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総 説 小脳形成とオーファン核内レセプターRORα

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総 説 小脳形成とオーファン核内レセプターRORα
●総 説●
小脳形成とオーファン核内レセプターRORα
松井隆司
RORα は単量体としてDNAに 結合して転写を制御するオーファン核内レセプターで,小
Database Center for Life Science Online Service
脳プルキンエ細胞など特定の神経細胞でおもに生後発現する。最近,RORα が遺伝性小脳
形成不全マウスstaggererの原因遺伝子であることが判明し,プ ルキンエ細胞の樹状突起
伸展 に必須の転写制御因子であることが明らかになった。今後,RORα を中心とした転写
制御の階層性の研究から,プ ルキンエ細胞の神経シナプス形成にかかわる遺伝子プログラ
ムの解明が期待される。
Key words
【オ ー フ ァ ン核 内 レ セ プ タ ー 】 【転 写 制 御 】 【プ ル キ ンエ 細 胞 】
【樹状 突 起】
は じめ に
ス テ ロ イ ドホ ル モ ン,甲
状 腺 ホ ル モ ンや ビ
タ ミンな どの 生 理 活 性 物 質 は標 的 組 織 や器 官 の発 生,分
化,成
中 枢 神 経 系 の 発 生 ・発 達 お よ び生 涯 に わ た っ て,神
長 や 恒 常 性 の 維 持 に お い て 重 要 な働 き を す る 。
1985年
ネ ッ トワ ー ク を形 成 して い る。
に グル コ コル チ コ イ ドレ セ プ ター(GR)のcDNA
経 構 築 と シ ナ プ ス機 能 に影 響 す る神 経 作 動 物 質 と し て
も ホ ル モ ン/ビ タ ミン は重 要 な働 き を して い る。 数 多 く
が ク ロ ー ニ ン グ さ れ て以 来1),他 の ホ ル モ ン/ビ タ ミ ン
の 核 内 レセ プ タ ー の ノ ッ ク ア ウ トマ ウス が作 製 され,遺
を リ ガ ン ド と す る核 内 レセ プ ター[→ 今 月 のKey
伝 子破 壊 の発 生や器 官 形成 へ及 ぼす影響 が詳 細 に解析
(P.2090)]のcDNAが
Words
次 々 と ク ロ ー ニ ン グ さ れ,構
お よ び 機 能 解 析 の 結 果,こ
造
さ れ て い る(詳 し くは文 献2を 参 照)。 しか し,初 期 胚 で
の 致 死 的 な 影 響 が 原 因 で,あ
る いは類似 したサ ブ タイ
の ドメイ ン構 造 を もつ 蛋 白 質 フ ァ ミリー を形 成 す るDNA
れ ら核 内 レ セ プ タ ー が 共 通
プ 間 の 機 能 重 複 が 原 因 で,と
く に生 後 脳 発 達 や 神 経 機
結 合 性 の 転 写 制 御 因 子 で あ る こ とが 明 らか に され た 。 こ
能 へ 影 響 を及 ぼ し た 核 内 レ セ プ タ ー 遺 伝 子 破 壊 の 例 は
の 間,既
少 な い 。ER(estrogen
存 の レセ プ タ ー との ホ モ ロ ジー を指 標 に して,
あ る い は他 の 転 写 制 御 因 子 の 研 究 か ら,核
内 レセ プタ
mone
receptor),TR(thyroid
receptor)やRAR(retinoic
hor-
acid receptor)な
ー ス ー パ ー フ ァ ミ リー に 属 す る リ ガ ン ド不 明 の い わ ゆ
どの ほ か に,い
くつ か の オ ー フ ァ ン レ セ プ タ ー が 生 後
る オ ー フ ァ ン レセ プ タ ー が 数 多 く単 離 さ れ て い る。 核
脳 で 発 現 し,さ
ら に そ の 発 現 や 活 性 が ドー パ ミ ンや ア
内 レ セ プ タ ー は 互 い に相 互 作 用 す る ほ か に,細 胞 の 増
ド レ ナ リ ン な ど の神 経 伝 達 物 質 に よ り影 響 を受 け て い
殖 ・分 化 に か か わ る 種 々 の シ グ ナ ル 伝 達 経 路 に 関 係 す
る こ とが 知 られ る よ う に な っ た 。 生 後 の 脳 発 達 や 神 経
る転 写 制 御 因 子 と も相 互 作 用 し,内 分 泌 系 の み な らず,
活 動 に お け る こ れ ら核 内 レ セ プ タ ー 機 能 の 重 要 性 は疑
よ り広 範 な 生 理 現 象 に も関 与 す る多 種 多 様 な 転 写 制 御
い もな い が,そ
Takashi
University
Orphan
Matsui,産
業 医 科 大 学 医 学 部 分 子 生 物 学 教 室
of Occupational
Nuclear
Receptor
and
RORα
Environmental
in
(〒807
の領 域 特 異 的 な 発 現 や 活 性 化 の 調 節 機
北 九 州 市 八 幡 西 区 医 生 ケ 丘1-1)[Department
Health,Iseigaoka,Yahatanishi-ku,Kitakyushu
of Molecular
Biology,
807,Japan]
Cerebellum
2039
14
蛋 白質
表1
核酸
酵素
Vol.42
No.13(1997)
核 内 レ セ プ ター の分 類
プ タ ー は そ の 作 用 様 式 で4つ
の サ ブ フ ァ ミ リー に 分 類 さ れ
る(表1)。GR(glucocor.
ticoid receptor)やERな
どス
テ ロイ ドホル モ ンを リガ ン ド
とす る サ ブ フ ァ ミ リー は ホ モ
2量
体
と し て 作 用
AGAACAハ
核 内 レセ プ タ ー を認 識 配 列 お よ び 作 用 様 式 で分 類 し た。
し,
ー フサ イ トか らな
るパ リ ン ドロ ー ム 構 造 に 結 合
構,ま
た,そ
れ ら が どの よ う な 遺 伝 子 を支 配 して い る
か な ど に つ い て は依 然 不 明 な 点 が 多 い。
最 近,RARと
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DNAに
高 い ホ モ ロ ジ ー を示 し,単 量 体 とし て
receptorα)が
例 外 的 にAGGTCAハ
ーフ
サ イ トを コア 配 列 とす る)。これ に対 して,甲 状 腺 ホル モ
結 合 す る オ ー フ ァ ン レ セ プ タ ーRORα(RAR-
related orphan
し て 転 写 を制 御 す る(ERは
ン や ビ タ ミ ン な ど の 脂 溶 性 物 質 を リガ ン ド とす る核 内
レ セ プ タ ー は 通 常RXRと
生 後 の小 脳 形 成 に か か
わ る重 要 な 因 子 で あ る こ とが 明 ら か に な り,注
目 され
て い る 。 他 の 核 内 レセ プ タ ー に比 べ る と,RORα
の転
の ヘ テ ロ2量
体 と してDNA
に結 合 す る 。 この サ ブ フ ァ ミ リー の 認 識 配 列 はAGGTCAハ
ー フサ イ トを コ ア配 列 とす る ダ イ レ ク ト リ ピー ト
(DR)構
造 で,2つ
の ハ ー フ サ イ トの距 離(DRn)に
よ
写 制 御 因 子 と し て の 生 化 学 的 な 解 析 は ま だ 十 分 とは い
りそ れ ぞ れ の レ セ プ タ ー の結 合 特 異 性 が 規 定 さ れ る3)。
え な い が,本 稿 で は,小 脳 プ ル キ ン エ 細 胞 の 生 後 樹 状 突
発 見 当初,リ
起 形 成 に お け るRORα
れ,そ
の 機 能 お よび プ ル キ ンエ 細 胞 特
異 的 な 標 的 遺 伝 子 の 転 写 制 御 機 構 を 中 心 に 解 説 す る。
ガ ン ド不 明 の オ ー フ ァ ン レ セ プ タ ー と さ
の 後 リ ガ ン ドが 同 定 され たPPAR(peroxisome
proliferator-activated
receptor)やLXRな
(retinoid X receptor)と
I. 核内 レセ プターサプファミリー
これ まで に単離 されて い る数十種 類 に及 ぶ核 内 レセ
ヘ テ ロ2量
構 造 に 結 合 す る 。 一 方,オ
モ2量
体 と し てDNAに
TFな
どが3番
ど もRXR
体 を形 成 してDR1
ー フ ァン レセ プター には ホ
結 合 す るHNF-4やCOUP-
目 の サ ブ フ ァ ミ リー と し て分 類 さ れ,そ
の 結 合 配 列 はAGGTCAハ
ー フサ イ トのDR1型
構 造で
あ る。
CBP : CREB binding protein
COUP-TF : chicken ovalbumin upstream promoter
transcription factor
CREB : CAMP-responsive element binding protein
ER : estrogen receptor ,
GR ; glucocorticoid receptor
HNF : hepatocyte nuclear factor
IPa : inositol 1, 4, 5--trisphosphate
MR : mineralcorticoid receptor
NGFI-B : nerve growth factor inducible-B
PPAR : peroxisome proliferator-activated receptor
PR : progesterone receptor
RAR : retinoic acid receptor
RARE.,: retinoic acid responsive element.
ROR : RAR-related orphan receptor
RORE : ROR-responsive element
RXR : retinoid X receptor
RZR : a new family ("Z") of potential retinoic acid
binding receptor
TBP : TATA box-binding protein
TR : thyroid hormone receptor
VDR : vitamin D receptor
2040
ホ モ あ る い は ヘ テ ロ2量 体 と し て 作 用 す る核 内 レセ
プ タ ー の ほか に,単
量 体 と してDNAに
ァ ン レ セ プ タ ー が 知 られ,4番
結合 するオーフ
目 の サ ブ フ ァ ミ リー とし
て 分 類 さ れ る よ う に な っ た 。 神 経 成 長 因 子 に よ り誘 導
さ れ るNGFI-B4),シ
ョ ウ ジ ョバ エfusitayazu(ftz)遺
伝 子 の転 写 制 御 因 子 と して 同 定 され たFtz-F1お
のマ ウス ホ モ ロ グSF-1/ADBP45∼7),TR遺
か ら生 成 され るRev-erbフ
べ るROR/RZR9∼11)な
よび そ
伝 子 の逆 鎖
ァ ミ リー8),そ して 本 稿 で 述
どが この サ ブ フ ァ ミ リー に 属 し
て い る 。 現 在 ま で に単 離 さ れ て い るす べ て の 単 量 体 レ
セ プ タ ー は6塩
AGGTCAハ
基 対 のATに
富 む 配 列 に 続 く1つ の
ー フサ イ トに結 合 す る。 それ ぞ れ の 結 合 特
異 性 はDNA結
端 側 に あ るTお
合 ドメ イ ン の第2Znフ
よ びAボ
ィ ンガ ー のC末
ッ ク ス と よ ばれ る領 域 の ア ミ
ノ酸 配 列 に よ り決 定 され4,12,13),5'側 のATに
富 む配 列
の 違 い を識 別 し て い る 。 これ まで に 単 離 さ れ た 単 量 体
小脳形成 とオー ファン核内 レセプターRORα
表2
単 量体 レ セ プ ター の分 類
15
そ の 領 域 特 異 的 な 分 布 か ら示
唆 さ れ る 。RORβ
サ ブタイ プ
は お も に松 果 体 や 視 床 下 部 で
発 現 す るの に対 して15),図2a
で 示 す よ う に,RORα
サブ タ
イ プは成体 マ ウスの小脳 プル
キ ン エ 細 胞,視
床 や嗅 球 な ど
限 ら れ た 領 域 の 神 経 細 胞 で発
現 し,ま
た比 較的 若 いマ ウス
で は海 馬 歯 状 回 で も発 現 して
い る11)。これ に対 して,マ ウス
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レ セ プ タ ー はTお
よびAボ
ック ス の ア ミノ 酸 配 列 か ら
17日 胚 で の 発 現 は 非 常 に 低 く,し た が っ て,RORα
は
大 き く3つ の サ ブ グ ル ー プ に分 け る こ とが で き る(表
お も に 生 後 脳 で 発 現 す る核 内 レセ プ タ ー で あ る と予 想
2)。
さ れ た 。 事 実,生
後 発 達 過 程 の 小 脳 プ ル キ ンエ 細 胞 で
の 発 現 を解 析 した 結 果,RORα
II.
単 量体 オ ー フ ァ ン核 内 レセ プ ターROR
ROR/RZRは,そ
のDNA結
合 ドメ イ ンがRARの
そ
の 発 現 は生 後3日
ろ に始 ま り,2∼3週
こ ろ に ピ ー ク に 達 す る こ とが 明 ら
か に な っ た(図2b)。
視 床 や 嗅 球 な ど他 の領 域 で も同
様 に生 後3日
目 こ ろか ら そ の 発 現 が 観 察 さ れ る こ とか
れ と最 も高 い ホ モ ロ ジ ー を 示 す オ ー フ ァ ン レセ プ タ ー
ら,RORα
と し て 単 離 され た(図1)。ROR/RZRに
に 関 係 し て い る と考 え られ る16)。
び γ の3種
は α,β お よ
類 の サ ブ タ イ プが あ り,さ
ら にRORα
タ イ プ に は同 一 遺 伝 子 か ら生 成 さ れ るN末
目こ
は これ ら領 域 の 神 経 細 胞 の 生 後 成 熟 と密 接
サブ
端 の異 なる
III.
小脳 形 成 に お け るRORα
少 な くと も4種 類 の ア イ ソフ ォー ムが あ る9∼11,14)。RORα
サ ブ タイ プ は脳 を お もな発 現 組 織 とし,ま た,P19やF9
細 胞 な ど の胚 性 癌 腫 細 胞 で 発 現 が 認 め られ る 。 と くに
P19細 胞 では,RORα
RORα
る の が,そ
の 機 能 を知 る ア プ ロ ー チ と し て まず 考 え られ
の 遺 伝 子 破 壊 を 導 入 し た ノ ッ ク ア ウ トマ ウ
の発現
が神 経細 胞 へ の分化誘 導 特異
的 に一 過的 に減 少 し,神 経細
胞 が現 われ る ころに再 び観察
され る。 この発 現変 化が 神経
細胞 分化 と関係 あ るのか 不明
で あるが,RORα
遺伝 子 の神
経 系特 異的 な転 写 の制 御 機構
を解 析 す るた めの モデル 系 と
な りうる。一 方,RORβ
サブ
タイ プ も脳 で高 い発 現が 認 め
られ るのに比べ,RORγ
サブ
タイ プはお もに筋 肉 や胸 腺 で
発現 して い る。
RORα
とRORβ
の2つ
の
サ ブ タイ プが それ ぞれ異 な る
脳機 能 に関与 して い る ことは
図1
RORα
RORα1のDNA結
と他 の 核 内 レ セ プ タ ー と の ホ モ ロ ジ ー
合領 域(DBD)お
よ び リガ ン ド結 合 領 域(ligand)と
領 域 の ホ モ ロ ジ ー を示 し て あ る。 ま た,RORα
の4つ
他 の 核 内 レセ プ タ ー の 各
の ア イ ソ フ ォー ム のN末
端の違いも示 し
て あ る。
2041
16
蛋白質
核酸
酵素
Vol.42
No.13(1997)
ス の作 製 で あ ろ う。 しか し,思
わ ぬ と こ ろか ら,RORα
の小
脳 に お け る機 能 が 明 らか に さ
れた。
小 脳 は運 動 の 制 御 ・学 習 を
司 る重 要 な 中枢 神 経 系 で,プ
ル キ ンエ 細 胞,顆
粒 細胞 や ゴ
ル ジ細 胞 な ど6種 類 の 神 経 細
胞 か ら な る規 則 正 し い 層 構 造
を と る。 そ の細 胞 構 築 や プ ル
キ ン エ 細 胞 を 中 心 と した 神 経
回 路 網 の 形 成 過 程 が 詳 し く解
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析 され てい る。 出生直 後 に外
顆 粒 層直 下 に移動 した プル キ
ンエ 細 胞 は生 後7日
目 こ ろに
樹 状 突 起 を伸 展 さ せ,樹
状突
起 上 の 棘 突 起 を介 し て 顆 粒 細
胞 の軸 索 か ら分 岐 し た 平 行 繊
維 とシナプ ス形成 を しは じめ
る。 生 後20日
こ ろ に は,1つ
の プ ル キ ン エ細 胞 が 数 千 以 上
の顆粒 細 胞 とシナ プス形成 す
る(図3)。
先 天 的 に小 脳 形 成
異 常 を もつ 変 異 マ ウ ス を解 析
し た研 究 か ら,プ ル キ ン エ 細
胞 の発達 には顆粒 細胞 な ど と
の 相 互 作 用 の ほ か に,プ
ルキ
ン エ細 胞 の もつ 遺 伝 的 な プ ロ
グ ラ ム が 大 き な影 響 を与 え て
い る こ とが 示 唆 され てい た。 こ
の遺 伝 的 なプ ログ ラム で重要
な 転 写 因 子 と してRORα
能 して い る こ とが,先
が機
天性 小
脳 形 成 不 全 マ ウ スstaggerer
(sg)の 原 因 遺 伝 子 を 同 定 し た
図2
RORα
ウ ス 脳sagittal切
の3'末
端 を プ ロ ー ブ に し てin
視 床(F)お
H:海
胞,W:白
片,脳
よ び 嗅 球(G)は
馬,T:視
2042
situハ
部(B)を
球,M:分
リ グ ロ メ ル ラ ー 細 胞,Tu:タ
の 発 現 。 生 後 脳sagittal切
situハ
ジ ゴ キ シ ゲ ニ ン 標 識 し たRORα4
イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン し た 。 橋(C),小
脳 皮 質,OB:嗅
後 発 達 小 脳 で のRORα
プ ロ ー ブ に し てin
後 部(A),前
高 倍 率 。 各 領 域 お よ び 神 経 細 胞 は,C:小
床,Cx:大
質,Pg:ペ
生 後16日,D,H:生
最 近 の 研 究 か ら 明 らか に な っ
の 脳 領 域 特 異 的 な 発 現
(a)マ
子 層,P:プ
フ ト細 胞,Mi:ミ
。A∼D:3'末
脳(D),下
丘,SC:上
丘,
粒 細
トラ ル 細 胞 で あ る 。(b)生
後3日,B,F:生
端 プ ロ ー ブ,E∼H:5'末
丘(E),
ル キ ン エ 細 胞 ,G:顆
片 を ジ ゴ ギ シ ゲ ニ ン 標 識 し たRORα4
イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン し た 。A,E:生
後28日
脳,IC:下
cDNA
cDNAを
後7日,C,G:
端 プ ロー ブ。
た 。sgマ
ウス ではプル キンエ
細胞 の樹 状 突起形 成 が不 完全
で,と
くに棘 突 起 が ほ と ん ど
形 成 さ れ ず,顆
粒 細 胞 との シ
ナ プ ス形 成 が で き な い 。 そ の
結 果,二
次 的 な 変 化 と して 顆
小脳形成とオーファン核内 レセ プターRORα
17
ル キ ン エ細 胞 の 樹 状 突 起 お よ び シ ナ プ ス 形 成 の 分 子 機
構 を 転 写 制 御 の 側 面 か ら理 解 す る う え に重 要 で あ る 。
プ ル キ ン エ 細 胞 で 特 異 的 に あ る い は 相 対 的 に 強 く発
現 して い る遺 伝 子 が い くつ か 同 定 さ れ て い る。 こ の な
か で,101残
基 の ア ミノ酸 か らな る機 能 不 明 な 蛋 白 質 を
コー ドす るPcp-2/L7遺
伝 子,細
ジ ャ ー と し て 細 胞 内Ca2+プ
るIP3の
胞 内 セ カ ン ドメ ッセ ン
ー ル か らCa2+を
受 容 体 遺 伝 子(IP3R1),Ca2+結
も っ 機 能 不 明 なPEP-19遺
伝 子,ま
放 出 させ
合 ドメ イ ン を
た代 謝型 グルタ ミ
ン酸 受 容 体 遺 伝 子 な ど は そ の 発 現 がsgマ
ウ ス で 消 失,
あ る い は顕 著 に減 少 す る こ とか ら18∼21),RORα
の下 流
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に位 置 す る遺 伝 子 で あ る と考 え られ る 。
図3
プル キ ン エ細 胞 の 生後 成 熟
プルキ ンエ細胞 の樹状 突起および棘 突起形成の生後発達 を模式 的
に示 した。
RORα
の直 接 の 標 的 遺 伝 子 で あ るか は,そ の 結 合 配
列(RORE)の
存 在 を 指 標 に して 予 想 で き る 。 コ ン ピ ュ
ー ター 解 析 の 結 果 ,Pcp-2,IP3R1お
粒 細 胞 が 著 明 に 減 少 し,正 常 な小 脳 が 形 成 され な い。 こ
子 の 転 写 開 始 点 よ り上 流 にRORE様
のsgマ
られ た 。 と く に,Pcp-2遺
ウ ス で,RORα
(番号 はRORα1ア
る)を
遺 伝 子 内 の ア ミ ノ 酸275∼314
イ ソ フ ォ ー ム の ア ミノ 酸 配 列 に準 ず
コ ー ドす る エ ク ソ ンが 欠 失 し て い る こ とが 判 明
開 始 点 の上 流-70∼-140付
よびPEP19遺
配 列の存在 が認 め
伝 子 プ ロ モ ー タ ー に は転 写
近 に3つ
のRORE様
が 存 在 す る 。 これ ら配 列 が 事 実ROREと
した17)。フ レー ム シ フ トに よ り リガ ン ド結 合 ドメ イ ンの
性 化 す る か を 解 析 す る と,-70に
大 部 分 を欠 く変 異RORα
GTAACTGGGTCA-3'がROREと
が 転 写 活 性 化 能 ば か りで な く
伝
配列
して転 写 を活
局 在 す る5'して 働 き,Pcp-2
ド ミナ ン トネ ガ テ ィ ブ な 転 写 抑 制 作 用 も欠 失 す る こ と
遺 伝 子 の転 写 を活 性 化 す る こ とが 示 さ れ た(図4a)22)。
は,C末
Pcp-2遺
端 欠 失 の 転 写 活 性 化 能 に 及 ぼ す 影 響 を解 析 し
た 筆 者 ら の 実 験 結 果 か ら も明 らか で あ る。RORα
がプ
ル キ ンエ 細 胞 の 樹 状 突 起 伸 展 に 不 可 欠 な 転 写 制 御 因 子
るDNA領
RORα
で あ る と結 論 で き る 。 核 内 レ セ プ タ ー 遺 伝 子 変 異 と生
IP3R1お
後 脳 の 特 定 の 神 経 細 胞 の 機 能 ・構 造 異 常 との 因 果 関 係
が 明 らか に な っ た 数 少 な い1例
DNA結
興 味 深 い こ と に,RORα4ア
イ ソ フ ォ ー ム の プル キ ン
域 の 解 析 結 果 とあ わ せ23),Pcp-2遺
よ びPEP-19遺
合 特 異 性 で 特 徴 的 な こ とは,ア
よ っ て5'側
のATに
れ る(図2b)。
とで あ る(表3)9)。
この 現 象 は視 床 や 嗅 球 で は観 察 さ れ な
述 す る よ う に,ア
イ ソ フォー ム それ ぞれが 特異 的 な遺
類 のRORα
て い る こ とが 予 想 さ れ る。IP3R1お
ア イ ソ フ ォー ム と生 後20日
と は 異 な る の で,他
ア イ ソフォームそれ
端 領 域 に よ り決 定 さ れ る こ
つ ま り,4種
子 上 流 に存 在 す るRORE様
目 ころ に 起 こ る小 脳 の 再 構
イ ソフ ォ ーム に
アイ ソ フ
ォー ム は そ れ ぞ れ 異 な る遺 伝 子 の転 写 制 御 にか か わ っ
伝 子 転 写 を制 御 して い る こ とが 想 定 され るので,RORα4
築 と の 関 係 を想 像 させ る。RORα
の
富 む 配 列 が 異 な り,そ の識 別 は ア
イ ソ フ ォ ー ム 特 異 的 なN末
ル キ ンエ 細 胞 特 異 的 で あ るか も しれ な い。 後
伝 子 の 転 写 は少 な く と も
イ ソ フ ォー ムで は活 性 化 され ない 。RORα
エ細 胞 で の 発 現 時 期 が 他 の ア イ ソ フ ォ ー ム に 比 べ て 遅
い の で,プ
伝子が
の標 的 遺 伝 子 で あ る と結 論 で き る。
RORα4ア
で あ る。
伝 子 の プ ル キ ン エ 細 胞 特 異 的 な 発 現 を規 定 す
よ びPEP-19遺
配 列 がPcp-2遺
伝
伝 子 の それ
の ア イ ソ フ ォ ー ム が 関 与 して い る
可 能性 が あ る。
ぞ れ の 発 現 時 期 を調 べ る必 要 が あ る 。
IV.
V.
RORα の転写制御ネ ットワーク
1.
他 の核 内 レセ プ ター との相 互作 用
RORα の標的遺伝子
プル キンエ細 胞 の生後 成熟 過 程 でRORα
は どの よう
通 常,ほ とん どの遺 伝子 には複 数 の転 写制 御領 域 が
な遺伝 子(群)の 転 写 を制 御 して い るので あ ろ うか。 プ
存 在 し,そ の転写 は結 合 す る制 御 因子 間 の相 互作 用 に
2043
18
蛋白質
核酸
酵素
Vol.42
No.13(1997)
P19細
胞 を用 いた筆者 らの結
果 で は,TRはPcp-2プ
ロモ
ー タ ー を 活 性 化 しな い し,ま
た,RORα
依 存 的 な転 写 に も
影 響 し な い22)。 ま た,甲
状腺
機 能 低 下(不 全)マ ウス でPcp2の 発 現 が 正 常 マ ウ ス に比 べ
て 遅 れ るが,そ
の レ ベ ル は変
わ ら な い とい う報 告 もあ り27),
TRは
転 写活 性 化 に必 ず し も
必 須 で な い の か も しれ な い。
一 方,発
表 され たPcp-2遺
Database Center for Life Science Online Service
伝 子 の 塩 基 配 列 と異 な り23),
筆 者 らが クロ ー ン化 したDNA
の 塩 基 配 列 で は 下 流217に1
塩 基 対 の 挿 入 が み られ,こ
領 域 にDR5型RARE様
の
配列
が存 在 す る こ とが示 され た。 図
4に 示 す よ う に,こ
のRARE
は レ チ ノ イ ン酸 に 応 答 し て 転
写 を活 性 化 す る ば か りで な く,
RORα
に よ る転 写 を相 乗 的 に
活 性 化 す る 。 レ チ ノ イ ン酸 が
プ ル キ ンエ 細 胞 に存 在 して い
るか 不 明 で あ るの で,RARが
in vivoで
図4
Pcp-2遺
(a)ル
DNAに
伝子の転写
シ フ ェ ラー ゼ 遺 伝 子 に連 結 したPcp-2遺
伝 子 プ ロモ ー タ ーの 転 写 活 性 を種 々 の 欠失 変 異
つ い てP19細 胞 を 用 い た トラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン実 験 で 解 析 した 。 各 値 は コ ン トロ ー ル
(-935)DNAの
す るROREお
(-935DNA)と
み の活 性 を1と
よ びRAREを
し て表 わ し た 。 図 の 上 部 にPcp-2遺
示 して あ る 。(b)そ
と も にP19細
伝 子 プ ロ モ ー タ ー に存 在
れ ぞ れ 示 した 発 現 ベ ク タ ー を レポ ー タ ーDNA
胞 ヘ トラ ンス フ ェ ク シ ョ ン し た の ち,細
胞 を レチ ノ イ ン 酸(RA)
の 存在 下 あ る い は非 存在 下 で 培 養 した。 レポ ー タ ー の み の トラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン で得 ら れ た ル
シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 を1と
もPcp-2遺
して 表 わ した 。
と結 論 で き な い が,プ
エ 細 胞 でRARが
る こ とやIP3R1お
RORE以
Mafな
酸 に応 答 す る と い う結 果 は 示
protein 1)やc-
どが 結 合 す る 配 列 が 存 在 して い る24∼26)。と くに,
は す べ て トラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン実 験 で 得 られ た 結 果 で
答 配 列(thyroid
述),RORα
の存 在 はPcp-2遺
TRが
このTRE依
伝 子 転 写 へ のTRの
element;TRE)
関 与 を示 唆 す る。
存 的 に チ ミジ ン キ ナ ー ゼ 遺 伝 子 プ ロ
モ ー ター の転 写 を活 性 化 す る こ とが報 告 され て い るが25),
2044
によ
る 転 写 活 性 化 レベ ル は 低 く,数 倍 程 度 で あ る。 こ れ ら
あ り,ま た,リ
response
伝 子 も含 めて
これ まで に 調 べ られ た い くつ か の 遺 伝 子 のRORα
正 常 な 小 脳 発 達 と密 接 に 関 係 す る 甲状 腺 ホ ル モ ン の 応
hormone
よ びPEP-
唆 的 で あ る(筆 者 ら:未 発 表 デ
伝 子 プ ロモ ー ター領域 に は
外 にTR,AP-1(activator
ルキン
発 現 して い
19遺 伝 子 の 転 写 も レ チ ノ イ ン
ー タ)。Pcp-2遺
よ り制 御 さ れ る 。Pcp-2遺
伝子の
転写 制 御 に直接 関与 して い る
ガ ン ドの 問 題 が 解 決 され て い な いが(後
は本 来RARな
ど他 の転 写 制 御 因 子 の相 互
作 用 を必 要 と し て い るの か もしれ な い 。AP-1やc-Maf
との相 互 作 用 も含 め,今
RORα
後 の詳 細 な解 析 が 必 要 で ある。
に よ る転 写 が 結 合 配 列 の 構 造 に依 存 して 他 の
小脳形成 とオーファン核内 レセプターRORα
表3
19
結 合 配列 の 特 異 性
各RORα
ア イ ソ フ ォー ム の結 合 配 列 を示 す 。RORα1と2の
Giguereら
に よ って 決 定 され た 配 列 を示 し,RORα4の
らが解 析 したPcp-2お
よび ラ ミニ ンB1遺
配 列は
配 列 は筆 者
伝 子 のRORE配
列 を示
す 。RORα3の
ア イ ソ フォ ー ムの 認 識 配 列 の報 告 は ない が,少
と もRORα1の
配 列 に は結 合 しな い こ とが 報 告 され て いる。 矢 印 は
なく
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コ ア ハ ー フサ イ ト配 列 を示 す 。
核 内 レセ プ タ ー の 影 響 を受 け る(図5)。
は,特 定 のROREが
最 も単 純 な 例
他 の 単 量 体 レセ プ タ ー の認 識 配 列
と して共 有 され る場 合 で あ る 。RORα
に よ るN-mycや
γF-ク リス タ リ ン遺 伝 子 の転 写 は抑 制 因 子Rev-erbフ
ァ ミ リー の 拮 抗 的 な結 合 に よ り抑 制 さ れ る28∼30)。
一 方,
γF-ク リ ス タ リ ン や ラ ミ ニ ンB1遺
ROREと
RORα
して も機i能す るdual
伝 子 のRAREは
elementで
あ り,そ の
依 存 的 な転 写 は レチ ノイ ン酸 非 存 在 下 でRARに
よ り抑 制 され る11,31)。さ ら に注 目 す べ き は,単 量 体 レセ
プ タ ー で あ るNGFI-BがRXRと
ヘ テ ロダ イ マ ー を 形
成 して あ る特 定 のDR5型RAREをRXRの
特 異 的 リガ
ン ド依 存 的 に 活 性 化 す る こ とで あ る32,33)。こ の場 合,2
図5
RORα
RORα
の 関 与 す る 転 写 の3つ
の機 構
に 抑 制 的 あ る い は協 調 的 に作 用 して転 写 を制 御 す る機 構 を
模 式 化 して 示 した。ROREへ
のRev-erbフ
ァ ミ リー の 拮 抗 的 結 合
に よ る転 写 抑 制(上 段),リ ガン ド(レ チ ノイ ン酸)非 存在 下,RORE
と重 複 したRAREへ
転 写 抑 制(中
のRAR/RXRヘ
RAR/RXRの
段),お
テ ロ2量 体 の拮 抗 的 結 合 に よる
よ び共 存 す るROREとRAREへ
結 合 に よ る相 乗 的 な 転 写 活 性 化(下
のRORα
と
段)。
つ の ハ ー フサ イ トの うち3'側 ハ ー フサ イ トがNGFI-B
の 認 識 配 列(nnnnAAAGGTCA)で
あ る 。DR5に
RXRは
あ る こ とが 重 要 で
結 合 す るRXR-RARヘ
テ ロ2量 体 で の
通 常 不 活 性 で あ るの で,NGFI-Bと
量 体 形 成 がRXRを
の ヘ テ ロ2
活 性 化 す る こ とにな る。NGFI-Bが
よびTFIIBと
も結 合 し,制 御 因 子 の情 報 を基 本 的 転 写
複 合 体 へ 媒 介 す る メ デ ィ エ ー タ ー と し て作 用 す る34,35)。
CBPは
さ ら に核 内 レセ プ ター,AP-1,c-MybやEIA
な ど20種
類 以 上 に及 ぶ 転 写 制 御 因 子 とも結 合 し,種 々
種 々 の 成 長 因 子 に よ り早 期 に誘 導 さ れ る核 内 レ セ プ タ
の シ グナル伝 達経 路 の イ ンテグ レー ター として遺伝 子
ー で も あ り,レ
転 写 制 御 ネ ッ トワ ー クで 中 心 的 な 役 割 を演 じて い る36)。
チ ノ イ ド シ グ ナ ル に多 様 性 を もた らす
新 規 な機 構 と し て 注 目 さ れ て い る。RORα
について も
こ れ ま で に調 べ られ た す べ て の2量
ー はCBPのN末
検 討 す る 価 値 が あ る。
い る(RXRだ
2.
RORα
RORα
の コアク チベー タ ー
とRARに
よ るPcp-2遺
CBPの
伝子 転写 の相乗 的 な
け 異 な る が)。 多 くの 細 胞 で は存 在 す る
量 が 限 られ て い る た め,CBPを
存 す る核 内 レ セ プ タ ー の種 類,そ
活 性 化 の 詳 細 な機 序 にっ い て は現 在 不 明 で あ るが,CBP
やCBPに
(CREB
響 を受 け る。RORα
binding
protein)の
関 与 を示 唆 す る 結 果 が 最
近 得 られた(筆 者 ら:未 発 表)。CREB(cAMP応
答配 列
結 合 因 子)に 結 合 す る 蛋 白 質 と し て 単 離 さ れ たCBPは
基 本 転 写 因 子TBP(TATA
box-binding
protein)お
体 型核 内 レセプ タ
端 に 結 合 す る こ とが 明 らか に さ れ て
介 した 転 写 は共
れ らの 相 対 的 な濃 度
対 す る 結 合 親 和 性 な どの 要 素 に よ り大 き な影
が直 接CBPと
結 合 す る のか,そ の
領 域 は他 の 核 内 レ セ プ タ ー の 結 合 領 域 と同 じ で あ るの
か な ど,今 後 明 らか に す る必 要 が あ る 。
核 内 レセ プ タ ーの 仲 介 因 子 として,N-CoRやSMRT
2045
20
蛋 白質
核酸
酵素
Vol.42
No.13(1997)
な ど の コ リプ レ ッサ ー,SRC/P160やTRIPな
ア クチ ベ ー タ ー が 単 離 ・同 定 さ れ,そ
どの コ
れ ら の作 用 機 序
も詳 細 に 解 析 さ れ て い る37∼43)。一 方,単
ーFtz-F1が
そ の コア クチ ベ ー ターMBFと
量体 レセプタ
結 合 す るほ
セ プ タ ー と リ ガ ン ドの ど ち らが 先
に 出 現 し た か とい う議 論 に 置 き換 え て も そ の 答 え は 見
い だ さ れ て い な い 。RXRの
あ るUSPに
シ ョ ウ ジ ョバ エ ホモ ロ グ で
特 異 的 な リガ ン ドが ない こ とか ら,核
内レ
か に44),ホ メ オ 蛋 白質Ftzと
も結 合 し て 活 性 化 さ れ る
セ プ タ ー が 先 に 出 現 し た とい う 考 え が あ る 反 面,脂
こ と45,46),さ ら にRev-erbフ
ァ ミ リー がN-CoRと
細 胞 分 化 の制 御 因 子 と して 注 目 を集 めて い るPPARの
結
合 して 転 写 抑 制 活 性 を もつ こ とが 明 らか に さ れた47)。 こ
れ に 対 して,RORα
と直 接 結 合 し て そ の 活 性 を修 飾 す
る 因 子 を 同 定 し た 報 告 は これ まで に なか っ た が,最
RORα
近,
と直 接 相 互 作 用 す る蛋 白質 とし て 癌 転 移 抑 制 遺
伝 子nm23産
物 が 同 定 さ れ た48)。nm23はc-myc遺
子 の 転 写 制 御 因 子 と し て,ま
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る 。 この 問 題 を,レ
場 合 に は,リ
ガ ン ドの 多 様 化 に 伴 っ てPPARサ
ブタイ
プが 出 現 した 可 能 性 を 指 摘 す る研 究 者 もい る。"Which
comes
first,receptor
or ligand?"こ
の問題 の決着 に
は 少 し時 が 必 要 で あ る 。
伝
た細 胞分 化 の制御 因 子 と
し て の 機 能 も もつ こ とが 知 られ て い る49)。興 味 あ る こ と
おわ りに
に,ヒ
遺 伝 子 が 判 明 し,オ ー フ ァ ン核 内 レセ プ タ ーRORα
トとマ ウ スN-myc遺
領 域 にROREとnm23結
肪
伝 子 で よ く保 存 され た 下 流
合 部 位 が 近 接 し て存 在 して い
る。 残 念 な が ら,nm23がRORα
に作 用 して 転 写 に影
sgマ ウ ス が 発 見 され て40余
年 後 に そ の原 因
が
小 脳 形 成 で 中 心 的 な 役 割 を も つ プ ル キ ンエ 細 胞 の 生 後
成 熟 を 支 配 し て い る こ とが 明 らか に な っ た 。 遺 伝 子 変
響 を与 え る こ と を示 す 結 果 は得 られ て いな い が,RORα
異 に よ り生 後 特 定 の 器 官 あ る い は領 域 の 形 成 が 損 な わ
の 新 た な 機 能 を探 り出 せ る可 能 性 もあ り,今 後 の 進 展
れ た 核 内 レ セ プ タ ー の 数 少 な い例 で あ る 。 本 稿 で 述 べ
が 期 待 さ れ る。
たRORα
の 標 的 遺 伝 子Pcp-2の
明 で あ る が,少
VI.
RORα
る と,そ の 遺 伝 子 破 壊 の影 響 は な い ら しい)。IP3R1あ
の リガ ン ド?
る い はPEP-19遺
RORα
RORα
の特 異 的 リガ ン ドは存 在 す る の だ ろ う か。
お よびRORβ
が松 果 体 ホ ル モ ン で あ る メ ラ トニ
ン で 活 性 化 され る とい う報 告 が あ る15)。RORβ
体 に局 在 し,さ
機 能 につ いて は現 在 不
な く と も転 写 因 子 で は な い(一 説 に よ
が松果
ら に そ の 発 現 が サ ー カ デ ィ ア ン リズ ム
伝 子 が 標 的 遺 伝 子 で あ るか 現 時 点 で
は 不 明 で あ るが,シ
ナ プ ス形 成 に 直 接 か か わ るIP31遺
伝 子 が 少 な く と も下 流 遺 伝 子 で あ る事 実 はRORα
の 重 要 性 の 一 端 を うか が わ せ る 。 また,こ
が 標 的 遺 伝 子 で な い 場 合,そ
機能
れ ら遺 伝 子
の転写 制御 に直接 か かわ
を示 す と い う結 果 と符 合 す る。 しか し,既 知 の リガ ン
る 制 御 因 子 の 解 析 を とお し て,RORα
ド依 存 性 の核 内 レ セ プ タ ー が リガ ン ドに よ り数 十 倍 か
結 ぶ 転 写 制 御 の 階 層 性 を明 ら か に で き る で あ ろ う。
ら100倍
に も及 ぶ 活 性 化 が 誘 導 さ れ る の に対 し て,メ
ラ トニ ン添 加 に よ るRORα/β
の 転 写 の 活 性 化 はせ い ぜ
い数 倍 程 度 で あ る。 ま た,筆
者 ら を含 め 他 の 研 究 グ ル
一 方,誌
面 の都 合 上 割 愛 した が,RORα
置 す る遺 伝 子,す
な わ ちRORα
と下 流 遺 伝 子 を
の上 流 に 位
遺 伝 子の転 写制 御 因子
を 同 定 す る こ とも重 要 で あ る 。RORα4遺
伝 子 の転 写 制
ー プ で は メ ラ トニ ンの 効 果 を追 試 で き な い 。 メ ラ トニ
御 領 域 を解 析 した トラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン実 験 の 結 果 か
ン が 真 の リガ ン ドで あ る か 判 然 と し な い の が 現 状 で あ
ら,神 経 系 の 発 生 や 形 成 に か か わ るKrox/Egrフ
る。
単 離 され た 当初,リ
ァミ
リー の 関 与 が 示 唆 され て い るが(筆 者 ら:投 稿準 備 中),
ガ ン ド不 明 な オ ー フ ァ ン レセ プ
タ ー と し て 分 類 され て い たPPARやLXRな
ど は,そ
プ ル キ ン エ 細 胞 特 異 的 な 転 写 の制 御 に直 接 関 与 して い
る か は 不 明 で あ り,今 後 の 課 題 の 一 つ で あ る。
の後 の精 力 的 な研 究 か ら そ れ ぞ れ の 特 異 的 な リ ガ ン ド
が 同 定 され た 。 し た が っ て,現
時 点 で オ ー フ ァ ン とさ
れ て い る核 内 レ セ プ タ ー も将 来 そ の 特 異 的 な リ ガ ン ド
が 見 つ か る 可 能 性 は あ るが,す
べ て の核 内 レセ プ タ ー,
と くに 単 量 体 レ セ プ タ ー に リガ ン ドが 存 在 す るか と い
う疑 問 はオ ー フ ァ ン レ セ プ タ ー が あ るか ぎ りた え ず 残
2046
文
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