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体育科

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体育科
体育科<小学校第6学年>
企救丘小学校 教諭
研究主題
Ⅰ
竹 治 宏
泰
問いをもち、主体的に学び合う子どもを育てる授業の創造
目指す子ども像と目指す授業像
目指す子ども像
○ 目指す動きのイメージを明確にして、自分の動きとの違いから課題をもち、課題の解決に向けて、よりよい
動きを求め続け、確かな技能を身に付けていく子ども
目指す授業像
○ 子ども自らが目指す動きのイメージを明確にもち、実際の動きへの問いをもつ授業
○ 課題を適切に把握し、課題に応じた練習方法を選択しながら、子どもが主体的に課題解決を図る授業
○ 子どもが動きのポイントを集団の中で伝え合い、自分の動きに生かして技能を向上させる授業
主体的に学び合うことができる状況づくり
問いをもつ
視点2
学び合い
見合い、教え合い活動における視点の明確
一単位時間
問いをもつことができる状況づくり
全体を貫く問い
①
化
視点1
① 課題意識を高める単元導入と目指すイメー
ジの明確化
② 相互評価の工夫
問いをもち、主体的に学び合う子ども
子 ど も の 実 態
Ⅱ 研究の実際
1 授業研究Ⅰ
1 授業研究Ⅰにおける研究の視点
視点1 問いをもつことができる状況づくり
視点2 主体的に学び合うことができる状況づくり
① 目指す動きをイメージするための資料提示と動 ① イメージボードを活用した話合い活動と見る視
きのヒント(4つのくずし)の提示
点を明確にして「まね」をする見合い活動
② 付箋を活用した相互評価活動
2 授業研究Ⅰの実際
⑴ 単元名 レッツ! ドラマチック・スポーツ「群(集団)が生きる題材」
⑵ 目 標
運動への
○ 恥ずかしがらず、進んで表現しようとする。
関心・意欲・態度 ○ 友達と協力して話し合ったり、楽しく踊ったりしようとする。
○ 「スポーツの攻防」から、表現したいことのイメージを広げ、それにふさわしい表
運動についての
現の仕方を工夫することができる。
思考・判断
○ 友達の動きを見て、そのよさを見付けることができる。
1
○ 「スポーツの攻防」から連想するものを、即興的に表現することができる。
○ 題材の変化や起伏の特徴をとらえ、ひとまとまりの動きで表現することができる。
指導計画(総時数6時間)
運動の技能
⑶
1
学習のねらいを知り、単元の見通しをもつ。
⑴ 盛り上がる場面をひと流れの動きで踊る。
<視点1①>①
<視点1②><視点2①>
2 3つのスポーツ(バスケットボール・サッカー・
⑵ 盛り上がる場面を強調して、ひと流れの動き
で踊る。 <視点1①②><視点2①>【本時】
バレーボール)の攻防から、イメージをふくらま
せ、思いつくままに即興的に踊る。
① 4 「はじめ-なか-おわり」をつけた簡単なひとま
3 好きなスポーツを選び、盛り上がる場面を強調
とまりの動きにして踊る。
<視点2①>①
して、ひと流れの動きで踊る。
② 5 発表会をする。
①
⑷ 本時の学習
(第三次第2時)
① 主 眼
スポーツの盛り上がる場面について、スローモーションやコマ送りなどに着目しなが
ら、イメージボードを活用してグループで踊ったりペアグループで見合ったりする活動
を通して、場面が強調されるようにひと流れの動きで踊ることができるようにする。
② 展 開
主な学習活動
◎ 研究の視点に沿った手だて
【観点】評価規準(評価方法)
◎
アニメの一場面を見て、場面の強調のためには、特にリズムの
1 ウォームアップをする。
くずし(スローモーション・コマ送り)が効果的であることに気
2 本時のめあてを設定する。
付くようにする。
<視点1①>
めあて
3
盛り上がる場面が強調されるように、工夫して表現しよう。
盛り上がる場面が強調されるよ
イメージボードで前時の動きを確認し、スローモ―ション・コ
マ送りをどこに入れるかを表現しながら考え、踊りを工夫するよ
うに工夫して踊る。
うにする。
<視点2①>
⑴ 前時に考えた動きを想起する。
◎ 「場面が強調されていたか」
「体全体で踊っていたか」という視
⑵ イメージボードを使って話し
点から、アドバイスをボードに貼ることで、お互いに踊りを工夫
合い、踊りを工夫する。
するようにする。
<視点1②>
4 ペアグループで動きを見合い、更 ◎ 手本となるグループの踊りをまねさせることで、具体的な動き
に工夫して踊る。
を身に付けるようにする。
<視点2①>
⑴ ペアグループで見合いをする。 【思】友達の動きを見たり、まねしたりして、動きのよさを見付け
(行動観察・記録分析)
⑵ グループで話し合い、動きを修 ている。
【技】強調の動きを使って、体全体で表現して踊ることができる。
正し、更に工夫を加えて踊る。
(行動観察・映像分析)
5 本時学習を振り返る。
授業後の考察
子どもの実態
授業改善の余地
⑸
◎
○
ほとんどの児童が、「表現運動が好き」と答
えるようになり、「表現運動は、体育の苦手な
私でも活躍できて楽しかった」という声があっ
た。また、動きのレパートリーが増え、全身で
踊る児童が増えた。
視点1の有効性や課題、新たに分かったこと
① 動画や写真による資料提示で、単元全体を通し
た課題意識をもつことができた。特にアニメの一
場面は効果的であった。また、4つのくずしの、
リズムや身体を重点としたことで、課題が明確に
なり、めあて意識をもって学習した児童の割合が
単元の進行とともに高まった。
② 付箋をボードに貼り合うことで、課題の整理が
○
即興的な表現に関して課題が残った。最初
に、題材のイメージから表現した個々の動きを
まずほめる指導が重要である。
○ 低・中学年との動きの系統性を明確にした指
導計画を立てることが必要である。
視点2の有効性や課題、新たに分かったこと
① イメージボードの活用により、自分やグループ
の動きと位置を視覚的に確認しながら、考えを交
流し合い、更に踊りを工夫することができた。ま
た、まねする活動を取り入れることで、動きのレ
パートリーが少ない児童でも「友達の動きをまね
することで、どう動けばよいか分かった」と踊り
を改善することができた。
容易になり、踊りの改善点が明確になった。
2
2
授業研究Ⅱ
1
授業研究Ⅱにおける研究の視点
視点1
①
問いをもつことができる状況づくり
視点2
つなぎ技への課題意識を高める単元導入と、動
①
主体的に学び合うことができる状況づくり
技のポイントを共有した、「試す」活動の実施
画による目指すイメージの明確化
②
自分の動きの視覚化及び相互評価の工夫
2
授業研究Ⅱの実際
⑴
単元名
⑵
単元設定の理由
○
6年4組マット運動(器械運動
マット運動)
本学級の児童(男子18名、女子19名、計37名)は、体を動かすことが好きで、体育の授業
に関する調査においても、楽しく学習したりルールを守って学習したりできているという児童が8
割以上いる。一方、積極的に運動する児童とそうでない児童の二極化が見られ、運動に対して自信
がない児童が4割であった。マット運動については、回転技において、回転することはできるが、
技の終末姿勢が安定しない児童が多い。また、倒立技においては、第一学期に補助倒立の経験があ
るが、自力で倒立の姿勢をつくることについては、依然として難しい実態がある。
児童は第一学期の表現運動において、目指す動きのイメージをもち、動きのよさや課題を見合い、
教え合う活動を通して、進んで学習することができた。
本単元においても、一つ一つの技のイメージを基に、実際の自分の動きとのずれを感じながら、
技のポイントを理解することができるようにするとともに、自分の力に応じた練習の場や段階を選
択して学び合う場を設定することで、確かな技能を身に付けることができるようにしたい。
○
マット運動は、非日常的な姿勢変化を伴う運動であり、できそうな技に挑戦したり、技の組合せ
を工夫したりすることが楽しい運動である。「できる」
「できない」がはっきりとした運動であるた
め、技の習得においては、基盤となる運動感覚を身に付けさせたり、習得の段階をきめ細かく設定
したりして、一人一人にできる喜びを味わわせることが重要となる。
高学年では、基本的な技の安定や発展技の習得に加えて、技を繰り返したり組み合せたりするな
ど、技と技を「つなぐ」ことがねらいとなる。そこで本単元では、技の繰り返しや組合せを中心に
据えた学習計画を立て、より多様なオリジナルの「つなぎ技」にするために、できる技の種類を増
やすことへの意欲を喚起したい。また、その過程で技と技をスムーズにつなぐための動き(技の終
末姿勢)の重要性に気付かせることで、一つ一つの技の完成度も高めるようにしたい。
○
指導に当たっては、第一次で単元を貫く課題意識をもつことができるように、マットを5枚並べ
た場で今できる技をつないでみる。その後、自分の実際の動きをVTRで確認し、技を繰り返した
り組合せたりする(つなぐ)ためには、終末姿勢まで安定した技の習得や習熟が重要であることに
気付かせたい。
第二次では、各時間において技の習得と習熟を目指すねらい1の活動と、技の繰り返しや組合せ
に取り組むねらい2の活動を行う。ねらい1では、スモールステップの練習場所で技の確実な習得
を図ることができるようにする。基礎的な感覚となる腕支持感覚や逆さ感覚・回転感覚等を身に付
けるための予備的運動を毎時間位置付けるとともに、視点を明確にした見合いや簡単な補助をとも
なう教え合いを行ったり、映像遅延装置を活用したりして、一人一人が適切な場や練習方法を選択
して練習することができるようにする。ねらい2では、習得した技を繰り返したり、組合せたりし
て楽しむことができるようにする。技と技のつなぎ方については、まず前転-前転など、一方向の
つなぎを経験した後、前転-後転など、反転が必要なつなぎを経験させることで、段階的につなぎ
の技に着目できるようにし、より長く、自由に、技と技をつなぐ楽しさを味わうことができるよう
3
にする。
第三次では「マット発表会」を行う。一人一人が自由につないだオリジナルのつなぎ技を発表し、
第一次で録画した自分の姿と比較することで、自分や友達の成長を認め合えるようにしたい。
⑶
目
標
○
運動への
関心・意欲・態度
運動についての
思考・判断
技の習得、習熟のための練習や技の繰り返し及び組合せについて自分のめあて
をもち、進んで取り組もうとしている。
○ 器械・器具の安全に気を配り、約束を守り、友達と助け合って運動しようとし
ている。
○ 技を習得したり、習熟したりするための、自分の力に応じた練習の場を選び、
技のポイントを意識して練習することができる。
○ 自分や仲間の技やつなぎ方について、ポイントに沿った課題を見付け、アドバ
イスをすることができる。
○ 技を繰り返したり、組み合せたりするためのつなぎ方について理解し、スムー
ズな技の構成を考えることができる。
安定した基本的な回転技(前転・後転)や倒立技(壁倒立)、及び発展技(大
きな前転・開脚前転・開脚後転・補助倒立)ができる。
○ つなぎの技を使ってできる技を繰り返したり組み合せたりすることができる。
○
運動の技能
⑷
指導計画(総時数8時間)
主な学習活動・内容
1
指導上の留意点
学習全体のめあてと見通
しをもつ。
○
【関】イメージと実際の動きとの
①
ずれに気付き、自分なりの目標を
自分の動きを録画したVTRを視聴 立てている。
今できる技をつないで ○
自己評価する。
し、イメージと実際の動きのずれを確
(記述分析)
VTRで実際の動きを
認させるとともに、技をつなぐために 【関】器械・器具の安全に気を付
見て再度自己評価する。
は、技の種類と完成度が重要であるこ けて、約束を守り、友達と助け合
○
○
とに気付かせ、学習全体のめあてを設 って運動しようとしている。
学習全体のめあてと見
定する。
通しをもつ。
2
【観点】評価規準(評価方法)
基本的な技や更なる発展
技に取り組み、技を繰り返
したり、組み合せたりする
⑥
⑴ 安定した前転、大きな
前転の練習をし、できる
技をつなぐ。
⑵ 開脚前転の練習をし、
できる技をつなぐ。
⑶ 前転系の基本的な技や
更なる発展技の練習をし
3つの技をつなぐ。
・安定した前転
・大きな前転
・開脚前転
・(跳び前転)
○
<視点1①>
(行動観察)
ねらい1では、技の習得や習熟を目
指し、ねらい2では繰り返しや組合せ
を行うようにする。
第2時から第7時までの各時において
【思】技のポイントに気付きそれ
は、ねらいに応じて以下のような共通し
を意識して、自分の力に合った場
た手だてをとる。
で練習することができる。
(ねらい1-技の習得と習熟)
○
動画を見て目指す技のイメージを
明らかにする。【本時】<視点1①>
○
グループで様々な動き方を試しな
がら、動きのポイントを体感できるよ
うにする。
○
【本時】<視点2①>
課題別練習の場を準備し、自分に合
った場で教え合うことができるよう
にする。
4
(行動観察、記述分析)
⑷ 開脚後転の練習をし、
3つの技で反転の動きを
取り入れてつなぐ。
【本時】
・開脚後転
・(伸膝後転)
⑸ 倒立系の技の練習をし
4つの技をつなぐ。
・頭倒立
・補助倒立
・(補助倒立前転)
⑹ 学習した技の完成度を
高め、発表会に向けた技
の構成を考える。
○
映像遅延装置で実際の動きを確認
【思】自分や仲間の技やつなぎ方
し、課題を発見したり、教え合ったり
について、ポイントに沿った課題
するようにする。
を見付け、アドバイスをすること
<視点1②>
(ねらい2-繰り返しと組合せ)
○
ができる。
(行動観察、記述分析)
グループ単位で見合い、一人一人の
技の出来栄えやつなぎ方について相
【技】安定した基本的な回転技や
互評価し、次時への課題意識をもつこ
倒立技、及び発展技ができる。
とができるようにする
(行動観察、記述分析)
【本時】<視点1②>
○
【思】技を繰り返したり、組み合
長い繰り返しや組合せへと発展させ
せたりするためのつなぎ方につ
ることができるようにする。
いて理解し、スムーズな技の構成
○
マットの数を段階的に増やし、より
技と技をつなぐ方法について考え
を考えることができる。
させ、よりスムーズにつなぐ動きを身
(行動観察、記述分析)
に付けることができるようにする。
3
発表会をする。
① ○
VTRで第一次の動きと比較するこ 【技】つなぎの技を使って、でき
○
つなぎ技を発表する。
とによって、お互いの成長を見付け合 る技を繰り返したり組み合せたり
○
自分や友達の成長を認
い、認め合うことによってできた喜び することができる。
め合う。
⑸
(行動観察、記述分析)
を味わえるようにする。
授業の実際
①
主
眼
グループで開脚後転のポイントを見付け、それを意識して練習する活動を通して、終末姿勢まで
安定した開脚後転をすることができるようにする。また、開脚後転を取り入れた繰り返しや組合せ
のつなぎ技ができるようにする。
②
準
備
教師…ビデオカメラ・HDDレコーダー・TVモニター
児童…マット・踏み切り板・学習カード
③
展
開
主な学習活動・内容
1
準備運動と予備的運動をする。
・ゆりかご ・補助倒立 等
本時学習のめあてを確認する。
2
めあて
3
○
指導・支援上の留意点
【観点】評価規準(評価方法)
◎
視点1、視点2に関わる手だての詳細
○
一つ一つの運動が大きく、正確にできるように技のポイント
を意識しながら、予備的運動を行うようにする。
開脚後転の練習をし、自分のつなぎ技に生かそう。
ねらい1の活動をする。
終末姿勢まで安定した開脚後転を身
に付けよう。
⑴ 開脚後転のイメージをもち、動き
のポイントについて考える。
<視点1①>つなぎ技への課題意識を高める単元導入と、動
画による目指すイメージの明確化
◎ まず、本時で目指す、自分のつ
なぎ技についてイメージさせ、終
末姿勢まで安定した開脚後転を
習得することへの意欲を高めた。
その後、手本となる動画を見
て、目指す動きのイメージをつく
るとともに、気付いた開脚後転の
ポイントを発表させ、図に書き込
【ポイントを図に書き込む様子】
んだ。
5
⑵
グループで開脚後転に挑戦し、開
脚のタイミングについて課題意識
をもつ。
⑶ 開脚のポイントを体感した後、課
題別グループで練習する。
⑷ 再度グループで見合う。
【思】自分や仲間の技やつなぎ方について、ポイントに沿った課
題を見付け、アドバイスをすることができる。
(行動観察、記述分析)
<視点2①>技のポイントを共有した、「試す」活動の実施
(グループで開脚後転に挑戦し、開脚のタイミングについて課題意識をもつ場面)
◎ まず、グループで開脚後転を試し、先に確認したポイントに沿って見合うことで、イメージ通りに
できていない部分を出し合った。開脚の角度や膝の伸び具合など、個別の課題が明らかになるととも
に、開脚のタイミングは全員の課題であることを確認し、ねらい1での共通課題とした。
(開脚のポイントを体感した後、課題別グループで練習する場面)
◎ 次に、開脚のタイミングを確かめるための試す活動を行った。その結果、最適なタイミングは「脚
が頭の上を越えた後」であり、そのタイミングで「今」と声をかけられると感覚がつかみやすいとい
うことが分かった。
◎ その後、個別の課題に合った場に移動し、課題別のポイントと共通課題となった開脚のタイミング
を意識しながら教え合うようにした。また、その際には、映像遅延装置を設置し、常に自分で動きを
確認することができるようにした。
お尻を遠くについて勢
いよく回転できたね。
【課題別練習の場】
① 回転力不足→坂マット
② 膝が伸びていない→ゆりかご
③ 開脚の角度が小さい→段マット
④ 自分の動きを確認する場
⑤ 伸膝後転に挑戦する場
つま先を前に
すると膝がピー
ンと伸びるよ。
【ゆりかごの場】
【坂マットの場】
(再度グループで見合う場面)
◎ 課題別練習の後は、再度グループでお互いの開脚後転を見
合い、最初の動きと比較して教え合うようにした。一人ずつ
今のは ど
試技させ、気付いたことをその場でアドバイスするととも
うだった。
に、3回試技することで、アドバイスを受けた児童が、すぐ
に動きを修正することができるようにした。
【グループでアドバイスする様子】
4
ねらい2の活動をする。
○ 反転の動きが必要になることに気付かせ、ジャンプによる反
後転や開脚後転を入れたつなぎ技をつ
転の動きを入れてつなぐようにする。
くろう。
大きな前転→開脚前転→開脚後転
後転→開脚後転→大きな前転
<視点1②>自分の動きの視覚化及び相互評価の工夫
◎ 一人ずつ試技をした後、技のできばえとつなぎ方について、そ
の都度相互評価して伝えるようにした。その際、アドバイスカー
ドを活用し、技のポイントに沿った適切な評価ができるようにし
た。児童はカードを見ながら友達の課題を発見し、アドバイスし
【つなぎ技の相互評価の様子】
たり、次時のめあて設定に生かしたりすることができた。
5 本時の学習を振り返る。
【技】安定した基本的な回転技や倒立技、及び発展技ができる。
(行動観察)
○ 本時でつかんだ感覚や新たに気付いたこと、友達のよい動き
6 整理運動・片付けをする。
を発表させるとともに、マットの数を増やし、さらに技をつな
ごうとする意欲をもたせる。
6
⑹
授業後の考察
視点1の有効性や課題、新たに分かったこと
①
つなぎ技への課題意識を高める単元導入と、動画による目指すイメージの明確化
○ 単元導入では、マットを5枚つなげた場を用意し
T :開脚後転のポイントはどこでしょうか。
た。この時の児童の実態では、同じ技の連続が中心
動画を見て気付いたことを発表しましょう。
C1:お尻を遠くに着いています。
(図に記入)
になってしまうため「この長いマットの端から端ま
T
:そうだね。後転の時もお尻を遠くに着くと回転
で技をつないでみたい」という意欲を喚起すること
の勢いがついたね。その他はどう。
ができた。また、この試技をビデオに録画し、その
C2:膝をグッと伸ばして後方に回転しています。
場で視聴させた。自分がイメージした動きと実際の
T :それは図で言うとどの部分かな。(図に記入)
動きの違いを感じるとともに、技をつなぐためのポ
C3:開脚姿勢のまま立っています。
(図に記入)
イントとして、一つの技の終わりの部分が次の技に
C4:脚を左右に大きく開いています。
T :いつ開くのかな。
つながることに気付くことができ、技の完成度につ
C3:足が着く直前の最後で開脚するのがよいです。
いても意識が高まった。授業終了後の児童の感想で
T :なるほど。ではグループで確認してみよう。
も、82%の児童が「技をつなぐためには、技の完
成度を高めてみたいです」
「できる技の種類を増やし
ていきたいです」と記述し、つなぎ技をつくるため
の課題意識が高まった。
第2時からは、導入時にその授業で習得をねらう
技の動画を視聴させ、目指す動きのイメージが明確
になるようにした。その際、技の連続図を示し、動
【資料1 動画と図による動きのイメージの明確化】
画と併せて技能のポイントについて発表させた。
資料1のように、児童の発言を教師が図の中に書き込んでいくことで、動画で見た目指す動きのイメ
ージを、具体的な技のポイント(本時の課題となる動き)として明確にすることができた。
資料2は本単元における児童の課題意識に関する形成的授業評価の推移を示したものである。単元が
進むにつれて、児童の課題意識が高まっていることが分かる。また、資料3は、事前の調査で運動が苦
手だと答えたN児の授業後の感想を抜粋したものである。毎時間、自分の課題を適切に把握し、その課
題を次時に解決するための見通しをもっている。このようなことから、つなぎ技への意識を高める単元
導入や動画によるイメージの明確化は、児童一人一人が目指す自分の課題をもって進んで活動すること
に有効であったと考える。
第3時
毎時間の自己評価(4点満点)の平均点
【資料2 課題意識に関する形成的授業評価の推移】
大きな前転のとき、角度を大きくして最後に速く足を
引き付けたらうまくいくことが分かった。次はそこを意
識してがんばる。
第4時
大きな前転は、角度を広くしてできた。開脚前転では、
足を開くタイミングが早過ぎたから次は、直前で開くよ
うにしたい。手でぐっと押して最後にふらふらしないよ
うにする。
第5時
大きな前転で、膝が曲がっているから手を遠くに着い
て膝が曲がらないようにする。開脚前転は、立てない時
があるから、次は、膝をピーンと伸ばしてもっと勢いを
つけるようにがんばる。
【資料3 動画と図による動きのイメージの明確化】
自分の動きの視覚化及び相互評価の工夫
(試技した後)
○ 課題別練習の際には、映像遅延装置を設置し、練習中に C4:今のは自分ではなかなかよかったけど、
どうなってるかな。(動画で確認)
いつでも自分の動きを確認できるようにした。遅延を30
C4:まだ膝が伸びてないなあ。
秒程度にすることで、スムーズに確認することができた。
C5:でも1回目よりはよいと思うよ。
授業後の調査では、全ての児童が練習中に一度は自分の C4:ゆりかごの場に
動きを確認し、もう一度自分の課題の場で練習したことが
行って膝を伸ば
分かった。児童は、自分の実際の動きを見て、改善点に気
す練習をしてか
らもう一度見に
付き、次の動きに生かしながら繰り返し練習に取り組んで
来よう。
いた。授業の導入段階で見た動画のイメージや共有化した
【資料4 映像遅延装置を活用した動きの確認】
7
②
技のポイントと実際の動きを見比べることで、自分の動き
見るポイントが自然と焦点化され、資料4のよ
うに自分の動きの改善点を見付けながら活動す
ることができた。
技のできばえ、
○ ねらい2として位置付けた、習得した技を繰
つなぎについて
相互評価する。
り返したり、組み合わせたりする活動では、ア
気付いた課題
ドバイスカード(資料5)を活用して相互評価
を記入し、授業後
を行った。アドバイスカードには、見るポイン
に切り取って、本
トを示し、このポイントに沿って技のできばえ、
人へ渡す。
つなぎ方、友達からのコメントを書き込めるよ
技ごとの見るポイントを絞って明
うにした。見るポイントを明確にすることで、
示。これに授業で確認したポイントを
資料6のように適切な見合いが行えるようにな
加えて見合いを行う。
り「膝が伸びていたよ」
「開脚するタイミングが
早いから脚が頭を越えてから開脚するといい
よ」などと、カードを基にして友達の動きの課
【資料5 アドバイスカード】
題を発見し、伝える姿が見られた。
学習後調査では、全ての児童が、カードが役に立ったと回答し、その理由として多かったものが「着
目するところが分かる」「自分の課題が分かる」であった。また、アドバイスカードは授業後に切り取
り、本人に渡した。これを個人カードに貼り付けることにより、児童一人一人がグループの仲間からの
評価やアドバイスの内容を蓄積し、次時に取り組むべき課題を明確にすることができた。
(C6「開脚前転を含むつなぎ技」の試技)
C7:膝が曲がっていて腰の開きも90°以上ではない
からできばえは△かな。
C8:つなぎはスムーズだから◎だよ。
C9:(C6に)まず、膝をピーンと伸ばすことから気を
付けるとよいよ。
カードで視点
が分かるよ。
【資料6
アドバイスカードによる相互評価の様子】
視点2の有効性や課題、新たに分かったこと
① 技のポイントを共有した、「試す」活動の実施
○ 導入場面での動画で技のイメージをとらえ、ポイ
開脚後転のポイントは脚を開
ントについて共有した後と課題別練習の際に「試す」
くタイミングだったね。
活動を行った。導入場面では、動画で気付いたポイ
C10:足が着く直前に脚を開く
ントを、グループで確認しながら試すことで、資料
って難しいなあ。
7のように、自然に教え合いが行われ、目指す動き
C11:頭を越えてから開くと丁
はい、今。
を習得するための課題に気付くとともに、課題解決
度よいと思うよ。
のための方法を見付けることができた。この活動で
C10:確かめてみよう。
新たに気付いたポイントについては、全体の場でも
C11:はい、今。
共有し、その後の練習でも生かすようにするととも
C10:その合図、いいね。
T
:みんなにも教えてね。
に、授業後には個人で気付いたポイントも含めてカ
ードの図に書き加えた。
資料8に示す通り、児童は自分の感覚に合った具 【資料7 動きのポイントを試す場面】
体的な動きのヒントとして、多くのポイントを書き込んでいた。
全員で共有した技のポイント
【資料8
S児が学習カードに書き加えた技のポイント
児童が書き加えた動きのポイント】
8
○
課題別練習やその後、グループで再度見合う場面で
の試す活動では、導入時の「試す」活動で明確になっ
練習前より上
手くなったよ。後
は立つ部分だね。
た目指す動きを習得するためのポイントに沿って、友
達の課題を適切に判断し、進んで教え合いをすること
ができた。また、3回連続で試技してよいとしたこと
で、資料9のように、友達が「できるようになる」ま
で何度もアドバイスする姿が見られた。これまでの実
践では、次の試技までに時間が空き、アドバイスをす
C12:最後にぐっと手で押すときれいに立てるよ。
C13:もう一回やってみて。
(試技)
C12:はい、今。ぐっと力を入れて。
C13:惜しい。手の平で一気に押してみて。
(試技)
C12:OK。その感じだよ。
る側も受ける側も、ポイントを忘れてしまうことがあ
今!ぐっと力
を入れて!
すごくよくな
ったね。
ったが、アドバイスの後にすぐ試すことで、動きを改
善しやすくなった。
資料10は単元における形成的授業評価の推移を4
つの観点から分析したものである。単元が進むにつれ
【資料9
て、全ての数値が向上している。特に新たなことがで
きるようになる等の「成果」の伸びは著しいものがあ
3
る。自分の課題に向かって何度も練習する等の「学び
2.9
方」や友達と協力して練習する等の「協力」そして「意
2.7
欲・関心」が高い数値を維持しつつ向上し続けること
が、「成果」の伸びに関わっていることが推察される。
○
資料11は単元終了後の、回転技(前転系)及び倒
立技の習得状況(教師による3段階の評価)を表した
ものである。単元導入時は前転、大きな前転、後転の
2.8
2.6
2.5
2.4
2.3
2.2
毎時間9項目(3点満点)の自己評
価を4つの観点から整理したもの
2.1
2
1時
2時
くの児童が「技ができている」状況となり、
ねらい1で目指した技の習得と習熟は達成
されたと考える。
また、ねらい2の「つなぎ技」について
も大きな成果があったといえる。
資料12は、第1時と第8時に児童がつ
ないだ技の種類を比較したものである。第
3時
成果
3つの技しかつなぐ技がなく、その技も終末姿勢まで
安定しないものだったが、授業後には、このように多
グループでの教え合い】
4時
意欲
関心
5時
6時
学び方
7時
8時
協力
【資料10 形成的授業評価の推移(4観点)】
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
1時では同じ技の連続しかできなかった児
童が、多くの技をつなぐことができるよう
A
になった。また、資料13に示すように、
増やした自分の技をつなぎ、オリジナルの
「つなぎ技」を完成させることができた。
技の種類
1
2
3
第1時
4人
18 人
15 人
4
5
平均
2.3 種類
第8時
2人
7人
28 人
4.7 種類
A
B
C
B
C
前転
大きな前転
開脚前転
後転
開脚後転
頭倒立
補助倒立
36
26
19
17
18
15
18
1
11
16
16
16
19
16
0
0
2
4
3
3
3
教師による3段階の技能評価。A「終末姿勢まで安定」B「技
ができている」C「技ができていない」として評価している。
単元導入時の実態については、3つの技のみ評価し、その結果
は次の通りである。
前転
A
8人 B 24人 C
5人
大きな前転 A
0人 B
9人 C 28人
後転
A
3人 B 21人 C 13人
【資料11 技の習得状況】
【資料12 つなぎ技における技の種類】
9
第1時
第1時では、技の数が少なく、終末
姿勢が安定していないため、技をつな
げなかったが、第8時では、多様な技
をつなぐことができた。
前転
側方倒立回転
前転
〈K児の感想〉
できる技が増え、つなぎも安定する
ようになったので嬉しかったです。
第8時
前転
開脚前転
後転
開脚後転
倒立前転
【資料13 K児の第1時と第8時のつなぎ技の変容】
Ⅲ
研究のまとめ
1
研究の成果
⑴
視点1の手だて
①
「課題意識を高める単元導入と目指すイメージの明確化」について
授業研究Ⅰ、授業研究Ⅱともに動画の活用が効果的であった。特に授業研究Ⅰの表現運動では、
アニメの一場面が児童の課題意識を大いに高めた。授業研究Ⅱにおいても、目指す動きを毎時間視
聴することで、短時間でいくつものポイントを見付け出すことができるようになった。加えて、映
像遅延装置を活用したことで、児童一人一人が実際の自分の動きと目指す動きを比較して、課題を
発見することができた。また、授業研究Ⅱでのマットを5枚並べた場を用いた導入も、
「もっと技を
増やしたい」
「技を最後まで安定させたい」という児童の課題意識を高め、それを継続することにつ
ながった。体育科における「場の設定」の重要性を改めて感じた。
②
「相互評価の工夫」について
授業研究Ⅰでの付箋の活用や授業研究Ⅱでのアドバイスカードによって、児童が進んで相互評価
を行うことができた。どちらにおいても、事前に評価の規準を示しておくことによって、お互いの
課題が明らかになり、新たな課題意識につながった。特に授業研究Ⅱにおいては、友達からのアド
バイスカードを自分の学習カードに貼って蓄積させることで、自分の課題を整理し、次時の自分の
めあてへとつなげることができた。
⑵
視点2の手だて
①
「見合い、教え合い活動における視点の明確化」について
授業研究Ⅰでは「まね」、授業研究Ⅱでは「試す」活動が主体的に学び合うための手だてとして有
効であった。いくつもある動きのポイントの中から、全員に共通する課題となるものを絞って提示
し、実際に体を使いながら考えることで、どの児童も、自分の感覚を基にして動きのポイントを伝
え合うことができた。
以上のことから、視点1、視点2の手だてにより、児童が目指す動きのイメージを明確にもち、よりよ
い動きを求め続けるとともに、学び合いを通して確かな技能を身に付けることができた。
2
今後の課題
○
運動領域に応じた「児童が自然と動きたくなる場」の在り方について試行を重ねる必要がある。
○
教え合いの場面において、アドバイスカードでの評価が中心になり、具体的なアドバイスが少ない
グループが見られた。また、言語によるアドバイスでは課題を解決できない児童もいた。
「児童相互の
補助」を取り入れ、お互いの感覚を認めながら学び合う体育科の授業づくりを行っていきたい。
<参考文献>
・文部科学省
「学校体育実技指導資料
第10集
器械運動指導の手引き」
10
平成27年
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