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タイ食品・食材の流通の現状と展望

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タイ食品・食材の流通の現状と展望
平成 19 年度 タイ食品・食材の流通機能強化支援プロジェクト
タイ食品・食材の流通の現状と展望
(タイ料理・タイレストランに関するマーケッティング調査)
平成 20 年 2 月
JETRO
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目
第1部
次
日本の食料輸入とタイからの食料輸入の現状
1. 日本の食料輸入の現状
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
2. タイの食料輸出の現状
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 11
3. 日本の食料輸入時の留意点
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 15
第2部
外食とタイレストラン
1. 日本の外食事情
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 19
2. タイレストラン調査の概要
第3部
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 21
消費者のタイレストランに関する意見
1.タイレストランに対する消費者アンケートの結果概要
第4部
1
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 31
タイレストラン、食品の振興に関する提案
1. アンケート調査結果についての考察
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 43
2. タイ食材の輸出振興に関する提案
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 45
3. タイレストランに関する提案
第5部
報告書のまとめ
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 46
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 48
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第 1 部 日本の食料輸入とタイからの輸入の現状
1. 日本の食料輸入の現状
1.1 日本の食料輸入の概要
日本の食料事情は、食料自給率の点で、欧米など他の消費国と異なる事情がある。日本のカロ
リーベースの食料自給率は 1960 年には 79%であったが、2005 年には 40%に減っている。これは
OECD 加盟国の中でも最低の水準にある(米国 128%、フランス 122%、ドイツ 84%、イギリス 70%、
いずれも 2003 年)。日本は食料の自給率の向上の推進を図っているものの、急激な改善は見込ま
れず、今後も引き続き相当程度の食料を輸入せざるを得ない状況にある。表1-1 は、主な食品の
輸入比率である。
表1-1 日本の輸入基礎データ(食料の国内生産量と輸入量:2005 年、概算値)
国産(千 t)
野菜(いも類除く)
輸入(千 t)
輸入比率
12,477
3,367
21.3%
果物
3,708
5,437
59.5%
牛肉
497
654
56.8%
豚肉
1,242
1,298
51.1%
鶏肉
1,293
679
34.4%
魚介類
5,106
5,782
53.1%
出典:日本フードサービス協会
表 1-2 は、農林水産物の主な輸入相手国の輸入金額の推移である。輸入相手国として、米国及
び中国の占める比率が高く、日本はこの 2 国に食料の多くを依存している状況にある。タイは農林
水産物の輸入金額で第 6 位の貿易相手国である。2006 年のタイからの輸入金額は、4375 億円で
あり 2005 年対比 15%の伸びを示している。
表 1-2 日本の農林水産物の輸入相手国(上位 10 各国・地域)
単位:金額 100 万円、比率%
2002
2003
2004
2005
輸 入 額
輸 入 額
輸 入 額
輸 入 額
2006
国・地域名
アメリカ合衆国
構成
対前年
比
増減率
輸 入 額
1,835,808
1,834,626
1,702,033
1,735,805
1,772,801
21.9
2.1
中華人民共和国
949,984
931,111
1,040,909
1,120,993
1,223,288
15.1
9.1
EU(25カ国計)
766,246
790,842
841,048
824,857
856,948
10.6
3.9
オーストラリア
465,606
465,697
596,560
604,752
620,561
7.7
2.6
カナダ
502,208
468,142
514,391
495,192
492,870
6.1
△0.5
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1
タイ
373,633
369,178
350,839
379,921
437,517
5.4
15.2
インドネシア
310,541
281,973
300,784
282,352
339,082
4.2
20.1
マレーシア
179,233
172,853
194,480
206,229
270,967
3.4
31.4
ロシア
178,768
192,971
212,128
207,678
220,055
2.7
6.0
チリ
149,445
152,117
175,315
198,294
215,892
2.7
8.9
出典:農林水産省
農林水産物のうち農産物については、表 1-3 及び図 1-1 のとおり、タイは、2006 年に第 5 位に
上昇し、輸入額 3159 億円、対前年比伸び率も 21.3%と上昇している。特に 2005 年、2006 年は急
激に伸びている。また、水産物は、表 1-4 のとおり、2006 年の輸入額が 1127 億円で、ここ 5 年は、
ほぼ同じレベルで推移している。
表 1-3 日本の農産物の輸入相手国(上位 5 カ国・地域)
単位:金額 100 万円、比率%
順 位
2005
2006
年
年
2002
2003
2004
2005
2006
対前
国・地域名
構成
輸入額
輸入額
輸入額
輸入額
輸入額
年増
比
減率
1
1
アメリカ合衆国
1,539,124
1,583,691
1,447,444
1,479,247
1,517,610
30.3
2.6
3
2
中華人民共和国
518,313
510,605
565,044
616,792
663,080
13.3
7.5
2
3
EU(25)
599,411
608,500
656,290
641,737
648,198
13.0
1.0
4
4
オーストラリア
331,616
345,644
467,511
473,856
478,276
9.6
0.9
6
5
タイ
228,949
244,310
228,832
260,348
315,905
6.3
21.3
出典:農林水産省
図 1-1 日本の農産物の上位 5 カ国・地域の輸入推移
1,517,610
2006年
663,080
1,479,247
2005年
616,792
648,198
641,737
478,276
473,856
315,905
260,348
アメリカ合衆国
2004年
1,447,444
565,044
656,290
467,511
中華人民共和国
228,832
EU(25)
オーストラリア
タイ
1,583,691
2003年
510,605
1,539,124
2002年
0
500,000
1,000,000
518,313
1,500,000
2,000,000
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608,500
599,411
2,500,000
345,644
331,616
244,310
228,949
3,000,000
3,500,000
4,000,000
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2
表 1-4 日本の水産物の輸入相手国(上位 5 カ国・地域)
単位:金額 100 万円、比率%
順 位
2005
2006
年
年
2002
2003
2004
2005
2006
対前
国・地域名
構成
輸入額
輸入額
輸入額
輸入額
輸入額
年増
比
減率
1
1
中華人民共和国
308,807
286,205
335,843
355,053
381,796
22.4
7.5
2
2
アメリカ合衆国
170,151
143,259
147,714
157,917
151,827
8.9
△3.9
5
3
チリ
80,814
78,883
93,564
103,517
120,673
7.1
16.6
3
4
ロシア
111,447
121,700
116,952
124,075
114,315
6.7
△7.9
4
5
タイ
129,989
112,246
110,301
108,853
112,707
6.6
3.5
出典:農林水産省
1.2 世界の需給動向と日本への影響
(1) 農産物需給の見通し
農産物の輸入先が、アメリカ、中国、さらにはオーストラリアなど一部の国に集中していることから、
これらの国の不作や需給変動、食料の輸出に関するそれらの国々の方針が日本の食料事情に大
きな影響を受けるおそれがある。最近では、オーストラリアで、2006年に記録的な干ばつが発生し、
小麦生産量が2005年から約6割も減少したため、全世界的に供給不安及び価格上昇がおこって
いる。また、とうもろこしに関しては、アメリカのバイオエタノール生産の急増、また中国の畜産物の
消費拡大のため、とうもろこしの安定供給は深刻な状態にある。少なくとも今後2~3年間はとうもろ
こしの需給のひっ迫が続き、価格高騰等の影響が現れている。このような世界的な食料需給の影
響は、日本も例外なく受け、日本も新たな食料供給源を探す必要性があることを示している。これら
の国々に次ぐ輸出量をもつタイに対し、今後、代替供給先としての期待が高まるものと考える。
(2) 水産物需給の見通し
FAOによれば、1人1年当たり食用魚介類消費量は、2000年前後の16.1kgから2015年には
19.1kgへと19%増加し、人口増加も考えると、世界の水産物総需要量は2000年前後の1.33億トン
から1.83億トンへと38%増加すると見込まれている。一方、世界の総生産量は、多少の増加が見込
まれるものの、需要量と生産量の差である需給ギャップは拡大し、需給が更に逼迫すると予測され
ている。また、水産物価格は、2010年までは年3.0%、それ以降2015年までは年3.2%ペースで上
昇するとの見通しが出ている。このため、水産物の価格は高騰し、消費国の取り合いの様相になる
ことが懸念される。食品流通会社の話によれば、タイの水産加工品は、最近は横ばいから減少傾
向にあり、水産加工基地は、タイからベトナム等他の東南アジア諸国にうつる傾向があるとのことで
ある。
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3
1.3 日本のタイからの輸入の概要
次に、日本とタイの 2 国間の輸入状況を見てみる。金額ベースの過去 8 年の輸入実績推移が表
1-5 及び図 1-2、数量ベースの過去 8 年の輸入実績推移が表 1-6 である。この統計は、農林水産
物全体の統計のため、食品以外の天然ゴムやペットフード等も含まれている。食品について上位
の品目をみると、鶏肉調製品、えび調製品、砂糖が多く、以下、えび・いか・まぐろなどの水産物及
び水産物加工品、冷凍野菜、生鮮野菜が上位を占めている。
表 1-5 日本のタイからの輸入実績推移(金額ベース) 1999 年~2006 年
単位:金額 100 万円
主要品目
農林水産物計
1999 年
2000 年
2001 年
2002 年
2003 年
2004 年
2005 年
2006 年
319,748
318,969
354,573
373,632
369,178
350,839
379,921
437,516
農産物
192,140
186,658
211,207
228,948
244,310
228,831
260,347
315,904
林産物
9,795
11,360
13,167
14,694
12,621
11,705
10,720
8,904
水産物
117,813
120,950
130,198
129,989
112,246
110,301
108,852
112,707
天然ゴム
43,448
45,985
43,567
47,680
61,837
73,512
82,728
119,296
鶏肉調製品
15,578
17,976
23,418
30,323
34,369
36,223
52,297
57,304
えび調製品
21,887
25,516
30,067
26,717
23,156
23,454
22,617
26,788
砂糖
10,321
14,867
20,004
9,477
13,322
15,490
17,889
23,361
ペットフード
18,485
17,449
17,743
19,562
20,751
21,263
20,994
22,396
えび(活・生・蔵・凍)
27,937
28,870
27,249
23,433
17,592
16,075
16,009
18,203
いか(活・生・蔵・凍)
20,537
19,271
20,974
20,902
17,866
17,712
17,088
16,759
まぐろ缶詰
3,820
3,866
4,475
6,241
6,312
6,931
8,342
8,322
冷凍野菜
5,446
4,883
4,879
5,038
5,598
5,531
6,111
6,897
いとより(すり身)
8,226
7,702
7,304
10,261
8,429
6,179
6,684
6,622
米
5,201
3,344
3,662
3,563
3,821
4,076
7,119
5,468
生鮮野菜
2,535
2,389
3,001
3,806
3,168
4,108
3,977
4,323
切花
3,135
3,001
2,939
3,008
2,863
3,016
3,098
3,551
でん粉
1,510
1,835
2,497
2,832
2,215
2,587
2,419
3,127
かつお・まぐろ類(生・蔵・凍)
2,828
2,014
2,746
2,940
2,595
2,627
2,261
2,981
パイナップル缶詰
3,038
2,226
2,765
2,726
2,338
2,466
2,687
2,514
チップ
3,047
4,378
6,251
7,754
5,540
4,900
4,672
2,395
香辛料
2,637
2,842
2,546
2,114
2,230
2,978
2,572
2,330
955
1,039
1,457
1,724
2,128
1,944
1,873
1,936
1,277
605
304
523
718
889
491
1,837
ワッフル・パイ・ケーキ
くらげ(活・生・蔵・凍・塩・乾)
出典:農林水産省
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4
図 1-2 日本のタイからの農水産物の輸入金額推移
単位 100 万円
500,000
450,000
400,000
350,000
300,000
農林水産物合計
250,000
農産物
200,000
水産物
150,000
林産物
100,000
50,000
0
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
表 1-6 日本のタイからの輸入実績推移(数量ベース) 1999 年~2006 年
単位:トン
主要品目
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
566,431
604,480
507,878
533,372
537,948
515,320
529,063
492,080
鶏肉調製品
37,209
46,639
57,723
73,950
90,749
98,544
145,998
148,360
えび調製品
17,121
20,473
24,412
23,048
22,715
25,699
26,209
31,233
473,497
768,089
669,591
403,501
562,802
712,593
626,701
529,398
ペットフード
84,583
89,574
81,125
93,846
108,675
113,101
102,281
104,826
えび(活・生・蔵・凍)
19,327
18,657
20,580
19,064
16,931
17,209
18,408
20,097
いか(活・生・蔵・凍)
28,266
27,970
28,945
29,658
26,566
26,505
23,980
20,191
まぐろ缶詰
10,544
12,667
12,633
16,556
16,788
19,089
20,408
19,196
冷凍野菜
26,586
24,760
22,937
23,730
28,117
30,438
31,542
34,131
いとより(すり身)
38,076
40,689
40,908
49,738
44,942
35,174
29,817
29,235
152,030
128,287
143,272
126,299
138,476
138,188
206,503
144,518
11,162
10,241
11,963
11,945
7,726
16,089
16,205
13,897
4,187
4,083
3,845
3,937
3,812
3,897
3,958
4,060
66,722
94,653
108,836
108,155
97,497
111,231
80,863
111,771
4,135
2,721
9,463
9,481
9,029
5,896
3,890
7,201
28,254
29,928
34,200
28,592
25,849
28,944
30,546
27,320
228,727
377,785
491,942
613,216
445,990
393,481
347,146
153,606
天然ゴム
砂糖
米
生鮮野菜
切花
でん粉
かつお・まぐろ類(生・蔵・凍)
パイナップル缶詰
チップ
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5
香辛料
23,905
30,513
23,935
26,375
31,848
26,461
17,881
22,872
ワッフル・パイ・ケーキ
2,260
3,291
4,431
5,276
6,890
6,600
6,245
5,968
くらげ(活・生・蔵・凍・塩・乾)
4,214
2,985
1,044
2,022
3,512
3,770
1,825
6,593
出典:農林水産省
もっとも金額の大きい鶏肉調製品については、この 2~3 年の伸び率が高いが、この理由は鳥イ
ンフルエンザの影響であり、これについては後述する。えび調製品は年によりばらつきがあるが、
全体に伸びは見られず安定した金額で推移している。砂糖も数量でみると、年によりばらつきがあ
るが、金額はここ5年でみると順調に伸びているため、単価の値上がりがあるものと推測される。冷
凍野菜、生鮮野菜は順調に伸びているが、2006 年の生鮮野菜の数量が落ち込んでいるのは、
2006 年 5 月から日本で開始された残留農薬の規制強化(ポジティブリスト制)が影響しているのでは
ないかと推測される。
図 1-3 日本のタイからの農産物の輸入金額推移
単位 100 万円
315,905
2006年
260,348
2005年
228,832
2004年
244,310
2003年
228,949
2002年
0
50,000
100,000
150,000
200,000
250,000
300,000
350,000
図 1-4 日本のタイからの水産物の輸入金額推移
単位 100 万円
112,707
2006年
108,853
2005年
110,301
2004年
112,246
2003年
129,989
2002年
95,000
100,000
105,000
110,000
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115,000
120,000
125,000
130,000
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6
135,000
図 1-5 日本のタイからの輸入実績推移(金額ベース)1999 年~2006 年:農産物
単位:100 万円
70,000
60,000
鶏肉調製品
砂糖 50,000
冷凍野菜 米 40,000
パイナップル缶詰 香辛料 30,000
生鮮野菜 でん粉 20,000
ワッフル・パイ・ケー
キ 10,000
0
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
他国との輸入金額の比較で見て、タイ国が輸入相手国として、上位にあがっている品目のうち、
主要品目である鶏肉調製品、えび、冷凍野菜の過去 5 年の輸入実績推移を表にしたものが、表
1-7 である。
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7
表 1-7 主要品目の輸入実績(鶏肉調製品、えび、冷凍野菜)
(1) 鶏肉調製品
単位:数量はトン、金額は 100 万円
2002
2003
2004
2005
数量(t)
数量(t)
数量(t)
数量(t)
数量(t)
金額
218,856
228,763
228,336
329,277
345,300
132,510
139,662
132,890
123,405
178,584
195,193
74,181
73,950
90,750
98,545
145,998
148,360
57,304
3,732
3,658
184
459
473
505
4.大韓民国
311
338
345
642
576
302
5.ブラジル
462
414
2,634
3,489
616
174
739
713
3,224
105
83
44
鶏肉調製品全体
1.中華人民共和国
2.タイ
3.アメリカ合衆国
その他
2006
価格(千円/t)
(2) え
383.8
び
単位:数量はトン、金額は 100 万円
2002
2003
2004
2005
数量(t)
数量(t)
数量(t)
数量(t)
数量(t)
金額
259,962
243,394
251,486
241,716
238,020
248,013
1.ベトナム
41,535
47,656
55,516
54,525
51,149
52,152
2.インドネシア
53,818
52,635
48,807
45,668
43,830
46,328
3.インド
35,275
28,476
31,929
26,606
29,181
27,214
4.中華人民共和国
19,933
20,727
22,962
24,368
23,018
18,971
5.タイ
19,065
16,931
17,209
18,409
20,097
18,204
90,335
76,968
75,062
72,140
70,746
85,144
えび合計
その他
2006
価格(千円/t)
1,042.0
(3) 冷凍野菜
2002
2003
2004
2005
数量(t)
数量(t)
数量(t)
数量(t)
数量(t)
金額
666,127
629,373
707,761
737,337
778,143
116,263
1.中華人民共和国
251,338
225,760
274,578
297,614
326,364
54,351
2.アメリカ合衆国
272,135
242,840
249,495
267,419
285,560
33,698
3.タイ
23,731
28,117
30,439
31,542
34,131
6,898
4.台湾
23,892
27,888
30,181
26,379
24,406
5,257
5.カナダ
44,101
38,691
52,467
46,391
42,442
4,818
その他
50,930
66,076
70,600
67,992
65,240
11,242
冷凍野菜合計
2006
価格(千円/t)
149.4
出典:農林水産省
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8
このうち鶏肉調製品に関して、鳥インフルエンザに起因する輸入量の変化について述べる。
2003 年に中国で発生した高病原性鳥インフルエンザが 2004 年 1 月にはタイにも発生し、生鮮・冷
蔵・冷凍品は輸入の一時停止の影響で減少した。この代替として、ブラジルから鶏肉の輸入が増
加し、現在鶏肉の輸入はブラジルが圧倒的シェアを占めている(表 1-8、図 1-6 参照)。その後、タイ
及び中国に関しては、日本の指定した加工施設で加熱処理された鶏肉調製品の輸入が認められ
たことから、両国からの輸入が鶏肉原料(生鮮品)から、鶏肉調製品(加熱調理済みの鶏肉製品)に
シフトしており、2006 年度には、ベースで鶏肉とほぼ同量の輸入量となった。(表 1-8、図 1-7 参照)
表 1-8 鶏肉と鶏肉調製品の国別の輸入動向
(1) 鶏肉(生鮮・冷蔵・冷凍品)
年度
中国
米国
タイ
ブラジル
その他
合計
2002
121,531
49,571
166,973
153,245
4,034
495,354
2003
43,476
41,094
146,252
193,955
5,533
430,310
2004
925
31,541
68
323,260
9,468
365,262
2005
780
28,370
54
394,325
9,923
433,452
2006
426
26,894
11
308,432
4,126
339,889
出典:財務省通関統計他
(2) 鶏肉調製品
年度
中国
米国
タイ
ブラジル
その他
合計
2002
141,922
3,130
73,280
0
1,568
219,900
2003
113,501
3,648
82,980
0
2,364
202,493
2004
143,126
245
121,828
0
6,552
271,751
2005
185,323
415
148,603
0
3,112
337,543
2006
195,268
487
148,794
0
1,118
345,667
出典:財務省通関統計他
図 1-6 鶏肉の輸入国推移(表 1-8、(1)のグラフ化)
426
11
2006年 26,894
4,126
308,432
2005年780
28,37054
394,325
9,923
中国
2004年92531,54168
323,260
米国
9,468
タイ
ブラジル
2003年
43,476
2002年
41,094
146,252
121,531
0
50,000
193,955
49,571
100,000
150,000
166,973
200,000
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250,000
5,533
153,245
300,000
350,000
400,000
その他
4,034
450,000
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9
500,000
図 1-7 鶏肉調製品の輸入国推移(表 1-8、(2)のグラフ化)
195,268
2006年
487
185,323
2005年
148,794
415
1,118
148,603
3,112
中国
143,126
2004年
245
121,828
米国
6,552
タイ
ブラジル
113,501
2003年
3,648
141,922
2002年
0
50,000
82,980
3,130
100,000
150,000
2,364
73,280
その他
1,568
200,000
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250,000
300,000
350,000
400,000
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10
2. タイの食料輸出の現状
2.1 FAO 統計から見たタイの概況
FAO の統計から、タイの生産状況を概観してみると、タイでは 2003 年の人口が 6200 万人でこれ
は 18 年前の 1985 年の人口 5000 万人から比較して、1200 万人の増加である。また農業経済活動
人口も順調に増加しており、農業就業人口の減少が深刻な問題となっている日本に比べると、大
きな違いがある。但し、耕地面積の推移を見ると、1985 年の 1769 万 Ha から、2003 年は 1413 万
Ha と減少傾向にある。生産品目をみると、当然のことながら穀物、米の主食が圧倒的に多いが、タ
イの特徴としては、鶏肉、豚肉、鶏卵が主食の次に生産が多く、野菜・果物でいえば、オレンジ、ト
マト、たまねぎ、馬鈴薯が多いという統計結果になっている。
地球温暖化の影響について、IPCCでは、世界的な潜在的食料生産量は、地域の平均気温の1
~3℃までの上昇幅であれば増加すると予測しているが、それを超えて上昇すれば、逆に減少に
転じると予測している。農業生産への主な影響としては、穀物生産量は、21世紀半ばまでに、東ア
ジア及び東南アジアにおいて最大20%増加する可能性があるとしている。この報告を見る限り、タ
イは、今後も農業生産量の増加が見込まれる国であると考える。
表 1-9 タイ国の概況
(1) 人口
単位:1,000 人
1985年
1990年
1995年
2000年
2002年
2003年
総人口
50,622
54,389
57,828
60,925
62,193
62,833
経済活動人口
27,789
31,107
33,751
36,283
37,076
37,477
農業経済活動人口
18,753
19,929
20,361
20,484
20,348
20,271
資料:FAO「FAOSTAT」
(2) 土地
単位:1,000Ha
1985年
1990年
1995年
2000年
2002年
2003年
土地面積
51,089
51,089
51,089
51,089
51,089
51,089
耕地
17,693
17,494
16,839
15,865
15,867
14,133
2,154
3,109
3,571
3,380
3,500
3,554
永年作物地
資料:FAO「FAOSTAT」
(3)農業生産
2003年
品目名
収穫面積:
Ha
生産量:Mt
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2004年
収穫面積:
Ha
生産量:Mt
2005年
収穫面積:
Ha
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11
生産量:Mt
穀物
11,438,105
31,420,317
10,451,100
28,276,800
11,566,300
31,490,300
米(もみ)
10,193,440
27,038,000
9,200,000
23,860,000
10,200,000
27,000,000
1,083,845
4,178,017
1,089,600
4,216,000
1,150,000
4,180,000
鶏肉
-
1,227,000
-
878,489
-
950,000
牛乳
-
731,923
-
842,611
-
900,000
豚肉
-
660,624
-
677,040
-
682,500
鶏卵
-
553,857
-
393,360
-
384,000
オレンジ
19,000
340,000
20,000
350,000
20,000
350,000
たまねぎ
18,303
211,217
20,103
321,037
19,200
279,000
トマト
10,280
248,126
11,040
266,000
11,500
270,000
大豆
158,412
238,561
159,680
244,968
160,000
245,000
牛肉
-
190,364
-
114,684
-
115,000
ばれいしょ
6,969
99,813
6,812
94,590
6,900
97,411
ぶどう
2,700
43,200
2,700
43,200
2,800
45,000
大麦
9,000
17,500
10,000
17,000
10,000
17,000
小麦
1,300
800
1,300
800
1,300
800
とうもろこし
資料:FAO「FAOSTAT」
タイから他国への輸出品目としては、FAO の統計をみると、穀類、米は生産量が多いため当然上
位を占めているが、特徴的な製品としては砂糖が 4800 トンと目立っており、また鶏肉、豚肉も多い。
但し鶏肉が 2004 年に激減しているのは鳥インフルエンザの影響であると思われ、すでに述べたと
おり、日本の輸入統計からも同様のことが推測される。
(4) タイ国の輸出農産物
輸出量:トン
2002年
輸出額:1,000US ドル
2003年
2004年
品目名
輸出量
輸出額
輸出量
輸出額
穀物
7,538,376
1,670,414
8,657,669
1,879,135
10,986,238
2,848,087
米(精米換算)
7,337,561
1,631,963
8,394,979
1,828,480
9,989,730
2,696,248
砂糖(粗糖換算)
4,204,554
684,262
5,350,017
927,297
4,805,772
811,276
とうもろこし
153,139
27,502
197,701
36,223
951,310
139,814
牛乳及びクリーム
213,001
139,489
114,875
89,541
135,731
117,002
鶏肉
330,381
534,657
343,496
597,634
26,548
43,507
22,670
4,583
20,073
4,035
79,823
13,471
たまねぎ
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輸出量
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12
輸出額
豚肉
11,584
20,318
9,684
14,503
5,101
8,984
小麦及び小麦粉.
12,900
2,978
10,436
2,976
12,776
3,698
鶏卵(殻付き)
2,047
2,570
9,447
9,205
3,192
2,722
オレンジ
1,028
509
820
408
2,621
1,343
トマト
697
142
1,894
313
6,038
1,017
大豆
835
339
566
289
975
578
1,043
246
339
187
790
271
りんご
5
5
135
97
137
60
ぶどう
21
22
17
8
108
45
綿花
219
181
761
1,157
21
43
牛肉
0
0
0
1
62
40
大麦
0
0
1
0
2
2
なたね
0
0
0
0
0
0
ばれいしょ
資料:FAO「FAOSTAT」
3.2 タイの食料の生産状況の変化
タイと親交の深い日本企業の話によると、最近の穀物の需給の逼迫はタイの生産状況に
も変化をもたらしているようである。例えば、タイの主要農産品は米、サトウキビ、キャ
ッサバ(タピオカ)であるが、最近はサトウキビからとうもろこしや大豆に転換する農家が増
えていると聞く。これは、サトウキビが栽培開始から収穫まで 3 年かかるのに対し、とう
もろこしや大豆が 1 年生作物であり、効率よく所得が得られることが理由と考えられる。
また、キャッサバは、これまでは動物用の餌として低価格で販売されていたものが、コー
ンスターチ代替のでんぷん原料として注目されている。但し、日本では現在加工でんぷん
(加熱されたもの)として、切手用ののりの用途の輸入がほとんどということである。今
後は、食用としての輸入許可品目として拡大される可能性がある。
タイは、以上のように、東南アジアの重要な食料輸出国であり、かつ中国やインドなど
の消費が増えることによるこれらの国の対外輸出の減少(輸入国への転換、中国ではすで
に始まっている)を考えると、日本がタイに対し、既存の作物・製品以外にこれら大豆、
とうもろこしなど、穀物類、豆類をタイに求めてくることも考えられる。
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13
図 1-8 タイからの輸出農産物(金額ベース:千 US ドル)
3,000,000
穀物
米(精米換算)
2,500,000
砂糖(粗糖換算)
鶏肉
牛乳及びクリーム
2,000,000
とうもろこし
豚肉
たまねぎ
小麦及び小麦粉.
1,500,000
鶏卵(殻付き)
オレンジ
大豆
ばれいしょ
1,000,000
綿花
トマト
ぶどう
りんご
500,000
牛肉
大麦
0
2002年
2003年
2004年
図 1-9 タイからの輸出農産物(数量ベース:トン)
12,000,000
穀物
米(精米換算)
10,000,000
砂糖(粗糖換算)
鶏肉
牛乳及びクリーム
8,000,000
とうもろこし
たまねぎ
小麦及び小麦粉.
豚肉
6,000,000
鶏卵(殻付き)
ばれいしょ
オレンジ
大豆
4,000,000
トマト
綿花
ぶどう
2,000,000
りんご
牛肉
大麦
0
2002年
2003年
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2004年
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14
3. 日本の食料輸入時の留意点
3.1 食品衛生法による輸入検査
(1) 食品衛生法に基づく輸入手続き
日本に食品を輸入する輸入者は、食品の安全性確保の観点から、食品衛生法に基づき輸入届
を提出しなければならない。食品衛生法第27条には「販売の用に供し、又は営業上使用する食品、
添加物、器具又は容器包装を輸入しようとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、その都
度厚生労働大臣に届け出なければならない。」と定められている。輸入届を行わない食品等につ
いては日本国内で販売等に用いることが認められない。
(2) 輸入届出書の厚生労働省検疫所における審査及び検査
輸入届出書は、厚生労働省の検疫所が受け付ける。この届出を受け付けたら、食品衛生法に基
づく適法な食品等であるかどうかについて食品衛生監視員が審査を行う。審査は食品等輸入届出
書に記載されている輸出国、輸入品目、製造者・製造所、原材料、製造方法、添加物の使用の有
無等をもとに以下の確認が行われる。
・
食品衛生法に規定される製造基準に適合しているか。
・
添加物の使用基準は適切であるか。
・
有毒有害物質が含まれていないか。
・
過去衛生上の問題があった製造者・所であるか。
更に、審査によって、検査による確認の必要があると判断されたもの(例えば、過去食品衛生法
違反が多い貨物等)は、検査命令、行政検査等の検査を実施し、検査結果をもとに食品衛生法に
適合していることを確認する。
審査や検査の結果、適法(=合格)と判断された食品等は、届出済証が届け出た検疫所より返
却されるので以後通関を進めることができる。
一方、違反(=不合格)と判断された食品等は、日本国内に輸入することはできない。違反の内
容は、検疫所から輸入者に対し通知されるので、以後の取扱いは検疫所からの指示に従わなけれ
ばならない。
3.2 代表的な食品衛生法の違反事例
厚生労働省では、ホームページ上で、輸入検査における 2002 年からの違反事例を公表している。
表 1-10 は、タイ国からの輸入品に関して、過去 5 年に見られた違反事例を、内容別にまとめたもの
である。この違反事例を見ると、次のような違反に分類できる。
・
日本で認められない食品添加物の使用(適用外を含む)
・
食品添加物の過量残存又は不足
・
大腸菌群、カビ毒などの発生
・
残留農薬の基準値オーバー
・
その他品質上の問題(カビ、腐敗変敗、不十分な密封等)
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15
これらの内容は、おおむね他国も同じような状況であるので、タイ国だけの特徴というものは見ら
れない。日本での輸入検査に合格するには、次のような対策が望まれる。
・
生鮮食品に関しては、残留農薬の基準を遵守できるような管理体制が必要。
・
加工食品にあたっては、製品設計の際に日本の食品添加物基準を調査して認められているも
ののみを使用し、また大腸菌群など菌類の検出のないように、適正な加工、衛生管理の実施
が必要。
表 1-10 輸入届出における食品衛生法違反事例(タイからの輸入分)
品名
違反内容
基準値
うるち精米
水濡れ及び船底の結露によ
-
る腐敗・変敗・カビの発生
もち精米
カビの発生・腐敗変敗
-
もち精米(破砕)
ヒートダメージによる変敗
-
穀物加工食品
着色料:銅クロロフィルの対
-
象外使用
冷凍エビシュウマイ、冷凍カニシュウマイ、冷凍海鮮包み揚
着色料:食用黄色 4 号の対
げ
象外使用(皮から検出)
冷凍エビシュウマイ、冷凍カニシュウマイ
着色料:食用黄色 5 号の対
-
-
象外使用
ココナッツシュガー、乾燥えび殻粉末、冷凍タイデザート
シロップ漬(ナタデココ)
漂白剤:二酸化硫黄の過量
その他食品:
残存
0.030g/Kg 未満
漂白剤:過酸化水素の使用
最終食品の完成
基準不適
前に分解又は除去
すること
スナック菓子(ドリアンチップス)、ツナフレーク、まぐろ油漬
酸化防止剤:T.B.H.Q.の含
け、揚げ豆菓子
有
調味料(トムヤムスープの素)
乳化剤:ポリソルベートの含
指定外添加物
指定外添加物
有
冷凍エビ春巻、冷凍カニシュウマイ、冷凍カニナゲット
保存料:ソルビン酸の対象外
-
使用
タピオカパール、タピオカ粉、冷凍キャッサバ
シアン化合物の含有
-
ハトムギ
アフラトキシン(カビ毒)の検
-
出
食肉製品(スモークドチキン)
成分規格不適合(亜硝酸根)
0.070g/Kg
魚肉ねり製品(イカボールほか)、清涼飲料水 (冷凍ココナ
成分規格不適合(大腸菌群)
陰性
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16
ッツジュース)、冷凍アオリイカソーメン、冷凍アマエビ、冷凍
イカ、冷凍イカソーメン、冷凍イミテーションカニボール(魚肉
ねり製品)、冷凍エビボール、冷凍キャロットケーキ、冷凍フ
ィッシュチップ、冷凍フィッシュボール(魚肉ねり製品) 、冷凍
ボイルヤリイカ開き、冷凍ホキ天ぷら、冷凍ヤリイカ、冷凍ヤ
リイカリング、冷凍串パイナップル、冷凍寿司種用アオリイ
カ、冷凍寿司種用ボイルヤリイカ、冷凍寿司種用ヤリイカ、
冷凍紋甲イカスリット
食肉製品(手羽中焼き鳥アスパラガス詰め)、冷凍春巻き、
成分規格不適合( E.coli)
陰性
成分規格不適合(生菌数)
100,000/g 以下
冷凍カレーペースト
成分規格不適合(細菌数)
3,000,000/g 以下
生鮮オオバコエンドロ、生鮮大葉、生鮮コエンドロ、生鮮コリ
成分規格不適合(残留農薬
0.01ppm
アンダー、生鮮ディル
クロルピリホス)
生鮮クレソン
成分規格不適合(残留農薬
冷凍焼き鳥(加熱後摂取冷凍食品(凍結直前未加熱))冷凍
焼き鳥(皮串)
冷凍イカゲソ、冷凍かぼちゃの挟み揚げ、冷凍キャロットケ
ーキ、冷凍チリペースト、冷凍フィッシュチップ、冷凍ボイル
ボタンエビ、冷凍蒸しサバ
5.0ppm
シペルメトリン)
生鮮カミメボウキ、生鮮シソクサ、生鮮ツボクサ、生鮮ペパ-
成分規格不適合(残留農薬
ミント、生鮮メボウキ
パラチオンメチル)
生鮮メボウキ
成分規格不適合(残留農薬
1.0ppm
0.3ppm
フェノブカル))
生鮮大葉
成分規格不適合(残留農薬
0.2ppm
フェニトロチオン)
冷凍ココナッツジュース
製造基準不適合(密栓、密
密栓、密封をしな
封)
ければならない
(厚生労働省HP:http://www1.mhlw.go.jp/topics/ysk_13/tp0419-1q.html)
3.3 食品衛生に関する考察
ある大手小売店では、輸入品のカントリーリスクを A、B、C にランク分けしている(A は
危険な国、B は要管理の国、C は管理できている国)。この会社では、ほとんどの東南アジ
アの国々を B ランクで管理しており、タイも B の要管理の国として位置づけている。その
理由は、タイでは、90 年代に大量の農薬を使用したことによる土壌汚染が発生したことが
あり、また水産物については抗生物質や合成抗菌剤を使用してきた過去の歴史がある。タ
イ政府は現在これらを改善するように推進しているが、解決にはもう少し時間がかかると
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考えているという評価である。輸入品を管理する項目としては、農産物であれば残留農薬、
水産物であれば合成抗菌剤、抗生物質、加工食品であれば食品添加物(甘味料、着色料、
保存料など)が、日本の食品衛生基準を満たしているかを管理している。タイでの輸出時
にタイ側で検査がなされているが、検査項目及びその精度について、どの程度信頼置ける
かの情報がないので、この小売店でも必要に応じ自ら確認検査をおこなっている。
一方、別の流通関係者によると、タイの加工業者については衛生管理のレベルは、他の
東南アジアの国に比べて高いという評価をしている。確かに 2002 年ごろにはタイからの輸
入品に食品衛生法上不合格の事例が出ているが、最近ではかなり違反事例が減少しており、
化学的危害については、他国に比べればあまり心配する必要はないという認識を持ってい
るとのことである。また、別の会社の話によると、加工食品に関しては、タイの輸出業者
及び日本の輸入業者は、輸入検査でどのような添加物が検出されるか心配なので、できる
だけ無添加商品を好んで原材料に使用する傾向にあるとのことである。
タイからの商品で、食品衛生法上の輸入検査で現在注意すべき商品としては、えび、オ
クラ、アスパラガス(ミニアスパラ) 、パパイヤ、マンゴーなどがあげられる。
また、食材だけでなく容器などの品質にも注意を払う必要がある。缶詰についての一例
をあげると、缶詰の容器をタイの会社から調達する場合、缶の品質(厚みなど)にばらつきが
ある。欧米では、缶の厚みについて一定のばらつきを許容しているが、日本はこの許容の
幅がせまいので、好ましくない。それ以外にも、欧米で許容される品質レベルが、日本で
は認められないという例は多い。
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第2部 外食とタイレストラン
1. 日本の外食事情
1.1 日本人の外食の利用
社会経済生産性本部のレジャー白書 2006 によると、余暇としての年間の外食の回数は、20.0 回
で、約 7,150 万人が外食を行っている。利用金額の平均は 3,290 円となっている。このように外食は、
身近な余暇として利用されている。飲食を含む外食の市場規模は、17 兆 2,290 億円で、余暇・レジ
ャー活動全体の規模 80 兆円の 20%以上を占めているもっとも大きな産業である。
家計支出をみると、年間の食品・食料支出額の金額に対する、外食産業の市場規模の比率(外
部化率)は、1990 年から 2005 年までの 15 年間 40%~42%前後で安定して推移している。
1.2 日本の外食産業の動向
日本フードサービス協会の報告によると、2006 年の外食市場規模は前年比 0.1%減であったが、
一般飲食部門では 0.7%増となった。全店の売上は前年比 102.8%と伸び、景気回復にともない個
人消費が上向き、客単価の上昇などで売上が伸びている。但し、2007 年後半からの、原油高に伴
うさまざまな物価高が外食にどのように影響していくかは、今後注視していく必要がある。
外食産業では、消費者のニーズに対応し、幅広い層を対象としたメニュー揃えや店舗づくりが進
められている。高齢者を意識した店、個室の導入、特定メニューを強調したファミリーレストラン、ダ
イエット、低カロリーを意識したレストラン、宅配メニューなども登場している。
ここ数年は、BSE の発生、食肉偽装・食品表示虚偽、農薬使用、無認可添加物など食の安全に
関わる問題が相次ぎ、さらに、消費期限切れ食材の使用等の問題が報道されている。外食産業に
おいても、品質管理の強化、基準・法令の遵守、店舗や工場での衛生管理の徹底などを進めてい
る。また、原産地表示やアレルギー、栄養成分などの表示や情報提供に努めている店舗もある。
表 2-1 及び表 2-2 は、日本フードサービス協会がホームページ上で公表している各種データを
表にまとめたものである。
表 2-1 外食レストランに関するデータ
月次売上
1 店舗当たり平均
客単価
8,116 千円
-
ファーストフード
7,139 千円
656 円
ファミリーレストラン
9,051 千円
1,040 円
パブ/居酒屋
10,716 千円
2,179 円
ディナーレスト ラン
16,160 千円
3,007 円
6,072 千円
376 円
喫茶
出典:日本フードサービス協会
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19
表 2-2 外食レストラン経営指標
経常利益率
4.4%
売 上 高 に 占 め る 人件費率
25.5%
比率
35.0%
食材比率
家賃・リース料
7.1%
水道光熱費
2.7%
外食産業のパート化率
91.1%
外食産業で働く社員の平均年齢
平均年齢は 32.4 歳、
男性 34 歳、女性 29 歳
外食店舗における食品ロス率(食べ残し)
3.1%
出典:日本フードサービス協会
1.3 外食比率
1965年から2003年にかけて、食料費に占める調理食品の割合が3%から11%に、外食の割合
が7%から18%になるなど、外食や中食に対する需要拡大、すなわち食の外部化が進展している。
この外食用食材の需要増加分を輸入材料でまかなってきたことから、主要野菜の加工・業務用需
要に占める国内産の割合は2000年の88%から2005年には68%に低下し、果実の加工需要に占め
る国内産の割合も、1985年の63%から2005年には11%に低下している。
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20
2.タイレストラン調査の概要
日本で経営しているタイレストランに対して以下の調査を行った。
・ 調査実施時期:2007 年 11 月~12 月
・ 調査方式:電話による聞き取り調査(質問の内容は、別冊報告書参照)
・ 回答数:94 店舗
・ 回答したレストランの所在地:首都圏/阪神地区のタイ料理専門店
(1) 経営形態
今回電話で聞き取りをした 94 店舗の経営形態としては、図 2-1 のとおり、非チェーン店
でタイ人の個人経営という店が最も多く、全体の 3 分の 2 を占めている。図 2-2 のとおり、
調査したタイレストランの従業員数は 5~10 人がもっとも多く、次に 5 人未満ということ
で小規模レストランがほとんどである。図 2-3 のとおり、客席数は、20 席~50 席の範囲に
散らばっている。
図 2-1 調査したタイレストランの経営形態
不明, 7店舗, 7%
企業経営, 24店舗, 26%
個人経営, 63店舗, 67%
図 2-2 調査したタイレストランの従業員数
5人未満
28
5~10人未満
31
10~20人未満
16
20~30人未満
4
30~40人未満
3
40~50人未満
0
50~60人未満
0
60人以上
2
その他
1
不明
9
0店舗
5店舗
10店舗
15店舗
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20店舗
25店舗
30店舗
35店舗
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21
図 2-3 タイレストランの席数
20席未満
5
20~30席未満
19
30~40席未満
20
40~50席未満
17
50~60席未満
10
60~70席未満
6
70~80席未満
3
80~90席未満
4
90~100席未満
2
100席以上
4
その他
無回答
3
1
0店舗
2店舗
4店舗
6店舗
8店舗
10店舗 12店舗 14店舗 16店舗 18店舗 20店舗
コックの国籍は、図 2-4 に示すとおり、タイ人が 56%と最も多く、タイ人と日本人の両
方を雇用している場合の 19%を加えると 75%を占める。タイ人コックの確保の重要性が伺
える。
図 2-4 タイレストランのコックの国籍
不明, 10店舗, 11%
その他, 3店舗, 3%
日本人, 10店舗, 11%
タイ人, 53店舗, 56%
タイ人と日本人, 18店舗,
19%
図 2-5 及び図 2-6 の調査結果を見ると、タイレストランの顧客は圧倒的に 20 代~30 代の
女性が多いことがわかる。
複数人数でタイレストランにくる場合、その間柄は図 2-7 のとおり友達またはカップルが
多く、合わせて 82%にのぼる。一方、家族でタイレストランに来る客は少ない。これは後
に述べる消費者アンケートでも、子供が食べる料理が少ないというイメージがあることと
一致した結果になっている。
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22
図 2-5 タイレストランの顧客の性別
男性が主, 3店舗, 3%
不明, 22店舗, 23%
男女半々, 11店舗, 12%
女性が主, 58店舗, 62%
図 2-6 タイレストランの顧客の年齢層
20歳代
38
52
30歳代
40歳代
25
50歳代以上
7
その他
5
0店舗
10店舗
20店舗
30店舗
40店舗
50店舗
60店舗
図 2-7 タイレストランに複数人数で来店する顧客の間柄
団体, 1店舗, 3%
友達, 15店舗, 46%
家族, 5店舗, 15%
カップル, 12店舗, 36%
メニューの内容は、図 2-8 のとおり伝統的・本格的タイ料理がもっとも多く、次に家庭料
理が続いている。これらでほとんどを占め、創作料理はそれほど多くない。レストラン全
体で考えると、もう少しタイの創作料理の比率が多いと思われるが、今回のヒヤリング調
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23
査がタイ料理専門レストランを対象としたものであり、創作料理を中心として提供するア
ジア・エスニック料理のレストランを調査対象としていないため、図 2-8 の結果は予想され
た結果といえる。
メニューの数を調査したところ、図 2-9 のとおり 40~70 品という数が多くの回答を占め
ている。
図 2-8 調査したタイレストランの料理の種別
46
伝統料理
家庭料理
18
創作料理
13
屋台料理
6
その他
21
0店舗
5店舗
10店舗
15店舗
20店舗
25店舗
30店舗
35店舗
40店舗
45店舗
50店舗
図 2-9 調査したタイレストランのメニューの数
20品未満
1
20~30品未満
1
5
30~40品未満
13
40~50品未満
50~60品未満
15
60~70品未満
15
70~80品未満
7
80~90品未満
7
4
90~100品未満
8
100品以上
17
その他
不明
0店舗
1
2店舗
4店舗
6店舗
8店舗
10店舗
12店舗
14店舗
16店舗
18店舗
日本人に人気のメニューとしては、タイレストランの調査回答によると、表 2-3 のとおり
1 位がトムヤムクン、2 位がグリーンカレー(6 位もタイカレー)、3 位が春雨サラダという
順になっており、トムヤムクンとカレーが人気料理である。
(一方、消費者アンケートでは、
1 位がタイカレー、2 位がトムヤムクンと、順序が逆転している。P36 参照)
表 2-3 人気のメニュー(上位 10 品目)
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24
1
トムヤムクン
33 店舗
2
グリーンカレー
23 店舗
3
ヤムウンセン(タイ風春雨サラダ)
18 店舗
4
バッタイ(タイ風焼きそば)
16 店舗
5
ポーピアソッ(生春巻き)
10 店舗
6
タイカレー
9 店舗
7
パックプン(空心菜炒め)
9 店舗
8
ソムタム(青パパイヤのサラダ)
6 店舗
9
タイスキ
5 店舗
10
ガパオ
4 店舗
食材の調達状況について、表 2-4 のように、輸入:国産の比率の回答がばらついており、
店舗によって調達の事情が異なるようである。しかし、一般的な傾向として、野菜等の一
般食材は国産で、スパイスなど特別な食材はタイのものを輸入しているようである。
食材の調達先としては、表 2-5 のようにタイ専門食材店およびタイの業者が多く、日本の
輸入業者は少ない。タイの専門食材の調達先は、タイの業者のほうが取り扱いやすいよう
である。
表 2-4 食材の国産(日本産)、輸入比率に関する回答
1
輸入・国産半々
3 店舗
2
輸入2:国産8
3 店舗
3
輸入3:国産7
3 店舗
4
輸入4:国産6
3 店舗
5
輸入5:国産5
2 店舗
6
輸入6:国産4
2 店舗
7
輸入7:国産3
2 店舗
表 2-5 食材の調達先
1
タイ専門食材店
17 店舗
2
タイの業者
17 店舗
3
日本の輸入業者、食材店
10 店舗
4
輸入業者全般
5 店舗
(2)タイレストランのもつ問題点
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25
タイレストランが抱える問題点では、図 2-10 のとおり、食材が高い、食材の入手が困難
という食材に関する意見がもっとも多い。但し、価格に関しては、タイの国内との比較な
のか、日本にある他のレストランとの比較なのか、またどの程度の違いがあるかがこの調
査ではわからない。タイでの物価との比較で、この回答が出ているのであれば、日本の物
価水準が高いことを考えると、他のレストランも同じことであり、食材が高いことはやむ
をえないものと考える。一方、食材の入手の困難性ということでいえば、タイ料理に欠か
せないスパイスや調味料はなかなか手に入れることが難しく、タイ食材専門店にゆだねざ
るを得ないという状況のようである。
その他、コックの技術、日本語による接客、タイ人と日本人のコミュニケーションなど
が問題点としてあげられている。
図 2-10 タイレストランが抱える問題点
22
食材コストの問題
17
食材の仕入れの問題
11
従業員の言葉・文化のカベ
9
タイ人従業員の雇用問題
タイ料理に対するイメージの問題
5
調理師のレベル
5
料理の価格についての問題
2
4
その他
0店舗
5店舗
10店舗
15店舗
20店舗
25店舗
図 2-11 タイレストラン業界全体の問題と感じる課題
20
タイ料理に対するイメージの問題
11
タイ人従業員の雇用問題
9
食材コストの問題
5
食材の仕入れの問題
4
従業員の言葉・文化のカベ
料理の価格についての問題
2
調理師のレベル
2
4
その他
0店舗
2店舗
4店舗
6店舗
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8店舗
10店舗
12店舗
14店舗
16店舗
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26
18店舗
20店舗
(3)タイセレクト制度
インタビュー調査をしたタイレストランのなかですでにタイセレクト認定を取得してい
たのは 26%・9 店舗であった。非認定が 62%・21 店舗で、不明が 4 店舗という結果が出た。
不明ということは、電話インタビューをした従業員が知らないということで、仮にそのレ
ストランが認定を取っているとしても、従業員が十分に認識していないようである。
タイセレクト制度を知っているという店舗は、図 2-12 のとおり、36%・34 店舗で、知ら
ないのは 61%・57 店舗であり、まだまだ認識不足であると考える。タイセレクト制度を知
っている店舗に対する質問では、図 2-13 のとおりタイセレクト制度の認定を取得するメリ
ットはあると感じているところがほとんどである。一方特にメリットないと感じている店
舗は、2 店舗と少数であった。
図 2-12 タイセレクト制度を知っている店舗の数
不明, 3店舗, 3%
知っている, 34店舗, 36%
知らない, 57店舗, 61%
図 2-13
(タイセレクト制度を知っている店舗に対して)認定にメリットがあるか?
不明, 9店舗, 26%
いいえ, 2店舗, 6%
はい, 22店舗, 65%
どちらともいえない, 1店舗,
3%
認定を取得した店舗が感じているメリットとしては、顧客への安心感の付与ということ
が多いようである。また宣伝がしやすくなったとの意見もある。
認定制度を知っていてまだ認定を受けていない店舗については、申請中の店舗、これか
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27
ら認定を受けたい店舗がみられ、積極的にかかわりたいという意識が伺える。
一方、認定制度を知らない店舗については、図 2-14 のとおり、メリットがある、メリッ
トがない、わからないの3つに回答が分散しており、認定制度の周知がまだ十分ではない
ように思われる。
タイセレクト制度をもっと広げるための施策としてタイ政府、日本政府に求める内容と
しては、意見がばらついているが、宣伝をもっとしてほしいということ、食材の調達をし
やくすしてほしいなどの意見があった。
図 2-14
(タイセレクト制度を知らないと答えた店舗に対して)認定を受けることにメリ
ットを感じるか?
不明, 13店舗, 23%
はい, 24店舗, 41%
いいえ, 10店舗, 18%
どちらともいえない, 10店
舗, 18%
2.2 タイ政府の取り組み
今回の結果の概要をもとに、タイ大使館の意見を聞き、タイレストランに関する国の方
針についてヒヤリングを行った。以下はその結果である。
(1)
食品の輸出全般について
タイ政府としては、主要な輸出産品が農産物であることから、農産物に限らずタイの食
文化(及びタイの文化全般)について広めたいと考えている。タイの文化が広まれば、観光産
業を含めて他の関連産業も伸びていくと考えている。
食材の日本への輸出に関しては、食品の安全が重要であることは政府も認識しているが、
いろいろな手続きに手間がかかり、そのためコストがかかっている。コストを削減するた
めにも、日本国とタイ国の両政府で互いに協力して実施していきたいと考えている。例え
ば、タイのマンゴスチンが日本に輸出解禁できるようになるまでに、8 年を要した。このよ
うな手続きのスピードアップを日本政府に要望している。
(2)
タイレストランについて
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28
タイレストランに関しては、これからは、オーセンティック(伝統料理)と、フュージョン
(創作料理)の線引きを明確にして取り組んでいきたいと考えている。伝統的・本格的な
タイ料理については、タイセレクト認証制度が存在し、これを推進していきたい。一方で
日本人の味の好みに合わせた、フュージョン料理も必要と考える。タイ料理はヘルシーで
あるというプラスイメージがあるのでこれを活かして生きたい。一方でホット、スパイシ
ーすぎるというイメージもある。このため、初心者にはマイルドな創作料理で、辛いもの
が苦手な人にも提供できるようにしたいと考えている。
タイレストランに優秀なシェフが不足していることは政府も認識している。このため、1
年前から日本(東京、錦糸町)に研修制度をはじめた。タイカルチャーの教育機関を開設
し、タイ料理に関しての専門コースと一般コースを設けている。その他、タイの文化全体
のカルチャースクールとしてダンスのコースなども実施している。この機関には、タイの
大学から、タイ人シェフを 1 年間派遣してもらい、タイ料理人の技術向上に取り組んでい
る。ここではタイ人だけでなく、日本人の料理人にも学んでほしいと考えている。日本政
府にお願いしたいことは、タイ人シェフに関しての就労ビザの条件を緩和してほしいと考
えている。
どのタイレストランも、経費の節減がテーマである。日本でできるものは日本で、タイ
でしか調達できないものはタイから輸入することがもっともよい調達の仕方であると考え
る。タイ大使館がオーナーから聞いている意見では、できるだけ本物のハーブを使用した
いという意見が多い。本物のハーブは、タイからの輸入にならざるをえない。
タイの料理店では、タイの日本での留学生が働いていることが多い。一方フルタイムの
従業員もいる。コミュニケーションギャップでいえば、日本とタイのテーブルカルチャー
が違うということがあげられる。これは初めてくる客には戸惑いがあるかもしれない。イ
ーティングカルチャーに注目して、今後タイ料理の食べ方について周知をすることが大事
と考える。
(3)
タイセレクト制度について
タイセレクト制度にまだ魅力を感じないという意見も理解できる。タイセレクトは、伝
統的・本格的なタイ料理、本格的なものを広めるということで推進している。一方、オー
ナーは、タイからの政府のサポートを期待してこの認定をとっていることが多い、例えば、
財政とか、職業訓練とかのサポートを期待している。ところがタイ政府としては、財政支
援までは考えていない。このようにタイ政府とタイ料理店に温度差があることも否めない。
タイセレクトが認知されていないことについては、ミーティングをもって相談していきた
い。
(4)
タイ料理イベントについて
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29
毎年、タイ暦の新年の週にタイセレクト認定料理店のイベントを 7 年間実施している。
ここでは、新しいメニューの紹介などもしている。また、クーポンの配布や、くじ引き
の用意などしている。問題点は、タイセレクト認定のレストランが全国に散らばっており、
参加しにくいという点がある。今年は、冊子を作るなど、違った企画で実施しようと検討
中である。
タイセレクトの認定制度以外にもタイ料理をもっと広める施策(日本のファミリーレスト
ランや料理教室とのタイアップ)を実施したいと考えている。
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30
第3部
消費者のタイレストランに対する意見
1.タイレストランに関する消費者アンケート調査の概要
タイレストランに関して消費者に対する調査を以下のとおり行った。
・ 調査実施時期:2008 年 1 月 21 日~1 月 31 日
・ 調査方式:ABC Cooking Studio(料理教室)の会員に対するインターネットによるアンケ
ート調査
・ 回答数:1,470 人
・ 回答した消費者の居住地:日本全国
(1)
回答者の概要
タイレストランのアンケート調査にもあるとおり、タイレストランによく通う年齢層が
20 代~30 代の女性であることから、この層をターゲットに 1,470 人にアンケートを実施し
た(図 3-1 にあるとおり、回答者全体の 81%が 20~30 代)。
図 3-1 アンケート回答者年齢構成
15歳未満
1
15~19歳
6
122
20~24歳
418
25~29歳
424
30~34歳
35~39歳
274
137
40~44歳
45~49歳
50~54歳
56
22
55~59歳
8
60歳以上
2
0人
50人
100人
150人
200人
250人
300人
350人
400人
450人
回答者の居住地は、関東甲信越地方の回答者が 50%、関西地区が 18%、東海地方が 9%、
残りがそれ以外の地域である。ほぼ日本の人口分布に近い比率と考える。家族構成として
は、未婚と既婚がほぼ半々である。職業をもちフルタイム勤務をしている回答者が 48%、
パートタイムが 14%、専業主婦が 21%である。
外食の頻度は、図 3-2 のとおり、月に 2~3 回がもっとも多く 34% 、次いで週に 1 回が
25%、週に 2~3 回が 19%である。
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31
図 3-2 外食の頻度
月に1回未満
87人
6%
月に1回
129人
9%
ほぼ毎日
49人
3%
週に4~5回
58人
4%
週に2~3回
283人
19%
週に1回
363人
25%
月に2~3回
501人
34%
(2)
レストランの選択
1 回あたりの外食の予算は、ランチで 750 円~1000 円が最も多く、ディナーでは、図 3-3
のとおり、1000~2000 円(32%)、2000~3000 円(33.5%)
、3000~4000 円(31.8%)の範
囲でばらついている。
図 3-3 外食(ディナーの場合)の一人当たり支払い金額
22
1,000円未満
320
1,000円以上2,000円未満
335
2,000円以上3,000円未満
3,000円以上4,000円未満
318
221
4,000円以上5,000円未満
115
5,000円以上6,000円未満
6,000円以上7,000円未満
24
7,000円以上8,000円未満
29
8,000円以上9,000円未満
6
36
9,000円以上10,000円未満
10,000円以上
25
外食はしない
19
0人
50人
100人
150人
200人
250人
300人
350人
400人
外食レストランでよく行くのは、図 3-4 のとおり多い順に、洋食・西洋料理(イタリア、
フランス料理など)、和食日本料理、中華料理、エスニック料理(タイ料理を含む)となっ
ている。
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32
図 3-4 よく行く外食レストランの種類
洋食・西洋料理(イタリア、フランス料理など)
1180
和食・日本料理
990
中華料理
530
319
アジア・エスニック・無国籍料理
30
その他
0人
200人
400人
600人
800人
1000人
1200人
外食する店を選ぶ基準は、図 3-5 のとおり、味、価格、店の雰囲気が多い。店を選ぶ際の
情報源としては、図 3-6 のとおり、友人・知人からの情報が最も多く、次にクーポンつきフ
リーペーパー、インターネットのグルメ情報サイトが続いている。
図 3-5 レストラン選択に当たって重視すること
味
1365
価格
1163
店の雰囲気
1112
店員の接客
372
食材の安全性
208
量
181
店の知名度・ブランド力
113
その他
32
0人
200人
400人
600人
800人
1000人
1200人
1400人
図 3-6 レストランを知る情報源
友人・知人・家族からの紹介や口コミ
1277
hotpepparなど(クーポン付きの)フリーペーパー
662
ぐるなびなどのグルメ情報サイト
615
TVや雑誌などでの著名人からの紹介
584
○○Walkerなどのタウン情報誌
363
好きなブログでの紹介
92
dancyuなどのグルメ情報誌
87
mixiなどのSNSでの情報
70
ミシュランガイドなど、著名なグルメガイド
その他
0人
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69
35
200人
400人
600人
800人 1000人 1200人 1400人
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33
(3)
タイ料理に関する意見
タイ料理を普段食べているかどうかの質問については、図 3-7 のとおり、一度も食べたこ
とがない、ほとんど食べないが過半数を占めている。これら一度も食べたことがない、ほ
とんど食べないという回答者に対してその理由を聞くと、図 3-8 のとおり、近くにタイ料理
を食べる店がないからが圧倒的に多い。それ以外では、香草などのハーブ類が苦手、調味
料が苦手、よく知らないからなどの意見がある。その他、一緒にいく相手(家族、友人)
がタイ料理を好まないから行かないという意見も多い。
図 3-7 タイ料理を普段食べるかどうか
一度も食べたこと
がない
226人
15.4%
よく食べている
41人
2.8%
時々食べている
222人
15.1%
機会があれば
食べる程度
あまり食べない
425人
28.9%
何度か食べた
ことがある程度
ほとんど食べない
556人
37.8%
図 3-8
(食べたことのない人に対して)食べない理由
724
近くにタイ料理を食べられる店がないから
346
パクチー(香菜)などのハーブが苦手だから
どんな料理があるのかそれがどんな味なのか よく知らないから
292
261
辛いイメージがあるから
221
手頃な価格で食べられる店を知らないから
店に行っても、何を頼んだらいいかよく分からないから
184
ナンプラー(魚醤)などの調味料が苦手だから
178
164
全体的に味が口に合わないから(合わなそうだから)
123
特に興味がないから
98
スパイスが苦手だから
使用している食材の安全性や衛生面に不安があるから
61
体質的に合わないから(合わなそうだから)
48
その他
43
0人
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100人 200人 300人 400人 500人 600人 700人 800人
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34
これら食べたことのない回答者に対して、どのようにすればタイレストランにいくかと
いう質問については、上記質問の回答の裏返しで、図 3-9 のとおり、近くにタイ料理の店が
あればいく、タイ料理を知るきっかけがあれば、またもっと日本人に会う料理があればと
いう回答が多かった。一方で、日本人に味を合わせすぎで、もっと本格的なタイ料理を食
べたいという意見もあり、意見が分かれている。図 3-10 の別の質問では、メニューで日本
語の説明がされている、日本人の好みの味付けにしてくれれば等の意見がある。
図 3-9 (食べたことのない人に対して)どうすれば食べに行くか
626
近くにタイ料理を食べられるお店があれば
441
手頃な価格で食べられれれば
427
もっと日本人の口に合う料理があれば
388
タイ料理の種類や味を知るきっかけがあれば
タイ料理のことをあまり知らなくても、 料理についての説明や頼み方が分かりやすければ
241
152
もっと辛くない料理があれば
タイ料理を気軽に手作りできれば (レシピや食材が手軽に手に入れば)
130
104
使用している食材に対して安心感が持てれば
29
その他
0人
100人
200人
300人
400人
500人
600人
700人
図 3-10 どのようなタイレストランがあればいくか
メニューに日本語で料理の説明が明記されている
754
日本人の好みに合わせてアレンジされた料理を 出してくれる
627
462
客の好みに合わせてハーブやスパイスの量を加減してくれる
日本語が話せる店員がいる
401
日本人の店員がいる
336
店員がメニューの説明を詳しくしてくれる
326
食材の安全性が明確に謳われている
324
タイ国政府など公的な機関に認定されている
87
日本人(企業)が経営している
85
チェーン展開している
62
その他
24
0人
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35
タイ料理をよく食べる人に対しての人気の料理は、今回の調査では図 3-11 のとおりタイ
カレーが最も多かった。その後、トムヤムクンが続く。結果は、タイレストランに対する
調査とおおむね一致しているが、1 位と 2 位が入れかわっている。
図 3-11 タイレストランの好きなメニュー
タイカレー(ココナッツミルクと唐辛子を基本にしたカレー)
213
トムヤムクン(酸味と絡みのある海老のスープ)
174
パッタイ(タイ風焼きそば)
149
ヤムウンセン(春雨のサラダ)
123
ガパオライス(そぼろ肉のバジル炒めごはん)
113
サークー・ガティ(タピオカ入りココナッツミルク)※デザート
96
ソムタムタイ(青いパパイヤのサラダ)
72
アイティム・カティ(ココナッツアイスクリーム)
52
トードマンプラー(タイ風魚のさつまあげ)
43
カオニャオ・マムアン(もち米とマンゴーのココナッツミルクがけ)
29
カオマンガイ(特製ソースの茹で鶏ごはん)
27
カノム・ブアロイ(タイ風しるこ)※デザート
23
クルアイ・ブアッ・チー(バナナのココナッツミルク煮)※デザート
17
その他
16
0人
50人
100人
150人
200人
250人
タイ料理に対する不満、要望について自由回答を求めたところ 134 件の回答があった。
その内容を大別すると、表 3-1 のように6つの項目にまとめられる。料金が高いこと、接客
態度、言葉などコミュニケーションについての要望などが多くあげられている。味に関し
ての要望は、日本人向けに合わせてほしいという意見と、本場タイの味付けにしてほしい
という2つの意見に分かれている。
表 3-1 タイ料理に関する不満要望について(自由回答まとめ)
① 料金設定への要望:
全体的に価格が高い
ファストフードやファミリーレストランのように気軽に入れる料金設定の店が欲しい
② 接客への要望:
愛想がない、ぶっきらぼうな感じがする
対応が悪い、気配りが足りない、雑な印象を受ける
言葉(日本語)が通じない、会話がスムーズに進まない
③ 言葉・コミュニケーションへの要望:
メニューの内容がわからない、日本語で料理の説明を載せてほしい
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36
日本人スタッフまたは日本語の分かるタイ人を置いてほしい
④ 料理の味付けに関する要望:
パクチーなどのハーブやスパイスの量を好みで調節できるようにしてほしい
辛さのレベルが分からないので、メニューへの表示や説明をしてほしい
ハーブ・スパイスの量や辛さなど、日本人好みの味付けにしてほしい
日本人向けに調節せず、本場の味をそのまま出してほしい
⑤ 店舗の雰囲気への要望:
衛生的な感じがあまりしない店が多い、清潔感がほしい
一人でも入りやすいお店、落ち着ける(ゆっくりできる)雰囲気のお店がほしい
その他:
子供でも食べられるメニューが欲しい
デザートメニューの充実
など
タイ料理を食べる頻度は、図 3-12 のとおり、2~3 ヶ月に 1 度という比率が全体の 40%
を占めている。その際、ほとんど外食であり、図 3-13 のとおりタイレストランか又はアジ
ア・エスニック料理店を利用している。
図 3-12 タイ料理を食べる頻度
半年に
1回未満
8人
3%
無回答
3人
1%
半年に1回
27人
10%
2~3ヵ月に
1回
106人
40%
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週に2~3回
以上
3人
1% 週に1回
12人
5%
月に2~3回
40人
15%
月に1回
64人
25%
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37
図 3-13 タイレストランを食べる場所
185
タイレストラン(タイ料理専門店)
167
アジア・エスニック料理店
95
自宅などで自分で作る
カフェなどのタイ料理メニュー (タイ風料理、創作料理も含む)
67
ダイニング・バー、レストラン・バーなどのタイ料理メニュー
(タイ風料理、創作料理も含む)
51
居酒屋などのタイ料理メニュー (タイ風料理、創作料理も含む)
44
9
ファミリーレストランなどのタイ料理フェア
3
その他
0
20
40
60
80
100 120
140
160
180
200
図 3-14 タイ料理のレシピは何を参考に作るか
44
料理の本
インターネット(レシピブログやレシピサイト)
42
料理教室で教えてもらう(もらった)
31
21
友人・知人に教えてもらう(もらった)
8
インターネット(タイに関するブログや情報サイト)
その他
17
0人
5人
10人 15人 20人 25人 30人 35人 40人 45人
図 3-15 タイの食材をどこで購入するか
タイに限らず、各国の食材を扱う食材店
65
一般のスーパー
49
輸入食材を多く扱う高級スーパー
39
インターネットショッピング
タイ食材の専門店
その他
0人
10
4
7
10人
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20人
30人
40人
50人
60人
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38
70人
(4)
タイ全体に関する関心、親近感
次に、タイ全般についての質問であるが、図 3-16 はタイ国を訪問した経験の調査で、回
答者が 20~30 歳代の女性であり、もっともタイに対して興味、関心を示す年代であること
から、1 回以上訪問した人が、37%にのぼった。
図 3-16 タイに行った経験
2回以上
行ったことがある
233人
16%
1回もない
933人
63%
1回だけ
行ったことがある
304人
21%
また、タイの料理、食品芸術への関心度合いに関しても、図 3-17 のように、過半数の人
が興味関心を持っているといえる。しかし、図 3-18 の質問のように、日本国内でタイ料理、
タイ文化を身近に感じるかどうかという質問に対しては、約半数が特に身近に感じていな
いと答え、まったく身近に感じない、どちらでもないを加えるとほとんどの回答を占めて
いる。まだタイの料理、文化が日本に浸透しているとは言いがたい結果になっている。こ
れには、PR 活動を求める意見がある。
図 3-17 タイの料理、食品、芸術への興味
特に興味はない
282人
19%
どちらでもない
366人
25%
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非常に興味がある
218人
15%
興味がある
604人
41%
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39
図 3-18 日本国内で、タイ文化を身近に感じるかどうか
まったく
身近に感じない
160人
10.9%
非常に
身近に感じる
10人
身近に感じる
0.7%
145人
9.9%
どちらでもない
452人
30.7%
特に身近に感じない
703人
47.8%
図 3-18 の回答の中で、タイを身近に感じると回答した人(全体の 10.6%、155 人)に対
して、身近に感じる理由について自由回答を求めたところ 149 件の回答があった。その内
容を大別すると、表 3-2 のように5つの項目が目立った。
表 3-2 タイを身近に感じる理由
① 食の交流:
タイ料理専門店を含め、タイ料理を食べられる店が増えた
一般のスーパーなどでもタイ料理の食材を手に入れやすくなった
タイ産の食品をよく見かけるようになった
② 人の交流・旅行経験:
タイ人の知人がいる、知人がタイに住んでいる
タイに行ったことがある知人が身近にいる、自分がタイに行ったことがある
仕事上でタイとの関わりがある
手頃な価格のツアーパンフレットや宣伝をよく見かける
③ モノ(特に雑貨・ファッション)の交流:
タイの(アジアの)雑貨や服を扱う店が増えた
タイ風の(アジア風の)インテリアをよく見かける
④ イベント:
代々木公園のタイフェスティバルやタイウィーク等のイベントに行ったことがある
⑤ マッサージ・エステ:
タイ古式マッサージ店やエステ店をよく見かける
その他:
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40
同じアジアの国として親近感がある、親日家が多いイメージがある
同じ米文化がある国として親近感がある
など
同じくタイを身近に感じている人に対して、タイをもっと身近に感じさせるための工夫
について自由回答を求めたところ 149 件の回答があった。その内容を大別すると、表 3-3
のように3つの項目が目立った。
表 3-3(タイを身近に感じている人に対して質問)日本人全体にもっとタイという国や文化
を身近に感じてもらうためにどのような工夫が必要か
① タイ料理の浸透:
タイレレストランの数を増やす、もっと宣伝する
ファストフードやファミリーレストランのような気軽に入りやすいタイ料理店を展開する
日本人が食べやすい味付けの店を増やす
日本の家庭料理にタイ料理を普及させる
→レシピの紹介/インスタント・レトルトなど気軽に食べられるタイ料理の普及
② メディアを使った PR:
TV や雑誌で特集を組み、タイに関心を持ってもらう
安全なイメージを浸透させ、観光面での PR・海外旅行の誘致をする
CM、広告等でタイについて目に触れる機会を増やす
③ イベントの開催:
タイフェスティバルのようなイベントを各地で開催する・定期的に開催する
その他:
タイのファッション・音楽などの若者文化を日本で紹介する
など
一方、タイを身近に感じていない人(全体の 89.4%、1315 人) に対して、タイをもっと身
近に感じさせるための工夫について自由回答を求めたところ 979 件の回答があった。その
内容を大別すると、表 3-4 のように 4 つの項目が目立った。表 3-3 も表 3-4 も両方とも積極
的な宣伝を望む声が多いようである。
表 3-4 (タイを身近に感じていいない人に対して質問)日本人全体にもっとタイという国
や文化を身近に感じてもらうためにどのような工夫が必要か
① TV や雑誌などメディアの活用:
TV や雑誌でタイの特集を組んで紹介する
→グルメ/旅行/エステ/雑貨・ファッションなどあらゆる分野で紹介
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41
タイを PR する CM を流す
タイ出身のタレントやアーティストが日本で活躍する
タイの映画やドラマを日本で紹介する
→韓流ブームのようなきっかけを作る
② タイ料理・食品の普及:
ファストフードやファミリーレストランなどでタイ料理メニューを扱う
コンビニのお弁当等でタイ料理を扱う
スーパーやでパ地下などでタイ料理のお惣菜を扱う
レトルトやインスタント食品など、家庭で手軽にタイ料理を食べられる商品を増やす
スーパーの店頭で試食などの催しをする
→タイのことを知らない人でもタイ料理に触れやすいきっかけを作る。
タイ料理店を増やす
料理教室でのタイ料理の授業を開く
日本風のアレンジ
ヘルシーさのアピール
③ イベントなど、タイ文化の体験機会を設ける:
料理の試食や伝統文化などを紹介するイベントを各地で開催する
料理や民芸品などのアンテナショップを設ける
④ タイ国自体の PR・イメージアップ:
政情・治安・衛面などにおいて悪いイメージを払拭し、安全さを PR する。
→安心して旅行できる国というイメージを持たせる、観光客の誘致
東南アジア各国との差別化を図る。他国と一括りの曖昧なイメージを持たせない PR。
もっとタイ国自体に関する情報が欲しい。
その他:
中華街のような、タイ人街があると言ってみたい
食品やファッションなど、日本の大手企業とタイアップして広める
など
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42
第 4 部 タイレストラン、食品の振興に関する提案
1.アンケート調査結果についての考察
(1)
タイ食材の調達について
日本のタイ料理店の問題点の第一は、タイの香辛料が手に入りにくいことという結果で
あった。せっかくタイ国内にはバラエティ豊富な料理があるのに、日本で手に入る食材だ
けで料理をせざるをえないことから、メニューが限定されざるを得ないという状況のよう
である。但し、こしょう、唐辛子一般は、乾燥品なので、輸入はしやすいと考える。
液体の調味料(たれ) について、日本の場合、多くの調味料がしょうゆをベースにしてい
るのにたいし、タイの調味料はさまざまな種類があり、料理に合わせて何種類も使い分け
ている。この調味料も日本では手に入りにくいようである。タイの家庭ではこれらを自分
の家でつくっていたが、最近では工場で製造するようになり、タイのスーパーで販売する
ようになっている。このことは、日本へもこれらの調味料の輸出が可能になり、今後手に
入れやすくなる可能性は高くなると考える( 但し、使用添加物について食品衛生法に準拠す
る必要あるので、注意が必要である)。
(2)
タイレストランのコック不足について
タイレストランでは、技術の高いコックの雇用も問題点としてあげられている。タイに
詳しい日本のメーカーの話によると、日本のタイレストランのコック不足に関しては、タ
イに調理師の免許がないことも影響していると思われる。現在 FTA 交渉で、タイからの人
材交流において、介護士などの医療系の職種について就労ビザの発行がしやすくなるとい
うことであるが、コックに関しては、タイに調理師の免許が国家資格としてないために、
日本では技術者という判断ができない。現在のタイレストランのコックは、夫婦(日本人
と結婚したタイ人)が多いのではないかと思われる。従って優秀なコックをタイから呼ぶ
には、国家資格制度を設けて技術者として、派遣するべきと考える。
(3)
レストランの衛生管理について
レストランの衛生管理については、日本の保健所の指導を遵守する必要がある。タイ料
理自体は、加熱する料理がほとんどであり、衛生的にはさほど心配する必要はない。
但し、日本人はレストラン内の見た目の衛生状態を気にする傾向がある。東南アジアの
料理店は、エスニック料理のデコレーションが、ものをおいて雰囲気を出すことにあり、
これが不利になるが、これは仕方のないことであり、それ以外に関係のないものを乱雑に
おかないなど、整理整頓を徹底すれば十分と考える。
客に安心感を持たせるのであれば、日本のレストランのようなマニュアル化を導入して
もいいのではないかと考える。例えば、注文を復唱するとか、辛いものは大丈夫かなどの
確認などちょっとしたコミュニケーションで客の安心感は変わる。
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43
接客に関しては、もともと接客に関する感覚がタイ人と日本人で違い、さらに不慣れな
日本語ということであれば、ますます客も店員に愛想がないと思ってしまう。これを解決
する方法として、タイ式の挨拶(両手を胸で合わせる)を徹底してはどうか。この挨拶を入店
時や応対時に実施すれば、客も「このレストランはタイスタイルなんだ」というイメージ
をもち、その後の接客もここはタイスタイルなのだから、と日本並みの接客を期待しなく
なるのではないかと思われる。
(5)
伝統料理と創作料理の明確化
タイレストランへの不満については、日本人の口に合わせすぎと考えるという意見と、
日本の口にもっと合わせるべきという意見に分かれている。これは、大使館が、伝統的料
理と創作料理を明確に分けるべきという意見と一致している。旅行経験のある人は、タイ
レストランに求めるものは、タイで食べた経験のそのままの料理を食べたいと思って来店
する。
(4) タイ料理を広める方法について
外国の料理のイメージは、中国、韓国、イタリアにしても、旅行で料理を覚えたものが
日本で定着している。また、食文化のある国といわれているものは、世界中に知れ渡って
いる代表的な料理があることでもある。例えば日本料理では、すし、てんぷら、イタリア
ならパスタ、ピザなどが例である。では、「タイ料理といえば何?」といわれたときに代表
的な料理のイメージはない。
タイ料理は、香辛料、素材、調理方法のバラエティの豊富さからいって、世界でもすば
らしい料理の文化をもつ国であるといえる。しかし、世界中で知れ渡った代表料理という
ものがないのが、他国に比べて知名度が低い理由と考える。日本ではトムヤムクンの名前
はよく知られているが、名前だけ知っている程度で実際に食べたことのある日本人はそれ
ほどいないのが実情である。
このため、タイ料理を日本に定着させるには、代表的な 1~2 品を定着させて、普通に日
本の家庭の食卓に乗せるようにすることがいいのではないかと考える。可能性のある品目
はスープ類と考える。最近では、コンビニのスープ麺のコーナーで、ベトナムのフォーが
よく見かけるようになった。これはひとつの事例である。一般にタイ料理はヘルシーとい
う印象は定着しているので、これを積極的にアピールしてはどうか。
タイ料理といえば日本ではトムヤムクンが代表と思われているが、今回の調査では、20
~30 歳台の女性には、タイカレーの人気も高く、タイカレーもタイ料理の代表格として候
補にあげられる。
いまだタイ料理=辛い料理というイメージが先行しており、偏ったイメージが先行して
いる。タイの家庭料理は決して辛いものだけではなく、マイルドなものも多くあり、たま
たま 1~2 品が辛くてそれがクローズアップされすぎているようである。
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2.タイ食材の輸出振興に関する提案
(1)
輸出ライセンスの取得と顧客の獲得
タイの生産者、製造業者が、初めて輸出をしたいと考える場合、まず、輸出のライセン
スをタイ政府から取ることが必要である。
その後、雑誌などに宣伝を出し、詳細はインターネットに誘導してインターネットで自
社商品についての詳細の説明をするのがいいのではないかと考える。雑誌の取材などは積
極的にうけるとよいと思われる。
また、日本の FOODEX など、食品の見本市への積極的な参加も、相手国の顧客を見つけ
る方法のひとつである。
タイの食材を日本に輸入する会社は数多く、総合商社、食品専門商社、製造業者、タイ
系の貿易会社、その他、規模も大企業から小規模な企業までさまざまである。このため、
輸入業者のダイレクトリーというものは存在せず、また完全なリストを作成することは不
可能である。新しく日本の輸入業者を探すのであれば、上記の FOODEX や、輸出の経験の
ある他社からの口コミ等で探す必要がある。日本のタイレストランが、タイの食材を購入
するのに必要なタイ食材の取扱店の情報は、タイ国大使館の商務参事官事務所にあるということ
であるので、そちらに照会すれば、情報を入手することが可能である。
(2) 日本の関連法規の遵守
日本の食品に関する関連法規はいくつかあるが、もっとも注意しなければならないのは、
食品衛生法である。食品衛生法では、主に残留農薬、食品添加物、アレルギー物質の含有
などが問題となる。残留農薬に関しては、農薬を使用する場合に、用法を守って使用する
ことが第一条件である。このため農産物であれば GAP(Good Agricultural Practice)、加工
食品であれば HACCP の認証を取得することも考えられるが、認証を取得しても実践が伴
わないと食品危害は発生するので、従業員教育など不断の努力が必要である。
タイ政府では、輸出時に残留農薬検査を実施しているが、まだ日本の輸入業者や小売店
が、その精度に対する信頼性が得られていないようであるので、分析方法などを広く情報
開示し、タイの輸出時検査が信頼され、日本の小売店などの自主検査を省略できるまでに
なると、効率的になると思われる。
加工食品の食品添加物の使用と表示、アレルギー物質の表示については、日本の規制
をよく知り、日本で認められない食品添加物を避け、またアレルギー物質の含有について
輸出業者に情報を提供する必要がある。これらの日本の法規制の情報をタイの業者が正確
に把握することは難しいので、すべての使用材料の情報を日本の輸入業者に正確に提出し、
日本の輸入業者の指導を仰ぐことを推奨する。タイは、日本以外に EU やアメリカに輸出
をしているが、EU、アメリカ、日本それぞれ基準が異なり、欧米では OK でも日本で使え
ない添加物が多い。
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但し、日本の輸入業者の中にも、食品専門の輸入業者でない場合はあまりこれら関連法
規に詳しくない事業者もいるので、食品の輸入に実績をもつ輸入業者を選択することを推
奨する。
消費者は誰が作ったかが重要であるので、トレーサビリティの仕組みが確立されている
ことが必要である。
3.タイレストランに関する提案
(1) 伝統的か創作かの明確化
日本の消費者の不満として、日本人の味覚に合わせすぎるという意見と、タイ料理が口に合わな
いという意見に二分している。前者はタイ本国で食べるものと同じようなより伝統的・本格的なものを
求め、後者は日本人の食べやすい味付けにしていることを要望している。このどちらを目指すのか
について、明確にし、顧客層を初心者向けとするか通向けとするかをはっきりさせるほうがよい。
(2) 立地
近くにタイ料理店がないから、行く機会がないというアンケート結果を考えると、タイ料理店がない
地域へ進出することの可能性はある。このような場所で、タイ料理専門店の進出ではリスクが高いと
考える場合には、アジア・エスニック料理としてタイを含めた東南アジア風のフュージョン料理店で、
初心者をターゲットに進出するほうがまだリスクが少ないと思われる。
(3) 情報の発信
タイ料理について、まだまだ情報が少ないのが現状である。広告・宣伝の充実とともに、店舗にあ
っては、メニューの説明について、日本語でわかりやすく記載するとともに、写真などを使用してわ
かりやすくする必要がある。
タイ料理がヘルシーであるという長所を強調するとともに、辛いだけがタイ料理ではないと、日本
人のタイ料理への認識を変える努力が必要と考える。
(4) 衛生管理
東南アジア料理店のディスプレーとしては、民芸品を置いたり、照明をやや暗くしたりと、衛生面
の感覚からプラスのイメージにならないことは否めないが、店舗を運営するには、保健所の指導に
基づき、衛生的である必要がある。保健所の指導には必ず従うこと。
(5) 接客
タイ人スタッフの日本語能力について、日本人ネイティブ並みの日本語能力を求めることはでき
ない。これをカバーする方法として、まず、タイの伝統的な挨拶(両手を合わせる)ことを励行して、
タイ式のレストランであるというイメージを持たせ、客に日本レストラン並みの過度な期待を起こさせ
ないようにし、その一方で、日本レストランで実施している注文の復唱や、味についての好みの確
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認など、対応についてマニュアル化するとよい。
(6) シェフ
当面は、シェフが技術者として日本に就労ビザを取得することは難しいと考えるので、既存の料
理人が、タイ政府の主催する料理教室を日本で受けるなどの研修を受けて技術向上を目指すしか
方法はない。
このほか、今回の消費者アンケート調査で、さまざまな提案が出ている。主に宣伝の必
要性があげられているのでこれらを参考に取り組んではどうか。
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第 5 部 報告書のまとめ
(1) タイ食品の貿易振興について
タイはすでに日本に食品を多く輸出しており、日本の農産物の輸入相手国で 5 位、水産物でも 5
位であり、すでに日本への食料輸出大国であるといえる。日本の最大相手国である中国やアメリカ
の自国の食糧需給状況を考えると、今後、タイから日本への輸出はますます増えていくものと予想
される。
食品の安全性の観点からは、輸入検査において日本の食品衛生法の違反事例が一部見られる
ものの、他のアジア諸国と比べて、タイの食品生産、製造の品質、衛生レベルは高いという評価をう
けているものと思われる。しかし、違反事例がなくなっているわけではないので、引き続きタイ側で
の、食品生産時の品質管理技術の向上が望まれる。
(2) タイレストランについて
タイレストランは、タイの食品の輸出の増加とともに、タイ政府として拡大していきたいという方針
である。日本にあるタイレストラン 94 軒の調査によると、タイレストランに来るのは若い女性が友達と
一緒に来る場合がほとんどで、また単価が割高ということも考えると、ファミリー向けというよりも、ヘ
ルシーな高級料理という位置づけにある。
タイレストランが抱えている問題は、食材が高いということと、優秀なコックが雇用しにくいというこ
とがあげられる。食材が高いのは日本では他の料理店も同じであるので、仕方がないと考えるが、
タイ料理の場合は、スパイスと特殊な調味料が必要でこれは日本で代替ができずタイからの輸入
に頼らざるを得ないというハンディがある。後者のコックの問題は、タイからの人材交流が不十分で、
タイのコックに就労ビザが出ることは現状では難しい。これは両国政府ともに検討するべき課題で
あり、タイ側でも調理師の国家試験の検討なども必要である。
(3) 消費者の意識
日本の消費者に調査をしたところ、タイ料理に興味はあるものの、まだまだタイ料理が身近にはな
っていない。これは近くにタイレストランがないこと、金額が高いことなどが考えられ、タイ料理は友
人とたまにいく特別な料理つまりレジャーとしての行動となっている。
タイ料理が身近になるには、2つの異なる方法が必要と考えられる。ひとつは、タイの国内で食べ
るものと同じ味の本格的タイ料理と、もうひとつは日本人向けにアレンジをした創作料理を提供する
ことである。前者の場合は、タイセレクト認証制度も利用して、高級感のあるイメージを持たせ、一方
後者の場合は、タイ料理だけで経営をすることは難しいと考えられる場合には、アジア・エスニック
料理のメニューの中に、タイ風の料理を提供していくことが現実的と考える。日本人はタイ料理とい
えば、トクヤムクンであり、イコール辛いというイメージが定着しているので、マイルドなタイ料理の代
表を幅広く広報していくことが大切と考える。
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【参考文献】
社団法人日本フードサービス協会ホームページ(http://www.jfnet.or.jp/)
農林水産省ホームページ(http://www.maff.go.jp/)
厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/)
財務省輸入通関統計(http://www.customs.go.jp/toukei/info/index.htm)
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