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技術者の基本を培う 化学実験

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技術者の基本を培う 化学実験
技術者の基本を培う
化学実験
Ⅰ.自己紹介・技術者の仕事
その中で考えたこと=認識限界の拡大
Ⅱ.実験の広がり・展開
Ⅲ.創造性と倫理
S41年化学工学卒 大塚好恭
Ⅰ.自己紹介・技術者の仕事
その中で考えたこと
1966年(S41)住友化学入社 新居浜製造所配属 ∼1988年
(肥料・無機・アンモニア誘導化学品、アクリロニトリル、MMA)
○組合青年部での活動・・・多くの職場に友人が出来た
1.硫酸 硫化鉱流動焙焼工程
電気化学18年 Dr.高木香住さん
2.硝酸アンモニウム工場 ザンビア建設Pj
○上司への自分の力のアピール 英語・ドイツ語・ロシア語
ケニア
C+2H2O=2H2+CO 2,
N2+3H2=2NH3,
NH3+HNO3=NH4NO3
NH3+2O2=HNO3+H2O
3.スラリー爆薬の開発
○その分野の何かでトップになる。 ダイナマイト並爆速・特許
学会発表・ 海外ライセンス・インドネシア・ニューギニア
4.アニリン触媒開発とプロセス開発
1972年∼
○拡散理論での改良限界挑戦 多孔質触媒、 fiber reinforced cata.
何時でもゼロベースから理論構築できる技術者
5. アニリン工場設計・建設
Microsoft
PowerPoint プレゼンテーション
○理論に忠実に・・・・で窮地・・・・解決・・・・自信
○リスクの選択肢の数を増やす、“やっておけば良かった”の後悔
6.α半水石膏床材開発
1977年∼
○ その業界のカルチャーを知る。 現場的判断の理論構築
7.エレクトロルミネッセンス事業の開発 1983∼1991年
8.検査分析事業会社の経営
1.会社サイズ
2.従業員数
3.事業内容
4.事業所
1991年∼2009年
08年3月期 売上高 157億円
経常利益 19.9億円
当期利益12.6億円
1, 300名(社員922名 その他契約社員など)
環境15%、電子通信17%、医薬34%、材料・安全性・分析装置34%
国内 8ヶ所 、子会社4( シンガポール、 上海、 ベルギー
国内・土壌汚染修復建設子会社)
5.産業規模
150
国内3500億円
(潜在需要7000億円)
億円
148
133
120
110
104
105
01年
(30期)
02年
98
100
88
81
84
Microsoft
PowerPoint プレゼンテーション
92
50
97年
98年
99年
00年
03年
04年
05年
06年
(35期)
Ⅱ.化学実験の広がりと応用
1. 実験の準備のための考察
2. 化学工業で行なう化学実験
3. リスク;化学実験の周辺で起こる問題
;ラボ化学実験で取扱い困難な試験
4.広い意味での化学実験例
5.試験法とその評価法
セレンディピティ
6.実験を成果に結びつける
7.実験についての私の考え
技術者を動かす確信
1 .実験の準備のための考察
1.本当に実験が必要か 文献調査・相談
2.実証したいこと確認 予測・実験計画・装置
3.本質的な危険性の評価
暴走・中間体・容器選択・・・除熱、粘度上昇、拡販動力
4.実験の評価法
実験の範囲設定・統計的評価法設定
5.基礎データ・物性データ、設計条件範囲外
で生ずる問題点の予測・再実験
2.化学工業で行なう化学実験
•
•
•
•
•
コンピュータケム
実験結果や反応性予測
分析系内実験
フローインジェクション法など
ラボ(ビ‐カ)スケール 反応機構・問題点検討
ベンチスケール 少量サンプル取得など micro-plant
コンビケム
反応組成を少しずつ変えて新規物質
combinatorial chemistry
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PowerPoint プレゼンテーション
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を合成、性能属性を解析
Microsoft
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• パイロット
工業的な問題点確認、単位操作試験
• 工場実験
既存工場を利用した改良品試製造
• 運転条件最適化実験 操業データの多変量解析
運転条件の最適化
触媒開発試験
水添反応・1段精製プロセスを
持つパイロット試験設備
そのコントロールパネル
3.リスク;化学実験の周辺で
起こる問題
• 化学薬品・・・ 純度レベル、化審法、REACH
化審法 ; 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律
REACH;Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals
• 防災・・・ 中間体と副反応の危険性、保管管理
安全量、爆発性、スケール効果
• Emisson ・・・ 廃棄物、排気、臭気、音、熱
• 化学合成の知的財産保護・・・商業目的との関係
ラボ化学実験で取扱要注意な試験
•
•
•
•
有毒ガスの取り扱いや発生
届け出を要する実験(生物実験など)
規模が制限されている実験(火薬類)
品質の製造安定性を確認する試験
原材料ロット変化・操業の時間的微妙な変化
• 耐久性試験(専用装置が必要)
熱・光・電流・繰り返し応力等による変化
4.広い意味での化学実験例
• 効果的ろ過装置の発明 2次元ろ過装置によ
る焼鉱のペレット化(成型試験)
• 粉体の細密充填粉砕による高強度材の開発
(粒度分布、形状と流動性の関係)
• 鋭感な硝酸アンモニウム再結晶スラリーによ
る高爆速工業用爆薬の開発(無機結晶の
有機化合物による晶癖変化)
• エレクトロルミネッセントパネルの耐久性試験
による劣化反応機構の解明(電気化学反応)
5.試験法とその評価法
試験結果をどのように計測するかで結果の精度が異なる
「不確定性」を含む結果計測であることを認識
• In tact
• In situ
元のまま非破壊で実験結果を評価
元の場所で 反応場に赤外分析計や
XPSなどの検出器を持ち込む。
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• In statu quo その状態のまま サンプリングすると
空気に触れて変質
• In vitro 試験管内など人工環境下で 化学実験
• In vivo 生体内で 医療関係 代謝物試験など
体内試験。Micro dose試験
分析方法の進歩が実験を変える
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研ぎ澄まされた五感で
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•
•
セレンディピティー
Christian Friedrich Schönbein 独・スイス(1799−1868)
1838年、彼は燃料電池の原理を発見した。1939年、彼は同様にオゾンが酸素
から成り立っている事を緩慢な白燐の酸化と水の電気分解の実験中に発見し
た。 これらの実験はシェーンバインがスイスのバーゼルの教授に就任した1928
年より、特有の臭気に気を留めた事をきっかけとして始まった。
オゾンは強力な臭気を放つ。同様の臭気が落雷によっても生じる事をきっかけ
としてオゾンは大気からできると推測した。シェーンバインは彼の実験装置で実
証した。この強い臭気はシェーンバインによってギリシャ語の‘臭う事’を表す
‘ozen’から‘オゾン’と名づけられた。
1845年のある日、彼が家の台所で実験していた(彼の妻からは禁止されてい
た)時に硝酸と硫酸をこぼしてしまった。妻のエプロンでそれを拭き取り、ストー
ブの上につるして乾かしていると、自然に着火し一瞬で消えるように燃え尽きた。
こうしてシェーンバインはニトロ化が内部に酸素を蓄える事実からエプロンの素
材であった綿(セルロース)がニトロセルロースに変化することを偶然に発見した。
そして化合物の可能性を認知した。
それまで500年にわたって戦場を支配していた黒色火薬は、爆発の際に濃い煙
を発生させ、大砲や銃器、そしてそれを扱う砲手をススで汚し、また戦場の視界
を悪くさせた。ニトロセルロースは無煙火薬を可能にし、大砲の推進剤としての
可能性から綿火薬 (guncotton) と命名された。
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6.実験を成果に結びつける(1)
障害の克服
研究成果の事業化
魔の川
技術確立困難
アイデア
技術
潜在顧客
確立
確保
技術開発
競争・淘汰
商品化
安定
①[魔の川]の回避を目指しニーズ開発からスタート
事業化
死の谷階で準備し、必要な分析技術を歩きながら拡充
潜在需要へ結合
②ニーズは分野技術内にある。事業化構想はその段
③[死の谷]はパイロットビジネスで果敢に行う。
④合理化構想も加えながら本格上市
ダ−ウィンの海
競争淘汰
R 研究
技術評価・経営評価力
R;研究者
D;開発者
MOT;マネージ
D
技術開発
商品化事業化
シーズ発見
ニーズ発見
上市顧客合せ
構想創出
シーズ組織化
魔の川
参入障壁準備
パイロットビジネス
死の谷
合理化実施
分野基幹化
デファクトスタンダード化
ダーウィンの海
Alliance 寡占化
安定収益
知識・セレンディピ
ティーを見逃さない
R
D
R
探究心・社会貢献
Market;
市場開発
技術マネージメント
(MOT)、市場試験
市場トレンド探査
ビジネスモデル構築
市場戦略
MOT
D、MOT
MOT
知財戦略
MOT
Market
MOT
MOT、Market
MOT
商品寿命
Market
実験を成果に結びつける(2)
• 製造は多くのユニットプロセスの結合から出
来ている。 顧客から始まるvalue chain
顧客要望
市場戦略
製造条件変更 実験計画
製品仕様企画
小スケール実験
確認のための大型試験計画立案・実施
製造・顧客への試作品説明
製造単位操作群からの選択
可能な限りの問題点解明
生産開始検討 安全・品質確認
製造・販売開始
市場競争に勝つために
出来るだけ早く、低emissionで、
安価に、大量に、高い利益で
7.実験についての私の考え
• チャレンジの場
次から次へと湧き上る興味を形に結びつける
手段。
• 事業開発・経営への応用・ビジネス競争
構想 計画立案 パイロットビジネス 実行
ビジネスモデル作り
フロントに立つことの重要さ
最前線に立つと視野角が広がり、全体が見
渡せ、今まで気づかなかった沢山の関連情報
が得られる。リスクも認識できる。構想力。
Ⅲ.創造性と倫理 私の経営論から
●有限の認識範囲内で生じた事実
を主観的な解釈を加えることで「真
実」が作り出される。
●しかし真実は異なった認識範囲
をもった人により複数存在すること
になる。
●しかしこれらの多数の真実すべ
てを合理的に説明できるとそれら
は真理に近づくことになる。
●少数の真実で決断して実行する
とハイリスクとなる。
真理
真実n
真実m
n番目の事実
主観
認識の限界線
m番目の事実
1.勉強と経験は認識限界を広げる・・・・・・実験を行う意味もここにある
2.複数の真実に基づいて粘り強く、なぜ・なぜで真理に接近。
3.真理(原理)を導き出せない時には、複数の事実を説明できる仮説を探す発想の転換。
4.創造性をサポートする考える技術 。 ポートフォーリオ、アナロジー、KJ法など
「いつも考え」、「じっくり考え」、「横道に逸れることのできる余裕時間」を大切に
企業人・社会人の負うべき責任は
• 法的責任(コンプライアンス) 公徳心・モラル
公序良俗
• 専門家責任(その業に任ずる専門者として、
非専門者の理解を超える部分も善導する)
• 信託責任(委託者・購入者の期待に応える範囲を
明示し、それ以外は無限の受託責任を負う)
• 経済的責任(利益を追求し、それを株主・社員・取引
先・社会に還元する責任)
8.技術者を動かす確信
同じ現象の繰り返しが起こる時には、
その基本や底流には「理論」や「文化」が必
ず存在する。
好奇心の原動力
科学現象で繰り返しが起こる時には、
法則性が存在しそれを数式で表現できる。
1.範囲を限定して近似式を考える
2.実際の現象を説明できるように
定数、式の構成を変更する
Helley君、科学の飛躍的進歩が過ちに由来するこ
とが多かったのは私にもわかる。
しかし、僕が君を雇ったという
過ちからは、何一つ
出てこなかったよ。
Ind.Rea.,16(12),42(Dec.1974)より
過ちを成功に導くのは
知識と考える力
終わり
Ⅲ.最近の産業経営論から
• 製品組成、加工、プロセス条件の中に「暗黙
知」を忍び込ませる スキル、特許、K.H.
• バリューチェーン経営の中で企業の価値観と
将来開発の方向性を明確にする
• プロセスユニット(部品やパーツも可)の中で
自社の不得意分野はアウトソーシングや
産学連携開発、クラスターでの開発等実行
• ユニット化したモジュールが一般化し過ぎると
低製造コストの国が部品・原料を集めるのみ
で簡単に製造が可能になり日本産業は負け
る。
産業技術力強化法における
技術経営力の定義
平成19年8月6日施行
技術に関する研究開発の成果を経営において他の経営
資源と組み合わせて有効に活用するとともに、将来の事
業内容を展望して研究開発を計画的に展開する能力
①自らの競争力の現状や技術改革の動向を
的確に把握・・・現状認識
②将来の事業活動のあり方を展望・・・構想力
③現在の事業分野に拘わらず広く知見を探求し、
これにより得られた知識を融合して活用
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