Comments
Description
Transcript
第3セクターの現状と課題 - 新潟県地域共同リポジトリ
新潟産業大学経済学部 『 第 紀要 N o .1 3 3セクターの現状 と課題』 出 井 信 夫 Ⅰ は じめに まちづ くりにおける 「 第 3セ クター」問題 は、古 くて新 しい優 れて今 日的なテーマである。 第 3セ クターは、 これ まで国土 開発、地域 開発、都市整備 な どの観点 よ り議論 されて きた。 とりわけ、昭和 5 0年代後半の東京へ の過度の一極集 中化現象 を是正す るため に、地方圏への人口 と産業の分散化 を推進す る問題 に関連 して、内需拡大 を図 る処方策の一つ として 「 民活」論議がなさ れた。もとよ り、この背景 には財政赤字 の累積 と貿易摩擦 の激化が国政の重要課題 とされていた中で、 政府 は高度経済成長期 に肥大化 した行政機構組織 の効率化 ・簡素化 によって財政支 出 を圧縮す るとと もに、民間の能力 と資金の活用 を有効 に図 ることによって、 これ ら種 々の課題 に対 して、同時 に解決 を図ってい こうとす る発想がその底流 にあったことは改 めて言 うまで もない。 これ らの議論の過程の中で、当面の緊急課題 を解決す る最有力 な方法の一つ として、官民 の共同出 資 ・出指 によって設立 された 「 第 3セ クター方式 による企業体」が新 たに脚光 を浴 びたわけである。 昭和 61年 5月 に成立 ・施行 された 『 民活法』以来、 『リゾー ト法』 や 『 頭脳立地法』 など、いわゆ る 「 地域整備法」 と呼 ばれる地域支援政策の多 くは、法律 を制定す る当初 の段階 よ り、事業開発整備 主体 は基本的 には第 3セ クターが想定 されていた といって も過言ではない。 近年、第 3セ クター方式 は、地方 自治体 においては、地域振興や地域活性化 関連のみな らず、教育 文化や社会福祉 関連、 さらには研究技術 開発関連 に至 るまで、広範 な多岐 にわたる事業分野で設立 さ れる傾 向にある。 第 3セ クターの第 3次 ブームの到来 といわれる所以である。 この ように、第 3セ クターは、国のみな らず、 とりわけ、 自治体行政 における地域活性化事業 を推 進す る際の有力 な開発事業手法の一つであると大 きな期待が寄せ られたわけである。に もかかわ らず、 一般 に、 この 「第 3セクター方式」 に対 して、十分 な理解が なされているとは到底言 い難いのが実情 である。 第 3セ クター方式 を採用す るにあた っては、 この事業方式 のメ リッ トやデメ リッ ト、あるいは他の 事業方式 との適否 などの比較 をす るな ど、種 々の角皮 よ り十分 に議論や検討が なされず に、安易 に設 立 される傾向が多 々み られる。 また、第 3セ クターの運営管理や経営管理 について も、不適切 な面が 多い と多 々指摘 されていることは周知 の とお りである。 これ は、 『 第 3セ クター論』 とも呼 ぶべ き理論的 な枠組み ・体系化が未 だ不十分である とともに、 実態調査等 に基づいた実証分析が極 めて少 ない ことに起 因 しているといえる。 経済学で体系化 されて いる ( 経済理論 ・経済原論) ( 経済政策) ( 実証分析) な どに相当す る体系化 が、 この分野では未だ未 整備であるため といえる。 その結果、第 3セ クター方式 に対 して、 さまざまな曲解が生 じた り、客観 的な評価が されに くい状況 となってい る。 ー 19 - 『 第 3セクターの現状と課題』 `この ような現況 を踏 まえ、本稿では、次 の諸点 を中心 に、` ` 第 3セ クター序論" を試みたい と考 え ている。 ( 1 ) 社会資本整備 とその変遷 ( 2) 社会資本整備 と公共民間の役割分担 ( 3) 第 3セクター事業の範囲 と設立可能性 ( 4) 第 3セクターの設立の現状 ( 5) 第 3セクターの増加の背景 とその代表的な事例 ( 6) 第 3セクターの成功 ・失敗事例 とその要 因 ( 7) 第 3セクターの法人設立の課題 ( 8) 第 3セクターの経営分析 ・実態分析 ( 9) 第 3セクターの基本的な設立運営課題 u o ) 第 3セクター研究の今後の方向 なお、紙数、時間等の関係 より、本稿では主 として( 4) -( 1 0 ) について論述す ることとす る.( 1 ) -( 3) に ついては、改めて別稿で論 じたい と考 えている。 Ⅱ 第 3セクターの設立の現状 1 「 地方公社」 と 「 第 3セクター」 ( 1 ) 「地方公社」の設立状況 「 第 3セクター」 は、現在全国 に相当数が存在 していると考 え られ るが、特 に第 3セクターに焦点 をあてて実態調査 された統計データがないため、現状では統計的に正確 な実数 を把握す るととは極め て困難である。 ところで、自治省では、「 地方公社」の実態 については、 3年 に 1度調査 している。この場合の 「 地 方公社」 とは、「 単独 の地方公共団体の出絹 ・出資割合が 25%以上の特別法人、民法法人、商法法人 を対象」 に、全国的に調査 された ものである( 1 ) 0 最 も新 しい地方公社 に関する調査 は、平成 5年 1月 1日付 けで行 われた ものである。 同調査 によれ 65 9公社である。 前 回平成 2年の調査時 における地方公 ば、現在、全国における地方公社の総数は 6, 社総数 は、5, 47 7公社であった。前回の調査 と比べ 、1, 1 82公社 、21. 6% と大幅 な増加 を示 している。 なお、今回の調査で は、「 単独の団体 の出資割合 が 25%未満 の法人」 について も 「 付加調査」 ( 従 前 の調査で は 25%未満の法人 は調査対象 とはされていなかったため実態が不明であった) として、 同時 に調査 された。 1つの自治体 の単独 出資 の割合が、 2 5%未満 の法人 は 1, 5 87法人である。 この 2 46公社等 となる。 ( 表 1-① 、表 1-②、図 1参照))0 両者 を合計すると、 8, ( 2) 地方公社 の業務内容 65 9公社 を業務別 ・形態別 に分類す ると、表 2に示す ように、全体 の 31. 6% 「 地方公社」の総数 6, にあたる 2, 1 02公社が、主 として公用 ・公益施設用地、住宅用地、内陸 ・臨海工業用地、流通業務用 地等 の土地の取得 ・造成等 を行 う 「 土地開発公社」 などの 「 地域 ・都市開発関係」 ( この うち土地開 発公社 は 1, 5 6 3公社) の地方公社である。 次 いで多 い順 にあげる と、「 教育 ・文化関係」が 9 0 7公社 -2 0- 新 潟 産業大学 経済学 部 N o .1 3 紀要 表 1-( D 地方公社数の推移 ( 25%以上出資) ( 構成比 :%) 区` 分 昭和 6 2年 lI j ]1日 平成 2年 1月 1日 ・平成 5年 1月 1日 公社数 構成比 増加率 公社数 構成比 増加率 公社数 構成比 増加率 1, 5 0 4 2 4 7 2, 9 6 9 都道府県 指定都市 市区町村 31. 9 5. 2 6 2. 9 1 6. 0 1, 7 0 0 7. 4 31 5 1 2. 1 3, 46 2 31. 0 5. 8 63. 2 1 3. 0 2, 1 1 1 2 7. 5 37 6 1 6. 6 4, 1 7 2 31. 7 5. 6 62. 7 2 4. 2 1 9. 4 2 0. 5 ( 付加調査分 を除 く) 表 1-② 付加調査 ( 25%未満出資) ( 構成比 :%) 区 分 単独 の地方公共団体 出資割合 単独 の地方公共団体 出資割合 2 5%以上 2 5%未満 ( 今回付加調査) 2, 1 11 3 7 6 4, 1 7 2 6, 6 5 9 都道府県 指定都市 市 区町村 計 合 85 2 1 0 4 631 1, 5 8 7 合 計 2, 9 6 3 48 0 4, 8 03 8, 2 46 ( 出所)自治省資料 図 1 地方公社の種類 0 2 0 4 0 6 0 1 00% 80 資5 % 以 上 出 2 の法 人数 合計 6. 659団体 出資25%未満 合計1 , 5 87団体 ン / / // + +/ ・ : . 1 枚 l : : : : : : : : : : : : : : KXXXXヌ ; ≡ ; ; ; ≡ ; ; ; ; ; 三 ; ≡ ; ≡ ; ≡ … . : . : . : . i +1 0 02 8 0 2 81 1 4388 1 417 2 1 39 7 そ の他 公 害 ・自 然 環 境 保 全 関 係 教 育 ・文 化 関 係 運 輸 ・道 路 関 係 生 活 衛 生 関係 社 会 福 祉 ・保 健医 療 関 係 商 工 関係 農 林 水 産関係 観 光 ・レジ ャー関 係 住 宅 ・都 市 サ ービ ス関 係 地 域 開 発 ・都 市 開 発 関 係 (出所 )自治省資料 ( 13. 6%)、「 農林水産関係」が 809社 ( 12. 1%)、「 観光 ・レジャー関係」が 673公社 ( 9. 6%) となっ ている。 この うち、土地開発公社 など特別法人である 「 法定三公社」 を除 く残 りの地方公社 について - 21- 『 第 3セ クターの現状 と課題』 業務別分類 をみると、「 教育 ・文化関係」が最 も多い。 次 いで多い順 に、「 農林水産関係」 「 観光 ・レジャー 関係」 「 社会福祉 ・保険医療関係」 「 地域 ・都市開発関係」 となっている。 一方、業務別分類 を法人形態別 にみると、「 民法法人」 の最 も多 い業務分野 は 「 教育 ・文化 関係」 89 2公社 ( 2 4. 0%)である。次 いで多い順 にあげると、「 社会福祉 ・保険医療関係」5 90公社 ( 1 5. 9%)、 「 農林水産関係 」 5 43公社 ( 1 4. 6%)、「その他」 393公社 ( 1 0. 6%) となっている ( 表 2参照)0 4公社 ( 27. 7%)であ ま声、「 商法法人」の最 も多い業務分野 をみると、「 観光 ・レジャー関係 」 35 る。 次いで、「 農林水産関係」 266公社 ( 20. 8%)、「 運輸 ・道路関係」 207公社 ( 1 6. 2%)、「 地域 ・ 都市開発関係 」 1 56公社 ( 1 2. 2%)の順 となっている ( 表 2参照)0 表 2 業務別 ・形態別地方公社数 ( 全国計)( 単独 の地方公共団体出資割合2 5%以上の地方公共) 民 財団法人 1 地域 .都市開発関係 2 住宅 .都市サー ビス関係 法 法 人 社団法人 商 小 計 株式会社 法 法 有限会社 人 . 小 特 計 別 法 人 計 住宅供給 公社 地方道路 公社 土地開発 公社 構成 構成 構成 . 構成 構成 構成 構成 構成 構成 構成 比 比 比 比 比 比 比 比 比 比 37 3 1 7. 7 1 0 0. 5 3 8 3 1 8. 2 1 5 4 7. 3 2 0. 1 1 5 6 7. 4 0 0. 0 0 0. 01. 5 6 37 4. 42. 1 0 21 0 0. 0 8 0 4 8. 5 3 1. 8 8 3 5 0. 3 2 61 5. 8 0 0. 0 2 91 5. 85 63 3. 9 0 0. 0 0 0. 0 1 651 0 0. 0 3 紋光 .レジ ャー関係 2 5 7 4 0. 3 2 6 4. 1 2 8 3 4 4. 4 3 4 65 4. 3 8 1. 3 3 5 45 5. 6 0 0. 0 0 0. 0 0 0. 0 6 3 71 0 0. 0 4 農林水産関係 2 4 6 3 0. 4 2 9 73 6. 7 5 43 6 7. 1 2 3 82 9. 42 8′ 3. 5 2 6 63 2. 9 0 0. 0 0 0. 0 0 0. 0 8 0 91 0 0. 0 5 商工関係 2 71 7 2. 3 9 2. 4 2 8 0 7 4. 7 6 社会福祉 .保健医療関係 5 7 9 9 7. 0 l l 1. 8 5 9 0 9 8. 8 7 生活衛生関係 1 4 9 7 4. 1 4 2. 0 5 3 1 7. 5 2 0. 7 8 運輸 .道路 関係 9 教育 .文化関係 1 0公害 .自然環境保全関係 1 1その他 0 0. 0 9 52 5. 3 0 0. 0 0 0. 0 ・ 0 0. 0 3 7 51 0 0. 0 7 1. 2 0 0. 0 7 1. 2 0 0. 0 0 0. 0 0 0. 0 5 9 71 0 0. 0 412 0. 4 7′ 3. 5 4 82 3. 9 0 0. 0 0 0. 0 0 0. 0 2 011 0 0. 0 5 5 1 8. 2 1 9 765. 01 0 3. 3 2 076 8. 3 0 0. 0411 3. 5 0 0. 0 3 0 31 0 0. 0 1 5 3 7 6. 1 8 71 9 6. 0 21 2. 3 8 9 2 9 8. 3 6 71 0 0. 0 912 4. 3 4 1. 0 1 4 1. 5 1 0. 1 1 5 1. 7 0 0. 0 0 0. 0 6 71 0 0. 0 0 0. 0 0 0. 0 0 0. 0 0 0. 0 0 0. 0 3 81 7 6. 8 1 2 2. 4 3 9 3 7 9. 2 1 0 22 0. 6 1 0. 2 1 032 0. 8 0 0. 0 0 0. 0 0 0. 0 6 71 0 0. 0 0 0. 0 49 61 0 0. 0 うち情報処理関係 6 1 4. 6 1 0 2 4. 4 3175. 6 0 0. 0 317 5. 6 0 0. 0 0 0. 0 うち国際交流関係 1 0 0 9 8. 0 0 0. 0 1 0 0 9 8. 0 2 2. 0 0 0. 0 2 2. 0 0 0. 0 0 0. 0 00. 0 1 021 0 0. 0 2 7 5 7 7. 9 8 2. 3 2 8 3 8 0. 2 6 91 9. 5 1 0. 3 7 01 9. 8 0 0. 0 0 0. 0 0 0. 0 3 5 31 0 0. 0 うちその他 計 4 9. 8 0 0. 0 9 071 0 0. 0 0 0. 0 411 0 0. 0 3, 3 2 7 5 0. 0 3 9 5 5. 93, 7 2 2 5 5. 91, 21 61 8. 361 0. 91, 2 7 71 9. 25 6 0. 841 0. 61, 5 6 32 3. 56, 6 5 91 0 0. 0 ( 出所)「 平成 5年度 地方公社総覧」 ぎようせい 表 3は、業務分野別 に、地方公共団体か らの出資割合の観点 より、前述の 『 地方公社総覧』 に紹介 されている各種 の統計資料 を再整理 した ものである。 単独 の地方公共団体の出資割合が25%以上の地 方公社 の状 況 をみ る と、「 地方公 共団体が1 00%全額 出資 してい る地方公社」 は、6, 659公社 の うち 7 60公社であ 3, 81 5 公社、5 7. 3%である。 この うち、最 も多い業務分野 は地域開発 ・都市開発関係の1, り、次 いで多いのは教育 ・文化関係の60 8公社 となっている。 一方、単独 の地方公共団体の出資割合が25%未満の付加調査 の地方公社 の状況 をみると、「 地方公 共団体が1 00%全額 出資 している地方公社等」 は、1, 587公社 の うち1 7公社、1. 日`である。 この両者 ー 22- 新潟産業大学経済学部 紀要 N o .13 の合計、すなわち単独の地方公共団体 の出資割合が 1 00%全額 出資 している地方公社等の合計 は、総 2 4 6公社等の うち 3, 8 3 2 , 公社等であ り、全体の 4 6. 5%に達 している。 計 8, 表 3 業務分野別 ・地方公共団体 出資割合別地方公社数 ( 1 ) 単独の地方公共団体出資割合25%以上の地方公社 ( 1 0 0%) 業務区分 地方公共団体出資割合 1.地域開発 .都市開発関係 2.住宅 .都市サービス関係 3.観 光 .レ ジ ャ ー 関 係 4.農 林 水 産 関 係 工 関 ■ 係 5.商 6.社会福祉 .保健医療関係 7.生 活 衛 生 関 係 8.運 輸 . 道 路 関 係 9.教 育 . 文 化 関 係 1 0.公害 .自然環境保全関係 l l .そ の 他 出資法人 地方公共団体全額出資法人 単独地方公 共団体出資 複数地方公 共団体出資 1, 7 6 0 88 1 95 81 89 21 0 8 0 7 0 6 08 2 9 1 92 1 39 2 4 1 9 1 8 1 8 75 44 1 5 2 4 3 3 4 地方公共団体5 0%以上1 00%未満 単独地方公 共団体出資 複数地方公 共団体出資 1. 89 9 11 2 21 4. 9 9 1 07 2 85 1 2 4 85 6 32 32 22 6 1 05 25 2 5 0 32 9 1 11 1 3 4 35 73 1 60 21 1 41 ( 2) 2 単 5%未満の地方公社 独 の地方 公 共 団体 出資 割 合 公 法 全 団 出体 資 額 共 人 以 未 1 出 00 ∼ 上 満 資 % 以 未 1 出 00 ∼ 資 上 満 % 未 出満 資 業務区分 地 5 0人 % 2 5% 5% 地方公共団体出資割合 ( 1 00方 %)法 法 人 2 法 人 1.地域開発 .都市開発関係 2.住宅 .都市サービス関係 3.観 光 .レ ジ ャ ー 関 係 4.農 林 水 産 関 係 工 関 係 5.商 6.社会福祉 .保健医療関係 7.生 活 衛 生 関 係 8.運 輸 . 道 路 関 係 9.教 育 . 文 化 関 係 1 0.公害 .自然環境保全関係 l l .そ の 他 2 0 1 0 1 3 1 1 3 2 3 6 2 3 9 ■1 4 1 0 1 9 2 0 5 1 5 4 2 3 56 3 4 1 6 3 46 6 4 46 77 5 0 25 3 21 6 9 4 59 l l 85 61 7 3 43 計 1 3 2 36 27 6 4 41 1 89 21 6 46 1 31 1 99 2 5 1 9 3 総 計 71 1 7 1 47 2 69 7 9 96 31 87 7 6 1 0 77 2. 1 02 1 65 6 37 8 09 37 5 5 9 7 2 01 3 03 9 07 6 7 496 数 人( 1 00%) 構成 体5 1 出資法人 00 0 %未満 %以上 構成 体 出資法人 5 0%未 構成 満 全 額 出発法 地 方公 共 比 比 団 地 方公 共 比団 1 0 0 1, 901 5 6 1 1 2 2 8 0 21 5 2 81 9 9 1 43 1 08 88 2 88 1 6 1 25 1 41 86 72 63 5 1 3 3 4 39 7 2 2 9 資料 :「 地方公社総覧」 ( 自治省地域政策室編、 ぎようせい) より筆者が作成。 -2 3- 2 7 l l 26 1 1 2 78 82 ll 5 8 3 9 4 5 2 以上出資 法人 民間5 0% 2 3. 1 1. 4 2. 6 1. 2 1. 3 3. 5 1. 5 1. 0 7. 7 0. 4 2. 8 1 3 8 3 8 2 79 45 0 2 03 2 2 6 47 1 40 2 01 25 1 98 1. 7 0. 5 3. 4 5. 4 2. 5 2. 7 0. 6 1. 7 4 2. 0. 3 2. 4 1 63 71 42 3 5 41 2 07 1 71 45 21 8 1 43 21 46 6 計 構成 比 2. 0 2, 2 02 2 6. 8 0. 8 2 21 2. 7 l. 1 5. 1 91 7 l 6. 6 1, 090 1 3. 2 2. 5 51 8 6. 3 2. 1 6 85 8. 3 0. 5 21 7 2. 6 4 2. 7 444 5. 1. 7 979 l l. 9 0. 2 80 0. 9 5. 6 89 3 1 0. 8 F 第 3セ ク ターの現状 と課題』 2 第 3セクターの定義 図 2は、公共サー ビスの提供主体 の観点 よ り、「自治体」 「 地域」 「 企業」の相互の関連性 について 整理 した ものである。 図 2 公共サービスの処理方式別供給主体の概念図 ジ ョイ ン トセ ク ター 第 5セ ク ター ( 出所)「 5 2年度神戸 市報告書」 また、表 4は、図 2の各セクター間の相互関連性 を基礎 に、・ その定義 ・概念お よび近年の代表的な 事例 をもとに、筆者が再整理 した ものである。 これ らの諸点 を踏 まえて、「 第 3セクター」 を定義すると、「 第 3セクター とは、公社、協会、株式 会社等の名称 の如何 にかかわ らず、①土地開発公社 などの特別法人である法定三公社 と②単独 または 00%全額出資お よび出摘 している地方公社等 を除いた残 りの法人で、かつ公 複数の地方公共団体が 1 的セクター ( 国、地方公共団体、政府関係機関等の特殊法人等) と民間セクター ( 民間企業等の営利 法人、農協 ・商工会議所 ・商工会 ・観光協会等の経済団体 や任意団体等 を含 む各種団体や民間の公益 法人等) との両者の共同出資 によって設立 された商法 に基づ く商法法人の株式会社等 ( 狭義の意味) に、 さらに共同出指 によって設立 された民法 に基づ く民法法人の財団法人等 を加 えた ( 広義の意味) 法人組織 ・団体である」 と定義で きる(2)。 - 2 4- 新潟産業大学経済学部 紀要 N o .1 3 表 4 各セクターの概念 事業主体 ?構成 第 セ クター 3 と ・地方公共団体等 ・民 間 企 業 等 代 表 的 な 法 人 形 態. ・財 株式会社 団法人 ・そのほか ・株式会社 ・そのほか セ クター 第4 ・住 地方公共団体等 民 と. 等 ・東 田法人 代表的 な事例 と 今後設立 され る可能性 の高 い事業主体 お よび分野 ・㈱ 石炭 の歴史村観光 p ・㈱ ルネ ッサ ンス棚倉、 ・㈱ ノヽ一千二一 ラ ン■ ド . ・越谷 コ ミ ノ ユニテ ィプラザ㈱ な ど、多数 あ る ・財団法人地域 活性化 セ■ ン夕-な ど ・安比総合 開発㈱ ・そのほか .財 団法人 (まちづ くり財 団 な ど). ・株式会社 ( 市街地 開発事業 な ど) ・公益信 託 ( 助成財 団 な ど) ・協 同組合 ( 工場 団地 の共 同福利厚生施設 な ど) な どのケース. が想定 される ・㈱ 七 日町再 開発 ビルな ど ・そのほか .財 団法人 ( 生 きがい事業団 な ど) ・公益信託 ( 区画整理事業 に伴 うまちづ くり信託 ・社 団法人 シルバ ー人材 セ ンターな ど な どのケ-えが想定 され る ・そのほか ・. 公益信託 セ クター 第5 ・住 民 間 企 民 と 業 等 ・財団法人 ・そのほか セ クター ジ ョイ ン ト ・住 民 地方公共団体等 間p民 企 と 業 等 ・株式会社 財 団法人 ・公益信託 コ ミュニテ ィ .フ ァン ド- さざんか 、 . きつちゃん教 育基金 な どの公益信託 ` まちづ( くり トラス ト ・公益信託 そのほか あだち .財 団法人 助成財団や福祉厚生施設 な どの管理 .財 団) ・財 団法人富士記念財団 な ど ・株式会社 (まちづ くり .む らお こ し .地域活性 化事業 や人材バ ンク事業 な ど) ・また、 ( コ ミュニ テ ィー .ビジ ネス -地域 の ス モール ビジネス) な どのケースが想定 され る ・財 団法人船橋緑 の基金 な どの緑化対策基金 ・財団法人津南地域活性化 セ ンター ( 新潟県津南 町) ・㈱ ふ るさと企画 ( 岐阜県東 白川村) ・㈲ 美濃 白川 ふ るさと開発 ( 岐阜県 白川町) ・㈱ 黒壁 ( 滋賀県長浜市) ・そのほか .財 団法人 ( 公共施設管理財 団等) ・株 式会 社 (まちづ く り事 業 .市 街 地 再 開発 部 ・財団法人 まつ ど街 と水辺 の緑化基金 莱 .社会福祉事業 .教 育文化 な どの 関連事業 な ど) ・公益信託 (まちづ くり公益信 託 .環境基金) ・また、 ( コ ミュニ テ ィー .ビジネス -地域 の ス ( 出所) 出井信夫 「まちづ くりと第三 セ クター」 「とみん広聴」平成 5年 2月 を加筆 -2 5- 『 第 3セクターの現状 と課題』 3 第 3セ クターの設立状況 全 国 の第 3セ クターの設立状況 を把握 す るには、前述 の 「 地方公社調」 ( 『 地方公社総 覧』 参照) が 最 も的確 な統計資料 としさえる。 現 時点 で は、第 3セ ク ター に関 して全 国的 な規模 で調査 された統計 デー タ資料 はほか にみいだす こ とがで きない。 659公社 あ る。 この うち、( D土 地 開発公社 な どの法定三公社 は 前述 した ように、地方公社総数 は 6, 1, 660公社 あ る。 また、② 地方公共 団体 が 100%全額 出絹 お よび出資 してい る民法法人 は 2, 108公社 、 155公社 あ る。 商法法人 は 47公社 、計 2, 一方、単独 の地方公 共 団体 の出資割合 が 25%未満 の法 人 は全 国 に 1, 587法 人 あ る。 この うち、単 独 の地方公共 団体 にお け る出資 比率 は 25%未満 で はあ るが複 数 の地 方公 共 団体 か らそれぞ れ出資 さ れてい るため、結 果 と して複 数 の団体 か らの出資割合 を合計 す る と 100%全額 が地方公共 団体 か ら出 損 ・出資 されてい る ことになる と認 め られ る法 人 は、民法法人が 16法 人、商法法 人が 1法 人、計 17 法人 あ る。 したが って、前述 の定義 に基 づ く 「第 3セ ク ター」 は、 この地方公社等 の総合計 8, 246公社等 の う ち、① 特別法人 であ る法定三公社 1, 660公社 と、② 単独 または複 数 の地方公共 団体 が 100%全 額 出指 ・ 出資 して い る地 方 公 社 等 の法 人 ( 民 法 法 人 2, 124、 商 法 法 人 48の合 計 2, 172法 人) の両 者 ( 総計 3, 832公社等) を除 いた残 りの地方公社等 ( 商法法人 十民法法 人 -狭義 の第 3セ ク ター +広義 の第 3 セ クター)であ る。この統計 デー タよ り、全 国 にあ る第 3セ クターの総数 は、平成 5年 1月 1日現在 、 246公社等 の うち、 53. 5% にあた る 4, 41 4法 人 あ る と推 定 され る ( 表 5参照)0 地方公社等 の総合計 8, 表 5 第 3セ クターの設立状況 特別法人 民法法人 商法法人 地方公社 ( 単独の地方公共団体の出資割合 25%以上) ( うち、1 00%全額を公共団体が出資 している法人) 1, 66 0 3, 7 22 ( 1, 66 0) ( 2, 1 08) 第 台セクター 1. 2 7 7 ( 47 ) 計 6, 65 9 ( 3, 81 5) 1, 61 4 1, 2 3 0 2, 8 4 4 付加調査地方公社 ( 単独の担方公共団体の出資割合 25%未満) 47 2 1, 11 5 1, 5 87 ( うち、1 0 0%全額を公共団体が出資 している法人) ( 1 6) 第 3セクター 地方公共団体の出資法人の合計 合 計 0 0%全額を公共団体が出資 している法人の合計) ( うち、1 (1) ( 1 7) 45 6 1, 11 4 1, 5 7 0 1, 66 0 4, 1 9 4 2, 39 2 8, 2 46 ( 1, 66 0) ( 2, 1 2 4) ( 48) ( 3, 832 ) ( 出所)「 地方公社総覧」 より作成 ー 26 - 新潟産業大学経済学部 紀要 No .1 3 Ⅱ 第 3セクターが増加 した背景 と第 3セクターへの公共 ・民間の参画動機 1 第 3セクターが増加 した背景 1 第 3セクターが近年急激 に増加 した背景 には、次 の ような理由があげ られる。 第 1には、 まちづ くり、む らお こ しなど地域活性化 に取 り組 む自治体が第 3セ クター方式 を積極的 に取 り入れた ことがあげ られる。 特 に過疎 自治体 な どで は、 むらお こ し事業や地域活性化事業 などを 推進す るにあた り公益的 な事業 と収益的な事業 を推進す るための手段 、 また有能 な民 間の人材 な どを 柔軟 に採用す る手段 として導入 された。 第 2には、民活法の成立以来、社会資本整備や公的事業分野へ積極的に民間活力の導入 を図 るため に、種 々のイ ンセ ンテ ィブが付与 されたことがあげ られる。事業推進主体が第 3セ クターの場合 には、 国や 自治体 の補助金、NTT株式売却益 に よる無利子融資、開銀 ・北東公庫 な どの低利融資、固定資 産税等 の軽減措置 な ど種 々の支援策が受 けられる。 これ らの優遇措置が第 3セ クターの設立 に一層拍 車 をかけた。. 第 3には、 リゾー ト開発事業等 の ような大規模 な事業開発 には自治体の財政投資 だけでは不十分で あるため、民間企業の豊富 な資金や ノウハ ウ等 の導入 を図 ることによ り事業の成長性 を確保す るとと もに、同時 に経営 リスクを回避 しようと考 えられた結果採用 されたことがあげ られる。一方 の当串者 である企業 もバ ブル期 にあ り、潤沢 な資金 と人材 を新規事業 や ビジネスチ ャンスの拡大、経菅 の多殉 t 化 を図 る手段 の一つ として積極的に探 り入れた。特 に、地元地権者 や公官庁等の折術 など、煩雑 がJ 務手続 きや諸条件 をクリア しなければな らないことを考 えた場合、民間企業が単独で串業r 那 己す るよ りは第 3セ クター方式 の方がスムーズに事業展 開が行 えると判断 された ことによる。 この ように、事業化 の推進 にあたっては、 自治体側 と民間企業側 の両者の開発の思惑が合致 した結 果、第 3セ クター方式が増加 したのである。 2 第 3セクターへの参画動機 表 6 第 3セクターの設立の動機 ・参画 目的 ( 公共側) ・地域活性化 .地域振興 (まちづ くり、 む らお こ し) ・郡市基盤整備 ・産業振興 ・雇用 の機会の参加 ・所得確保 の機会 ・民 間の経営 ノウハ ウの活用 ・民 間の. 資金活用 ・民 間の人材活用 ・遊休地等肘 原の活用 ( 矧l u側) ・新規申業機会の確保 ( ビジネスチ ャンス) ・リス トラの一環 ・経営 ノウハ ウの活用 ( 提供、吸収) ・溌金活用 ( 提供、吸収) ・人材活用 ・遊休地等: Zi 源の活用 ・企業 イメー ジの向上 ・地方公共団体 との関係強化 ・迅速 な許認可叫務 の推進 -2 7- F 第 3セクターの現状と課題』 第 3セクターに参画す る際の公共側 と民間側の動機 をみると、基本的に両者の動機づ けは異なる場 合が多い。地元企業以外 の大企業が参画す る場合 には、特 にその傾向が強い。表 6は、両者の第 3セ クター-の基本的な参画動機 を整理 した ものである。 したが って、第 3セクターを設立 ・運営する際 には、 この ように公共側 と民間側の出資 ・参画の動 機の相違 を前提 に、事業の仕組み、両者の役割分担、経営採算性の考 え方 などについて、合意形成 を 図ることが第 3セクター事業 を成功 させ る大 きな鍵である。 Ⅳ 第 3セクターの成功事例 ・失敗事例 とその要因 1 成功事例 と失敗事例 ( 1) 成功事例 第 3セクター事業の設立 は、鉄道や リゾー ト事業のみならず、福祉 や環境保全関係 など事業分野や 事業内容 は多岐 にわたる。 第 3セクター事業 は、駅前再開発事業や商業施設 ・文化施設等が一体的に 整備 された大規模 な複合施設整備か ら農水産物 など、地域資源の有効活用や地域産業の振興 を図る目 的で設立 された地域密着型の第 3セクターに至 るまで、事業規模 は大小 さまざまである。近年の第 3 セクターの事例 をみると、一般的には、大規模 な開発投資資金が必要 とされる資本投資型の第 3セク ター よりも、事業規模 は小規模 な地域密着型の第 3セクターの方が堅実経営が行 われ比較的成功 して いるといえよう(3)0 ここでは、比較的小規模ではあるが地域活性化 に大 きく貢献 している代表的な成功事例 をい くつか 紹介 しよう。 福井県名田庄村の 「 ㈱名田庄商会」 は、名田庄村、農協、森林組合 など 5団体 の出資 によって地域 産業 おこ し母体、村内-の利益還元 を優先することを目的に昭和 59年 7月 に設立 された。名田庄商 会の事業 は、大別す ると、公共的事業 と民間的事業の 2つか らなる。公共的事業 とは、地域活性化事 業 に関わる企画立案や PR活動 ・生産者支援 など、事業全般 にわたる支援策 を指す。民間的事業 とは、 売れるものを 特産品開発、加工食品の製造、通信販売や物産館の経営 など、流通販売部 門である。 「 売れるだけつ くれば、確実 に経営採算 は採 れる」 と語 る営業部長 は、メーカーに勤めていた地元出身 村民商社」 「 村おこし商社」 と呼 ばれる名田庄商会 は、農協等生産者の のUター ン組 の一人である。 「 協力 と多 くの村民の参加 を得て、 過疎村の活性化 を推進す る事業母体 として大 きな期待 を集めている。 一方、岐阜県東 白川村の 「 ㈱ふ るさと企画」 は、村 ぐるみ会社 として村民が参加 した 「ジ ョイン ト ふるさと創生事業」 の資金 を活用 した 「 つちのこ探 し セクター」 ( 自治体 +企業+住民)である(4)0「 の村」 とマスコ ミに紹介 されるなど、ユニークな村づ くりで知 られている。㈱ ふ るさと企画の設立構 7年 に策定 された 「 東 白川村地域振興計画」 に端 を発 している。 この振興計画では、新 想 は、昭和 5 しい村づ くりの方向について、村 の物的資源、人的資源、社会的資源 を結 びつけ、付加価値化 して地 域 を活性化す るための組織 「 村 ぐるみ会社」の設立が提案 されていた。 この提案 に基づいて、その後 建築協 同組合、特産品の開発 など地域資源 を活用す るため、種々の事業が着実 に展開 された。そ して 1 0年後、その集大成 として、「 村 ぐるみ会社」の㈱ ふ るさと企画が設立 された。 この会社設立の 目的 は、( D地域の産業の拡大、②就業機会の拡大 と安定、③地域の活力の醸成 を図ることにある. 主 な事 -2 8- 新潟産業大学経済学部 紀要 N o .1 3 業 としては、①農産物の生産、加工、販売、②公共施設の管理受託、③ イベ ン トの企画運営、④旅館、 料理飲食の提供、( 9その他か らなる。 また、岐阜県明宝村 には、第 3セクターが現在 5社 ある(5)0「 設立 した ら必ず成功 させ る」 とい う 村長の強い経営方針の もと、現在全ての会社が黒字である。 各社 の事業概要 は次の とお りである。 ① めいほう高原開発㈱ :昭和 6 3年 3月に設立 ∫スキー場の経営。 ② 3年 3月に設立、ハム等の食肉加工 ・販売。 明宝物産加工㈱ :昭和 6 ③ 明宝温泉㈱ :平成 2年 3月 に設立、温泉掘削、村設置の露天風呂の経営。 ④ ㈱明宝マスターズ :平成 2年 1 2月に設立、物産館、喫茶店、バーベ-キューセ ンターを経営。 、 ( 参 ㈱明宝 レデ ィース :平成 4年 7月設立、農産物加工、飲食店経営等の経営。 さらに、現在村では 6社 目の第 3セクターの設立が計画 されている0 他方、旧国鉄の特定交通線、すなわち赤字不採算路線が第 3セクターに引 き継がれて経営 されてい る鉄道 は、全国 に 39社 ある。 元々、収入 を経費が大幅 に上 回る赤字路線である。 第 3セ クター方式 に変更 されたか らといって、す ぐに収支が好転するわけではない。ある意味では、経営赤字 は当然の 結果であるともいえる。 この第 3セクター方式の鉄道会社の中で、数少 ない黒字経営 を行 っている一 つに㈱樽見鉄道がある(6)0 9年旧国鉄樽見線 を引 き継 ぎ、平成元年 3月に棒兄 まで路線が延長 された。同社 は、 樽見鉄道 は昭和 5 全国に先駆 けて レールのバス導入、 ワンマ ン運転 をは じめ種 々の合理化 を推進す る一方、薬草列車な どユニークな企画列車の運行 を通 じて旅客誘致 を図るなど、経営努力 により増収、黒字経営 を堅持 し 赤字経営 になれば会社 自体がな くなる。 会社 を存続す るためには、何 として も黒字経営 を ている。 「 続 ける必要がある」 と、社長 は決意 を込めて語 っている。 これ らの事例 は、" 地域資源 を有効 に利活用 して展開 され る地域 に密着 したスモール ビジネス型の 典型的な第 3セクター"の成功事例 として高 く評価で きる。 これ ら過疎 自治体 が設立 した第 3セクター会社の資本金 には、「 ふるさと創生事業一億円」 の一部 が原資 として利用 されていることは、あまり知 られていない。当時、仝 自治体 に対 して 1億円を交付 す ることは、バ ラマキ行政であ り総 じてムダであ り意味のない施策であると批判 されたが、使途 につ いては自治体 に自らの創意工夫で行 う施策の重要性 を認識 させ ることには大いに役立 った といえる。 地域住民か らもさまざまなアイデ ィアがだされるなど、その資金活用方法 を通 じて自治体行政への関 心 と財政支出の在 り方 に対す る一般住民の高い関心 を集めた とい う意味では、極めて重要 な役割 を果 た したわけである。 自治体の財政支出について、 これほど注 目された例 はこれまでなかった といって よい。 これ ら過疎の 自治体で は、「 地域産業振興や人材育成基金」 などに加 えて、第 3セ クター会社 の資本金の一部 に出資金 として利用 された とい う意味では、「 ふ るさと創生資金 1億 円」 は大 きな役 割 を果 た した と評価で きる。 ・表 7は、 リゾー ト開発事業 において、典型的な第 3セクターによる事業開発方式 を中心 に、土地信 託方式、借地方式 など、各種 の事業開発方式の代表的な事例 を紹介 した ものである(7)0 施設整備主体 と管理運営主体の関係」 より、開発 プロジェク ト事業の分類 を行 っ また、表 8は、「 ー2 9- 『 第 3セ クターの現状 と課題』 表 7 リゾー ト事業開発の類型化 リゾー ト名 用地の取得方法 土地 .建物の所有形態 運営管理主体 ス棚倉 3セクター .㈱ ルネサ ン リー. ト、地方債 デ イング .プロジェク 第 ルネサ ンス棚倉 ( 福 島県) 民有地/全面買収 棚倉町所有 ハ-モニ-ラ ンド( 大分県) 公有地 .民有地/ 全面買収 主な資金調達法 .モデル事業 大分県、㈱ハーモニーラン 開銀 NTT無利子融資、都 ド所有 市公園整備事業 グリー ンピア津南 ( 新潟県) 公有地/全面買収 年金福祉事業団所有 大規模年金保養基地構想 第 3セ ク ター .㈱ ハ「 モ ニーラン ド ( 帥年金保養協会 安 比 総 合 開発 ( 岩 手 県) 国有地/借地 安比総合開発㈱所有 ( 国有 北東公庫等か らの協調融資 民有地/全面買収 地は借地) 第 3セクター .安比総合開 発㈱ 紀伊長島 レクリエーシ ョン 民有地/全面買収 都市 ( 三重県) 三 重 県、紀 伊長 島 レク リ 大規模 レクリエーシ ョン都 エーシ ヨン都市開発㈱所有 市構想 第 3セクター .紀伊長島 レ 石 光所有 夕張市、㈱石炭の歴史村観 一般財源、地方債等 史村観光 第 3セクター .㈱石炭の歴 クアハ ウス碁店 ( 山形県) 公有地/全面買収 村山市所有 一般財源、地方債等 ㈲村山市余暇開発公社 クアハ ウス津南 ( 新潟県) 公有地/全面買収 津南町所有 財源 地域総合整備事業費、一般 ( 抑津南地域活性化セ ンター 炭 の 歴 史 村 民有地/全面買収 クリエーシ ョン都市開発㈱ 盛岡手づ くり村 ( 岩手県) 民有地/全面買収 ㈲盛岡地域地場産業振興セ 高度化事業資金、県 .市助 ( 抑盛岡地域地場産業振興セ ンタ-各工房所有 成金 ンタ- 開発㈱ 第 3セクター .松原湖高原 小海 リゾー リエ ックス トシテ ( ィ 長野痕) . 財産区/借地 松原湖高原開発( 榊借地 開銀 NTT無利子融資 河 津 リ ゾ- ト ( 静 岡 県) 借地 財産区 .民有地/ 河津 リゾー ト㈱借地 銀行借入予定 第 ト㈱ 3セクター 干 .河津 リゾー 青野運動公苑 ( 兵 庫 県) 公有地/土地信託 兵庫県所有 土地信託制度 ㈱ アオノリゾー ト 家族旅行制度 部観光( 第 3セクター 粕 .吉備高原建 自社資金、借入金 ㈱ ホテルアルファ ( 槻アルファホーム たけベ の森 ( 広 島 県) 財産区/全面買収 ㈱西洋環境開発所有 アルファリゾー ト.トマム 民有地/全面買収 ㈱ ア ル ウ 7 .コー ポ レ( 北海道) シ ヨン所有 ( 出所)出井信夫編著 「リゾー ト事業戦略研究資料編」 ( 総合ユニコム) * 同社 は解散 したので現在 は存在 しない。 表 8 施設整備主体 ・管理運営主体の組 み合 わせ 施設整備主体 管理運営主体 公 共 ■ ( 財 第 団等 3セ を含 クター む) _ .公 共事業 第 3セ ク ター - 民 間 ( 間接経営塾) 第 3典型 セ ク的 ター事 な 業 -3 0- - 新潟産業大学経済学部 紀要 No .1 3 図 3 第 3セクターの事業化類型 (タイプ 1) 事業主体 :第 3セ クター ( ジ ョイン トセクター) ( 計画立案-施 設整備 - 管理運営-第 3セ クター) G. L. (タイプ 3) 事業主体 :施設整備個別事業主体 運営管理 :第 3セクターの一体的な管理 ( 計画立案一施設整備-個別事業主体) 舞 、必 共 計画立案-施設整備-管理運営 -第 3セクター プ2) 業主体 :公共主導 .公設民営型 †画立案一施設整備-公共) (夕 事 ( 冨 土地の取得形態 (日理 3 セクター 管理運営-第 昌一 ク の 体 目理) プ4) 業主体 :施設整備個別事業主体 十画立案一施設整備-管理運営-個別卒業 ( L 夕 . 事 ( 言 例 企画立案一施設整備-個別事業主体 ( 公共) ( 第 3セクター) ( 民間) G. 土地の取得形態 ( 管理運営-第 3セクター) L. G. 管理運営-第 3セクター 計画立案一施設整備-公共 土地の取得形態 クー 体) ・民間 公共 第 3セク 個別事業主体 企画立案一施設整備-管理運営G. L. ( 公共卒業) 欄 3セクター事業) ( 民間中葉) 土地の取得形態 地方財務」 ( 出所) 出井信夫 「節 3セ クター に よる観光 レク リエーシ ョン ・リゾー ト開発 の現状 と課題 」 「 1 9 93年 7月号 た ものである。 計画立案一施設整備 一管理運営) に至 るまでの事業開発の進捗状況 図 3は、第 3セ クターによる ( に応 じて、公共 と民 間の役割分担 お よび事業主体 の区別 について、事例 に基づいて典型的な事業分担 の方法 を類型化 した ものである。 ( 2) 失敗事例 第 3セ クターの失敗事例 については、最近のマスコ ミに も種 々の事例が紹介 されている。 後述す る 秋田太平山 リゾー ト開発構想 な どはその典型的な事例であるといえる。 ちなみに、平成 5年当時の各 新聞社 の特集記事 のテーマ をみると、次 の ように、各紙 とも総 じて第 3セ クターには批判的な論調が 目立つ、 。 生か し切 れぬ第三セ クター」 と超 して、設立増 える一途、 朝 日新聞の主張 ・解説 (9・9) には、「 " 失速 も"、挫折 目立つ リゾー ト開発、バブル後、巨額負債 も、欠落す るビジ ョンと続 く。 日本経済新 開の列島 ワイ ド (9・2 0 ) には、「第三セ クター レジャー施設」 と遺 し、苦悩す る自治 体主導 ・経営方針違 いで明暗、足 りぬ営業努力、地元客 も集め成功 と。 失敗事例 と成功事例 を紹介。 .ゲ ンダイ (9・2 9 ) は、「 乱造続 く第 3セ クター崩壊 の後始末」 と大見 出 し 。 赤字 タレ流 しで も潰 さず税金で尻ぬ ぐい、6, 6 0 0法人の 8割が行 き詰 まりと。 これ らのマスコ ミ報道 には一部誤解 や曲解 な どがみ うけ られる もの もあるが、いずれに して も第 3 -3 1- 『 第 3セ クターの現状 と課題』 セクターの安易 な設立や暖味 な経営責任 に対 して強 く警鐘 した ものであ り、 これ らの批判等 に対 して は謙虚 に耳 を傾 ける姿勢が最 も重要である。関係者 においては、 これ らの指摘 に対 しては、成功へ導 く鍵 ・ヒン トを与 えるもの として捉 えることによって、第 3セクターのメリットを最大限に生かす こ とがで きるように留意する必要がある。 2 第 3セクターの成功要因 と失敗要因 これらの成功事例 よりみた第 3セクダーの設立 ・運営 に成功するポイントは、次のように要約で きる。 ・基本構想 ・基本計画 など、行政計画や施策体系のなかでその位置づけが明確 にされていること。 ・時代のニーズに合致 していること。 ・首長の強い方針の もと、行政の支援体制が確立 されていること。 ・担当者の熱意 とその よき理解者が存在すること。 ・第 3セクターの実質的な運営者 ( 社長等でな くともよい)がいること。 ・地域住民、企業 などか らよく理解 され、支援 されていること。 ・行政機関や出資 した民間企業 とは異 な り独 自に柔軟 な運営がで きること。 ・少 々の失敗 にもめげず、チ ャレンジ精神で挑戦す ること。 他方、第 3セクターの失敗要因は、基本的には成功ポイン トの逆 を考 えればよい。 「 計画性 のなさ」、「 責任体制の不明確 さ」、「 事業見通 しの甘 さ」 など、種 々の角度か らの検討が な されない ままに、安易 に第 3セクター を設立す ることが失敗要因の典型 といえる。 「 ず さんな計画」 「 事業見通 しの甘 さ」「 経営責任の暖昧 さ」 など、不効率 に運営 されている実態 を指 して、"第 3セク ターは 3分の 1セクターである' 'と邦旅 されることさえ もある。つ まり、第 3セクターの持つ本来の 機能や長所が十分 に生か されず に、 まさに "3分の 1"程度 しか有効 に機能が発揮 されないことを指 している。 したが って、第 3セクターが成功するためには、 自治体側 と民間企業側 との間では第 3セ クターを 設立す る動機や 目的が基本的に異 なるとい うことを前提 とした上で、本来 自治体の持つ地域資源 ( ヒ ト、モ ノ、カネ、情報)や調整機能 を十分 に発揮で きるように工夫する一方、民間企業の持つ経営資 源 ( ヒ ト、モ ノ、カネ、情報)や柔軟性、成長性 などの長所 をうまく伸 ばせ るような両者の機能 を最 大限に活用で きるようなシステムづ くり ( 前述の成功のポイン トなど)が最大の課題である。 と同時 に、そのシステムが有効 に稼働す るために自治体側 と企業側 の両者のバ ックア ップ体制の確立 を図る ことが不可欠な条件である。 Ⅴ 第 3セクターの法人設立に際 して基本的に検討すべき課題 第 3セクターを設立す る際 に、事前 に検討 してお くべ き留意点がい くつかある。それ らの諸点 を集 約すると、基本的には次の 2つの観点、すなわち ( ∋ 法人の設立 と法人形態の検討、お よび組織間の役割分担 と連携 など事業化 に際 しての検討課題 ② 経営 ・採算性 の観点か らの事 業収益分析 とその対応措置 に関する検討課題 に要約 され よう。 ー3 2- 新潟産業大学経済学部 紀要 N o .1 3 1 法人の設立 と事業化 に際 しての基本的 な検討課題 ( 1) 事業化 に際 しての検討課題 第 3セクターによる事業 を推進 してい く際 には、事業 の内容や収益事業 との関係、あるいは事業の 見通 しなど事業の採算性 や収益見通 しな どについては慎重 に検討 しなければな らない。 とりわけ、事 業化 にあたって は、 「 FS」 ( フィジ ビリテ ィス タデ ィ-企業化調査) を実施 す るな ど、事業見通 しに ついては慎重 に検討す る必要がある。 この事業見通 しの検討 を行 う際 には、同時 に、「 資金調達の仕方」お よび 「 事業手法の検討」 ( どこ まで を第 3セクターの事業範囲 とす るのか、全体事業のなかでの公共、民 間、第 3セ クター等 の役割 分担 を明確化等) をす ることが重要 なポイ ン トとなる。 ・事業採算 の検討 を行 うにあたって留意すべ き点 は、「 事業規模」 ( 投資総額) に応 じた 「 事業資金の 調達方法 とその資金調達額 」 お よび 「 事業 の内容 ・範囲」 との関係 を明確 にす ることである。 一方、事業内容 ・範囲 については、「 職員 の構成や規模」、「 事業収入 の見通 し」 な どを考慮 して、 経常的な収入 と経常的な支出 とのバ ラ ンス を図れるよう適切 な事業規模 を決める必要がある。 この ように、事業推進主体 は、事業の 「目的」 「コ ンセプ ト」 「 事業主体 ・事業方式 」 「 立地条件 の 検討」「 施設の基本構想 ・基本計画」「 資金調達」「 事業の採算性」「 地域への波及効果」な どについて、 事前 に十分 に検討 しておかなければな らない。 図 4は、 これ らの検討過程 をスケジュール表 として示 した ものであ a (8)0 図 4 スケ ジュールの想定 建築許可' の申請 ト- lフィージピリ 基本計画の策定 ティ. 1年 スタディー l. 転 企画主体 覇 l 緑 最低6カ月→ 基本設計. l実施 ( 事業)計画の策定 6 一 一 一 カ月 一- 実施設計 l l 萱墓室要望≡≡定 義 ■整 垂 蓋 検討委員会 .設立準備事務局 ( 地元自治体中心) ( 出所)「 ケーススタディ地域プロジェクトの財務」ぎょうせい ( 2 ) 法人の組織形態の検討 お よび事業 目的 との関連性 の検討 近年設立 される第 3セ クターは、一般的 には、商法法人である 「 株式会社」の法人形態 によって設 立 される傾向が強い といえる。 しか しなが ら、第 3セ クターが行 う事業分野や事業 目的によっては、 「 社団法人」や 「 財団法人」 など、民法法人である 「 公益法人」組織 として設立 した方が適切 な場合 -3 3- 『 第 3セ クターの現状 と課題』 も中にはある。 第 3セクターを設立す るに際 しては、法人形態 をどの ようにす るのか とい うことを事前 に十分検討 す る必要がある。 つ まり、「 第 3セクターの 目的 とす る事業活動や事業 目的の実態や内容」 に即 して、 「 株式会社」、「 財団法人」、「 社団法人」等、事業内容 に応 じた法人の組織形態 を臨機応変 に考 えなけ れば事業体 として適切 な運営が推進 しに くくなるといえよう。 一般的 には、「 営業活動、収益事業」 を主体 とした 「 事業収益型」の第 3セクターを設立す る場合 財産管理や施設等の保全 には 「 商法法人の株式会社」形態が適 している といえる。 それに対 して、「 などの運営 ・維持管理 を主体 とした管理 ・保全型」 の第 3セクターを設立す る場合 には 「 社団法人」 財務会計処理上」の観 か 「 財団法人」の 「 民法法人の公益法人」 形態 を採 る方が事業遂行上、特 に 「 点 よりみると、適 していることがある。 もちろん、民法の公益法人である社団法人 にあって も、基本 的な事業である公益性の遂行 を目的 とした公益事業のほかに も、事業範囲は限 られてはいるが財団の 財政基盤 を安定化 させ るための支援事業 として、出版や不動産賃貸業 な ど、「 公益法人 は本来の公益 事業 のほか、財政基盤 を安定化 させ る見地 よ り、 3 3種類 ( 業種) にお よし ぶ収益事業 を行 うことがで きる」 ことは、周知の とお りである ( 表 9参照)0 表 9 公益法人の収益事業一覧 1.物品販売業 2.不動産販売業 3.金銭貸付業 4.物品貸付業 5.不動産貸付業 6.製造業 7.通信業 8.運送業 9.倉庫業 1 0.請負業 ll.印刷業 1 2.出版業 1 3.写真業 1 4.席貸業 1 5 .旅館業 1 6.料理店業その 1 8.代理業 1 9.仲介業 2 0.問屋業 21.鉱業 2 2.土石採取業 2 3.浴場業 2 4.理容業 2 5 .美容業 2 6.興行業 2 7.遊戯所業 2 8.遊覧所業 2 9.医療保健業 3 0.技芸教授業 31.駐車場業 3 2.信用保証業 3 3.無体財産権 他 の飲食店業 の提供業 1 7 .周旋業 いずれに して も、商法法人 を採 るか、民法法人 とす るかについては、法人の設立以降の 日常的な業 財務会計処理上」の点 において、業務手続や業務処理 などが相当に異 なる 務である 「 事務手続上」 「 面 もあることか ら、この法人形態 をどちらかにす るか とい うことについては、 慎重 に議論 しない. と後々 不都合 な面が多々生ず る場合がある。 財務会計処理上」 の また、 この法人形態の検討 にあたって特 に重要 な問題 は、「 事務処理手続上」 「 観点か らだけの検討 にとどまることな く、「 何 の 目的で、何 のために、第 3セクターを設立す るのか」 - 34- 新潟産業大学経済学部 紀要 N o .1 3 「なぜ、第 3セ クターで なければな らないのか」 「自治体等 の直営方式 で はいけないのか」 「 純然 たる 民 間企業 による経営方式 の方がか えって適 しているので はないのか」等 々、同時 に、 これ らの基本的 な命題 に対 して もJ十分 な議論 を しておか なければな らないのである0 少 な くとも関係者 の間で は、 「 第 3セ ク ターの位置づ けについて、その事業 目的、機 能 や役割 な ど と法人組織 の形態 との関連性 やその適否 について」 は、基本的な共通認識 お よび基本的 な合意形成が 図 られてい ることが、第 3セ クターの設立 、発足 に際 しては不可欠 な要件 であ る。 この共通認識 や合 意形式 な どが どの程度 なされてい るのか、「その認 識や理解 ・協力 ・支援 体制 の厚 薄 や有無」 が、経 営上 の黒字 や赤字発生 に対 す る出資者側 の官民双方 の対 応 に大 きな違 い を生ず る要 因 となるので あ る。 表1 0 株式会社 と財団法人の主 な設立要件等 と相違点 事 項 株 式 会 社 財 ・定款 を作成 し、公証人による認証が 必要 団 法 人 備 考 ・根本鹿別 を明示 した寄付行為 を作成 し」主務官 庁の認可が必要 ( 2 ) 定款、寄 絶対的記載事項 付行為の ′ 宰 設 正 ▲ 「 ■(1)絶対的 設立要件 . 琴 必要的記 育 載事項 世 必要的記載事項 ・目的 鹿 立 目的 と事業内容等) ・1 人以上の出えん者が必要 ・ し 名称 ( 既存の法人 と誤認等の まざらわ しい名称 ・会社が発行す る株式の総数 は好 ましくない) ・額面株式 を発行す るときは、 1珠の ・事務所の所在地 -金額 ・資産に関す る規定 ( 資産の構成、管理運用方法、 行 ・会社 の設立時 に発行す る株 式 の総 為 ・日的 ・1 人以上の発起人が必要 ・商号 ・発起人の氏名および住所 数、額面 .無額面の別 本店の所在地 会社が公告 をする方法 と数 更等 ( 2)代 表 機 関、業務 運 法 人 の (1) 規則の変 営 の執行機 関 と権限 ・理事の任免に関す る規定 ( 理事の選任) で承認の必要あり 初 に寄付行為の変更等の規定 を定めてお く必要 あり ・業務の執行横関お よび意思決定機関 は、取締役会である ・走款の変更 は、取締役会、抹主総会 ・抹主 は、出資金額の議決権の行使が で きる 等 囲 現物出資で もよい) ・授権資本の 4分の 1以上の株式の発 も定款の変更の方が容 易 ・理事会が法人 を代表 して業務の執行 を行い、理 財団法人の理申会で って、必ず ・事会の意思決定は多数決 寄付行為の変更は、原則 によるo従 として困難 なため、 -当 意思の許否が分かれた 寄付行為の変更 より _Lも最大出えん者の意向が反映 されない 場合は、株式会社の株 ・一般的に理事会の他 に評議員が設置 されるケ- 主総会の ような歯止め 階で明確化 スが多い ー ( 評議員会の権限、横能等 してお くと, よい) を初期の段 行が必要 基 質 金 本 と ( 1 財産の範 2 ) 財産の利 会費等) 有価証券等) ・設立後 において基本財産 として寄付 された財産 がない は、寄付 としての性格 が強い ・理事会の決議 運用財産等 られた財産 により、基本財産 として組み入れ 出資 された資本金 ( 現金出資お ・資本金は、事業資金 として利用 よび .処 事業団の出資金は本計画の施設設置 資金に充当す ることに限定) 設立時の基本財産 として定期預金、有価証券等 として寄付 された財産 ( 現金、 ・基本財産は、原則 財団法人への出えん 財産法人の基本財産 産の預貯金 か ら利息等 は、事業資金 として利 用 .処分が可能) また、事業資金 として基本財 金 として、利用 .処分 がで きないoそのため、 ( 出所)「 街づ くり会社 の設立 ・運営 ノウハ ウ」 ( 中小企業事業団編 - 35- 中央経済社) 『 第 3セ クターの現状 と課題』 いずれに して も、第 3セクターは、現行制度 においては基本的には 「 株式会社か財団法人」の どち らかの法人組織形態 を採 らざるをえないわけである。 したが って、 この両者の 「 基本的な主 な設立要 件等の相違」 については、事前 に十分 に把握 してお く必要がある。少 な くて も、両者の法人の基本的 非課税である、税の軽減措置があ な機能について議論す る必要がある。 単 に、税法上 の観点 よ り、「 るか ら財団法人の設立 を」 ( 財団法人 は税制上、非課税 であると事業開発 プロジェク ト関係者間で ち 誤解 されてお り、極めて大 きな問題である。 原因は、正確 な知識や確認がないままに、誤 った情報が 流布 していることに起因 している。 公益事業 については非課税であるが、収益事業 については課税率 は一般企業 より低い法人税率が適用 されるが全額課税対象である。特 に地方 自治体が設立 した財団法 人等 においては、 この 「 公益事業」会計、「 収益事業」会計の 2つの区分がなされず に、すべてが混 在 した事業会計 として執行 されていることがその原因であるといえる。 業務委託費や補助金支出など J ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ る 自治体 の財政運営上か ら、 また財団運営 の会計処理上 か らも早急 に改善 されねばな らない問題であ とい う点か らだけではな く、次の ような観点か らの整理が必要である(9)0 設立要件 について ● 法人の運営 について ■ 定款、寄付行為等 規則の変更等代表機関、業務の執行機関 と権限等 資本金 と基本財産 ■ 財産の範囲、財産の利用 ・処分等 引当金の処理 ■ 主な引当金 経理区分 ■ 寄付金等の処理 法人への課税 . ■ 法人税、県民税 ・市町村民税 表1 0は、株式会社 と財団法人 について、上述 の観点 よ り、「主 な設立要件等 の相違」 について比較 した ものである。 ( 3) 出資構成 ・組織構成の検討 第 3セクターの設立お よび経営運営 においては、責任体制や応援 ・支援体制 を確立す ると同時 に、 事業の収益 ( 事業経営上、当然、黒字の場合 もあれば、赤字の場合 もある)の収益配分等 を明確 にす るとい う観点か らも、資本金額、あるいは基本財産額等 に対す る出資 ・出絹の構成比率 を慎重 に検討 する必要がある。 例 えば、株式会社形態の第 3セクターにおいて、事業内容や事業計画等 に対する意見の相違が生 じ た時や会社 の解散等の重大 な局面 に直面 した場合 には、「 取締役会」 の出席 している取締役 の多数決 によって意思決定がなされるわけであるが、最終的 には最高意思決定機関である 「 株主総会」がその 断 を下す ことになる。 特 に、「 株主総会 における議決権 の行使」 においては、単純 な出席者多数等の 意見 によって決定 される ものではな く、出資者の 「 持 ち株数」 ( 出資額) に応 じた権利 の配分が原則 となる。 つ まり、「出資比率の多寡」 に応 じて、 この 「 議決権行使」 ( 投票行為)の大 きさが決 まるわ けであ り、最終的な意思決定 を左右す る要因は、 この 「出資比率の大 きさによる」 ものであるとい う ことは、周知の とお りである。 実際 には、 このような不測の事態が起 きない ように事前 に関係者間で対策が協議 され ようが、不幸 に も意見が別れた場合 における最終的な意思決定の方法 は、 この ようなプロセスで決定 されるとい う ことを基本的に了解 しておかなければならないのである。 - 36- 新潟産業大学経済学部 紀要 N o .1 3 この ように、株式会社形態の第 3セクターに対す る支配程度 は、「 第 3セ クターへの出資金額 およ び溌本金額 に対す る出資比率 による」 ものであることか ら、出資比率の決定は極めて大 きな意味 をも つわけである。 それに対 して、「 財団法人」 や 「 社 団法人」等 の民法上 の公益法人においては、その法人の最高意 財団法人」や 「 社団法人」の場合 においては、 . t i t . 決定機関は、「 理事会」 となっている. したが って、「 株式会社の場合 とは基本的に異 な り、株式会社 の取締役会 に相当する 「 理事会」 を構成 している理事 ( 出席理事)の多数決 によって最終的な意思決定がなされる、 とい う原則 を再確認 しておかなければ ならない。 この ように、最高意思決定機関やその意思決定のプロセスは、各々の法人形態 によって法的な相違 があることを基本的に理解 した上で、出資構成 や組織構成のあ り方 について も検討す る必要がある。 また、役員の人事構成や職員 ・会社員の出向 ・派遣等 などについて も同様 に して、当初の段階 より 中 ・長期的な経営 ・人事管理の上か らも慎重 に検討 されなければならない。 なお、次表 は、株式会社 における 「 商法か らみたその機能」お よび 「 公共サイ ドか らみた出資比率 衣l l )0 とその機能」 について とりまとめた ものである ( 表1 1 公共サイ ドか らみた出資比率 とその機能 1% 一定 の事項 を株 主総会 の 目的 とす る請求権 限等 3% 株主総会 の招集要請、取締役解任請求権 1 0% 少数株主権 ( 帳簿閲覧権 、解散請求権等) 2 5% 地方 自治体 の監査役貝 の監査権 ( 地方 自治法第 1 9 9条) 自治省 の調査対象 民活法 の租税時別措 置摘要 ( 単独 ベース) 1 / 3 民活法 の租税特別措置摘要 ( 公共法人累計) 株主総会 での特別決議 の阻止 1 / 2 報告対 地方公共団体 の議会 による関係予算 象 ( 地方 自治法第 2 4 台条) の審議 、経営 の状況 株主総 会の成立 2 / 3 株 主総会での特別決議 ( 定款 の変更、取締役 の解任等) ( 出所) 「 地域 開発」平成元年 8月号 ( 4) 第 3セクター設立の合意形成 と経営危機等 に対す る対応策の検討 第 3セクターを設立す る際 に、関係者間の間で基本的な合意形成が どの程度 なされているか否か と い うことは、その後の第 3セクターの経営方針や経営環境 を大 きく左右す るものであ り、経営採算性 の問題 など、経営上の危機 に直面 した時 などの際に、極めて重要 な意味 をもつ 。 例 えば、琴 3セクターは、一方では公的な性格 を持つために、利用料金の設定や対象者や利用者 に 対す る考 え方 については、単 に経営採算性 の観点か らだけの条件 だけを優先 させて設定 して しまうこ -3 7- 『 第 3セ クターの現状 と課題』 とには大 きな問題が生ず る場合がある。この場合 には、いわゆる 「 地域政策的な施策」、あるいは 「 産 業基盤整備や育成支援施策」 など、いわゆる 「 準公共的な施策」 にもとづいて、事業計画が作成 され る場合があることが多いために、利用料金の設定 などにおいて も比較的低廉 な利用料金等が決定 され る場合 も想定 される。 この ような、いわばサー ビス提供の対価 としての費用 コス トさえも回収で きないような場合 におい ては、そのコス トの収益減の補填的な措置 として、公共団体等か らの安定的な業務委託や固定資産税 等の減免措置等、十分 な支援措置や対策等が講 じられるならば経営上大 きな障害問題 とはな らないで あろう。 しか しなが ら、仮 にこれ らの政策的にやむを得 ない収入減等 に対 しては、当初の段階 より十 分 な支援措置が とられない とす るならば、当然のことなが ら重大 な経営危機が生ずる場合が想定 され る。 と同時 に、この ような経営の責任問題や、経営危機等が生 じた時の対応が どの ようになされるのか、 とい うことが問題 となるのである。 共同責任 として、迅速 な対応策が講 じられるか、それ とも関係者 間の責任回避 に終始す るかは、当初 における関係者間の基本的な合意形成の熟度 に大 きく左右 される もの といえる。 したがって、第 3セクター設立の当初の段階 より、関係者間において充分 な合意形成 を図ることが 必要不可欠な要件 となるわけである。 2 経営 ・採算性の観点 か らの主 な検討事項 ( 1) 事業費 と投資規模 の検討 第 3セクター事業 を推進す る際 に大 きな問題 となる 「 事業規模 ( 事業費) と資金調達の関係」 につ いて、 とりわけ 「 資本」 ( 会社 の資本金 と借入金等) について、種 々の角度 より議論する必要がある。 すなわち、「 資本金 としての自己資本」の調達 に して も ( 基本的には関係者等誰かが出資者 として資 本金の出資 をす るわけで、出資者側か らすれば一般的には投資 に対す る利潤配当を期待 して出資する NTT株式売却益 の無利子融資制度など特殊 な制度融 わけである)、「 他人資本 と呼 ばれる調達資金」 ( 資が適用 される場合があるが、一般的には有利子負債 として、民間金融機関あるいは政府系金融機関 等 の公的機関等か らの融資制度等 を利活用するわけである。 借入金 に対 しては当然のことなが ら利子 を支払わなければな らない) との関係 について、「自己資本利益率」「自己資本比率」 「 借入金金利率」 「 事業利潤率」 などの観点 よ り、投資規模 について十分 に検討す る必要がある。 この 「 投資規模 に対す る自己資本 と他人資本 ( 有利子負債)の関係性 について」 は、上野嘉夫 「 第 3セクターにおける自己資本の決定理論」 『 21世紀 を創 る ! 第 3セ クター』 に詳解 されている(10)0 ここでは、簡単 にそのポイン トについて紹介す るにとどめることにす る。 「 第 3セクターが経済性 を追求 し、 自立 した経営 を追求 してい くためには投下資本が利潤 を生み出 し長期 に亙 って安定的に再生産が維持 されていかなければならない。即 ち、投下 された資本 は、自己 資本であれ他人資本であれ回収 されるべ きものであ り、他人資本 は借 り入れ金利、 自己資本は配当金 を継続的に生み出す ような事業でなければならない。配当金が出資者の出資 目的 として後位 におかれ ている場合 に して も、資本の蓄積が利潤の蓄積 によって図 られてい くような事業」であって も、「 第 - 38- 新潟産業大学経済学部 紀要 N o .1 3 3セクターにおいて も、他人資本 は有償、 自己資本 は無償 とい う考 え方 は誤 りである」 と指摘す る上 M・ 氏の考 え方 は、第 3セクタ. -企業等 に対 してなされる地方公共団体等か らの民間企業への安易 な出 資要請 に対する考 え方や第 3セクターを設立す る姿勢 に対 して、強 く警鐘 を鳴 らす もの として極めて 示唆的である。 近年、「 十分 な検討が なされず に、事業計画の見通 しの甘 い、経営責任の暖味 な第 3セ クターが設 立 される傾向にある」 と多 くの識者か ら多々指摘 されているが、 この ように安易 に設立 される第 3セ クター設立 ・経営、特 に資本金の調達 に対 して、厳 しい警鐘 を鳴 らす もの としてこの上野氏 の指摘 は 図 5、 自己資本経常利益率、事業利潤、借入金利の関係 0 6 0 5 自 己資 本 経常 利益率 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 0 1 11 2 倍入金利率 、事業利潤率 ( 注) ( %) D/ Eレシオ :9 / 1 D/ Eレシオ :8 / 2 事業利潤率、 自己資本経常利益率一致点 D/ Eレシオ :5 / 5 ( 出所) 上 野寡 夫 「第 3セ ク ター にお け る自己資 本 の決定 理論」 第 3セ ク ター研 究学 会編 「 2 1世紀 を創 る . ′ 第 3セ クター」公職研 -3 9- 『 第 3セクターの現状と課題』 高 く評価 される。 事業利潤率」 との関係 については、次 の ように指 また、「 負債 ・自己資本比率」「 借入金金利率」 「 摘 している ( 図 5参照) 0 ① 「 事業利潤率」 が一定の安定 した事業では、借入金利率が事業利潤 を下回っている限 り、 自己 資本比率 は低 い方が 自己資本経常利益率 は高 くなる。 ② 「 事業利潤率」が一定の安定 した事業であって も、 借入金金利率が事業利潤率 を超 える場合 には、 自己資本比率 を高 くしなければ、 自己資本利益率 は急速 に悪化す る。 しか も、 自己資本利益率 は 事業利潤率 を超 えることはない。 ③ 「 借入金金利率」が高 ければ、事業利潤率 もまた高い事業でなければ成 り立たない。その場合、 事業利潤率 より借入金金利率が高ければ、 自己資本比率 を高 く維持 しなければ、急速 に自己資本 利益率 は悪化す る。 この ように、「 負債 ・自己資本比率」 「 借入金金利率」 「 事業利潤率」 との関係 について も明 らかに した上で、「 官民 の出資比率」 については、「自己資本の構成 」 「 官民の出資 目的」 「出資 目的 と出資条 件」の観点 より種々の角度 より言及 している。 ここでは紙面の都合上省略す る。 この ように、「 第 3セクターに対する出資」 ( 資本金への出資 については官民の双方 ともに出資金の 原資の有効活用 を図るとい う観点か らも決 して 「 無利子 ・無償 の財源」や 「 寄附金や賛助会費」的な 「 無償の資金原資」 として考 えてはいけないことを自治体側 は基本的に厳 しく認識する必要がある) については、優先株 や後位株 なども含めて、出資者の出資 目的に応 じた多様 な自己資本形成 を図る観 点 より多角的に議論す る必要があるといえる。 ( 2) 経営採算性 の検討 第 3セクターによる事業 に限 らず、一般 に事業活動 を行 う場合 には、「 投資規模」と 「 所要資金 ( 自 己資金)調達資金」 との関係 について十分検討 されなければならない。 これ らの検討 については、 『 ケーススタデ ィ 地域 プロジェク トの財務』 に詳解 されている. ここ ではその分析 のプロセスについてそのポイン トを簡単 に紹介す るにとどめることにす b ( l l ) 。 図 6は、投資 と収入 ・費用 との関係 を単純化 して表 した ものである。 一般 に、投資資産 と毎年の営業費用 を投下 して、毎年の収入収益 を上げる。 その収入か ら営業費用 を控除 した ものが償却前営業利益 である。 投資額 と利益 の関係 は、「 投資 の利益率」 と呼 ばれる。 投 資 に要す る資金の調達 は単純化す ると自己資本である資本金 と借入金か らなる。 その うち、借入金か らは支払い利息が発生す る。 一方、資本金 に対 しては配当を支払 わなければな らないが、 これについ ては相当な利益が生 じた時 に行 われる。 通常の場合、当初の予定では考慮 されないことが多い。支払 利息 は費用であ り、それを控除 した残 りを内部留保 とい う。この内部留保 は借入金の返済原資 となる。 借入金の残高 と毎年の内部留保の関係か ら、借入金の償還 に必要 な年数が計算 される。 第 3セクターに限 らず、一般 にプロジェク トの投資採算性 を評価する手法 としては、次のようなも のがある。 ① DCF法 ( Di s c o u n t e dCa s hFl o wMe t h o d ) 収支予測 に基づ くキ ャッシュフローの利回 りを複利計算で求める方法 -4 0- 新潟産業大学経済学部 ② cFS法 紀要 N o .1 3 ( ca s hFl owSi mul a t i o nMe t hod) 収支予測 と資金繰 り予測の総合 シ ミュレーシ ョンによる方法 ③ 投資利益率法 収支予測 に基づ く利益 の利益率推移 を見 てい く方法 ここでは、紙面の都合上、各手法の詳細説明 は省略す る。 同書 には、 「 CFS法」 ( Cas hFl owSi mul a t i onMe t ho d-収支予測 と資金繰 り予測 の総合 シ ミュレー シ ョンによる方法) による投資採算 シュ ミレーシ ョンの方法 について、債務 の償還期間 を中心 に見 る 方法が詳解 されている。 この方法 は、実際の投資資金の調達 お よび以後の資金繰 りも想定 した上で、 一定年数後 までの収支 ・資金計画 を年 ごとに計算 し、表形式 で示す方法で奉る。 詳細 については紙面 の都合上省略す る。 図 7は、 この投資採算 のシ ミュレーシ ョンのフレームを示 した ものである。 また、次表 はシ ミュレーシ ョンの実行 をす る際 によ く検討 される内容 を示 した ものである ( 表1 2 )0 図 71シミュレーションの フレーム 図 6 投資 と収入 ・費用 との関係 ( 内部留保) ( 出所)図 6と同 じ ( 出所) 「ケース タデ イ地域 プロジェク トの財務」 ぎょうせ い -41- 『 第 3セクターの現状 と課題』 表1 2 経営推算性の検討事項 事業案 A ( ホテル) 単年度黒字転換年 繰越損失解消年 債務償還完了年 ( Ⅰ RR ) 内吾阿u 益率 開業後 開業後 開業後 ( 対茸上高比率) 減価償却費 . 支払利息 税引後損益 午 冒 固定資産簿価 ( 高) うち運転借入金残 ( C) ( 欠損金/資本金 ( A) 事業案 B ( スキー場) 年 目 開業後 年 目 由業後 年 目 開業後 % ( %) 百万円 百万円 百万円 事業案 C ( 商業 ビル)■ 年 目 開業後 年 目 年 目 開業後 :年 目L 年目 _ 開業後 年 目 % ( %) 百万円 百万円 百万 円 百万円) ( 百万円) ( % % % ( %) 百万円 百万円 百万円 百万円) % ( 出所) 「 ケースタデ イ地域 プロジェク トの財務」 ぎょうせい ( 3 ) 経営の赤字対策 と黒字対策 事業収入見通 し」 な どについて同時 に検討す ることによって、 「 事業規模」 は、「 事業資金調達」 「 よ り的確 な事業採算性の検討が可能 となる。 ここでは、事業経営上、赤字の発生 と黒字の発生 とその対応策 について、 日本開発銀行が作成 した プロジェク トの対応措置 を紹介 しよう( 1 8 。 次図に示 されるように、事業採算性 の考 え方 としては、 まず考 え方 の前提 として、収入 と費用 とに 区分 して、費用のどの部分 を営業収入で どこまでカバーがで きるのかについて検討 をす ると同時に、 その損益分岐点 について Aか らEまでの 5段階 に分 けて考 えている ( 図 8参照) 0 この 「 A∼E」のそれぞれの段階での損益が赤字か黒字かによって、それぞれの対応する課題が当 然異 なるわけである。 各段階 ともに、黒字の場合 には問題 は生 じないが、赤字の場合 における適切 な 対応策が必要 となるのである。 つ まり、各段階において赤字の場合 には、その採算性の維持 を図るた めの課題解決の対応策 も、当然それぞれ異 なることになる。 その課題 と対応策 を示 した ものが次表で ある ( 表1 3 )。 この ように、各段階における課題の内容 とその対応策の内容 によって公共側の関与の度合 は異 なる わけである。 対応策の内容 によっては、事業主体 ・事業手法それ自体 について再検討 をする必要があ ることは改めて言 うまで もないことである。 - 42- 新潟産業大学経済学部 紀要 N o .1 3 図 8 損益の考 え方 (5つの損益段 階) そ 繕 の 料 課 他 公租公 保 修 険 費 辛 疋 ′ 固 一 ▲ . I 収 賃 物 人 そ 件 借 の 他-変 料 費 動 質 用 質 金 利 ・ 餐 費 本 減価償却 入 税 配 賞 金 与 当 外 疏 那 出 ( 出所) 日本開発銀行資料 表1 3 損益段階別の対応策 ) 損益段階 A 議 題 対 , i ・ _ 事業 として推進する必要性 の再検討 黒 ・民間の何 らかの協力可能性 応 策 ▼民活形態 としては 「 運営委託」 ・公的施設 利用候 人件費負担 証 ( 土地、建物)無償貸与 売上補てん). ( 出向) B 赤 再検討 ・事業規模 ( 設備投資) ・ ・地方税等の優遇措置 「 公設民営」方式 C 赤 ・資金調達の再検討 ・利子補給、超低利融資 資本金の増加 黒 ・投資機会上 して評価 赤 ・設備保有形態の再検討 黒 ・事業 として十分 に成立 蘇 ・資金計画の再検討 ・経営方針の再検討 黒 1 -1 5 年程度で可能 ならば民間事業 として推進 0T 3 0 年程度で可能であれば、民活事業 として推進の必要 ・償還が2 D E ・ ・リース方式 償却方 赤字運転資金の確保 法 の変更 」基金の創設 ・ 償却の範囲内での償還 ・後配株 ( 出所) 日本開発銀行資料 -43- 『 第 3セクターの現状 と課題』 ( 4) 資金調達 の検討 事業 の成否 を振 るカギの 1つ に、事業費 をどの ように有利 な条件 の もとで資金 を調達 で きるか とい うことがあげ られ る。 つ ま り、で きるだけ低利 ( で きれば無利子等) かつ長期 の資金融資 を受 けるこ とが重要 なポイ ン トとなる。 その方法 としては基本的 には、次 の ような工夫が考 え られ る。 ① 資本金額 を少 な くとも総事業費 の 3分 の 1相 当額程度 の高 い水準 に維持 す る。 ( 参 NTT の無利子融資制度 な ど公 的融資制度 を利活用 す る。 ( 勤 不動産賃貸業 な どにおいては、入居 す るキーテナ ン ト等 か ら充分 な保証金 を預 か る。 この ような さまざまな資金調達 の工夫 や方法 を検討す ることに よって、事業化 を推進す るための有 利 な展 開 を図 ることが事業 の成否 に とって きわめて肝要 なことであ る。 表1 4は、資金調達 の方法 とポイ ン トについて整理 した ものであ る( l S 。 4 資金調達の方法 とポ イン ト 表1 調達方法 資 本 ポ 金 イ ン ト 確定等)お よび採算性 を確保す. るための量的側面の 2つの性格 をもつo採算性確保の視点か 資本金 による資金調達 にかかわる質的側面 ( 構成 メンバー .出資比率の らは資本金 は多いに越 は、事業主体の形成 したことはないが、やみ くもに増額すればよい とい うものではな く、 官民のパー トナーシ ップの状況、負担能力等 により、金額の設定 については判断 してい く必 要があるo い公的資金の導入 を検討すべ きであるoただ し、政府系金融機関等 は必ず しもメインバ ンク ( 継続的に必要 となる運転資金の貸 し付 け も行 う) としての機能 を有 しているわけではない ので、民間金融機関等か らの借 り入れ も併用することにより、必要 な金融機能 を補完 してお く必要があるo 補 助 金 補助金 とは、国、県等の制度 に基づいた助成金 を指すO-般 たは助成金 の交付 にあたって定規模 の設置基準等の摘用 フレームがあるので、助成金の導入 にあたつては事業内容 との整 合等 について十分 に留意. してい く必要があると しての性格 をもつO敷金は返済の必要がないが、保証金 は一定期間経過の後 に返済 を行 うの が通例であるoいずれ も貸 ビル業等の場合 には主たる資金調達の手段 となっているo オフイシャ テーマパーク等の事業化 に際 としてテナ し、大手民間企業等が建設費の一部 ることにより、完 そ 敷金 金 .保証 敷金 .保証金のいずれ も、主 ン ト貸 しする場合 にテナ を負担す ン トか ら徴収する協力金 と 成後 に施設 を利座 した広告官伝等 を行 う権利 を獲得す る方式である - の建設費肩代 わ り の ル ス ボ ン○ であるが TDL.スペ-ス ワ-ル ド等広也言伝効果 を有す る施設以外 0には金額的に期待す る 他 餐 傘 サーン ツフ ことi ま難 しい ヽ ロ_ _ . ′ 利用権方式 設資金 ゴルフの会員権、リゾー トホテルの会員権等施設 を利用す る権利うメリット を販売す ることにより 、建 を調達す る方式であるo 投下資本 を早期 に回収で きるとい があることか ら、 リゾー ト等の事業化 にあたって最近では導入するケース も増 え七いる. 不動産分譲 リゾー トマ ンシを調達するこ方式であるoこの方式 ョン、ホテル等の建物 ( 土地 を含 む) を部屋 ごとに区分 して販売す ることに より 、建設資金 も投下資金 を早期 に回収で きることか ら、 ( 出所)「 地域 を活かす第 3セクター戦略」時事通信社 ー 4 4 - 新潟産業大学経済学部 紀要 N o .1 3 ( 5) 事業主体 ・事業手法の検討 事業見通 しのシ ミュレーシ ョン分析 な どの結果、事業 の採算性 を確保す ることが厳 しい と判断 され た場合 などは、事業主体 あるいは事業手法 な どについて も、当初 の計画 を再検討す るなど、臨機応変 に的確 な情勢判断 を しなければな らない。 例 えば、事業推進主体 については公共事業 として実施 した方が望 ま しい場合 もある。 あるいは、純 民間事業 として施行 した方が適 している もの もあろ う。 また、中には公共 と民間 とが明確 な役割分担 をしつつプロジェク ト全体 としては共同で、統一的 に推進す る方が効果的な事業 ( た とえば駅前再開 発や都市開発事業 な ど) もあろ う。 また、採算性 の検討結果 に よっては、当該事業か らの撤退や純民間事業化 や純公共事業化 の検討 な どが必要 となる場合 もあろ う。 あるいは、全体事業計画 の中での役割分担 や、事業の範囲 などを見直 し、再検討す るな ど大胆 な決断 とシビアな判断力 とが要求 されることがあろ うが、その ような場合 に 村 して も、責任 の範囲な ど事業化 に際 して適切 な措置 を講 じることが重要 なポイン トとなる。 表1 5は、第 3セ クター事業導入 における基本的なステ ップ と各 ステ ップの段階 において留意 しな ければな らないポイ ン トについて整理 した ものである(140 表1 5 事業導入のステ ップ とそのポイン ト 導入のステ ップ 1.事業内容 の検討 ( 構想段階) ポイン トとなる事項 ( 1 ) 地嘩課題の明確化 ( 2 )J 地域ポテ ンシ ャルの活用 ( 3) コンセプ トづ くり 2.事業内容 の検討 ( 計画段階) ( 1) 事業手法の検討 ( 2 )事業の組 み立て ( 3) 事業採算性 の検討 3. 事業主体 の設立 ( 1) 民 間企業の組 み入れ ( 3)_地域 の合意形成 4.実施 .運営 に向けた ( 1) 運営体制の確立 条件整備 ( 2 )f資金の調達 ( 出所) 「 地域 を活かす第 3セ クター戦略」時事通信社 Ⅵ 秋田県秋田市の 「 太平山リゾー ト開発」の現状 と課堤 マスコ ミが第 3セ クター方式 の事業 に対 して、 どの ように認識 しているのか、問題意識 をどの よう に持 っているのか。 また、第 3セ クターの現状 とその問題点 について、マスコ ミが どの ように捉 えて HKテ レビ放送の事例 を参考 に検討 い るのか について、筆者が協力 ・解説 に参画 した経験 の うち、N してみ よう。 ー 45- 『 第 3セクターの現状 と課題』 ここでは、毎週 日曜 日の午後 6時 15分 よ り東北地方向けの番組 として放送 されている NHK の 『リ ポー トとうは く' 93 』において、平成 5年 12月 5日に、NHK秋 田局 よ り、放送 された 「苦悩 す る第 3セ クター ∼秋田県秋 田市大平 山 リゾー ト開発 ∼』 と題す る、第 3セ クター事業 の経営現況 と課題 について放送 された事例 を中心 に、第 3セ クターの経営診断 ・財務分析 を考 えてみたい。 1 NHK秋田局の 「 番組提案」 にみる 3セク ・リゾニ ト開発への問題提起 ( 1) NHK 秋田局の 「 番組」 の企画意図 ・ね らい NHK では、「 番組」作成 の企画意図 について、次 の ように考 えていた。当初作成 された企画書 に、 第 3セ クターに対す る問題認識が端的 に現 れている。 企画書 は、要約すると次 の とお りである。 ( D 企画意 図 「 1 0 2億 円。 2 0年返済で秋 田市民一人当た り年間 2, 7 0 0円の負担。 」 秋 田市 出資 の第 3セ クター 「 太平 山観光開発㈱」が抱 える負債額である。 経営難 に陥 った この会 0月下旬、議会特別委員会 に提 出 されたが、甘 い見通 しの上、巨額 社 に対す る市独 自の再建案 が 1 の借金 を市が肩代 わ りす る内容 に、「 先 の見通 しが明 らかでない」 など批判の声が高 まっている。 太平 山観光開発㈱ は、太平 山地域 の観光開発 プラン 「 太平 山 リゾー トパーク整備事業」 の実施母 体 となった第 3セ クター企業である。 この計画 は当初、平成 7年 を目標 に、 ドーム式室内プールや スポーツ広場、スキー場 やゴルフ場 など、総額 37 8億 円 をかけて太平山山麓一帯 を秋 田市近郊 の一 大 リゾー ト地 に しようとい うものであった。しか しバブルの崩壊 や、唯一観光開発 にノウハ ウを持 っ ていた藤 田観光㈱ の撤退で当初計画が大幅 に狂 い、 目玉の施設 として先行開業 し、単独事業 を強い られることになったクア ドーム 「 ザ ・ブ- ン」 の経営 は開業 2年 目に して既 に破綻状態 となってい る。 秋 田市ではこの夏、民 間のコンサル タン ト会社 に経営再建策の分析 を依頼 したが、市 の リゾー ト 計画 に対す る見通 しの甘 さや、経営計画のず さん さが明 らかになった。 同様 の施設の運営 を第 3セ クターか ら町の直営 にす る自治体 も現 れ るなか、第 3セ クターに よる運営 号こだわる秋 田市が 1 0 月 に提 出 した経営再建策 も、随所 に希望的観測がち りばめ られているな ど、問題の多 い ものである ことは否めない。 番組では、「 ザ ・ブ- ン」の経営問題 と、秋 田市の再建策案 を検証 しなが ら、曲が り角 に立つ 「お 役所商法 -第 3セ クター」企業 の問題 を考 える。 ② 放送内容 のポイ ン ト また、放送内容のポイ ン トとしては、次 の 3点があげ られている0 ④ 第 3セクター 「 太平 山観光開発㈱」 4% を出資 す る第 3セ クター企業 の 「 太平山観光 開発」 は、秋 田市大平 山地区の観 秋 田市が 4 光開発 を目的 に昭和 43年 に設立、温泉採掘 など細 々 と観光 開発 を して きた企業であった。 しか し昭和 6 3年 に太平 山地 区が リゾー トパー ク整備地域 に指定 される と、開発融資の受 け皿 として 活用. されることになった。 しか し、 もともと大規模 開発 を前提 に した会社ではな く、頼 りに して いた藤 田観光㈱ が平成 3年 に事業か ら突如撤退 した ことか ら、 ノウハ ウに も乏 しい ままのス ター - 46- 新潟産業大学経済学部 紀要 N o .1 3 トとな り、 これがつ まず きの始 ま りとなった。 ⑥ ザ ・ブ- ンの不振 クア ドーム 「 ザ ・ブ- ン」は、太平山 リゾー トパークの中核 として建設 された ドーム型室内プー ルで、平成 3年 8月 にオープンした。 しか し入場者数が伸 び悩み、当初見込 みの年間 3 6万人の 4万人余 り. に とどまるなど、極度の不振が続いているO 料金の値下 げや、市営バス 半分以下、 1 への吊 り広告強化 といった利用促進策 を実施 しているが、今年の実績 も前年 を割 り込 む成績が続 くなど、再建への道 は依然 として極めて厳 しい状況 にある。 ㊤ コンサル タン トの診断 と市の再建案 秋田市では経営が破綻状態 にある 「 太平山観光開発㈱」 について、民間のコンサルタン ト会社 に委託 し、経営診断 と再建策 についての報告 を仰いだ。 8月 に提 出された報告書で このコンサル タン ト会社 は、市の計画のず さんさと見通 しの甘 さを指摘 し、 1 02億円にのぼる債務の全額肩代 5億円に上 る再投資以外 に経営再建 はあ りえない と断 じた。 わ り、 さらに利用客 を増 やすための 2 予想以上の厳 しい内容 に市当局 は困惑 し、当初 9月議会で審議予定だった市独 自の再建案の提出 が、 1 0月下旬 にまで遅れる事態 となった。そこで市が示 した再建案 は、「コンサルタン トの分析 6億円の肩代 わ りだけで再建 は可能である、とするものであっ は厳 し過 ぎる」として、 債務 の半分 4 た。議会では 「 事態の深刻 さがわかっていない」 などと反発。再建案の数字の算出根拠 を示す よ う市当局 に迫 るな ど、 1 2月議会へ向けた検討作業が続 いている。 さらに 「 経営が破綻 した第 3 セクターは解散 し、 なお も経営 を続 けるのであれば市営の福祉施設 として再出発すべ きだ」 との 意見 に対 しては、「あ くまで第 3セクターの形 は存続 させ る」 との方針 を崩 していない0 ( 参 第 3セクターの解散 を決めた天王町 天王 グリー ンラン ド」 とい う公園が 秋田市の北隣、天王町 には平成 3年 4月 にオープンした 「 ある。 展望塔 や遊園地 などがあるこの公園の運営 は、町が 3分の 2を出資 して設立 された第 3セ 0 ケタ- 「 天王 グ リー ンラン ド観光」 が行 って きたが、入場者数の減少 などか ら経営が悪化、 1 月 21日の株主総会で第 3セ クターの解散 を決め、今後 は町の直営事業 として運営 してい くこと を決めた。 3セクの解散 を決めた理由 として、赤字-の抜本的対策 とともに、経営改善策 を迅速 に実施 してい くためには町営が望 ましい との判断があったことを挙げている。 2 事業計画 と経営収支 ( 1) 事業計画 と投資額 太平山 リゾー トパーク事業の開発経過 を簡単 に要約す ると、次 の とお りである。 「 ㈱太平山観光開発」 は、 もともと秋 田市観光協会の有志 によって資本金 1千万円で設立 された、 太平山山麓のスキー場 と温泉 を利用 した秋田市民の奥座敷 として市民の心身をリフレッシュする保養 を目的 とした施設 を提供す る小規模 な民間企業であった。 この民間会社 に秋田市が資本参画 して、昭和 61年 1 2月に第 3セクター方式 による 「 太平山 リゾー ト整備事業基本構想」が策定 され、市長 自ら社長 として開発 に乗 り出 したわけである。 市が参加す る 前の開発計画 ・投資規模 は、温泉 とスキー場 をセ ットに したごく小規模 の計画であったが、市が参加 -4 7- 『 第 3セ クターの現状 と課題』 した ことによ り、市議会 や観光業者、企業 な どか らは 「 県外 か らも大量 に客 を集 め呼 び込 め る施策が 必要 である」 との声 が高 ま り、開発構想が一層膨 らんだ とい う背景がある。 √ その後、同社 は増資 を重 ね、現在 4億 6千 4百万 円 となっている。 . この うち、市 は 2億 2百万 円 を 3. 5% となってい る。 出資 してお り、出資比率 は 4 この太平 山 リゾー ト整備 ・開発構想 が建設省 か らリゾー トパ ーク整備事業 に指定 されたの は、昭和 63年 4月であ る。 翌年 の平成元年 6月 には事業認可 され、 1 0月 には NTT無利子貸付金 ( A タイプ) 貸付 が決定 され、一気 に事業化 が推進 された。翌年 の 2年 3月 には建設工事 が着工 し、翌年 の 3年 8 月 には第 1号 の施設 としてクア ドーム 「 ザ ブ- ン」が開業 した。 次 いで、平成 5年 1 2月 には隣接 地 にスキー場 「オーパス」 がオー プ ン した。 この 2つの事業費 は 合計す る と、約 65億 8千万円であ る。 ( 2) 経営収支 と財務分析 「 事業 が計画通 りにいけば、 この巨額 の投資額 の返済 も可能 であ ったが、第 3セ ク ターの ガ ンとい われ る運営 の まず さが い ち早 く露呈 して しまった」 ( 『 月刊 AKI TA』 1 99 2年 11月) と地元誌 に も 厳 しい指摘 が な されてヤ る。 確 か に、平成 3年 1 0月 にはこれ まで 中心 になって事業 を進 めて きた民 間の有力企業 の藤 田観光が スキー場 とゴルフ事業 か ら撤退 して しまった ことは事業計画 を危 う くした大 きな原因の ひ とつ といえ る。 藤 田観光 の撤退 はバ ブル経済 の崩壊 であ り、 また株価操作 を行 っていたことが発覚 したため企業 責任等 の問題 も生 じた結果である といわれているが、一部 には 「 官民寄せ集めの素人集団であ る観光 開発 の運営方針 に付 き合 っていれば会社 自体 が大 きな リス クを背負 って しまうとの判断か らの撤退で あ った」 ( 同誌) ともいわれている。その真相 は定 かで はないが、いずれ に して も、この第 3セ クター 会社 は厳 しい経営環境 におかれた ことには変 わ りはない。 この ような状況の中で 「クア ドーム とスキー場」 が開業 された。折 か らの景気低迷期 とも重 な り、 入場者 は伸 び悩 み、当初 の計画上 の入場者数 を大幅 に下 回 ったために、経営 の悪化 が一挙 l ;表面化 し たのである。 経営 陣の経営責任問題 も生 じている中で、市 の対応 の まず さな ど、市 の責任 問題へ と発 展 し、 この まま同 じ第 3セ クター による推進主体 で事業継続 を行 っ七いけるのか どうか は予 断 を許 さ ない状況 にあ った。 この ような中で、平成 5年 7月 には 「 会社 の経営診断 と再建策」 を依頼 していた民 間のコ ンサ ル タ ン ト会社 か ら診断結果 を受 け取 った市 は、その経営診断の指摘 の厳 しさと再建策の見通 しについて市 の考 えていた対応 とのギ ャップの大 きさに当惑 した といわれ る。 ここで は、民 間の コ ンサル タ ン トが分析 ・ 検討 した内容 の一部 が 「 朝 日新 聞」 ( 秋 田県版、 .平成 5 年 9月 1 8日) に掲載 されたので、その概要 を簡単 に紹介 しよう( 1 9 。 主要 な財務分析指標 について は、次 の ように紹介 されてい る。 ( 総合性) 売上高対営業利益率 ( 営業利益/純売上高 × 1 00。高 いほ どよい) は、マ イナス 55. 5 9%であ る。 総資本収益率 ( 経常利益/総資本 × 1 00。高 いほ どよい) は、マ イナス 6. 687%であ る。 - 48- 新潟産業大学経済学部 紀要 N o .1 3 ( 安全性) 短期的な債務返済能力 をみる、流動比率 ( 流動資産/流動負債.1 5 0- 200%が普通)は、1 39. 55% である。 ( 生産性) 従業員-人当た り売上高 ( 純売上高/期末従業員数。高いほどよい) は、 711万 6千円である。 労働生産性 ( 租付加価値/期末従業員数) は、 92万 5千円である。 ( 販売費) 経常利益率 ( 経常利益/純売上高。高いほどよい) は、マイナス 91. 05%である。 ( 赤字状況) 損益分岐点 ( 営業利益 を出せ る売上高) は、 1 2億 5, 600万円である。 損益分岐安全率 ( 分岐売上高/実際の売上高。70%未満 は健全、9 0%以上 は危険)は 2 32%である。 つ まり、現実の売 り上げの 232%の売 り上げがない と利益が出ない ことになる。 損益分岐点」 を表 した ものである ( 図 9参照)0 次図は、平成 4年度の 「 図9 平 成 4年度の太平 山観 光開発 の 財 務 出 所 ) 朝日 ( 版(5月 9日1 新 聞秋田県 8 日) ( コンサル タン トの所見)ノ 次表 は、平成 4年度の損益計算書 を基 に、売上高 と主要 な諸経費に対す る改善策 について、 (コン サルタン トの所見) ( 市側の対策) ( 会社側の対策) について、比較整理 して示 された ものである ( 衣 1 6参照)。 これ らの財務分析の数字 を通 じて、コンサルタン ト会社 は 「 事業 として成 り立たないことの証明。 普通の会社であれば、そこに行 くまでにつぶれるか、方向転換 している」と経営診断 を行 うと同時に、 今後 について も、「 市がた とえ 1 02億円出 して も、だれが立て直すのか保証がないのなら、全 く成 り -4 9- 『 第 3セクターの現状 と課題』 立 たない」 と厳 しい指摘 が な されてい る。 表1 6 平成 4年度の第 3セクター損益計算書 と関係者の対応策 対売り上げ比 コンサルタントの所見 ◎売上高 少 なす ぎる 2億6, 3 0 0 万円 ◇人件費 I◇択売数 1億7 8 万円 ◇施設費 2億7, 93 3 万円 (禁 らつている ◎当期未処分 -4億 5, 3 5 2 万円 ◎営業利益 実施o販売要員 人か ら 6人 に増員 を3 1 3 5 2 6. 8 2% 通常 内容のいかんを間わ るよう指導 9 3 年度 かない ら1, 9 6 2万 ず異常 は2 5%o ウエー 圧縮す 削減するよう指導.円の削減 している 定休 は動かせ 5 億円前後の固定費 日の実施 を図るが、 によ云 トが高す ぎる している 2 0. 2 3% ウエ- トが高す ぎる て約6 5 3 万円 を削減 広告宣伝費 円削減 を約5 9 万 5 6. 0 8% ウエ- トが高す ぎる 現 状 の建 物 の構 定休 日と省エネ活動 造、機械設備など-によって水道 .光熱 削 か るよう指導する いが、で ら、削減 きる限 は難 り し 費 を約7 3 4万円削減 を苦警費) ◎経常利益 -2億7, 6 8 9 万円 会社側の対策 .考 え 営業努力 を して も 販売活動 を積極的に 4億9, 8 0 9 万円 ◎一般管理費 ( 主な内訳) 6億7, 8 41 万円 秋田市 の対応 2 億円が必要o 上の1 ( 改善案の一例) には売 り上げ倍増以 わ りについては損 失保証分 にす るか 討o借入金の肩代 ないo「 ザ .プ- ン」 の集客性 を高めるた になることは見込め 2 広間が必要o借入金 肩 代 わ り した うえ 肢 はいろいろ01 で、2 市が同社 5 億円 の借入金 ( ホテル、 を 全額 月 までに再建策 にするか選択 を め、展望ギろ付 の元利計 1 0 2億 円 き大 は -2 -5 -9 1 5 1 . . 0 5 1 7 9 5% 現状では利益 を出す 何 らかの支援 を検 現状では収支が黒字 ( 出所)「 朝 日新聞」秋田県版 (5年 9月1 8日) 3 問題の所在 と今後の対応 とその方向 この ような状 況 を踏 まえて、 NHK で は番組 の企画編成 が な され 、 12月 5 日( 日) に放送 されたわけで ある。 この太平 山 リゾー ト開発事業 は、あ る意味で は、現在行 われている多 くの第 3セ クター方式 による 開発事業推進 の中で も、典型的 な行 き詰 まった最悪 のケース として表面化 した一つである といえる。 つ ま り、計画構想 の立案 と事業推進 における官民 の役割分担 について、官 も民 も双方 の考 え方 に も ともと相 当 なギ ャップがあ ることに気づかず に、最後 に ( 事態 の悪化 による経営危機 が表面化 してか ら) ようや く、 ことの重大 さに直面 したケースで あ る といえる。 もちろん、筆者 は秋 田市 か ら直接 第 3セ クター会社 の経営診断 を依頼 されたわけで も、コ ンサ ル タ ン ト会社が行 った財務診断作業 に参画 したわけで もない。 また、計画 か ら現状 までの詳細 な検討資料 ー 50- 新潟産業大学経済学部 紀要 No. 13 なども入手で きたわけで はない ( 当時 も現時点 において も詳細 な資料 デー タは入手 が困難である)0 ∫ NHKの担 当デ ィレクター も相当苦労 して資料等 を収集 された ようであ るが、専 門家で はないため必 ず しも十分ではないのは無理 もない ことであ る。 これ らの提供 された資料 では正確 な分析結果や情報 などはわか らないため、軽 々 しく解決策の提案 やコメン トな どは差 し控 えるべ きことではある。 しか しなが ら、" 適切 なコメ ンテ イターが見 つか らないので、是非" とい う NHK秋田放送当局 の強 い要 請 により、前述 した ような最小限の資料 ではあったが、 これ らの諸資料 に基づいて、急速現地視察 と 関係者 間の意見交換 を踏 まえて、放送録画 ( 放送 日の前 日) に臨んだ次第である。 この ような事態 を引 き起 こ した前提 としての安易 な構想計画や事業実施、 また経営見通 しの甘 さな どについては、新聞、雑誌等で種 々指摘 されているとお りである。 筆者 も全 く同感である。 ここでは、今後の対応 とその方向 に対す る考 え方 について、番組の中で も一般論 として語 ったこと ではあるが、今後の第 3セ クター経営 の参考 として、 また不幸 に して経営が行 き詰 まっている第 3セ クターの健全化経営 を図 るために、い くつか経営の基本的な考 え方 について指摘 を してお きたい。 今後、基本的 にこの地域 の開発構想 をどうす るのか。 どの ような地域 イメージを考 えているのかに よって も大 きく左右 されることではあるが、基本的 には、第 3セ クター会社 の経営 が安定化す るため の経営改善対策 ・支援措置 について、種 々の角度 より検討す る必要がある。 0に示 され るように、分析 を依頼 されたコンサル タン トが提示 した今後の再建方策 ちなみに、図 1 の選択肢である。 前述 の ような分析結果 を踏 まえて、 コンサ ルタン ト案 によれば、収益性 の高いホテ ル建設 を追加投資す ることによって収益構造 を抜本的 に改善す る提案がなされている。 0 コンサル タン トが提示 する今後の選択肢 図1 ( 収益性 の高 い ものへ の設備 投資) : i i - I -: I: ( 自然公園 化 な ど) ( 出所) 「 朝 日新聞」秋田県版 (5年 9月 1 8日) 確 かに、コンサル タン トが提案 してい るように、( 施設 の利用率 を高め利用者 による収入増加 を図 る) ための対策 を考 えることが重要 な課題であることは改 めて言 うまで もない。一般的 には、ホテルは収 益性が極 めて高 い施設であることは周知 の とお りである。 現状 の施設が魅力の乏 しい施設であるな ら ば、施設の魅力 を高めると同時 に相乗効果 を もた らすために、ホテルの ような新 たな魅力 ある施設づ くりを追加す ることも必要である。 しか しなが ら、追加投資 された施設 に も魅力が少 ない とす るなら ば、 さらに赤字 を増加 させ ることになる懸念が極 めて大 きい といえる。 つ ま り、 この地域で は、魅力 あるホテルが本当に建設整備で きるか とい うことが大 きな問題であるわけで、追加投資す る際の施設 ー 5 1 - F 第 3セクターの現状 と課題』 づ くりのコンセプ トについては慎重 に検討する必要がある。 / 」 一方、既存 の施設が一応魅力ある施設であるな らば、 ( 施設の利用者増加 を図 るための運営方法 ・ オペ レーシ ョンについて、つ まり、 ソフ トの観点) より、種 々検討す る必要がある。 すなわち、利用 対象者のニーズの把握 を通 じて、利用 日や時間帯等 による割引優待制度、 また団体割引制度 などの導 入 を図る、あるいは、直接利用者の利便性 を高めるために送迎バス ( シャ トルバス ・シャ トル便) な どを配置 ・運行す るなど、いわゆる ( サー ビス業 の観点) より、 きめ細かな利用者対策 を検討す るこ とが重要 な課題である。 と同時に、サービス業の観点 よ り、会社組織 を再検討すること、人材の登用 ・採用 を図 らなければ ならないことは改めて言 うまで もないことである。 これ らの基本的に最 も重要 な視点が意外 に気づか れない ままにハー ドを中心 に した再建計画が議論 されているように見受 けられたい もちろん、経営陣 の責任 と権限の委譲 など、市当局 と会社 との間で、合意形成が図 られていることの有無 は、再建 にあ たって大 きなポイン トといえる。 市 と会社側の双方の責任のなす りあい と責任の回避 は、会社 の再建 上、極 めて大 きな支障 をもた らすので、強 く懸念 されるところではある。 その意味で も、単 に現状 の延長線上 において改善策 を検討す るとい うように、( 初めに第 3セクター あ り) とい う発想 を改めて、 ( 現在の第 3セクターを 1度解散す る。 その上で必要 ならば、再度、新 たに第 3セクターを設立 し直す) とい う抜本的な対応が必要であるといえる。 その方が、責任 と権限 に対す る支援体制の確立 を図るとい う点か らも、荒療治の対策 と考 えられるが、かえって速やかな再 建が可能 となる場合. もあろ う。 つ まり、第 3セ クターを一度倒産 させ債務 を清算 して、再度再建 して 出直すわけである。NHK の放送の中で も紹介 したが、この ように、1度解散 ( 倒産)した第 3セクター 会社が同名の会社 として再建 したケースが、すでにある。 水準の高い 5つ星のオー トキ ャンプ場 とし て よく知 られている 「 孫太郎」の愛称で有名な三重県の紀伊長島 レクリェ-シ ョン都市開発㈱がそれ である。現在、三重県等 より種々の角度 より支援措置がなされ、立派 に再建 され成功 を納めている第 3セクターの事例である。 いずれに して も、抜本的な経営の立て直 しと経営 の支援体制が必要であることは改めて言 うまで も ない。 また、会社の資産 としての施設所有 については、会社 か ら市の所有 としてすでに移管 されている。 会社所有の ままでは減価償却費 などの計上 によ り、財務会計処理上の観点か らも多額 な償却費 を計上 しなければならないため、赤字決算か ら免れ られない といえよう。 この点か らは、第 3セクターの経 営収支の改善 には大いに役立 っているといえようが、今後の第 3セクターの事業範囲 ・役割 ・機能の 観点、 と同時に経営の自主性 などの観点 より、 さらに議論 を深めて、健全 な経営の維持 を確保で きる ような支援体制づ くりを検討す る必要がある。 Ⅶ 第 3セクターに関わる経営課題 一般 に、第 3セクターの経営課題 としてよく指摘 されるい くつかの問題点がある。 前述 した内容 と 一部重複する部分 もあるが、 よく指摘 される内容で もあるので、 とりまとめて紹介 しておこう(18. また、次の表 は、第 3セクター事業 を円滑 に推進す るために、気 をつけなければならない事業運営 ー 52- 新潟産業大学経済学部 紀要 N o .1 3 の基本的なポイ ン トについて整理 した ものである ( 表1 7参照)0 表1 7 事業運営のポ イン ト 経営 の在 り方 具体 的 な方策 1.実質的 な運営体制 ( 1 ) トップマ ネジメ ン トの確保 ( 2) 明確 な責任分担体制 ( 3) プロパー中心 の組織編成 ( 4) 理念 .ノウハ ウの継承 2.生存 をか けた経営 戟略 ( 1 ) 積極 的 な経営戦略 ( 2) 段 階的 な事業計画 ( 3) 確実 な収益確保 3.合理的 な経営管理 ( 1) 裏付 けのある経営管理 ( 2) 達成可能 な経営 目標 ( 3) 経営 のバ ッフ ァ一校能 ( 4) 資金 コス ト重視 の経営 ( 5) 部 門別損益 のバ ラ ンス 4.幅広 い協力体制 ( 1 ) 地域 の協力補完 関係 ( 2) 地域外パ ワーの導入 ( 3) 地域 コ ンセ ンサ スの形成 ( 出所) 「地域 を活 かす第 3セ クター戦略」 ( 時事通信社) 1 事業分野 第 3セ クターにおける第 1の課題 は、事業 の分野 に関わる ものであ り、事業が時代の変化、社会経 済情勢の変化 に対応 していけるようにす ることである。 状況 によっては、法人 としての廃止や複数の ものの統合 をため らうことな く行 う必要がある。 第 3セ クターは、元来、時代 の変化 に柔軟 に対応す ることが身上であ り、設立の段階か ら自己 目的化 しない ように留意 してお くべ きである。 2 組 織 第 2の課題 は組織上の ものであ り、役職員の配置 に適材適所 を貫 けるか否か とい うことである。 第 3セ クターは発足 の経緯か らも事業内容か らも、役職員構成が寄合 い所帯 となることが む しろ自然 の 成行 きとなっているが、それ を活かせ るか どうかに事業の成否がかかっていることはい うまで もない。 親方 日の丸 と自己本位 の組合 わせでは、本来、公共性 と効率性 との結合 を企図 した第 3セ クター方 式 の長所 を実現す ることにはな らない。両部門の短所 の組合 わせでは 「3分の 1セ クター」 に しかな らない とい うの も冗談 とばか りい ってい られないのである。 3 採算性 第 3に、経営 の健全性 の確保である。 第 3セ クターは行政主導型で設立 され、収益 をあげることが 主 目的で はない場合が多い といって も、あ くまで も一つの経営体 として採算性 の確保が不可欠である ー 53- 『 第 3セ クターの現状 と課題』 ことはとくに強調す る必要がある。 √ 自治省の 「 地方公社 の調査」 をみて も、都道府県 ・政府指定都市 レベルの公社 の うち、お よそ 1割 弱 において経営収支上損失が生 じてお り、中にはそれが設立時 には予想 もされなかった多額 にのぼる 額 を累積 し、設立 を主導 した地方団体か らの予定外 の財政的支援 に頼 った経営 になっているような公 社 も見受 けられる。 その ような事態 を招 く原因は一様ではないが、た とえば法人設立後何年かにわたって多額の初期投 資 を要するような事業の場合、建設期間中は経常収支の数字が表面化 しないことも手伝 って、 どうし て も関係者間で景気 の よい話 にな りがちであ り、 とて も初期投資か ら送 り込 まれた資本費負担 に耐 え 後の祭 り"であっ られない といった状態が生 じ、赤字が赤字 を呼 んで しまうことになる。 文字通 り " て、その段階では経営努力の余地 も少 ないことにな りかねない。 えて して、第 3セ クターには出資者 も配当 をあてに していないため利潤獲得の動機が弱 く、その う え地域独 占 とい う特権的地位 を享受することにな りがちで競争相手がいないこと、 さらに、役職員の 業績評価 のモ ノサ シがあいまいなことも事態 を悪化 させ ることになる。 また、需要 も多い大都市地域 での経験 を、単純 に地方圏に当てはめるような誤 りを犯 さない よう気 をつけなければならない。 4 運営 ・管理 第 4は、運営 ・管理上の課題である。 第 3セクター自体 に経営 の自主性 を十分 にもたせなが ら、出 資者たる地方団体や民間が どの ように、 どの程度関与 してい くか とい うことである。 現在の法制度で も、( ∋出資のための歳出予算の編成 と議会審議、( 参一定の場合 における地方 自治法 に基づ く経営状況 の掌握 と議会報告や監査、③商法 に基づ く株主権の行使、④民法 に基づ く理事会の議決権 などの仕組 みがある。 この ような法制度 を前提 としつつ、公金か ら支援 しているとい う面 と、弾力的 ・効率的な経営が重 要であるとい う面 とを調和 させ なければならない ところにむずか しさがある。 5 指導 ・監督体制 第 5に、運営 ・管理 との関連 より、地方公共団体側の指導監督体制上の課題がある。 第 3セクター の設立 は、えて して特定分野のみの立場か ら進め られがちなことは否定で きない。それが、おのおの の第 3セクター と関わ りをもつ タテ割 り行政部門 と相乗 して、行政の断片化の方向に進みかねないこ とも懸念 されるので、十分 な注意 を払 う必要がある。 総合的な視点か ら地域づ くりをするとい う最近の地方行政の方向か ら考 えれば、第 3セクターの活 動 も、その重要性が高 ければ高 いほど総合行政のなかでの位置づけを しっか りとす る必要がある。 そのためには、地方公共団体 における 「 市町村の総合計画」 ( 市町村 の基本構想) をは じめ とする 地方団体の行政執行体制の中に、 計画体系の中に第 3セクターの活動 を織込んでい くことか らは じめ、 自治体 に関連す る第 3セクターを横断的 ・総合的に指導 ・監督等行 うようなシステムを組み込みなが ら、前述の ような諸課題 に取 り組 めるように工夫す ることが必要である。 業務の遂行、人事、経営 な ど多方面 にわたる問題だか らこそ断片的な対処では解決不可能 といえa( 1 カ . - 54 - 新潟産業大学経済学部 紀要 N o .1 3 この ように、今 日、第 3セ クター問題 は、単 に第 3セ クター方式 の事業の成否や経営採算性 に関す る観点か らの議論 にとどまやことな く、自治体行政の施策展開 において、 今後 どの ように第 3セ クター を位置づけてい くのか とい う、優 れて今 日的な重要 な課題 として議論 してい く必要がある。そのため、 広範 な角度 より第 3セ クター ( 第 4セ クター、第 5セクター、ジ ョイン トセ クターな どさまざまな事 業 ・非営利セ クター) に関す る広範 な議論が必要である。 これ らのジ ョイ ン トセ クター、民間非営利団体 ( N' po、NCO)、あるいは基金制度 などについては、 別途、稿 を改めて論ず る予定である。 Ⅶ 第 3セ クター を取 り巻 く諸 問題 一般 に、第 3セ クターへ参画す る自治体 と民 間企業の両者 間で は、その設立動機 や設立 目的は基本 的 に相当異 なるために、設立当初 よ り経営 の舵取 は極めて難 しい局面 におかれている。 とりわけ、危 うい計画の もと、安易 に設立 された第 3セ クターが経営不振 に落 ち入 り、計画が頓挫 した例 もあるよ うに、バ ブル経済の破綻 によ り種 々の問題が表面化 して きた。中で も国や自治体 の補助金等の支援措 置 などに全面的 に依存 した計画 を立案 した民間主導 の第 3セ クターの中には、大幅 な計画の延期 や事 業 の縮小 な ど、計画の変更 を余儀 な くされた り、事業 よ り撤退 した例 もある。 中には、法人が解散 し た例 もある ( 前述の NHK 秋田局の放送で は秋 田県天王町の 3セ クの解散事例が紹介 されている)0 他方、第 3セ クター問題 には、固有 の問題点が内在 しているこ とに も留意 しなければな らない。上 尾市 の住民訴訟問題 にみ られ る 「 職員派遣問題」 ( 昨年 の東京高等裁判所 も浦和地裁 の判決 を基本的 には支持 してお り、住民側 の勝訴である)、 また秋 田県議会 や神奈川県議会 などの議会で問題 に され た「 補助金支 出や債務保証問題」な ど、自治体 の財政支援措置や民主的統制関係が暖味であるなど種 々 の問題点が指摘 されている。 これ らの諸問題 は、現行の地方 自治法 や地方公務員法 などの法体系下では、地方 自治体の行財政運 営 において、第 3セ クターが今 日の ように大 きな位置や比重 を占めることになるとは当初予期 されな か ったために生 じている課題である。 地方行財政運営 をめ ぐる法制度上の諸矛盾が第 3セ クター問題 をさらに複雑 に している といって も過言で はない。 これ らの問題 については、別途、稿 を改 めて論ず る予定である。 Ⅸ 第 3セ クターに対 す る新 たな視点 と今後の研 究方向 1 第 3セクターに対する新 たな視点 今 日、国内外 の激動す る社会経済体制 にあって、 自治体 を取 り巻 く地域社会の再編化問題が種 々議 論 されている。 道州制問題、市町村合併問題、広域行政問題 など種 々の問題があるが、究極的 には国 と自治体 の役割分担 を根本的 に問い直す 「 地方分株問題」 に集約 され よう。 この地方分権問題 は、国 と自治体 の役割 を基本的 に見直す ばか りではな く、 自治体 と地域住民の "自治の在 り方" を見直す問 題 として極 めて重要 な問題である。 自治体側 は、国 に 「カネ と権 限の分割 ・委譲」 を求めているが、 国側 は自治体 の 「 行政執行力 や調整力 に問題がある」 と対立 している。 この地方分権 問題 の論議 は、同時 に自立 した地域社会 を目指す 自治体 において、 ( 第 3セ クタ一方 -5 5- r 第 3セクターの現状 と課題』 式 ( 的) の発想) を捉 え直す絶好 の機会で もある。 第 3セクターは、「 現行の 自治体行政の施策の中 ではす き間施策の展開であ り、法制化 されない異端者である」 と、決 して問題 を接小化 してはならな ( 参自治体内部経営 に い.すなわち、第 3セクター問題 は、①地域社会全体 に関わる地域経営の観点、】 関わる自治体経営 の観点、③民活 と官活 ( 官の リス トラを含 む) の観点 よ り、「 地域社会 における新 たな住民、企業、行政の在 り方 に関わる根幹的な問題」 として捉 え直す必要がある。 2 第 3セクターの今後の研究方向 図1 1は、第 3セ クター研究の方向性 を示 した ものである。今後 の第 3セクター研究の方向につい ては、次のような視点か らの取 り組みが必要である。 図1 1 学際的な研究領域 図一 日 学際的な研究領域 ( 課題別テーマ-社会変化への対応) 国際化社会への対応 ( 基本構想 情報化 ・ハイテク化社会 総合計画の事業分野) への対応 ・交通 ・情報 ・ 高齢化社会への対応 インフラ整備部門 自然保護 ・環境保全への対応 ・都市 ・生活基盤整備部門 個人 ・企業等の地域社会 ・生活環境整備部門 への貢献 ・社会福祉 ・労働部門 ソフ ト化 ・サービス化 ・教育 ・文化部門 への対応 ・産業振興 ・育成 ・ 地域間交流 ・提携化への対応 t c 支援部門 e 地域活性化への対応 e t c ( 事業分野別 ・部門別のテーマ) ( 事業の進捗段階別テーマ) ・事業手法の検討段階 ・事業計画の検討段階 ・法人設立の検討段階 ・経営 ( 管理 ・運営)の 検討段階 e t c ( 出所)第 3セクター研究学会編 「 21世紀 を創 る/第 3セクター」公職研 第 1は、第 3セクターの設立か ら経営管理運営 に至 るまでの事業の各進捗段階における基本的な問 題点や課題 について、例 えば事業化の手法や事業経営 に関す る経営管理 ・財務管理 ・組織運営 ・人事 管理問題や経営採算性の問題 など、多角的な観点 より研究調査する必要がある。 自治省 の調査( 1 串によれば、事業実施 を検討 した際 に行われた他 の手法 との比較検討の状況 について は、「 第 3セクター以外 の方法 は検討せず」 とい う回答が過半数 を占めている。 「 直営方式 との比較検 純民間事業者 に委ねることとの比較検討」「 直営、純民間 との比較検討」 など、他の事業手法の 討」 「 検討 はほ とんどなされず に "とりあえず"で第 3セクター方式が採用 された といって も過言ではない。 これ ら当初の事業計画段階における事業手法などを研究す る目的は、各々の事業手法の長所や短所 を -5 6- 新潟産業大学経済学部 紀要 N o .1 3 検討す ることによって、当該事業 に最 も適 した事業手法 や事業推進主体 の検討 を行 うことにある。 事 業分野や事業 内容 によっては、「 第 3セ クター方式 よりは直営方式 や純民 間への委託方式 な どの方が 適 している場合 もあ る」 か もしれない。 また、事業全体 の中で、「 公共」 「 民 間」 「 第 3セ クター」 の 各事業主体がそれぞれ連携 して有機的に役割分担 を行 うことによって、各 々の事業主体 の特長 を発揮 す ると同時 に経営採算性 の リスク分散が図 られ、事業の成功率 を高 め られる場合 もある。 さらに、事 業主体 について も、単純 に商法法人の株式会社形態 を採 れば よい とい うので はな く、事業内容 によっ ては財団法人や公益信託 などの公益法人形態の方が適 してい る場合 もあるか もしれない。この ように、 事業手法や事業推進主体 の研究 は、事業の成否 を大 きく左右す る極 めて重要 な問題であることを十分 認識す る必要がある。 また、経営採算性 の検討 な ど、財務 ・経営 に関す る研究 も重要 なテーマである。 特 に大規模 な投資 を伴 うプロジェク トでは、財務 ・経営 に関す る採算性 の見通 しな どを検討す るシ ミュレーシ ョン分析 を行 うことは不可欠である。 これ らのシ ミュレーシ ョン分析 を通 じて予想 される経営結果 に対す る対 応措置 として、黒字対策や赤字対策 などに関す る検討 も極 めて重要 ポイ ン トであることを十分認識す る必要がある。 この ように、事業化 に際 しては安易 に第 3セ クターを設立す るとい うのではな く、経営諸問題全般 にわた り多角的な観点 について さまざまな局面 より研究す る必要がある。 第 2は、「 基本構想 ・長期振興計画」 などに明示 されている生活環境整備 や都市整備 などの社会資 本整備 との関連性 について、特 に行政施策体系 のなかで施設整備 やシステムづ くりの観点、つ ま り 「 ハー ド」 と 「ソフ ト」 の両面 より第 3セ クターの役割 や機能 について研究調査す る必要がある。 い わば、事業主体 としての第 3セクターの位置づ けや第 3セクターの事業 ・業務内容 など 「 財 ・サー ビ ス」の提供範囲の問題 として捉 えることである。 この間題 は、第 3セクター事業 を行 う際 に問題 とな る ( 公益性 と収益性 のバ ランスをいかに採 るか) という問題 に もつ なが る重要 なテーマである。 この 間題 は、「 公共経済学」 の分野 において種 々の角度 よ り議論 されている問題で もある。 一般 に、「 市 町村基本構想」 や 「 基本計画」 は、 まちづ くりの長期 的な 目標 の設定やその方向性 な どについて明 らかにす る とともに、その達成手段 や事業推進主体 な どを明示 している。 この 目標達成 のための事業推進主体 としては、市町村 な ど当該 自治体 だけではな く、民間企業が出指 して設立 され た財 団法人等 や社会福祉法人な どの 「 民間の公益法人」、 また文化 ・スポーツ ・ボラ ンテ ィア団体 な どの 「 権利能力 な き社団」 と呼 ばれてい る各種 の任意団体 な ど、いわゆる 「 民 間非営利 団体」 ( ノン Pr o f i t ・ Or ga ni z a t i o n) について も、その関連性 や全体計画の中で プロフ ィッ トセ クター :NPO :Non・ の役割分担 な どが種 々の角度 より議論 されることは極 めて重要である0 この ように長期的なまちづ くりの視点 よ り、ハー ド事業や ソフ ト事業 を推進す る事業推進主体 の在 り方や最適 な供給主体 について、多角的にさまざまな局面 よ り研究 をす る必要がある。 第 3は、 2 1世紀 にむけて地域社会で最 も重要 な課題 となっている 「高齢化 」 「国際化」 「 情報化」 「 業際化」 など、今後の社会変化 の方向や進展 との関連 において、第 3セ クターのあるべ き方向や基 本的な対応 について研究調査す る必要がある。 特 に、「 民間活力の活用」 や 「 官の活力の活用」 ( 行政 の リス トラ-組織機構 ・定員等 の再編化等) -5 7- 『 第 3セクターの現状と課題』 の観点か ら 「 社会対応 の視点」 や 「 各種の規制緩和」 な ど、新 しい社会構築の観点 よ り事業推進主体 な どについて、 さまざまな局面 よ り研究調査 をす る必要がある。 もちろん、今 日議論 されている 「 小 さい政府 と大 きい政府」 「 地方分権 ( 地方主権 )」 問題 な ど、行 政組織 また行政組織間の在 り方の問題 などの諸問題 とも直接的 ・間接 的に関連 していることは改 めて 地域住民」 「 企業」 「 行政」の三者 の在 り方 言 うまで もない。 21世紀 を迎 えるにあた り、基本的 な 「 の問題が問われているわけである。 第 4は、第 3セ クターの法的な位置づけについて立法面 に関す る研究調査 が不可欠 な課題 となって いる。 第 3セ クター問題 に大 きな影響 を与 えた上尾市 の住民訴訟問題 に代表 され る 「 職員派遣問題」、 ま た秋 田県議会や神奈川県議会 などの議会で問題 にされた 「 補助金支出や債務保証問題」 な ど、 自治体 の支援措置や民主的統制関係 の在 り方 について、いわゆるイ ンセ ンテ ィブの問題 と同時 にチ ェ ック機 能やその対応問題 な どについて、種 々の観点 よ り研究調査す る必要がある。 第 3セ クターは今後増加 す る傾向が予想 されるので、現行 の地方 自治法や地方公務員法 な どの法体系 のなかで、第 3セ クター の役割や位置づ けな どを明確 に しておかなければ前述 の ような諸問題が生ず る懸念がある。 第 3セク ターの今後の方向づ け とその在 り方 を踏 まえ、法律上の位置づけについて明 らかに しなければな らな い時期 に きた といえよう。 現行法の改正 な どが困難 な場合 には、「 特別立法」 な どによる新 たな法的 整備 を検討す る必要がある。 21世紀 を迎 えるにあた り、地域社会 の中で第 3セ クター をどの ように位 置づ けてい くのか。第 3 セクターの機能や役割 な どについて、理論 ・実証研究、実態 ・事例研究 な ど、広範 に多角的な観点 よ り研究調査が急務の課題 となっている( 1 9 ) 0 ( 注) 本稿 は、第 3セクター研究学会 の発表 な ど、筆者 の最近の研究論文 や講演等 を再整理 して取 り纏め た ものである。 ( 1 )「 地方公社」は、次 の ような概念規定 の もとに、自治省が全 国的 に調査 している。この調査結果 は、 自治大臣官房地域政策室編 『 地方公社総覧』 ぎょうせ い、平成 5年 8月 に詳解 されている。 詳細 に ついては同書 を参照 されたい。調査対象お よび調査方法等 は次 の とお りである。 ① 調査 の 目的及 び方法 この調査 は、地方公共団体が出資 しているいわゆる地方公社 の組織、出資の状況等 を明 らかに す るため、平成 4年 1 2月、各都道府県及 び政令指定都市 に照会依頼 して実施 した ものの結果 を まとめた ものである。 ② 調査 の対象 とした法人 この調査 の対象地方公社 は、( ∋公社 、協会、基金、株式会社等 その名称 の如何 にかかわ らず民 法及 び商法等 に基 づ く法人であって、単独 の地方公共団体 が 25%以上 出資 している もの並 びに ②特別法 に基づ く土地開発公社、地方住宅供給公社及 び地方道路公社 であ る。 なお、今回は、民 法及 び商法等 に基づ く法人であって、上記( 丑を除 く地方公共団体が出資 しているすべての法人 を ー 58 - 新潟産業大学経済学部 \ _ ′ 紀要 N o .1 3 対象 とした付加調査 を実施 している。 したが って、 2以上の地方公共団体が出資 している法人で 5%以上 の ものであって も、いずれの あって、当該 出資金の合計が当該法人の出資金の総額 の 2 地方公共団体 の出資比率 も 2 5%未満 の法人 は、前 回 までの調査 で は対象 としていなかったが、 今 回の付加調査 の対象 となる ものである。 ただ し、その法人の事業活動の範囲が全国的な もの又 は全国的規模 で設立 されている法人は除 かれている。 ( 参 調査時点 調査時点 は、平成 5年 1月 1日現在である。 ( む 調査対象法人の区分 この調査結果 をまとめるに当たっては、調査対象法人 を次の とお り区分 した。 商 地 方 公 社 対 査 調 法 象 人 法 法 人 割合が 単独 の地方公共団体 出資 25%以上の法人 民 法 法 人 土地開発公社、地方住宅供給公社、地方道路公社 区 分 割( 単独 合の地方公共団体 が2 出資 付加調査) 5%未満 の法 人 民 法 法 人 ( 2) 竹内宏監修 ・出井信夫著 『 第三セ クタービジネス』 日刊工業新聞社、平成 2年 11月 ( 3) 各分野の代表的な事例 については、上掲書 『 第三セ クター ビジネス』 を参照 されたい。 ( 4) 第 3セ クター研究学会主催 「 岐阜 シンポジウム」 ( 平成 5年 9月 1 7日)の各パ ネ リス トの発表要 2 1世紀 を創 る ! 第 3セ クター』公職研、臨時増刊号 4 6号、 旨である。第 3セクター研究学会編 『 平成 6年 6月 に所収 されている。 ( 5) 上掲書 に所収。 ( 6 ) 上掲書 に所収。 ( 7 ) 出井信夫編著 『リゾー ト事業戦略研究資料集』綜合ユニコム、平成 3年 4月 ( 8 ) 日本開発銀行設備投資研究所経営研究室編 『ケースス タデ ィ 地域 プロジェク トの財務』 ぎょう せ い、平成 5年 3月 ( 9) 中小企業事業団編 『「 街づ く会社」 の設立 ・運営 ノウハ ウ』 中央経済社、平 成 6年 3月 ( 1 0 ) 前掲書。第 3セ クター研究学会編 『 2 1世紀 を創 る ! 第 3セクター』 に所収。 自己資本の回収性 、収益性 の検討 は、次 の ようになされてい る。 事業 の収益性 は、投下 した資本の生み出す利潤である。 本来 はキ ャッシュフローの現在価値での利 潤率、つ ま り投資収益率で表現 される。 しか し、経常的 に経営 されている事業 にあっては、財務会計 -の配慮が現実的 に も重要であ り、その事業 に投下 されている資産総額 に対す る事業利潤率 は、次式 の通 り表 される。 - 59 - 『 第 3セクターの現状 と課題』 ROA-i ( 1 ) ROA-÷ ×÷ ( 2 ) ROA :事業利潤率 A :投下資本- (自己資本+有利子負債) 通常 は期中平均 p :事業利潤- ( 経常利益 十支払利息割引料) S :売上高 即 ち、第 3セクターの事業は投下資本に見合 った事業利潤が挙げられる事業である。 事業費 ( 投資総額) と自己資本比率の問題 について、事業 を行 うために必要 となる投下資本のうち、 自己資本 と他人資本、即 ち、有利子負債の割合の考 え方については、次のようにあ らわされる。 ( 1 ) 自己資本利益率 を規定する要因 先 にみたように 企業 としての第 3セクターは、自己資本利益率がある一定の水準以上必要である. 、 自己資本利益率の水準 を決定する要素 は次の① ∼③である。 ( D 事業利潤率 :事業の収益性 ② 借入金金利率 :負債のコス ト ③ 負債 ・自己資本比率 :企業の財務構成 ④ 自己資本利益率 :自己資本の収益性 ( ∋ 事業利潤率 :R OA 投下 した総資産が生み出す金利支払前の利益の、総資産に対する割合である。 但 し、総資産のうち 企業間信用 にかかわる金融のコス トは経費の中に織 り込 まれているので、通常使われる事業利潤率は 先の( 1 ) 式で定義 された。 ROA- 経常利益 +支払利息割引料 ×1 0 0 自己資本+有利子負債 ( 参 借入金金利率 :i 第 3セクターの場合、有利子負債 は金融機関か らの借 り入ればか りでな く制度金融や公的資金の導 入がある。 i- 支払利息・ 割引料 ×1 0 0 有利子負債( 期中平均) ( 参 負債 ・自己資本比率 : D/ E 有利子負債の自己資本 に対する割合である。 D/ E- ④ 有利子負債 ( 期中平均) 自己資本 ( 期中平均) 自己資本利益率 :R OE 自己資本経常利益率 :R OE' -6 0- 新潟産業大学経済学部 紀要 N o .1 3 自己資本利益率 は上記 3つの要因によって次 のように決定 される。 ROE' -事業利潤率 + ( 事業利潤率一借入金金利率) ×負債 ・自己資本比率 ROE -ROE' × (1-税率) 即 ち、自己資本経常利益率 は事業利潤率 と財務 レバ レッジを加 えた ものである。財務 レバ レッジと は上で示 した式 の第二項 を指す。? まり、 自己資本利益率の変動 を増幅 させ る挺子 (レバ レッジ)の 作用 を意味する。 自己資本利益率 は自己資本経常利益率か ら税率 を勘案 した ものである。 出資者が資本 を投下 し、企業経営者が経常努力 を行 う重要 な目的の一つは、 自己資本利益率の向上 にある。 第 3セクタ丁において も基本的には自己資本利益率が高い企業 は、健全 な経営が営 まれてい るといえよう。 ( 2) 自己資本比率の検討 自己資本利益率 を規定す る式 を使 って、 自己資本比率 と他人資本のバ ランスをどのように考 えれば 良いかを検討す る。 図 5は自己資本比率 を上記の式 に従 って 3つのケースについて、事業利潤率 と借入金利率 との関係 を同様 に措 いた ものである。 想定 ① 事業利潤率 :0%- 1 0% ( 参 借入金金利率 :0%か ら 1 0%. ③ 負債 ・自己資本比率 :9対 1、 8対 2、 5対 5 ㈹ 前掲書。 『 ケースス タデ ィ 地域 プロジェク トの財務』 ( 1 2 ) 中馬邦昭 「 民間活力 と第三セクター」 『 地域開発』平成元年 8月号、紛 地域間セ ンタ一 個 第 3セクター研究会編 『 地域 を生かす第 3セクター戦略』時事通信社、平成 4年。 掴 個 上掲書。 『 地域 を生かす第 3セクター戦略』 「 朝 日新聞」 ( 秋田県版の秋田太平山 リゾー ト開発の特集記事、平成 5年 9月 1 8日付 け)0 ( 1 6 ) 山下茂 「 第三セクターの現状 と課題」 『 地域開発』平成元年 8月号、紛 地域間セ ンター ( 1 カ 前掲書。 『 第三セクタービジネス』 ( 1 8 ) 自治省 ・地方公営企業の新展開等 に関する研究会 『 地方公営企業 に準ずる第三セクターに関す る 調査』平成 4年 3月。 個 第 3セクター問題 について、 自治体 の観点 お よび民 間企業等 の観点のみならず 、NPO、NGO等 民間非営利団体の観点 など、地域開発、地域振興、地域活性化問題 について、広範 な角度 より議論 ・ 5日に設立 された。平成 5年度 に行わ 研究するために、「 第 3セクター研究学会」が平成 5年 7月 1 れた研究会 ・岐阜 シンポジウム等の研究成果 を取 り纏めた第 1号の研究報告書が上梓 されている。 第 3セクター問題 に関心がある読者 は是非参考 に して頂 きたい。 第 3セクター研究学会編 『 2 1世紀 を創 る ! 第 3セ クター』公職研、臨時増刊号 4 6号、平成 6 年 6月 を参照 されたい。 -6 1- 『 第 3セ クターの現状 と課題』 また、第 3セクター研究学会の事務局 は次 に示す とお りである。 学会本部事務局 面2 7 3 千葉県船橋市藤鹿3 3 5 1 1 4 0 4 株式会社地域計画研究所内 ℡0 4 7 4 3 0 1 8 7 2 FAX0 4 7 4 6 0 0 2 4 7 第 3セクター研究学会 TheJ a pa nSo c i e t yf or" Da i s a nSe c t or" 会長 金田昌司 中央大学経済学部教授 常任理事 ・事務局長 出井信夫 新潟産業大学経済学部助教授 第 2事務局 ( 日本海支部) 面9 4 5 1 3 新潟県柏崎市軽井川 4 7 3 0 新潟産業大学経済学部 出井研究室 ℡0 2 5 7 2 4 6 6 5 5 FAX0 2 5 7 2 2 1 3 0 0 - 62 -