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植生機能のリモートセンシング

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植生機能のリモートセンシング
農業・
環境分野における
一ファイトイメージングからリモートセンシングまで一
塗
昼
軍
審
轟鵠科雛 大政 謙茨 編著
社団法人 震業電化協会
植生機能の リモー トセンシング
1 , は じめに
植生 とは、 ある対象 とす る地域 に生育 してい る植物体 の総称 であ り、陸上生態系 の
状態 をおおまかに示す ものであ る。植生 をリモー トセ ンシ ングの対象 とす る目的 とは、
その地域 の生態系 の持 つ特性 に関す る情報 を得 ることにある。例 えば、地域 の植生 の
種類や分布 の密度、成長 の程度 は、水、炭素、窒素な どの物質の循環や炭素固定能力
を大 きく左右す ることが知 られてい る。また地域 に生 育 している植物種 の詳細 な情報
を取得す る ことは生態系 の構成要素 を明 らかにす ることであ り、生物多様性保全 のた
めの基礎的 な情報 となる。 ここでは、植生 の密度 を示す指数の説明をお こない、枢物
の種 の推定 に基 づ く生物多様性 モニ タリングの試みについて簡単 に紹介す る。
2.植 生の分光反射特性
光 の波長 ごとの反射率 を分光反射率 と呼 ぶ 。物体 に よって、それぞれ特徴 的な分光
尿射率 を持つため、この分光反
射特性 を利用 して、リモー トセ
ンシングデータにより、物体を
045
0.4
識別することが可能 となる。植
0・
3
生 (植物)の 場合、その分光反 戦
射特性 は、1)可視域での反射が 鰹 0.2
小 さく、2)近赤外域で反射が大
きいことである (図1)。
植物 は光合成 を行 い、光 の物
理エネルギー を有機物 の化学エ
ネルギーに変換す る。 その際、
すべ ての波長 の光 を使用す るわ
0'1
400 500500 7∞
3∞
0001000110012∞
13∞ 140015001500
n命
波長く
図 1 植 物 ・土 壌 ・水 の分光反 射率 の例
]17
表 1 代 表 的 なセ ンサ ーの可視域 と近 赤外域 バ ン ドの情報
セ ンサ ー
バ
NOAA一
AVHRR
Landsat
ETM十
ALOS―
AVい正
田
R-2
459-479rlm
450-52011111
420ヽ ′500nln
545∼ 565rlm
520″ヽ″600nm
520ヽ ′600rlm
520-600nm
620-670nln
630ヽ ′690111n
610∼ 690rm
630ヽ ″690nm
725へ ′1,100nm
841∼ 876nm
760-900-
760ヽ ′890nln
760′-890rlm
空間解像度
1,100m
250m/500m
30m
10m
2.5m
同 一 地点の
デ ー タ取得
の周期
1日
16日
46日
20日
ン
ド
可視域 青
550-680nm
緑
赤
近赤外域
MODIS
1日
Qdckbttd
450-520rlm
けではな く、光合成 に有効 で あ る400∼ 700rLmの波長 (可視 域)の 光 を吸収 し使用
す る。特 に主要 な植物色素 で あ るク ロロ フイルの吸収帯 であ る青色光435rlmと赤色
光680nm付 近の波長 の光 を吸収す る。 したが って、400∼ 700mの 可視域 において、
植物 か らの反射 は小 さくなる一方、700∼ 1300rLm程度 の近赤外域 においては反射が
相対的 に大 きくなる。植生 に関す る指数 は、 これ らの可視域 と近赤外域 にお けるバ ン
ドの値 (デジタル値や反射率)の 違いを利用 している。例えば、
NOAA一 AVH駅 のデー
タでは表 1に 示す とお り、可視域 の550∼ 680nmと 近赤外域725∼ 1,100nmの2つ の
デー タを利用す ることになる。
AVNIR-2セ ンサ ーなど、最近打 ち上げ られた衛星 のセンサ ーにお
いて も、同様 に可視域 と近赤外域バ ン ドのデT夕 が用意 されてお り、多 くの衛星デー
また MODISや
タにおいて植生 に関す る指数 は算出可能であ る。表 1に おいて NOAA― AVHRR以 外
のセ ンサ ーでは可視域 をさらに分光 しているため、その場合 は可視域 のデー タとして
赤色光 のデー タを使 うことが多 い。
3.代 表的な植生指数
1960年代後半 か ら開発 され て い る植 生 指数 につい て、代表的 な もの を紹介 す る。表
2に 比 植 生 指数 と正 規化植生 指数 を示 す。Simple Rado lndex,SR(比
植 生 指数)は近
表2 代
表的 な植生指数
植生指 数
計算式
SR=言
挙
持
Shple Ratio lhdex(SR)
比植生指 数
Nomalized Direrence
Vegetadon lndex(NDVI)
正 規化植生指数
NDVI=紙
文献
」Ordan(1969),
Rouse et al。
(1973)
Rouse et a上 (1973)
*表 中の RRedと臨 は、それぞれ可視域 にお ける赤色光 のバ ン ドの値 (デジタル値や反射率)
と近赤外域 にお けるバ ン ドの値 を示 してい る。
118
ヤ
冊 孫 L G ユ ハ く G答 求 憶 買
離 環 ﹄ G ユ Aく G答 求 柊 規
可視域 のバ ン ドの反射率
可視域 の バ ン ドの反 射率
図2 可 視域および近赤外域のバンドの反射率で示されるSRと NDVlの 等値線
赤外域 と可視域 におけるバ ン ドの値 (デジ タル値 や反射率 )を 比 で示 した もので ある。
また Normalized Direrence vegetadon lndex,NDVI(正 規 化植生指 数)は 近赤 外
域 か ら可視域 のバ ン ドの値 を差 し引 い た値 を -1か ら +1ま での値 に正 規化 した指数 で
あ る。可視域 と近赤外域 の反射率 をそれぞれ横軸 と縦軸 に設定 したグラフに、 2つ の
指数 について等値線 を示す と図 2の ようになる。植物 を対象 と した場合、近赤外域 の
ほ うが可視 域 よ りも反射率 は大 きい ため、 図 中 に点 線 で示 して い る線 (SR=1、
NDVI=0)か
ら、左上の範囲内のみ を図示 してい る。点線 の場合 は、可視域 と近赤外
域が同じ値 であ り、植物が存在 しない状態 を示す ことになる。植生 の密度が大 きくな
るにしたがって、 これ らの指数 も大 きくな り、点線 か ら矢印の方向に変化 してい くこ
とになる。
植生 のみの情報が必要 で も、植生 の密度 力羽ヽさい場合、植生 の背景 (バックグラウ
ン ド)と なる土壌 の情報が入 りこんで しまう。 この場合、土壌 の種類や上壌 の湿 り具
合 が変化す ると植生 の状態に変化がな くて も、前述 の比植生指数 SRや 正規化植生指
数 NDVIの 値 は変 わって しまう。そ こで、土壌 の影響 を小 さ くす るために工 夫 した
植生指数 も開発 されてい る。表 3に い くつ かの植生指数 を示す。
植生指数 にお ける土壌の影響 を考慮す るためには、可視域 と近赤外域 における土壌 の
反射率の関連性 を示 す So述Ine(土 壌線)を 知 る必要が ある。植物がな く、土壌がむ
きだ しの状態 (すなわち裸地)に おいて、 さまざまな土壌 の可視域および近赤外域 の
反射率の関係 は図 3の ように直線 に近似で きる。
土壌の特徴 でおおまかに区分す ると、乾燥 してお り、明るい色 の上壌 は可視域およ
び近赤外域 ともに値 が大 きいため、図の右 上のあた りに分布 し、反対 に湿 った状態や
暗 い色 の上壌 はグラフの左下 のあた りに分布す ることが知 られている。図中の上壌線
は傾 きβぃ 切片 β2としてヽ可視域 と近赤外域 の反射率 を関連づ けてい る。実際 は土
119
表 3 土 壊 の影響 を考慮 した植生指数
計算式
植生指数
文献
_の
=巧
PⅥ
焔一
″
く
n島
再
再
キ
〒
Perpendicular Vegetation
lndex(PVI)
垂直植生指数
Richardson and
Wiegand (1977);
Baret and Guyot
土疫線が RMR=β lRRed十
め のとき
Soll Adiusted Vegetation
lndex(SAVI)
SAⅥ =
土壌調整植生指数
組
十D
Huete(1988)
L=0∼ 1.0
Modined sAVI
(MSAVI)
修正土壌 調整植生指数
(1991)
MSAVI=
8(RNIR RRed)
2RNIR+1 7(2RNIR+1メ
Qi et al(1994)
2
*表 中の RRedとR眼 は、それぞれ可視域 における赤色光 のバ ン ドの反射率 と近赤外域 にお けるバ ン ドの反
射率 を示 している。
RNR=β
l R R e d t t β2
営z
︵ こ 難孫唱G生ハ< G軍煮 体買
ノ
療
ヽ
び
亀斎 ︶
齢 練 区 G ユハK G 軍 ま 憔 増
土 壊 線
可視域 のバンドの反射率 (RRed)
図 3 可 視域 および近赤外域 のバ ン ドの
反射率で示 される土壊線
土壌線 系は=β lRRed+β
2
において βl=1,β
炉0と
仮定した場合
可視域 のバンドの反射率 (RR胡)
図 4 可 視域 および 近赤外域 の バ ン ドの
反射率 で示 され る PViの 等値線
壊 の種類、乾燥 ・湿潤 の程度、そ して 目の粗 さ ・細かさの程度、有機物 の混 ざり具合
な どの条件 に影響 を受けるため、 これほど単純 な関係ではない。
表 3に お けるPerpendicular Vegetation lndex,PVI(垂
直植生指数)は 、 この上壌
線 を基準 にして算出され る指数であ り、土凝線へ の垂線 の長 さで示 される。植生の密
度が大 きくなると、PVIの 等値線 は土壌線 と垂直 の方向に移動す る (図4)。
SoユAttusted Vegetation lndex,SAVI(土
壌調整植生指数)は 、NDVI(正 規化植
生指 数)を 修正 し、土壌 の影響 を軽減 した指数 となってい る。 さまざまな土壌の条件
下 で植生の密度を大 きくす ると、植生の等値線 は傾 きが急になる とともに、切片 (綻
軸 との交点)も 大 きくなる。 したがって NDVI(図
2の 右図)と は異な り、等値線 は
原点において交 わ らな くなる (図5の 左 図)。そ こで、等値線が交わる点 に原点 を移
動 し、新 しい原点にもとづいて植生指数を計算 す る。 この とき新 しい原点 は土壌線 と
120
難点 ばG軍ま憔買
母忘 唱G軍 太億料
土壌線 RNぱ 本田
k十 近赤外域
反射率
可視域の反射率
等 値 線 の 交 点 は0 ( 白 丸 ) か ら
● ( 黒丸 ) に移 動
l
可視域の反射率
原点の移 動
∠
k
可
視域反射率
k十可視域反射率
図 5 S A V l の 導出
交 わる,点とし、簡略化 のため、土壌線 の切片 は0(β 2=0)ヽ 傾 きが1(β l=1)と 仮
定 してい る。例えば、 図 5(右 図)の 星印 (☆)に お ける反射率 を持 つ ときの SAVI
算出 を考 える。原点を白い丸 (○)か ら黒 い丸 (●)に 移動す る ことによって、可視
“
域お よび近赤外域 の反射率 の値 に、大 きさ k"分 ず つ追加する ことにな り、 これ ら
の値 を、表 2に 示す NDVI式 に代入す る。最小値 が -1、 最大値 +1に なるように正
規化す るための項 (1+L)を
掛 け合 わせ る ことで表 3に 示す SAVI式 が得 られる。
表 3に お ける指数中の Lと 図 5右 図にお け る kの 関係 は、L=2kで あ る。Lの 大 きさ
は0∼ ■0の範囲であ り、植生 の密度 と反比例 の関係 にあるとされるが、0.5が使 われ
る ことが多い。Lが 0の とき、SAVIの 式 は NAVIと 同 じもので あ り、仮 に Lを 100程
度 に大 きくした場合、等値線同士 は平行 に近 くなるこ とか ら、SAVIは 前述 の PVIと
同 じような植生指数 とな る。
Modifled SAVI,MSAVI K41多
正土壌調整植 生指数)は 、土壌 の影響 を最小化す るよ
うに、SAVIの L項 を修正 した ものであ り、Lの 項 を繰 り返 し計算 で最適化す ること
によって得 られる。具体的 には、 まず前述 の SAVIを 計算 し、その SAVIか ら次のス
テ ップにおけ るL項 となる L2を求 める (式 I)。L2を使 つて MSAV12を 求め る (式II)。
nを 大 きくしなが ら、繰 り返 し、MSAVInと LEを 求 める (式工 と式 III)。
(式I)
L2=1 SAVI
M[SAVIE
RNIR RRed
RNIR+RRedttLn
LE=1 MSAVIn_1 (n≧
×(1+LE) (n≧
2の とき)
3の とき)
nを 十分に大 きくす ると、式 I亜は Lェ=1-MSAVIEと
(式
(式
II)
ILE)
近似できるため、式 IIに代入
して以下のようになる。
0こ
MSAⅥ
n=臨
式 Ⅳ の MSAVInの
《
隼“ 輛 雨 専 輛
ミ
双 2 MSAⅥ
p
は
2次 式 につ い て 解 く と、表 3に 示す MSAVIを
生 と土壌 が混 ざって分布 して い るエ リアにお い て、NDVI(左
Ⅳ)
得 る。 図 6は 、植
区1)と MSAVI(右
図)
の 画 像 を作 成 した もの で あ る。 画 像 中心 部 の上 壌 が 特 に 多 く混 ぎる箇所 にお い て
MSAVIの
値 は相対的 に小 さ くな って お り、植生指数 にお い て■ 壌 の影響 が 考慮 され
て い る ことがわか る。
D
N
VI
O.8
0.4
0.0
*図 中 の 黒 い 線 (斜め の 大 い 線 )は 道路 で あ り、 そ の 他 の エ リア は 植 生 と土 壌
が 混 ざ って 分布 して い る.
図 6 N DVIと
MSAVlの
画像例
可視域 にお い て反射率が低 く、近赤外域 にお い て反射率 が高 い植物 の分光反射特性
を利用 して、上記 の よ うな植 生 指数 が開発 されて きてい る。 これ らの利点 は、使用す
るバ ン ドの数 が 少ない ため、街星 デ ー タの よ うなマルチ バ ン ドの リモ ー トセ ンシ ング
デ ー タに適用 で き、広域 かつ 高頻度 に植 生の状 態 をモ ニ タリ ングが 可能 な ことで ある。
N D V I か ら得 られ る情 報 は 植 生 の 密 度 の 大 小 に限 定 され るが、 落 葉樹 の 季 節 間 の
N D V I 変 化 か ら、 開葉や落葉 な どの植物季節 ( フェ ノロ ジー) の 推定 に利用 されてお
り、 ま た L A I ( L c a f A r e a l n d e x , 葉
面 積 指 数 )や FPAR(Fraction of Absorbed
) と 関連 づ け、生態系 モ
p h o t o s y n t h e t i c a l l y A c t v e R a d i 合成有効放射吸収率
adon,光
ー
ー
デ ルの 入カデ タとす る ことによ り、 グロ バ ル レベ ルでの植物 の純 一 次生産力 の推
定 も試み られて い る。
4.生 物多様性 モ ニ タ リング
生 態 系 は生 物 多様性 を保持 す る こ とで 、 食料 , 木 材 ・繊 維 な どの 「供給 的 サ ー ビス」
や栄 養循 環 ・酸 素 の生 成 な どの 「維 持 的 サ ー ビス」 を人類 に持 続 的 に提 供 す る こ とが
122
で きる。 しか し、 ここ数十年 の │ 1おに農地開発や森林伐採 な どの土 地被覆 変化 に起 因す
る生 物 多様性 の減少 が報告 されて い る。 私たちが 今後 も持続 的 に生態 系サ ー ビス を享
受す るには、生態系 の状況 をモ ニ タリング し、生物 多様性 に関す る情報 を収集 して い
くこ とが必 要 となる。
関東 中央部 にあ る渡良瀬遊水池 は本州最大 の面積 を持 つ 湿地 ( 約3 , 3 0 0 h a ) であ り、
エ キサ イゼ リや マ イブ ルテ ンナ ン シ ョウな ど、4 9 種の絶減危恨植物が生 育 して い るこ
とが 知 られて い る。生 物 多様性 の保 全のため には、絶減危倶植物 の分布状況 を知 る必
要 が あ り、今後の湿 地の管理計画 を考 えて い くうえで も重要 な情報 と位置 づ け られる
が、現地調査 によって湿地全域 の情報 を取得す る こ とは困難 で ある。湿地 には、 丈 の
高 い オギや ヨシが 優 占 して分布 してお り、その下 層 にお い て文 の低 い絶減危倶植物が
( a ) 渡 良瀬遊水池 ( 一部) の f a l s e c o l o r
合成画像 [ 青色 5 8 5 n m , 緑 色6 5 7 n m , 赤
色8 4 7 n m ] 、2 0 0 4 年5 月 2 1 日取得
( b ) オ ギの 推定 図
( C ) ヨ シの推定 図
、
o,,
0.2
0.1小
042・
0,3
04
0`3・
0「卜0.6
0,5・
046
o.6‐
0,7
0.7・
0,3
9_1.o
9‐
1.0
04880.O 0。
o。
オギ お よび ヨ シの エ ン ドメ ンバ ー との類 似 度
図 7 渡 良瀬 遊 水 池 にお け る ハ イ ブヾ― ス ペ ク トル デ ー タ画 像 と M a t c h e d F i l t e r i n gに
法よ
81
る オ ギ と ヨ シの 分 布 推 定
]23
分布 して い る。 オギや ヨシの分布特性 は土 壌水分や 日照 な どの環境条件 と相互 に関連
して、下層 の絶減危倶植物 の分布 を規定 して い るため、 リモ ‐ トセ ンシ ングによるオ
ギや ヨシの分布推定が有用な手法 と考 えられる。図 7は ハ イパ ースペ ク トルデー タ (波
長分解 能 が 高 い デ ー タ)を 使用 して、Matched Flltering法に よって、 オギ と ヨシそ
れぞれ の エ ン ドメ ンバ ー との類似度 を図示 した ものであ る。 エ ン ドメ ンバ ー とは、あ
る ピクセル にお いて構成要素 (ここではオ ギ もしくはヨシ)が 単 一 の場合 に得 られる
ス ペ ク トルの情報 で あ り、図 7の 類似度 は値 が1.0に近 い ほ ど、 オギ も しくは ヨシが
各 ピクセル にお い て優 占 して い ることを示 す。 オギ とヨシは と もにイネ科 の植物 で あ
り、 スペ ク トルの情報 も似 て い る。 したが って、 マルチバ ン ドの衛星 デ ー タでは植物
種 の情報 を抽 出す ることが難 しいが、航空 機 に搭載 したハ イパ ースペ ク トルセ ンサ ー
(セ ンサ ー名 :AISA;波 長域 398∼ 993nm;バ ン ド幅約9nm i68バ ン ド分)で 得 られ
た空 間解像度 1.5mの デ ー タを使用 す る こ とに よ り、オギお よび ヨシの 分布 に関す る
情報 が 得 られて い る。 オギについ ては、図 7に 示す類似度 と現地調査 で観測 した1面
あ た りの基 本数 の密度 との間に高 い相 関 (r=0,89)が 得 られ、本数 の密度 の分布 も
推定 で きた。 この例 のとお り、最近は波長 ・空間分解能が高 い リモ ー トセ ンシングデー
タの利用 が可能 とな り、 これ までは分類 が 難 しい と考 え られて い た枢物 の種 の判別や
河川敷 にお け る外来植物種 の分布推定 な ど も行 われつつ あ る。
5 日 おわ りに
ここでは、陸上生態系 の状態をおおまかに示す 「
植生」 を対象 として、植生指数お
よび生物多様性 モニ タリングの例 を簡単 に紹介 した。陸上生態系 は生物群 と非生物的
環境 の微妙なバ ランスの うえに成 り立 ってお り、温暖化な どの地球規模 での環境変動
や農地開発などの地域 的な環境変動 の影響 を受けやすい。例えば、衛星 デー タによる
1980年代以後 の植生のモニタリングでは、北半球高緯度 の広 い範囲にお いて温暖化に
起因する 「
植物 の生長期間の廷伸」が報告 されている。今後 も生態系 か らのサー ビス
を持続的 に享受す るためには、地球規模か ら地域にいたるまで、生態系 の状況をモニ
タリングしてい く必要があり、生態系 の情報 を示す 「
植生のモニ タリング」 の重要性
は増 している。近年の衛星センサーにおける空間分解能の向上や航空機搭載のハ イパー
スペ ク トルセンサ ーの開発な ど、高機能の リモー トセンシングデー タの利用環境が整
備 され るなかで、それ らデー タの特性 を活 か した発展的な植生のモニ タリングが可能
にな りつつあ る。
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