...

Title 放射線による木材・ポリマー複合体.II : 2,3の添加物が木 材・ポリ

by user

on
Category: Documents
5

views

Report

Comments

Transcript

Title 放射線による木材・ポリマー複合体.II : 2,3の添加物が木 材・ポリ
Title
放射線による木材・ポリマー複合体.II : 2,3の添加物が木
材・ポリ塩化ビニリデン複合体の物理的ならびに機械的
性質と難燃性におよぼす影響
Author(s)
石原, 茂久; 後藤田, 正夫; 南, 正院; 満久, 崇麿; 金田, 弘; 竹
下, 登
Citation
Issue Date
URL
木材研究資料 (1979), 14: 87-98
1979-12-20
http://hdl.handle.net/2433/51210
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
資
料 (
NOTE.
)
Ⅰ.
放 射 線 に・
よ る 木 材 ・ポ リ マ ー 複 合 体 .
- 2,3の添 加物 が木 材 ・ポ リ塩 化 ビニ リデ ン複 合 体 の
1
物理 的 な らび に機 械的性質 と難 燃性 にお よぼす影響 -*
石原
茂久*
2
, 後 藤 田正 夫 *
3
, 南
満久
崇麿 *
4
, 金 田
弘*
5
,
竹下
正院*
2
登*
6
・Ⅱ・
Not
eonW0
0dPl
as
t
i
cCompo
s
i
t
ebyI
oni
z
i
ngRadi
at
i
on
- Ef
f
e
c
t
sofAddi
t
i
ve
sonSomeMe
c
hani
c
al
and Phys
i
c
alPr
ope
r
t
i
e
sand
′Fl
ame
r
e
t
ar
danc
yorWoodPol
yvl
nyl
i
de
neChl
or
i
deCompos
i
t
e-
Shi
g
e
hi
s
al
s
HI
HARA,Mas
aoGoTODA,Ze
ongWounNAM,
Takamar
oMAKU,Hi
r
omuKANEDAandNobo
r
uTAKES
HI
TA
1 は じ め に
木材の寸法安定化,難燃性附与 を目的 として塩化 ビニ リデンを主体 とす る木材内放射線重合 とそれによっ
て得た木材 ・ポ リマー複合体の性質については前報において報告 した1
)
。
本研究では, ブナ, アカマツおよび レッドラワン材に ,2, 3の化合物 を添加 して調製 した塩化 ビニ リデ
ンモノマーを注入, 6
0
Coγ線照射に よって木材 ・ポ リマー複合体 を得て, これ らの添加物が複合体の材質
および難燃性能にどのよ うな影響 を及ぼすかを検討 した。
2 実
鼓
2.
1 照射試験片の作製 と照射
2
.
1
.
1材
料
(1) 木 材
本実験に供 した木材はブナ (
Fa
gu
sc
r
e
n
a
l
aBLUME), アカマツ (
Pi
n
u
sd
e
n
∫
t
j
t
o
r
aSIEB.e
tZU
c
c
.
)および レ
S
h
o
r
e
dn
e
gr
o
∫
e
n
s
i
∫Foxw.
)の 3樹種である。
ッドラワン (
*1 1
97
9年度高分子の崩壊 と安定化研究会 (
高分子学会), 1
97
9年 11
月 4日 (
大阪大学,大阪府豊中市) に
おいて講演発表。
*
2 木質材料部門 (
Di
v・ofCompos
i
t
eWood)
*3 日本原子力研究所高崎研究所,群馬県高崎市綿貫町 (
Japan At
omi
c Ene
r
gy Re
s
e
ar
ch I
ns
t
i
t
ut
e,
Takas
akiRadi
at
i
on Che
mi
s
t
r
yRe
s
e
ar
c
h Es
t
abl
i
s
hme
nt
,Takas
aki
,Gunma)
*
4 本学名誉教授 (
Pr
of
e
s
s
orEme
r
i
t
usofKyot
oUni
v.
)
*
5 北海道教育大学函館分校,函館市八幡町 (
Hokkai
doUni
v.orEduc
at
i
on,Hakodat
eBr
anch,Hakodat
e,
Hokkai
do)
*
6 山陽国策パルプ㈱, 岩国研究所, 山口県岩国市飯田町 (
Sanyokokus
a
kuPul
p C0.
,I
wakuniRe
s
e
ar
c
h
,Yamaguc
hi
)
Lab.
,I
wakuni
- 87-
木 材 研 究 資 料 第1
4号 (
1
97
9
)
ブナおよびアカマツは前報1
)において述べた もの と同一材料よ り採取 した. レッドラワン (
単板)はフイ
リッピン産のそれを合板会社に特に依頼 して厳選,採取 した。これ らの うちブナおよびアカマツはそれぞれ
の辺材か ら日本工業規格 (
JI
S)に規定す る強度試験片, 寸法安定性試験片 を, また,レッドラワン単板か
℃ ,関係湿度60%の恒温恒
ら ASTM D 777 に規定す る燃焼試験片を調製 した。 これ らの試験片は温度 25
0
o
C で7
2時間,i
-2mmHgで減圧乾燥を行ない,含水率0・
1
%以下に
湿室に 6週間以上静置 した後.温度 5
な るよ うに調整 した。本実験ではこれを絶乾試験片 として用いた。
(2) モノマーおよび添加剤
塩化 ビニ リデン (
VDC):呉羽化学㈱製の約 77% の塩素を含む もので,その沸点は約 3l
o
C であった。窒
素気流中で蒸留 した ものを使用。
フェニールグ リシジールエーテル :シェル石油㈱製で ,VDC の熱安定剤 として VDC I
OO部 に対 して 3
部 を使用。
アクリロニ トリル (
AN):市販 AN を窒素気流中で蒸留 して使用。
トリア リルフォスフェー ト (
TAP):市販品をそのまま使用。
三塩化 アンチモン (
SbC1
3) :
市販特級試薬をそのまま使用。
塩化 アンモニウム (
NH4Cl
)
,臭化 アンモニウム (
NH4Br
):市販特級試薬をそのまま使用。
2.
1
.
2 モノマーの注入,照射および比較単板の難燃処理
(1) モノマーの配合
以下の 7種の配合を行なった。
i VDC
i
i VDC
単
独
I
O
O 部
SbC1
3
2.
5
部
i
i
i VDC
I
OO 部
SbC】3
5 部
i
v VDC
I
O
O 部
SbC1
3
1
0 部
VDC
8 部
TAP
2 部
vi VDC
8 部
v
AN
2部
TAP
l部
vi
i VDC
8 部
AN
2部
TAP
2 部
(2) モノマーの注入および照射
前報1
)の気乾照射 と同様のモノマー注入および照射 を行なった。
(3) 比較単板の難燃処理
木材 ・ポ リマー複合体の難燃性 を比較す るために,複合体に供 した単板 と同一樹種,同一形状の試験片を
NH4Clおよび NH4Brの 2・
5,5
,1
0,1
5 および20%の水溶液 5
00ml中に浸漬 し, 減圧 (
1
0mmHg) 4時
間,常圧解放 1時間,さらに減圧 2時間の注入処理の後,常圧に もどしてそのまま1
5時間放置 して注入 を行
なった。この後,試験片をとり出 し,表面にある過剰の水溶液を除去 し, ドラフ ト内で換気 しなが ら乾燥 し
た。含浸率 は処理前後の絶乾重量の百分率で示 した。
- 88-
石原 ・ほか :放射線に よる木材 ・ポ リマー複合体 . Ⅱ
2.
2試験方法
2.
2
.
1材 質 試 験
(1) 比
重
0
℃ 関係湿度65% における気乾比重 を測定 した。
温度 ,2
試験片寸法 ;5mmx3
0mmx3
0mm
試 験 片 数 ;モノマー,照射線量,ポ リマーローデ ィングの各条件 につ き5枚
比
重
;ru-
若
W :試験片の重量 (
g)
Ⅴ :重量測定時の試験片の体積
(
c
m3)
(2) 静的曲げ弾性係数および静的曲げ強度
曲げ性能は曲げ弾性係数および強度を単純支持中央集中荷重によ り求めた。
0mmx20mmx280mm
試験片寸法 ;2
荷
重
面 ;柾 目
試 験 片 数 ;各条件 につ き 6枚
曲げ弾性係数 ;E蒜
(
kg/
C
- 2)
S
P∼
曲 げ 強 度 ;ob- 厭
(
kg/
c
m2)
P:破壊時の中央集中荷重 (
k
g
)
Pp : 比例限度 における荷重 (
k
g
)
J :スパ ン (
c
m)
b:試験片の幅 (
c
m)
h :試験片の厚 さ (
c
m)
y :比例限度における荷重点のたわみ
(
c
m)
(3) せん断強度
試験片寸法 (
せん断面積);3
0mmx3
0mm
せ ん 断 面 ;柾 目
試 験 片 数 ;各条件 につ き6ケ
せん断強 さ ;I-i
(
k
g/
c
m2
)
P:最大荷重 (
k
g
)
A:せん断面積 (
c
m2)
(4) 木口面硬 さ
ブ リネル (
Br
i
ne
l
l
)硬 さを求めた. これは直径 1
0mm の鋼球による凹みの投影面積で, その時の荷重 を
割 った値である。
0mmx3
0mm
試験片寸法 ;5mmx3
試 験 片 数 ;各条件につ き 6枚
測
点 ;3ヶ所
P
ブ1
)ネル硬 さ ;
HB
-了転石- (kg/mm2)
P:圧入深 さ hが 1
/
冗(
≒0・
3
2mm) にな るときの荷重
h:圧入深 さ ≒0.
3
2mm
-
8 9
-
(
k
g
)
木材研究資料
第1
4号 (
1
97
9
)
(5) 吸湿率および膨張率
試験片を 40o
C,飽湿の恒温恒湿器中に静置 し,6,2
4および7
2時間後の接線方向 (
T)および半径方向 (
氏)
の寸法な らびに重量 をそれぞれ測定 し,下式によ り求めた。
0mm
試験片寸法 ;5mmx30mmx3
試 験 片 数 ;各条件につ き 5枚
吸 湿 率 ;W
#
膨
u
-xl
OO
張 率 ;
竿
旦
Wt
:
漂
(
%)
×1
0
0
(
%) (
接線方向)
×1
0
0
(
%) (
半径方向)
t時間後における試験片重量 (
g)
W u : 試験片気乾重量 (
g)
W o:試験片絶乾重量 (
g)
T7
2
,R7
2:7
2時間後の接線方向および半径方向の長 さ (
c
m)
Tu,Ru :気乾状態における接線方向および半径方向の長 さ (
c
m)
To
,Ro :絶乾状態における接線方向および半径方向の長 さ (
c
m)
2.
2.
2 燃焼試験
ASTM D777
-46"St
andar
dMe
t
hodorTe
s
tf
o
rFl
ammabi
l
i
t
yTr
e
at
e
dPa
pe
randPa
pe
r
boa
r
d" (
以
下 ASTM D777 と略記する)に準 じて燃焼試験を行なった。
試験片寸法 ;0.
85-0.
88mmx7
9mmx206mm.
試 験 片 数 ;各条件につ き 3枚
本実験においては残炎時間,残 じん時間お よび炭化長を測定 した。
なお,ASTMD 7
7
7ではその合格基準を次の ように定めている。
残 炎 時 間(
秒);2秒以上ない こと。
残 じん時間(
秒);2秒以上ない こと。
炭 化 長 (
c
m);試験片の平均炭化長が 8・
8c
m 以上ない こと.いずれの試験片 も最大炭化長が 11
・
3c
m以
上ない こと。
3 結 果 と 考 察
3.
1 木材 ・ポ リマー複合体のポ リマーローデ ィング
VDC の γ線照射によるブナ,アカマツの木材内重合において, そのポ リマーローデ ィングが γ線照射線
塞,樹種な らびに試験片の形状によって異な ることを前報で述べた1
)
。
SbC1
3,VDC・
TAP および VDC・
AN・
TAP 混合物 をラワン単板に注入
ここでは,VDC のほか, VDC・
して γ線照射 した ときのポ リマーローデ ィングと線量の関係 を 図 1 に 示 すoまた, di
me
ns
i
ona
ls
t
a
bi
l
i
t
y
TAP 混合物を注入 して γ線照射 した
(
Ds)測定用およびせん断強度試験用のブナおよびアカマツに VDC・
ときのポ リマーローデ ィングと線量の関係 を図 2に示す。 これ らによ る と木 材 ・VDC・
SbC13 複合体,木
TAP 複合体,木材 ・VDC・
AN・
TAP 複合体のポ リマーローデ ィングは木材 ・VDC 複合体のそ
材 ・VDC・
れ と同様 γ線量の増加によ り増加が認められ, モノマー混合物で得たカバ ・VDC・
MMA 複合体のそれ と2
)
同様の傾向が認め られた。
ポ リマーローデ ィングの試験片の形状な らびに樹種による相異は前報1
)と同様鎮著である。
VDC モノマーに対す る添加物が ポ リマーローデ ィングに及ぼす影響 をラワン ・ポ リマー複合体について
みると添加物の種類によってかな りの相異はあるが,添加物の割合が増加す るのに従い ポ リマーロ-デ ィン
- 9
0-
石原 ・ほか :放射線に よる木材 ・ポ リマー複合体. Ⅱ
00
40
2
.
4人 y;
tInーi E
]:I
.
1
2
3
4
5
6
7
線 量 (
Mr
(
】
d)
図 1 ラワン単板におけるポ 1
)マ∼ローディングと線量の関係
VDC,●:
VDC/
SbC1
3 (
1
0
0
/
2・
5
)
○ :VDC/
S
bCl3 (
1
0
0/
5
),
⑩:
VDC/
SbC13 (
1
0
0/
1
0)
▽:
VDC/
TAP (
8/
2
),△ :
VDC/
AN/
TAP (
8/
2/
1
)
▲ :VDG/
AN/
TAP (
8/
2/
2)
○:
50
,4
(
%)
ヽ
Ⅷ
幻
y恥-D- i (
I,L#
1
2
3
4
5
6
7
8
9
線 量 t
Mr
od)
図 2 ポ リマーローディングと線量の関係
モノマー :VDC・
AN・
TAP (
8/
2/
1
)
○ :ブナ ● :ア カマ ツ (5mmx30mmx30mm)
△ :ブナ ▲ :ア カマ ツ (
3
0mmx3
0mmx40mm)
グの低下が認め られた。
またラワン ・ポ リマー複合体では VDC 単独では 1
・
5
Mr
a
d近傍 に お い て,VDC・
SbCl3 および VDC・
AN・
TAP では 2・
5-3・
OMr
a
d においてポ リマーローデ ィングが飽和す る傾向が認め られ,ラワン単板に対
SbCl3 および VDC・
AN・
TAP の適正照射線量が上述の範囲であることが兄 い 出 され
す る VDC,VDC・
た。
- 91-
木材研究資料
第1
4号 (
1
979
)
3.
2 物理的な らびに機械的性質
3.
2.
1 静的曲げ弾性係数および曲げ強度
(1) 弾性係数
ブナ ・VDC・
AN・
TAP 複合体のポ リマーローデ ィングと静的曲げ弾性係数の関係 を図 3に示 した。 これ
によると,全般的な傾向 としてポ リマー ローデ ィングによる弾性係数の顕著な増加はな く,わずかに増加す
るにす ぎない。 この傾向は前報1
)において述べたブナ ・VDC 複合体およびアカマツ ・VDC 複合体 と同様
であって,複合体に供す るモノマ-が混合物であって もポ リマ-ローデ ィングと静的曲げ弾性係数の関係は
単独 モノマ-を用いた複合体のそれ とほぼ同様の関係にある もの と判断 され る。
上で述べた ブナ ・VDC・
AN・
TAP 複合体の静的曲げ弾性係数に対す る ポ リマー ローデ ィングの増加に伴
う複合体の比重増加の影響を知 るためにポ リマーローデ ィングと比曲げ弾性係数の関係 を図 4に示 した。 こ
れによると,無処理の比曲げ弾性係数に比べて複合体のそれはいずれ も低 く,ポ リマーローデ ィング約90
%
において若干の回復はあるものの ローデ ィング増,すなわ ち比重の増加によ り漸減の傾向を示 し, これ も,
ブナ ・VDC 複合体, アカマツ ・VDC 複合体のそれ とほぼ同様であった。
2
0
2
∞
-.
・
.
i
0
一
〇
0
O
TbJP (x 3'
O
M F
?(O
x2
I kg
J
c
m2)
0
5
zL
u'
35
三 山〇三
(
0
2
0
40
ポ リマ -
ロ-
デ
6
0
ィ ング
8
0 1
00
0
(
%)
2
0
40
60
80
1
00
ポ リマ- ローデ ィング (
%)
図 3 ブナ ・VDC・
AN・
TAP 複合体の 静 的 曲 げ
弾性係数 (
MOB)お よび曲げ強度 (
Mo乱)
とポ リマーローディングの関係
図 4 ブナ ・VDC・
AN・
TAP 複合体の曲 げ 比 弾
性係数 (
Eb
/
P) お よび比強度 (
qb
/
P) とポ
リマーローディングの関係
(2) 曲げ強度
ブナ ・VDC・
AN・
TAP 複合体のポ リマーローデ ィングと曲げ強度および比曲げ強度の関係 を図 3および
図 4に示 してい るが, ポ リマー ローデ ィングの曲げ強度-の影響は弾性係数の場合 と同様顕著ではな く,ま
た,ポ リマー ローデ ィングによ る比重の増加によって曲げ強度 はわずかなが ら低下の傾向を示 してい る。 こ
)と同一の傾向であって ,γ線による VDC,VDC・
AN・
TAP による複合
れは,木材 ・VDC 複合体の場合1
化が静的な曲げ性能の向上 に寄与 していない ことを示 してい る。
3.
2.
2 せん断強度
ブナおよび アカマツと VDC・
AN・
TAP (
8:
2:1
) との複合体におけるポ リマーローデ ィングとせん断強
皮 (
柾 目)な らびに比せん断強度 を図 5に示す。 これによると, ブナ, アカマツ試片 ともに無処理のそれに
比較 してせん断強度はかな り増加 してい る。 しか しなが らポ リマーロ-デ ィングの増加に伴 うせん断強度の
0%前後の ローデ ィングで, アカマツでは 1
0%近傍のそれでほぼ飽和す る
増加はほとんどな く, ブナでは3
,
もの と考 えられ る。木材のせん断強度 と比重の関係 は圧縮強 さなどに比較 して密接ではない とされてお り3)
本複合体 において もほぼ同様の ことが考 えられ る。 この ことは,ポ リマーローデ ィングが 1
0
%の アカマツの
-9
2-
石原 ・ほか :放射線に よる木材 ・ポ リマー複合体 .Ⅱ
0
2
0
40
60
80
ポ リマ ー ロ- デ ィング
I
00
f
2
0 1
40
(
%)
図 5 木材 ・VDC・
AN・
TAP 複合体のせん断強度 (
I
) お よび
比せん断強度 (
I
/
P) とポ リマーローディングの関係
○,△ :ブナ
●,▲ :アカマツ
複合体 を除いて,いずれ もポ リマーローデ ィングの増加によ り比せん断強度が低減す るとい うせん断挙動 と
も符合す る。
3.
2.
3 木 口面硬 さ
・VDC・
AN・
TAP(
8:
2:1
)複合体のポ リマ-ローデ ィングと木 口面硬 さおよびその比硬 さを図 6に
ブナ・
示 した。 ブナ,アカマツともに複合化によって木 口面硬 さの増加が認 め られ,その傾向はブナにおいて とく
に顕著であった。
ポ リマーローデ ィング増に伴 う比重の増加が硬 さに及ぼす 影響はブナにおける 6
0-80
% のポ リマーロー
デ ィングを除いて全体的には向上 を示すのに対 し, アカマツの複合体の比硬 さはポ リマーローデ ィングの増
AN・
TAP のモノマー混合物 によって得た ブナおよび アカマツの
加によってかな りの低下 を示 した。 VDC・
複合体の木 口面硬 さおよびその比硬 さと VDC モノマ-単独で得た複合体のそれ との間に顕著な差 を認 める
ことはで きなかった。
0
40
80
1
2
0
ポ リマー ローデ ィング
1
60 2
00 2
40
(
ち)
図 6 木材 ・VDC・
AN・
TAP 複合体のブ リネル硬 さ (
HB
)お
よび比硬 さ (
HB/
P) とポ リマーローディングの関係
,▲ :アカマツ
○,△ :ブナ
●
ー 93-
木 材 研 究 資 料 第1
4号 (
1
9
7
9
)
3.
2.
4 吸湿率および吸湿に伴 う膨張率
温度 40o
C における飽湿の恒温恒温容器中に試験片を 6,24および7
2時間静置 した ときの吸湿率 とポ リマ
ーローデ ィングの関係を図 7に示 し,図 8および図 9にブナおよびアカマツの複合体のそれぞれ特徴的な吸
湿過程 を示 した。
0
80
40
(
20
J60
200
240
ポ リマー ローデ ィング (
%)
図 7 木材 ・VDC・
AN・
TAP 複 合 体 の吸湿率 とポ リマーロー
ディングの関係
○,△,□ :ブナ
⑳,A,髄 :アカマツ
一%
Dos
e:3.
OMr
qd
PoL
y
m.l
oQdi
nq:60%
)静
増
蛮
Dos
e:5.
OMr
o
l
d
八
%) 洛 増
Pol
y
r
n.l
o
。di
nq:90.
6%
感
Dos
e:8.
OMr
od
(
%) 錬
Pol
y
n
l
.l
o
odi
n
q:1
02.
8%
意
贈
6
24
72
経過時間
t
hり
図 8 ブナ ・VDC・
AN・
TAP 複合体の吸湿過程
◎:
複合体のみかけの吸湿率
㊨ :木材を基準 とした ときの複合体の吸湿率
○ :無処理試験片
-9
4-
石原 ・ほか :放射線に よる木材 ・ポ リマー複合体.Ⅱ
(1) 吸湿率
ブナおよびアカマツの VDC・
AN・
TAP (
8:
2:1
)複合体の吸湿率をみると, アカマツのそれの7
2時間吸
湿を除いて,ポ リマーローデ ィングが増すに従いかな り低下す ることがわかるが,前報1
)と同様木材 を基準
として吸湿率を計算す ると図 8および図 9の矢印をつけた○印のよ うにな り,いずれの場合 も無処理標準試
片の吸湿率よ りかな り大 きな値を示す。 この傾向は前報1
)の木材 ・VDC 複合体のそれよ りさらに高 く,γ
線による VDC・
AN・
TAP との複合化によって木材の吸湿性はかな り大 きくなる。 この原因はモノマ-混合
物 とくに AN の影響による もの と考 えられ るがその詳細は今後の研究 に待ねばな らない。
-os
e'
.I
.
5Mr
c
l
l
d
(
%) 鮮 功 意
F
bl
ym.l
oQdi
nq:67
.
0%
(%
)静
潟
東
l
Dos
e:5.
OMr
(
】
d
八
% )掛 倒 意
l
Pot
ym.o
odi
ng:2日.
2%
6
72
24
経過 時間 (
hrI
図 9 アカマツ ・VDC・
AN・
TAP 複合体の吸湿過程
○:
無処理試験片
○ :複合体のみかけの吸湿率
㊥ :木材を基準 とした ときの複合体の吸湿率
(2) 膨張率
AN・
TAP (
8:
2:1
)複合体 を 40
o
C の飽湿下に7
2時間静置 した ときの膨張
ブナおよびアカマツの VDC・
率 とポ リマーローデ ィングの関係 を図1
0に示す。また,複合体の含水率 1%の変化に対す る膨張率の変化 を
図1
1
に示す。吸湿に伴 う複合体の膨張率はブナとアカマツでは若干異 った挙動 を示 した。含水率 1%の変化
に対する膨張率 をみかけの含水率で評価すればブナにおいて大約60%のポ リマーローデ ィングで,無処理試
0%,半径方向では約60-7
0%の値を示 し,di
me
ns
i
ona
ls
t
abi
l
i
t
y は高 くなっ
験片に比較 して接線方向で約5
てい る。 アカマツにおいては接線方向での複合化による膨張率低下の割合が ブナのそれよ り小 さいが半径方
me
ns
i
onals
t
abi
l
i
t
y を示 してい る。 これ らの吸湿に伴 う膨張
向のそれは高 く, ブナの複合体 と同様高い di
o
C の飽湿下に7
2時間試験片をおいた ときの膨張率のそれ ともよい一致 を示 した。なお,これ
率の変化は 40
らの di
me
ns
i
onals
t
a
bi
l
i
t
y はポ リマローデ ィングが大約6
0%で最 も高いが, ブナ,アカマツの複合体では
ポ リマーローデ ィングが さらに増加す るに従い,漸減の傾向を示 してい るO
- 9
5-
第1
4号 (
1
97
9
)
木材研究資料
0.
5
0.
4
8
a
ー
6
0.
3
a
盟
轍
%
&
4
煤
鶴
0.
I
2
00
0.
2
40
80
L
20
1
60
2
00
0
2
40
0
ポ リマー ローデ ィング (
%)
40
80
1
20
1
60 200
2
40
ポ リマー ローデ ィング (
%)
図1
0 飽湿下 (
40℃)7
2
時間経過後における木材
・
VDC・
AN・
TAP 複合体の膨張率 とポ リマ
ーローディングの関係
接線方向 ○ :ブナ ⑳ :アカマツ
半径方向 △ :ブナ A :アカマツ
図1
1 木材 ・
VDC・
AN・
TAP複合体の含水率 1%
(
40
o
C 飽湿)当 りの膨張率 とポ リマーロー
ディングの関係
接線方向 ○ :ブナ
アカマツ
半径方向 △ :ブナ ▲ :アカマツ
◎:
3
.
3難燃性能
前報1
'において VDC ・ブナ複合体および VDC ・アカマツ複合体の難燃性能試験 を行ない, それ らの発
9%,アカマツにおいて 1
9%であることを示
炎燃焼阻止作用 を示す ポ リマー ローデ ィングが ブナ において,2
した。 本実験では,燃焼試験法 としては最 も過酷な もののひとつ とされてい る ASTM D777 によって, レ
ッドラワン単板 と VDC,VDC・
SbC1
3,VDC・
TAPおよび VDC・
AN・
TAP によって複合 した ものの難燃性
能 を試験 ・評価 した。 ASTM D777 では残灸時乱 残 じん時間および炭化長で性能 を判定す るが, 本実験
では炭化長 を主体 にして残灸,残 じんを参考事項 として考察 した。
(1) ラワン単板 ・VDC 複合体
2に示す。 これによるとラワン単板 ・VDC 複合体はポ リマー
炭化長 とポ リマーローデ ィングの関係 を図 1
〇
T
u
JU )叫 q 堪
八
0
1
0 2
0 30 40 50 60 70 80 90 一
oo 11
0 1
2
0
ポ リマ ー ロ- デ ィング
(
%)
図1
2 ラワン ・ポ リマー複合体の炭化長 とポ リマーローディングの関係
○ :VDC, ㊨ :VDC/
SbC13 (
1
0/
2.
5),
○ :VDC/
SbC13 (
1
00/
5), ⑩ :
VDC/
SbC13 (
1
00/
1
0),
△ :VDC/
TAP (
8/
2), A :
VDC/
AN/
TAP (
8/
2/
1-2),
□:
NH 4Cl
, 圏 :NH 4Br
- 9
6-
石原 ・ほか :放射線に よる木材 ・ポ リマー複合体 .Ⅱ
ローデ ィングが8
0% を超 えた ものであって も,試験片下端か ら強制着火 した炎が上昇拡大 して上端に至 り,
Eと略記す る), 発灸燃焼阻止作用はほとんど
クランプ部分を除いて試験片全体が燃 え (
以下 この状態 を B
認めることがで きなかった。 この結果は,前報1
)におけるブナ ・VDC 複合材, アカマツ ・VDC 複合材の
それ と著 しく相異す る結果である。 これは,試験方法,試験片の形状の相異に よるものと考 えられ るが,樹
種による複合化の相異 も当然考 えられ,今後の詳細な検討が待たれ る。
(2) ラワン単板 ・VDC・
SbC13 複合体
塩素化合物の発灸燃焼阻止作用に対する Sb2
03 の相乗効果はすでに知 られてい るが, 本実験では VDC
と相溶性のある SbC13 を用いてその相乗作用の有無を検討 した。図 1
2によれば VDC/
SbC1
3;1
00/
2・
5 の複
合体ではポ リマーローデ ィング8
0%では燃焼阻止作用はないが90%以上では ASTM D777 に規定 きれた炭
化長による難燃性能に合格 し,VDC 単独によるそれよ り発灸性能抑止ゐ効果が認め られ る。 VDC に対す
SbC1
3 :1
00/
5および 1
00/
1
0の複合体ではいずれ も3
8-40% のポ リマーロ
る SbC13 の割合を増 した VDC/
ーデ ィングで発灸燃焼を完全に阻止 し,VDC の発灸燃焼阻止作用に対す る SbC13 の顕著な相乗効果を認め
ることがで きた。しか しなが ら, NH4Brおよび NH4C1で処理 した単板に比較 して発灸燃焼阻止に要す る
ポ リマーローデ ィングはかな り高 く, モノマーの配合等今後の研究に待つ ところが多い。なお, NH4Brお
よび NfⅠ
。
Cl処理単板の炭化長に比較 してラワン単板 ・VDC・
SbC13 複合体のそれはかな り短か く,試験片
下端に強制着火 させた ときの灸の形成はきわめて抑制 された小 さな ものであったことを示 してい る。
SbC13 複合体の難燃性能を炭化長によって判定 した場合上述のよ うな結果 となるが,
ラワン単板 ・VDC・
残灸,残 じんについてみると,残灸はいずれに もないのに対 し,残 じんはいずれ も1
5
秒以上認め られた。 こ
bC1
3の割合が多 くな るに従い増加 した。防 じん性能附与の検討が不可欠であろ う。
れは S
(3) ラワン単板 ・VDC・
TAP 複合体およびラワン単板 ・VDC・
AN・
TAP 複合体
ハロゲンの燃焼抑制作用に対 して,Sb,P および N を含む化合物が相乗作用 を示す。 本実験では,VDC
の発灸燃焼抑制の相乗作用のみな らず防 じん作用の期待 され る TAPを VDC と混用 したラワン複合体, さ
らに,TAP に対 して相乗効果の期待 され る AN を VDC・
TAP 混合モノマ-に 添加 して得た複合体の炭化
長 とポ リマーローデ ィングの関係 を図1
2に示 した。 これによると,VDC・
TAP (
8:
2)との複合によってラ
ワン単板はポ リマーローデ ィングが3
8-40%において ASTM D77
7が規定す る難燃性能に達す る。すなわ
0
(
u
jU )叫
ql 堪
0
1
2
3
線
量
4
5
6
7
(Mr
od)
図1
3 ラワン単板 ・VDC・
AN・
TAP 複合体 (
ポ リマローディング :5
5-7
0
%)の炭化長 と線量の関係
○:
VDC/
AN/
TAP (
8/
2/
1
)
8/
2!
2)
+ :VDG/
AN/
TAP (
- 97-
木材研究資料
第1
4号 (
1
9
7
9
)
ち, このポ リマー ローデ ィングにおいて炭化長 は 8
-4・
5c
m の範囲にとどま り,残灸,残 じん も皆無であっ
て,発灸燃焼のみな らず表面 (
灼熱)燃焼に対 して も十分な抑止作用が認 め られ る。 これに対 し, TAP に
ANを添加 して得た複合体の炭化長 とポ リマー ロ-デ ィングの関係 は複雑で,VDC・
AN・
TAPの配合によっ
て若干の相違はあるが,複合体のポ リマーローデ ィングが5
5-7
0
%の範囲で,その展灸阻止作用は AS
TM
D7
7
7に規定す るものに達 し (炭化長 8c
m 以下),しか も残炎,残 じん もな く, 上述の ラワン単板 ・VDC・
TAP複合体のポ リマー ローデ ィング4
0
%以上のそれに匹敵す る性能 を示 した。 しか しポ .
)マーロ-デ ィン
5-7
0
% の範囲を超 えた ものはいずれ も BEであった。 この関係 を炭化長 と γ線照射量で整理す ると
グが 5
図1
3
のよ うにな り, 高度の難燃性能 を示す γ線照射の範囲は 2
・
2-4
・
8Mr
a
dであった。 このよ うにラワン
VDC・
AN・
TAP 複合体の難燃性能が 限定 された γ線照射量の範囲内で得 られ ることは きわめて興味
単板 ・
あ ることであるが,本実験では これ を検討す ることがで きなか った。
4 お わ
り に
木材および木質材料の材質改良 と難燃性附与 を目的 として塩化 ビニ リデ ンに若干の化合物 を添加 したモノ
0
Co γ線照射による木材 ・ポ リマー複合体調製の可能性 を検討 した。
マー混合物 を用いて,6
ブナ ・アカマツおよびラワン単板 を対象 とし,塩化 ビニ リデンに三塩化 アンチモン, トリア リルフォスフ
ェー ト,アク リロ トリルを添加 して調製 した複合体の物性は,前報1
)の木材 ・塩化 ビニ リデン複合体のそれ
とほぼ同様であって,塩化 ビニ リデンに対す る三塩化 アンチモン, トリア リルフォスフェー ト,アク リロニ
トリルの添加が複合体調製の上で障碍 となることはなかった。
本実験で得た複合体の物理的 ・機械的性質の向上はとくに顕著ではない. これは,木材 ・塩化 ビニ リデン
複合体 と同様 ,木材のす ぐれた特徴である空隙構造に塩化 ビニ リデンその他 を充てん した高比重複合体 を得
たにとどまった ことによってい る。
一方 ,難燃性能は塩化 ビニ リデンに三塩化 アンチモンあ るいは トリア リルフォスフェー トを添加す ること
によって,木材 ・塩化 ビニ リデ ン複合体のそれよ り顕著な向上が認め られた。
文
献
1
)石原茂久 ほか,木材研究資料第 1
2
号 5
3(
1
9
7
8
)
.
,5
02
6
,No・
3
,1
0
8(
1
9
7
0
)
.
2
)後藤田正夫 ほか.JAERI
3
)平井信二,北原覚一,木材理学,朝倉書店,東京 p・
8
4(
1
9
51
)
・
-9
8-
Fly UP