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その4 文学作品に描かれた伊佐市地域の西南戦争

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その4 文学作品に描かれた伊佐市地域の西南戦争
映画「半次郎」先駆け上映会 in 伊佐市 特別企画
平成 22 年 7 月
伊佐市地域における映画「半次郎」の時代
その4 文学作品に描かれた伊佐市地域の西南戦争
昨年、伊佐市でロケが行われた映画「半次郎」(伊佐市出身の俳優・榎木孝明氏企画・主演)の先
行上映会が、平成22年9月11日(土)・12日(日)の両日、伊佐市文化会館で開催されます。
その関連企画として、ここでは映画「半次郎」をもっと楽しむために、作品の主な時代背景となる西
南戦争について、特に文学作品に描かれた伊佐市地域の西南戦争をご紹介します。
文責:伊佐市教育委員会 文化スポーツ課(伊佐市文化会館:0995-22-6320)
○ :海音寺潮五郎が書いた西南戦争作品
伊佐市大口出身の歴史作家・海音寺潮五郎
氏は、子どものころから西南戦争や西郷隆盛の
話を聞いて育ったこともあり、『唐薯武士』(昭和
14 年 9 月、オール読物)、『柚木親子』(昭和 15
年 1 月、サンデー毎日)、『キンキラキン物語』(昭
和 27 年、富士)など多くの西南戦争を舞台とした
作品を執筆してます。
特に『南風薩摩歌』と『千石角力』は西南戦争
中の大口を舞台にした作品です。
南風薩摩歌 初出:『日の出』(昭和 12 年 2 月)
西南戦争の最中、人吉の料理屋で働くお鳶の
もとに、その美貌を聞きつけて西郷軍の逸見十
郎太がやって来る。酒をくみ交わそうとする逸見
だが、お鳶は逸見からの酌を頑なに受けない。
その後、お鳶は出陣した逸見を追って大口まで
やってくるが、政府軍の猛攻を受け、逸見率いる
西郷軍は退却するところであった・・・。
「菱刈市山の松並木で、退却する逸見が男泣
きした」というエピソードを下敷きに執筆された恋
物語。なお、“逸見が泣いた”とされる場所には現
在「涙乃松跡記念碑」が建立されています。
千石角力 初出:『サンデー毎日』(昭和 15 年)
大口の子ども・留吉は、西郷軍熊本隊の兵士で
相撲が強い宮部幾馬(通称こえブッチョさん)と友
達になる。明治の中ごろ、大人になった留吉は熊
本の相撲会場でこえブッチョさんそっくりの力士
に出会うが、その力士は別人だと言い張る・・・。
「武士の誇り」と「時代の移り変わり」を描いた短編
小説。
○ :司馬遼太郎『肥薩のみち~街道をゆく~』
〔1978年11月、朝日新聞社〕
1972 年、作家・
司馬遼太郎氏は
『街道をゆく』シリー
ズ・「肥薩のみち」の
取材で、人吉から
久七峠を越え大口
に至るルートを訪れ
ました。
作中では、大口
の地名の由来につ
いての考察や、隠
れ念仏・新納忠元・西南戦争について、曽木の
滝を訪れた際の感想等が記されています。
《以下作中より引用》
「そこはね、海音寺(潮五郎)先生のお屋敷で
す」と、下の道路を通っていた中年婦人が立ち止
まって教えてくれた。〔中略〕
その遠祖は「肥後の加藤」にそなえ、江戸期は
幕府の隠密の潜入を警戒し、明治十年の乱には
大口を守りつつ、ついには官軍第三旅団の大口
突破によって、薩摩は大薩摩であることを失い、
ただの鹿児島県になってしまうのである。
○ :石牟礼道子『西南の役伝説』
〔1980 年 9 月、朝日新聞社〕
はもうすっぱい、火の玉も出らんごとなり申した。
熊本在住の作
家・石 牟礼 道子氏
が、熊本・鹿児島に
残る西南戦争(西
南の役)にまつわる
伝承を 収録した 作
品です。
特に、作中の第2
章「有郷きく女」は、
昭和40年代後半に
石牟礼氏が、当時
の大口市山野小木原在住で106歳の有郷きくか
ら聞き取りを行った、西南戦争の体験談が収録さ
れています。西南戦争当時、きくは17歳でした。
○ :内田康夫『黄金の石橋』
〔平成 11 年6月、実業之日本社〕
《以下作中より引用・きくの語り》
(戦火を逃れ山の避難先の)小屋にかぶせた木
の枝のあい(間)から見とい申したや、どろどろっ
と大砲が鳴り申す。鳴ったと思ったや煙が立つ。
煙のあい(間)に、高熊山の方から薩摩の兵隊
の衆が家蟻がとどめいたごとくして下ってゆくの
がみえて、(山の避難先から家に)朝早くに味噌
などを取りに下れば、畠の区切りの茶の木の陰に、
見るもぐらしか(かあいそうに)よか稚児さんが、ま
だきんたまに毛も生えんような年の頃の顔をして、
たった今死んだばかりに、倒れておいやるではご
わはんか。
それをも振り向きざまに手を合わせ、おとろしゅ
うして、(避難先の)上の小屋にかけのぼるのが
やっとの事じゃ。
〔中略〕
いくさが終わったあとで、ここ(小木原)の近くに
戦死墓を建てやったども、夜な夜な火の玉が出
てなあ、その火の玉をみた者は、すぐにもう寺に
かけ込んで、
「和尚さん、和尚さん、火の玉が出たど、お経を
あげて呉いやんせ」と言えば、和尚さんは、
「何時までも成仏しやらんな」というて、いっき(す
ぐ)お経をあげて呉いやったもんじゃが、近頃で
作家・内田康夫
氏の名探偵・浅見
光彦シリーズ『黄
金の石橋』におい
て、物語の主な舞
台として伊佐市地
域が登場します。
これは、本市出
身の俳優・榎木孝
明氏がテレビドラ
マで永年にわたり
浅見光彦役を演じ、そのつながりで伊佐市地
域を知った内田康夫氏が、榎木氏本人が登場
する浅見光彦シリーズを執筆されたものです。
(現在、榎木氏は浅見光彦役を卒業。)
物語のあらすじは、軽井沢のセンセ(内田
康夫氏)から、鹿児島県菱刈に在住する俳優・
榎木孝明氏の母親を護衛するよう依頼された
名探偵・浅見光彦が、伊佐市地域をはじめと
する鹿児島県や熊本県各地を訪れ、西南戦争
時に西郷軍が隠した財宝の在り処を示す「金
の石橋」という暗号の謎に挑むというもので
す。はたしてその「財宝」とは・・・。
物語の背景には西南戦争と鹿児島・熊本両
県の石橋文化が登場するほか、伊佐市地域の
風景も数多く登場します。
《以下作中より会話文のみ引用(途中文略)》
「あなたは、浅見さん・・・」
「浅見光彦です」
「榎木くに子と申します。いつも息子がお
世話になりまして」
「あの、ちょっとお訊きしますが、息子さ
んとおっしゃいますと?」
「はい、孝明でございます。いつもテレビ
では浅見さんの役をさせていただきまし
て、本当にありがとうございます」
「えっ・・・・」
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