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中間評価報告書(案) - 新エネルギー・産業技術総合開発機構

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中間評価報告書(案) - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
第3回研究評価委員会
資料 4-2-3
「低摩擦損失高効率駆動機器のための
材料表面制御技術の開発」
中間評価報告書(案)概要
目
次
(頁)
分科会委員名簿・・・・・・・・・・・・
1
プロジェクト概要・・・・・・・・・・・
2
評価概要(案) ・・・・・・・・・・・・・
8
評点結果 ・・・・・・・・・・・・・・・
11
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 研究評価委員会
「低摩擦損失高効率駆動機器のための材料表面制御技術の開発」(中間評価)
分科会委員名簿
(平成16年7月現在)
氏名
分科会
会長
分科会
会長代理
分科会
委員
山本
三宅
所属、役職
隆司
正二郎
岩井
善郎
男澤
宏也
河合
潤二
中村
隆
東京農工大学
工学部
機械システム工学科
日本工業大学
工学部
システム工学科
福井大学
工学部
機械工学科
日刊工業新聞社
編集局
科学技術部
教授
教授
教授
編集委員
三菱自動車工業株式会社 開発本部 ドライブトレイン
技術部 エキスパート
名古屋工業大学大学院
工学研究科
教授
産業戦略工学専攻
敬称略、五十音順
事務局:独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究評価部
1
0.概
要
作成日
平成 16 年 5 月 11 日
制度・施策
( プ ロ グ ラ 地球温暖化防止新技術プログラム
ム)名
事業(プロジェ
低摩擦損失高効率駆動機器のための材料表面制御技術の開発
クト)名
担当推進部
ナノテクノロジー・材料技術開発部 主査
/担当者
PJ コード
P02012
山出善章
自動車の動力伝達部品、ポンプ設備・機器の弁・ポンプ・シリンダ部品、発電
所で用いられる発電用タービン軸受等の摺動部を対象とした省エネルギー化を達
成するための共通基盤技術として、摩擦摩耗に係る環境・圧力等諸条件に最適な
境界潤滑膜を材料表面に形成することで、これらの摩擦損失を大幅に低減する材
0.事業の
料表面制御技術を確立することを目的とする。さらに、これらの知識・技術を体
概要
系化・普遍化することによって、材料表面制御技術をコアとして機械システム技
術も一体となった摩擦摩耗制御技術を確立し、動力伝達機構を有する設備機器の
効率向上、省資源・省エネルギー化の実現ならびに地球環境問題の解決に資す
る。
Ⅰ.事業の
位置付
け・必
要性に
ついて
地球温暖化問題は喫緊の課題であり、京都議定書において、大気中への二酸化
炭素の排出抑制が求められている。我が国は 2010 年度の温室効果ガスを 1990 年
度比で 6%削減するために、温暖化対策に取り組んでいる。それに関して、経済産
業省では 2002 年より、波及性と即効性のある対策として「革新的温暖化対策技術
プログラム」を開始した。
その中で駆動機械におけるエネルギーロス対策は大きな課題の一つであり、本
プロジェクトは、駆動機器の摺動部材料表面の機能を制御するトライボロジー技
術により省エネをはかる新たな試みであるため、幅広い機器への適用による波及
効果が期待される。また、本開発は材料表面の制御が主体であるが、駆動機器の
構造、材料、環境等からなる一つの系(トライボシステム)の特性改善を目標と
し、開発成果が容易に実用機器製品として具体化され、有効な温暖化対策につな
がるもの。
さらに本開発は、材料、機械、化学の多面的な基盤技術の融合を必要とする境
界領域技術であるが、各要素技術をシステムとして総合的に取り扱う産官学の連
携体制により我が国のトライボロジーの技術基盤の確立に資する。
Ⅱ.研究開発マネジメントについて
駆動機器トライボシステムの省エネ化をはかるため、高面圧摺動部の材料表面
における境界潤滑現象の解析技術および制御技術の確立と、それらに基づいた表
事業の目
面材質の制御による自動車ベルト CVT、水圧機器、発電タービン軸受の高効率化の
標
実現
事業の計
主な実施事項
画内容
評価解析・潤滑制御技術
H14fy
自動車ベルト CVT
2
H15fy
H16fy
H17fy
評価解析技術開発
機器システム解析
材料・機器設計
評価・選定
H18fy
境界潤滑制御モデル
耐久性、実用性
水圧機器
材料・機器設計
発電タービン軸受
材料・機器設計
開発予算
会計・勘定
( 会 計 ・ 勘 一般会計
定 別 に 特別会計(高度化)
実績額
総予算額
を記載)
開発体制
H14fy
評価・選定
評価・選定
H15fy
H16fy
耐久性、実用性評価
耐久性、実用性評
総額
0
0
0
450
440
430
450
440
430
経産省担当原課
製造産業局 鉄鋼課
運営機関
新エネルギー・産業技術総合開発機構
プロジェクトリーダー
岩渕
委託先
(財)金属系材料研究開発センター、㈱神戸製鋼所、ジヤトコ
㈱、出光興産㈱、三菱重工業㈱、㈱ナブコ、大同メタル工業
㈱、(独)産業技術総合研究所、岩手大学、東京工業大学
明 岩手大学 工学部
教授
情勢変化
本プロジェクトは、平成 14 年度に経済産業省の直轄事業として開始され、平成
への
15 年度より NEDO に移管された。
対応
[事業全体の成果]
摺動部の、ナノレベルの境界潤滑膜の構造を積極的に制御する事でトライボロ
ジー特性を制御し、駆動機器を省エネルギー化する目標に対し、
評価解析技術の研究開発においては、ベルト CVT、水圧機器、タービン軸受の省
エネルギー化の実現方法を検証するため、摺動部の接触状態、境界潤滑膜の構造
と性質に着目し検討した結果、各機器に特有の境界潤滑膜あるいは変質層等が摺
動部に形成されていることが確認され、それらの構造への表面皮膜、潤滑剤、環
Ⅲ . 研 究 開 境条件の影響を把握し、構造最適化への指針を提示した。
次に各機器システム毎の研究開発においては、摺動部材質、環境、接触状態等
発成果につ
の各条件をスクリーニングし、表面皮膜、潤滑剤、環境の候補をしぼりこんだ。
いて
改善効果の検証のため、各駆動機器の要素および機器システムを高精度で模擬す
る試験装置を開発した。これにより、境界潤滑膜構造の制御による駆動機器の省
エネ化実現の可能性が確認された。
上記の結果の通り、一部項目では既に中間目標を達成済みで、残る項目につい
ても H16 年度中に中間目標を達成出来る見通しを得た。
3
[テーマ毎の成果]
研究開発項目①「潤滑膜の構造・特性及び生成機構の解明のための評価・解析技
術に関する研究」
・中間目標①(1):潤滑膜の生成機構解析、ならびに、摺動部材間の接触機構解明
のための評価方法の確立
トライボロジー特性と境界潤滑膜の関係を把握する上で不可欠な境界潤滑膜の
諸性質を評価する方法を確立した。具体的には、TOF-SIMS 等を用いた境界潤滑膜
の表面分析技術、潤滑膜生成機構の評価方法、表面の降伏領域の計測による摺動
部材間の接触機構の評価方法等、主要な解析技術 12 件のうち 8 件を確立でき、平
成 16 年度中に残りの 4 件の評価技術を確立し目標を達成できる見通しである。
・中間目標①(2):環境(潤滑油/水など)、材料(表面構造、形態など)、摩擦条
Ⅲ.研究開
件と摩擦摩耗特性との関係を解析するための評価方法の確立
発成果
小型サンプルを用いた摩擦摩耗試験機による評価方法を確立中。摺動面性状、
に つ い 境界潤滑膜性状および摩耗量を実機あるいは実機模擬試験機と比較検証し、試験
て
条件を修正することにより進めている。具体的にはベルト CVT 用に、ベーンオン
ディスク試験で、境界潤滑膜の組織、厚さを実機と同じに再現できる実験条件を
見出した。計画通り進捗しており、H16 年度中間目標を達成できる見通しである。
・中間目標①(3):潤滑膜生成機構を統合化した表面構造生成モデルの基礎の提示
ベルト CVT、水圧機器、タービン軸受それぞれの、実機かそれと同等の装置の摺
動部に境界潤滑膜あるいは変質層等が形成されることを確認し、さらに潤滑油、
水質、面圧が、境界潤滑膜構造への影響因子であることを把握した。CVT について
はトライボロジー特性との関連性も把握した。これらに基づき、各機器システム
の目標トライボロジー特性実現のための指針を見出した。混合潤滑解析、摺動面
の接触機構解析、潤滑膜の生成挙動、特性評価により得られた知見に基づき、各
機器システムの摺動部の基礎的なモデル案の検討を予定通り進めており、目標達
成できる見通しである。
4
研究開発項目②「CVT動力伝達システムの最適効率化に関する研究」
・中間目標②(1):ベルト CVT 実機摺動環境をラボ的に模擬する試験方法の確立
3 次元動的応力シミュレーションにより、エレメント摩擦面平均面圧、エレメン
ト/プーリ間の相対摺動速度を求めた。実機と模擬試験のエレメントの摺動面摩
耗を比較し、試験の荷重条件、摺動速度及びならし条件を決定。摩擦特性は±5%以
内でシミュレートでき、摩耗量も実機を再現し、目標を達成。
・中間目標②(2):ベルト CVT 模擬環境下における摩擦係数の制御モデルの構築
モデル構築に必要な境界潤滑膜膜厚、変形抵抗、表面皮膜硬さと摩擦係数の
データを実機及び模擬試験で実測し蓄積。
エレメント/プーリ間の混合潤滑解析を実施し接触部の表面形状の影響を把握
した。平成 16 年度は境界潤滑膜の生成過程のデータを加えてモデルを構築し、中
間目標を達成できる見込み。
・中間目標②(3)ベルト CVT 模擬環境下における摩擦係数の 10%向上
プーリの表面粗さの制御、および開発油 A1 の適用により、摩擦係数向上効果が
認められ、両者の併用で摩擦係数 0.12(現状 0.11 に対し約 10%向上)が得ら
れ、ほぼ目標を達成。平成 16 年度は、さらにプーリ表面へのコーティング膜の効
果も加えることで、目標を上回る摩擦係数が達成可能と考えられる。
Ⅲ.研究開
発 成 果 研究開発項目③「高効率高耐久性水圧機器システムに関する研究」
に つ い ・中間目標③(1):弁・ポンプ摺動部構造及びシリンダ・バルブ構造をラボ的に模
擬するための試験方法及び摺動条件の明確化
て
弁・ポンプ摺動部構造については、バルブ/プレート間及びピストン/シリン
ダ間の摺動部構造の模擬試験装置を製作。シリンダ、バルブ摺動部構造について
は、接触状態模擬可能な摺動試験装置を製作。実機相当の運転状況下で耐久性を
評価する単要素模擬試験装置を製作。さらに計算と実験により、実機が再現でき
ることを確認した。以上により目標を達成。
・中間目標③(2):潤滑膜の生成機構解析ならびに摺動部材間の接触機構解明のた
めの評価方法の確立
断面 TEM による境界潤滑膜の断面構造の観察に、世界で初めて成功したのを始
めとし、構造解析、化学状態解析、摺動部移着物の観察、膜厚測定法を確立し
た。平成 16 年度は、ナノインデンター、SPM による機械的特性評価方法を確立
し、中間目標を達成する見込み。
・中間目標③(3):低摩擦損失水圧機器のラボ的模擬試験機で比摩耗量 10-6mm3/N
/m(10-8mm2/kgf)の達成
DLC系皮膜およびCrSiN小型サンプル試験において比摩耗量の中間目標を越える
-7
10 mm3/Nmを達成する膜制御条件を把握。DLC系皮膜は、単要素模擬試験において
中間目標を越える 10-7mm3/Nmの比摩耗量が得られ、目標を達成。
5
研究開発項目④「耐高面圧複合軸受システムに関する研究」
・中間目標④(1):発電用タービン軸受の摺動環境をラボ的に模擬するための試験
方法及び摺動条件の明確化
大きさ、材質が実機と同等の、低回転ターニング運転の模擬試験機、および
タービン回転上昇時の昇速モードと回転低下時の降速モードの模擬試験機の設
計・製作を完了し、摺動条件を決定し、目標を達成。
・中間目標④(2):軸受摩擦摩耗特性に影響する回転摺動試験前後の表面性状因子
Ⅲ.研究開
の明確化
発成果
PEEK 系複合材料においては、表面層が塑性変形し難いことと、境界潤滑膜の形
に つ い 成の、因子としての影響度が明らかとなった。H16 年度には、残る、境界潤滑膜の
て
硬さ、せん断強度の影響度も評価し、目標達成の見通し。
・中間目標④(3):発電用タービン軸受のラボ的模擬試験機で許容最大面圧を
15kgf/cm2から 30%向上
PEEK系複合材料は、目標を上回る 29kgf/cm2(2.9MPa)の負荷に対しターニング
摩耗試験および昇速降速試験において良好な耐焼き付き性を示し、目標を達成。
投稿論文
「査読付き」6 件、「その他」口頭発表 31 件
特
「出願済」10 件、海外特許 1 件、「登録」0 件、
「実施」0 件
許
本開発は素材・部品・機器の各役割を担うメーカが連携し、材料技術と機械技
術を一体として、開発を進めることで、早期の実用化と普及を目指している。各
機器システムの実用化、事業化の見通しを以下に示す。
テーマ
市
自動車用変速機
a. ベルト CVT
Ⅳ.
実用化、事
業化の見通
しについて
場
製品/
(推定市場規模)
ベルト CVT システム
(国内:約 1000 億円)
ベルト CVT 用潤滑油
(国内:約 50 億円)
導入・販売開
始時期(最短)
平成 21 年度
平成 21 年度
b. 水圧機器
産業機器全般
水圧機器システム
(国内国外:約 5000 億円)
平成 22 年度
c. タービン軸受
重電機器
発電用タービン軸受
(国内国外:約 100 億円)
平成 21 年度
その他の機器
排水ポンプ、圧縮機、小型ター
ビン等軸受
(国内国外:約 100 億円)
Ⅴ . 評 価 に 評価履歴
関する
評価予定
事項
平成 16 年度 中間評価実施
Ⅵ . 基 本 計 策定時期
画に
関 す る 変更履歴
事項
平成 14 年 3 月 策定
平成 19 年度 事後評価実施予定
6
「低摩擦損失高効率駆動機器のための材料表面制御技術の開発」
プロジェクト全体の研究開発実施体制
経済産業省
指示・協議
NEDO
研
究
プロジェクトリーダー
体
岩手大学工学部 教授
岩渕 明
連名契約方式
委 託
[代表委託先]
(独)産業技術総合研究所
新炭素系材料研究開発センター
(田中チーム長)
(財)金属系材料研究開発センター
共同研究
共同研究
大 学
(2大学、4研究室)
岩手大学
岩渕研究室
森研究室
東京工業大学 中原研究室
益子研究室
7
委 託
企 業
(6社、7事業所)
㈱神戸製鋼所
ジャトコ㈱
出光興産㈱
三菱重工業㈱ 長崎研究所
高砂研究所
㈱ナブコ
大同メタル工業㈱
「低摩擦損失高効率駆動機器のための材料表面制御
技術の開発」
(中間評価)
評価概要(案)
1.総 論
1)総合評価
各種のトライボロジー要素の性能を向上させ、エネルギー消費を低減するため
に、境界潤滑膜を共通のキーワードとして各研究課題を統一的に解釈しようとい
う今までに例を見ないプロジェクトであり、その意図を高く評価する。また、プ
ロジェクトの進捗状況についても、所期の計画通りに進行しており、今後のトラ
イボロジー研究・開発の活性化や省エネルギーへの貢献など、目的に沿った十分
な成果が期待できる。
しかしながら、個別テーマ間の有機的な連携が不十分であり、特に評価解析
グループは他の実用化研究グループとの関係を明確化するとともに、他の研究開
発項目の基本戦略を先行して示す必要がある。
2)今後に対する提言
現在までの成果で実用化の可能性が見えてきているので、更なる省エネルギー
化の推進と学術的成果を得るため、評価・解析研究をより充実し、開発速度を速
めることが必要である。
実用化に関しては、安定性、信頼性に関わる実機ベースでの研究を早急に進め
ると共に、実用化スケジュールを前倒しし、早期実用化を目指して頂きたい。
2.各 論
1)事業の位置付け・必要性について
本プロジェクトは、省エネルギー技術としてトライボロジーを取り上げ、各要
素技術の成果を境界潤滑という太い横糸で有機的に結合して新たな学問的知見を
獲得し、その上に立って省エネルギー・高効率機器の設計・製作を行うことを目
的としており、国の重要施策である地球温暖化対策に沿った総合的研究として、
NEDOの関与が必須のプロジェクトであると考えられる。
また、得られる成果は汎用性の高いものになる可能性があり、他分野・他領域
の業種へも高い波及効果が期待されるが、そのためには各要素技術を関連づける
境界潤滑の統一的モデル、メカニズムを明示し、応用範囲を広げるための研究体
制の強化も必要と考えられる。
2)研究開発マネジメントについて
エネルギー削減に対して具体的、定量的な目標が明示されており、達成の基準
も明確である。また、研究開発計画は十分に実行可能であり、担当する大学、企
業、公的機関の役割も適切に設定されている。
8
但し、研究開発のマネジメント体制の組織的役割が不分別であるため、今後は
評価・解析グループの強化と開発グループ間の情報交換を促進するとともに、プ
ロジェクトリーダー及び研究企画委員会による一層のリードが必要である。
3)研究開発成果について
実用テーマに関しては、投入された予算に見合った成果が得られつつあると考
えられる。特に、CVT 動力伝達システムと水圧機器システムでは、今後開発が順
調に進めば市場の拡大に繋がることが期待される。また、評価・解析技術の開発
では、当初期待した成果が得られたならば、世界初あるいは世界最高水準の新た
な技術領域を開拓する機縁になると期待される。
しかしながら、現段階では成果に基づく学術的(理論的)展開の新規性、独創
性にもの足りなさを感じる。さらに、特許申請、論文発表等については、産業へ
の波及効果の観点からも、より積極的に行うことが望ましい。
4)実用化、事業化の見通しについて
対象として取り上げた研究項目については、実用化、事業化の対象が具体的で
あり、達成される可能性が高い。特に CVT 動力伝達システムに関しては、産業技
術としての見極めができているようであり、技術の実用化に向けた詰めを行う段
階と思われる。また、水圧機器システムは耐久試験等の実用化に向けた研究成果
が十分市場の要求に合致するものであれば実用が期待される。また、複合軸受シ
ステムに関しては、産業界への貢献度を更に高めるため他の形態の軸受への適用
を考慮した検討をする必要がある。
駆動機構をもつ機械システム分野は広く、関連分野への技術的及び経済的波及
効果も期待できるが、その点が明確に示されていないため、汎用性のあるデータ
を取得する等をプロジェクトの目標として考えるべきではないか。
9
個別テーマに関する評価
成果に関する評価
10
飛行時間型2次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)、透過型
潤 滑 膜 の 構 電子顕微鏡(TEM)、ナノインデンター等の表面分析の最新手法を
造 ・ 特 性 及 適用し、個々には興味深いデータが取得されており、今後の展開が
期待できる。また、境界潤滑に関しては、学術的に新規性・先進性
び 生 成 機 構 があり、体系的に研究が進められている。今後、他の方法(エリプ
の 解 明 の た ソメーター、光干渉法)によるデータとの比較検討を行うことに
よって境界潤滑膜の評価・解析法に関する統一的かつ普遍的な知見
め の 評 価 ・ が見出されることが望まれる。
但し、観察結果、解析結果に基づいて展開する境界潤滑の原理の
解析技術に
解明、理論の構築に改善すべき点がある。さらに、個々の解析結果
関する研究
をより一層有機的・体系的に結び付けることを考えるべきである。
ベルト表面の生成物の成分、膜厚の分析、表面粗度と溝方向性に
よる摩擦係数の差の計測、また、オイルにCaとイミドを配合する
ことによる高摩擦係数の実現など、世界初と評価してよい興味ある
CVT 動力伝
データが取得されており、所期の目標は達成できていると考える。
達 シ ス テ ム また、従来ブラックボックスでノウハウとして取り扱われていた添
加剤の効果および摩擦への影響メカニズムを明確化して新しい潤滑
の最適効率
油を合成しようとする研究は興味深く、今後の新たな技術領域と市
化 に 関 す る 場開拓に繋がる成果が得られていると評価できる。
学術的な検討が十分に行われていない嫌いがあるため、従来型の
研究
湿式クラッチの摩擦発現機構の解析手法を参考とするなど、学術的
な検討の深化が必要と考える。本成果を反映して、境界潤滑膜を
使った飛躍的な特性改善技術の開発を期待する。
最新の表面処理技術を長年の課題であった水潤滑に適用し、新た
な技術領域を開拓する成果が得られつつあり、目標を概ね達成して
高 効 率 高 耐 いる。また従来鉱油系が使用されていた油圧シリンダーを水圧シリ
ンダーに切り替える等、新たな市場創造に繋がる新規性・先進性が
久性水圧機
認められる。水中の含有物などに対する耐久性など、実用的なシス
器 シ ス テ ム テムとして安定した特性が得られるなら、様々な分野での利用が可
能である。対象とする水圧機器が広範囲にわたっており、それらの
に関する研
機器の特質を十分考慮した上で共通項目としての境界潤滑膜のメカ
ニズムを明らかにするなど評価・解析グループとの連携を取り、よ
究
り合理的かつ普遍的な技術に発展させる必要がある。他への応用を
考えると、高性能が得られた学術的な説明が求められる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)を基材に添加物を
加えた材料の耐焼付き、耐摩耗、摩擦係数などの基礎試験データ
により、置換材の選定がほぼ完了して今後の改良方針も明確であ
る。また、実用化のためのステップが明確に示され、目標が達成
されつつあるのは評価できる。すでに類似の実用化研究が行われ
耐 高 面 圧 複 ているが、この研究成果が他の回転体の支持軸受にも適用できる
合 軸 受 シ ス 可能性に注目したい。
本研究成果の産業界への貢献度をさらに高めるには、他の回転体
テ ム に 関 す 支持軸受への適用を考慮し、それらの分野への適用性の検討も望み
たい。また、本研究における境界潤滑メカニズムや複合PEEKの
る研究
移着膜が潤滑に関与するメカニズムを明確に示す必要がある。
実用化の見通しに関する評価
(評価対象外)
プーリ表面へのコーティング、表面粗さ制御、ベルト表面生成
物による摩擦係数の増大が期待でき、実用化の可能性が十分ある
と評価できる。今後は、実用CVTとしての音の問題や高速回転
時の伝達トルク特性、摩擦係数が変化しない耐久性の向上など、
寿命、信頼性、効率を念頭に置いた実用化技術の開発を望む。
ラボ試験ではDLC膜コーティングの適用により目標を達成し
ており、コスト、性能等を総合的に考慮して最も効果が期待され
る機器(種類・寸法を含む)に対象を絞って検討すれば、十分に
実用化の可能があると考えられる。
ラボ試験データをベースに、使用環境下での被膜耐久性の試験
確認、実機ベースでの実用化研究等により、対象機器の動特性・
要求性能を十分吟味し、本研究成果の実用可能性の範囲について
評価するとともに、積極的な特許出願を望む。
材料選定がほぼ完了し、摺動材のベンチテスト及び実際の軸受
を組み込んだ実機模擬試験も行われていることから、損失を4
0%削減できるのであれば、実用化の可能性は非常に高いと判断
される。
本プロジェクトの中心課題である境界潤滑膜の研究成果を活用
できるように、移着膜の役割についての早急な検討と評価・解析
グループとの緊密な連携を期待する。また、タービン軸受のみな
らず、自動車用エンジンのクランクシャフト軸受など、一般の回
転体の支持軸受への適用の検討も望みたい。
今後に対する提言
TOF−SIMS,TEM、ナノインデンター、エ
リプソメーター、光干渉法によるデータを開発項目の
すべての要素・機器の摺動面に関して取得し、さら
に、それらのデータ間の比較検討を行って、境界潤滑
膜の評価・解析法に関する研究を本格的に進めること
が必要であるが、良好なデータの取得に見込みの立た
ない手法は早期に断念し、評価・解析法の整合性のと
れた合理的な結論を早めに得るべきである。その中
で、潤滑膜の構造・特性及び生成機構に関する世界最
高水準の学術情報の発信を目指し、他分野でも活用で
きる一般性のある成果を期待する。
ベルト式CVTでは、変速中プーリに対しベルトは
ミクロには滑りながら、マクロには滑らない(動力を
伝達する)と言う少し矛盾した変速システムであり、
摩擦係数の増大による効果について、理論的な解明を
お願いしたい。また、実用化にあたって実機に組み込
んだ際の駆動・伝達特性データの取得や使用過程での
摩擦係数の変化の検証を望む。
早急に、実機ベースでの試験を開始して、システム
としての耐久性、長期間稼働時の信頼性および機器製
造における品質の信頼性を検証するとともに、水質に
よらず耐摩耗性、低摩擦係数が得られるかを検証し、
全国(全世界)の水道水で使用できるポンプを目指す
ことを提案する。実用化の時期は、2010年以前の
早期実用化を計画すべきと考える。
また、本研究成果の実用可能性の範囲及び適用を推
奨する領域等についてマップを作成し、多数ある水圧
機器から最も有効なものを選択する際の評価基準につ
いても提示できるように検討を望みたい。
学術的な観点から、既開発技術と比較した本成果の
優位性と新たに取得した知見を明確にするように望み
たい。また、4フッ化エチレン樹脂(PTFE) 複合
PEEK の潤滑油中における移着層の詳細な検討、評
価・解析を行い、移着層が耐焼付き性にどのように影
響するか明確にする必要がある。実用化については、
発電用タービン軸受は極めて高い信頼性が要求される
ため、実用化に向けて要求される信頼性と安定性(試
験結果のばらつき等)を明確にし、それをクリアする
ための研究計画と実施が必要と考える。さらに、当初
目論んだ損失改善が達成できているかを、現在使用さ
れているホワイトメタルとの比較により検証いただき
たい。また、起動摩擦係数は従来品と同等以下とする
ことに成功しているので、早期の実用化を目指す研究
を優先して進めるべきと考える。
評点結果
2.5
1.事業の位置付け・必要性
2.研究開発マネジメント
1.8
3.研究開発成果
1.8
2.7
4.実用化、事業化の見通し
0.0
1.0
2.0
3.0
平均値
評価項目
平均値
素点(注)
1.事業の位置付け・必要性について
2.5
A
A
A
B
B
B
2.研究開発マネジメントについて
1.8
B
C
B
B
B
B
3.研究開発成果について
1.8
B
B
B
B
B
C
4.実用化、事業化の見通しについて
2.7
A
A
B
A
A
B
(注)A=3,B=2,C=1,D=0 として事務局が数値に換算し、平均値を算出。
<判定基準>
(1)事業の位置付け・必要性について
(3)研究開発成果について
・非常に重要
→A
・非常によい
→A
・重要
→B
・よい
→B
・概ね妥当
→C
・概ね妥当
→C
・妥当性がない、又は失われた
→D
・妥当とはいえない
→D
(2)研究開発マネジメントについて
(4)実用化、事業化の見通しについて
・非常によい
→A
・明確に実現可能なプランあり
→A
・よい
→B
・実現可能なプランあり
→B
・概ね適切
→C
・概ね実現可能なプランあり
→C
・適切とはいえない
→D
・見通しが不明
→D
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