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REACH規則の現状

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REACH規則の現状
調調査報告
査 報 告
ウィーン
REACH 規則の現状(その 2)
9 月 5~6 日にスペイン・バルセロナ市内で開催された European Chemicals Policy での
会議内容ついて報告する。主催は Informa Life Sciences 社である。
REACH 規則は、
2007 年 6 月に発効された欧州における化学物質の総合的な登録、
評価、
認可、制限の制度のことであり、その目的には“労働者および一般大衆の健康と安全の改
善、環境保護、競争的・革新的な化学産業の維持”などがある。
第 2 回目の締め切りを 2013 年 5 月末に迎えており、2010 年 11 月末の第 1 回目登録締切
り以降の状況や、第 2 回締め切りに向けての課題などの報告があった。
今回は「高懸念物質の管理 認可申請と登録」の項について取り上げる。
2. 認可申請に対する技術的アドバイス
2.1 申請作業の概要
(1)高懸念物質とは
高懸念物質(Substances of very high concern:以下、SVHCs)の定義については、
REACH 規則第 57 条(a)から(f)項、および第 59 条に記載されている。
SVHCs には、以下の物質が含まれる。
・発がん性、変異原性、または生殖毒性の化学物質(Carcinogenic, Mutagenic or toxic to
Reproduction:以下、CMR)で、CLP(Classification,Labeling and Packaging)規則に
おける有害性カテゴリー1a または 1b に分類されている物質
・REACH 規則附属書 XIII に規定された基準による、難分解性、生物蓄積性および毒性を
有する物質(PBT:Persistent, Bioaccumulative and Toxic)、または極めて難分解性で
高い生物蓄積性を有する物質(vPvB:very Persistent and very Bioaccumulative)
・内分泌かく乱性を持つ物質のような、人の健康または環境への深刻な影響があり得そう
な科学的証拠があり、上記の物質と同等のレベルの懸念を生じ、REACH 規則第 58 条に
定められる手続に従ってケース・バイ・ケースで特定される物質
・SVHCs の候補物質リストは、ECHA の以下のサイトで確認できる。
(http://echa.europa.eu/web/guest/candidate-list-table)
(2)ECHA からの Key Message
最初の問題は、申請を検討している人がどうやって認可の申請をするのかではなく、
附属書XIV(認可対象物質リスト)にある物質がもはやEU内で使用できなくなった場合ま
たは長期間使用することで、「自分のビジネスに何が起きるのか。」を考えることにあ
る。認可は申請の「ビジネスの核」に関係している。そこで評価に対する正しい範囲を
見つけるために、ビジネスの外側(商業的、経済的そして環境的)を考える。なによりも、
認可に対して有利なケースは、正直で明確な申請書である。
(3)認可に対する申請
図 2-1 に SVHCs の特定から認可の決定までの流れを示す。
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調査報告 ウィーン
申請者は以下の者である。(REACH規則第62条第2項)
・製造業者、輸入業者、川下ユーザー、唯一の代理人、またはこれらの組合せ。
ステップ 1.1: SVHCs の特定
附属書 XV
ステップ 1.2:認可への優先物質
の選択
優先順位付け
ステップ 2: 認可の付与
(または非付与)
RAC: リスクアセスメント専門委員会
SEAC: 社会経済分析専門委員会
一式文書
公 開
推 薦
協 議
候 補
(案)
申 請
物 質
リスト
加盟国
委員会
加盟国
委員会
公 開
協 議
公 開 協 議
推 薦
欧 州
委員会
附属書 XIV
欧 州
(認可物質
委員会
リスト)
欧 州
認可の決定
委員会
(官報発行:OJ)
約 5 ヵ月
出典:European Chemicals Policy2012 講演資料、Matti Vainio 氏、ECHA
約 6 + 12 ヵ月
最長 2 年
出典:European Chemicals Policy2012 講演資料、Matti Vainio 氏、ECHA
図 2-1 SVHCs の特定から認可決定までの流れ
認可の申請は以下に対して提出することができる。(REACH規則第62条第3項)
・1つまたはいくつかの使用に対して
・1つまたはいくつかの物質の1つのグループに対して
申請者の役割には以下のようなものがある。
・よく準備された書類、明確で分かりやすい申請書の準備
・意見書作成期間中の質問への回答
・意見書草案への解説
利害関係者の役割には以下のようなものがある。
・協議期間中の代替案に価値の付与
・意見書作成期間中の質問への回答
ECHA(欧州化学物質庁)は枠組みの提供を行い、分かりやすく有意義で効率的な公開協
議議プロセスの実行を以下に事項に基づき実施する。
・用途と機能に関する情報
・大衆への曝露シナリオ
・代替案の分析の公表版
・申請者の名前
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調査報告 ウィーン
2.2 申請書の準備
(1)重要課題
認可の申請のために、まず考えなければならない重要事項について、ECHAより以下
のような説明があった。
•付属書XIVに掲載されている認可対象物質の影響を特定すること。
•認可の影響が利益よりも大きいか小さいかどうかを評価すること。
•認可の申請をすべきかどうかを決定すること。
•その物質を製造する、輸入する、プロセスで使用するのかどうか?
また、製造した製品中または使用している製品中に存在するのかどうか?
⇒
その物質がもはやEU内で使用できないとき、自身のビジネスに対しどのような影
響があるのか。
その物質がもはやEU内で使用できないとき、対処方法の選択肢として以下の事項が考
えられる。
・物質の変更
・技術またはプロセスの適応、新しいモノを開発
・追加入力の利用
・製品の変更
・製品の輸入
・製品仕様の変更
・製造と使用の中止
また、影響としては以下の事項が考えられる。
・技術的性能
・製品の性能
・効率性、原材料の要求
・品質、見栄え
・コスト、収益、利益
・商業的実績、投資、雇用
・競争力
・環境と健康へのリスク
そして、「商業的、技術的、戦略的、環境だけでなく健康と安全の順守」は、“ビジ
ネスの核”となる重要課題である。
(2)利益(Benefit)>リスクにおける申請ケース
人または集団の利益がリスクよりも大きければ、認可の申請を行うケースとなる。
認可の利点としては、以下のとおり。
・利益(profit)の増加そして/または減少するコストの回避
・経済的成果、雇用、投資面への減少の回避
・環境と健康への影響(例:エネルギー利用、輸送)の回避
反対に、認可のリスクとしては、以下のとおり。
・物質の使用継続による環境と健康への影響
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調査報告 ウィーン
・但し、リスクが十分に制御できれば、ゼロにできる可能性がある
⇒代替案のコストがより高いまたは現在のリスクのコストがより低い時、申請は妥当。
⇒上記の差異がより大きい(明確かつ単純にその可能性が高い)時、申請は妥当。
(3)代替案の検討
代替案は、物質の使用継続による環境と健康へのリスクよりも低コストかもしれない
ので、その選択肢と影響を分析するということは、認可への申請が正当であるかどうか
を評価することになる。
⇒代替案のいずれかの適応は、継続的な使用よりも優れている。
⇒認可が付与される可能性が低いのであれば、申請書を提出することは殆ど価値が無
い。(結果として、申請費用を貯めることができる。)
実行可能な代替案が見つかる可能性があれば、
⇒ 分析は認可よりも安くまたは優れた選択肢を明らかにできる。
(結果として、申請費用を貯めることができる。)
代替案は、現在のリスクよりもコストがかかることが判明すれば、
⇒認可の申請を行うケースとなる。
⇒認可の申請に必要な分析が行われた。
代替案の“ひな型”を分析するためには、以下のような資料等を準備する必要がある。
①可能な代替案のリスト化
②可能な代替案を特定するための作業(努力)の申告
③研究と開発
④データ収集
⑤相談、協議
⑥代替案1:物質IDと特性、技術の説明
・技術的実行可能性
・経済的実行可能性
・可能性、有効性
・全体的リスクの減少
また、社会経済的分析のひな型として、以下のような資料等が考えられる。
① “利用への適応”シナリオの定義づけ
② “未使用”シナリオの定義付け
③ 人体の健康と環境的影響
④ 経済的影響
⑤ 社会的影響
⑥ より広い経済的影響
⑦ 影響の比較
⑧ 分配の影響
⑨ 不確実性の分析
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調査報告 ウィーン
もし、全ての分析が適切に行われていれば、リスクアセスメント専門委員会(以下、RAC)
と社会経済分析専門委員会(以下、SEAC)は評価に同意する可能性が高くなる。
しかしならが、社会経済分析(SEA)の正確な範囲を知ることが必要となるが、
ここでいう“社会”とは自身のビジネスとは全く異なるものである。
・物質はビジネスに重要かもしれないが、その供給者、顧客または競合他社は、それ
無しで簡単に行うかもしれない。
・申請者は、いくつかの実行可能な代替案があることを考えないかもしれないが、第
三者は(公開協議を通じて)何かを特定するかもしれない。
・申請者はその場の環境と健康へのリスク制御をするかもしれないが、その物質は川
下ユーザーと顧客に対するリスクを生成するかもしれない。
⇒目先の状況(商業的、技術的、環境的)よりも、幅広く調べる必要がある。
⇒その結果は、川下ユーザーに対するコスト高など同様のケースを助けることになる
かもしれない。
(4)申請の決定に影響する他の要因
認可の申請を決定するのに影響する他の要因としては、以下の事項が考えられる。
・申請書の編集には、さらに多くのモノと他の情報を必要とする。
・申請費用は安く無く、意見書だけは保証してくれるが、認可までの保証はない。
・一時的な認可だけであれば付与は可能であるが、申請費用が何度も発生し、認可の
正当化を証明することは時間の経過とともに難しくなる。
・競合他社、供給者と市場トレンドの影響。
(もし他の全員が代用していれば、取り残されることになるだろうか?)
2.3 現時点の状況
(1)最近の変化
①言語制度
・申請書は、一つのEUの公式言語で提出されなければならない。
・ECHAが英語よりも他の言語の支援を行うことは、極めて限られている。
②認可のための申請プロセスからの情報の公開
・使用への幅広い情報の提供。
・代替案の協議期間中に受領するコメント。
・委員会意見の公的要素。
図2-2に、申請期間中の公表の流れを示す。
(2)代替案の可能性についての8週間の協議
①RACとSEACの意見と委員会の決定に対する意義の必要性。
②使用における幅広い情報の視点から、申請書が全ての関連情報を含んでいることが
基本となる。
③協議期間中:利害関係者の情報が価値を付加する。
・代替物質または技術の説明
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調査報告 ウィーン
・代替案の技術的と経済的実行可能性
・代替案の利用可能性
・リスク全体を減少するための代替案の能力評価。
④ECHA委員会は、さらなる情報が必要となるかもしれない。
ECHA のウェブサイトで
使用上の情報の公開
ECHA のウェブサイトで
最終意見の公開
ECHA のウェブサイトで
コメントの公開
2 ヵ月
提 出
最終意見
意見(案)
決 定
公 開 協 議
2~3 ヵ月
事前届出
情報
セッション
10 ヵ月
2~3 ヵ月
受領書の日付
ECHA
使用上の
情報の進展
RAC/SEAC 意見の進展
出典:European Chemicals Policy2012 講演資料、Matti Vainio 氏、ECHA
図 2-2 申請期間中の公表の流れ
(3)利用への幅広い情報
①使用と機能についての簡単な表現
・使用の名前
・使用の状況
・使用の説明
②追加情報 - 公開情報
・曝露シナリオ
・代替案の分析
・代替計画の概要
・社会経済的分析の概要
③申請者の名前
これらの評価の公開情報を意義あるものにするためには、申請者の協力が必要である。
図2-3に、ECHAの協議期間中の公表の関係図を示す。申請書の情報には、申請者の企
業秘密情報とそうでない情報およびそれが不明確な情報が含まれるので、ECHAが調
整し、明らかに企業秘密情報に該当しない内容だけが公表されることになる。
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調査報告 ウィーン
申
公
請
適用される使用
表
ECHA
名 前
使用と機能についての
簡単な説明
状 況
説 明
曝露シナリオ
曝露シナリオ
代替案の分析
代替案の分析
代替の計画
代替の計画
社会経済的分析
社会経済的分析
企業秘密
企業秘密情報
不明確
情報無し
出典:European Chemicals Policy2012 講演資料、Matti Vainio 氏、ECHA
図 2-3 ECHA の協議期間中の公表
(4)RACとSEACからの意見の公表要素
SVHCs 認可付与には、REACH 規則第 60 条に記載されているように、2 つの経路が
存在している(図 2-4 参照)。1 つは附属書 I の 6.4 節に示された、適切に管理された経路
があり、もう 1 つは社会経済的な経路である。この社会経済的な経路、すなわち社会経
済的利益が、その物質の使用によって生じる人の健康または環境へのリスクよりも大き
いことが示され、かつ適当な代替物質または技術がない場合にのみ、認可が与えられる
ことになる。附属書 I の 6.4 節に示された適切に管理された経路は、PBTs、vPvBs、お
よび閾値を決定できない物質に対しては、適用されない。また、RAC によってリスクが
発見された場合は、SEAC による経路を採用することになる。
申 請:
閾値の有無
適切に管理された経路
リスク
適切に管理されて
いる
NO
社会経済的な経路
YES
代替案
NO
YES
社会経済的
分析(利益>リスク)
YES
NO
認可の付与
認可が与えられない
出典:European Chemicals Policy2012 講演資料、H.Waeterschoot 氏、Eurometaux
図2-4 認可付与への2つの経路
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調査報告 ウィーン
① RACとSEACからの意見
② 意見の正当性
③ 追加のリスク管理の手法/監視の準備
④ 審査期間の推奨時間
⑤ 以下のような詳細事項
•物質名称とID、使用と機能の簡単な説明
•報告担当者の名前
•さまざまな日付
•申請者の名前
2.4 まとめ
①認可の申請をするかしないかは、ビジネスの核に関係する決定である。
②分析と準備の開始は早くすること。
③サプライチェーンを含めること。
④次のことに精通すること。
・ガイダンス文書
・申請ツールと利用手引書
・様式(そして、特にIUCLID)とひな型
【IUCLID:国際統一データベースセット】経済協力開発機構 (OECD) と共通化されたテンプレー
トを持つ化学物質レポートの生成用ツール。化学物質登録文書などの作成・提出、またCLPの届
出のためにも使用する。
⑤使用されることを指向すること。
⑥はじめにHCHAに知らせること。
・必要であれば、要求事項は<事前届出情報セッション>へ
⑦ECHAの他の活動を参照(例:セミナーおよびワークショップなど)。
(参考資料)
・European Chemicals Policy2012 講演資料、Matti Vainio 氏、ECHA
・European Chemicals Policy2012 講演資料、H.Waeterschoot 氏、Eurometaux
・European Chemicals Policy2012 講演資料、Dr.B.D.Podd 氏、Kimberly-Clark Europe
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