
次に,
端数利息の計算を間違えなければ、正解を出すことができる。
利息の計算は 10 月の 31 日,11 月の 30 日,
12 月の 12 日の 73 日である。
端数利息は¥10,280。
問題9.売買目的で所有していた A 社社債(額面¥4,000,000,取得原価¥4,010,000,取得
日平成 19 年 4 月 1 日,満期日平成 24 年 3 月 31 日,年利率 3.65%,利払日 3 月 31 日およ
たんか
び 9 月 30 日)の半分を平成 21 年 10 月 20 日に @ ¥101 で売却した。売却代金は,端数利
息を含め,当座預金に振り込まれた。
たんか
なお,前年度の決算日(平成 21 年 3 月 31 日)において A 社社債の時価は, @ ¥100.40
であった。当社は,売買目的有価証券の会計処理方法として,時価法(切り放し法)を採
用している。
借方
金額
209
貸方
金額
図解して解答する。売買目的有価証券の取得日は平成 19 年 4 月 1 日,社債の購入単価は
¥101,売却日は平成 21 年 10 月 20 日,売却日の単価は¥101,決算日は 3 月 31 日,単価
は¥100.40 である。売買目的有価証券は,保有目的が短期的な売買,決算日に時価評価す
る。
売却した社債の帳簿価額は,
@¥100.40(時価)×200,000 口(売却口数)=¥2,008,000(帳簿価額)
そして,
@¥101(売却単価)×200,000 口(売却口数)=¥2,020,000(手取り金)
ゆえに,有価証券売却益は¥12,000
さらに,端数利息を計算する。
10 月 20 日に売却したから,利息は利払日の翌日からの 20 日分。
この問題では,時価評価して帳簿価額を計算すること,切り放し法で仕訳すること,端数
利息を正確に計算することに注意。
問題 10.A 株式会社は,増資にあたって 1 株につき¥80,000 で新株を発行した。ただし,
定款に記載された発行可能株式総数は 4,000 株であり,会社設立時に 1,000 株発行してい
たので,今回は発行可能な株式数の上限まで発行し,その全株について引受け,払込みを
受けた。払込金は,当座預金とし,会社法における最低限度額を資本金に計上した。
なお,増資のために要した手数料¥3,000,000 は,現金で支払った。
借方
金額
210
貸方
金額
定款に記載された発行可能株式総数 4,000 株とは,授権資本のこと。すでに,会社設立
時に 1,000 株を発行。ゆえに,千葉商事株式会社は新株 3,000 株を発行可能。これを発行。
3,000 株×¥80,000=¥240,000,000(当座預金)
¥240,000,000 が全額資本金になるわけでなく,会社法における最低限度額の規定,つま
り 1/2 が適用され,¥120,000,000 が資本金。¥120,000,000 は株式払込剰余金
増資のために要した手数料¥3,000,000 は,株式交付費
問題11.当店は相模商店を現金¥5,000,000 で買収した。なお,相模商店を買収した際の
資産・負債は,受取手形¥2,400,000,商品¥3,000,000,および買掛金¥1,600,000 であった。
借方
金額
貸方
金額
図解を見なさい。
当店は,純資産¥3,800,000 を持っている相模商店を現金¥5,000,000 で買収した。相模商
店の持っている資産も負債も当店が引き継ぎ。差額¥1,200,000 がのれん。つまり相模商店
のブランド力はのれんとして資産に計上。
211
問題12.額面総額¥10,000,000 の社債(利率年 3.65%,償還期間 5 年)を額面¥100 につ
き¥98 で発行し,受け取った払込金は当座預金とした。
なお,社債発行に際してかかった諸経費¥400,000 は現金で支払った。当社としてはこれ
を繰延資産として処理する。
借方
金額
貸方
金額
当社が,社債を発行。発行価額は¥98×100,000 口。¥9,800,000 が当社の手取り金
社債発行に際してかかった諸経費は,社債発行費。これを現金支払
問題13.決算にあたって,税引前当期純利益¥700,000 の 40%を法人税,住民税および事
業税に計上した。
なお,¥120,000 については,すでに中間納付をしている。
借方
金額
貸方
金額
解答を要求されているのは,決算時点での仕訳である。
まず,なお文の中間納付額¥120,000 の仕訳を考える。
そして,決算時点では,法人税等が計算で¥280,000 となるから借方に記入する。当社は
すでに中間申告¥120,000 している。
ゆえに,将来納付すべき金額は,差額の未払法人税等¥160,000 である。
212
問題14.決算にさいして,消費税の納付額¥125,500 を計算し,これを確定した。なお,
消費税の会計処理は,税込方式によっている。
借方
(借)租税公課
金額
125,500
貸方
金額
125,500
(貸)未払消費税
消費税の仕訳:
税抜方式と税込方式の2つの仕訳の仕方
問題文は税込方式。消費税の納付額¥125,500 は,租税公課勘定を使用して仕訳。消費税は
まだ支払っていない。ゆえに、貸方は未払消費税勘定
問題15.火災により焼失した建物(取得原価:¥8,000,000,残存価額:取得原価の 10%,耐
用年数 20 年,定額法により償却,間接法で記帳)に関し請求していた保険金¥2,600,000
について本日支払う旨の連絡を保険会社から受けた。
当該建物は,平成 8 年 4 月 1 日に取得したもので,平成 22 年 8 月 31 日に火災があり,
火災発生日現在の簿価の全額を未決算勘定に振り替えていた。なお,当社の決算は 3 月 31
日(年 1 回)であり,減価償却は月割計算で行っている。
借方
金額
213
貸方
金額
問題文は長文。段階をたどって,解答する。
建物は平成 8 年 4 月 1 日に取得し,平成 22 年 8 月 31 日に火災があり,建物は消失した。
消失した時点での建物の帳簿価額を考える。
14 年と 5 ヶ月間減価償却をしている。
〔
(¥8,000,000(取得原価)-取得原価の 10%(残存価額)
〕÷20 年(耐用年数)=¥360,000(1
年分の減価償却累計額)
ゆえに,14 年分の減価償却費は,
¥360,000×14 年=¥5,040,000
平成 22 年4月 1 日から8月 31 日までの建物の月割計算の減価償却費
¥360,000×5/12=¥150,000(月割計算額)
そして,
平成 22 年 8 月 31 日の火災発生時点での帳簿価額
(¥8,000,000(取得原価)-¥5,040,000(14 年分の減価償却累計額)-¥150,000(5 カ月の
月割計算の減価償却費)=¥2,810,000
火災発生時点での仕訳:
5,040,000
(借)減価償却累計額
8,000,000
(貸)建物
150,000
減価償却費
2,810,000
未決算
そして,保険金の支払通知時点での仕訳を考える。確定した保険金は¥2,600,000
ゆえに,
保険金の確定時点での仕訳は,正解のようになる。
問題16.商品の引き渡しから 2 週間以内に代金の決済を行った場合には 3%の割引を行う
という条件で商品¥120,000 を掛けで売り渡していた。商品の引渡日から 12 日目にあたる
本日,割引額を控除した金額が,得意先から当座預金口座に振り込まれていた。
借方
金額
214
貸方
金額
早期に代金を支払ってもらうと割引をすることがある。当店はある条件で商品売買。そ
の条件は2週間以内に支払うと割引を与える。12 日目であるから,条件に合っている。相
手商店に金利に相当する割引を与える。
金利を計算。
売上割引の金額:¥120,000(売上高)×0.03(割引率)=¥3,600(割引額)
仕入割引も復習すること
問題17.高松株式会社は,建設中であった営業用店舗が完成したため,店舗の引渡しを
受け,工事代金の残額¥5,000,000 のうち¥3,000,000 と登記料¥81,000 については小切手を
振り出して支払い,残りの¥2,000,000 は翌月に支払うこととした。
なお,この店舗の工事に対しては,工事代金の一部としてすでに¥22,000,000 を前払いし
ている。
借方
金額
貸方
金額
簡単に問題を解くために,なお文と本文の順序を逆にする。
すでに,工事代金の一部¥22,000,000 は支払っている。
その時点での仕訳
(借)建設仮勘定
22,000,000
(貸)XXXX
215
22,000,000
そして,建物が完成した。
営業用店舗の取得原価
¥22,000,000(建設仮勘定)+¥5,000,000(今回の完成時点での支払と未払)+¥81,000
(登記料)=¥27,081,000
登記料¥81,000 は小切手支払,残金の¥5,000,000 は小切手と翌月払い。建設仮勘定
¥22,000,000 は,建物勘定へ振り替える。
問題18.得意先和歌山商店が倒産し,同店に対する売掛金¥450,000 が回収不能となった
ため,貸倒れとして処理する。回収不能となった同店に対する売掛金のうち,¥330,000 は
前期の販売から生じたもので,残額は当期の販売から生じたものである。
なお,貸倒引当金の残高は¥380,000 である。
借方
金額
貸方
金額
売掛金の回収不能¥450,00:前期部分¥330,000,当期部分¥ 120,000。
売上債権が回収不能になった仕訳
・前期以前の売上債権に対して貸倒引当金が設定してあれば,それで充当する。
・当期の売上債権に対しては,貸倒引当金が設定していないから,貸倒損失として仕訳す
る。
問題19.山形商店から売掛金の決済のために受け取り,すでに日商銀行で割引きに付し
ていた,同店振出し,当社宛の約束手形¥900,000 が満期日に支払拒絶された。そのため,
同銀行より償還請求を受け,小切手を振り出して決済した。
また,満期日後の延滞利息¥2,300 は現金で支払い,手形金額とともに山形商店に対して
支払請求した。
借方
金額
216
貸方
金額
山形商店から受け取った手形を銀行に割引に出し,銀行は当店を信用して手形を現金化。
ところが,
山形商店は手形に記載されている支払日に¥900,000 を支払わない。
手形の不渡。
銀行は当店に¥900,000 の償還請求をする。問題文は償還請求を受けた時点での仕訳が要
求されている。とりあえず,不渡手形勘定で仕訳。延滞利息¥2,300 は不渡手形に加算。
問題20.関西物産株式会社の神戸支店は,神戸支店負担の広告宣伝費¥48,000 を京都支
店が立替払いした旨の連絡を本店から受けた。なお,同社は本店集中計算制度を採用して
いる。
借方
金額
貸方
金額
本支店会計では,本店と支店 1 ずつの仕訳を学習。問題は神戸支店と京都支店が 2 つあ
る。この支店間で取引をした。本店集中計算制度では,支店間取引は一旦,本店を通して
行われると考える。したがって,上のような仕訳となる。5 回に 1 回程度,出題される。
問題 21:久留米商事は,札幌商会に商品¥200,000 を売渡し船便で発送をした。発送にさい
して久留米商事は,取引銀行で8掛けの荷為替を取り組み,割引料¥1,600 を差し引き,残
額を当座預金とした。
借方
金額
貸方
217
金額
正解:
(借) 当座預金
158,400
手形売却損
(貸)売上
200,000
1,600
売掛金
40,000
(☞貸方)商品の船便発送で売上計上,貸方確定。
(☜借方)販売代金の8掛であるから¥160,000 が自己受為替手形の振出。金額¥160,000
の手形を取引銀行で割り引いたと考える。3級の知識で借方2科目確定。販売代金¥200,000
の残額の2割(¥40,000)は掛販売。さらに,借方1科目も確定。
問題 22:掛川商店は,売買目的で保有しているA株式会社の株式 2,000 株のうち 1,300 株
を 1 株¥75 で売却し,代金は次月末に受け取ることにした。
なお,掛川商店は,A株式会社株式をこれまで@¥68 で 700 株,@¥65 で 800 株,@¥72
で 500 株を順次購入しており,移動平均法による記帳を行っている。
借方
金額
貸方
金額
正解:
(借)未収金 97,500
(貸)売買目的有価証券
有価証券売却益
88,140
9,360
(解答の前提)同じ銘柄の売買目的有価証券を複数回に分けて購入した場合,平均原価法
(移動平均法など)により平均単価を計算。
本ケースでの平均単価
(@¥68×700 株+@¥65×800 株+@¥72×500 株)÷2,000 株=@¥67.8
有価証券売却益は,
(1 株¥75-¥67.8)×1,300 株=¥9,360
(☜借方)売却代金は,次月末受け取り,未収金での借方確定。
(☞貸方)移動平均法で販売した売買目的有価証券の平均単価を計算して,売却した有価
証券の取得原価を計算。貸方 1 科目確定,売却した 1 株あたりの利益の計算(¥7.2)そし
218
て売却株数(1,300 株)を積算,貸方の勘定科目(有価証券売却益)と金額(¥9,360)を確
定。
問題 23:札幌商店に委託販売のため,商品¥30,000(売価¥45,000)を発送し,発送運賃
¥800 を現金で支払った。また,この商品については運送会社より貨物代表証券の発行を受
け,取引銀行にて荷為替¥20,000 を取り組んだ。
なお,割引料¥80 を差し引かれ,手取金は当座預金とした。
借方
金額
貸方
金額
正解:
(借)積送品
30,800
(貸)仕入
現金
当座預金
手形売却損
19,920
前受金
30,000
800
20,000
80
1行目
(☜借方)商品を発送しても売上は計上しない。委託販売のための商品の発送は,委託販
売という事実を明示するために仕入勘定から積送品に科目の名称変更,発送運賃(発送運
賃¥800)は付随費用として積送品原価に含める。1科目借方確定。
(☞貸方)借方積送品に振替,貸方仕入で 1 科目確定。
(☞貸方)発送運賃¥800 を現金支払。貸方確定。
3行目
(☜借方)手形の割引で2科目借方確定。
(☞貸方)販売代金の前受で,貸方確定。委託販売の場合,商品を引き渡しても,貨幣性
資産を獲得したことにならないから,売上に計上してはならない。注意のこと。
問題 24:山口商店では,前期に販売した商品に対して修理の申し出があったので,修理業
者に修理を依頼し,修理代金¥8,000 を現金で支払った。
なお,同店では,前期の決算において売上高¥2,300,000 の1%を商品保証引当金に計上
していた。
219
借方
金額
貸方
金額
正解:
(借)商品保証引当金
8,000
(貸)現金
8,000
(解答の前提)販売商品の故障に備えて一定の条件が発生した場合に無料修理をする条件
で販売。この場合には,
(借)商品保証費 23,000
(貸)商品保証引当金 23,000 これ
は前期決算で仕訳済。本問は,引当金設定後の問題。
(☜借方)商品保証引当金(¥23, 000)が設定してあるので,商品保証引当金を取り崩す。
借方確定。
(☞貸方)現金¥8,000 支払で貸方確定。
問題 25:神田出版株式会社は,かねて予約を受け付けていた CD 全集(1セット 10 巻)の
うち,第1巻と第2巻が完成し,本日予約者全員にこれら CD を送付した。全集の各巻の
販売価格はすべて¥300 であり,発売数は 50 セットである。
全集は売出し時に完売し,すでに予約にさいしては,全集 10 巻 1 セットにつき代金の全
額¥3,000 を受け取っていた。
借方
金額
貸方
30,000
(貸)売上
金額
正解:
(借)前受金
30,000
(解答の前提)予約販売の収益認識基準は,決算日までに商品の引渡しやサービスの提供
が完了した部分だけである。すでに予約受付時に,¥3,000 ×50 セット=¥150,000 を予約
金として受け取っている。
(☞貸方)送付した予約販売商品の金額は,¥300×2巻×50 セット=¥30,000 で貸方売
上で確定。
220
(☜借方)前受金¥30,000 が消滅し,借方確定。
問題 26:東京商店より商品¥60,000 を仕入れ,かねて横浜商店より受け取っていた約束手
形¥40,000 を裏書譲渡し,残額は掛けとした。
なお,手形の裏書譲渡にさいしては,手形額面の3%を保証債務にかかわる費用として計
上した。
借方
金額
貸方
金額
正解:
(借)仕入
60,000
(貸)受取手形 40,000
買掛金
保証債務費用 1,200
保証債務
20,000
1,200
取引は2つの内容より構成されている。1 行目の取引に対する仕訳は,3級の知識ですら
すら解ける。3行目の仕訳には,2級商業簿記の新知識が必要である。出題頻度は低い。
1行目の仕訳の解説
(☜借方)商品仕入で,借方確定。
(☞貸方)約束手形の譲渡(受取手形の減少)と掛(買掛金の増加)で,貸方2科目確定。
3行目の仕訳の解説
手形を裏書譲渡すると,当店では受取手形¥40,000 が消滅する。しかし,裏書譲渡した
手形が不渡りになった場合,裏書譲渡した者は償還請求に応じる必要が法定されている。
このような条件付遡求義務は偶発債務であり,この偶発債務は,会計のルールでは金融負
債として引当金計上し,時価評価する仕訳処理が要求される。
(☜借方)保証債務費用(¥40,000×3%=¥1,200)を計上し,借方確定。
(☞貸方)保証債務という負債計上で貸方確定。
問題 27:得意先埼玉商店に商品 A(原価¥2,500,売価¥4,500)を試送した。当店は,試用
販売には,試送時に対照勘定法で記帳し,得意先が買取りの意思を表明したときに収益を
計上した。
借方
金額
貸方
221
金額
正解:
(借)試用販売売掛金 4,500
(貸)試用仮売上
4,500
(解答の前提)試用販売には,対照勘定法と手許商品区分法がある。対照勘定法では,商
品発送時点で,対照勘定を用いて売価(原価ではない)により備忘記録を残しておく。収
益の認識基準は,試用販売商品に対する顧客の買取の意思表示である。
(☜借方)
(☞貸方)試用商品の発送時点では,収益を認識しない。試用商品の発送時点で
は,備忘記録として,取引を記帳しておく。対照勘定法では,セットで借方貸方同時確定。
問題 28:京都商事株式会社(年 1 回決算,3月 31 日)の6月 28 日の株主総会で,繰越利益
剰余金¥450,000 を次のとおり処分することが承認された。
株主配当金:1 株につき¥500,利益準備金:会社法の定める金額,新築積立金:¥120,000
なお,株主総会時の同社の資本金は¥2,000,000,資本準備金は¥200,000,利益準備金は
¥190,000 であり,発行済株式数は 400 株である。
借方
金額
貸方
金額
正解:
(借)繰越利益剰余金 340,000
(貸)未払配当金 200,000
利益準備金 20,000
新築積立金 120,000
(解答の前提)仕訳の前提となる金額の計算は,紙を利用する必要があるためスマホ画面
を見ているだけではきわめて難しい。個人商店の場合,商店があげた利益はすべて店主の
ものとなる。
一方,株式会社の場合,株主総会で,株主間での話し合いと会社法の制限がある。会社法
445 条は,純利益をすべて配当として当ててはならないと定めている。この会社法規定は暗
記しておく必要がある。条文を暗記して実力アップ。利益準備金の法定積立額は,
① 利益準備金の積立額は,資本準備金の額と合わせて資本金の4分の1までとする。4
222
分の1に達した場合,積み立てる必要はない。
② 利益準備金は,配当金の 10 分の 1 を積み立てなければならない。
① と②のいずれか少ない方を利益準備金積立額とする。
(☞貸方)配当金の金額は¥500×400 株=¥200,000。配当金は株主総会で支払う決定をし
ただけ,未だ支払っていないから勘定科目は未払配当金。利益準備金の法定の要積立額は
(解答の前提)から計算。
① ¥2,000,000×1/4-(¥200,000+¥190,000)=¥110,000(利益準備金積立可能額)
② 200,000×1/10=¥20,000(利益準備金要積立額)
,①と②を比較。利益準備金の積立額
として②を選択。新築積立金も貸方で確定。計 3 科目の貸方で確定。
(☜借方)繰越利益剰余金は¥450,000。このうち,社内留保部分と社外流出部分計¥340,000
の借方金額確定。
問題 29:株式会社京都の期首商品棚卸高は,¥186,000 であり,期末商品棚卸高は下のとお
りである。なお,売上原価は「仕入」の行で計算し,棚卸減耗費,商品評価損は,売上原
価に含めず,独立の科目として損益計算書に表示する。決算整理仕訳をしなさい。
帳簿棚卸高数量 110 個 原価@¥2,000
実地棚卸高数量 内訳:
90 個 正味売却価額@¥1,920
15 個 正味売却価額@¥1,640
借方
金額
貸方
金額
正解:
(借)仕入
186,000
(貸)繰越商品
186,000
(借)繰越商品
220,000
(貸)仕入
220,000
(借)棚卸減耗費 10,000
(貸)繰越商品
10,000
(借)商品評価損 12,600
(貸)繰越商品
12,600
(解答の前提)3級でも売上原価の計算を学んだが,2級では棚卸減耗費と商品評価損も
含まれている。しかもこの2科目を①売上原価のなかに含める仕訳,あるいは②含めない
223
仕訳が出題される。
皆さんは,ボックスによる図解で学習したはずである。計算式で商品評価損と棚卸減耗費
を計算すると,
期末の商品帳簿棚卸高
@¥2,000×110 個=¥220,000
商品評価損
(@¥2,000-@¥1,920)×90 個=¥7,200
(@¥2,000-@¥1,640)×15 個=¥5,400
棚卸減耗費
(110 個-105 個)×@¥2,000=¥10,000
期首商品棚卸高と期末商品棚卸高に対して決算整理仕訳を最初に行う。
1行目と2行目
(☜借方)
(☞貸方)3級の知識を利用して解答。
3行目
(☜借方)
(☞貸方)棚卸減耗費計上の仕訳。借方貸方同時確定。
4行目
(☜借方)
(☞貸方)商品評価損計上の仕訳。借方貸方同時確定。
問題 30:関西株式会社(会計期間は4月1日から3月 31 日)は,社債(額面総額: ¥600,000,
償還期間:5年,利率:年1%,利払日:10 月末日の年 1 回)を前期の 10 月1日に額面¥100
につき¥99 で発行した。償却原価法(定額法)を適用し評価替えを行うとともに,社債利息
の未払高を計上する。
さらに,前期の貸借対照表の社債発行費の金額は,¥10,800 であった。決算整理事項の
仕訳をしなさい。
借方
金額
貸方
金額
正解:
(借)社債利息
1,200
(貸)社債
(借)社債利息
2,500
(貸)未払社債利息 2,500
(借)社債発行費償却 2,400
(貸)社債発行費
224
1,200
2,400
(解答の前提)難しくはないが,取引の内容(3つ)を正確に理解する必要がある。社債
の発行口数は計算して,1 口¥100 で 6,000 口。
1行目
(☜借方)
(☞貸方)社債は¥99 の割引発行。額面金額と発行価額との差額(¥6,000)は,
償還期(5年間)までに一定の方法(償却原価法)で社債金額を償却し増額させる。加算
額は借方社債利息。貸方は社債。借方貸方同時確定。
2行目
(☜借方)
(☞貸方)社債利息は,利払日の翌日(11 月1日)から決算期日(3月 31 日)
まで社債の利札分(5か月)の利息を見越し計上。借方貸方同時確定。
3行目
すでに,問題文から6が月分の社債発行費が償却済。社債発行時点での社債発行費の金額
を推定(¥12,000)
。故に,12 か月分の社債発行費を償却。借方貸方同時確定。
225
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