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8020推進財団
REPORT
学術集会「第13回フォーラム8020」
〈執筆〉 羽根司人 「8020」会誌編集委員
平成27年11月14日、日本歯科医師会館1階大会議室において「健康
寿命の延伸に寄与する歯科医療・口腔保健~エビデンスとそれに基づく
健康政策の推進~」をテーマに、学術集会「第13 回フォーラム8020」
が開催されました。WHO国際口腔保健部歯科医官である小川祐司先生
の基調講演に続き、福岡歯科大学教授の内藤徹先生、厚生労働省医政
局歯科保健課歯科口腔保健専門官の高田淳子先生、8020推進財団専
務理事の深井穫博先生による講演のほか、シンポジウムが開催され、活
発な議論が行われました。
102
8020 No.15 2016-1
開会挨拶
(8 0 2 0 推進財団 理事長 山科 透 )
フォーラム開催に先立ち、8020推進財団の山科
理 事 長 が 挨 拶 し、NCDs(非 感 染 性 疾 患、Noncommunicable diseases)と口腔の深い関係と、財団
が関わった「歯科医療・口腔保健のエビデンス集」
が世界的に評価されていることなどを紹介しました。
① 基調講演
(WHO 国際口腔保健部歯科医官 小川祐 司 )
日本の口腔 保 健から、グロ-バルオ-ラルヘルスへ
WHO口 腔 保 健との 協 調
C
れ、現在は194か国が参加。事務局長のマーガレッ
ト・チャン氏が2,000人ほどの職員を率い、保健政
策の提言やそのガイドラインを制定する“世界の厚
労省”
のような役割を担っているということでした。
特にNCDsは世界の死因第1位であり、またその多く
が発展途上国であることは重要な課題で、2011年の
国連ハイレベル会議でも議題として取り上げられま
した。またその際、口腔疾患がNCDsとして位置づ
けられました。
2014年のWHO年次総会では、肥満とう蝕を誘発す
る砂糖の消費を減らす必要があると提言され、2015
会議での東京宣言やエビデンス集を高く評価してい
年には砂糖摂取量ガイドラインが全摂取カロリーの
ることも紹介されました。
10%未満から5%未満へと変更されました。これは1
さらに介護予防や認知予防における口腔保健の有
日の砂糖摂取量が25g(小さじ5、6杯)程度となる
用性の実証とそのモデル(指針)の作成、摂食嚥下
非常に厳しいもので、某国のチョコレート会社がク
リハビリテーションのモデル構築や有用性エビデン
レームをつけたことで発表が3か月遅れたほどです。
スの収集、がん患者などへの口腔ケアモデル概念、
これを受け、小川先生は「歯科医師は正しい知識と
「地域包括ケアシステム」のモデル概念、職種連携
情報を持ち、砂糖摂取を含めた指導が必要である」
のさらなる推進など歯科の果たす役割は大きく、口
と指摘しました。また、WHOは口腔保健専門家に
腔と全身の健康は密接に関係し、口腔の健康は「QOL
よる禁煙指導の国際基準作成にも着手しており、福
well-being」に大きく影響を及ぼすと締めくくりま
岡歯科大学で現在作成中であることや、昨年の世界
した。
8020 No.15 2016-1
推進財団 研究・調査活動報告
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小川先生が所属するWHOは1948年4月7日に設立さ
103
8020推進財団 学術集会「第13回フォーラム8020」
② 講演1
(福岡歯科大学教授 内藤 徹 )
エビデンスに基 づく健 康 教育・口腔保健情報
「ほとんどの人は健康でいたいと願っており、現
在健康に関する情報を入手する方法はたくさんあり
ます。しかし、その情報がすべて信頼できる情報か
というとそうではない」と内藤先生は言います。こ
ういった医療情報の選択と吟味をサポートするため
の手法が「Evidence Based Medicine(EBM)」です。
しかしそのエビデンスには強弱があり、健康番組
などで紹介される情報には比較対象とするものがな
いとされています。1991年にカナダとブラジルで発
売された“むし歯を防ぐ薬”には実は効果がなく発
売中止となった事実や、動物事件などの結果がその
まま当てはまるとは限らないことを紹介し、「物事
の因果関係を示すのは難しいことである」と説明さ
れました。
③ 講演2
( 厚 生 労 働 省 医政局歯科保健課 歯科口腔保健専門官 高田淳子 )
最近 の 歯 科 保 健 医 療 政策の現状とトピックス
平成23年8月に「歯科口腔保健の推進に関する法
律」が制定されましたが、この法律にある歯科疾患
の予防等による口腔の健康を保持するための保健、
医療、社会福祉、労働衛生、教育、その他の関連施
策について、関係部局との横断的な連携を図りなが
ら遂行していくため、「歯科口腔保健推進室」が設
置されました。これには国の法律に横串を刺す役割
があり、各ライフステージにおいて歯科保健対策の
充実が期待されます。
平成23年の歯科疾患実態調査によると、日本での
8020達成者は4割に近づいていますが、発展途上国
104
では80歳まで生きることが難しい現状です。また認
り、「現状では歯科教育は十分ではない」とのこと
知症、特に初期の認知症へ歯科が介入することによ
でした。女性歯科医も4割に上りますが、その活躍
る効果の解明など課題も多くありますが、今後の歯
の場も十分とは言えず、さまざまな課題に厚生労働
科医療は形態回復から機能回復へ向かう必要があ
省も取り組んでいることをお話していただきました。
8020 No.15 2016-1
④ 講 演3
(8 0 2 0 推進財団専務理事 深井穫 博 )
歯 科 医 療による健 康 増進効果に関する調査研究
8020推進財団では、2014年から全国の歯科医療機
関と患者が参加する長期大規模研究である「歯科医
療による健康増進効果」に関する調査研究事業を始
めました。参加した歯科医療機関は1,215施設で、
男性4,442人、女性7,957人の計1万2,399人の患者が対
象となりました。
「歯や歯肉の状態が良くない」
「あまり良くない」
と回答した者は全体の34.5%。20〜40歳代では25〜
30%であるのに、50〜60歳代では40%前後、70歳代
以上では逆に30%前後となりました。また全身の健
康状態について「良くない」
「あまり良くない」と答
が全体の20.7%と最も多く、高脂血症8.1%、糖尿病
えた者が全体の12%であり、お口の健康状態に比べ
5.8%、心臓疾患3.5%でした。また高血圧症の患者
ると良好であることがうかがえました。
は70歳代の約4割、80歳代の約半数と、高齢者の歯
患者の全身疾患の状況については、高血圧症の者
科患者に高血圧症の有病者が多いという結果でした。
シンポジウム
(座長/ 8 0 2 0 推進財団専務理事 深井穫 博 )
健 康 寿 命 の 延 伸に寄 与 する歯科医療・口腔保健
~エビデンスとそれに基づく健 康 政 策 の 推 進~
内藤先生は「医療経済的に高齢者の肺炎ワクチン
長を務め、小川先生、内藤先生、高田先生に8020推
は意外に高価であるが、口腔ケアはコスト的にもっ
進財団の山科透理事長が加わりました。
とかかる。しかしQOLの向上など付加価値が高い」
最初に講演についての質問を受け付けたところ、
と述べ、「在宅が重要。病人は家にいる。実態はま
フロアから「う蝕や歯周疾患は感染性疾患ではない
だ不明」と強調しました。高田先生は急性期におけ
か」という質問が出て、小川先生から「感染性疾患
る病院への歯科介入などが今後の課題であることを
ではあるが、治療を行っていくと生活習慣病の側面
追加しました。
を追及していく必要が出てくる」という答えをいた
小川先生の基調講演でのお話や、深井先生が触れ
だくなど、活発な質疑応答が行われました。
た、世界で最も有名な医学雑誌のひとつ『ランセッ
山科先生は「歯科医師会は治療効果がどうであっ
ト』の「2億人の歯の痛みに着目したほうが良い」
たかを示し、政策提言を行う必要がある。現状では
という2015年の記載などで、歯科医療の重要性が広
歯を治療してどう変わったかという最終アウトカム
く世界で認識されている現状がわかりました。また
が見えておらず、医療施策のためにEBMを確立する
小川先生の言われた「単に病気でない状態が健康で
ことが重要」と述べました。
はない。高齢者の幸福や住みなれた環境での機能性
小川先生は「口腔の状態が良くなれば全身の状態
が求められる」という言葉が、今日本が取り組んで
も良くなり、医療費が下がるといったストーリー展
いる「地域包括ケア」の考え方と一致していること
開になるのが理想的。そのためには教育、歯科医科
から、国際社会でも日本のこれからの高齢者施策な
の教育改革が必要で、オーラルヘルスの歯科教育が
どが注目されていることがわかり、意義深いフォー
重要」とまとめました。
ラムでした。
8020 No.15 2016-1
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推進財団 研究・調査活動報告
続いて行われたシンポジウムでは、深井先生が座
C
105
歯科医療による健康増進効果に
研究事業 関する調査研究事業
8020推進財団
歯科医療の健康増進効果を明らかにするために、全国1,354施設の歯科医院と
20歳以上の患者1万2 , 278人を対象に調査を行いました。定期健診を目的とし
て受診していた者は43%で、治療で来院している者に比べて口腔や全身の健康
状態が良好と回答する者が多くいました。引き続き縦断調査を行い、歯科医療
が口腔や全身の健康にどの程度影響しているのか検証していく予定です。
8020推進財団調査体制
大久保満男
山科 透
深井 穫博
佐藤 徹
神原 正樹
宮﨑 秀夫
安藤 雄一
嶋﨑 義浩
相田 潤
古田美智子
住友 雅人
1
8020推進財団役員
8020推進財団 前理事長
8020推進財団 理事長
8020推進財団 専務理事
(研究責任者)
8020推進財団 常務理事
調査研究事業検討会 委員
大阪歯科大学名誉教授
新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命科学専攻口腔健康科学講座教授
国立保健医療科学院地域医療システム研究分野統括研究官
愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座教授
東北大学大学院歯学研究科国際歯科保健学分野准教授
九州大学大学院歯学研究院口腔予防医学分野助教
日本歯科医学会会長
はじめに
執筆者
古田美智子
九州大学大学院歯学研究院
口腔予防医学分野
国の歯科医院の患者を対象に調査を実施しています。
本稿では、この調査の概要と2014年度の調査結果を
報告します。
8020運動が開始され26年が経過しました。この間、
国民の口腔の健康状態は改善し、歯が多く残ってい
2
調査事業の概要
る人が増えてきました。国の調査(歯科疾患実態調
査)によると、80歳で20本以上の歯を持っている人
1)目的
が、1993年は11%、2005年は25%、2013年では34%と
口腔の健康を維持することは全身の健康の保持・
増加しています。
増進に寄与すると考えられます。たとえば、口腔の
しかしその一方で、口腔の疾患で悩む人々はいま
疾患を予防するために歯科医院に定期的に来院して
だに多くいます。高齢者で口腔の健康状態が不良で
歯科医療を受けることによって、口腔の健康が維持
あると、食事が十分に摂れず栄養状態が悪化し、全
され、全身の健康状態が増進する可能性があります。
身の健康状態にも良くない影響が現れることが最近
しかし、歯科受診状況がどの程度、口腔や全身の健
の研究で明らかになっています 1, 2)。また、さまざ
康に貢献しているのかはまだ不明な点が残っていま
まな調査研究から、口腔の健康は全身の健康に関与
す。本事業では、歯科医療の健康増進効果を明らか
していることが報告されています3~6)。生涯にわたっ
にするために、歯科医院の受診状況によって口腔の
て口腔の健康状態を維持するためには、若いときか
健康状態および全身の健康状態がどのように変化す
ら口腔の疾患を予防することや、病気を早めの段階
るのかを継続的に調査します。本事業は、
で治療することが必要です。むし歯や歯周病といっ
た口腔の疾患は自然に治ることがないので、歯科医
療は、口腔の健康を維持するために欠かすことがで
きないものです。
①歯科医院を受診している患者の口腔および全
身の健康状態の把握
②歯科医院の受診状況と口腔および全身の健康
の関係の検討
このように、歯科医療は口腔の健康を維持するこ
③歯科医院の受診状況に影響する要因の把握
とから全身の健康状態を維持・増進させる可能性が
を目的として実施しています。
あると考えられますが、歯科医療がどのくらい健康
106
に貢献しているのかを調べた研究は意外と少ないの
2)方法
が現状です。そこで、2014年度から8020推進財団は、
本事業は、8020推進財団に調査研究事業検討委員
歯科医療による健康増進効果を検証するために、全
会を設置し、全国の都道府県歯科医師会の協力のも
8020 No.15 2016-1
表1 2014年度の調査項目
図1 調査の流れ
と実施されています。この事業では、歯科医院を対
象に行う調査(歯科医院調査)と患者を対象に行う
調査(患者調査)を行っています。対象となる歯科
医院は、各都道府県歯科医師会に所属する歯科医院
からそれぞれ30施設を選び、計1,410施設に調査の協
力をお願いしました。対象患者は、2014年10月下旬
の1週間に、協力を得られた歯科医院に来院した20
歳以上の初診および再診患者(全体で約3万人)とし、
調査の同意を得るようにしました。
2014年度は調査のベースラインとして、歯科医院
調査と患者調査を行いました(図1)。歯科医院調
査では、対象歯科医院に質問票を配布し、歯科医院
した新患・再初診患者数について回答が得られた
歯科医院の受診患者に対し質問票調査と歯科健診を
1,084施設の新患・再初診患者の総数は4万8,986人で、
各歯科医院が実施しました。2014年度の調査項目を
1歯科医院あたり45.2±71.2人(平均値±標準偏差)
表1に示します。質問票調査では、口腔や全身の健
でした。調査を実施した歯科医院1,215施設におい
康状態の自己評価、歯みがき回数などの口腔保健行
て1万2,399人の患者から調査協力が得られ、1歯科医
動、社会経済状況を尋ねました。歯科健診では、歯
院あたり10.2±6.6人でした。
の状態や歯周組織状態を評価しました。歯周組織状
態は、WHO Oral Heath Surveys 第5版を参考にして歯
2)歯科医院調査の結果
周ポケットは全歯を測定しました。
歯科医院調査として、歯科医院の状況に関する質
2015年度から2019年度は、調査の同意が得られた
問票を配布し、調査実施歯科医院1,215施設のうち
受診患者に対して、毎年、郵送法による追跡調査を
1,181施設から回答が得られました。質問票に回答
実施する予定です。
した歯科医院の院長の平均年齢は51.9±8.2歳で、男
3
C
8
0
2
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推進財団 研究・調査活動報告
の規模、診療形態等を調べました。患者調査では、
性1,135人、女性46人でした。
2014年度調査結果
診療従事者数では、常勤の歯科医師が1人の施設
は73.7%で、非常勤の歯科医師が1人以上いる施設は
1)調査歯科医院数と患者数
19.9%でした(表2)。常勤の歯科医師数の平均は1.3
各都道府県歯科医師会に調査を依頼した結果、46
±0.8人でした。歯科衛生士の常勤が1人以上いる施
都道府県から調査の同意が得られました。調査対象
設は77.8%で、常勤歯科衛生士数の平均は1.8±1.6人
となった歯科医院は1,354施設で、このうち質問票
でした。国の調査(平成23年医療施設静態調査)に
や患者調査の歯科健診票を回収できたのは1,215施
よると、常勤の歯科医師数の平均は1.2人、歯科衛
設(対象施設のうち89.7%)でした。
生士は1.0人でしたので、本調査に協力した歯科医
調査を実施した歯科医院のうち、調査期間に来院
院は歯科衛生士が比較的多い施設だったことがうか
8020 No.15 2016-1
107
表2 調査実施歯科医院の従事者数
常 勤
非常勤
歯科医師
歯科衛生士
平均値
1.3
1.8
標準偏差
0.8
1.6
(人数
%)
(人数
%)
0人
0
0
262
22.2
1人
870
73.7
338
28.6
2人
255
21.6
271
22.9
3人以上
56
4.7
310
26.2
平均値
0.4
0.9
標準偏差
0.9
1.3
(人数
%)
(人数
%)
0人
946
80.1
639
54.1
1人
140
11.9
270
22.9
2人
45
3.8
148
12.5
3人以上
50
4.2
124
10.5
全国調査
(H23医療施設調査)
常勤の平均値
1.2
1.0
図2 過去1か月に実施した歯科予防処置
図3 定期健診時に成人に対して毎回必ず行っている処置や指導
がえます。
歯肉縁上の歯石除去や歯面清掃を毎回必ず行う施設
歯科医院の診療台数では、質問票に回答した歯科
は70%以上で、なかでも13.2%の施設はフッ化物歯
医院の72.0%は診療台数が3〜4台で、診療台数の平
面塗布を毎回必ず行っていました(図3)。
均は3.9±1.5台でした(表3)。歯科衛生士専用の診
療台が1台以上ある歯科医院は21.8%でした。国の調
3)患者調査の結果
査では診療台数の平均は3.2台でしたので、本調査
歯科医院の来院患者を対象として口腔診査と質問
に協力した歯科医院の規模は全国平均とほぼ変わら
票調査を行い、2014年度は1万2,399人が調査に協力
ないと考えられます。
してくれました。年齢別の人数を見ますと60歳代の
歯科医院の診療形態として、歯科予防処置と定期
患 者 が 最 も 多 く(図4)、年 齢 の 分 布 で は20 歳 代
健診時に行っている処置内容を評価しました。歯科
8.1%、30歳代12.3%、40歳代15.5%、50歳代17.0%、
予防処置の実施状況について、80%以上の施設がフッ
60歳代23.7%、70歳代18.6%、80歳以上4.8%で年齢の
化物歯面塗布や歯周疾患等の予防管理を実施してお
偏りはそれほど大きくなかったと言えます。歯科医
り、フ ッ 化 物 洗 口 を 実 施 し て い る 施 設 は 15.2%、
院 の 来 院 理 由 と し て、治 療 の た め 来 院 し た 者 が
シーラントを行っている施設は57.5%でした(図2)。
57.5%、定期健診を目的に6か月以上の間隔で受診し
また、
定期健診を実施している施設は85.5%でした。
た者が26.4%、6か月以内に定期来院した者が16.1%
成人に対して定期健診時に行っている内容として、
でした。
表3 調査実施歯科医院の診療台数と歯科衛生士専用診療台数
診療台のうち
診療台数
平均値
3.9
平均値
0.4
標準偏差
1.5
標準偏差
0.8
(人数
%)
2,500
(人数
%)
1-2台
69
5.8
0台
784
66.4
3台
486
41.2
1台
165
14.0
4台
364
30.8
2台
57
4.8
5台
157
13.3
3台
35
3.0
6台以上
105
8.9
無回答
140
11.9
全国調査
(H23医療施設調査)
常勤の平均値
108
3,000
歯科衛生士専用台
8020 No.15 2016-1
3.2
-
2,000
1,500
1,000
500
0
図4 対象者の年齢と歯科医院の来院状況
いがみられるかを確認したところ、治療を目的に歯
科医院を受診していた60歳以上の者では、20本以上
歯科医療調査
全国調査
(H23歯科疾患
実態調査)
の歯が残っている割合が62.8%でしたが、定期的に
来院していた者のうち6か月以上の間隔があって受
診した者は76.2%、6か月以内に受診していた者は
76.9%でした(統計解析のχ2 検定の結果、p値<
0.001)
(図6a)。歯科医院を受診している者でも定
期的に来院している者の方が歯は多く残っていたこ
とがうかがえます。
歯周組織の健康状態では、4〜6mm未満の歯周ポ
図5 現在歯数の状況
ケットを保有している者は41.3%、6mm以上の歯周
口腔診査を実施した患者は1万2,205人(男性4,362
ポケットを保有している者は21.5%でした。歯科医
人、女性7,843人)で、その1人平均現在歯数は24.3
院の受診状況との関係を評価したところ、60歳以下
本でした。現在歯数が0本の者は全体の0.7%、1〜9
の者で歯周ポケットが4mm以上の者は、治療によっ
本は4.3%、
10〜19本は11.5%、
20本以上は83.4%でした。
て来院した者と6か月以内に定期来院した者では
全体のうち、80歳以上の者は586人(全体の4.8%)で、
60%と同じ割合で、6か月以上の間隔で定期来院し
80歳以上で20本以上の歯がある者は41.5%でした。
た者より高い割合でした(統計解析のχ2 検定の結果、
全国調査(平成23年歯科疾患実態調査)における20
p値<0.001)
(図6b)。これは歯周組織状態が悪いこ
歳以上の者の現在歯数と比較すると、70歳代の本調
とによって、短い間隔で定期的に来院していた者が
査の対象者は20.2本であったのに対し、全国調査で
いたことが考えられます。
は16.6本でした(図5)。また、80歳以上では本調査
歯科医院の来院状況によって、口腔や全身の健康
が16.3本で、全国調査では11.0本ですので、この結
状態が異なるかを評価したところ、定期来院してい
果から、歯科医院の来院患者つまり歯科医療を受け
る者より治療によって来院している者の方が口腔や
ている者では高齢になっても歯が多く残っているこ
全身の健康状態が悪いと回答していました(図6c、
とが示唆されます。
d)。今後行う追跡調査では、定期的な通院で口腔
歯科医療の内容によって残っている歯の本数に違
や全身の健康が維持できることを評価したいと思い
a. 現在歯数
C
8
0
2
0
b.歯肉の状況
推進財団 研究・調査活動報告
c. 主観的口腔の健康状態が不良な者
d. 主観的全身の健康状態が不良な者
図6 歯科医院の来院状況と口腔・全身の健康状態の関係
8020 No.15 2016-1
109
a. 各疾患の有病状況
取る方法)で全国から5,000人を抽出して調査を実
施します。
5
今後の調査について
2015年度から2019年度は、2014年度調査に参加し
た歯科医院受診者に対して、毎年同時期に郵送法に
よる追跡調査を実施します(図1)。追跡調査の内
容は、2014年度調査の質問項目をもとにした質問紙
調査と歯科健診となります。2014年度調査の参加者
には歯科健診票を郵送し、歯科医院を受診した場合
b. 年齢別の高血圧症の有病状況
は歯科医院で健診票に記入してもらうようにします。
2020年度以降は、今後の経過を見て追跡調査を引き
続き実施するのかを検討していきます。
追跡調査によって口腔や全身の健康状態の変化を
把握し、歯科医療による歯の喪失防止効果と全身の
健康増進効果などを検証していきます。歯科医院を
受診することで歯の喪失を防ぐことができ、歯が多
く残っていると全身の健康状態が保持・増進される
と考えられます。本調査研究事業で歯科医療の効果
が明らかになりましたら、健康長寿社会における歯
科医療の重要性を示すことができ、効果的な歯科医
図7 歯科医院の来院患者における全身疾患の有病状況
療を提供することが可能となります。
次世代が口腔の疾患や口腔機能の低下に悩むこと
ます。
歯科医院患者の全身疾患の有病状況では、高血圧
症の者が全体の20.7%と最も多く、高脂血症(脂質
異常症)8.1%、糖尿病5.8%、心臓病3.5%でした(図
に寄与する歯科医療・口腔保健を充実させていくた
めに、本調査研究事業へのご理解・ご協力をお願い
いたします。
7a)。高血圧症の患者は、70歳代の約4割、80歳代
●参考文献
の約半数に認められ、高齢者の歯科患者に高血圧症
1)Chang, CC., Roberts, BL. : Feeding difficulty in older adults with
dementia. J Clin Nurs. 17: 2266-2274, 2008.
2)Stuck, AE., Walthert, JM., Nikolaus, T., Bula, CJ., Hohmann, C., Beck,
JC. : Risk factors for functional status decline in community-living
elderly people: a systematic literature review. Soc Sci Med. 48: 445469, 1999.
3)Joshipura, KJ., Hung, HC., Rimm, EB., Willett, WC., Ascherio, A. :
Periodontal disease, tooth loss, and incidence of ischemic stroke.
Stroke. 34: 47052, 2003.
4)Grossi, SG., Genco, RJ. Periodontal Disease and Diabetes Mellitus: A
Two-Way Relationship. Ann Periodontol. 3: 51-61, 1998.
5)Cullinan, MP., Ford, PJ., Seymour, GJ. : Periodontal disease and
systemic health : current status. Aust Dent J. 54 (Suppl 1) : S62-9,
2009.
6)Saito, T., Shimazaki, Y. Metabolic disorders related to obesity and
periodontal disease. Periodontol 2000. 43: 254-266, 2007.
の有病者が多い結果でした(図7b)。
4
一般住民を対象とした調査
(2015年度)
2014年度調査事業は歯科医院受診者のみを対象と
して実施しました。この対象者では歯科医院を受診
していない者の実態を捉えることができないため、
2015年度に一般地域住民を対象とした調査を計画し
ています。
この調査では、質問票調査を2014年度の調査と同
様の質問項目で実施し、歯科医院の受診状況と歯・
口および全身の健康の関係を明らかにするために、
一般地域住民と歯科医院受診者の調査結果の比較・
検討を行います。対象となる一般地域住民は20〜79
歳で、層化2段無作為抽出法(世論調査でよく用い
られる方法で、ある集団から対象者を無作為に選び
110
のない社会を目指すとともに、健康長寿社会の実現
8020 No.15 2016-1
●プロフィール
ふるた・みちこ
九州大学大学院歯学研究院口腔予防医学分野助教。2006年
3月東北大学歯学部卒業、11年3月岡山大学大学院医歯薬学
総合研究科博士課程修了、11年4月から現職。1981年12月
生まれ、鳥取県出身。研究テーマ:口腔と全身の健康との
関連、口腔と嚥下機能の関係
8020推進財団
指定研究
事業報告
1
多目的コホート研究
(JPHC study)
に
おける口腔と全身の健康に関する研究
受動喫煙と口腔の健康
多目的コホート研究の疫学データを用いて分析したところ、男性において喫煙
は歯の喪失や重度の歯周病のリスク要因であることが確認されました。
また、受動喫煙によっても歯周病のリスクが高まることが明らかになりました。
1
はじめに
植野正之
川口陽子
東京医科歯科大学大学院
健康推進歯学分野
東京医科歯科大学大学院
健康推進歯学分野
ではそれぞれ10.7%、5.4%、6.0%、6.7%、28.6%、
42.6%、女性ではそれぞれ21.4%、53.6%、3.1%、
18.1%、1.3%、2.5%でした。さらに、教育歴、糖尿
病の既往、BMI、飲酒量、ストレス、かかりつけ歯
のたばこの煙に曝露される受動喫煙も喘息、肺がん、
科医の有無を質問票で調査しました。
心臓血管疾患のような健康障害と関連していること
また、歯科健診(第三大臼歯は除外)を行って、
が証明されています。また、喫煙は歯の喪失や歯周
現在歯数と歯周組織の状態を調べ、6mm以上の歯周
病といった口腔疾患の主要なリスク要因のひとつで
ポケットが1歯以上ある場合を重度の歯周病と定義
もあり、現在歯数の低下および歯周病の重症化や有
しました。さらに、臼歯の咬合状態を示す機能歯ユ
病率の増加を引き起こします 1~3)。一方、受動喫煙
ニット(n-FTU)を算出しました。口腔衛生状態は、
の口腔の健康への影響についての研究は少なく、そ
すべての歯あるいは義歯を診査し、歯垢の付着状態
の関連はまだ明らかになっていません。本研究では
を評価しました。
喫煙、特に受動喫煙が現在歯数や歯周病などの口腔
喫煙状況と口腔保健状況(現在歯数、n-FTUおよ
保健状況と関連しているか、日本の疫学データをも
び歯周病)との関連についての解析は、男女別に年
とに検討を行いました4)。
齢、教育歴、糖尿病の既往、BMI、飲酒量、ストレス、
2
方法
本研究は、多目的コホート調査のベースライン調
査(1990年)と歯科調査(2005年)の両方に参加し
かかりつけ歯科医の有無、口腔衛生状態などの交絡
因子を調整して行いました。
3
結果
た1,164名(男性552名、女性612名、55〜75歳:2005
1)喫煙状況と歯の状況
年時点)を分析対象としました。
男性では交絡因子調整後、喫煙者は受動喫煙経験
1990年の多目的コホート調査の喫煙状況に関する
のない非喫煙者より2.5本現在歯数が少なく(p<0.05)、
アンケート結果から、①受動喫煙経験のない非喫煙
上下で噛み合う臼歯のペア数(n-FTU)は1.6本少な
者、受動喫煙経験のある非喫煙者〔 ②家庭のみ、
い(p<0.01)ことが明らかになりました。受動喫煙
③家庭以外の場所(職場等)のみ、④家庭および家
の状況と現在歯数やn-FTUとの間には有意な関連は
庭以外の場所 〕、⑤過去喫煙者、⑥喫煙者の6つの
見られませんでした。
グループに分けました。各グループの割合は、男性
女性では喫煙および受動喫煙状況と歯の状況とに
8020 No.15 2016-1
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推進財団 研究・調査活動報告
これまで多くの研究により、喫煙だけでなく他人
111
現在歯数
受動喫煙なし
男性
家庭のみ
現在歯数
家庭以外のみ 家庭と家庭以外
過去喫煙者
喫煙者
受動喫煙なし
女性
家庭のみ
受動喫煙あり
家庭以外のみ 家庭と家庭以外
過去喫煙者
喫煙者
受動喫煙あり
非喫煙者
非喫煙者
図1 喫煙状況と現在歯数(交絡因子調整後)
* 受動喫煙経験のない非喫煙者との間で有意 (p<0.05)
n-FTU
男性
受動喫煙なし
家庭のみ
家庭以外のみ
n-FTU
家庭と家庭以外
過去喫煙者
喫煙者
女性
受動喫煙なし
受動喫煙あり
家庭のみ
家庭以外のみ
家庭と家庭以外
過去喫煙者
喫煙者
受動喫煙あり
非喫煙者
非喫煙者
図2 喫煙状況とn-FTU(交絡因子調整後)
** 受動喫煙経験のない非喫煙者との間で有意 (p<0.01)
有意な関連は認められませんでした(図1、 2)。
受動喫煙経験のない非喫煙者と比較して、現在歯数
が少なく重度の歯周病のリスクが高いことが確認さ
2)喫煙状況と重度の歯周病のリスク
れました。また、男性において受動喫煙者では歯周
男性では交絡因子調整後、喫煙者の歯周病のリス
病のリスクが高いことも示されました。これは、非
クは受動喫煙経験のない非喫煙者の3.31倍(p<0.01)
喫煙者であっても受動喫煙により、喫煙者と同程度
でした。また、家庭のみで受動喫煙経験のある非喫
に歯周病のリスクが高まる可能性を意味します。ま
煙者では3.14倍(p<0.05)、家庭および家庭以外の場
た今回、受動喫煙による現在歯数への影響はみられ
所 で 受 動 喫 煙 経 験 の あ る 非 喫 煙 者 で は 3.61 倍
ませんでした。受動喫煙は歯周病のリスクは高める
(p<0.05)
、
歯周病のリスクが高いことが判明しました。
ものの、歯の喪失を招くほどの強い影響はないと考
女性では喫煙および受動喫煙状況と歯周病との間に
えられます。しかし、歯周病は糖尿病などほかの病
有意な関連は認められませんでした(図3)。
気のリスク要因でもあるので、予防や治療に心がけ
4
考察
る必要があります。
たばこのニコチンは歯周病をひき起こす歯周病菌
の発育を促進し、その病原性を高めます。また、喫
過去に報告されたように、本研究により喫煙者は
112
8020 No.15 2016-1
煙は全身の免疫力を低下させ、歯周組織の破壊を助
オッズ比
受動喫煙なし
男性
家庭のみ
オッズ比
家庭以外のみ 家庭と家庭以外
過去喫煙者
喫煙者
受動喫煙なし
女性
家庭のみ
受動喫煙あり
家庭以外のみ 家庭と家庭以外
過去喫煙者
喫煙者
受動喫煙あり
非喫煙者
非喫煙者
図3 喫煙状況と重度の歯周病のリスク(交絡因子調整後) * 受動喫煙経験のない非喫煙者との間で有意 (p<0.05)
** 受動喫煙経験のない非喫煙者との間で有意 (p<0.01)
●参考文献
喫煙者は歯周病に罹りやすくなると考えられていま
1)Johannsen A, Susin C, Gustafsson A : Smoking and inflammation :
evidence for a synergistic role in chronic disease. Periodontol 2000
2014, 64:111-126.
2)Yanagisawa T, Ueno M, Shinada K, Ohara S, Wright FA, Kawaguchi Y:
Relationship of smoking and smoking cessation with oral health
status in Japanese men. J Periodontal Res 2010, 45:277-283.
3)Yanagisawa T, Marugame T, Ohara S, Inoue M, Tsugane S, Kawaguchi
Y: Relationship of smoking and smoking cessation with number of
teeth present: JPHC Oral Health Study. Oral Disease 2009, 15:69-75.
4)Masayuki Ueno, Satoko Ohara, Norie Sawada, Manami Inoue,
Shoichiro Tsugane, Yoko Kawaguchi. The association of active and
secondhand smoking with oral health in adults: Japan public health
center-based study, Tob Induc Dis, 2015; 13:19.
す。
受動喫煙でも同様のメカニズムが推察されます。
女性においては受動喫煙と歯周病との間に関連が
みられませんでした。女性は男性よりもたばこをが
んの原因と捉えている割合が多いという報告から推
察すると、家族の中に喫煙者がいたとしてもたばこ
の煙を避けるために、実際の受動喫煙の機会が少な
かったのかもしれません。また、女性は男性と比較
して、たばこのニコチンや代謝物のコチニンをより
速く排出するという報告もあり、女性は男性よりも
たばこの影響を受けにくいのかもしれません。本研
究で見られた受動喫煙と口腔の健康に関する男女差
については、さらに研究を行って明らかにする必要
があると考えています。
本研究により、喫煙は口腔の健康を低下させるリ
スク要因であることが確認されました。また、非喫
煙者であっても受動喫煙により歯周病のリスクが高
くなることが示されました。受動喫煙は社会全体の
取り組みにより避けることのできるリスク要因です。
「平成26年国民健康・栄養調査」によると、日本人
の男性の喫煙率は約32%、女性では約9%です。喫
煙者に対して、喫煙することが自分自身の健康を損
なうだけでなく、たばこから出る煙によって、他人
の健康にも悪影響を与えていることを認識してもら
うことが大切です。
●プロフィール
うえの・まさゆき
東京医科歯科大学大学院健康推進歯学分野准教授、歯学博士、
公衆衛生学修士。1986年鹿児島大学歯学部卒業、90年東京医
科歯科大学大学院博士課程修了、94年カリフォルニア大学
バークレー校大学院修士課程修了、96年カリフォルニア大学
サンフランシスコ校レジデント修了、08 年東京医科歯科大
学大学院健康推進歯学分野助教、10年より現職。宮崎県出身。
研究テーマ : 口腔衛生、疫学、行動科学、統計学
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推進財団 研究・調査活動報告
長し、歯周病菌に感染しやすくします。その結果、
●プロフィール
かわぐち・ようこ
東京医科歯科大学大学院健康推進歯学分野教授、歯学博士。
1979年東京医科歯科大学歯学部卒業、同年同大学歯学部予
防歯科学講座助手、94年オーストラリアメルボルン大学歯
学部客員研究員、東京医科歯科大学歯学部国際交流室講師、
文部省在外研究員(米国、デンマーク)等を経て、2000年
より現職。横浜市出身。研究テーマ:口腔疾患の予防と疫
学に関する研究、オーラルヘルスプロモーションに関する
研究、国際歯科保健に関する研究、ほか
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113
8020推進財団
指定研究
事業報告
2
歯科医師を対象とした歯と全身の健康、
栄養との関連に関する研究
〜歯間部清掃器具使用と全死亡リスクとの関連〜
歯と全身の健康の関連を検討するため、都道府県歯科医師会員自らが参加する
追跡調査を実施しました。
今回は歯磨き回数および歯間部清掃器具(デンタルフロス、歯間ブラシ)の
使用回数と、全死亡リスクとの関係を検討したところ、歯間部清掃器具の使用
回数が多いほど死亡危険度が低いという関連が見られました。
内藤真理子
川村 孝
内藤 徹
小島正彰
梅村長生
横田 誠
花田信弘
若井建志
名古屋大学大学院
医学系研究科 予防医学
1
歯の健康と全身の健康
−歯科医師コホート研究
名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学
京都大学環境安全保健機構 健康科学センター
福岡歯科大学 高齢者歯科
愛知県歯科医師会
社会保険診療報酬支払基金愛知支部 医療顧問
福和会横田塾
鶴見大学歯学部 探索歯学
科医師会に提出される死亡診断書の写し、および診
断書などを利用しました。「歯科医師健康白書」調
査では個人情報保護のため、署名のある調査同意書
歯の健康が全身の健康につながるとする「8020運
は各都道府県歯科医師会、匿名の調査票は調査事務
動」のテーゼを証明するためには、口腔状態が良い
局でそれぞれ厳重に保管し、追跡調査には両者に共
者は実際に寿命が長く、重大疾病への罹患が少ない
通の整理番号を用いています。
かどうかを追跡調査(コホート研究)により検討す
ることが望まれます。しかも死亡や全身疾患の発生
などは多くないため、1万人単位の集団を数年から
2
歯磨き回数、 歯間部清掃用具の
使用回数と全死亡リスクとの関係
十数年の長期にわたって追跡することが必要です。
114
しかし地域住民を対象とした場合、大規模なコ
今回は歯磨きおよび歯間部清掃用具〔デンタルフ
ホート研究には歯科検診や追跡調査に膨大な費用と
ロス(糸ようじ)、歯間ブラシ〕使用の回数と、全
労力が必要になります。そこで私たちは、調査票(ア
死亡リスクとの関係を調べ、身近な口腔衛生習慣が
ンケート)によってかなり正確な口腔状態のデータ
長寿につながる可能性を検討しました。
が得られ、かつ歯科医師会を通じた追跡調査が可能
分析対象者は、最初のアンケート実施時点で主要
な歯科医師を対象に追跡調査を実施いたしました1~3)。
な死因となる疾患(がん、心筋梗塞・狭心症、脳卒
この研究は、口腔保健の重要性についての情報を歯
中)がなく、歯磨き回数、歯間部清掃用具の使用回
科医師自らが発信する機会になり、「8020運動」の
数など必要な情報が得られた研究参加者1万9,733名
推進にも有用と考えています4)。
です(平均年齢±標準偏差は51.4±11.6歳、女性
本研究は都道府県歯科医師会のご協力の下、歯科
1,609名〔8.2%〕)。2014年6月までの平均9.6年間の追
医師会員を対象に実施。調査開始時点の基礎情報の
跡期間中に、1,086名の死亡が確認されました。
収集は「歯科医師健康白書」調査 5)として、アン
歯磨き回数についてのデータ分析では、調査参加
ケートにより行いました。収集した情報は、年齢、
者を歯磨き回数(アンケートへの回答による)によ
既往歴、家族歴、口腔状態、生活習慣、心理要因な
り、1日1回以下(13.6%)、2回(30.0%)、3回(42.3%)、
どで、2001年2月から2006年7月までに全国で2万
4回以上(14.2%)の4つのグループに分け、歯磨き
1,272名の先生にご回答いただきました。
回数が1日2回と回答したグループを1(基準)とした、
研究参加者の追跡調査には、書面による同意を得
他の各グループの死亡危険度(ハザード比)を求め
た上で、歯科医師共済制度などの関係で都道府県歯
ました。同様にして、歯間部清掃用具使用回数につ
8020 No.15 2016-1
性、年齢を考慮(trend P = 0.091)
他の関連要因も考慮(trend P = 0.87)
さらに喪失歯数も考慮(trend P = 0.87)
性、年齢を考慮(trend P < 0.001)
他の関連要因も考慮(trend P = 0.009)
さらに喪失歯数も考慮(trend P = 0.020)
死亡危険度
死亡危険度
1日の歯磨き回数
図1 歯磨き回数と死亡危険度(ハザード比)との関係
歯間部清掃用具の使用回数
図2 歯間部清掃用具の使用回数と死亡危険度(ハザード比)との
関係(*: P < 0.05; **: P < 0.01)
いても、ほとんど使用しないグループ(32.7%)を1
最後になりましたが、多大なご協力を賜っており
とした、週4回以下使用(32.6%)、週5回以上使用
ます都道府県歯科医師会、8020推進財団の関係者、
(34.7%)のグループの死亡危険度を求めました。死
ならびに調査にご参加いただいております歯科医師
亡危険度の計算では、死亡リスクに影響する可能性
会会員の先生に深謝申し上げます。
のある要因(性別、年齢、喫煙、飲酒、BMI、精神
的健康度、激しい運動の有無、睡眠時間、糖尿病、
高脂血症、高血圧、喪失歯数〔智歯除く〕)を考慮
しました。
分析結果は図1に示すように、歯磨き回数と死亡
リスクとの間には明らかな関連はみられませんでし
が低下し、ほとんど使用しないグループを1とした
週4回以下使用、週5回以上使用するグループの死亡
危険度は、それぞれ0.88、0.84となり、週5回以上使
用するグループでは統計学的に意味のあるリスク低
下が認められました(喪失歯数も含め、死亡リスク
に影響する可能性のある要因を極力考慮した場合。
図2の「さらに喪失歯数も考慮」)。この関係は、調
査参加時点で65歳未満であった参加者でより強く、
同様に計算した週5回以上使用するグループの死亡
危険度は0.74でした。
以上の結果から、歯間部清掃用具の使用が長寿と
関連する可能性が示唆されました。ただし今回の検
討とは別に、歯間部清掃用具の使用と虚血性心疾患
(心筋梗塞、狭心症など)や脳卒中の死亡・罹患リ
スクとの関係を検討しましたが、明らかな関連は見
られなかったことから、今後、死亡原因の検討など
により、歯間部清掃用具の使用がどのような疾患の
リスク低下と関連しているのか、詳細に検討する必
要があります。
1)Wakai, K., Naito, M., Naito, T., Nakagaki, H., Umemura, O., Yokota,
M., Hanada, N., Kawamura, T. : Longitudinal Evaluation of Multiphasic, Odontological and Nutritional Associations in Dentists
(LEMONADE Study): study design and profiles of nationwide cohort
participants at baseline. J. Epidemiol., 19: 72-80, 2009.
2)Wakai, K., Naito, M., Naito, T., Kojima, M., Nakagaki, H., Umemura,
O., Yokota, M., Hanada, N., Kawamura, T.: Tooth loss and intakes of
nutrients and foods : a nationwide survey of Japanese dentists.
Community Dent. Oral Epidemiol., 38: 43-49, 2010.
3)Wakai, K., Naito, M., Naito, T., Kojima, M., Nakagaki, H., Umemura,
O., Yokota, M., Hanada, N., Kawamura, T.: Tooth loss and risk of hip
fracture: a prospective study of male Japanese dentists. Community
Dent. Oral Epidemiol., 41: 48-54, 2013.
4)若井建志, 川村 孝, 内藤真理子, 内藤 徹, 小島正彰, 中垣晴男,
梅村長生, 横田 誠, 花田信弘:歯科医師を対象とした歯と全
身の健康、栄養との関連に関するコホート研究ー歯科医師自
身からのエビデンス発信をめざしてー.日本歯科医師会雑誌,
58:865-873,2005.
5)歯科医師を対象とした歯と全身の健康,栄養との関連に関す
る研究ーこれまでの研究成果と「歯科医師健康白書」調査集
計結果ー,名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学/医学
推計・判断学,名古屋,2008.
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推進財団 研究・調査活動報告
た。一方、歯間部清掃用具の使用者では死亡リスク
●参考文献
●プロフィール
わかい・けんじ
名古屋大学大学院医学系研究科予防医学教授、医学博士。
1990年名古屋大学医学部卒業、94年名古屋大学大学院医学
研究科修了、同助手。03年愛知県がんセンター研究所主任
研究員、06年名古屋大学大学院医学系研究科准教授、14年
1月より現職。1965年11月生まれ、岐阜県岐阜市出身。主
研究テーマ:歯と全身の健康との関連、栄養疫学、がんの
疫学、分子疫学
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115
平成26年度
地域における
歯科保健
活動
1
特別支援学校の学生を対象とした
歯科保健事業
〜就業後の歯科保健推進を目指して〜
障がいのある若者が、特別支援学校を卒業して企業や施設に就職した後も、
切れ目のない歯科検診や歯科保健指導・治療が受けられ、
歯と口の健康を維持・増進できる社会を目指して事業を展開しました。
それにより、就労者における歯科保健の重要性が認識され、
岩手県歯科医師会
歯科保健を通じた支援で障がいのある若者が健康に働くことのできる
環境づくりの端緒を得ました。
三善 潤
岩手県歯科医師会 常務理事
佐藤 保
岩手県歯科医師会 会長
1
はじめに
というリーフレット(図1)を制作しました。
このリーフレットは、
① 歯と口の健康はなぜ大切なのか
障がいのある方々に関連した法律をみると、歯科
② 特別な配慮を要する子どもの
口腔保健法 には、「国及び地方公共団体は歯科検
診や歯科医療を受けることが困難な障がいのある人
③ かかりつけ歯科医について
1)
(中略)が定期的に歯科検診・歯科医療を受けるこ
とができるようにするため必要な施策を講ずること」
歯と口の健康づくり
④ 支援にかかわるみんなで取り組みたいこと
⑤ みんなで取り組みたいこと
と明記されています。また、わが国は障がい者のた
めのさまざまな法律を整備し、国連の障害者権利条
約に批准しました2)。さらに、障害者基本計画(第
3次)3)
(2013年〜2017年の5年間)では、障害者支援
施設及び障害児入所施設での定期的な歯科検診実施
率を66.9%(平成 23年)から90%(平成 34年度)に
伸ばそうという具体的な目標も掲げ、世の中は障が
いのある方々の支援に向けて動いています。
岩手県歯科医師会では、障がいのある方々にかか
りつけ歯科医を持ってもらうこと、かかりつけ歯科
医が心強い存在となることを目指し、それを支援す
る取り組みをしています。
今回、岩手県、岩手県教育委員会、岩手医科大学
歯学部の協力で実施した活動をご紹介します。
2
支援学校連携協議会参加企業への支援
1 普及啓発用リーフレット制作・配布による
啓発活動
「障がいのある方々、そのご家族、支える様々な方々、
支えようとする全ての方々のための歯と口の健康支援」
116
8020 No.15 2016-1
図1 制作した普及啓発用リーフレット(表裏)
⑥地区歯科医師会相談窓口
するためには、本人の歯と口の健康に対する意識や
で構成され、A4を縦長三つ折りにした体裁になって
努力はもちろんのこと、関わるすべての人の支援が
います。
必要です。企業や施設に就職したあとも、切れ目の
なお、リーフレットは、シンポジウム・講演会(後
ない歯科検診や歯科保健指導・治療を受けられるこ
述)参加者、岩手県歯科医師会、会員歯科診療所、
とが、障がいのある方々の歯と口の健康を維持・増
特別支援学校、一般県民、市町村担当課などに配布
進することにつながります。
されました。
2 歯科保健推進のための相談窓口の体制づくり
5
おわりに
岩手県内37市町村の特別支援学校支援歯科
保健の相談を受けるため、本会の13地区歯科医師
会を相談窓口として体制を確立しました。
3 その他、企業側からの相談に対応する
窓口の設置
県内事業所における特別支援学校生徒の雇用の際
の歯科健診ならびに歯科保健指導等の相談窓口を本
会に設置しました。
3
講習会、講演会、シンポジウムの開催
図2 第16回岩手県歯科保健大会・フォーラム「歯と健康」
1 第16 回岩手県歯科保健大会・フォーラム
今回の事業を通じて、特別支援学校、同学校高等
部卒業予定生徒、保護者および同高等部就職支援の
「歯と健康」における県民健康講座
ための連携協議会参加企業に対する歯科保健指導お
イーナ」において、シンポジウム形式で同講座を開
よび啓発により、特別支援学校卒業生の歯科保健の
催(図2)し、行政歯科医師、特別支援学校養護教
維持・増進を図ることができました。また、8020推
諭、障がい者支援施設施設長、大学病院障がい者歯
進財団による歯科保健事業が入口となって、今年度
科専門医、
歯科医師会担当者がそれぞれの立場から、
も国の予算で事業を継続することになりました。
取り組んでいることや課題点を討論しました。
岩手県では障がい者歯科治療の専門医療機関が岩
2 各地区歯科医師会での講演会
手医科大学に設置されているものの、地域での中核
4
特別支援学校への支援
となる医療機関がないことが最大の課題です。生涯
を通じた歯科保健医療の確保のためには、就労者に
おける歯科保健の重要性が認識され、障がいのある
1 特別支援学校学校歯科医への支援
若者が健康で働くことのできる環境づくりが急務と
特別支援学校生徒の口腔の健康保持・増進を図る
考えます。
ため学校歯科医への支援策として、研修会の場を設
けました。
2 学校、保護者への啓発普及事業
リーフレットを活用し、特別支援学校の教職員並
びに保護者へ啓発普及を行いました。
学校歯科検診の結果をみると、普通校の生徒と比
較して、特別支援学校の生徒は、むし歯が少ない傾
向がみられます4)。これは、本人はもとより、保護
者の方々、養護教諭や学校歯科医の先生方の努力の
成果といえるでしょう。
その良好な状態を、特別支援学校の卒業後も維持
●参考文献、 参考図書
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推進財団 研究・調査活動報告
平成26年12月14日、岩手県民情報交流センター「ア
1)歯科口腔保健の推進に関する法律(歯科口腔保健法)
2)国際連合:障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)
3)内閣府:障害者基本計画(第3次)
4)岩手県:イー歯トーブ8020プラン(岩手県口腔の健康づくり
推進計画)
5)岩手県:健康いわて21プラン(第2次)
●プロフィール
みよし・じゅん
岩手県歯科医師会常務理事。1985年岩手医科大学歯学部卒
業。1959年7月生まれ、岩手県盛岡市出身
8020 No.15 2016-1
117
平成26年度
地域における
歯科保健
活動
2
糖尿病と歯周病に関わる
医科歯科連携推進事業
糖尿病と歯周病に関する医科歯科連携は、その重要性は認知されているものの、
いまだ十分な連携体制が構築されているとは言えない状況です。
その問題点を探るためのシンポジウムと、
一般府民にもその重要性を啓発する基調講演からなる糖尿病と歯周病に関わる
医科歯科連携事業を行ったので、その内容をご紹介します。
大阪府歯科医師会
津田高司
大阪府歯科医師会 常務理事
1
はじめに
3
事業結果
糖尿病には多くの合併症があるため、糖尿病専門
同シンポジウムは平成27年2月15日に大阪府歯科
医と合併症専門医の医療連携が重要です。近年、糖
医師会館大ホールにて開催し、歯科医療関係者、保
尿病と歯周病の病態が複雑に修飾し合っている可能
健所・保健福祉センター職員、行政職員、府民を合
性を示すデータが数多く示され、歯周病は糖尿病慢
わせた合計291名の参加者がありました。まず基調
性期の第6の合併症として注目されています。また
講演1として、関西電力病院院長で日本糖尿病協会
糖尿病患者さんの歯周病は、糖尿病関連歯周炎と位
理事長の清野裕先生に「医科歯科連携の重要性 糖
置付けられ、その治療には糖尿病の状態を含めた全
身の病態把握が必要であり、医師と歯科医師の連携
がますます重要になっています。
2
事業概要
糖尿病と歯周病に関わる情報の共有・連携が不十
分であるため、実際に糖尿病の治療を担当されてい
る医師・看護師と歯周病治療に携わっている歯科医
師・歯科衛生士をメンバーとしたシンポジウムを開
催し、医療現場から糖尿病と歯周病に関する医科歯
科連携における問題点を明らかにし、今後の効果的
な普及啓発方法や更なる連携体制構築の方策を模索
することを目指しました。
また、糖尿病専門医と歯周病専門医を招き、糖尿
病と歯周病の関係についての基調講演を合わせて開
催し、一般府民にも窓口を開き、糖尿病患者さんや
その関係者にも連携の重要性を理解していただく機
会となるよう、周知・広報を行いました(図1)。
118
8020 No.15 2016-1
図1 研修会の周知ポスター
5
おわりに
図2 研修会当日の様子
尿病と歯周病を中心に」と題して、糖尿病と歯周病
互いの受診勧告を困難にしていることと、日本糖尿
の相互の影響について詳細に解説していただきまし
病協会歯科医師登録医制度と糖尿病連携手帳の普及
た。両疾患が密接な関連を持っているため、その治
の必要性を指摘しました。田中先生と横田先生はと
療に医科歯科連携が重要であること、また糖尿病患
もに病院内で医科歯科連携のもと、患者さんの指導
者さんも高齢化が進んでおり栄養管理だけでなく加
と管理に携わっておられる立場から、情報の共有の
齢に伴う筋力の低下(サルコペニア)と虚弱(フレ
重要性について実例を交えてご説明いただきました。
イル)への対応が重要になっており、口腔機能維持
という観点からの新たな歯科との連携の必要性が高
今後の課題と展開
次に基調講演2として、徳島大学大学院ヘルスバ
シンポジウムから指摘された今後の課題は、①地
イオサイエンス研究部歯周歯内治療学分野教授の
域における顔の見える連携体制の未整備、②医師・
永田俊彦先生に「糖尿病関連歯周炎の病態と臨床的
歯科医師の知識不足による情報共有の困難化であ
対応」と題して、糖尿病患者さんにおける歯周病の
り、①に関しては地域の基幹病院等が中心となって
病態と治療法ならびに歯周病の治療が糖尿病の病態
地域の医療従事者が広く参加できる研修会の開催、
にどのような影響を生じさせるかについて解説して
②に関しては、医師・歯科医師双方が理解しやすい
いただきました。
情報提供ツールの作成などが提案されました。また、
次にシンポジウムは、糖尿病専門医として大阪府
未コントロールの糖尿病患者さん対策として重症歯
内科医会会長の福田正博先生、歯周病専門医として
周病患者さんの積極的な内科への受診勧奨の重要性
大阪府歯科医師会常務理事の林正純先生、看護師と
も指摘されました(図2)。
して市立堺病院副師長の田中順也先生、そして歯科
この事業で明らかになった課題を踏まえ、さらな
衛生士として大阪府衛生士会常務理事の横田忍先生
る事業展開を目指しています。
8
0
2
0
推進財団 研究・調査活動報告
まっていることを指摘されました。
4
C
の4名のシンポジストにより行われました。
福田先生からは自院の糖尿病患者さんへのアン
ケート調査の結果より、歯周病との関連についての
●プロフィール
認識は比較的進んでいるものの、それが歯科への受
つだ・たかし
診につながっていない実態が示されました。当会の
大阪府歯科医師会常務理事、日本口腔外科学会認定専門医。
1986年大阪大学歯学部卒業。1961年10月生まれ、大阪府出
身
林からは、糖尿病も歯周病もともに重症化するまで
症状がない、いわゆる“沈黙の疾患”であることが
8020 No.15 2016-1
119
平成26年度
地域における
歯科保健
活動
3
糖尿病フォーラム徳島における
歯科からの糖尿病重症化予防の取り組み
〜糖尿病死亡率ワースト1脱却にむけて〜
徳島県では平成5年以降、糖尿病死亡率全国ワースト1位が14年間続き、
平成19 年には7位に改善しましたが、翌年より再び1位である状態がずっと
続いています。
徳島県歯科医師会は、糖尿病協会主催の糖尿病フォーラムに参加し、県民に
歯周病と糖尿病の関係の周知や唾液による歯周病スクリーニングや生活歯援
プログラムを用いた保健指導を行い、医科歯科、多職種と連携して糖尿病の
徳島県歯科医師会
重症化予防に取り組みました。
岡本好史
徳島県歯科医師会
地域保健担当 常務理事
1
市民公開講座の開催
糖尿病死亡率ワースト1位が13年続いた平成17年
しては初参加となった平成26年度には、
「歯周病と糖
尿病」にスポットを当てた事業が開催されました。
2
事業の内容
11月に、徳島県は徳島県医師会と共同で「糖尿病緊
急事態宣言」
(図1)を行い、徳島県医師会内に糖尿
1 市民公開講座の開催
病対策班を立ち上げました。以来県民に糖尿病の現
「歯からはじまる糖尿病対策」をテーマとして、
状と予防への注意を喚起するとともに、健康づくり
徳島大学歯周歯内治療学の永田俊彦教授の基調講演
に対する意識を高めてもらうため、県民運動として
に続いて、医師、看護師、歯科衛生士、歯科医師会
糖尿病対策に取り組んでいます。
の笠原学術担当理事らによるパネルディスカッショ
その取り組みのひとつとして、
「糖尿病フォーラム
ンが行われました。この模様は徳島県内のCATVで
徳島」を毎年開催しています。徳島県歯科医師会と
放映されました(図2)。
2 唾液を検体とした歯周病検査
当日判定希望者には、サンスターの唾液の潜血に
より歯周病をスクリーニングするぺリオスクリーン
と松風のPTMキットを用いました。後日結果郵送希
望者には四国中検の唾液中のF-Hb濃度およびLDH濃
図1 「糖尿病緊急事態宣言」ポスター
120
8020 No.15 2016-1
図2 公開講座の様子
図3 歯ブラシソムリエほか、歯科ブース
度を測定し歯周病の有無程度を測定する検査を行い
ました。
歯周病検査では、歯周ポケット検査やPCRなど数
図4 2014年6月3日の徳島新聞朝刊が歯周病検査を紹介
4
おわりに
字で示すものはありますが、唾液を用いて、結果が
徳島県では糖尿病死亡率ワースト1脱却のため、
数値でわかるこの検査については、今回参加した多
官民挙げて取り組んでいます。私たち歯科医師も診
職種からも興味を持っていただきました。
療室での治療、保健指導だけでなく、行政、他業種
と一緒になっていろいろな取り組みに参加していく
3 生活歯援プログラムの質問紙調査
ことで、口腔からの健康づくりに理解を深めてもら
生活習慣改善のための生活歯援プログラムの質問
えるものと考えています。
紙調査は、短時間で結果をわかりやすく受診者に提
また、徳島県においては、40歳代、50歳代、60歳
示することができます。イベントでの実施のため1
代における進行した歯周炎を有する者の割合は全国
回のみの保健指導となりますが、効果的な生活習慣
平均よりも高いのですが、過去1年間に歯科検診を
改善支援を期待して実施しました。
受診した人は全国平均よりも少ないとの報告があり
ます。健康増進法に基づく歯周疾患検診を実施して
いる市町村数も24市町村のうちの12市町村と少なく、
希望者には歯科相談を行いました。併せて歯周病
またその受診率は極めて低いのが現状です。
と糖尿病に関するパンフレットやデンタルパスポー
しかしながら、唾液を用いた歯周病検診を平成26
ト(歯周病と糖尿病連絡ノート)の配布、記入も行
年度の徳島県歯科医師会事業として行ったところ、
いました。また、歯ブラシソムリエと称して質問票、
徳島新聞と毎日新聞に掲載され、大変多くの受診希
問診の内容により県衛生士会の衛生士より最適な歯
望の問い合わせがありました(図4)。
ブラシ、補助用具を選択、進呈しました(図3)。
唾液による歯周病検査が短時間でできること、口
3
実施後の評価と課題
腔内を見ない低侵襲な検査であること、検査結果が
数値で出るためわかりやすいこと、目新しさなどに
関心を寄せられたことなどが考えられますが、この
例年は200〜300名程度の参加があるようですが、
ことからも歯周病をはじめとする口腔疾患に対する
今年度は徳島大学内での開催となり例年よりは来場
県民の関心は高いと感じています。そのため、次年
者が少なかったことが残念でした。
度以降も継続してこのような事業で実施し、口腔の
来場者数は、糖尿病よろず相談(管理栄養士によ
健康への関心の向上、ひいては成人歯周疾患検診の
る栄養相談、看護師による療養相談、糖尿病専門医
拡充につなげていきたいと思います。
による医療相談、
歯科衛生士よる歯ブラシソムリエ)
●参考文献、 参考図書
と 測 っ て み よ う 糖 尿 病 検 査(体 組 成、血 糖 値、
HbA1c、皮下糖化最終タンパク、頸動脈エコー、唾
液による歯周病検査、フットケア):121名、市民公
開講座:139名、歯科ブース(唾液でわかる歯周病
検診)
:四国中検77名、ぺリオスクリーン43名、歯
科相談:26名、歯ブラシソムリエ:89名でした。
唾液検査結果については、評価についてのガイド
ラインはありますが、LDHとF-Hbの結果が交錯する
場合の評価に困惑しました。
C
8
0
2
0
推進財団 研究・調査活動報告
4 歯科相談・歯ブラシソムリエ
1)人口動態統計 2)徳島県歯科保健実態調査H22
3)徳島県民健康栄養調査H22
4)徳島県健康増進事業実績報告H25
●プロフィール
おかもと・よしふみ
徳島県歯科医師会常務理事(地域保健担当)、歯学博士。
1988年福岡県立九州歯科大学卒業、05年徳島大学大学院修
了、03〜09年徳島県歯科医師会理事(会計担当)、11〜15
年徳島県歯科医師会理事(地域保健担当)、15年より現職。
1962年10月生まれ、徳島県阿南市出身
8020 No.15 2016-1
121
平成26年度
地域における
歯科保健
活動
4
沖縄県版歯科健診プログラム
『Doチェック』
リーダー研修会
〜乳幼児から高齢者までライフステージにあわせた
新しい歯科健診システム〜
『Doチェック』プログラムとは、沖縄県民の口と全身の健康を支援するための
プログラムです。沖縄の方言の「ドゥー:自分、私」
、
そして英語の「Do:行う、行動する」を重ねた名称です。
健診を受ける方が自ら参加し、歯や口の健康に関する課題を探り
沖縄県歯科医師会
(risk finding)、解決への行動につなげるための支援型歯科健診プログラム
として考案されました。
米須敦子
沖縄県歯科医師会 専務理事
玉城 均
歯科医療推進委員会 委員
1
はじめに
2
事業の内容
1995年8月に「世界長寿地域宣言」を行った沖縄
『Doチェック』完成後の2014年3月に、歯科医師・
は長寿の島として誇れることを喜びました。しかし、
歯科衛生士・行政職員を対象としたプログラム開発
その後2000年には平均寿命が女性1位・男性26位、
の背景と内容の説明会を行いました。そして今回、
2013年には女性3位・男性30位へと低下し続け、県
「より良い健康習慣を獲得する生活支援のための保
民は衝撃を受けました。この事態を受け、全県的に
健指導」ができるように、行動科学理論や技術を学ぶ
長寿県再生への取り組みがなされることになりました。
「リーダー研修会」を2014年11月30日に行いました。
沖縄県歯科医師会でも「健康長寿の延伸」に取り
講師・ファシリテーターを、北海道保健福祉部健康
組むことが喫緊の課題と受け止め、生活習慣の改善
安全局地域保健課医療参事の佐々木健先生、北海道
を中心とした一次予防に関わる健康教育の推進を図
歯科衛生士会理事の末永智美先生、川平景子先生に
るため日本歯科医師会の標準的な成人歯科健診プロ
担当していただき、先進地域の取り組みを交えなが
グラム(以下:生活支援プログラム)を土台にした、
ら研修が進行していきました。
沖縄県の実情に沿った歯科健診プログラムの構築を
世代ごとのカテゴリーの中から、『Doチェック』
実現しました。
の基本となった日歯:生活支援プログラムを例に、
『Doチェック』は受診者が、ゲーム感覚でタブ
「指導しない保健指導、やる気にする、健康教育を
レット端末にタッチ入力する方式で質問回答が進
主体とした保健指導」を目指した理論・実践につい
み、受信者の現状に合わせて自動的に類型化された
てのレクチャーを受けた後に、ワークショップ形式
保健指導の方向が提示されます。プログラムは幼児、
での研修が行われました。(図1~3) 学童・生徒、成人、高齢者の4つのカテゴリーに則
した質問で構成されています。また、①細菌カウ
3
実施後の評価と課題
ンターによる細菌数を測定する口腔内の衛生環境の
122
定量的評価、②ペリオスクリーンによる唾液中の潜
新しい歯科健診の実施マニュアル対応を身につけ
血の有無による歯周病の把握、③唾液が酸を中和す
ることに先んじて、健康教育に携わる健診担当者の
る能力をCaries Activity Testで測定し、むし歯への抵
コミュニケーション力と、受診者に共感する眼差し
抗性を提示する項目等のオプションを加味すること
に焦点をあてた人材育成を強く意識した研修会を目
で、口腔環境が反映されます。
指しました。
8020 No.15 2016-1
時 間
セッション(内容)
学習方法
9:00~ 10:00
成人の保健
(健康)
行動の変容に必要な要素とは
講義および
演習
10:00~ 10:45
標準的な歯科健診プログラム
(生活歯援プログラム)
について
~開発の経緯や活用の意義~
講義
10:45~ 11:30
成人の主体的な保健
(健康)
行動の変容の可能性を高める
保健指導の技法について
演習
11:30~ 12:15
生活歯援プログラムにおける保健指導の実際
演習
12:15~ 12:35
生活歯援プログラムを活用した職域
(産業保健)
における
成人歯科健診・保健指導~北海道での実践事例~
講義
(事例紹介)
12:35~ 13:00
質疑およびふりかえり
図1 研修会の内容とスケジュール
図2 研修会の様子
4 まとめ
図3 研修会の様子
康長寿の延伸に対応するには各ステージを断片的に
扱うのではなく、連続したライフサイクルあるいは
受診者が「自分の問題に気づく」
「自ら目標を設定
勢が必要であろうと考えられます。
する」ことにより、生活支援や口腔ケアに関する意
識改善、行動変容を自らの意思で考え、歯科受診す
●参考文献
ることへの支援を促す「参加型保健指導」を学ぶこ
1)Green LW, Kreuter MW: Health promotion plannninng ; An educational
and enviromental approach, Mayfield Publishing, Moutain View,
2nded, 1991.
2)石川達也、髙江洲義矩、中村譲治、深井穫博編:かかりつけ
歯科医のための新しい歯科コミュニケ―ション技法、第1版、
医歯薬出版、東京、2000.
3)深井穫博:歯科医院力を高める保健指導ガイド、第1版、医
歯薬出版、東京、2013.
4)佐々木健、高橋 収、三上和恵、末次智美、瀧川裕子:職域
における新しい成人歯科健診プログラムの効果、ヘルスサイ
エンス・ヘルスケア、Vol11、No2、64-71:2011.
5)吉田 亨:健康教育と栄養教育(2)指導型の教育と学習支
援型の教育、臨床栄養、85(5):621-627、1994.
とを目的として研修会を企画・実施しました。
従来の保健指導にあるような、受診者の「望まし
くない習慣」を特定し、それを改めさせようとする
「指導」ではなく、「気づきにつながる支援」を目的
とした保健指導(健康教育)をワークショップによ
る対話形式で研修しました。多くの参加者が、これ
まで受診者に対し忠告や指摘による保健指導をして
いたことに気づかされ、健診担当者の意見や提案を
8
0
2
0
推進財団 研究・調査活動報告
ライフコースという捉え方で健康教育に取り組む姿
C
受診者の権利を侵害することなく、誠実に言葉や表
情で表現するアサーティブで柔軟なコミュニケー
●プロフィール
ションを習得することで、受診者の行動変容につな
こめす・あつこ
がることが期待されます。
沖縄県歯科医師会専務理事、米須歯科医院院長、医学博士。
1987年4月東京都長仁会牛久保歯科診療所、89年埼玉県せ
がわ歯科医院、91年沖縄市松本にて米須歯科医院を開業、
2006年中部地区歯科医師会広報担当理事、09年沖縄県歯科
医師会広報担当理事、13年沖縄県歯科医師会常務理事
歯科保健はライフステージごとの特性が明確であ
る点を考慮して、『Doチェック』では4つの年代カ
テゴリー別にプログラムを構築してありますが、健
8020 No.15 2016-1
123
平成26年度
地域における
歯科保健
活動
5
市民参加型で実施される
多職種連携による歯科保健啓発活動
ヘルスプロモーションコンセプトに基づいた歯科保健活動には、歯科だけでなく
多職種連携が不可欠です。また、市民自身が健康に興味を持ち、自発的に
行動していく必要があります。
それにはわれわれ歯科保健従事者自身が一歩踏み込んで行動する必要があります。
これまでの仙台市における活動を見直し、今後あるべき歯科保健活動を検討
しました。
仙台歯科医師会
平田政嗣
仙台歯科医師会 理事
1
はじめに
現在の委員会構成団体は以下のようになっており、
市民の歯と口の健康を多職種間の連携によりサポー
トする構成となっています。参加団体:仙台市・仙
歯科口腔の健康と全身の健康の関連性が明らかに
台歯科医師会・東北大学大学院歯学研究科・仙台市
なりつつある中で、歯科疾患の予防・早期治療には、
私立幼稚園連合会・仙台市保育所連合会・宮城県歯
ヘルスプロモーションコンセプトに基づいた啓発活
科技工士会・宮城県歯科衛生士会・宮城県栄養士会。 動は不可欠です。また、各ライフステージ・生活環
また、平成26年度からは東北大学歯学部学生で構
境の差異を越えてシームレスに活動を実施するため
成されるサークル「歯科医療研究会」も加わったこ
には、それぞれの場面に関わる多職種間での連携が
とで、次世代を担う歯科医療人の育成が期待できます。
不可欠です。そこで今回、仙台市において過去に実
5歳児を対象とした絵画コンクールを軸として始
施された多数の歯科保健活動調査を分析し、市民の
まった「市民のつどい」ですが、幼児期以外のライ
「生きる力」をサポートするにふさわしい「市民参
フステージにも対応すべく企画を充実化してきまし
加型の歯科保健活動」に必要な要素を考察しました。
2
124
た。参加団体も増えたことにより、各団体が創意工
夫を凝らし、健康の入り口としての歯と口の重要性
事業の内容
を市民に啓発する内容となってきています。平成20
年からは主に中高齢者向けに「歯周病と全身とのか
1 仙台市 歯と口の健康週間 「市民のつどい」
かわり」
「口腔癌に関する啓発」
「インプラントとは」
歯の衛生週間は、厚生労働省、文部科学省、日本
などの内容で東北大学から講師を招聘し「市民公開
歯科医師会が昭和33年から実施している啓発週間で
講座」を開催しています。平成26年度からは、受講
す。仙台市の歯の衛生週間行事は、昭和59年に「む
した市民に対してお口の体操や歯周病を考えた歯磨
し歯予防絵画作品」を市役所に展示したことに始ま
き体験なども実施しています(表1)。
ります。市民のニーズが広がるなか、歯と口の健康
「市民のつどい」は宮城県歯科医師会館内に併設さ
啓発には多数の職種間の連携が必要との考えから、
れた「宮城・仙台口腔保健センター」で実施されて
平成11年度より実施主体を現在の「実行委員会」体
います。毎年変わらず多くの来場者が集まることか
制としました。そのことにより仙台市・仙台歯科医
ら、市民にある程度周知・評価されていると言えま
師会のみならず、東北大学・宮城県歯科衛生士会・
す。しかしながら、来場者の世代格差・地域格差は
宮城県歯科技工士会・幼稚園連合などとの横の連携
あり、市民全体を巻き込んだ歯科保健活動に発展さ
が取れるようになり、各団体が主体的に活動できる
せるには、さらに一歩市民の側に踏み込んだアプ
ようになってきました。
ローチが必要と言えます。そのため仙台市単位で行
8020 No.15 2016-1
表1 平成26年度実施内容
展示・
プレゼント
歯の衛生モデル校展示、歯と口の健
康を守る食生活、保育所幼稚園児の
歯の健康づくり、むし歯予防パネル展
示、
スタンプラリー・デンタルクイズ
健康チェック・
体験
位相差顕微鏡を使ったプラークの観
察、口腔内カメラを使ったお口の中の
観察、検査キットを用いたむし歯・歯周
病チェック、歯周病予防を目指した大
人の歯みがき、RSST
(連続唾液嚥下
試験)
、
フッ化物塗付、
フッ素洗口体験
歯科相談
歯科相談、口臭測定と相談
絵画コンクール
表彰式
メダル授与式、歯と口の健康に関する
寸劇
市民公開講座
中高年向けの公開講座と歯磨き体験
図1
せんだいでんたるノート
来場人数:平成13年に会場を現在の
「宮城・仙台口腔保健センター」
に移してから増加し、現在600~ 700名の来場を得ている。
図2 乳幼児の健康づくりを支援する
各推進主体の連携と協働の展開
われる本活動は維持しつつ、区単位での行政・地域
処置ができれば、むし歯予防に効果があると思われ
歯科医師・地域住民が連携した「顔の見える関係」
ます。そこで受診率が9割近い小児科と連携する事
を構築する必要があると思われます。平成27年度は
業を考えました。小児科の8・9か月健診にて、小児
仙台市のある区においては地域住民で構成させる「区
科医から保護者に「せんだいでんたるノート」
(図1)
民ふるさとまつり協議会」に協力することで、より
を配布することから始まります。親と子を中心に、
市民に密着した歯科保健活動が実施できました。ま
医科歯科連携、行政、保育所・幼稚園が子どもたち
た、介護予防の分野に関しても、地域包括支援セン
の歯と口の健やかな発育をサポートする活動で、平
ターと連携しつつ、口腔機能向上と介護予防の関連
成27年度より開始しました(図2)。
性を啓発する活動が必要です。
震災後5年目を迎えますが、いまだ沿岸の被災地
域においては十分な復興がなされたとは言えません。
3
まとめ
C
昭和60年から実施されている仙台市歯と口の健康
被災地域の保育所・幼稚園に対して歯科保健活動を
週間「市民のつどい」は、ある程度市民に周知され、
継続実施しています。震災の影響で一時期増加した
毎年ほぼ一定した来場者を確保しています。また、
幼児のう蝕は以前の状態に終息しつつありますが、
実行委員会体制として参加団体を確保し、それぞれ
その影響は明らかな地域格差となっていまだ根底に
が主体性をもって活動していることは評価できます。
は残っています。本活動も地域の歯科医師・歯科衛
しかし来場者の年齢層の偏りや歯科疾患の病態の
生士や地域住民と連携を取りながら息の長い活動を
変化から求められる歯科保健活動にも変化が生じて
続けていきたいと考えています。
きており、今後はその変容に柔軟に対応していかな
ければなりません。すべてのライフステージに関し
2 黒川地区に対する歯科保健活動の実施
てシームレスに保健活動を実施していくためには、
黒川郡(富谷町・大和町・大郷町・大衡村)は仙
さまざまな職種のみなさまが主体的に関与し、市民
台市の北部に位置し、文化・経済圏が同じであり、
自身が健康に興味を持ち自発的に行動していく必要
仙台歯科医師会の管轄となっています。平成25年よ
があります。これらは今後も大きな課題であります
り富谷町で、平成27年度から大和町で各地域の保育
が、今回の活動が今後の展開の一助になるものと信
所幼稚園・栄養士・保健師および地域の歯科医師・
じ継続展開していきたいと思います。
歯科衛生士との連携のもと企画実施されています。
3 3歳児カリエスフリープロジェクト85
出生後に感染するう蝕関連細菌叢は、歯の萌出と
ともに生着し、2歳くらいまでに完成すると言われ
ています。歯の萌出が始まる時期に保健指導・予防
8
0
2
0
推進財団 研究・調査活動報告
震災が発生した平成23年より、仙台歯科医師会では
●プロフィール
ひらた・まさつぐ
仙台歯科医師会理事(地域保健担当)、東北大学歯学部臨
床講師、日本歯科保存学会認定専門医、歯学博士。1995年
東北大学歯学部卒業、99年東北大学大学院歯学研究科修了、
2007年ひらた歯科クリニック開業、11年仙台歯科医師会理
事就任。1968年4月生まれ、和歌山県出身
8020 No.15 2016-1
125
平成26年度
地域における
歯科保健
活動
6
施設要介護高齢者への摂食支援
カンファレンスと多職種との連携
多職種との摂食支援カンファレンスの開催を通した介入と、食環境整備、歯科
(公社)東京都町田市歯科医師会
医療の提供を行った結果、介護老人福祉施設入居者の栄養状態の改善に効果
があり、臼歯部咬合状態の有無にかかわらず栄養改善が認められました。
また天然歯による咬合支持が認められる入居者において、より栄養改善の効果
小川冬樹
が顕著になる可能性が示されました。
(公社)東京都町田市歯科医師会 副会長
江原佳奈
(公社)東京都町田市歯科医師会 理事
1
はじめに
疑われ食事のペースが異常に早い人などです。実際
の昼食場面を観察して頚部聴診をしたり、嚥下内視
鏡を用いて食物の食道への流れを観察したりしたほ
多職種と連携し、摂食・嚥下障害のある者に対し
か、リクライニング体位の検討や咽頭口蓋部へのア
て摂食支援と歯科治療による臼歯部咬合回復、摂食
イスマッサージの適応、舌圧低下から義歯口蓋部に
機能訓練、口腔ケアを行うことは、要介護高齢者の
わたる厚みの改変の是非などが討議されました。
誤嚥、低栄養、窒息を予防するのに有効です。そこ
で今回、施設要介護高齢者を対象に、多職種とともに
摂食支援カンファレンスを開催することで食環境整備
と歯科医療を提供し、その効果について検討しました。
2
4
事業の評価方法
評価方法は介入時の入居者のBMIを18.5未満、18.5
から22未満、22以上の3群に分類し、咬合状態を天
事業の対象
然歯咬合群、天然歯と義歯咬合群、義歯咬合群、咬
合崩壊群に分類。歯科治療内容を治療不必要、義歯
対象は介護老人福祉施設入居者男性10名、女性62
修理、リベース、義歯新製、治療困難に分類しまし
名(平均年齢86.9歳)で、口腔アセスメント後に訪
た。調査項目は年齢、介護度、CDR(臨床認知症評
問歯科治療と口腔ケアを行いながら、月に1回多職種
価法)の3つで、BMIに関しては介入当初と7か月後
合同による摂食支援カンファレンスを開催しました。
について調査しました。
3
摂食支援カンファレンスとは
5
結果
同カンファレンスは介護施設職員、管理栄養士、
1 BMIの増加が図られた
介護士、看護師、訪問歯科医師、歯科衛生士、リハ
施設入所者全体のBMIは、介入時平均20.4から評
ビリ医などの多職種が一堂に会し、体重変化や食事
価時平均21.5と有意に増加し、低栄養リスクのある
量が記載された栄養評価シートに基づき摂食に問題
BMI 18.5未満ではBMIが16.7から17.9となり、最も有
が見られた者について、食形態の調整や補食の提供、
意に増加するという結果が得られました(図1)。
食介護方法の変更の検討を行うものです。
126
対象は誤嚥性肺炎と診断された人、数か月で著し
2 介護度・年齢・BMIと治療との関係
い体重減少があった人、食事中に頻繁にむせる人、
3群に分けた介入時のBMIと介護度にはそれぞれ
食事時間が1時間以上かかる人、認知機能の低下が
有意差が見られ、介護度が重度の者には低栄養の傾
8020 No.15 2016-1
18.5 未満の者の変化(BMI)
天然歯咬合群
30
25
25
20
20
15
15
10
介入時
18.5 ~ 22 未満の変化
介入時
評価時
評価時
10
5
** p<0.01
* p<0.05
5
0
22 以上の変化
評価時
介入時
義歯咬合群
30
図1 施設入居者全体でのBMIの変化
30
25
20
20
15
15
10
10
0
評価時
0
25
5
介入時
天然歯+義歯咬合群
30
介入時
評価時
咬合崩壊群
5
介入時
評価時
0
介入時
評価時
p<0.01
図3 臼歯部咬合様式とBMIの変化
向がありました。歯科治療(治療不必要、義歯修理、
リベース、義歯新製、治療困難)と年齢との関係を
見るとより高齢の者ほど治療困難である傾向が見ら
れ、治療内容と介護度を比較すると介護度がより重
度の者ほど治療困難である傾向が見られました。
3 認知機能との関係
CDR(臨床認知症評価法)がより重度の者ほど、
治療困難である傾向が見られました。CDRが中等度、
天然歯関与
関与なし
p<0.05
図4 天然歯関与(天然歯のみ、天然歯+義歯群)と天然歯非関与群
重度の人は天然歯咬合群と義歯と天然歯群において
与していない群に比べて有為にBMIの改善が認めら
約半数を占め、義歯咬合群では約6割、咬合崩壊群
れました(図4)。
では全員でした(図2)。
6
おわりに
介護度が重度に至らない時期に、歯科治療による
臼歯部咬合回復を適切に行うことが、入居者のQOL
維持向上に役立つことが判明しました。
多職種による摂食支援カンファレンスを行うことは、
重度要介護高齢者の栄養改善、生命維持に大変有効
であることがわかりました(本研究は日本歯科大学
図2 臼歯部咬合様式とCDR(臨床認知症評価法)
口腔リハビリテーション多摩クリ ニックの協力に
より実施されました)。
4 BMI増加量に天然歯の存在が大事
臼歯部咬合様式とBMIの変化について調査し、天
●参考文献
然歯咬合群、天然歯と義歯咬合群、義歯のみの咬合
1)江原佳奈, 小川冬樹, 他 : 施設要介護高齢者への摂食支援カンファ
レンスと歯科治療, 老年歯科医学会雑誌28巻 : 2号, 134. 2013(抄).
2)小川冬樹, 江原佳奈, 他:施設要介護高齢者における低栄養と
臼歯部咬合, 老年歯科医学会雑誌28巻 : 2号, 133. 2013(抄)
群、臼歯部咬合のない咬合崩壊群のいずれの群にお
いても、有意なBMIの上昇が見られました。特に注
目すべき点として、天然歯咬合群は介入時・評価時
のBMIが最も高く、ついで高いグループは天然歯と
義歯のグループだったことが挙げられます(図3)。
●プロフィール
おがわ・ふゆき
査するために、天然歯のみと天然歯および義歯によ
東京都町田市開業、
(公社)東京都町田市歯科医師会副会長、
東京歯科大学小児歯科学講座非常勤講師、元日本歯科医師
会会誌編集委員会委員。歯学博士。1955年12月生まれ、東
京都出身。著書:POSによる歯科診療録の書き方(編著)
る咬合群を「天然歯咬合関与群」、義歯のみによる
えばら・かな
天然歯の存在がBMI増加量と相関関係があるか調
咬合と咬合崩壊群を「天然歯非関与群」として、介
入によって得られたBMIの変化量の検討を行いまし
た。その結果、天然歯が咬合に関与している群は関
8
0
2
0
推進財団 研究・調査活動報告
また状態がより悪化傾向になった入居者に対して、
C
東京都町田市開業、(公社)東京都町田市歯科医師会理事。
東京医科歯科大学歯学部第2口腔外科専攻生、千葉県柏市
柏厚生病院歯科・口腔外科。1965年8月生まれ、京都府出身。
8020 No.15 2016-1
127
平成26年度
8020
研究事業公募
課題の
概要報告
1
定期的に予防処置を受診して
いる人の10年間での喪失歯数
本調査は、10年以上同じ歯科医院へ通っている50~79歳の1,400人を対象として
います。
「定期的に予防処置を受診する」患者さんと「問題が起きた時に受診する」
患者さんを主に比較しました 1)。
その結果、
「定期的に予防処置を受診する」患者さんの歯の喪失歯数は、
10年間で男性が1.5歯、女性が1.2歯でした。
また、
「10年間で2歯以上喪失する」ことが起こるオッズ比は、
「問題が起きた時に受診する」患者さんの0.65倍と少なくなることがわかりました。
歯を失った理由を比較すると、う蝕や歯周病での抜歯の割合は明らかに少なくなっ
ていました。
このことは、
「定期的に予防処置を受診する」ことでプラークが減少して、
う蝕や歯周病にかかるリスクが低くなったことが考えられました。
1
はじめに
研究方法
本調査で知りたかったことは、定期的に予防を目
対象者は、10年以上同じ歯科医院に来院している
的としてメンテナンスに来院する患者さんの歯の喪
50〜79歳の患者さんです。メンテナンスに通った患
失状況であり、メンテナンスの効果がどの程度なの
者さんのうち、定期的な来院回数が10年間で当初
かということでした。
の目標の70%以上だった患者さんを「定期的来院
以前より、歯周病のある患者さんの治療後の病状
者」、70%未満の者を「非定期的来院者」としました。
が安定するか否かは、治療後の継続したメンテナン
また、定期的にメンテナンスを受けることに同意せ
スの有無に大きく依存することが知られています2)。
ず、問題が起きた時に来院する患者さんを「問題時
また、歯周病の有無にかかわらず、定期的なメンテ
来院者」としました。対象者は、33の歯科医院で「定
ナンスにより中高年の歯の喪失数が低減することは、
期的来院者」は987名、
「非定期的来院者」は197名、
「問
Axelssonら3)の報告にもあり、さらに一般の人々に
題時来院者」は216名でした。なお、本研究は東京歯科
もその重要性が認識されつつあります4)。
大学倫理委員会の承認を得ています(承認番号504)。
これまでの報告では、メンテナンスがどの程度効
果的なのかは明らかにされていませんでした。これ
は、定期的に来院される患者さんに対して、比較対
128
2
吉野浩一
東京歯科大学 衛生学講座
客員准教授
3
研究結果
象となるコントロールを得るのが難しいことが理由
10年間で1,400名の患者さんから1,886本が抜歯さ
でした3~5)。そこで、あるスタディグループ(救歯会)
れました。10年間での平均の抜歯歯数を男女別に表
の歯科医院に10年以上来院されている患者さんを、
1に示しました。平均抜歯歯数は、男性の「問題時
受診行動により「定期的来院者」
「非定期的来院者」
来院者」で2.2(±2.6)歯(0.22/年/人)、「定期的来
および「問題時来院者」の3グループに分けて、歯
院者」で1.5(±1.5)歯でした。女性では、「問題時
の喪失状況を比較検討しました。
来院者」が1.1(±1.5)歯、「定期的来院者」で1.2(±
8020 No.15 2016-1
表1 男女別にみた10年間での平均の抜歯歯数
表3 多重ロジスティック回帰分析結果
表2 抜歯の理由について
1.6)
歯でした。平均の抜歯歯数は、男性において「問
歯数の差が少ないのかもしれません。
題時来院者」
と比較して「定期的来院者」
(p=0.012)は、
抜歯の理由は、受診行動により違いがみられまし
統計学的に有意な差で少ない値でした。
た。「非定期的来院者」は歯周病による抜歯が、「問
表2には抜歯の理由を示しました。
「問題時来院者」
題時来院者」はカリエスによる抜歯が高い割合でし
た。このことは、メンテナンスを定期的に受診して
いることで、カリエスや歯周病による抜歯がかなり
傾向にありました。
予防できることが示されています。
また、表3に多重ロジスティック回帰分析の結果
「10年間で2歯以上の喪失」する者のオッズ比は、
「定
を示しました。
「2歯の以上の歯の喪失」と関連を示
し た 独 立 変 数 の 項 目 は「非 定 期 的 来 院 者」
( OR :
期的来院者」は「問題時来院者」の0.65倍になるこ
0.54)
、
「定期的来院者」
(OR: 0.65)、男性(OR: 1.43)、
高血圧(OR: 1.38)、「20~25 現在歯数」
(OR: 2.41)お
とがわかりました。定期的に予防を目的としたメン
テナンスを受診することで、歯の喪失が予防できて
いることが証明できました。
よび「1~20 現在歯数」
(OR: 3.75)でした。
4
考察
男性において統計学的に有意な差がありましたが、
「定期的来院者」と「問題時来院者」の平均喪失歯
数にはそれほど差がありませんでした(0.7歯)。こ
れは少なくとも10年以上来院している患者さんを対
象としているため、救歯会の会員の先生方の治療方
針(歯の保存に力を入れている)に合った患者さん
を自然にスクリーニングしていることが考えられま
す。さらに「問題時来院者」は、定期的な来院に同
意しなかっただけで、歯磨き指導やスケーリングと
いった保健指導やメンテナンスを行った患者さんも
含まれていることが考えられます。そのため、全体
として歯の喪失歯数が少なく、受療行動による喪失
●参考文献
1)Yoshino K et al. (2015) Tooth Loss in problem-oriented, irregular, and
regular attenders in dental offices. Bull Tokyo Dent Coll 56. (in press)
2)Renvert S, Persson GR (2004) Supportive periodontal therapy.
Periodontol 2000 36:179-95.
3)Axelsson P, et al. (2004) The long-term effect of a plaque control
program on tooth mortality, caries and periodontal disease in adults.
Results after 30 years of maintenance. J Clin Periodontol. 31:749-57.
4)垣添忠生,歯科医療の課題,読売新聞,2014年1月19日1-2面.
5)Richards W, Scourfield S (1996) Oral ill-health in a general dental
practice in South Wales. Primary Dent Care 3:6-13.
C
8
0
2
0
推進財団 研究・調査活動報告
はカリエスで、
「非定期的来院者」は歯周病で、「定
期的来院者」は歯根の破折で抜歯される割合が高い
●プロフィール
よしの・こういち
東京歯科大学衛生学講座客員准教授、歯学博士、労働衛生
コンサルタント。1990年東京歯科大学卒、同年歯科補綴学
第一講座勤務、92年横浜市勤務医、2000年博士(歯学)、
13年より現職。1965年3月生まれ、群馬県出身。研究テーマ:
歯の喪失、臨床統計
8020 No.15 2016-1
129
平成26年度
8020
研究事業公募
課題の
概要報告
2
かかりつけ歯科医師の存在と
その後のQOL、
生存維持との因果構造
かかりつけ歯科医師がいるとその後の生存が維持されていることを背景として、
2008年に都市の歯科診療所を受診した成人2 ,779人の基礎調査と生存追跡調査に
より、口腔、食生活およびQuality of Life(豊かな生活。以下、QOL)に関連す
る口腔ケア行動、口腔衛生状況とその7年後の生存との関連とともに、パス解析を
用いて因果構造を明らかにすることを目的に分析した研究概要を紹介します。
星 旦二
1)
矢吹義秀 2)
小林憲司 2)
2)
福澤洋一
2)
古藤真実
長井博昭 2)
矢島正隆 2)
3)
2)
田野ルミ
西辻直之
4)
2)
井上和男
和田奈都野
2)
牧野 寛
1)首都大学東京・名誉教授 2)東京都港区芝歯科医師会,
3)埼玉県立大学・保健医療福祉学部 4)帝京大学ちば総合医療センター地域医療学
1
研究背景
このように、かかりつけ歯科医師がいる群は、い
ない群に対して、累積生存率が統計学的に有意に維
持されていることが明確にされていたとしても、関
地域における歯科医院の役割と機能としては、個々
連する要因を含め、その因果構造が明確にされてい
人の口腔衛生を支援しつつ、口腔機能を維持増進さ
るわけではありません。
せ、結果的に健康長寿に寄与することです。一般的
に歯科疾患は、死と直結しているメカニズムが十分
に理解されていないことからか、定期的な歯科健康
研究目的
診査の受診率は決して高いとは言えません。また、
2008年初期の研究目的は、都市部の歯科医院受診
住民とかかりつけ歯科医との関わりは治療目的が主
者を対象に、口腔セルフケアと歯科医師が判定した
であること1)、治療のために頻繁に受診している歯
口腔衛生状況と本人のQOLとの相互関連性を総合的
科医師をかかりつけ歯科医として認識しているとの
に明らかにすることでした。
推察2)が先行研究において報告されています。しか
また、8020財団の研究助成を得て実施した2014年
しながら、口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防に有効であ
の研究目的は、都市部の歯科医院を受診した人を対
る3, 4)こと、そして認知機能の低下予防につながる
象として、予防を重視した受診行動と、口腔衛生状
という研究結果5)から、死亡と結びつく疾患の予防
態が主観的健康感と生活満足感を高め、その7年後
や健康増進、生活の質の向上に大きな役割を果たし
の生存に対してどのような因果構造が見られるのか
ていることが明らかになっています。
を明確にすることでした。
これまでに、著者ら6)は都市郊外A市の65歳以上1
初期調査から7年を経た今回の生存因果構造分析
万6,462名を6年間追跡し、かかりつけ歯科医がいる
に至る、われわれの研究仮説モデルを図2に示します。
人ほど、その6年後の累積生存率が男女ともに統計
学的に維持される傾向があることを世界で初めて明
確にしてきました(図1)。
130
2
8020 No.15 2016-1
高齢者16,462人・かかりつけ歯科医師の有無と6年間累積生存率較差・性別
歯科医師がいない
歯科医師がいない
歯科医師がいる
歯科医師がいる
100.0%
100.0%
90.0%
90.0%
80.0%
0日
2,1
9
0日
2,0
0
00
日
1,0
0
90
日
2,1
0日
2,0
0
1,5
0日
1,0
0
女性
1,5
50.0%
0日
50.0%
0日
60.0%
00
日
60.0%
50
日
70.0%
0日
70.0%
50
日
80.0%
男性
American Journal of Medicine and Medical Sciences 2013, 3(6): 156-165
The Effects of Family Dentists on Survival in the Urban Community-dwelling Elderly
Rumi Tano, Tanji Hoshi
図1 かかりつけ歯科医師の有無別に見た6年間の累積生存率
3
研究方法
C
8
0
2
0
1)調査対象
推進財団 研究・調査活動報告
調査対象者は、東京都港区芝歯科医師会会
員の42歯科医院を受診した10歳から95歳まで
の2,900人としました。調査期間は、2008年3
月と10月に実施し、調査方法は自記式質問票
調査とともに、歯科医師による口腔内診査を
行いました。調査対象者への同意は、受診時
に研究趣旨を書面と口頭にて説明した上で、
口頭にて承諾を得ました。回収した調査票は
IDのみで管理し、回答した個人が特定されな
いように集計しました。なお、本研究は首都
大学東京・安全倫理委員会の承認を得ました。
2)調査内容
主観的健康感の設問は「普段ご自分で健康だと思い
自記式質問票の調査項目は、性と年齢、主観的健
ますか」とし、選択肢として「とても健康である、
康感、生活満足感、歯間清掃用具(歯間ブラシやフ
まあまあ健康である、あまり健康ではない、健康で
ロスなど)の使用状況です。引き続き、歯科医師に
はない」の4件法としました。生活満足感は「全体
よって実施した口腔内診査として、現在歯数、口腔
的にいうと、あなたは現在の生活に満足しています
清掃状態、歯肉状態、受診状況を調査しました。
か」に対する選択肢として「とても満足している、
「QOL(Quality of Life)」は、信頼性と妥当性が証明
まあまあ満足している、あまり満足していない、満
されている主観的健康感と生活満足感を用いました。
足していない」の4件法としました。歯間清掃用具
8020 No.15 2016-1
131
の使用状況に対する選択肢としては「毎日
使っている、週に3〜4回使っている、週に1回
位は使っている、まったく使っていない」の
4件法としました。
歯科医師が行う口腔内診査に関する項目の
うち、現在歯数は智歯や補綴可能な残根も含
め、インプラントも1本1歯としました。口
腔 清 掃 状 態 は、プ ラ ー ク 指 数 PlI(Plaque
Index)を用い、歯肉状態は、歯肉炎指数GI
(Gingival Index)を用いました。PlI、GIともに
本来は1歯4面で評価することが基本ですが、
本調査では頬側・舌側の2面で測定を行い、
最高値を記入ました。歯科医院への受診状況
は「定期的なメンテナンスを受け積極的に予
防に取り組んでいる、定期的にメンテナンス
を受けている、定期的なメンテナンスを時々
さぼる、
不定期だがメンテナンスを続けている、
メンテナンス以外の目的で来院」の5件法と
図3 口腔ケアと食生活と4年後QOL因果構造
しました。現在歯数は、調査結果を基に15歯
未満、15〜24歯および25歯以上の3つに再カテゴ
31日までの生存と死亡状況と死亡日、歯科医院の受
リー区分して解析しました。
診状況を電話などによって明確にしました。
3)分析方法
2)口腔ケアと食生活と4年後QOLとの因果構造
対象者の自記式回答内容と、歯科医師による口腔
2008年に東京都港区芝歯科医師会に所属する42歯
内診査の各項目の関連を分析しました。また、QOL
科医院を受診した成人2,745人に2012年に同意を得た
と口腔保健行動との相互関連性について相関性を分
上で、食生活関する調査項目を追加して、追跡調査
析しました。
を実施しました。
次に、調査項目の探索的因子分析により抽出され
分析対象者は450人(追跡回答率16.4%)で、歯科
た因子に基づく潜在変数を抽出し、概念モデルを設
医院を受診した群における2012年の“QOL”は、4年
定しました。潜在変数を用いた因果構造性は、共分
前の“口腔ケア”が“口腔衛生”を維持させ、4年
散構造分析とパス解析を用いて分析しました。共分
後の“食生活”を経由して規定される因果構造が示
散構造分析では、モデリングを繰り返し、最適モデ
されました。モデルの適合度指数は高く、決定係数
ルを探りました。本研究の統計分析は、SPSS22.0J
は0.44でした。これにより4年後の“QOL”は、口腔
for Windows、Amos21.0 for Windowsを用いました。
ケアと豊かな食に支えられるという因果構造が世界
4
研究結果
で初めて明確にされました(図3)。
3)口腔清掃状況と7年間の累積生存率
1)調査対象者
2008年時点での口腔清掃状況別に見た7年間の累
調査票への記載漏れと回答不備を除き、有効回答
積生存率を分析すると、多量のプラークが見られる
数2,745人(男性1,440人、女性1,305人)を分析対象
場合の累積生存率が最も低下していました。口腔清
としました。平均年齢は52.3歳でした。2012年には、
掃状況が望ましい群の累積生存率が、統計学的に有
2,745人の中の450人に対して、QOLを規定する要因
意に維持されていました(図4)。
を明確にするために、食の豊かさを追加して追跡調
132
査を実施し、口腔ケアと口腔衛生と食の豊かさと主
4)7年後の生存を規定する各要因の因果構造
観的健康感や生活満足度との因果構造を解析しまし
各要因を含めた生存日数に対するパス解析では、
た。生存調査は、初期調査から約7年後の2015年3月
2008年時点での口腔清掃状態と歯肉状態は、歯間清
8020 No.15 2016-1
生存関数
口腔清掃
プラークの付着なし
プロープでプラークあり
プラークの付着視認
多量のプラーク歯面
累積生存
生存日数
図4 口腔清掃状況と7年後累積生存率
掃用具と予防受診によって規定され、同時に主観的
究により、図2に示した研究仮説モデル関連構造が
健康感と生活満足感の維持に関連し、その7年後の
結果モデルとして活用できる可能性が明確にされま
生存維持に寄与する関連構造が明確にされました。
した。しかしながら、生存維持を説明する決定係数
本 モ デ ル の 適 合 度 指 数 は、NFI=0.999、 RMSEA
が小さいことから、生存追跡期間を延長した解析を
<0.001と高い適合度であったものの、決定係数は2%
行うことが今後の研究課題です。
でした(図5)。
C
.45
2008
歯肉状況
2008
主観的健康感
.01
.00
.40
.64
.10
.01
2008
予防受診
.23
e7
.06
2008
生活満足度
.08
2008
口腔清掃
.05
e6
.02
.06
2015年までの
生存有無
.08
e2
CMIN = 1.861 P = .993
NFI = .999 IFI = 1.005
RMSEA = .000
図5 生存日数を規定する各要因の因果構造
5
生存維持因果構造に関する
研究課題
本研究では、歯科医院を予防目的で定期的に受
診する行動は、口腔衛生状態を望ましくするととも
に、食の豊かさを経て、主観的健康感や生活満足度
と関連するQOLを維持増進させている可能性があり、
最終的には生存維持と生存日数の延伸に関連する因
果構造が示されました。高い適合度が得られた本研
1)齊藤恭平,上田 昇,中塚道郎ほか:働く世代を中心とした
歯科保健医療に関する実態調査ー函館歯科医師会によるヘル
スプロモーション活動の展開ー.日本歯科医療管理学会雑誌
41(3):143-153, 2006.
2)森眞佐美:かかりつけ歯科医と定期歯科健診の有無に関連す
る要因分析 成人を対象とした歯科健診の結果から.口腔病
学会雑誌69(2):95-106, 2006.
3)米山武義ほか.厚生労働省・厚生労働科学研究費補助金「高
齢者に対する口腔ケアの方法と気道感染予防効果等に関する
総合的研究」報告書39-44, 2006.
4)Yoneyama,T.Yoshida,M.,Matsui,T. : Oralcareandpneumonia.
Lancet345:515,1999.
5)The Effects of Family Dentists on Survival in the Urban Communitydwelling Elderly. American Journal of Medicine and Medical Sciences
2013; 3(6),156-165, R. Tano, T. Hoshi, T. Takahashi, N. Sakurai, Y.
Fujiwara, N. Nakayama
6)なぜ「かかりつけ歯科医」のいる人は長寿なのか?:星 旦二 港区芝歯科医師会・芝エビ研究会ワニブックス【PLUS】新書
8
0
2
0
推進財団 研究・調査活動報告
e1
.12
.16
e5
.02
●参考文献
●プロフィール
ほし・たんじ
首都大学東京・名誉教授、放送大学客員教授。福島県立医
科大学を卒業し、竹田総合病院で臨床研修後に、東京大学
で医学博士号を取得。東京都衛生局、厚生省国立公衆衛生
院、厚生省大臣官房医系技官併任、ロンドン大学大学院留
学を経て現職。1950年生まれ、福島県出身。研究テーマ:
公衆衛生、「健康長寿」に関する研究。著書:新しい保健
医療福祉制度論(日本看護協会、2014年)
8020 No.15 2016-1
133
平成26年度
8020
研究事業公募
課題の
概要報告
3
口腔保健活動のための
住民の組織化に関する研究
本研究では、住民のエンパワメントと組織化を試み、住民が希望する主体的で
活動的な新しい口腔保健住民組織の活動プログラムを検討することを目的としました。
活動プログラムとしては、簡単な学びの機会や普及啓発活動、
専門職との交流などが希望されていました。
また、組織化した集団を維持するためのプログラム設定も
必要であることが理解できました。
佐々木健
北海道保健福祉部
吉村圭司
齊藤恭平
東洋大学ライフデザイン学部
教授
1
研究の背景・目的
2
函館歯科医師会
上田 昇
函館歯科医師会
調査方法
わが国の口腔保健活動を概観したとき、ヘルスプ
講座修了生(112名)に案内を送付し、集まった
ロモーション活動に必要な「地域活動の強化」が効
修了生33名を対象に主体的な活動を抽出するための
果的に行われていないようです。具体的には食生活
ワークショップ(図1)を実施。歯科保健医療関係
改善推進や運動普及推進のように、口腔保健を推進
者が得られたデータにドット投票法やブレイン・ス
する住民主体の地域活動が醸成されていません。日
トーミングなどを適用し、住民のエンパワメントに
本歯科医師会は8020運動の一環として、8020推進員
効果的な活動の抽出を試みました。また、これらの
養成を事業化し全国展開しましたが、住民が主体と
質的データは一度すべてを統合し、KJ法を基本とし
なった口腔保健に関する効果的な地域活動に育って
ながら再度カテゴリー化した上でファシリテーショ
いるケースは多くありません。
ン・グラフィックにより検討を深め、その中から修
北海道歯科医師会は平成23年度に「ハッピーマウ
了生を組織化したあとに必要な活動を抽出しました
スサポーター養成講座」事業を立ち上げ、現在は北
(図2)。
海道内3つの歯科医師会(函館・室蘭・十勝)で実
施しています。本研究では、このうち函館の修了生
のエンパワメントと組織化を試み、住民が希望する
主体的で活動的な新しい口腔保健住民組織(8020推
進員)の活動プログラムを検討することを目的とし
ました。
図1 講座修了生を対象に実施したワークショップ
134
8020 No.15 2016-1
修了生を対象としたワークショップ
○ブレイン・ストーミングによる活動のアイデア抽出 ○ギャラリーウォークによるアイデアの共有
○ドット投票法によるアイデアのウエイト付け
歯科保健医療専門職によるワークショップ
○ギャラリーウォークによる修了生からでた
アイデアの共有
○ドット投票法によるアイデアのウエイト付け
○ブレイン・ストーミングによる専門家が
希望する活動内容の抽出
○ドット投票法による専門家が希望する
活動内容の順位付け
今後の課題
○提案に基づく年度の活動予定の作成
○代表等役員の選任と役割分担
○歯科医師会、町内会等の関係機関や関係者等の調整
○事務局など管理的な機能部署の検討
○予算・費用の検討
研究者によるアイディアの統合と分類
○アイデア・カードの統合
○KJ法など発想支援のフレームワークを
用いた分類とウエイト付け
○具体的な活動内容の提案
図2 研究のプロセス
3
結果・考察
するような修了生も出てきています。このような修
了生の存在が確認できたことにより、今後の組織化
の可能性が感じられます。
一方で、課題となるのは組織化後の事務的役割の
修了生が考える内容と歯科専門職が考える内容の間
担当です。具体的には名簿の管理やメンバーへの案
に違いがあることが理解できました。また、住民の
内・連絡、会場確保、会費等の管理などの業務が必
主体的な口腔保健活動を組織化するためには、歯み
要となりますが、このことに関する解決策が必要に
がきなど歯科保健知識に関する簡単な学びの機会や、
なります。修了生の中からこの役割を引き受ける人
子どもや町内会を対象とした歯科保健知識の普及啓
が出る可能性は低く、継続性にも疑問が残ります。
発活動、食や栄養を中心とした専門家との交流など
このような事務局的機能を地域の歯科医師会事務局
のプログラムが希望されていることが理解できまし
や行政の専門職が担当することも期待されるところ
た。またこのようなプログラムに加え、組織化した
です。
集団を維持するための取り組みとして、歯科保健専
門職との食事会や懇親の機会の提供、場合によって
は修了生同士での旅行のようなプログラムの設定も
必要であることが理解できました。
今後はこのような結果を反映させ、修了生と協議
しながら年間の活動計画を作成し役割を決めるとい
う具体的な組織化の作業が必要となります。今回の
取り組みを通じて、すでに町内会や関係団体、子ど
もたちに歯科保健の啓発活動を実施している修了生
の存在が確認できています。また、組織化に向けて
自分の役割を表明し、食事会の会場設定の案を提示
8
0
2
0
推進財団 研究・調査活動報告
今回の研究から、組織化後のプログラムに関して、
C
●プロフィール
さいとう・きょうへい
東洋大学ライフデザイン学部健康スポーツ学科教授(健康
管理学・健康社会学他担当)、同大学院福祉社会デザイン
研究科教授、日本歯科医療管理学会会員、医学博士。1984
年順天堂大学体育学部健康学科卒業、86年順天堂大学大学
院体育学研究科修士課程健康管理学専攻修了、同年同大学
体育学部健康学科助手(嘱託)、95年函館短期大学食物栄
養学科専任講師、2000年同大学食物栄養学科助教授、03年
同大学食物栄養学科教授、07年東洋大学ライフデザイン学
部健康スポーツ学科准教授、同大学院福祉社会デザイン研
究科准教授、08年より現職
8020 No.15 2016-1
135
平成26年度
8020
研究事業公募
課題の
概要報告
4
歯周病の発症と職業階層間
との関連性について
歯周病のリスク因子として、社会経済学的要因が注目されています。
本研究では、歯周病の発症と職業階層間との関係について検討を行いました。
日本人労働者の男性において、職業階層による職場環境や労働形態が、歯周病の
発症に影響を与えることが明らかになりました。
これらの因子を考慮することで、新たな歯周病の予防法につながる可能性が考えられ
ます。
入江浩一郎
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 予防歯科学分野 講師
つ残存歯が20本以上であった3,390人〔男性2,848人(平
1
はじめに
均年齢41.0±9.77歳)
、女性542人(平均年齢41.6±
10.46歳)
〕で5年間の追跡研究を行いました(表1)。
歯周病は、口腔内細菌によって発症する慢性炎症
性疾患です。また、遺伝や肥満そして喫煙やアルコー
〈職業分類〉
ル摂取のような生活習慣が、歯周病の危険因子であ
職業階層の分類は、厚生労働省による職業分類
ることも報告されています1)。
(1999年)に基づきました。
近年、社会経済学的要因も歯周病の危険因子であ
1.専門的・技術、2.管理・役員職、3.事務従事職、
ることがわかってきました2)。たとえば職業性のス
4.技能工・製造業、5.販売従事職、6.サービス
トレスと歯周病の関係が指摘されています3)。さら
従事、7.運輸・通信従事者
に仕事上の時間的な余裕のなさが、口腔清掃行動に
おいて重要な因子であることも報告されています。
〈口腔内診査方法〉
上記から、就業環境や職業の階層が歯周病の危険
歯周組織の状態はWHOのCommunity Periodontal
因子である可能性があり、これらの因子を考慮する
Index(CPI)に基づいて診査しました。歯肉出血・
ことで、新たな歯周病の予防法になる可能性が考え
歯周ポケット・歯石の3指標により、コード0〜4の5
られます。そこでわれわれは、歯周病の発症と職業
段階(コード0:健全、コード1:出血、コード2:
階層間との関連を解明するために、日本人労働者に
歯石沈着、コード3:4〜5mmの歯周ポケットが存在
おける5年間の前向きコホート研究を行いました。
する場合、コード4:6mm以上の歯周ポケットが存
在する場合)で診査しました。CPIのスコアが、3ま
2
対象および方法
たは4を少なくとも1か所以上所有する者を歯周病患
者としました。
愛知県名古屋市内で、2001年度に健康診断を受診
136
した1万9,633名から、2006年度の期間に同様の健康診
〈独立変数〉
断を受診した7,297人を調査対象としました。
そのうち、
調整を行った暴露因子(交絡因子)は、年齢、性
ベースライン時に健康な歯周状態で、20歳以上でか
別、喫煙歴、糖尿病、BMIとしました4)。
8020 No.15 2016-1
表1 ベースライン時の対象者の特性
平均年齢
CPI
0
男性(2 ,848)
41.0±9.77
136(4.8%)
1
女性(542)
41.6±10.46
45(8.3%)
313(11.0%) 109(20.1%)
2
2 ,399(84. 2%) 388(71.6%)
〈統計分析〉
ロジスティック回帰分析を用いて、
5年後の職業階層別による歯周病の発
症(CPI score 3または4、CPI score 4)
との関連を検討しました。
3
表2 歯周病を発症した職業別のオッズ比(男性)
職業の種類
人数
オッズ比 CPI 3または4
交絡因子調整後
専門的・技術
管理・役員職
事務従事職
技能工・製造
販売従事職
サービス従事
運輸・通信従事者
209 (787)
199 (455)
147 (443)
124 (512)
108 (368)
35 (88)
77 (195)
1
2 .15
1.37
0.88
1.15
1.83
1.81
1
1.12
1.09
0.91
1.11
1.38
1.47
専門的・技術
管理・役員職
事務従事職
技能工・製造
販売従事職
サービス従事
運輸・通信従事者
11 (787)
19 (455)
12 (443)
17 (512)
13 (368)
1 (88)
9 (195)
1
3.07
1.96
2 .42
2 .58
0.81
3.41
1
1.56
1.77
2 .62
2 .47
0.66
2 .86
CPI 4
結果
ベースライン時の対象者の特性です(表1)。そ
のうち、歯周病を発症(CPI 3または4)したのは、
男性899人(31.6%)および女性129人(23.8%)でした。
また潜在的交絡因子の調整後、専門的・技術職と比
影響を受けなかったのではないかと考えられます。
5
結論
較すると、運輸・通信従事者との間で、有意な差が
日本人労働者の男性において職業階層が、歯周病
認められました(表2)。
の発症に影響を与えることが明らかになり、職場環
一方、交絡因子調整後、歯周病を発症したものの
境や労働形態が、
影響を及ぼすことが示唆されました。
うちCPI 4になった男性においては、専門的・技術
C
●参考文献
事職は2.47、運輸・通信従事者は2.86のオッズ比で
1)P a g e R C , K o r n m a n K S ( 1 9 9 7 ) . T h e p a t h o g e n e s i s o f h u m a n
periodontitis: an introduction. Periodontol 2000 14:9-11.
2)Marcenes WS, Sheiham A (1992). The relationship between work
stress and oral health status. Soc Sci Med 35:1511-1520.
3)Linden GJ, Mullally BH, Freeman R (1996). Stress and the progression
of periodontal disease. J Clin Periodontol 23:675-680.
4)Morita I, Inagaki K, Nakamura F, Noguchi T, Matsubara T, Yoshii S, et
al. (2012). Relationship between periodontal status and levels of
glycated hemoglobin. J Dent Res 91:161-166.
5)Borrell LN, Beck JD, Heiss G (2006). Socioeconomic disadvantage
and periodontal disease : the Dental Atherosclerosis Risk in
Communities study. Am J Public Health 96:332-339.
6)Bannai A, Ukawa S, Tamakoshi A (2015). Long working hours and
psychological distress among school teachers in Japan. J Occup
Health 57:20-27.
7)Kawaharada M, Saijo Y, Yoshioka E, Sato T, Sato H, Kishi R (2001).
Relations of occupational stress to occupational class in Japanese civil
servants--analysis by two occupational stress models. Ind Health 45:247255.
した(表2)。
4
考察とまとめ
男性において、職業階層が歯周病の発症に影響を
与えることが明らかになりました。専門的・技術職
に比べ、技能工・製造業、販売従事職、運輸・通信
従事者の歯周病の発症率が有意に高かった原因とし
て、生活環境や職業に由来する精神的ストレスのよ
うな心理的要因が考えられます5)。また日本はほか
の先進国に比べ労働時間が長いことが報告されてい
ます 6)。特に、技能工・製造業は労働時間が長くな
る傾向にあり、シフト制の労働形態が多いため良質
な睡眠が取りにくく7)、健康に有害な影響を及ぼす
ことも報告されています。
今回、
女性では有意な差が認められませんでした。
女性は男性と比べ、健康に対して気を遣っており、
食生活や口腔清掃により関心があり、また社会経済
学要因を受けにくいと言われています。これらのこ
とから、女性の歯周病の発症に関して、職業階層の
8
0
2
0
推進財団 研究・調査活動報告
職と比較した場合、技能工・製造業は2.62、販売従
●プロフィール
いりえ・こういちろう
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科予防歯科学分野講師、
歯学博士。2006年岡山大学歯学部卒業、07年京都大学医学
部付属病院歯科口腔外科歯科医師臨床研修終了、11年岡山
大学大学院医歯薬学総合研究科(予防歯科学専攻)博士課
程終了、12年米国ワシントン大学歯周病学講座シニアー
フェロー、13年愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座講師、
15年4月より現職。1981年5月生まれ、東京都出身
8020 No.15 2016-1
137
平成26年度
8020
研究事業公募
課題の
概要報告
5
歯科検診結果と国保特定健診結果
との関連に関する研究
〜国保特定健診事業への歯科検診の導入に関する研究〜
本研究は特定健診に歯科検診・歯科保健指導を試験的に導入し、
歯科口腔保健増進による生活習慣病の予防効果を検討するものです。
今回は初年度の健診結果について、歯科検診結果と特定健診結果との関連に
ついて比較検討しました。その結果、重度の歯周疾患をもつ方ほど
メタボリックシンドロームに該当するという結果を得ました。
唐澤今人
信州大学医学部
歯科口腔外科学
栗田 浩
信州大学医学部 歯科口腔外科学教室
教授
1
はじめに
草深佑児
信州大学医学部
歯科口腔外科学
Index of Treatment Needs)を用いて評価。歯科検診
で得られた結果を用いて、被験者に合わせた歯科保
健指導を行いました。
歯周病をはじめとした歯科疾患の発症には生活習
また、年に5回程度、全身疾患と口腔疾患との関
慣が関わっていますが、現在、生活習慣病予防を目
連性についての講演を行い、歯科疾患のメンテナン
的としている特定健診事業において歯科検診は実施
スの重要性について説明しました。今回は初年度の
されていません。そこでわれわれは長野県塩尻市と
結果において、口腔の健康状態と生活習慣病に関連
塩筑医師会、歯科医師会の協力のもと、国保特定健
する各種健診結果との相関性について横断的に統計
診に3年間試験的に歯科検診・歯科保健指導を導入
解析を行いました。
することで、歯科疾患の予防のみならず生活習慣病
の予防において効果があるか否かの検討を行ってい
ます。今回は初年度(平成26年)の結果について報
告します。
2
調査方法
3
結果
歯科検診受診者1,031名のうち男性は493名、女性
は538名で、受診率は全体の37.9%でした。歯科検診
の判定区分の内訳は異常なし(CPI-TN=0)が29.3%、
要指導(CPI-TN=1)が4.9%、要精密検査・治療
対象は塩尻市特定健診受診者(30歳〜74歳、2,716
138
(CPITN≧2、その他要治療)が65.7%でした。
人)のうち歯科検診に同意が得られ、歯科検診を受
歯周疾患の重症度別にCPI-TN≦2群とCPI-TN>2群
診した被験者1,031人を対象としました。歯科検診
に分けて各種健診データとの比較を行ったところ(表
は「標準的な成人歯科検診プログラム・保健指導マ
1)、男性においては歯周疾患が重症であるほど年齢、
ニュアル」
(平成21年日本歯科医師会)に沿って行い、
身長、BMI、収縮期血圧、γGT、中性脂肪、HDLコ
歯周疾患の重症度はCPI-TN(Community Periodontal
レステロール、HbA1cが有意に高く、女性では歯周
8020 No.15 2016-1
表1 歯周病(CPITN)と特定健診検査結果との関連
表3 現在歯数と特定健診検査項目との関連
表2 歯周病(CPITN)とメタボ判定結果
昇させている可能性が考えられます。したがって、
いう結果を得ました。歯周疾患の重症度とメタボ判
歯周疾患を早期発見し予防を図ることが、生活習慣
定結果については表2のような結果となり、歯周疾
病の発症を抑え、健康寿命を延伸させる要因となる
患が重度であるほど、メタボ判定結果で該当または
ことが予想されます。
予備軍と判定される率が高くなることがわかりました。
初年度の結果は横断研究であり、歯科疾患と全身
残存歯数別に20歯以上の群と、19歯以下の2群に
疾患の正確な因果関係を説明することは困難ですが、
分けて各種検診データとの比較を行ったところ(表
これに続く合計3年間の縦断研究において同様の介
3)、男性においては歯数が少ない群で血糖値が有
入を行い、歯科検診および口腔保健指導を行うこと
意に高く、女性においては腹囲が有意に大きく、血
で、口腔疾患増悪の予防のみならず生活習慣病予防
圧、血糖値が有意に高いという結果を得ました。両
として効果があるか、また国民医療費の削減につな
群でメタボ判定の結果を比較しましたが、違いは見
がるかどうかの検討を行っていく予定です。
られませんでした(メタボ判定結果で該当または予
備軍の率:19歯以下の群18.3%、
20歯以上の群19.3%)。
4
考察・まとめ
近年、メタボリックシンドロームは慢性炎症が引
き起こすフリーラジカルによる酸化ストレスが原因
になることが言われています1)。このフリーラジカ
1)Ross R(1999)Atherosclerosis an inflammatory disease.N Engl J
Med 340:115-26.
2)Halliwell B, et al. Br J PharmacoL 2004;142:707-722.
●プロフィール
それに続く動脈壁へ脂質の蓄積により、メタボリッ
くりた・ひろし
クシンドローム発症の基盤となるアテローム性動脈
信州大学医学部歯科口腔外科学教室教授。
1987年新潟大学歯学部歯学科卒業、2011年信州大学医学部
教授
こる歯周病は直接的に生活習慣病の発症リスクを上
8
0
2
0
●参考文献
ルの酸化ストレスが血管内皮細胞の傷害を惹起し、
硬化症を引き起こします2)。生活習慣の乱れから起
C
推進財団 研究・調査活動報告
疾患が重度であるほど身長とHbA1cが有意に高いと
8020 No.15 2016-1
139
平成26年度
8020
研究事業公募
課題の
概要報告
6
医科歯科連携事業
歯周病と糖尿病
歯科診療所を受診した歯周病有病者から
糖尿病未治療・治療中断の地域住民を発見するシステムを、
医科歯科連携を通じて構築し、
その結果どれくらい社会保障費が圧縮できるかを
3年間の研究事業を通じて推定していきます。
執筆者
松田一郎
千葉県歯科医師会
千葉県口腔保健センター長
斎藤英生
千葉県歯科医師会 会長
1
事業の基本設計
2
事業実施の実情と結果
実施する地域としては、前千葉県立東金病院長の
26 年度より厳格化された倫理審査の通過に日数
平井愛山先生が、10数年にわたって糖尿病の専門外
を要したため、事業実施機関が 1 月下旬から 3 月
来と内科診療所および多職種連携の基礎を築かれて
上旬の 1 か月半程度であったこと、また随時血糖
いた山武市郡を選択しました。また、歯科診療所で
値 200㎎という基準が厳しかったため、さんむ医療
最初に糖尿病未受診者を発見することからスタート
センターへ紹介することができた人はいませんでし
しますので、山武郡市歯科医師会にお願いして、13
た。しかし山武郡市歯科医師会協力診療所におい
か所の協力歯科診療所を推薦していただきました。
て、事業協力への同意された人の歯肉出血度数と随
加えて、県立病院のさんむ医療センターにも協力を
時血糖値の関係(図 1) と、26 年度千葉県歯科医
お願いして、糖尿病専門外来の川上医師に受け入れ
師会で実施した他事業での歯肉出血度数と随時血糖
態勢を整えていただきました。
値の関係(図 2:各プロットには HbA1c の値も示す)
ここでは千葉県医師会から、地元の山武市郡医師
を比較検討すると、山武郡市の糖尿病未治療患者の
会に対して事業実施の了解をとる必要がある旨をご
中にも、HbA1c が高値である人が存在する可能性が
指摘いただき、医師会へ担当者を派遣して事業説明
推定されます。
を行いました。その際、医師会からの要望もあり
さらに、平成 27 年度以降の本事業遂行を全県的
「随時血糖値が200㎎以上である時にさんむ医療セン
に展開することをもくろみ、図 1 の保存版血糖値
ターへ紹介するという基準」を設けることをお約束
測定マニュアルを平井愛山先生の監修のもと作成し
して事業を実施しました。
て、 千 葉 県 歯 科 医 師 会 会 員 へ 送 付 し て お り ま す
(図3)。
140
8020 No.15 2016-1
図1 歯肉出血度数と随時血糖値の関係
図2 平成26年度千葉県歯科医師会で実施した他事業での歯肉出
血度数と随時血糖値の関係
図4
医師への紹介候補群領域
図3
(★は結果1の平均値:
簡易血糖測定マニュアル 表紙
3
今後の展開
51.6%、125.㎎ /dl)
を検証していくこととしております。また以上のこ
とがかなった暁に、どれくらいの糖尿病重症化予防
による医療費圧縮が図れるかについても、歯科受診
をされる人の糖尿病の認識度などから割り出すこと
で歯科診療所から医科医療機関への紹介を行うこと
としております。
には、医科医療機関の混雑を助長することが予想さ
最後に、本研究事業を実施するに当たり、懇切丁
れ、コンセンサスが不十分ですので、図1と図2を
寧に糖尿病に関する事項をご指導いただきました
勘案して、図 4 を紹介候補群領域として医師会に
平井愛山先生に厚く御礼申し上げます。また、各団
了解いただき、山武市郡医師会の医療機関も紹介先
体への事業説明のためのご協力ご高配下さいました
に加えて本事業を実施することといたしました。
千葉県医師会田畑会長には、深く感謝の意を表しま
また、本会実施の他事業より歯肉出血の低下と
す。さらに、事業実施の際の手技等ご指導頂戴いた
HbA1c の低下が同時に認められることについて、高
しました日大松戸歯学部小方教授にも、心より御礼
い再現性がありましたので、このことを活かして平
申し上げます。
成 27 年度実施事業の事業協力候補の方への事業説
8
0
2
0
推進財団 研究・調査活動報告
医師会からのご意見として、闇雲に糖尿病の疑い
C
明書を作り直し、できるだけ事業協力歯科診療所の
負担を減らせるよう図るつもりです。これにより、
●プロフィール
大規模な歯周病と糖尿病の関係に関する調査が可能
まつだ・いちろう
になることが期待されます。
さらに、歯科医療機関を受診されるであろう糖尿
病未治療もしくは治療中断の人を、歯肉出血を始め
とする歯周疾患から可能性を推定してご本人にお伝
えし、その人の希望に沿った糖尿病の診断治療がで
きる医科医療機関をご紹介するような道筋を確立す
るモデルとして展開するために、何が必要であるか
千葉県歯科医師会千葉県口腔保健センター長、松田歯科医
院院長、介護保険支援専門員、楽いき代表取締役。1983年
東北大学歯学部卒業、87年東北大学大学院歯学研究科修了
(歯学博士)、88年松田歯科医院開設、90年〜93年東北大学
歯学部非常勤講師(歯科理工学)、95年〜15年千葉県歯科
医師会衛生委員会委員、千葉県歯科医師会理事(地域保健・
産業保健・介護保険担当)千葉県医療審議会委員他、14年
介護サービス提供会社設立(代表取締役)、介護支援事業
所開設、15年千葉県口腔保健センター長
8020 No.15 2016-1
141
8020推進財団からの報告
1
平性26年度一般会計収支決算
収支計算書
財産目録
平成26年4月1日から平成27年3月31日まで
科目
平成27年3月31日現在
(円)
決算額
貸借対照表科目
Ⅰ 事業活動収支の部
②特定資産運用収入
現金預金
3,851,747
21,037,976
5,544,050
13,197,433
③会費収入
113,380,000
④事業収入
2,571,404
⑤寄付金収入
⑥雑収入
事業活動収入計
30,000
102,683,003
18,595,935
事業活動収支差額
定期預金
投資有価証券
870,377
121,278,938
退職給付引当資産
4,224,028
7,871,187
事務所移転準備積立資産
1. 投資活動収入
168,231
①基本財産取崩収入
0
②特定資産取崩収入
0
投資活動収入計
0
公募研究助成基金積立資産
48,610,296
什器備品
①基本財産取得支出
0
②特定資産取得支出
1,674,909
投資活動支出計
1,674,909
投資活動収支差額
△ 1,674,909
Ⅲ 財務活動収支の部
265,096,907
その他固定資産
2. 投資活動支出
153,330
電話加入権
152,880
固定資産合計
711,155,815
資産合計
745,391,224
(流動負債)
1. 財務活動収入
預り金
0
2. 財務活動支出
流動負債合計
49,579
49,579
(固定負債)
財務活動支出計
0
財務活動収支差額
0
退職給付引当金
Ⅳ 予備費支出
142
381,232,544
運営基金積立資産
Ⅱ 投資活動収支の部
財務活動収入計
7,000,063
特定資産
②管理費支出
事業活動支出計
34,235,409
基本財産
125,502,966
①事業費支出
流動資産合計
(固定資産)
125,765
1. 事業活動支出
金額
(流動資産)
1. 事業活動収入
①基本財産運用収入
(円)
2,016,667
職員退職引当金
5,854,520
当期収支差額
前期繰越収支差額
31,636,711
負債合計
7,920,766
次期繰越収支差額
34,185,830
正味財産
737,470,458
8020 No.15 2016-1
2,549,119
役員退職引当金
固定負債合計
7,871,187
2
役員構成
平成28年1月現在
正味財産増減計算書
平成26年4月1日から平成27年3月31日まで
科目
(円)
決算額
Ⅰ 一般正味財産増減の部
1. 経常増減の部
(1)
経常収益
①基本財産運用益
3,851,747
②特定資産運用益
5,741,242
③受取会費
113,380,000
A会員
(歯科医師会)
受取会費
38,620,000
B会員
(団体・企業)
受取会費
73,300,000
C会員
(個人)
受取会費
1,460,000
2,571,404
④事業収益
⑤受取寄付金
⑥雑収益
経常収益計
30,000
125,765
125,700,158
(2)
経常費用
①事業費
102,970,353
②管理費
20,008,445
経常費用計
当期経常増減額
122,978,798
氏 名
理事長
山 科 透
(公社)日本歯科医師会会長
副理事長
濱 田 和 生
サンスター (株)代表取締役会長
専務理事
深 井 穫 博
(公社)日本歯科医師会常務理事
常務理事
小 枝 義 典
(公社)日本歯科医師会常務理事
常務理事
佐 藤 徹
前(公社)日本歯科医師会常務理事
常務理事
河 合 克 美
(株)ロッテ専務取締役
常務理事
松 尾 一 彦
理 事
中 田 裕 之
(公社)日本歯科医師会常務理事
理 事
佐 藤 保
(一社)岩手県歯科医師会会長
理 事
平 塚 靖 規
前(一社)京都府歯科医師会会長
理 事
神 原 正 樹
大阪歯科大学名誉教授
理 事
和 田 啓 二 ライオン(株)事業開発部部長
理 事
佐 藤 誠
理 事
坂 本 敏 浩
理 事
鈴 木 久美子
サンスタ-(株)広報部部長
理 事
清 水 惠 太
前(一社)日本学校歯科医会会長
2,721,360
2. 経常外増減の部
(1)
経常外収益
経常外収益計
役 職
0
(2)
経常外費用
所属団体等
サンスタ-(株)役員
医科歯科営業担当
(株)ロッテ中央研究所
上席執行役員所長
パナソニック(株)アプライアンス社
ビューティリビング事業部事業部長
退職給付費用会計基準変更時差異
0
経常外費用計
0
理 事
武 井 典 子
(公社)日本歯科衛生士会会長
0
理 事
森 田 晴 夫
(一社)日本歯科商工協会会長
理 事
住 友 雅 人 日本歯科医学会会長
理 事
井 上 栄
大妻女子大学名誉教授
理 事
井 上 修 二
桐生大学学長
-3,850,000
理 事
小野塚 實 日体柔整専門学校校長
470,932
理 事
鴨 井 久 一 日本歯科大学名誉教授
常務監事
寺 尾 隆 治
監 事
末 髙 武 彦 日本歯科大学名誉教授
当期経常外増減額
当期一般正味財産増減額
2,721,360
一般正味財産期首残高
348,629,904
一般正味財産期末残高
351,351,264
Ⅱ 指定正味財産増減の部
基本財産運用益
一般正味財産への振替額
当期指定正味財産増減額
4,320,932
指定正味財産期首残高
385,648,262
指定正味財産期末残高
386,119,194
Ⅲ 正味財産期末残高
737,470,458
(公社)日本歯科医師会常務理事
8020 No.15 2016-1
143
8020推進財団からの報告
3
平成27年度の活動状況
□挨 拶 (公財)8020推進財団 理事長
(1)第1回理事会(書面による決議)
第9回評議員会の開催について、本財団定款第42条の
規定により、全理事より同意書、監事より確認書を受
理し、第1号議案・第9回評議員会議事次第について理
事会の決議があったものとみなされた。
山科 透
□平成25年度歯科保健活動助成事業報告から
①災害時の歯科保健医療事業「災害時の歯科保健医
療を平時に活かすために」
・理事会の決議があったものとみなされた日
テーマ「知っておきたい災害時の歯科保健医療」
平成27年6月9日
(一社)
岩手県歯科医師会
佐藤 保
②大垣市メタボ歯科検診 平成20年から5年間の歯周
(2)第2回理事会・第9回評議員会の開催
6月24日(水)午後2時から第2回理事会、同3時から第9
病実態調査 不破郡糖尿病医科歯科連携事業と「歯
回評議員会を開催した。
周病と糖尿病」地域住民講演会
「評議員の選任」
「理事及び監事の選任」
「平成26年度事
(公社)
岐阜県歯科医師会
業報告及び収支決算報告並びに監査報告」等について
片野 雅文
③口腔機能増進のための歯科健康診査「歯周病予防
審議を行い全議案が了承された。
のための新唾液検査事業 〜だ液でカンタン歯周
病チェック!あなたの歯ぐきは大丈夫?〜」
(3)第1回・第2回理事会の開催(新執行部)
6月24日(水)新執行部による第1回理事会を午後5時10
(公社)
東京都港区芝歯科医師会
西辻 直之
分、歯科医師会館8階801・802会議室において開催、第
1号議案「代表理事及び業務執行理事の選定」について
□質疑応答 <司会> (公財)8020推進財団
承認され、山科透理事が代表理事に選定された。
地域保健活動推進委員会 副委員長
また、11月24日(火)午後3時、歯科医師会館8階801・
羽根 司人
802会議室において、第2回理事会を開催した。本財団
□休 憩 では公益法人化の対応として4か月を越える期間に理事
□平成25年度8020公募研究事業研究報告から
会を開催し、代表理事及び執行理事が全理事に執務状
況等を説明することとなっている。
④個人調査データを用いた、日英の高齢者の口腔の
健康の比較研究
当日は、理事長挨拶の後、深井専務理事より総括報告、
東北大学大学院歯学研究科 准教授
相田 潤
各所管担当常務理事より報告が行われた。また、平成
27年度後期の業務について、平成28年度の事業計画の
⑤口腔のケアが脳賦活に及ぼす影響に関する研究
予定等が詳しく説明された。
九州歯科大学老年障害者歯科学分野 准教授
藤井 航
(4)歯科保健事業報告会・公募研究発表会の開催
⑥日本歯科医師会の標準的な成人歯科健診プログラ
9月5日(土)午後1時から、歯科医師会館1階大会議室に
ムの『歯の健康力』と産業歯科保健活動受診者の
おいて、平成27年度歯科保健事業報告会・公募研究事
口腔内状態との関連性についての調査研究 〜職域での効果的なオーラルヘルスプロモーショ
業発表会を開催した。
この報告会・発表会は、今年度で4回目の開催となる。
平成25年度の歯科保健活動助成事業報告、同8020公募
ン施策の提言を目指して〜
(公財)
ライオン歯科衛生研究所 主任研究員 研究事業研究報告の中から関係の各委員会において精
市橋 透
査の上、優れたもの各3題を選択し発表した。参加者は
□質疑応答
約70名であった。
<司会> (公財)8020推進財団 専務理事 深井 穫博
□閉 会 (公財)8020推進財団 専務理事 ●プログラム
□開 会 (公財)8020推進財団 専務理事
深井 穫博
144
8020 No.15 2016-1
深井 穫博
(5)第13回フォ-ラム8020の開催
11月14日(土)午後1時から歯科医師会館1階大会議
室において、学術集会「第13回フォーラム8020」を開
催し、「健康寿命の延伸に寄与する歯科医療・口腔保
健〜エビデンスとそれに基づく健康政策の推進〜」を
テーマに講演、シンポジウムを行った。参加者は約100
名であった。
●プログラム
【総合司会】 (公財)8020推進財団
地域保健活動推進委員会委員長
岡田 寿朗
□開会・挨拶 (公財)8020推進財団 理事長 ②「平成26年度8020推進財団歯科保健活動助成事業報
告書」を作成し、平成27年9月に賛助会員はじめ関係方
面に送付した。
山科 透
□基調講演
「日本の口腔保健からグロ-バルオ-ラルヘルスへ
WHO口腔保健との協調」
WHO国際口腔保健部歯科医官
小川 祐司
□講 演① 「エビデンスに基づく健康教育・口腔保健情報」
福岡歯科大学教授 内藤 徹
□休 憩
□講 演②
「最近の歯科保健医療政策の現状とトピックス」
厚生労働省医政局歯科保健課歯科口腔保健専門官
高田 淳子
□講 演③
<調査・研究の実施>
指定研究事業として8020研究事業の振興を一層推進
するため本財団が指定した研究題目について研究を依
「歯科医療による健康増進効果に関する調査研究」
(公財)8020推進財団 専務理事 深井 穫博
頼している。平成27年度は、下記の2つの指定研究を選
定した。
□休 憩
□シンポジウム
①歯科医師を対象とした歯と全身の健康、栄養との関
「健康寿命の延伸に寄与する歯科医療・口腔保健
〜エビデンスとそれに基づく健康政策の推進〜」
連に関する研究 (平成17年度開始)
研究者名:若井 建志
【座 長】深井穫博
(名古屋大学大学院医学系研究科
【出席者】小川祐司、内藤 徹、高田淳子、山科 透
予防医学/医学推計・判断学 教授)
□閉 会 (公財)8020推進財団 専務理事
深井 穫博
②多目的コホート研究(JPHC study)における口腔と
全身の健康に関する研究(平成16年度開始)
研究者名:川口 陽子
(6)調査・研究
<調査・研究の報告書作成>
(東京医科歯科大学大学院医歯学総合
研究科教授)
①「平成26年度8020公募研究報告書」を作成し、平成
27年9月に賛助会員はじめ関係方面に送付した。
8020 No.15 2016-1
145
8020推進財団からの報告
(7)平成27年度8020公募研究事業
2.8020とQOL・ADLおよび医療・介護・終末期医療
9月10日(木)午後4時より8020調査研究委員会を開
に関する研究
催し、7月31日の締切りまでに応募のあった62題の公募
3.高齢者の摂食・嚥下機能および口腔ケアに関す
研究申請について審査を行い、下記の17題の採択を決
る研究
定した。
4.オーラルヘルスプロモ-ションおよび歯の喪失
<公募研究課題>
防止に関する研究
1.口腔保健に関する疫学調査
5.自由研究課題
<採択された公募研究>
146
申請者
1
鈴木 淳一
東京大学大学院医学系研究科
先端臨床医学開発講座
2
晴佐久 悟
福岡歯科大学口腔保健学講座
講師
我が国の自然に含まれる飲料水中フッ化物が成人のう蝕、
歯周病および歯の喪失に及ぼす影響に関する研究
3
和泉 雄一
東京医科歯科大学大学院
医歯学総合研究科
教授
歯周病と非アルコール性脂肪性肝疾患
(NAFLD)
との関わり
4
小林 恒
国立大学法人弘前大学大学院
医学研究科
准教授・
口腔機能がフレイルに与える影響に関する研究
診療教授
5
山本 俊郎
京都府公立大学法人
京都府立医科大学附属病院 歯科
歯科診療
副部長・ 小児がん周術期患者に対する口腔ケアの効果の調査
講師
6
柴田佐都子
新潟大学医歯学系
助教
介護施設における口腔衛生管理と栄養管理
(経口維持等)
の連携の実態と効果
7
井上 誠
新潟大学医歯学系
教授
超高齢社会におけるフレイルを克服する
8
中根 綾子
東京医科歯科大学大学院
医歯学総合研究科医歯学系専攻
老化制御学講座高齢者歯科学分野
助教
適切な食事形態を簡便に評価する方法の検討
9
比嘉 良喬
沖縄県歯科医師会
会長
歯科医院での口腔機能を高める歯科保健指導の虚弱・
介護予防に対する効果の検討
10
高橋 克
京都大学大学院医学研究科感覚運動系
外科学講座口腔外科分野
助教
関節リウマチ患者を対象とした口腔衛生管理の有効性に
関する検討
11
下髙原理恵
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科
助教
8020運動公募研究抄録の計量テキスト分析・過去12年
間の全成果報告書の可視化-
12
栗田 浩
国立大学法人信州大学医学部
歯科口腔外科学教室
教授
13
斎藤 英生
一般社団法人千葉県歯科医師会
会長
14
藤本 篤士
医療法人渓仁会
札幌西円山病院歯科診療部
8020 No.15 2016-1
所 属
職 名
研究課題名
特任 日本およびアジア諸国の循環器疾患における歯周病の関与
准教授 を解明する国際臨床研究
国保特定健診事業への歯科検診の導入に関する研究
(歯科疾患と全身の健康状態の関連および歯科保健指導に
よる生活習慣病改善効果)
医科歯科連携事業
歯科診 高齢者の介護予防のための口腔機能評価および管理から
なる包括的システムの15年間の効果およびフレイルティへの
療部長
対応に関する研究
15
松山 祐輔
東北大学大学院歯学研究科
国際歯科保健学分野
16
田村 佳代
京都大学大学院医学研究科感覚運動系
外科学講座口腔外科分野
17
山田 善裕 江東区健康部 保健所
大学院生
未就学児の歯科受診にみられる地域・社会格差とその関連
要因の解明
助教
咀嚼能力の低下が肥満・糖尿病の発症・進行に与える影響
の検討
歯科保健・ 住民基本台帳情報とリンケージした各種データを用いた
医療連携
(第三報)
担当課長 歯周疾患検診受診者の特性に関する分析
歯科保健活動事業助成交付申請について審査を行い、
(8)平成27年度歯科保健活動事業への助成
1
8月18日(水)午後2時より8020地域保健活動推進委員会
下記の27題を採択し、各事業に対して助成交付を行っ
を開催し、6月30日の締切りまでに応募のあった34題の
た。事業名と申請団体名は次のとおり。
区 分
申請団体名
事 業 名
一般
歯科診療所診療状況確認ネットワーク 事業主体:
(一社)
岩手県歯科医師会
岩手県歯科医師会
構築事業
事業協力:岩手県
社団法人
糖尿病と歯周病の関係の明確化と医
科歯科連携・医療と介護の連携構築
一般
2
千葉県歯科医師会 への活用の検討 ~血中グルコース
社団法人
およびHbAlcと歯周基本治療の治療
効果について 2~
3
公益
かかりつけ歯科医 「口腔がん」
東京都歯科医師会
普及啓発事業
社団法人
一般
NPOとの協働による住民参加型歯科保
4
新潟県歯科医師会
健推進事業 (はーもにープロジェクト)
社団法人
5
一般
静岡県歯科医師会 成人(就業)前歯周病教育事業
社団法人
一般
6
愛知県歯科医師会 食育推進事業
社団法人
7
千葉県歯科医師会 地域保健委員会
日本大学松戸歯学部 歯周治療学講座(予定)
東京歯科大学 歯周病学講座、口腔衛生学講座(予定)
千葉県薬剤師会
公益社団法人 東京都歯科医師会
成人保健医療常任委員会
新潟県歯科医師会が事業主体となり、住民活動支援組織で
あるNPO法人まちづくり学校、新潟県福祉保健部、新潟市
保健所、新潟大学、自治会等を加えた企画運営組織
(通称:
は~もに~プロジェクト)
を形成し事業を実施してきた。
高等高校または専門学校
(調理師専門学校)
静岡県健康福祉部医療健康局健康増進課
静岡県歯科医師会 静岡県衛生士会
主催 :
(一社)
愛知県歯科医師会
オブザーバー:愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座、
東海学園大学 健康栄養学部、
公益社団法人 愛知県栄養士会
新オレンジプランで求められる歯科
一般
奈良県歯科医師会 医師の認知症対応能力向上のための 奈良県歯科医師会高齢者歯科保健委員会
社団法人
ツール作成事業
一般
糖尿病と歯周病に関わる医科歯科
8
大阪府歯科医師会
連携推進事業
社団法人
9
実 施 組 織
一般
簡易唾液検査による歯周病検査の
広島県歯科医師会
普及啓発事業
社団法人
実施母体:和泉市歯科医師会(会員数96名)
、
和泉市医師会(会員数251名、医療機関数118箇所)
、
府中病院(病床数477床)、和泉市保健所
主催:大阪府歯科医師会、和泉市歯科医師会
広島県歯科医師会、広島県歯科衛生連絡協議会
(広島県
歯科医師会、広島大学、広島県、広島県教育委員会、
広島市、広島市教育委員会で構成)
8020 No.15 2016-1
147
8020推進財団からの報告
10
一般
県民の残存歯数からみた食のQOL
島根県歯科医師会
調査事業
社団法人
一般社団法人 島根県歯科医師会
11
一般
糖尿病フォーラム徳島における歯科
徳島県歯科医師会
からの糖尿病重症化予防の取り組み
社団法人
主催:徳島大学糖尿病臨床研究開発センター
共催:徳島県医師会、徳島市医師会、日本糖尿病協会
徳島県支部 他
12
公益
唾液及び歯肉溝液を用いた若者の歯
香川県歯科医師会
肉炎罹患実態に関するパイロット調査
社団法人
香川県歯科医師会、徳島大学歯学部予防歯学分野
13
一般
仙台歯科医師会
社団法人
仙台市震災復興計画
(5か年)
期間に 一般社団法人 仙台歯科医師会、
おける沿岸被災地の幼児歯科保健の 仙台市、一般社団法人 宮城県歯科衛生士会、
歯と口の健康づくりネットワーク会議、東北大学
現状と課題
公益
フロリデーション
(水道水フッ化物濃度
14
富岡甘楽歯科医師会
調整)
についての啓発活動
社団法人
公益社団法人 富岡甘楽歯科医師会、富岡市、下仁田
町、南牧村、甘楽町、下仁田町健康づくり推進協議会、
下仁田町保健推進員協議会、下仁田町フロリデーション推
進会議、住民組織等、日本口腔衛生学会
(学術支援)
八千代市歯科医師会、東京医科歯科大学大学院医歯学
一般
一般社団法人八千代市歯科医師会・ 総合研究科 老化制御学系口腔老化制御学講座高齢者
15
八千代市歯科医師会
(千葉県東葛南部地域リハビ
摂食嚥下リハビリテーション普及事業 歯科学分野、 新八千代病院
社団法人
リテーションセンター)
、柏歯科医師会
16
公益
東京都武蔵野市 特別養護老人ホームにおける摂食
嚥下カンファレンス
社団法人 歯科医師会
公益社団法人 東京都武蔵野市歯科医師会
協力 日本歯科大学 口腔リハビリテーション多摩クリニック
17
一般
横浜市における大都市特有の歯科
横浜市歯科医師会
保健ニーズの変化と実態調査
社団法人
一般社団法人 横浜市歯科医師会
鶴見大学歯学部地域歯科保健学講座
「食」
と
「健康」
にかかわる多職種の
一般
連携・協働による食育推進事業
18
甲府市歯科医師会
(その2)
社団法人
小学生への味覚教育の取り組み
一般社団法人 甲府市歯科医師会、甲府市役所健康衛生
課、山梨県栄養士会、山梨県調理師会、山梨県歯科衛
生士会、中北保健所、東京医科歯科大学小児歯科学教
室、山梨学院短期大学食物栄養科、ムカイ口腔機能研究
所、千塚小学校
19
公益
長野市歯科医師会 障害者施設での歯科健診の実施
社団法人
公益社団法人 長野市歯科医師会
20
一般
成人期
(二十歳)
の歯、口腔の健康
西宮市歯科医師会
づくり推進事業
社団法人
一般社団法人 西宮市歯科医師会
21
特別支援学校におけるTEACCHプロ
一般
広島市歯科医師会
広島市歯科医師会 グラムを応用したオーダーメイドの口腔
広島大学病院障害者歯科
社団法人
清掃法指導システムの構築
22
介護保険施設における施設協力歯科
一般
長崎市歯科医師会 医の設置状況と口腔機能関連介護
社団法人
サービスへの取り組みに関する調査
一般社団法人 長崎市歯科医師会
介護予防のための住民参加型口腔機
公益財団法人 ライオン歯科衛生研究所、
公益
ライオン歯 科 衛 生 能向上事業~口腔機能の減退への
23
一般社団法人 沖縄県歯科医師会
気づきと支援~高齢者が高齢者を支え
財団法人 研究所
宮古島市福祉部介護長寿課、宮古島市社会協議会
る活動を通して
24
148
一般
北海道
社団法人 歯科衛生士会
8020 No.15 2016-1
在宅歯科診療支援歯科衛生士認定
登録事業
一般社団法人 北海道歯科衛生士会
25
特定
むし歯予防フッ素
非営利
推進会議
活動法人
[NPO法人 日本むし歯フッ素推進会議]
協賛団体 1.
市民団体:[吉川市フロリデーション推進協議
会(埼玉県)]、[あゆの会(富山県)]、[長崎フロリデーション
協会]、[北海道子どもの歯を守る会]、[健康増進ネットワー
クおかやま] 2.
NPO法人:[ウォーターフロリデーションファン
全国地域で取り組む水道水フロリデー
ド] 3.
県行政:[新潟県]
ション住民学習活動
学術支援団体 1.
歯科医師会:[山梨県歯科医師会]、[川
崎市歯科医師会]、[富岡甘楽歯科医師会] 2.
歯科学会:
[日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会] 3.
歯科大学:[朝
日大学歯学部
(社会口腔保健学)]、[鶴見大学歯学部(地
域歯科保健学)]、[神奈川歯科大学大学院(口腔衛生学)]
特定
食べることを支援するまちづくりⅠ
26 非営利 メディカルケア協会
~ごっくん予防プロジェクト~
活動法人
27
病院
トヨタ記 念 病 院 歯 老人保健施設及び健康支援センターに
おける口腔管理実態調査と啓発活動
科口腔外科
(9)調査研究事業「歯科医療による健康増進効果に関す
る調査研究」
ごっくん予防プロジェクトチーム (メンバー:新宿区歯科医師
会、四谷牛込歯科医師会、新宿区医師会、慶応義塾大
学医学部リハビリテーション医学教室、新宿区、特定非営
利活動法人 メディカルケア協会)
トヨタ記念病院 歯科口腔外科、感染症科
豊田加茂歯科医師会
(10)歯・口の健康と病いについての患者と家族の語りに
関する調査研究
本財団では、都道府県歯科医師会等の協力を得て、
本年度から、NPO法人「健康と病いの語りディペッ
健康長寿社会の実現に寄与する歯科医療・口腔保健を
クス・ジャパン」との協働で歯を失った経験をもつ方
一層充実させることを目的に昨年度実施した 「歯科医
の体験談(語り)を集め、広く一般の方々に情報源と
療による健康増進効果に関する調査研究」 の報告書を
して利用していただくことを目的に「歯・口の健康と
発行した。また本調査の追跡調査を本年度10月末から
病いの語り」データベースとウェブサイトの製作を予
実施し、同時期に本調査の比較対象として「一般地域
定している。
住民を対象とした歯科医療による健康増進効果に関す
る調査研究」を実施している。
(11)8020推進財団理事長賞の贈呈
8020運動の積極的な普及啓発を目的に、8020を達成
しているお年寄りに対して8020推進財団理事長賞を贈
呈した。被表彰者の推薦は、都道府県歯科医師会会長
が10名以内を推薦し、表彰は都道府県歯科医師会が行
っている表彰事業の際に行っている。
平 成 27 年 度 ( 平 成 28 年 1 月 31 日 現 在 ) は、北 海 道、
青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県、
茨城県、栃木県、千葉県、埼玉県、東京都、長野県、
新潟県、静岡県、愛知県、三重県、岐阜県、富山県、
石川県、福井県、滋賀県、奈良県、京都府、大阪府、
鳥取県、広島県、島根県、山口県、徳島県、香川県、
愛媛県、高知県、福岡県、長崎県、大分県、熊本県、
宮崎県、沖縄県の39都道府県より申請があり賞状を授
与した。
8020 No.15 2016-1
149
8020推進財団からの報告
(12)8020運動ポスターの募集
財団では、
「8020運動をより一層国民の方々に知ってい
<最優秀賞(1名)>
ただき、歯の健康について理解していただく」ことを目
佐々木 紫
的に 「8020運動ポスター」 の募集。平成27年9月30日に締
<優 秀 賞(3名)>
切り、12月2日(水)に8020運動ポスター審査会を開催した。
中村 綾乃、山下 仁子、押谷 礼乃
281件という多数の応募の中、厳正な審査が行われ、
<入 選(8名)>
佐々木 紫氏ら12人の方々の作品が選出された。委員に
谷 綾 夏、岡 田 千 里、吉 川 初 音、河 野 麻 矢、
は武蔵野美術大学教授・丸山直文氏、同大学元教授・
小松 未来、吉澤 朱里愛、髙橋 菜摘美、
柳澤紀子氏らの専門委員が加わり審査が行われた。
高野 晴澄
<最優秀賞>
ささき
ゆかり
なかむら
あやの
ゆかり
なかむら
たに
あやの
あやか
こまつ
みく
たかの
はると
やました
おかだ
よしざわ
<優 秀 賞>
やました
ひとこ
ひとこ
おしたに
ちさと
じゅり
よしかわ
あ
あやの
はつね
たか はし
こうの
なつみ
<優 秀 賞>
おしたに
あやの
佐々木 紫 氏
中村 綾乃 氏 山下 仁子 氏
押谷 礼乃 氏
<入 選>
<入 選>
<入 選>
<入 選>
たに
あやか
おかだ
ちさと
よしかわ
はつね
こうの
まや
谷 綾夏 氏
岡田 千里 氏 吉川 初音 氏
河野 麻矢 氏
<入 選>
<入 選>
<入 選>
<入 選>
こまつ
みく
小松 未来 氏
150
<優 秀 賞>
ささき
8020 No.15 2016-1
よしざわ
じゅり
あ
吉澤 朱里愛 氏 たか はし
なつみ
髙橋 菜摘美 氏
たかの
はると
高野 晴澄 氏
まや
(13)2016年カレンダーを作製
賛助会員のメットライフ生命保険株式会社のご厚意
(16)会誌「8020」の発行
により、2016年カレンダーを作製した。平成26年度の
会誌「8020」第15号を平成28年1月に発刊し、賛助会
8020ポスター受賞者の作品12点を利用して作製し、12
員はじめ関係方面に送付した。
月に賛助会員はじめ関係方面に送付した。
(14)8020運動・プレゼント・アンケートキャンペ-ンⅥ
平成27年12月1日(火)から同28年2月29日(月)までの3か
月間、本財団のホームページにおいて、一般の方を対
象とした8020運動等に関するアンケートを実施し、抽
(17)会員レターの発行
選で100名様に株式会社ロッテの協力商品をプレゼント
5月と12月(第18号・第19号)の会員レターを発行し、
する。アンケート調査結果は財団ホームページにおい
関係方面に送付した。
て公開する予定。
(18)賛助会員証の発行
本年度入会者の方に賛助会員証を発行し、送付した。
(19)8020テレビ「あっぱれ!8020さん~噛んで健康ハッ
(15)歯科口腔保健法の制定及び歯科保健条例の制定マッ
プについて
ピーライフ~」放送中
10月よりBSジャパンにて(株)ロッテ提供で毎週火曜
歯科口腔保健法が平成23年8月10日に公布され、また
日20:55から5分間放送中、本財団からは関係者等の出
各都道府県においても「歯科保健条例」が次々と制定
演の協力をしている。
され、平成27年12月現在、42道府県で制定済である。
本財団ではホームページにおいて、都道府県・市区
町村の歯科保健条例の制定状況を案内している。
8020 No.15 2016-1
151
8020推進財団からの報告
152
8020 No.15 2016-1
8020 No.15 2016-1
153
CONTENTS
Journal of The 8020 Promotion Foundation No.
Greeting
15
1
A. Current Oral Health Information
Essay
Oral Health in the End of Edo to the Meiji Period
Michifumi Isoda
6
Round tagle discussion
World Conference 2015 Achievement and Beyond: How Japan Should Contribute to the World8
Hiroshi Ogawa/Toru Yamashina/Kakuhiro Fukai
Oral health for ageing society –global perspective and WHO policy–
Dental Officer, Global Oral Health Programme,World Health Organization
20
Hiroshi Ogawa
Activity of Association of Dental Cooperation in Nepal and Nepalesa Big Earthquake24
Hideo Ohno
8020 Campaign according to the data containing Japanese national oral health survey26
Hideyuki Kamijo
EBM - evidence-based medicine -
Oral health and nutrition
Masanori Iwasaki
EBM - evidence-based medicine -
What’re the oral health inequalities? -causes and strategies
Jun Aida
EBM - evidence-based medicine -
32
36
The relationship between healthy life expectancy and number of teeth
Making the 8020 campaign more powerful is important.
40
The Job of Dental Technicians
44
Prospects of dental stem cells and cell banks in regenerative medicine.
46
New Dental Care Habits "The Future of Dental Care"
50
Daily Masticatory Performance Tester "RHYTHMI-KAMU"
54
Midori Tsuneishi
Kazuhiko Suese
Taka Nakahara
Sunstar
LOTTE
For further promotion of 8020 Campaign. - Case report of LION Corporation's efforts -56
Masanori Hirano
Promoting Public Health - Dental Professionals Working in Local Government and "Gyoushikai"60
Yuko Chou
154
8020 No.15 2016-1
Interviews with active elderly people who have maintained at least 20 teeth at age 80
62
Periodontal Diseases in Dogs and Cats
66
Special Interview
68
Introduction to "8020" BS TV
74
Ibaraki Dental Association / Shiga Dental Association / Shimane Dentarl Association / Ishikawa Dental Assochiaiton
Tadashi Ito
Miho Takeda
B. Research Article
About medical cooperation and community health activities
76
‘Oral Frailty’as a new concept to maintain oral functions
: Fundamental approach to achieve healthy longevity
80
Toru Sato
Katsuya Iijima
How can you convey health information for your patients?85
- Reconsideration of he health information by evidence-based medicine Toru Naito
Dental Approach to Dementia Patients 88
Reducing Medical Cost by the Oral Care for Aspiration Pneumonia Prevention
92
Kaoru Sakurai
Yutaka Watanabe
Why don’t you visit to patient’s home?96
Takeshi Kikutani
AIDS will be found from the mouth.
99
Takeshi Usami
C. Reports on the Research Projects of the 8020 promotion foundation
Forum Report
13th 8020 Forum
102
Survey research on the effectiveness of dental care for promoting general and oral health in Japan
: the 8020 Promotion Foundation study on the health promotion effect of dental care.
106
The association of active and secondhand smoking with oral health
111
Morito Hane
Michiko Furuta
Masayuki Ueno / Yoko Kawaguchi
8020 No.15 2016-1
155
Associations among oral health, general well-being, and nutritional status in dentists114
: use of dental floss/interdental brushes and total mortality.
Kenji Wakai
Community-based dental promotion
The dental support for the students of special support school
Iwate Dental Association (Jun Miyoshi, Tamotsu Satoh)
116
Project to promote medicine and dentistry cooperation related diabetes and periodontal disease118
Osaka Dental Association Managing Director (Takashi Tsuda)
Approach to prevent the worsening of diabetes from the point of view of 120
dentistry in Tokushima Diabetes Forum Reducing the diabetes death rate in Tokushima
Tokushima Dental Association Community Health in charge of Managing Director (Yoshifumi Okamoto)
Workshop about new dental examination and health instruction support program : 122
(Okinawa version)
Okinawa Dental Association (Atstuko Komesu / Hitoshi Tamaki)
Dental health activities through multidisciplinary cooperation that is carried out in the citizen participation
124
Conference for Feeding Support and Multidisciplinary Cooperation in the Nursing Care Facility for the Elderly
126
Sendai Dental Association Director (Masatsugu Hirata)
Machida Dental Association Tokyo Japan (Fuyuki Ogawa / Kana Ehara)
Reports on Selected Reseach
10-year tooth loss of regular attenders undergoing maintenance at dental offices
128
Structural relationships between having the dentist and their survival
130
A study of organizing about residence activity for oral health
134
Koichi Yoshino
Tanji Hoshi
Kyohei Saito / Takeshi Sasaki Keiji Yoshimura / Noboru Ueda
Is there an Occupational Status Gradient in the Development of Periodontal Disease in Japanese Workers?136
: a 5-year Prospective Cohort Study in Japanese Workers
Koichiro Irie
Study on association between dental health examination and specific medical examination result138
- Study on introduction of dental health examination to specific medical examination project Hiroshi Kurita / Imahito Karasawa / Yuji Kusafuka
The Cooperation Enterprise of Medicine and Dentistry On the Relationships between Diabetes and Periodontitis
Ichiro Matsuda / Kyohei Saitoh
156
8020 No.15 2016-1
140
会誌「8020」
は平成14年1月に第1
号を刊行し、毎年1月に発行してきまし
た。全号のバックナンバーの電子書籍
(Ebook)
を公開しています。
PCからもタブレット端末からでも無料
で誰でも閲覧することができます。
iPad、iPhoneなどiOS端末、Android
端末からも閲覧することができます。PC
からは財団ホームページ内から閲覧でき
ます。
●閲覧方法●
▶︎PC:
「8020推進財団ホームページ」内の8020会誌コーナー
より閲覧できます。
▶︎iOS端末:AppStoreより
「Wisebook Clowdviewer」
アプリを
ダウンロード→アプリを開いて
「左上メニューボタン」→「企業ロ
グイン」
より下記ID、
パスワード入力後、閲覧できます。
▶︎Android端末:Google Playストアより
「Wisebook Clowdviewer」
アプリをダウンロード→アプリを開いて
「左上メニューボタン」→
「企業ログイン」
より下記ID、
パスワード入力後、閲覧できます。
アカウントID:ebook8020 ログインID:ebook8020
パスワード :ebook8020
編集後記
80歳になっても20本以上の歯を保つことを目標とした
「8020運動」
は、1989年に始まり、今年で27年目を迎えました。
この間にさまざまな方々の努力により、低年齢者のむし歯
の減少や成人・高齢者の歯の喪失防止が進み、いずれの年
齢層でも保有する歯の数は増加し続けています。2011年に
は「8020」達成者は40%を超えました。2016年の今年は、5
年に一度行われる歯科疾患実態調査の実施年ですが、その
達成者が50%を超えるかどうかが焦点となりそうです。
愛知県で行われた65歳以上の健常者4,425名を対象とした
調査では、歯の保有数が多いほど要介護状態になりにくい
No.
15
第15号 平成28年1月31日発行
公益財団法人 8020 推進財団 会誌
Journal of The 8020 Promotion Foundation
公益財団法人8020推進財団
会誌編集委員会
委 員 長
尾松 素樹
副委員長
猪越 重久
委 員
花田 信弘
上田 賢
羽根 司人
飯島 裕之
(担当役員)
理 事 長 山科 透
平成27年度 8020運動ポスター
最優秀賞作品 佐々木紫さん
専務理事
深井 穫博
理 事
中田 裕之
■編 集
公益財団法人8020推進財団
会誌編集委員会
■発行人
山科 透
■発 行
公益財団法人8020推進財団
〒102-0073
ことや、認知症発症および転倒・骨折のリスクが下がるこ
東京都千代田区九段北4-1-20
とがわかってきました。健康寿命の延伸が国の大きな目標
TEL 03-3512-8020
ですが、保有する歯をできるだけ残すことが、その目標達
FAX 03-3511-7088
成に大きな役割を果たすものと思います。
ホームページ
歯科医療関係者は、身体の機能の中でも歯や口腔といっ
http://www.8020zaidan.or.jp/
た一部を中心に見てきたと言っても過言ではありませんが、
■印刷所
一世印刷株式会社
今後、歯科医療がどれだけ全身の健康に寄与し、生活の質
東京都新宿区下落合2-6-22
の向上に寄与するかを評価することが重要になると思われ
ます。
会誌編集副委員長 猪越 重久
禁 無断転載 ©2016 公益財団法人8020推進財団
8020 No.15 2016-1
157
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