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Page 1 Page 2 の言青求及び原告らの被告沖県に対する請求をいずれ

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Page 1 Page 2 の言青求及び原告らの被告沖県に対する請求をいずれ
平成 19年
3月 14
平成 15年
( ワ) 第 9 1 6 号
日判 決 言 渡 同 日原 本 領 収 裁 判 所 書 記 官
損 害 賠 償 請 求 事 件 ( 口頭 弁 論 終 結 日 平 成 1 8 年
月 2 5 日)
H三
J
原
決
告
別 紙 原 告 目録 記 載 の とお り
原 告 ら訴 訟 代 理 人 弁 護 士
沖縄 県 宮 古 島市 平 良字 西 原 3 0 5 番
正
三
地の 2
成 介 子
健 貫 竜
山 田 田
崎 奥 奥
生回 士
被 同 同
訴訟 代 理 人 弁護
梶
那覇市泉崎 1丁 目2番 2号
表
者
知
片
口
沖
事
仲
県
縄
井 ツ
同
代 認
被
県
弘
多
角
直
正
浅
野
秀
樹
久
田
友
弘
同
下
地
岳
芳
同
新
里
同
平
良
同
昭
屋
同
代 理 人 弁 護 士
同
同
指
定
代
理
人
薫
友 盛
弘
実
文
主
1 被 告 崎 山健 成 は , 原 告 らに対 し, そ れ ぞ れ 別 紙 認 容 額 一 覧 表 の 各 原
告 氏 名 欄 に 対 応 す る認 容 額 欄 記 載 の 各 金 員 及 び これ に 対 す る 平成 1 3
年 11月
2 8 日 か ら各 支 払 済 み ま で , 年 5 分 の 割 合 に よ る金 員 を支 払
え。
2 原 告 立 津 ヒデ を除 くそ の 余 の 原 告 らの 被 告 崎 山健 成 に 対 す るそ の 余
-
1
-
1
の 請 求 及 び 原 告 らの 被 告 沖縄 県 に 対 す る請 求 を い ず れ も棄 却 す る。
3 訴 訟 費 用 は , 原 告 立 津 ヒデ に生 じた 費 用 の 2 分 の 1 と 被 告 崎 山健 成
に生 じた 費 用 の 8 8 分 の 1 を 被 告 崎 山健 成 の 負 担 と し, 原 告 立 津 ヒデ
を除 くそ の 余 の 原 告 らに生 じた 費 用 の 2 分 の 1 と 被 告 崎 山健 成 に生 じ
た費用 の 8 8 分 の 8 7 は
これ を 2 分 し, そ の 1 を 原 告 立 津 ヒデ を除 く
そ の 余 の 原 告 らの 負 担 と し, そ の 余 は 被 告 崎 山健 成 の 負 担 と し, 原 告
らに生 じた 費 用 の 2 分 の 1 と 被 告 沖縄 県 に生 じた 費 用 は , 原 告 らの 負
担 とす る。
4 こ の 判 決 は 第 1 項 に 限 り仮 に 執 行 す る こ とが で き る。
事 実 及 び 理 由
第 1 請 求
被 告 らは , 連 帯 して , 各 原 告 に 対 し, 別 紙 原 告 損 害 額 一 覧 の 当該 原 告 に係 る
合 計 額 欄 記 載 の 各 金 員 及 び これ に 対 す る平 成 1 3 年
11月
2 8 日 か ら各 支 払 済
み ま で , 年 5 分 の 割 合 に よ る金 員 を支 払 え。
第 2 事 案 の概 要
本 件 は , 原 告 らが , 被 告 崎 出健 成 ( 以下 「
被 告 崎 山」 とい う。 ) が 経 営 して
い た産 業 廃 棄 物 処 分 場 ( 以下 「
本 件 処 分 場 」 とい う。 ) に お い て 平 成 1 3 年
1
1 月 2 8 日 に発 生 した 火 災事 故 ( 以下 「
本 件 火 災 」 とい う。 ) に つ い て , 被 告
崎 山 に 対 して は , 民 法 7 0 9 条
の 不 法 行 為 あ る い は民 法 7 1 7 条
の 工 作 物 の設
置 , 保 存 の 戦 疵 に よ る不 法行 為 責任 に基 づ き, 被 告 沖縄 県 に 対 して は , 沖 縄 県
知 事 が 廃 棄 物 の 処 理 及 び 清 掃 に 関す る法 律 ( 平成 1 3 年 法 律 第 1 3 8 号
に よる
改 正 前 の もの。 以 下 「
廃 棄 物 処 理 法 」 とい う。 ) 等 に基 づ く被 告 崎 山 の 業 務 に
対 す る監 督 権 限 の 適 正 な行 使 を怠 り, 本 件 処 分 場 にお け る被 告 崎 山 の 日常 的 な
違 法 操 業 行 為 を看 過 し, そ の 結 果 , 本 件 火 災 の 発 生 に つ な が っ た と して , 国 家
賠 償 法 1 条 1 項 等 に基 づ き , 原 告 らが本 件 火 災 に よ っ て 被 っ た 損 害 の 賠 償 及 び
不 法 行 為 の 日か ら民 法 所 定 の 年 5 分 の 割 合 に よ る遅 延 損 害 金 の 支 払 を求 め る事
-2-
案 で あ る。
1 前 提 事 実 ( 当事 者 間 に 争 い が な い か , 弁 論 の 全 趣 旨 に よ り認 め られ る。 )
( 1 ) 当 事者
原 告 らは , 本 件 火 災 当時 , 本 件 処 分 場 の 北 西 約 1 . 3 キ
る宮 古 島 市 平 良 ( 宮古 島 市 は , 平 成 1 7 年
10月
ロ メ ー トル に 存 す
1 日 合 併 に よ り成 立 。 合 併
以 前 は , 宮 古 島市 平 良 は , 平 良市 で あ っ た た め , 合 併 以 前 の 事 実 に つ い て は ,
以 下特 に 断 りな く 「
平 良 市 」 と記 載 す る。 ) 字 大 浦 ( 以下 「
大 浦 地 区」 と も
い う。 ) に 居 住 して い た 者 で あ る。
被 告 崎 山は , 本 件 火 災 当時 , 崎 山環 境 整 備 開発 の 名 称 で , 本 件 処 分 場 にお
い て , 産 業廃 棄 物 の 収 集 運 搬 及 び 処 分 等 を業 と して 行 つ て い た 者 で あ る。
( 2 ) 本 件 火 災 の発 生
平成 1 3 年
11月
2 8 日 午 後零 時 2 5 分
こ ろ , 本 件 処 分 場 内 で火 災 が 発 生
し, 原 告 らが居 住 す る大 浦 地 区 へ , 本 件 火 災 に よ つ て 生 じた 煙 が 大 量 に流 れ
て きた 。
2 争 点 及 び 争 点 に 対 す る 当事 者 の 主 張
( 1 ) 被 告 崎 山 の 責任
( 原告 らの 主 張 )
ア 民 法 709条
に基 づ く不 法 行 為 責 任
1 7 1 出火 原 因 に つ い て
a 本 件 火 災 の 出火 原 因 は , 本 件 処 分 場 内 にお い て 日常 的 に行 われ て い
た野 焼 き の 残 り火 が 本 件 処 分 場 内 に無 秩 序 に 山積 み され た 可燃 性 廃 棄
物 に 引火 した こ とに よ る も の と推 定 され る。 そ の 理 由 は次 の とお りで
あ る。
( a ) 「 火 の な い と こ ろ に煙 は立 た な い 」 とい う こ とわ ざ の とお り, 元
々 火 の 気 の な い と こ ろ に火 災 は起 きな い の が 経 験 則 で あ る。 した が
っ て , 本 件 火 災 出火 時 にお い て , 出 火 地 点 に火 の 気 が あ つ た と推 定
-3-
す べ き こ とに な る。
( b ) 本 件 処 分 場 に お い て は , 本 件 火 災 の 直 前 ま で 日常 的 に 野 焼 きが行
われ て お り, 燃 え残 りをそ の ま ま シ ョベ ル カ ー で 北 東 側 の 水 た ま り
方 向 に 押 し込 み , 空 い た 場 所 で ま た 野 焼 き をす る とい う作 業 を繰 り
返 して い た 。 この よ うな野 焼 き を繰 り返 して い た 場 所 及 び そ こで 生
じた 燃 えが らを押 し込 ん だ 場 所 に は , 当 然 , 相 当 の 長 時 間 に わ た っ
て , 火 の 気 が 残 存 す る こ とに な る。
( c ) 上 記 野 焼 き が 日常 的 に 行 われ て い た 場 所 と本 件 火 災 の 出火 地 点 と
は ほ ぼ 同 一 の 地 点 と推 定 す る こ とが で き る。
( d ) 野 焼 き の 頻 度 は ま さに 日常 的 で あ り, そ の 対 象 もほ とん どす べ て
の 品 目に及 ん で い た 。 本 件 処 分 場 内 に 存 す る焼 却 炉 も行 政 が 見 回 り
に来 る とき な どに , 形 だ け使 用 して い た にす ぎ な い 。
( e ) 宮 古 広 域 消 防 組 合 消 防長 の 渡 真 利 定 一 に よれ ば , 本 件 火 災 の 出火
場 所 は , 山 積 み した ごみ の 下部 で あ り, そ の た め 消火 の 際 , 上 に 被
さ つ て い る ごみ を取 り除 か な けれ ば な らな か っ た も の で あ るが , こ
れ は , 着 火 に必 要 な火 の 気 が ごみ の 下 部 に 存 在 して い た こ とを意 味
す る。
以 上 の よ うに , 本 件 火 災 は , 本 件 処 分 場 内 に お い て 日常 的 に行 われ
て い た 野 焼 き に よ る残 り火 が 種 火 とな っ て 出火 した も の と推 定す る の
が 相 当で あ り, こ れ に 対 す る反 証 が 一 切 され て い な い 本 件 にお い て は ,
野 焼 き の 事 実 を認 定 す べ きで あ る。
b 仮
に , 本 件 火 災 の 出火 原 因 が 明確 に特 定 され な くて も, 本 件 処 分 場
が , 出 火 当時被 告 崎 山 の 5 名 の 従 業 員 に よ り維 持 管 理 され て い た 状 況
に あ り, 他 の 第 二 者 が 介 入 す る余 地 が な か つ た こ とは 明 らか で あ るか
ら, 被 告 崎 山は , 本 件 処 分 場 にお け る火 災 発 生 が な い よ うに厳 重 に管
理 す る責 任 を負 っ て い た も の で あ り, そ の 出火 に よ る被 害 の 責任 は ,
- 4 -
一
次 的 に は , 被 告 崎 山 に あ る。
い ず れ に して も, 火 災発 生 地 点 に何 らか の 火 種 が あ つ た こ とは事 実
で あ り, そ の 火 種 が 野 焼 き に よ る も の で あ ろ うが , あ る い は , 他 の 原
因 に よ る も の で あ ろ うが , 本 件 処 分 場 の よ うに大 量 の 可燃 物 を 山積 み
して い る 中 に火 種 を残 存 させ て お く こ と 自体 , 本 件 処 分 場 を全 面 的 に
管 理 下 にお い て い る被 告 崎 山 の 重 大 な過 失 で あ る。
仔) 被 告 崎 山 は , 本 件 火 災 の 煙 害 に よ る被 害 は , 延 焼 に よ る被 害 と同 視 す
べ きで あ り, 失 火 ノ責 任 二 関 スル 法 律 ( 以下 「
失 火 責 任 法 」 とい う。 )
の 適 用 が あ る と主 張す る。
しか しな が ら, 失 火 責任 法 の 立 証 趣 旨 は , 木 と紙 で で きた燃 焼 しや す
い 家 屋 , 住 宅 の を 集 事 情 な どを 考 慮 して , 類 焼 や 延 焼 等 に よ る被 害 の 拡
大 が 我 が 国 で は 日常 的 に 見 られ る こ とか ら, 被 害 者 ( 火元 責任 者 ) の 負
担 を軽 減 す る趣 旨 と解 され る と こ ろ , こ の よ うな 失 火 責任 法 の 立 法 趣 旨
か らも , 同 法 は火 災 に よ っ て財 物 等 が 焼 却 され て滅 失 毀 損 した 場 合 の 被
害 に 対 して の み適 用 され , 類 焼 で も延 焼 で もな い 被 害 に は適 用 され な い
の で あ っ て , 火 元 の 近 隣 家 屋 が 燃 えや す い 材 料 で で きて い る こ と とは全
く関係 が な い 煙 害 被 害 に は 同法 は適 用 され な い 。
( 功 本 件 火 災 に 失 火 責 任 法 の 適 用 が あ る と して も, 本 件 火 災 は , 被 告 崎 山
の 完 全 な排 他 的 支 配 , 管 理 の 下 で 発 生 した火 災 で あ るか ら, 被 告 崎 山 に
失 火 の 責任 が あ る こ とは 当然 で あ り, ま た , 重 大 な過 失 で あ る こ と も疑
間 の余 地 が ない。
す な わ ち , 本 件 処 分 場 の よ うな廃 棄 物 最 終 処 分 場 , 特 に安 定型 処 分 場
内 に は可 燃 性 の も の が 多 量 に 搬 入 され る の が 常 で あ り, か つ , 本 件 処 分
場 内 に は受 け入 れ が 禁 止 され て い る廃 木 材 ま で 大 量 に搬 入 され て い た の
で あ るか ら, 火 気 に注 意 し, 野 焼 き の よ うに火 災 の 原 因 に な る行 為 は絶
対 にや っ て は な らな い も の で あ る こ とは い うま で もな い 。 しか も, 野 焼
-5-
き は 廃 棄 物 処 理 法 で 禁 止 され て い る。 日常 的 に 本 件 処 分 場 内 で 野 焼 き を
繰 り返 して い た 被 告 崎 山 の 行 為 が , 火 災 を惹 起 す べ き故 意 に近 い 重 大 な
過 失 で あ る こ とは 明 らか で あ る。
ま た , 被 告 崎 山は , 火 災発 生 現 場 に火 種 を残 存 させ て い た の で あ り,
この 点 で も被 告 崎 出 の 重 過 失 の 存 在 は 争 う余 地 は な い 。
民法 717条
に基 づ く不 法 行 為 責任
1 7 1 被告 崎 山 の 管 理 運 営 す る本 件 処 分 場 内 に は 2 基 の 焼 却 炉 と安 定型 処 分
場 及 び 破 砕 機 が 存 在 した 。 これ らの うち, 火 災 が 発 生 した の は , 安 定型
処 分 場 内 で あ っ て , そ の 原 因 は , 上 記 廃 棄 物 焼 却 炉 で は な い と考 え られ
る。
本 件 処 分 場 は, 「 一般 廃 棄 物 の最 終 処分 場及 び 産 業 廃 棄 物 の最 終 処 分
場 に係 る技 術 上 の 基 準 を定 め る省 令 」 ( 昭和 5 2 年
厚 生省 令 第 1 号 。 平成 1 4 年
3月 14日 総理府 ・
3 月 2 9 日 環 境 省 令 第 7 号 に よ る改 正 前 の
もの。 以 下 「
共 同命 令 」 とい う。 ) に よ つて そ の 構 造 基 準 , 維 持 管 理 基
準 が 定 め られ て い る 「
土 地 の 工 作 物 」 ( 民法 7 1 7 条
1 項 ) で あって,
そ の 設 置 , 保 存 に 瑕 疵 が あ る とき は , そ の 所 有 者 又 は 占有 者 は無 過 失 責
任 を負 うべ き も の で あ る。
l r f ) 廃棄 物 処 理 施 設 にお い て は , そ の 場 内 に常 に 廃 棄 物 が 貯 留 され る。 被
告 崎 山 は , 産 業廃 棄 物 の 埋 立 , 焼 却 , 破 砕 の ほ か に , 産 業 廃 棄 物 の 収 集
運 搬 を も業 と して い た も の で あ り, 本 件 処 分 場 内 で は , あ ち こち に 多数
の 廃 棄 物 が 山積 み され , か つ , そ れ らの 廃 棄 物 の 中 に は , 廃 プ ラ ス テ ッ
ク , ア ス フ ァル トな どの 石 油 を原 料 と した 燃 焼 カ ロ リー の 高 い も の が 大
量 に 存 在 して い た 。
廃 棄 物 処 分 場 に は , こ の よ うに処 理 施 設 及 び そ の 周 辺 に 多 量 の 廃 棄 物
が 集 積 す る も の で あ り, か つ , そ れ らは 多 くの 場 合 可燃 性 の も の をた く
さん 含 む の で , そ の 施 設 の 設 置 , 運 営 , 管 理 に は 高 度 の 注 意 義 務 が 要 求
- 6 -
され る。 そ して , 廃 棄 物 処 分 場 に よ る周 辺 へ の 影 響 は , 悪 臭 , 粉 塵 の 飛
散 , 騒 音 , 土 壌 汚 染 , 大 気 汚 染 , 地 下水 汚 染 な ど多 岐 に わ た るが , 可 燃
性 の 廃 棄 物 が 多 量 に 存 在 す る の が 常 で あ るか ら, 火 気 に注 意 し, 高 度 の
注 意 義 務 を も つ て 万 一 に も火 災 の 発 生 す る こ との な い よ うにす べ き で あ
る こ と も 当然 で あ る。
火 災 の 発 生 防 止 に 関 して は , 共 同命 令 は , 火 災 の 発 生 を防 止 す るた め
に必 要 な措 置 を講 ず る と と もに , 消 火 器 そ の 他 の 消火 設 備 を備 え てお く
も の と して い る ( 共同命 令 2 条 2 項 , 1 条 2 項 3 号 ) 。 ま た , 共 同命 令
が , 処 分 場 内及 び そ の 周 辺 へ の 廃 棄 物 の 大 量保 管 を禁 じ, 通 常 の 処 理 量
の 1 4 日 分 を超 え る保 管 を禁 じて い る の は , 例 え ば火 災 事 故 等 が 発 生 し
た 場 合 の 被 害 の 拡 大 を防止 す る趣 旨 で あ る。
l t l そして , 本 件 処 分 場 にお い て み られ た , ①
に , か つ , 大 量 に 積 まれ て い る , ②
可 燃 性 の ごみ が む き 出 し
覆 土 が され て い な い の で , い っ た
ん 着 火 す れ ば , そ の 火 は 下積 み に な っ て い る大 量 の 廃 棄 物 に ま で広 が る
の は確 実 な 状 況 が 常 時 見 られ た , ③
安 定型 最 終 処 分 場 に は埋 立 て を禁
止 され て い る木 材 な ど も多 量 に 野 積 み の ま ま処 分 場 内 に 長 期 間放 置 され
て い た , とい っ た 各 事 実 が , 被 告 崎 山 の 過 失 と相 ま っ て , 本 件 火 災 に重
要 な寄 与 を した こ とは疑 い が な い 。 す な わ ち , 本 件 処 分 場 の 設 置 保 存 の
瑕 疵 が , 本 件 火 災 の 発 生 と拡 大 , 鎮 火 の 遅 れ の 要 因 で あ る。
l 本 件 処 分 場 は , そ の 設 置 , 運 営 , 管 理 に 関す る専 門業 者 た る被 告 崎 山
l‐
が 沖縄 県 知 事 の 指 導 監督 の 下 に , 他 の も の の 介 入 を許 さず , 排 他 的 にそ
の 設 置 , 運 営 , 管 理 を行 つ て きた も の で あ る。 原 告 ら付 近 住 民 は , 本 件
処 分 場 へ の 一 切 の 立 入 を拒 否 され , 違 法 操 業 , 山 積 み す る廃 棄 物 の 周 辺
へ の 飛 散 等 に よ る被 害 に 関 して も, 権 限 が な い た め に我 1 曼
す る しか な か
っ た の が 実 情 で あ る。 本 件 火 災事 故 発 生 後 も, そ の 事 故 原 因 の 究 明 , 証
拠 資 料 の 収 集 等 に 関 して は , 被 告 崎 山及 び 被 告 沖縄 県 担 当者 , 地 元 消 防
-7-
署 関係 者 以 外 は 一 切 関知 しな い 状 況 で 行 われ , そ の 収 集 され た証 拠 資 料
等 は , 上 記 関係 者 にお い て 管 理 して い るた め , 原 告 らは , そ の 内容 を知
り得 べ き立 場 に は な い 。
以 上 の 事 実 を前 提 に す る と, 本 件 火 災 事 故 の 具 体 的 な発 生 の 態 様 に つ
い て は , 被 告 崎 山 に主 張 立 証 責任 が あ る と解 す べ きで あ る。
l な お , 被 告 崎 山 は , 失 火 責任 法 の 適 用 も主 張 す るが , 民 法 7 1 7 条
l■
は,
危 険 な物 ( 土地 の 工 作 物 ) を 占有 又 は 所 有 す る者 に 対 して , そ の 結 果 と
して 生 じた 損 害 に つ い て 当然 に 責任 ( 無過 失 責任 ) を 負 うべ し とす る い
わ ゆ る危 険 責 任 の 法 理 に基 づ い て 定 め られ て い る も の で あ るか ら, こ れ
と失 火 責 任 法 の 立 法 趣 旨 とを比 較 す れ ば , 失 火 責 任 法 は , 民 法 7 1 7 条
に基 づ く不 法 行 為 責任 に は適 用 され な い も の と解 す る の が 相 当 で あ る。
( 被告 崎 山 の 主 張 )
ア 民 法 709条
の 責任 に つ い て
例 原 告 らは , 本 件 火 災原 因 に つ い て , 野 焼 き を主 張 す るが , 本 件 処 分 場
にお い て , 平 成 6 年 以 降 , 野 焼 き が 行 われ た こ とは な い 。
本 件 処 分 場 に は , 1 か 月 に 1 , 2 回 以 上 , 2 名 の 保 健 所 職 員 に よ る抜
き打 ち の 立 入 検 査 が され て い た が , 平 成 6 年 以 降 は , 保 健 所 に よ り野 焼
き に つ い て 注 意 , 指 導 を受 け た こ とは 一 度 もな く, 平 成 9 年 3 月 か ら平
成 13年
1 1 月 ま で の 本 件 処 分 場 にお け る保 健 所 の 指 導 経 緯 の 記 録 にお
い て も, 他 の 事 項 に つ い て の 指 導 の 記 録 は あ つ て も野 焼 き に つ い て 指 導 ,
注 意 等 の記 録 は 一 切 な い。
例 ま た , 原 告 らは , 本 件 火 災原 因 に つ い て , 焼 却 炉 か ら出 た 焼 却 灰 を埋
め立 て た こ とに よ り, そ の 残 り火 が 引火 した 可 能 性 を も指 摘 す る。
しか し, 本 件 火 災 当時 , 焼 却 灰 の 埋 立 て を した事 実 は な い 。
確 か に, 平 成 1 1 年
1 月 , 本 件 処 分 場 で 燃 えが らを埋 め 立 て て い た こ
とは あ っ た が , こ れ は , 焼 却 炉 か ら排 出 され た燃 えが らの うち, タ イ ヤ
-8-
の ワイ ヤ ー 類 等 の 金 属 部 分 ( その 他 の 燃 えが らは , 平 良 市 最 終 処 分 場 に
搬 出 して い た 。 ) を 埋 め立 て て い た も の で あ っ た 。 これ も, 保 健 所 の 抜
き打 ち検 査 で 指 摘 を受 け て , 同 年 4 月 ま で に 改 善 され , す べ て 平 良 市 最
終 処 分 場 へ 搬 出 され る よ うに な っ た 。
なお , 燃 えが らの 埋 立 て とい っ て も, 焼 却 炉 か らの 燃 えが らは , コ ン
ク リー ト升 の 中 に 落 と され る仕 組 み に な っ て お り, こ の コ ン ク リー ト升
の 中 に は , 焼 却 炉 附属 の タ ン クか らの 給 水 に よ り, 常 時 水 が 張 つ て あ り,
燃 えが らは必 ず 水 の 中 に は い る こ とに な り, 仮 に これ を埋 め立 て た と し
て も, 万 が 一 に も発 火 の お それ は な い も の で あ る。
例 被 告 崎 山 は , 本 件 処 分 場 の 設 置 届 出書 にお い て , 廃 棄 物 層 の 厚 さを 3
メ ー トル に つ き 5 0 セ
ン チ メ ー トル の 割 合 で 随 時 埋 立 て を行 う ( いわ ゆ
るサ ン ドイ ッチ構 造 で の 埋 立 方 法 ) と して い るが , こ れ は そ族 , 昆 虫 等
の 対 策 の た め で あ っ て , 火 災 防 止 とは全 く無 関係 で あ る。 被 告 崎 山 と し
て は , ね ず み , 昆 虫 の 発 生 は特 に な か っ た た め , こ れ らの 対 策 と して の
サ ン ドイ ッチ構 造 を と らな か っ た にす ぎず , 本 件 処 分 場 にお け る埋 立方
法 に つ い て , サ ン ドイ ッチ構 造 が 採 られ て い な か っ た こ とを も つ て 本 件
火 災 に 関 し被 告 崎 山 に 責任 が あ る とい う こ とは で き な い 。
l 本 件 処 分 場 の よ うな安 定型 処 分 場 にお け る 「
l‐
処 分 」 とは , す な わ ち埋
立 て で あ り, 本 件 処 分 場 は , 巨 大 な窪 地 に廃 棄 物 を受 け入 れ て , こ れ を
順 次 , ユ ンボ ( シ ョベ ル カ ー ) で 平 らに均 して い く も の で あ る。 そ して )
安 定型 処 分 場 にお い て は , 廃 プ ラ ス チ ック な ど可燃 性 の 廃 棄 物 の埋 立 て
が 予 定 され て い る。
した が つ て , 可 燃 性 の 廃 棄 物 が 大 量 に 存 在 す る の は , 本 件 の よ うな安
定 型 処 分 場 に お い て 何 ら不 当違 法 な こ とで は な い 。 ま た , 本 件 処 分 場
( 巨大 な窪 地 で あ る。 ) 内 で , こ れ ら廃 棄 物 が 山状 に 積 まれ て い よ うと,
平 らに均 され て い よ うと, そ の こ とが火 災発 生 や そ の 拡 大 に影 響 を与 え
-9-
る も の で な い こ とは 当然 で あ る。
なお , こ こに 「
可燃 性 」 とい うの は , 単 に燃 え る とい う意 味 にす ぎず ,
「
燃 えや す い 」 あ る い は 「出火 性 が 高 い 」 とい う意 味 で は な い 。 元 々 ,
これ ら廃 棄 物 は , 一 般 商 店 や 事 務 所 な どで用 い られ た プ ラ ス チ ック等 が
用 を廃 した も の に す ぎず , そ れ 自体 出火 , 燃 焼 の 危 険性 の 高 い も の で は
な い。
ま た , 木 くず の 存 在 が 本 件 火 災 の 発 生 ) 拡 大 に 寄 与 した と も考 え られ
な い 。 確 か に 木 くず は埋 立 禁 上 で あ るが , 埋 立 て の 可 否 は科 学 的 に安 定
か 否 か とい う観 点 か ら決 め られ て い る も の で あ っ て , 燃 焼 可 能 性 の 有 無 ,
程 度 とは全 く別 の 観 点 で あ る。 そ もそ も本 件 処 分 場 に は木 くず よ りも よ
ほ ど燃 焼 カ ロ リー の 高 い 廃 棄 物 ( 廃プ ラ ス チ ッ ク な ど) が 適 法 に 存 在 す
る の で あ っ て , 木 くず の 存 在 は 本 件 火 災 の 発 生拡 大 とは無 関係 で あ る。
例 本 件 処 分 場 内 に は , 焼 却 炉 に付 属 して 消火 器 が 設 置 され , ま た , 常 時
水 を満 載 した バ キ ュ ー ム カ ー が 置 か れ て い た ほ か , 被 告 崎 由 は 常 日頃 か
ら従 業 員 に 対 して 事 務 所 内以 外 で の 喫煙 を禁 じ, 搬 入 業 者 に 対 して も こ
れ を徹 底 す る よ うに指 示 して い た 。
ま た , 焼 却 炉 に つ い て は , 燃 えが らが排 出 され る部 分 に は , コ ン ク リ
ー ト升 が 設 置 され
, 同 升 内 に は , 焼 却 炉 付 属 の タ ン クか ら常 時 水 が 供 給
され て 燃 えが らは必 ず そ の 水 に 浸 か る よ うな構 造 に な っ て い た 。
な お , 本 件 処 分 場 にお い て は , 昭 和 5 9 年 の 開 業 以 来 本 件 火 災 ま で ,
他 に火 災 や ぼや が 生 じた こ とは 一 度 もな い 。
そ して , 本 件 処 分 場 自体 , そ の 周 辺 に は , 海 岸 や 林 , 畑 が あ る の み で ,
人 家 は全 くな く ( 大浦集 落 ま で 1 . 3 キ
ロ メ ー トル 以 上 ) , ま
さに人 里
離 れ た 場 所 に あ る。
した が っ て , 被 告 崎 山 は , 本 件 処 分 場 にお い て も, 必 要 な防火 施 設 ,
対 策 を十 分 施 して い た とい え , こ の 点 で の 瑕 疵 も到 底 認 め られ な い 。
-10-
防) 失 火 責 任 法 の 適 用 に つ い て
a 本 件 火 災 に よ る被 害 は , 延 焼 , 類 焼 に よ る も の で は な く, 煙 害 に よ
る も の で あ るが , 本 件 処 分 場 の 火 災 に よ っ て , こ の よ うな広 範 囲 な煙
害 が 生 じる こ とは , 被 告 崎 山 は お ろか 誰 も予想 し得 な か っ た こ とで あ
り, そ の 点 で 延 焼 に よ る被 害 の 場 合 と同 様 で あ る。
この よ うな予想 外 の 損 害 を被 告 崎 山 に 賠 償 させ る こ とが 酷 で あ る の
は , 失 火 責任 法 が 想 定 した 事 態 そ の も の で あ る。
ま た , 失 火 の 際 の 煙 や ガ ス に よ る被 害 に 失 火 責任 法 の 適 用 が な い と
す れ ば , 火 災 で 人 が死 亡 した 場 合 に そ の 死 因 が 焼 死 な ら失 火 責任 法 に
よ り軽 過 失 が 免 責 され る の に , 煙 を 吸 い 込 ん だ こ とに よ るガ ス 中毒 に
よ る死 亡 で あれ ば 同法 の 適 用 が な い こ と とな るが , こ の よ うな帰 結 が
不 当で あ る こ とは 明 らか で あ る。
ま た , 本 件 処 分 場 の 廃 棄 物 は , 原 告 ら も認 め る よ うに特 に発 火 しや
す い 危 険 物 で は な く, 通 常 の 事 業 所 や 家 庭 に も存 在 す る物 が 用 を廃 し
て 廃 棄 物 とな っ た も の に す ぎず , 爆 発 物 の 取 扱 い の よ うな 高 度 の 注 意
義 務 が 課 せ られ るべ き物 で は な い 。
確 か に , 本 件 処 分 場 に は , 可 燃 物 を含 む 多 量 の 廃 棄 物 が 集 積 され て
い た が , 仮 に火 災 が起 こっ た 場 合 を想 定 して も, 本 件 処 分 場 は人 里 離
れ た 場 所 に あ り, 周 辺 に は延 焼 を危 倶 させ る よ うな人 家 等 は全 くな く,
本 件 の よ うに多 量 の 煙 が 発 生 して , そ れ が 約 1 . 3 キ
ロ メ ー トル 以 上
も離 れ た 原 告 らの 部 落 に到 達 して 被 害 を及 ぼ す な ど とい っ た 事 態 は全
く想 定 外 で あ つ た 。
さ らに , 爆 発 事 故 と異 な り, 本 件 火 災 は 失 火 そ の も の で あ り, 文 言
上 も失 火 責 任 法 の 適 用 を排 除す べ き理 由 は な い 。
した が っ て , 失 火 責任 法 が 適 用 され な い とい う原 告 らの 主 張 は理 由
カミブ
よい 。
-
1 1
-
b 前 記 a の とお り, 本 件 火 災 に つ い て 失 火 責任 法 が 適 用 され るが , 失
火 責任 法 の 重 過 失 とは , ほ とん ど故 意 に近 い 著 しい 注 意 状 態 の 欠 如 と
され る と こ ろ , 被 告 崎 山 に は , 重 過 失 は認 め られ な い 。
す な わ ち , 本 件 処 分 場 に は , 廃 プ ラ ス チ ッ ク , 廃 ア ス フ ァル トな ど
の 可燃 物 が 存 在 して い た とは い え , そ の こ と 自体 は産 業 廃 棄 物 の 安 定
型 処 分 場 と して 当然 の こ とで あ り, ま た , こ れ ら廃 棄 物 は通 常 の 事 業
所 や 一 般 家 庭 で 用 い られ た プ ラ ス チ ック な どが用 を廃 して 廃 棄 物 と化
した も の にす ぎず , そ れ 自体 , 出 火 性 の 高 い も の で は な く, 実 際 , 本
件 処 分 場 に お い て 本 件 火 災 以 前 に ぼや 等 が 生 じた とい う こ と も一 切 な
い 。 ま た , 被 告 崎 山 は , 本 件 処 分 場 内 に 消火 器 を設 置 し, 4 ト ン バ キ
ュ ー ム カ ー に水 を積 ん で不 測 の 事 態 に 備 えて い た ほ か , 従 業 員 に 対 し,
事 務 所 以 外 で は た ば こ を吸 わ な い よ う注 意 を して い た 。
なお , 原 告 らは , 被 告 崎 山従 業 員 に よ る野 焼 き が 本 件 火 災 の 原 因 で
あ る と主 張 す るが , 出 火 当 日もそれ 以 前 も野 焼 きが行 われ た こ とが な
い こ とは , 前 記1 7 1 のとお りで あ る。
した が っ て , 被 告 崎 山 に は , 本 件 火 災 に つ い て ほ とん ど故 意 に近 い
よ うな著 しい 注 意 状 態 の 欠 如 が 認 め られ な い こ とは 明 らか で あ る。
民法 717条
の 責 任 につ い て
1 7 1 責任 原 因 に つ い て
a 原 告 らは , 本 件 処 分 場 が 「工 作 物 」 で あ り, 本 件 火 災 は , 「 工 作
物 」 の 設 置 保 存 の 瑕 疵 に よ る火 災 だ と主 張 す る。 しか し, ま ず , 本 件
火 災 は処 分 場 内 の ごみ の 出火 で あ り, 土 地 の 工 作 物 とは無 関係 で あ る。
b ま た , 原 告 らは , 設 置保 存 の 技 疵 の 具 体 的 内容 と して , ①
の ごみ が む き 出 しに , か つ 多 量 に積 まれ て い た こ と, ②
て い な か っ た こ と, ③
可 燃性
覆 土 が され
木 材 な ども 多 量 に野 積 み の ま ま 長 期 間放 置 さ
れ て い た こ と, の 各 事 実 を主 張す る。
-12-
しか し, 仮 に上 記 の よ うな事 実 が あ っ た と して も, こ れ らは ご み の
保 存 の 瑕 症 で しか あ り得 ず , 本 件 処 分 場 自体 の 設 置 保 存 の 瑕 疵 とは い
えな い 。
さ らに , 可 燃 性 の ごみ が , 大 量 に , 覆 土 され な い 状 態 で 存 在 して い
た こ とは , 産 業 廃 棄 物 の 安 定型 処 分 場 で は 当然 に予 定 され て い る状 態
で あ り, 瑕 疵 とは い え な い 。
す な わ ち原 告 らが指 摘 す る廃 プ ラ ス チ ッ クや 廃 ア ス フ ァル トは い ず
れ も安 定型 の 産 業 廃 棄 物 と して 安 定型 処 分 場 に持 ち込 まれ る こ とが 当
然 に予 定 され た も の で あ り, 産 業廃 棄 物 の 安 定型 処 分 場 にお い て は ,
大 量 の 廃 プ ラ ス チ ック, 廃 ア ス フ ァル トが 存 在 す る こ とは い わ ば 当た
り前 の こ とで あ る。 そ して , 安 定型 処 分 場 にお け る廃 プ ラ ス チ ッ ク ,
廃 ア ス フ ァル トな どの 処 分 とはす な わ ち埋 立 て で あ り ( 本件 処 分 場 は
巨大 な窪 地 で あ り, 埋 立 て は , 廃 棄 物 を順 次 ユ ンボ 等 で 地 な ら し して
い く。 ) , そ
の 際 法 令 上 覆 土 ( サン ドイ ッチ 方 式 ) は 要 求 され て い な
い ( なお , サ ン ドイ ッチ方 式 は , 前 記 ア( 功の とお り, そ 族 , 昆 虫 等 の
対 策 の た め で あ っ て , 火 災 防 止 とは無 関係 で あ る。 ) か ら, 安 定 型 処
分 場 にお い て は , 大 量 の 廃 プ ラ ス チ ック等 が む き 出 しの ま ま 存 在 す る
こ とに な る の で あ る。
以 上 の とお り, 本 件 火 災 は , 土 地 工 作 物 の 設 置 保 存 の 瑕 疲 に よ る火
の適 用 の 余 地 は な い 。
災 で は な く, 民 法 7 1 7 条
例 失 火 責任 法 の 適 用 に つ い て
本 件 火 災 が 土 地 工 作 物 の 設 置保 存 の 戦 疵 に よ る も の で あ る と して も,
失 火 責任 法 の 適 用 が 認 め られ るべ きで あ る。
そ もそ も, 土 地 工 作 物 の 設 置 保 存 の 瑕 疵 に よ る失 火 の 場 合 に失 火 責任
法 の 適 用 を否 定 しよ う とす る見 解 の 基 礎 に は , 土 地 工 作 物 に は 高 度 の 危
険 を 内在 す る も の が 多 く, か か る危 険 の 発 現 た る火 災 に は , 危 険 責 任 の
-13-
法 理 か ら これ を 管 理 す る者 に 責任 を負 わせ る べ き との 考 え方 が 存 す る。
これ に 対 し, 本 件 処 分 場 及 び そ こ に集 積 され た 廃 棄 物 は , そ れ 自体 発
火 しや す い 危 険物 で は な く, 更 に 原 告 らの 集 落 とは約 1 . 3 キ
ロメ ー ト
ル 以 上 離 れ た 場 所 に あ る の で , 火 災 予 防 上 特 に 著 しい 危 険性 を持 つ とは
い え な い の で あ るか ら, 本 件 で は失 火 責 任 法 が 適 用 され るべ きで あ る。
ま た , 工 作 物 の 設 置 保 存 の 瑕 疵 に よ る失 火 の 場 合 に失 火 責任 法 の 適 用
を制 限 す る立 場 に あ っ て も, 延 焼 の 場 合 に は なお 同法 の 適 用 を 肯 定 す る
見解 が 有 力 で あ る と こ ろ , 本 件 火 災 は , 火 災 現 場 か ら約 1 . 3 キ
ロ メー
トル 以 上 も離 れ た 原 告 らの 部 落 ま で 達 した 煙 に よ る損 害 で あ る点 で , 延
焼 に よ る損 害 拡 大 の 事 例 と同 様 で あ るか ら, 本 件 で は失 火 責任 法 が 適 用
され る べ きで あ る。
そ して , そ の 場 合 の 重 過 失 の 有 無 に つ い て も, 可 燃 性 の 廃 棄 物 が む き
出 しの ま ま大 量 に 存 在 す る とい う状 態 は , 安 定型 処 分 場 に あ つ て は 当然
の 状 態 で あ っ て 瑕 疵 とは い え な い はず で あ る し, ま してや 被 告 崎 出 に重
過 失 が 認 め られ る も の で は あ り得 な い 。
( 2 ) 被 告 沖縄 県 の 責任
( 原告 らの 主 張 )
ア 本 件 処 分 場 の 日常 的 な管 理 が 法令 , 特 に廃 棄 物 処 理 法 及 び 関連 法 令 の 趣
旨 に の っ とっ て 適 切 に され て お れ ば , 火 災 自体 発 生 しな か っ た と思 われ る
し, 仮 に火 災 が 発 生 した と して も, ご く小 規 模 な火 災 に と どま り, 長 期 間
に わ た っ て くす ぶ る こ とな どあ り得 な か っ た 。
本 件 処 分 場 にお い て は , 法 令 等 の 規 定 に 直 接 に 違 反 し, 又 は法 令 等 の 趣
旨 に 違 反 して , で た らめ な 管 理 が , 被 告 崎 山 だ け で な く, 廃 乗 物 処 分 場 管
理 の 監 督 官 庁 で あ る 沖 縄 県 知 事 との 協働 に よ り行 われ て きた も の で あ る。
イ 被 告 崎 山 に 対 す る 沖縄 県 知 事 の 許 可 等 の 経 緯 と違 法 な維 持 管 理 な ど
1 7 1 被告 崎 山 に は , 次 の とお りの 許 可 が 与 え られ て い る。
-14-
a 産 業 廃 棄 物 処 分 業 の許 可
上 記 許 可 を受 け た 処 分 業 の 範 囲
中間処 理 汚 泥 の 天 日乾 燥 , 焼 却 , 破 砕
最 終 処 分 安 定型 埋 立 ( 安定 5 品 目)
b 特 別 管 理 産 業 廃 棄 物 処 分 業 の許 可
中間 処 理 感 染 性 廃 案 物 の 焼 却
c 施 設 の設 置 許 可
( a ) 産 業 廃 棄 物 安 定型 最 終 処 分 場
方 メ ー トル
敷 地面積 12974平
方 メ ー トル
埋 立容 量 1 1 2 8 2 0 立
取 扱 品 目 金 属 くず , ガ ラ ス ・陶磁 器 くず , ゴ ム くず , が れ き
類 , 廃 プ ラ ス チ ック ( 安定 5 品 目)
(b)産 業廃 棄 物 焼却施設 そ の 1
許 可年 月 日 平 成 1 0 年
2月 27日
取扱 品 目 紙 くず , 木 くず , 動 物 の死 体 , 汚 泥 , 動 物 性 残 さ
処理能力 1.6ト
ン/ 日
(c)産 業廃 棄 物 焼却施設 そ の 2
許 可年 月 日 平 成 10年
10月
22日
取扱 品 目 廃 プ ラ ス チ ック類 , 感 染 性 廃 棄 物
処理能 力 0。
8 ト ン/ 日
被 告 崎 山 に は , 上 記 a な い し c の 許 可 しか な い か ら, 本 件 処 分 場 内 の
被 告 崎 山 の 業 務 は そ の 範 囲 内 で しか で き な い はず で あ るが , 現 実 は全 く
異 な つ て い た。
上 記 a な い し c は , 宮 古保 健 所 の 文 書 に よ る も の で あ るが , こ れ が 現
実 と大 き くか い 離 して い る こ とは もち ろん , 被 告 崎 山 が 被 告 沖 縄 県 に提
出 して い る廃 棄 物 処 理 法 ( 同法施 行 令 , 同 法 施 行 規 則 等 も含 む 。 ) に 基
-15-
づ く各 種 届 出文 書 , 許 可 申請 書 な どの 内容 と も全 く整 合 性 が な い 。
ウ1 7 1 沖縄 県 知 事 の 被 告 崎 山 に 対 す る指 導 監督 権 限 は , 廃 棄 物 処 理 法 を遵 守
させ , 廃 案 物 の 適 正 な処 理 を確 保 す るた め に 存 す る も の で あ り, そ の 権
限 の 内容 は極 め て広 い 。
した が っ て , 沖 縄 県 知 事 は , そ の 権 限 を適 正 に 行 使 し, 被 告 崎 出 の 違
法 行 為 を許 さず , そ の 行 為 が 廃 棄 物 処 理 法 等 に則 して い な い と認 め る と
き は , 直 ち に そ の 是 正 を命 じ, そ れ が 実 現 しな い とき は , 業 の 許 可 の 取
消 し, 業 務 の 一 時停 止 等 を命 じ, 更 に は , 改 善命 令 , 措 置 命 令 等 を発 令
して , 当 該 不 適 切 な処 理 , 違 法 な処 理 に よ る生 活 環 境 の 保 全 に係 る支 障
の 除 去 又 は そ の 改 善 等 を命 じる義 務 が あ っ た ( 廃棄 物 処 理 法 1 4 条 , 1
5条 , 14条
の 3, 15条
の 3, 19条
の 3, 19条
の 4等 )。
と ころ が , 沖 縄 県 知 事 は , 上 記 権 限 を全 く行 使 せ ず , 効 果 の な い 形 だ
け の 行 政 指 導 を繰 り返 し, 被 告 崎 山 の 違 法行 為 を事 実 上 野 放 しに して き
た。
被 告 沖縄 県 の 指 導 記 録 に よ る と, 平 成 9 年 3 月 か ら平 成 1 3 年
11月
ま で の 4 年 8 か 月 間 に 被 告 沖縄 県 が 被 告 崎 山 に指 導 した 回数 は , 7 4 回
と多数 に上 る。
指 導 した 回数 が 多 い とい う こ とは , 効 き 目の な い 指 導 ば か りで あ つ た
とい う こ とで あ り, 純 然 た る法 違 反 , 廃 棄 物 処 理 法 上 は犯 罪 行 為 と して
重 い 罰 則 が 規 定 され て い る違 法 事 実 ま で も単 な る行 政 指 導 で 間 に合 わせ ,
刑 事 告 発 , 業 の 許 可 の 取 消 し, 施 設 の 使 用停 止 命 令 な どの 廃 棄 物 処 理 法
等 の 定 め る権 限 の 行 使 を け怠 した も の に ほ か な らな い 。
例 無 許 可 で 設 置 され た 焼 却 炉 の 使 用 を放 置
被 告 崎 山 が無 許 可 で 設 置 され た 焼 却 炉 を使 用 して い た こ とに 関 して ,
是 正 の 行 政 指 導 を した 回数 は , 平 成 9 年 5 月 か ら平 成 1 0 年
の 間 に少 な く と も 4 回 に及 ぶ 。
-16-
10月 まで
廃 棄 物 焼 却 炉 に つ い て は , ま ず 設 置 許 可 申請 書 を提 出 し, そ れ に 対 す
る設 置 許 可 が あ る ま で , そ もそ も建 設 工 事 そ れ 自体 が で き な い 。 これ に
反 す る行 為 は , 廃 棄 物 処 理 法 上 最 も重 い 罰 則 が 適 用 され る の で あ り, こ
の よ うな重 大 な違 法 行 為 に 関 して は , 即 時 に 同焼 却 炉 の 使 用 停 止 命 令 だ
け で な く, 業 の 許 可 取 消 しを も ち て 臨 む の が 当然 で あ り, 当 時 の 国 の 見
解 も同様 で あ っ た 。
しか し, 被 告 沖縄 県 は , 行 政 指 導 しかせ ず , 単 な る注 意 を繰 り返 す の
み で 実 に 1 年 5 か 月 も犯 罪 実行 状 態 を放 置 した の で あ る。
沖縄 県 知 事 が , 上 記 犯 罪 行 為 に 対 して , 本 来 と るべ き措 置 を と つ て い
れ ば , 本 件 火 災 は決 して 発 生 しな か っ た の で あ る。
( 功 焼 却灰 の 不 法 投 棄 , 違 法 処 理 を放 置
被 告 崎 山 が , 焼 却 灰 を野 ざ ら しに し, あ る い は 燃 えが らを埋 め立 て る
違 法行 為 を して い た こ とに 関 して は , 被 告 沖縄 県 の 指 導 記 録 だ けで も 1
0 回 に及 び , 時 期 的 に も平 成 9 年 か ら平 成 1 3 年 ま で の 長 期 に及 ぶ 。 こ
れ ら野 ざ ら しや 燃 えが らの 埋 立 て は 明 白に不 法 投 棄 に該 当 し, 廃 棄 物 処
理 法 上 最 も重 い 罰 則 が 適 用 され る。
自己所 有 地 で あ っ て も, あ る い は地 主 の 承 諾 が あ つ て も, こ れ らの 不
法 投 棄 は 成 立 す る とい うの が裁 判 上 確 定 した 扱 い で あ り, 国 の 見解 も同
様 で あ る。
この よ うな重 大 な犯 罪 行 為 に対 して は , 業 の 許 可 の 取 消 し, 業 務 停 止
命 令 な ど断 固 た る措 置 を とるべ きで あ り, 更 に は刑 事 告 発 もち ゅ うち ょ
な く行 うべ きで あ つ て , 国 の 見解 も同様 で あ る。
沖縄 県 知 事 が , こ れ らの 犯 罪 行 為 に対 して , 本 来 とる べ き措 置 を と つ
て い れ ば本 件 火 災 は決 して 発 生 しな か っ た の で あ る。
l 埋 立 禁 止 廃 棄 物 の 埋 立 て を放 置
l‐
被 告 崎 出 が , 安 定 型 処 分 場 に埋 立 て が 禁 止 され て い る廃 棄 物 ( 木 くず ,
-17-
紙 くず , 燃 えが ら, 鉛 を含 む 配 線 板 , ブ ラ ウ ン 管 石 膏 ボ ー ド等 ) を 日常
的 に埋 め立 て て い た 事 実 は共 同命 令 に 明 らか に 違 反 す る も の で あ り, ま
た , 廃 棄 物 処 理 法 の 埋 立 基 準 ( 同法 施 行 令 6 条 ) に 違 反 す る も の で あ る
か ら, こ れ に 対 して は , 沖 縄 県 知 事 と して は , 改 善 命 令 や 既 に埋 め 立 て
た も の に 関す る措 置 命 令 を発 令 す べ きで あ る。
これ ら埋 立 基 準 違 反 に 対 して 行 政 指 導 を繰 り返 す だ け で は , 事 実 上 違
法 状 態 が 重 大 に な り, 取 り返 しのつ か な い 事 態 に な りか ね な い こ とか ら,
同違 反 に 対 して は , 行 政 指 導 で は な く, 速 や か に行 政 処 分 を行 い , 厳 格
な対応 をす べ きで あ る。 沖縄 県 知 事 が そ の よ うな厳 格 な対応 を欠 く こ と
に よ り違 法 状 態 を維 持 継 続 させ た こ とは重 大 な 任 務 解 怠 で あ る。
l 特 別 管 理 産 業 廃 棄 物 の 無 許 可 営 業 を放 置
l■
被 告 崎 山 は , 特 別 管 理 産 業 廃 棄 物 の 処 分 業 に つ い て は , 前 記 イ の とお
り, 感 染 性 廃 棄 物 の 焼 却 処 理 の 許 可 しか 有 せ ず , か つ , 特 別 管 理 産 業 廃
棄 物 の 収 集 運 搬 業 の 許 可 は 一 切 有 して い な か っ た の に , 無 許 可 で 特 別 管
理 産 業 廃 棄 物 を繰 り返 し収 集 運 搬 して お り, こ の こ とは , 被 告 沖縄 県 の
指 導 記 録 の 記 載 だ け で も平 成 1 1 年
4 月 か ら平 成 1 2 年
1 月 に及 ん で い
る に も か か わ らず , 沖 縄 県 知 事 は , 単 に注 意 す る程 度 の 行 政 指 導 を行 う
の み で , こ の 重 大 な違 法 状 態 を放 置 した 。
無 許 可 営 業 は , 廃 棄 物 処 理 法 上 , 最 も重 い 罰 則 が 適 用 され る の で あ り,
この よ うな重 大 な違 法 行 為 に 関 して は , 即 時 に 業 務 の 停 止 を命 じ, 刑 事
告 発 な ど もち ゅ うち ょな く行 うべ きで あ り, 当 時 の 国 の 見解 も同様 で あ
る。
沖縄 県 知 事 は , こ れ ほ どの 重 大 な違 法行 為 に 対 して , 単 に注 意 だ け で
違 法 行 為 の 継 続 を容 認 して い る。 これ だ け の 多数 回 に わ た る犯 罪 行 為 の
積 み 重 ね が あれ ば , 被 告 崎 山 の ほ か の す べ て の 許 可 を取 り消 し, 本 件 処
分 場 の 使 用 を許 さな い の が 常識 的 な対 応 で あ り, 国 の 見解 も同様 で あ る。
- 18 -
沖 縄 県 知 事 が , こ れ らの 犯 罪 行 為 に 対 して , 本 来 とる べ き措 置 を と っ
て い れ ば 本 件 火 災 は決 して 発 生 しな か っ た の で あ る。
工 前 記 ウ の とお り, 被 告 崎 山 の 無 数 の か つ 重 大 な違 法 行 為 に 対 して , 沖 縄
県 知 事 は , 遅 く とも平 成 1 2 年
ま で に , 被 告 崎 山 の 業 務 を停 止 し, 本 件 処
分 場 の 使 用 停 止 命 令 , 関 連 す るす べ て の 廃 棄 物 処 理 業 の 許 可 の 取 消 しな ど
の 措 置 を とるべ き義 務 が あ り, 当 該 義 務 を尽 く して い れ ば , そ もそ も本 件
火 災 の 発 生 それ 自体 が あ り得 な か っ た 。 沖縄 県 知 事 の 重 大 な任 務 解 怠 が 本
件 火 災 の 主 要 な原 因 で あ る。
そ して , 沖 縄 県 知 事 が , 被 告 崎 山 と協 働 して , 本 件 処 分 場 の 乱 脈 管 理 を
行 つ て きた こ とは前 記 ウ の とお りで あ る。 この 協働 の 意 味 は , 被 告 沖縄 県
と被 告 崎 山 が 相 互 に協 力 し, 綿 密 な連 携 の 下 に と もに手 を 携 えて 様 々 な重
大 な違 法 行 為 , 本 件 処 分 場 の 乱 脈 な管 理 を実 行 して きた こ とを い う。
さ らに , 本 件 火 災 に よ る被 告 沖縄 県 の 責任 と して は , 当 該 火 災 を発 生 さ
せ た 責 任 と当該 火 災 の 規 模 の 拡 大 , 被 害 の 拡 大 に 関す る責 任 とが 区別 され
るが , 被 告 沖縄 県 の 責任 は , そ の 両者 に ま た が る も の で あ る。
本 件 処 分 場 の 乱 脈 な管 理 , と りわ け可燃 性 廃 棄 物 の 山積 み , 放 置 , 散 乱 ,
即 日覆 土 , 中 間覆 土 に 関す る維 持 管 理 上 の 不 作 為 は , 本 件 火 災 の 発 生 と被
害 の 拡 大 に決 定 的 な役 割 を果 た した 。 なお , 火 種 の 存 在 は , 主 と して 被 告
崎 出 の 責任 と考 え られ るが , そ の 直 接 の 発 火 原 因 を作 出 した 責任 と, 可 燃
性 の 廃 棄 物 を大 量 に 山積 み し, 放 置 , 散 乱 させ た 責任 とは , 本 件 火 災 に よ
る被 害 に 責 任 を負 う立 場 と して , い ず れ もそ の 優 劣 は つ け が た い ほ ど重 要
で あ る。
した が っ て , 被 告 沖縄 県 は , 民 法 7 0 9 条
条, 719条
, 719条
, 又 は 同法 7 1 7
, 更 に は 国家 賠 償 法 1 条 1 項 に よ り, 本 件 火 災 に よ り原 告 ら
に生 じた 被 害 に係 る損 害 賠 償 責 任 を負 うも の で あ る。
( 被告 沖縄 県 の 主 張 )
-19-
ア 国 家 賠 償 法 1 条 1 項 の 違 法 とは , 公 務 員 が 個 別 の 国 民 に 対 して 負 担 す る
職 務 上 の 法 的 義 務 に 違 背 す る こ とを い うか ら, 原 告 ら主 張 の 規 制 権 限行 使
義 務 や 行 政 指 導 義 務 も, 当 然 被 告 沖縄 県 の 公 務 員 が 原 告 ら個 別 の 国 民 に 対
して 負 担 す る職 務 上 の 法 的 義 務 で な けれ ば な らな い ( 最高 裁 昭 和 5 3 年
( オ) 第 1 2 4 0 号
1512頁
同 60年
11月
2 1 日 第 一 小 法 廷 判 決 ・民集 3 9 巻
7号
参照)。
そ して , 公 務 員 に 規 制 権 限行 使 義 務 が あ る とい え るた め に は , そ の 前 提
と して , 当 該 公 務 員 にお い て , 当 該 規 制 権 限 を行 使 す る こ とが 可 能 で あ る
こ と, 具 体 的 に は , ①
当 該 公 務 員 が 当該 規 制 権 限 を有 して い る こ と, ②
当該 規 制 権 限 を行 使 す るた め の 具 体 的 要 件 が 充 足 され て い る こ と, ③
当該 公 務 員 が 上 記 具 体 的要 件 充 足 の 事 実 を認 識 し又 は認 識 し得 る こ とが必
要 で あ る。
イ ま た , 当 該 規 制 権 限 が 直接 に 個 別 の 国 民 の 権 利 利 益 を保 護 す る こ とを 目
的 と しな い 場 合 , 当 該 規 制 権 限 を行 使 しな か っ た こ とが 損 害 発 生 の 原 因 と
な っ た と して も, 規 制 権 限 を行 使 す る こ とに よ っ て 損 害 発 生 を免 れ る こ と
が で き る の は , い わ ば本 来 の 規 制 目的 の た め の 規 制 権 限行 使 に基 づ く反 射
的利 益 とい え る も の で あ り, 国 家 賠 償 法 上 か か る反 射 的利 益 の 保 護 ま で が
当然 に予 定 され て い るわ け で は な い ( 最高 裁 昭 和 6 1 年
平成 元 年 1 1 月
2 4 日 第 二 小 法 廷 判 決 ・民集 4 3 巻
平成 元 年 ( オ) 第 8 2 5 号
( オ) 第 1 1 5 2 号
10号
1169頁
,同
同 2 年 2 月 2 0 日 第 二 小 法 廷 判 決 ・判 時 1 3 8 0
号 94頁 参照)。
本 件 にお い て も, 仮 に 被 告 崎 山 の 不 注 意 で 本 件 火 災 が 発 生 した と して も,
そ の こ とに よ り原 告 らが損 害 を被 っ た こ と 自体 は , 被 告 沖 縄 県 の 直 接 の 行
為 に よ る も の で は な い こ とは 明 らか で あ る の み な らず , 廃 棄 物 処 理 法 が 一
定 の 場 合 に 規 制 権 限 の 行 使 を求 め て い る と して も, そ れ に よ り直 ち に 同法
が 周 辺 に居 住 して い る原 告 ら個 別 の 国 民 の 利 益 を直 接 に保 護 して い る も の
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と評 価 す る こ とは で き な い 。
そ うす る と, 原 告 らの 受 けた損 害 は 一 次 的 に は 被 告 崎 山 に対 す る不 法 行
為 請 求 な どで 補 填 され る べ き も の で あ る。
した が つ て , 仮 に 被 告 沖縄 県 が 規 制 権 限 を行 使 して い れ ば 原 告 らの 損 害
が 生 じな か っ た と して も, そ れ は 規 制 権 限 の 行 使 に よ る反 射 的利 益 に す ぎ
ず , 原 則 と して 被 告 沖縄 県 が 損 害 賠 償 責任 を負 うべ き筋 合 い で は な い 。
ウ と こ ろで , 一 般 に , 当 該 規 制 権 限 は , 個 別 の 国 民 の 権 利 利 益 を保 護 す る
こ とを 目的 とす る も の で は な く, そ の 根 拠 法 規 にお い て これ を行 使 す べ き
こ とが 一 義 的 に 規 定 され て い る も の で もな い か ら, 当 該 公 務 員 は 当該 規 制
権 限 を行 使 す るか否 か に つ い て , 一 定 の 裁 量権 を有 して い る も の と認 め ら
れ る。
した が っ て , こ の よ うな裁 量 行 為 と して , あ る行 為 をす るか否 か に判 断
の 幅 が あ る権 限 に つ い て , 当 該 規 制 権 限 の 行 使 が 義 務 化 す る , す な わ ち裁
量 の 余 地 が な い 状 態 とな り, 当 該 公 務 員 が 個 別 の 国 民 に対 して 負 担 す る職
務 上 の 法 的 義 務 を負 うも の と評 価 され るた め に は , 更 に そ の た め の 特 別 な
事 情 と して 作 為 義 務 を発 生 させ る事 実 が必 要 で あ る。
この 点 , 国 家 賠 償 法 上 の 違 法 も民 法 の 不 法 行 為 上 の 違 法 と実 質 的 に は 同
じ性 質 の も の で あ るか ら, 当 該 公 務 員 の 当該 規 制 権 限 の 不 行 使 が 違 法 とな
るか 否 か ( すな わ ち , 当 該 公 務 員 に 当該 規 制 権 限行 使 の 作 為 義 務 が あ るか
否 か ) は , 基 本 的 に は , 民 法 の 一 般 不 法 行 為 にお け る と同 様 に , 侵 害 行 為
の 態 様 との相 関 関係 に基 づ き決 す べ きで あ る。
そ して , 規 制 権 限 の 不 行 使 は , な す べ き こ とを しな か っ た とい う不 作 為
形 態 の 侵 害 行 為 の 違 法 性 を 問 うも の で あ る と ころ , 一 般 に , 不 作 為 は 作 為
に比 して 侵 害 行 為 と して の 違 法 性 が 低 い か ら, 上 記 判 断 が 違 法 とな る の は ,
当該 公 務 員 が 当該 具 体 的 事 情 の 下 にお い て 当該 規 制 権 限 を行 使 しな か つ た
こ とが 当該 規 制 権 限 の 根 拠 法 規 の 趣 旨 ・目的 の み な らず , 慣 習 , 条 理 等 に
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照 ら して 著 し く不 合 理 と認 め られ る場 合 に 限 られ る も の とい うべ きで あ る。
そ して , そ の 判 断 に 当 た っ て は , ①
当 該 個別 の 国民 の生命 , 身 体及 び
これ に 匹敵 す る よ うな重 要 な財 産 に 対 して 具 体 的危 険 が 切 迫 して い た とい
え るか ( 危険 の 切 迫 ) , ②
当 該 公 務 員 が 上 記 危 険 を知 り又 は容 易 に知 り
得 る状 態 に あ っ た とい え るか ( 予見 可 能 性 ) , ③
当 該 公 務 員 が 当該 規 制
権 限 の 行 使 に よ り容 易 に 結 果 を回避 し得 た とい え るか ( 結果 回避 可能 性 ) ,
④ 当 該 公 務 員 が 当該 規 制 権 限 を行 使 しな けれ ば 結 果 発 生 を防止 し得 な か
つ た とい え るか ( 補充性 ) , ⑤
国 民 が 当該 公 務 員 に よ る 当該 規 制 権 限 の
行 使 を要 請 な い し期 待 して い る状 況 に あ っ た とい え るか ( 国民 の 期 待 ) 等
の 諸 点 を総 合 考 慮 し, い ず れ の 観 点 か ら見 て も規 制 権 限 の 不 行 使 が 著 し く
不 合 理 で あ るか を 検 討 して 決 す べ きで あ る。
工 以 上 の とお り, 本 件 にお い て , 被 告 沖縄 県 の 国家 賠 償 法 上 の 賠 償 義 務 を
判 断す るに は , 当 該 規 制 権 限 を行 使 す るた め の 具 体 的 要 件 の 充 足 , 規 制 権
限 の 不 行 使 が 著 し く不 合 理 で あ る こ と ( 作為 義 務 の 発 生 ) , 損
害 の 発 生及
び 数 額 並 び に 作 為 義 務 違 反 事 実 と損 害 との 相 当因果 関係 の 各 点 に つ き , 原
告 らの 主 張 と これ を 裏 付 け る に足 る十 分 な証 拠 の 提 出 が必 要 で あ る も の と
い うべ きで あ るが , 規 制 権 限不 行 使 に つ い て の 原 告 らの 主 張 , 立 証 活 動 は
きわ め て 不 十 分 で あ る。
原 告 らは , 沖 縄 県 知 事 は , 遅 く と も平 成 1 2 年 以 降 は , 被 告 崎 山 に係 る
廃 案 物 処 分 業 及 び 収 集 運 搬 業 の 業 の 許 可 の 取 消 しが 可 能 で あ つ た と主 張 す
るが , な ぜ ) 同 日以 降 , 業 の 許 可 の 取 消 しが 可 能 で あ っ た と主 張 す る の か
明 らか で は な い 。
なぜ , 上 記 期 日に許 可 の 取 消 しが 可 能 で あ つ た の か , 仮 に そ うで あ つ た
と して , そ の 要 件 ( 規制 権 限 不 行 使 ) の 充 足 性 に つ い て全 く主 張 が な い 。
ま た , 原 告 らは , 本 件 火 災発 生 前 に処 分 業 等 の 許 可 を取 り消 す べ き で あ
っ た と主 張 して い る が , こ れ に つ い て も 同様 に そ の 要 件 ( 規制 権 限 不 行
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使 ) の 充 足 性 に つ い て全 く吟 味 して い な い 。
さ らに , 原 告 らの 主 張 す る許 可 等 の 取 消 し と本 件 火 災 の 発 生 回連 との 因
果 関係 に つ い て , 原 告 らの 主 張 は極 め て短 絡 的 で あ る。 公 式 の 火 災事 故 報
告 書 で は本 件 火 災 の 出火 原 因 は不 明 と され て い る と こ ろか ら, 放 火 や 自然
発 火 の 可能 性 も否 定 で きず , こ れ を も つ ぱ ら被 告 崎 山 の 責 任 とす る こ とは
で き な い こ とを も考 慮 す る と, 被 告 沖 縄 県 にお い て , 原 告 らが 主 張 す る よ
うな指 導 監督 権 限 を行 使 した と して も, 本 件 火 災 が 発 生 した 可 能 性 もあ る。
ま た , 仮 に , 放 火 で あれ ば , 当 然 の こ とな が らそ れ を予想 して の 被 告 沖縄
県 の 指 導 監 督 な どで き る は ず もな い 。
(3)損 害
( 原告 らの 主 張 )
ア 本 件 訴 訟 にお け る原 告 らの 請 求 の 内容 は具 体 的 に は 次 の とお りで あ る。
① 本 件 火 災 に よ る一 時避 難 , 火 災発 生 時 の 煙 害 な どに 関す る精 神 的 , 肉
体 的 苦 痛 に対 す る慰 謝 料
② 本 件 火 災 に よ る農 作 業 , 家 事 等 にお い て支 障 が 生 じた こ とに よ る損 害
③ 避 難 生 活 後 も長 期 間 に わ た つ て くす ぶ り続 け る煙 害 , 悪 臭 等 に よ り,
窓 を閉 め 切 つ た生 活 を強 い られ , そ の 間気 管 支 , の ど等 の 不 調 , 発 疹 ,
か ゆみ 等 の 症 状 に 悩 ま され , 更 に は健 康 を害 して 通 院や 投 薬 を受 け た こ
とな どに よ る経 済 的被 害 , 精 神 的 苦 痛 に 関す る損 害
イ 前 記 ① につ い て
本 件 火 災 に よ る猛 煙 に よ り, 平 良 市 の 一 時避 難 勧 告 が 原 告 ら及 び そ の 家
族 に 対 して 出 され , そ れ に応 じて 原 告 らは連 難 した が , 家 の 中 が 一 寸 先 も
見 え な い ほ どに煙 に包 まれ た 住 居 もあ り, 家 族 と と もに住 居 を追 われ , 不
安 な数 日を過 ご した こ とに 対 す る精 神 的 , 肉 体 的 苦 痛 は , 言 い 知 れ ぬ も の
が あ る。 この よ うな苦 痛 は , そ れ 自体 本 来 金 銭 で慰 謝 で き る性 格 の も の で
は な い が , 原 告 ら と して の 最 少 限度 の 請 求 額 と して , 避 難 した 日 と, そ の
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翌 日の 2 日 間 の 慰 謝 料 と して 少 な く と も 1 0 万 円 を下 る こ とは な い 。
ウ 前 記 ② につ い て
本 件 火 災 は , 長 期 間 くす ぶ り続 け た 覆 上 の 下 で の 酸 素 不 足 状 態 にお け る
燃 焼 だ っ た た め , ば い じん もひ ど く, 原 告 らの うち農 作 業 に 従 事 す る者 は ,
呼 吸 困難 , 激 しいせ き込 み , ぜ ん そ く の 発 作 な どに よ っ て , 仕 事 に 従 事 で
きな か っ た 。 ま た , 農 作 業 以 外 の 業 務 や 家 事 な どに つ い て も, 多 かれ 少 な
かれ , 多 く の 原 告 らに支 障 を来 した の で あ る。
そ れ らの 休 業 損 害 に 相 当す る の が この 部 分 で あ る。 一 時 避 難 の 日々 は も
ち ろん , 原 告 らは 農 作 業 , 職 場 で の 勤 務 な どの ほ か , 家 事 な ど もや りた く
て も で き な い とい う状 況 で あ つ た 。 折 し も, 砂 糖 きび の 収 穫 に 向 け て 剥葉
作 業 が 始 ま る時 期 に 当 た る。 言 語 に 絶 す る苦痛 の 中 で , 原 告 らは砂 糖 きび
の 収 穫 な どの 農 作 業 等 に従 事 した 。 この よ うな作 業 困難 な 状 況 は , 火 災 の
翌 年 5 月 こ ろ ま で は継 続 した 。 この 間 の 農 作 業 等 困難 な 状 況 にお け る損 害
額 は , 原 貝J と して 次 の とお り計 算 した 。
例 損 害 算 定 の期 間 は , 平 成 1 3 年
日ま で の 1 2 2 日
m 砂
11月
3 0 日 か ら平 成 1 4 年
3月 31
間
糖 きび 等 の 農 作 業 に 関 して は , 男 性 の 場 合 は , 1 日 当た り 6 0 0 0
円 ( 通常 の 砂 糖 きび 作 業 アル バ イ ト日当 の 約 半 分 ) の 1 0 0 日
の 場 合 は , 1 日 当 た り4 0 0 0 円
の約 半 分 ) の 1 0 0 日
分,女 性
( 通常 の 砂 糖 きび 作 業 アル バ イ ト日当
分 と した 。 作 業 の 支 障 の 程 度 を考 慮 して , 通 常 の
日当 を半 分 に 見積 も り, か つ , 作 業 日数 を も考 慮 した も の で あ る。
働 家 事 労働 に 関 して は , 上 記 1 7 1 の
期 間 を基 礎 と し, 家 事 労働 も必 ず し も
毎 日行 うとは 限 らな い こ と, 支 障 の 程 度 も砂 糖 きび 作 業 ほ どで は な い と
考 え られ る こ とか ら 1 0 0 日
間 で 1 0 万 円 と した 。
なお , 上 記 と異 な る算 定 方 法 を用 い た 場 合 に は , 別 表 「
原 告損 害額 算 定
の 事 情 一 覧 」 に 記 載 され た事 情 及 び 算 定 方 法 の とお りで あ る。
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工 前 記 ③ につ い て
原 告 らは , 前 記 イ , ウの とお り, 2 日 間 の 速 難 生 活 後 も長 期 間 に わ た っ
て くす ぶ り続 け る煙 害 , 悪 臭 等 に よ り, 窓 を 閉 め 切 つ た 生 活 を強 い られ ,
そ の 間気 管 支 , の ど等 の 不 調 , 発 疹 , か ゆみ 等 の 症 状 に 悩 ま され , 更 に は
健 康 を害 して 通 院 や 投 薬 を受 け た 。 ま た , 洗 濯 物 の 汚 れ , 家 畜 の 死 な どの
損 害 も受 け た 。 この よ うな生 活 妨 害 の ほ か , 外 出 も思 うよ うに で き な い 生
活 な どに よ る精 神 的 苦 痛 も大 き い 。
この よ うな , 火 災 後 の 長 期 間 に わ た る有 形 , 無 形 の 損 害 を包 括 的 に評 価
して , 最 低 限 の 慰 謝 料 と して 算 定 した も の で あ る。 そ の 額 と して は 3 0 万
円 と した 。
オ 各 原 告 の 個 別 事 情 につ い て
前 記 イ な い し工 は , 各 原 告 の 損 害 額 の 標 準 的 な算 定 方 法 を示 した も の で
あ るが , 同 算 定 方 法 が 当て は ま らな い 原 告 らの 事 情 及 び 算 定 方 法 は , 別 表
「
原 告 損 害 額 算 定 の 事 情 一 覧 」 の とお りで あ る。
力 以 上 よ り, 原 告 らの 損 害 額 は , 別 表 「
原 告 損 害 額 一 覧 」 の とお りで あ る。
( 被告 崎 山 の 主 張)
ア ① につ い て
原告らは'当 初 2日間の避難等による慰謝料として1人あたり10万 円
を主 張す るが , そ もそ も大 浦 地 区住 民 の うち, 避 難 した の は そ の 一 部 にす
ぎず 大部 分 の 住 民 は 自宅 に と どま つ て い た 。
ま た , 避 難 は火 災 当 日の 午 後 6 時 半 こ ろ の 平 良市 の 避 難 勧 告 に基 づ い て
され た が , 翌 日午 後 5 時 こ ろ に は , 同 避 難 勧 告 は 解 除 され , 避 難 して い た
者 も全 員 自宅 に 戻 つ て お り, 避 難 時 間 は 実 質 1 日 足 らず にす ぎ な い 。 ま た ,
避 難 した 者 の 中 に は 家 の 中 で 宴 会 を続 け, 午 後 1 1 時
こ ろ消 防 に うな が さ
れ て や っ と避 難 した 者 も い た 。
さ らに , 避 難 先 の 西 原 公 民館 で は , 被 告 崎 山 の 依 頼 に よ り地 元 婦 人 会 の
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炊 き 出 し も実 施 され て お り, 避 難 者 の 中 に は , 翌 日午 後 5 時 こ ろ の 避 難 勧
告解 除 後 も炊 き 出 しに よ る夕 食 を食 べ て 帰 宅 した 者 もあ つ た ほ どで あ る。
した が つ て , 原 告 らの うち, 避 難 を した 者 に つ い て も, そ の 期 間 は 実 質
1 日 足 らず で あ り, か つ , そ の 1 日 の 速 難 生 活 の 実 態 が上 記 の よ うな も の
で あ っ た こ とか らす れ ば , 避 難 に よっ て は , 慰 謝 料 発 生 の 根 拠 とな る よ う
な精 神 的損 害 は生 じて い な い とい うべ きで あ る。
な お , 自 動 車 事 故 に 関す る 自賠 責保 険 の 支 払 基 準 で は , 傷 害慰 謝 料 は ,
1日 4200円
で あ る。 明 らか な身 体 傷 害 もな い 本 件 にお い て , 仮 に 慰 謝
料 が 認 め られ る と して も, 最 大 で 1 人 あ た り 1 日 2 0 0 0 円
(2日 で 40
0 0 円 ) が 限度 とい うべ きで あ る。
イ ② につ い て
農 業 従 事 者 に 関 して い えば , 現 実 の 減 収 に つ い て 具 体 的 な 主 張 , 立 証 は
され て お らず ( む しろ 原 告 らは , 期 限 ま で に す べ て の 収 穫 を終 え た と い
う。 ) , こ
の 点 で の 原 告 らの 主 張 に は理 由が な い 。
ま た , 主 婦 等 の 家 事 労働 者 に 関 して も, 家 事 労働 が で き な か つ た こ とに
つ い て , 具 体 的 な 主 張 立 証 は何 ら され て お らず ( む しろ原 告 らは , 家 の 中
で は 窓 を開 けて い な けれ ば にお い は ほ とん ど感 じ られ な か っ た とい う。 ) ,
この 点 で も原 告 らの 主 張 に は理 由が な い 。
した が っ て , ② の 損 害 は認 め られ な い 。
ウ ③ につ い て
原 告 らは , 本 件 火 災 に よ り健 康 被 害 等 の 煙 害 を被 つた こ との根 拠 と して ,
原 告 らの 陳 述 書 , 本 人 尋 問 の 結 果 の ほ か に , 平 成 1 4 年
3 月 に 関 日鉄 夫 ,
蓮 見 直 子 らが 実 施 した 大 浦 地 区住 民 に 対 す る ア ン ケ ー ト調 査 の 結 果 , 原 告
下地博 和 が平成 1 4 年
8 月 か ら 1 0 月 に実 施 した ア ン ケ ー ト調 査 の 結 果 を
援 用 す るが , こ れ らは , い ず れ も原 告 らの 被 害 を立 証 す る も の で は な い 。
確 か に , 火 災 後 しば ら くの 間 , 原 告 らの 居 住 す る大 浦 地 区や 畑 に にお い
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が た だ よっ た こ とが な か っ た わ けで は な く, 被 告 崎 山 も この 点 に つ い て 争
うも の で は な い 。
しか し, そ れ は 四 六 時 中 とい うも の で は な く, 当 然 な が ら風 向 き に大 き
く左 右 され , に お い が た だ よ うの は , 処 分 場 か ら大 浦 方 面 へ の 風 , す な わ
ち南 東 の 風 の とき に 限 定 され る。
そ して , 宮 古 気 象 台 の 風 配 図 に よれ ば , 南 東 の 風 及 び 東 南 東 の 風 は , 前
者が 6.1パ
ーセ ン ト
( 過去 4 年 平 均 ) , 後
者 が 5 。 9 パ ー セ ン ト ( 同)
で , 合 計 して も年 間 わず か 1 2 パ ー セ ン トにす ぎ な い 。 さ らに , こ の 1 2
パ ー セ ン トに は 夜 間 に吹 く風 も含 まれ る と ころ , 冬 期 の 夜 間 は窓 を 閉 め て
就 寝 等 す る の で , 実 際 に 原 告 らが風 に よ っ て にお い を感 じる割 合 は , よ り
低 率 で あ っ た は ず で あ る。
実 際 , 宮 古保 健 所 の 記 録 に よれ ば , 火 災 直 後 の 平 成 1 3 年
1 2 月 か ら翌
年 3 月 こ ろ ま で , 同 保 健 所 職 員 が 大 浦 地 区 に 臨 場 して 実 際 に 調 査 して い る
が , 大 浦 地 区で悪 臭 が して い た こ とは ほ とん どな か っ た 。
ま た , 悪 臭 の 程 度 も実 際 に は さほ どで な か っ た と考 え られ る。
そ もそ もにお い は主 観 的感 覚 で あ り, そ の 程 度 を正確 に把 握 す る こ とは
困難 で あ るが , 本 件 に お け る にお い の 程 度 を判 断す るに 当 た つ て は , 以 下
の 事 実 が 参 考 と され る べ きで あ る。
す な わ ち , に お い は , 大 浦 地 区 に た だ よ つ て きた場 合 で も家 の 中 に い れ
ば窓 を 閉 め る こ とに よ っ て 対 処 可 能 な程 度 で あ り, 実 際 に , 自 宅 内 で マ ス
ク を つ け る者 は い な か っ た 。 ま た , 砂 糖 きび 畑 で の 作 業 中 の にお い に つ い
て も, 本 件 処 分 場 近 隣 の 畑 で は , 風 向 き に よ っ て は あ る程 度 の にお い が あ
っ た と考 え られ るが , マ ス ク をす る , あ る い は , 風 向 き に よ つ て 作 業 す る
場 所 を変 え る等 で 対 処 した 結 果 , す べ て の 収 穫 は 期 限 ま で に 完 了 して い る。
砂 糖 きび 畑 で の 作 業 は , 1 2 月 か ら 1 月 中旬 ま で の 剥 葉 期 と, 1 月 中旬 か
らの 収 穫 期 に 分 け られ る と こ ろ , 火 災 直 後 の 剥 業 期 の 作 業 は , マ ス ク をす
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る こ とに よって 十 分 対 処 可能 で あ っ た と考 え られ る。
な お , 宮 古 島 で は 毎 年 4 月 に トライ ア ス ロ ンの 大 会 が 開催 され , 本 件 処
分 場 東 側 の す ぐ横 を通 っ て 北 西 に 向 か う県 道 が 自転 車 の コ ー ス とな っ てお
り, 例 年 , 1 0 0 0 名
以 上 の 参加 者 が こ こ を 2 回 通 過 す る こ とに な る。 本
件 火 災 後 の 平成 1 4 年
4 月 に も, 同 年 1 月 の 主催 者 に よ る現 地 調 査 を経 た
上 で , 例 年 どお リ トライ ア ス ロ ンの 大 会 が 開催 され て い る。 この こ とは ,
平成 1 4 年
1 月 の 段 階 で は , 本 件 処 分 場 付 近 の 煙 , 臭 気 が トライ ア ス ロ ン
の 大 会 の 開催 に支 障 が な い 程 度 に な っ て い た こ とを示 す も の で あ る。
また, 火 災後 の平成 1 3 年
1 2 月 , 原 告 ら大 浦 地 区 の 住 民 は , 被 告 崎 山
と, 被 告 崎 山は本 件 処 分 場 を 閉鎖 し第 二 者 へ の 転 売 を しな い , 原 告 らは本
件 火 災 も含 め過 去 の こ とは水 に流 す ( ただ し, 診 断 書 で健 康 被 害 が 確 認 さ
れ た 場 合 の 医療 費 等 は別 。 ) と の 内容 で 覚 書 を締 結 す る方 針 を 固 め て い た 。
結 局 , 上 記 覚 書 は締 結 され な か っ た が , 以 上 の よ うな事 実 は , 当 時原 告 ら
大 浦 地 区 の 住 民 は , 本 件 火 災 に よ る煙 害 に つ い て , こ と さ ら慰 謝 料 等 の 損
害 賠 償 請 求 をす る ほ どで もな い との 認 識 で あ つ た こ とを示 す も の で あ る。
工 以 上 の とお り, 原 告 らの 主 張 す る火 災後 の 煙 害 に よ つ て は , 慰 謝 料 の 根
拠 とな るほ どの 精 神 的 損 害 は発 生 して い な い とい うべ きで あ る。 なお , 仮
に慰 謝 料 が 認 め られ る と して も, 火 災 後 の 煙 害 に つ い て は , そ の 期 間 はせ
いぜ い 平成 1 4 年
1 月 こ ろ ま で , そ の 頻 度 は風 配 等 か ら期 間 の 5 パ ー セ ン
ト程 度 と限 定 して 認 定 され る べ きで あ る。
そ して , 自賠 責保 険 の 支 払 基 準 にお い て , 傷 害 慰 謝 料 が 1 日 4 2 0 0 円
で あ る こ とか らす れ ば , 明 確 な健 康 被 害 もな い 本 件 にお い て は , 最 大 で 1
人あた り 1 日 2 0 0 0 円
, 2 か 月 の 5 パ ー セ ン トす なわち 3 日 分 で 6 0 0
0 円 が 限度 とい うべ きである。
( 被告沖縄県 の主張)
ア 原 告 らが損害 の② として主張す る農作業 , 家 事等 の支障 の損害 は, 経 済
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的利 益 と して の い わ ゆ る逸 失 利 益 を主 張 して い る の か 否 か 不 明 で あ る。
仮 に これ が ① 及 び ③ と同 じよ うに慰 謝 料 で あ る とす れ ば , こ れ を① な い
し③ の よ うに細 分 化 して , 当 初 の 2 日 分 とそ れ 以 後 を分 け , ま た , ② と③
を 区分 して そ れ を加 算 す る こ とは不 当 で あ る。
ま た , 仮 に ② が 逸 失利 益 とす れ ば , そ れ に つ い て の 立 証 が され て い な い 。
休 業 損 害 等 を請 求 す る趣 旨な らば , そ れ を証 明 す るた め の 証 拠 を提 出す べ
きで あ る。
イ 原 告 らが 主 張す る損 害 は , 本 件 火 災 に よ る煙 害 か 否 か 不 明 で あ る。
す な わ ち , 被 告 崎 山 は , 平 成 4 年 か ら焼 却 炉 を設 置 して , 恒 常 的 に 焼 却
を行 つ て い た こ とか ら, 原 告 らの 主 張 す る損 害 は , 本 件 火 災 前 の 焼 却 炉 か
らの 煙 害 の 可 能 性 が 大 で あ る。
ま た , 仮 に 原 告 らが 主 張 す る とお り, 被 告 崎 山 が 恒 常 的 に 野 焼 き を して
い た とす る と, こ の 野 焼 き か ら生 じる煙 害 の 可 能 性 も否 定 で き な い 。
さ らに , 仮 に 原 告 らが 主 張 す る とお り, 本 件 火 災 消火 の 際 , 覆 上 した こ
とが 原 因 で 長 期 に わ た っ て くす ぶ り続 けて い た とす る と, こ の 煙 害 の 可 能
性 も十 分 に考 え られ る と こ ろで あ る。
そ して , こ の 覆 土 に よ る消火 は , 被 告 崎 山 の 独 断 で した も の で あ る こ と
は 被 告 崎 山 が 自認 す る とこ ろで あ るか ら, 被 告 沖縄 県 に は , そ の 責任 が な
い
。
ウ 原 告 らは, 本 件火災による健康被害 として , ダ イオ キシ ンによる健 康被
害 も含 む よ うな訴訟活動 を してい るが, 本 件火 災によって原告 らに対 して
ダイオキシ ンによる健 康被害 を受 けた とは認 め られ ない。
なお , 被 告沖縄県は , 原 告 ら住民 の血 中ダイ オキシン濃度 を調査す るた
めに血 液検査 を しよ うと したが , 原 告 らの反対 にあ つて実施 できなか つた
もの である。
第 3 当 裁判所 の判断
- 29 -
証 拠 ( 各項 掲 記 の も の の ほ か , 被 告 崎 山本 人 , 甲 1 , 1 4 , 1 5 , 3 1 , 乙
イ 1 , 乙 口 4 ) 及 び 弁 論 の 全 趣 旨に よれ ば 以 下 の 各 事 実 が 認 め られ る。
( 1 ) 本 件 処 分 場 の概 要
ア 本 件 処 分 場 は , 沖 縄 県 平 良市 字 西 原 に 所 在 し, 平 良市 の 中心 地 よ り北 東
に位 置 し, 福 山地 区, 西 辺 地 区, 大 浦 地 区, 国 立 療 養 所 宮 古 南 静 園 に 囲 ま
れ , 宮 古 島 の 東 海 岸 を走 る県道 8 3 号 線 に面 す る場 所 に位 置 して い る。
原 告 らが居 住 す る大 浦 地 区 は , 本 件 処 分 場 か ら北 西 方 向 に約 1 . 3 キ
ロ
メ ー トル ほ ど離 れ て い る。 ま た , 西 原 地 区 は , 本 件 処 分 場 の 西 北 西 に位 置
して い る。
イ 被 告 崎 山は, 昭 和 5 0 年
こ ろ , 本 件 処 分 場 の 土 地 を購 入 し, 圃 場 整 備 事
業 に 客 土 と して 売 却 す るた め に 同土 地 か ら重機 を用 い て 土 ( 粘土 ) を 採 つ
て い た が , 上 を採 つ て 窪 地 とな っ た 同 土 地 を用 い て 産 業 廃 棄 物 処 分 業 を営
む こ と と して , 下 記 の よ うな届 出 な い し許 可 を経 て , 同 土 地 を産 業 廃 棄 物
処 理 施 設 と した 。
ウ 許 可 等 の概 要
本 件 処 分 場 に 係 る処 分 業 及 び 施 設 に 関す る許 可 等 の 概 要 は 以 下 の とお り
である (甲2な い し8,乙
口 1)。
1 7 1 業の 許 可
a 産 業廃棄物処分業
( a ) 事 業 の範 囲
① 中 間処 理
天 日乾 燥 ( 汚泥 ) , 焼
却,破 砕
② 最 終処分
安 定型 埋 立
( b ) 許 可年 月 日
昭和 5 9 年
4月 4日
- 30 -
( c ) 許 可期 限
平成 14年
2月 6日
b 特 別 管理産 業廃 棄 物処分 業
( a ) 事 業 の範 囲
感 染 性 廃 棄 物 の 焼 却 ( 中間処 理 )
( b ) 許 可年 月 日
平成 10年
7月 16日
(c)許 可期 限
平成 15年
7月 15日
岡 施 設 の許 可 等
a 産 業 廃 棄 物 処 理 施 設 ( 設置 の 届 出)
( a ) 届 出年 月 日
日
召不日5 9 左手 1 月 2 7 日
( b ) 施 設 の種 類
安 定型 最 終 処 分 場
( c ) 敷 地 面積
1万 2974平
方 メ ー トル ( 埋立 面 積 。 埋 立 容 量 は 1 1 万
282
0立 方 メ ー トル )
なお , 設 置 届 出 を した 当初 は , 埋 立 面 積 が 3 1 0 3 平
埋 立容 量 が 3 万 9 7 7 3 立
方 メ ー トル ,
方 メ ー トル で あ っ た が , 平 成 3 年 1 0 月
1 9 日 に上 記 の とお り, 施 設 規 模 を拡 大 した 。
( d ) 処 理 す る産 業 廃 棄 物 の 種 類
金属 くず , ガ ラス くず, 陶 磁器 くず , ゴ ム くず , が れ き類 , 廃 プ
ラス チ ック類
( e ) 被 告崎 山が 沖縄県知事 に届 け出た産業廃棄物処理施設設置届 ( 乙
口 1 ) 添 付 の埋立処 分計画書 によれ ば, 廃 棄物 の処理方法 につい て
-31-
は , シ ャ ボ ( シ ョベ ル カ ー ) , ブ
ル ドー ザ , ユ ンボ 等 で 破 砕 , 圧 縮
等 の 処 理 を行 い , 空 隙 を少 な く し, 廃 棄 物 層 の 厚 さを 3 メ ー トル に
つ き覆 ± 5 0 セ
ン チ メ ー トル の 割 合 で 随 時 埋 立 て を行 うとい う, い
わ ゆ るサ ン ドイ ッチ方 式 に よ る埋 立 て と され て い る。 ま た , 同 計 画
書 に は , 埋 立 地 維 持 管 理 対 策 に つ い て , そ 族 , 昆 虫等 の 対 策 と して ,
薬 剤 散 布 の 実 施 と と もに , 随 時 覆 土 を行 い 発 生 源 の 除 去 に 努 め る と
され て い る。
b 産 業廃 棄物焼却施 設 1
( a ) 許 可年 月 日
平成 1 0 年
2月 27日
( b ) 処 理 す る産 業 廃 棄 物 の 種 類
紙 くず , 木 くず , 動 物 の 死 体 , 汚 泥 , 動 植 物 性 残 さ
(c)処 理能力
1 . 6 ト ン/ 日
c 産 業廃 棄物 焼却施 設 2
( a ) 許 可年 月 日
平成 10年
10月
22日
( b ) 処 理 す る産 業 廃 棄 物 の 種 類
廃 プ ラ ス チ ッ ク類 , 感 染 性 廃 棄 物
(c)処 理能力
0.8ト
ン/ 日
( 2 ) 本 件 火 災 前 の本 件 処 分 場 の状 況
の とお り, 埋 立 面積 が 1 万 2 9 7 4 平
本 件 処 分 場 は , 前 記( 1 ) イ
方 メ ー トル
とな り, 焼 却 炉 も 2 基 設 置 され た 。
本件 処 分場 には, ①
が れ き類 ( アス フ ァル ト, コ ン ク リー トが ら) , ②
金 属 くず ( 鉄筋 くず , 廃 電 線 ) , ③
- 32 -
ー
ガ ラ ス ・陶磁 器 くず ( 生 コ ン ク リ
卜残 さ) , ④
廃 プ ラ ス チ ック ( 農業 用 廃 プ ラ ス チ ック類 , 廃 タイ ヤ , 発 泡
ス テ ロー ル , 廃 電 線 ) の ほ か , ⑤
テ ー ブル 等 ) , 医
一 般 廃 棄 物 系粗 大 ゴ ミ ( 廃家 電 , タ ンス ,
療 系廃 棄 物 ( 注射 筒 , ガ ラ ス 瓶 等 。 平 成 3 年 ま で ) , エ
ジ ン類 を の ぞ い た 廃 自動 車 ( 平成 4 年 ま で ) , 雑
ン
木 ・雑 草 , 建 築廃 材 , 地 下
ダ ム 建 設 残 土 等 が埋 め立 て られ て い る。 なお , 医 療 系廃 棄 物 に つ い て は , 平
成 3 年 ま で は埋 立 処 分 され て い た が , 平 成 4 年 7 月 の 廃 棄 物 処 理 法 の 改 正 に
よ り特 別 管 理 産 業 廃 棄 物 と して 埋 立 処 分 が 禁 止 され , 被 告 崎 山 は , 同 年 に設
置 した 焼 却 炉 ( 前記 ( 1 ) イ
mabの
焼 却 炉 以 前 に設 置 して い た施 設 ) で 焼 却 処
分 す るな ど して い た 。 ま た , 本 件 処 分 場 で は , 焼 却 施 設 の 助 燃 料 と して , 廃
タイ ヤ も焼 却 して い た こ とが あ る。
本 件 処 分 場 で は , 平 成 4 年 か ら平 成 1 2 年 度 末 ま で に , 建 設 廃 材 , 金 属 く
ず , ガ ラ ス ・陶磁 器 くず , 廃 プ ラ ス チ ッ ク , 残 土 , 汚 泥 な ど約 1 1 万
0 ト ンが 埋 立 処 分 され , 建 設 廃 材 , 廃 プ ラ ス チ ッ ク類 , 木
棄 物 な ど約 1 万 2 0 0 0 ト
100
・紙 くず , 医 療 廃
ンが 中 間処 理 ( 破砕 又 は 焼 却 処 分 ) さ れ て い た 。
この ほか , 平 成 9 年 1 0 月 か ら平 成 1 3 年
7 月 ま で の 約 4 年 間 に , 平 良市 の
依 頼 を受 けて , 一 般 廃 棄 物 粗 大 ごみ 約 5 0 8 ト
ンが 本 件 処 分 場 に 搬 入 され て
い る。 (甲 14)
ま た , 平 成 1 0 年 に設 置 され た 2 台 の 焼 却 炉 の 焼 却 能 力 は , 前 記( 1 ) イ
Ob
c の とお りで あ り, しか も, 毎 日焼 却 す る の で は な く, 天 気 の 悪 い 日等 に は
焼 却 を して い な か っ た 。 本 件 処 分 場 内 に は , 搬 入 され た も の の , 焼 却 な い し
埋 立 て の 処 分 が され ず , ま た , 分 別 も され て い な い 廃 棄 物 が , 数 メ ー トル の
高 さま で 山積 み され るな ど して い た 。 ( 証人 平 良和 夫 , 甲 1 0 な い し 1 2 )
さ らに , 前 記 ( 1 ) イ
m a ( e ) の とお り, 埋 立 処 分 計 画 書 で は サ ン ドイ ッチ 方 式
に よ る埋 立 て を行 うも の と され て い た が , 実 際 に は 同方 式 に よ る埋 立 て は さ
れ て い ない。
( 3 ) 本 件 処 分 場 に 関す る被 告 沖縄 県 の 指 導 状 況
- 33 -
平成 6 年 に 宮 古保 健 所 が 本 件 処 分 場 を監 視 中 に 野 焼 き を確 認 した た め , そ
の 禁 止 を指 導 した 。 そ の 後 , 宮 古保 健 所 の 監視 で は 本 件 処 分 場 にお け る野 焼
き は確 認 され て い な い 。 ( 甲 1 4 )
ま た , 被 告 沖縄 県 ( 官古保 健 所 ) は , 平 成 9 年 3 月 か ら平 成 1 3 年
11月
に か け て , 以 下 の とお り指 導 を行 つ て い る。 ( 甲 9 )
ア 焼 却 施 設 につ い て
1 7 1 指導 内容 焼 却 炉 の 設 置 許 可 を受 け る こ と ( 無許 可 で 焼 却 施 設 を設 置
して い た 。 )
指 導年 月 , 回 数 平 成 9 年 5 月 , 9 月 合 計 4 回
指 導 後 の状 況 平 成 1 0 年
10月
2 2 日 に 設 置 許 可 を取 得
l r f ) 指導 内容 焼 却 灰 の 適 正 処 理
a 焼 却 灰 は 平 良市 の 最 終 処 分 場 へ 搬 入 す る こ と
指導年 月,回 数 平 成 9年 11月 , 12月 ,平 成 10年
3月
1月 , 2月 ,
5回
指 導 後 の状 況 平 成 1 0 年
4 月 に 平 良 市 最 終 処 分 場 へ の搬 入 に よ り
改善済み
b 燃
えが らを埋 め立 て な い こ と
指導年 月,回 数 平 成 11年
指 導 後 の状 況 平 成 1 1 年
1月
1回
4 月 に改 善 済 み
c 焼 却 灰 は 野 ざ ら しに しな い こ と, 適 正 に保 管 す る こ と
指導年 月,回 数 平 成 11年
13年
3月
12月 ,平 成 12年
1月 , 3月 ,平 成
4回
指 導 後 の 状 況 未 改 善 ( 焼却 灰 置 場 の ふ た が な い )
似 指 導 内容 維 持 管 理 基 準 の 道 守
a 焼 却 炉 投 入 日のふ た の 改 善 ( 修理 ) を す る こ と
指導年 月,回 数 平 成 9年 12月
-34-
1回
指 導 後 の状 況 改 善 済 み
b 木
くず の 焼 却 炉 で の 廃 プ ラ ス テ ック焼 却 禁 止 , 焼 却 処 分 を適 正 に 行
うこ と
指 導年 月 ) 回 数 平 成 1 0 年
6月 , 7月
指 導 後 の 状 況 改 善 済 み ( 平成 1 2 年
c 温 度 計 の設 置 , 温 度 を 8 0 0 度
指導年 月 ,回 数 平 成 11年
6月
2回
12月 )
以 上 , そ の 他 維 持 管 理 基 準 の遵 守
1 月 , 6 月 ない し 1 0 月 , 平 成 1 2 年
7回
指 導 後 の状 況 未 改 善
倒 指 導 内容 ダ イ オ キ シ ン類 の 測 定 を行 う こ と ( 年 1 回 の 測 定 義 務 )
指導年 月 , 回 数 平 成 1 1 年
1月
1回
指 導 後 の 状 況 改 善 済 み ( 測定年 月 日 平 成 1 1 年
6月 , 10月 ,平 成 13年
3月 ,平 成 12年
10月 )
例 指 導 内容 ダ イ オ キ シ ン類 の 測 定 結 果 を報 告 す る こ と
指 導 内容 , 回 数 平 成 1 1 年
11月
4 月 ない し 6 月 , 平 成 1 2 年
8 月 ない し
7回
指 導 後 の 状 況 改 善 済 み ( 報告 済 み )
イ 最 終 処 分 場 につ い て
1 7 1 指導 内容 分 別 の 徹 底 及 び 安 定型 5 品 目 ( 金属 くず , が れ き類 , ガ ラ
ス くず 及 び 陶磁 器 くず , 廃 プ ラ ス チ ック, ゴ ム くず ) 以 外 の
埋 立禁 止
指 導年 月 , 回 数 平 成 9 年 8 月 ない し 1 1 月 , 平 成 1 1 年
月,平 成 12年
平成 1 3 年
1 1 月
1月 , 12
1 月 , 3 月 , 4 月 , 8 月 ない し 1 1 月 ,
3月 , 4月 , 6月 , 7月 , 8月 , 10月 ,
2 1 回
指 導 後 の 状 況 一 定 の 改 善 が され た
- 35 -
岡 指 導 内容 地 下水 ,浸 透 水 の 水 質 検 査 を行 う こ と (地下水 は年 に 1回 ,
浸 透 水 は月 に 1回 )
指 導 年 月 ,回 数 平 成 11年
平 成 12年
1月 ,4月
, 5月 , 8月 な い し 11月
3月 , 4月 , 9月 , 10月
,
,平 成 13年
1
月 13回
指 導 後 の 状 況 改 善 済 み (平成 13年
4月 )
働 指 導 内容 地 下水 ,浸 透 水 の 水 質 検 査 結 果 を報 告 す る こ と
指 導 年 月 ,回 数 平 成 11年
6月 , 7月 ,平 成 12年
8月 , 11月
4回
指 導 後 の 状 況 改 善 済 み (報告 済 み )
ウ そ の他
指 導 内容 収 集 運 搬 量 )処 分 量 等 に 関す る帳 簿 を備 え付 け ,記 載 ,保 存
す ること
指 導 年 月 )回 数 平 成 11年
4月 な い し 6月
4回
指 導 後 の状 況 未 改 善
(4)本 件 火 災 の 状 況 (原告 下 地 博 和 本 人 ,同 根 間 貞勝 本 人 ,同 下 地 トヨ本 人 ,
同 下 地 ハ ツ子 (原告 番 号 71番
)本 人 ,同 大 里 英 人 本 人 ,同 下 地 キ ヨ本 人 ,
同 山 内 隆子 本 人 ,同 大 里 正 行 本 人 ,同 大 浦 敏 光 本 人 ,証 人 平 良和 夫 ,甲 11)
19な
い し 21,22の
25の
43,25の
1,23,25の
62,25の
8の 2な い し11, 48の
乙 口 5,
37,25の
85,35な
22, 48の
41,25の
い し 43,48の
30, 50, 乙
42,
1の 1,4
イ 2の 1な い し8,
6)
ア 平 成 13年
11月
2 8 日 午 前 中, 本 件 処 分 場 で は , 被 告 崎 山 の 従 業 員 が
稼 働 して お り, 医 療 廃 棄 物 の 焼 却 や 木 くず , 紙 くず の 焼 却 , が れ き の 破 砕
施 設 へ の 運 搬 等 の 作 業 が 行 われ て い た 。 そ の 問 , 本 件 処 分 場 に は , 9 台 の
車 が 廃 棄 物 を搬 入 した 。 同 日午 前 1 1 時
- 36 -
43分
に , 午 前 中最 後 の 廃 棄 物 を
搬 入 した 車 の 計 測 を終 えた 。 同 日午 後 0 時 2 5 分
こ ろ , 本 件 処 分 場 内 の廃
棄 物 付 近 か ら煙 が 上 が っ て い る の を 被 告 崎 山 の 従 業 員 が 発 見 し, 現 場 に い
た 従 業 員 らで 消火 活 動 を 開始 した 。
本 件 火 災発 生 時 の 風 の 状 況 は , 風 向 が 東 南 東 , 風 速 4 . 3 メ
ー トル で あ
っ た。
本 件 火 災発 生 当初 は , 被 告 崎 山 の 従 業 員 らが , 本 件 処 分 場 内 に 防火 用 と
して 備 え 置 い て い た バ キ ュ ー ム カ ー か ら放 水 し, い っ た ん は 鎮火 した よ う
に見 えた が , ま た バ キ ュ ー ム カ ー に水 を くみ に行 つ て 戻 つ て くる と, 当 初
出火 して い た 場 所 とは別 の 場 所 か ら出火 して お り, バ キ ュ ー ム カ ー で 放 水
を して 消火 活 動 を行 つ た が , 消 火 で き な か っ た 。
宮 古 広 域 消 防組 合 消 防 本 部 ( 以下 「
消 防本 部 」 とい う。 ) に は , 同 日午
後 1 時 1 1 分 こ ろ , 火 災 が 発 生 した との通 報 が され た 。 第 1 出 動 車 両 ( 2
台) は 午後 1 時 2 3 分
こ ろ本 件 処 分 場 に到 着 し, 放 水 を 開始 した が , 出 火
して い る 2 地 点 の うち 1 地 点 の 火 勢 が 強 ま り, 南 側 , 北 側 , 西 側 に燃 え広
が つ て い た た め , さ らに車 両 と隊 員 の 出動 要 請 を し, 第 2 出 動 , 第 3 出 動
とあ わせ , 合 計 1 0 台 の 車 両 が 出動 して 消火 活 動 に あ た つ た 。 出動 延 べ 人
数 は 消 防 吏員 6 2 人 , 消 防 団員 1 5 人 で あ つ た 。 この 間 , 被 告 崎 山 の 従 業
員 は , 燃 え移 りそ うな廃 棄 物 を ユ ンボ で 移 動 させ るな ど した 。
イ 本 件 火 災 現 場 か らは煙 が 立 ち こめ , 同 日午 後 2 時 ころ に は , 大 浦 地 区 を
煙 が 覆 い 始 め , 午 後 3 時 こ ろ に は , 窓 を 閉 め て も煙 が 部 屋 に入 つ て くる等
の 苦 情 電 話 が 数 件 , 消 防本 部 へ か か る よ うに な り, 午 後 4 時 ころ に は , の
どや 頭 の 痛 み を訴 え る住 民 が 出始 め た 。
平 良市 は , 同 日午 後 6 時 3 0 分
こ ろ , 平 良市 長 を本 部 長 に災 害 対 策 本 部
を設 置 す る と と もに大 浦 地 区 の 住 民 に対 し避 難 勧 告 を発 令 し, 隣 接 す る西
原 自治 会 の 公 民館 へ の 避 難 措 置 を と っ た 。 そ の 結 果 , 原 告 らを含 む 大 浦 地
区 の 住 民 の うち, 西 原 公 民館 へ 5 3 人 が避 難 し, そ の 他 の 者 は , 親 戚 宅 等
- 37 -
へ 避 難 す る な ど した 。 なお , 原 告 大 里 英 人 は , 避 難 勧 告 が 出 て い る こ とは
知 っ て い た が , 自宅 が 新 築 だ っ た た め 自宅 をお い て 避 難 す る こ とはせ ず ,
戸 を 閉 め 切 つ て 自宅 に い た 。 ま た , 原 告 下 地 キ ヨは , 同 日, 同 じ く大 浦 地
区で 自宅 を新 築 した 息 子 宅 で , 親 戚 等 が 集 ま っ て 落 成 の 祝 い の 会 を行 つ て
い た た め , 煙 や にお い が ひ ど くな っ て きた も の の , 避 難 せ ず に 祝 い の 会 を
続 け て い た が , 同 日午 後 1 1 時 こ ろ , 消 防 吏員 か ら うな が され て 親 戚 宅 ヘ
避 難 した 。 この ほ か , 原 告 下 地 芳 吉 及 び 同 下 地 トヨ子 夫 妻 , 同 本 村 ハ ル ,
同名 嘉 真 春 二 , さ らに 同 下 地 義 信 も , 窓 を 閉 め 切 つ た 自宅 に い て , 避 難 は
しな か っ た 。 ま た , 原 告 下 地 正 三 及 び 同根 間 貞 勝 は , い ず れ も消 防 団 員 で
あ っ た た め , 両 日は本 件 火 災 の 消火 活 動 に あ た っ て い た 。
ツ 本 件 火 災 は , 消 防 等 の 消火 活 動 に よ り, 同 月 2 9 日 午 前 5 時 こ ろ に火 勢
が 弱 ま っ た こ とか ら, 一 斉 放 水 を行 い , 同 日午 前 6 時 こ ろ に は鎮 圧 した 。
鎮圧 後 も防御 態 勢 を継 続 した が , 同 日午 後 6 時 , 延 焼 拡 大 の お そ れ な しと
判 断 して , 部 隊 の 一 部 は 解 散 し, 以 後 ) 翌 3 0 日 午 前 9 時 こ ろ ま で , タ ン
ク車 1 隊
( 隊員 4 名 ) に よ り監 視 活 動 が 行 われ た 。
大 浦 地 区 の 住 民 に 対 して 出 され て い た避 難 勧 告 は , 同 月 2 9 日 午 後 5 時
こ ろ解 除 され た 。
工 上 記 の よ うに 同月 2 9 日 朝 に は 鎮 火 した も の の , 依 然 と して , 本 件 処 分
場 か らは煙 が 出 て い る状 態 で あ っ た と ころ , 被 告 崎 山 は , 知 人 か ら, 覆 土
をす る しか 煙 は押 さえ られ な い の で は な い か との 助 言 を受 け , 同 日午 前 8
時 こ ろか ら覆 上 を 開始 した 。 煙 は , 同 日夕方 こ ろ ま で に は少 な くな っ た も
の の , な お 噴 出 して い た た め , 被 告 崎 山 は , そ の 後 約 1 か 月 間 , 継 続 的 に
覆 上 を行 つ た 。
しか しな が ら, 本 件 処 分 場 か らの 煙 の 噴 出 は , 平 成 1 4 年
3 月 こ ろ も続
い て い た 。 平 良市 は , 同 年 3 月 , 大 浦 地 区 の 住 民 に 対 して , 防 塵 マ ス クや
防 臭 木 炭 を配 布 す るな ど した 。
- 38 -
オ 消 防本 部 や 宮 古 警 祭 署 は , 火 災 鎮 火 後 ) 出 火 原 因 に つ い て 調 査 した も の
の , 消 火 活 動 の 際 に重 機 を用 い て 廃 棄 物 を掘 り起 こ しな が ら消 火 活 動 に あ
た っ た こ とや , 大 量 の 上 で 覆 土 を行 つ た こ とな どか ら, 本 件 火 災 の 現 場 は
出火 時 の 現 況 を残 して お らず , 火 災 の 原 因 を特 定す る こ とは 困難 な状 況 に
あ る との 見解 を示 して お り, 平 成 1 4 年
1 月 に は , 消 防 本 部 か ら被 告 沖縄
県 に 対 し, 本 件 火 災 に つ い て 原 因不 明 との 報 告 が され て い る。
( 5 ) 本 件 火 災 後 の状 況
ア 平 良市 は, 平 成 1 4 年
3 月 , 本 件 火 災 に 関す る調 査 委 員 会 ( 平良市 産 業
廃 棄 物 処 理 場 火 災 に 関す る調 査 委 員 会 。 委 員 長 関 口鉄 夫 ) を 設 置 した 。 同
委 員 会 は, 大 浦 地 区 1 8 6 人
127人
88戸 ,南 静園 167人
58戸 ,西 原地区 1088人
393戸
128戸
,成 川地区
) 福 山地 区 1 6 1 人
62戸
を調 査 地 区 と して 健 康 ア ン ケ ー ト調 査 を行 い , ま た 浸 出水 の 調 査 や リー フ
内 の 生 態 調 査 等 を行 うな ど し, 同 年 1 0 月 , 最 終 報 告 書 ( 甲 1 ) を 平 良 市
長 に提 出 した 。 ( 原告 下 地 博 和 本 人 , 証 人 蓮 見 直 子 , 同 関 口鉄 夫 , 甲 3 0
の1 , 3 3 , 3 4 の
1 , 4 6 , 4 7 の
1 ない し 1 9 , 5 8 の
1 ない し4
9)
イ 沖 縄 県知 事 は, 平 成 1 4 年
1 月 1 5 日 , 被 告 崎 山 に対 し, 平 成 1 3 年 度
の ダイ オ キ シ ン類 調 査 結 果 で基 準値 が超 過 した と して , 焼 却 施 設 2 基 の 施
設 使 用 停 止 命 令 を行 う と と も に , 産 業 廃 棄 物 処 分 業 の 一 部 停 止 ( 焼却 処
分 ) 及 び 特 別 管 理 産 業 廃 棄 物 処 分 業 ( 感染 性 廃 棄 物 の 焼 却 処 分 ) の 全 部 停
止 の 各 業 務 停 止 命 令 を行 っ た 。
宮 古 保 健 所 長 は , 被 告 崎 出 に対 し, 同 月 3 0 日 , 焼 却 施 設 にお け る産 業
廃 棄 物 処 理 施 設 の 維 持 管 理 違 反 を理 由 と して , 産 業 廃 棄 物 焼 却 施 設 の 維 持
管 理 基 準 に適 合 す る よ う改 善 す る こ と との 改 善 命 令 を行 い , ま た , 同 年 3
月 2 9 日 に は , 最 終 処 分 場 で あ る こ とを表 示 す る立 札 を設 置 す る こ と及 び
囲 い を設 置 す る こ とを 内容 とす る改 善 命 令 を, 同 年 4 月 9 日 に は , 本 件 処
- 39 -
分 場 内 の 廃 プ ラ ス チ ッ ク類 を適 正 に処 理 す る こ と, 本 件 処 分 場 内 の 木 くず ,
紙 くず , 金 属 くず 等 を適 正 に 分 別 し処 理 す る こ と, 本 件 処 分 場 内 の がれ き
類 に つ い て は , 有 害 物 質 等 の 調 査 測 定 を行 つた 後 , 適 正 に処 理 す る こ とを
内容 とす る改 善命 令 を行 つた 。
被 告 崎 山 は , 同 年 2 月 5 日 に は産 業 廃 棄 物 処 分 業 許 可 更 新 申請 を して い
た が , 同 年 3 月 1 1 日 , 埋 立 ・焼 却 処 分 業 の 許 可 更 新 申請 を取 り下 げ , さ
らに , 同 月 1 9 日 に は 焼 却 施 設 の 廃 止 届 出 を した 。
ウ 被 告 沖縄 県 は , 同 年 5 月 及 び 1 0 月 に , 大 浦 地 区 の 住 民 に対 して健 康 診
ー
断 を実施 し, ま た , 本 件 処 分 場 内 の ボ リン グ調 査 や , 大 気 中 の ダイ オ キ
シ ン検 査 等 を行 うな ど し, 平 成 1 6 年
2 月 , こ れ らの 調 査 結 果 等 を 「
宮古
産 廃 処 分 場 調 査 の 検 討 評 価 等 に 関す る報 告 書 」 ( 乙イ 1 ) と
して ま とめ た 。
争 点( 1 ) ( 被告 崎 山 の 責任 ) に つ い て
( 1 ) 本 件 火 災 の原 因 に つ い て
ア 原 告 らは , 本 件 火 災 に つ い て , 本 件 処 分 場 にお け る野 焼 きが原 因 で あ る
旨 主 張す る。
この 点 , 平 成 6 年 に は , 宮 古 保 健 所 が 本 件 処 分 場 を監視 中 に野 焼 き を確
認 した と され て い る こ とは , 前 記 1 ( 3 ) のとお りで あ る と ころ , 原 告 らを含
め , 本 件 処 分 場 の 周 辺 に居 住 し, あ る い は , 本 件 処 分 場 に 出入 り した こ と
が あ る とす る複 数 の 者 らが , 上 記 以 後 も本 件 火 災 に至 るま で本 件 処 分 場 に
お い て 野 焼 きが行 われ て い た , 本 件 処 分 場 内 に野 焼 き が 行 われ た跡 が あ っ
た , あ る い は , 消 防 団員 と して 本 件 火 災 の 消火 活 動 を行 つ た 際 に他 の 消 防
団員 か ら普 段 か ら野 焼 き を して い た よ うで あ る との 話 を聞 い た等 とす る陳
述 , 証 言 な い し供 述 を して い る こ と ( 原告 根 間 貞 勝 本 人 , 同 大 里 正 行 本 人 ,
証 人 野 原 忠雄 , 同 川 平 俊 男 , 甲 1 7 , 1 8 , 3 5 , 4 2 ) に
加 え, 前 記 1
本 件 処 分 場 にお け る廃 棄 物 の 状 況 や , 本 件 処 分 場 に設 置 され て い る
(lX2)の
焼 却 炉 2 基 の 処 理 能 力 等 を も勘 案 す る と, 本 件 処 分 場 にお い て は , こ れ ら
- 40 -
焼 却 炉 2 基 が 設 置 され た 後 も, 本 件 処 分 場 内 に大 量 に 搬 入 され , 山 積 み と
な っ た 廃 棄 物 を処 分 す るた め に 野 焼 き行 為 が 行 われ て い た 可 能 性 は 否 定 で
き な い。
しか しな が ら, 他 方 , 被 告 崎 山は本 件 処 分 場 で の 野 焼 き行 為 を否 認 す る
と こ ろ , 被 告 崎 山及 び そ の 従 業 員 ら も同行 為 を否 定 す る 旨 の 陳 述 , 証 言 な
い し供 述 を して い る ( 被告 崎 山本 人 , 証 人 平 良和 夫 , 乙 口 4 な い し 6 ) 。
そ して , 前 記 1 ( 3 ) のとお り, 宮 古保 健 所 は , 平 成 6 年 に 本 件 処 分 場 で の 野
焼 き を確 認 した こ とか ら, 被 告 崎 山 に 対 し, 野 焼 き の 禁 止 を指 導 して い る
が , 同 認 定 の とお り, そ の 後 の 宮 古 保 健 所 の 監 視 で も本 件 処 分 場 にお け る
野 焼 き は確 認 され て お らず , ま た , 平 成 9 年 3 月 か ら平 成 1 3 年
11月 に
か け て の 本 件 処 分 場 に 対 す る指 導 内容 をみ て も, 分 別 の 徹 底 や 安 定型 5 品
目の 埋 立 禁 止 等 , 繰 り返 し指 導 され て い る項 目が あ る の に対 し, 野 焼 き に
つ い て の 指 導 は全 く され て い な い 。 この 官 古保 健 所 に よ る検 査 は , 月 に 一 ,
二 度 , 事 前 の 連 絡 な く抜 き打 ち 検 査 と して 行 われ る も の で あ る ( 被告 崎 山
本 人 , 証 人 平 良和 夫 , 乙 口 4 な い し 6 ) 。 ま た , 宮 古 保 健 所 が , 本 件 火 災
当 日に本 件 処 分 場 に廃 棄 物 を搬 入 した 車 両 の 運 転 手 に対 して した 聞 き取 り
調 査 の 結 果 で も, 複 数 の 運 転 手 か ら, 焼 却 炉 以 外 の 廃 棄 物 の 置 き場 所 か ら
煙 が 出 て い る の は 見 た こ とが な い 旨 の 回答 が され て い る の に対 し, こ れ を
肯 定 す る 旨 の 回答 を した 運 転 手 は い な か つ た ( 甲 1 4 ) 。
さ らに , 原 告 下
地 トヨ は , 焼 却 炉 が で きて か らは , 焼 却 炉 で 燃 や され て お り, 焼 却 炉 以 外
で は な か っ た 旨供 述 し ( 原告 下 地 トヨ本 人 ) , 原
告 大 里 英 人 も, 焼 却 炉 設
置 後 は , 煙 突 か らの煙 に 悩 ま され た が , 焼 却 炉 を使 わ な い で 燃 や して い る
状 況 は見 て い な い 旨供 述 して い る ( 原告 大 里 英 人 本 人 ) 。
以 上 の 検 討 結 果 に照 らせ ば , 上 記 の とお り本 件 処 分 場 に 焼 却 炉 2 基 が設
置 され た 後 も, 本 件 処 分 場 内 で 野 焼 き行 為 が 行 われ て い た 可能 性 は否 定 で
き な い も の の , 少 な く と もそ れ が 日常 的 に行 われ て い た も の と認 め る こ と
-41-
の とお り, 平 成 1 4 年 1 月 に消 防本部 か ら被告 沖縄
はできず, 前 記 1 ( 4 ) オ
県に対 して され た報告 にお い て も, 本 件火 災 の原因 は不明 とされ てい る こ
とを もあわせかんがみ ると, 本 件火災 の原 因につい て も, 本 件 処 分場 内に
お ける野焼 きの可能性 は否定できな い ものの, 野 焼 きに よるもので あると
の認 定まです る ことはできない もの とい うべ きである。
イ 次 に, 本 件処分場 内 の焼却炉 で廃棄物 が焼却 処 分 された後 の焼却灰 につ
いて , 宮 古保健所 か らたびたびそ の適 正処理の指導 が され ていた ことは,
前記 1 ( 3 ) 記
載 の とお りである。す なわ ち, 被 告崎 出は, 平 成 9 年 3 月 か ら
平成 1 3 年 1 1 月 にかけて , ①
こと ( 5 回 ) , ②
焼 却灰 を平良市 の最終処分場 に搬入す る
燃 えが らを埋 め立てない こと ( 1 回 ) , ③
焼 却灰 は
野 ざらしに しない こと, 適 正 に保 管す る こと ( 4 回 ) と い つた指導 を受 け
てい る。 この うち, ① 及び② の点 につい ては改善済み とされ てい る ( ①に
つい ては, 平 成 1 0 年 4 月 に平良市最終 処 分場 へ の搬入 によ り改善済み と
されて い る。) が , ③ の点につい ては未改善 とされ て い る。 また , ② の指
摘 は, ① の指摘 が 改善済み である とされ た平成 1 0 年 4 月 以降 の平成 1 1
年 1 月 にお ける指摘である。 これ らか らす ると, 本 件処分場 にお ける焼却
後 の焼却灰等 の取扱 い はず さんな もので あ つた とい うほか な く, こ の こと
に加 え, 原 告 ら提 出の 「
崎 山処分場火 災前 の状況」 ( 甲 1 0 ) の
写真 か ら
も, 焼 却灰 等 が本件処分場 にそ の まま放置 されてい る状況 が うかがわれ る
ことか らすれ ば, 宮 古保健所 か らの指導 によ り焼却 処分後 の焼却灰等 を平
良市 の最終処分場 に搬入す るよ うにな った後 も, 被 告崎 出は, そ の全量 を
最終処分場 に搬入す るので はな く, 少 な くとも一部 は本件処分場 内にそ の
まま放 置す る等 して い た もの と推測 され るので あ って , こ の よ うに焼却炉
で焼却処分 した後 の焼却灰等 のず さんな処理が原 因 とな って本件火災 が発
生 した可能性 も否定 できない。
また , 本 件処分場 内には, 搬 入 された ものの, 焼 却 ない し埋立て の処 分
- 42 -
が され ず , ま た , 分 別 も され て い な い 廃 棄 物 が , 数 メ ー トル の 高 さま で 山
積 み され る な ど して い た とい う, 前 記 1 ( 2 ) 認定 の 本 件 火 災 前 の 本 件 処 分 場
の 状 況 に 照 らせ ば , こ の よ うに処 分 が され な い ま ま 山積 み され た 廃 棄 物 か
らの 自然 発 火 が 本 件 火 災 の 原 因 とな っ た 可 能 性 も否 定 で き な い 。
これ に 対 し, 本 件 各 証 拠 に よ っ て も, 被 告 崎 山 の 従 業 員 や 本 件 処 分 場 に
廃 棄 物 を搬 入 す る業 者 ら以 外 の 第 二 者 が , 本 件 処 分 場 に入 り込 ん で 本 件 処
分 場 内 で火 を放 ち , こ れ が 本 件 火 災 の 原 因 とな つ た こ とを 疑 わせ る に足 る
証 拠 は全 く存 しな い ( 本件 火 災 が 発 生 した の は 平 日の 昼 間 で あ り, 被 告 崎
山 の 従 業 員 ら も本 件 処 分 場 内 に い た も の で あ る と こ ろ , こ の こ とか らも,
外 部 の 第 二 者 に よ る放 火 は 考 え難 い 。 ) 。
ウ 以 上 の 検 討 結 果 に よれ ば , 本 件 火 災 の 原 因 を的確 に認 定 す る こ とは で き
な い も の の , 本 件 処 分 場 にお け る廃 棄 物 の 野 焼 き行 為 , 焼 却 炉 で 焼 却 処 分
され た 後 の 焼 却 灰 等 の ず さん な処 理 あ る い は 本 件 処 分 場 内 に処 分 され な い
ま ま 山積 み され た 廃 棄 物 か らの 自然 発 火 等 の 可 能 性 が 考 え られ る とこ ろで
あ つ て , 他 方 , 本 件 処 分 場 関係 者 以 外 の 外 部 の 第 二 者 に よ る放 火 に よ る も
の とは 考 え難 い こ とか ら, 本 件 火 災 の 原 因 は , 本 件 処 分 場 にお け る廃 棄 物
の 管 理 , 処 分 に 関 して 生 じた も の で あ る可能 性 が 高 い も の とい え る。
(2)民 法 717条
の 工 作 物 責任 に つ い て
ア ま ず ,本 件 処分場 が,民 法 717条
に い う 「土 地 の 工 作 物 」 に該 当す る
か 否 か 検 討 す る に , 同 条 に い う土 地 の 工 作 物 とは , 土 地 に 接 着 して 人 工 的
作 業 を加 え る こ とに よ っ て 成 立 した も の を い う と解 す べ きで あ る。 そ して ,
前記 1 ( 1 ) イ及 び ウ に加 え , 証 拠 ( 乙 口 1 , 3 ) に
よれ ば , 本 件 処 分 場 は ,
元 々 存 した 土 地 か ら重 機 を用 い て 土 ( 粘土 ) を 採 つ た こ とに よ つ て 生 じた
部 分 で あ っ て , 廃 棄 物 の 埋 立 処 分 を行 う場 所 と して 用 い られ る窪 地 と, 2
基 の 焼 却 炉 や 事 務 所 ) 計 量器 等 か らな る産 業 廃 棄 物 処 理 施 設 と認 め られ る
か ら, 上 記 土 地 の 工 作 物 に該 当す る も の とい え る。
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イ そ こで , 本 件 処 分 場 の 設 置 又 は保 存 に 瑕 疵 が あ る とい え るか 否 か に つ い
て , 以 下検 討 す る。
民法 717条
の 設 置 又 は保 存 の 瑕 疵 とは , 土 地 の 工 作 物 が通 常 有 す べ き
安 全 性 を欠 い て い る こ とをい い ( 国家 賠 償 法 2 条 1 項 の 営 造 物 の 設 置 又 は
管 理 の 戦 疵 に 関す る最 高裁 昭 和 4 2 年
第
一小 法
廷 判 決 ・民 集 2 4 巻
( オ) 第 9 2 1 号
9号 1268頁
参照),土
同 45年
8月 20日
地 の工作 物 の設 置
又 は 保 存 に 瑕 疵 が あ っ た とみ られ るか ど うか は , 当 該 工 作 物 の 構 造 , 用 法 ,
場 所 的 環 境 及 び 利 用 状 況 等 諸 般 の 事 情 を総 合 考 慮 して 具 体 的 , 個 別 的 に判
断 す べ きで あ る ( 国家 賠 償 法 2 条 1 項 の 営 造 物 の 設 置 又 は 管 理 の 瑕 症 に 関
す る最 高裁 昭 和 5 3 年
2巻 5号 809頁
( オ) 第 7 6 号 同年 7 月 4 日 第 二 小 法 廷 判 決 ・民 集 3
参 照) 。
これ を本 件 に つ い て み るに , 前 記 2 ( 1 ) のとお り, 本 件 火 災 の 原 因 を的確
に認 定 す る こ とは で き な い も の の , 本 件 処 分 場 にお け る廃 乗 物 の 野 焼 き行
為 , 焼 却 炉 で 焼 却 処 分 され た 後 の 焼 却 灰 等 の ず さん な処 理 あ る い は本 件 処
分 場 内 に処 分 され な い ま ま 山積 み され た 廃 棄 物 か らの 自然 発 火 等 の 可 能 性
が 考 え られ る と こ ろで あ っ て , 他 方 , 本 件 処 分 場 関係 者 以 外 の 外 部 の 第 二
者 に よ る放 火 に よ る も の とは考 え難 い こ とか ら, 本 件 火 災 の 原 因 は , 本 件
処 分 場 にお け る廃 棄 物 の 管 理 , 処 分 に 関 して 生 じた も の で あ る可 能 性 が 高
い も の とい え る。 そ して , 本 件 処 分 場 は , 上 記 の よ うに, 元 々 存 した 土 地
か ら重 機 を用 い て 土 ( 粘土 ) を 採 っ た こ とに よ っ て 生 じた 部 分 で あ っ て ,
廃 棄 物 の 埋 立 処 分 を行 う場 所 と して 用 い られ る窪 地 と, 2 基 の 焼 却 炉 や 事
務 所 , 計 量器 等 か らな る産 業 廃 棄 物 処 理 施 設 で あ っ て , 本 件 火 災 は , こ の
よ うな産 業 廃 棄 物 処 理 施 設 にお け る廃 棄 物 の 処 理 の 過 程 な い しは処 理 前 の
廃 棄 物 の保 管 の 過 程 で 発 生 した 可 能 性 が 高 い も の とい え る と こ ろ で あ る。
そ うで あ る とす れ ば , 上 記 で 認 定 した よ う産 業 廃 棄 物 処 理 施 設 で あ る本
件 処 分 場 の 構 造 や 用 法 あ る い は利 用 状 況 等 諸 般 の 事 情 を総 合 考 慮 す る と,
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本 件 火 災 が 発 生 した の は , 可 燃 性 を有 す る も の を含 め大 量 の 廃 棄 物 が 搬 入
され , こ れ の 焼 却 な い し埋 立 処 分 を行 うとい う産 業 廃 棄 物 処 理 施 設 が通 常
有 す べ き安 全 性 を欠 い て い た た め で あ る , す な わ ち , 本 件 処 分 場 の 保 存 に
瑕 疵 が あ る と認 め る の が 相 当 で あ る。
これ に 対 し, 被 告 崎 山 は , 本 件 火 災 は本 件 処 分 場 内 の ごみ の 出火 で あ る
か ら, 土 地 の 工 作 物 の 設 置 ・保 存 の 瑕 疵 に は 当た らな い 旨 主 張 す る。
しか しな が ら, 被 告 崎 山 の 主 張 の よ うに本 件 火 災 が 本 件 処 分 場 内 の ごみ ,
す な わ ち , 本 件 処 分 場 内 に 山積 み され て い た 廃 棄 物 か らの 出火 で あ っ た と
して も, 上 記 の とお り, 本 件 処 分 場 は , 産 業 廃 棄 物 処 理 施 設 で あ っ て , 搬
入 され た 廃 棄 物 の 焼 却 な い し埋 立 処 分 を行 うた め の 施 設 で あ るか ら, 当 該
処 理 施 設 と して , 搬 入 され た 廃 棄 物 に つ い て , こ れ を 分 別 して 焼 却 な い し
埋 立 処 分 をす る過 程 にお い て , そ の 廃 棄 物 を保 管 す べ き こ と とな る の で あ
つ て , 産 業 廃 棄 物 処 理 施 設 と して , 当 然 この よ うな廃 棄 4 / 2 を
適 切 に保 管 す
る必 要 が あ る の で あ る。 した が つ て , 本 件 処 分 場 内 に搬 入 され , 本 件 処 分
場 内 に 山積 み に され て い た 廃 棄 物 か らの 出火 で あ る こ とを も つ て , 土 地 の
工 作 物 の 設 置 , 保 存 の 瑕 疵 に 当 た らな い とい う こ とは で き な い 。
ま た , 被 告 崎 山 は , 可 燃 性 の ごみ が 大 量 に覆 土 され な い 状 態 で 存 在 す る
こ とは , 産 業廃 棄 物 の 安 定 型 処 分 場 で は 当然 に予 定 され て い る状 態 で あ っ
て , 瑕 症 とは い え な い 旨主 張 す る。 しか しな が ら, 本 件 処 分 場 の よ うな産
業廃 棄 物 の 安 定型 処 分 場 に可燃 性 の 廃 棄 物 が 大 量 に 搬 入 され る こ と 自体 は
当然 予 定 され て い る状 態 で あ っ た と して も, そ の こ とか ら, 当 該 搬 入 され
た 廃 棄 物 を適 切 に保 管 す る こ とな く, 分 別 もせ ず , ま た , 焼 却 な い し埋 立
て も しな い ま ま 長 期 間 山積 み に す る こ とが 当然 に予 定 され て い る状 態 で あ
る とい うこ とは到 底 で き な い の で あ り, こ の 点 に 関す る被 告 崎 山 の 主 張 も
失 当で あ る。
ウ 次 に , 被 告 崎 山 は , 本 件 火 災 が 土 地 工 作 物 の 設 置 保 存 の 瑕 症 に よ る もの
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で あ る と して も, 失 火 責任 法 の 適 用 が 認 め られ る べ きで あ る 旨主 張 す る。
しか しな が ら, 失 火 責任 法 は , 失 火 の 場 合 , 失 火 者 自身 が 自己 の 財 物 を
焼 失 して しま っ て お り, 宥 恕 す べ き事 情 が あ る こ とや , 建 物 が 密 集 して い
て 被 害 が 極 め て広 範 囲 に及 び , こ の 賠 償 を失 火 者 に 負 担 させ る の は酷 で あ
る こ と, ま た , 軽 過 失 の 場 合 に失 火 者 の 責 任 を問 わ な い の は 慣 習 で あ る こ
と等 に か ん が み て , 民 法 7 0 9 条
の 規 定 は , 失 火 者 に重 大 な過 失 あ る場 合
を除 き , 失 火 の 場 合 に は適 用 しな い 旨定 め た も の で あ っ て , 同 条 の 特 則 で
あ る と解 され る とこ ろ , 同 条 と異 な り, 危 険 責 任 の 観 点 か ら土 地 の 工 作 物
を管 理 又 は 所 有 す る者 に 対 し, そ の 設 置 又 は保 存 の 瑕 疵 に よ り他 人 に与 え
た 損 害 に つ き無 過 失 責任 を負 わせ る 同法 7 1 7 条
の 趣 旨 に 照 らせ ば , 工 作
物 の 設 置 又 は 保 存 に 瑕 疵 が あ り, そ れ に起 因 して火 災 が 発 生 した 場 合 に は ,
失 火 責任 法 は適 用 され な い も の と解 す る の が 相 当 で あ る。
なお , 仮 に 民 法 7 1 7 条
の 工 作 物 責 任 に も失 火 責 任 法 の 規 定 が 及 ぶ と し
て も, こ の 場 合 に 問題 とな る 同法 所 定 の 重 過 失 は , 工 作 物 の 設 置 , 保 存 に
つ い て の 重 過 失 と解 す べ き と こ ろ , イ で 認 定 した と こ ろ に よれ ば , 被 告 崎
山 に は , 本 件 処 分 場 の 保 存 に つ い て 重 過 失 が 認 め られ る も の とい うべ き で
あ る。
工 以 上 か ら, 被 告 崎 山 に は , 本 件 火 災 に つ い て , 民 法 7 1 7 条
の 工作 物 責
任 が 認 め られ る。
争 点( 2 ) ( 被告 沖縄 県 の 責任 ) に つ い て
( 1 ) 原 告 らは , 被 告 崎 出 の 無 数 の か つ 重 大 な違 法 行 為 に 対 して , 沖 縄 県 知 事 は ,
遅 く と も平 成 1 2 年 ま で に , 被 告 崎 山 の 業 務 を停 止 し, 本 件 処 分 場 の 使 用 停
止 命 令 , 関 連 す るす べ て の 廃 乗 物 処 理 業 の 許 可 の 取 消 しな どの 措 置 を とるべ
き義 務 が あ り, 当 該 義 務 を尽 く して い れ ば , そ もそ も本 件 火 災 の 発 生 そ れ 自
体 が あ り得 な か っ た 旨主 張 す る。 この よ うな原 告 らの 主 張 は , 沖 縄 県 知 事 が
有 す る規 制 権 限 の 不 行 使 の 違 法 を い うも の と解 され る と こ ろ , 国 又 は公 共 団
- 46 -
体 の 公 務 員 に よ る規 制 権 限 の 不 行 使 は , そ の 権 限 を定 め た 法 令 の 趣 旨, 目的
や , そ の 権 限 の 性 質 等 に 照 ら し, 具 体 的 事 情 の 下 にお い て , そ の 不 行 使 が 許
容 され る限 度 を 逸 脱 して 著 し く合 理 性 を欠 く と認 め られ る とき は , そ の 不行
使 に よ り被 害 を受 け た 者 との 関係 にお い て , 国 家 賠 償 法 1 条 1 項 の 適 用 上 違
法 とな る も の と解 す る の が 相 当 で あ る ( 最高裁 昭 和 6 1 年
平成 元年 1 1 月
2 4 日 第 二 小 法 廷 判 決 ・民集 4 3 巻
10号
1169頁
,最 高
同 7 年 6 月 2 3 日 第 二 小 法 廷 半J 決 ・民 集 4 9 巻
裁 平成 元 年 ( オ) 第 1 2 6 0 号
6号 1600頁
( オ) 第 1 1 5 2 号
, 最 高裁 平 成 1 3 年
( オ) 第 1 1 9 4 号
号 , 同 年 ( 受) 第 1 1 7 2 号
, 同 年 ( 受) 第 1 1 7 4 号
二 小 法 廷 判 決 ・民集 5 8 巻
7号 1802頁
, 同 年 ( オ) 第 1 1 9 6
同 16年
10月
15日 第
参 照) 。 また, 国 家賠 償 法 1 条 1
項 は , 国 又 は公 共 団 体 の 公 権 力 の 行 使 に 当 た る公 務 員 が 個 別 の 国 民 に対 して
負 担 す る職 務 上 の 法 的 義 務 に違 背 して 当該 国 民 に 損 害 を加 え た とき に , 国 又
は公 共 団 体 が これ を賠 償 す る 責任 に 任 ず る こ とを 規 定 す る も の で あ る ( 最高
裁 昭和 5 3 年
39巻
( オ) 第 1 2 4 0 号
7号 1512頁
同 60年
11月
2 1 日 第 一 小 法 廷 判 決 ・民集
参照)。
( 2 ) 以 上 を前 提 に , 本 件 にお い て 被 告 沖 縄 県 が 国家 賠 償 法 1 条 1 項 に基 づ く国
家 賠 償 責任 を負 うか 否 か , 以 下検 討 す る。
廃 棄 物 処 理 法 の 目的 は , 廃 棄 物 の 排 出 を抑 制 し, 及 び廃 棄 物 の 適 正 な分 別 ,
保 管 , 収 集 , 運 搬 , 再 生 , 処 分 等 の 処 理 を し, 並 び に生 活 環 境 を清 潔 にす る
こ とに よ り, 生 活 環 境 の 保 全 及 び公 衆 衛 生 の 向 上 を図 る こ とに あ る ( 同法 1
条 ) と こ ろ, 沖 縄 県 知 事 は , 廃 棄 物 処 理 法 1 4 条
4 項 に基 づ い て産 業 廃 棄 物
処 分 業 の 許 可 を与 え る権 限 を有 す る と と もに, 一 定 の 事 由が 存 す る場 合 に は ,
そ の 許 可 を取 り消 し, 又 は 期 間 を定 め て そ の 事 業 の 全 部若 し くは 一 部 の 停 止
を命 ず る権 限 を有 して い た 。 ま た , 沖 縄 県 知 事 は , 同 法 1 5 条
1 項 に基 づ い
て 産 業廃 棄 物 処 理 施 設 の 設 置 許 可 を与 え る権 限 を有 す る ( なお , 平 成 3 年 法
律 第 9 5 号 に よ る改 正 に よ り, 従 来 の 届 出制 か ら許 可 制 に 移 行 した も の で あ
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る。 ) と と もに, 一 定 の 事 由 が 存 す る場 合 に は , 当 該 産 業 廃 棄 物 処 理 施 設 に
係 る産 業 廃 棄 物 処 理 施 設 の 設 置 の 許 可 を取 り消 し, 又 は そ の 設 置 者 に 対 し,
期 限 を定 めて 当該 産 業 廃 棄 物 処 理 施 設 に つ き必 要 な 改 善 を命 じ, 若 し くは期
間 を定 め て 当該 産 業 廃 棄 物 処 理 施 設 の 使 用 の 停 止 を命 ず る権 限 を有 して い た 。
この よ うに 、 沖縄 県 知 事 は , 産 業 廃 棄 物 処 分 業 の 許 可 を取 り消 した り, 事
業 の 停 止 を命 じ, ま た , 産 業廃 棄 物 処 理 施 設 の 設 置 の 許 可 を取 り消 した り,
使 用 の 停 止 を命 ず る権 限 を有 して い た も の で あ るが , 沖 縄 県 知 事 に そ の 権 限
を行 使 す るか否 か に つ い て 一 定 の 裁 量 権 を与 えて い た こ とは 条 文 上 か らも明
らか で あ る。 そ して , 前 記 1 ( 3 ) のとお り, 被 告 沖縄 県 は , 被 告 崎 山 に 対 し,
本 件 処 分 場 に 関 し繰 り返 し行 政 指 導 を行 つ て い た も の で あ っ て , 被 告 崎 出 も,
同指 導 に 対 し, こ れ らへ の 対 応 が迅 速 で あ つ た か 否 か は さて お い て も, 概 ね
改 善措 置 を採 る等 の 対 応 を して い た も の と認 め られ る。
しか る と ころ , 本 件 は , 本 件 火 災 に よ り原 告 らが受 けた損 害 に つ い て 被 告
沖縄 県 に 国家 賠 償 を求 め る も の で あ るか ら, 公 共 団 体 で あ る被 告 沖縄 県 の 公
権 力 の 行 使 に 当 た る公 務 員 で あ る沖縄 県 知 事 が 本 件 処 理 場 にお け る火 災 の 発
生 に よ り原 告 らの よ うな本 件 処 分 場 の 周 辺 に居 住 す る者 らに対 す る被 害 の 発
生 な い しそ の 拡 大 を防 ぐべ き職 務 上 の 注 意 義 務 に違 反 した こ とが必 要 で あ る
が , 本 件 処 分 場 にお い て は , 本 件 火 災 の 以 前 に は火 災 は発 生 して お らず , ま
た , 前 記 1 ( 3 ) のとお り, 平 成 6 年 に宮 古 保 健 所 が 本 件 処 分 場 を監視 中 に野 焼
き を確 認 した た め , そ の 禁 止 を指 導 した こ とが あ る も の の , そ の 後 は , 宮 古
保 健 所 の 監 視 で は 本 件 処 分 場 にお け る野 焼 き は確 認 され てお らず , 平 成 9 年
3 月 か ら平 成 1 3 年
1 1 月 に か けて の 被 告 沖 縄 県 に よ る指 導 の 内容 も, 野 焼
き に つ い て の 指 導 は 存 しな い 。 さ らに , 前 記 1 ( 2 ) のとお り, 本 件 処 分 場 内 に
は , 分 別 も され て い な い 廃 棄 物 が , 数 メ ー トル の 高 さま で 山積 み され る な ど
して い た も の で あ っ て , 本 件 処 分 場 に搬 入 され た 廃 棄 物 の保 管 状 況 は適 切 さ
を欠 くも の で あ っ た とい うほか な い が , そ の よ うな状 況 が 直 ち に火 災 を惹 起
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す る よ うな状 況 で あ っ た とま で は い え な い 。
そ うで あ る とす れ ば , 沖 縄 県知 事 が , 原 告 らが 主 張 す る よ うな遅 く と も平
成 1 2 年 ま で に , あ る い は , 本 件 火 災 が 発 生 した 平成 1 3 年
1 1 月 まで に,
そ の 有 す る権 限 を行 使 して , 被 告 崎 山 の 産 業 廃 棄 物 処 分 業 の 許 可 の 取 消 しや
事 業 の 停 止 , あ る い は , 本 件 処 分 場 に係 る産 業 廃 棄 物 処 理 施 設 の 設 置 許 可 の
取 消 しや 使 用 の 停 止 等 を命 じな か っ た とい う規 制 権 限 の 不 行 使 が , そ の 許 容
され る限度 を逸 脱 して 著 し く合 理 性 を欠 く も の と認 め る こ とは で き な い 。
( 3 ) な お , 原 告 らは , 沖 縄 県 知 事 が , 被 告 崎 山 と協 働 して , 本 件 処 分 場 の 乱 脈
管 理 を行 つて きた と して , 被 告 沖縄 県 は , 民 法 7 0 9 条
法 717条
, 719条
, 719条
,又 は同
の 責 任 も負 う旨主 張 す るが , 上 記 検 討 結 果 に照 らせ ば ,
被 告 沖縄 県 に 原 告 ら主 張 の よ うな民 法 上 の 共 同不 法 行 為 責 任 を認 め る こ とも
で き な い。
( 4 ) 以 上 か ら, 被 告 沖縄 県 に 対 す る原 告 らの 請 求 は理 由 が な い 。
4 争 点( 3 ) ( 損害 ) に つ い て
( 1 ) 原 告 らは , 本 件 火 災 に よ る損 害 と して , ①
本 件 火 災 に よ る 一 時避 難 , 火
災 発 生 時 の煙 害 な どに 関す る精 神 的 , 肉 体 的 苦 痛 に 対 す る慰 謝 料 , ②
本 件
火 災 に よ る農 作 業 , 家 事 等 にお い て 支 障 が 生 じた こ とに よ る損 害 , ③
避 難
生 活 後 も長 期 間 に わ た っ て くす ぶ り続 け る煙 害 , 悪 臭 等 に よ り, 窓 を 閉 め 切
っ た 生活 を強 い られ , そ の 間気 管 支 , の ど等 の 不 調 , 発 疹 , か ゆみ 等 の 症 状
に 悩 ま され , 更 に は健 康 を害 して通 院 や 投 薬 を受 け た こ とな どに よ る経 済 的
被 害 , 精 神 的 苦 痛 に 関す る損 害 が それ ぞ れ 生 じて い る と して , そ の 賠 償 を求
め て い る。
( 2 ) ま ず, 原 告 ら主張 の損害① につい て検討す る。
本件火災による大浦地 区の状況 は, 前 記 1 ( 4 ) の
とお りである。す なわ ち,
本件火災 が発生 した平成 1 3 年 1 1 月 2 8 日 の午後 2 時 ころには, 原 告 らが
居住す る大 浦地 区を煙 が覆 い始 め, 午 後 3 時 ころには, 窓 を閉めて も煙 が部
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屋 に入 つ て くる等 の 苦 情 電 話 が 数 件 , 消 防本 部 へ か か る よ うに な り, 午 後 4
時 こ ろ に は , の どや 頭 の 痛 み を訴 え る住 民 が 出始 め た 。 同 日午 後 6 時 3 0 分
こ ろ に は大 浦 地 区 の 住 民 に 対 し避 難 勧 告 が 発 令 され , 隣 接 す る西 原 自治 会 の
公 民館 へ の 避 難 措 置 が と られ た 結 果 , 原 告 らを含 む 大 浦 地 区 の 住 民 の うち,
西 原 公 民館 へ 5 3 人 が 避 難 し, そ の 他 の 者 は , 親 戚 宅 等 へ 避 難 す るな ど した 。
本 件 火 災 は , 翌 同月 2 9 日 朝 に は 鎮 圧 され た も の の , 依 然 と して 本 件 処 分 場
か らは煙 が 出 て い る状 態 で あ っ た 。 大 浦 地 区 の 住 民 に 対 して 出 され て い た避
難 勧 告 は , 同 日午 後 5 時 こ ろ解 除 され た 。
原 告 らも, 本 件 火 災 が 発 生 した 同月 2 8 日 の 午 後 か ら夕方 に か け て , 大 量
の 煙 や 異 臭 が 原 告 らが 居 住 す る大 浦 地 区 に流 入 し, の どや 頭 の 痛 み を感 じな
が ら, 平 良市 に よ る避 難 勧 告 を受 け て , 西 原 自治 会 の 公 民館 や 親 戚 宅 等 へ 避
難 し, 避 難 先 で 不 安 な 一 夜 を過 ご した も の で あ って , 避 難 勧 告 を受 けて か ら
お よそ 1 日 が 経 過 した翌 日の 午 後 5 時 こ ろ に な っ て よ うや く避 難 勧 告 が 解 除
され , そ れ ぞれ の 自宅 に 戻 る こ とが で きた も の で あ る ( 原告 下 地 博 和 本 人 ,
同根 間 貞勝 本 人 , 同 下 地 トヨ本 人 , 同 下 地 ハ ツ 子 ( 原告 番 号 7 1 番 ) 本 人 ,
同 山内隆子本 人 , 同 大里正行 本 人 , 同 大浦敏 光本 人 , 甲 2 3 ) 2 5 の
5の 3な い し28,25の
55な い し76,25の
4, 36, 38な
30な い し34,25の
79な い し83,25の
い し4 0 , 4 3 ) が
1, 2
36な い し52,25の
85,25の
87な い し9
, こ の よ うに, 突 然 , 大 量 の 煙 や 異 臭
に 襲 われ , 体 に 不 調 を覚 え な が ら, 自宅 を離 れ て 避 難 せ ざる を得 な か っ た 原
告 らが受 けた精 神 的 , 肉 体 的 苦 痛 は , 相 当程 度 大 き か っ た も の とい う こ とが
で き , こ れ を慰 謝 す るた め の 慰 謝 料 と して は , 原 告 1 人 に つ き 1 0 万 円 を認
め る の が 相 当 で あ る。
この 点 , 前 記 1 ( 4 ) イ記 載 の とお り, 原 告 大 里 英 人 は , 避 難 勧 告 が 出 て い る
こ とは知 っ て い た が , 自宅 が 新 築 だ っ た た め 自宅 をお い て避 難 す る こ とはせ
ず , 戸 を 閉 め切 つ て 自宅 に い た も の , ま た , 原 告 下 地 キ ヨは , 同 日, 同 じ く
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大 浦 地 区で 自宅 を新 築 した 息 子 宅 で , 親 戚 等 が 集 ま っ て 落 成 の 祝 い の 会 を行
つ て い た た め , 煙 や 異 臭 が ひ ど くな っ て き た も の の , 避 難 せ ず に 祝 い の 会 を
続 けて い た が , 同 日午 後 1 1 時
ころ , 消 防 吏 員 か ら うな が され て 親 戚 宅 へ 避
難 した も の , さ らに , 原 告 下 地 芳 普 及 び 同 下 地 トヨ子 夫 妻 , 同 本 村 ハ ル , 同
名 嘉 真 春 二 , 同 下 地 義 信 も, 窓 を 閉 め 切 つ た 自宅 に い て 避 難 は しな か っ た も
の , 原 告 下 地 正 三 及 び 同根 間 貞勝 は , 消 防 団員 と して 本 件 火 災 の 消 火 活 動 に
あ た つ て い た も の で あ るが , 同 原 告 ら も, 本 件 火 災 に よ る煙 や 異 臭 の 影 響 を
受 け な か っ た とい うも の で は な く, 新 築 の 自宅 を守 るた め や , 新 築 祝 い の 最
中 で あ つ た こ と, 体 が 不 自由で あ っ た こ とな どか ら 自宅 に と どま っ て い た も
の ( しか も, 原 告 下 地 キ ヨ は , こ の よ うな新 築 祝 い の 最 中 で あ りな が ら, 結
局 , 親 戚 宅 へ の 避 難 を余 儀 な く され て い る。 ) , あ
る い は , 消 防 団員 と して ,
煙 や 異 臭 の 強 い 本 件 火 災 現 場 付 近 で 消火 活 動 に 当た る等 して い た も の で あ る
か ら, 同 原 告 らに係 る慰 謝 料 に つ い て も, 上 記 同様 に各 1 0 万 円 を認 め る の
が 相 当 で あ る。
なお , 原 告 下 地 カ メ に つ い て は , 本 件 火 災 当 日は入 院 して い た , 原 告 川 満
学 に つ い て も, 本 件 火 災 当 日に は那 覇 市 内 に い た と して , 両 原 告 に つ い て は ,
原 告 ら主 張 の 損 害① に係 る慰 謝 料 は請 求 され て い な い 。
( 3 ) 次 に , 原 告 ら主 張 の 損 害 ② に つ い て 検 討 す る に , 原 告 らが こ こで 主 張 す る
損 害 は , 本 件 火 災 に よ り農 作 業 や 家 事 等 に支 障 が 生 じた こ とに よ る損 害 で あ
つ て , 原 告 ら主 張 の 損 害 額 の 算 定 内容 に照 ら して も, こ れ は これ ら支 障 に よ
り生 じた 財 産 的損 害 を い うも の と解 され る ( これ に対 し, 農 作 業 や 家 事 を行
う上 で 被 っ た 精 神 的 , 肉 体 的 苦 痛 に対 す る慰 謝 料 に つ い て は , 後 記 損 害 ③ で
検 討 す る の が 相 当 で あ る。 ) 。
しか しな が ら, 原 告 らが , 本 件 火 災 後 長 期 間 に わ た つ て , 本 件 火 災 に よ る
示 の とお りで あ るが , こ れ に
煙 や 異 臭 に よ る影 響 を受 け た こ とは , 後 記( 4 ) 説
よ り, 原 告 らが , ど の よ うな具 体 的 な財 産 的損 失 を受 けた か に つ い て は , 明
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らか で な い とい うほ か な く, か え っ て , 原 告 らの うち, 農 作 業 に 従 事 して い
た 者 に つ い て は , 砂 糖 きび の 脱 葉 作 業 , 収 穫 作 業 に つ い て は 期 限 どお り行 っ
た こ とが 認 め られ る。
した が つ て , 原 告 らが 損 害 ② と して 主 張 す る財 産 的 損 害 に つ い て は , 認 め
られ な い 。
( 4 ) さ らに , 原 告 ら主 張 の 損 害③ に つ い て 検 討 す る。
本 件 火 災 が 発 生 した 翌 日の 平 成 1 3 年
11月
2 9 日 の 朝 に は 鎮 火 した も の
の , 依 然 と して , 本 件 処 分 場 か らは 煙 が 出 て い る状 態 で あ つ た こ と, そ の た
め , 被 告 崎 山 は , 知 人 か ら, 覆 土 をす る しか 煙 は 押 さえ られ な い の で は な い
か との 助 言 を受 け , 覆 土 を 開始 した こ と, 煙 は , 同 日夕方 こ ろま で に は少 な
くな っ た も の の , な お 噴 出 して い た た め , 被 告 崎 出 は , そ の 後 約 1 か 月 間 ,
継 続 的 に 覆 土 を行 つ た こ と, 本 件 処 分 場 か らの 煙 の 噴 出 は , 平 成 1 4 年
3月
こ ろ も続 い て お り, 平 良 市 は , 同 年 3 月 , 大 浦 地 区 の 住 民 に 対 して , 防 塵 マ
ス クや 防 臭 木 炭 を配 布 す るな ど した こ とは , 前 記 1 ( 4 ) 工で 認 定 した とお りで
あ る。
そ して , 証 拠 ( 原告 下 地 博 和 本 人 , 同 根 間 貞 勝 本 人 , 同 下 地 トヨ本 人 , 同
下 地 ハ ツ 子 ( 原告 番 号 7 1 番 ) 本 人 , 同 大 里 英 人 本 人 , 同 下 地 キ ヨ本 人 , 同
山 内 隆子 本 人 , 同 大 里 正 行 本 人 , 同 大 浦 敏 光 本 人 , 甲 1 , 2 3 , 2 5 の
い し94)26, 27の
4 6 , 4 7 の
1及 び 2, 28, 29, 34の
1 ない し 1 9 , 4 8 の
8 の2 3 , 4 8 の
2 8 , 4 8 の
9, 48の
1, 48の
41の
1 1 , 4 8 の
3 0 , 4 8 の
43, 49, 58の
よれ ば , 本 件 火 災 後 の 平 成 1 3 年
1, 35な
1な
い し4 4 ,
1 6 の 1 , 4 8 の 2 2 , 4
3 1 の 1 , 4 8 の 3 5 な い し3
1 な い し4 9 , 乙 イ 1 ) に
1 2 月 か ら平 成 1 4 年
3 月 に か けて は , 砂
糖 きび の 脱 葉 と, そ れ に 続 く収 穫 の 時 期 で あ り, 原 告 らの 多 くは, 本 件 処 分
場 の 周 辺 に 有 す る砂 糖 きび 畑 で 砂 糖 きび の 脱 葉 や 収 穫 の 作 業 を行 つ て い た も
の で あ る こ と, こ れ ら作 業 の 際 も風 向 き に よ っ て 本 件 処 分 場 か らの 煙 や 異 臭
- 52 -
が 畑 に ま で 達 して い た た め , マ ス ク を着 け て 作 業 をす るな ど した が , 頭 痛 や
目の 痛 み , 息 苦 し さ, の どが カ ラカ ラす るな ど, こ れ ら作 業 は苦 痛 を 伴 うも
の で あ っ た こ と, ま た , 大 浦 地 区 の 原 告 ら居 宅 に も上 記 期 間 ) 風 向 き に よ っ
て 本 件 処 分 場 か らの 煙 や 異 臭 が 届 く よ うな状 況 が 続 き, 原 告 らは , こ の よ う
な 状 況 の とき は窓 等 を 開 け る こ とは で きず , 洗 濯 物 も室 内 で 干 す な ど した こ
と, 本 件 火 災 後 の 原 告 らを含 む 大 浦 地 区や 他 の 周 辺 地 区 の 住 民 に 対 す る健 康
調 査 結 果 で は , 大 浦 地 区 の 住 民 か ら, の どや 眼 の 不 調 や 諸 症 状 , 頭 痛 や め ま
い , 吐 き気 。お う吐 ) 呼 吸 の 困難 や , 皮 膚 の か ゆみ 等 の 訴 えが , 他 の 地 区 の
住 民 か らの訴 え に比 して 有 意 に 高 い も の とな っ て い る こ と, 本 件 火 災 後 に行
われ た 調 査 結 果 と して , 平 成 1 3 年
11月
29日
の 沢J 定結 果 は , 化 学 物 質 で
高 濃 度 に発 生 した ガ ス は 眼 , 鼻 , の ど等 に粘 膜 刺 激 を起 こす ア ク ロ レイ ン と
ベ ンゼ ン で あ り, ア ク ロ レイ ン は , 作 業 環 境 基 準 0 . l p p m に
処 分 場 中 の 覆 上部 分 の ガ ス 濃 度 は 1 7 p p m で
基 準 の 0,003mg/ぱ
あ り, ベ ンゼ ン は , 大 気 環 境
を上 回 る 1 0 0 m g / ポ
覆 上部 分 の ガ ス か らは 平 成 1 4 年
対 し, 本 件
以 上 の 濃 度 で あ っ た こ と,
2 月 1 4 日 に も ア ク ロ レイ ン , ベ ンゼ ン ,
トル エ ン , エ チ ル ベ ンゼ ン , メ タ ン な どが 検 出 され , ベ ンゼ ン は敷 地 境 界 で
も検 出 され た ほ か , 同 月 の 大 浦 農 村 集 落 セ ン タ ー の 測 定 で は ベ ンゼ ン類 等 が
痕 跡 的 に 検 出 され た こ と, 同 年 3 月 に は , 平 良 市 か ら, 大 浦 地 区 の 住 民 に対
して , 防 塵 マ ス クや 防 臭 木 炭 が 配 布 され るな ど した こ とが それ ぞ れ 認 め られ
る。
な お , 本 件 火 災 後 , ダ イ オ キ シ ン濃 度 が基 準 値 を上 回 つ て い る との 調 査 結
果 が 存 す る と こ ろで あ るが ( 甲 1 , 4 8 の
52,乙
イ 1),こ
れ らは , 本 件
処 分 場 前 の 道 路 の 街 路 樹 で あ る リュ ウ キ ュ ウ ア カ マ ツ や , 本 件 処 分 場 境 界 付
近 の 水 た ま りか らの 採 取試 料 に よ る も の で あ る と ころ , こ れ ら調 査 結 果 か ら
直 ち に本 件 火 災 の 結 果 発 生 した ダイ オ キ シ ンが 原 告 らの 健 康 に被 害 を与 えた
も の とま で い う こ とは で き な い ( なお , 原 告 らは , 被 告 沖縄 県 が 実 施 を打診
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した血 中 ダイ オ キ シ ン検 査 を受 けて い な い ( 原告 下 地 博 和 本 人 , 証 人 関 日鉄
夫 ,乙 イ 4, 5))。
以 上 の 検 討 結 果 に よれ ば , 原 告 らは , 本 件 火 災 後 も長 期 間 に わ た り, 本 件
火 災 の 結 果 本 件 処 分 場 か ら発 生 し続 け た 煙 や 異 臭 に よ り, そ の 日常 生 活 や 農
作 業 に 深 亥J な影 響 を受 け て い た も の と認 め られ る の で あ っ て , こ れ に よ り原
告 らが 受 け た 精 神 的 , 肉 体 的 苦 痛 も, 相 当程 度 大 き か っ た も の とい え る とこ
ろ , こ れ を慰 謝 す るた め の 慰 謝 料 と して は , 原 告 1 人 に つ き 2 0 万
円 を認 め
る の が 相 当で あ る。
な お , 原 告 下 地 カ メ ( 原告 番 号 2 9 番 ) は , 本 件 火 災 前 の 平 成 1 3 年
月 31日
に交 通 事 故 で入 院 し, 翌 平 成 1 4 年
23, 25の
29, 58の
17)と
1月 19日
10
に退 院 して い る ( 甲
こ ろ , 同 原 告 は , そ の 後 自宅 に 戻 っ て か
らの 慰 謝 料 を請 求 して い る も の で あ り, 同 原 告 に つ い て の 慰 謝 料 は , 1 0 万
円 を も つ て 相 当 と認 め る。
ま た , 原 告 下 地 トヨ子 は , 主 と して 年 金 生 活 で あ り, ま た , 砂 糖 きび の 栽
培 を少 々 行 っ て い る も の で あ る ( 甲 2 3 , 2 5 の
③ の損 害 につ い て の慰 謝 料 を 1 5 万
41)と
こ ろ, 同 原 告 は ,
円 と して 請 求 して い る こ とか ら, 同 金 額
の 限度 で 認 め る こ と とす る。
この ほ か , 原 告 大 里 英 人 , 同 下 地 キ ク 、 同 下 地 トヨ, 同 下 地 正 三 , 同 名 嘉
真 奉 二 及 び 同根 間芳 和 に つ い て , 本 件 火 災 に よ る症 状 が 重 い こ と等 を理 由 と
して , ③ の損害 につい て , 他 の原告 らよ りも 1 0 万 円上乗 せ して 4 0 万 円の
慰謝料 を請求 してい る ところ, 本 件火災後長期 間にわた りそ の 日常生活や農
作業 を行 う上で受 けた影響 の 内容 , 程 度 には各原告 ごとにそれぞれ差が存す
るもの ではあるが, こ れ に基 づ く慰謝料 の額 に差 を設 けるべ きもの とまでは
い えず , 慰 謝料 の額は, そ の余 の原告 らと同様 に ( 上記個別 に検討 した原告
らを除 く。) , 一 律 2 0 万 円の 限度 で認 めるのが相 当である。
( 5 ) よ って , 各 原告 らに認 め られ る損害額 は, 別 紙認容額 一 覧表記載 の とお り
- 54 -
とな る。
第4 結 論
以 上 か ら, そ の 余 の 点 に つ い て 判 断 す る ま で もな く, 被 告 崎 山 の 不 法 行 為
( 民法 7 1 7 条
の 工 作 物 責任 ) に 基 づ く損 害 賠 償 と して , 被 告 崎 山 との 関係 で ,
各 原 告 らに つ い て , 別 紙 認 容 額 一 覧 表 の 各 原 告 に 対応 す る認 容 額 欄 記 載 の 各 金
員 の 支 払 を求 め る限度 で理 由が あ るか ら これ を認 容 し, 原 告 立 津 ヒデ ( 同原 告
に つ い て は 被 告 崎 山 との 関係 で は全 額 の 認 容 とな る。 ) を 除 くそ の 余 の 原 告 ら
の 被 告 崎 山 に 対 す るそ の 余 の 請 求 及 び 原 告 らの 被 告 沖 縄 県 に 対 す る請 求 を い ず
れ も棄 却 す る こ と と して , 主 文 の とお り判 決 す る。
那覇 地 方裁 判 所 民事 第 1部
裁判長裁判官
田
中
裁判官
加
藤
裁 半J
北官
- 55 -
健
治
靖
村
治
樹
これ は正 本 で あ る。
平 成 1 9 年3 月 1 4 日
那覇地方裁判所民事第 1部
裁判所書記官 荒
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