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アメリカ合衆国における消費者クラスアクション訴訟の実情

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アメリカ合衆国における消費者クラスアクション訴訟の実情
資料3-1
アメリカ合衆国における消費者クラスアクション訴訟の実情
弁護士
大
髙
友
一
1.はじめに
2007 年 6 月
日本弁護士連合会・京都弁護士会合同調査団による現地調査
カリフォルニア州サンフランシスコ
法律事務所(原告側・被告側)
、裁判所、消費者団体、学者
2.消費者クラスアクション訴訟の提訴段階における実情
○クラスアクション訴訟を個人で提起することはおよそ不可能
→ 法律事務所(弁護士)が大きな役割を果している
【提訴案件の選別における考慮要素】
・案件の内容(認容可能性、案件の規模、専門性)
・事務所の財政的規模との兼ね合い
・被告となる事業者の財務状況
→ 告知費用の負担と弁護士費用の完全成功報酬制が大きく影響
3.消費者クラスアクション訴訟の実情
(1)クラス認証に関する決定まで
→ 被告側はクラス認証をさせないことに全力を注ぐ。
【クラス認証要件に関して主に争われる点】
・共通性
・共通争点の優越性
・適切代表性
(2)クラス範囲の特定方法
→ 客観的な要件により特定
(3)クラス構成員への告知
→ 連邦裁判所では、いわゆる Eisen 判決により、具体的に知れたる構成員
には個別告知が必要とされる。
一方、州裁判所では州によって異なっており、カリフォルニア州では公
告だけによることも可能
具体的な告知手法は、裁判所の裁量判断
(4)クラス認証決定後
→ 原告・被告双方に和解に向けたインセンティブが生じる
ほとんどの案件が和解により解決される(後記5.参照)
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(5)解決までに要する期間
→ 年単位の時間を要する
4.損害の立証・認定方法
(1)原則
→ 原告側が損害の存在及びその額等の証明責任を負うことは日本と同様
(2)損害額の認定方法
【クラス構成員個々の損害額が容易に立証・認定できる場合】
個別に立証・認定する
【クラス構成員個々の損害額が容易には立証・認定できない場合】
統計的手法の活用、クレーム手続の活用
(3)クラスアクション訴訟におけるディスカバリー
→ クラス構成員個々の出廷を基本的に求めないクラスアクション訴訟におい
ては、被告事業者が保有している資料は通常訴訟にまして重要
5.クラスアクション訴訟における和解の実情
(1)クラスアクション訴訟における和解の利用度
→ クラス認証されたほとんどの案件が和解で解決される。
連邦裁判所で 1996 年から 2005 年の間にクラス認証された案件の 9 割が
和解で解決
(2)和解のなされる時期
→ クラス認証後が基本であるが、和解に向けた代理人間の交渉はクラス認証
前からなされることも多い。
(3)クラスアクション訴訟における和解のメリット、デメリット
①メリット
→ 賠償金分配に困難がある事案において、柔軟な解決を図りやすい
②デメリット
→ クラス構成員の利益が適切に保護されない危険性がある
(4)和解における裁判官の役割の重要性
→ 通常訴訟とは異なり、クラスアクション訴訟では、裁判官は法廷に出頭し
ないクラス構成員の利益の守護者であることも期待される。特に和解におい
ては、適正な内容の和解をはかるため、裁判官の役割が重要。
(5)和解を承認するにあたって注意を要するとされる場合
→ クーポン和解・cy-pres 法理・Fluid Recovery が活用される場合、賠償額の
上限を設定する場合、補償の対価なくして事業者の免責を図る場合、和解を
目的としたクラス認証がなされている場合 等
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6.賠償金のクラス構成員への分配
(1)クラス構成員に賠償金を分配・交付する場合
・個々の損害額が判決や和解で確定している場合
・個々の損害額が判決や和解で確定していない場合
・賠償金に剰余が生じた場合の対応
(2)クラス構成員に賠償金を分配・交付しない場合
・クラス構成員の把握が困難な場合
・分配の実施が費用面から困難な場合
→ cy-pres 法理、Fluid Recovery
7.消費者クラスアクション訴訟における消費者団体の役割
基本的には側面的支援もしくは不適切なクラスアクション訴訟の監視が中心
8.消費者被害救済におけるクラスアクション訴訟の功罪
(1)メリット
・少額多数被害の救済が可能となる
・事業者の不当利得吐出しの実現も可能
・和解による柔軟な解決も可能
・多数の訴えを統一的かつ一回的に解決することが可能
(2)問題点
・クラス構成員にとって不適切な解決となる可能性
・告知公告費用の負担
9.参考文献等
2007 年調査の報告書は日弁連ホームページより入手可能
http://www.nichibenren.or.jp/ja/committee/list/shohisha/shohisha_b.html
その他の参考文献として
浅香吉幹「アメリカ弁護士のクラス・アクション戦略」
東京大学法科大学院ローレビュー第 3 巻(2008 年 9 月)
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