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シニア世代の身の回りの危険

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シニア世代の身の回りの危険
ヒヤリ・ハット調査
「シニア世代の身の回りの危険」
(シニア世代のヒヤリ・ハット/基本調査)
平成24年2月
東京都生活文化局消費生活部
目
次
1.調査目的 ...................................................................................................................................1
2.調査概要 ...................................................................................................................................1
(1) 調査対象 ........................................................... 1
(2) 調査期間 ........................................................... 1
(3) 調査方法 ........................................................... 1
(4) 調査内容 ........................................................... 1
(5) 回答者の属性 ....................................................... 1
3.調査結果 ...................................................................................................................................2
(1) 全体的な傾向 ....................................................... 2
(2) 台所 ............................................................... 5
(3) 浴室・洗面所・トイレ ............................................... 8
(4) 居間 .............................................................. 10
(5) 寝室 .............................................................. 13
(6) 屋外・ベランダ .................................................... 15
(7) その他(階段・段差等) ............................................ 17
4.まとめ..................................................................................................................................... 19
5.結果の活用............................................................................................................................ 19
1.調査目的
日常生活で経験した「ヒヤリ・ハット」体験はどこへも情報提供されることなく多数埋もれて
いることから、都では、危害危険情報を積極的に掘り起こすため、ヒヤリ・ハット調査を実施し
ている。
今回は、ほんの少しの不注意が大きなケガにつながることも多い「シニア世代の身の回り」
をテーマに調査を実施した。
2.調査概要
(1) 調査対象
東京都に居住する 60 歳以上の男女 3,000 人(インターネットアンケート登録モニター)
(2) 調査期間
平成 22 年 12 月 27 日∼平成 23 年 1 月 12 日
(3) 調査方法
インターネットによるアンケート形式で実施
(4) 調査内容
本調査では、台所、浴室、居間、寝室、屋外、その他の場所に分け、日常生活で使用する具
体的な製品名をあげて、過去5年以内のヒヤリ・ハットや危害経験の有無を聞いた。次に、ヒヤ
リ・ハットや危害経験が「ある」と回答したものについて、危害の程度を選択式の設問で聞き、
さらに、各場所のヒヤリ・ハットや危害経験の中からひとつを選んでその具体的な内容を記述式
の設問で詳しく聞いた。
(5) 回答者の属性
回答者の年代別割合は、60 歳代が 62.4%、70 歳代が 31.6%、80 歳以上が 6.0%だった。男女
比は、全体として男性 58.9%、女性 41.1%だった。
なお、60 歳以上は、インターネットアンケート登録モニターが少ないため、同居している家
族による代理回答を併用した。
男女計(人)
男性(人)
内、
代理回答
合計(人)
年代別割合(%)
3,000
100.0
636
100.0
1,766
1,873
127
1,142
年代別割合(%)
62.4
20.0
64.7
年代別割合(%)
948
31.6
330
51.9
80歳以上(人)
179
179
年代別割合(%)
6.0
28.1
219
100.0
60歳代(人)
70歳代(人)
女性(人)
内、
代理回答
100.0
60
27.4
561
96
31.8
43.8
63
63
3.5
28.8
内、
代理回答
1,234
100.0
731
59.2
387
31.4
116
9.4
417
100.0
67
16.1
234
56.1
116
27.8
■ヒヤリ・ハット ケガはしなかったが、ヒヤリとしたりハッとした事例
■危害
ケガをした事例や発火・発煙・引火等重大な事故につながるおそれのある事例
※「ケガ」には、やけどやかぶれ、呼吸困難、具合が悪くなった等も含まれる。
1
3.調査結果
(1) 全体的な傾向
ア 回答者別にみたヒヤリ・ハットや危害の経験
図 1 は、回答者別に過去 5 年以内のヒヤリ・ハットや危害経験の有無を集計したものである。
3,000 人の回答者のうち、主に日常生活で使用する製品等で少なくとも1つ「危害経験があ
る」と回答した人は 1,387 人(46.2%)、危害経験はないものの、
「ヒヤリ・ハット経験があ
る」と回答した人が 602 人(20.1%)だった。これらを合わせると 1,989 人(66.3%)の回答
者が日常生活でヒヤリ・ハットや危害を経験していることがわかった。
図1
回答者別にみたヒヤリ・ハットや危害経験
N=3,000
どちらもない
33.7%
危害経験が
ある
46.2%
ヒヤリ・ハット
経験がある
20.1%
イ ヒヤリ・ハットや危害経験の場所別集計結果
図 2 は、日常生活で使用する各製品でヒヤリ・ハットや危害経験が「ある」と回答した人の
数を場所別に合計したものである。場所別でみると、
「台所」が最も多く、次に「屋外・ベラ
ンダ」が続いている。全体としては、6,346 件(ヒヤリ・ハット:3,404 件、危害:2,942 件)
のヒヤリ・ハットや危害の経験があった。
図 2 ヒヤリ・ハットや危害経験の場所別集計結果
N=3,000(複数回答)
0
500
1,000
1,500
2,000
(件)
台所(n=1,485)
603
屋外・ベランダ(n=1,475)
650
浴室・洗面所・トイレ(n=1,129)
居間(n=993)
寝室(n=267)
その他(階段・段差等)(n=997)
882
825
693
436
604
389
184 83
ヒヤリ・ハット
670
327
危害
総計:6,346 (件)
※本報告書における注意事項
・グラフ上の「N=○」(○は数字)は、アンケート対象者の数を示す。
・グラフ上の「n=○」(○は数字)は、アンケート対象者のうち、ヒヤリ・ハットや危害経験が「ある」と回答した人の数を示す。
・回答比率(%)は、少数第2位を四捨五入して表示している。
・グラフ上の「(○/○)」(○は数字)は、(ヒヤリ・ハット経験者の数/危害経験者の数)を示す。
2
ウ ヒヤリ・ハットや危害経験
図 3 は、調査全体でヒヤリ・ハットや危害経験者が多かったもの(60 人以上)を示している。
ヒヤリ・ハットや危害経験者が特に多いのは、
「靴・履物」
、
「自転車」
、
「段差」等転倒に関する
ものだった。高齢になると、転倒や転落によるケガが寝たきりの原因になることもあるので、十
分注意が必要である。
図 3 ヒヤリ・ハットや危害経験
N=3,000
0
包丁・スライサー
100
ラップ・ホイル
電子レンジ
浴
室
・
洗
面
所
63
かみそり
60
19 6
219
77
38
9
101
32
127
45
101
脚立・踏み台
81
44
33
88
テーブル・椅子
屋
外
・
ベ
ラ
ン
ダ
16
140
マット・すのこ
使いすてカイロ
29
163
浴槽
スリッパ
寝
室
58
1
58
18
43
68
浴室用椅子
居
間
アイロン
50
ベッド
50
19
41
23
62
布団・布団カバー
9
320
260
靴・履物
338
195
自転車
園芸用品
46
杖
45
109
15
48
303
段差(家の中)
そ
の
他
100
193
階段 (家の中)
ケガをしそうになった
40
66
床 (家の中)
500
145
38
電気ポット
電気シェーバー
400
104
9
129
鍋・フライパン・やかん
300
298
49
ガスコンロ
台
所
200
ケガをした
ドア(家の中)
33
ケガはしなかったが、発火・発煙・引火した
42
3
600
(人)
エ 医療機関の受診状況
図 4 は、危害経験のうち、
「医療機関を受診した」と回答した人が多かったもの(上位 10 製
品)を示している。
「自転車」が 129 人で圧倒的に多く、次に「階段」が 38 人、
「包丁・スラ
イサー」が 32 人と続いている。
図 4 医療機関の受診状況
N=3,000
0
50
100
(人)
129
自転車
38
階段
32
包丁・スライサー
30
靴・履物
床
19
ベッド
18
染毛剤
17
テーブル・椅子
14
段差
14
洗剤
150
14
オ 発火・発煙・引火
図 5 は、危害経験のうち、
「発火・発煙・引火した」と回答した人が多かったもの(上位 10
製品)を示している。最も多いのは、「ガスコンロ」(104 人)で、次に「電子レンジ」(58
人)
、
「オーブントースター」
(31 人)と続いており、調理器具が多くなっている。
図 5 発火・発煙・引火
N=3,000
0
50
150
(人)
ガスコンロ
104
58
電子レンジ
31
オーブントースター
アイロン
19
鍋・フライパン・やかん
18
テレビ
18
ヘアドライヤー
17
電気ストーブ
15
扇風機
14
石油ストーブ
100
10
4
(2) 台所
ア ヒヤリ・ハットや危害経験
図 6 は、主に「台所」で使用する製品のヒヤリ・ハットや危害経験者の数を示している。
ヒヤリ・ハットや危害経験が「ある」と答えたのは、
「包丁・スライサー」が 347 人(ヒヤ
リ・ハット:49 人、危害:298 人)で最も多く、次に「ガスコンロ」が 242 人(ヒヤリ・ハッ
ト:129 人、危害:113 人)
、
「ラップ・ホイル」が 183 人(ヒヤリ・ハット:38 人、危害:
145 人)と続いている。
「その他」としては、
「缶詰」
、
「食器」等があった。
また、
「台所」全体としては、1,485 件(ヒヤリ・ハット:603 件、危害:882 件)のヒヤ
リ・ハットや危害経験があった。
図 6 「台所」のヒヤリ・ハットや危害経験
N=3,000
0
100
200
300
400
(人)
298
49
包丁・スライサー(n=347)
ラップ・ホイル(n=183)
38
145
61
68
鍋・フライパン・やかん(n=129)
電子レンジ(n=117)
58
電気ポット(n=88)
63
洗剤(n=83)
24
オーブントースター(n=53)
20
食品(n=51)
113
129
ガスコンロ(n=242)
59
25
59
33
39
12
炊飯器(n=31)
19 12
ガス瞬間湯沸器(n=22)
19 3
健康食品(n=21) 11 10
換気扇(n=14) 9 5
食器棚(n=14) 11 3
浄水器(n=14) 12 2
冷蔵庫(n=10) 6 4
卓上型電気食器洗機(n=9) 8 1
ビルドイン式電気食器洗機(n=7)
ヒヤリ・ハット
(5/2) 2
その他(n=50) 15
危害
35
合計:1,485 (件)
5
イ ヒヤリ・ハットや危害経験時の具体的な内容
表 1 は、
「台所」のヒヤリ・ハットや危害経験時の具体的な内容を示している。
「包丁・スラ
イサー」の具体的な内容をみると、
「包丁・スライサーで手を切った」事例が多かったが、中
には、
「落とした包丁が足に刺さってケガをした、ケガをしそうになった」事例(表 1:1∼3)
もあった。しっかりと包丁を握れなくなったことや、包丁を床に落としてしまった時にすば
やく避けられないことがケガをする原因として考えられる。自分では大丈夫と思っても、鋭
利なものを扱う時は細心の注意を払い、落ち着いて操作することが必要である。
他には、
「ガスコンロを消し忘れた、鍋を空焚きした」事例も多く、中でも注目するものは、
「腰が痛くなり、居間に行って横になっていたら火をつけているのを忘れて鍋を焦がした」
という事例(表 1:16)である。類似事例として、
「鍋をコンロにかけていたのを忘れてうた
た寝した」
(表 1:7)
、
「フライパンで肉を焼いているのを忘れて寝てしまった」
(表 1:8)等
もあった。加齢に伴う体力の衰えから長時間立ったまま調理するのが辛くなり、少し休もう
として台所を離れたことが消し忘れの原因のひとつと考えられる。また、
「火を消したと勘違
いした」事例(表 1:9,10)もあった。これらの事故を防止するためには、ガスコンロは安全
装置付きのものを使用し、コンロのそばから離れるときは、短時間であっても必ず火を消す
ようにしなければならない。また、住宅用火災警報器が鳴って消し忘れに気が付いた事例
(表 1:8)もある。住宅用火災警報器は必ず取り付け、日頃から点検をしておくことが重要で
ある。
6
表1
「台所」のヒヤリ・ハットや危害経験時の具体的な内容
製品名
内容
回答者
1
包丁が滑って落ち、足のつま先に刺さった。
60 代
男性
2
包丁がまな板の上から落ち、足に突き刺さった。
70 代
女性
握力が落ちて包丁を取り落とし、足元に落としてしまいハッとした。
60 代
男性
4
指の力が衰えてきたため、野菜やフルーツの皮むき中に手を滑らし指を切る。先月
は、かぼちゃを切っていてかなり深く切ってしまった。指は動きがとても悪くなって
おり、長年使いすぎたため骨が曲がっている。
70 代
女性
5
立ったままの包丁使いが年齢的に大変になったので、椅子に座ったまま食卓テーブル
上で野菜を切ろうとしたところ、まな板が前方へずれ、親指を切ってしまった。
70 代
女性
3
包丁・
スライ
サー
スライサーを使って野菜をスライスしていて、指先も一緒にスライスしてしまった。
スライサーを使い始めて間もない頃だったので、思ったよりも野菜の進度が速くて指
先まで来ていることに気づかなかった。スライサーの刃もこんなに良く切れるとは思
わなかった。使いにくいので野菜を抑える部品を使わなかったのが原因だった。
鍋をコンロにかけていたのを忘れてうたた寝してしまった。焦げ臭いにおいで気が付
き火を消したが、鍋に接触しやけどをした。
フライパンで肉を焼いていたのを忘れ寝てしまった。肉が焦げて発煙したため火災警
報器が鳴り目を醒ました。
6
7
8
60 代
女性
70 代
女性
80 代
女性
火の消し忘れで水が完全に蒸発した状態まで放置してしまった。。大きめの鍋だった
ので火が確認できず、消したと勘違いした。
80 代
男性
ガスの火を消したつもりが、弱火のままの状態に気が付かず、そのまま鍋を下ろそう
とした際に手が熱い鍋に触れて鍋を落としそうになった。
70 代
女性
11
コンロの近くにあった油を拭いた新聞紙に引火し、気が付いた時には周囲の紙類に燃
え広がった。消火に往生したが、幸い事なきを得た。
70 代
男性
12
寒い朝に綿の起毛した上着を着てガスに鍋をかけて点火した瞬間、上着の表面に火が
回った。すぐ脱いで消したので大事に至らなかったが、心臓が止まりそうになった。
60 代
女性
9
10
ガス
コンロ
13
14
15
ラップ
・
ホイル
16
17
18
鍋
・
フライパ
ン
・
やかん
19
20
21
22
電子
レンジ
電気
ポット
その他
(缶詰)
着火がプッシュ式でわずかの力でプッシュできる。コンロを背に作業している時、弾
みで背中から尻の部分がプッシュボタンに触れて着火していた。気が付かないままに
キッチンから出て居間に行き、戻ったら火がついていて驚いた。
ラップがスムーズに切れなかったため、無理に切ろうとしてカッター部分で指を切っ
た。
70 代
男性
60 代
男性
ラップを使い終わり、ゴミの分別をするため、金属部分を取り外そうとして、カッ
ターで指を切った。
60 代
女性
腰が痛くなり、居間に行って横になってしまった。その結果、火をつけているのを忘
れて鍋を焦がした。
70 代
女性
深いフライパンで揚げ物をした後、その油をオイルポットに入れようとしたら、取っ
手のねじが緩んでいて、ポットを持っていた左手に熱い油がかかってやけどをした。
60 代
女性
長年使っているホーロー製の片手鍋でパスタをゆでるために湯を沸かしている時に、
取っ手が根元から取れて熱湯が手にかかり、やけどをした。取っ手の本体の取り付け
部分が腐食していた。
やかんのふたをきちんとしていなかったため、ポットにお湯を入れている時ふたが外
れて蒸気が手にかかり軽いやけどを負った。
おにぎりを温めようとして、オートではなく手動で加熱時間を設定する際、秒と分を
勘違いして長く過熱しすぎ、焦げた。焦げ臭いにおいで家族が気が付き、発火する前
に止めることができた。
電気ポットからお湯を出す時に手元が狂って手にお湯をかけてしまった。水疱ができ
るほどのやけどでしばらく通院した。
指の力が弱いので、渾身の力を振り絞って勢いよく引っ張ったところ、缶のふたのヘ
リで指を切ってしまった。
7
60 代
女性
70 代
男性
70 代
男性
70 代
女性
60 代
女性
(3) 浴室・洗面所・トイレ
ア ヒヤリ・ハットや危害経験
図 7 は、主に「浴室・洗面所・トイレ」で使用する製品のヒヤリ・ハットや危害経験者の数
を示している。
ヒヤリ・ハットや危害経験が「ある」と答えたのは、
「かみそり」が 279 人(ヒヤリ・ハッ
ト:60 人、危害:219 人)で最も多く、次に「浴槽」が 192 人(ヒヤリ・ハット:163 人、危
害:29 人)
、
「マット・すのこ」が 156 人(ヒヤリ・ハット:140 人、危害:16 人)と続いて
いる。
「その他」としては、
「カビ取り剤」や「足ふきマット」等があった。
また、
「浴室」全体としては、1,129 件(ヒヤリ・ハット:693 件、危害:436 件)のヒヤ
リ・ハットや危害経験があった。
図 7 「浴室・洗面所・トイレ」のヒヤリ・ハットや危害経験
N=3,000
0
100
60
かみそり(n=279)
140
マット・すのこ(n=156)
101
7
46
浴室用ブーツ(n=53)
屋内式ガスふろがま(n=23)
9
40
15
18
30
41
浴槽ふた(n=43)
16
77
38
浴室用椅子(n=110)
ヘアドライヤー(n=48)
29
163
電気シェーバー(n=115)
300
(人)
219
浴槽(n=192)
染毛剤(n=55)
200
18
2
5
洗濯機(n=13) 11 2
温水洗浄便座(n=4)
石油ふろがま(n=3)
浴室用電気乾燥機(n=2)
石油給湯器(n=1)
その他(n=32)
(2/2)2
(2/1) 1
(2/0)0
(1/0)
23
ヒヤリ・ハット
危害
9
合計:1,129 (件)
8
イ ヒヤリ・ハットや危害経験時の具体的な内容
表 2 は、
「浴室・洗面所・トイレ」のヒヤリ・ハットや危害経験時の具体的な内容を示して
いる。内容をみると、「かみそりや電気シェーバーで顔を切った」事例が多かった。「電気
シェーバー」の具体的な内容では、
「網刃が古くなって破れていた」という事例(表 2:8)が
多く、事故防止のためには使用前の点検が重要である。
「浴槽やマット・すのこで滑った」事例も多かった。
「浴槽」の具体的な内容の中には、
「浴
槽の縁につかまって立ち上がろうとしたら滑った」事例(表 2:3∼5)があり、事故防止のた
めには、手すりが必要である。また、
「マット・すのこ」や「浴室用椅子」の具体的な内容の
中には、
「体や床に残った石鹸等が滑って転倒した」事例(表 2:6,9,10)があった。これらの
事故を防ぐための対策として、浴室用の椅子は、底に滑り止めのついた大きめのものを選ぶ、
床に残った石鹸等の泡をしっかりと流す、等がある。
他に、「染毛剤」の具体的な内容をみると、皮膚がかぶれて医療機関を受診したものが多
かったので、使用前にはパッチテストを行うようにするとよい。
表2
「浴室・洗面所・トイレ」のヒヤリ・ハットや危害経験時の具体的な内容
製品名
1
2
かみそ
り
3
4
浴槽
5
6
7
8
9
10
マット
・
すのこ
電気
シェーバー
浴室用
椅子
11
染毛剤
12
13
14
15
浴室用
ブーツ
ヘア
ドライヤー
浴槽
ふた
16
洗濯機
17
温水洗
浄便座
内容
回答者
かみそりでひげを剃っていて、頬や顎を切ることがよくある。皮膚がたるんできたこと
が関係しているかもしれない。
風呂場で鏡を見ながらひげ剃りをしていた時、湯気で鏡面が曇り手元が見えなくなり左
頬に傷をつけてしまった。
風呂から立ちあがろうとした時に、風呂桶の底が滑って尻もちをついた。風呂の縁をつ
かんでいたが、つかみ方が弱かった。
70 代
男性
70 代
男性
60 代
男性
浴槽に入ろうとした時に浴槽の縁に手をつこうと思ったがツルンと滑って、浴槽の縁に
腰と首をぶつけ、お湯の中にプクプクと沈んでしまった。何とか自力で這い上がれた。
60 代
女性
浴槽から立ち上がろうと、浴槽の縁にかけた腕に力を入れた途端、手が滑って転倒しそ
うになってヒヤリとした。
60 代
男性
70 代
男性
60 代
男性
70 代
男性
マットにシャンプーが付着していたため、滑って転倒した。
浴室に入ろうとして、すのこの上に足を乗せたところ、すのこが滑って動き、危うく転
倒しそうになった。
20 年近く使っていた電気シェーバーの網刃が破れて顎と首筋の皮膚が切れ出血した。
洗い場の床に石鹸が残っていたため、座ろうとしたら椅子が後ろに滑り、尻もちをつい
た。壁に頭を打ちそうになり、ヒヤリとした。
60 代
男性
他の人が入った後で浴室に入り、椅子に座ろうとしたところ、床が濡れて石鹸分が残っ
ていたのと、椅子の端に座ろうとしたため、椅子が滑ってしまい、尻もちをついた。
白髪染めをしたら、頭皮の痛みを感じ、ふけがたくさん出た。皮膚科で治療をして治っ
たが、それ以来染毛はしていない。
今年初めて染毛剤を使用したら、かぶれた。医者に行って薬をもらった。後日パッチテ
ストを行い、合わない成分が含まれていることが分かった。
浴槽の掃除をしようとして浴室用ブーツを履いて浴槽内に入ったところ、ブーツが滑っ
て転び、捻挫をした。
20年位使用した古いドライヤーがコードの劣化で使用中にショート、発火した。すぐ
にコンセントから引き抜いたため、大事に至らなかった。
お風呂に入ろうとしてふたに手をかけたら、急にふたが滑って浴槽に手から突っ込み、
手足を浴槽の淵にぶつけた。1週間程湿布治療をした。
洗濯中に洗面所でドスンドスンという大きな音がするので慌てて電源を切ったが、暴れ
ている洗濯機に腰、足をぶつけた。壁の一部が壊れ、床も傷だらけになった。
60 代
男性
70 代
女性
60 代
女性
70 代
男性
60 代
男性
60 代
男性
60 代
男性
60 代
女性
誤動作したのかモーターが動き続け、異臭がした。
9
(4) 居間
ア ヒヤリ・ハットや危害経験
図 8 は、
「居間」等で使用する製品のヒヤリ・ハットや危害経験者の数を示している。ヒヤ
リ・ハットや危害経験が「ある」と答えたのは、
「スリッパ」が 159 人(ヒヤリ・ハット:
127 人、危害:32 人)で最も多く、次に「脚立・踏み台」が 146 人(ヒヤリ・ハット:101 人、
危害:45 人)
、
「使いすてカイロ」が 125 人(ヒヤリ・ハット:44 人、危害:81 人)と続いて
いる。
「その他」としては、
「じゅうたん」
、
「仏壇」等があった。
また、
「居間」全体としては、993 件(ヒヤリ・ハット:604 件、危害:389 件)のヒヤリ・
ハットや危害経験があった。
図 8 「居間」のヒヤリ・ハットや危害経験
N=3,000
0
50
32
45
101
脚立・踏み台(n=146)
81
44
使いすてカイロ(n=125)
33
87
テーブル・椅子(n=120)
60
50
アイロン(n=110)
扇風機(n=46)
27
19
掃除機(n=41)
30
11
16
19
9
24
照明器具(n=33)
石油ストーブ(n=30)
150
127
スリッパ(n=159)
電気ストーブ(n=35)
100
13
17
18
テレビ(n=25) 7
9
石油温風暖房機(n=21) 12
電気こたつ(n=18) 8 10
殺虫剤・防虫剤(n=18) 10 8
電気カーペット(n=14) 8 6
健康器具(n=10) 5 5
ヒヤリ・ハット
エアコン(n=9) 4 5
その他(n=33)
24
危害
9
合計:993 (件)
10
200
(人)
イ ヒヤリ・ハットや危害経験時の具体的な内容
表 3 は、
「居間」のヒヤリ・ハットや危害経験時の具体的な内容を示している。内容をみる
と、
「スリッパを履いていて転倒した」事例が多く、中には「自分が履いているスリッパをも
う一方の足で踏んだ」事例(表 3:1∼4)も多かった。スリッパと足のサイズが合わないこと
や、加齢に伴い足が動きにくくなることが原因と考えられ、この対策としては、スリッパでは
なく自分の足に合ったルームシューズを使用する方法がある。
他には、「脚立や踏み台から転落した」事例(表 3:6)も多かった。高いところからの転
倒・転落事故は、骨折など重大な事故になることもあるので、脚立や踏み台を使わないと取れ
ないような高い場所に物を置かないようにするのが望ましい。
注目するものとしては、
「寒いので家でもコートを着ていたら、ストーブの火がコートに燃
え移った」事例(表 3:20)があった。他にも「衣類の裾がストーブに付いて溶けた」(表
3:18,21)
、
「背中が焦げた」
(表 3:22)等の類似事例があるので、ストーブには近づきすぎな
いように気を付けなければならない。毛足が長い衣服や裾が広がった衣服を着ている場合に
は着火する危険性が高く、火がついた場合にも気付きにくいため、特に注意が必要である。
11
表3
「居間」のヒヤリ・ハットや危害経験時の具体的な内容
製品名
1
2
3
スリッ
パ
4
5
6
脚立・
踏み台
7
8
9
内容
自分の足のサイズより大きなスリッパを履いている。足を引きずって歩くようになっ
て、前に出した足の後方部分から出ているスリッパの端を後ろ足で踏んでしまい、よろ
けて転倒し、頭と腕を強打して青あざができた。
80 代
女性
立ち上がり、スリッパを履いて少し歩いたところで足がもつれ、片方の足でもう片方の
スリッパを踏んでしまい、危うく転びそうになった。
冬用のスリッパを履いていて、スリッパの端を踏んでつまずいた。保温のためについて
いる毛を誤って踏んだことが原因である。
70 代
女性
60 代
男性
スリッパを両方履いていて、振り向いた時、片方のスリッパをもう片方のスリッパで踏
んでしまい、捻挫をした。
60 代
女性
寒くなってフリースなどの起毛系の靴下を着用していると、スリッパに引っかかってス
ムーズに履けないことがある。履いたつもりで身体を動かしたら、スリッパをきちんと
履けていなくてつまずいてしまった。
踏み台に乗って書類を取ろうとしたら、バランスを崩して転落した。腰を打って動けな
くなり、外科病院に入院した。プラスチック製でつるつるした物だったし、冬の寒い時
期で靴下を履いていたせいで滑ったのかもしれない。
かなり古い脚立で閉じる時になかなか閉じることができず、指を挟んだ。
使いす
てカイ
ロ
回答者
腰痛になり、腰を暖めるために肌に直接貼ってやけどをした。直接肌に貼って使用して
はいけないことを知らなかった。
貼り付けるカイロだったが、夜うたた寝をしている時に、皮膚が急に熱くなって見てみ
ると、赤くなっていた。室内が暖かかったので、取り外すべきだった。長時間用であっ
たので、それ以降普通のカイロを買うことにした。
60 代
女性
80 代
女性
80 代
男性
70 代
男性
60 代
女性
10
立ち上がろうとして肘掛けに手を置いて体重をかけた時、手が滑って転んだ。
70 代
女性
11
長年使っているせいか、椅子にガタがきていて、座っている間に脚が外れて転倒した。
めったにないことなので油断していて体重をあずけていただけに、かなり驚き、腰を痛
めた。
60 代
女性
12
回転椅子に座る時、よろけて座り損ね、尻もちをついた。左側の腰部が1か月位痛かっ
た。その後、腰痛に見舞われるようになった。
60 代
男性
13
テーブルの上に乗って天井の蛍光灯を交換しようとしてテーブルの端に移った時、テー
ブルと一緒に自分も倒れて肘を打った。
60 代
男性
アイロンを消し忘れていたことを気付かず、アイロンを収納しようとして触ってしま
い、手をやけどした。
60 代
男性
シーズンの終わりに手入れをして、その作動を確認する時に、不用意に手に持っていた
ものを巻き込まれ、ケガをしそうになった。
70 代
男性
扇風機(卓上用)を一晩中回しっぱなしにしていたら、朝になって焼けた臭いがした。
その後、回転しなくなった。
60 代
男性
椅子
14
アイロ
ン
15
扇風機
16
17
掃除機
掃除機のコードに足を引っ掛けて転んだ。病気で入院した後だったので、足腰が弱って
いてバランスが取れなかった。
60 代
男性
18
電気
ストーブ
自分のうっかりミスで、コートの裾がストーブに付いてしまい、化学繊維だったので燃
えずに溶けた。厚手のコートだったので体は熱さを感じなかった。
70 代
女性
19
照明器
具
電球とソケットの間が割れていて、電球が落ちそうになった。気付かずに下にいたら頭
に電球部分が落下していたかもしれない。
60 代
男性
20
21
石油
ストーブ
22
23
元々寒がりだが、加齢とともにますます寒さを感じるようになった。部屋を暖房してい
ても「寒い寒い」を連発し、室内でもふかふかのコートを着ていた。子供が石油ストー
ブをつけていて、その前を通った時、長い毛足にストーブの火が燃え移った。自分では
気付かず、子供が気付いて事なきを得た。
ストーブに近づきすぎたか、通り過ぎる時に触れたかだと思うが、化学繊維の洋服の裾
が溶けていた。
着衣の背中が焦げた。
テレビ
普段は使っていない古いテレビがコンセントに差したままになっていており、埃がた
まっていて電源を入れたら火が出た。幸い棚を焦がしただけで済んだ。
12
60 代
男性
80 代
女性
70 代
女性
60 代
女性
(5) 寝室
ア ヒヤリ・ハットや危害経験
図 9 は、主に寝室で使用する製品のヒヤリ・ハットや危害経験者の数を示している。ヒヤ
リ・ハットや危害経験が「ある」と答えたのは、
「ベッド」が 73 人(ヒヤリ・ハット:50 人、
危害:23 人)で最も多く、次に「布団・布団カバー」が 71 人(ヒヤリ・ハット:62 人、危
害:9 人)
、と続いている。
「その他」としては、
「たんす」
、
「マットレス」等があった。
また、
「寝室」全体としては、267 件(ヒヤリ・ハット:184 件、危害:83 件)のヒヤリ・
ハットや危害経験があった。
図 9 「寝室」のヒヤリ・ハットや危害経験
N=3,000
0
25
50
ベッド(n=73)
31
電気毛布・電気あんか(n=54)
湯たんぽ(n=41)
21
布団乾燥機(n=3)
(0/3)
20
75
100
(人)
23
62
布団・布団カバー(n=71)
その他(n=25)
50
9
23
20
ヒヤリ・ハット
危害
5
合計:267 (件)
13
イ ヒヤリ・ハットや危害経験時の具体的な内容
表 4 は、
「寝室」のヒヤリ・ハットや危害経験時の具体的な内容を示している。内容をみる
と、
「ベッドから転落した」
、
「布団につまずいた」等の事例が多く、中には、
「ベッドから転落
し、そばにあった犬のゲージに足をぶつけてケガをした」
(表 4:3)や「近くにあった棚に顎
をぶつけて打撲した」
(表 4:8)等、周囲にあるものに衝突してケガをした事例があった。家
具等の配置の工夫が必要である。
また、
「電気あんかでやけどをし、完治するまで約 3 ヶ月かかった」事例(表 4:10)もあった。
高齢になると寒さに弱くなるが、電気あんかや電気毛布は、寝る前にあらかじめ布団を暖めて
おき、就寝時には電源を切らなければならない。
表4
「寝室」のヒヤリ・ハットや危害経験時の具体的な内容
製品名
内容
回答者
1
夜中に寝返りをした時にベットから転落して腰の骨を骨折し、約 2 ヶ月入院をした。
70 代
女性
2
ダブルベッドで夫婦で寝ているのですが、ベッドが狭いので落ちてしまった。ゴミ箱
がすぐそばにあったので、ゴミ箱に腰をぶつけて痛めた。
60 代
女性
3
柵のないベッドで起き上がる時に方向を間違えて転落した。そばにあった犬のケージ
に足をぶつけてすり傷ができた。
60 代
女性
ベッドから降りる時に、床の上に落ちてあった物を踏みそうになり、空足を踏んだた
めぎっくり腰になった。医療機関を受診し、完治するまで 1 週間程度かかった。
60 代
男性
5
部屋が狭いので、約30年前の学生用の木造ベッドを使用している。就寝時にエッジ
に近い部分に立ったら、ミシリと音がして横板の補強用の桟が折れて転落しそうにな
り、近くの整理たんすにつかまって事なきを得た。その後も手持ちの木材で補強し、
継続利用している。
70 代
男性
6
介護ベッドの両脇に付いている可動式手すりを倒した時に手を挟んだ。数日間、挟ん
だ手が痛かった。
60 代
男性
7
夜中にトイレに行く時、布団につまずいて、座卓の角に腰をぶつけた。医療機関に 2
回通い、今もあとが残っている。
70 代
女性
ベッドカバーの裾に足を取られてつまずいたが、たまたま正面に腰位の高さの棚があ
り、その縁に顎を強打して倒れた。打撲で内出血して完治するのに1ヶ月かかった。
80 代
女性
寒くて電気あんかを使用している。あんかの上に足を乗せて就寝したら、熱くて目が
覚めた。低温やけどのようで、足が赤くなっていた。
60 代
女性
電気あんかを使用して水ぶくれができ、医療機関を受診し、完治するまでに3ケ月程
度かかった。
70 代
男性
4
8
9
10
ベッド
布団・
布団カバー
電気
あんか
11
湯たんぽ
何十年と使っていた沸かすタイプの湯たんぽで低温やけどをした。若い頃は熱くなる
と自分でよけていたのに、70 歳を過ぎた頃から分からなくなり低温やけどをするよう
になった。
70 代
女性
12
布団
乾燥機
コンセントにつなげたところ火花が出て発火したので、使用を中止した。
60 代
女性
13
その他
(たんす)
昔から使っていた木製の高価格なたんすの重い引き出しを引きすぎて体の上に落と
し、打撲した。
80 代
女性
14
(6) 屋外・ベランダ
ア ヒヤリ・ハットや危害経験
図 10 は、主に屋外やベランダで使用する製品のヒヤリ・ハットや危害経験者の数を示して
いる。
ヒヤリ・ハットや危害経験が「ある」と答えたのは、
「靴・履物」が 580 人(ヒヤリ・ハッ
ト:260 人、危害:320 人)で最も多く、次に「自転車」が 533 人(ヒヤリ・ハット:195 人、
危害:338 人)
、と続いている。
「その他」としては、
「物干し竿」や「植木鉢」等があった。
また、「屋外・ベランダ」全体としては、1,475 件(ヒヤリ・ハット:650 件、危害:825
件)のヒヤリ・ハットや危害経験があった。
図 10 「屋外・ベランダ」のヒヤリ・ハットや危害経験
N=3,000
0
100
200
400
260
靴・履物(n=580)
園芸用品(n=155)
46
杖(n=60)
45
ショッピングカート(n=42)
39 3
車椅子(n=6)
(5/1)
歩行補助車(n=6)
(2/4)
58
500
600
(人)
320
195
自転車(n=533)
その他(n=93)
300
338
109
15
ヒヤリ・ハット
危害
35
合計:1,475 (件)
杖
ショッピングカート
15
歩行補助車
イ ヒヤリ・ハットや危害経験時の具体的な内容
表 5 は、
「屋外・ベランダ」のヒヤリ・ハットや危害経験時の具体的な内容を示している。
内容をみると、
「靴が滑って転倒した」
、
「自転車で転倒した」等、転倒に関する事例が多く、
中には、
「雨の降る日に横断歩道を渡ったら靴が滑った」
(表 5:3)
、
「雨の日、自転車がスリッ
プして転倒した」
(表 5:5)等の事例があり、路面が濡れている時には特に注意が必要である。
靴は足に合った滑りにくいものを選び、自転車は天候が悪い時には乗らないようにしなけれ
ばならない。
「杖」の具体的な内容の中には、
「杖先のゴムが減っており、歩道で滑った。
」(表 5:10)、
という事例があった。杖を使用する場合は、日頃から杖先の磨耗状況を点検し、磨り減って
いたら交換するなどの対策が重要である。
他には、
「園芸用殺虫剤が目に入った、吸い込みそうになった」事例(表 5:7,8)があった。
スプレーの操作時には、噴出し口の方向をよく確認するほか、噴出し口方向が合っていても風
向きなどによっては薬品を吸い込んでしまうこともあるので、ゴーグルやマスク、手袋を必ず
着用しなければならない。
表5
「屋外・ベランダ」のヒヤリ・ハットや危害経験時の具体的な内容
製品名
1
2
靴・
履物
3
内容
今までは何でもなく履けていた靴だったが年齢と共に足も小さくなったのかその日は靴
ずれが酷くて引きずるようにして帰った。なかなか治らないと思っていたら爪がはがれ
た。
70 代
女性
少し大きめな靴だったので、平らな道路で転びそうになり、前を歩いていた人にぶつ
かってしまった。
60 代
女性
新しい靴だったが、雨の降る日に横断歩道を渡ろうとした時に靴が滑って転倒した。
4
5
自転車
6
サンダル履きで近くのコンビニに買い物に出かけたら、歩道の敷石のわずかな段差に足
を取られ転倒し、すり傷を負った。
外出時、途中から雨が激しくなり、前方で車が渋滞していたので車道から歩道に上がろ
うとしたら、雨で歩道の縁石がはっきりと確認できずにスリップして転倒した。膝下骨
折で全治1ヶ月だった。
高齢になってバランスが取れなくなり、急なブレーキで転倒し、骨折した。
7
園芸用品
8
9
殺虫剤を噴霧しようとしたところ、穴の位置がよく見えずノズルを押したら自分の方へ
出てきた。目に入ったので何度も洗ったが、翌日まで違和感があった。
アメリカシロヒトリが大発生したので市販の殺虫剤を購入した。説明文が読みにくいの
で、老眼鏡を使ってひととおり読んだ。注意して使う気であったが、屋外には老眼鏡を
かけて出なかったので薬剤の噴霧口が見えにくくて、あやうく吸い込みそうになった。
杖先が滑って尻もちをつき、腰を打ってしまったので、病院で診察を受けた。
杖
10
11
杖先のゴムが減っていたので、雨上がりに出かけた時に歩道で滑った。
歩行補助
車
12
13
14
その他
(物干し
竿)
その他
(植木鉢)
回答者
座面を倒して座れるタイプの歩行補助車を使用中だが、ストッパーをかけそびれたのに
気が付かず、そのまま座ろうとしたらずるずると歩行補助車が後ろへ動き、転倒してお
尻を打撲した。
3 年位前、慣れていた歩行補助車に足の動きがついて行けなくなり、歩行補助車を押しな
がら前のめりに倒れ顔、体、手足にケガをした。それ以降は車椅子を使用している。
ベランダで洗濯ものを物干しに吊るして、それを高さ210cm位のところに上げよう
としたところ、失敗して棒が落ちてきて、頭を直撃した。年齢とともに腕の力がなく
なってきたせいだと思う。
マンションの狭いベランダに植木鉢をたくさん並べており、水やり等の時、踏みつけな
いよう歩こうとしたが、誤って足をぶつけ、転倒した。
16
60 代
女性
80 代
男性
60 代
男性
60 代
男性
70 代
男性
60 代
女性
80 代
女性
60 代
女性
70 代
女性
80 代
女性
60 代
女性
70 代
男性
(7) その他(階段・段差等)
ア ヒヤリ・ハットや危害経験
図 11 は、
「その他(階段・段差等)
」のヒヤリ・ハットや危害経験者の数を示している。ヒ
ヤリ・ハットや危害経験が「ある」と回答したのは、
「段差(家の中)
」が 351 人(ヒヤリ・
ハット:303 人、危害:48 人)で最も多く、次に「階段(家の中)
」は 293 人(ヒヤリ・ハッ
ト:193 人、危害:100 人)と続いている。「その他」としては、「階段(屋外)」や「マン
ションの廊下」等があった。
また、
「その他(階段・段差等)
」全体としては、997 件(ヒヤリ・ハット:670 件、危害:
327 件)のヒヤリ・ハットや危害経験があった。
図 11 「その他(階段・段差等)
」のヒヤリ・ハットや危害経験
N=3,000
0
100
200
303
段差(家の中)(n=351)
193
階段(家の中)(n=293)
66
床(家の中)(n=106)
ドア(家の中)(n=75)
その他(n=172)
300
33
48
100
40
42
75
400
(人)
ヒヤリ・ハット
97
危害
合計:997 (件)
17
イ ヒヤリ・ハットや危害経験時の具体的な内容
表 6 は、
「その他(階段・段差等)
」のヒヤリ・ハットや危害経験時の具体的な内容を示して
いる。内容をみると、「階段に置いていた衣類や床に置いていた新聞紙を踏んで滑った」
(表
6:5,9)等、足元に置いていたものが転倒の原因になった事例があった。事故を防ぐために
は、足元のつまずきやすいものを取り除き、整理整頓を行わなければならない。
また、
「階段」の具体的な事例の中には、
「階段が暗かったため、足を踏み外した」事例(表
6:3,4)があった。階段は、十分な明るさを確保し、手すりを利用して一段ずつ足の位置を確
認しながら上り下りすると足を踏み外す危険が少なくなる。また、
「スリッパが滑った」とい
う事例(表 6:6,7)も多かったので、階段ではスリッパを履かないほうが安全である。
表6
「その他(階段・段差等)」のヒヤリ・ハットや危害経験時の具体的な内容
製品名
内容
回答者
ベランダから居間に入る段差につまずいて転倒し、支えた手首を骨折した。
80 代
女性
床に這わせていたコードにつまずいて止まることができず、リビングと和室の5
センチほどの段差を左足の親指で蹴ってしまい、親指を骨折した。
60 代
男性
3
階段を下りる時、やや暗かったので最後の1段を踏み外し、右足首を捻挫した。
60 代
女性
4
夜、照明をつけないまま階段を下りようとして、階段を踏み外し転落した。
70 代
男性
階段が暗く、たまたま黒っぽい色の衣類が階段に置いてあるのに気が付かずその
上に乗り、足を滑らして転倒した。足首を捻挫して市販の湿布薬で治療した。
60 代
男性
6
スリッパが滑って階段下に落ち、壁に頭をぶつけた。
60 代
男性
7
普段は 2 階で生活しているが、その前日に天ぷらを揚げて、その油がスリッパに
ついていたらしく、朝、新聞を取りに行った際に階段で滑ってしまい、尾てい骨
を骨折した。
60 代
女性
8
居間に入る際、ドア内側に敷いたカーペットがはがれて転倒し、右手を骨折し
た。
60 代
女性
和室の部屋に読みかけの新聞やチラシが置いてあり、それをよけて通ろうと思っ
たが、よけきれずその上に乗ってしまい、滑った。
70 代
女性
荷物を抱えたまま無理な体勢でドアを押し開け入ろうとしたら、ドアが閉まって
指を挟んで血豆が出来た。重いドアなので開け閉め自体が大変だった。
60 代
女性
重いドアで開けると勝手に閉まるものなので気をつけてはいたが、買い物の荷物
を片手に持っていたため、力が入らず指を挟んでしまった。
80 代
女性
1
2
5
9
段差
(家の中)
階段
(家の中)
床
(家の中)
10
ドア
(家の中)
11
12
その他
(外階段)
仕事場の外階段が雨で濡れている時、滑ってすねを打ち、内出血をして足が腫れ
た。
60 代
女性
13
その他
(マンションの廊
下)
マンションの廊下に小雨が吹き込みわずかに濡れていたが、それが見えずに滑っ
て尻もちをつき、骨折して入院した。
70 代
女性
14
その他
(店のドア)
店に入る時、手動ドアを自動と間違え、体当たりして額を内出血した。
70 代
男性
18
4.まとめ
60 歳以上の男女 3,000 人を対象に、過去5年以内のヒヤリ・ハットや危害経験の有無を調査し
たところ、1,989 人(66.3%)が日常生活でヒヤリ・ハットや危害の経験が「ある」と答えた。
また、アンケート調査全体では、6,346 件のヒヤリ・ハットや危害の体験を収集し、
「厚着をし
ていたら衣服にストーブの火が燃え移った」
、
「腰痛があり、少し休もうとガスコンロのそばを離
れたら火を消し忘れて鍋を焦がした」等、シニア世代の身の回りには様々な危険が潜んでいるこ
とがわかった。
ヒヤリ・ハットや危害経験が多いのは、靴・履物、自転車、段差等により転倒した事例だった。
事故から身を守るためには、日常生活でこまめに体を動かして筋力やバランス能力の維持を心が
けるとともに、身の回りの整理整頓を行う等周囲の環境を整えておくことが大切である。
5.結果の活用
(1) 事故防止のポイントをまとめた「シニア世代の身の回りの事故防止ガイド」により、都民へ
結果を情報提供し、事故の未然防止を図る。
(2) 収集したヒヤリ・ハット体験を商品の安全性に関する調査を実施する際に活用する。
(3) 事業者団体等へ調査結果を情報提供する。
19
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