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地域防災拠点を核とした防災街区の形成と都市機能継続

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地域防災拠点を核とした防災街区の形成と都市機能継続
総合研究所・都市減災研究センター(UDM)研究報告書(平成24年度)
テーマ 5 小課題番号 5.3-1
地域防災拠点を核とした防災街区の形成と都市機能継続モデルの構築に関する研究
キーワード
都市再生安全確保計画、地域連携、地域防災拠点、ひとづくり、避難所運営
1.はじめに
村上
正浩 *
本年度の新宿駅周辺防災対策協議会セミナーで
本研究の目的は、新 宿駅周 辺地域をモデルケース
は、座学と実践による防災 知識の習得を目的とした
として、本学新宿校舎を地 域防災拠点とした防災街
「基礎セミナー」と、応急 救護知識の習得を目的と
区を形成し、地震時の被害 軽減と速やかな都市機能
した「講習会」を行った(表 1・2、写真 1・2)。そ
の回復を可能とするモデル を構築することにある。
して、2013 年 1 月 17 日に実施した地震防災訓練に
地域防災拠点は、平常時に はひとづくりやしくみづ
おいて、基礎セミナーや講 習会の成果を検証した。
くり、研究活動等を行い、 地震時には応急活動 ・医
訓練後の意見交換会やアン ケートから 、受講者の防
療救護活動・復興活動等の 拠点となるとともに、非
災リテラシーの向上がみら れたことから 、次年度は
常時通信システムとリアル タイム広域情報共有シス
実施内容や実施方法につい てブラッシュアップを図
テムの活用によって地域の 情報拠点として機能する。
っていく。
本年度は、ひとづく り・し くみづくりの 拠点とし
て、新宿駅周辺事業者を対 象に「新宿駅周辺防災対
策協議会セミナー」および 地域連携による地震防災
訓練を実施した。また、防 災街区の形成を目指し、
都市再生安全確保計画策定 のための基礎調査を進め、
計画策定の方向性を検討し た。さらに、新宿区との
「防災・減災対策の相互連 携に関する基本協定」お
よび「帰宅困難者一時滞在 施設の提供に関する協 定」
の締結(2012 年 12 月 27 日)、八王子市中野町甲和
会との「防災・減災対策の 相互連携に関する基本協
定」の締結(2013 年 2 月 19 日)など、周辺地域と
図1
の連携の強化も図った。一方、四谷第 6 小学校避難
所運営管理協議会をモデル として、ワークショップ
と訓練を通じて、女性に配 慮した避難所運営のあり
表1
実施日
第1回
8/7
方を検討した。
2.新宿駅周辺防災対策協議会セミナーの開催
2009 年から 2010 年にかけ て、新宿駅周辺地域の
事業者等を対象に「新都心 の地域減災セミナー」や
各種講習会・シンポジウム 等を開催してきた。本年
度は、図 1 に示すように、①地域防災の取り組みへ
の関心を高め、裾野を広げ る、② 地域の事業者の関
心が高い防災に関する基礎知識の周知・徹底を図る、
③新宿駅周辺地域の防災面 での特徴への理解を深め
る、ことを目的として、新 宿駅周辺防災対策協議会
員および地域事業者の防災 担当者を対象に「新宿駅
周辺防災対策協議会セミナー」を開催した。
*
:工学院大学建築学部まちづくり学科
新宿駅周辺防災対策協議会セミナーの概念図
第2回
8/22
第3回
10/4
第4回
10/10
第5回
11/22
第6回
11/29
第7回
12/20
基礎セミナーの概要
セ ミ ナ ー の概 要
●災害対応における企業の法的リスクと事業者
等 の 連 携 によ る 地域 防 災
災 害 対 応 にお け る法 的 リス クを 理 解 し、事 業 者に
求 め ら れ る対 策 につ い て学 ぶ 。( 受 講 者 : 87 名 )
● 首 都 直 下地 震 等に よ る東 京の 被 害 想 定
東 京 都 の 被害 想 定の 内 容に つい て 理 解 し、地 域に
お け る 対 策課 題 を考 え る 。( 受講 者 : 44 名 )
● 地 震 時 にオ フ ィス ・ ビル 内で は 何 が 起き る ?
地 震 時 の ビル の 揺れ や 被害 の特 徴 、什器 類 等 の耐
震 点 検 方 法に つ いて 学 ぶ 。( 受講 者 : 37 名 )
● オ フ ィ ス・ ビ ル内 の 耐震 対策 方 法 は ?
オ フ ィ ス 家具・什 器 類 の具 体 的な 固 定 方 法等 に つ
い て 学 ぶ 。( 受 講者 : 29 名 )
● オ フ ィ ス・ビ ル内 の 防災 点 検 マ ッ プ を 作成 する
事 業 所 内 の防 災 上の 特 性を まと め た「防 災 点 検マ
ッ プ 」 の 考え 方 を習 得 する 。(受 講 者 数 : 32 名 )
● オ フ ィ ス・ビ ル内 で 起き る 地震 被 害 を 想定 する
地 震 時 に 、自 社 内等 に おい て発 生 し 得 る「 被 害」
を イ メ ー ジす る 能力 を 養う 。(受 講 者 数 : 27 名 )
● ビ ル の 地震 直 後の 継 続使 用性 を 判 断 する
高 層 ビ ル の被 災 モニ タ リン グ事 例 の 見 学、建 物継
続 使 用 判 定の 演 習を 行 う 。( 受講 者 数 : 26 名)
総合研究所・都市減災研究センター(UDM)研究報告書(平成24年度)
テーマ 5 小課題番号 5.3-1
表2
実施日
第1回
11/1
第2回
12/6
第3回
1/10
(2013)
講習会の概要
講 習 会 の 概要
● ト リ ア ージ 研 修会
対象:新宿駅周辺地域を含む新宿区内に勤務ま
たは在住されている医師会の医師、看護師お
よ び 病 院 スタ ッ フ( 受 講 者 39 名 )
ね ら い:① 一 次ト リ アー ジ( START 式 )をマ ス タ
ー す る 、 ②二 次 トリ ア ージ を体 験 す る 。
共 催 : 新 宿区 医 師会
協 力 : 東 京医 科 大学 、 東京 女子 医 科 大 学
● 災 害 時 応急 救 護リ ー ダー 養成 講 習 会
対象:新宿駅周辺地域の事業所に勤務し、災害
時 に 対 応 すべ き 役割 を 担う 人( 受 講 者 14 名 )
ねらい:自社における応急救護などの災害対応
をリードし傷病者を適切に医療者に引き継ぐ
た め に 必 要な 知 識と 技 能を 習得 す る 。
協 力 : 新 宿消 防 署、 日 赤東 京都 支 部
● 応 急 救 護講 習 会
対象:新宿駅周辺地域に勤務する一般の方およ
び 在 住 ・ 在学 し てい る 方( 受講 者 50 名 )
ねらい:傷病者に接し、応急手当、観察および
搬送を行うために必要な基礎知識と技能を習
得する。
協 力 : 新 宿消 防 署、 日 赤東 京都 支 部
3.新宿駅周辺防災対策協議会地震防災訓練の実施
(1)地震防災訓練の概要
2013 年 1 月 17 日(木)13 時 30 分から 17 時にか
け、新宿校舎を訓練会場と して、新宿駅周辺防災対
策協議会セミナー受講者を含む 128 名の参加による
地震防災訓練を実施した。本年度の訓練(図 2)は、
中心業務地区における発災 直後の自助とその後の共
助の実践を目的として、表 3 に示す 4 つの訓練を行
った。なお、訓練には東京 医科大学病院、東京女子
医科大学病院、新宿区医師 会、新宿消防署、 日本赤
十字社東京都支部、工学院 大学、東京建築士会、東
京都、新宿警察署、新宿区 の協力を頂いた。以下、
紙面の都合から、情報共有 訓練のうち、 新宿校舎を
西口現地本部とした訓練について詳述する。
[傷病者対応訓練]
・傷病者観察
・応急手当
・傷病者情報伝達
・搬送
テナント
テナント
傷病者情報の共有
テナント
建物被災情報の共有
各フロア
[建物被害対応訓練]
・建物被害確認
・被害情報の集約・伝達
・建築専門家の派遣(発災
から6時間後以降)
傷病者の流れ
防災センター
オフィス
ビル
建物専門家の流れ
※発災直後(自助)
[医療救護訓練]
・トリアージ(一次・二次)
・安定化
・応急手当
・傷病観察
・搬送
・事務調整
新宿駅
西口
現地本部
行き場のない
傷病者
新宿区
災害対策
本部
医療
救護所
[情報共有訓練]
重症者を優先して搬送
・災害情報の共有
災害拠点
病院
※発災から6時間後
以降(共助)
図2
地震防災訓練の全体概要図
表3
写真 1 基礎セミナーの様子 (上段:第 5 回 、下 段:第 7 回)
訓練名
傷 病 者 対 応訓 練
(自 助 )
建 物 被 害 対応 訓 練
( 自 助 、 共助 )
医 療 救 護 訓練
(共 助 )
情 報 共 有 訓練
(共 助 )
写真 2 講習会の様子(上段:第 1 回、下段:第 3 回)
地震防災訓練の概要
訓練概要
発災直後に事業所における傷病者の
発 生 を 想 定し 、応急 手 当、傷 病者 観 察 、
搬送等の傷病者への対応とビル内で
の 情 報 共 有を 行 う訓 練
( 参 加 者 26 名 )
発災直後に事業所で建物被害を確認
し 、ビ ル内 で の情 報 共 有と 建 物管 理 者
に よ る 被 害確 認 を行 う 訓練 、およ び 建
物被害情報を地域で共有し専門家に
よ る 調 査 へと 繋 げる 訓 練
( 参 加 者 21 名 )
発 災 か ら 6時 間 経過 後 、災 害 拠点 病 院
の近隣への医療救護所の設置を想定
し 、関 係機 関 との 情 報 共有 を 行い な が
ら医療従事者による傷病者のトリア
ー ジ 、ボラ ン ティ ア に よる 傷 病者 の 応
急 手 当 、 搬送 等 を行 う 訓練
( 参 加 者 64 名 )
ビルの防災センターを想定したビル
内および西口現地本部での情報共有
訓 練 お よ び新 宿 区役 所・新 宿 区防 災 セ
ン タ ー・千 代 田区 間 等 と の FWA 無 線 に
よ る 通 信 訓練
( 参 加 者 17 名 )
総合研究所・都市減災研究センター(UDM)研究報告書(平成24年度)
テーマ 5 小課題番号 5.3-1
(2)西口現地本部を拠点とした情報共有訓練
訓練の結果、5GHz 帯 FWA 通信網によるイントラネ
本訓練(表 4)では、情 報通信環境および 各種情
ット環境および衛星通信に よるインターネット環境
報ツール(図 3)を利用す ることで、西口現地本部
(東京・名古屋間)を介し て、各種情報ツール やリ
を中心に都内外の他の駅周 辺協議会との連携とより
アルタイム広域情報共有システム(図 4、5)を活用
広域な被災状況等の共有を 実現し、 新宿駅周辺地域
することによって、音声・ 映像や地図上での様々な
の混乱防止と駅周辺事業者 の災害対応に役立てるこ
災害情報等を広域な協議会 ・自治体間で効率良く 共
とを目標とした。訓練には 、新宿駅周辺防災対策協
有でき、駅周辺事業者の災 害対応にも活用できるこ
議会として、西口現地本部(新宿校舎内)、新宿区災
とがわかった。しかしなが ら、リアルタイム広域情
害対策本部( 新宿区役所本庁舎内)、新宿区災害対策
報共有システムについては 、サーバーとクライアン
本部代替拠点( 新宿区防災センター内)、高層ビル防
ト間での情報取得時の通信 負荷が大きいことが 確認
災センター( 新宿校舎内)、医療救護所(仮)(新宿校
でき、システムのさらなる 改善が必要である。訓練
舎内)が参加し、都内外駅 周辺帰宅困難者対策等協
の様子を写真 3、4 に示す。
議会として、東京駅周辺防 災隣組 、神田駅西口商店
街振興組合、四谷駅周辺地 区帰宅困難者対策地域協
力会、千代田区災害対策本 部、名古屋駅地区街づく
り協議会などの協力も得た。
表4
訓練の想定と訓練の概要
● 訓 練 の 想定

当 日 の 13: 00 に東 京 湾 北部 地震 ( M7.3)が 発 生。

地 震 発 生 後、各高 層 ビ ルで は 自衛 消 防 組 織に よ る自
助 対 応 を 開始 。

新宿区は災害対策本部の設置を本庁舎にて進める
が 、本 庁舎 が 被 災し た こと か ら、新 宿 区防 災 セ ンタ
ー ( 市 ヶ 谷) へ 本部 機 能を 移転 。

交通機関の麻痺により新宿駅周辺には大量の滞留
者 が 発 生。ま た、新 宿 駅周 辺 では ビ ル 火 災の 発 生も
確 認 で き 、ビ ル 内で は 多数 の傷 病 者 も 発生 。

地 震 発 生 後、新宿 駅 周 辺防 災 対策 協 議 会 は駅 周 辺の
混 乱 防 止 と 災 害 対応 に 動 き 始め 、 新 宿 駅 西 口は 14
時 頃 に 西 口現 地 本部 を たち あげ る 。

地 震 発 生 から 数 時間 が 経過 し 、新 宿 駅 の 周辺 部 の密
集 市 街 地 では 大 規模 な 市街 地火 災 が 発 生。火災 延 焼
地区から避難する人々が青梅街道沿いに新宿駅方
面 へ 大 移 動を 開 始。

都内の駅周辺でも協議会組織が混乱防止などのた
め に 活 動 を開 始 。ま た 、名 古 屋駅 地 区 街 づく り 協議
会 は 、 首 都圏 の 状況 把 握と 連絡 支 援 を 開始 。
● 訓 練 の 概要
13: 00~ 14: 00 全 体 ミー ティ ン グ 、 ブリ ー フィ ン グ
14: 00~ 16: 00 西 口 現地 本部 訓 練 開 始
(1)駅 周 辺 協 議 会 間 お よ び 新 宿 区 ・ 千 代 田 区 災 対 本 部 と
の連携
①
各 拠 点 の 活動 状 況の 把 握( 20 分 )
②
各 駅 周 辺 の被 災 状況 の 共有 ( 30 分 )
③
青梅街道から新宿駅に向かう避難者流入情報の
共 有 、千代 田 区方 面 へ の誘 導 経路・誘 導 場 所 等の
情 報 共 有 (30 分 )
④
新 宿 区・千 代 田区 内 の災 害 拠 点病 院 の 受 入状 況 の
確 認 、千代 田 区方 面 へ誘 導 す る避 難 者 の 傷病 者 等
に 対 す る 支援 体 制の 確 認( 30 分 )
⑤
名 古 屋 の 協議 会 から の 後方 支援
(2)高 層 ビ ル 防 災 セ ン タ ー ・ 医 療 救 護 所 ・ 新 宿 区 災 対 本
部と連携
①
高 層 ビ ル の被 災 状況 の 共有 ( 20 分 )
②
高層ビルの構造安全確認のための建築専門家の
コ ー デ ィ ネー ト、優 先的 に 確 認が 必 要 な 高層 ビ ル
へ の 専 門 家派 遣 (20 分 )
③
医療救護所の支援、高層ビルの安全情報の共有
( 60 分 )
千代田区内各協議会
MCA無線による
情報連絡
神田駅西口商店街振興組合
東京駅周辺
防災隣組
神田明神から衛星通信を介して、名古屋駅地区街づくり協議会と情報連絡
図3
訓練の情報通信環境と各種情報ツール
情報掲示板
新宿駅の鉄道運行情報
新宿駅西口の高層ビルの安全確認情報
(赤色:危険、青色:安全、黄色:確認中)
新宿駅西口の高層ビルの
被害概要等
図 4 訓練時のリアルタイム広域情報共有システムの画面例(1)
総合研究所・都市減災研究センター(UDM)研究報告書(平成24年度)
テーマ 5 小課題番号 5.3-1
リア防災マスタープランの 策定とエリア防災事業の
具体化を進め、新宿校舎を 地域防災拠点とした防災
街区の形成を目指す。
【都市再生安全確保計画策定基礎調査の調査概要】
①
新宿駅西口地域に関する基礎的データの収
集・分析:建物の立地状況・耐震性能、ライ
フライン・情報通信インフ ラ、医療機関、避
難施設、など
東京駅防災隣組から提供された、
千代田区内の医療機関情報、被害情報等
②
被害想定の作成:被害想定 、退避行動シミュ
レーション、被害想定に対 する必要な対応の
検討、など
図 5 訓練時のリアルタイム広域情報共有システムの画面例 (2)
③
都市再生安全確保計画作成部会構成員及び
構成団体等の検討:構成員及び構成団体等の
調査及び抽出、構成員及び 構成団体等の調整
④
新宿モデル実現に向けての課題の整理:情報
収集伝達、退避・避難誘導 支援、医療救護活
動、建物安全確認
写真 3
西口現地本部の様子
⑤
新宿モデル構築に向けた課題に関する事業
者等との調整事項
⑥
写真 4 神田駅西口商店街振興組合(神田明神)の様子
4.都市再生安全確保計画策定のための基礎調査
都市再生特別措置法の一 部を改正する法律の施行
地
域
の
連
携
に
よ
る
運
営
の
し
く
み
づ
く
り
計画策定に向けた方向性・計画方針図の検討
情報収集・伝達モデル
- 情報連絡・共有のしくみづくり-
避難・退避誘導支援モデル
- 誘導情報の提供のしくみづくり -
医療連携モデル
- 医療・応急救護所のしくみづくり-
建物安全確認モデル
- 高層ビルの継続使用判定のしくみづくり -
(2012 年 7 月 1 日)に伴い、都市再生安全確保計画
制度が創設され、全国の都 市再生緊急整備地区(全
国 63 地域、うち 11 地域は特定都市再生緊急整備地
区)において都市再生安全 確保計画を策定していく
新宿駅周辺防災対策協議会セミナーによる「ひとづくり」
現地本部を中心とした地震防災訓練によるモデルの検証
図6
新宿モデルの概念図
こととなった。なお、本計 画策定のガイドラインに
は、これまでの新宿駅周辺 地域でのさまざまな取り
組みの成果が反映されている
1)
。
新宿駅周辺地域は特定都市 再生緊急整備地区 に該
当するが、全国のモデル事 業の 1 つとして、「新宿モ
デル」(図 6)を軸とした都市再生安全確保計画 策定
に着手した。本年度は新宿 駅西口地域(渋谷区の一
部を含む)(図 7)を対象 として基礎調査を行った。
調査項目は以下の通りであ る。次年度は、都市再生
安全確保計画作成部会の立 ち上げ 、新宿駅東口地域
へ調査範囲の拡大、都市再 生安全確保計画に基づい
た新宿駅周辺地域一帯の都 市再生緊急整備地域のエ
青枠:2012年度の調査対象範囲
赤枠:新宿駅周辺都市再生緊急整備地域
図7
調査対象エリア
地
域
機
能
継
続
の
た
め
の
環
境
の
整
備
総合研究所・都市減災研究センター(UDM)研究報告書(平成24年度)
テーマ 5 小課題番号 5.3-1
5.女性に配慮した避難所運営のあり方の検討
2010 年度から新宿区内の四谷第 6 小学校避難所運
営管理協議会をモデルとし た地域防災体制の構築を
進めている
1)
(図 8)。本年 度は、近年の地震災害の
経験を踏まえ、女性に配慮 した避難所運営 のあり方
を検討する必要性が高まっ たことも あり、女性の視
点を取り入れた避難所運営 マニュアルの見直しとそ
れに基づいた避難所運営訓 練を実施し、マニュアル
の有用性を検証した。
写真 5
表6
項目
トイレ
図 8
四谷第 6 小学校避難 所運営管理協議会におけ
る取り組みのイメージ図
施設
(1)よつろく女子会の開催
女性に配慮した避難所運 営のあり方を検討するに
あたり、四谷第 6 小学校避難所運営管理協議会内の
地域住民・学校教職員・PTA・スクールコーディネー
ターおよび自治体職員の女 性約 20 名による防災カ
女性
専用
スペース
フェ(通称、よつろく女子 会)を開催した (表 5、
写真 5)。女子会を通じて、表 6 のように女性に配慮
した避難所運営のあり方に ついて様々な意見がださ
その他
よつろく女子会の様子
よつろく女子会での検討結果の例(第 3 回)
課題
外の仮設トイレの見
直し
高齢者のトイレへの
アクセス
解 決 方 法 (案 )
設置場所を玄関付近に
変 更 す る 、な ど
洋 式 便 器 の設 置 、な ど
屋上のスペースの有
効活用
女性専用の洗濯やシャ
ワーなどのスペースに
する、など
高齢者(足の不自由
な人)の対応場所に
ついて
体育館などに椅子を並
べ て 対 応 する 、 など
体育館の利用方法を
考えたい
学校内の一部に女性
専用スペースを作り
たい
女性スタッフエリア
の設置
ステージにカーテンを
引 き 、そ の 中に 着 替え ス
ペースや授乳スペース
を 作 る 、 など
一部のスペースを女性
専 用 に す る 、各 フ ロア ー
に一つずつ女性専用ス
ペ ー ス を 作る 、 など
スタッフ専用スペース
の 設 置 を 検討 す る 、な ど
れ、これらを避難所運営訓 練で検証するとともに、
避難所運営マニュアルに反映させることにした。
表5
日程
第1回
7/17
第2回
8/24
第3回
10/22
第4回
1/30
(2013)
よつろく女子会の概要
内容
過去の地震災害において発生した女性や子供
に関する事件などについて事例を紹介し、避
難所等における女性・子どもへの問題につい
て 意 見 交 換を 行 った 。
避難所運営マニュアルの内容を確認した上
で 、実際 に 仮設 ト イ レの 設 置場所 等 を 見 学し 、
女性や子どもにとって安心して使うことがで
きるかなどを確認した。さらに避難所利用計
画を参考にして見直しすべき点について議論
した。
第 1 回 、第 2 回 で 得ら れ た 課題 に 基 づ いて 、
解決策を検討し、訓練時に検証すべき項目に
つ い て 話 し合 い を行 っ た。
避難所運営訓練を通じて、女性の視点を避難
所運営や運営マニュアルにどのように組み入
れていけばよいのか、などに ついて意見交換
を行った。
(2)避難所運営訓練
2012 年 11 月 23 日(金)に避難所運営管理協議会
による避難所運営訓練を実 施した。 訓練では、トラ
ンシーバーを使った各町会 ・避難所間での情報連絡
訓練、備蓄倉庫・受水槽見 学、地震 体験(地震ザブ
トン)、仮設トイレ設営、応 急救護体験、子ども防災
教室などを行うとともに(写真 6)、よつろく女子会
での検討結果を踏まえ、女 子会参加者 を中心に女性
サポーター(仮・女性支援 部 )を結成し、女性の視点
からの避難所運営訓練も並 行して 実施した。主な検
証内容としては、体育館の ステージを活用した女性
スペースの確保、体育館に 間仕切りやテントの設営、
プライベート空間の確保、 仮設トイレの設置場所の
検討、遊戯室(災害時要援 護者用の避難スペース)
の活用方法である(写真 7)。また、早稲田大学の村
総合研究所・都市減災研究センター(UDM)研究報告書(平成24年度)
テーマ 5 小課題番号 5.3-1
田教授(新宿区男女共同参 画推進会議の座長)を交
2013 年 1 月 30 日(水)にはよつろく女子会で訓
えて、女性に配慮した避難 所運営 のあり方に関する
練反省会を開催し、避難所 運営マニュアルの改善案
ワークショップを開催し、 避難所での女性の過ごし
に関する意見交換や次年度 に向けた発展的な取り組
方や運営体制などについて 活発な 意見交換を行った。
みについて話し合いを行った(写真 8)。
写真 8
女子会での訓練反 省会の様子(左:避難所
運営マニュアルの改善案に ついて意見交換、 右:
校舎内のトイレを使えるよ うにビニール袋と新聞
紙で簡易トイレを作成)
6.おわりに
本年度は、新宿駅周辺防 災対策協議会セミナー お
よび地域連携による地震防 災訓練を実施し、ひとづ
くり・しくみづくりの拠点 として地域事業者の防災
リテラシーの向上に取り組 んだ。また、都市再生安
全確保計画策定のための基 礎調査を行い、防災街区
の形成に向けて新宿モデル を軸とした計画策定の方
写真 6
避難所運営訓練の 様子(上段左:仮設トイ
向性を見出した。さらに、 地域防災拠点として周辺
レの設置訓練、上段右:炊 き出し 訓練、中段:ト
地域との連携強化をより進 展させるために、新宿区
ランシーバーを使った各町 会・避難所間での情報
や八王子市中野町甲和会と の防災・減災対策の相互
連絡訓練、下段左:応急救 護訓練、下段右:地震
連携に関する基本協定等を 締結した。一方、四谷第
ザブトンによる地震体験)
6 小学校避難所運営管理協 議会をモデルとして、よ
つろく女子会を開催し、実 働訓練を通じて女性に配
慮した避難所運営のあり方も検討した。
次年度は、上記成果を踏 まえつつ、新宿校舎を地
域防災拠点とした防災街区 を形成し、地震時の被害
軽減と速やかな都市機能の 回復を可能とするモデル
の構築を目指す。
参考文献
1) 村 上 正 浩 、 地 域 防 災 拠 点 を 核 と し た 防 災 街 区 の 形 成 と
都 市 機 能 継続 モ デル の 構築 に関 す る 研 究 、工 学 院 大学 総
合 研 究 所 都市 減 災研 究 セン ター 平成 23 年 度 研 究成 果
報 告 書 、 pp.171-176、 2012
写真 7
女性の視点を取り 入れた避難所運営訓練の
様子(上段左:体育館のス テージを活用した女性
スペースの確保について検 証、上段右:テントを
活用したプライベートスペ ースの確保について検
証、下段:村田教授を交えたワークショップ)
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