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マイナンバー対応 ガイドブック

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マイナンバー対応 ガイドブック
税理士のための
マイナンバー対応
ガイドブック
~特定個人情報の適正な取扱いに向けて~
日本税理士会連合会
(平成 28 年8月改訂版)
はしがき
社会保障・税番号制度(以下「マイナンバー制度」という。)は、社会保障・税及
び災害対策の分野における行政運営の効率化を図り、国民にとって利便性の高い、公
平・公正な社会を実現するための社会基盤の整備を図ること等を目的として導入され、
平成 27 年 10 月より個人番号・法人番号が通知され、平成 28 年1月より社会保障・
税・災害対策の分野において、順次利用が開始されています。
これに伴い、税の分野では、税務署長等に提出する申告書・法定調書等の税務関係
書類に個人番号を記載することが義務付けられておりますが、マイナンバー制度では、
個人番号をその内容に含む個人情報(以下「特定個人情報」という。)の利用範囲が
限定されているとともに、個人番号を取り扱う全ての事業者に対して安全管理措置を
義務付ける等、厳格な保護措置を定めております。
税理士は、顧問先企業等の身近な相談相手であり、税務に関する専門家として、顧
問先企業等からのマイナンバー制度に関する相談に応えるとともに、適切な指導を行
うことが期待されております。
マイナンバー制度の普及・定着に当たっては、税理士の果たすべき役割は極めて大
きく、税理士が同制度についての理解を深めるとともに、税理士事務所における特定
個人情報の適正な管理体制の整備に努めることが重要です。
本ガイドブックは、税理士が個人番号を取り扱う事務を適正に遂行するとともに、
顧問先企業等への適切な指導を行えるよう、マイナンバー制度に対応するために必要
な事務手続の具体的手順や留意事項について、関係官庁の協力を得ながら、税理士事
務所における業務を中心に取りまとめ、平成 27 年4月に初版を発行し、マイナンバ
ー制度施行後の制度改正等を踏まえて内容を見直し、改訂いたしました。
本ガイドブックが、マイナンバー制度の円滑な運用を図る上で、税理士の皆様の業
務の一助となれば幸いに存じます。
平成 28 年8月
日本税理士会連合会
会長
神津
信一
目
Ⅰ
マイナンバー制度への対応
次
~個人番号を適切に取り扱うために~
P.1~
マイナンバー制度への対応に当たって ................................... 1
事務所体制の整備 .................................................... 10
Ⅰ-1 事務作業内容等の確認 ......................................... 11
Ⅰ-2 基本方針・取扱規程等の策定 ................................... 14
Ⅰ-3 税理士事務所における安全管理措置 ............................. 15
(1)組織的安全管理措置 ........................................ 15
(2)物理的安全管理措置 ........................................ 20
(3)技術的安全管理措置 ........................................ 24
(4)人的安全管理措置 .......................................... 27
Ⅰ-4 業務契約書の作成・見直し ..................................... 29
Ⅰ-5 特定個人情報の漏えい事案等が発生した場合の対応 ............... 30
Ⅱ
特定個人情報の適正な取扱い ~個人番号の事務作業フローに沿った取扱い~
P.32~
Ⅱ-1 個人番号の取得 ............................................... 34
Ⅱ-2 安全管理措置等 ............................................... 36
(1)顧問先からの委託―委託契約の見直し ........................ 36
(2)再委託の取扱い ............................................ 37
(3)税理士事務所における安全管理措置 .......................... 39
Ⅱ-3 個人番号の利用 ............................................... 40
(1)税理士業務における個人番号の利用制限 ...................... 40
(2)税理士業務における特定個人情報ファイルの作成の制限 ........ 41
Ⅱ-4 個人番号の提供 ............................................... 42
(1)税理士から税務署等への法定調書等の代理提出 ................ 42
(2)税理士から税務署等への申告書等の提出 ...................... 43
(3)国税当局における代理人としての本人確認手続 ................ 44
(4)本人への交付 .............................................. 50
(5)税理士から顧問先への個人番号の提供と本人確認 .............. 52
Ⅱ-5 個人番号の保管・廃棄 ......................................... 53
(1)税理士事務所における特定個人情報の保管制限 ................ 53
(2)データ・書類・機器等の削除又は廃棄 ........................ 55
Ⅲ
顧問先(事業者)への指導
P.57~
Ⅲ-1 番号制度の概要の周知 ......................................... 57
Ⅲ-2 安全管理措置の中小規模事業者に対する特例 ..................... 59
Ⅲ-3 特定個人情報の適正な取扱い
~個人番号の事務作業フローに沿った取扱い(中小規模事業者向け)~ .... 63
(1)個人番号の取得 ............................................ 63
(2)個人番号の利用・提供 ...................................... 65
(3)個人番号の保管 ............................................ 66
(4)個人番号の廃棄 ............................................ 67
Ⅲ-4 委託の留意点 ................................................. 69
Ⅳ
資料
P.71~
別冊:税理士のためのマイナンバー様式集
別冊:税理士のためのマイナンバー相談事例
参考情報 ............................................................ 71
罰則規定(内閣官房社会保障改革担当室作成資料(一部編集)) ........... 72
Ⅰ
マイナンバー制度への対応
~個人番号を適正に取り扱うために~
<マイナンバー制度への対応に当たって>
ポイント
☞ マイナンバー制度の概要を理解しましょう。
☞ 日税連・税理士会のマイナンバー制度に関する研修会等を受講し、最新の
情報を収集しましょう。
1.マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)
○ マイナンバー制度は、
「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利
用等に関する法律」(以下「番号法」という。)に基づき、社会保障・税・災害
対策の分野における行政運営の効率化を図り、国民にとって利便性の高い、公
平・公正な社会を実現するための社会基盤の整備を図ること等を目的として導
入された制度であり、住民票に記載されている者に対し『個人番号』、法人等に
対し『法人番号』がそれぞれ付番されます。
○ マイナンバー制度の導入により、①行政手続の無駄を排除し、行政運営の効率
化を実現すること、②行政手続の簡素化により国民の負担を軽減し、利便性の
向上を図ること、③より正確な所得把握を実現し、国民の社会保障を受ける権
利を守ること等の実現が期待されています。
公正公平
な社会の
実現
国民の
利便性の
向上
行政運営
の効率化
○ また、複数の機関に存在する個人情報が同一人の情報であることの確認を行う
ことにより、制度の効率性・透明性を高め、国民にとって利便性の高い、公平・
公正な社会を実現するための社会基盤を整備することが期待されています。
※ 「個人情報」とは、個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」
という。)第2条第1項に規定する「生存する個人に関する情報であって、当
該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別す
ることができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特
定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」をいいます。
-1-
○ 個人番号の利用対象範囲は、社会保障・税・災害対策に関する事務に限定され
ています。
社会保障: 年金の資格取得・確認・給付、雇用保険の資格取得・確認・給付、
ハローワークの事務、医療保険の給付の請求、福祉分野の給付、
生活保護等
税
: 税務当局に提出する申告書・届出書・調書等への記載、税務当局
における事務等
災害対策: 被災者生活再建支援金の支給、被災者台帳の作成事務等
※ 社会保障・地方税・災害対策に関する事務やこれらに類する事務で、地方公
共団体が条例で定める事務にも個人番号を利用することができます。
○ 個人番号は、住民票所在地の市区町村長から平成 27 年 10 月より順次「通知カ
ード」が送付され、その後、平成 28 年1月1日より、申請により『個人番号カ
ード』
(以下「マイナンバーカード」という。)が交付されています。
○ 「通知カード」には、氏名、住所、生年月日、性別及び個人番号が記載されて
おり、マイナンバーカードの交付の際に返納することとなります。
○ マイナンバーカードは、住民基本台帳カードと同様、IC チップの付いたカード
で、表面に氏名、住所、生年月日、性別(基本4情報)と顔写真、裏面に個人
番号が記載されています。
一枚で本人確認のための身分証明書として使用できるほか、地方公共団体が
条例で定めるサービス(例:図書館カード、印鑑登録証等)に利用でき、また
e-Tax をはじめとする電子申告等が行える電子証明書も標準搭載されています
ので、マイナンバーカードを取得することをお勧めします。
○ 法人番号は、平成 27 年 10 月より順次通知・公表され、国税庁の法人番号公表
サイトに掲載されています。
○ 個人番号・法人番号は、平成 28 年1月1日以降、手続ごとに順次利用が開始さ
れています。
-2-
【参考】税務関係書類への番号記載時期
記載対象
一般的な場合
所得税
平成 28 年1月1日の
属する年分以降の申
告書から
平成 28 年分の場合⇒
平成 29 年2月 16 日から3月 15 日ま
で
贈与税
平成 28 年1月1日の
属する年分以降の申
告書から
平成 28 年分の場合⇒
平成 29 年2月1日から3月 15 日まで
法人税
平成 28 年1月1日以
降に開始する事業年
度に係る申告書から
平成 28 年 12 月末決算の場合⇒
平成 29 年2月 28 日まで(延長法人は
平成 29 年3月 31 日まで)
消費税
相続税
酒税・
間接諸税
平成 28 年1月1日以
降に開始する課税期
間に係る申告書から
平成 28 年1月1日以
降の相続又は遺贈
に係る申告書から
平成 28 年1月1日以
降に開始する課税期
間(1月分)に係る申
告書から
<個人>
平成 28 年分の場合⇒
平成 29 年1月1日から3月 31 日まで
<法人>
平成 28 年 12 月末決算の場合⇒
平成 29 年2月 28 日まで
平成 28 年1月1日に相続があったこ
とを知った場合⇒
平成 28 年 11 月1日まで
出典:国税庁資料
28 年中に提出される主な場合
○年の中途で出国⇒出国の時
まで
○年の中途で死亡⇒相続開始
があったことを知った日の翌日
から4月を経過した日の前日ま
で
○年の中途で死亡⇒相続の開
始があったことを知った日の翌
日から 10 月以内
○中間申告書⇒事業年度開始
の日以後6月を経過した日から
2月以内
○新設法人・決算期変更法人
⇒決算の日から2月以内
○個人事業者が年の途中で死
亡⇒相続開始があったことを知
った日の翌日から4月を経過し
た日の前日まで
○中間申告書
○課税期間の特例適用
○住所及び居所を有しないこと
となるとき⇒住所及び居所を有
しないこととなる日まで
平成 28 年1月分の場合⇒
平成 28 年2月1日から2月 29 日まで
○平成 28 年中から提出
法定調書
平成 28 年1月1日以
降の金銭等の支払
等に係る法定調書か
ら(注)
(例)平成 28 年分給与所得の源泉徴
収票、平成 28 年分特定口座年間取
引報告書⇒平成 29 年1月 31 日まで
(注)平成 28 年1月1日前に締結され
た「税法上告知したものとみなされる
取引」に基づき、同日以後に金銭等
の支払等が行われるものに係る「番
号」の告知及び本人確認について
は、同日から3年を経過した日以後
の最初の金銭等の支払等の時まで
の間に行うことができる。
(例)
○配当、剰余金の分配、金銭
の分配及び基金利息の支払調
書は、支払の確定した日から1
月以内
○金地金等の譲渡の対価の支
払調書は、支払の確定した日
の翌月末日
申請書・
届出書
平成 28 年1月1日以
降に提出する個人番
号の記載が必要とな
る申請書等から
各税法に規定する、提出すべき期限
○平成 28 年中から提出
【参考】平成 28 年度税制改正によるマイナンバー(個人番号)記載対象書類の見直
しについて(改正内容のお知らせ)(国税庁 HP)
http://www.nta.go.jp/mynumberinfo/jizenjyoho/kaisei/280401.htm
-3-
2.個人番号
○ 個人番号は、市区町村長から、住民票を有する全ての者に対して付番される 12
桁の番号です。
○ 番号法では、個人番号が悪用され、又は漏えいし、個人情報の不正な追跡・突
合が行われ、個人の権利利益の侵害を招くことのないよう、個人番号の利用制
限、特定個人情報ファイル作成の制限、委託の取扱い等の特定個人情報の安全
管理措置等が厳格に定められており、個人情報保護委員会では、特定個人情報の
適正な取扱いを確保するために必要な指導・助言・勧告等の措置を講じます。
※
「特定個人情報ファイル」とは、個人番号をその内容に含む個人情報ファ
イルをいいます(番号法第2条第9項)。
※ 「個人情報ファイル」とは、個人情報保護法第2条第2項に規定する「個
人情報データベース等」をいいます。具体的には、特定の個人情報をコンピ
ュータを用いて検索することができるように体系的に構成した、個人情報を
含む情報の集合物をいいます。また、コンピュータを用いていない場合であ
っても、紙面で処理した個人情報を一定の規則(例えば、五十音順等)に従
って整理・分類し、特定の個人情報を容易に検索することができるよう、目
次、索引、符号等を付し、他人によっても容易に検索可能な状態に置いてい
るものも該当します。
3.法人番号
○ 法人番号は、国税庁長官から法人等に付番される 13 桁の番号で、書面により通
知されます。
○ 法人番号は、個人番号と異なり、原則として公表されるため、保護措置の対象
ではありません。
○ 法人番号の指定を受けた団体の商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地
及び法人番号の「基本3情報」は、国税庁の法人番号公表サイトに掲載され、
インタ-ネットを利用して検索・閲覧・データの取得(ダウンロード)が可能
となっています。
-4-
4.特定個人情報
○ 特定個人情報とは、個人番号をその内容に含む個人情報です。
個人番号が記載された書類・電子ファイル等がこれに該当します。
※ 生存する個人の個人番号単体は特定個人情報に該当しますが、死者の個人番
号単体は特定個人情報に該当しません。
※ 個人番号(死者のものを含む。)及び特定個人情報をまとめて「特定個人情
報等」といいます。
○ 個人番号を利用できる事務の範囲としては、個人番号利用事務(番号法第9条
第1項及び第2項)及び個人番号関係事務(番号法第9条第3項)があります。
事業者が個人番号を利用して行う事務は、主に『個人番号関係事務』です。
個人番号利用事務:行政機関、地方公共団体、独立行政法人又は地方独立行政法
人等(以下「行政機関等」という。)が、社会保障、税及び災害対策に関する特定
の事務において、保有している個人情報の検索、管理のために個人番号を利用す
る事務です。この事務を行う者を 『個人番号利用事務実施者』といいます。
事業者が個人番号利用事務を行うのは、①行政機関等の行政事務を処理する者か
ら個人番号利用事務の委託を受けた場合、②健康保険組合、全国健康保険協会等
(以下「健康保険組合等」という。)が法令に基づき個人番号利用事務を行う場合
です。
個人番号関係事務:事業者が、法令に基づき、従業員等の個人番号を給与所得の
源泉徴収票、支払調書、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届等の書類に
記載して、行政機関等及び健康保険組合等に提出する事務です。この事務を行う
者を『個人番号関係事務実施者』といいます。
※
委託を受けて個人番号利用事務又は個人番号関係事務を行う者も、それぞれ
個人番号利用事務実施者、個人番号関係事務実施者に該当します。
-5-
※
個人番号利用事務実施者又は個人番号関係事務実施者である事業者は、個人
番号及び特定個人情報の漏えい、滅失又は毀損の防止等、特定個人情報の管
理のために、必要かつ適切な安全管理措置を講じなければなりません。
○ 税理士及び税理士法人(以下「税理士等」という。)は、自らの事務所にて以下
に掲げる事務を行う場合に主として「個人番号関係事務実施者」に該当します。
①
税理士等が自らの事務所の従業員等の給与所得に係る源泉徴収票等の作成、
健康保険・厚生年金事務及び労働保険事務を行うために、従業員等(従業員等
の配偶者及び扶養親族を含む。)の個人番号を取得し、源泉徴収票等に当該個人
番号を記載し行政機関等及び健康保険組合等に提出する場合には「個人番号関
係事務実施者」に該当します。
②
税理士等が業務委嘱契約等に基づき顧問先の給与所得に係る源泉徴収票等の
作成事務を行うために、当該顧問先の従業員等(従業員等の配偶者及び扶養親
族を含む。)の個人番号を取得し、源泉徴収票等に当該個人番号を記載し行政機
関等に提出する場合も「個人番号関係事務実施者」に該当します。
③
税理士等が業務委嘱契約等に基づき顧問先である納税者の所得税の確定申告
書を作成するために、納税者の扶養親族等に係る個人番号を取得し、当該申告
書に扶養親族等の個人番号を記載し行政機関等に提出する場合には「個人番号
関係事務実施者」に該当します。
※
なお、納税者が自身の個人番号を取り扱う事務は「個人番号関係事務」に該当
しないことから、税理士が顧問先である個人の納税者の個人番号を取り扱う事
務を行う場合は、「個人番号関係事務実施者」に該当しません。
したがって、例えば、扶養親族等を有する納税者の所得税の確定申告書を作
成する場合において、納税者自身の個人番号と扶養親族等の個人番号を取り扱
うときは、以下のとおり個人番号関係事務に該当しない部分と該当する部分と
が混在することとなります。
納税者自身の個人番号の取扱い(注)
納税者の扶養親族等の個人番号の取扱い
⇒個人番号関係事務に該当しない
⇒個人番号関係事務に該当する
(注)本来、納税者自身が行うべき特定個人情報を取り扱う事務を委託されて税理士が当該納税
者の個人番号を取り扱うことは、代理人又は委託を受けた者として認められています。
-6-
○ 税理士等が業務委嘱契約等に基づき顧問先の個人の確定申告書等を作成するた
めに当該個人の個人番号を取得し、当該申告書等に当該個人番号を記載して行
政機関等に提出する場合には、本人の代理人又は税務書類の作成の委託を受け
た者として個人番号を取り扱うこととなるため、個人番号関係事務に該当しま
せん。
しかしながら、税理士等は、税理士法第 37 条(信用失墜行為の禁止)及び第
38 条(秘密を守る義務)の規定を遵守しなければならず、また、個人番号関係
事務に該当しない事務を行う場合であっても、顧問先の特定個人情報を取り扱
うことに変わりはないため、必要かつ適切な安全管理措置を講ずるとともに、
本ガイドブックに則り対応してください。
○ また、税理士等が税理士業務に付随して顧問先の社会保険関係事務等を行う場
合(注)においても、税務における個人番号の取扱いと基本的に同様ですので、
本ガイドブックにおいては、その具体的な説明は省略します。
(注)税理士等が税理士業務に付随して社会保険関係事務等(いわゆる社会保険労務士業務)
を行う場合の業務範囲については、平成 14 年6月6日に日本税理士会連合会と全国社会
保険労務士会連合会の間で「税理士又は税理士法人が行う付随業務の範囲に関する確認
書」により、次のとおり確認されています。
1
税理士又は税理士法人が社会保険労務士法第2条第1項第1号から第2号までに掲げる
事務を行うことができるのは、税理士法第2条第1項に規定する業務に付随して行う場合
であること。
2
(1)上記1にいう税理士又は税理士法人が付随業務として行うことができる社会保険
労務士法第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務は、
「租税債務の確定に必
要な事務」の範囲内のものであること。
(2)社会保険労務士法第2条第1項第1号の2の業務(提出代行)及び同項第1号の
3の業務(事務代理)は、付随業務ではないこと。
5.特定個人情報の保護措置
○ 個人番号は、社会保障・税・災害対策の分野において、個人情報を複数の機関
の間で紐付けるものであり、個人番号が悪用され、又は漏えいした場合、個人
情報の不正な追跡・突合が行われ、個人の権利利益の侵害を招きかねません。
○ そこで、番号法では、特定個人情報を取り扱う全ての事業者に対して、個人情
報保護法よりも厳格な保護措置を義務付けています。
○ この保護措置は、①特定個人情報の利用制限、②特定個人情報の安全管理措置
等、③特定個人情報の提供制限等の3つに大別されます。
-7-
①
特定個人情報の利用制限
番号法においては、個人番号を利用することができる事務の範囲を社会保
障・税・災害対策に関する特定の事務に限定しており、本人の同意があったと
しても本来の利用目的を超えて特定個人情報を利用することはできません。こ
の点は、個人情報保護法における個人情報を利用する場合よりも限定的に定め
られています。また、必要な範囲を超えた特定個人情報ファイルの作成は禁止
されています。
②
特定個人情報の安全管理措置等
番号法においては、全ての事業者に対して、個人番号(生存する個人のもの
だけでなく死者のものも含む。)について、必要かつ適切な安全管理措置を講じ
なければならないこととされています。
また、従業員等に個人番号及び特定個人情報(以下「特定個人情報等」とい
う。)を取り扱わせる場合は、特定個人情報等の安全管理措置が適切に講じられ
るよう、必要かつ適切な監督を行わなければなりません。安全管理措置は以下
のとおりです(P.15(Ⅰ-3)参照)。
※ 安全管理措置には、組織として特定個人情報等の保護に取り組むための「基
本方針」の策定や、特定個人情報等の具体的な取扱いを定める「取扱規程
等」の策定も含まれます(P.14(Ⅰ-2)参照)。
◇
◇
◇
◇
組織的安全管理措置…事務取扱担当者及び責任者の明確化等
物理的安全管理措置…特定個人情報等を取り扱う区域の管理等
技術的安全管理措置…情報システムの管理等
人的安全管理措置…事務取扱担当者の監督・教育
このほか、個人番号関係事務又は個人番号利用事務を委託する場合には、委
託者による委託先に対する必要かつ適切な監督義務が課されており、特定個人
情報等の取扱いに関する契約内容の見直しが必要となります(P.29(Ⅰ-4)
参照)。
また、再委託する場合には、委託者による再委託の許諾を要件とするととも
に、委託者の再委託先に対する間接的な監督義務を課しています。
③
特定個人情報の提供制限等
番号法においては、特定個人情報の提供について、個人番号の利用制限と同
様に、個人情報保護法における個人情報の提供の場合よりも限定的に定めてい
ます。また、何人も、特定個人情報の提供を受けることが認められている場合
を除き、他人(自己と同一の世帯に属する者以外の者)に対し、個人番号の提
-8-
供を求めてはいけません。
さらに、特定個人情報の収集又は保管についても同様の制限を定めています。
なお、個人番号利用事務実施者及び個人番号関係事務実施者は、本人又はそ
の代理人から個人番号の提供を受けるときは、当該本人又は当該代理人に対し
て「本人確認」を行うよう義務付けられています。
※ 「本人確認」とは、提供を受けた個人番号が本人に係るものであることを
確認(番号確認)するとともに、本人又は代理人であることを確認(身元確
認)することです。代理人による提供の場合は、加えて代理権の確認も必要
となります(P.44(Ⅱ-4(3)
)参照)。
○ 5,000 人を超える個人情報を取り扱っている税理士等については、個人情報保護
法の適用を受け、個人情報取扱事業者に該当することから、既に財務省より公
表されている「財務省所管分野における個人情報保護に関するガイドライン」
に準拠した対応も必要となります(注)。
○ なお、個人情報取扱事業者でない個人番号関係事務実施者においても、番号法
に特段の規定が置かれていない事項については、個人情報保護法における個人
情報の保護措置に関する規定及び「財務省所管分野における個人情報保護に関
するガイドライン」等に従い、特定個人情報を適切に取り扱うことが望まれま
す。
(注)個人情報保護法の一部を改正する法律が平成 27 年9月3日に成立し、同9日
に公布されました。この改正法の施行により、取り扱う個人情報が 5,000 件以下
の事業者に対しても個人情報保護法が適用されます。施行は、公布日から2年以
内の政令で定める日となっています。
【参考】財務省「個人情報保護」
http://www.mof.go.jp/procedure/disclosure_etc/privacy/
個人情報保護委員会「個人情報保護法について」
http://www.ppc.go.jp/personal/general/
-9-
<事務所体制の整備>
ポイント
☞ 税理士の業務において、個人番号を取り扱うことは不可欠です。
☞ 個人番号を取り扱う上で、個人番号の漏えい、滅失又は毀損の防止その他
個人番号の適切な安全管理のために必要な措置を講じなければなりませ
ん。
☞ 顧問先についても必要かつ適切な安全管理措置を講ずる必要があります。
ただし、顧問先については、中小規模事業者の特例の適用がある場合があ
ります。
※
以下に具体的な対応フローの方法を示していますが、あくまでもこれらの例示に
限定する趣旨ではなく、事務所の規模等により、適切な手法を採用するようにして
ください。
事務所体制整備のフロー
Ⅰ-1事務作業内容等の確認
個人番号を
取り扱う事務
の確認
特定個人情報等
の範囲の確認
事務取扱担当者
の確認
Ⅰ-2基本方針・取扱規程等の策定
基本方針の
策定
取扱規程等の
策定
Ⅰ-4業務契約書
Ⅰ-3安全管理措置
の作成・見直し
組織的
安全管理
措置
物理的
安全管理
措置
技術的
安全管理
措置
人的
安全管理
措置
Ⅰ-5特定個人情報の漏えい事案等が発生した場合の対応
-10-
業務契約書の
作成・見直し
Ⅰ-1
事務作業内容等の確認
ポイント
☞ 税理士事務所(税理士法人を含む。以下同じ。)において個人番号を適正
に取り扱うためには、個人番号を取り扱う事務を確認するとともに、取り
扱う特定個人情報等の範囲を確認する必要があります。
☞ 個人番号を取り扱う事務の担当者を確認しましょう。
1.税理士事務所において個人番号を取り扱う事務を確認します。
○ 税理士事務所において個人番号を取り扱う事務には、次のような場合がありま
す。
①
税理士事務所の従業員等の給与所得に係る源泉徴収票等の作成や、健康保
険・厚生年金事務及び労働保険事務を行う際に、従業員等(従業員等の配偶者
及び扶養親族を含む。)の個人番号を取得し、源泉徴収票等に当該個人番号を記
載し行政機関等に提出する場合
②
税理士等と顧問先との業務委嘱契約等に基づき顧問先の給与所得に係る源泉
徴収票等の作成事務を行う際に、顧問先の従業員等(従業員等の配偶者及び扶
養親族を含む。)の個人番号を取得し、源泉徴収票等に当該個人番号を記載し行
政機関等に提出する場合
③
税理士等と顧問先との業務委嘱契約等に基づき顧問先の税務代理(税理士法
第2条第1項第1号)又は税務書類の作成(税理士法第2条第1項第2号)に
係る事務を行う際に、顧問先に係る個人番号を取得し、申告書等に当該個人番
号を記載し行政機関等に提出する場合
○ 個人番号を取り扱う事務は明確化し、事務所ごとに策定する「特定個人情報等
取扱規程」等に規定する必要があります(P.14(Ⅰ-2)参照)。
【番号を記載する税務関係書類】
・ 所得税・法人税・消費税・相続税・贈与税等の申告書等
・ 法定調書
・ 申請書・届出書 等
-11-
2.個人番号を取り扱う事務において取り扱う特定個人情報等の範囲を確認します。
○ 特定個人情報等の範囲とは、事務において使用される個人番号及び個人番号と
関連付けて管理される個人情報(氏名、生年月日、住所等)のことです。
○ 個人番号を取り扱う事務において作成する書類等に記載する情報の全てが特定
個人情報等に該当することを理解しておく必要があります。
(例)税理士事務所で取り扱う特定個人情報等
・個人番号を含む申告書情報
・個人番号を含む法定調書情報 等
手続書類の例
特定個人情報等の項目例
氏名、個人番号、納税地、生年月日、
所得税申告書
性別、課税標準、税額、各二表情報の
項目 等
源泉徴収票(税務署提出用)
氏名、個人番号、住所又は居所、支払
金額、給与所得控除後の給与等の金
額、所得控除の額の合計額、源泉徴収
税額、控除対象配偶者・控除対象扶養
親族・障害者等に関する情報 等
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
氏名、個人番号、住所又は居所、生年
月日、世帯主の氏名・続柄、控除対象
配偶者・控除対象扶養親族・障害者等
に関する情報 等
支払調書関係(受取人又は支払者が個人の 氏名、個人番号、支払金額等、源泉徴
場合)
収税額 等
(注) 「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」は、
平成 28 年4月1日以降提出するものから、個人番号の記載を要しないことと
されています。
3.個人番号を取り扱う事務の担当者を確認します。
○ 税理士事務所において個人番号を取り扱う事務を行う担当者は、以下のように
想定されます。
・ 従業員等の給与事務担当者及び社会保険・労働保険事務担当者を定めている場
合、当該担当者が従業員等の個人番号を取り扱う担当者となります。
-12-
・ 事務所内に経理課・総務課等の部署がある場合、その所属課員が給与事務、社
会保険・労働保険事務等において、従業員等の個人番号を取り扱う担当者とな
ります。
・ 税理士事務所の従業員等は、顧問先から依頼された源泉徴収事務等及び税務代
理又は税務書類の作成事務等を行う場合に、ほぼ全ての従業員等が、顧問先に
係る個人番号を取り扱うことが想定されます。
○ これらの担当者は、事務取扱担当者として明確化し、
「特定個人情報等取扱規程」
等に規定する必要があります(P.14(Ⅰ-2)参照)。
-13-
Ⅰ-2
基本方針・取扱規程等の策定
ポイント
☞ 特定個人情報等の取扱いに係る基本方針を策定することが重要です。
☞ 特定個人情報等の具体的な取扱いを定める取扱規程等を策定する必要があ
ります。
○ 特定個人情報等の適正な取扱いの確保について、組織として取り組むために、
基本方針を策定することが望ましいでしょう。
(例)基本方針に定める項目
・ 税理士事務所名
・ 関係法令・ガイドライン等の遵守
・ 安全管理措置に関する事項
・ 質問及び苦情処理の窓口 等
○ また、個人番号を取り扱う事務、特定個人情報等の範囲、事務取扱担当者等を
明確にし、事務の流れを整理して、特定個人情報等の具体的な取扱いを定める
ため、取扱規程等を策定しなければなりません。
○ 取扱規程等には、管理段階ごとに取扱方法、責任者・事務取扱担当者及びその
任務について定めることが考えられ、また、具体的な事項としては、安全管理
措置を織り込むことが重要です。
(例)取扱規程等に定める項目
個人番号の①取得、②利用、③保存、④提供、⑤削除・廃棄を行う段階ごとに
・ 取扱方法
・ 責任者・事務取扱担当者
・ 任務等
・ 安全管理措置 等
○ 既存の基本方針又は取扱規程等がある場合は、特定個人情報等の取扱い等につ
いて追加する必要があり、その規程等の内容を見直す必要があります。
【参考】
特定個人情報等の適正な取扱いに関する基本方針(ひな型)(様式集 P.2)
〇〇税理士事務所(税理士法人)特定個人情報等取扱規程(ひな型)(様式集 P.4)
【大規模事務所用】
〃
(ひな型)(様式集 P.12)
【共通】特定個人情報等取扱規程に関する事務所管理体制チェックリスト(サンプル)
(様式集 P.21)
【共通】特定個人情報等の取扱いに関する事務チェックリスト(サンプル)(様式集 P.23)
-14-
Ⅰ-3
税理士事務所における安全管理措置
ポイント
☞ 税理士事務所において特定個人情報等を適正に取り扱う体制を整えるため
に、各種安全管理措置を講ずる必要があります。
☞ 安全管理措置の趣旨を理解し、事務所の実態に即した方策を検討します。
(1)組織的安全管理措置…事務取扱者及び責任者の明確化等
(2)物理的安全管理措置…特定個人情報等を取り扱う区域の管理等
(3)技術的安全管理措置…情報システムの管理等
(4)人的安全管理措置…事務取扱担当者の監督・教育
(1)組織的安全管理措置
ポイント
☞ 税理士事務所において個人番号を取り扱う事務の責任者及び分担を明確に
し、個人番号を適正に取り扱うための組織としての体制を整備します。
☞ 特定個人情報等を適正に取り扱うため、特定個人情報等の取扱状況、取扱
規程等の運用状況を確認する手段を整備する必要があります。
1.個人番号を取り扱う事務の責任者を定め、その役割を確認します。
○ 所長、副所長等の中から責任者を定めて、その責任を明確化します。
○ 一般的な税理士事務所においては、所長を責任者にすることが想定されます。
○ なお、責任者の選定は、事務所の規模等に応じて適任者を選定します。
2.事務取扱担当者を明確化し、その役割を確認します。
○ 税理士事務所における個人番号の事務取扱担当者は、以下のように分類するこ
とが想定されます。
① 事務所従業員等の個人番号に係る事務取扱担当者
② 顧問先等の個人番号に係る事務取扱担当者
○ 事務取扱担当者は、担当する事務に限り特定個人情報等を取り扱うことができ
ます。
○ 特定個人情報等を複数の部署で取り扱う場合には、各部署の任務の分担及び責
-15-
任の明確化を図る必要があります。
3.取扱規程等の運用状況を確認する手段を整備します。
○ 取扱規程等に基づき、個人番号を取り扱う事務が適正に行われているかを確認
する必要があります。
○ 個人番号を取り扱う事務が適正に行われているかを確認する手段としては、チ
ェックリストの活用等が考えられます(様式集 P.21(特定個人情報等取扱規程
に関する事務所管理体制チェックリスト)、様式集 P.23(特定個人情報等の取扱
いに関する事務チェックリスト)参照)。
○ 取扱規程等に基づく運用状況を記録・確認するための手段としては、執務記録
を付けることが考えられます。
○ 執務記録に替えて、業務処理簿、業務日誌等へ記録することも想定されます。
○ なお、執務記録等には、特定個人情報等を記録しないものとし、執務記録の様
式は、特定個人情報等を記載しない様式とします。
(例①)執務記録の記載項目(簡易版)
・ 作業日
・ 作業内容等(出力状況・持ち出し状況を含む)
・ 担当者・責任者
<特定個人情報関係執務記録>(簡易版;記載例)
日付
00/00/00
会社名
(株)A 社
ファイル・書類
特定個人情報ファイル
担当
○○
所長(確認日)
○○
印 (00/00)
○
特定個人情報ファイル
作業内容/利用目的
USB 持出し
○年分年調打合せ、
A 社に持参
USB 戻し
00/00○年分年調打
合せ(於、A 社)
データ更新
00/00/00
(株)A 社
特定個人情報ファイル
00/00/00
(株)A 社
○○
印 (00/00)
○
00/00/00
当事務所
○年分年調関係書類
職員○名から受理
△△
00/00/00
当事務所
○年分源泉徴収票
△△
印 (00/00)
○
印 (00/00)
○
00/00/00
(株)B 社
□年分源泉徴収票
源泉徴収票作成・配
布
廃棄
◇◇
印 (00/00)
○
00/00/00
〃
特定個人情報ファイル
退職者データ削除
(○名)
◇◇
印 (00/00)
○
-16-
印 (00/00)
○
備考
データにパスワ
ード保護
USB 内の特定
個人情報ファイ
ル削除
○名追加、退
職○名削除
本人確認済
封緘して手交
○○運輸廃棄
サービス(溶解
処理)
00 年 00 月 00
日時点
(例②)執務記録の記載項目(詳細版)
・ 作業日
・ 特定個人情報ファイルの種類、書類名等
・ 作業内容
・ 取扱担当部署
・ 担当者・責任者
・ 利用目的
・ 削除・廃棄状況
・ アクセス権を有する者 等
※ 例えば、Microsoft Excel を利用して管理する場合、顧問先ごと・特定個人情報ファ
イルごとにシート分けする方法などが考えられます。
※ 会計ソフト・情報システムにより管理する方法も考えられます。
<特定個人情報関係執務記録>(詳細版;記載例)
会社名:C 株式会社 特定個人情報ファイル名:AAAAAAA 作成日:0000/00/00
削除・廃棄日:
担当部署:○○課
担当者:○○ ○○/○○ ○○
日付
00/00/00
ファイル・書類
データ
00/00/00
○年分源泉徴収
票・年調書類
00/00/00
○年分源泉徴収
票・年調書類
株式会社 A
株式会社 B
/
/
責任者:○○ ○○/○○ ○○
作業内容
アルバイト追加
(○名)
書類作成・保存
利用目的
データ更新
担当
○○
課長(確認日)
所長(確認日)
印 (00/00)
○
印 (00/00)
○
○年分年末
調整
△△
印 (00/00) ○
印 (00/00)
○
C 社へ郵送
納品
○○
印 (00/00) ○
印 (00/00)
○
C 株式会社
・・・
備考
本人確認済
番号部分目
隠しシール貼
付
封緘して簡易
書留
NPO 法人 Z
○ 執務記録等は、定期的に確認します。
執務記録等を付ける場合は、責任者・所長等の確認欄を設け、運用状況の適正
性を確認します。
※
過去の執務記録等は、ファイルに綴じる等して保存しておきます。
○ 会計ソフト・情報システムを導入している場合は、システムログ又は利用事績
を記録し、定期的に確認します。
○ システムログ・利用事績は、定期的に出力し、ファイルに保存しておきます。
(例)システム上の記録項目の例示
・ システムの利用状況(利用者、ログイン実績、アクセスログ等)の記録
・
・
特定個人情報ファイルの利用・出力状況の記録
特定個人情報ファイルの削除・廃棄状況の記録 等
-17-
○ 特定個人情報等を外部の廃棄システム・サービス等を利用して廃棄した場合は、
これを証明する廃棄証明書又は記録等を保存しておきます。
4.個人番号の取扱状況を確認する手段を整備します。
○ 個人番号の取扱状況を確認する手段として、特定個人情報ファイル等の取扱状
況を確認するための管理簿を整備する必要があります。
○ なお、管理簿には、特定個人情報等は記録しないものとし、管理簿の様式は、
特定個人情報等を記載しない様式とします。
(例)管理簿の記載項目
・ 特定個人情報ファイルの種類、名称
・ 責任者、取扱部署
・ 利用目的
・ 削除・廃棄状況
・ アクセス権を有する者 等
<特定個人情報ファイル管理簿>(記載例)
種類
ファイル
書類
会社名
A社
A社
名称等
名称/利用目的
給与管理システム
源泉徴収票(写)
年分
H28
H28
責任者
○○○
○○○
担当者
○○○
○○○
作成年月日
廃棄年月日
H29.00.00
H29.00.00
5.情報漏えい等事案が発生した場合又は兆候を把握した場合の対応を確認します。
○ 情報漏えい等事案が発生した場合等に備え、次のような対応方法を定めておく
必要があります。
(例)情報漏えい等事案が発生した場合等の対応
・ 責任者への報告
・ 委託元への報告
・ 事実関係の調査及び原因の究明
・ 影響を受ける可能性のある本人への連絡
・ 個人情報保護委員会及び主務大臣等への報告
・ 再発防止策の検討及び決定
・ 事実関係及び再発防止策等の公表 等
○ 税理士職業賠償責任保険(情報漏えい特約)、個人情報漏えい保険等への加入に
ついても検討が必要です。
-18-
6.特定個人情報ファイル等の取扱状況及び取扱規程等の運用状況を定期的に確認し
ます。
○ 特定個人情報ファイル等の管理簿及び執務記録等を保存し、定期的に確認しま
す。
○ 安全管理措置等を見直し、必要がある場合には改善するように努めます。
【参考】
特定個人情報等の適正な取扱いに関する基本方針(ひな型)(様式集 P.2)
〇〇税理士事務所(税理士法人)特定個人情報等取扱規程(ひな型)(様式集 P.4)
【大規模事務所用】
〃
(ひな型)(様式集 P.12)
【共通】特定個人情報等取扱規程に関する事務所管理体制チェックリスト(サンプル)
(様式集 P.21)
【共通】特定個人情報等の取扱いに関する事務チェックリスト(サンプル)(様式集 P.23)
-19-
(2)物理的安全管理措置
ポイント
☞ 特定個人情報等の情報漏えい等を防止するための措置として、特定個人情
報等を取り扱う事務の実施区域(取扱区域)及び情報システムを管理する
区域(管理区域)を区分し、明確にすることが必要となります。
☞ また、盗難防止、特定個人情報等の持出し時の漏えい等の防止策を講ずる
必要があります。
1.取扱区域・管理区域を確認し、適したレイアウト等を検討します。
○ 事務取扱担当者が限定されている場合には、原則として、取扱区域及び管理区
域を他の領域と区分します。
○ 取扱区域は、事務取扱担当者の事務作業を行う領域となります。
具体的には、主に事務取扱担当者の机周辺などの事務スペースが想定されます。
この場合、取扱区域は、事務取扱担当者以外からできる限り隔離する等の工夫
が必要です。
(例)隔離の方法
(※全ての方法を採用するのではなく、例示を参考に実施可能な方法を採用してください。
)
・
・
座席配置を工夫し、事務取扱担当者以外の往来が少なくなるよう配置する
机やパソコンの画面を事務取扱担当者以外に後ろから覗き見される可能性
が低くなるよう配置する
・ 間仕切りを設ける 等
○ 管理区域は、特定個人情報等を取り扱う情報システムを管理する区域となりま
す。
具体的には、情報システムを管理しているサーバー室が想定されます。
管理区域がある場合には、区域への入退室等を管理したり、機器等の持ち込
み制限をしたりすることが考えられます。なお、税理士事務所の場合は、パソ
コン等の機器等で大量の特定個人情報等を取り扱うことが想定されることから、
機器等を管理する机やキャビネットのある区域も管理区域とすることが望まし
いと考えられます。この場合、機器等をセキュリティワイヤー等にて固定した
り、施錠できるキャビネットで保管したりすることが考えられます。
(例)入退室等管理の方法
(※全ての方法を採用するのではなく、例示を参考に実施可能な方法を採用してください。
)
・
・
IC カード、ナンバーキー等による入退室管理
管理区域へ持ち込む、又は管理区域から持ち出す機器の制限
・
管理区域の鍵の管理
等
-20-
○ 税理士事務所の従業員等の特定個人情報等に関しては、当該事務取扱担当者の
事務スペースが取扱区域となります。また、事務所内にサーバー室がある場合
において、そのサーバーで特定個人情報等を管理している場合には、その区域
は管理区域となります。なお、機器等を管理する机やキャビネットのある区域
も管理区域とすることが考えられます。
この場合の区分けについては、事務取扱担当者以外の従業員等との隔離の工
夫等を検討しましょう。
○ 顧問先の特定個人情報等に関して、一般的な税理士事務所においては、全ての
職員が事務取扱担当者となることが想定されるため、事務所における事務作業
領域の全てが取扱区域に該当することとなります。また、事務所内にサーバー
室がある場合において、そのサーバーで特定個人情報等を管理している場合に
は、その区域は管理区域となります。なお、上記のとおり、税理士事務所の場
合、機器等を管理する机やキャビネットのある区域も管理区域とすることが考
えられることから、その場合には、事務所における事務作業領域の全てが取扱
区域及び管理区域に該当することになるでしょう。
その場合、外部からの来訪者等に情報漏えいしないよう、来客用の応接スペ
ースと事務スペースの区分が明確になるように工夫する必要があります。
○ 事務所の事務作業領域に管理区域が含まれる場合、事務所の鍵の管理・施錠の
確認を確実に行う必要があります。
2.機器・書類等を適正に管理・保管しましょう。
○ 特定個人情報等を取り扱う機器、磁気媒体等(電子媒体を含む。以下同じ。
)又
は書類等は、適正に管理・保管し、盗難防止策を講ずる必要があります。
○ 特定個人情報等を含む磁気媒体等又は書類等は、施錠できるキャビネット、書
庫、机等に保管します。
○ 特定個人情報等を取り扱う機器等は、セキュリティワイヤー等により固定する
か、施錠できるキャビネット等に保管することが考えられます。
○ 特定個人情報等を含む磁気媒体等又は書類等を取扱区域又は管理区域の外へ持
ち出す場合には、紛失・盗難等に留意します。
○ また、顧問先から特定個人情報等を事務所へ持ち帰る場合にも、同様に紛失・
盗難等に留意する必要があります。
-21-
(例)磁気媒体等又は書類等の持出しの安全方策
(※全ての方策を採用するのではなく、例示を参考に実施可能な方策を採用してください。
)
磁気媒体等の場合
・ パスワードによる保護
・ 持ち出しデータの暗号化
・ 施錠できる搬送容器の使用 等
書類等の場合
・ 封入、封緘
・ 目隠しシールの貼付
等
○ 特定個人情報等が記録された書類等を郵送する場合は、簡易書留等、荷物の追
跡サービスが付加されている方法をとるとよいでしょう。
○ 特定個人情報等の持出し・発送記録は、執務記録等に記録します。
3.保存期間を過ぎた特定個人情報等は適切に廃棄しなければなりません。
○ 個人番号は、番号法で限定的に明記された事務を処理するために収集又は保管
されるものであることから、それらの事務を行う必要がある場合に限り特定個
人情報等を保管し続けることができます。
○ また、個人番号が記載された書類等のうち、所管法令により一定期間の保存が
義務付けられているものは、その期間、保管することとなります。
○ 一方、それらの事務を処理する必要がなくなった場合で保存期間を経過したと
きには、個人番号をできるだけ速やかに復元できない手段で廃棄又は削除しな
ければなりません。
○ 廃棄・削除の手法は、個人番号部分を復元できない手段を採用します。
(例)廃棄・削除の手法
(※全ての手法を採用するのではなく、例示を参考に実施可能な手法を採用してください。
)
書類の場合
・ 民間の廃棄システム・サービス等を利用した焼却・溶解と廃棄証明等の記録
・ 復元できない程度にマスキング
・ 復元できない程度に細断できるシュレッダーを利用 等
-22-
機器・電子媒体等の場合
・ 専用データ消去ソフトウェアの利用
・ 物理的な破壊
・ 特定個人情報ファイル中の該当データを削除(ゴミ箱からも完全削除)
○ 保存期間を経過した書類等は廃棄することを念頭に、書類等の保存・整理を行
います。
※
個人番号部分を復元できない程度にマスキング又は削除した上で保管を継続
することは可能です。
-23-
(3)技術的安全管理措置
ポイント
☞ 情報システムを利用して個人番号を取り扱う場合は、適切なアクセス制御
を行うようにします。
☞ また、情報システムを取り扱う事務取扱担当者を限定することが望ましい
と考えられています。
1.情報システムのアクセス制御
○ 情報システムを利用して個人番号関係事務を行う場合、適切なアクセス制御が
必要となります。
(例)アクセス制御の方法
・ 個人番号と紐付けて使用する情報の範囲をアクセス制御により限定する。
・ 特定個人情報ファイルを取り扱う情報システムを、アクセス制御により限
定する。
・ ユーザーID に付与するアクセス権により、特定個人情報ファイルを取り扱
う情報システムを使用できる者を事務取扱担当者に限定する。
等
○ 事務取扱担当者の識別方法としては、システムにおけるユーザーID 等(ユーザ
ーID・パスワード、磁気・IC カード、生体情報等)の利用が考えられます。
(例)ユーザーID の利用方法
・ ユーザーID は共用しない
・ 類推されやすいものは避ける
(例)パスワードの利用方法
・ 定期的に変更する
・ 類推されやすいものは避ける
・ アカウント作成時に付与されたパスワードは使用しない
・ 可能な限り文字列を長くする(8文字以上推奨)
2.アクセス者の識別と認証
○ 特定個人情報等を取り扱う情報システムは、事務取扱担当者が正当なアクセス
権を有する者であることを識別し、認証する必要があります。
○ 上記のアクセス制御においても説明していますが、事務取扱担当者の識別方法
としては、システム又は機器におけるユーザーID 等(ユーザーID・パスワード、
磁気・IC カード、生体情報等)の利用が考えられます。
-24-
3.情報システムを外部からの不正アクセス等から保護しましょう。
○ 情報システムを外部からの不正アクセス又は不正ソフトウェアから保護する仕
組みを導入し、適切に運用する必要があります。
○ 不正アクセス・不正ソフトウェアから保護する方法としては、以下のような方
法が考えられます。
(例)不正アクセス・不正ソフトウェアからの保護
・ 機器やソフトウェア等に標準装備されている自動更新機能等の活用
・ セキュリティ対策ソフトウェア(ウィルス対策ソフトウェア)等の導入
・ ファイアウォール等の設置
・ ログ等の定期的な分析
等
4.データの情報漏えい等を防止しましょう。
○ 特定個人情報等をインターネット等により外部に送信する場合、通信経路にお
ける情報漏えい等を防止する措置を講ずる必要があります。
方法としては、以下のような方法が考えられます。
(例)情報漏えいの防止策
・ データのパスワードによる保護
・ データの暗号化
・ 通信経路の暗号化
等
○ 情報漏えい等事案が発生した場合の対応方法については、取扱規程等に規定し、
適切に対応しましょう。
-25-
-26-
(4)人的安全管理措置
ポイント
☞ 個人番号を適正に管理するためには、事務取扱担当者の理解が重要です。
☞ 新たな制度に対応するための研修の実施と情報の共有を図る必要がありま
す。
☞ また、責任者である税理士は、従業員等を監督することも重要です。
1.事務取扱担当者に対する教育を徹底します。
(例)教育の手法
・ 定期的な研修の実施
・ 資料の提供 等
2.事務取扱担当者の監督が必要です。
○ 税理士は、税理士法で守秘義務が課されています(税理士法第 38 条)。
○ 従業員等についても、税理士と同様に守秘義務が課されています(税理士法第
54 条)。
○ 守秘義務により、税理士及び従業員等は、業務上知り得た情報を本人の許諾又
は法令に基づく義務がある場合を除き外部等に漏らすことが禁止されています
が、特定個人情報等については、本人の同意があっても番号法上の利用範囲外
での利用や提供は認められていません。
○ なお、税理士は税理士法において、使用人の監督義務も課されていますので、
従業員等が特定個人情報等に係る事務を適正に遂行するよう監督する必要があ
ります(税理士法第 41 条の2)。
○ また、番号法及び個人情報保護法において、事業者には従業者の監督義務が課
されています。
※
従業員等は、担当する事務以外の特定個人情報等を取り扱うことができな
い点に留意が必要です。
-27-
3.特定個人情報等についての秘密保持に関する事項を就業規則等に追加します。
○ 税理士事務所の従業員等による特定個人情報等の漏えいを防止する観点から、
特定個人情報等についての秘密保持に関する事項を就業規則等に盛り込む必要
があります。
○ 従業員等には、雇用契約の締結の際に誓約書等により、特定個人情報等の適正
な取扱いについて誓約させます。既に雇用契約のある者についても誓約させる
必要があります。
【参考】
就業規則(サンプル)(様式集 P.33)
誓約書(サンプル)(様式集 P.52)
-28-
Ⅰ-4
業務契約書の作成・見直し
ポイント
☞ 顧問先と業務契約書を作成する必要があります。
☞ その際、特定個人情報等の取扱いについて明記する必要があります。
☞ 既に作成している場合は、業務契約書の見直しが必要になります。
○ 顧問先と業務契約を締結して契約書を作成する際、特定個人情報等の取扱いに
係る規定を記載しておく必要があります。
(例)契約内容の見直し項目
・ 秘密保持義務
・ 事業所内からの特定個人情報の持出しの禁止
・ 特定個人情報の目的外利用の禁止
・
・
・
・
・
再委託における条件
漏えい事案等が発生した場合の委託先の責任
委託契約終了後の特定個人情報の返却又は廃棄
従業者に対する監督・教育
契約内容の遵守状況について報告を求める規定 等
○ 既に業務契約書を作成している場合は、当該契約書に特定個人情報等の取扱い
に係る規定を設けるか、別途、覚書等の書面を取り交わしておく必要がありま
す。
【参考】
業務契約書(ひな型)(様式集 P.26)
【業務契約書・附属書類】特定個人情報等の外部委託に係る合意書(ひな型)
(様式集 P.29)
【参考様式】特定個人情報等の取扱いに関する覚書 (ひな型)(様式集 P.31)
策定が必要な書類
税理士事務所
従業員等
△基本方針
○取扱規程等
○就業規則・誓約書
※
○:策定等必須のもの
税理士事務所
顧問先
△基本方針
○取扱規程
○業務契約書 又は 覚書等
○特定個人情報の外部委託に係る
合意書
△:策定すると望ましいもの
-29-
Ⅰ-5
特定個人情報の漏えい事案等が発生した場合の対応
ポイント
☞ 情報漏えい事案等が発生した場合の対応方法を整備する必要があります。
☞ 特定個人情報の漏えい等のおそれを把握した場合には、個人情報保護委員
会等へ報告するよう努めることとされています。
☞ 重大な事態が生じたときは、個人情報保護委員会へ報告することが法令上
義務付けられています。
○ 特定個人情報の漏えい事案等が発生した場合には、「特定個人情報の漏えい
その他の特定個人情報の安全の確保に係る重大な事態の報告に関する規則」
(平成 27 年特定個人情報保護委員会規則第5号)、「事業者における特定個
人情報の漏えい事案等が発生した場合の対応について」(平成 27 年特定個人
情報保護委員会告示第2号)に基づき、対応してください。概要を示すと以
下のとおりとなります。
○ 特定個人情報の漏えいその他の番号法違反又はそのおそれが発覚した場合には、
以下の措置を講ずることが望まれます。
① 事業者内部における責任者への報告、被害の拡大防止
② 事実関係の調査、原因の究明
③ 影響範囲の特定
④ 再発防止策の検討・実施
⑤ 影響を受ける可能性のある本人への連絡等
⑥ 事実関係、再発防止策等の公表
○ 漏えい等をした特定個人情報が不正に用いられるおそれがあるときは、市区町
村に請求することにより個人番号の変更が可能であることを本人に説明するこ
とも重要です。
○ 特定個人情報の漏えいその他の番号法違反又はそのおそれを把握した場合には、
個人情報保護委員会又は事業の所管官庁へ報告するよう努めることとされてい
ます。
○ 重大な事態に該当する事案又はそのおそれのある事案が発覚した場合には、直
ちに個人情報保護委員会に第一報を報告するよう努めることとされています。
また、重大な事態が生じたときは、個人情報保護委員会へ報告しなければなり
ません。
-30-
≪重大な事態≫
イ.漏えい・滅失・毀損又は番号法第9条及び第 19 条の規定に反して利用・提供
された特定個人情報に係る本人の数が 100 人を超える事態
ロ.特定個人情報ファイルに記録された特定個人情報を電磁的方法により不特定
多数の者が閲覧することができる状態となり、かつ、その特定個人情報が閲
覧された事態
ハ.不正の目的をもって、特定個人情報ファイルに記録された特定個人情報を利
用し、又は提供した者がいる事態 等
-31-
Ⅱ
特定個人情報の適正な取扱い
~個人番号の事務作業フローに沿った取扱い~
税理士等が行う個人番号を取り扱う事務は、Ⅰ章においても一部記述していますが、
以下の場合に分けられます。
①
②
③
自らの事務所の従業員等の給与所得に係る源泉徴収票等の作成、健康保険・
厚生年金事務、労働保険事務を行う場合
顧問先との業務委嘱契約等に基づき顧問先の給与所得に係る源泉徴収票等の
作成事務を行う場合
顧問先との業務委嘱契約等に基づき顧問先の税務代理(税理士法第2条第1
項第1号)又は税務書類の作成(税理士法第2条第1項第2号)に係る事務
を行う場合
上記①及び②については、個人番号関係事務に該当することは明確ですが、③のう
ち、顧問先である個人の納税者が当該納税者以外の他者の個人番号を取り扱わない場
合、委嘱された税理士等は、当該納税者の個人番号のみを取り扱うこととなります。
当該納税者が本人の個人番号を取り扱う事務は、個人番号関係事務に該当しないこと
から、当該納税者の代理人である税理士等が行う事務も個人番号関係事務には該当し
ません。
このように、税理士等が行う個人番号を取り扱う事務の中には、個人番号関係事務
と個人番号関係事務に該当しない事務が混在していますが、税理士は税務の専門家と
して依頼者の個人番号を取り扱うこととなるため、全ての事務において個人番号関係
事務実施者が講じなければならない安全管理措置等を講ずることが求められます。
本章では、個人番号の取得から廃棄に至る事務作業フローに従って、特に税理士業
務に関係する特定個人情報等の適正な取扱いについて解説します。
-32-
-33-
Ⅱ-1
個人番号の取得
税理士による個人番号の提供の要求(税理士業務における個人番号の提供の要求)
ポイント
☞ 税理士は、顧問先から個人番号関係事務の委託又は税務代理・税務書類の
作成事務等の委嘱を受ける場合、その顧問先に対して、従業員等又は本人
の個人番号の提供を求めることができます。
☞ 顧問先から個人番号関係事務の委託を受ける場合、原則は、従業員等の本
人確認は個人番号関係事務実施者である顧問先で行われます。
☞ 税務代理・税務書類の作成事務等の委嘱を受ける場合において、顧問先(本
人)の個人番号を取り扱うときは、税理士は個人番号関係事務実施者とい
う立場ではないため、顧問先(本人)の本人確認を行うことは義務付けら
れていません。
(関係条文)番号法第 15 条、第 16 条、第 19 条、ガイドライン(事業者編)第4-
3-(2)
、第4-3-(4)
○ 番号法では、何人も、番号法で限定的に明記された場合を除き、個人番号の提
供を求めてはならないこととされています(番号法第 15 条)。
○ また、番号法では、個人番号利用事務実施者及び個人番号関係事務実施者が、
本人又は代理人から個人番号の提供を受けるときに本人確認の措置を義務付け
ています(番号法第 16 条)。
1.顧問先から個人番号関係事務の委託を受ける場合
○ 税理士が顧問先の個人番号関係事務の委託を受ける場合は、番号法第 19 条第5
号に規定される“委託又は合併等に伴う提供”に該当するので、その顧問先に
対して従業員等の個人番号の提供を求めることができます。
○ なお、この場合の顧問先の従業員等の本人確認手続は、原則として、個人番号
関係事務実施者である顧問先において行われることとなります。ただし、顧問
先から本人確認手続の委託を受けている場合には、委託契約に基づいて、税理
士が顧問先の従業員等の本人確認手続を行うこととなります。
2.顧問先から税務代理又は税務書類の作成の委嘱を受ける場合
○ 税理士が業務委嘱契約等に基づき、顧問先である納税者の税務代理を行う場合
においては、税理士は代理人として、その顧問先に対し個人番号の提供を求め
-34-
ることができます。
○ 税理士が税務書類の作成事務の委嘱を受ける場合は、番号法第 19 条第5号に規
定される“委託又は合併等に伴う提供”に該当するので、その顧問先に対して
従業員等の個人番号の提供を求めることができます。
○ 税理士が顧問先の税務代理又は税務書類の作成事務を行う場合において、顧問
先(本人)の個人番号を取り扱うときは、税理士は個人番号関係事務実施者と
いう立場ではないため、顧問先(本人)の本人確認を行うことは義務付られて
いません。
○ なお、税理士が、代理人として、その顧問先の個人番号を記載した申告書等を
提出する場合には、税務署等から代理人に対する本人確認が行われることとな
ります(P.44(Ⅱ-4(3))参照)
。その場合、顧問先(本人)の個人番号の
確認書類(マイナンバーカード又は通知カードの写しなど)が必要なことから、
あらかじめ顧問先から番号確認書類の提出を受けることとなります。
○ 提出を受けた本人確認書類は、適宜複写等をして保存することもできますが、
保存する場合には、安全管理措置を適切に講ずる必要があります。
※
提出を受けた本人確認書類を複写等して保存している場合には、必要な手
続を行った後に本人確認書類が不要となった段階で、速やかに廃棄しまし
ょう。
-35-
Ⅱ-2
安全管理措置等
(1)顧問先からの委託 ― 委託契約の見直し
ポイント
☞ 税理士は、源泉徴収票の作成等の個人番号関係事務を委託される顧問先か
ら、必要かつ適切な監督を受ける立場となるため、契約の見直しが必要と
なります。
(関係条文等)番号法第 11 条、ガイドライン(事業者編)第4-2-(1)1
○ 源泉徴収票の作成等の個人番号関係事務の全部又は一部の委託をする者(以下
「委託者」という。)は、委託する個人番号関係事務で取り扱う特定個人情報の
安全管理措置が適切に講じられるよう「委託を受けた者」に対する必要かつ適
切な監督を行わなければなりません。
○ したがって、税理士は、源泉徴収票の作成等の個人番号関係事務の委託者であ
る顧問先から、必要かつ適切な監督を受ける立場となります。
○ 「必要かつ適切な監督」には、以下のような内容が含まれます。
① 委託先の適切な選定
② 委託先に安全管理措置を遵守させるために必要な契約の締結
③ 委託先における特定個人情報の取扱状況の把握
○ そのため、税理士と顧問先との当該事務に係る契約を見直す必要があり、契約
内容として、以下の内容を盛り込む必要があります。
・ 秘密保持義務
・ 事業所内からの特定個人情報の持出しの禁止
・ 特定個人情報の目的外利用の禁止
・ 再委託における条件
・ 漏えい事案等が発生した場合の委託先の責任
・ 委託契約終了後の特定個人情報の返却又は廃棄
・ 従業者に対する監督・教育
・ 契約内容の遵守状況について報告を求める規定 等
※ このほか、特定個人情報を取り扱う従業者の明確化、委託者が委託先に対
して実地の調査を行うことができる規定を盛り込むことが望ましいと考えら
れます。
-36-
(2)再委託の取扱い
ポイント
☞ 税理士が顧問先から受託した個人番号関係事務を再委託するには、顧問先
の許諾が必要となります。
☞ 再委託が行われた場合、顧問先は再委託先に対して間接的に監督義務を負
います。
(関係条文等)番号法第 10 条、ガイドライン(事業者編)第4-2-(1)2
1.再委託の取扱い‐間接的監督義務と許諾
○ 個人番号関係事務の全部又は一部の「委託を受けた者」は、委託者の許諾を得
た場合に限り、再委託をすることができます。
○ したがって、税理士が受託した顧問先の従業員等の源泉徴収票作成事務を他者
に再委託するには、顧問先の許諾を得なければなりません。
○ なお、顧問先の情報を他者に伝えるに当たり顧問先の許諾が必要であることは、
税理士の守秘義務の観点からも当然です(税理士法第 38 条)。
○ 顧問先の許諾を得て他者に委託する場合、税理士が再委託先に対する監督義務
を負うだけでなく、顧問先も再委託先に対して、間接的に監督義務を負うこと
となります。
2.許諾の時期と方法
○ 再委託の許諾を得る時期は、再委託を行おうとする時点でその許諾を求めるの
が原則であり、その際、再委託先が特定個人情報を保護するための十分な措置
を講じているかを確認する必要があります。もっとも、次に掲げる要件を満た
している場合は、委託契約の締結時点において、あらかじめ再委託の許諾を得
ることもできると解されます(ガイドライン Q&A〔A3-9〕)。
①
②
再委託先となる可能性のある者が具体的に特定されていること
適切な資料等に基づいて当該再委託先が特定個人情報を保護するための十
分な措置を講ずる能力があることが確認されていること
③ 実際に再委託が行われたときは、必要に応じて、委託者に対してその旨の
報告をし、再委託の状況について委託先が委託者に対して定期的に報告する
との合意がなされていること
-37-
○ 再委託の許諾の方法についての制限は特段ありませんが、安全管理措置につい
て確認する必要があることに鑑み、書面等により記録として残る形式をとるこ
とが望ましいと考えられています(ガイドライン Q&A〔A3-10〕)。
3.情報システムの活用
○ 特定個人情報を取り扱う情報システムについて、クラウドサービス契約のよう
に外部の事業者を活用している場合、番号法上の委託に該当するか否かについ
ては、当該事業者が当該契約内容を履行するに当たって個人番号をその内容に
含む電子データを取り扱うのかどうかが基準となります。
当該事業者が個人番号をその内容に含む電子データを取り扱わない場合には、
そもそも、個人番号関係事務又は個人番号利用事務の全部又は一部の委託を受
けたことにはならないので、番号法上の委託には該当しません。
当該事業者が個人番号をその内容に含む電子データを取り扱わない場合とは、
契約条項によって当該事業者が個人番号をその内容に含む電子データを取り扱
わない旨が定められており、適切にアクセス制御を行っている場合等が考えら
れます(ガイドライン Q&A〔A3-12〕)。
○ 特定個人情報を取り扱う情報システムの保守の全部又は一部に外部の事業者を
活用している場合については、当該保守サービスを提供する事業者(以下「保
守サービス事業者」という。)がサービス内容の全部又は一部として個人番号を
その内容に含む電子データを取り扱う場合には、個人番号関係事務又は個人番
号利用事務の一部の委託に該当します。
一方、単純なハードウェア・ソフトウェア保守サービスのみを行う場合で、
契約条項によって当該保守サービス事業者が個人番号をその内容に含む電子デ
ータを取り扱わない旨が定められており、適切にアクセス制御を行っている場
合等には、個人番号関係事務又は個人番号利用事務の委託に該当しません。
個人番号関係事務又は個人番号利用事務の一部の委託に該当する保守サービ
スであって、保守のため記録媒体等を持ち帰ることが想定される場合は、あら
かじめ特定個人情報の保管を委託し、安全管理措置を確認する必要があります
(ガイドライン Q&A〔A3-14〕)。
○ クラウドサービスや保守サービス等を提供するベンダー等は、マイナンバー制
度に対応するために新たなシステムを構築することになるので、それぞれのベ
ンダー等との新たな契約内容を確認する必要があります。
-38-
(3) 税理士事務所における安全管理措置
ポイント
☞ 税理士は、自己の事務所の従業員等の特定個人情報等の管理のために、必
要かつ適切な安全管理措置を講じなければなりません。
☞ 税理士は、委託された顧問先の従業員等の特定個人情報等の管理のために、
必要かつ適切な安全管理措置を講じなければなりません。
(関係条文等)番号法第 12 条、第 33 条、第 34 条、ガイドライン(事業者編)第4
-2-(2)
・
(別添)特定個人情報に関する安全管理措置(事業者編)
○ 税理士は、自己の事務所の従業員等の特定個人情報等の管理のために、必要か
つ適切な安全管理措置を講ずる必要があります。
○ 税理士は、委託された顧問先の特定個人情報等の管理のために、必要かつ適切
な安全管理措置を講ずる必要があります。
○ 以上のように、税理士は、事務所従業員等の特定個人情報等と顧問先の特定個
人情報等を取り扱う場合があり、それぞれ事務取扱担当者等が異なることが考
えられることから、その際には、それぞれの観点による安全管理措置を講ずる
必要がある点に注意しましょう。
-39-
Ⅱ-3
個人番号の利用
(1)税理士業務における個人番号の利用制限
ポイント
☞ 個人番号を利用できる事務は番号法で限定的に定められており、税理士業
務において個人番号を利用するケースは、主として、顧問先の個人番号関
係事務の委託又は税務代理・税務書類の作成事務等の委嘱を受ける場合で
す。
☞ 例外として認められている場合を除き、本人の同意があったとしても、目
的外の利用は禁止されています。
(関係条文等)番号法第9条、第 29 条第3項、第 32 条、ガイドライン(事業者編)
第4-1-(1)
○ 個人番号は、番号法があらかじめ限定的に定めた事務の範囲の中から、具体的
な利用目的を特定した上で利用するのが原則です。
○ 税理士が個人番号を利用するのは、主に、顧問先の個人番号関係事務の委託又
は税務代理・税務書類の作成事務等の委嘱を受ける場合となります。
○ 税理士は、顧問先の管理のために、個人番号を顧問先番号として利用してはな
りません。
※ 個人番号をアルファベット等にアレンジしても、個人番号に該当すること
に留意しましょう(番号法第2条第8項括弧書)
。
○ 事業者は、個人番号の利用目的をできる限り特定しなければならないこととさ
れ(個人情報保護法第 15 条第1項)、その特定の程度としては、本人が、自ら
の個人番号がどのような目的で利用されるのかを一般的かつ合理的に予想でき
る程度に特定する必要があります。
○ 税理士の場合、
「年末調整事務(委託業務を含む。)」、
「法定調書作成事務(委託
業務を含む。)」、「税務代理」
、「税務書類の作成」のように特定し、あらかじめ
顧問先との契約に含めることが考えらます。
○ 以上のように、個人番号は、特定した利用目的の範囲内に利用が制限されてお
り、目的外の利用は、本人の同意があったとしても認められません。
ただし、例外的に、次の場合には、利用目的を超えた個人番号の利用が認め
られています。
-40-
①
②
金融機関等が激甚災害時等に金銭の支払を行う場合
人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人
の同意がある場合
③ 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人
の同意を得ることが困難である場合
○ 税理士が自己の事務所の従業員等の個人番号を利用する際にも上記事項を遵守
する必要があります。
○ なお、税理士が、税務代理により、依頼者の個人番号を行政機関等に提出する
ことは、本人の代理人としての立場における事務ですが、この場合においても、
個人番号の利用制限の適用を受けます。
また、税理士が、依頼者の税務書類の作成事務等の委嘱を受けて依頼者の個
人番号を利用する際にも、上記事項を遵守する必要があります。
(2)税理士業務における特定個人情報ファイルの作成の制限
ポイント
☞ 税理士は、個人番号関係事務を処理するために必要な範囲に限って、特定
個人情報ファイルを作成することができます。
(関係条文等)番号法第 28 条、ガイドライン(事業者編)第4-1-(2)
○ 税理士が、特定個人情報ファイルを作成することができるのは、個人番号関係
事務を処理するために必要な範囲に限られています。
○ 税理士は、個人の顧客を管理する目的で、特定個人情報ファイルを作成しては
いけません。
○ 法定調書作成ソフトウェア等の情報システムを利用している場合には、当該
情報システムによって特定個人情報等は管理されることとなるため、当該情
報システム以外の Microsoft Excel 等により特定個人情報ファイルを作成す
ることは、基本的には、想定しにくいと考えます。
○ なお、税理士が、税務代理や税務書類の作成事務の委嘱を受けた場合には、そ
の委嘱を受けた事務を処理するために必要な範囲に限って、特定個人情報ファ
イルを作成できるものと解されます。
-41-
Ⅱ-4
個人番号の提供
(1)税理士から税務署等への法定調書等の代理提出
ポイント
☞ 税理士が委託された顧問先従業員等の特定個人情報を提供できるのは、税
に関する特定の事務のために行政機関等に提供する場合に限られます。
(関係条文等)番号法第 19 条、ガイドライン(事業者編)第4-3-(2)2
○ 何人も、番号法で限定的に明記された場合を除き、特定個人情報を提供しては
ならないと番号法に規定されており、番号法に限定的に明記された場合の一つ
として、個人番号関係事務においては行政機関等への特定個人情報の提供が認
められています(番号法第 19 条第2号)。
○ 税理士が委託された顧問先従業員等の特定個人情報を提供できるのは、税に関
する特定の事務のために行政機関等に提供する場合に限られます。
○ 具体的には、源泉徴収票を含む法定調書や給与支払報告書を税務署や市区町村
へ提出等する場合であり、これらのケース以外では、原則として、税理士は委
託された顧問先従業員等の特定個人情報を提供することはできません。
○ ただし、委託元の許諾を得て、委託された事務を他者へ再委託する場合は、再
委託先に特定個人情報を提供することができます(P.37(Ⅱ-2(2)再委託
の取扱い)参照)。
-42-
(2)税理士から税務署等への申告書等の提出
ポイント
☞ 税理士は、依頼者の代理人として、行政機関等に対し、依頼者本人の個人
番号を申告書等に記載して提供します(番号法第 19 条第3号)。
☞ なお、依頼者の代理人として、依頼者の控除対象配偶者及び控除対象扶養
親族の個人番号を取り扱うことは、個人番号関係事務に該当することから、
それらの者の個人番号を申告書等に記載して提供することは、番号法第 19
条第2号により認められます。
(関係条文等)番号法第 19 条、ガイドライン(事業者編)第4-3-(2)2
○ 上述のように、何人も、番号法で限定的に明記された場合を除き、特定個人情
報を提供してはいけませんが、本人又は代理人から行政機関等への提供は、番
号法第 19 条第3号に明記されています。
○ これにより、税理士は、依頼者の代理人として、税務署等の行政機関等に対し
て、依頼者本人の個人番号を申告書等に記載して提供することとなります。
○ なお、依頼者の代理人として、依頼者の控除対象配偶者及び控除対象扶養親族
の個人番号を取り扱うことは、個人番号関係事務に該当することから、それら
の者の個人番号を申告書等に記載して提供することは、番号法第 19 条第2号に
より認められます。
-43-
(3)国税当局における代理人としての本人確認手続
ポイント
☞ 税理士は、顧問先や依頼者の個人番号が記載された申告書や法定調書等を
行政機関等に代理提出する際には、行政機関等より代理人としての本人確
認書類の提示等を求められます。
☞ 本人確認は、原則として、①「代理権確認書類」として税務代理権限証書、
②「代理人の身元確認書類」として税理士証票等及び③「本人の個人番号
確認書類」として本人のマイナンバーカード等の3つの書類の提示等によ
り行われることとなります。
☞ 電子申告による代理送信の場合は、マイナンバー制度導入以前の手続と大
きな変更はなく、従来の電子申告の手続の中で、代理人の本人確認が行わ
れることとなります。
(関係条文等)番号法第 16 条、番号法施行令第 12 条、番号法施行規則第6条~第 11
条、国税庁告示第2号「行政手続における特定の個人を識別するため
の番号の利用等に関する法律施行規則に基づく国税関係手続に係る
個人番号利用事務実施者が適当と認める書類等を定める件」(平成 27
年 1 月 30 日)、ガイドライン(事業者編)第4-3-(4)
○ 税理士は、税務署等の行政機関等に代理人として納税者の個人番号を提供する
ときは、代理人としての法令(番号法、番号法施行令、番号法施行規則及び国
税庁告示等)で定める本人確認書類の提示等を求められます。
○ 番号法上、代理人が個人番号を提供する場合の本人確認手続には、原則として、
以下の3点の提示等が必要となります。
① 代理権の確認書類
② 代理人の身元確認書類
③ 本人の個人番号の確認書類
○ 以下では、国税当局に代理人として個人番号を提供する際における取扱いにつ
き、税理士と税理士法人による場合とに分けて、それぞれの本人確認に必要な
書類や手続等について解説します。
1.税理士(代理人)が個人番号を提供する場合
① 代理権の確認
<基本的な考え方>
○ 番号法上、本人の代理人として個人番号を提供する者が法定代理人以外の者で
-44-
ある場合には、
「委任状」が代理権の確認書類とされていますが(番号法施行規
則第6条第1項第2号)、税務関係手続においては、
「税務代理権限証書」が「委
任状」に相当する書類となります。
したがって、税務署は、税務代理権限証書に基づき代理権の確認を行うこと
となります。
<書面提出の場合>
○ 当初申告等において税目及び年分を記載した税務代理権限証書を提出している
場合においても、番号法上、個人番号の提供の都度、確認書類の提示が必要で
あるため、申告書等の提出の都度、税務代理権限証書の提出が必要となります。
※ この場合の税務代理権限証書の提出については、当初申告において提出し
た税務代理権限証書の写しを添付することとして差し支えありません。
○ 税務署は、代理人から個人番号の提供があったか否かを、原則として税務代理
権限証書の添付の有無により判断することとなります。
このため、各種申告書に限らず、国税関係手続に係る申請書や届出書等、個
人番号が記載されている書類を提出する場合には、例外なく、税務代理権限証
書を添付する必要があることに留意してください。
※ 税務代理権限証書の提出がないものについては、原則として、顧問先又は
依頼者本人から個人番号の提供が行われたものとみなされます。
<電子申告による代理送信について>
○ 電子申告による代理送信についても、上記の基本的な考え方に基づき、申告書
等のデータ送信の際に併せて送付する税務代理権限証書データにより代理権の
確認が行われます。
なお、電子申告の代理送信については、
「税務代理」までは受託せずに税務書
類の作成業務のみを受託して代理送信を行うケースがありますが、この場合に
おいては、代理送信を行う税理士は番号法上の代理人として取り扱われ、納税
者本人の利用者識別番号を入力して送信することをもって、代理権の確認が行
われることとなります(国税庁告示第2号)。
○ すなわち、電子申告による代理送信の場合は、税務代理の委嘱を受けているか
否かにかかわらず、全て、番号法上の代理人から個人番号の提供があったもの
として取り扱われることとなり、代理権の確認のための国税当局に対する手続
は、マイナンバー制度導入以前と何ら変更は生じません。
-45-
② 代理人の身元確認
<書面提出の場合>
○ 代理人である税理士が、国税当局に対し顧客等の個人番号を記載した申告書等
を提出する場合には、代理人である税理士の身元確認書類の提示等が必要とな
ります。
なお、税務関係手続においては、国税当局との間で、にせ税理士の未然防止
及び税務当局における本人確認事務の効率化の観点から、運用上「税理士証票」
を統一的な身元確認書類として取り扱うこととしていますので、税理士として
申告書等を税務署の窓口で提出する際には、税理士証票の提示又は写しの添付
を行ってください。
※ 税務署窓口で提出する際にも、混雑緩和等の観点から、税理士証票の写し
を添付するようにしてください。
※ 税理士証票の写しは、申告書等に1件別に添付するようにしてください。
※ 税理士事務所の従業員等が税務署の窓口で申告書等を提出する場合は、申
告書を郵送等で提出する場合と同様、税理士証票の写しを申告書等と併せて
提出する必要があります。
○ 申告書等を郵送等で提出する場合においては、申告書等に併せて、
「税理士証票」
の写しを添付して提出します。
※ 郵送等で提出する場合も、税理士証票の写しは、申告書等に1件別に添付
するようにしてください。
<電子申告による代理送信の場合>
○ 電子申告による代理送信における代理人の身元確認については、代理送信の際
の代理人の電子証明書(公的個人認証サービスに基づく電子証明書・その他電
子申告で利用可能な電子証明書(例:日税連発行の税理士用電子証明書))の署
名送信により行われます(国税庁告示第2号)
。
○ すなわち、電子申告による代理送信の場合、送信者(税務代理人)に係る電子
証明書の添付は必須となっていることから、税務代理人の身元確認についても、
マイナンバー制度導入以前と何ら変更は生じません。
③ 本人の個人番号の確認
<書面提出の場合>
○ 納税者本人の個人番号を確認するために、原則としてマイナンバーカード又は
通知カードの写しの添付が必要となります。
<電子申告による代理送信>
○ オンライン手続において、対面や郵送等により個人番号の提供を受ける場合の
-46-
原則的な本人確認書類であるマイナンバーカード等の写しの別送を行うことは、
オンライン手続(電子申告)の利便性を著しく損なうことから、国税関係手続
における番号確認については、個人番号利用事務実施者である国税当局が、シ
ステムで番号確認を行う(地方公共団体情報システム機構への確認等)ことと
されています。
○ したがって、電子申告による代理送信においては、国税当局における顧問先等
の番号確認のための書類等の提出は不要となり、マイナンバー制度導入以前と
何ら変更は生じません。
2.税理士法人(法人代理人)が個人番号を提供する場合
① 代理権の確認
○ 上記「税理士(代理人)が個人番号を提供する場合」と同様で、税務代理権限
証書の提示等が必要となります。
② 代理人の身元(実在)確認及び関係性確認
○ 番号法上、代理人が法人である場合には、①登記事項証明書等による「法人実
在確認書類」と、②現に個人番号の提供を行う者と当該法人との関係を証する
ための「関係性確認書類」の提示等が必要となります。
<書面提出の場合>
○ 書面提出の場合においては、税理士法人の社員税理士又は所属税理士(以下「社
員税理士等」という。)を「現に番号の提供を行う者」として取り扱い、当該社
員税理士等の税理士証票の提示又は写しを提出します(注)。
※ 税理士証票には所属する税理士法人の名称の表示があるため、行政機関等
においては、税理士証票の確認を行うことにより、
「法人実在確認」及び「関
係性確認」の両者を確認することが可能となります。
※ 税務署窓口で提出する際にも、混雑緩和等の観点から、税理士証票の写し
を添付するようにしてください。
※ 税理士証票の写しは、申告書等に1件別に添付するようにしてください。
※ 税理士資格を有しない税理士法人に勤務する従業員等が税務署の窓口にお
いて申告書等を提出する場合は、社員税理士等の「税理士証票」の写しを
申告書等と併せて提出します。
(注)【参考】
法人代理人の身元確認には、原則、当該法人の登記事項証明書及び当該法人の従
業員等の社員証等の提示又は写しの添付が必要となりますが、反復継続して行われ
る税務手続において、①都度、法人実在確認書類及び関係性確認書類の提示を求め
-47-
ることは、税理士法人の事務負担が増加すること、②税理士証票の写しの提出を受
けることでなりすましの防止は担保されるものと考えられること及び③税理士(個
人)の税務代理手続と対応を統一化する観点から、国税当局と協議し、運用上、上
記のように取り扱うこととしたものです。
○ 申告書等を郵送等で提出する場合においては、申告書等に併せて、
「税理士証票」
の写しを添付して提出します。
※ 郵送等で提出する場合も、税理士証票の写しは、申告書等に1件別に添付
するようにしてください。
<代理送信の場合>
○ 税理士法人が代理送信を行う際に利用する代理送信用利用者識別番号(以下「代
理送信用 ID」という。)には、税理士法人に係るものと社員税理士等に係るも
のの2つの類型が存在し、送信用データには社員税理士等に係る電子証明書(公
的認証サービスに基づく電子証明書、日税連発行の税理士用電子証明書)によ
る署名送信が行われていますが、いずれの場合においても、国税当局における
代理送信用 ID を利用可能とする処理の過程において、当該税理士法人の実在確
認及び社員税理士等の当該法人との関係性確認が行われています。そのため、
国税当局においては、当該代理送信用 ID を使用して正常送信されることをもっ
て国税当局における代理人である当該税理士法人の身元確認を行うこととされ
ています。
○ したがって、電子申告による代理送信については、従来の電子申告の手続の過
程の中で法人実在確認及び関係性確認が可能となっています(国税庁告示第2
号)。
なお、社員税理士等が退職等により所属する税理士法人に変更等があった場
合には、新たな代理送信用 ID を取得する必要があることに留意しましょう。
※ 旧顧問先の申告情報を電子申告のメッセージボックスから閲覧可能な状態
とされることは、特定個人情報保護の観点から問題であるため、マイナン
バー制度導入後においては、従来にも増して、所属する税理士法人の変更
等に係る代理送信用 ID の取扱いを徹底するよう留意しましょう。
それぞれの組み合わせの場合における法人実在確認及び関係性確認の考え方は、
上記のとおりとなりますので、国税当局及び税務代理人において、新たな事務負担
は発生せず、国税当局に対する手続は、マイナンバー制度導入以前と何ら変更は生
じません。
-48-
③
本人の個人番号の確認
上記「税理士(代理人)が個人番号を提供する場合」と同様となります。
なお、地方税当局における代理人の本人確認措置に係る取扱いは、基本的には国
税当局における取扱いと同等ですが、地方税手続における「個人番号利用事務実施
者が適当と認めるもの」は地方公共団体ごとに定められる告示により規定されるた
め、詳細は手続を行う地方公共団体にご確認ください。
(参考)
・地方税分野での本人確認に際し、番号法施行規則に規定する「個人番号利用事務実
施者が適当と認めるもの」の告示(例)
(総務省 HP)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000386497.pdf
・告示(例)に規定している書類の具体例(総務省 HP)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000386498.pdf
【税務当局における税務代理人の本人確認】
○
税理士(個人)の本人確認
提出態様
対面
税務代理権限証書
(法 30 条書面)
添付あり
郵送
電子申告
(代理送信)
対面
税務代理権限証書
(法 30 条書面)
添付なし
郵送
電子申告
(代理送信)
○
番号提供者
現に番号提供を行う者
税理士
税理士又は職員
税理士
〃
税理士
〃
代理権
税務代理権限証書
番号確認
税理士証票
納税者の個人番号カード等
(提示・写しの提出)(★1)(★2)
(提示・写しの提出)(★1)
税務代理権限証書
税理士証票
(写しの提出)
納税者の個人番号カード等
(写しの提出))
税務代理権限証書データ
税理士の電子証明書
当局によるシステム確認
(写し等の別送不要)
納税者本人
税理士又は職員
納税者本人
税理士
税理士
〃
本人確認書類(方法)
身元確認
納税者の個人番号カード等 納税者の個人番号カード等
(写しの提出)
(写しの提出)
納税者の個人番号カード等 納税者の個人番号カード等
(写しの提出)
(写しの提出)
納税者の利用者識別番号又は利用者
ID を入力して送信している事実
税理士の電子証明書
当局によるシステム確認
(写し等の別送不要)
税理士法人の本人確認
提出態様
対面
税務代理権限証書
(法 30 条書面)
添付あり
郵送
電子申告
(代理送信)
税務代理権限証書
(法 30 条書面)
添付なし
番号提供者
現に番号提供を行う者
税理士法人
社員税理士又は職員
税理士法人
社員税理士等
税理士法人
社員税理士等
代理権
本人確認書類(方法)
法人の実在・関係性
番号確認
税務代理権限証書
社員税理士等の税理士証票 納税者の個人番号カード等
(提示・写しの提出)(★1)(★2)
(提示・写しの提出)(★1)
税務代理権限証書
社員税理士等の税理士証票 納税者の個人番号カード等
(写しの提出)
(写しの提出))
税務代理権限証書データ
法人の実在・関係性確認済みの
代理送信可能な利用者識別番
号による送信(★3)
当局によるシステム確認
(写し等の別送不要)
対面
納税者本人
社員税理士又は職員
納税者の個人番号カード等 納税者の個人番号カード等
(写しの提出)
(写しの提出)
郵送
納税者本人
社員税理士等
納税者の個人番号カード等 納税者の個人番号カード等
(写しの提出)
(写しの提出)
電子申告
(代理送信)
税理士法人
社員税理士等
法人の実在・関係性確認済みの
納税者の利用者識別番号又は利用者
代理送信可能な利用者識別番
ID を入力して送信している事実
号による送信(★3)
当局によるシステム確認
(写し等の別送不要)
★1:窓口の混雑防止を図り税務当局及び税理士双方の負担を緩和する観点から、国税庁と協議した結果、国税関係手続においては写しを添付のうえ提出することを基本としています。
★2:税理士資格を有しない職員が対面により提出する場合は、税理士商標の写しを提示し、併せて提出してください。
★3:eLTAX の場合は、日税連運営の税理士情報検索サイトにより法人の実在・関係性が確認されます。
※
※
国税関係手続は、上記のとおり国税庁告示により定められています。
地方税関係手続の詳細は地方公共団体ごとに定められる告示により規定されるため、詳細は手続きを行う地方公共団体にご確認ください。
-49-
(4)本人への交付
ポイント
☞ 本人交付用の給与所得の源泉徴収票には、その本人、控除対象配偶者及び
控除対象扶養親族の個人番号は記載しません(支払者の番号も記載不要)
。
☞ 支払調書の写しを本人に交付する場合には、個人番号を記載しない措置が
必要となります。
☞ 申告書等の控えに個人番号が記載されている場合で、本人が当該控えを所
得証明等のために民間事業者に提出する際には、個人番号部分を復元でき
ない程度にマスキングする等の工夫が必要となります。
(関係条文等)番号法第 19 条、所得税法第 225 条、所得税法施行規則第 93 条、ガイ
ドライン(事業者編)第4-3-(2)2
1.給与所得の源泉徴収票
○ 申告書に添付する源泉徴収票は、所得税法施行令第 262 条第4項により、所得
税法第 226 条の規定に基づき本人に交付される源泉徴収票であり、所得税法施
行規則第 93 条に基づいて、以前は、その本人並びに控除対象配偶者及び控除対
象扶養親族の個人番号を記載することになっていましたが、所得税法施行規則
等の改正により、個人番号を記載しないこととなりました(支払者の個人番号
又は法人番号は当初より記載不要)。
○ したがって、本人交付用の源泉徴収票に個人番号を記載することは、番号法第
19 条の特定個人情報の提供制限の適用を受けることとなります。
○ 本人交付用の給与所得の源泉徴収票は、所得税の確定申告の際の本人確認にお
いて、番号確認書類としては利用できませんが、身元(実在)確認書類として
利用される場合があります(国税庁告示第2号)。
2.支払調書
○ 支払調書は、所得税法上、税務署への提出が義務付けられているものであり(所
得税法第 225 条第1項)、一部を除き、本人への交付の定めはなく、個人番号が
記載された支払調書の写しを本人に交付することは番号法第 19 条の特定個人
情報の提供制限の適用を受けることとなります。したがって、そのような場合
は、原則として、本人及び本人以外の者の個人番号部分を記載したまま交付す
ることはできません(ガイドライン Q&A〔A5-7〕〔A5-8〕)。
なお、本人交付義務のある支払通知書等についても、個人番号は記載しない
こととされているため、個人番号が記載された支払通知書等を本人に交付する
-50-
ことは番号法第 19 条の特定個人情報の提供制限の適用を受けることとなります
のでご注意ください。
○ 本人の個人番号を記載した支払調書の写しを本人に対して交付する場合には、
本人からの開示の求めに応じて行うこととなります(ガイドライン Q&A〔A5-
7〕〔A5-8〕)。ただし、当該支払調書の写しに本人以外の個人番号が含まれ
ている場合には、本人以外の個人番号を記載しない措置や復元できない程度に
マスキングする等の工夫が必要となります(ガイドライン Q&A〔5-8〕)。
○ また、本人の個人番号を含めて全ての個人番号を記載しない措置や復元できな
い程度にマスキングすれば、番号法第 19 条の適用を受けないことから、開示の
求めによらず、支払調書等の写しを本人に交付することが可能です。
3.申告書等の控え
○ 各種申告書等の控えは、税法上作成を義務付けているものではありませんので、
当該控えに個人番号を記載するかしないかは、本人の任意となります。
○ 各種申告書等の控えに個人番号が記載されている場合で、本人が当該控えを民
間事業者に提出するときは、番号法で認められている特定個人情報の提供に該
当しないことから、番号法第 19 条の特定個人情報の提供制限の適用を受けるこ
ととなります。
○ したがって、例えば、個人番号が記載されている所得税の確定申告書の控えを
所得証明のために金融機関等に提出する際には、個人番号部分を復元できない
程度にマスキングする等の工夫が必要となりますので、本人に対し、その旨助
言することが肝要です。
○ 個人番号を記載しない確定申告書の控えを作成して、それを民間事業者等に提
出する場合には、特段マスキング等の措置は必要ありません。
○ なお、税務代理又は税務書類の作成の委嘱契約に基づいて、税理士が作成し保
有している当該申告書等の控えに個人番号の記載がある場合、当該控えを本人
に返却することは、特定個人情報の提供制限に抵触しないため当然に可能であ
り、マスキング等の措置は不要となっています。
○ 税務署に備え付けの複写式の用紙及び国税庁ホームページ確定申告書等作成コ
ーナーにおいては、各種申告書等の控えに個人番号が記載されません。
-51-
(5)税理士から顧問先への個人番号の提供と本人確認
ポイント
☞ 税理士は、税理士報酬に係る源泉徴収事務のために、依頼者に対して、自
己の個人番号を提供します。
(関係条文等)番号法第 16 条、第 19 条、ガイドライン(事業者編)第4-3-(2)
2・第4-3-(4)
<自己の個人番号の提供>
○ 何人も、番号法で限定的に明記された場合を除き、特定個人情報を提供しては
ならないとされていますが、税理士は、税理士報酬に係る支払調書作成事務の
ために、依頼者より、自己の個人番号の提供を求められた場合には、自己の個
人番号を提供することとなります。
<本人確認>
○ 税理士が顧問先等に自己の個人番号を提供する際は、本人確認手続のために、
自己のマイナンバーカード等(通知カード+税理士証票又は運転免許証等)を
提示します。
-52-
Ⅱ-5
個人番号の保管・廃棄
(1)税理士事務所における特定個人情報の保管制限
ポイント
☞ 個人番号が記載された書類等は、その個人番号を取り扱う事務を行う必要
がある場合に限り保管することができます。
☞ 個人番号が記載された書類等のうち所管法令によって一定期間保存が義務
付けられているものは、その期間に限って保管することとなり、期間経過
後は速やかに個人番号を削除又は書類等を廃棄する必要があります。
☞ 削除又は廃棄を前提とした「保管体制」・
「システム構築」をすることが望
まれます。
(関係条文等)番号法第 20 条、ガイドライン(事業者編)第4-3-(3)
○ 特定個人情報は、番号法で限定的に明記された事務を行う必要がある場合に限
り保管し続けることができることとされています。
○ 個人番号が記載された書類等のうち所管法令によって一定期間保存が義務付け
られているものは、その期間に限って保管することとなり、期間経過後、その
事務を処理する必要がなくなった場合は、できるだけ速やかに個人番号を削除
又は書類等を廃棄しなければなりません。
○ ただし、個人番号部分を復元できない程度にマスキング又は削除した上で他の
情報の保管を継続することは可能です。
○ 例えば、扶養控除等申告書は、7年間保存することとされていることから(所
得税法施行規則第 76 条の3)、当該期間を経過した場合には、当該申告書に記
載された個人番号を保管しておく必要はなく、原則として、個人番号が記載さ
れた扶養控除等申告書をできるだけ速やかに廃棄しなければなりません(扶養
控除等申告書の個人番号部分を復元できない程度にマスキング又は削除するこ
とも可)。
○ そのため、個人番号が記載された扶養控除等申告書等の書類については、保存
期間経過後における廃棄又は個人番号部分の削除を前提とした保管体制を整え
ることが望まれます。
○ 特定個人情報の保管については、できるだけ保存期間経過後における個人番号
の削除を前提とした情報システムに集約し、書類等については、個人番号の記
-53-
載が法令で義務付けられているものを除き、できるだけ出力しない又は個人番
号を印字しない等の対応をとることが賢明です。
○ 例えば、扶養控除等申告書は、給与支払者が、従業員本人・控除対象扶養親族
等の氏名及び個人番号等を記載した帳簿(以前に提出を受けた扶養控除等申告
書等により作成したもの)を備えているときには、個人番号の記載を省略する
ことができます。このように個人番号の記載を要しないとされる書類について
は、個人番号を記載しないことで、廃棄・削除の事務処理の煩雑化を防ぐこと
ができます。
○ なお、顧問先の書類については、委託業務終了後速やかに、顧問先に返却し、
法定保存期間のある書類等については、その旨助言しましょう。
○ 給与等の支払をする者が、受給者から「扶養控除等(異動)申告書」等の申告
書に記載すべき事項に関し電磁的提供を受けるための必要な措置を講ずる等の
一定の要件を満たしていることについて所轄税務署長の承認を受けている場合
には、その受給者は、書面による申告書の提出に代えて、電磁的方法により申
告書に記載すべき事項の提供を行うことができることとされています。
マイナンバー制度においては、保管・廃棄のことを考えれば、電磁的方法が
有効と考えられます。
(注)1 承認を受けるための申請書を提出した日の属する月の翌月末日まで
にその承認又は不承認の決定がなかったときは、その提出日の翌月末
日において承認があったものとみなされます。
2 これらの申告書に記載すべき事項の電磁的提供に当たっては、①給
与等の支払をする者が発行した個々の受給者の識別ができる ID 及び
パスワード又は②受給者の電子署名及びその電子署名に係る電子証明
書をもって、これらの申告書にすべき本人の署名・押印に代えること
ができます。
3 申告書に添付すべき証明書類については、従前どおり書面による提
出又は提示が必要となります。
○ 給与所得の源泉徴収票、支払調書等の作成事務のために提供を受けた特定個人
情報を電磁的記録として保存している場合においても、その事務に用いる必要
がなく、所管法令で定められている保存期間を経過した場合には、原則として、
個人番号をできるだけ速やかに廃棄又は削除しなければなりません。
○ そのため、特定個人情報等を保存するシステムにおいては、保存期間経過後に
おける廃棄又は削除を前提としたシステムを構築することが望まれます。
-54-
(2)データ・書類・機器等の削除又は廃棄
ポイント
☞ 個人番号が記載された書類等を廃棄又は個人番号部分を削除する場合、復
元不可能な手段によらなければならず、廃棄又は削除した記録を保存する
ことも必要です。
☞ 電子データについては、保存期間経過後における個人番号の削除を前提と
した情報システムを構築することが望まれます。
(関係条文等)番号法第 20 条、ガイドライン(事業者編)第4-3-(3)
・
(別添)
特定個人情報に関する安全管理措置(事業者編)2Ed
○ (1)で述べたように、個人番号を取り扱う事務を行う必要がなくなった場合で、
所管法令等において定められている保存期間等を経過した場合には、個人番号を
できるだけ速やかに復元できない手段で削除又は廃棄しなければなりません。
○ 特定個人情報が記載された書類等を廃棄する場合、焼却又は溶解等の復元不可能
な手段を採用します。
○ 焼却又は溶解については、専門業者に依頼することが現実的ですが、これらの方
法のほか、例えば、復元不可能な程度に細断可能なシュレッダーの利用又は個人
番号部分を復元できない程度にマスキングすること等も認められています(ガイ
ドライン Q&A〔A15-3〕)。
○ 焼却又は溶解の作業を専門業者に委託した場合には、委託先が確実に、焼却又は
溶解したことについて、証明書等により確認し、当該証明書等は保存します。
○ 特定個人情報が記録された機器及び電子媒体等を廃棄する場合、専用のデータ削
除ソフトウェアの利用又は物理的な破壊等により、復元不可能な手段を採用しま
す。
○ 特定個人情報ファイル中の個人番号又は一部の特定個人情報を削除する場合、容
易に復元できない手段を採用します。
○ なお、データ復元用の専用ソフトウェア、プログラム、装置等を用いなければ復
元できない場合には、容易に復元できない方法と考えられています(ガイドライ
ン Q&A〔A15-2〕)。
○ 特定個人情報等を取り扱う情報システムにおいては、保存期間経過後における個
-55-
人番号の削除を前提とした情報システムを構築することが望まれます。
○ また、個人番号若しくは特定個人情報ファイルを削除した場合、又は電子媒体等
を廃棄した場合には、削除又は廃棄した記録を保存しなければなりません。
これらの作業を専門業者等に委託する場合には、委託先が確実に削除又は廃棄
したことについて、証明書等により確認し、当該証明書等は保存します。
○ 証明書等がない場合でも、削除等の記録を保存するようにしましょう。
-56-
Ⅲ
顧問先(事業者)への指導
税理士は、顧問先の企業等にとって最も身近な相談相手であり、マイナンバー制度
に関し、顧問先からの相談に応え、適切な指導を行うことが求められます。
この章では、税理士の顧問先の多くを占める中小企業向けにマイナンバー制度の解
説をしています。顧問先の指導に当たっては、Ⅰ章及びⅡ章で述べた自身の事務所に
おける対応を参考にし、税理士自らがマイナンバー制度について理解を深めた上で、
適切な指導を行うようにしてください。
なお、特に重要な特定個人情報等の具体的な取扱いについては、個人情報保護委員
会が公表している『「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」
及び「(別冊)金融業務における特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」
に関する Q&A』の項目番号を付記したので参考にしてください。
Ⅲ-1
マイナンバー制度の概要の周知
ポイント
☞ マイナンバー制度の概要を顧問先に説明し、事務作業の見直しや安全管理
措置について、相談に応じ対応を検討します。
☞ また、顧問先従業員等への周知も重要です。
○ 事業者は、平成 28 年1月より、従業員等の社会保険事務や源泉徴収事務のた
めに、従業員等及びその扶養親族等の個人番号を取り扱うこととなり、事業
者は特定個人情報の安全管理措置等の各種義務及び責任を課されることとな
りました。
○ マイナンバー制度について、従業員等への周知を行わなければなりません。
○ 税理士は、顧問先等のマイナンバー制度への対応状況を確認し、相談に応じ
ることが望まれます。
○ 顧問先への説明は、内閣官房や個人情報保護委員会のホームページに掲載さ
れている資料を活用するとよいでしょう。また、総務省や国税庁のホームペ
ージも参考になります。
【参考】内閣官房ホームページ
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/index.html
-57-
個人情報保護委員会ホームページ
http://www.ppc.go.jp/
総務省ホームページ
http://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/01.html
国税庁ホームページ
http://www.nta.go.jp/mynumberinfo/
【従業員等への周知】
○ 事業者は、従業員等の源泉徴収事務や社会保険事務、労働保険事務のために、
従業員等本人から個人番号の提供を受けなければなりません。また、従業員
等に扶養親族等がいる場合には、扶養親族等の個人番号の提供を受ける必要
があります。
○ 従業員等から個人番号の提供を受ける際には、本人確認を行わなければなら
ず、この確認手続にはマイナンバーカ-ドや通知カ-ド等が必要となります
(例えば、通知カードの場合は、併せて運転免許証等の身分証明書が必要)
(P.64(Ⅲ-3(1)【本人確認書類】)参照)。
○ 事業者は従業員等に対して、マイナンバーカ-ドや通知カ-ド等を紛失等し
ないよう管理しておくことを伝えることが重要です。
○ 従業員等は、控除対象配偶者や控除対象扶養親族がある場合、それらの個人
番号も事業者に伝える必要がありますので、別居している親や子供を扶養親
族としている場合には、それらの扶養親族等への周知・連絡等をしておくよ
う助言するとよいでしょう。
○ なお、従業員等が住民票所在地に居住していないケ-スもありますが、その
場合は通知カードが住民票所在地に送付されているため注意する必要があり
ます。
-58-
Ⅲ-2
安全管理措置の中小規模事業者に対する特例
ポイント
☞ 安全管理措置は、特定個人情報等を取り扱う全ての事業者に課されている
義務です。
☞ なお、中小規模事業者については、安全管理措置の特例が用意されていま
す。
○ 特定個人情報等の取扱いに関する安全管理措置は、特定個人情報等を取り扱
う全ての事業者に課されている義務です。
○ Ⅰ章を参照の上、安全管理措置への対応を検討します。
(1)組織的安全管理措置…事務取扱者及び責任者の明確化等(P.15)
(2)物理的安全管理措置…特定個人情報を取り扱う区域の管理等(P.20)
(3)技術的安全管理措置…情報システムの管理等(P.24)
(4)人的安全管理措置…事務取扱担当者の監督・教育(P.27)
【参考】ガイドライン Q&A
10:安全管理措置の検討手順
11:講ずべき安全管理措置の内容
12:基本方針の策定
13:取扱規程等の策定
14:組織的安全管理措置
15:物理的安全管理措置
Q10-1~Q10-2
Q11-1~Q11-4
Q12-1~Q12-2
Q13-1~Q13-2
Q14-1~Q14-3
Q15-1~Q15-3
○ なお、安全管理措置については、中小規模事業者に対する特例を設けること
により実務への影響が配慮されています。
中小規模事業者とは
事業者のうち、従業員の数が 100 人以下の事業者で、次に掲げる事業者を除く事業
者をいいます。
・ 個人番号利用事務実施者
・ 委託に基づいて個人番号関係事務又は個人番号利用事務を業務として行う事業
者
・ 金融分野(金融庁作成の「金融分野における個人情報保護に関するガイドライ
ン」第1条第1項に定義される金融分野)の事業者
・
個人情報取扱事業者
-59-
【参考】個人情報保護委員会事務局資料:中小規模事業者向け はじめてのマイナン
バーガイドライン~マイナンバーガイドラインを読む前に~
「(別添)特定個人情報に関する安全管理措置」の中小規模事業者における対応方法(抜
粋)
安全管理措置は、事業者の規模及び特定個人情報等を取り扱う事務の特性等により、適切
な手法を採用してください。
中小規模事業者における対応方法
A
?ヒント?
基本方針の策定
基本方針の策定は義務ではありませんが、作
特定個人情報等の適正な取扱いの確保につ
ってあれば従業員の教育に役立ちます。
いて組織として取り組むために、基本方針を策
定することが重要である。
B
取扱規程等の策定
業務マニュアル、業務フロー図、チェックリ
○
特定個人情報等の取扱い等を明確化する。
スト等に、マイナンバーの取扱いを加えること
○
事務取扱担当者が変更となった場合、確実
も考えられます。
な引継ぎを行い、責任ある立場の者が確認す
る。
C
組織的安全管理措置
事業者は、特定個人情報等の適正な取扱いのために、次に掲げる組織的安全管理措置を講じな
ければならない。
a
組織体制の整備
○
けん制効果が期待できる方法です。
事務取扱担当者が複数いる場合、責任者と
事務取扱担当者を区分することが望ましい。
b
取扱規程等に基づく運用
c
取扱状況を確認する手段の整備
○
例えば、次のような方法が考えられます。
・業務日誌等において、特定個人情報等の入手・
特定個人情報等の取扱状況の分かる記録
廃棄、源泉徴収票の作成日、税務署への提出日
を保存する。
等の、特定個人情報等の取扱い状況等を記録す
る。
・取扱規程、事務リスト等に基づくチェックリス
トを利用して事務を行い、その記入済みのチェ
ックリストを保存する。
d
情報漏えい等事案に対応する体制の整備
○
業務遂行の基本、「ほうれんそう」(報告・
情報漏えい等の事案の発生等に備え、従業
連絡・相談)を確認しましょう。
者から責任ある立場の者に対する報告連絡
体制等をあらかじめ確認しておく。
e
取扱状況の把握及び安全管理措置の見直し
○
事業者のリスクを減らすための方策です。
責任ある立場の者が、特定個人情報等の取
扱状況について、定期的に点検を行う。
D
人的安全管理措置
事業者は、特定個人情報等の適正な取扱いのために、次に掲げる人的安全管理措置を講じなけ
ればならない。
-60-
中小規模事業者における対応方法
a
?ヒント?
事務取扱担当者の監督
従業員の監督・教育は、事業者の基本です。
事業者は、特定個人情報等が取扱規程等に基
づき適正に取り扱われるよう、事務取扱担当者
従業員にマイナンバー4箇条を徹底しまし
ょう。
に対して必要かつ適切な監督を行う。
b
事務取扱担当者の教育
事業者は、事務取扱担当者に、特定個人情報
等の適正な取扱いを周知徹底するとともに適
切な教育を行う。
E
物理的安全管理措置
事業者は、特定個人情報等の適正な取扱いのために、次に掲げる物理的安全管理措置を講じな
ければならない。
a
特定個人情報等を取り扱う区域の管理
事業者の規模及び特定個人情報等を取り扱
特定個人情報等の情報漏えい等を防止する
う事務の特性等によりますが、例えば、壁又は
ために、特定個人情報ファイルを取り扱う情報
間仕切り等の設置及び覗き見されない場所等
システムを管理する区域(以下「管理区域」と
の座席配置の工夫等が考えられます。
いう。)及び特定個人情報等を取り扱う事務を
実施する区域(以下「取扱区域」という。)を
明確にし、物理的な安全管理措置を講ずる。
b
機器及び電子媒体等の盗難等の防止
事業者の規模及び特定個人情報等を取り扱
管理区域及び取扱区域における特定個人情
う事務の特性等によりますが、例えば、書類等
報等を取り扱う機器、電子媒体及び書類等の盗
を盗まれないように書庫等のカギを閉める等
難又は紛失等を防止するために、物理的な安全
が考えられます。
管理措置を講ずる。
c
電子媒体等を持ち出す場合の漏えい等の防
置き忘れ等にも気を付けましょう。
止
○
特定個人情報等が記録された電子媒体又
は書類等を持ち出す場合、パスワードの設
定、封筒に封入し鞄に入れて搬送する等、紛
失・盗難等を防ぐための安全な方策を講ず
る。
d
個人番号の削除、機器及び電子媒体等の廃
事業者のリスクを減らすために大切です。
棄
○
特定個人情報等を削除・廃棄したことを、
責任ある立場の者が確認する。
F
技術的安全管理措置
事業者は、特定個人情報等の適正な取扱いのために、次に掲げる技術的安全管理措置を講じな
ければならない。
-61-
中小規模事業者における対応方法
a
アクセス制御
b
アクセス者の識別と認証
○
?ヒント?
担当者以外の者に勝手に見られないように
しましょう。
特定個人情報等を取り扱う機器を特定し、
その機器を取り扱う事務取扱担当者を限定
することが望ましい。
○
機器に標準装備されているユーザー制御
機能(ユーザーアカウント制御)により、情
報システムを取り扱う事務取扱担当者を限
定することが望ましい。
c
外部からの不正アクセス等の防止
インターネットにつながっているパソコン
情報システムを外部からの不正アクセス又
で作業を行う場合の対策です。例えば、次のよ
は不正ソフトウェアから保護する仕組みを導
うな方法が考えられます。
入し、適切に運用する。
・ウイルス対策ソフトウェア等を導入する。
・機器やソフトウェア等に標準装備されている自
動更新機能等の活用により、ソフトウェア等を
最新状態にする。
d
情報漏えい等の防止
インターネットにつながっているパソコン
特定個人情報等をインターネット等により
で作業を行う場合の対策です。例えば、データ
外部に送信する場合、通信経路における情報漏
の暗号化又はパスワードによる保護等が考え
えい等を防止するための措置を講ずる。
られます。
【参考】マイナンバー4箇条
出典:個人情報保護委員会事務局資料『中小規模事業者向け はじめてのマイナンバーガイドライン
~マイナンバーガイドラインを読む前に~』http://www.ppc.go.jp/files/pdf/160114_chusho.pdf
-62-
Ⅲ-3
特定個人情報の適正な取扱い
~個人番号の事務作業フローに沿った取扱い(中小規模事業者向け)~
ここでは、個人番号の取得から廃棄に至る事務作業フローに従って、中小規模事業
者に関係する特定個人情報の適正な取扱いを中心に解説します。
中小規模事業者に該当しない一般の事業者に関する個人番号の事務作業フローに
沿った適正な取扱いについては、基本的には税理士と同様となります(Ⅱ章参照)。
(1)個人番号の取得
ポイント
☞ 事業者は、社会保障及び税に関する手続書類の作成事務を処理するために
必要がある場合に限って、従業員等に個人番号の提供を求めることができ
ます。
☞ 個人番号を取得する際には、本人確認が義務付けられています。
☞ 本人確認の方法には、従業員等からマイナンバーカ-ド又は通知カ-ド及
び運転免許証等の身分証明書の提示等の方法があります。
○ 個人番号は、番号法で限定的に明記された場合を除き、他人に対し個人番号
の提供を求めてはならないこととされています。
○ 事業者は、社会保障及び税に関する手続書類の作成事務を処理するために必
要がある場合に限り、従業員等に個人番号の提供を求めることができます。
○ 従業員等に扶養親族等がいる場合、それらの個人番号の提供を求める必要も
あります。
○ 事業者が、従業員等の個人番号を記載する手続書類には、以下のような書類
があります。
→源泉徴収票、支払調書、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 等
○ 事業者は、従業員等から個人番号の提供を受ける際には、本人確認を行う必
要があります。
○ 従業員等の扶養親族等に係る本人確認は、従業員等本人が行います。
なお、上記のような本人確認が必要となっていますが、雇用関係にあって、過
去に本人確認をしていることから本人であることが明らかな場合等、個人番号利
-63-
用事務実施者が適当と認める場合は、身元確認書類を不要とすることができます。
○ 従業員等から提出を受けた本人確認書類は、適宜複写等をして保存すること
ができます。なお、保存する場合には、安全管理措置を適切に講ずる必要が
あります。
【本人確認書類】
① 本人の個人番号の提供を受ける場合
(ⅰ)マイナンバーカードの提示
(ⅱ)通知カードの提示を受ける場合、「通知カード」+「本人の身元確認書類」
(ⅲ)(ⅰ)、(ⅱ)以外の場合、「番号確認書類」+「本人の身元確認書類」
※ 身元確認書類は、運転免許証、旅券又は住民基本台帳カード等の写真付身分証
明書であれば1種類で確認できます。
写真付身分証明書が困難な場合は、健康保険証等又は官公署等から発行された
書類(氏名・住所等の記載のある物)等の中から2種類で確認します。
※ マイナンバーカード及び通知カード以外の番号確認書類は、住民票の写し(個
人番号の記載があるもの。以下、①②において同じ。)等です。
(例)従業員等の本人確認(書類の組合せの一例)
・ マイナンバーカ
ード
・ 通知カード
+ 写真付身分証明書等(運転免許証、
旅券又は住民基本台帳カード等)
・ 通知カード
+ 健康保険証等 + 官公署又は個人番号利用事務等実施者か
ら発行され、又は発給された書類その他
これに類する書類であって個人番号利用
事務実施者が適当と認めるもの(通知カ
ードに記載された個人識別事項の記載が
あるもの)
・ 住民票の写し等 + 写真付身分証明書等
・ 住民票の写し等 + 健康保険証等 + 官公署又は個人番号利用事務等実施者か
ら発行され、又は発給された書類その他
これに類する書類であって個人番号利用
事務実施者が適当と認めるもの(通知カ
ードに記載された個人識別事項の記載が
あるもの)
-64-
②
本人の代理人から従業員等の個人番号の提供を受ける場合
代理権確認書類
※
+
代理人の
身元確認書類
+
本人の
番号確認書類
代理権確認書類は、戸籍謄本、委任状等です。
(例)従業員等の扶養親族等から従業員等の個人番号の提供を受ける場合の本人確認
(書類の組合せの一例)
・ 代理権確認書類:戸籍謄本、委任状等
・ 代理人の身元確認書類:写真付身分証明書等、健康保険証等
・ 本人の番号確認書類:本人に係るマイナンバーカード、住民票の写し等
【従業員等へ個人番号の提供を求める時期】
○ 従業員等へ個人番号の提供を求める時期は、社会保障及び税に関する手続書
類の作成事務が発生した時点が原則となります。
○ ただし、契約を締結した時点でその事務の発生が予想できる場合には、その
時点で個人番号の提供を求めることは可能です。
【参考】ガイドライン Q&A
1:個人番号の利用制限
4:個人番号の提供の要求
Q1-1~Q1-12
Q4-1~Q4-6
(2)個人番号の利用・提供
ポイント
☞ 事業者は、従業員等の個人番号を社会保障及び税に関する手続書類に記載
して、行政機関等及び健康保険組合等に提出します(個人番号関係事務)。
☞ 事業者は、個人番号関係事務を処理するために必要な範囲に限って、特定
個人情報ファイルを作成することができます。
○ 特定個人情報は、番号法で限定的に明記された事務に限って、利用・提供す
ることが認められています。
○ 事業者は、法令に基づき行う源泉徴収票作成事務、健康保険・厚生年金保険
被保険者資格取得届作成事務等に限って、手続書類に従業員等の個人番号を
記載して、行政機関等及び社会保険組合等に提出します。
【特定個人情報ファイルの作成の制限】
○ 事業者が、特定個人情報ファイルを作成することができるのは、個人番号関
-65-
係事務又は個人番号利用事務を処理するために必要な範囲に限られています。
○ 事業者は、個人番号の提供と同様に、法令に基づき行う源泉徴収票作成事務、
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届作成事務等に限って作成するこ
とができます。
【参考】ガイドライン Q&A
2:特定個人情報ファイルの作成の制限 Q2-1~Q2-4
※
番号法で限定的に定められている事務の範囲(社会保障・税)以外の場合は、本
人の同意があったとしても本来の利用目的を超えて個人番号・特定個人情報を利
用・提供することはできない点に注意が必要です。
※ ただし、人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人
の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難であるときは、個人番号関係事務
を処理する目的で保有している個人番号について、人の生命、身体又は財産を保護
するために利用・提供することはできます。
【参考】ガイドライン Q&A
5:個人番号の提供の求めの制限、特定個人情報の提供制限
Q5-1~Q5-9
18:個人番号の提供の求めの制限、特定個人情報の提供制限
Q18-1~Q18-3
(3)個人番号の保管
ポイント
☞ 事業者は、従業員等の特定個人情報を利用する事務を行う必要がある場合
に限り、それらの特定個人情報を保管し続けることができます。
○ 特定個人情報は、番号法で限定的に明記された事務を行う必要がある場合に
限り保管し続けることができることとされています。
○ ただし、所管法令によって一定期間保存が義務付けられている書類等は、そ
の期間保管する必要があります。
○ 事業者は、従業員等の特定個人情報を保管する際には、情報漏えい等を防止
する観点から安全管理措置を講ずる必要があり、特定個人情報等を取り扱う
-66-
機器、電子媒体又は書類等は、適正に管理・保管する必要があります。
【電子媒体又は書類等の保管方法】
・ 施錠できるキャビネット、書庫、机等に保管
【機器等の保管方法】
・ セキュリティワイヤー等による固定
・ 施錠できるキャビネット等に保管
※ 特定個人情報を利用する事務を行う必要がなくなった場合(保存義務がある書類
等は保存期間を経過した場合)には、速やかに個人番号を廃棄又は削除する必要が
あるため、廃棄することを念頭に保管書類等の整理をしておくとよいでしょう。
○ 特定個人情報等が記録された電子媒体又は書類等を管理区域又は取扱区域の
外へ持ち出す場合には、紛失・盗難等に注意が必要となります。
【中小規模事業者における手法の例示】電子媒体等を持ち出す場合の漏えい等の防止
・ パスワードの設定
・ 封筒に封入し鞄に入れて搬送する等
※ 置き忘れ等に注意しましょう。
【参考】ガイドライン Q&A
6:収集・保管制限 Q6-1~Q6-11
(4)個人番号の廃棄
ポイント
☞ 事業者は、特定個人情報を利用する事務を行う必要がなくなった場合で、
所管法令において定められている保存期間を経過した場合には、個人番号
をできるだけ速やかに廃棄又は削除する必要があります。
○ 特定個人情報は、番号法で限定的に明記された事務を行う必要がある場合に
限り保管し続けることができることとされており、その事務の必要がなくな
った場合(保存義務がある場合は保存期間経過後)は、できるだけ速やかに
個人番号を削除又は書類等を廃棄しなければなりません。
○ ただし、個人番号部分を復元できない程度にマスキング又は削除した上で保
管を継続することは認められています。
○ 個人番号及び特定個人情報ファイル等を削除した場合、又は電子媒体等を廃
-67-
棄した場合には、削除又は廃棄した記録を保存する必要があります。
○ 削除又は廃棄の作業を委託する場合には、委託先が確実に削除又は廃棄した
ことについて、証明書等により確認する必要があります。
【中小規模事業者における手法の例示】個人番号の削除、機器及び電子媒体等の廃棄
・ 特定個人情報を削除・廃棄したことを、責任ある立場の者が確認する。
【参考】ガイドライン Q&A
15:物理的安全管理措置 Q15-2~Q15-3
-68-
Ⅲ-4
委託の留意点
ポイント
☞ 委託者(事業者)は、委託先において、番号法に基づき委託者自らが果たす
べき安全管理措置と同等の措置が講じられるよう必要かつ適切な監督を行
わなければならないこととされています。
☞ 委託先が再委託する場合は、最初の委託者の許諾を得た場合に限り、再委託
することが認められています(再々委託以降も同様)
。
☞ 事業者が顧問税理士に対し個人番号関係事務を委託している場合は、顧問
先が税理士を監督しなければならないことに留意が必要です。
☞ 委託契約終了後における特定個人情報等の取扱いについても確認しておく
とよいでしょう。
○ 事業者は、個人番号関係事務を委託する場合、委託先において、安全管理措置
等が講じられるよう必要かつ適切な監督を行う必要があります。
【必要かつ適切な監督】
○ 必要かつ適切な監督には、以下のような内容が含まれます。
① 委託先の適切な選定
② 委託先に安全管理措置を遵守させるために必要な契約の締結
③ 委託先における特定個人情報の取扱状況の把握
○ 事業者は、委託先の設備、技術水準、従業者に対する監督・教育の状況、その
他委託先の経営環境等をあらかじめ確認しなければなりません。
○ 契約内容として、秘密保持義務、事業所内からの特定個人情報の持出しの禁
止、特定個人情報の目的外利用の禁止、再委託における条件、漏えい事案等が
発生した場合の委託先の責任、委託契約終了後の特定個人情報の返却又は廃
棄、従業者に対する監督・教育、契約内容の遵守状況について報告を求める規
定等を盛り込む必要があります。
また、上記契約内容のほか、特定個人情報を取り扱う従業者の明確化、委
託者が委託先に対して実地の調査を行うことができる規定等を盛り込むこと
が望ましいでしょう。
○ 既に契約を締結している場合には、契約内容を見直すか覚書等を締結するこ
とが望ましいでしょう。
○ 事業者は、委託先の再委託、再々委託を認めた場合には、委託先だけではなく、
-69-
再委託先・再々委託先に対しても監督義務を負うこととなります。
○ 事業者は、事業所内の個人番号を取り扱う手続書類の作成等を顧問税理士等
に委託する場合は、顧問契約の見直しも必要となり、併せて顧問税理士等へ
の監督義務が課されます。
○ 委託契約終了後の特定個人情報等の取扱いについては、契約内容に盛り込む
こととされていますが、返却するのか廃棄するのか、あらかじめ確認してお
くとよいでしょう。
○ また、委託先(再委託先・再々委託先についても同様)が特定個人情報の返
却や廃棄等を実施したことを確認する手段としては、委託先が記録している
特定個人情報の管理簿や業務日誌等を確認したり、外部の廃棄システム・サ
ービス等による廃棄証明書等を確認したりすることが考えられます。
○ 委託先(再委託先・再々委託先についても同様)が特定個人情報を廃棄等し
たことが確認できない場合には、委託先にきちんと説明を求め、それでも応
じられない場合には、個人情報保護委員会に相談しましょう。
【参考】ガイドライン Q&A
3:委託の取扱い Q3-1~Q3-15
-70-
Ⅳ
資
別冊:
別冊:
料
税理士のためのマイナンバー様式集
税理士のためのマイナンバー相談事例
≪参考情報≫
内閣官房ホームページ
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/index.html
個人情報保護委員会ホームページ
http://www.ppc.go.jp/
国税庁ホームページ(社会保障・税番号制度<マイナンバー>について)
http://www.nta.go.jp/mynumberinfo/index.htm
国税の番号に関する情報
http://www.nta.go.jp/mynumberinfo/jyoho.htm
番号制度の概要・よくある質問
http://www.nta.go.jp/mynumberinfo/jyoho.htm#gaiyo
国税関係書類への番号記載
http://www.nta.go.jp/mynumberinfo/jyoho.htm#kisai
国税関係手続の本人確認方法
http://www.nta.go.jp/mynumberinfo/jyoho.htm#kakunin
関係法令・その他
http://www.nta.go.jp/mynumberinfo/jyoho.htm#kankei
法人番号について
http://www.nta.go.jp/mynumberinfo/houjinbangou/index.htm
総務省ホームページ
http://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/01.html
厚生労働省ホームページ(マイナンバー制度(社会保障分野))
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000062603.html
日税連ホームページ(マイナンバー)
http://www.nichizeiren.or.jp/taxaccount/mynumber/
- 71 -
≪罰則規定≫
同種法律における類似規定の罰則
行為
行政機関個
人情報保護
個人情報保
法・独立行政
護法
法人等個人
情報保護法
法定刑
個人番号利用事務等に
2 年以下の
4 年以下の懲役 or
従事する者が、正当な
懲役 or
1
200 万以下の罰金 or
理由なく、特定個人情
100 万以下
併科
報ファイルを提供
の罰金
上記の者が、不正な利
2 益を図る目的で、個人
番号を提供又は盗用
情報提供ネットワークシ
ステムの事務に従事す
3 る者が、情報提供ネット
ワークシステムに関する
秘密の漏えい又は盗用
住民基本台
帳法
-
-
3 年以下の懲役 or
150 万以下の罰金 or
併科
1 年以下の
懲役 or
50 万以下
の罰金
-
2 年以下の
懲役 or
100 万以下
の罰金
同上
-
-
同上
人を欺き、人に暴行を加
え、人を脅迫し、又は、
3 年以下の懲役 or
4 財物の窃取、施設への
150 万以下の罰金
侵入等により個人番号
を取得
-
-
-
1 年以下の
懲役 or
50 万以下
の罰金
-
-
国の機関の職員等が、
職権を濫用して特定個
5
人情報が記録された文
書等を収集
2 年以下の懲役 or
100 万以下の罰金
委員会から命令を受け
6 た者が、委員会の命令
に違反
2 年以下の懲役 or
50 万以下の罰金
-
6 月以下の 1 年以下の
懲役 or
懲役 or
30 万以下 50 万以下
の罰金
の罰金
委員会による検査等に
際し、虚偽の報告、虚偽 1 年以下の懲役 or
7
の資料提出をする、検 50 万以下の罰金
査拒否等
-
30 万以下
の罰金
偽りその他不正の手段
6 月以下の懲役 or
8 により個人番号カードを
50 万以下の罰金
取得
-
その他
(割賦販売法・ク
レジット番号)
3 年以下の懲役
or
50 万以下の罰
金
30 万以下
の罰金
30 万以下
の罰金
出典:内閣官房社会保障改革担当室作成資料(一部編集)
- 72 -
日本税理士会連合会
規制改革対策特別委員会
担当副会長
筒
井
伸
司( 四 国 会 )
専 務 理 事
杉
田
宗
久( 近 畿 会 )
委
長
北
條
副 委 員 長
宮
本
雄
司( 東 京 会 )
〃
播
本
治
男( 近 畿 会 )
〃
穀
田
有
一( 東 北 会 )
一
色
義
信(東京地方会)
〃
黒
田
〃
佐
藤
〃
木
村
〃
平
〃
田
〃
員
委
員
諭(東京地方会)
誠( 千 葉 県 会 )
利
幸(関東信越会)
聡( 北 海 道 会 )
昌
彦( 名 古 屋 会 )
中
克
明( 東 海 会 )
桶
屋
泰
三( 北 陸 会 )
〃
川
本
泰
清( 中 国 会 )
〃
大
内
智
隆( 四 国 会 )
〃
木
村
好
晴(九州北部会)
〃
渡
邊
哲
朗( 南 九 州 会 )
〃
儀
間
常
貞( 沖 縄 会 )
税理士のためのマイナンバー対応ガイドブック~特定個人情報の適正な取扱いに向けて~
平成 27 年4月
平成 28 年8月
初版発行(平成 27 年9月 15 日一部改訂)
第2版(PDF 版)発行
編集:日本税理士会連合会 規制改革対策特別委員会
発行:日本税理士会連合会
〒141-0032 東京都品川区大崎1-11-8
日本税理士会館8階
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