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平成26年度版

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平成26年度版
スポーツ生命科学系
やま
もと
まさ
よし
氏 名
山
本 正 嘉 教授
主な研究テーマ
□安全登山のために登山者が自分で実行できる体力テストの開発
平成26年度の研究内容とその成果
す。山歩きは多くの人が想像するよりもき
登山はウォーキングの延長上にあり、日
つい運動なのです。
本で最も盛んなスポーツの一つです。老若
ところで「体力相応の登山をしましょう」
男女、誰にでも楽しめる運動で、大きな健
と言われても、これまでは自分の体力がど
康増進の効果もあります。
れくらいあるのかを客観的に評価する方法
しかし一方では、事故の話をよく耳にし
がありませんでした。たとえば「夏休みに
ます。残念なことに、山での遭難事故は増
日本アルプスの縦走がしたいのですが、私
加の一途をたどっています。その原因とし
の体力で行けるでしょうか?」と尋ねられ
て、登山者が自分の体力に不相応な山に出
ても、適確なアドバイスをすることができ
かけてしまうことがあげられます。
なかったのです。
表1はさまざまな登山の運動強度を示し
そこで私たちは、近郊の低山でマイペー
たものです。ハイキングでさえ強度は高く、
スの登山をしたときに、1時間でどの程度
ジョギングの要素を含みます。一般的な登
の標高差を上れるかで、どのレベルの登山
山では典型的なジョギングの強度となりま
がこなせる体力があるかを判定できる「マ
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Ainsworth
2000
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105m
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700
770
835
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970
1035
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イペース登高能力テスト」を開発しました。
430m登ることができれば7メッツの体力
表2はその実施方法で、表3はその評価
があり、一般的な登山ができるレベルにあ
表です。たとえば体重の10%のザックを
ると判定できます。
背負ってテストをした場合に、1時間で
また350mであれば6メッツの体力があ
A
B
C
B
D
1
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り、ハイキングならば問題ありませんが、
者の体力レベルを客観的な数値で表すもの
一般的な登山をするには体力不足であると
です。両者をマッチングさせることで、事
アドバイスできます。300m以下の人に対
故防止に大きな寄与ができると思います。
しては、ハイキングでも体力的に不安があ
このマイペース登高能力テストは、今年
ると注意を促すことができます。
の10月に長野県で、多数の登山者を募集し
て試験的に実施されました(写真)。
これからの研究の展望
将来の目標として、表3のデータをもと
昨年度の本欄では、私たちの研究成果を
に、全国各地の主な低山に図1のような看
もとに、長野県が104の登山コースについ
板が設置され、登山者自身で安全登山のた
て体力のランク付けをして公表したと書き
めのアクティブラーニング(能動的学習)
ました。今年度からは、長野、新潟、山梨、
ができるようになることを期待していま
静岡の4県で、合計400近くのコースに適
す。
用されることになりました。
このランク表示は、各コースの体力度を
<参考文献>
客観的な数値で表すものです。一方、ここ
1.山本正嘉、宮﨑喜美乃、萩原正大:山
で紹介した体力テストは、一人一人の登山
での登高能力を指標とした登山者向け
の体力テストの開発。登山研修、30: 29-37,2015
2.山本正嘉:登山に必要な体力とトレー
ニング;いわゆる「ベテラン」こそ危
ないことを認識しよう。全国「山の日」
フォーラム、2015,3,29、東京(講
演録は印刷中)
(信濃毎日新聞 2015年10月5日付)
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