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平成18年度 第35号 (PDF 978kB)
愛知県衛生研究所年報
第35号
平成18年度
愛 知 県衛生研究所
はじめに
長らく愛知県衛生研究所の顔として強力なリーダーシップを発揮してこられた宮
豊前所長
の後を継いで本年 4 月、所長を拝命いたしました。これからも職員一同力をあわせ、県民の皆様
の安全と安心を確保し、健康と命を守るため、科学的・技術的中核機関としての使命を果たして
まいります。
平成 18 年度も感染症の話題にこと欠かない年でした。6 月にはインフルエンザ(H5Nl)が感
染症法の指定感染症に政令指定されるとともに、検疫法の検疫感染症とされ、国内発生及びまん
延防止対策と水際対策が強化されました。その背景には世界各地で断続的・継続的に発生してい
る高病原性鳥インフルエンザがあり、人への感染例は平成 19 年 6 月 15 日現在までに 12 カ国か
ら累計で患者 313 名、死者 191 名と報告されています。日本国内でも、平成 19 年 1 月から 2 月
にかけて宮崎県の 3 農場、岡山県の 1 農場で高病原性鳥インフルエンザ(H5Nl)が発生しまし
た。迅速な対応により感染の拡大がなかったことは幸いでしたが、肝を冷やす出来事でした。12
月には感染症法等を改正する法律案が可決され、
「生物テロや事故による感染症の発生・まん延を
防止するための病原体等の管理体制の確立」、
「最新の医学的知見に基づく感染症の分類の見直し」、
「結核の感染症法上の位置付けと総合的な対策の実施」が主要な改正事項として盛り込まれまし
た。またこの改正に合わせるかのように、ノロウイルスの大流行が起こり、当研究所においても
微生物検査はフル回転、マスコミの取材があったり、ウェブサイトはサーバーがダウンするほど
のアクセスがあったりと、大変な騒ぎとなりました。
年が明け、ノロウイルスの感染も落ち着いた 2 月 1 日、「愛知県麻しん全数把握事業」が始動
しました。これは愛知県医師会、名古屋市医師会、愛知県小児科医会と愛知県、名古屋市、豊橋
市、岡崎市及び豊田市が共同で実施する事業で、愛知県内の医療機関において麻疹と診断された
症例は全てファックスで当研究所内の愛知県感染症情報センターにご報告いただくものです。麻
疹の発生状況は誰でもウェブサイトから見ることができます。その後期せずして関東地域に緒を
発した麻疹が全国的な大流行となりかねない状況が出現し、感染症対策の基本であるサーベイラ
ンスとしての有用性が試されることになりました。
感染症の話が長くなりましたが、「食の安全・安心」に関しては、食品に含まれる残留農薬等の
所謂ポジティブリスト化(平成 18 年 5 月 29 日施行)に対応するために当研究所にも農薬検査用の
最新鋭機器である LC/MS/MS が整備され、食品中の残留農薬検査の一層の充実がはかられました。
愛知県衛生研究所では、公衆衛生に関わる幅広い分野で生活衛生の維持向上・健康危機管理等
に向けた業務を実施しております。この年報は我々が真摯に取り組んできた業務を紹介するもの
ですが、単なる紹介に留まらず、有用な情報源となることを願っております。
最後になりましたが、日頃から業務の遂行にあたり、ご協力、ご尽力くださいました県・健康
福祉部を始めとした関連行政機関、国および地方の試験検査研究機関、それに感染症発生動向調
査等でお世話になっている医師会ならびに臨床医の方々に深くお礼を申し上げます。
平成 19 年 6 月 30 日
愛知県衛生研究所長
増井恒夫
平成 18 年度
第 35 号 平成 19 年 6 月
目
次
はじめに
第1章 概要
第1節 沿 革
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
第2節 組 織
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
Ⅰ 機構 (2)
Ⅱ 職員現員数表(3)
Ⅲ 組織別職員名一覧表(3)
第3節 予算及び決算
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
Ⅰ 歳入(4)
Ⅱ 歳出(4)
Ⅲ 一般依頼項目別検査手数料及び件数(5)
Ⅳ 行政検査事業別件数(6)
第4節 施 設
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
Ⅰ 土地及び建物(7) Ⅱ 新規購入機器(8)
Ⅲ
主な試験検査機器(8)
IV 借用機器(11)
第2章 調査研究・試験検査
第1節 調査研究及び研究業績 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
Ⅰ 調査研究 (12) Ⅱ 研究業績 (13)
第2節 企画情報部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
Ⅰ 調査研究(21)
Ⅱ 誌上発表(22)
Ⅲ 学会発表等(23)
IV 情報処理・解析業務(25)
第3節 微生物部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
Ⅰ 調査研究(31)
Ⅱ 誌上発表(34)
Ⅲ 学会発表等(36) IV 試験検査(44)
第4節 毒性部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・66
Ⅰ 調査研究(66)
Ⅱ 誌上発表(67)
Ⅲ 学会発表等(68) IV 試験検査(71)
第5節 化学部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・78
Ⅰ 調査研究(78)
Ⅱ 誌上発表(79)
Ⅲ 学会発表等(81) IV 試験検査(84)
第6節 生活科学部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・91
Ⅰ 調査研究(91)
Ⅱ 誌上発表(92)
Ⅲ 学会発表等(93) IV 試験検査(94)
第3章 精度管理
第1節 保健所試験検査精度管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100
第2節 その他の精度管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・102
Ⅰ 衛生検査所精度管理事業(102)
Ⅱ 水道水質検査外部精度管理(103)
第4章 研修指導
第1節 地域保健関係職員を対象としたもの ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・104
Ⅰ 研修会(104)
第2節 地域保健関係職員以外を対象としたもの
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・105
Ⅰ 講師派遣等(105) Ⅱ 衛生検査所精度管理指導(105) Ⅲ 技術指導(106)
第3節 試料等の提供
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・106
第4節 会議、学会、研究会等への参加及び主催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・107
Ⅰ 会議(107)
Ⅱ 学会(109) Ⅲ 研究会(110) IV 職員が受講した研修(111)
V 所内研究会等(112)
Ⅵ 施設見学(112)
第5節 国際活動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・113
Ⅰ 研修受入(113)
Ⅱ 海外派遣及び海外での学会参加等(113)
第5章 情報提供
第1節 刊行物の発行
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・114
Ⅰ 衛生研究所年報(114) Ⅱ 愛知県衛生研究所報(114) Ⅲ 衛研技術情報(114)
Ⅳ 健康危機管理マニュアルの作成(115)
第2節 ウェブサイトによる情報提供 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・115
第3節 報道機関等への情報提供
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・116
第4節 電話相談等
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 116
第1章 概 要
第1節 沿
明治 13 年
12 月
昭和 18 年
4月
内政部所管
昭和 21 年
4月
教育民政部所管
昭和 21 年
11 月
昭和 23 年
4月
革
警察部衛生課が設置されると共に、細菌検査所及び衛生試験所創設
衛生部発足と共に衛生部所管
昭和 23 年 3 月 25 日付け告示第 169 号により、4 月 1 日付けにて愛知県衛生研究所と
して発足
昭和 23 年
10 月
昭和 23 年 4 月 7 日付け厚生省3局長名通牒による「地方衛生研究所設置要綱」に基づ
き、
「愛知県衛生研究所設置に関する条例」
(23.10.19 条例第 59 号)公布
機構は 5 部(庶務部、細菌部、化学部、食品部、病理部)
昭和 23 年
11 月
名古屋市中区南外掘町 6 の 1、県庁第 1 分庁舎として庁舎竣工、移転
昭和 29 年
9月
機構改正、1 課(庶務課)
、2 部(細菌病理部、化学食品部)
、5 科、9 係
昭和 37 年
3月
機構改正、1 課、4 部(微生物部、病理血清部、理化学部、食品栄養部)
、9 科、2 係
昭和 39 年
4月
愛知県行政組織規則が公布され、地方自治法第 158 条第6項の規定に基づく地方機関
となる
昭和 39 年
5月
昭和 39 年
10 月
昭和 44 年
4月
「地方衛生研究所設置要綱」の改正(39.5.18 付け厚生省事務次官通達)
名古屋市千種区田代町鹿子殿 81 の 1 庁舎竣工、移転
機構改正、公害環境部を新設、1 課、5 部(微生物部、病理血清部、理化学部、公害環
境部、食品栄養部)
、11 科、2 係
昭和 47 年
4月
機構改正、1 課、5 部(細菌部、ウイルス部、生物部、食品薬品部、生活環境部)
、
13 科、2 係、1 室(実験動物管理室)
。公害環境部は県に新設の環境部所管へ
昭和 47 年
4月
名古屋市北区辻町字流 7 番 6 庁舎竣工、移転
昭和 51 年
9月
「地方衛生研究所設置要綱」の改正(51.9.10 付け厚生省事務次官通達)
昭和 53 年
4月
機構改正、2 係を廃止、1 課、5 部、13 科、1 室
平成元年
3月
血清情報管理室整備
平成3年
4月
機構改正、保健情報室を新設、1 課、5 部、13 科、2 室(保健情報室、実験動物管理室)
平成9年
3月
「地方衛生研究所設置要綱」の改正(9.3.14 付け厚生省事務次官通達)
平成 11 年
4月
機能強化による機構改正、1 課(総務課)
、5 部(企画情報部:従来の保健情報室より、
微生物部:細菌部及びウイルス部より、毒性部:生物部より、化学部:食品薬品部よ
り、生活科学部:生活環境部より)
、15 科
平成 12 年
4月
本庁の組織改編に伴い、放射能調査関連業務を環境部へ移行
平成 18 年
4月
文部科学省科学研究費補助金取扱機関となる
第2節
組
織
Ⅰ 機 構
総 務 課
企画情報部
企画情報科
微生物部
臨床細菌科
食品微生物科
環境微生物科
衛生研究所
呼吸器系ウイルス科
腸管系ウイルス科
エイズウイルス科
ウイルス疫学科
毒 性 部
毒性病理科
毒性化学科
化 学 部
環境化学科
生活化学科
薬品化学科
生活科学部
水 質 科
環境物理科
1.文書及び公印の管守に関すること
2.職員の人事及び福利厚生に関すること
3.予算、会計及びその他庶務に関すること
4.建物、附属設備及び物品の保全管理に関すること
5.試験分析等の受付及び成績書の交付に関すること
6.その他、他の部の主管に属しないこと
1.調査研究及び試験検査の総合的な企画及び調整に関すること
2.研修の企画調整に関すること
3.公衆衛生に関する情報の収集、解析及び提供並びに研修指導に
関すること
4.健康事象の疫学的調査研究及び技術指導に関すること
1.臨床細菌その他の病原細菌の調査研究及び試験検査に関すること
2.保健所及び衛生検査所精度管理に関すること
1.食品細菌、原虫等の調査研究及び試験検査に関すること
2.食品のカビの調査研究及び試験検査に関すること
3.食中毒菌の研修指導に関すること
1.環境中の微生物の調査研究及び試験検査に関すること
2.医薬品、医療用具、化粧品等の微生物による汚染に関する
調査研究及び試験検査に関すること
3.梅毒血清診断に関すること
1.呼吸器系ウイルスの調査研究及び試験検査に関すること
2.感染症流行予測調査に関すること
1.腸管系ウイルスの調査研究及び試験検査に関すること
2.病原体検出情報に関すること
1.エイズウイルスの疫学の調査研究に関すること
2.エイズウイルス等性感染症病原ウイルスの調査研究及び試験
検査に関すること
1.ウイルス、リケッチア等の血清分子疫学の調査研究に関すること
2.感染症発生動向の調査研究及び試験検査に関すること
1.薬品、食品、医療機器等に含まれる物質の毒性評価に関する調
査研究及び試験検査に関すること
2.自然環境中に存在する化学物質等及び衛生害虫、原虫等の人の健
康に与える毒性に関する調査研究及び試験検査に関すること
3.実験動物の飼育管理に関すること
1.毒物及び劇物による中毒の調査研究及び試験検査に関すること
2.生体内に存在する毒性物質の調査研究及び試験検査に関すること
1.食品中の残留農薬の調査研究及び試験検査に関すること
2.PCB、水銀等微量化学物質の調査研究及び試験検査に関すること
3.食品中の重金属の調査研究及び試験検査に関すること
1.食品添加物、器具・容器包装及び食品中の医薬品等の調査研究
及び試験検査に関すること
2.食品及び栄養の調査研究及び試験検査に関すること
3.家庭用品に含まれる化学物質の調査研究及び試験検査に関すること
1.医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器等の理化学的調査研究
及び試験検査に関すること
2.毒物、劇物、麻薬等の理化学的試験に関すること
3.医薬品 GMP の指導事業に関すること
1.水道水、地下水、水道水源等の水質に関する理化学的調査研究
及び試験検査に関すること
2.水道水の消毒により生じる副生成物の人の健康に与える影響
に関する調査研究に関すること
1.生活環境中の放射能の調査研究に関すること
2.食品中の核種分析に関すること
3.温泉水の分析に関すること
Ⅱ 職員現員数表
総 数
事務職員
医
師
薬 剤 師
獣 医 師
そ の 他
合
計
1
3
24
6
6
40
所 長
次 長
研究監
総務課
1
企画
情報部
*
1
1
3
1
平成 19 年 3 月 31 日現在
生活
微生物
毒性部 化学部
科学部
部
1
1
*
1
4
1
8
3
2
14
2
2
1
5
*平成 11 年 4 月以降、総務課(事務部門)は環境調査センターと集約化
*再任用 1 名及び臨時任用 2 名含む
Ⅲ 組織別職員名一覧表(平成 18 年 4 月~19 年 3 月)
組
織
職
名
所
長
所長事務取扱
次
長
研
究
監
企画情報部
部
長
企画情報科
科
長
主任研究員
技
師
江南保健所・兼務
微生物部
部
長
臨床細菌科
科
長
主任研究員
技
師
食品微生物科
科
長
技
師
環境微生物科
科
長
呼吸器系ウイルス科 ( 兼 ) 科 長
主任研究員
腸管系ウイルス科
(兼)科 長
主任研究員
技
師
エイズウイルス科
(兼)科 長
技
師
ウイルス疫学科
(兼)科 長
主任研究員
技
師
技
師
毒 性 部
(兼)部長
毒性病理科
科
長
技
師
技
師
毒性化学科
科
長
主任研究員
氏
宮 﨑
吉 田
足 立
木 村
森 川
広 瀬
櫻 井
續 木
長谷川
皆 川
高 橋
松 本
鈴 木
平 松
松 井
山 﨑
皆 川
秦
皆 川
山 下
伊 藤
皆 川
田 中
皆 川
小 林
長谷川
長 谷
木 村
奥 村
都 築
小 林
林
近 藤
名
豊
京
和 彦
隆
保 二
かおる
博 貴
雅 子
総一郎
洋 子
正 夫
昌 門
匡 弘
礼 司
博 範
貢
洋 子
眞 美
洋 子
照 夫
雅
洋 子
正 大
洋 子
愼 一
晶 子
聡 子
隆
正 直
秀 明
哲 也
留美子
文 雄
備
H18.12.31 退職
H19.1.1~H19.3.31
考
8
1
1
10
3
1
4
化 学 部
環境化学科
生活化学科
薬品化学科
生活科学部
水質科
環境物理科
部
長
科
長
主任研究員
技
師
科
長
技
師
技
師
技
師
科
長
技
師
部
長
(兼)科 長
主任研究員
科
長
主任研究員
大
大
上
椛
山
伊
後
森
三
池
遠
遠
猪
大
小
野
島
野
島
田
藤
藤
本
上
田
山
山
飼
沼
池
勉
晴 美
英 二
由 佳
貞 二
裕 子
智 美
陽美記
栄 一
清 栄
明 人
明 人
誉 友
章 子
恭 子
第3節 予算及び決算
Ⅰ 歳入
単位:円
科
目
使用料及び手数料
衛生研究所手数料
財産収入
物品売払収入
諸収入
健康福祉費雑入
合
計
予算<配分>額
32,745,000
32,745,000
1
1
1,000
1,000
32,746,001
調定済額
15,986,127
15,986,127
O
0
33,075
33,075
16,019,202
収入済額
15,986,127
15,986,127
0
0
33,075
33,075
16,019,202
Ⅱ 歳出
単位:円
科
目
総務費
総務管理費
一般管理費
環境費
自然環境費
自然環境保全費
健康福祉費
健康福祉総務費
健康福祉総務費
疾病対策費
生活衛生費
環境衛生指導費
食品衛生指導費
衛生研究所費
保健所費
保健所運営費
保健所事業費
医薬費
医薬安全費
農業水産費
水産業費
水産業振興費
合
計
* 職員給与及び共済費を除く
予算<内示>額
6,460
6,460
6,460
120,000
120,000
120,000
188,437,518
7,968,005
3,581,305
4,386,700
159,530,513
12,783,000
29,967,513
116,780,000
8,824,000
217,000
8,607,000
12,115,000
12,115,000
252,000
252,000
252,000
188,815,978
決算額
6,135
6,135
6,135
118,661
118,661
118,661
180,345,697
7,799,229
3,490,469
4,308,760
151,640,020
10,612,134
26,104,618
114,923,268
8,809,509
215,459
8,594,050
12,096,939
12,096,939
250,802
250,802
250,802
180,721,295
残 額
325
325
325
1,339
1,339
1,339
8,091,821
168,776
90,836
77,940
7,890,493
2,170,866
3,862,895
1,856,732
14,491
1,541
12,950
18,061
18,061
1,198
1,198
1,198
8,094,683
増減(△)額
△16,758,873
△16,758,873
△1
△1
32,075
32,075
△16,726,799
Ⅲ 一般依頼項目別検査手数料及び件数
手数料
件数* 収入額(円)
単価(円)
検査項目
細菌培養検査
血清反応検査
食品試験
家庭用品試験
機器分析試験
910
602
547,820
業態者
550
2
1,100
HIV(WB 法)
梅毒(FTA・ABS 法)
組織培養法
ウイルス分離同定検査
水質試験
飲用水
医薬品等試験
業態者(O-157 を含む)
水質管理目標設定項目
微生物(簡易)
浴用水等(理化学・ 理化学(簡易)
簡易)
〃 (やや複雑)
微生物(簡易)
温泉分析
中分析
核種分析
ラドン
無菌試験
生物学的試験
発熱性物質試験 試験
原材料
エンドトキシン試験 規格
食品衛生法適否
微生物
飲食物の微生物
簡易
精密
試験
器具がん具容器等の理化学
塩化水素・硫酸
定量
ホルムアルデヒド
簡易
簡易(追加成分)
精密
精密(追加成分)
定量
24
84,000 判断料含む
8
19,360 判断料含む
265 3,180,000
※
16 2,361,500
1,400
816 1,142,400
700
2
1,300
1
1,400
2
112,200
5
25,600
2
8,200
96
21,100
31
32,237 (31)
34,400
1
2
2,800
2,600
2
12,100
6
11,100
32
2,800
2
1,400
1,300
2,800
561,000
51,200
787,200
654,100
999,347
34,400
5,600
5,200
72,600
355,200
5,600
7,100
30
213,000
11,200
76
851,200
2,700 (436) 1,177,200
55,200
24 1,324,800
13,800 (112) 1,545,600
(3)
1,200
2,629 件
15,986,127
試験検査旅費
計
注:( )内数は実施件数の再掲
※:セット料金
3,500
2,420
12,000
(2,780 項目)
*:件数又は項目数
備 考
201 項目
Ⅳ 行政検査事業別件数
事 業 名
環境保健対策事業
事 業 内 容
住環境健康相談
調 査 項 目
ホルムアルデヒド及び揮発性有機化合
物濃度測定
室内環境汚染実態調査 ダニアレルゲン量、アルデヒド類及び揮
発性有機化合物濃度
細菌・エンドトキシン
尿中重金属蓄積状況調査 カドミウム・クレアチニン・比重
室内空気汚染対策推進事業 クロルピリホス実態調査 クロルピリホス濃度
家庭用品衛生監視指導事業 家庭用品有害物質検査 ホルムアルデヒド等
感染症対策事業
感染症予防事業
細菌培養同定検査
発生動向調査事業
2、3、4、5 類感染症(病原体検査)
新興・再興感染症監視事業 関連感染症(血清疫学調査)
希少感染性微生物対策(ウイルス感染症)
希少感染性微生物対策(細菌感染症)
輸入感染症 (細菌検査)
(ウイルス検査)
感染症流行予測調査事業 (感染源調査) ポリオ
特定感染症予防事業
花粉情報システム事業
各種営業衛生指導事業
花粉飛散状況調査
施設監視事業
水道事業調整事業
水道水等水質調査
30 微生物部
30 毒性部
毒性部
化学部
微生物部
微生物部
微生物部
微生物部
微生物部
微生物部
微生物部
微生物部
(感受性調査) インフルエンザ
麻疹
風疹
保健所関係 HIV 等抗体検査 確認検査
2 次検査
梅毒血清反応検査
900
225
360
27
12
5
微生物部
微生物部
微生物部
微生物部
微生物部
微生物部
スギ・ヒノキ科花粉数の測定
公衆浴場等の衛生監視指導
(浴槽水のレジオネラ属菌検査)
水質不適項目追跡調査(大腸菌群数等)
同上 (クリプトスポリジウム等)
同上 (水質成分等)
水系別水質調査(河川水基本成分調査)
水系別水質調査(河川水農薬類調査)
水道原水水質調査(特定項目水質調査)
119 毒性部
0 微生物部
(ダム水)
特殊有害物質汚染調査(消毒副生成物)
特殊有害物質汚染調査(基準項目調査)
食品科学調査事業
104 毒性部
18
120
58
1,727
570
81
10
38
1
84
同上
食品衛生指導事業
件数
担当部
13 毒性部
食品等の理化学検査
食品等の放射能検査
食品衛生検査事業
食品等の微生物学的 細菌検査
検査及び食中毒検査 ウイルス検査
食品等の毒性検査等(魚介類毒性検査等)
食品等の理化学検査
同上(油症患者の血中 PCB 検査)
試験検査事業
保健所よりの依頼検査 サルモネラ型別検査
薬事関係事業
医薬品等安全確保対策 収去医薬品等検査(無菌試験)
事業
同上 (成分の定量)
同上 (発熱性物質試験)
薬局等許認可事業
かぜ薬等製造承認規格試験項目
毒物劇物監視指導事業 シアンイオン定量検査
漁場環境保全対策事業 貝類等実態調査
貝類の毒性検査
18
6
6
6
3
10
微生物部
毒性部
生活科学部
生活科学部
生活科学部
生活科学部
3 生活科学部
10 生活科学部
11 微生物部
生活科学部
440 化学部
30 生活科学部
450 微生物部
489
15
232
12
23
9
373
5
8
10
42
微生物部
毒性部
化学部
毒性部
微生物部
微生物部
化学部
毒性部
化学部
生活科学部
毒性部
[検査以外の行政事業]
事 業 名
事
業
内
試 験 検 査 事 業 保健所等試験検査
精度管理事業
衛生検査所等指導事業
薬 事 関 係 事 業
生活習慣病対策事業
容
細菌検査
対 象
県内 7 保健所
寄生虫学的検査
県内 4 保健所
食品化学検査
環境水質検査
内
容
21 検体
担当部
微生物部
40 検体
毒性部
県内 8 施設
8 検体
化学部
県内 8 施設
16 検体
生活科学部
臨床検査精度管理事業
微生物学的検査 衛生検査所
検体作製
(25 検査所) (125 件)及び
成績評価解析
寄生虫学的検査 衛生検査所
鏡顕実習及び
(19 検査所) 成績評価解析
(95 件)
501 検体
医薬品再評価品質確保 医療用医薬品
事業
溶出試験規格に
337 検体
係る確認調査
循環器疾患対策の患者登録
医療機関
6,403 件
微生物部
毒性部
化学部
化学部
企画情報部
第4節 施 設
Ⅰ 土地及び建物
位置 名古屋市北区辻町字流 7 番 6
敷地 12,558.94 m2 (環境調査センターと共用)
建物
本 館
鉄筋コンクリート造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造
地下 1 階、地上 7 階塔屋 1 階建
(環境調査センタ-と共用)
付属建物
実験動物管理棟〈専用〉
鉄筋コンクリート造一部 2 階建
危険物倉庫 (共用)
鉄筋コンクリート造平屋建
RI 排水処理棟(専用)
コンクリートブロック造平屋建
排水処理棟(共用)
鉄筋コンクリート造平屋建
排水処理棟(共用)
鉄骨造平屋建
血清情報管理室
鉄骨造平屋建
他に環境調査センター専用部分
総延面積
着工:昭和 45 年 12 月 24 日
竣工:昭和 47 年 3 月 26 日
延面積
9,156.74 m2
延面積
398.38 m2
延面積
63.93 m2
延面積
9.81 m2
延面積
28.04 m2
延面積
85.32 m2
延面積
延面積
49.94 m2
1,002.38 m2
10,794.54 m2
Ⅱ 新規購入機器(平成 18 年 4 月~19 年 3 月)
(1品目 100 万円以上)
品 名
超低温槽
(型 式)
(使用目的)
血清の保存
テイオン製 LDF-C51
数量
1
設置年月
H18. 9
自動補助冷却装置付
1
計
Ⅲ 主な試験検査機器
【微生物部 (細菌)
】
品 名
(型 式)
(1品目 100 万円以上)
数
設置年月
(使用目的)
量
遠心分離器
久保田商事製 MODEL 7930
感染症病原菌の分離・検出
1
H 7. 1
自動洗浄器
ダイナテック製 ダイナウォッシャーⅡ
トレイの洗浄
1
S60.11
超低温槽
サンヨーメディカ製 MDF- 390 AT
感染症病原菌の保存
1
S58.12
超低温槽
サンヨーメディカ製 MDF- 490 AT
感染症病原菌の保存
1
S62.11
電気泳動装置
日本バイオ・ラッドラボラトリーズ製
遺伝子解析
1
H15. 2
1
H 8. 8
1
H 2. 3
CHEF-DRⅢチラーシステム
培養器
パーキンエルマー製
遺伝子増幅装置 O-157 の遺伝子検査
GeneAmp PCR System 9600
分光光度計
日本分光工業製 Ubest-50-10
DNA 濃度の測定
統合 H3. 9
分光光度計
コロナ電気製 MTP- 32 プリンターM32P 付
O-157 の抗体の測定
1
H 8. 8
無菌装置
ダルトン製 NSC 900-2A
感染症病原菌の検査
1
H 4. 3
計
9
【微生物部 (ウイルス)
】
品 名
(型 式)
(1品目 100 万円以上)
数
設置年月
(使用目的)
量
遺伝子増幅装置
ABI 製 リアルタイム PCR ABIPRISM 7000
遺伝子増幅
1
H15. 6
遠心分離器
久保田商事製 クボタハイスピード 冷却 ウイルスの精製
1
H 5. 2
実験の安全性確保
1
S58. 2
遠心機 7800
セフティーキャビネ 昭和科学製 SBC-2A- 1300
ット
超遠心分離器
日立製 HIMACSCP85H2
ウイルスの精製
1
H 1. 3
超低温槽
アメリカレブコ製 VLT 785 型
ウイルスの保存
1
S52. 2
動物飼育器
日立製 SCV-1300EC 11AL 陰圧切替板付
実験動物の飼育
1
H 1. 1
培養器
タバイエスペック製 BNA- 121 D
細胞の培養
1
H 2.12
培養器
パーキンエルマー製 遺伝子増幅装置
遺伝子増幅
1
H 8. 3
GeneAmp PCR System 9600
パワーサプライ
LKB 製 ウエスタンブロッティング装置
蛋白・核酸の泳動
1
S61.12
分光光度計
コロナ電気製 MTP- 32
抗体、ウイルスの検出
1
H 3. 2
超低温槽
三洋電機製 MDF 592 AT 型
H 5.11
三洋電機バイオメディカ製 MDF- 493 AT
血清の保存
ウイルスの保存
1
超低温槽
1
H17.1
計
12
【毒性部】
(1品目
品 名
100 万円以上)
数
設置年月
(使用目的)
量
顕微鏡写真の記録
1 S57.12
メチル水銀及び PCB の
1 H18.3
(保管換
分析
(型 式)
顕微鏡
ガスクロマトグラフ
ニコン製 写真撮影装置付
島津製 GC-17A Ver.3(ECD×1)
分光光度計
画像解析測定装置
日立製 U-3000 型
浜松ホトニクス製 C5310-01、ニコン製
E600 微分干渉セット
サクラ精機製 4667(ティッシュテック・
エンベディング・コンソール)
え)
標本作製機器
極微量成分の分析
クリプトスポリジウム
等の検査
病理標本の作製
計
H 6. 8
H11. 7
1
H11.10
5
【化学部】
(1品目
品 名
(型 式)
液体クロマトグラフ
液体クロマトグラフ
島津製 LC-3A 型
日立製 655A 型
液体クロマトグラフ
液体クロマトグラフ
ガスクロマトグラフ
島津製 グラジェントシステム LC-6A 型
島津製 LC-10A
島津製 GC-8APEP(FPD)
ガスクロマトグラフ
島津製 GC-14B(FID)
ガスクロマトグラフ
ガスクロマトグラフ
ガスクロマトグラフ
1
1
100 万円以上)
数
設置年月
(使用目的)
量
医薬品の成分分析
1
S57. 7
健康食品中の金属・臭素 1
S61. 6
の分析
食品中の添加物分析
1
S61.10
農薬の分析
1
H 8. 1
食品・家庭用品中の有機 1
S58. 7
スズの分析
食品中の塩化ビニルモ
ノマーの分析
島津製 GC-17A Ver.3 データ処理装置付 農薬・PCB 分析
島津製 GCMS-QP2010
残留農薬の分析
島津製 GC-17A(ECD×1)
家庭用品の塩素系化合
物の分析
H 5. 3
1
1
1
H11. 1
H18. 1
H18.3
(保管換
え)
原子吸光光度計
日立製 Z-5310
1
H11.11
質量分析装置
島津製
AOC17
1
H11. 3
質量分析装置
質量分析装置
自動試料前処理装置
自動溶出試験機
電気泳動装置
食品・薬品・家庭用品中
の金属の分析
QP5000 自 動 試 料 注 入 装 置 付 農薬の分析
1
(保管換
え)
マイクロマス製 Quattro II
アジレント・テクノロジー社製 誘導結合
プラズマ質量分析装置一式
島津製 全自動 GPC クリーンアップシス
テム
大日本精機製 RT-35STD
島津製 CS-9000 蛍光測定付属装置
化合物の分離と同定
食品、水、生体試料中の
元素分析
農薬用検体の精製用
1
1
H11. 3
H13. 7
1
H 6.11
医薬品の分析
食品中の添加物の分析
1
1
H10. 8
H11. 3
(保管換
え)
分光光度計
日本分光製 UBEST-50
有機微量分析装置
オリエンタル製 過酸化水素計
ーオリテクター・モデル 5
計
食品・薬品・家庭用品の
成分の分析
スーパ 食品中の過酸化水素の
測定
1
S62.12
1
H 5. 2
18
【生活科学部】
(1品目
品 名
イオンクロマトグラフ
ガスクロマトグラフ
放射能測定装置
放射能測定装置
計
100 万円以上)
数
設置年月
(使用目的)
量
水中イオン濃度の測定
1
H 6. 9
(型 式)
横河アナリティカルシステムズ製
IC7000P
島津製 GC-14A
農薬の検査
SEIKO EG&G 製 NaI(Tl)食品放射能測定装置 放射能検査
アロカ製 LSC-LBⅢ
放射能検査
【共同研究室】
(1品目
品 名
遠心分離器
遠心分離器
顕微鏡
電子顕微鏡
分光光度計
ミクロトーム
計
(型 式)
(使用目的)
ベックマン製 高速冷却遠心機 J-221
ベックマン製 卓上型分離用 TL-100
オリンパス製 BHS-F-Set
日本電子製 透過型 JEM100 CX2
走査型 JSM-T200
日立製作所製 F-2000
ウルトラ MT-2B 型
遺伝子の抽出
遺伝子の抽出
超微形態の観察
超微形態の観察
遺伝子の解析
電顕試料の作成
1
1
1
4
H 3. 2
H 1. 8
H 3. 3
100 万円以上)
数
設置年月
量
1
H 3. 3
1
H 3. 3
1
S62.12
1
S60. 1
1
1
6
H 3. 3
S60. 1
【血清情報管理室】
(1品目
品 名
超低温槽
超低温槽
超低温槽
(型 式)
100 万円以上)
(使用目的)
アメリカリーム社製 レブコ ULT-1386
血清の保存
アメリカリーム社製 レブコ ULT-1386
血清の保存
テイオン製 LDF-C51 自動補助冷却装置付 血清の保存
計
(1品目
品 名
(型 式)
日本クレア製 CF-204B 蒸気滅菌装置
日本クレア製 CSW-3KSPK 型 SP スタイル
日本クレア製 VE-45 ベルト式
【屋 上】
(使用目的)
器具の消毒
ゲージの洗浄用
実験動物の飼育
(1品目
品 名
ドラフト空気清浄装置
計
設置年月
H 1. 3
H13. 3
H17. 9
8
【実験動物管理室】
高圧滅菌器
洗浄機
動物飼育機
計
数
量
6
1
1
(型 式)
SWP 1800 型
100 万円以上)
数
設置年月
量
1
S47. 2
1
S42. 2
1
S47. 2
3
100 万円以上)
数
設置年月
(使用目的)
量
実験用排気ガスの洗浄
2
S46.12
2
Ⅳ 借用機器
(1品目
品 名
(型 式)
イオンクロマトグラフ
日本ダイオネクス社製 DX-320J
イオンクロマトグラフ
日本ダイオネクス社製 DX-320J
100 万円以上)
数 設置年
(使用目的)
月
量
水道水中の臭素酸等の測定
1 H16. 4
水道水中のシアン化合物の
測定
1
H16. 4
水道水中の臭素酸等の測定
1
H16. 4
水道水中のシアン化合物の
測定
1
H16. 4
食品中のリン系カーバメイ
ト系農薬の分析
1
H16. 4
水道水中の農薬・ジオキサン
の測定
核酸の研究
1
H12. 8
1
H14. 4
1
H16. 4
ア プ ラ イ ド バ イ オ シ ス テ ム ズ 製 残留農薬の分析
API4000MS/MS システム
日本分光製 HPLC システム
水道水中の農薬等の測定
1
H18. 9
1
H16. 4
水道水中の農薬等の測定
1
H16. 4
水道水中のかび臭物質等の
測定
1
H16. 4
水道水中の有機炭素量等の
測定
富士通製 衛生研究所試験検査研究シ 花粉予測調査及び生活習慣
病対策関連事業
ステム
1
H16. 4
1
H16.10
パーソナルコンピュータ
複写機
分光光度計
富士通製 FMV E600 セット
保健情報の解析
富士ゼロックス製 DocuCentre507
所運営用
日立製作所製 フレームレス原子吸光 水道水中の重金属の測定
光度計 Z-5010
1
1
1
H15. 5
H15. 4
H16. 4
分光光度計
日立製作所製 フレームレス原子吸光 尿、血液、毛髪、水、食品中
光度計 Z-5010
の重金属の測定
1
H16. 7
イオンクロマトグラフ 日本ダイオネクス社製 臭素酸分析シ
用ポストカラム装置
ステム PCM-510B ポストカラムモジ
ュール
イオンクロマトグラフ 日本ダイオネクス社製 シアン分析シ
用ポストカラム装置
ステム PCM-510C ポストカラムモジ
ュール
ガスクロマトグラフ
ヒューレットパッカード社製 固相抽
出-FTDガスクロマトグラフ
HP6890 シリーズ
ガスクロマトグラフ・ 日本電子製 JMS-AM SUN 200
質量分析装置
GC/MS システム
核酸分析装置
アロカ製 DNA シークエンシングシス
テム 4200L―2GX
高速液体クロマトグラ 日本分光製 ガリバー1500シリー
フ
ズ♯アイソクラティックシステム
液体クロマトグラフ/
タンデム質量分析装置
高速液体クロマトグラ
フ用ポストカラム装置
質量分析装置
質量分析装置
全有機炭素分析計
電子計算組織
計
日本ウォーターズ社製 液体クロマトグラフ
質量分析装置 ZQ2000/2695XE/2996 シ
ステム
ヒューレットパッカード社製 パージ
&トラップ-ガスクロマトグラフ質量
分析計 HP5973A GC/MS システム
島津製作所製 全有機炭素計システム
水道水中の陰イオン界面活
性剤・農薬等の測定
18
第2章 調査研究・試験検査
第1節 調査研究及び研究業績
Ⅰ 調査研究
当所における調査研究課題は、平成 18 年 8 月 21 日に開催された愛知県衛生研究所運営委員会において審議・承認
されたもので、同委員会において平成 19 年度の新規研究課題が決定され、平成 17 年度に完了した研究課題及び平成
18 年度継続中の研究課題の内容が報告された。
平成 18 年度の運営委員会委員の構成は、学識経験者として研究所外から、杉嵜隆一(名古屋大学名誉教授)
、中島
捷久(名古屋市立大学大学院医学研究科教授 感染生体防御学講座感染微生物学)、中村好志(椙山女学園大学生活科学
部教授 食品化学)、長谷川忠男(名古屋市立大学大学院医学研究科教授 感染生体防御学講座感染防御・制御学)、宮
尾 克(名古屋大学情報連携基盤センター教授 多元数理科学)及び森雅美(名古屋市立大学看護学部教授 衛生化学)
の 6 名に加え、行政的な立場から愛知県健康福祉部健康担当局・技監、健康対策課長、生活衛生課長、医薬安全課長、
県・保健所長会長及び当研究所長の総計 12 名である。
1.経常調査研究
部 名
課
新規 継続の別
調査研究期間
継 続
14∼18 年度
微生物部(細菌) 食品からのカンピロバクター菌検出法に関する研究
新 規
18∼20 年度
愛知県民のノロウイルスに対する抗体保有状況調査
新 規
18∼19 年度
継 続
17∼18年度
継 続
16∼18 年度
生体内元素の相互バランスと健康に関する研究
新 規
18∼20 年度
食品からの農薬摂取の実態とその安全性評価
継 続
17∼19 年度
医薬品等の分析法の開発と市販製品への応用
継 続
15∼18 年度
水道原水中の微量化学物質の存在に関する調査研究
継 続
16∼18 年度
企画情報部
題
名
地域保健情報の動的解析及び総合的評価に関する研究
微生物部
(ウイルス)
HIV-1 未治療感染者における薬剤耐性ウイルス等の
保有状況調査
原虫(クリプトスポリジウム及びジアルジア)の汚染状況
毒性部
に関する研究
化学部
生活科学部
計
9 課題
(新規 3 課題、継続 6 課題)
2.特別調査研究
部
名
課
題
名
微生物部(細菌) メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の分子疫学的研究
計
1 課題
新規 継続の別
調査研究期間
継 続
17∼19 年度
新規 継続の別
調査研究期間
(継続 1 課題)
3. その他の調査研究
部
名
課題名(事業名等)
新規開発したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の PCR
微生物部(細菌) 遺伝子型別分類法による分子疫学的研究
(全国衛生部長会調査研究事業)
計
1 課題
(新規1課題)
新 規
18 年度
Ⅱ 研究業績
1. 平成 18 年度衛生研究所業績一覧
欧文論文
邦文論文
著書
報告書等
8
5
3
2
3
0
0
1
1
1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
3
3
4
6
1
その他の
誌上発表
1
2
4
1
4
2
21
4
0
17
14
企画情報部
微生物部〈細菌関連〉
微生物部〈ウイルス関連〉
毒性部
化学部
生活科学部
合
計
注)平成 19 年 3 月末現在の論文数。
2. 誌上発表・部別一覧
著
者
誌
名
【企画情報部】
(欧文原著)Coffee consumption and the risk of endometrial Cancer Science 98: 411-415, 2007
cancer: evidence from a case-control study of female hormone
related cancers in Japan
Kaoru Hirose, Yoshimitsu Niwa, Kenji Wakai, et al.
(欧文原著)Dietary risk factors for colon and rectal J Epidemiol 16:125-135, 2006
cancers: A comparative case-control study
Kenji Wakai, Kaoru Hirose, Keitaro Matsuo, et al.
(欧文原著)Smoking increases the treatment failure for Am J Med. 119:217-224, 2006
Helicobacter pylori eradication
Takeshi Suzuki, Keitaro Matsuo,......Kaoru Hirose, et al.
(欧文原著)Alcohol dehydrogenase 2 His47Arg polymorphism Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 15:1009-13,
influences drinking habit independently of aldehyde 2006
dehydrogenase 2 Glu487Lys polymorphism: Analysis of 2,299
Japanese subjects
Keitaro Matsuo, Kenji Wakai, Kaoru Hirose, et al.
(欧文原著)Effect of dietary antioxidants and risk of oral, Cancer Science 97:760-767, 2006
pharyngeal and laryngeal squamous cell carcinoma according
to smoking and drinking habits
Takeshi Suzuki, Kenji Wakai, ...... Kaoru Hirose, et al.
(欧文原著)Meat, milk, saturated fatty acids, the Pro12Ala Cancer Science 97:1226-1235, 2006
and C161T polymorphisms of the PPARγgene and colorectal
cancer risk in Japanese
Kiyonori Kuriki, Kaoru Hirose, Keitaro Matsuo, et al.
( 欧 文 原 著 ) Risk of colorectal cancer is linked to Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 15:1791-1798,
erythrocyte composition of fatty acids as biomarkers for 2006
dietary intakes of fish, fat, and fatty acids
Kiyonori Kuriki, Kenji Wakai, Kaoru Hirose, et al.
(欧文原著)Risk factors differ for non-small-cell lung Cancer Science 98:96-101, 2007
cancers with and without EGFR mutation: assessment of
smoking and sex by a case-control study in Japanese
Keitaro Matsuo, Hidemi Ito, ...... Kaoru Hirose, et al.
(その他)愛知県における 2007 年スギ・ヒノキ科花粉飛散予測 東海花粉症研究会誌 18 巻・33 回;7-14,2007
について
続木雅子、櫻井博貴、広瀬かおる、他
【微生物部】
( 欧 文 原 著 ) Typing of bfpA Genes of Enteropathogenic Microbiol Immunol, 50(9): 713-717, 2006
Escherichia coli Isolated in Thailand and Japan by
Heteroduplex Mobility Assay
Mariko Iida, Mitsugu Yamazaki, et al.
(欧文原著)Development of a Rapid Strain Differentiation J Appl Microbiol, 101(4): 938-947, 2006
Method for Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus
Isolated in Japan by Detecting Phage-Derived Open Reading
Frames.
Masahiro Suzuki, ......Mami Hata, Masakado Matsumoto, et al.
(欧文原著)Epidemiology and Molecular Analysis of Group A Jpn J Infect Dis 59(3): 202-203, 2006
Streptococci from Patients Involved in Food-Borne Disease
Outbreaks in Japan between 1996 and 2003.
Daisuke Tanaka, Tomoko Shima, ...... Masakado Matsumoto, et.
al.
(欧文原著)Genotyping of Clostridium perfringens Isolates Jpn J Infect Dis 60(1): 68-69, 2007
Collected from Food Poisoning Outbreaks and Healthy
Individuals in Japan Based on the cpe Locus.
Daisuke Tanaka,...... Masakado Matsumoto, Reiji Hiramatsu,
et. al.
J Clin Microbiol 45(3): 1038-1041, 2007
(欧文原著)Intimin Types Determined by Heteroduplex
Mobility Assay of Intimin Gene (eae)-Positive Escherichia
coli Strains
Kenitiro Ito, ...,Mitsugu Yamazaki, et al.
(欧文原著)Sequence Characteristics of HA Gene in Influenza Jpn J Infect Dis 59(4): 209-211, 2006
Type A (H1N1) Virus Isolated during the 2005-2006 Season in
Aichi Prefecture, Japan.
Mami Hata, Masako Tsuzuki, Kenji Sakae, et al.
(欧文原著)Recombinant wild-type measles virus containing J Gen Virol 87(6): 1643-1648, 2006
a single N481Y substitution in its haemagglutinin cannot use
receptor
CD46
as
efficiently
as
that
having
the
haemagglutinin of the Edmonston laboratory strain
Fumio Seki, Makoto Takeda, Hiroko Minagawa, et al.
(欧文原著)Presence of a surface-exposed loop facilitates J Virol 81(3): 1119-1128, 2007
trypsinization of particles of Sinsiro virus, a genogroup
II.3 norovirus
Shantanu Kumar, Wendy Ochoa, Shinichi Kobayashi, et al.
(邦文原著)散発下痢症患者由来のフルオロキノロン耐性大腸菌 感染症学雑誌 80(5): 507−512, 2006
における gyrA 遺伝子および parC 遺伝子の変異
石畒 史、・・・、山
貢、他
(邦文原著)
野生動物からのE型肝炎ウイルス(HEV)と HEV 抗体の 肝臓 47(6):316-318, 2006
検出及び猟師らの HEV 抗体保有状況
伊藤 雅、小林慎一、山下照夫、他
(研究報告書)
鶏肉におけるカンピロバクター食中毒の予防に関 平成 17 年度厚生労働科学研究事業「細菌性食中毒
する研究
の予防に関する研究」主任研究者:山本茂貴、平
平松礼司
成17 年度総括・分担研究報告書; 164−168、
2006.4
(研究報告書)
腸管出血性大腸菌の食品からの検出法に関する研 平成 17 年度厚生労働省食品等試験検査費[食品か
究
らの腸管出血性大腸菌O26およびO111の検出方法
平松礼司
の開発事業]
(コラボレイティブ・スタディの結果
報告書) 主任研究者:高鳥浩介、平成 17 年度研
究報告書、2006.4
(研究報告書)東海・北陸地方9地方衛生研究所のパルスフィー 厚生科学研究費補助金(新興・再興感染症研究事
ルドゲル電気泳動(PFGE)の行政への還元と PCR を用いた
業)
「広域における食品由来感染症を迅速に検知す
腸管出血性大腸菌 O157 の型別法(IS printing system) るために必要な情報に関する研究」主任研究者:
の検討
寺嶋 淳、平成 18 年度総括・分担研究報告書;
松本昌門、鈴木匡弘、他
2007.3
(研究報告書)東海地区における HIV 初感染者の薬剤耐性変異 厚生労働科学研究費補助金(エイズ対策研究事業)
(ジェノタイプ)について
「HIV 検査体制の構築に関する研究」主任研究
榮 賢司、秦 眞美、続木雅子
者:今井光信、平成 17 年度 研究報告書; 247-249,
2006
(研究報告書)東海地区における HIV 初感染者の薬剤耐性変異 厚生労働科学研究費補助金(エイズ対策研究事業)
(ジェノタイプ)について
「HIV 検査体制の構築に関する研究」主任研究
榮 賢司、秦 眞美、続木雅子、他
者:今井光信、総合研究報告書(平成 15∼17 年度);
263-266, 2006
(研究報告書)愛知県内の下水処理場流入水からの腸管感染ウ
厚生労働科学研究費補助金(食品の安心・安全確
イルスの検出状況
保推進研究事業)
「ウイルス性食中毒の予防に関す
小林慎一、長谷川晶子、長谷聡子、他
る研究」主任研究者:武田直和、平成 18 年度 分
担研究報告書;47-53, 2007
(その他)わが国における腸炎由来 Campylobacter jejuni の血 病原微生物検出情報、27(7):173-174,2006
清型別検出動向およびキノロン剤に対する耐性菌の出現状況−
カンピロバクター・レファレンスセンター
衛生微生物技術協議会カンピロバクター・レファレンスグループ
秋田県健康環境センター、....愛知県衛生研究所、....
(その他)腸管凝集性大腸菌耐熱性腸管毒 EAST1 遺伝子 astA を 愛知県衛生研究所報 57: 1−11, 2007
保有する大腸菌(血清型 O1:H45)が腸管毒素原性大腸菌と同時
に検出された食中毒事例
山
貢、松本昌門、秦 眞美、他
(その他)エンテロウイルス 71 型(EV71)の検出状況−愛知県
伊藤 雅、長谷川晶子、山下照夫、他
病原微生物検出情報、27(7):177-178,2006
(その他)新生児室におけるエコーウイルス 18 型の感染事例― 病原微生物検出情報、27(9):231-232,2006
愛知県
幸脇正典、小山典久、山下照夫、他
(その他)ヒトメタニューモウイルスが検出された急性脳症死亡例 病原微生物検出情報、27(11): 318-319, 2006
清澤秀輔、小山典久、秦 眞美、他
ウイルス、56(2):259-261, 2006
(その他)教室紹介 愛知県衛生研究所 微生物部
皆川洋子
【毒性部】
(欧文原著) Serum levels of volatile organic compounds in Bulletin of Environmental Contamination and
patients with sick building syndrome.
Toxicology, 77, 331-337, 2006
Fumio Kondo, Yoshitomo Ikai, Tomomi Goto, et al.
(欧文原著) Two sensitive sick-building syndrome patients Journal of Health Science, 53, 119-123, 2007
possibly
responding
to
p-dichlorobenzene
and
2-ethyl-1-hexanol: case report.
Fumio Kondo, Yoshitomo Ikai, Tomomi Goto, et al.
(邦文原著)食用の天然および栽培キノコに含まれる発熱性物質 食衛誌,47,164-166,2006
について
奥村正直,都築秀明,富田伴一
(研究報告書)アサリにおける麻痺性貝毒定量化の検討
平成17年度貝毒安全対策事業報告書、1-7、2006.3
富田伴一、奥村正直、都築秀明、他
(研究報告書)愛知県における貝類毒化モニタリング
平成17年度赤潮・貝毒監視事業報告書、1-16、
富田伴一、奥村正直、都築秀明、他
2006.3
(研究報告書)
化学物質による子どもへの健康影響に関する研究 厚生労働科学研究費補助金 化学物質リスク研究
中澤裕之、...... 近藤文雄、他(分担研究者)
事業 牧野恒久(主任研究者)平成17年度総括・
分担研究報告書, 2006.4
(研究報告書)化学物質、特に家庭内の化学物質の暴露評価手法 厚生労働科学研究費補助金 化学物質リスク研究
の開発に関する研究
事業 徳永裕司(主任研究者)平成18年度総括研
杉村堅次、...... 近藤文雄、他(分担研究者)
究報告書, 2007.3
(その他)パッシブサンプリング法を用いた揮発性有機化合物の測 愛知県衛生研究所報、57:13−24, 2007
定−シックハウス症候群患者の曝露量調査−
近藤文雄、山
貢、林 留美子、他
【化学部】
(欧文原著)Determination of spinosad in vegetables and J. AOAC Int., 89: 1641-1649, 2006
fruits by high-performance liquid chromatography with UV and
mass
spectrometric
detection
after
gel
permeation
chromatography and solid-phase extraction cleanup on a
2-layered column
Eiji Ueno, Harumi Oshima, Hiroshi Matsumoto, et al.
(欧文原著)High throughput analysis of N-methyl carbamate J. Liq. Chromatogr., 29: 2651-2661, 2006
pesticides in cereals and beans by dual countercurrent
chromatography and liquid chromatography electrospray
ionization tandem mass spectrometry
Tomomi Goto, Yuko Ito, Sadaji Yamada, et al.
(欧文原著)Analysis of crude drugs using reversed-phase Natural Medicines, 60:141-145,2006
TLC/scanning densitometry (II) Identification of ginseng,
red ginseng, gentian, Japanese gentian, pueraria root,
gardenia fruit, schisandra fruit and ginger
Tsutomu Ohno, Eiichi Mikami, Hisao Oka
(邦文原著)HPLC による食品中メトプレンの分析法
食品衛生学雑誌、47:173-177、2006
斎藤 勲、上野英二、大島晴美、他
(研究報告書)
農薬等のポジティブリスト化に伴う検査の精度管 厚生労働科学研究補助金(食品の安心・安全確保推進
理に関する研究
研究事業)「検査機関の信頼性確保に関する研究」
研究協力者:上野英二
主任研究者:遠藤 明、分担研究者:田中之雄
平成 18 年度分担研究報告書
(研究報告書)畜水産食品中の残留農薬の実態調査
厚生労働科学研究補助金(食品の安心・安全確保
研究協力者:上野英二
推進研究事業)「食品中に残留する農薬等におけ
るリスク管理手法の精密化に関する研究」主任研
究者:加藤保博、分担研究者:根本 了
平成18年度分担研究報告書
(研究報告書)
食品中の農薬に関する検査法評価ガイドラインの 厚生労働科学研究補助金(食品の安心・安全確保推
作成
進研究事業)「食品中に残留する農薬等の規格基
研究協力者:上野英二
準に係る分析法における不確実要素に関する調査
研究」主任研究者:松田りえ子
平成 18 年度分担研究報告書
(研究報告書)
既存添加物・不溶性鉱物性物質の安全性評価のた 主任研究者:中澤裕之
めの基礎的研究
日本食品化学研究振興財団 第12回研究成果報告
研究協力者:大島晴美
書:135-153、2006
(研究報告書)残留基準設定データの精密化に関する研究
厚生労働科学研究補助金(食品の安心・安全確保
研究協力者:山田貞二
推進研究事業)「食品中に残留する農薬等におけ
るリスク管理手法の精密化に関する研究」主任研
究者:加藤保博、分担研究者:永山敏廣
平成 18 年度分担研究報告書
(研究報告書)
食品テロにおいて想定される化学物質に関する研 厚生労働科学研究補助金(食品の安心・安全確保
究
推進研究事業)「食品によるバイオテロの危険性
研究協力者:大野勉
に関する研究」主任研究者:今村知明、分担研究
者:宮 豊
平成 18 年度分担研究報告書
(その他)デュアルカラム GC の食品中残留農薬分析への利用に 食品衛生学雑誌、47:J299-J304、2006
ついて(講座)
上野英二
(その他)畜水産食品中のPCBs、クロルデン類および有機塩
素系農薬の一斉分析におけるゲル浸透クロマトグラフィーおよ
びシリカゲルカラムクロマトグラフィーの応用
椛島由佳、上野英二、大島晴美、他
愛知県衛生研究所報、57:55-64、2007
(その他)逆相 TLC/スキャンデンシトメトリーによる生薬分析
愛知県衛生研究所報、57:49-53、2007
―オウゴン、シャクヤク、カンゾウ、アロエ、ボタンピ、センブ
リ、オウレン、センナの確認―
大野 勉、池田清栄、三上栄一
(その他)
「医薬品」の試料溶液調製法
ぶんせき、2006:260-261
三上栄一
【生活科学部】
(報告書)鉱泉分析における電気伝導率測定の有用性について
環境省業務報告 平成 17 年度鉱泉分析法指針改
大沼章子
定検討調査 2006、
(財)中央温泉研究所
(その他)
水中ヒ素化学形態別分析における試料の保存について 愛知県衛生研究所報、57、25-36、2007
大沼章子、小池恭子、遠山明人
(その他)LC-ICP-MS による愛知県の水道原水中ヒ素について
愛知県衛生研究所報、57、37-48、2007
大沼章子、小池恭子、遠山明人
(* ;要旨の掲載頁を示す)
3.学会発表等・部別一覧
発
表
者
学
会
名
頁*
【企画情報部】
Obesity and breast cancer
Breast Cancer
Brainstorming
Kaoru Hirose
Meeting ‒ Bangkok (UICC), Bangkok,
23
Thailand, 2006.11.1
Dietary factors and breast cancer
The 3rd Asian Pacific Organization
Kaoru Hirose
for
Cancer
Assembly
Prevention,
Conference,
24
General
Bangkok,
Thailand, 2006.11.3
愛知県における 2007 年スギ・ヒノキ科花粉飛散予測について
第 33 回東海花粉症研究会 名古屋市
続木雅子、櫻井博貴、広瀬かおる、他
2006.12.9
25
【微生物部】
散発下痢症患者由来のフルオロキノロン耐性大腸菌における gyrA 遺 第 80 回日本感染症学会総会 東京都
伝子および parC 遺伝子の変異
石畒 史、東方美保、山
35
2006.4.21
貢、他
食品からの腸管出血性大腸菌 O157 及び O26 の検査法の策定における 第 10 回 腸管出血性大腸菌感染症シ
コラボレイティブ・スタディによる評価
36
ンポジウム 東京都 2006. 9.1
平松礼司、土屋 禎、小西典子、他
食品からの腸管出血性大腸菌血清型 O157 及び O26 の検出法に関する 第 27 回日本食品微生物学会学術総会
コラボレイティブ・スタディの結果について
36
堺市 2006. 9. 21
平松礼司、大塚佳代子、竹田義弘、他
ファージ由来 ORF 検出による MRSA の迅速遺伝子型別分類法の開発と 第43回日本細菌学会中部支部総会
その安定性の検証
37
岐阜市 2006.10.19-20
鈴木匡弘、松本昌門
ファージ由来 ORF タイピング法(POT 法)による黄色ブドウ球菌の菌 第18回 日本臨床微生物学会総会
株識別能力の検討
鈴木匡弘、堀 洋美、多和田行男、他
長崎市 2007. 2.17-18
38
原因究明に 2 つの遺伝子解析を試みた MRSA 院内伝播疑い事例の検討 第22回日本環境感染学会 横浜市
中野 学、雲井直美、...... 鈴木匡弘
2007. 2.23-24
黄色ブドウ球菌ゲノムの挿入小領域中の ORF 検出による clonal 第 80 回日本細菌学会総会 大阪市
complex の予測
39
39
2007. 3.26-28
鈴木匡弘、松本昌門、皆川洋子
愛知県内の下水処理場流入下水からのノロウイルス検出状況
第54回日本ウイルス学会学術集会
長谷川晶子、伊藤 雅、小林慎一、他
名古屋市 2006.11.19
平成 17 年度の東海北陸地区におけるノロウイルス検出状況について 第54回日本ウイルス学会学術集会
小原真弓、...... 小林慎一、長谷川晶子、他
39
名古屋市 2006.11.19
2005-2006 シーズンにおけるアマンタジン耐性A 香港型インフルエン 第54回日本ウイルス学会学術集会
ザウイルスの流行と耐性変異の迅速検出法
39
40
名古屋市 2006.11.20
秦 眞美、後藤泰浩、田中正大、他
愛知県内で分離されたエンテロウイルス 71 型(EV71)の遺伝子亜型の 第54回日本ウイルス学会学術集会
解析
40
名古屋市 2006.11.20
伊藤 雅、山下照夫、長谷川晶子、他
腫瘍壊死因子(TNF)投与による単純ヘルペスウイルス感染の修飾
第 54 回日本ウイルス学会学術集会
皆川洋子、柳 雄介
名古屋市 2006.11.20
エンテロウイルス 79 型、97 型、98 型およびコクサッキーウイルス 第 54 回日本ウイルス学会学術集会
A9 型関連株の遺伝子解析
41
41
名古屋市 2006.11.21
山下照夫、伊藤 雅、長谷川晶子、他
Taxonomy of Picornaviridae: Current Situation and Future EUROPIC 2006
Proposals
42
Inari, Finland 2006.11.30
N. J. Knowles, T. Hovi, ...... Teruo Yamashita, et al.
【毒性部】
ウシから検出されたクリプトスポリジウムについて
日本獣医公衆衛生学会(中部)
都築秀明、奥村正直、他
新潟県湯沢町 2006.8.27
キノコに含まれる発熱性物質について(第 2 報)
日本食品衛生学会
奥村正直、都築秀明、木村隆
春日井市 2006.10.26
PCR-PFLP 法による動物から検出されたクリプトスポリジウムの遺伝 日本寄生虫学会西日本支部大会
子型別
68
68
68
長久手町 2006.11.11
都築秀明、奥村正直、他
GC/MS 法を用いたヒト尿中フタル酸エステル代謝物の測定
環境ホルモン学会第 9 回研究発表会
近藤文雄、猪飼誉友、林留美子、他
東京都 2006.11.11-12
ウシから検出されたクリプトスポリジウムについて
平成18年度日本獣医師会学会年次大会
都築秀明、奥村正直、他
さいたま市 2007.2.23
成人における血清及び尿中の多元素濃度バランス
第 77 回日本衛生学会
林留美子、近藤文雄、木村隆、他
大阪市 2007.3.26-28
室内空気中の窒素酸化物及びオゾン濃度に関する全国調査
日本薬学会第127年会 富山市
神野透人、...... 近藤文雄、林 留美子、他
2007.3.28-30
培養細胞を用いた迅速な麻痺性貝毒試験法
日本水産学会春季大会
奥村正直、都築秀明、木村隆
東京都 2007.3.30
69
69
69
70
70
【化学部】
GPC and solid-phase extraction cleanup method for monitoring 6th
pesticides in brown rice by GC/MS and LC/MS
European
Pesticide
Residue
81
Workshop, Corfu, Greece, 2006. 5. 22
Eiji Ueno, Isao Saito, Yuka Kabashima, et al.
Study
on
quality
of
dietary
supplements
containing The 6th Asian Conference on Clinical
dehydroepiandrosterone (DHEA) imported for personal use
Pharmacy, Bangkok, Thailand, 2006.
Eiichi Mikami, Tsutomu Ohno, Seiei Ikeda, et al.
7. 8
Reliable method for monitoring pesticide residues in foods by NCI 11th IUPAC International Congress
mode GC/MS and dual-column GC-µECD
of Pesticide Chemistry, Kobe, 2006.
Eiji Ueno, Isao Saito, Yuka Kabashima, et al
8. 9
81
82
ICP-MS による既存添加物・不溶性鉱物性物質の材質および溶出元素 日本食品衛生学会第 92 回学術講演会、 82
調査
春日井市、2006.10.26
大島晴美、椛島由佳、上野英二、他
GC/MS 一斉分析データベースソフトウェアを用いた食品中残留農薬 第 43 回全国衛生化学技術協議会年会、 82
のモニタリング手法の検討
米子市、2006.11.2
上野英二、椛島由佳、大島晴美、他
HPLC による穀類、
豆類中の N−メチルカーバメート系農薬一斉分析法 第 43 回全国衛生化学技術協議会年会、 83
の検討
米子市、2006.11.2
椛島由佳、上野英二、大島晴美、他
農薬等のポジティブリスト化に伴う検査の精度管理に関する研究
第 43 回全国衛生化学技術協議会年会、 83
(第 1 報)
米子市、2006.11.2
住本建夫、織田 肇、...... 上野英二、他
逆相TLC/スキャニングデンシトメトリーによる生薬分析(5)−クジン、 第 43 回全国衛生化学技術協議会年会、 83
ヤクチ、モッコウ、インヨウカク、ダイオウ、シコンの確認試験−
米子市、2006.11.2
池田清栄、三上栄一、大野 勉
H-D 交換反応により合成した重水素標識体を用いた食品中のサルフ
日本薬学会第 127 年会、富山市、
ァ剤の迅速分析法
2007.3.28
84
後藤智美、伊藤裕子、山田貞二、他
食品中のテトラサイクリン系及びペニシリン系抗生物質の同時分析 日本薬学会第 127 年会、富山市、
(第 2 報)
84
2007.3.28
吉見幸子、岡 尚男、後藤智美、他
【生活科学部】
Tacrolimus Hydrate Ointment Inhibits Skin Plasma Extravasation American Academy of Allergy Asthma
92
Induced by Topically Applied m-Xylene But Not Capsaicin in Rat and Immunology (AAAAI) 2007 AAAAI
Shiho Morii, Fumio Kondo, Yoshitomo Ikai, et al.
Annual
Meeting 、 San
Diego 、
2007.2.23-27
愛知県におけるホウ素含有温泉について
日本温泉科学会第 59 回大会 秋田市
大沼章子、小池恭子、猪飼誉友、他
2006.9.6
92
第2節
企画情報部
Ⅰ 調査研究
【Ⅰ-B:調査研究年次報告】
1. 地域保健情報の動的解析及び総合的評価に関する研究(平成 14∼18 年度)
(1) 脳卒中登録事業と県民生活習慣調査のデータからみた心筋梗塞の危険因子
脳卒中などの循環器疾患の発症には生活習慣が深く関与していることは明らかになっている。愛知県で
は循環器疾患患者の発症状況を把握し、発症者の生活習慣情報を把握することにより予防対策に資する情
報構築をめざし愛知県循環器疾患登録事業を実施している。当部はその登録センターとして情報の収集・
データベースの構築、集計解析を行っている。
また、愛知県では「健康日本 21 あいち計画」を平成 13 年 2 月に策定し、10 年間で目標を達成すること
を計画している。その中間評価や目標の見直しを行うにあたっての基礎資料を提供するとともに生活習慣
病予防に有用な情報を構築することを目指し、平成 12 年及び 16 年に生活習慣関連調査を実施した。この
生活習慣関連調査及び循環器疾患登録事業データを利用して調査研究を実施している。これまでに既往歴
及び喫煙・飲酒などの生活習慣が脳卒中発症リスクに与える影響について検討を行ってきた。本年度は平
成 13 年度から開始し登録症例が集積されてきた急性心筋梗塞についての解析を実施した。
愛知県循環器疾患登録事業に平成 13 年から 16 年までに届出のあった 30 歳以上 69 歳以下の初発急性心
筋梗塞患者のうち、すべての解析項目に回答した 788 人を症例群、平成 12 年と 16 年に 1000 人に 1 人の割
合で無作為抽出された一般県民を対象とした愛知県生活習慣関連調査に回答した同年代の狭心症及び急性
心筋梗塞の既往歴がなく、すべての解析項目に回答した 2,300 人を対照群とし症例・対照研究を実施した。
急性心筋梗塞発症に対する体型及び既往歴の調整オッズ比(OR)を資料−企画−表 1 に示す。年齢、生
活習慣及び既往歴で調整後、男性では、いずれの既往歴も強い関連を示したが(ORc、高血圧:2.58、高脂
血症:3.26、糖尿病:2.69)
、肥満及び低体重は有意な関連を示さなかった。一方、女性では、すべての既
往歴に加え、肥満が有意な関連を示し(肥満:1.92、高血圧:2.10、高脂血症:5.58、糖尿病:6.24)
、低
体重は境界有意な関連を示した(1.94)
。
資料−企画−表1 急性心筋梗塞発症に対する体型及び既往歴の調整オッズ比
性別
要因
ORa
ORb
ORc
男性 BMI (低体重)
0.98
[0.60-1.58]
0.90
[0.54-1.49]
0.93
[0.54-1.61]
BMI (普通体重) 1.00
[referent]
1.00
[referent]
1.00
[referent]
BMI (肥満)
1.39
[1.10-1.76]*
1.40
[1.09-1.80] *
1.04
[0.80-1.37]
高血圧
2.71
[2.18-3.38] *** 3.14
[2.47-3.98] *** 2.58
[2.01-3.32] ***
***
***
高脂血症
4.01
[3.12-5.16]
4.18
[3.20-5.47]
3.26
[2.45-4.33] ***
糖尿病
3.40
[2.60-4.45] *** 3.40
[2.56-4.52] *** 2.69
[1.99-3.64] ***
女性 BMI (低体重)
1.49
[0.84-2.65]
1.62
[0.88-2.98]
1.94
[1.01-3.75] +
BMI (普通体重) 1.00
[referent]
1.00
[referent]
1.00
[referent]
BMI (肥満)
2.27
[1.57-3.28] *** 2.21
[1.48-3.31] *** 1.92
[1.21-3.04] *
高血圧
2.57
[1.85-3.59] *** 2.92
[2.03-4.22] *** 2.10
[1.39-3.18] ***
***
***
高脂血症
5.22
[3.64-7.48]
6.60
[4.40-9.90]
5.58
[3.59-8.67] ***
***
***
糖尿病
8.14
[5.29-12.5]
8.01
[5.02-12.8]
6.24
[3.75-10.4] ***
+
:p<0.1,*:p<0.05,**:p<0.01,***:p<0.001,
[
]
:95%信頼区間
ORa:年齢で調整,ORb:年齢、飲酒、運動、喫煙で調整,ORc:年齢、飲酒、運動、喫煙、高血圧、高脂血
症、糖尿病で調整
低体重:BMI<18.5、普通体重:BMI18.5∼24.9、肥満:BMI≧25
Kondo Y, Toyoshima H, Yatsuya H, Hirose K, Morikawa Y, Ikedo N, Masui T and Tamakoshi
K : Risk factors for first acute myocardial infarction attack assessed by cardiovascular
disease registry data in Aichi Prefecture. Nagoya J Med Sci 2007 (in press)より抜粋
本研究は大都市を含む県内全域の循環器疾患登録例について、一般県民と比較しながら既往歴や身体特
性などが発症に対して与える影響の検討を行った重要な研究と位置づけることができる。しかしながら、
本調査の対象となる症例群(循環器疾患登録患者)と対照群(一般住民)では年齢分布が大きく異なって
おり、喫煙・飲酒習慣などの生活習慣や肥満者割合が大きく異なることが結果に影響を及ぼしている可能
性がある。また、調査に積極的に回答した一般県民を対照群としていることによるセレクションバイアス
が存在すること、循環器疾患登録データを利用しているため生活習慣などがすでに疾患の影響を受けてい
る可能性などが考えられ、今後のさらなる検討が必要と思われる。
(2) 情報の提供
健康福祉部医療福祉計画課が厚生労働省から供与を受けている人口動態データを、平成 16 年度より当所
においても使用することが認められた。これを受け、医療福祉計画課の依頼により、平成 17 年愛知県衛生
年報のうち出生に関する 4 表、死亡に関する 15 表及び婚姻・離婚に関する 3 表を作成するためのプログラ
ムを開発し、集計を行った。なお、市町村合併や中核市の誕生などによるプログラム変更が可能な限り回
避できることを念頭にプログラム開発を行った。
また、衛生行政施策の策定及び評価の基礎資料として、県内各市町村別生命表を平成 13 年から 17 年の
死亡データを用いて作成するとともに、同期間の市町村別・疾病別・性別標準化死亡比(SMR)を簡単
死因分類(131 分類)について算出し、出力結果を電子ファイルとして県内全保健所に配布した。
Ⅱ 誌上発表
【欧文原著】
1. Coffee consumption and the risk of endometrial cancer: evidence from a case-control study of
female hormone related cancers in Japan
Kaoru Hirose, Yoshimitsu Niwa, Kenji Wakai, Keitaro Matsuo, Toru Nakanishi, Kazuo Tajima
Cancer Science 98: 411-415, 2007.
2. Dietary risk factors for colon and rectal cancers: A comparative case-control study
Kenji Wakai, Kaoru Hirose, Keitaro Matsuo, Hidemi Ito , Kiyonori Kuriki, Takeshi Suzuki, Tomoyuki
Kato, Takashi Hirai, Yukihide Kanemitsu, Kazuo Tajima
J Epidemiol 16:125-135, 2006.
3. Smoking increases the treatment failure for Helicobacter pylori eradication
Takeshi Suzuki, Keitaro Matsuo, Hidemi Ito, Akira Sawaki, Kaoru Hirose, Kenji Wakai, Shigeki Sato,
Tsuneya Nakamura, Kenji Yamao, Ryuzo Ueda, Kazuo Tajima
Am J Med. 119:217-224, 2006.
4. Alcohol dehydrogenase 2 His47Arg polymorphism influences drinking habit independently of aldehyde
dehydrogenase 2 Glu487Lys polymorphism: Analysis of 2,299 Japanese subjects
Keitaro Matsuo, Kenji Wakai, Kaoru Hirose, Hidemi Ito, Toshiko Saito, Kazuo Tajima
Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 15:1009-1013, 2006.
5. Effect of dietary antioxidants and risk of oral, pharyngeal and laryngeal squamous cell carcinoma
according to smoking and drinking habits
Takeshi Suzuki, Kenji Wakai, Keitaro Matsuo, Kaoru Hirose, Hidemi Ito , Kiyonori Kuriki, Shigeki
Sato, Ryuzo Ueda, Yasuhisa Hasegawa, Kazuo Tajima
Cancer Science 97:760-767, 2006.
6. Meat, milk, saturated fatty acids, the Pro12Ala and C161T polymorphisms of the PPARγgene and
colorectal cancer risk in Japanese
Kiyonori Kuriki, Kaoru Hirose, Keitaro Matsuo, Kenji Wakai, Hidemi Ito,
Yukihide Kanemitsu, Takashi Hirai, Tomoyuki Kato, Nobuyuki Hamajima, Toshiro Takezaki, Takeshi
Suzuki, Toshiko Saito, Rie Tanaka, Kazuo Tajima
Cancer Science 97:1226-1235, 2006.
7. Risk of colorectal cancer is linked to erythrocyte composition of fatty acids as biomarkers for
dietary intakes of fish, fat, and fatty acids
Kiyonori Kuriki, Kenji Wakai, Kaoru Hirose, Keitaro Matsuo, Hidemi Ito,
Takeshi Suzuki, Toshiko Saito, Yukihide Kanemitsu, Takashi Hirai, Tomoyuki Kato, Masae Tatematsu,
Kazuo Tajima
Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 15:1791-1798, 2006.
8. Risk factors differ for non-small-cell lung cancers with and without EGFR mutation: assessment
of smoking and sex by a case-control study in Japanese
Keitaro Matsuo, Hidemi Ito, Yasushi Yatabe, Akio Hiraki, Kaoru Hirose, Kenji Wakai, Takayuki Kosaka,
Takeshi Suzuki, Kazuo Tajima, Tetsuya Mitsudomi
Cancer Science 98:96-101, 2007.
【研究報告】
なし
【その他】
愛知県における 2007 年スギ・ヒノキ科花粉飛散予測について
続木雅子、櫻井博貴、広瀬かおる、森川保二、宮
豊
東海花粉症研究会誌 18 巻・33 回;7-14,2007.
Ⅲ 学会発表等
1. Obesity and breast cancer
Current incidence of breast cancer in Japan is remarkably increasing, probably related to the
westernization of dietary habits. The age-specific incidence rate of breast cancer in Japan is
entirely different from that of Western countries, i.e., the age trend falls after menopausal age,
while the age-dependent elevation of risk in premenopausal women. A number of risk factors for
breast cancer have been established, most of them related to reproductive events. Obesity is an
important and modifiable risk factor. With the use of data from the hospital-based epidemiologic
research program at Aichi Cancer Center (HERPACC), we evaluate the relationship between
anthropometric indices and breast cancer among Japanese women, who are generally leaner than white
women. In total, 1,359 breast cancer cases were included and 24,207 women, confirmed as free of
cancer, were recruited as a control group. Odds ratios (OR) and 95% confidence intervals (95%CI)
were determined by multiple logistic regression analysis.
Current body mass index (BMI) was
positively associated with postmenopausal breast cancer (OR=2.08, 95%CI:1.49-2.92) for the highest
quintile vs. lowest), although higher BMI did not affect the risk in premenopausal women. After
stratifying BMI at around age 20, gaining BMI in later life was positively associated with increased
risk regardless of BMI in early life. It is well recognized that breast cancer is more common among
women who have never borne children than among parous individuals. We conducted the case-control
study using HERPACC data to assess the impact of anthropometric factors on breast cancer risk among
nulligravid women compared with their parous counterparts. Among postmenopausal women, positive
associations with current BMI in the nulligravid group were similar to those observed in the parous
group. Additionally, another case-control study confirmed current BMI was positively linked with
postmenopausal breast cancer risk regardless of family history. These findings suggest that obesity
control for postmenopausal women is important from a practical viewpoint for primary breast cancer
prevention.
Kaoru Hirose
Breast Cancer
Brainstorming
Meeting ‒ Bangkok (UICC), Bangkok, Thailand, 2006.11.1
2. Dietary factors and breast cancer
Although the incidence rates of breast cancer in most Asian countries are much lower than those
in Western countries, there has been a marked increase in recent years. Much of the international
variation is due to differences in established reproductive risk factors, however, diet might also
contribute and provide a potentially modifiable target for prevention. Components of the Japanese
diet which might underlie the relatively low breast cancer incidence rates observed in Japan have
not been clarified in detail. Soybeans provide a unique concentrated source of isoflavones and
soybeans or isoflavones have been shown to exert anticarcinogenic effect on hormone-related cnacer
in a large number of experimental studies. In Japan, intake is in various forms of soybean products,
so that the diet is likely to be much richer in isoflavones than in the Western world. We evaluated
the association between risk of breast cancer and consumption of soybean products and isoflavones
using data from the hospital-based epidemiologic research program at Aichi Cancer Center (HERPACC).
We found a statistically inverse association between tofu (soybean curd) or isoflavone intake and
risk of breast cancer in Japanese premenopausal women, while no statistically significant
association was evident with the risk among postmenopausal women. Additionally, we applied
analysis
factor
approach for investigation breast cancer with reference to diet. Although most recent
debate on the relationship between diet and breast cancer risk has been concentrated on specific
nutrients and/or food, overall dietary patterns may be of greatest importance for primary prevention
recommendations. To evaluate associations between broad dietary patterns and breast cancer risk
in a Japanese population, we conducted a case-control study using HERPACC data. Factor analysis
allowed designation of four major dietary patterns: prudent (health conscious), fatty, Japanese
and salty patterns. The results indicate that prudent pattern characterized by frequent consumption
of vegetables, fruits, fish, soybean curd and low fat intake is associated with a reduced risk of
breast cancer in Japanese women. Furthermore, our finding that fatty and Japanese type diets may
elevate risk of breast cancer among obese women further suggested that low fat and calorie intake
plus successful weight control is particularly protective against breast cancer.
Kaoru Hirose
The 3rd Asian Pacific Organization for Cancer Prevention, General Assembly Conference, Bangkok,
Thailand, 2006.11.3
3. 愛知県における 2007 年スギ・ヒノキ科花粉飛散予測について
愛知県花粉情報システムにおいて 2006 年シーズンからは名古屋、一宮、刈谷、豊川、設楽の 5 か所の観
測定点でスギ・ヒノキ科花粉飛散数の測定を実施したところ、愛知県全体の総飛散数は 17,953 個/cm2と前
シーズンの約 1/4 で、過去 18 年間で 7 番目に少なかった。これは、前年に推定した予測飛散数 36,000 個
、西三河平野部(刈谷)及び三河山間部(設楽)において
/cm2の約 50%であった。尾張部(名古屋、一宮)
実測飛散数が予測を下回った要因として、スギ花粉の飛散がピークを迎えた 3 月上旬の降水量が平年に比
べ多かったこと、3 月中旬から下旬にかけて気温があまり上昇しなかったことなどが考えられる。一方、東
三河平野部(豊川)において実測値が予測値を上回った要因として、3 月上旬の降水量が平年に比べやや少
なかったこと、3 月中旬から下旬にかけての最高気温が平年よりやや高かったことが考えられる。
2007 年シーズンの予測飛散数は愛知県全体で 18,100 個/cm2と過去 18 年間の実測飛散数の幾何平均
26,814 個/cm2 の約 2/3 であると予測された。ブロック別に見ると、三河山間部では 2006 年の 2.4 倍と前
シーズンより増加すると予測された。一方、尾張部及び西三河平野部では前シーズンより減少、東三河平
野部では前シーズン並みの飛散と予測された。
続木雅子、櫻井博貴、広瀬かおる、森川保二
第 33 回東海花粉症研究会 名古屋市 2006.12.9
Ⅳ 情報処理・解析業務
1. 循環器疾患登録事業
健康福祉部健康対策課は平成 5 年 7 月以降実施してきた「脳卒中登録事業」を見直し、平成 13 年 1 月か
ら新たに虚血性心疾患(狭心症を除く)を登録対象疾病に加えた「循環器疾患登録事業」を開始した。当
部は循環器疾患登録センターとして、名古屋市内分の患者登録を合わせた県内すべての患者登録及び県内
の全データの集計解析業務を行ってきた。平成 18 年度は新たに 6,403 名(うち名古屋市分 1,614 名)を登
録し、これまでの総登録数は 35,071 名となった。
2. 愛知県感染症発生動向調査
平成 11 年 4 月から「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」が施行され、同法の大
きな柱の一つとして感染症発生動向調査が位置づけられている。感染症の発生情報の正確な把握と分析、
その結果の的確な提供・公開が感染症対策の基本の一つであるとされ、当部には名古屋市及び豊橋市等の
中核市を含めた愛知県の基幹地方感染症情報センターが設置されている。
同法施行 5 年目にあたる平成 15 年 11 月には法律の一部改正が行われ、対象疾患は従来の 73 疾患から 86
疾患に変更され、感染症の類型が従来では一類から四類であったものが一類から五類に分けられた。
これに伴い、全数把握の対象疾患は、従来の 46 疾患から新たに対象となった型別の肝炎(E型、A型)
、
バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症などを含む 58 疾患へと増加した。また、定点把握の対象は、急
性脳炎が従来の定点把握から全数把握に変更されたが、RSウイルス感染症が新たに対象疾患として追加
されたことから、数としては 28 疾患と従来と同数のままである。また、届出時期については、対象疾患の
うち一類から四類感染症に該当する患者等を診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届出を行う(従来は
一類から三類)こととされ、五類感染症(全数把握対象疾病)については 7 日以内の届出とされた。
また、平成 18 年 4 月から国への報告システムが「感染症サーベイランスシステム(NESID)
」(総称)に変
更された。このシステムは、業務別に「感染症発生動向調査システム」
、
「疑い症例調査支援システム」
、
「病
原体検出情報システム」
、
「感染症流行予測調査システム」及び「症候群サーベイランスシステム」という
5つのシステムから構成されており、当所では「感染症発生動向調査システム」を企画情報部、
「病原体検
出情報システム」を微生物部が担当している。
このような感染症法の改正及び報告システムの変更により、RSウイルス感染症をはじめ、インフルエ
ンザ、水痘及び感染性胃腸炎等の 21 疾患(資料-企画-表 2)については週単位で、性器クラミジア感染
症等 7 疾患(資料-企画-表 3)については月単位で、県内 257 ヶ所(愛知県 120、名古屋市 93、豊橋市 18、
豊田市 11、岡崎市 15)の指定届出医療機関から管轄の保健所に報告が集まり、これを各保健所から「感染
症発生動向調査システム」を利用して国のデータベースに登録し、そのデータを基幹地方感染症情報セン
ターである当部において確認作業を行うことで報告が完了する。
基幹地方感染症情報センターでは、それぞれの疾患について、保健所別、年齢別に、週報告数、累積報
告数として集計し、過去のデータとの比較がひと目でわかるようにグラフ化して流行状況を表示するとと
もに定点医療機関からのコメント等をとりまとめて「愛知県感染症情報(週報・月報)
」を作成し、各地方
感染症情報センター(名古屋市、豊橋市、豊田市、岡崎市)
、保健所、医療機関、市町村、教育委員会等へ
提供するとともに当所のウェブサイトに掲載し、広く一般県民に対する情報提供も行っている。
平成 18 年度における感染症発生動向調査の五類感染症(定点把握対象)では、インフルエンザの年間報
告数は 50,718 人で、前年度(59,580 人)の 85%であった。平成 19 年 1 月 4 週には、6 保健所管内で定点
当たり報告数が 10 人に達したため、国立感染症研究所が運営している注意報・警報システムに基づき、愛
知県にインフルエンザ注意報が発令され、更に、同 5 週には、3 保健所で定点当たり報告数が 30 人に達し
たためインフルエンザ警報が発令された。RS ウイルス感染症については前年度の約 2 倍の報告数で、平成
15 年度に新たに対象疾患に追加されて以降、医療機関における認識が浸透してきたためと考えられる。他
に前年度に比して大きく増加した疾患は、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、伝
染性紅斑等であった。前年度に比して大きく減少した疾患は、ヘルパンギーナ、流行性耳下腺炎、流行性
角結膜炎であった。麻しんについては、平成 13 年度(2,392 人)以来減少を続けていたが、本年度は 43
人と前年度(26 人)より増加した。
基幹定点からの報告について、マイコプラズマ肺炎は本年度 365 人と前年度(264 人)より大きく増加し
た。しかし、定点によって報告数に大きな差が認められた。各定点の病床数や診療科等は異なるので一概
に比較はできないが、すべての基幹定点から実態が報告されていない可能性が考えられる。各基幹定点か
らの正確な患者報告が感染症発生動向調査の精度向上には必須であることから、関係機関と連携をとり患
者報告の正確性の向上に努めていきたいと考えている。
STD 定点の患者報告数(資料−企画−表 3)に関しては、淋菌感染症の患者報告数が前年度と比較して減
少したが他の疾患に大きな変化は見られなかった。しかし、男女別に比較すると、これら 4 疾患すべてに
おいて男性患者報告数が多く(各々男、女の順に、性器クラミジア感染症 1,084 人、445 人、性器ヘルペス
ウイルス感染症 281 人、126 人、尖圭コンジローマ 321 人、108 人、淋菌感染症 806 人、63 人)
、これは女
性の方が患者数が多いという全国的な傾向に反する結果となった。この原因として、STD 定点の内訳が、産
科・婦人科に比べ泌尿器科・皮膚科の方が約2倍(病院定点も含め、産科・婦人科:泌尿器科・皮膚科=
26:46)多いことに起因するものと考えられる。従って、泌尿器科・皮膚科または産科・婦人科あるいはそ
の両方を標榜する定点のバランスを考え、定点の指定を見直していく必要があると考えられる。
資料-企画-表2 感染症発生動向調査患者報告数
(定点観測・各週報告分)
感 染 症 名
RS ウイルス感染症
18年度
17年度
△ 2,580
1,191
50,718
59,580
咽頭結膜熱
△ 5,488
3,058
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
△14,084
11,063
感染性胃腸炎
△59,796
45,191
水痘
△15,854
13,634
手足口病
△11,688
3,877
伝染性紅斑
△ 6,199
1,115
6,320
6,309
109
53
37
36
▼ 5,588
12,428
インフルエンザ
(高病原性鳥インフルエンザを除く。
)
突発性発しん
百日咳
△
風しん
ヘルパンギーナ
麻しん(成人麻しんを除く。
)
流行性耳下腺炎
△
43
26
▼ 6,891
9,623
35
34
▼ 892
1,528
急性出血性結膜炎
流行性角結膜炎
クラミジア肺炎(オウム病を除く)
▼
1
2
細菌性髄膜炎
△
24
14
無菌性髄膜炎
△
23
15
マイコプラズマ肺炎
△
365
264
0
1
成人麻しん
△:前年度に比べ 2 割以上増加した疾患 ▼:前年度に比べ 2 割以上減少した疾患
資料-企画-表3 感染症発生動向調査患者報告数
(定点観測・各月報告分)
感 染 症 名
性器クラミジア感染症
18年度
17年度
1,529
1,687
性器ヘルペスウイルス感染症
407
423
尖圭コンジローマ
429
442
▼ 869
1,207
859
968
淋菌感染症
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症
ペニシリン耐性肺炎球菌感染症
△
57
4
薬剤耐性緑膿菌感染症
▼
2
8
△:前年度に比べ 2 割以上増加した疾患 ▼:前年度に比べ 2 割以上減少した疾患
3. インフルエンザの流行予測
平成 18 年/19 年シーズンのインフルエンザの流行予測(報告総数、報告推移)を行った。総報告数の推
定には過去 19 年間の感染症発生動向調査の報告数を用いて作成した多変量回帰式を使用し、総報告数を各
週の報告数に配分するには Reed Frost の感染症モデルを利用した。
流行開始期のデータとしては平成 18 年第 48 週から同年第 52 週までのインフルエンザ報告数を用いた。
その結果、インフルエンザ総報告数は 16,600(50%信頼範囲は、9,640 から 28,500)と過去 19 年で中程度
の流行と予測された。また、ピークは第 8 週(2 月 19 日∼2 月 25 日)と、例年より遅く、流行規模も比較
的小さくなると予測された。その週別予測値及び報告実数を資料-企画-図に示した。予測の結果(図―●
―)と実際に報告された患者数(図―■―)及び流行の推移を比較すると、予測ピーク週は、実測ピーク
週より 1 週遅れたが比較的よい予測結果であったと考えられた。
本シーズンは、定点からの報告が通常より遅く始まり、流行規模を示す総報告数(平成 19 年 3 月 31 日
現在)は 38,108 であり、シーズン終了までには予測値をかなり上回るものと推測される。インフルエンザ
の流行予測は平成 13 年/14 年シーズンから開始し今シーズンで 6 回行っている。これまでもピーク週の予
測については実測とほぼ一致した結果が得られているが、総報告数の予測はよい一致を示す成績が得られ
ていない。総報告数の予測精度を上げるため予測に用いる多変量回帰式の見直しなどの改良をさらに検討
していきたい。
報告数
9,000
8,000
前シーズン
予測値
上限
下限
実測値
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
48 49 50 51 52 1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 週
資料-企画−図 愛知県における平成 18 年/19 年シーズンのインフルエンザ流行予測(名古屋市を除く)
4. 花粉の飛散状況調査
愛知県では 1989 年から花粉の飛散状況調査を行っている。2000 年シーズン(2000 年 1 月以降)からは
当部において、飛散数の多いスギ・ヒノキ科花粉及びイネ科花粉について飛散状況を収集・解析し、ネッ
トあいちで『愛知県花粉情報』
(生活衛生課)として広く県民に対して情報の提供を行っている。調査の対
象となる花粉は、スギ・ヒノキ科、イネ科、ブタクサ属、ヨモギ属及びカナムグラ等であり、調査期間は、
毎年 1 月 4 日から 10 月 30 日までである。
スギ・ヒノキ科花粉の 2007 年シーズンの飛散数については、2007 年 1 月 5 日から 5 月 2 日まで県内の 5
観測定点(資料-企画-表 4)で毎日測定が行われた。測定結果は花粉の種類別に当部にオンラインで送信さ
れた。この前日飛散数、過去のスギ・ヒノキ科花粉の飛散に関するデータ及び気象協会から提供される翌
日の天気予報を基に、独自に作成した予測式を用いて翌日の予測飛散数を算出した。この予測は愛知県内 4
つのブロック[尾張部(名古屋、一宮)
、西三河平野部(刈谷)
、東三河平野部(豊川)
、三河山間部(設楽)
]
に分けて行い、予測飛散数を 3 段階(レベル 1:0−34 個/㎝2、レベル 2:35−99 個/㎝2、レベル 3:100 個
/㎝2以上)に分けて示した。この情報をもとに『愛知県花粉情報』を、2007 年 2 月 1 日から 5 月 2 日まで
の毎日(祝祭日及び土・日曜日を除く)提供した。また、休日の飛散数についても、当所のウェブページ
を用い観測定点ごとの日別飛散数を掲載した。今シーズンの総飛散数は 33,708 個/㎝2と前年の約 2 倍、予
測(2006 年 12 月時の当所予測は前シーズンと同程度)より多い飛散数であった。
(資料-企画-表 4)
。
イネ科花粉の飛散については、毎年 4 月 1 日から 10 月 30 日までの間、県内 2 観測定点(一宮、豊川保
健所)で測定を行い、その結果を当部で毎週金曜日に集計し、週報として 5 月中旬から県のウェブページ
に掲載している。2006 年の総飛散数は 650 個/㎝2と、過去 18 年間の平均 604 個/㎝2よりやや多い飛散数で
あった。
資料-企画-表 4 2007 年シーズン スギ・ヒノキ科花粉飛散数(個/㎝2)
地 域
観測点
(当所以外は保健所名)
1月
2月
3月
4月
5月
1∼5 月
合計
名古屋
衛生研究所
0
959
2,445
1,025
1
4,430
一 宮
一 宮
0
1,494
1,831
778
5
4,108
西三河平野部
刈 谷
衣浦東部
0
1,547
4,305
705
1
6,558
東三河平野部
豊 川
豊 川
2
2,539
2,975
1,661
10
7,187
三河山間部
設 楽
設 楽
0
1,909
5,757
3,748
11
11,425
2
8,448
17,313
7,917
28
33,708
尾張部
合 計
5. 保健所に対する解析技術支援業務
本年度は3保健所(6課題)に対し保健情報解析実務研修を開催するとともに全保健所(支所)を対象とし
て SPSS を利用した統計処理基礎研修を実施した。
(P104 の第 4 章 研修指導、第 1 節 地域保健関係職員
を対象としたもの、Ⅰ 研修会、2. 保健情報研修の項を参照)
6. 愛知県麻しん全数把握調査事業
麻しん患者は数年前まで年間推計 20∼30 万人(全国)の発生があったものの平成 17 年には感染症発生
動向調査・小児科定点年間報告数 537 人(年間推計患者数5千人)にまで減少し、平成 18 年 4 月から予防
接種法の改正により麻しん風しん混合(MR)ワクチンの 2 回接種が施行されたことによりさらに減少が
見込まれている。しかし、麻しんを根絶するためには予防接種率の向上、サーベイランスの強化による麻
しん発生状況の正確な把握及びそれに伴う感染防止対策を講じるなど総合的な対策が必要である。患者発
生状況については、県内 182 の小児科定点から麻しん(成人麻しんを除く)及び 13 の基幹定点から成人麻
しんの報告が行われているが、散発的・地域的な発生については定点医療機関からの報告のみでは十分な
把握ができない。そこで、麻しん患者の正確な把握と感染拡大防止を図るため、(社)愛知県医師会、
(社)
名古屋市医師会、愛知県小児科医会、名古屋市、豊橋市、岡崎市、豊田市及び愛知県が連携して平成 19 年
2 月 1 日から麻しんの全数把握事業を実施することとなった。報告対象医療機関は愛知県内の全医療機関で
あり、麻しんあるいは成人麻しん患者を診断した場合は所定の調査票にて当部に設置されている「愛知県
感染症情報センター」に報告する。当部においてこれを取りまとめ、実施機関等に情報提供している。ま
た、ウェブページ上にも掲載し、広く県民に周知し注意喚起を行っている。
平成 19 年 3 月 31 日現在の患者報告は資料-企画-表 5 のとおりである。
資料-企画-表 5 愛知県麻しん全数把握調査事業における患者報告(平成 19 年 3 月 31 日現在)
診断時の年齢
予防接種の状況
No
報告
年月日
報告医療
機関所在地
診断
年月日
患者住所
性別
歳
月
有無
回数
通園、通学
施設の種別
1
1月13日
田原市
1月10日
田原市
男
5
8
有
1
保育園
2
2月 5日
半田市
1月26日
半田市
女
1
0
無
3
2月 5日
半田市
2月5日
半田市
女
1
1
有
1
保育園
4
2月 8日
海部郡甚目寺町
2月8日
海部郡甚目寺町
男
27
1
無
5
2月 7日
名古屋市中村区
2月4日
名古屋市中川区
男
11
7
不明
6
2月13日
名古屋市瑞穂区
2月9日
海部郡甚目寺町
女
32
4
不明
7
2月14日
半田市
2月14日
半田市
男
1
3
無
保育園
8
2月15日
名古屋市中村区
2月15日
名古屋市中川区
女
8
3
無
小学校
9
2月21日 名古屋市北区
2月19日
名古屋市北区
男
38
-
不明
10
2月21日
名古屋市中村区
2月20日
名古屋市中川区
男
10
1
不明
11
2月21日
愛知郡長久手町
2月21日
日進市
男
31
1
有
1
12
2月21日
名古屋市中村区
2月21日
名古屋市中川区
女
8
7
有
1
13
3月 2日
豊田市
2月 28日
豊田市
女
1
7
有
1
14
3月 7日
名古屋市中村区
3月 7日
海部郡大治町
男
1
1
無
15
3月19日
津島市
3月16日
津島市
男
13
11
有
小学校
小学校
1
小学校
中学校
第3節
微生物部
Ⅰ 調査研究
【経常調査研究経過報告】
1. 食品からのカンピロバクター菌検出法に関する研究(平成 18∼20 年度)
わが国におけるカンピロバクター菌(カ菌)による食中毒は、年間事件数では第 1-2 位、患者数 2,000 名を超え、欧
米諸国と同様にカ菌は主要な食中毒原因菌となった。カンピロバクター食中毒の主な原因食品は、わが国では鶏肉、牛
レバーなど肉類と考えられるが、
残品食品からカ菌が検出される食中毒事例は稀である。
検出頻度が低い原因には 1) 食
品中の生菌数が少ない、2) 長い(2-7 日)潜伏期の間冷凍あるいは冷蔵保存される残品食品中のカ菌が損傷を受ける、
等が考えられる。感度の高いカ菌検出法開発は、発症菌量の算定や収去検査等食品の汚染実態把握にも有用である。現
在食品衛生検査指針(日本)
、PHLS 法(英国)等に提示されている食品からのカ菌検出法は、各法ごとに試料調製法及
び培養条件等が異なる。大腸菌やサルモネラ菌とは異なり大気中では発育しないカ菌の培養には微好気条件が必須とな
るが、通常の食中毒検査において、多様な培養条件下の複雑な培養法は実用的でない。そこで各検査法のカ菌検出条件
を再検討し、高感度かつ簡易な検出方法の確立を本研究の目的とした。
市販の冷蔵鶏肉 5 検体を試料としてプレストン培地を用いた増菌培養(42℃, 24 時間)後、選択培地(スキロー培
地及び CCDA 培地)の性能を比較した。スキロー培地では遊走状態に発育しカ菌を分離できなかったが、CCDA 培地では
分離可能なコロニーが得られ1検体からカ菌を検出した。このカ菌陽性鶏肉をさらに 1 週間冷凍保存後、プレストン培
地及びボルトン培地を用いて増菌培養し、冷凍損傷カ菌の発育を比較した。その結果、ボルトン培地を用いた場合カ菌
を検出したが、プレストン培地では検出されなかった。また凍結菌液においてもボルトン培地の方がプレストン培地よ
り良好な検出率を示した。PHLS 法では嫌気ジャーにガスパックを入れ酸素分圧を下げて行う従来の微好気培養法の代
替法として、
通気性のない容器に空隙部分を残さず試料を添加して培養する non-head space 培養法が認められている。
non-head space 培養法は、検査手順が簡便なうえガスパック及び嫌気ジャーも不要である。今後、non-head space 培
養法を用いた菌添加実験及び鶏肉のカ菌検査法の感度等について、従来の微好気培養法と比較検討の予定である。
2. 愛知県民のノロウイルスに対する抗体保有状況調査(平成 18∼19 年度)
ノロウイルス(Norovirus: NV)は、ウイルス性食中毒および散発性の感染性胃腸炎の主要な原因ウイルスである。特
に近年は、老人介護施設や病院等でヒト-ヒト感染によるノロウイルスの集団感染が多発し、感染症の原因ウイルスと
しての側面が社会問題となっている。
NV は未だ培養増殖できないため、NV 抗体の測定に必要なウイルス抗原の準備は困難であった。しかし、NV の構造タ
ンパク遺伝子を挿入した組換えバキュロウイルスの登場により、native な感染性ウイルスと同じ抗原性を有するウイ
ルス様粒子(VLPs)の作成が可能となった。また異なる遺伝子型の NV 抗原を確保することも容易となってきた。そこで、
愛知県民の NV に対する抗体保有状況を把握する目的で、遺伝子グループ I(GI)の Seto 株(遺伝子:G1)と Chiba 株(G4)
及び GII の Ina 株(G2)、Sinsiro 株(G3)、Narita104 株(G4)、Chitta 株(G12)と Kamo 株(G15)、計7株のウイルス様粒
子(VLPs)を抗原とする酵素抗体法(ELISA)による抗体検出系を確立した。ウイルス検査について本人(本人が未成年者
の場合は親)の同意が得られた 1∼60 歳の県民 200 名(平成 18 年の 7 月から 9 月に採血)の NV 抗体保有率を測定した。
結果は、Seto 株(G1)に対する保有率が 44%、Chiba 株(G4):27%、一方、GII の Ina 株(G2):60%、Sinsiro 株(G3):
45%、Narita104 株(G4):69%、Chitta 株(G12):53%、Kamo 株(G15):50%であった。GI 株に比べて GII 株に対する抗体
保有率の方が高く、近年の GII 株の流行を反映していると考えられた。平成 18 年度冬期の NV 全国的流行に伴う抗体保
有率の変動に注目しながら調査を継続したい。
【経常調査研究終了報告】
1. HIV-1 未治療感染者における薬剤耐性ウイルス等の保有状況調査(平成 17∼18 年度)
【目的】HIV 感染症の治療は抗 HIV 薬を数種類服用する多剤併用療法(Highly Active Anti-Retroviral Therapy: HAART)
の登場により著しく向上した。しかし、HAART 治療の長期化や副作用による治療の中断等が原因となり、抗 HIV 薬耐性
変異をもつウイルスの発生が報告されている。近年、HAART を受けていない新規の HIV-1 感染者から薬剤耐性変異ウイ
ルスが検出され、薬剤耐性ウイルスの伝搬および蔓延が憂慮されている。本研究では、愛知県における薬剤耐性ウイル
スの侵淫状況を明らかにすることを目的として、県内の保健所及び医療機関等において HIV 感染が疑われ、愛知県衛生
研究所での確認検査により HIV 感染が確認された未治療 HIV-1 感染者の検体を用いて薬剤耐性関連変異の解析、及びサ
ブタイプの解析を行った。
【材料及び方法】平成 17∼18 年度に愛知県内の保健所及び医療機関等で HIV 感染が疑われ、当所での確認検査により
HIV-1 抗体陽性が確認された血清 53 検体を使用した。血清からウイルス RNA を抽出後、RT-PCR 法にて HIV-1
Protease(Pro)及び Reverse Transcriptase(RT)ORF を含むポリメラーゼ遺伝子領域とエンベロープ遺伝子の C2V3 領域
を増幅した。PCR 産物は IR2DNA シークエンサー(LI-COR 社)にてダイレクトシークエンスを行い塩基配列を決定した。
HIV-1 サブタイプは C2V3 領域の塩基配列から NCBI の genotyping ツール(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/ projects/
genotyping/formpage.cgi)を用いて決定した。Pro については ORF 全領域を、RT については ORF 1∼270 番までの推定
アミノ酸配列について International AIDS Society-USA (IAS-USA) panel Aug/Sep 2006 に基づき薬剤耐性変異の有無
を解析した。
【結果及び考察】平成 17 年度の HIV-1 陽性検体 15 検体の解析結果では、1 名から多剤の非核酸系逆転写酵素阻害剤
(NNRTI)に対し強い薬剤耐性を示す K103N 変異が検出された。また、Protease 阻害剤耐性ウイルスに見出される Major
変異の M46I(3 名)及び D30N(1 名)が検出された。さらに、2 名から核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTI)に対する薬剤耐
性を示す Y115F と F77L が、それぞれ 1 名から検出された。サブタイプはすべて B であった。平成 18 年度の HIV-1 陽性
検体は前年度より大幅に増加し、38 検体であった。ポリメラーゼ遺伝子については 38 検体中 24 検体が解析可能であ
った。解析の結果、逆転写酵素阻害剤(NRTI、NNRTI)に対する変異は検出されなかったが、上記 Protease 阻害剤耐性に
関する Major 変異 M46I が 4 名から検出された。
エンベロープ遺伝子については 38 検体中 36 検体が解析可能であった。
解析の結果、サブタイプ B が 31 名、サブタイプ J が 1 名、組換え型の流行株(Circulating Recombinant Forms: CRFs)
である CRF12_BF が 2 名、CRF01_AE 及び CRFCRF03_AB が各 1 名、であった。さらに、平成 15∼16 年度の HIV 陽性検体
29 検体を解析したところ、平成 15 年度では解析できた 9 名のうち1名から M46I が検出され、さらに平成 16 年度分
16 名中 1 名から多剤 NNRTI 耐性変異 K103N が検出された。平成 15∼16 年度のサブタイプはすべて B であった。
以上の結果から、愛知県においては近年薬剤耐性 HIV の増加とともに多様な耐性変異ウイルスが未治療 HIV 感染者の間
にも着実に拡がっていることが示唆された。
。流行サブタイプについては、サブタイプ B が主流であるものの、平成 18
年度には愛知県で 3 年ぶりとなる CRF01_AE が検出され、他にも愛知県では初めてのサブタイプが検出されており、サ
ブタイプの多様化が進みつつあると考えられた。今回検出されたサブタイプ J、CRF03_AB、CRF12_BF は世界的にも稀と
される型であり、さらなる解析が必要と考えられる。なお、平成 18 年度の 38 検体中 16 検体においては従来用いてき
た PCR プライマーではポリメラーゼ遺伝子域を増幅し難いことが判明した。サブタイプの多様化により、主に従来のサ
ブタイプ B ウイルス遺伝子に適応したプライマーでは不適となったと推察される。今後は、これまで日本国内で検出報
告のない遺伝子型も網羅しうる検査体制の確立が必要である。
【特別調査研究経過報告】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の分子疫学的研究(平成 17∼19 年度)
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus: MRSA)は主要な院内感染原因菌
であり、厚生労働省の感染症発生動向調査における定点医療機関からだけで年間 20,000 件以上に及ぶ報告がなされて
いる。MRSA は遺伝的背景の解析から、入院患者に多い 院内感染型 と市中患者に多い 市中感染型 に大きく二分
され、院内感染では 院内感染型 MRSA が原因菌となることが多い。パルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)によ
る分子疫学解析結果は院内感染制御のための重要なデータであるが、特殊な電気泳動装置が必要、手間・時間・高コス
トなどの理由から病院への PFGE 普及は進んでいない。そこで迅速な分子疫学解析検査法の開発を目的とした 院内感
染型 MRSA 菌株の遺伝的特徴に関する調査研究を開始した。
迅速分子疫学解析法を開発するため、菌株ごとに保有状態が異なる遺伝子の読み枠(ORF)を検出し、その保有パタ
ーンから分子疫学解析を試みた。DNA データベースから入手した S. aureus 全ゲノム及び関連ファージのデータから菌
株識別に有効と考えられる 13 個の ORF を選び出した。加えてゲノミックアイランド、Tn554、SCCmec からそれぞれ1
個の ORF を選択し利用することとした。以上 16 個の ORF を検出するプライマーをそれぞれ設計し、これらのプライマ
ー4組を組み合わせたマルチプレックス PCR を行った。目的サイズのバンドの有、無をまず 1、0 の 2 進数に置き換え
た数の10 進法表記をPOT 型と定義した。
解析力の検証のため中部地方を中心とした7病院から得られたMRSA 536 株
(院
内感染型 335 株)並びに MSSA (Methicillin-susceptible S. aureus)74 株を解析した。解析力対照検査法として
SmaI 切断による PFGE を実施した。さらに MRSA 536 株中に含まれた 38 名の患者から 3∼85 日(平均 21.8 日)の間隔
で 2 株ずつ採取された計 76 株を用いて POT 型安定性の検証を行った。
MRSA 536 株は POT 法で 201 タイプ、PFGE で 242 タイプに分類された。また MSSA 74 株は POT 法で 44 タイプ、PFGE
で 64 タイプに分類された。 院内感染型 MRSA では PFGE とほぼ同等の解析力であった。一方 市中感染型 MRSA や
MSSA では 128−8 や 64−8 など一部の POT 型株において解析力が PFGE に及ばないという結果を得たが、大部分の POT
型には十分な菌株識別能力が認められ、多くの場合分子疫学解析が可能と考えられた。また、同一患者から分離された
菌株の PFGE パターンとの比較からファージ由来 ORF で 2 個以内の違いの場合同一株に由来する可能性が考えられた。
POT 法を用いると PFGE とほぼ同等の結果を 3∼4 時間で得られることから院内感染対策に有効な手法である。
【その他の調査研究報告】
1. 平成 18 年度全国衛生部長会調査研究事業
新規開発したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の PCR 遺伝子型別分類法による分子疫学的研究
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methycillin-resistant Staphylococcus aureus: MRSA)は、わが国における長期
入院患者などの院内感染病原体として重要な位置を占めている。遺伝子解析から、MRSA は入院患者に多い 院内感染
型 と市中患者に多い 市中感染型 に大きく二分され、院内感染では 院内感染型 MRSA が原因菌となることが多
い。集団感染の解析に有用な分子疫学解析をより手軽に利用できるよう、主に 院内感染型 MRSA をターゲットとし
て PCR 法を用いた MRSA の遺伝子型別分類法(Phage ORF typing (POT)法)を当所において新規に開発した。本法は菌
株ごとに保有状態の異なる遺伝子を 16 個検出し、その保有パターンから遺伝子型別分類することで、従来法であるパ
ルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)の問題点(結果を得るまでに最低3日を要し、検査毎の比較及びデータベース化
が困難)を解決した。この方法によると、PFGE と同等の菌株識別能を保持しながら、3∼4 時間以内に遺伝子型別分類
が可能である。従って院内感染発生時の分子疫学的情報をより早く得られる。加えて遺伝子保有パターンは泳動位置に
依存することなく比較が容易かつ高い信頼性を持って可能となり、さらにデータベースを使用した流行株の経時的追跡
も容易となる。将来的には本法を各病院の検査室で利用することで MRSA の流行状況を病院が独自に把握し院内感染対
策に役立てることが可能となるだけでなく、データベース情報利用により全国の感染症対策にも資するものと考えられ
る。そこで、まず PFGE を用いた解析との比較によって POT 法の菌株識別能力を検証し、さらにデータベース化による
院内感染モニタリングを試みた。
愛知県内の 1 病院で 2002∼2006 年までの 5 年間に患者から分離された MRSA 263 株を POT 法および PFGE を用いて型
別あるいは比較した。さらに、病院で分離される MRSA の遺伝子型を追跡するため Microsoft Access を用いて POT 型デ
ータベースの構築を行った。263 株は 98 POT 型、122 PFGE 型に分かれた。外来患者からの分離菌株にはいわゆる 市
中感染型 が多いためか、POT 法による分子疫学解析は PFGE 型に比べやや識別能力が低い傾向が見られた。しかし特
定の POT 型に属する株(例:128-8)を除けば実用上十分な菌株識別能力が確認された。POT 法は遺伝子型を数値で表
現するため、データベース化は極めて容易であった。この病院では POT 型 128-8 の株が多数分離されているが、その多
くは外来患者由来であり、院内感染との関連は疑われなかった。POT 型 159-87 の株が一時的に増えている時期があり、
同時に POT 型 187-87 の株も増えており、PFGE 解析から両者は近縁の菌株と推定された。187-87 株は POT 型 159-87 の
株とともに院内感染の病原体であると疫学的に疑われた。他の POT 型短期間に多数分離されるものはほとんど無かった。
分離される MRSA の遺伝子型を日常的にモニターすることにより、特定の POT 型株の増加を早期に把握でき、院内感染
の兆候を的確に捉えることが可能となる。また、遺伝子型という疫学的関連性の科学的客観的マーカーは院内感染の拡
大を具体的に医療スタッフに示すことを可能とするため、接触感染予防策の徹底に対する効果が期待できる。
POT 法は MRSA の分子疫学解析に有効であり、データベース化により可能となった分離株のモニターは、強力な院内感
染予防対策となりうる。
II 誌上発表
【欧文原著】
1.Typing of bfpA Genes of Enteropathogenic Escherichia coli Isolated in Thailand and Japan by Heteroduplex
Mobility Assay
Mariko Iida, Mitsugu Yamazaki, Jun Yatsuyanagi, Orn-Anong Ratchtrachenchai, Sarayoot Subpasu, Noboru Okamura,
and Kenitiro Ito
Microbiol Immunol 50(9): 713-717, 2006.
2.Development of a Rapid Strain Differentiation Method for Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus
Isolated in Japan by Detecting Phage-Derived Open Reading Frames.
Masahiro Suzuki, Yukio Tawada, Minoru Kato, Hiromi Hori, Naoto Mamiya, Yumiko Hayashi, Manabu Nakano, Ritsuko
Fukushima, Atsuo Katai, Tomoyuki Tanaka, Mami Hata, Masakado Matsumoto, Masao Takahashi, Kenji Sakae
J Appl Microbiol 101(4): 938-947, 2006.
3.Epidemiology and Molecular Analysis of Group A Streptococci from Patients Involved in Food-Borne Disease
Outbreaks in Japan between 1996 and 2003.
Daisuke Tanaka, Tomoko Shima, Junko Isobe, Masanori Watahiki, Masakado Matsumoto, Miyoko Endoh, Rumi Okuno,
Kikuyo Ogata, Yoshiyuki Nagai.
Jpn J Infect Dis 59(3): 202-203, 2006.
4. Genotyping of Clostridium perfringens Isolates Collected from Food Poisoning Outbreaks and Healthy
Individuals in Japan Based on the cpe Locus.
Daisuke Tanaka, Keiko Kimata, Miwako Shimizu, Junko Isobe, Masanori Watahiki, Tadahiro Karasawa, Takayoshi
Yamagishi, Sanae Kuramoto, Toshihiko Serikawa, Fubito Ishiguro, Makiko Yamada, Kazukiyo Yamaoka, Mitsuo
Tokoro, Toshio Fukao, Masakado Matsumoto, Reiji Hiramatsu, Chie Monma, Yoshiyuki Nagai.
Jpn J Infect Dis 60(1): 68-69, 2007.
5. Intimin Types Determined by Heteroduplex Mobility Assay of Intimin Gene (eae)-Positive Escherichia coli
Strains
Kenitiro Ito, Mariko Iida, Mitsugu Yamazaki, Kazuo Moriya, Sanae Moroishi, Jun Yatsuyanagi, Takayuki Kurazono,
Noriaki Hiruta, and Orn-Anong Ratchtrachenchai
J Clin Microbiol 45(3): 1038-1041, 2007.
6. Sequence Characteristics of HA Gene in Influenza Type A(H1N1) Virus Isolated during the 2005-2006 Season
in Aichi Prefecture, Japan.
Mami Hata, Masako Tsuzuki, Kenji Sakae, Hiroko Minagawa, Takashi Kimura, Yutaka Miyazaki
Jpn J Infect Dis 59(4): 209-211, 2006.
7. Recombinant wild-type measles virus containing a single N481Y substitution in its haemagglutinin cannot
use receptor CD46 as efficiently as that having the haemagglutinin of the Edmonston laboratory strain
Fumio Seki, Makoto Takeda, Hiroko Minagawa, Yusuke Yanagi
J Gen Virol 87(6): 1643-1648, 2006.
8. Presence of a surface-exposed loop facilitates trypsinization of particles of Sinsiro virus, a genogroup
II.3 norovirus
Shantanu Kumar, Wendy Ochoa, Shinichi Kobayashi, Vijay S. Reddy
J Virol 81: 1119-1128, 2007.
【邦文原著】
1.散発下痢症患者由来のフルオロキノロン耐性大腸菌における gyrA 遺伝子および parC 遺伝子の変異
石畝 史、東方美保、山
貢、松雪星子、森屋一雄、田中大祐、磯部順子、京田芳人、村岡道夫
感染症学雑誌,80(5): 507−512, 2006.
2.野生動物からのE型肝炎ウイルス(HEV)と HEV 抗体の検出及び猟師らの HEV 抗体保有状況
伊藤 雅、小林慎一、山下照夫、長谷川晶子、榮 賢司
肝臓 47(6)
:316-318, 2006.
【研究報告書】
1.鶏肉におけるカンピロバクター食中毒の予防に関する研究
平松礼司(協力研究者)
平成 17 年度厚生労働科学研究事業「細菌性食中毒の予防に関する研究」主任研究者:山本茂貴、
平成 17 年度総括・分担研究報告書; 164−168、2006.4
2.腸管出血性大腸菌の食品からの検出法に関する研究(コラボレイティブ・スタディの結果報告書)
平松礼司(協力研究者)
平成 17 年度厚生労働省食品等試験検査費[食品からの腸管出血性大腸菌 O26 および O111 の検出方法の開発事業]
主任研究者:高鳥浩介、平成 17 年度研究報告書、2006.4
3.東海・北陸地方9地方衛生研究所のパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)の行政への還元と PCR を用いた腸
管出血性大腸菌 O157 の型別法(IS printing system)の検討
松本昌門、鈴木匡弘、児玉洋江、白木 豊、田中保知、木全恵子、奥村貴代子、石畝 史、岩出義人、藪谷充孝
平成 18 年度厚生科学研究費補助金(新興・再興感染症研究事業)
「広域における食品由来感染症を迅速に検知するた
めに必要な情報に関する研究」主任研究者:寺嶋 淳、平成 18 年度総括・分担研究報告書;2007.3
4. 東海地区における HIV 初感染者の薬剤耐性変異(ジェノタイプ)について
榮 賢司、秦 眞美、續木雅子
厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業「HIV 検査体制の構築に関する研究」主任研究者:今井光信
平成 17 年度 研究報告書 247-249, 2006.
5. 東海地区における HIV 初感染者の薬剤耐性変異(ジェノタイプ)について
榮 賢司、秦 眞美、續木雅子、佐藤克彦、森下高行、鈴木康元
厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業「HIV 検査体制の構築に関する研究」主任研究者:今井光信
総合研究報告書(平成 15-17 年度)263-266, 2006.
6. 愛知県内の下水処理場流入水からの腸管感染ウイルスの検出状況
小林慎一、長谷川晶子、長谷聡子、伊藤 雅、山下照夫、皆川洋子
厚生労働科学研究費補助金(食品の安心・安全確保推進研究事業)
「ウイルス性食中毒の予防に関する研究」
主任研究者:武田直和、平成 18 年度 分担研究報告書;47-53, 2007.
【その他】
1.わが国における腸炎由来 Campylobacter jejuni の血清型別検出動向およびキノロン剤に対する耐性菌の出現状況−
カンピロバクター・レファレンスセンター
衛生微生物技術協議会カンピロバクター・レファレンスグループ
秋田県健康環境センター、東京都健康安全研究センター、愛知県衛生研究所、大阪府立公衆衛生研究所、広島市衛生
研究所、山口県環境保健研究センター、熊本県保健環境科学研究所、国立医薬品食品衛生研究所
病原微生物検出情報、27(7):173-174,2006.
2.腸管凝集性大腸菌耐熱性腸管毒 EAST1 遺伝子 astA を保有する大腸菌(血清型 O1:H45)が腸管毒素原性大腸菌と同
時に検出された食中毒事例
山
貢、松本昌門、秦 眞美、小林愼一、皆川洋子、松井博範、榮 賢司、木村 隆、宮
愛知県衛生研究所報、57: 1−11, 2007.
豊
3.エンテロウイルス 71 型(EV71)の検出状況−愛知県
伊藤 雅、長谷川晶子、山下照夫、小林慎一、秦 眞美、田中正大、皆川洋子
病原微生物検出情報、27(7):177-178,2006.
4. 新生児室におけるエコーウイルス 18 型の感染事例―愛知県
幸脇正典、小山典久、山下照夫、伊藤 雅、長谷川晶子、小林慎一、秦 眞美、田中正大、皆川洋子
病原微生物検出情報、27(9):231-232,2006.
5. ヒトメタニューモウイルスが検出された急性脳症死亡例
清澤秀輔、小山典久、秦 眞美、伊藤 雅、長谷川晶子、山下照夫、田中正大、小林愼一、皆川洋子
病原微生物検出情報 27(11): 318-319,2006.
6. 教室紹介 愛知県衛生研究所 微生物部
皆川洋子
ウイルス、56(2):259-261, 2006.
Ⅲ 学会発表等
1.散発下痢症患者由来のフルオロキノロン薬剤耐性 Escherichia coli O153 における gyrA および parC 遺伝子の変異
【目的】近年、フルオロキノロン系薬剤(FQ)耐性菌の出現が問題となっている。今回、ナリジクス酸(NA)等に耐性
を示した散発下痢症患者由来の Escherichia coli O153 について、FQ 耐性の調査を行い、耐性機構を明らかにする目
的で耐性菌の遺伝子を解析した。
【材料と方法】KB 法により NA および CPFX に耐性を示した 24 株、および NA 耐性を示した 1 株の計 25 株(福井県の 1998
∼2005 年の 17 株、愛知県の 1997∼2001 年の 4 株、佐賀県の 1995∼2002 年の 4 株)について、寒天平板希釈法により
NA、CPFX、OFLX および NFLX の最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。さらに、キノロン耐性決定領域の解析は、gyrA
および parC 遺伝子の塩基配列を Dye terminator 法で決定することで行った。
【結果及び考察】24 株が gyrA の 83 位(Ser→Leu)、87 位(Asp→Asn)および parC の 80 位(Ser→Ile)の 3 ヶ所の変異を
合わせ持ち、さらにその半数では parC の 84 位(Glu→Val あるいは Glu→Gly)あるいは 108 位(Ala→Thr)の変異もみら
れ、次の 5 つの型に分類された。Ⅰ型(1 株)gyrA:S83L、parC:S80I Ⅱ型(12 株)gyrA:S83L、D87N、parC:S80I
Ⅲ型(1 株)gyrA:S83L、D87N、parC:S80R、E84V Ⅳ型(7 株)gyrA:S83L、D87N、parC:S80I、E84G Ⅴ型(4 株)gyrA:
S83L、D87N、parC:S80I、A108T。
県別にみるとⅠ∼Ⅲ型のほとんどが福井県由来株であり、Ⅳ型は 3 県で確認されたのに対し、Ⅴ型は愛知県と佐賀県
で確認された。アミノ酸変異と FQ の MIC との関連をみると、Ⅰ型は CPFX が 0.5μg/ml、OFLX が 1μg/ml、NFLX が 4μ
g/ml であり、Ⅱ型は CPFX および OFLX が 4∼16μg/ml、NFLX が 8∼128μg/ml、Ⅲ∼Ⅴ型は CPFX が 16∼32μg/ml、OFLX
が 16∼64μg/ml、NFLX が 64∼512μg/ml であった。このように、点変異の箇所が増加するのに伴い FQ の MIC が上昇し
た。国内外におけるこれら耐性菌の動向に注意を要する。
石畝 史、東方美保、山
貢、松雪星子、森屋一雄、田中大祐、磯部順子、京田芳人、村岡道夫
第 80 回日本感染症学会総会 東京都 2006.4.21
2.食品からの腸管出血性大腸菌 O157 及び O26 の検査法の策定におけるコラボレイティブ・スタディによる評価
【目的】食品からの腸管出血性大腸菌の検査方法は、血清型 O157 については既に告示されているが、O26 を含めた O157
以外の血清型については未だ有効な方法が示されておらず、食品、食中毒検査などに適切な対応をとるために方法の確
立が急がれている。そこで今回、培養法および迅速性、検出感度に優れた遺伝子検出法を組み入れて検討を行った。評
価にあたり、22 試験検査機関によるコラボレイティブ・スタディを実施し、その有効性を検証した。
【材料と方法】(1) 検体: O157 及び O26 に分けて行い、各回1試験機関につき牛挽肉6検体(低菌数 10cfu/25g 接種
3検体、非接種3検体)
、アルファルファ9検体(高菌数 40cfu/25g 接種3検体、低菌数 10cfu/25g 接種3検体、非
接種3検体)及び陽性対照牛挽肉1検体の計 16 検体とした。保冷剤、小型温度記録計とともに密閉缶に入れ各試験機
関へ送付した。(2) 試験方法: 各検体をノボビオシン加 mEC 培地 225ml にて 42℃20 時間増菌培養した。この培養液を
VT 遺伝子検出法(LAMP 法)及び分離培養法(直接法及び免疫磁気ビーズ法)により血清型 O157 及び O26 の検出試験を実
施した。
なお、
分離培地として、
O157 については CT-SMAC 及びクロモアガーO157TAM を、
O26 については CT-SMAC、
CT-RXO26、
及び CT-RMAC を用いた。また、分離培養平板上に生育した疑わしい集落について対象血清型のラテックス凝集試験また
は免疫血清にて凝集反応を確認した。試験結果を集計後、検出法間の有意差検定を行い解析した。
【結果と考察】(1) 血清型 O157 の検出結果 : 牛挽肉では LAMP 法、直接培養法及び免疫磁気ビーズ法とも全て接種検
体は陽性と判定され、検出感度は 1.0 であった。アルファルファでは検出感度は直接培養法での CT-SMAC が 0.98、ク
ロモアガーO157TAM が 0.92 であったが、他方法では 1.0 であった。(2) 血清型 O26 の検出結果: 各方法の検出感度は、
牛挽肉では LAMP 法で 1.0、直接培養法で 0.46-0.53、免疫磁気ビーズ法で 0.79-0.82、高菌数接種アルファルファでは
LAMP 法で 1.0、直接培養法で 0.80-0.96、免疫磁気ビーズ法で 1.0、低菌数接種アルファルファでは LAMP 法で 0.97、
直接培養法で 0.67-0.85、免疫磁気ビーズ法で 0.91-0.97 であった。分離培地の中では CT-RMAC が最も高感度で優れて
いた。(3) 統計学的解析 : O157 では牛挽肉及びアルファルファにおいていずれの方法間でも有意差は認められなかっ
た。一方、O26 では牛挽肉、アルファルファとも LAMP 法は直接培養法より有意に優れていたが、免疫磁気ビーズ法と
の有意差は認められず、ほぼ同等であった。ただし、アルファルファからの検出では、分離培地に CT-RMAC を用いる
と直接培養法と免疫磁気ビーズ法との有意差は認められなかった。
以上のように、22 機関によるコラボレイティブ・スタディでは、今回用いた遺伝子検出法の1つである LAMP 法は免
疫磁気ビーズ法と同等以上の感度で食品中から血清型 O157 及び O26 を迅速に検出することが明らかになった。
平松礼司、土屋 禎、小西典子、大塚佳代子、田中廣行、小沼博隆、工藤由起子、高鳥浩介
第 10 回 腸管出血性大腸菌感染症シンポジウム 東京都 2006. 9.1
3.食品からの腸管出血性大腸菌血清型 O157 及び O26 の検出法に関するコラボレイティブ・スタディの結果について
【目的】腸管出血性大腸菌の主要な血清型である O157 については既に食品からの検査方法が開発、告示されているが、
O26 を含めた O157 以外の血清型については未だ有効な方法が示されておらず、食品、食中毒検査などに適切な対応を
とることが困難な状況にある。そこで今回、培養法と同時に迅速性、検出感度に優れた遺伝子検出法をスクリーニング
として組み込めないか検討するため、食品からの O157 及び O26 の検出について 22 試験検査機関によるコラボレイティ
ブ・スタディを実施し、その有効性を検証した。
【材料と方法】1試験機関につき牛挽肉6検体(低菌数接種(10cfu/25g)3検体、非接種3検体)
、アルファルファ9検
体(高菌数接種(40cfu/25g)3検体、低菌数接種(10cfu/25g)3検体、非接種3検体)及び陽性対照牛挽肉1検体の計
16 検体を各々O157 及び O26 について別日に実施した。保冷剤、小型温度記録計とともに密閉缶に入れ各試験機関へ送
付した。送付された各検体をノボビオシン加 mEC 培地 225ml にて 42℃20 時間増菌培養した。この培養液を VT 遺伝子検
出法(LAMP 法)及び分離培養法(直接法及び免疫磁気ビーズ法)により血清型 O157 及び O26 の検出試験を実施した。な
お、分離培地として、O157 については CT-SMAC 及びクロモアガーO157TAM を、O26 については CT-SMAC、CT-RXO26、及
び CT-RMAC を用いた。また、分離培養平板上に生育した疑わしい集落について対象血清型のラテックス凝集試験または
免疫血清にて凝集反応を確認した。試験結果を集計後、検出法間の有意差検定を行い解析した。
【結果と考察】1.食品からの O157 検出(第1回) 保存方法、増菌温度に誤りが認められた2機関については集計
から外された。牛挽肉では LAMP 法、直接培養法、及び免疫磁気ビーズ法とも全て接種検体は陽性と判定され、感度は
1.0 であった。アルファルファでは直接培養法で 60 検体中 CT-SMAC(0.983)において1検体、クロモアガー
O157TAM(0.917)で5検体が非検出であったことを除き、他の方法では全て検出された。ただし、非接種検体を陽性と判
定した機関が LAMP 法で1機関、免疫磁気ビーズ法で2機関存在した。2.食品からの O26 検出(第2回)□□各検査
法の検出感度は以下のとおりであった。牛挽肉:LAMP 法(1.0),直接培養法(0.455-0.530),免疫磁気ビーズ法
(0.788-0.818) アルファルファ高菌数接種:LAMP 法(1.0),直接培養法(0.803-0.955),免疫磁気ビーズ法(1.0) アルフ
ァルファ低菌数接種: LAMP 法(0.97), 直接培養法(0.667-0.848),免疫磁気ビーズ法(0.909-0.970). 培養法では3種
の分離培地のうち CT-RMAC が最も高感度で優れていた。3.統計学的解析
検出方法間の有意差検定
(Student-Newman-Keuls 法)を実施したところ、O157 では牛挽肉、アルファルファ全ての検体において、いずれの方法
間でも有意差は認められなかった。一方、O26 では牛挽肉、アルファルファとも LAMP 法は直接培養法より有意に優れ
ていたが、免疫磁気ビーズ法との有意差は認められず、ほぼ同等であった。ただし、アルファルファからの検出では、
分離培地に CT-RMAC を用いると直接培養法と免疫磁気ビーズ法との有意差は認められなかった。以上のことから、今回
用いた遺伝子検出法の 1 つである LAMP 法は O157,O26 とも免役磁気ビーズ法と同等以上の感度で食品中から迅速に検出
可能であることが判明した。
平松礼司、大塚佳代子、竹田義弘、田中真弓、濱崎光宏、山崎省吾、八尋俊輔、新妻淳、鎌倉和政、有馬和英、
小澤一弘、工藤由起子、高鳥浩介
第 27 回日本食品微生物学会学術総会 堺市 2006. 9. 21
4.ファージ由来 ORF 検出による MRSA の迅速遺伝子型別分類法の開発とその安定性の検証
【目的】メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は主要な院内感染原因菌として知られている。院内感染の解析には分
子疫学的手法としてパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)が常用され、優れた菌株識別能力を発揮するが、時間がか
かることや特殊な電気泳動装置を必要とすることから簡便な検査法とはなっていない。そこで菌株毎に保有状態が異な
ると考えられるファージ由来 ORF を検出することで、短時間かつ容易に遺伝子型別分類する方法を開発した。また、同
一患者から期間をおいて採取された株を解析し、ファージ由来 ORF 保有状態の安定性について検証を加えた。
【材料及び方法】菌株毎に保有状態が異なり、菌株識別に有効と考えられる 13 個のファージ由来 ORF に加え、ゲノミ
ックアイランド、Tn554、SCCmec からそれぞれ1個の ORF を選択した。以上 16 個の ORF を検出するプライマーをそれ
ぞれ設計し、このプライマーのうち 4 組を入れたマルチプレックス PCR を行い、目的サイズのバンドの有無を判定し、
その保有パターンにより遺伝子型を決定した。主にファージ由来 ORF による遺伝子型別分類法となったので、ファージ
由来 ORF タイピング法(POT 法)とした。POT 法の有効性の検証に中部地方 4 県の 5 病院の協力により入手した MRSA317
株を解析した。対照として SmaI 切断による PFGE 解析も行なった。また、結果の安定性を検証するために 38 名の患者
から 3∼85 日(平均 21.8 日)の間隔で採取された検体由来の各2株、計 76 株の POT 型と PFGE パターンとを比較し、
POT 法の安定性の検証を行なった。
【結果と考察】317 株は本法で 133 タイプ、PFGE で 139 タイプに分類された。同一患者から分離された 38 組(76 株)
のうち 29 組(58 株、76%)は同一 POT 型でかつ同一 PFGE パターンとなった。また 7 組(14 株、18%)は POT 型で 2
個以内の ORF が異なるパターンであったが、PFGE ではバンド 0∼2 本以内の違いのみの非常に類似したパターンであっ
た。しかし 2 組(4 株、5%)の POT 型はファージ由来 ORF で 4 つの違いであったが、PFGE パターンはバンド 2 本の違
いであったため、ファージの溶原化による POT 型の変化が起きた可能性が示唆された。以上の結果からファージ由来
ORF で 2 個以内の違いを同一株由来と判定した場合に約 95%の確率で正確な判定が可能であると考えられた。
鈴木匡弘、松本昌門
第 43 回日本細菌学会中部支部総会 岐阜市 2006. 10.19
5.ファージ由来 ORF タイピング法(POT 法)による黄色ブドウ球菌の菌株識別能力の検討
【目的】メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の PCR を用いた新たな迅速遺伝子型別分類法として、溶原ファージ由
来 ORF の保有パターンを利用したファージ由来 ORF タイピング法(POT 法)を本学会第 17 回総会で発表した。POT 法は
入院患者から頻繁に分離される SCCmec type IIa 保有の MRSA についてはパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)とほ
ぼ同等の菌株識別能力を発揮する一方、その他の MRSA や MSSA ではやや識別能力が劣る傾向にある。そこでターゲット
から外れた後者に属する株に POT 法を適用し、疫学調査における実用性の検証を行なった。
【材料及び方法】2001∼06 年に 11 施設で散発患者から分離された MRSA 173 株及び MSSA 74 株を用いた。MRSA は POT
型から SCCmec type IIa 以外の mecA カセットを保有すると推定される株である。これらの菌株を POT 法並びに PFGE 法
で解析、比較した。
【結果と考察】POT 法では 117 タイプ、PFGE では 186 タイプに分類された。特定の POT 型(128-8:23 株、64-8:17 株
など)が多くなる傾向にあったため、菌株識別能が低下したと考えられた。その一方で任意の短期間に分離された株か
ら同一 POT 型株が多数分離されることは少なかったため、入院病棟など他の疫学情報も参考にすることで、多くの事例
において POT 法単独でも有効な疫学情報が得られると考えられた。
鈴木匡弘、堀 洋美、多和田行男、加藤 稔
第 18 回 日本臨床微生物学会総会 長崎市 2007.2.17-18
6.原因究明に 2 つの遺伝子解析法を試みた MRSA 院内伝播事例
【目的】MRSA は、特有の毒素産生と様々な感染症を惹起する病院感染関連病原体である。他方、正常細菌叢の構成菌
でもあり病原性の特定は常々容易ではない。今夏、我々は MRSA による院内伝播事例に遭遇し、感染源及び感染経路を
解明するため、2 種類の遺伝子解析法を試みた結果、興味ある知見を得たので報告する。
【対象と方法】2006 年 5 月から 6 月に外科系病棟を中心に発症した MRSA 院内伝播事例に関与した 33 菌株(16 名)と対
象として日常検体から散発的に分離したMRSA14 菌株(14 名)を任意に選び、
感染源及び感染経路の解明手法としてPhage
ORF Typing(POT 型)及び PulseFieldGel Electrophoresis(PFGE)の 2 種類の遺伝子解析法を試みた。また病原性立証の
手段として代表株を用いて Toxic Shock Syndrome Toxin-1(TSST-1)遺伝子の PCR 解析を試みた。
【結果】被検菌 47 株は、16POT 型に分類された。POT 型と PFGE 解析の結果は概ね一致したが、POT 型 205-92 のうち、
2 名から分離された 2 株は POT 型 205-94 と同一の PFGE 型となった。POT 型と PFGE の結果がほぼ一致したことから数値
で菌型を表せる POT 型で以後、菌型を表現する。同一患者で複数の POT 型は 2 例あった。院内伝播の POT 型は、205-92
型:6 名、205-94 型:7 名、207-93 型:3 名の患者から分離され、そのうち外科病棟では、205-92 型:4 名、205-94 型:
4 名、207-93 型:3 名が含まれていた。即ち、患者 30 名中、17 名は院内伝播に関わりを認めた。25/31(77.4%)は TSST-1
遺伝子陽性菌株であった。
【まとめ】POT 型と PFGE 2 つの遺伝子解析法を試み、感染源及び感染経路の解明に努めた。しかし、それらは推定可
能ではあったが、特定は出来なかった。そのため、医療スタッフ並びに患者に対し、様々な手法で病院感染予防意識の
啓発を行うことが最も重要であり、ICT の最大の責務であると思われる。
中野 学、雲井直美、島田 泉、平岡美幸、清原洋子、権野さおり、伊藤真奈美、井端英憲、鈴木啓仁、鈴木匡弘
第 22 回日本環境感染学会総会 横浜市 2007.2.24
7.黄色ブドウ球菌ゲノムの挿入小領域中の ORF 検出による clonal complex の予測
【目的】近年数株の Staphylococcus aureus 全ゲノム塩基配列が解読・公開され、容易にデータを利用可能となった。
全ゲノム塩基配列の比較から株間の主な違いとして、genomic island やファージの挿入に加えて、 genomic islet
と呼ばれる 1∼10 個程度の open reading frame (ORF)からなる挿入小領域の存在が挙げられる。そこでまず公開全ゲ
ノムデータの比較により islet を選別した後、臨床分離株の islet 保有パターン(IP 型)を調査する。さらに IP 型と
Multilocus sequence typing (MLST)により得られる Sequence type (ST 型)、及び clonal complex (CC 型)との関係を
明らかにする。
【方法】臨床分離された S. aureus(Methicillin 耐性株 60 株、感受性株 36 株)を用い、定法に従い MLST 解析を行
なった。得られた ST 型を eBURST program により CC 型にまとめた。公開されている 7 株(N315、Mu50、MW2、NCTC8325、
MRSA252、MRSA-COL、MSSA476)の全ゲノム塩基配列データを MUMmer program を用いて比較し、それぞれの菌株に固有
の部分のうち、ORF 1 個で構成されており、かつ明確な insertion sequence 構造を持たない islet を抽出した。抽出
した islet のうち 16 個を選択し、PCR 検出により分離株の IP 型を調査した。
【結果と考察】供試菌株は 32 の ST 型に分類され、18 の CC 型にまとめられた。これらの菌株は 22 の IP 型に分類され
たが、同一 CC 型の菌株の大部分は同一 IP 型に分類された。この結果から IP 型を決定することで CC 型を正確に予測で
きることが示された。IP 型を解析することで、MLST 解析のコスト削減と検体の大量処理が可能となり、流行クローン
の把握に有効と考えられる。
鈴木匡弘、松本昌門、皆川洋子
第 80 回 日本細菌学会総会 大阪市 2007. 3.27
8. 愛知県内の下水処理場流入下水からのノロウイルス検出状況
【目的】ノロウイルス(NV)感染経路の1つに、糞便中に排泄されたウイルスが下水から河川を経て海へ流れ、海洋に生
息するカキなどの二枚貝に取り込まれた後、これらの喫食によってヒトが感染するという経路が推察されている。大量
の下水を処理する下水処理場は腸管系ウイルス感染症全般のウイルス動態に重要な役割を果たしていると考えられる
ため、下水中 NV の消長を把握する目的で愛知県内 2 ヶ所の下水処理場(A 及び B 処理場)の流入下水から NV 遺伝子の検
出を試みた。
【材料及び方法】平成 16 年 4 月から 18 年 3 月までの2年間に、A 処理場で 61 回(16 年度毎週 1 回計 50 回及び 17 年
度 5 月より毎月 1 回計 11 回)
、B 処理場で 24 回(2 年間毎月 1 回)
、流入下水を採取した。流入下水 30ml をポリエチレ
ングリコールで 10 倍に濃縮した後、RNA を抽出し、NV 構造タンパク遺伝子の 5 末端領域の一部を増幅する プライマ
ーを用いて nested RT-PCR を行なった。得られる増幅産物は、1st PCR で G1 型が 381bp、G2 型が 351bp、2nd PCR で G1
型が 351bp、G2 型が 338bp である。
【結果及び考察】A 処理場の流入下水から G1 型が 19 回(19/61=31.1%)、G2 型が 14 回(14/61=23.0%)検出された。
一方、B 処理場からは G1 型が 13 回(13/24=54.2%)、G2 型が 7 回(7/24=29.2%)検出された。ウイルスが検出された
割合(検出月数/総検査月数)は、A 処理場が 61%(14/23)、B 処理場が 58%(14/24)と、NV の検出頻度に有意な差は
認められなかった。一方、感染症発生動向調査事業で病原体の検査定点に指定された医療機関を受診した感染性胃腸炎
患者の糞便や吐物からは、16 年度 62 件、17 年度 61 件の NV が検出されたが、このうち G1 型は 16 年度の 1 件のみで、
残りは全て G2 型であった。また、16∼17 年度に起こった急性胃腸炎集団発生において NV 遺伝子を検出した 37 事例の
うち、G1 陽性は 4 事例のみ(うち 2 事例は G2 型も同時検出) であった。このように、G1 型は下水検体からほぼ年間を
通じて検出されたにもかかわらず、感染性胃腸炎患者からの検出頻度は低率であった。一方、G2 型は下水検体から感
染性胃腸炎の流行時期とほぼ一致して検出された。今後は、下水中 NV の定量的検査法を確立して NV の消長を定量的に
解析するとともに、
NV 感染環の解明をめざしてヒト胃腸炎患者での流行ウイルス型と対比しながら調査を継続したい。
長谷川晶子、伊藤 雅、小林慎一、山下照夫、榮 賢司、皆川洋子
第 54 回日本ウイルス学会学術集会 名古屋市 2006.11.19.
9. 平成 17 年度の東海北陸地区におけるノロウイルス検出状況について
【目的と意義】ノロウイルス(NV)は、ウイルス性胃腸炎の主たる原因であり、近年、高齢者施設などでの集団発生が
多く発生したことでさらに重要視されている。NV の検出や解析については多くの自治体で実施されているが、複数の
自治体にまたがった集団発生を起こすことも多いため、NV の流行状況について、自治体同士で情報共有していく必要
がある。そこで今回、平成 17 年度に東海北陸地区で発生した集団発生事例で検出された NV について、遺伝子型別を行
い、流行状況や株間の関連性について検討した。
【材料と方法】2005 年 4 月から 2006 年 3 月までに発生した集団胃腸炎事例で検出された NV について解析を行った。
糞便の処理から NV の検出については厚生労働省通知に準じ実施した。PCR は capsid 領域を含む約 300 塩基を増幅し、
ダイレクトシークエンス法または TA クローニングによって塩基配列を決定した。得られた塩基配列は、ClustalW と NJ
plot によって系統樹を作成し、片山らの分類に従い遺伝子型を決定した。
【結果と考察】集団発生事例 113 例のうち、検出された NV は、多い順に NVGII、NVGI と GII の混合、NVGI であった。
遺伝子解析により、71 事例より 98 種類の株が得られ、遺伝子型別により、NVGI は GI/8(6 事例)
、4(4 事例)
、3(3
事例)
、12(3 事例)
、1(1 事例)
、11(1 事例)
、14(1 事例)型に分けられた。NVGII は GII/3(25 事例)
、4(21 事例)
、
6(13 事例)
、7(6 事例)
、5(5 事例)
、2(2 事例)
、9(2 事例)
、1(1 事例)
、10(1 事例)
、11(1 事例)型に分けられ
た。4 月、5 月までは GI、GII/4 型が多くみられたが、11 月以降は GII/3 型が流行していた。また、GII/3 型の 12 事例
(5 県 1 市)など、異なる自治体同士であっても塩基配列が一致する例がいくつか存在し、類似した NV 株が自治体を
またいで東海北陸地区に流行していたと考えられた。
小原真弓、大矢英紀、尾西 一、東方美保、猿渡正子、青木 聡、田中保知、柴田伸一郎、中野陽子、杉山 明、
小林慎一、長谷川晶子、長谷川澄代
第 54 回日本ウイルス学会学術集会 名古屋市 2006.11.19.
10. 2005-2006 シーズンにおけるアマンタジン耐性インフルエンザウイルスの流行と耐性変異の迅速検出法
【目的と意義】2005-2006 インフルエンザシーズンにおいて、米国では A 香港型インフルエンザウイルス分離株の 90%
にアマンタジン耐性をもたらす M2 蛋白質の S31N 変異が見出された。そこで、愛知県で分離されたウイルス株について
M2 遺伝子及び HA1 遺伝子を解析し耐性変異との関連を調べた。さらに、耐性変異の迅速検出法を検討した。
【材料と方法】愛知県において 2005-2006 シーズンに分離された A 香港型ウイルス 23 株、及びシーズン前に分離され
た 8 株を解析した。ウイルス感染細胞培養上清から RNA を抽出し、ランダムプライマーを用いて各ウイルス株の cDNA
を作製した。得られた cDNA を鋳型として MAMA(mismatch amplification mutation assay)-PCR を実施し、変異の検出
と同時に M2 遺伝子領域を増幅した。変異遺伝子の配列は PCR 産物の塩基配列決定により確認した。さらに、各ウイル
ス HA1 遺伝子領域の塩基配列を決定し、系統樹解析を行なった。
【結果と考察】
2005-2006 シーズンの愛知県における A 香港型分離株を解析した結果、
23 株中 20 株(87%)に M2 蛋白 S31N
変異が認められた。S31N 変異ウイルス全てに HA1 遺伝子 S193F, D225N 変異が認められ、系統樹解析で単一のクラスタ
ーを形成した。さらにシーズン前分離株の中にも、2005 年 5 月に愛知県内で分離された株をはじめ 3 株に M2 の S31N
変異と HA1 の S193F, D225N 変異がそろって認められた。以上の結果から愛知県においても米国と同様 2005-2006 シー
ズン A 香港型流行株の主流は S31N 変異株であり、シーズン前にすでに変異ウイルスが出現していたことがわかった。
さらに、MAMA-PCR を用いたインフルエンザウイルスのアマンタジン耐性変異遺伝子の迅速検出法を考案した。今回検
討した方法は S31N 変異の検出系だが、他の薬剤耐性変異にも応用可能であり有用である。
秦 眞美、續木雅子、後藤泰浩、田中正大、榮 賢司、皆川洋子
第54回日本ウイルス学会学術集会 名古屋市 2006.11.20.
11. 愛知県内で分離されたエンテロウイルス 71 型(EV71)遺伝子亜型の解析
【目的と意義】エンテロウイルス 71 型(EV71)は手足口病、無菌性髄膜炎等を引き起こし、数年置きに流行を繰り返
している。分離ウイルスの遺伝子解析による流行株の亜型分類を行ない、経時的変化、季節性、地域性、病原性などの
特徴を検討した。
【材料と方法】本県において 1992 年から 2006 年 7 月に感染症発生動向調査事業で集められた検体から Vero, HeLa,
RD-18S 細胞を用いて分離され、感染症研究所から分与された型特異的抗血清を用いて EV71 と型別、もしくは遺伝子解
析により同定された分離株を使用した。ウイルス感染細胞培養上清から抽出した RNA を鋳型として、RT-PCR 法にて増
幅した VP1 領域の塩基配列を決定し系統樹解析を行なった。
【結果および考察】EV71 分離株計 143 株(1992 年 1 株、93 年 28 株、97 年 10 株、98 年 3 株、2000 年 27 株、2003 年
30 株、04 年 2 株、05 年 16 株、06 年 26 株)を解析した。無菌性髄膜炎併発のない手足口病患者由来株 85.3%(122/143)、
無菌性髄膜炎(手足口病併発を含む)由来株 8.4%(12/143)、その他の疾病由来株 11.9%(17/143)であった。Vero 細胞
は使用開始後に分離した株のうち 97.0%(98/101)を分離可能であったが、多くの株は RD-18S, HeLa 細胞でも分離さ
れた。EV71 は遺伝子型プロトタイプの BrCr 株が属する VP1-genogroup A 型の他に2種類の遺伝子型(B 型、C 型)
、さ
らに各 genogroup に subgenogroup (B1,B2,B3,B4,B5 及び C1,C2,C3,C4)が報告されている。分子系統樹解析の結果、93
年の分離株は C1a、97 年は C2, C4, B3, B4、98 年は C2、2000 年は C4,B4、03 年は C1b,B5、04 年は B5、05, 06 年は
C4 にそれぞれ属していた。無菌性髄膜炎を発症した患者とそうでない患者から分離されたウイルスに遺伝子型の違い
はみとめられなかった。92, 93 年には、C 型だが1∼4亜群に属さないクラスターを形成するものがあった。発症時期
による解析では 2000 年の分離株に通年流行株(B4)と夏季流行株(C4)に分かれる傾向がみられた。流行株の地域性、由
来についてはデータベースに登録されている国内、海外分離株との比較も行なった。
伊藤 雅、山下照夫、長谷川晶子、榮 賢司、皆川洋子
第 54 回日本ウイルス学会学術集会 名古屋市 2006.11.20.
12.腫瘍壊死因子(TNF)投与による単純ヘルペスウイルス感染の修飾
【目的と意義】炎症性サイトカイン tumor necrosis factor (TNF)は、ウイルスや細胞内寄生性細菌に対する重要な生
体防御因子である。一方関節リウマチをはじめとする炎症性疾患においては TNF は主要な標的分子であり、抗 TNF モノ
クローナル抗体やアンタゴニストが治療薬として実用化された。
潜伏単純ヘルペスウイルス(HSV)の再活性化は、しばしば健常人にも回帰発症を起こすが、抗 TNF 治療に伴う日和見
感染症のひとつに、ヘルペスウイルス感染症が知られている。HSV 回帰発症誘発メカニズムには、いまだ不明な点が多
い。
私たちは、TNF ノックアウト(TNFko)マウスを用いて、HSV 初感染時のみならず再活性化・回帰発症 HSV 病変に対する
防御においても、TNF が重要な役割を担うこと、初感染時 TNF 投与による局所 HSV 増殖抑制効果を報告してきた。今回
は、TNFko マウスに対する、TNF 投与の遠隔臓器及び潜伏感染制御効果を検討した。
【材料と方法】
・TNFko マウス[B6,129-Tnftm1Gk1]および対照動物。
・TNF 投与:角膜接種 3 時間後より 24 時間毎に 6 回 rmuTNF 1ng/μl(あるいは対照 PBS)10μl を点眼。
・骨髄移入:全身γ線照射(9Gy)3時間後に骨髄細胞を注入。
・HSV 接種:眼角膜あるいは耳介を注射針で擦過後、ウイルス液を滴下。
【結果】
・TNF 局所投与群は、対照(PBS 投与)群に比べ有意に生存率が高く、さらに急性感染期の接種臓器(眼)にお
けるウイルス増殖は、TNF 投与群の方が対照群に比べ低値を示し、TNF の抗ウイルス効果が認められた。
・一方三叉神経節及び脳におけるウイルス増殖は TNF 投与群の方が対照群より必ずしも顕著な低値を示すわけではなく、
投与中止後のリバウンドも認められた。
・対照骨髄移入 TNFko マウスは、
TNFko 骨髄移入対照マウスに比べて感染局所のウイルス clearance が促進されていた。
【考察】
・感染局所への TNF 投与により、TNF 欠損に伴う急性期 HSV 増殖増悪を抑制しうることが示された一方、遠隔
臓器に対しては TNF 投与の効果は明らかではなかった。
・骨髄移入実験の結果から、骨髄由来 TNF 産生細胞が HSV 感染において防御的役割を果たしていることが示唆された。
・以上より TNF による HSV 増殖抑制効果発現には、TNF 産生細胞の存在が重要と考えられた。細胞性免疫抑制状態にお
ける HSV 感染増悪の一因として、TNF 産生細胞の機能不全が関与している可能性が考えられる。
皆川洋子、柳 雄介
第 54 回日本ウイルス学会学術集会 名古屋市 2006.11.20.
13. エンテロウイルス 79 型、97 型、98 型およびコクサッキーウイルス A9 型関連株の遺伝子解析
【目的と意義】ヒトエンテロウイルス(EV)は、中和反応を用いて 66 種の血清型に分類されていたが、近年遺伝子型
別による分類法により、新型が報告されている。我々は、海外旅行者から分離されたウイルスで、従来血清型別分類が
不能であった4株のウイルス同定を目的として、VP1 領域の遺伝子解析を実施した。その結果、EV-79、EV-97、コクサ
ッキーウイルス A9 型(CV-A9)の関連株、ならびに新型ウイルス(EV-98)と考えられた。これらウイルス遺伝子の特
徴を明らかにするためにさらに全塩基配列をしらべた。
【材料と方法】95-0601(ネパール旅行帰国者由来)
、94-0227(同インド)
、92-1499 および 94-0349(同タイ)の分離
ウイルス4株を解析した。既知のプライマーと新たに設計したプライマーを用いて RT-PCR を行ない各領域の遺伝子を
増幅後、pGEM-T ベクターに組み込み配列を決定した。
【結果】VP1 領域の塩基配列を比較したところ、95-0601 株は EV-79(バングラデシュにおける急性弛緩性麻痺患者か
らの分離株)と 93%の相同性を認めた。94-0227 株は EV-97(同じくバングラデシュ分離株)と 85%の相同性であった。
92-1499 株は、EV-81、EV-87、EV-88(非公開)と最も近縁であったが独立しており新型のエンテロウイルス(EV-98)
と考えられた(ICTV 私信)
。94-0349 株は CV-A9 標準株と 73.3%の相同性があったが C 末端に RGD 配列を欠いており、
その抗血清は標準株を中和しなかった。2C3CD 領域の系統樹解析では、分離 4 株とエコーウイルス 30 型(E-30)
、EV-74、
EV-75、および EV-77 は同一クラスターを形成した。これらの株間相同性は 85%以上なのに対し、94-0349 株と CV-A9
標準株の相同性は 79.4%であった。
【考察】EV は VP1 領域の相同性が 75%以上であれば同一型、70%以下であれば新型とされる。したがって、VP1 領域
の塩基配列解析は抗血清を準備する手間が省ける新型株同定法と考えられた。一方、94-0349 株のように CV-A9 と近縁
ではあるが中和反応を示さない株が存在することも判明した。この株は 2C3CD 領域では CV-A9 との相同性が低く、系統
樹解析で同一クラスターを形成した株が E-30 以外すべてアジア由来であった点から、遺伝子組み換えにより生じた可
能性も考えられる。
山下照夫、伊藤 雅、長谷川晶子、榮 賢司、皆川洋子
第 54 回日本ウイルス学会学術集会 名古屋市 2006.11.21.
14. Taxonomy of Picornaviridae: Current Situation and Future Proposals
The family Picornaviridae currently consists of 23 species in 9 genera (Enterovirus, Rhinovirus, Cardiovirus,
Aphthovirus, Hepatovirus, Parechovirus, Erbovirus, Kobuvirus and Teschovirus). Three new taxonomic proposals
have been approved by the ICTV Executive Committee and await ratification by the ICTV membership. They are:
i) to combine the enterovirus and rhinovirus genera, keeping the existing name Enterovirus; ii) to combine
the species
Poliovirus and Human enterovirus C, retaining the latter name; and iii) to assign Human enterovirus
C as the type species of the enterovirus genus. Two further proposals are in preparation: i) to create a new
genus, Sapelovirus, consisting of three species, Porcine enterovirus A, Simian virus 2 and duck picornavirus
TW90A (each to be renamed); and ii) to create a new unassigned species, Seneca Valley virus. Overall this will
leave the number of genera unchanged, but result in the addition of two species. A number of issues are also
being considered by the Study Group: i) the genus placement of Seneca Valley virus; ii) the position of avian
encephalomyelitis virus as a tentative member of the genus Hepatovirus; iii) the proposal to place duck hepatitis
virus type 1 (for which a number of genome sequences have recently been reported) in a new genus; iv) the proposal
that bovine rhinovirus type 2 is classified as a new species in the genus Aphthovirus; and v) the proposal
to divide bovine enteroviruses into two species. The Picornaviridae Study Group has a new website:
www.picornastudygroup.com where the latest classification and proposals may be viewed.
N. J. Knowles, T. Hovi, T. Hyypiä, A. M.Q. King, A. M. Lindberg, P. D. Minor, M. A. Pallansch, A. C. Palmenberg,
T. Skern, G. Stanway, Teruo Yamashita, R. Zell
EUROPIC 2006, Inari, Finland, 2006.11.30.
IV 試験検査
1. 赤痢菌の型別分類(菌型及び PFGE パターン)とその薬剤感受性
当所では赤痢発生時における感染源の調査など防疫対策上の参考とするために、県内で分離された赤痢菌株を収集し、
その型別分類及び薬剤感受性について継続的に調査を実施している。本年度は、平成 18 年 5 月に2名が Shigella
flexneri 2a に感染し分離株のパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)パターンも同一であったが、感染源は不明であっ
た。また、タイ旅行した1名と渡航歴のない2名から S. sonnei Ⅰが検出された。
薬剤耐性等の結果を資料−微生−表 1 に示した。
資料−微生−表 1 平成 18 年度に愛知県内で検出された赤痢菌
分離
保健所
年月
集団,
菌株
散発
数
18. 5
衣浦東部
散発
1
18. 5
衣浦東部
散発
1
18. 7
衣浦東部
散発
1
18. 9
衣浦東部
散発
1
18.10
瀬戸
散発
1
菌種
薬剤耐性
コリシン型
備考
(渡航歴など)
Shigella
Shigella
Shigella
Shigella
Shigella
flexneri 2a
flexneri2a
sonnei Ⅰ
sonnei Ⅰ
sonnei Ⅰ
ABPC.SM.TC
ABPC.SM.TC
SM.TC
8
SM.TC
9A
ABPC.SM.TC.NA
6
タイ
*薬剤耐性検査に用いた薬剤は、アンピシリン(ABPC)
、カナマイシン(KM)、クロラムフェニコール(CP)
、シプロフロ
キサシン(CIP)
、ストレプトマイシン(SM)
、セファロリジン(CER)、テトラサイクリン(TC)
、ナリジクス酸(NA)
、ノ
ルフロキサシン(NFX)、ピペミド酸(PPA)
、フォスフォマイシン(FOM)、ミノサイクリン(MNO)の 12 種類である。
2. コレラ菌の確認検査(細菌培養同定検査)
本年度当所には、コレラ疑いの患者1名から分離された菌株1株が搬入されたが、二類感染症のコレラ菌(Vibrio
cholerae O1 及び O139)ではなかった。また、コレラ毒素も非産生であった。
3. チフス菌、パラチフス A 菌のファ−ジ型別分類 (細菌培養同定検査)
流行時における感染源の調査や流行菌型の把握など疫学上の必要性から、県内の保健所、病院等で分離された菌株を
当所で収集し、国立感染症研究所に送付してファージ型別分類を実施している。本年度当所に搬入されたチフス菌は海
外渡航歴のある1名の患者由来の1株であった。その結果を資料−微生−表 2 に示した。なお、本年度はパラチフス A
菌の当所への搬入はなかった。
資料−微生−表 2 平成 18 年度に愛知県内で検出されたチフス菌
分離年月
保健所
菌株の由来
菌 名
ファ−ジ型
海外渡航歴
18. 12
衣浦東部
患者
Salmonella Typhi
E1
インド
4. 腸管出血性大腸菌検査(細菌培養同定検査)
本年度当所に搬入された腸管出血性大腸菌の菌株数は、
51 名から分離された51 株であった。
その血清型の内訳はO157
が 39 株(患者 18 名、保菌者 21 名由来、以下同)
、O26 が 10 株(患者 3 名、保菌者 7 名)
、及び患者各 1 名から分離さ
れた O111 及び O121 各 1 株であった。
51 株の血清型及び毒素(ベロ毒素あるいは志賀毒素 Vero toxin: VT)産生性等は、O157:H7(VT1,VT2 両毒素産生)が
14 株、O157:H7 (VT1 産生)が 6 株、O157:H7 (VT2 産生)が 18 株、O157:H−(VT1,VT2 産生) が 1 株、O26:H11(VT1 産生)
が 10 株、O111:H−(VT1 産生)が1株、O121:H19(VT2 産生)が 1 株であった。
本年度の検査結果を資料−微生−表 3 に示した。
資料−微生−表 3 平成 18 年度に愛知県内で検出された腸管出血性大腸菌の血清型と毒素型
分離
年月
18.4
18.4
18.5
18.5
18.5
18.5
18.6
18.6
18.6
18.6
18.6
18.7
18.7
18.7
18.7
18.7
保健所
知多
知多
衣浦東部
西尾
衣浦東部
衣浦東部
衣浦東部
半田
半田
知多
半田
豊川
半田
衣浦東部
衣浦東部
西尾
株
数
4
1
1
1
2
1
1
4
1
2
1
1
4
1
1
1
患者・
保菌者
患者
保菌者
患者
患者
保菌者
患者
患者
患者
保菌者
保菌者
患者
患者
保菌者
患者
保菌者
患者
菌型
毒素型
O157:H7
O157:H7
O157:H−
O157:H7
O157:H7
O157:H7
O121:H19
O157:H7
O157:H7
O157:H7
O157:H7
O26:H11
O157:H7
O157:H7
O157:H7
O26:H11
VT2
VT2
VT1・VT2
VT1
VT1
VT1
VT2
VT1・VT2
VT1・VT2
VT2
VT2
VT1
VT2
VT1
VT1
VT1
分離
年月
18.7
18.7
18.7
18.8
18.8
18.8
18.8
18.8
18.9
18.9
18.9
18.9
18.9
18.10
18.11
保健所
西尾
津島
春日井
知多
春日井
瀬戸
瀬戸
西尾
衣浦東部
西尾
西尾
衣浦東部
衣浦東部
瀬戸
衣浦東部
株
数
2
2
2
1
1
1
2
1
1
1
1
1
1
4
3
患者・
保菌者
保菌者
保菌者
患者
患者
保菌者
患者
保菌者
患者
患者
患者
保菌者
患者
保菌者
保菌者
保菌者
菌型
毒素型
O26:H11
O157:H7
O157:H7
O157:H7
O26:H11
O26:H11
O26:H11
O157:H7
O157:H7
O26:H11
O26:H11
O111:H−
O157:H7
O157:H7
O157:H7
VT1
VT1・VT2
VT2
VT1・VT2
VT1
VT1
VT1
VT1・VT2
VT1・VT2
VT1
VT1
VT1
VT2
VT1・VT2
VT2
5. 患者、保菌者由来のサルモネラの菌型(サルモネラ型別)検査
当所では昭和 52 年度以降、サルモネラ感染症の感染源の調査や流行菌型の把握のために、県内の保健所等で患者及
び保菌者から分離されたサルモネラを収集し、血清型の決定を行なっている。本年度は 23 株を検査し、その結果 7 種
類の血清型が同定された。このうち患者由来株は 2 事例 6 株で、すべて Salmonella. Enteritidis であった。また、2
事例の食中毒関連調査で実施した食品検査において海藻サラダと液卵から検出されたサルモネラはいずれも S.
Enteritidis であった。一方、保菌者由来株 15 株からは 7 種の血清型が検出され S. Enteritidis が 4 株、S. Infantis
及び S. Litchfield が各 3 株等であった。結果の詳細を資料−微生−表 4 に示した。
資料−微生−表 4 平成 18 年度に愛知県内で検出されたサルモネラの血清型と株数
O 群
4
7
8
9
血清型
患者由来
株数
食品由来
株数
Salmonella Saintpaul
O4:e,h
Salmonella
Salmonella
Salmonella
Salmonella
Salmonella
計
Infantis
Singapore
Litchfield
Newport
Enteritidis
6
6
2
2
保菌者由来
株数
2
1
3
1
3
1
4
15
総計
2
1
3
1
3
1
12
23
6.レジオネラ属菌検査
本年度は当所にレジオネラ属菌の検査依頼はなかった。
7.食中毒等の検査
平成 15 年度以降、県内で発生した食中毒の検査は、細菌性が疑われた場合には県内の4試験検査実施保健所(一宮、
半田、衣浦東部、豊川)で実施し、当所ではウイルス性が疑われる事例の全患者に関する検体及び腸管出血性大腸菌
O157 が疑われる事例の食品に関する検体のみの細菌検査を実施している。また、患者から原因と思われるウイルスが
検出された場合には調理従事者の検体もウイルス検査を実施することとなっているが、実際には患者と同時に調理従事
者の検体が搬入される場合が多く、患者と同時に従事者のウイルス検査と細菌検査を当所で実施した。
平成 18 年度に当所で食中毒の病原微生物検査を実施した食中毒事例もしくは有症苦情事例は、18 年の冬季にノロウ
イルスが全国的に大流行したことを反映して、前年度 27 件から 2.6 倍増の 70 件であった。なお 18 年度は流行前から
7 月の第 1 例以降 3 月まで毎月、ノロウイルス陽性検体が搬入された。
その内訳は、細菌検査とウイルス検査を同時に実施した 49 件及びウイルス検査のみを実施した 21 件である。
(1) 細菌性食中毒等の検査
本年度は 49 件の食中毒事例または有症苦情事例に関して細菌検査を実施し、うち 4 事例から食中毒原因菌を検出し
た。各事例の検査概要は資料−微生−表 5 に示した。
食中毒原因菌が検出された 4 事例のうち 1 事例(No.22)は、患者 7 名全員からノロウイルスが検出され、そのうち 1
名の検体からは Salmonella Newport も検出された。下痢症患者における細菌検査の重要性を再認識した。また、3 月
に発生した No.67,69,70 の 3 事例からはノロウイルスは検出されず、Campylobacter jejuni が検出された。この 3 事
例の患者は鶏肉もしくは鶏のレバーを喫食していた。
(2) ウイルス性食中毒の検査
平成 18 年度は、食中毒事例もしくは有症苦情事例 70 件(前年度 24 件の 2.9 倍)からの 489 検体(前年度 220 検体の
2.2 倍)について、リアルタイム RT-PCR 法を用いたノロウイルス(Norovirus: NV)の検出検査を実施した。
資料−微生−表 5 に示すように、ウイルスの関与が疑われた 70 件のうち 44 件(62.9%)から下痢原因ウイルスであ
る NV が検出された。一方細菌検査とウイルス検査を並行して実施した 49 件のうち 14 件(28.6%)からは、食中毒原因
菌及び下痢原因ウイルスのいずれも検出されなかった。
当所で 18 年度に食中毒もしくは有症苦情に関連して検出された NV の遺伝子群は、全て Genogroup II に属していた。
さらに一部の検体について決定した遺伝子型別の結果は、4 型(Lourdsdale)が大多数を占めており、他の都道府県から
の報告と同様であった。
資料−微生−表 5 平成 18 年度に当所で実施した食中毒検査の概要
事
例
1
発生
年月
18.4
保健所
(支所)名
津島
患者便:1
2
18.4
師勝
患者便:1
3
18.4
春日井
患者便:2
4
18.4
一宮
患者便:1
5
18.4
患者便:1
6
18.5
一宮
(稲沢)
知多
7
18.6
8
18.7
衣浦東部
(安城)
瀬戸
9
10
18.7
18.7
津島
西尾
患者便:3
無症者:5
患者便:4
調理従事者便:2
患者便:8
無症者:3
患者便:1
患者便:4
11
18.8
春日井
患者便:1
12
18.8
衣浦東部
13
18.9
半田
(美浜)
検 体:数
検査項目
結
果
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス不検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス不検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス不検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス不検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス不検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス不検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス不検出
食中毒原因菌不検出
患者 6 名(6/8)からノロウイルス検出
ノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
患者 2 名(2/4)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス不検出
患者便:1
ノロウイルス
ノロウイルス検出
調理従事者便:10
腸炎ビブリオ、ぶ 食中毒原因菌不検出
どう球菌、サルモ 調理従事者 8 名(8/10)からノロウイルス
ネラ属菌、赤痢菌、 検出
ノロウイルス
14
18.9
半田
患者便:1
15
18.9
知多
患者便:7
16
18.9
春日井
患者便:1
17
18.10
半田
(美浜)
患者便:1
調理従事者便:15
18
18.10
衣浦東部
患者便:2
19
18.10
西尾
患者便:2
20
18.10
春日井
患者便:1
21
18.10
津島
22
18.10
新城
23
18.11
知多
24
18.11
師勝
患者便:5
調理従事者便:7
患者便:7
調理従事者便:2
患者便:8
調理従事者便:3
患者便:3
25
18.11
半田
(美浜)
患者便:1
調理従事者便:30
26
18.11
患者便:2
27
18.11
瀬戸
(豊明)
豊川
28
29
18.11
18.11
瀬戸
春日井
患者便:4
患者便:1
30
18.11
津島
患者便:1
31
18.11
知多
32
18.11
衣浦東部
33
18.11
衣浦東部
34
35
18.11
18.11
春日井
衣浦東部
患者便:2
調理従事者便:3
患者便:5
調理従事者便:6
患者便:9
調理従事者便:13
患者便:1
患者便:2
36
18.11
知多
患者便:1
患者便:1
腸炎ビブリオ、ぶ
どう球菌、サルモ
ネラ属菌、赤痢菌、
ノロウイルス
腸炎ビブリオ、ぶ
どう球菌、サルモ
ネラ属菌、赤痢菌、
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
サルモネラ属菌、
ぶどう球菌、腸炎
ビブリオ、赤痢菌、
ノロウイルス
サルモネラ属菌、
ぶどう球菌、腸炎
ビブリオ
ノロウイルス
サルモネラ属菌、
ぶどう球菌、腸炎
ビブリオ
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
腸炎ビブリオ、ぶ
どう球菌、サルモ
ネラ、赤痢菌、ノ
ロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
ノロウイルス
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス検出
ノロウイルス
患者 5 名(5/5)及び調理従事者 1 名(1/6)
からノロウイルス検出
患者 7 名(7/9)及び調理従事者 3 名(3/13)
からノロウイルス検出
ノロウイルス不検出
食中毒原因菌不検出
患者 2 名(2/2)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス不検出
ノロウイルス
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌不検出
患者 5 名(5/7)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
患者 1 名(1/1)及び調理従事者 2 名(2/15)
からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
患者 2 名(2/2)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
患者 2 名(2/2)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス不検出
患者 1 名(1/7)から Salmonella Newport 検
出、患者7名(7/7)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
患者 8 名(8/8)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
患者 3 名(3/3)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
患者 1 名(1/1)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
患者 2 名(2/2)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス不検出
患者 4 名(4/4)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス不検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス不検出
ノロウイルス不検出
37
18.11
瀬戸
患者便:1
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
ノロウイルス
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
ノロウイルス
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
38
18.11
津島
患者便:1
39
40
18.11
18.11
瀬戸
春日井
患者便:6
患者便:1
41
42
43
18.11
18.11
18.12
知多
春日井
春日井
患者便:4
患者便:2
患者便:1
44
45
46
18.12
18.12
18.12
豊川
一宮(稲沢)
知多
患者便:2
患者便:7
患者便:1
47
18.12
春日井
患者便:1
48
18.12
一宮
患者便:2
49
18.12
西尾
調理従事者便:15
50
18.12
西尾
患者便:10
調理従事者便:16
食中毒原因菌
ノロウイルス
51
18.12
患者便:3
52
18.12
衣浦東部
(安城)
衣浦東部
(加茂)
患者便:10
調理従事者便:8
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
53
19.1
津島
54
19.1
衣浦東部
患者便:5
調理従事者便:2
患者便:6
調理従事者便:13
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
55
19.1
江南
患者便:3
56
57
58
59
19.1
19.1
19.1
19.1
江南
春日井
師勝
一宮
60
19.2
春日井
調理従事者便:8
調理従事者便:26
患者便:5
患者便:4
調理従事者便:4
患者便:35
調理従事者便:18
食中毒原因菌
ノロウイルス
ノロウイルス
ノロウイルス
ノロウイルス
ノロウイルス
61
62
63
19.2
19.2
19.2
津島
瀬戸
津島
患者便:1
患者便:2
患者便:18
調理従事者便:13
ノロウイルス
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
64
19.3
瀬戸
患者便:11
65
66
19.3
19.3
一宮
津島
患者便:5
患者便:1
食中毒原因菌
ノロウイルス
ノロウイルス
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス不検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス検出
患者 6 名(6/6)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス検出
患者 1 名(1/4)からノロウイルス検出
患者 2 名(2/2)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス不検出
患者 2 名(2/2)からノロウイルス検出
患者 7 名(7/7)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
ノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
患者 2 名(2/2)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
調理従事者 7 名(7/15)からノロウイルス
検出
食中毒原因菌不検出
患者 4 名(4/10)及び 調理従事者 7 名
(7/16)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
患者 3 名(3/3)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
患者 3 名(3/10)及び調理従事者 2 名(2/8)
からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
患者 4 名(4/5)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
患者 5 名(5/6)及び調理従事者 4 名(4/13)
からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
患者 2 名(2/3)からノロウイルス検出
ノロウイルス不検出
ノロウイルス不検出
患者 4 名(4/5)からノロウイルス検出
患者 4 名(4/4)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
患者 12 名(12/35)及び調理従事者 1 名
(1/18)からノロウイルス検出
ノロウイルス不検出
ノロウイルス不検出
食中毒原因菌不検出
患者 5 名(5/18)及び 調理従事者 2 名
(2/13)からノロウイルス検出
食中毒原因菌不検出
患者 10 名(10/11)からノロウイルス検出
患者 4 名(4/5)からノロウイルス検出
ノロウイルス不検出
67
19.3
知多
患者便:3
68
69
19.3
19.3
春日井
一宮
70
19.3
師勝
患者便:1
患者便:7
調理従事者便:5
患者便:4
調理従事者便:3
食中毒原因菌
ノロウイルス
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
食中毒原因菌
ノロウイルス
患者 3 名(3/3)から Campylobacter jejuni
検出、ノロウイルス不検出
ノロウイルス不検出
患者 4 名(4/7)から Campylobacter jejuni
検出、ノロウイルス不検出
患者 2 名(2/4)から Campylobacter jejuni
検出、ノロウイルス不検出
1)ここで食中毒原因菌とは食品衛生法で規定される以下の 18 種類の菌を指す。
サルモネラ属菌、ぶどう球菌、腸炎ビブリオ、腸管出血性大腸菌、その他の病原大腸菌、ウエルシュ菌、セレウス
菌、エルシニア・エンテロコリチカ、カンピロバクター・ジェジュニ/コリ、ナグビブリオ、コレラ菌、赤痢菌、
チフス菌、パラチフスA菌、エロモナス・ヒドロフィラ、エロモナス・ソブリア、ビブリオ・フルビアリス
8.食品衛生指導事業
(1) 検査実施保健所で検出された食中毒の原因と推定される細菌の菌型決定及びエンテロトキシンの検査
検査実施保健所で本年度中に検出された食中毒の原因菌として推定された菌について、当所でその菌型及び病原因子
の検索を行なった。
ア 食中毒由来ウエルシュ菌のエンテロトキシン検査
本年度は、食中毒 2 事例のうち 1 事例からは原因と疑われた食品から分離された4株、他 1 事例からは患者2名から
分離された 10 株の計ウエルシュ菌 14 株についてエンテロトキシン検査を実施した。
結果は 14 株全てがエンテロトキシン陰性株であった。また同時に実施した Hobbs の血清型別検査では患者1名由来の
5 株は 13 型、他 9 株は型別不能であった。
イ 食中毒由来サルモネラの血清型
本年度は、食中毒 2 事例及び有症苦情 1 事例から検出されたサルモネラ 8 株について血清型の検査を実施した。
知多保健所管内で発生した食中毒患者 5 名及び原因食品から分離された 6 株を含め、14 株全てが Salmonella
Enteritidis であった。
ウ 食中毒由来カンピロバクター菌の血清型
本年度は食中毒1事例の患者6名及び原因と疑われた食品3件から分離された9株について、Lior 及び Penner の血
清型検査を実施した。その結果、Penner の血清型では9株全てが F 型であったが、Lior の血清型では患者 1 名及び食
品 1 件から分離された 2 株は Lior9 型、他7株は全て異なる血清型であった。また、Lior 型別が 9 型と一致した 2 株
についても同時に実施したパルスフィールドゲル電気泳動では異なる泳動パターンを示し、疫学的関連性を支持する検
査結果は得られなかった。
(2) 食品等の微生物検査
本年度は LL 牛乳 4 件、清涼飲料水 60 件、及び生食用かき 15 件の計 79 件について食品細菌に関する規格検査を実施
したが、全ての検体が規格基準に適合していた。生食用かきについては規格検査以外に病原大腸菌及びノロウイルスの
検出検査も実施した結果、12 月に収去された 1 件よりノロウイルス(GI 型)が検出された以外は、全て陰性であった。
また、県内で販売されている輸入ナチュラルチーズ 15 件を厚生省生活衛生局乳肉衛生課長通知(平成 5 年 8 月 2 日付、
衛乳第 169 号)の検査法に従ってリステリア菌の検査を実施したところ、全ての検体が陰性であった。
9. 細菌及び真菌類調査(室内汚染実態調査)
当所では、居住室内環境汚染対策の資料を得るために室内塵中の微生物汚染調査を昭和 59 年度以降実施している。近
年、グラム陰性菌の産生するエンドトキシン(以下、Et)と呼吸器障害との関連性が注目されていることから、平成
12 年度からは室内塵中の Et 量の調査を実施している。本年度は一般住宅における室内塵中の Et 量を実施した。
調査は、一宮、春日井、半田、衣浦東部及び豊川保健所管内の一般住民から家族の喘息などのアレルギー疾患様症状
について保健所が相談を受け、本調査の協力が得られた一般住宅 11 軒の居間床 11 件、寝室床 4 件、和室床 4 件、子供
部屋床 1 件、及び寝具 7 件、ソファー3 件の計 30 件を対象とした。検体は、約1m2を目安にして対象の表面からダス
トサンプラーにより採取した細塵を用いた。Et 量は、リムルステスト(比色法)を用いて Et 濃度(EU/mg)を測定し、
総細塵重量及び採取面積から1m2当たりの Et 量(EU /m2)を算出した。その結果は次のとおりであった。
全検体 30 件において、Et 量は 0∼240 EU/m2(算術平均 39 EU/m2)の範囲に分布していた。また、採取対象別の Et
、寝具(50 EU/m2)
、寝室床(38 EU/m2)
、居間床(26 EU /m2)
、ソファ
量(算術平均)は、子供部屋床(240 EU /m2)
、であった。うち、100EU /m2以上の比較的高い Et 量を示した検体は、子供部
ー(11 EU /m2)及び和室床(2 EU/m2)
、寝室床1件(170 EU/m2)及び寝具 2 件(160EU/m2 1 件、130 EU/m2 1 件)の計 4 件であっ
屋床 1 件(240 EU /m2)
た。
10. 感染症流行予測事業
(1) 感染源調査
ア ポリオウイルス
知多市在住の 1 歳から 5 歳までの健康小児 84 名を対象にポリオウイルスの検出を試みた。
これら小児のポリオ生ワクチン(oral polio vaccine: OPV)接種状況は、資料−微生−表 6 に示すとおり 79 名が 1 回
以上接種、3 名が未接種、2 名は接種歴不明であった。糞便採取は 10 月 24,25 日にかけて行なわれた。
ウイルス分離検査は HeLa 及び RD-18S 細胞を併用して行った。
結果は資料−微生−表 6 に示すようにポリオウイルス(PV)は全く検出されなかった。エコーウイルス 25 型(E-25)が 1
名から(1.2%)分離された。
資料−微生−表 6 ポリオ感染源調査結果
年齢
被験者数
1
分離ウイルス
OPV 接種歴
Polio
E-25
有
無
不明
16
0
1
15
1
0
2
3
0
0
3
0
0
3
29
0
0
27
1
1
4
18
0
0
18
0
0
5
18
0
0
16
1
1
合計
84
0
1
79
3
2
このポリオウイルス感染源調査が開始された昭和 38 年以降、同ウイルスの野生株は一度も分離されていない。しか
し、国際空港を有する本県は、今後もインド、パキスタン、アフリカなどポリオ野生株常在地を含めた世界各国との交
流機会は増大が期待されるため、本監視事業の重要性はさらに高まるであろう。また、ワクチン未接種者に対する接種
をはじめ予防接種の重要性を引き続き広報する必要性を感じる。
E-25 は、18 年度感染症発生動向調査事業において7月から 11 月の間に感染性胃腸炎、手足口病、不明熱性疾患の小
児患者 11 名から分離されており、当時県内に侵淫していたことが示唆された。
(2) 感受性調査
ア インフルエンザ
本調査は県民のインフルエンザウイルスに対する抗体保有状況を把握し、防疫対策に資する目的で毎年行われている。
検体には本県に在住する年齢 7 か月以上 70 歳未満の健康人からインフルエンザ流行前の平成 18 年 7 月から 9 月に採取
された 225 名の血清を使用した。事前に全ての被検者から血清使用について承諾を得た(麻疹、風疹についても同様に
承諾を得た)。抗体測定に使用したインフルエンザウイルス株は A/ニューカレドニア/20/99(A ソ連型)、A/広島
/52/2005(A 香港型)、B/マレーシア/2506/2004(B 型ビクトリア系統)、B/上海/361/2002(B 型山形系統)の 4 株で、赤血
球凝集抑制(hemagglutination inhibition: HI)反応を用いて抗体価 10 倍から定量した。なお集計は感染既往を示すと
考えられる 10 倍と感染防御能の指標とされる 40 倍に分けて行った。被検者の年齢階層別検査結果を資料−微生−表 7
に示した。
A ソ連型の抗体測定に使用した A/ニューカレドニア/20/99 は、平成 12 年度以降 7 シーズン連続ワクチン株に選択さ
れた株である。同株に対する抗体保有率は、感染既往を示す 10 倍以上が 72.0%、発症防御レベルの 40 倍以上は 21.8%
であった。年齢層別では、小・中・高校生にあたる 5∼19 歳では 10 倍以上が 85.7-96.0%と高い抗体保有率であった。
しかし 40 倍以上は高校生にあたる 15∼19 歳は 60.7%と比較的高い保有率を示したが、5∼14 歳では 24.0-32.0%と低
い値であった。一方、0∼4 歳の幼児では 10 倍以上が 28.0%、40 倍以上が 4.0%と低く、また 20 歳以上においても、40
倍以上の抗体保有率は 25.0%以下であり、感染防御レベルの抗体保有者は少ないと考えられた。
A 香港型の抗体測定に使用した A/広島/52/2005 は平成 17 年度のワクチン株 A/ニューヨーク/55/2004 の変異株で、
平成 18 年度に初めてワクチン株に使用された。全体では、10 倍以上の抗体保有率は 59.1%、40 倍以上は 9.3 %で、ニ
ューヨーク株を用いた昨年度の調査(10 倍以上 60.4%、40 倍以上 24.4%)より 40 倍以上の抗体保有率が低かった。年
齢層別にみると,5∼19 歳において 10 倍の抗体保有率が 68.0-75.0%と比較的高かった。しかし、40 倍以上の抗体保有
率は全ての年齢層で 20.0%以下と低く、感染防御レベルの抗体を持つ人は少ないと考えられた。
B 型の抗体測定に使用した 2 株のうち B/マレーシア/2506/2004 はビクトリア系統に属し、平成 18 年度に初めてワク
チン株に使用された。この株に対する抗体保有率は、全体では 10 倍以上が 50.7%、40 倍以上は 4.9%であった。この株
に対する 40 倍以上の抗体保有率は全体的に低く、すべての年齢層で 14.3%以下であった。
もう 1 株の B/上海/361/2002 は山形系統に属し、平成 16,17 年度の 2 シーズン連続ワクチン株であった。この株に対
する抗体保有率は全体では 10 倍以上が 76.9%、40 倍以上 31.1%と調査株中では最も高い値を示した。年齢層別では 40
倍以上は 15-19 歳(高校生)が 78.6%と最も高く、他の年齢層は 42.9-11.5%であった。
資料−微生−表 7 年齢階層別インフルエンザ HI 抗体保有率(%)
抗原
A/NewCaledonia
A/Hiroshima
B/Malaysia
B/Shanghai
/20/99
/52/2005
/2506/2004
/361/2002
年齢階層
検体数
10 倍≦ 40 倍≦
10 倍≦
40 倍≦ 10 倍≦
40 倍≦
10 倍≦ 40 倍≦
7 か月∼4 歳
25
28.0
4.0
28.0
4.0
28.0
0
32.0
12.0
5∼9 歳
25
96.0
24.0
72.0
20.0
48.0
4.0
76.0
24.0
10∼14
25
88.0
32.0
68.0
12.0
48.0
8.0
92.0
20.0
15∼19
28
85.7
60.7
75.0
7.1
46.4
3.6
100.0
78.6
20∼29
28
89.3
25.0
71.4
7.1
71.4
7.1
89.3
42.9
30∼39
28
64.3
21.4
50.0
7.1
75.0
14.3
96.4
35.7
40∼49
36
72.2
5.6
61.1
5.6
52.8
2.8
80.6
25.0
50∼59
26
57.7
7.7
42.3
15.4
34.6
0
50.0
11.5
60∼
4
25.0
0
75.0
0
25
0
25.0
0
計
225
72.0
21.8
59.1
9.3
50.7
4.9
76.9
31.1
イ 麻疹ウイルスの抗体保有状況
麻疹ウイルスに対する抗体保有状況を把握し、流行予防及び麻疹根絶対策の基礎資料とするものである。
検体には、本県に在住する 7 ヶ月∼70 歳までの計 225 名より平成 18 年 7 月から 9 月に採取された血清を使用した。
抗体価の測定にはゼラチン粒子凝集(particle agglutination: PA)法を用いた。
結果を資料−微生−表 8 に示した。麻疹抗体保有率を年齢階層別にみると、ワクチン未接種者の多い 2 歳未満の年齢
層では 60.0%であったが、他の年齢層は全て 80%以上であり、全体では 90.6%であった。しかし、10 ∼14 歳で 16%、15
∼19 歳で 4%、25 ∼29 歳の年齢層にも 8%の抗体陰性者が見られた。成人麻疹の発生予防には、抗体陰性者への麻疹風
疹混合(MR)あるいは麻疹単味ワクチン接種も考慮すべきであろう。
資料−微生−表 8 年齢階層別麻疹ウイルス PA 抗体保有状況
年齢
検体数
7 ヶ月∼1 歳
2∼3
4∼9
10∼14
15∼19
20∼24
25∼29
30∼39
40∼
計
構成比率(%)
25
25
25
25
25
25
25
25
25
225
<16
10
2
1
4
1
0
2
0
1
21
9.3
16
2
0
1
0
0
0
0
1
1
5
2.2
PA 抗体価
64
128
3
6
4
10
5
7
1
2
4
8
9
8
3
5
2
3
2
3
33
52
14.6
23.1
32
1
0
6
2
2
1
0
4
4
20
8.8
256
3
5
3
4
5
4
7
5
4
40
17.7
512≦
0
4
2
12
5
3
8
10
10
54
24
陽性者数
15
23
24
21
24
25
23
25
24
204
陽性率
(%)
60
92
96
84
96
100
92
100
96
90.7
ウ 風疹ウイルスの抗体保有状況
本調査は県民の風疹ウイルスに対する抗体保有状況を把握し、防疫対策の資料とすると共に、ワクチンの効果を知る
目的で実施している。
検体には採血時に本人あるいは保護者より抗体測定の同意を得られた 1 歳から 60 歳の県民計 360
名(男性 176 名、女性 184 名)より平成 18 年 7 月から 9 月に採取された血清を使用した。風疹ウイルスに対する抗体
価は感染症流行予測術式に準拠したガチョウ血液を用いる赤血球凝集抑制(HI)試験により測定した。
結果を資料−微生−表 9 に示した。抗体陽性率は全体で 86.9%(男性 83.0%、女性 90.8%)であった。陽性率が最も高
かった年齢階層は、20∼24 歳の 100%で、次いで 35∼39 歳の 91.1%(男性 85.0%、女性 100%)の順であった。一方、
10∼14 歳は男女とも陽性率が最低を示し、73.3%(男性 70.6%、女性 76.9%)であった。
男女別では、10 歳以上男性の陽性率が女性と比べて低かった。先天性風疹症候群発生を防ぐ妊婦への感染波及抑制
には、特に妊娠する可能性のある女性の夫・子及びその他の同居家族へのワクチン接種が望まれる。
平成 18 年 4 月の予防接種法改正において新たに導入された麻疹風疹混合(MR)ワクチン(接種対象年齢第 1 期:1
歳∼2 歳未満 第 2 期:小学校入学前の 1 年間)の効果については、今後抗体保有率の推移を見守る必要がある。
資料−微生−表 9 年齢階層・性別風疹 HI 抗体保有状況
年齢階層
1∼3
4∼9
10∼14
15∼19
20∼24
25∼29
30∼34
35∼39
40∼60
検体数
(性別)
21 (男)
21(女)
22 (男)
21(女)
17 (男)
13(女)
14 (男)
24(女)
22 (男)
26(女)
20 (男)
25(女)
20(男)
20(女)
20(男)
14 (女)
20(男)
20(女)
<8
5
3
1
4
5
3
3
2
0
0
5
2
4
1
3
0
4
2
8
0
1
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
1
0
0
16
1
5
1
5
4
4
1
3
0
2
0
0
1
1
1
0
0
4
32
1
6
8
6
7
2
1
2
0
4
0
1
0
3
1
2
6
2
HI 抗体価
64 128
4
6
1
3
8
3
2
3
1
0
1
2
5
2
9
5
3
10
2
10
0
4
5
8
1
5
5
5
4
2
4
6
6
1
6
1
256
2
1
1
0
0
1
1
2
6
4
2
8
3
3
4
1
0
4
512
2
1
0
0
0
0
1
1
3
3
6
1
6
0
4
0
2
1
1024
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
3
0
0
0
1
0
1
0
抗体保有率
(%)
76.2
85.7
95.5
81
70.6
76.9
78.6
91.7
100
100
75
92
80
95
85
100
80
90
11. 新興・再興感染症対策事業
(1) 輸入感染症対策
海外旅行者が国外で感染し国内に持ち込む可能性の高い病原細菌・ウイルス等の実態把握を目的として、昭和 58 年
から継続して名古屋検疫所及び中部国際空港検疫所支所と共同でこの調査を行っている。平成 17 年度はインフルエン
ザについて調査したが、本年度は、インフルエンザに加えて世界的に流行している腸炎ビブリオの新型クローンについ
ても調査した。調査対象は、平成 18 年 4 月から平成 19 年 3 月の間に中部国際空港へ来航した国際線の乗客のうち、入
国時に検疫所へ呼吸器症状や下痢を申告した者である。細菌検査は検疫所で分離された腸炎ビブリオ菌株を検体とし、
ウイルス検査は採取に同意した者のうがい液あるいは上気道ぬぐい液を検体とした。
ア 細菌検査
腸炎ビブリオの新型クローンを Group specific PCR 法(GS-PCR)を用いて調査した。検体には 38 名由来の腸炎ビブ
リオ 38 株を供試した。その結果、腸炎ビブリオ全 38 株中 24 株(63%)が GS-PCR 陽性であった。渡航先別にみた GS-PCR
の結果は、タイ 12 株中 9 株(75%)
、ベトナム 12 株中 8 株(67%)
、フィリピン 6 株中 3 株(50%)であり、その他に
渡航先が複数の国等にまたがった 8 名の下痢申告者由来の 8 株中 4 株(50%)が GS-PCR 陽性であった。GS-PCR 陽性の
24 株の血清型は、O3:K6 が 19 株、O4:K68 が 3 株、O1:KUT(型別不能)2 株の 3 種類に限られていた(資料−微生−表
10)
。
資料−微生−表 10 輸入感染症検査結果(腸炎ビブリオ)
Group
整理
O 及び K
整理
渡航先等
Specific
番号
血清型
番号
PCR
渡航先等
O 及び K
血清型
Group
Specific
PCR
1
タイ、インド
O5:K17
(-)
20
タイ
O1:KUT
(-)
2
フィリピン
O4:K13
(-)
21
フィリピン
O1:KUT
(-)
3
ベトナム
OUT:KUT
(-)
22
フィリピン
O4:K68
(+)
4
台湾、タイ、香港
O1:KUT
(-)
23
タイ
O1:KUT
(+)
5
タイ
O4:K8
(-)
24
タイ
O4:K55
(-)
O1:K56
(-)
25
ベトナム
O3:K6
(+)
6
マレーシア、
カンボジア
7
タイ
O3:K6
(+)
26
ベトナム
O3:K6
(+)
8
タイ
O3:K6
(+)
27
タイ
O3:K6
(+)
9
タイ
O3:K6
(+)
28
タイ
O3:K6
(+)
10
フィリピン
O3:K6
(+)
29
タイ、ラオス
O3:K6
(+)
11
フィリピン
OUT:K36
(-)
31(30)
タイ
O3:K6
(+)
12
ベトナム
OUT:K41
(-)
32(31)
フィリピン
O4:K68
(+)
13
ベトナム
O4:K63
(-)
33(32)
ベトナム
O3:K6
(+)
14
タイ
O3:K6
(+)
34(33)
ベトナム
O3:K59
(-)
15
ベトナム、カンボジア
O4:K55
(-)
35(34)
ベトナム
O3:K6
(+)
16
ベトナム
O3:K6
(+)
36(35)
ペルー、ボリビア
O3:K6
(+)
17
ベトナム
O3:K6
(+)
37(36)
ベトナム
O1:KUT
(+)
18
ベトナム
O4:K68
(+)
38(37)
O3:K6
(+)
19
タイ
O3:K6
(+)
39(38)
O3:K6
(+)
マレーシア、
シンガポール
マレーシア、
シンガポール
イ ウイルス検査
平成 18 年度の被験者数は渡航先のハワイから帰国者 1 名、検体は咽頭ぬぐい液 1 件であった。検体を MDCK、HeLa、
RD-18S 及び Vero 細胞に接種してウイルス検出を試みた結果、A 香港型インフルエンザウイルス(AH3)が分離された。
(2) 希少感染性微生物対策
本事業では、県内医療機関等で原因不明の感染症及び集団発生が疑われた場合に、希少感染症の病原体検索に関する
検査を実施した。細菌関連では、患者から分離された赤痢菌等の PFGE 解析はじめ 8 件を実施した。
ウイルス及びリケッチア関連では、平成 18 年度は集団発生 12 事例及び散発症例 27 例の検査を実施した。ウイルス
分離同定検査がインフルエンザ様疾患集団発生 5 事例(22 件)、呼吸器系ウイルス感染症集団発生 1 事例(9 件)、感染性
胃腸炎の集団発生 6 事例(24 件)、インフルエンザ様疾患の散発例 3 件、急性脳炎・急性脳症(9 件)、劇症肝炎、劇症肝
炎による脳症、E 型肝炎、無菌性髄膜炎各 1 の合計 28 事例(資料−微生−表 11)、血清検査はデング熱疑い 6 例、急性
脳炎・急性脳症 3 例(同時に病原体検出実施例)であった(資料−微生−表 12)。ウイルス分離にはインフルエンザ疑い
検体は MDCK 細胞、その他の感染症疑い検体は HeLa、RD-18S 及び Vero 細胞を使用した。ウイルス分離とともに推測さ
れるウイルス遺伝子の PCR 法等による検出を試みた。
インフルエンザ集団発生については、平成 18 年 11 月瀬戸、12 月豊川、平成 19 年 1 月 15、23 日、2 月 5 日に新城、
知多、一宮各保健所よりうがい液合計 22 検体(22 名)が搬入され、1 検体から A 香港型インフルエンザウイルス、7 検
体から B 型インフルエンザウイルスが分離された。インフルエンザ散発 3 事例からは A 香港型インフルエンザウイルス
(2 検体)あるいは B 型インフルエンザウイルス(1 検体)が分離された。
感染性胃腸炎の集団発生 6 事例糞便合計 24 検体についての、リアルタイム RT-PCR 法によるノロウイルス(NV)検出結
果は、18 年 11 月の 4 事例は各々2 名(2/3)、1 名(1/1)、5 名(5/9)、2 名(2/2)、12 月の 1 事例 1 名(1/3)の計 5 事例よ
り NV GII 型が検出された。19 年 1 月の 1 事例は NV GI 及び GII とも陰性、ロタウイルス、サポウイルス、アデノウイ
ルス、アイチウイルス、パレコウイルスその他のエンテロウイルス遺伝子検出、及びウイルス分離培養検査のいずれも
陰性であった。
呼吸器系ウイルス感染症の集団発生 1 事例の咽頭ぬぐい液 9 検体のうち 3 検体から RT-PCR 法でヒトメタニューモウ
イルスが検出された(うち 1 検体からは HeLa 細胞と Vero 細胞で同ウイルスが分離された)。
急性脳炎・急性脳症の患者 9 名からの糞便(直腸ぬぐい液) 、咽頭ぬぐい液、髄液、尿、血清等の各検体のウイルス分
離検査結果はいずれも陰性であった。エンテロウイルス及びパレコウイルス遺伝子の RT-PCR 法による検索により、1
名の糞便及び尿検体からエコー30 型ウイルス(E-30)遺伝子が検出された。
劇症肝炎、劇症肝炎による脳症、E 型肝炎検体については、ウイルス分離培養及び E 型肝炎ウイルスに対する RT-PCR
法は陰性であった。
無菌性髄膜炎検体からのウイルス分離培養及びエンテロウイルスに対する RT-PCR 法は陰性であった。
デング熱疑い患者 6 名(血清 7 検体)についてリアルタイム RT-PCR 法でデング熱ウイルス遺伝子の検査を実施し、さら
に IgM 及び IgG 抗体検査を国立感染症研究所に依頼した。その結果、リアルタイム RT-PCR 法で 7 検体中 2 名(2 検体)
が陽性であった。1 例はベトナムより帰国者(2 型)、1 例はインドネシアより帰国者(1 型)であった。また RT-PCR 法に
てデング熱ウイルス陰性 5 検体中1例のペア血清(12 月 22 日及び 1 月 9 日採取)の結果はデング熱ウイルス IgM 陰性、
IgG 抗体陽性であり感染既往が示唆された。
急性脳炎・急性脳症患者 3 名の血清について、平成 18 年夏に流行したエンテロウイルス(コクサッキーウイルス A9
型 CV-A9、エコーウイルス 18 型 E-18、同 25 型 E-25、エンテロウイルス 71 型 EV-71)に対する中和抗体価を測定したと
ころ表に示す結果が得られ全員いずれかのウイルスに既感染であったことが判明した。しかしペア血清が得られなかっ
たため原因ウイルス診断には至らなかった。
資料−微生−表 11 原因不明感染症患者からの病原体検出
保健所
臨床診断名
患者数
検体数
検出数
検出病原体
劇症肝炎
1
3
0
陰性
呼吸器系ウイルス感染症
9
9
3
18. 6.28 名古屋市内(N 病院)
劇症肝炎による脳症
1
4
0
陰性
18. 7.25 名古屋市内(S 病院)
急性脳症
1
4
0
陰性
18. 7.25 名古屋市内(N 病院)
急性脳炎
1
4
0
陰性
無菌性髄膜炎
1
1
0
陰性
4
0
急性脳症
1
1
0
1
0
採取年月日
(医療機関等)
18. 4.14 名古屋市内(N 病院)
18. 5.17
18. 9.27
新城(T 病院)
瀬戸(K 病院)
18. 8.18
8.21 名古屋市内(S 病院)
8.22
18.11.14
18.11.17
衣浦東部
(老人福祉施設)
津島(医院)
18.11.21 名古屋市内(M 病院)
18.11.21
11.22
18.11.28
春日井(乳児院)
半田(知的障害者施
設)
ヒトメタニューモウイルス
(HMPV)
陰性
感染性胃腸炎
3
3
2
ノロウイルス(NV GII)
感染性胃腸炎
1
1
1
ノロウイルス(NV GII)
インフルエンザ
1
1
1
4
4
0
陰性
5
5
5
ノロウイルス(NV GII)
感染性胃腸炎
2
2
2
ノロウイルス(NV GII)
感染性胃腸炎
インフルエンザ A 香港型(H3)
18.11.30
瀬戸(小学校)
インフルエンザ
3
3
2
インフルエンザ B 型
18.12.14
豊川(小学校)
インフルエンザ
5
5
2
インフルエンザ B 型
18.12.14
衣浦東部(医院)
感染性胃腸炎
3
3
1
ノロウイルス(NV GII)
18. 3.22 名古屋市内(S 病院)
急性脳炎
1
1
0
陰性
18. 3.24 名古屋市内(S 病院)
急性脳症
1
1
0
陰性
18. 6.13 名古屋市内(S 病院)
急性脳症
1
1
0
陰性
18. 7.21 名古屋市内(S 病院)
急性脳症
1
1
0
陰性
19. 1.12
知多(飲食施設)
感染性胃腸炎
6
6
0
陰性
19. 1.12
瀬戸(S 病院)
インフルエンザ
1
1
1
インフルエンザ A 香港型(H3)
19. 1.18 名古屋市内(S 病院)
急性脳症
1
4
1
19. 1.19
豊川(H 病院)
E 型肝炎
1
1
0
陰性
19. 1.15
新城(小学校)
インフルエンザ
4
4
1
インフルエンザ A 香港型(H3)
19. 1.23
知多(小学校)
インフルエンザ
5
5
1
インフルエンザ B 型
19. 2. 5
一宮(小学校)
インフルエンザ
5
5
2
インフルエンザ B 型
急性脳症
1
1
0
陰性
インフルエンザ
1
1
1
インフルエンザ B 型
19. 3. 7 名古屋市内(N 病院)
19. 3.23
豊川(G 病院)
エコー30 型
(E-30, 遺伝子検出のみ)
資料−微生−表 12 血清検査(病原体検出及び血清学)
採取年月日
保健所(医療機関等)
臨床診断
検体数
検査項目
検査結果
18. 4. 1
4. 3
豊田市(K 病院)
デング熱
血清1
例(2 件)
遺伝子検出
陰性
陰性
18. 6.19
豊川(T 病院)
デング熱
血清 1 件
遺伝子検出
デングウイルス 1 型
18. 7.25
名古屋市内(S 病院)
急性脳症
血清 1 件
遺伝子検出・エンテ
ロウイルス抗体価*
CV-A9:64 倍、E-18:8 倍、E-25:8
倍未満、EV-71:8 倍未満
18. 7.25
名古屋市内(N 病院)
急性脳炎
血清 1 件
遺伝子検出・エンテ
ロウイルス抗体*
CV-A9:32 倍、E-18:8 倍未満、
E-25:16 倍、EV-71:8 倍
18. 7.26
豊田市(T 病院)
デング熱
血清 1 件
遺伝子検出
デングウイルス 2 型
18. 8.18
名古屋市内(S 病院)
急性脳症
血清 1 件
18.10.13
18.12.22
19. 3. 1
豊橋市(T 病院)
豊田市(T 病院)
名古屋市内(S 病院)
デング熱
デング熱
デング熱
遺伝子検出・エンテ
ロウイルス抗体*
血清 1 件
遺伝子検出
血清 1 件
遺伝子検出
血清 1 件
遺伝子検出
CV-A9:8 倍未満, E-18:8 倍未
満,E-25:8 倍未満、EV-71:32 倍
陰性
陰性
陰性
*コクサッキーウイルス A9 型(CV-A9), エコーウイルス 18 型(E-18) ,エコーウイルス 25 型(E-25), エンテロウイル
ス 71 型(EV-71)
(3) 血清疫学調査
ア ポリオウイルスの抗体保有状況
本調査は県民のポリオウイルスに対する抗体保有状況を把握し、防疫体制の資料とするとともに、ワクチン効果の把
握を目的としている。検体には 2 歳から 35 歳の県内在住者より平成 18 年 4 月から 9 月に採血された 190 件の血清を用
い、ポリオウイルス 1(PV-1)、2(PV-2)、3(PV-3)型(いずれも Sabin 株)に対する中和抗体価(neutralizing antibody
titer: NT)をマイクロプレート法で測定し、抗体価 4 倍以上を陽性と判定した。
結果を資料−微生−表 13 に示す。2∼19 歳の抗体保有率は PV-1 に対しては 95∼100%、PV-2 も 100%と高かった。
一方、PV-3 は 75∼89%と各年齢層に抗体陰性者がみられた。昨年に比較すると保有率は高く、ワクチン接種の必要性
と重要性に関する広報に効果があったと考えられた。
20 歳以上の抗体保有率は、
PV-1 は 60∼100%、
PV-2 は 90∼100%、
PV-3 は 60∼71%と各年齢層に抗体陰性者がみられ、
特に1,2 型に比べ 3 型に対する抗体保有率の低い傾向がみられた。
昭和 40 年以降国内でのポリオ野生株感染発生の報告はないが乳幼児のワクチン接種後家族内感染例は発生しているこ
とや、ポリオウイルス流行地に出かける前には追加ワクチン接種が勧められること等情報提供が必要と考えられる。ま
た対象者 190 名のなかに問診で海外渡航歴及びワクチン接種歴なしと申告した 1 名(30 歳)が PV-2 に対する抗体を保有
していたが、ワクチン接種者に由来する 2 次感染と推測された。
資料−微生−表 13 年齢階層別ポリオウイルス中和(NT)抗体保有状況
年齢階層
2∼3
4∼5
6∼7
8∼9
10∼14
15∼19
20∼24
25∼29
30∼
全体
検体数
4
11
26
18
19
41
54
7
10
190
Polio1 (PV-1)
100
100
100
100
100
95
100
86
60
96
抗体保有率(%)
Polio2 (PV-2)
100
100
100
100
100
100
100
100
90
99
Polio3 (PV-3)
75
82
81
89
84
81
69
71
60
75
12. 結核・感染症発生動向調査事業
(注)県の事業名は結核・感染症発生動向調査事業となっているが、当衛生研究所では結核の病原体検査は実施して
いない。当事業の前身は全国に先駆けて 1966 年に開始され、1976 年より県独自に感染症サーベイランスを継続してい
る。1981 年からは厚生省(当時)により全国ネット化された感染症サーベイランス(1998 年からは感染症発生動向調
査)事業の一環として、独自の衛生研究所をもつ名古屋市をのぞく全県の病原体検索を担当している。このため本項で
は、平成 18 年度愛知県感染症発生動向調査事業に加え豊田市、岡崎市及び豊橋市から依頼された検査結果を併せ記載
する。
検査情報
(1) 検査定点
平成18 年度の検体採取には名古屋市及び中核市を除く県内12 の保健所管轄地域の全てを網羅する形で病原体定点に
指定された 22 医療機関中 21 機関の協力が得られた。なお中核市病原体定点の検体についても豊田市(3 医療機関)
、
岡崎市(2 医療機関)
、及び豊橋市(2 医療機関)からの依頼検査を担当した。
(2) 対象疾患と検査材料
主として県の感染症発生動向調査事業で指定された感染性胃腸炎(乳児嘔吐下痢症を含む)
、手足口病、ヘルパンギ
ーナ、咽頭結膜熱、流行性角結膜炎、流行性出血性結膜炎、無菌性髄膜炎、インフルエンザの 8 疾患を対象として検査
した。また、健康危機管理の観点から病原ウイルスの究明が重要と考えられる急性脳炎・脳症、及び下気道炎、上気道
炎、不明熱性疾患、不明発疹症などについても従来どおり検査した。
平成 18 年度に当所においてウイルス分離検出目的の感染症発生動向調査病原体検索用検体を受付けた患者数は、疾
患別に感染性胃腸炎 479 名(昨年度 327 名以下同)
、インフルエンザ 172 名(347 名)、上気道炎 142 名(125 名)、手足
口病 138 名(57 名)、その他の疾患 135 名(103 名)、ヘルパンギーナ 95 名(84 名)、流行性角結膜炎 82 名(54 名)、
無菌性髄膜炎 70 名(39 名)、下気道炎 61 名(49 名)、不明熱性疾患 54 名(25 名)
、不明発疹症 50 名(49 名)
、咽頭結
膜熱 28 名(9 名)、急性脳炎・脳症 15 名(35 名)の合計 1,521 名(1,303 名)であった。保健所別の患者数を資料−微
生−表 14 に示した。
検体の種類別では糞便 791 件、咽頭ぬぐい液 675 件、髄液 105 件、眼ぬぐい液 93 件、その他(皮膚病巣、尿、吐物
等)63 件の合計 1,727 件であった。これらは、病原ウイルスの分離あるいは検出目的で定点医療機関の判断により採
取され、管轄保健所により回収及び当所に搬入された検体である。検体の輸送及び保存は、ウイルス感染価を保持する
ため凍結状態で行われた。
(3) 検査方法
ア ウイルス分離
各検体からのウイルス分離には複数の培養細胞を使用した。まず全ての検体を Vero、HeLa、RD-18S 細胞の 3 種に接
種した。さらに全ての咽頭ぬぐい液検体についてトリプシン加 MDCK 細胞によるインフルエンザウイルスの分離を試み
た。分離ウイルスは、エンテロ、パレコ、ムンプス、アデノウイルスは中和法により、インフルエンザウイルスは赤血
球凝集抑制法、単純ヘルペスウイルスは免疫蛍光抗体法により同定型別した。
イ ウイルス遺伝子検出
RT-PCR 若しくは PCR 法により以下のウイルス遺伝子検出を試みた。ヘルパンギーナ、無菌性髄膜炎、脳炎・脳症患
者検体についてはエンテロウイルス、胃腸炎患者に由来する糞便及び吐物にはロタウイルス、ノロウイルス(NV)、アデ
ノウイルス、結膜ぬぐい液にはアデノウイルス遺伝子検出を実施した。臨床迅速診断法にて RS ウイルス陽性患者の咽
頭ぬぐい液検体については同ウイルス遺伝子の確認を行った。上気道炎患者の咽頭ぬぐい液検体についてはヒトメタニ
ューモウイルス(HMPV)遺伝子の検出を行った。
(4) 検査結果の概要
検体採取月別及び疾患別ウイルス検査結果を各々資料−微生−表 15、資料−微生−表 16 に示した。18 年度感染症発
生動向調査において患者 24 名(感染性胃腸炎 22 名、ヘルパンギーナ、下気道炎各 1 名)から 30 株のポリオウイルス
が検出された。構造タンパク領域をコードする遺伝子配列調査により、30 株全てがワクチン株と 99%以上の相同性を
示すワクチン由来株と判明した。24 名中 22 名には検体採取 1 ヶ月以内のワクチン接種歴が確認された。
以下に、対象疾患別にウイルスの検出率及び同定されたウイルスの概略を記載する。なお、本年度は流行性出血性結膜
炎の流行及び検体採取はなかった。
○感染性胃腸炎(乳児嘔吐下痢症を含む)
平成 18 年度に感染性胃腸炎患者 479 名由来の検体数は 492 件であった。患者 183 名(38.2%)から 200 件のウイル
スが検出された。ワクチン由来ポリオウイルス 1,2,3 型(PV-1, PV-2, PV-3)が 22 名から合計 28 件分離されている。ポ
リオウイルスを除く 172 件の内訳はノロウイルス 64 件(37.2%=64/172)
(遺伝子群 GI 3 件, GII 61 件)
、A 群ロタウ
イルス 49 件(28.5%)
(遺伝子型 G3 が 15 件、G1 が 14 件、G9 が 11 件、G8 が 1 件、型別不能 8 件)
、アデノウイルス
34 件(19.8%)
(血清型 3 型及び 41 型が各 7 件、5 型が 6 件、1 型が 5 件、2 型及び 6 型が各 4 件、31 型が 1 件)
、エ
ンテロウイルス 20 件(11.6%)(エコーウイルス 18 型が 9 件、エコーウイルス 25 型が 5 件、コクサッキーウイルス B4
型が 3 件、エンテロウイルス 71 型、コクサッキーウイルス A9 型及びエコーウイルス 7 型が各 1 件)
、ヒトパレコウイ
ルスが 5 件(2.9%)(血清型 3 型が 3 件、1 型及び 4 型が各 1 件)であった。患者からのウイルス検出率(38.2%)は前
年度の検出率 45.9%(150/327)よりは低下した。最も多くの患者から検出されたノロウイルスは、10 月、11 月に全
体の 93.8%(60/64、全て GII 型)が検出された。2 番目に多かった A 群ロタウイルスは前年度 2 月∼5 月及び平成 19
年 1∼3 月に検出された。アデノウイルスは 4 月∼12 月に、エンテロウイルスは 6 月∼翌 1 月に、ヒトパレコウイルス
は 7、8 月に検出されている。複数のウイルスが検出された患者は 14 名あり、ポリオウイルスとノロウイルス GII 型の
重複検出が 6 名、ポリオウイルスとロタウイルス G3 型あるいはエコーウイルス 7 型との重複検出が各 1 名、複数の血
清型のポリオウイルス検出者が 3 名、ロタウイルス G3 型とアデノウイルス 2 型の重複検出が 2 名、ロタウイルス GI 型
とアデノウイルス 5 型、及びロタウイルス G1 型と G3 型の重複検出が各1名であった。
○手足口病
18 年度の患者数は 138 名と 17 年度(57 名)の 2.4 倍を記録し、患者情報定点からの患者報告数増加を反映していた。
138 名中90 名
(65.2%)
から91 件のウイルスが検出された。
その内訳は、
エンテロウイルス71 型が58 件
(63.7%=58/91)
、
コクサッキーウイルス A16 型が 22 件(24.2%)
、ヒトパレコウイルス 3 型及びアデノウイルス 3 型が各 3 件(3.3%)
、
コクサッキーウイルス B3 型が 2 件(2.2%)
、コクサッキーウイルス A9 型、エコーウイルス 25 型、及びアデノウイル
ス 2 型が各 1 件(1.1%)であった。1名からは 2 回の有熱来院時に各々エンテロウイルス 71 型とコクサッキーウイル
ス B3 型が検出された。ウイルス検出率(65.2%)は前年度の検出率 68.4% (39/57)とほぼ同等であった。エンテロウイ
ルス 71 型は全て 4∼7 月に分離されており流行の主因と考えられた。一方コクサッキーウイルス A16 型 22 件中 18 件は
流行のピークを過ぎた 7∼12 月に分離されている。
○ヘルパンギーナ
平成 18 年度にヘルパンギーナとの診断名で検体が寄せられた患者数は 95 名、うち 64 名(67.4%)から 69 件のウイ
ルスが検出された。その内訳はコクサッキーウイルス A4 型が 41 件(59.4%=41/69)
、A5 型が 10 件(14.5%)
、A16 型
が 2 件(2.9%)
、A2 型が 1 件(1.4%)で、他にヒトパレコウイルス 3 型が 2 件(2.9%)
、その他のエンテロウイルス
が 5 件(7.2%)
、アデノウイルスが 7 件(10.1%)分離されている。ウイルス検出率(67.4%)は前年度(59.5%=50/84)
よりやや向上した。複数のウイルスが検出された患者が 5 名あり、その内訳はコクサッキーウイルス A4 型とアデノウ
イルス 2 型の重複が 2 名、コクサッキーウイルス A4 型とエコーウイルス 18 型あるいはアデノウイルス 3 型との重複が
各 1 名、コクサッキーウイルス A16 型とヒトパレコウイルス 3 型の重複が 1 名であった。コクサッキーウイルス A4 型
は、本県において 17 年度まで一年おきに流行しており、18 年度は抗体保有者が多かったために流行が起こらなかった
と考えられる。一方、秋以降にも検出されているコクサッキーウイルス A5 型は過去の検出数が少なく 19 年度以降流行
が懸念される。
○咽頭結膜熱
18 年度は咽頭結膜熱(プール熱)が 3 年ぶりに流行し、検体が寄せられた患者数は 28 名と 17 年度(9 名)の 311%
と増加し、
例年並みとなった。
うち 21 名
(75.0%)
からウイルスが検出された。
内訳はアデノウイルス3 型が 17 件
(81.0%
=17/21)
、同 2 型が 3 件(14.3%)
、同 4 型が 1 件(4.8%)であった。アデノウイルス 3 型は 5 月から 10 月にかけて検
出された。
○流行性角結膜炎
平成 18 年度は前年度(54 名)の 152%にあたる 82 名から検体が寄せられた。ウイルスは 34 名(41.5%)から検出
された。内訳はアデノウイルス 3 型が 28 件(82.4%=28/34)
、37 型が 6 件(17.6%)であった。検出率(41.5%)は
前年度(51.9%)をやや下回った。アデノウイルス 3 型は咽頭結膜熱の主因ともなっており 18 年 3 月から引き続き 8
月まで検出された。アデノウイルス 37 型は 4 月から 8 月に検出され、前年度に続いて5年連続の検出となった。一方
16,17 年度の 2 年間流行の主因であったアデノウイルス 8 型は検出されなかった。
○無菌性髄膜炎
無菌性髄膜炎との診断名で 70 名の患者に由来する 89 検体が寄せられ、そのうち 23 名(23/70=32.9%)からウイルス
が検出された。患者数は前年度(39 名)の 179%で例年並に戻った。ウイルス検出率は前年度(17.9%)より高かった。
その内訳はエコーウイルス 18 型が 8 件(34.8%=8/23)
、エンテロウイルス 71 型が 5 件(21.7%)
、ヒトパレコウイル
ス 3 型及びムンプスウイルスが各 2 件(8.7%)
、コクサッキーウイルス A16 型、A9 型、B2 型、B5 型、ヒトメタニュー
モウイルス及びアデノウイルス 2 型が各 1 件(4.3%)であった。18 年度夏に無菌性髄膜炎の主因ウイルスとなったエ
コーウイルス 18 型は平成 15 年にも小流行していたため流行に至らなかったと考えられる。エンテロウイルス 71 型は
手足口病の主因として流行が確認されており、同ウイルス感染に伴う無菌性髄膜炎も多く発生したと推測される。2 名
から分離されたヒトパレコウイルス 3 型は脳症患者由来検体より当所が世界で最初に分離したウイルスで、本ウイルス
と中枢神経症状の関連が注目される。無菌性髄膜炎患者からのヒトメタニューモウイルス検出報告は珍しいが、熱性け
いれんとの関連や脳炎患者からの検出報告もあり、下記の脳症患者からも検出されている。
○急性脳炎・脳症
平成 18 年度は疑い例を含む 15 名の患者から 35 件の検体が寄せられた。患者数は 17 年度(35 名)から減少した。
うち 5 名(33.3%)からウイルスが検出され、その内訳はヒトメタニューモウイルス 2 件、コクサッキーウイルス A2
型、A4 型、エコーウイルス 30 型が各 1 件であった。ウイルスが検出された 5 名の診断はいずれも脳症であった。ヒト
メタニューモウイルスは脳炎の原因ウイルスとする報告もある。今回の 2 例では咽頭ぬぐい液、うち 1 名は尿からも検
出されており、ウイルス血症が疑われた。3 例のエンテロウイルスは便あるいは咽頭拭い液から分離された。
〇インフルエンザ
平成 17 年 11 月に始まった 2005/06 シーズン後半にあたる平成 18 年 2∼7 月に発症した患者 25 名中 16 名(64%)か
らインフルエンザウイルスが検出された。その内訳は A ソ連型が 8 例(50%=8/16)
、B 型が 5 例(31.3%)
、A 香港型が
3 例(18.8%)であった。また 2006/07 シーズンとなる 11 月以降は、患者 147 名中 123 名(83.7%)からウイルスが
検出された。その内訳は B 型インフルエンザウイルスが 75 例(61.0%=75/123)
、同 A 香港型が 38 例(30.9%)
、A ソ
連型が 7 例(5.7%)
、
他にコクサッキーウイルス A16 型、
ヒトライノウイルス、
及びアデノウイルス 3 型が各 1 例(0.8%)
検出された。2006/07 シーズンは、患者報告数の立ち上がりが遅かったうえ流行の主流が珍しく B 型インフルエンザウ
イルスとなった。例年と比較して患者報告数が少なかった理由は A 香港型の流行が小規模に終わったためと考えられる。
来シーズン、A 香港型インフルエンザの流行規模は大きくなると予測される。
○下気道炎・肺炎
患者61 名中18 名
(30.0%)
から19 件のウイルスが検出された。
その内訳はアデノウイルス2 型が4 件
(21.1%=4/19)
、
ヒトメタニュ−モウイルスが 3 件(15.8%)
、ヒトパレコウイルス 3 型、RS ウイルス、及びアデノウイルス 2 型が各 2
件(10.5%)
、ポリオウイルス1型、A 香港型及び B 型インフルエンザウイルス、アデノウイルス 3 型、5 型、及び 6 型
が各 1 件(5.3%)あった。1 検体からヒトメタニューモウイルスとアデノウイルス 3 型が同時に検出された。
○上気道炎
患者 142 名中 58 名
(40.8%)
から 60 件のウイルスが検出された。
内訳はアデノウイルス 3 型が 15 件
(25.0%=15/60)
、
、RS ウ
同 2 型が 11 件(18.3%)
、ヒトメタニューモウイルスが 9 件(15.0%)
、アデノウイルス 1 型が 6 件(10.0%)
イルス及びアデノウイルス 5 型が各 4 件(6.7%)
、エコーウイルス 18 型が 3 件(5.0%)
、コクサッキーウイルス B2 型
が 2 件(3.3%)
、コクサッキーウイルス A4 型、エンテロウイルス 71 型、ヒトパレコウイルス 3 型、B 型インフルエン
ザウイルス、アデノウイルス 4 型及び単純ヘルペスウイルス 1 型が各 1 件(1.7%)であった。2 種以上のウイルスが
同時期に検出された患者は 2 名で、1 名はヒトメタニューモウイルスとアデノウイルス 2 型が同じ咽頭ぬぐい液から、
1 名は糞便からアデノウイルス 3 型、咽頭ぬぐい液から単純ヘルペスウイルス 1 型が検出された。アデノウイルス 2 型
は平成 18 年 6 月から翌 1 月に、アデノウイルス 3 型は 4∼9 月に、ヒトメタニューモウイルスは 5∼9 月に検出された。
○不明熱性疾患
患者 54 名中 24 名(44.4%)から 25 件のウイルスが検出された。その内訳はエコーウイルス 18 型及びヒトメタニュ
ーモウイルスが各 6 件(24.0%=6/25)
、
エコーウイルス 25 型が 5 件
(20%)
、
コクサッキーウイルス B5 型が 2 件
(8%)
、
コクサッキーウイルス A16 型、B4 型、エンテロウイルス 71 型、エコーウイルス 30 型、ヒトパレコウイルス 3 型、ア
デノウイルス 2 型が各 1 件(4%)であった。1 名からはコクサッキーウイルス B4 型(糞便)とヒトメタニューモウイ
ルス(咽頭ぬぐい液)が同時期に検出された。
○不明発疹症
患者 50 名中 16 名(32%)から 17 件のウイルスが検出された。その内訳はコクサッキーウイルス A9 型が 9 件(52.9%
=9/17)
、
エコーウイルス18 型が3 件
(17.6%)
、
エンテロウイルス71 型及びヒトパレコウイルス3 型が各2 件
(11.8%)
、
ヒトメタニューモウイルスが 1 件(5.9%)であった。1名からはコクサッキーウイルス A9 型(糞便)とエンテロウイ
ルス 71 型(咽頭拭い液)が同時期に検出された。コクサッキーウイルス A9 型は 4 月から 12 月まで分離された。
○その他の疾患
上記の診断名にあてはまらない患者 135 名の検体のうち 21 名分(15.6%)から 21 件のウイルスが検出された。その
内訳はエコーウイルス18型が6件
(28.8%=6/21)
、
エンテロウイルス71型、
アデノウイルス2型、
同3型が各3件
(14.3%)
、
コクサッキーウイルス A9 型、ヒトパレコウイルス 3 型、ムンプスウイルス、ヒトメタニューモウイルス、アデノウイ
ルス 5 型、31 型、単純ヘルペスウイルス 1 型が各 1 件(4.8%)であった。臨床診断は、エコーウイルス 18 型が分離
された 6 名(いずれも新生児)については、無呼吸発作あるいは哺乳低下であった。エンテロウイルス 71 型が分離さ
れた 3 名は、各々アフタ性口内炎、熱性けいれん、流行性筋痛症であった。アデノウイルス 2 型が分離された 3 名はク
ループ症候群、哺乳力低下、咽頭炎であった。アデノウイルス 3 型が分離された 3 名は結膜炎、心筋炎、麻疹であった。
なお麻疹ウイルス分離は陰性であった。コクサッキーウイルス A9 型はてんかん、ヒトパレコウイルス3型は肝機能障
害、ムンプスウイルス、ヒトメタニューモウイルス、及びアデノウイルス 31 型はけいれん、単純ヘルペスウイルス 1
型は口内炎と診断された患者から検出された。
(5) 平成 18 年度の特記事項
平成 11 年以来大きな流行を起していないエコーウイルス 30 型は、18 年度も 2 名から分離されたのみなので 19 年度
以降本ウイルスによる無菌性髄膜炎に注意が必要であろう。その他、コクサッキーウイルス A5 型によるヘルパンギー
ナと A 香港型インフルエンザの流行が危惧される。また、ノロウイルスによる胃腸炎には引き続き注意が必要であり、
全国に流行したウイルスの分子疫学的解析が待たれる。今年度よりヒトメタニューモウイルスの RT-PCR による検出を
開始したところ、無菌性髄膜炎、脳症、下気道炎、上気道炎、不明熱性疾患、不明発疹症、けいれん患者から 23 件の
ウイルスが検出された。検出時期は 4 月∼11 月で、5、6 月にピークがみられた。19 年度以降も季節性に留意して監視
を継続する予定である。
平成 18 年度 1 年間に感染症発生動向調査事業における病原体定点より検査検体が当所に搬入された患者の総数は
1,521 名と前年度の 1,303 名より 17%増加して当初目標の 1,400 名は達成された。過去最多を記録した平成 12 年度
(1,819 名)の 84%にあたるが、24 病原体定点医療機関中 23 機関から提供を得たことは特筆に値する。中核市に移行
した豊橋市、豊田市及び岡崎市から 99∼144 名分の検体提供を受けた一方で、依然として患者数が非常に少ない管内も
存在する。県内全域におけるウイルス流行状況を正確に把握するためには、年間約 1,500 名分の検査検体総数の維持と
ともに、県内全域から各地域人口比を反映した割合での検体採取が望ましい。さらに健康対策課等との連携をより強化
して検査対象疾患の更新等体制見直しの努力、関係医療機関や保健所との協力体制の維持拡充が不可欠である。
資料−微生−表 14 平成 18 年度保健所別検査患者数
5
3
3
2
6
4
4
7
1
171
12
15
2
津島
江南
春日井
24
2
2
5
2
3
1
5
68
38
92
25
29
24
44
521
0
瀬戸
7
知多
71
31
半田
2
3
56
48
西尾
5
2
豊川
1
4
1
新城
15
1
2
豊田市
53
6
8
岡崎市
46
2
豊橋市
33
4
4
3
479
138
95
28
合計
50
19
師勝
衣浦東部
合計
1
その他
インフルエンザ
4
不明発疹症
急性脳炎・脳症
1
不明熱性疾患
無菌性髄膜炎
2
上気道炎
咽頭結膜熱
18
下気道炎
ヘルパンギーナ
15
流行性角結膜炎
手足口病
一宮
感染性胃腸炎
保健所
1
12
1
7
6
1
41
74
4
9
1
11
1
2
1
1
1
4
2
2
1
13
155
1
26
2
173
8
102
6
18
1
10
2
23
6
5
3
7
10
4
2
4
70
15
172
1
1
18
8
3
82
2
23
1
10
2
2
3
3
43
11
4
22
144
10
2
8
8
99
5
15
10
5
44
133
61
142
54
50
135
1,521
資料−微生−表 15 平成 18 年度月別ウイルス検出状況
年
月
患者数
糞便
咽頭ぬぐい液
髄液
結膜ぬぐい液
その他
PV-1
PV-2
PV-3
CV-A2
CV-A4
CV-A5
CV-A16
EV-71
CV-A9
CV-B2
CV-B3
CV-B4
CV-B5
E-7
E-18
E-25
E-30
HRV
HPeV-1
HPeV-3
HPeV-4
Flu.AH1
Flu.AH3
Flu.B
RS
Mumps
HMPV
Rota A
Rota A-G1
Rota A-G3
Rota A-G8
Rota A-G9
NV-GI
NV-GII
Ad-1
Ad-2
Ad-3
Ad-4
Ad-5
Ad-6
Ad-31
Ad-37
Ad-41
HSV-1
分離合計
平成 18 年(2006)
12
月
3
1
月
2
月
1
23
1
3
18
2
1
1
1
3
月
平成 19 年(2007)
4
月
5
月
6
月
7
月
8
月
9
月
10
月
11
月
12
月
1
月
2
月
3
月
50
85
156
197
173
86
67
99
196
101
132
134
18
1,521
26
12
2
16
2
52
28
5
14
5
69
85
13
11
6
97
106
12
10
3
90
83
29
7
3
48
28
9
15
8
29
27
10
5
5
70
24
8
4
2
175
16
3
1
13
50
49
4
5
7
33
102
5
41
88
3
3
4
7
9
791
675
105
93
63
1
1
1
3
3
3
8
1
2
3
1
1
1
25
7
1
27
3
15
1
8
11
1
3
1
1
1
2
8
2
2
22
4
1
3
1
2
1
3
1
3
1
1
1
1
2
1
1
1
1
1
5
2
2
2
5
1
4
9
6
1
8
2
1
1
1
1
3
1
3
1
1
1
1
2
1
1
1
1
8
2
1
1
1
3
11
1
1
1
1
1
1
1
2
1
1
9
7
4
6
2
2
1
7
13
6
1
1
3
1
12
4
1
4
1
1
2
3
1
18
30
6
1
6
16
42
2
2
1
2
6
2
5
1
1
1
1
1
1
1
1
3
1
1
1
2
41
76
1
2
11
6
14
1
1
12
1
3
7
5
3
5
1
1
49
1
4
1
3
1
1
1
1
16
21
109
2
1
1
1
1
91
27
17
34
7
1
1
10
7
1
1
2
1
3
1
86
34
75
89
6
合計
9
6
15
2
43
10
27
71
14
4
2
6
3
1
36
11
2
1
1
17
1
15
42
82
6
3
23
8
14
15
1
11
3
61
14
30
78
2
12
5
2
6
7
2
724
Ad:アデノウイルス、CV-A:コクサッキーウイルス A、CV-B:コクサッキーウイルス B、E:エコーウイルス、EV:エンテロウイルス、Flu.B:
B 型インフルエンザウイルス、Flu.AH1:A ソ連型インフルエンザウイルス、Flu.AH3:A 香港型インフルエンザウイルス、HMPV:ヒトメタニュ
ーモウイルス、HPeV:ヒトパレコウイルス、HRV:ヒトライノウイルス、HSV-1:単純ヘルペスウイルス 1 型、Mumps:ムンプスウイルス、NV-GI:
ノロウイルス I 型、PV:ポリオウイルス、Rota A:A群ロタウイルス型別不能、Rota A-G1:A 群ロタウイルス 1 型、RS:RS ウイルス
資料−微生−表 16 平成 18 年度疾患別ウイルス検出状況
下気道炎
上気道炎
不明熱性疾患
不明発疹症
82
70
19
12
57
15
10
12
9
172
1
170
2
61
20
52
3
142
46
111
1
54
37
26
5
50
23
42
25
3
1
1
2
1
2
1
3
135
65
78
21
8
19
2
9
3
1
1,521
791
675
105
93
63
9
6
15
2
43
10
27
71
14
4
2
6
3
1
36
11
2
1
1
17
1
15
42
82
6
3
23
8
14
15
1
11
3
61
14
30
78
2
12
5
2
6
7
2
724
82
1
4
1
22
58
1
合 計
インフルエンザ
28
その他
急性脳炎
1
無菌性髄膜炎
30
7
6
15
95
53
50
流行性角結膜炎
138
70
84
5
咽頭結膜熱
手足口病
479
447
13
2
ヘルパンギーナ
感染性胃腸炎
患者数
糞便
咽頭ぬぐい液
髄液
結膜ぬぐい液
その他
PV-1
PV-2
PV-3
CV-A2
CV-A4
CV-A5
CV-A16
EV-71
CV-A9
CV-B2
CV-B3
CV-B4
CV-B5
E-7
E-18
E-25
E-30
HRV
HPeV-1
HPeV-3
HPeV-4
Flu.AH1
Flu.AH3
Flu.B
RS
Mumps
HMPV
Rota A
Rota A-G1
Rota A-G3
Rota A-G8
Rota A-G9
NV-GI
NV-GII
Ad-1
Ad-2
Ad-3
Ad-4
Ad-5
Ad-6
Ad-31
Ad-37
Ad-41
HSV-1
分離合計
1
41
10
2
1
1
1
5
1
1
1
1
1
1
1
1
1
2
2
3
2
1
2
1
1
9
5
1
8
3
6
5
1
3
6
2
1
1
2
1
1
1
2
1
4
3
9
6
1
1
1
2
4
1
6
11
15
1
4
1
1
1
1
3
1
3
2
2
15
41
80
2
1
8
14
15
1
11
3
61
5
4
7
1
3
6
4
1
1
2
3
3
17
1
2
1
28
1
1
1
1
1
3
3
1
6
7
200
91
69
21
34
23
5
139
19
1
60
25
17
1
21
13. エイズ対策事業
(1) HIV 抗体確認検査及び二次検査
愛知県におけるエイズ試験検査体制は、平成 18 年 8 月にイムノクロマト(IC)法を用いた抗体検出スクリーニング検
査による HIV 即日検査導入を機会に変更された。7 月以前は保健所試験検査課においてゼラチン粒子凝集反応(PA)法
によりスクリーニングされた検体に対して、当所においてウェスタンブロット(WB)法による確認検査を行ったが、8 月
以降は保健所試験検査課では IC 法を用いてスクリーニングし、当所は PA 法(HIV-1 及び HIV-2 に対応)による 2 次ス
クリーニング検査及び WB 法による確認検査を担当している。なお、PA 法陽性検体が HIV-1 特異的 WB 法に陰性を示し
た場合は、HIV-2 感染の可能性を追加確認する体制としている。
7 月以前に保健所試験検査で PA 法陽性を示した 2 例には当所で HIV-1 WB 法確認検査を行い、1 例が陽性であった。
HIV-1WB 法陰性を示した 1 検体は、HIV-2 特異的 PA 法にも陰性を示した。8 月以降衣浦東部、一宮、半田、豊川各保健
所試験検査課において IC 法陽性または判定保留とされ当所に送付された 12 件について、PA 法による二次検査を行っ
た。PA 法陽性または判定保留の 9 検体についてさらに WB 法による確認検査を行った結果、HIV-1 陽性 8 検体、陰性 1
検体であった。HIV-1WB 法陰性を示した 1 検体は、HIV-2 特異的 PA 法にも陰性を示した。
さらに豊田市、豊橋市及び岡崎市保健所において IC 法でスクリーニングされ、確認検査のため当所へ送付された合
計 21 件については検査の結果、7 例が陽性であった。また、健康対策課からの依頼により名古屋市内において開催さ
れた男性同性愛者を対象とした HIV 検査会で IC 法陽性血清 25 検体の確認検査は、20 検体が陽性を示した。
(2) 梅毒抗体確認検査
平成 18 年度は、一宮、瀬戸、半田、衣浦東部、豊橋市及び豊田市の各保健所から送付された合計 13 件のガラス板法
等で陽性あるいは判定保留となった検体について、梅毒抗体の確認検査(FTA-ABS 法と FTA-ABS-IgM 法)を実施した。
その結果、梅毒に罹患したことの指標となる FTA-ABS 法が 8 例で陽性と確認され、うち 4 例は、梅毒に最近感染したこ
との指標となる FTA-ABS-IgM 法も陽性と確認された。
(3)
HIV 抗体個人依頼検査
この検査は昭和 61 年以降、医療機関等でのスクリーニング検査で陽性を示した検体について、確認試験として実施
されている。平成 18 年度は確認検査 3 件の依頼があったが、結果は 1 例が陽性、2 例が陰性であった。
14. 麻しん全数把握事業
平成 19 年 2 月に愛知県医師会、名古屋市医師会、愛知県小児科医会、及び愛知県、政令 4 市により開始された当事
業において、微生物部は全数把握の科学的意義及び必要性に関する説明文書等の準備にあたった。事業開始後は愛知県
感染症情報センター(企画情報部)に専門的助言等を提供するとともに、医療機関等からの依頼に応じてウイルス分離・
検出あるいは PA 法による抗体価測定等、実験室診断を担当している。19 年 2,3 月に実験室診断依頼はなかった。
15. 依頼検査
(1) 中核市からの細菌パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)依頼検査
平成 18 年度は豊橋市保健所からカンピロバクター食中毒疑い患者 3 名由来 3 株の PFGE 依頼検査があった。PFGE を
実施したところ、3株の PFGE バンドパターンは全く一致した。
(2) 中核市からのウイルス検出等依頼検査
感染症発生動向調査病原体検索について、豊田市保健所から 100 件、岡崎市から 99 件、豊橋市保健所から 50 件のウ
イルス分離検出同定依頼があった。検査結果は県内の行政検査と一括して「12. 結核・感染症発生動向調査」に記載
した。
集団発生事例については豊田市保健所から 5 件、豊橋市保健所から 11 件のインフルエンザ様疾患集団発生事例検体
のウイルス分離同定検査依頼があった。検体を MDCK 細胞に接種してウイルス分離を行い、分離ウイルス株の型別には
国立感染症研究所から分与されたインフルエンザウイルス抗血清を用いて HI 試験を実施した。その結果、豊田市保健
所からの 2 件及び豊橋市保健所からの 1 件より、それぞれ B 型インフルエンザウイルスが分離された。
岡崎市保健所からは感染性胃腸炎の集団発生 2 事例(糞便と嘔吐物、各 1 検体)と食中毒疑いの 3 事例(糞便各事例 5
検体)の原因調査を目的にノロウイルスの検出検査の依頼があり、リアルタイム RT-PCR 法でノロウイルス遺伝子の検出
を行った。その結果、感染性胃腸炎の集団発生 2 事例からの糞便と吐物、また、食中毒疑いの 3 事例からの糞便 4 検体、
3 検体及び 2 検体から GII 型ノロウイルスが検出された。
豊橋市保健所からは GII 型ノロウイルス陽性糞便 4 検体の遺伝子解析の依頼があった。ノロウイルスの遺伝子配列を
決定し、系統樹解析を実施した結果、いずれも GII4 型に分類されるノロウイルスであった。
HIV 及び梅毒抗体確認検査結果については、県内の行政検査と一括して「13. エイズ対策事業」に記載した。
第4節
毒 性 部
Ⅰ 調査研究
【Ⅰ-A:調査研究終了報告】
1. 原虫(クリプトスポリジウム及びジアルジア)の汚染状況に関する研究(平成 16 年度∼18 年度)
【はじめに】クリプトスポリジウム(Cryptosporidium、以下 Cr)は消毒剤に強い抵抗性を持ち、1980 年代からアメリカ・
イギリスなどで、水系の集団発生の病原体として問題になった。1993 年にはウィスコンシン州ミルウォーキーにおいて、
史上最大規模の約 40 万人が下痢を発症し、米国 CDC によるとそのうち約 100 名が死亡したと報告されている。我が国で
も、1996 年埼玉県越生町において感染者約 9,000 人を数える大規模事件が発生している。Cr には、ウシやブタ、イヌな
どの哺乳動物の消化管上皮細胞の微絨毛内で増殖する(感染する)Cryptosporidium parvum や C. muris、鳥類に感染する
C. baileyi や C. meleagridis、爬虫類に感染する C. serpentis などが報告されており、このうち C. parvum(genotype 1
=C. hominis)はヒト(エイズ患者などの免疫不全者では C. parvum 以外にも感染する)に重篤な下痢を起こす公衆衛生上
重要な腸管寄生性原虫である。Cr のヒトへの感染源又は水道原水の汚染源として、様々な家畜やペット・野生動物などが
考えられており、その汚染動物由来の Cr の存在が危惧されている。そこで、東三河地区で飼育されていた家畜(ウシ)
における Cr の保有状況調査で検出された Cr の遺伝子型別を行った。
【材料および方法】①2003 年 6 月∼12 月に豊橋市食肉衛生検査所に搬入されたウシ 183 頭より採取された糞便のうち、
分離・精製した後、蛍光抗体試薬(AquaGlo G/C direct)を用いた染色により同定した 5 株と、②1997 年 5 月∼1998 年
11 月に採取された家畜(ウシ 2,300 頭)の糞便のうち、当所で Cr が分離され、冷蔵保存されていた 6 株を用いた。また、
陽性対象として市販の蛍光抗体用オーシスト(ウシから検出された Cryptosporidium parvum)2 株を用いた。分離・精製
したオーシストを用いて、凍結融解後フェノール・クロロフォルム処理・エタノール沈澱により DNA を抽出した。PCR 法
にはCrの18S ribosomal RNAの領域に設定したプライマーを用い、
約580bpの特異遺伝子を増幅したのち、
制限酵素
(HaeIII
及び TaqⅠ)を用いた、 Restriction Fragment Length Polymorphism(RFLP)法による型別分類を行った。また、シーク
エンサー(ABI310)による解析も実施した。
【結果および考察】PCR-RFLP 法による型別分類で、①2003 年に分離した 5 株すべてが、制限酵素 HaeIII では約 280bp と
約 150bp の 2 本に、TaqⅠでは約 315bp と約 265bp の 2 本に切断され、陽性対象である C. parvum のオーシスト(HaeIII
では約 305bp と約 280bp の 2 本に、TaqⅠでは約 265bp、約 175bp 及び約 140bp の 3 本に切断)とは異なるパターンを示し
た。また、遺伝子配列の解析から、これら 5 株はすべてヒトへの感染性がまれな C. muris と確認された。一方、②1997
年及び 1998 年に分離した 6 株については、制限酵素 HaeIII 及び TaqⅠを用いた PCR-RFLP 法にて、上記の C. muris 型が
C. parvum 型が 2 株に型別された。
今回の結果から、
少なくともウシ由来の C. parvum と C. muris については PCR-RFLP
4 株、
法で型別できると考えられた。
Cr はヒトに感染する型と、感染しないかごく稀に感染する型に分類されるが、水道原水等の Cr 検査における現行の公
定法(蛍光抗体法)ではオーシストの形態の確認のみで、ヒトへの感染性の有無に関する種については鑑別することはで
きない。今回、シークエンサーが設置されていない検査室でも実施できるよう、比較的安価な制限酵素 2 種を選択し、PCR
法と RFLP 法の組み合わせによる、より簡便で迅速な Cr の遺伝子型別を試みた。今後、PCR-RFLP 法を含む遺伝子型別など
の検査法の確立によって、水道原水等からの Cr 検出時には Cr の感染型、非感染型の鑑別が迅速に実施可能となり、その
科学的根拠が行政対応の一助になるものと考えられた。
【まとめ】ヒトの下痢症の原因となる Cr やジアルジア(Giardia、以下 Gi)の原虫による河川水や、その保有動物として考
えられている家畜やペットにおける汚染状況を調査するとともに、そこで分離される Cr や Gi の遺伝子型を比較して、河
川水と動物におけるCr 及びGi の関連を調査することを目的として本研究を行ってきた。
河川水の検査を行った木曾川
(採
水地:犬山市継鹿尾)
、矢作川(同:豊田市水源町)
、及び豊川(同:新城市豊島)の年間各 2 件、3 年間で合計 18 件から
は Cr 及び Gi のいずれも検出されなかった。
一方、蛍光抗体法での動物における汚染状況調査については、家畜 437 頭(ウシ 183、ブタ 251、ヤギ 3)のうち、Cr
が 12 頭(ウシ 12)から、Gi が 3 頭(ウシ 1、ブタ 2)から検出された。このうち Cr を検出した 12 頭中の 5 頭はシーク
エンサーを用いた遺伝子解析の結果からすべて C. muris と同定された。また、ペット 382 頭(イヌ 148、ネコ 234)のう
ち、Cr が 12 頭(イヌ 5、ネコ 7)から、Gi が 6 頭(イヌ 4、ネコ 2)から検出されたが、同一個体での重複感染はイヌ 1
頭であった。これらのペットにおいても Cr の遺伝子型別を試みたが、いずれからも検出されなかった。
今後の課題として、Gi の糞便からの遺伝子検出とその型別法が残された。また、ペットの検体からの遺伝子検索につい
て、より検出感度の良い PCR 法を開発する必要があり、DNA の抽出法をキットなどでより効率良く回収するなどの改善が
必要と考えられた。おわりに、海外における Cr の集団発生のみならず、国内においても親水施設(プール)での Cr の集団
発生事件(2004 年、長野県)が起こったことから、今後も水道原水としての河川水調査は継続し、詳細な分析が可能でさら
に簡易な検査法の開発も続ける必要があると思われる。
【Ⅰ-B:調査研究年次報告】
1. 生体内元素の相互バランスと健康に関する研究(平成 18 年度∼20 年度)
生体内には 60 種類以上の元素が存在し、それらは互いに相補的、あるいは拮抗的に作用しあって適正なバランスを保
ちつつ健康を維持しているものと考えられる。本研究では、生体内多元素の濃度バランスと健康との関連を明らかにする
ために、職業的曝露等のない成人を対象として血清、尿及び毛髪中に存在するマグネシウム、カルシウム、鉄、銅、亜鉛
等できるだけ多くの元素を、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて同時分析し、それらの各試料中における
常在値レベルを解明する。また、各試料における測定結果を解析し、本研究における健康の指標として最も適した生体試
料を選択することを目的とする。
平成18 年度は、
ICP-MS 法を用いた血清中20 元素(Mg,Ca,Fe,Cu,Zn,Li,B,Al,Mn,Co,Ni,Se,Rb,Sr,Mo,Cd,Sb, Ba,Hg,Pb)、
尿中 21 元素(血清 20 元素のうち Fe を除く 19 元素と As,Sn)の同時分析法を確立した。前処理法としては、血清では硝
酸及び過酸化水素水によるマイクロ波分解法が、尿では硝酸による酸分解法が最適であった。血清及び尿に標準品を添加
し、各試料の前処理法に従って行った試験(n=5)では、回収率が血清で 85.5∼99.5%、尿で 84.6∼101%であり、相対標
準偏差は血清で 6.5%以下、尿で 3.6%以下と良好な結果であった。また、確立した分析法に従って成人 36 名の血清及び
尿試料を分析した。その結果、血清中の各元素濃度平均値は、Mg,Ca,Fe,Cu では 1000μg/L 以上と高く、
Li,Mn,Co,Ni,Cd,Sb,Ba,Hg,Pb では1μg/L 未満と低い濃度であった。
尿中では、
Mg,Ca,Rb において1000μg/L 以上と高く、
Mn,Co,Cd,Sb では 1μg/L 未満と低い濃度であった。また、これらの結果は、臨床検査法提要に示された基準値及びこれま
での報告値と同程度の濃度レベルであった。
Ⅱ 誌上発表
【欧文原著】
1. Serum levels of volatile organic compounds in patients with sick building syndrome
Fumio Kondo, Yoshitomo Ikai, Tomomi Goto, Yuko Ito, Hisao Oka, Hiroyuki Nakazawa, Yasuhei Odajima, Michihiro
Kamijima, Eiji Shibata, Shinpei Torii, Yutaka Miyazaki
Bulletin of Environmental Contamination and Toxicology, 77, 331-337, 2006.
2. Two sensitive sick-building syndrome patients possibly responding to p-dichlorobenzene and 2-ethyl-1-hexanol:
case report
Fumio Kondo, Yoshitomo Ikai, Tomomi Goto, Yuko Ito, Hisao Oka, Hiroyuki Nakazawa, Yasuhei Odajima, Michihiro
Kamijima, Eiji Shibata, Shinpei Torii, Yutaka Miyazaki
Journal of Health Science, 53, 119-123, 2007.
【邦文原著】
1. 食用の天然および栽培キノコに含まれる発熱性物質について
奥村正直、都築秀明、富田伴一
食品衛生学雑誌、47(4);164-166、2006.
【研究報告書】
1. アサリにおける麻痺性貝毒定量化の検討
富田伴一、奥村正直、都築秀明、他
平成17年度貝毒安全対策事業報告書:1-7、2006.3
2. 愛知県における貝類毒化モニタリング
富田伴一、奥村正直、都築秀明、他
平成17年度赤潮・貝毒監視事業報告書:1-16、2006.3
3. ヒト生体試料中の化学物質の分析(フタル酸モノエステル類、重金属類、揮発性有機化合物)
近藤文雄(分担研究者)
、林 留美子、猪飼誉友、高取 聡、中澤裕之(研究協力者)
厚生労働科学研究費補助金(化学物質リスク研究事業)
「化学物質による子どもへの健康影響に関する研究」主任研究
者 牧野恒久、平成 17 年度総括・分担研究報告書;46-57、2006.4
4.空気質中のピレスロイド系殺虫剤の分析法の検討と放散試験試料及び再放出試料の分析に関する研究
近藤文雄(分担研究者)
厚生労働科学研究費補助金(化学物質リスク研究事業)
「化学物質、特に家庭内の化学物質の曝露評価手法の開発に関
する研究」主任研究者 徳永裕司、平成18年度総括研究報告書;25-36、2007.3
【その他】
1. パッシブサンプリング法を用いた揮発性有機化合物の測定
−シックハウス症候群患者の曝露量調査−
近藤文雄、山崎 貢、林 留美子、木村 隆、鳥居新平
愛知県衛生研究所報、57: 13-24, 2007.
Ⅲ 学会発表等
1. ウシから検出されたクリプトスポリジウムについて
2003 年 6 月∼12 月に豊橋市食肉衛生検査所に搬入されたウシ 183 頭より採取された糞便を用いた。糞便の性状は軟便
もしくは正常便であった。Cr の検出は約 1g の糞便をホルマリン・酢酸エチル法で粗精製後、ショ糖(比重 1.2)浮遊法に
より Cr オーシストを精製・分離した。分離したオーシストは蛍光抗体試薬(ベリタス AquaGlo G/C direct)を用いた染
色により同定した。さらに、分離したオーシストを用いて DNA の抽出は常法により処理し、Cr の 18S-rRNA の領域に設定
したプライマーで PCR 法を行ない、約 580bp の特異遺伝子を増幅した。また、増幅された遺伝子を精製後、シークエンサ
ー(ABI 310)による解析も行った。
ウシ 183 頭中 12 頭(6.6%)の糞便から Cr オーシストが検出された。このうち PCR 法により増幅できたのは 4 頭(33.3%)
で、遺伝子配列の解析からすべてヒトへの感染性がまれとされる Cryptosporidium muris であることが判明した。
都築秀明、奥村正直、他
平成 18 年度中部獣医師会連合会大会(日本獣医公衆衛生学会(中部)) 新潟市 2006.8.27.
2.キノコに含まれる発熱性物質について(第 2 報)
平成 16 年秋、スギヒラタケの喫食を原因とする急性脳症患者が東北地方を中心として発生したが、キノコと発熱性物
質の関連についての調査を行ない、その結果を第 86 回の本学会で発表した。今回は、天然及び栽培キノコの例数をさら
に追加した。材料は、平成 17 年 10 月に愛知県内で採取した天然(スギヒラタケはじめ 10 種)及び市販の栽培(はなび
らたけはじめ 3 種)のキノコ 13 種と、対照として市販の野菜(ピーマンはじめ 3 種)を用いた。各検体について、エン
ドトキシン試験及びウサギを用いた発熱性物質試験を行ない、含有される発熱性物質の検出を試みた。また、天然キノコ
を採取した付近の土壌(3 か所)のエンドトキシン試験もあわせて実施した。
エンドトキシン試験では、天然キノコのエンドトキシン量が 4.5×102∼4.5×104(平均 1.5×104)(ng/g)であったの
に対し、栽培キノコは 4.5×10∼4.5×102 (平均 3.2×102)(ng/g)と、平均値で比較すると天然キノコの約 1/50 であっ
た。なお、対照の野菜でも 4.5×10∼4.5×102 (平均 3.2×102)(ng/g)と、栽培キノコと同程度の結果となった。一方、
(ng/g)であった。発熱性物質試験では、天然キノコで
土壌のエンドトキシン量は 1.5×105∼1.5×106(平均 1.1×106)
の体温上昇が 0.3∼1.4 (平均 0.7) ℃であったのに対し、栽培キノコでは 0.1∼0.5(平均 0.3)℃であった。また、野菜で
は 0.0∼0.2(平均 0.1)℃と、栽培キノコよりやや低い温度上昇であった。天然キノコには栽培キノコや野菜に比べると、
発熱性物質が多く含まれていることが示唆された。また、土壌中からも発熱性物質が検出されたことから、発熱性物質の
由来は、キノコが発育した土壌に由来すると考えられた。
奥村正直、都築秀明、木村 隆
第 92 回日本食品衛生学会学術講演会 春日井市 2006.10.26
3. PCR−RFLP法による動物から検出されたクリプトスポリジウムの遺伝子型別
クリプトスポリジウム(Cr)の種の型別は、遺伝子配列の解析結果から系統樹を作成して同定することが多い。しかし、
この手法が経済性及び迅速性を考慮した場合、最良の方法とは限らないと思われる。今回、我々は Cr の 18S rRNA で設定
した Primer を用いた PCR 法(約 580bp の特異遺伝子を増幅)と、制限酵素 HaeIII 及び TaqⅠを用いた RFLP 法による Cr の
型別を行ない、より簡便な遺伝子診断法について検討した。
材料は、市販の蛍光抗体用オーシスト(ウシから検出された C. parvum)2 件と、ウシ 183 頭より採取した糞便(2003 年 6
月∼12 月)のうち、
蛍光抗体法でCr オーシストの大型種と確認され、
PCR で陽性となったオーシスト5 件(代表株の配列(系
統樹)解析から C. muris と考えられた)を用いた。前者の C. parvum について、HaeIII では 305bp と 285bp の 2 本に、Taq
Ⅰでは 260bp、180bp 及び 140bp の 3 本に切断された。一方、C. muris については、HaeIII では 300bp と 160bp の 2 本に、
TaqⅠでは 310bp と 260bp の 2 本に切断された。今回の結果から、少なくとも C. parvum(ウシ由来)と C. muris について
は PCR-RFLP で型別できると考えられた。
都築秀明、奥村正直、他
第 62 回日本寄生虫学会西日本支部大会 愛知郡長久手町 2006.11.10∼12.
4. GC/MS 法を用いたヒト尿中フタル酸エステル代謝物の測定
フタル酸エステル類は、内分泌かく乱作用やシックハウス症候群との関連が指摘されるなど、人への健康影響が懸念さ
れているが、その曝露評価は十分になされていない。フタル酸エステル類は、生体内で速やかに代謝を受けてフタル酸モ
ノエステル類となり、主に尿中に排泄される。今回、フタル酸エステル類の生体曝露を評価する研究の一環として、フタ
ル酸モノエステル類をバイオマーカーに用いて尿中濃度を測定し、その結果を基にフタル酸エステル類の推定一日摂取量
を算出した。対象者は、成人 36 名(年齢 24-59 歳、男性 23 名、女性 13 名)とし、昼間のスポット尿を採取した。測定
は GC/MS 法を用い、測定対象物質は、フタル酸モノエチル(MEP)
、フタル酸モノブチル(MBP)
、フタル酸モノエチルヘキ
シル(MEHP)
、フタル酸モノベンジル(MBzP)及びフタル酸モノイソノニル(MINP)の 5 種とした。MBP と MEP がすべての
検体から検出され、中央値はそれぞれ 60.0、10.7 ng/mL であった。一方、MINP はほとんどの検体で検出されなかった(検
出率は 6%)
。MBzP 及び MEHP の検出率はそれぞれ 75%、56%で、中央値はそれぞれ 10.9、5.75 ng/mL であった。性別の MBP
及び MEP 濃度を比較した結果、いずれも女性の方が有意(P<0.05)に高い値を示した。MINP を除く 4 種の尿中フタル酸モ
ノエステル濃度から算出したフタル酸エステルの推定一日摂取量は、0.27∼5.69μg/kg/day(中央値)であった。
近藤文雄、猪飼誉友、林留美子、木村隆、高取聡、中澤裕之、和泉俊一郎、牧野恒久
環境ホルモン学会第 9 回研究発表会 東京都 2006.11.11-12
5. ウシから検出されたクリプトスポリジウムについて
クリプトスポリジウム(Cr)のヒトへの感染源又は水道原水の汚染源として、様々な家畜やペット・野生動物などが考
えられており、その汚染動物由来の Cr の存在が危惧されている。今回我々は、東三河地区で飼育されていた家畜(ウシ)
における Cr の保有状況調査を行うとともに、検出された Cr の遺伝子型別も行った。
①2003 年 6 月∼12 月に豊橋市食肉衛生検査所に搬入されたウシ 183 頭より採取された糞便と、②1997 年 5 月∼1998 年
11 月に採取されたウシ 2,300 頭の糞便のうち、当所で Cr が分離され、冷蔵保存されていた 6 株を用いた。分離したオー
シストを用いて、凍結融解後フェノール・クロロフォルム処理・エタノール沈澱により DNA を抽出した。PCR 法には Cr
の 18S ribosomal RNA の領域に設定したプライマーを用い、約 580bp の特異遺伝子を増幅したのち、制限酵素(HaeIII
及び TaqⅠ)を用いた、 Restriction Fragment Length Polymorphism(RFLP)法による型別分類を行った。また、シー
クエンサー(ABI310)による解析も実施した。
①ウシ 183 頭中 12 頭(6.6%)の糞便から Cr オーシストが検出され、このうち 5 頭(41.7%)の検体から PCR 法により
増幅産物が得られた。これらはすべて制限酵素 HaeIII では約 280bp と約 150bp の 2 本に、TaqⅠでは約 315bp と約 265bp
(HaeIIIでは約305bpと約280bpの2本に、
TaqⅠでは約265bp、
の2本に切断され、
陽性対象である C. parvum のオーシスト
約 175bp 及び約 140bp の 3 本に切断)とは異なるパターンを示した。また、シークエンスによる遺伝子配列の解析から、
これら 5 頭の分離株はすべてヒトへの感染性がまれな C. muris と確認された。②制限酵素 HaeIII 及び TaqⅠを用いた
PCR-RFLP 法にて、上記の C. muris 型及び C. parvum 型にそれぞれ 3 株ずつ型別された。今回の結果から、少なくともウ
シ由来の C. parvum と C. muris については PCR-RFLP 法で型別できると考えられた。
都築秀明、奥村正直、他
平成18年度日本獣医師会学会年次大会 さいたま市 2007.2.23∼25.
6. 成人における血清及び尿中の多元素濃度バランス
生体内には 60 種類以上の元素が存在し、それらは互いにバランスを保って健康を維持していると考えられる。そこで、
誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を使用し、成人の血清及び尿中に存在するできるだけ多数の元素について同時
分析を実施した。また、各元素濃度の試料間における相関についても検討した。
対象者は、成人 36 名(24−59 歳、男 23、女 13)とし、昼間の血清及びスポット尿を採取した。測定元素は、血清中
20 元素 (Mg,Ca,Fe,Cu,Zn,Li,B,Al,Mn,Co,Ni,Se,Rb,Sr,Mo,Cd,Sb,Ba,Hg,Pb)、尿中 21 元素(血清 20 元素のうち Fe を除く
19 元素と As,Sn)とした。各試料は、硝酸及び過酸化水素水(いずれも Ultrapur、関東化学)により酸分解後、ICP-MS
(Agilent7500i、横河アナリティカルシステムズ)によって多元素分析を実施した。統計解析は、SPSS 11.5 for Windows
により行なった。
その結果、血清中の Mg,Ca,Fe,Cu,Zn は臨床検査法提要に示された基準値の濃度範囲内に、他の 15 元素はこれまでの
ICP-MS 法による報告値と同程度の濃度範囲にあったことから、得られた結果は成人における血清中元素濃度の一般値を示
すものと考えられた。また、尿中の各元素濃度もこれまでの同法による報告値と同程度であった。試料間の相関について
は、Li,B,Co,Sb,Ba において有意な正の相関(p<0.01)が認められた。今後、毛髪中の多元素濃度についても検討していく
予定である。
林 留美子、近藤文雄、木村 隆、宮
豊、中澤裕之、和泉俊一郎、牧野恒久
第 77 回日本衛生学会 大阪市 2006.3.26
7. 室内空気中の窒素酸化物及びオゾン濃度に関する全国調査
室内環境中の化学物質に起因すると考えられる健康被害の増加に伴って、建材及び家庭用品等から放散・放出される化
学物質や大気由来の化学物質、さらには両者の反応によって生じる二次生成物についても関心が高まりつつある。本研究
では、このような室内環境中での二次的な化学反応に関与すると考えられるオゾン(O3)及び窒素酸化物(NOx)について、パ
ッシブサンプラーによる実態調査を実施した。秋季、冬季、春季及び夏季の室内NO2濃度の中央値は 29、48、23、11 ppb、
室内NOx濃度の中央値は 90、164、43、11 ppbであった。秋季及び冬季の室内ではNOxの 70%程度がNOで占められており、
NO2濃度のみでは室内のNOx汚染の実態を十分に把握できない可能性がある。また、半数以上の家庭で、秋季及び冬季のNOx
のIO比が 2 を超えており、室内の発生源が大きな寄与をすることが明らかになった。一方、秋季、冬季、春季及び夏季の
室内O3濃度の中央値は< 0.8、< 0.8、1.6、3.4 ppb、対応する室外O3濃度は 5.5、7.1、14、9.7 ppbであった。O3は室内空
気中の化学物質と反応して速やかに減衰することが知られており、今後は二次反応生成物についても調査が必要と考えら
れた。
神野透人、香川(田中)聡子、徳永裕司、近藤文雄、林 留美子、他
日本薬学会第 127 年会 富山市 2007.3.28-30
8. 培養細胞を用いた迅速な麻痺性貝毒試験法
培養細胞を用いた麻痺性貝毒試験法について、我々はおよそ 8 時間で試験が可能な方法を報告(Toxicon, 46, 93-98
(2005) )しているが、より迅速に試験を実施するために試験法をさらに改良し、およそ 5 時間で検査を完了する方法を
確立した。今回は、本法と免疫クロマトグラフィー法(PSP Rapid Test, Jellett Rapid Testing Ltd.)と比較して、そ
の有用性を検討した。方法は、マウス神経芽細胞(Neuro2a)をマイクロプレートの各ウェル(5X104/well)に播種して
10%ウシ胎児血清添加RPMI1640 培地中で前培養し、培地を除いた各ウェルに試験液 5 μLとそれぞれ 15 μLの 10mM
veratridineと 1mM ouabainを血清無添加RPMI培地 65 μLに加えた後、4 時間培養した。各ウェルを洗浄し、新たなRPMI培
地 100 μLに細胞活性測定キット(WST-8, Dojindo)10 μLを添加して1時間反応させた後、各ウェルの吸光度を測定して
毒量を求めた。検体として、愛知県三河湾産のアサリ 25 件を公定法に従って抽出した試験液をろ過滅菌して用いた。そ
の結果、本法は既報の試験法の感度と同等であり、マウスを用いる公定法の約 10 倍程度の感度であった。また、免疫法
と比較したところ、ほぼ一致する結果が得られた。培養細胞を用いた試験法は、10 件程度の検体であれば試験液の抽出か
ら毒性有無の判定までを即日に処理可能である。従って、本法は麻痺性貝毒試験のスクリーニング法として有用と考える。
奥村正直・都築秀明・木村 隆
2007 年度日本水産学会春季大会 東京都 2007.3.30
Ⅳ 試験検査
1. 医薬品等の生物学的試験
当衛生研究所は実験動物(ウサギ、マウス等)
資料−毒性−表1 毒性試験検査件数の推移
<( )は行政検査件数を再掲>
を用いる生物学的毒性試験に対応できる施設
を有し、製薬会社や医療機器の製造者及び製造
年
販売業者等からの毒性試験の依頼検査に対応
試験種別
している。平成 13 年の日本薬局方第 14 改正に
発 熱 性 物 質 試 験
より、溶血性試験、皮膚反応試験、及び埋植試
エ ン ド ト キ シ ン 試 験
験が削除され、新たにエンドトキシン試験と細
合
計
16
72 (7)
1
73 (7)
17
50 (4)
2 (2)
52 (6)
度
18
36 (5)
1
37 (5)
胞毒性試験が追加された。
平成 16∼18 年度に依頼を受け実施した医薬品等の生物学的毒性試験を資料−毒性−表 1 に示した。平成 18 年度の内訳
は、日本薬局方に定める発熱性物質試験 36 件及びエンドトキシン試験 1 件の合計 37 件と、検査件数は前年度より 15 件
減少した。資料−毒性−表 1 に試験基準別検査件数を示したが、これらの毒性検査の結果はすべて陰性であった。
2. 医薬品等の生物学的試験(医薬品検定等事務事業)
愛知県では医薬品検定等事務事業の一環として医療機器一斉監視指導に基づく収去検査を実施しており、当所では健康
福祉部医薬安全課の依頼により、医療機器の承認規格のうち発熱性物質試験及びエンドトキシン試験を行っている。平成
18 年度に行った医療機器の発熱性物質試験は 5 件で、これら毒性検査の結果はすべて陰性であった。
3. 花粉飛散状況調査(花粉情報システム事業)
愛知県では花粉症原因植物の花粉飛散状況を、平成元年より県内 18 定点での観測により開始し、平成 10 年からは 10
定点、平成 15 年からは 6 定点、平成 18 年からは 5 定点(尾張部(一宮保健所、当所)
、西三河平野部(衣浦東部保健所)
、
東三河平野部(豊川保健所)
、及び三河山間部(新城保健所設楽支所)
)での観測体制とし、継続して県民及び医療機関に
花粉情報として提供している。尾張部のうち名古屋市の定点である当研究所では、本年度も屋上に設置したIS式ロータリ
ー型花粉捕集器を用いて、ワセリンを塗布したスライドグラス上に 24 時間(土・日・祝日は 48∼72 時間)花粉を捕集し、
その 1cm2中の花粉数を測定した。
<平成 19 年シーズン>
平成 19 年 1 月 5 日から 5 月 2 日までの間計測を行った。
名古屋市(当所)におけるスギ・ヒノキ科花粉の飛散開始日(飛散数が初めて 10 個/cm2を超えた日)は 2 月 10 日で、
前シーズン(2 月 24 日)より 14 日早かった。飛散の終了日(飛散数が最後に 10 個/cm2以下となった日)は 4 月 27 日で
前年(4 月 27 日)と同時期であった。また、飛散期間は 77 日間と前シーズン(63 日間)と比べ 14 日間長くなった。な
お、前シーズン 9 日間あった大量飛散日(飛散数が 100 個/cm2を超す日)は、本シーズンは 12 日間とやや増加した。また、
名古屋市定点における総飛散数も 4,430 個/cm2と、測定開始以来 6 番目に飛散数の少なかった前シーズン(3,751 個/cm2)
をやや上回った(資料−毒性−図1)
。
<なお、県全体におけるスギ・ヒノキ科花粉の飛散については、第 2 節企画情報部の欄(p28、4. 花粉の飛散状況調査)
を参照して下さい>
19,912
20,000
17,431
15,395
15,000
(個)
11,754
9,776
10,000
7,781
5,184
3,758 4,085
5,000
2,362
1,508
3,751
1,005
888
415
4,430
19
年
18
年
17
年
16
年
15
年
14
年
13
年
12
年
11
年
10
年
9年
8年
7年
6年
5年
平
成
4年
0
資料−毒性-図1 名古屋市(定点)のスギ・ヒノキ科花粉年別総飛散数(個/cm2)
4. 食品等の毒性検査 (食品衛生指導事業・魚介類毒性検査等)
食品としての魚介類の安全性を確保するため、健康福祉部生活衛生課の依頼を受けて市場流通品の毒性検査等を実施し
た。<なお、市場流通前の貝毒検査に関しては次の 5 に記載>
平成 18 年度は県内で市販されていたアサリ 15 件について、麻痺性貝毒の発生が考えられる春季(平成 18 年 4 月 2 回、
5 月 1 回、平成 19 年 3 月 1 回の計 4 回)に麻痺性貝毒検査を行なった。その結果いずれも、食品衛生法の規制値(4MU/g)
を超す貝毒※は検出されなかった。
※
麻痺性貝毒の 1MU(マウス・ユニット)とは、体重 20gのddY系雄マウスを 15 分間で殺す毒量と定義されている。
5. 貝類の毒性検査(漁場環境保全対策事業)
愛知県農林水産部では、三河湾や伊勢湾から出荷されるアサリ等貝類の食品としての安全性を確保するため、昭和 63
年 3 月に制定された愛知県貝類出荷指導要領に基づき監視を行なってきたが、同要領は平成 18 年 4 月に愛知県貝類安全
対策指導要領として改訂された。農林水産部では、規制値を上回る貝毒が検出された場合には、貝類の出荷を自主的に規
制するよう漁業関係者に対し指導している。当所では平成 18 年度にも同部・水産課からの依頼により、平成 18 年 4 月と
5 月及び平成 19 年 3 月に伊勢湾、三河湾で採取されたアサリの麻痺性貝毒検査を 30 件、平成 18 年 4 月と 5 月に下痢性貝
毒検査を 12 件実施した。その結果、麻痺性貝毒の出荷規制値(4MU/g)
、下痢性貝毒※の出荷規制値(0.05MU/g)を超える
貝毒は検出されなかった。
※
下痢性貝毒の 1MU(マウス・ユニット)とは、体重 20gのddY系雄マウスを 24 時間で殺す毒量と定義されている。
6. 食肉衛生検査事業
食品の安全性を確認するためのと畜検査は、肉眼的検査のみでなく、病理組織学的検査や細菌学的検査等を併用した科
学的裏付けのある検査が必要とされる。
当所ではと畜場からの依頼によりこのような検査を実施すると共に、昭和 56 年度より県・衛生部食品獣医務課(現、
健康福祉部生活衛生課)との共催で、と畜検査員の検査技術の向上を図るため必要に応じた研修を実施し、病理学知識の
普及・病理診断技術の向上を目指してきた。平成 18 年度は、当所での検査を要する検体の依頼はなかった。
また、愛知県食品衛生検査所に対して、電子顕微鏡を用いた病理検査等の技術支援と危機管理などの緊急検査時の応援
体制を整備している。
7. 河川水のクリプトスポリジウム等調査(水質不適項目追跡調査)
クリプトスポリジウムによる水道水源の汚染が全国的に問題となってきており、平成 8 年度に厚生省から「水道におけ
るクリプトスポリジウム暫定対策指針」
(H8.10.4 付け衛水第 248 号)が、平成 13 年度には厚生労働省から「水道水中に
おけるクリプトスポリジウムに関する対策の実施について」
(H13.11.13 付け健水第 100 号)
が示された。
本県においても、
水道水源として利用されているか水道水源に影響を及ぼすと考えられる主要な河川のうち、平成 11 年度は木曽川、長良
川、矢作川、及び豊川の 4 水系、平成 12 年度以降は上記 4 水系から長良川を除いた 3 水系の各1定点を選定し、毎年 2
回(原則として 8 月及び 1 月)の検査を実施している。
平成 18 年度も「愛知県下の水道事業者等におるクリプトスポリジウム対策暫定指針の一部改正について」
(13 生衛第
611 号)に従って検査を実施した。その結果、クリプトスポリジウムあるいはジアルジアのオーシスト(シスト)はいず
れも検出されなかった。
8. 尿中重金属蓄積状況調査(県内一般住民の尿中カドミウム蓄積量調査)
生体内重金属の常在値及び経時値を把握することを目的として、昭和 51 年度より継続して県内の一般健康人について
尿中重金属を測定している。本年度は前年度にひき続きカドミウムについて調査を実施した。対象者は県内 3 保健所管内
の市町村に 3 年以上在住している人の中から、性、年齢階層別(20 歳代から 60 歳代以上)に各 1 名、1 保健所当たり 10
名(男性 5 名、女性 5 名)を選定した。検体尿は原則として早朝のスポット尿とし、その 10mL をテフロン製遠心管にと
り、硝酸 2.5 mL(Ultrapur、関東化学)を加え、80℃の水浴中で尿中の有機物を加温酸分解後、誘導結合プラズマ質量分
析装置:ICP-MS(Agilent7500i、横河アナリティカルシステムズ)で測定した。
測定結果は資料−毒性−表 2、表 3 に示した。実測値の平均値±標準偏差(n=30)は 0.90±0.58μg/L と、平成 17 年
度の調査結果(0.97±0.67μg/L、n=30)と同程度の値であった。また、これまでの多くの研究報告から、腎臓への慢性
影響を考慮し、尿中カドミウム濃度はクレアチニン値で補正した後の値として 2.5μg/g クレアチニン以下にすべきとされてき
ているが、今回の調査対象者ではいずれもそれより低い値であった。
性別尿中カドミウム濃度平均値(表 2)は、実測値及び比重補正値では有意差を認めなかったが、クレアチニン補正値
では男性が女性に比べて有意に(p<0.05)低い値であった。また、年齢階層別尿中カドミウム濃度平均値(表 3)は、実
測値、両補正値いずれも 50 歳代までは加齢に従って増加する傾向が認められた。ヒトの臓器中カドミウム量は加齢とと
もに増加することが知られており、ここでみられた尿中カドミウムの加齢に伴った増加傾向は、その生体内蓄積を反映し
た結果ではないかと考えられた。しかし、年齢階層別の例数が各 6 名と少ないことから、さらに継続した調査を実施し、
データを蓄積していく必要があると考えられる。
資料−毒性−表2 性別尿中カドミウム検査結果
実測値(μg/L)
性別
例数
男
15
女
15
全体
30
クレアチニン補正値(μg/g クレアチニン)
平均値±標準偏差
(範囲)
平均値±標準偏差
(範囲)
0.82 ± 0.45
(0.31 ∼ 1.71)
0.98 ± 0.70
(0.34 ∼ 2.46)
0.55 ± 0.28
(0.19 ∼ 1.13) *
0.94 ± 0.58
(0.29 ∼ 2.44)
0.90 ± 0.58
(0.31 ∼ 2.46)
0.74 ± 0.49
(0.19 ∼ 2.44)
* p<0.05
比重補正値(μg/L)*1
平均値±標準偏差
(範囲)
0.73 ± 0.36
(0.26 ∼ 1.63)
0.96 ± 0.57
(0.35 ∼ 2.34)
0.84 ± 0.49
(0.26 ∼ 2.34)
*1 実測値/{(比重−1)×1000/20}
資料−毒性−表3 年齢階層別尿中カドミウム検査結果
実測値(μg/L)
年代
例数
20 歳代
6
30 歳代
6
40 歳代
6
50 歳代
6
60 歳代以上 6
平均値±標準偏差
(範囲)
0.62 ± 0.28
(0.35 ∼ 1.09)
0.84 ± 0.82
(0.34 ∼ 2.46)
0.91 ± 0.38
(0.40 ∼ 1.41)
1.18 ± 0.73
(0.35 ∼ 2.34)
0.95 ± 0.60
(0.31 ∼ 1.71)
クレアチニン補正値(μg/g クレアチニン)
比重補正値(μg/L)*1
平均値±標準偏差
(範囲)
平均値±標準偏差
(範囲)
0.33 ± 0.09
(0.19 ∼ 0.46)
0.54 ± 0.17
(0.25 ∼ 0.75)
0.63 ± 0.15
(0.44 ∼ 0.85)
1.17 ± 0.77
(0.34 ∼ 2.44)
1.04 ± 0.36
(0.33 ∼ 1.28)
0.48 ± 0.15
(0.30 ∼ 0.73)
0.74 ± 0.44
(0.26 ∼ 1.49)
0.81 ± 0.13
(0.70 ∼ 1.01)
1.17 ± 0.78
(0.37 ∼ 2.34)
1.01 ± 0.45
(0.33 ∼ 1.63)
*1 実測値/{(比重−1)×1000/20}
9. 室内汚染実態調査(一般住宅におけるダニアレルゲン量及び揮発性有機化合物等濃度調査)
一般住宅における室内環境汚染対策の基礎資料を得ることを目的として、ダニアレルゲン量並びに揮発性有機化合物、
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロルピリホス等濃度調査を実施した。
A. ダニアレルゲン量
フローリング、じゅうたん、畳、寝具類から採取した室内塵を試料として用い、アトピー性疾患の原因アレルゲンとし
て重要視されているヤケヒョウヒダニ由来のダニアレルゲン量(Der pⅠ)及びコナヒョウヒダニ由来のダニアレルゲン
量(Der fⅠ)を測定した。なお、測定には抗原量測定キット(INDOOR 社製、ELISA 法)を用いた。
測定結果は資料−毒性−表4に示した。臨床的に問題とされる全体としてのダニアレルゲン量(DerⅠ=Der pⅠ+ Der
fⅠ)の平均値±標準偏差(μg/g fine dust)は 66±191、中央値は 16(n=33)であった。また、採取場所によるアレ
ルゲンの量は、寝具類が 59±69 (検出範囲:0.6∼170)と、その他の場所と比較して高い傾向がみられ、最も低かったフ
ローリングと比較すると平均値で約 16 倍、中央値でも約 9 倍と高いものであった。
ダニの種別のアレルゲン量についてみると、Der pⅠは全 34 検体中 23 検体(67.6%)から、Der fⅠは 33 検体(97.1%)
からと、ほとんどの検体から検出された。検出された量としては Der pⅠが 13±19(中央値 3.5)、Der fⅠが 57±190(中
央値 9.6)であり、その中央値で比較しても Der fⅠが高い値であった。
資料−毒性−表4 一般住宅におけるダニアレルゲン量
項目
採取場所
フローリング
Der Ⅰ
検体数 検出数
7
平均値±標準偏差(最小値∼最大値)
(μg/g fine dust)
中央値
注1)
7
3.6 ± 3.2 (0.5∼8.4)
2.3
*1
32
じゅうたん
10
10
32 ± 34
畳
6
6
27 ± 18 (0.8∼47)
22
寝具類
11
10
59 ± 69 (0.6∼170)
20
計
34
33
66 ± 191 (0.5∼1100)
16
フローリング
7
2
4.1 ± 2.0 (2.7、5.5)
-
じゅうたん
10
9
12 ± 16 (0.2∼47)
7.7
畳
6
5
7.5 ± 11 (0.3∼27)
1.2
寝具類
11
7
21 ± 29 (0.2∼69)
7.4
計
34
23
13 ± 19 (0.4∼ 7.0)
3.5
フローリング
7
7
(Der pⅠ+Der fⅠ)
Der pⅠ
(1.5∼1100)
2.5 ± 2.6 (0.5∼8)
*1
1.6
じゅうたん
10
10
23 ± 28 (0.7∼1100)
21
畳
6
6
21 ± 15 (0.8∼40)
15
寝具類
11
10
43 ± 51 (0.6∼140)
15
計
34
33
57 ± 190 (0.5∼1100)
9.6
Der fⅠ
注1)
;平均値、標準偏差、最小値、最大値は検出された検体についての値。
Der Ⅰ は ヤケヒョウヒダニ由来のダニアレルゲン量(Der pⅠ)とコナヒョウヒダニ由来のダニアレルゲン
量(Der fⅠ)の合計値。
*1;1100 を除いた 9 検体における平均値±標準偏差
B. 揮発性有機化合物、ホルムアルデヒド、及びアセトアルデヒド
18 戸の家屋を対象として調査を実施した。揮発性有機化合物のサンプリングは、ポンプに接続した捕集管(スペルコ製
ORBO91L、ORBO101)を床または地面から高さ 1.2∼1.5 mの位置に取り付け、屋内(居間)及び屋外(軒下)の空気を流量
0.1 L/min で 24 時間採取することにより行った。ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドのサンプリングは、DNPH含浸
パッシブサンプラー(スペルコ製DSD-DNPH)を揮発性有機化合物用捕集管と同じ場所に 24 時間設置することにより行っ
た。揮発性有機化合物の分析にはGC-MS法を用い、40 物質(脂肪族炭化水素類:ヘキサン等 13 物質、芳香族炭化水素類:
トルエン、キシレン、スチレン等 9 物質、ハロゲン類:パラジクロロベンゼン等 9 物質、テルペン類:α-ピネン及びリ
モネン、エステル類:酢酸エチル及び酢酸ブチル、アルコール類:n-ブタノール、アルデヒド・ケトン類:メチルイソブ
チルケトン等 4 物質)について測定した。ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドの分析にはHPLC法を用いた。測定の結
果、検出頻度の高かった上位3物質は、ホルムアルデヒド:35/36(97%)
、トルエン:28/34(82%)
、アセトアルデヒド:
23/36(64%)で、それらの検出濃度範囲はホルムアルデヒドが 1.3∼200μg/m3、トルエンが 2.8∼100μg/m3、アセトアル
デヒドが 1.8∼53μg/m3であった。
国が定めた室内濃度指針値(*μg/m3)を超えたのは、パラジクロロベンゼン(*240)が 3 件、ホルムアルデヒド(*100)
及びアセトアルデヒド(*48)が各 1 件であった。総揮発性有機化合物濃度(揮発性有機化合物 40 物質の検出濃度の合計
値)の検出濃度範囲はND∼14000μg/m3で、このうち国が定めた暫定目標値(400μg/m3)を超えたのは 5 件であった。
C.クロルピリホス等
18 戸の家屋を対象として調査を実施した。サンプリングは、ポンプに接続した捕集フィルター(東京ダイレック製石英
繊維フィルターと住友スリーエム製エムポアディスクを重ねて使用)を床から高さ 1.2∼1.5 mの位置に取り付け、1階の
居室(居間等)の空気を流量 1 L/min で 24 時間採取することにより行った。分析にはGC-MS法を用い、クロルピリホス、
ダイアジノン及びフェノブカルブについて測定した。測定の結果、フェノブカルブが 2 件(検出割合:11%)
、クロルピ
リホスが 1 件(検出割合:6%)の住宅から検出され、ダイアジノンはすべて検出されなかった。検出濃度範囲はフェノブ
カルブが 0.020∼0.032μg/m3、クロルピリホスが 0.0079μg/m3で、いずれの物質も室内濃度指針値(クロルピリホス:1
、フェノブカルブ:33μg/m3、ダイアジノン:0.29μg/m3)を超過した住宅はな
μg/m3(ただし小児の場合は 0.1μg/m3)
かった。
D.フタル酸エステル類
8 戸の家屋を対象として調査を実施した。サンプリングは、ポンプに接続した捕集フィルター(ジーエルサイエンス製
AERO LE CARTRIDGE SDB400)を床から高さ 1.2∼1.5 mの位置に取り付け、1階の居室(居間等)の空気を流量 5 L/min で
24 時間採取することにより行った。分析にはGC-MS法を用い、フタル酸ジ-n-ブチル(DBP)
、フタル酸ジ-2-エチルヘキシ
ル(DEHP)
、フタル酸ジエチル(DEP)
、フタル酸ジ-n-プロピル(DPP)
、フタル酸ジペンチル(DPeP)
、フタル酸ベンジル
-n-ブチル(BBP)
、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHA)
、フタル酸ジ-n-ヘプチル(DHP)
、フタル酸ジシクロヘキシル
(DCHP)について測定した。その結果、検出頻度の高かった物質は、DBP:8/8(100%)
、DEP:7/8(88%)で、検出濃度範
囲はDBPが 0.075∼0.72μg/m3、DEPが 0.0019∼0.066μg/m3であった。また、DEHPが 2 件(25%)検出され、その検出濃度
範囲は 0.075∼0.10μg/m3であった。その他の 6 種のフタル酸エステル類はすべて検出されなかった。室内濃度指針値
(DBP:220μg/m3、DEHP:120μg/m3)を超過した住宅はなかった。
10. 住環境健康相談に関する調査(一般住宅におけるホルムアルデヒド、揮発性有機化合物濃度調査)
愛知県・健康快適居住環境確保対策運営要領(健康福祉部)の規定に基づき、居住環境に係わる相談のあった一般住宅
の屋内外のホルムアルデヒド及び揮発性有機化合物(5 戸の屋内 1∼2 ヶ所、屋外 1 ヶ所、計 13 件)の濃度調査を実施し
た。なお、揮発性有機化合物濃度は、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、パラジクロロベンゼン、ベンゼン、メチル
イソブチルケトンについて測定した。ホルムアルデヒドのサンプリングは DNPH 含浸カートリッジ(Waters 製 Sep-Pak
XPoSure)を、揮発性有機化合物のサンプリングはパッシブガスチューブ(柴田科学製)を、それぞれ床または地面から
高さ 1.2∼1.5 m の位置に 48 時間設置することにより行った。ホルムアルデヒドの分析には HPLC 法、揮発性有機化合物
の分析には GC-MS 法を用いた。測定の結果、すべて国が定めた室内濃度指針値未満であった。
11. 油症患者の血中 PCB 検査(食品検査事業)
食用油への PCB 混入事故(昭和 43 年、福岡県を中心に全国規模で患者発生)により発症した油症患者に対する本年度
の検診実績は、認定患者 2 名、未認定患者 10 名の計 12 名に対するものであり、その血中 PCB 濃度は、いずれも検出限界
(1.0ppb)未満であった。
第5節
化 学 部
Ⅰ 調査研究
【Ⅰ−A:調査研究終了報告】
1.医薬品等の分析法の開発と市販製品への応用(平成 15∼18 年度)
【目的】医薬品等製剤の有効成分、添加剤の分析については、特に決められた公定法はない。そのため、これら製剤等
の分析に際しては、共存する妨害成分を除去した後に有効成分や添加剤を分離する方法、あるいは指標成分を利用する
方法、さらにより効率的な方法(多成分同時分析)の開発が求められている。また、最近では、健康食品に医薬品成分
が添加された事例が発生している。そこで本研究では、これらのことを考慮した簡便、迅速、高精度の分析法、評価法
を開発し、市販されている医薬品等製剤あるいは健康食品に適用することを目的とする。
【方法】試料に含まれている医薬品成分を確認、定量するため、TLC、HPLC、LC/MS、ELISA を用いて分析した。
【結果及び考察】1)平成 15 年度:健康食品に添加が疑われる医薬品成分チロキシン(T4)の分析法の開発:多種多
様な原料からなるいわゆる健康食品に添加されたダイエット成分 T4 の分析には、HPLC 法は適用できず、LC/MS 法を用
いた分析のみが報告されている。LC/MS による分析は精密で微量測定も可能であるが、高価な機器設備と熟練技術者を
必要とする。また分析の前処理として、試料を酵素で分解した後、液々分配で精製するため、操作に長時間を要するな
どの問題がある。こうした機器分析にともなう諸問題を解決するため、本研究では迅速・簡便・高感度な新たな T4 ス
クリーニング法として、ELISA を応用することを目的とし、検討を加えた。主として臨床検査分野で汎用されてきた市
販の T4 検査キットを用い、健康食品からの遊離型 T4 の検出を試みたところ、検出結果(13 検体、うち陽性4検体)
は LC/MS 分析による検出結果と全く同一であった。なお、ELISA による T4 の検出限界は、若干の余裕をもたせ 0.02μ
g/mL(キット下限値=0.005μg/mL、LC/MS 下限値=0.5μg/mL)とした。迅速、簡便な T4 スクリーニング法としての
ELISA の有用性が示唆された。
2)平成 16 年度:化粧品に使用することができる 11 種類の油溶性色素の確認法の開発:化粧品に使用可能な油溶性色
素は現在 11 種類が許可されている。それらの化学構造は類似しているため、分析の際には精度の良い方法を用いなけ
ればならない。本研究では Rf 値の再現性に優れ、食品中のタール色素のルーチン試験に汎用されている逆相 TLC を用
いて化粧品中の油溶性色素を確認する方法について検討を加えた。その結果、A:ヘキサン/2-ブタノン混液(5:1)
、
B:アセトニトリル/メタノール混液(5:1)の二つの系を用いることにより、11 種類の油溶性色素の確認が可能であ
った。また、同定の精度を高めるためスキャニングデンシトメ−タを用いてスペクトルを測定した。本法をネイルエナ
メル、ポマード等市販製品に応用したところ、短時間で高精度に油溶性色素を分析することができた。
3)平成 17 年度:いわゆる健康食品に添加される恐れのある向精神薬の同時分析法の開発:リラックス効果を標ぼう
した健康食品に添加される恐れのある薬物として、オキサゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム(OXE)
、トフィゾパム
(TOF)
、トリアゾラム、クロチアゼパム、ジアゼパムの7種の催眠鎮静作用、抗不安作用を有する向精神薬について
HPLC/多波長検出器を用いた同時分析法を検討した。標準溶液及び試料溶液の保持時間、ピークの吸収スペクトルから
各成分の存在の有無を確認し、それらが一致した場合は LC/MS 分析により、標準品との異同を判定する方法について検
討した。移動相に l-ヘプタンスルホン酸ナトリウムを加えることで OXE と TOF が完全に分離した。また、pH を 2.4 に
調整することにより、20 分以内で 7 薬剤の同時分析が可能となった。これらの方法を用いて市販品(20 検体)を分析
した結果、いずれの向精神薬も検出されなかったが、消費者の健康被害を未然に防ぐため、さらに多くの検体について
確認調査を実施する必要があると考えられた。
4)平成 18 年度:生薬(クジン、ヤクチ、モッコウ、インヨウカク、ダイオウ、シコン)中の主成分の確認法の開発:
第 15 改正(平成 18 年)局方において、ヤクチは確認試験が設定されていない。クジン、モッコウの確認試験は呈色反
応に基づくものである。また、インヨウカク、ダイオウ、シコンの確認試験は順相 TLC による方法である。Rf 値の再
現性に優れ、多成分を含有している生薬に有効な逆相 TLC を用いて、これら生薬の主成分(オキシマトリン、ノ−トカ
トン、コスツノリド、イカリイン、センノシド A、アセチルシコニン)を指標とし、展開溶媒は 5%硫酸ナトリウム溶
液/2-ブタノン/アセトニトリル混液(3:2:2)、アセトニトリル/水混液(5:1)、水/アセトニトリル/メタノ−ル混液
(6:5:5)、5%硫酸ナトリウム溶液/アセトニトリル/メタノ−ル混液(10:3:3)、アセトニトリル/メタノ−ル/5%硫酸ナ
トリウム溶液混液(10:4:1)を用いた確認試験法を検討した。その結果、他の共存成分と分離された単一なスポット(Rf
値 0.43 から 0.61)を得ることができた。また、スキャニングデンシトメ−タにより、これらスポットのスペクトル測
定を実施した。本法により、これら生薬の主成分を、簡易、迅速、確実に同定することが可能となった。
【まとめ】本研究で得られた簡便、迅速で、精度の良い分析法、評価法を活用し、市販健康食品、医薬品等製剤中の有
効成分、添加剤を調査することにより、それらの品質及び安全性を確保し、県民の保健衛生の向上に努めたいと考える。
【Ⅰ−B:調査研究年次報告】
1.食品からの農薬摂取の実態とその安全性評価(平成 17∼19 年度)
無登録農薬の使用や中国産冷凍ほうれんそうなど残留農薬に関する違反食品の報道が数多くなされ、一般消費者は残留
農薬に対する多くの不安を抱えている。しかし、実際に摂取している食品に農薬が残留しているかどうかは不明であり、
また、調理等においても農薬の残留量は減少するものと考えられる。そこで、より多くの農薬の残留分析を可能とする
ガスクロマトグラフィー(GC)と高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を組み合わせた系統的な農薬分析の手法を確立
し、加熱等も含めた調理工程による残留農薬の減少に関する基礎データを得たうえで、実際に食品から摂食されている
農薬量の推計を行ない、ADI(一日許容摂取量)との比較から、農薬の摂取に関しての安全性を評価することを目的と
する。
平成 18 年度は、高速液体クロマトグラフ/トリプル四重極質量分析装置(LC/MS/MS)が整備されたことから、前年度
開発した多成分系統分析法に本装置による一斉分析法を加え、より感度良く効率的な分析法とすることができた。本法
を用い、葉菜類(ホウレンソウ、チンゲンサイ、ダイコンナ、コマツナ、サニーレタス)について残留実態調査を行っ
た。農薬の残留が認められた 22 検体を用いて代表的な加熱調理(ゆでこぼし、ホイル焼き)による残留農薬(20 種類
の農薬)の減少を検討した。その結果、ゆでこぼしでは、アセフェート、オキサジキシル、アセタミプリド等の水溶性
の高い農薬の除去率が 90%以上であった。一方、ホイル焼きではキャプタン、イソキサチオン、ピリミホスメチル等
の比較的熱に不安定な農薬の除去率が 80%以上と高かった。除去率の差は農薬の安定性、揮発性、水に対する溶解性
等が大きく関与していると考えられた。次年度は本研究の最終年度であり、実際に食品から摂食されている農薬量の推
計を行い、農薬の摂取に関しての安全性の評価を行う予定である。
Ⅱ 誌上発表
【欧文原著】
1.Determination of spinosad in vegetables and fruits by high-performance liquid chromatography with UV and
mass spectrometric detection after gel permeation chromatography and solid-phase extraction cleanup on a
2-layered column
Eiji Ueno, Harumi Oshima, Hiroshi Matsumoto, Isao Saito, Hiroto Tamura
J AOAC Int, 89: 1641-1649, 2006.
2.High throughput analysis of N-methyl carbamate pesticides in cereals and beans by dual countercurrent
chromatography and liquid chromatography electrospray ionization tandem mass spectrometry
Tomomi Goto, Yuko Ito, Sadaji Yamada, Hiroshi Matsumoto, Hisao Oka, Hisamitsu Nagase, Yoichiro Ito
J Liq Chromatogr, 29: 2651-2661, 2006
3.Analysis of crude drugs using reversed-phase TLC/scanning densitometry (II) Identification of ginseng, red
ginseng, gentian, Japanese gentian, pueraria root, gardenia fruit, schisandra fruit and ginger
Tsutomu Ohno, Eiichi Mikami, Hisao Oka
Natural Medicines, 60:141-145,2006.
【邦文原著】
1.HPLC による食品中メトプレンの分析法
斎藤 勲、上野英二、大島晴美、松本 浩、佐々木久美子、米谷民雄
食品衛生学雑誌、47:173-177、2006.
【研究報告書】
1.農薬等のポジティブリスト化に伴う検査の精度管理に関する研究
研究協力者:上野英二
厚生労働科学研究補助金(食品の安心・安全確保推進研究事業)「検査機関の信頼性確保に関する研究」主任研究者:
遠藤 明、分担研究者:田中之雄
平成18年度分担研究報告書
2.畜水産食品中の残留農薬の実態調査
研究協力者:上野英二
厚生労働科学研究補助金(食品の安心・安全確保推進研究事業)「食品中に残留する農薬等におけるリスク管理手法
の精密化に関する研究」主任研究者:加藤保博、分担研究者:根本 了
平成18年度分担研究報告書
3.食品中の農薬に関する検査法評価ガイドラインの作成
研究協力者:上野英二
厚生労働科学研究補助金(食品の安心・安全確保推進研究事業)「食品中に残留する農薬等の規格基準に係る分析法
における不確実要素に関する調査研究」主任研究者:松田りえ子
平成18年度分担研究報告書
4.既存添加物・不溶性鉱物性物質の安全性評価のための基礎的研究
研究協力者:大島晴美
主任研究者:中澤裕之
日本食品化学研究振興財団 第12回研究成果報告書:135-153、2006.
5.残留基準設定データの精密化に関する研究
研究協力者:山田貞二
厚生労働科学研究補助金(食品の安心・安全確保推進研究事業)「食品中に残留する農薬等におけるリスク管理手法
の精密化に関する研究」主任研究者:加藤保博、分担研究者:永山敏廣
平成 18 年度分担研究報告書
6.食品テロにおいて想定される化学物質に関する研究
研究協力者:大野勉
厚生労働科学研究補助金(食品の安心・安全確保推進研究事業)「食品によるバイオテロの危険性に関する研究」主
任研究者:今村知明、分担研究者:宮 豊
平成 18 年度分担研究報告書
【その他】
1.デュアルカラム GC の食品中残留農薬分析への利用について(講座)
上野英二
食品衛生学雑誌、47:J299-J304、2006.
2.畜水産食品中のPCBs、クロルデン類および有機塩素系農薬の一斉分析におけるゲル浸透クロマトグラフィーお
よびシリカゲルカラムクロマトグラフィーの応用
椛島由佳、上野英二、大島晴美、大野 勉
愛知県衛生研究所報、57:55-64、2007.
3.逆相 TLC/スキャンデンシトメトリーによる生薬分析
―オウゴン、シャクヤク、カンゾウ、アロエ、ボタンピ、センブリ、オウレン、センナの確認―
大野 勉、池田清栄、三上栄一
愛知県衛生研究所報、57:49-53、2007.
4.
「医薬品」の試料溶液調製法
三上栄一
ぶんせき、2006:260-261
Ⅲ 学会発表等
1.GPC and solid-phase extraction cleanup method for monitoring pesticides in brown rice by GC/MS and LC/MS
A multi-residue method of pesticides in brown rice, that enables quantitative, confirmative and tens of
sequential analysis, has been developed. First, 114 important target compounds were selected for efficient
monitoring, and then the appropriate internal standards for these pesticides, stable isotopically labeled
pesticides (surrogates), were selected. An aliquot of the crude sample extract, obtained by our devised
simple acetonitrile extraction method, was subjected to a cleanup system combining GPC and a graphitized
carbon - PSA two-layered column solid-phase extraction, called the GPC-SPE cleanup system. The resultant
cleaned sample extract was subjected to EI mode GC/MS and ESI mode LC/MS analysis. When necessary, the extract
of positive sample was reanalyzed by other selective detection, such as normal - high voltage switching ESI
mode LC/MS, after selective GPC-SPE cleanup. The applicability of this method to routine analyses was tested
on 150 commercial samples. The GPC-SPE cleanup system makes it possible to easily and effectively remove
sample matrices with minimal loss of analytes. This method is a reliable tool for monitoring pesticides
in brown rice.
Eiji Ueno, Isao Saito, Yuka Kabashima, Harumi Oshima, Hiroshi Matsumoto, Hiroto Tamura
6th European Pesticide Residue Workshop, Corfu, Greece, 2006. 5. 22.
2.Study on quality of dietary supplements containing dehydroepiandrosterone (DHEA) imported for personal use
DHEA is a precursor hormone synthesized from cholesterol by the human adrenal cortex. DHEA has been available
as a naturally occurring dietary supplement in the U.S. since 1994. In Japan, DHEA has been banned as a dietary
supplement due to adverse events, such as palpitations, chest pain and arrhythmias. An easily applicable
identification/determination procedure was established for DHEA using a combination of TLC and HPLC. Mass
variation test, content uniformity test and disintegration test were performed following JP 14. Dissolution
test was modified from the JP 14 general tests. All products contained DHEA. However, the concentration of
DHEA ranged from 81% to 105% among supplements. There was no significant variation of the mass of preparations
among products. One tablets failed the disintegration test. Dissolution rates ranged from 37% to 105%. This
study suggests that dietary supplements containing DHEA are not of reliable quality. In this study, we
evaluated the quality of dietary supplements containing DHEA obtained by personal import. Identification
by TLC, determination by HPLC, content uniformity test, disintegration test and dissolution test were
conducted.
Eiichi Mikami, Tsutomu Ohno, Seiei Ikeda, Hiroo Ishihara
The 6th Asian Conference on Clinical Pharmacy, Bangkok, Thailand, 2006. 7. 8.
3. Reliable method for monitoring pesticide residues in foods by NCI mode GC/MS and dual-column GC-µECD
A method that enables quantitative, confirmative and tens of sequential analysis of pesticide residues in
foods by NCI mode GC/MS and dual-column GC-µECD was studied. First, 65 target compounds were selected as
agrochemicals commonly used in crop protection in this country, and/or found in agricultural products over
the past 5 years (April 2000-March 2005) in Aichi Prefecture. An aliquot of the crude sample extract, obtained
by our devised simple acetonitrile extraction method, was purified on a cleanup system combining gel
permeation chromatography and a graphitized carbon column solid-phase extraction, called the GPC-SPE
(graphitized carbon) cleanup system, and then by a tandem silica-gel/PSA cartridge column SPE. The cleaned
sample extract was subjected to NCI mode GC/MS analysis. When necessary, the extract of positive sample
was reanalyzed by dual-column GC-µECD, after selective GPC-SPE (graphitized carbon/Florisil) cleanup. The
applicability of this method to routine analyses was tested on commercial samples. The GPC-SPE cleanup system
makes it possible to easily and effectively remove sample matrices with minimal loss of analytes. This method
is a reliable tool for monitoring pesticide residues in foods.
Eiji Ueno, Isao Saito, Yuka Kabashima, Harumi Oshima, Hiroshi Matsumoto, Hiroto Tamura
11th IUPAC International Congress of Pesticide Chemistry, Kobe, 2006. 8. 9.
4.ICP-MS による既存添加物・不溶性鉱物性物質の材質および溶出元素調査
既存添加物・不溶性鉱物性物質は、食品の製造に際してろ過助剤、沈降助剤などとして用いられている。第 7 版食品
添加物公定書に一部の不溶性鉱物が収載されているが、重金属(比色)
、鉛およびヒ素以外の金属に関する基準は設
定されていない。これらの起原が鉱物であるため、原鉱によっては人体に有害な重金属などを多量に含む危険性があ
り、食品への移行が危惧される。そこで、8 種類(活性白土、酸性白土、グリーンタフ、花こう斑岩、タルク、ベン
トナイト、ケイソウ土およびパーライト)の不溶性鉱物性物質について、四重極型誘導結合プラズマ質量分析計
(ICP-MS)による一斉分析により、材質および溶出元素の調査を行った。その結果、28 元素(Na, Mg, Al, P, K, Ca,
Ti, Fe, V, Cr, Mn, Co, Ni, Cu, Zn, Ga, As, Se, Sr, Mo, Ag, Cd, Sb, Ba, W, Tl, Pb, U)について、材質およ
び溶出に関する基礎的データが得られた。有害元素の Pb、As では、溶出試験において全ての試料で基準値 (Pb:10
μg/g、As:4μg/g) 以下であった。その他の元素では、鉱物性物質の使用基準(食品中残存量 0.5%以下)に従えば、
食品への移行濃度は低く、問題の無いレベルであると考えられた。
大島晴美、椛島由佳、上野英二、大野 勉、岡 尚男、中澤裕之
日本食品衛生学会第 92 回学術講演会、春日井市、2006.10.26.
5.GC/MS 一斉分析データベースソフトウェアを用いた食品中残留農薬のモニタリング手法の検討
食品衛生法による残留農薬規制のポジティブリスト制がスタートし、GC/MS(SIM)による多成分一斉分析法が普及し
てきている。今回、SIM 法を補完するために、数 100 種の農薬成分の保持時間、マススペクトルおよび検量線情報が
データベースにあらかじめ登録してあり、標準品を用いることなく、残留農薬の有無、およその存在量を確認可能と
する一斉分析データベースソフトウェアを用いた GC/MS(スキャン)による一斉分析法を作成して、日常の残留分析
への応用を試みた。
(スキャン法/SIM 法)比は 0.3∼3.1 の範囲、平均 0.98、中央値 1.00、標準偏差は 0.63 であっ
た。一斉分析法ではあるが、農薬の損失が少なく精製度の高い試験溶液が得られる試料調製法を採用することによっ
て、スキャン法は 20∼30 検体程度のスクリーニング分析に応用可能と判断される評価結果が得られた。
上野英二、椛島由佳、大島晴美、大野 勉
第 43 回全国衛生化学技術協議会年会、米子市、2006.11.2.
6.HPLC による穀類、豆類中の N−メチルカーバメート系農薬一斉分析法の検討
平成 18 年 5 月 29 日から施行されたポジティブリスト制により、残留農薬検査を実施する対象農産物及び農薬は大幅
に増大している。当所は MS(MS)による多成分一斉分析に加え、系統別農薬分析も同時に行い、正確かつ精度に優れ
た検査を実施している。
今回、油脂を多く含む穀類、豆類中のN-メチルカーバメート系農薬(NMC)の系統分析を確立することを目的として、
NMC及びその代謝物 17 種について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、シリカゲル / PSAミニカラム精製、ポスト
カラム蛍光検出HPLCを用いた一斉分析法を検討した。その結果、精製法にGPCおよびシリカゲル / PSAミニカラムを
用いることで、脂質成分を大幅に削除し、妨害ピークの影響を回避することができた。検量線については、0.03∼
1,0ppmの範囲で良好な直線性が得られた(R2≧ 0.999)。また、C18 カラムおよび分離パターンの異なるPhカラムを同
条件で併用し、HPLCの同定能力を向上させた。対象とするNMCが残留していないことを確認した小麦、トウモロコシ、
大豆に、それぞれの農薬が 0.1ppmとなるように添加し回収実験を行ったところ、回収率は概ね 70∼110%の範囲であ
り良好であった(n=5)。本法は、油脂を多く含む食品に高いクリーンアップ効果を発揮し、良好な回収率が得られた
ことから、定量分析法として有用であると考える。
椛島由佳、上野英二、大島晴美、大野 勉
第 43 回全国衛生化学技術協議会年会、米子市、2006.11.2.
7.農薬等のポジティブリスト化に伴う検査の精度管理に関する研究(第 1 報)
残留農薬規制のポジティブリスト制への移行に伴い、多くの農薬成分について的確な検査が要求され、その検査結果
の信頼性確保が重要な課題となっている。そこで、従来から重要性が指摘されている外部精度管理試験の手法につい
て検討した。トマトジュース、野菜ジュース、およびミクロペースト状のレッドピーマンとジャガイモに、3 あるい
は 4 種類の農薬を添加したものを 9 機関の地方衛生研究所に配布し、農薬の種類および 5 回試行の濃度を求める試験
(double blind spike test)を行った。その結果、全機関が添加された農薬をすべて正しく検出した。Xbar−R 管理
図による方法と検査精度の相対的な判定に有効な z-スコアによる方法で評価したところ、各検査項目で Xbar−R 管理
図および z-スコアで適正域に入っていない機関が認められた。探索的データ分析(visual data mining)による要
因解析の結果、抽出回数、精製方法、検量線の濃度幅など各機関の SOP の違いが検査精度に影響していると考えられ
た。
住本建夫、織田 肇、岩上正蔵、田中之雄、村田 弘、起橋雅浩、高取 聡、北川陽子、岡本 葉、酒井 洋、
上野英二、田中敏嗣、宇野正清、宇治田正則、佐々木珠生、堤 泰造、衛藤修一
第 43 回全国衛生化学技術協議会年会、米子市、2006.11.2.
8.逆相 TLC/スキャニングデンシトメトリーによる生薬分析(5)
−クジン、ヤクチ、モッコウ、インヨウカク、ダイオウ、シコンの確認試験−
局方生薬は、主として漢方製剤並びに生薬製剤の製造原料として用いられている。その品質は、局方各条中の規定に
よっても担保されている。しかし、2006年4月に公布された第 15 改正局方には、ヤクチの確認試験が設定され
ていない。一般に局方生薬は、TLC により確認試験が設定されているものが多いが、クジン、モッコウは、クロマト
グラフィーによらない呈色反応に基づく確認が採用されている。また、インヨウカク、ダイオウ、シコンについては、
順相 TLC の確認試験が設定されている。さらに上記生薬のうち、インヨウカク、ダイオウ以外は、指標成分に関して
局方に定めがない。今回、有害なハロゲン系溶媒を展開溶媒に用いないという局方の方針に従い、展開溶媒として 5%
硫酸ナトリウム溶液、水、アセトニトリル、メタノ−ル、2-ブタノンを用いた逆相 TLC について、検討した。クジン、
ヤクチ、モッコウ、インヨウカク、ダイオウ、シコンについて、それぞれオキシマトリン、ノ−トカトン、コスツノ
リド、イカリイン、センノシド A、アセチルシコニンを指標成分として用い確認を検討したところ、他の共存成分と
分離し単一なスポット(Rf 値 0.43 から 0.61)が得られた。また、同時にスキャニングデンシトメトリ−により、ス
ペクトルの情報も得られ、これら成分を簡易、迅速、確実に同定することが可能となった。なお、クジンのオキシマ
トリンについては、特徴的な紫外部吸収スペクトルを持たないため、展開後ドラーゲンドルフ試薬を噴霧し、呈色反
応により同定した。
池田 清栄、三上 栄一、大野 勉
第 43 回全国衛生化学技術協議会年会、米子市、2006.11.2.
9.H-D 交換反応により合成した重水素標識体を用いた食品中のサルファ剤の迅速分析法
【目的】サルファ剤(SAs)は、薬剤効果の範囲が広い合成抗菌剤であり、安定で効力損失が少ない上、比較的安価
であるため繁用されている。また、スルファニル置換基の構造によって多くのSAsが存在するため、これらSAsの迅
速簡便な同時分析法の確立が望まれている。我々は、既に、テトラサイクリン系及びペニシリン系抗生物質の
LC/MS/MSを用いた同時分析法を報告している(1)。今回、この方法をSAsへ応用するため、必要な内標準物質である重
水素標識体を合成し(2)、内標準物質として用いて検討した結果、迅速分析法を確立したので報告する。
【方法】以下の項目について検討を加えた:1)内標準物質、2)抽出方法、3)試料精製法、4)ESI LC/MS/MS 条件。
【結果と考察】1)内標準物質:スルファジミジン及びスルファジメトキシンの重水素標識体が有効であった。2)抽
出方法:酢酸エチルが有効であった。3)試料精製法:限外ろ過膜による精製が最も良好な結果を示した。4)ESI
LC/MS/MS 条件:長さ 50mm のカラムを用いることにより、分析時間が 7 分と短縮され、かつ、同時分析が可能となっ
た。
以上により、12 種のサルファ剤の迅速簡便な同時分析が可能となった。
(1) 岡ら、日本薬学会第 124 年会要旨集 3 p.177(2004)
(2)Sajiki et al., Org. Lett 2004, 6, 3521 and Chem. Eur. J. in press
後藤智美、伊藤裕子、山田貞二、大野 勉、吉見幸子、岡 尚男、江崎啓洋、佐治木弘尚、廣田耕作
日本薬学会第 127 年会、富山市、2007.3.28.
10.食品中のテトラサイクリン系及びペニシリン系抗生物質の同時分析(第 2 報)
【目的】動物用医薬品あるいは飼料添加物として広く使用されている、テトラサイクリン系及びペニシリン系抗生物
質は、食品中への残留がしばしば認められている。しかし、これらの抗生物質は、相反する化学的性質を有している
ため、同時分析は困難であったが、前報1)において我々は、これらの抗生物質の化学的性質を詳細に検討し、簡便迅
速な同時分析法を確立し、牛・豚へ適用した。今回、鶏の筋肉、肝臓及び卵への適用を検討した結果、同時分析が可
能になったので報告する。
【方法】以下の項目について検討を加えた。1)内標準物質、2)抽出溶媒
【結果と考察】1)内標準物質:テトラサイクリン系抗生物質にはデメクロサイクリンと、オキシテトラサイクリン
の重水素標識体が、ペニシリン系抗生物質には、それぞれの重水素標識体が有効であった。2)抽出溶媒:筋肉は蒸
留水が、肝臓及び卵は、Na2EDTA マッキルベイン緩衝液(pH7.0)が有効であった。以上により、鶏の筋肉、肝臓及
び卵中の、テトラサイクリン系及びペニシリン系抗生物質の簡便迅速な同時分析法が可能になった。
【文献】1)岡ら、日本薬学会第 124 年会要旨集 3 p.177(2004)
吉見幸子、岡 尚男、後藤智美、伊藤裕子、堤内 要、水野泰臣
日本薬学会第 127 年会、富山市、2007.3.28.
IV 試験検査
1.食品等の試験検査
(1)食品中の残留農薬の分析
平成 18 年 5 月 29 日からポジティブリスト制度が施行され、残留基準の設定された農薬数は約 240 から約 600 に大
幅に増加し、残留基準が設定されていないすべての農薬についても規制されることになった。ポジティブリスト制度
に対応した検査を実施するため、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)および高速液体クロマトグラフ/トリプル
四重極質量分析装置(LC/MS/MS)が整備されたので、これらの装置を用いた一斉分析法の適用可能な農薬の中で、実
際に使用されており検出頻度の高い農薬を選択し、検査農薬数を増やした。
5 月 29 日以前に収去された検体は、昨年度と同じく、有機塩素系農薬 10 種類、有機リン系農薬 33 種類、含窒素系
農薬 51 種類(N-メチルカーバメート系含む)
、ピレスロイド系農薬 16 種類、その他の農薬3種類の合計 113 種類につ
いて検査を実施した。
5 月 29 日以降に収去された検体は、有機塩素系農薬 54 種類、有機リン系農薬 79 種類、含窒素系農薬 146 種類(Nメチルカーバメート系含む)
、ピレスロイド系農薬 18 種類、その他の農薬 39 種類、合計 336 種類の中から分析が可能
な農薬について検査を実施した。今後さらに検査農薬の見直しを図り、効率的な分析を行っていく予定である。
今年度は、県内の市場などで収去された野菜・果実(輸入 10、国内産 15)
、輸入穀物(20)
、食肉(輸入 5、国内産
10)
、県内産玄米(15)及び加工食品に残留基準が設けられたことから、植物油(10)
、100%果汁飲料(10)牛乳(15)
を新たに加え、合計 110 件を検査した。その結果、食品衛生法の残留基準を越える農薬はいずれの検体からも検出さ
れなかった。
微量検出された農薬は以下のとおりである。
野菜・果実 25 検体からは、有機塩素系農薬のキャプタン(ナシ)
、クロロタロニル(バナナ)が各 1 検体から、有
機リン系農薬のクロルピリホスがバナナ、オレンジ、ネーブルオレンジ各 1 検体から検出された。含窒素系農薬は、
かんきつ類等に防カビ剤として使用されるイマザリルが 5 検体(オレンジ 2、ネーブルオレンジ 2、グレープフルーツ)
から、クロルフェナピルが1検体(ネギ)
、アセタミプリドが 2 検体(ナス、コマツナ)
、イプロジオンが 2 検体(オ
レンジ、ブロッコリー)からそれぞれ検出された。また、ピレスロイド系農薬のシペルメトリンが 2 検体(ネギ、ホ
ウレンソウ)
、フェンプロパトリン、ペルメトリンが各 1 検体(ナシ、イチジク)から検出された。
輸入穀物では、有機リン系農薬のクロルピリホス、クロルピリホスメチル、マラチオンが各 1 検体(小麦)から検
出された。
加工食品では、植物油からピレスロイド系農薬のエトフェンプロックスが 2 検体(精製米油)
、100%果汁飲料から
含窒素系農薬のイマザリル、イプロジオンが各 1 検体(オレンジジュース、グレープフルーツジュース)から検出さ
れた。
農薬検査の詳細については、資料−化学―表 1 に示した。
資料−化学―表 1
農薬検査
検体名
野菜・果実
検体数
穀類
25
植物油
20
100%果汁飲料
10
10
検出数/
残留平均値
検出数/
残留平均値
検出数/
残留平均値
検出数/
残留平均値
検体数
ppm
検体数
ppm
検体数
ppm
検体数
ppm
検出出農薬名
アセタミプリド
殺虫剤
2/25
0.24
N.D.
N.D.
N.D.
イマザリル
防カビ剤
5/25
1.52
N.D.
N.D.
1/10
0.02
イプロジオン
殺菌剤
2/25
0.05
N.D.
N.D.
1/10
0.01
エトフェンプロックス
殺虫剤
N.D.
N.D.
2/10
キャプタン
殺菌剤
1/25
0.02
N.D.
N.D.
N.D.
クロルフェナピル
殺虫剤
1/25
0.01
N.D.
N.D.
N.D.
クロルピリホス
殺虫剤
3/25
0.04
1/20
0.03
N.D.
N.D.
クロルピリホスメチル
殺虫剤
N.D.
1/20
0.21
N.D.
N.D.
クロロタロニル
殺菌剤
1/25
0.01
N.D.
N.D.
N.D.
シペルメトリン
殺虫剤
2/25
0.05
N.D.
N.D.
N.D.
フェンプロパトリン
殺虫剤
1/25
0.02
N.D.
N.D.
N.D.
ペルメトリン
殺虫剤
1/25
0.04
N.D.
N.D.
N.D.
マラチオン
殺虫剤
N.D.
N.D.
N.D.
N.D.:検出限界未満
1/20
0.02
0.01
N.D.
(2)食品中の PCB 分析
県内の市場で収去された海産魚 17 種 30 件について PCB の検査を行った。海産魚はアジ、ボラ、コノシロ、セイゴ等
の 10 種 19 検体
(63%)
から 0.006∼0.047ppm(平均値 0.015±標準偏差 0.010)
の PCB が検出された。
(検出限界 0.005ppm、
暫定規制値:内海内湾魚介類 3.0ppm、遠洋沖合魚介類 0.5ppm)
(3)輸入穀物中のカビ毒ニバレノール、デオキシニバレノールの分析
穀類に寄生するフザリウム属のカビが産生する毒物ニバレノール、デオキシニバレノールは、下痢、嘔吐等の中毒症
状を起こす物質として知られている。平成 14 年度には小麦中の暫定規制値が 1.1ppm に設定された。当所では昭和 61
年より穀類中のデオキシニバレノール、ニバレノールの残留モニタリングを行っている。今年度も、トウモロコシ、小
麦、大豆等の輸入穀物 20 件(トウモロコシ 4、小麦 5、大豆 6、豆類 3、コーヒー豆 2)について検査を行った結果、
デオキシニバレノールが小麦 2 件から 0.03、0.09ppm、トウモロコシ 4 件から 0.04∼0.18ppm(平均値 0.10ppm)検出
されたが、その他の穀類からは検出されなかった。また、ニバレノールはすべての穀類から全く検出されなかった。
(4)食品中の重金属調査
県内産米 15 件、県外産米 5 件、県内市場で収去された海産魚 40 件について重金属(カドミウム、鉛、マンガン、
亜鉛、銅、ヒ素)及び水銀(海産魚 50 件)
、また、清涼飲料水 60 件について成分規格が定められている重金属(ヒ素、
鉛、カドミウム、スズ)の調査を行った。海産魚についてはこれらの重金属に加え、環境汚染物質である有機スズ化
合物のトリブチルスズ(TBTO)
、トリフェニルスズ(TPT)の分析も行った。検査した米(玄米)20 件中 18 件から 0.01
∼0.13ppm のカドミウム(成分規格 1.0ppm)が検出された。また、海産魚 50 件中 40 件から 0.01∼0.14ppm の水銀(暫
定的規制値 0.4ppm)が検出された。清涼飲料水からは重金属は検出されず、成分規格(ヒ素、鉛、カドミウム:検出
しない、スズ:150ppm 以下)に適合していた。結果は、資料−化学-表 2 に示した。
資料−化学―表 2
食品中の金属含有量(ppm)
検 検
体 体
トリブチル
トリフェニ
スズ
ルスズ
−
−
−
14.1∼23.9
−
−
−
0.9±0.9
5.9±2.9
2.7±2.8
N.D.
0.01
0.1∼5.9
3.0∼18.5
0.2∼13.8
N.D.
N.D.∼0.01
総水銀
カドミウム
鉛
マンガン
銅
亜鉛
ヒ素
−
0.03±0.03
N.D.
20.4±7.8
2.1±0.6
18.9±2.5
−
N.D.∼0.13
N.D.
5.5∼31.3
1.0∼3.1
0.04±0.03
0.05±0.08
N.D.
0.4±0.5
N.D.∼0.14
N.D.∼0.22
N.D.
0.1∼2.2
名 数
米 20
海
産 50
魚
数値は上段:検出された値の平均値±標準偏差、下段:範囲
−:未検査
N.D.:検出限界未満
(5)食品中の食品添加物検査
ア 保存料の検査
県内の保健所で収去された輸入果実酒 24 検体について、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、安息香酸、パラオキシ安
息香酸エステル類の検査を実施した。その結果、12 検体から 0.01∼0.18g/kg のソルビン酸が検出されたが、いず
れも使用基準(0.20g/kg)以下の量であった。デヒドロ酢酸、安息香酸、パラオキシ安息香酸エステル類はいずれ
も検出されなかった(検出限界:0.01g/kg)
。
イ 防かび剤の検査
県内の保健所で収去された輸入果実類(オレンジ、レモン、グレープフルーツ、バナナ)10 検体について、ジ
フェニール、オルトフェニルフェノール、チアベンダゾール、イマザリルの検査を実施した。その結果、バナナを
除く 9 検体のかんきつ類のうち 7 検体から 0.0004∼0.0014g/kg のチアベンダゾールが、また 9 検体のかんきつ類
のうち 8 検体から 0.0007∼0.0037g/kg のイマザリルが検出されたが、いずれも使用基準以下の量であった(使用
基準:かんきつ類のチアベンダゾール 0.010g/kg、かんきつ類のイマザリル 0.0050g/kg)
。なお、ジフェニール、
オルトフェニルフェノールはいずれの検体からも検出されなかった(検出限界:0.001g/kg)
。
ウ 殺菌料の検査
県内産のしらす干し 20 検体について、過酸化水素の検査を実施した。その結果、すべての検体から 0.0004∼
0.0025g/kg の濃度で検出された。しかしながら、いずれの検出値も過酸化水素使用の目安とされる 0.010g/kg よ
りはるかに微量であった。
エ 漂白剤の検査
県内の保健所で収去された輸入果実酒 24 検体及び輸入食品 10 検体について、二酸化イオウの検査を実施した。
その結果、22 検体の輸入果実酒から 0.01∼0.14g/kg の濃度で、また、7 検体の輸入食品から 0.01∼0.09g/kg の濃
度で検出されたが、いずれも使用基準未満の量であった。
オ 品質保持剤の検査
県内の保健所で収去されためん類 10 検体について、プロピレングリコールの検査を実施した。その結果、8 検
体から 0.17∼1.69%の濃度で検出されたが、いずれも使用基準(2.0%)以下の量であった。
カ 酸化防止剤の検査
県内の保健所で収去された魚介乾製品(にぼし等)10 検体について、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)及び
ブチルヒドロキシルトルエン(BHT)の検査を実施した。その結果、2 検体から 0.07、0.10g/kg の BHA が検出され
たが、使用基準(0.2g/kg)以下の量であった。なお、BHT はいずれの検体からも検出されなかった(検出限界:
0.01g/kg)
。
キ 合成甘味料の検査
県内の保健所で収去された輸入食品 10 検体について、アセスルファムカリウム及びサイクラミン酸の検査を実
施したところ、7 検体から 0.05∼0.96g/kg のアセスルファムカリウムが検出されたが、いずれも使用基準以下の
量であった。また、我が国では使用が認められていないサイクラミン酸については、いずれの検体からも検出され
なかった(検出限界:0.01g/kg)
。
ク 表面処理剤の検査
ナチュラルチーズの表面処理剤としてナタマイシンの使用基準が設定されたので、本年度から当該検査を開始し
た。県内の保健所で収去された輸入ナチュラルチーズ 15 検体について、ナタマイシンの検査を実施したところ、
いずれの検体からも検出されなかった(検出限界:0.001g/kg)
。
(6)輸入穀物等中のアフラトキシンの検査
県内の保健所で収去された中国、米国、カナダ、オーストラリア産の小麦、トウモロコシなどの輸入穀物 20 検体
及び大豆、落花生、コーヒー豆、アーモンド、カシュナッツ、ビスタチオナッツなどの種実類 10 検体について、ア
。
フラトキシンB1の検査を実施したが、いずれの検体からも全く検出されなかった(検出限界:0.010mg/kg)
(7)食品添加物の規格検査
サッカリンナトリウム、リン酸、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、D-ソルビトールの合計 8 検体
の食品添加物製剤について、成分規格検査を実施したが、すべて規格基準に適合していた。
(8)合成樹脂及び陶磁器製の器具・容器包装の検査
合成樹脂製の器具・容器包装のうち、ポリエチレン製品 9 検体、ポリプロピレン製品 7 検体、メラミン製品 3 検体、
ポリカーボネート製品 1 検体について、材質試験及び溶出試験を実施した。いずれの検体も両試験の基準に適合して
いた。また、皿などの陶磁器 10 検体について重金属の溶出試験を実施したが、すべて基準に適合していた。
(9)輸入箸中の防かび剤及び漂白剤の検査
県内の保健所で収去された輸入箸 10 検体について、防かび剤(ジフェニール、オルトフェニルフェノール、チア
ベンダゾール、イマザリル)及び漂白剤(二酸化イオウ)の検査を実施した。2 検体から漂白剤が 0.11、3.64mg/膳
の濃度で検出されたが、いずれも自主的規制措置基準(12mg/膳)以下の量であった。なお、防かび剤はいずれの検
体からも全く検出されなかった(検出限界:ジフェニール;10mg/kg、オルトフェニルフェノール;100mg/kg、チア
ベンダゾール;10mg/kg、イマザリル;5mg/kg)
。
(10)畜水産食品中の残留抗生物質の検査
県内産鶏肉 12 検体、輸入鶏肉 5 検体、国内産牛・豚肉 10 検体、輸入牛・豚肉 5 検体、鶏卵 50 検体、養殖ウナギ
10 検体、養殖マス 2 検体、養殖アユ 1 検体、養殖ハマチ 5 検体、ハチミツ 10 検体の合計 110 検体について、抗生物
質の残留検査を実施したが、いずれの検体からも全く検出されなかった(検出限界:スピラマイシン、ベンジルペニ
シリン;0.02mg/kg、テトラサイクリン類;0.05mg/kg、クロラムフェニコール;0.01mg/kg)
。なお、検査項目は以下
のとおりであった。
鶏肉、牛・豚肉:テトラサイクリン類(オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、クロロテトラサイクリン)
、
スピラマイシン、ベンジルペニシリン
鶏卵:テトラサイクリン類
養殖ウナギ、養殖マス、養殖アユ、養殖ハマチ:テトラサイクリン類、スピラマイシン
ハチミツ:テトラサイクリン類、クロラムフェニコール
(11)畜水産食品及びその加工品中の残留合成抗菌剤等の検査
県内産鶏肉 12 検体、県内産鶏肝臓 1 検体、輸入鶏肉 5 検体、国内産牛・豚肉 10 検体、輸入牛・豚肉 5 検体、養殖
ウナギ 10 検体、養殖マス 2 検体、養殖アユ 1 検体、養殖ハマチ 5 検体、輸入うなぎ加工品 5 検体の合計 55 検体につ
いて、合成抗菌剤及び寄生虫用剤の残留検査を実施したが、いずれの検体からも全く検出されなかった(検出限界:
マラカイトグリーン、ロイコマラカイトグリーン;0.002mg/kg、これら以外; 0.01mg/kg)
。輸入うなぎ加工品のマ
ラカイトグリーン、ロイコマラカイトグリーンの検査は、検疫所における違反事例の発生頻度が高いことから本年度
から開始した。なお、検査項目は以下のとおりであった。
鶏肉、牛・豚肉:スルファモノメトキシン、スルファジメトキシン、スルファジミジン、スルファキノキサリン、ナ
イカルバジン
鶏肝臓:スルファジメトキシン、スルファキノキサリン
養殖ウナギ:スルファモノメトキシン、スルファジメトキシン、スルファジミジン、スルファキノキサリン、スルフ
ァメラジン、オルメトプリム、オキソリニック酸、ナリジクス酸、ピロミド酸、ナイカルバジン
養殖マス、養殖アユ、養殖ハマチ:スルファモノメトキシン、スルファジメトキシン、スルファジミジン、スルファ
キノキサリン、オキソリニック酸、ナリジクス酸、ピロミド酸
輸入うなぎ加工品:マラカイトグリーン、ロイコマラカイトグリーン
2. 家庭用品の試験検査
(1)ホルムアルデヒド
県内で試買したおしめ、肌着、パジャマ等 90 検体について、ホルムアルデヒドの検査を実施したが、いずれの検
体もすべて基準に適合していた。なお、検体の内訳は次のとおりであった。
・生後 24 ヶ月以下の乳幼児用繊維製品(基準:検出せず)
:65 検体
・上記以外の繊維製品等(基準:75ppm 以下)
:25 検体
(2)ヘキサクロルエポキシオクタヒドロエンドエキソジメタノナフタリン(別名ディルドリン)
、ビス(2,3-ジブロム
プロピル)ホスフェイト化合物、トリフェニル錫化合物及びトリブチル錫化合物、テトラクロロエチレン又はトリク
ロロエチレン、塩化水素又は硫酸、メタノール
県内で試買した家庭用品 30 検体について、上記化合物の検査を実施したところ、すべて基準に適合していた。な
お、検査項目及び検体数の内訳は次のとおりであった。
・ヘキサクロルエポキシオクタヒドロエンドエキソジメタノナフタリン(別名ディルドリン)
(基準:30ppm 以下)
:
家庭用毛糸等 5 検体
・ビス(2,3-ジブロムプロピル)ホスフェイト化合物(基準:検出せず)
:寝衣等 5 検体
・トリフェニル錫化合物及びトリブチル錫化合物(基準:検出せず)
:よだれ掛け等 5 検体
・テトラクロロエチレン又はトリクロロエチレン(基準:0.1%以下)
:家庭用洗浄剤等 5 検体
・塩化水素又は硫酸(基準:酸の量として 10%以下及び所定の容器強度を有すること)
:住宅用洗浄剤 2 検体
・メタノール(基準:5w/w%以下)
:家庭用エアゾル製品 8 検体
3.医薬品等の試験検査
本年度は行政検査として医薬品等 373 件について 409 項目の検査を実施した。その内訳は資料-薬品-表 1 に示すとお
りである。
(1) 医薬品
監視及び調査のため当県が独自に収去した医薬品 270 件について試験を実施した。医療用のトラネキサム酸、ファモ
チジン、フマル酸クレマスチン、プラバスタチンナトリウム、メキタジンを含有する製剤 105 件について定量、溶出、
質量偏差及び粒度試験を行った。その結果、すべての製剤が規格に適合していた。また、解熱鎮痛薬 7 件、鼻炎薬 5 件
については製造承認書の規格試験を実施した。その結果、これらの薬剤も規格に適合していた。
生薬、漢方製剤については、黄連解毒湯エキス製剤、葛根湯エキス製剤、桂枝茯苓丸エキス製剤、半夏瀉心湯エキス
製剤の 160 件について、これらの製剤の製造承認書に規定されている定量成分のうち、ベルベリン、バイカリン、ゲニ
ポシド、ペオニフロリン、グリチルリチン酸、ケイヒ酸、アミグダリンについて試験を行った。また、これらの製剤に
ついて乾燥減量、エキス含量、質量偏差、崩壊、灰分、酸不溶性灰分及び粒度試験を行った。その結果、すべてが規格
に適合していた。
(2)化粧品
乳液、化粧水及びクリームの 80 件について、パラオキシ安息香酸エステル類(メチル、エチル、プロピル、イソプ
ロピル、ブチル、イソブチル)
、デヒドロ酢酸、安息香酸、ソルビン酸及びサリチル酸の定量試験を実施した。その結
果、すべてが規格に適合していた。
(3) 医療機器
厚生労働省の医療機器一斉取締りに際し、当所での実施が指定された品目はディスポーザブルカテ−テル及びソフト
コンタクトレンズであった。カテ−テル(6 件)
、ソフトコンタクトレンズ(1 件)及び医療用ガーゼ(2 件)の計 9 件
の製品について、規格基準が設定されている外観試験及び溶出物試験(pH、重金属、過マンガン酸カリウム還元性物質、
蒸発残留物、水溶性物質、紫外吸収スペクトル)を行った。その結果、すべてが規格基準に適合していた。
(4) 健康食品
効能を暗示し、形態等も医薬品と非常に類似している健康食品が最近市場に出回っている。本年度は県内で収去した
台湾製健康食品 1 件から医薬品成分のデキサメタゾン(1g あたり 1.0mg)とインドメタシン(1g あたり 39.5mg)を検
出した。この製品は、医薬品成分が検出されたため無承認無許可医薬品とみなされ、薬事法違反であることが判明した。
また、買い上げた市販健康食品 13 件について、甲状腺末、フェンフルラミン、N-ニトロソフェンフルラミン、及びシ
ブトラミンの検査を実施した。その結果、これらの医薬品成分はいずれの食品からも全く検出されなかった。
資料-薬品-表 1
医薬品等検査
検査結果
検体の種類
検体名
件数
検査項目
(表示量に対する平均含量%(範囲)
、
又は適・不適、検出・不検出)
医薬品
トラネキサム酸製剤(錠、細粒)
6
定量試験
トラネキサム酸:99.4(96.5∼101.2)
ファモチジン製剤(錠)
8
定量試験
ファモチジン:98.9(97.8∼100.2)
フマル酸クレマスチン製剤(錠)
5
定量試験
フマル酸クレマスチン:99.8(96.8∼99.3)
プラバスタチンナトリウム製剤(錠)
6
定量試験
プラバスタチンナトリウム:100.3(99.3∼102.2)
メキタジン製剤(錠)
7
定量試験
メキタジン:99.5(97.4∼102.6)
各種製剤
66
規格試験
溶出、質量偏差、崩壊、粒度試験:適
解熱鎮痛薬、鼻炎薬
12
規格試験
定量、質量偏差、崩壊試験:適
漢方製剤:黄連解毒湯エキス
5
定量試験
ベルベリン:承認書規格に適
5
定量試験
バイカリン:承認書規格に適
2
定量試験
ゲニポシド:承認書規格に適
5
定量試験
ペオニフロリン:承認書規格に適
5
定量試験
グリチルリチン酸:承認書規格に適
5
定量試験
ペオニフロリン:承認書規格に適
4
定量試験
アミグダリン:承認書規格に適
2
定量試験
ケイヒ酸:承認書規格に適
5
定量試験
ベルベリン:承認書規格に適
4
定量試験
バイカリン:承認書規格に適
5
定量試験
グリチルリチン酸:承認書規格に適
各種生薬、漢方製剤
113
規格試験
質量偏差、崩壊、灰分試験等:適
乳液、化粧水、クリーム
80
規格試験
パラオキシ安息香酸エステル類
(メチル、エチル、プロピル、イソプ
製剤
:葛根湯エキス
製剤
:桂枝茯苓丸エキ
ス製剤
:半夏瀉心湯エキス
製剤
化粧品
ロピル、ブチル、イソブチル)
、デヒドロ酢酸、安息香酸、ソ
ルビン酸、サリチル酸:適
医療用具
カテ−テル、ソフトコンタクトレンズ
9
規格基準試験
医療ガーゼ
健康食品
健康茶、ダイエット食品等
外観試験:適、溶出物試験(pH、重金属、過マ
ンガン酸カリウム還元性物質等):適
14
確認試験
検出(1 件)
:インドメタシン、デキサメタゾン
定量試験
不検出(13 件)
:甲状腺末、N-ニトロソフェンフルラミン、
フェンフルラミン、シブトラミン
4.医薬品等規格及び試験方法の確認調査
この調査は知事承認医薬品等の規格及び試験方法の的確性について確認するものである。瀉下薬 2 件、水虫薬 3 件及
び染毛剤 3 件の合計 8 件について確認調査を行った。その結果、6 件については文書表現、定量法、及び含量規格等に
不備な点が認められたので、改善指導を行い、最終的にはすべてにおいて規格及び試験方法の的確性が確認された。
5.医療用医薬品品質確保のための再評価事業(国の委託事業)
医療用後発医薬品の品質再評価(先発品との同等性を溶出試験により確認)を実施し、その品質の信頼性を確保する
ために必要な溶出試験法を策定するものである。本年度当所においては、炭酸リチウム、L−システイン、サルボグレ
ラート塩酸塩、酒石酸ゾルビデムの 10 成分について 17 品目、501 件の公的溶出試験規格の妥当性検証に関する試験を
行った。これらの溶出試験結果は、医薬品品質情報集(オレンジブック、厚生労働省刊)と日本薬局方外成分規格第三
部に収載された。また、厚生労働省医療用医薬品溶出試験規格検討会の班員として、ニカルジピン塩酸塩、スルファジ
メトキシン、ジメモルファンリン酸塩等の 201 成分について、337 規格の品質再評価に係る基準液、公的溶出試験(案)
等について確認調査、審査を行った。
第6節
生活科学部
Ⅰ 調査研究
【Ⅰ−B:調査研究終了報告】
1.水道原水中の微量化学物質の存在に関する調査研究 (平成 16∼18 年度)
【目的】平成 15 年 5 月に水道法水道基準に関する省令が改正され、新たな水質基準項目は 50 項目(新規 13 項目)と
なった。さらに、水質管理目標設定項目 27 項目(そのうち、農薬類は 101 種が対象)
、要検討項目 40 項目についても
目標値が設定され、水道水については 200 項目以上の検査が推奨されている。しかし、日常的な水道管理において、こ
れらの検査項目を網羅することは不可能である。一方、未知混入物質を迅速に把握することは水道水の安全確保のため
に重要である。そこで、水質管理目標設定項目や要検討項目に着目し、機器分析による水道原水中の微量化学物質のス
クリーニングを行い、愛知県における水道原水中の微量化学物質のデータベースを作成すること、及びその存在量の変
動並びに要因についても解析を加え、水道水の安全性評価の基礎資料とすることを本研究の目的とした。
【調査対象】初年度は木曽川(採水地点:犬山市継鹿尾 名古屋市上水道取水口)についてのみ、2 年度以降は木曽川
と同様に水道水源として利用されている長良川(採水地点:三重県桑名市長島町)も加えた 2 河川各 1 か所において、
平成 16 年 5 月から 18 年 12 月まで原則毎月一回採水し、調査対象とした。
【測定項目(測定方法)
】ビスフェノールA及びノニルフェノール(固相抽出−液体クロマトグラフ−質量分析法)
、非
イオン界面活性剤(固相抽出−吸光光度法)
、陰イオン界面活性剤(固相抽出−高速液体クロマトグラフ法)
、かび臭物
質(パージ&トラップ−ガスクロマトグラフ−質量分析法)
、農薬類(固相抽出−ガスクロマトグラフ−質量分析法)
。
その他の主な項目について、有機物[TOC(全有機炭素)計測定法)
、元素類 38 種類(誘導結合プラズマ質量分析法)
、陰
イオン 7 種及び陽イオン 6 種(イオンクロマトグラフ法)
。
B)
【結果及び考察】ビスフェノールA 及びノニルフェノールB):ビスフェノールAに関しては、木曽川(n=35)で 5 試料
(20∼80 ng/L)
、長良川(n=20)で 1 試料(30 ng/L)から検出された。一方、ノニルフェノールについては、木曽川
からは一度も検出されなかったのに対し、長良川からは 4 試料(100∼300 ng/L)より検出された。検出レベルは、要
検討項目の目標値(ビスフェノールA:100 μg/L、ノニルフェノール:300 μg/L)の1/1000 程度であり、検出頻度
も低いことから、これらは恒常的な汚染ではなく、高濃度の生活排水等が流入したことによる散発的な汚染が原因であ
ると考えられた。定量下限値は、ビスフェノールAが 10 ng/L、ノニルフェノールが 100 ng/Lである。
かび臭物質(ジェオスミンA)及び 2-メチルイソボルネオールA)):両水源とも水質基準値(両項目とも 10 ng/L)を超え
ないレベルで恒常的に検出された。ジェオスミンについては、木曽川で平均 2.1 ng/L(0.5∼8.4 ng/L)
、長良川で平
均 2.4 ng/L(0.9∼5.1 ng/L)とほぼ同レベルであった。2-メチルイソボルネオールに関しては、木曽川で平均 0.7 ng/L
(0.1 ng/L未満∼1.9 ng/L)
、長良川で平均 1.3 ng/L(0.4∼2.6 ng/L)と木曽川よりも長良川の方が高い傾向が認め
られた。定量下限値は、両項目とも 0.1 ng/Lである。
農薬類A)、B):6 月から 7 月にかけてモリネート(目標値 5 μg/L)
、チオベンカルブ(同 20 μg/L)
、メフェナセット(同
9 μg/L)などの除草剤が、また、8 月から 9 月にかけては殺菌剤であるピロキロン(同 40μg/L)及びイソプロチオラ
ン(同 40 μg/L)が、低濃度ながらそれぞれ目標値の 1/100 を超えて検出された。これらの農薬は、水田の除草や稲
のイモチ病対策に用いられたものであり、季節的な汚染であると考えられた。また、検出された農薬の種類及び量は、
長良川が木曽川を大きく上回っていることから、流域の水田からの排水が同河川の水質に大きな影響を与えている可能
性が示唆された。
非イオン界面活性剤B)及び陰イオン界面活性剤A):非イオン界面活性剤に関しては、木曽川(n=33)で4試料(平成17年:
2月0.007 mg/L、3月0.005 mg/L、18年:10月0.006 mg/L、12月0.010 mg/L)に、一方、17年5月より測定を開始した長良
川(n=20)では4試料(17年:12月0.005 mg/L、18年:2月0.006 mg/L、10月0.006 mg/L、12月0.020 mg/L) に定量下限
値(0.005 mg/L)以上検出された。このように、非イオン界面活性剤については水質基準値(0.02 mg/L)を超える値はな
く、検出頻度も多くはなかったが、主に冬場に検出される傾向が認められた。これは水温が低いため微生物による生分
解が進まないことが一因であると考えられた。なお、陰イオン界面活性剤については、木曽川(n=33)
、長良川(n=20)
ともに全て定量下限値(0.02 mg/L)未満であった。
その他の項目:その他の項目として、水温C)、pH A)、電気伝導率C)、TOC B)、過マンガン酸カリウム消費量A)、リチウムイ
オンC)、アンモニア態窒素C)、カリウムイオンC)、ナトリウムイオンA)、カルシウムイオンA)、マグネシウムイオンA)、亜
硝酸態窒素A)、硝酸態窒素A)、塩素イオンA)、ふっ素イオンA)、リン酸イオンC)、硫酸イオンC)、炭酸水素イオンC)、炭酸イ
オンC)、遊離二酸化炭素A)、及び元素分析項目(リチウムC)、ホウ素A)、ナトリウムA)、マグネシウムA)、アルミニウムA)、
ケイ素C)、リンC)、カリウムC)、カルシウムA)、チタンC)、バナジウムC)、クロムA)、マンガンA)、鉄A)、コバルトC)、ニッケ
ルA)、銅A)、亜鉛A)、ガリウムC)、ゲルマニウムC)、ヒ素A)、セレンA)、ルビジウムC)、ストロンチウムC)、ジルコニウムC)、
モリブデンA)、銀B)、カドミウムA)、スズB)、アンチモンA)、セシウムC)、バリウムC)、タングステンC)、水銀A)、タリウムC)、
鉛A)、ビスマスC)、ウランA))を測定した。その結果、pH、マンガンを除き、水質基準値や水質管理目標値を超過する項
目はなかった。すなわち、pHに関しては、木曽川(n=33)で平均pH 6.9(pH 6.7∼7.2)、長良川(n=20)で平均pH 7.6
(pH 9.0 ∼ 7.1)であり、長良川の平成 17 年 8 月(pH8.9)及び 18 年 6 月(pH9.0)と 8 月(pH8.8)に水質基準値(pH
5.8∼8.6)を超過した。長良川においては夏場の藻類増殖傾向の影響を受けてpHの上昇が見られたものと推測された。
マンガンに関しては、木曽川(n=32)で平均 0.008 mg/L(0.002 ∼ 0.024 mg/L)
、長良川(n=19)で平均 0.021 mg/L
(0.001 未満∼0.058 mg/L)であった。水質基準値(0.05 mg/L)を越えた試料は長良川の平成 18 年 6 月(0.058 mg/L)
のみであったが、水質管理目標値(0.01 mg/L)を超えた試料は木曽川で 8 試料(25 %)
、長良川で 11 試料(58 %)見
られた。元素分析試料については全て 0.45 μmメンブランフィルターによるろ過処理をしており、ろ過粒径によって
数値が異なる現象も見られ、マンガンの検出要因は両河川の流域の地質環境にあると推測された。
この他のその他の項目については、水道法上は原水においても問題がない濃度レベルであったが、木曽川と長良川の
水質(測定結果の平均値)の比較によって得られた若干の特徴について触れておく。すなわち、主成分イオン濃度で見
ると、ナトリウムイオンや塩素イオンには大きな差はなかったが、木曽川に比べて長良川はカルシウムイオン、硝酸態
窒素、炭酸水素イオン、硫酸イオンが高く、逆にフッ素イオンが低かった。長良川でカルシウムイオン濃度が高いのは
流域に石灰岩地帯を有していること、木曽川でフッ素イオン濃度が高いのは流域に花崗岩地帯を有していることが要因
と推測された。また、硝酸態窒素濃度、硫酸イオン濃度が長良川で高かったのは、試料採取地点が木曽川では山間部か
ら平野部への入り口であったのに対して、長良川は平野部から海に注ぎ込む入り口付近であり生活排水や水田等の流域
環境の影響を受けたものと推測された。なお、主成分以外の微量元素濃度で見ると、リチウムについて木曽川(n=32)
で平均 0.0025 mg/L(0.0011∼0.0046 mg/L)であったのに対して、長良川(n=19)で平均 0.0006 mg/L(0.0001∼0.0009
mg/L)といずれも微量ながら明らかに木曽川が高いことが判明した。リチウムはペグマタイトに多く含まれていること
が知られており、リチウムについても木曽川と長良川の流域地質の違いを反映した結果が得られたと推測された。
注)
A)
:旧来からの水道法項目、B) :新規の水道法項目、C) :その他の調査項目
【結語】愛知県における主要な水道水源である木曽川、長良川の水質は、pH やマンガンを除き、水質基準値や水質管
理目標設定項目や要検討項目目標値を超過する項目はなかった。また、一部の項目において、水源による濃度の違いや
特徴的な濃度変動が認められた。これらは水道原水についての水質であり、実際の水道給水栓においては原水の水質に
併せた浄水処理がされている。
以上の調査結果を基に、当所における水質データベースを更新することが出来た。本調査のみでは十分に解析できな
かった季節変動や年変動等の解析も今後これらのデータベースの蓄積によってさらに精度のよい詳細な解析が可能と
なり、健康危機管理時の安全評価の基礎資料としても的確な情報提供が可能になると確信している。なお、現時点では
38 元素の新規ファイルとそれ以外の項目を収納した改良旧ファイルの 2 つのデータベースで管理しているが、今後更
に進化させて、迅速且つ有機的な検索システムの構築を目指したい。
Ⅱ 誌上発表
【研究報告書】
なし
【その他】
1.鉱泉分析における電気伝導率測定の有用性について
大沼章子
環境省業務報告 平成 17 年度鉱泉分析法指針改定検討調査 2006、
(財)中央温泉研究所
2. 水中ヒ素化学形態別分析における試料の保存について
大沼章子、小池恭子、遠山明人
愛知県衛生研究所報、57、25-36、2007
3. LC-ICP-MS による愛知県の水道原水中ヒ素について
大沼章子、小池恭子、遠山明人
愛知県衛生研究所報、57、37-48、2007
Ⅲ 学会発表等
1.Tacrolimus Hydrate Ointment Inhibits Skin Plasma Extravasation Induced by Topically Applied m-Xylene But
Not Capsaicin in Rat
Tacrolimus hydrate ointment is widely used in the treatment of some skin chronic inflammatory diseases,
including atopic dermatitis. However, the effects of this treatment on acute inflammation in the skin remain
yet to be fully elucidated. Topically applied capsaicin produces skin plasma leakage by tachykinin endogenously
released from sensory nerves. Skin effects only partially involving such neural mechanisms can also be exerted
by m-xylene. We investigated the effects of tacrolimus hydrate ointment on skin plasma extravasation induced
by topically applied capsaicin and m-xylene in rats.
Capsaicin (10 mM) and m-xylene (99%) were applied to the shaved abdomen of anesthetized rats at 8 h after
pretreatment with tacrolimus hydrate ointment (0.01%, 0.03%, or 0.1%) or its vehicle only. Skin samples were
collected 40 min later. The level of Evans blue dye leakage was used as a parameter of skin plasma leakage.
In addition, plasma concentrations of m-xylene after skin application were measured to determine whether
tacrolimus hydrate ointment influences skin penetration of m-xylene.
Results: Tacrolimus significantly suppressed skin plasma leakage induced by m-xylene, but not by capsaicin,
in a dose-dependent manner. Use of 0.1% tacrolimus inhibited leakage by 40%. Tacrolimus did not significantly
alter the penetration of m-xylene.
These results show that tacrolimus hydrate ointment inhibits skin plasma leakage induced by topically applied
m-xylene, but not capsaicin, an effect unlikely to be attributable to reduced tachykinin release from sensory
nerves or skin penetration of m-xylene.
Shiho Morii, Fumio Kondo, Yoshitomo Ikai, Mio Miyake, Masaki Futamura, Komei Ito, Tatsuo Sakamoto
American Academy of Allergy Asthma and Immunology (AAAAI) 2007 AAAAI Annual Meeting、San Diego, 2007.2.23-27
2. 愛知県におけるホウ素含有温泉について
愛知県の温泉水(2005 年度末現在の温泉台帳 121 源泉中 96 源泉について)のメタホウ酸濃度の最大値は知多半島に
あるナトリウム−塩化物強塩泉の 465 mg/kgであり、知多半島では泉質的には殆どが塩化物泉であった。泉質別のメタ
ホウ酸濃度の幾何平均値は、塩化物泉類の 4.8 mg/kgに対して炭酸水素塩泉類は 12.6 mg/kgと、県内全体では三河地区
北東部の山間部から三河湾、さらに伊勢湾南部にかけて県内を通過する中央構造線内帯(北側)に比較的多く存在する
炭酸水素塩泉類の方が幾何平均値の高いことが判明した。一方、地質区分別にみると、メタホウ酸濃度の幾何平均値は
新生代新第三紀中新世師崎層群で 80.0 mg/kgと最も高く、次いで領家変成帯岩類(領家変成岩類で 22.2 mg/kg、領家
帯花崗岩類で 5.4 mg/kg)で、その他の地質では1mg/kg以下であった。したがって、愛知県におけるホウ素含有温泉
は、主に新生代新第三紀中新世師崎層群で形成される知多半島や領家変成帯岩類を有する中央構造線内帯沿いに多く湧
出していることがより明らかとなった。B/Cl比を算出したが、0.00004∼2.03 の範囲(幾何平均値 0.0046)にあり、領
家変成岩類からの湧出が推定される温泉でB/Cl比は高い傾向(幾何平均値 0.098)にあった。なお、ホウ素は、井深、
泉温、電気伝導率、蒸発残留物、Li+、Na+、K+、NH4+、Ba2+、F-、Cl-、I-、HCO3-、CO2と有意な正の相関があった。
大沼章子、小池恭子、猪飼誉友、遠山明人
日本温泉科学会第 59 回大会 秋田市 2006.9.6
Ⅳ 試験検査
1. 水系別水質調査
1)基本成分調査
愛知県内には一級河川である木曽川、矢作川、豊川が流れており、いずれも水道水源として利用されている。また、
これらの河川水は、それぞれの平野部において地下水の涵養源としても大きな役割を担っており、水道原水である地下
水の水質への影響を把握するうえにおいても重要である。水系別の河川水の水質とその変動を把握する目的で、県・生
活衛生課からの依頼により、木曽川については名古屋市上水道取水口(犬山市継鹿尾)
、矢作川は明治用水取水口(豊
田市水源町)
、豊川は牟呂用水取水口(新城市豊島)で、年 2 回(平成 18 年 8 月及び平成 19 年 2 月)水質調査を行っ
た。その調査結果の詳細を資料−生科−表 1 に示した。
本調査は昭和 52 年度より実施されており、その間これらの河川水の主成分濃度の組成比には殆ど変化は認められて
いない。平成 15 年 10 月 10 日の水道法施行規則等の一部改正に伴い、水質基準(50 項目)とは別に、旧法の監視項目
に相当する水質管理目標設定項目(後述の農薬類を含む 27 項目)が設定された。そこで、平成 16 年度より本調査を水
質管理目標設定項目に着目した調査とし、資料−生科−表 1 に示した 14 項目を基本成分として調査した。その結果、
マンガン(目標値:0.01 mg/L以下)については矢作川の 8 月と 2 月及び豊川の 8 月、有機物等(過マンガン酸カリウム
消費量)(同:3 mg/L以下)については豊川の 2 月を除く全て、腐食性(ランゲリア指数)*(同:-1 程度以上とし極
力 0 に近づける)についてはいずれの調査においても、調査結果が目標値を超えていた。しかし、いずれも水道原水と
しての河川水中濃度であり、特に問題は認められなかった。
*:水道水による配管等の腐食の可能性を示す指標。絶対値が大きい程その可能性が高く、愛知県では絶対値が 2 以
上の場合は「目標値を満たしていない」として注意を促している。
2)農薬類調査
水質管理目標設定項目にリストアップされた農薬 101 項目について、県・生活衛生課からの依頼により、矢作川およ
び豊川(7 月 31 日採水)
、木曽川(8 月 2 日採水)の調査を実施した。その結果、イプロベンホス(目標値 0.008 mg/L)
が矢作川より 0.00022 mg/L、フェノブカルブ(目標値 0.03 mg/L)が豊川より 0.0005 mg/L と目標値の 1/100 を超えて
検出された。上記以外の農薬についてはすべて定量下限値未満であった。木曽川については、全ての農薬が定量下限値
未満であった。
2. 水道原水水質調査
1)ダム水の水質調査
羽布ダム(三河湖、愛知県のほぼ中央部・東加茂郡下山村)では昭和 54 年以降数回にわたってかび臭が発生してい
るため、昭和 55 年度より県・生活衛生課からの依頼で同ダム水の水質調査を継続して実施している。
本年度は、平成 18 年 6 月 6 日、7 月 4 日、及び 8 月 8 日にダムえん堤内側の表層水について調査を実施した。理化
学調査の項目は pH 値、電気伝導率、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素、全窒素、全リン、TOC(全有機炭
素)
、クロロフィルa等で、生物相の調査としては植物及び動物プランクトンの同定とその個体数等の計測を実施した。
結果を資料−生科−表 2∼表 3 に示した。8 月の調査で、水質基準(0.00001 mg/L)を 10 倍以上超過するジェオスミン
(0.000117 mg/L)が検出され、同時にそれを産生すると考えられる藍藻類も認められたが、同時期に水道水の着臭など
の被害がなかったことから、このかび臭発生はそれ以上拡大することなく終焉したものと考えられた。
2)特定項目水質調査
県・生活衛生課からの依頼により、
水道原水に含まれる可能性があり、
健康に影響を及ぼす恐れのある物質として 1,2-
ジクロロエタン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,2-トリクロロエチレン、トルエン、及びメチル-t-ブチルエー
テルの調査を実施したが、すべて定量下限値未満であった。調査試料は、10 月 24 日及び 31 日に県内水道事業者等の
主要な水源 10 箇所から採取した水道原水であり、定量下限値は、1,2-ジクロロエタンが 0.0004 mg/L、1,1,2-トリク
ロロエチレンが 0.0006 mg/L、これら以外の項目が 0.001 mg/L である。
資料−生科−表 1 河川水(基本成分)の水質調査結果
河川名
木曽川
矢作川
豊川
採水地点
犬山市継鹿尾
(名古屋市上水道取水口)
豊田市水源町
(明治用水頭首工)
新城市豊島
(牟呂松原頭首工)
採水部位
表層
表層
表層
採水年月日
2006年8月21日 2007年2月5日 2006年8月28日
採水時刻
天 候
2007年2月13日
2006年8月28日
2007年2月13日
11:00
11:00
11:15
11:20
13:30
13:40
前々日
晴
晴
晴
晴
曇
晴
前日
晴
晴
曇
晴
曇
晴
曇
晴
曇
晴
曇
晴
気 温
当日
(℃)
28.0
11.0
28.5
14.2
30.0
14.2
水 温
(℃)
24.5
6.8
26.0
9.0
25.5
9.2
アンチモン*
(mg/L)
0.0005 未満
0.0005 未満
0.0005 未満
0.0005 未満
0.0005 未満
0.0005 未満
ウラン*
(mg/L)
0.0002 未満
0.0002 未満
0.0002 未満
0.0002 未満
0.0002 未満
0.0002 未満
ニッケル*
(mg/L)
0.001 未満
0.001 未満
0.001 未満
0.001 未満
0.001 未満
0.001 未満
亜硝酸態窒素
(mg/L)
0.005 未満
0.005 未満
0.020
0.005 未満
0.017
0.005
フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(mg/L)
0.001 未満
0.001 未満
0.001 未満
0.001 未満
0.001 未満
0.001 未満
カルシウム、マグネシウム等(硬度)(mg/L)
18
21
17
21
22
25
マンガン*
(mg/L)
0.008
0.009
0.013
0.017
0.011
0.003
遊離炭酸
(mg/L)
1.6
1.3
1.8
1.5
1.3
1.0
1,1,1-トリクロロエタン
(mg/L)
0.001 未満
0.001 未満
0.001 未満
0.001 未満
0.001 未満
0.001 未満
5.5
4.4
4.2
3.6
4.0
3.0
1 未満
1 未満
1 未満
1 未満
1
1 未満
42
77
51
58
50
55
6.9
6.8
7.4
7.1
7.3
7.1
腐食性(ランゲリア指数)
-2.3
*溶存態(0.45μm メンブランフィルターろ過)
-2.4
-2.0
-2.0
-1.4
-2.1
有機物等(過マンガン酸カリウ
(mg/L)
ム消費量)
臭気強度(TON)
蒸発残留物
pH 値
(mg/L)
3. 特殊有害物汚染調査
1) 消毒副生成物調査
県・生活衛生課からの依頼により、給水栓水中に含まれる可能性のある消毒副生成物(ジクロロアセトニトリル、抱
水クロラール)の調査を実施した。その結果、10 試料中 7 試料より抱水クロラールが 0.003∼0.006 mg/L 検出された
が、水道法が定める目標値(0.03 mg/L)の 10∼20 %のレベルであり、問題はなかった。ジクロロアセトニトリルについ
ては、すべて定量下限値未満であった。調査試料は、9 月 11 日に県内水道事業者が配水した給水栓水であり、定量下
限値は、ジクロロアセトニトリルが 0.004 mg/L、抱水クロラールが 0.003 mg/L である。
2)基準項目調査
水道法改正に伴う厚生労働省令第 142 号(平成 15 年 9 月 29 日)によって、安全な水道水を供給するための水質管理
計画の中に水質基準 50 項目ごとに定められた検査頻度等の検査計画を明記し、各水道事業者はそれに基づき検査を実
施することが義務付けられた。県・生活衛生課からの依頼により、県内の水道事業者の水道水質管理状況の把握のため
に水道の給水栓水 11 件について、水質基準の全 50 項目について検査を実施した。本年度調査した水道水は、いずれの
検体、いずれの項目においても、すべて水質基準を満たしていた。
資料−生科−表 2
羽布ダム(三河湖)水質試験結果(理化学試験)
採取月日
採取地点
水温
℃
外観
臭気
pH値
電気伝導度
アンモニア性窒素
亜硝酸性窒素
硝酸性窒素
全窒素
全リン
過マンガン酸カリウム消費量
TOC
クロロフィルa
ジェオスミン
2-メチルイソボルネオール
ミクロキスティン-LR
天候
水位
流入量
流出量
湖色
μS/㎝
mg/L
mg/L
mg/L
mg/L
mg/L
mg/L
mg/L
mg/L
mg/L
mg/L
mg/L
m
m3/s
m3/s
6月6日
えん堤
17.9
微黄色
微濁
なし
7.2
40.8
0.02 未満
0.005 未満
0.25
0.46
0.015
7.9
2.0
0.0150
0.000001
0.000001 未満
0.0001 未満
晴
466.14
1.6
2.5
暗緑色
7月4日
えん堤
22.5
僅微黄色
僅微濁
なし
6.9
41.0
0.06
0.025
0.27
0.52
0.014
6.9
1.8
0.0059
0.000001 未満
0.000001 未満
0.0001 未満
晴
465.78
3.8
4.0
暗緑色
8月8日
えん堤
22.7
微黄色
微濁
なし
7.5
39.2
0.05
0.026
0.26
0.54
0.024
8.6
2.3
0.0224
0.000117
0.000001 未満
0.0001 未満
晴
465.67
2.7
7.0
暗緑色
4.水質不適項目追跡調査(クリプトスポリジウム等調査)
県・生活衛生課からの依頼により、水道水源として利用している木曽川、矢作川、豊川の 3 河川水について、クリプ
トスポリジウム等の調査を年 2 回(平成 18 年 8 月及び平成 19 年 2 月)実施し、合計 6 検体について検査した。クリプ
トスポリジウム及びジアルジアは当所の毒性部で、大腸菌群最確数、大腸菌最確数、及び嫌気性芽胞菌数は微生物部で
検査を実施し、当生活科学部では、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素、塩化物イオン、pH 値、色度、濁度、電気伝導率、
アンモニア態窒素の水質成分について、また、有機物の含有量については水質基準項目である 有機物(全有機炭素(TOC)
の量) 及び水質管理目標設定項目である 有機物等(過マンガン酸カリウム消費量) の両項目について検査した。
その結果、水質成分についてはいずれの調査においても異常は認められなかった。また、クリプトスポリジウム等は
いずれの検体からも検出されなかった。
5.輸入食品中の放射能検査
昭和 61 年のチェルノブイリ原発事故によって、主にヨーロッパから我が国に輸入される食品の放射能汚染が懸念され
た。セシウム-137 の半減期は約 30 年であり、国レベルの監視では、事故から 20 年が経過した現在でも時折暫定限度を超
えた食品が見つかっている。本県でも平成元年より輸入食品中の放射能検査を独自に実施しており、本年度は、県・生活
衛生課からの依頼により、県内で収去されたパスタ類 3 件、野菜及びその加工品 16 件、果物及びその加工品 4 件、ワイ
ン 1 件、飲料水 1 件、菓子類 1 件、魚介加工品 1 件、オリーブオイル 2 件、その他食品 1 件の計 30 件と、中核市からの
依頼によるパスタ類 2 件、野菜及びその加工品 2 件、果物及びその加工品 1 件の計 5 件、総計 35 件の輸入食品について、
セシウム-134 とセシウム-137 の濃度測定を行った。その結果、いずれも定量下限値(5 Bq/kg)未満であり、輸入食品中の
放射能濃度の暫定限度(セシウム-134 とセシウム-137 の合計で 370 Bq/kg)を超えたものはなかった。
資料−生科−表 3
採取月日
採水地点
羽布ダム(三河湖)水質試験結果(生物相調査)
6月6日
7月4日
えん堤
えん堤
8月8日
えん堤
Cyanophyceae(藍藻類)
Microcystis aeruginoza *
Phorumidium tenue +
5
-
3
-
6
1
8700
2
1
1
-
120
5
2
2
3
-
6
118
130
5
4
2
2
7
7
3
-
22
5
1
2
-
56
-
2
2
-
9
17
86
50
-
-
2
Bacillariophyceae(珪藻類)
Acanthocecras zacharriasi
Asterionella formosa
Aulacoseira granulata +
Cyclotella sp.
Cyclotella spp.
Fragilaria crotonensis
Melosira varians +
Navicula sp.
Nitschia acicularis
Chlorophyceae(緑藻類)
Chlamydomonas spp.
Eudorina spp. *
Eudorina elegans *
Pandoria sp.
Pandoria morum *
Scenedesmus sp.
Sphaerocystis sp.
Spondylosium moniliforme +
Staurastrum dorsidentiferum
8
3
7
3
1
Dinophyceae(渦鞭藻類)
Ceratium hirundinella
Peridinium sp.
Peridinium spp.
Cryptophyceae(クリプト藻類)
Cryptomonas spp.
Zoo− plankton(動物プランクトン)
Polyarthra sp.
単位:細胞数/mL
+: 糸状体数/mL
*:群体数/mL
-:不検出
6.メッキ廃水中のシアン含有量検査
電気メッキ事業所では金属表面処理のため毒物であるシアン化合物を使用することがあり、廃水の処理が適切に行わ
れていない場合には、シアン化合物が廃水中に流出する恐れがある。県・医薬安全課からの依頼により、毒物及び劇物
取締法(施行令第 38 条第 1 項第 1 号)に基づいて、名古屋市内の電気メッキ事業所の廃水 10 件についてシアン含有量
の検査を行った。その結果、2 件から 0.43 mg/L、0.14 mg/L のシアン化合物が検出されたが、いずれも基準値(1.0 mg/L)
未満であった。他の 8 件は、定量下限値(0.05 mg/L)未満であった。なお、参考のため、同時に残留塩素及び pH 値の
測定も実施したが、異常は認められなかった。
7.温泉分析調査
県・環境部自然環境課からの依頼により、温泉水の汲み上げによる成分等の変化を調査するとともに、近接する源泉
の相互影響を調査し、今後の温泉行政を進めるうえでの基礎資料とするための温泉分析調査を実施した。
本年度は、所有者が同一の近接する2源泉(以下、F1、F2)と、現在は1号泉として単独で存在するがすでに同じ所有
者が近接地に2号泉を掘削中である1源泉(Y1)の合計3源泉について温泉分析を実施した。これらの源泉の直近の分析
年月と泉質は、F1は2000年5月でナトリウム−塩化物・炭酸水素塩温泉、F2は2003年12月でナトリウム−塩化物・炭酸
水素塩温泉、Y1は1998年9月でナトリウム−炭酸水素塩温泉であった。今回の調査では、特に泉質的な変化は見られな
かったが、F1やF2に関しては鉄が前回分析値のppmオーダーから1桁低い濃度になっていた。
8. 水質基準項目の依頼検査
愛知県では、平成 15 年 5 月 30 日の水道法の改正に伴って定められた 50 項目の水質基準項目のうち、ホウ素及びそ
の化合物、1,4-ジオキサン、2-メチルイソボルネオ−ル、及びジェオスミンの 4 項目の検査を当所で、衣浦東部保健所
で残り 46 項目を、一宮、半田、豊川各保健所では残り 46 項目のうち 14 項目についてのみ実施することにした。本年
度は県内の水道事業者等からの依頼により、給水栓水 163 検体、水道原水 19 検体、プール原水 2 検体、その他 5 検体
について当所分担 4 項目の検査を実施した。その結果、測定濃度範囲と定量下限値以上の検出率は、ホウ素及びその化
合物は 0.02 mg/L 未満∼1.0 mg/L で 17.6 %(33/187)、1,4-ジオキサンは 0.001 mg/L 未満∼0.002 mg/L で 3.7 %(7/188)、
ジェオスミンは 0.000001 mg/L 未満∼0.000008 mg/L で 52.3 %(45/86)、2-メチルイソボルネオ−ルは 0.000001 mg/L
未満∼0.000001 mg/L で 14.0 %(12/86)であった。したがって、いずれの検体、いずれの検査項目も水質基準を満たし
ており、それらの検出率は前年度とほほ同様であった。
9. 水質管理目標設定項目の依頼検査
県内の水道事業体からの依頼により、農薬の検査を 3 件、農薬以外の水質管理目標設定項目の検査を 15 件実施した。
農薬に関しては、依頼項目全てにおいて定量下限値未満であった。農薬以外の項目については、腐食性(ランゲリア指
数)を除き目標値を超過する試料はなかった。腐食性(ランゲリア指数、目標値:-1 程度以上とし極力 0 に近づける)
検査の依頼があった 5 試料の指数は-1.3∼-2.2 の範囲にあり、その中の 2 試料が-2 以下であった。この項目は、水道
施設の維持管理や食味、生活利用上の観点から水質管理目標設定項目として目標値が設定されたものであり、目標値を
超過しても健康影響などの問題はないものと考えられる。そのため当所では、腐食性(ランゲリア指数)はその絶対値
が 2 以上の試料について、「目標値を満たしていない」というコメントを成績に付記している。
10.その他の水質一般依頼検査
プ−ル水の依頼検査が 1 件あった(依頼項目:pH 値、濁度、過マンガン酸カリウム消費量、大腸菌群、一般細菌)
。
結果は、いずれの項目においても愛知県プ−ル条例の水質基準に適合していた。なお、大腸菌群等細菌検査は当所微生
物部で実施した。
11. 放射能試験依頼検査
全β放射能及び液体シンチレーション法によるラドンとトリチウムの測定について、一般依頼検査を実施している。
、30 ×10-10 Ci/kg (111 Bq/kg)以上では
温泉法上は、ラドン濃度が 20 ×10-10 Ci/kg (74 Bq/kg)以上では「鉱泉」
「療養泉」と定義される。本年度のラドン濃度検査は、新規に温泉掘削し検体を依頼者が持ち込んだもの 1 件と、温泉
中分析依頼検査に伴う現場検査 1 件の計 2 件実施したが、いずれもラドン濃度による鉱泉の規定には合致しなかった。
なお、全β放射能及びトリチウム濃度検査については、本年度は検査依頼がなかった。
12. 庁舎の水質管理
当所の水道は多くのビル、マンション等と同じく水道事業者(当所に関しては名古屋市上水道)の水道水を一旦受水
槽に受けて使用している簡易専用水道である。簡易専用水道は、名古屋市の行政指導により一般細菌、大腸菌、pH 値、
亜鉛、鉄の五項目の検査を行うことが推奨されている。当所で使用している水道の安全性を確認する目的で、年 2 回、
これら 5 項目について給水栓水の水質検査を行っている。本年度は 7 月と 1 月に実施し、いずれの項目も水道法の水質
基準に適合していた。なお、一般細菌と大腸菌群の検査については、当所微生物部において実施した。
13.温泉分析依頼検査
当所は、温泉法第二条別表に掲げられた温度や物質を含む温泉の成分分析を行っている(登録番号 愛知県第 1 号)
。
温泉法で指定された検査指針では、温泉分析を小分析と中分析に区分しており、小分析は主に依頼主が持ち込んだ検体
の検査を行い温泉であるか否かを推定するための検査、中分析は現場試験を含み温泉であるか否かを温泉分析書(旧・
環境庁自然保護局長通知による様式)にて判定するための検査としている。なお、温泉法第二条では、
「温泉」を、常
水と区別する鉱泉と、鉱泉のうち特に治療の目的に供しうる療養泉を定義し、区別している。
本年度は小分析検査の依頼はなかった。中分析検査は既存温泉の再分析 4 件と新規の 1 件であった。その結果、新規
の 1 件は今回の調査では泉温が 25 ℃未満であり、成分規定も満たしていなかったため判定は 温泉法第 2 条別表に規
定する温泉に該当しない とした。また、その他の再分析温泉水についてはいずれも成分等に大きな変動はなかった。
第3章 精度管理
第1節 保健所試験検査精度管理
愛知県における「保健所試験検査精度管理事業」は昭和 57 年に全国に先駆けて開始され、平成 18 年度で 25 年目を迎
えた。この事業は保健所試験検査の技術の向上及び精度の確保を図る目的で、健康福祉部健康担当局生活衛生課及び衛
生研究所が協働して実施している。事業の効果的推進のために精度管理会議及び 3 部会(微生物部会、環境水質部会及
び食品化学部会)が設置され、18 年度は 6 月 8 日開催の精度管理会議において事業の基本方針が策定された(精度管理
−表 1) 。各部会においては、担当部が調製した検体を実施説明会等で配布し、各検査施設では期日までに検査を実施
した結果を生活衛生課に報告した。報告された検査結果を担当部で集計・解析し、各部会において事業評価及び報告書
原案を作成した。1 月 31 日開催の精度管理会議における報告書原案の検討をふまえて各部会の報告書が生活衛生課で
取りまとめられ、これをもとに結果説明会が開催された。また、技術研修については担当部が実施した。
精度管理−表 1 平成 18 年度保健所試験検査精度管理実施概要
名
称
年月日
精度管理会議
実施説明会 前期
18. 6. 8
18. 7. 5
実施説明会 後期
食品化学技術研修
18. 9.26
18.10.6
寄生虫検査技術研修
水質基準項目検査技術研修
精度管理会議
微生物検査技術研修
結果説明会
18.12.15
19. 1.18
19. 1.31
19. 2. 2
19. 2.19
対 象
担 当 部
県 4 保健所、県食品衛生検査所、 中
核市 3 保健所、衛生研究所
県 4 保健所、中核市 3 保健所
県 4 保健所、県食品衛生検査所、 中
核市 3 保健所
県 4 保健所、中核市 3 保健所
県 4 保健所、中核市 3 保健所
化学部・生活科学部
県 4 保健所、中核市 3 保健所
県 4 保健所、県食品衛生検査所、 中
核市 3 保健所
微生物部
微生物部・毒性部
化学部・生活科学部
微生物部
化学部
毒性部
生活科学部
1. 微生物部会
(1) 細菌検査
平成 18 年度は、県 4 保健所に微生物検査を実施している中核市の 3 保健所を加えた 7 保健所(一宮保健所、半田保
健所、衣浦東部保健所、豊川保健所、豊橋市保健所、岡崎市保健所、豊田市保健所)を対象に、病原体の検査技術を再
確認することを目的として、病原菌の分離・同定に関する精度管理を実施した。
また、精度管理の一環として、
「微生物検査技術研修会」を 2 月 2 日に衛生研究所において実施した。
ア 精度管理
Shigella flexneri 6、Salmonella Typhi、及び Vibrio parahaemolyticus をそれぞれ別個に健常者便に添加し、キ
ャリー・ブレア培地に保存した3検体を配布した。各施設では、各検体から分離した菌株について生化学的性状及び血
清学的検査を実施し、その検査結果を基に、全ての施設で正しく同定していた。
イ 研修
保健所試験検査精度管理の一環として、微生物検査実施保健所の検査担当者(7 施設、各施設 1∼2 名の 12 名)を対
象に、
「微生物検査技術研修会」を 2 月 2 日に衛生研究所で実施した。
この研修では、梅毒及び食品中の腸管出血性大腸菌 O157・O26 の新しい検査法を中心として、検査技術の更なる向上
及び各機関相互の情報共有を図った。
(2) 寄生虫検査技術研修会
県内 7 保健所(中核市を含む)12 名の担当職員を対象として、平成 18 年 12 月 15 日に名古屋市立大学医学部において
実施した。その内容は、同大学医動物学教室の籔義貞講師による「寄生虫検査の基本とその検索方法」の講義、及び、
わが国でみられる寄生虫卵 16 種類(回虫受精卵、回虫不受精卵、ウェステルマン肺吸虫卵、広節裂頭条虫卵、東洋毛
様線虫卵、日本住血吸虫卵、鞭虫卵、縮小条虫卵、鉤虫卵、横川吸虫卵、肝吸虫卵、有鉤(無鉤)条虫鉤球子、マンソ
ン裂頭条虫卵、小形条虫卵、肝蛭卵、蟯虫卵)を、各自の顕微鏡を使用して自由に鏡検した後、虫卵のスケッチを義務
づけ鑑別実習を実施した。また、初心者に対してはディスカッション顕微鏡(5 人が同時に鏡検可能)を用いて虫卵の
見方について指導した。
実習の最後に効果判定を行ったところ、出題した 5 種類の寄生虫卵(回虫受精卵、鞭虫卵、横川吸虫卵、縮小条虫卵、
東洋毛様線虫卵)の正解率は 33∼100%であった。近年は業務上の寄生虫検査もほとんどないことから、このような研
修会において基本的な検査法と典型的な虫卵の識別法を把握することは重要と考えられる。
2. 環境水質部会
水質検査実施保健所(一宮、半田、衣浦東部、及び豊川)
、中核市保健所(豊橋市、岡崎市、及び豊田市)
、及び、当
所の 8 施設を対象に、水道法で水質基準が定められている水銀について実施した。標準添加した当所の水道水、及び、
低濃度ではあるが水銀が検出される地下水をそれぞれ試料として用いて測定を実施したところ、全ての施設の結果は非
常に良好であり、本項目における測定精度にはほとんど問題がなかった。その反面、添付書類の不備やデータ処理のミ
ス、データの記載ミスなど初歩的なミスが目立ち、そのことから、管理体制の見直しや強化の必要性が示唆された。
さらに、平成 19 年 1 月に、保健所水質検査職員の資質向上を目的に技術研修会を開催した。今回は「ICP-MS による
重金属の測定」をメインテーマとし、併せて「色濁度計の校正方法」及び「臭気サンプルを用いた臭気判定」について
も研修を実施した。
3. 食品化学部会
平成 17 年 5 月以降、欧州各国においてトウガラシ由来食品から法定外着色料であるスーダンⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、パラ
レッド(以下「スーダン色素類」という。
)等が相次いで検出された。また、平成 17 年度の我が国における輸入食品の
食品衛生法違反統計に、スーダンⅠ及びⅣの各1件を含めた 30 件に及ぶ法定外着色料の違反事例が計上されているよ
うに、法定外着色料を使用した食品違反事例は後を絶たない。このことから、平成 18 年度の食品化学部会精度管理事
業については、食品業務管理基準により食品衛生検査を実施している県保健所(一宮、半田、衣浦東部、豊川)
、県食
品衛生検査所及び中核市保健所(豊橋市、岡崎市、豊田市)を対象に、法定外着色料を含めた合成着色料の検査技術に
関する精度管理を実施した。また、平成 18 年 5 月に厚生労働省からスーダン色素類の試験法が通知された(以下「通
知試験法」という。
)ことから、通知試験法の技術研修を実施した。
精度管理については、平成 18 年 7 月 5 日に当所において試験品の配布を兼ねて説明会を開催した。その後、各検査
施設で検査実施標準作業書に従い検査を実施し、8 月 18 日を検査結果の報告期限とした。試験品は、法定着色料 2 種
類(食用黄色4号、食用青色1号)が使用された市販の清涼飲料水に、法定外着色料 1 種類(ポンソーR)を添加して
調製した。検査結果のまとめとして、順相系薄層クロマトグラフィーのいずれの溶媒系でも試験品から 3 つのスポット
が観察され、それらは標準品の食用黄色 4 号、食用青色 1 号、ポンソーR の色調及び Rf 値に一致していた。重ね点付
により試験品由来の 3 スポットは 3 種類の標準品のそれと重なり合い、それぞれが単一スポットとして出現していた。
逆相系薄層クロマトグラフィーでも試験品から 3 つのスポットが観察され、標準品の食用黄色 4 号、食用青色 1 号、ポ
ンソーR の色調及び Rf 値に一致していた。重ね点付により試験品の 3 スポットは、3 種類の標準品と個々に重なり合っ
たスポットとして観察されていた。ポンソーR の確認として、薄層クロマトグラフィーかきとり調製品の吸収スペクト
ルをポンソーR と比較、また、紫外部又は可視部検出器付液体クロマトグラフィー、フォトダイオードアレイ検出器付
液体クロマトグラフィーの保持時間及び吸収スペクトルの一致により確認していた。すべての施設で正確に食用黄色 4
号、食用青色 1 号及びポンソーR を検出・確認しており、各施設の着色料検査における精度は高いものであった。
また、技術研修会については、10 月 6 日に検査施設の実務担当者 12 名を対象に当所化学部において開催した。研修
内容は、食品にスーダン色素類 2 種類を添加した 4 組(パラレッド+スーダンⅠ、パラレッド+スーダンⅡ、パラレッ
ド+スーダンⅢ、パラレッド+スーダンⅣ)の計 16 検体の試験品から、各自が 1 検体を用いて、通知試験法に従い、
スーダン色素類の薄層クロマトグラフィーによる確認試験を実施した。通知試験法に従って分析した結果、添加された
スーダン色素類 2 種類を間違いなく検出したことから、担当者の着色料検査技能が高いこと、また担当者の検査実施に
関する知識・技術の向上に寄与できたことを確認した。
第2節 その他の精度管理
Ⅰ 衛生検査所精度管理事業
愛知県における「衛生検査所精度管理事業」は、「保健所試験検査精度管理事業」と同じく昭和 57 年に全国に先駆け
て開始され、平成 18 年度で 25 年目を迎えた。民間の検査所を対象としてこのような 精度管理事業を実施し、住民の
保健、衛生状態の維持・向上に不可欠な衛生検査所における検査精度の管理に積極的に取り組んでいる都道府県は、精
度管理の重要性が広く唱えられている現在においても少数に過ぎず、愛知県の健康福祉行政として誇るべき事業の一つ
と考えられる(精度管理−表 2)
。
精度管理−表 2 衛生検査所精度管理実施結果
名
称
衛生検査所精度管理
事業 実施説明会
同上 寄生虫研修会
年月日
18. 9.26
内 容
細菌検査
対象・参加人員
衛生検査所検査担当者
48 人
18.12.15
寄生虫検査
衛生検査所検査担当者
20 人
同上 結果報告会
19. 2. 6
細菌検査
寄生虫検査
衛生検査所検査担当者
73 人
場所
衛生研究所
担当部
微生物部
名古屋市立大
学医学部
愛知県
医師会館
毒性部
微生物部
毒性部
1.微生物学的検査
県内で細菌検査を実施している衛生検査所は、その業務内容から 2 つに分けられる。1 つは食品取扱い者等の健常者
検便を行っている検査所、もう 1 つは健常者検便に加え、病院等からの患者検便を行っている検査所である。当所では
当精度管理事業が発足した昭和 57 年当初より、上記 2 つの業務内容を考慮して実施してきた。平成 18 年度は県内の衛
生検査所 25 施設を対象として精度管理を行った。赤痢菌等の病原菌を健常者便に添加して調製した精度管理用の検体
を5検体準備し、便からの菌の分離・同定検査として実施した結果は次のとおりであった。
(1) 赤痢菌について(2 検体)
Shigella sonnei について、25 施設全施設で生化学的性状及び血清学的性状の検査結果から正しく同定されていた。
Shigella flexneri 6 については、血清型ⅥをⅣ型と誤って報告した施設が1施設あった。
(2) サルモネラについて(2 検体)
Salmonella Typhi 及び Salmonella Typhimurium についても、生化学的性状及び血清学的性状の検査結果から、全ての
施設で正しく同定されていた。
(3) 腸管出血性大腸菌について(1 検体)
腸管出血性大腸菌 O157 については、ベロ毒素検査を行った 14 施設からは 腸管出血性大腸菌 O157(VT1.VT2 産生)
と、ベロ毒素未検査の 9 施設からは 腸管出血性大腸菌 O157 の疑い と、正しく報告されていた。2 施設(内1施設は他
方にベロ毒素検査を依頼)からは VT1 のみ産生と誤った報告がなされた。
(4) その他の項目
診断用免疫血清は菌の同定に必要不可欠であるが、2 施設で使用期限の切れた血清が使用されていた。また他の 1 施設
では、使用期限及びロット番号を把握していない血清を使用していた。診断用免疫血清の整備と維持管理を、一層適切
に実施する必要がある。
2.寄生虫学的検査
衛生検査所に対する寄生虫卵検査精度管理は本事業の当初から実施されており、本年度で 25 年目となった。歴史的
にその内容をみると、昭和 57 年度は検査方法を特に定めず技術者の自由裁量での検査、翌 58 年度からはホルマリン・
エーテル法による集卵法を実施し、60 年度からは検出した寄生虫卵のスケッチと大きさの測定により虫卵の形態を把
握させることを課題としてきた。さらに、経験の浅い職員に対してはディスカッション顕微鏡を使用して基本的な虫卵
の特徴及び鑑別点の実習を行っている。
県内で寄生虫検査を実施する登録衛生検査所は、全登録検査所 45 施設中 21 施設である。本年度は、第 1 回目の研修
を 12 月 15 日に 20 名の参加者を対象に、名古屋市立大学医学部において実施した。その内容は、同大学医動物学教室
の籔義貞講師による「寄生虫検索方法について」の講義、わが国でみられる主要な寄生虫卵 16 種(回虫受精卵、回虫
不受精卵、ウェステルマン肺吸虫卵、広節裂頭条虫卵、東洋毛様線虫卵、日本住血吸虫卵、鞭虫卵、縮小条虫卵、鉤虫
卵、横川吸虫卵、肝吸虫卵、有鉤(無鉤)条虫鉤球子、マンソン裂頭条虫卵、小形条虫卵、肝蛭卵、蟯虫卵)の鏡検実
習を、また、経験の浅い職員に対し、ディスカッション顕微鏡(5 人が同時に鏡検可能)を用いて寄生虫卵の特徴や鑑
別法についての指導を実施した。最後に研修の成果を見るために簡単な鏡検テストを実施し、研修効果の判定を行った。
第 2 回目の研修は 2 月 6 日に愛知県医師会館において、第 1 回目の研修会終了時におけるテスト結果の報告及び講評
を行った。5 種類の寄生虫卵(回虫受精卵、鞭虫卵、横川吸虫卵、縮小条虫卵、東洋毛様線虫卵)を出題したが、正答
率は 35∼100%であった。衛生検査所の実務において、寄生虫検査の占める割合は低く、日常検査業務現場での経験の
積み重ねによる研鑚は期待出来ないことから、本研修の意義は大きいと思われる。
Ⅱ 水道水質検査外部精度管理事業
自ら水質検査を行っている県内の水道用水供給事業者、水道事業者、及び専用水道設置者の 18 検査機関のうち、参
加を希望した 17 機関を対象として、水道法の水質基準に関する省令の検査項目の中から、塩化物イオン(17 機関参加)
とアルミニウム(12 機関参加)の 2 項目について外部精度管理を実施した(説明会及び検体配布は平成 18 年 10 月 4
日)
。塩化物イオン及びアルミニウム測定用検体は、当所実験室にて、精製水に市販標準液を添加して調製した。
外部精度管理の結果は、塩化物イオンについてはブロック検定(危険率 5 %)によるはずれ値はなかった。検査結果
の平均値±標準偏差は 16.88±0.46 mg/L(n=17)で、平均値は検体調製濃度の 16.9 mg/Lに一致した。また、変動係数
は 2.7 %でバラツキも少なく良好な検査結果であった。
アルミニウムについてもブロック検定(危険率 5 %)によるはずれ値はなかった。しかし、検査結果の平均値±標準
偏差は 0.03718±0.00683 mg/L(n=12)で変動係数が 18.4 %と、バラツキが大きかった。これは明らかに測定法による
精度の差に起因しており、フレームレス−原子吸光光度計による一斉分析法(FAAS法、2 検査機関)や誘導結合プラズ
マ発光分光分析装置による一斉分析法(ICP法、2 検査機関)が誘導結合プラズマ−質量分析装置による一斉分析法
(ICP-MS法、8 検査機関)より測定精度が劣った検査結果であった。しかし、測定法の優劣を述べる前に、FAAS法を用
いた 1検査機関とICP法を用いた 2機関においては、これらバラツキの原因について操作法全体を見直す必要があると考
えられた。
今回の精度管理では、クロマトグラムのピーク処理や検量線の作成、及び機器取扱等が不適正な検査機関があった。
また、前処理における基礎的な操作ミスや報告事項の記入ミスや記入漏れ等が目立ち、注意が必要であった。なお、詳
細な議論は出来なかったが、アルミニウムの測定法では、ICP-MS 法が FAAS 法や ICP 法よりも優れた方法であることを
推測させた。
本精度管理において、5 回の併行試験結果の回収率、標準偏差、変動係数等が評価基準から大きくはずれていた検査
機関については、操作方法等の再確認及び操作の習熟度を高める努力も望まれた。
第4章
研修指導
第1節 地域保健関係職員を対象としたもの
Ⅰ 研修会
1.試験検査事業(対象;平成 18 年度試験検査担当職員、開催場所;当所)
年月日
研修名称
研修内容
対象・参加人員
担当部
県 4 保健所、食品衛生検査
18. 5.26
技術研修会
試験検査研究発表会
所及び中核市 3 保健所
全所
・48 名
18. 9.26
保健所試験検査精度
管理研修会
技術研修会
18.10. 6
19. 1.18
会)
いて
技術研修会
ICP-MSによる重金属類の測定、
(水質基準項目検査 色濁計の校正方法、臭気検査の
技術研修会
(微生物検査技術研
修会)
19. 3.23
法定外着色料(スーダン色素及
(食品化学技術研修 びパラレッド)の検査方法につ
技術研修会)
19. 2. 2
HIV の検査法について
サンプルについて
県 4 保健所及び中核市 3 保
健所
県 4 保健所及び中核市 3 保
健所・12 名
県 4 保健所及び中核市 3 保
健所・14 名
微生物部
化学部
生活科学部
食品の O157、O26 の検査法につ
県 4 保健所及び中核市 3 保
いて
梅毒検査(ガラス板法)陽性血 健所・12 名
微生物部
清の性能確認調査
保健所微生物試験検 C 型肝炎ウイルス検査法(PA
査研修会
法、定性 RT-PCR 法)について
県 4 保健所・8 名
微生物部
2.保健情報研修(開催場所;当所、担当部;企画情報部)
年月日
18. 9. 6
18. 9.22
18. 9.13
18.10.11
18.10.24
18.11. 7
18.11.15
18.12. 6
研修名称
研修内容
対象・参加人員
保健情報研修
(実務)
統計手法解説
データ解析実習
西尾保健所職員・延べ 2 名
保健情報研修
(実務)
統計手法解説
データ解析実習
知多保健所職員・延べ 8 名
18.10.16
保健情報研修
(実務)
統計手法解説
データ解析実習
瀬戸保健所職員・2 名
18.10. 3
18.10. 6
18.10.10
18.10.13
18.10.17
18.10.27
保健情報研修
(SPSS)
統計手法解説、SPSS によるデータ解析
保健所職員 延べ 22 名
実習
3.その他
研修名称
寄生虫検査技術研
修会
年月日
研修内容
18.12.15
対象・参加人員
保健所職員 12 名
寄生虫の検索方法について
(中核市を含む)
LAMP 法を用いた病原微生物
東海北陸ブロック
微生物部門研修会
検出に関する研修会∼食品 東海北陸ブロック
19.1.25-26
からの腸管出血性大腸菌検 地研職員 20 名
研修会
担当部
生活衛生課
毒性部
地方衛生研究所
全国協議会地域 微生物部
ブロック研究班
出を中心にして∼
尾東地区環境衛生
主催機関
尾東地区環境衛
19.2.28
ノロウイルスについて
保健所職員 15 名
生課
(瀬戸保健所)
第2節
微生物部
(講師派遣)
地域保健関係職員以外を対象としたもの
Ⅰ 講師派遣等
年月日
対
象
人数
内 容
主 催
総合看護専門学校
担当部
微生物部、企
画情報部、毒
性部
18.4-9 月
県・総合看護専門学校生
120 微生物学講義
18. 6.14
金城学院大学薬学部学生
15 健康に良い水
金城学院大学
生活科学部
18.9-10 月
愛知医科大学、学生
30 薬理学講義及び実習
愛知医科大学
毒性部
18. 9.26
衛生検査所職員
(保健所試験検査精度管理
研修会と同時開催)
30 HIV の検査法について
生活衛生課
微生物部
18.12.15
衛生検査所職員
19. 1. 9
犬山市健康教育研究委員
19. 1.11
食品衛生対策議員連盟総会
19. 2.16
医薬品等製造者
生活衛生課
衛生研究所
感染症の現状と対策につ 犬山市健康教育研
30
いて
究委員会
食品衛生対策議員
30 ノロウイルスについて
連盟
日本薬局方をめぐる
愛知県医薬品工業
150
最近の話題
協会
20 寄生虫検査技術研修会
毒性部
微生物部
微生物部
化学部
Ⅱ 衛生検査所精度管理指導
年月日
衛生検査所名
主催
内容
担当部
18.11.15
刈谷医師会臨床検査センター
生活衛生課
立ち入り指導
微生物部
18.11.22
エスアールエル愛知ラボラトリー
生活衛生課
立ち入り指導
毒性部
Ⅲ 技術指導
(開催場所;当所)
年月日
18. 4. 3
18. 4.15
-19. 3.31
18. 4.27
- 5. 9
18. 6.15-20
対
象(人数)
担当部
医薬品の規格及び試験方法
化学部
かび臭の測定
生活科学部
豊田市衛生試験所(1)
農薬分析
化学部
豊田市衛生試験所(1)
農薬分析
化学部
18. 6.23
㈱アラクス(1)
医薬品の規格及び試験方法
化学部
18. 7.31
英昌化学(3)
医薬部外品の規格及び試験方法
化学部
18. 8.21-9.1
岐阜大学獣医学科(1)
感染症の原因となるウイルスの試験検査法
微生物部
18. 8.22
本草製薬㈱(2)
医薬品の規格及び試験方法
化学部
18. 9. 6-12
豊田市衛生試験所(1)
農薬分析
化学部
18.11.13-17
豊田市衛生試験所(1)
農薬分析
化学部
18.11.24
㈱タカミツ(1)
医薬品の規格及び試験方法
化学部
19. 1.22
衣浦東部保健所(1)
抗生物質分析
化学部
19. 2.21
㈱アラクス(1)
医薬品の規格及び試験方法
化学部
19. 2.28
中北薬品㈱(1)
医薬品の規格及び試験方法
化学部
19. 3. 5-30
名城大学(1)
愛知県食品衛生協会
食品衛生センター(3)
医薬品分析
化学部
食品からの腸管出血性大腸菌検査法
微生物部
19. 3.29
昭和製薬㈱(2)
愛知県水産試験場内
水面漁業研究所(2)
指 導 内 容
第3節 試料等の提供
年 月 日
資 材 名
18. 4.18
梅毒陽性管理血清
18. 4.28
梅毒陽性管理血清
18. 5. 9
梅毒陽性管理血清
18. 5.19
梅毒陽性管理血清
18. 6. 2
農薬標準溶液
18. 7.14
梅毒陽性管理血清
18. 8. 1
梅毒陽性管理血清
18. 8.29
コナ及びヤケヒョウヒダニ、ミナミツメダニ
18. 9. 1
コナ及びヤケヒョウヒダニ、ミナミツメダニ
18. 9.26
梅毒陽性管理血清
18.10. 4
コナ及びヤケヒョウヒダニ、ミナミツメダニ
18.10.27
梅毒陽性管理血清
18.12.27
梅毒陽性管理血清
19. 1. 5
梅毒陽性管理血清
19. 1.19
梅毒陽性管理血清
19. 3.23
梅毒陽性管理血清
*:
(国立研究機関、地方衛生研究所等への提供は除く)
数 量
2件
2件
2件
2件
1mg/mL を 10mL
2件
2件
25mL 培養瓶各 1 個
25mL 培養瓶各 1 個
2件
25mL 培養瓶各 1 個
2件
2件
2件
2件
2件
提供先機関名*
半田保健所
豊川保健所
豊田市保健所
衣浦東部保健所
豊橋市保健所
一宮保健所
半田保健所
一宮保健所
春日井保健所
豊橋市保健所
豊川保健所
衣浦東部保健所
豊川保健所
豊田市保健所
半田保健所
半田保健所
担当部
微生物部
微生物部
微生物部
微生物部
化学部
微生物部
微生物部
毒性部
毒性部
微生物部
毒性部
微生物部
微生物部
微生物部
微生物部
微生物部
第4節
会議、学会、研究会等の参加及び主催
Ⅰ 会 議
年月日
名
称
開催地
出席者所属
【愛知県等主催会議】
18.
18.
18.
18.
18.
18.
18.
18.
4.17
4.17
4.27
4.28
5.11
5.18
5.26
5.29
愛知県保健所長会定例会
健康福祉部地方機関の長会議
衛生関係課長等会議
愛知県医薬品 GXP 研究会
健康・快適居住環境検討ワーキンググループ会議(第1回)
愛知県保健所長会定例会
保健所試験検査研究会
HIV 即日検査実施に関する会議
名古屋市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
当所
名古屋市
18. 6. 8
平成 18 年度保健所試験検査精度管理会議
当所
18.
18.
18.
18.
18.
18.
製品事故の未然防止・再発防止のための関係機関連絡会議
名古屋市感染症予防協議会
平成 18 年度感染症流行予測調査打合せ会議
新型インフルエンザ等に関する感染症担当課長会議
平成 18 年度保健所試験検査精度管理事業前期実施説明会
愛知県保健所長会定例会
名古屋市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
当所
名古屋市
18. 7.24
愛知県感染症発生動向調査解析評価部会
当所
18. 7.24
18. 7.27
18. 9. 1
18. 9.26
18.10.13
18.10.18
18.10.31
18.10.31
18.12. 1
愛知県水道水質検査精度管理委員会
愛知県環境審議会温泉部会
愛知県環境衛生委員会
愛知県環境衛生委員会小委員会(麻しん全数把握)
愛知県保健所長会研修会
平成 18 年度衛生検査所精度管理指導事業検討会議
県公衆衛生研究会企画委員会
麻しん全数把握行政機関打合せ会議
愛知県環境衛生委員会
愛知県生活習慣病対策協議会がん対策部会乳がん検診精度管理
委員会
愛知県生活習慣病対策協議会循環器疾患対策部会
肝炎ウイルス検査事業実施検討会議
第 1 回名古屋市発生動向調査委員会
愛知県医薬品 GXP 研究会
名古屋市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
6. 9
6.15
6.20
6.29
7. 5
7.20
18.12. 7
19.
19.
19.
19.
1.12
1.17
1.18
1.30
名古屋市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
19. 1.31
平成 18 年度保健所試験検査精度管理会議
当所
19. 1.31
19. 2. 6
19. 2.14
水質GLP業務管理会議
衛生検査所精度管理研修会
県公衆衛生研究会企画委員会
名古屋市
名古屋市
名古屋市
19. 2.19
平成 18 年度保健所試験検査精度管理事業実施結果説明会
当所
19. 2.20
愛知県環境審議会温泉部会
名古屋市
19. 3. 1
平成 18 年度食品衛生検査施設業務管理調整会議
名古屋市
19. 3. 1
愛知県水道水質検査精度管理委員会
名古屋市
所長
所長
研究監、各部
化学部
毒性部
所長
所長、各部
微生物部
所長、研究監、微生物
部、毒性部、化学部、
生活科学部
企画情報部
所長
微生物部
企画情報部
化学部、生活科学部
所長
所長、研究監、企画
情報部、微生物部
生活科学部
生活科学部
微生物部
微生物部
研究監、微生物部
微生物部、毒性部
研究監
企画情報部
所長、微生物部
企画情報部
企画情報部
微生物部
微生物部
化学部
研究監、微生物部、毒性部、
化学部、生活科学部
研究監、微生物部
微生物部、毒性部
研究監
微生物部、毒性部、
化学部、生活化学部
生活科学部
微生物部、毒性部、
化学部
生活科学部
19. 3. 6
愛知県感染症発生動向調査企画委員会解析評価部会
当所
19. 3.16
愛知県医薬品 GXP 研究会
名古屋市
19. 3.20
愛知県感染症発生動向調査企画委員会
当所
19. 3.23
19. 3.23
19. 3.23
第1 回国立大学法人豊橋技術大学と愛知県との連携推進協議会
感染症担当者会議
平成 18 年度愛知県健康・快適居住環境専門家会議
豊橋市
名古屋市
名古屋市
研究監、企画情報部、
微生物部
化学部
所長、研究監、企画
情報部、微生物部
研究監、企画情報部
微生物部
毒性部
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
所長
化学部
化学部
化学部
化学部
化学部
化学部
東海北陸支部、東海ブロック総会
地研理事会
地研協東海・北陸支部総会
地方衛生研究所協議会・臨時総会
岐阜市
大阪府
岐阜市
東京都
第 27 回衛生微生物技術協議会総会
札幌市
所長、企画情報部
所長
研究監、次長
所長
所長、研究監、
微生物部
【厚生労働省主催会議】
18. 6. 1
18. 6.27
18. 8. 1
18.10. 5
18.10.10
18.12.26
19. 3. 1
地方衛生研究所全国所長会
第 1 回医療用医薬品溶出試験規格検討会
平成 18 年度残留農薬等分析法検討会
第 2 回医療用医薬品溶出試験規格検討会
平成 18 年度食品中の汚染物質に関する試験見直し検討会
第 3 回医療用医薬品溶出試験規格検討会
第 4 回医療用医薬品溶出試験規格検討会
【地研協議会主催会議】注)地研協:地方衛生研究所全国協議会
18.
18.
18.
18.
18.
5.10
5.11
5.26
6. 2
6.29
-30
18. 6.29
18. 9.12
18.10.24
19. 1.25
19. 2.15
-16
衛生微生物技術協議会理事会・検査情報委・レファレンス委合同
会議
地研協・連携ブロック会議
地方衛生研究所協議会・総会
東海北陸ブロック微生物部門実務担当者会議
第 5 回地方感染症情報センター担当者情報交換会
第 20 回公衆衛生情報研究協議会総会・研究会
札幌市
所長、微生物部
名古屋市
富山市
当所
所長
所長
研究監、微生物部
香川県
企画情報部
東京都
微生物部
東京都
毒性部
札幌市
微生物部
【厚生労働省・文部科学省研究班主催会議】
18. 4.28
18. 5.19
18.5 26
18. 5.26
18. 5.30
18. 6. 5
18. 6.30
18. 6.30
18. 7. 6
18. 7.13
18. 8.29
厚生労働科学研究「食品からの腸管出血性大腸菌検査法に関する
研究」第 4 回班会議
厚生労働科学研究「化学物質、特に家庭内の化学物質の暴露評価
手法の開発に関する研究」第 1 回班会議
厚生労働科学研究「ウイルス性食中毒の予防に関する研究」班会
議
厚生労働科学研究「広域における食品由来感染症を迅速に探知す
るために必要な情報に関する研究」
厚生労働科学研究「食品によるバイオテロの危険性に関する研
究」第 1 回班会議
厚生労働科学研究「食品からの腸管出血性大腸菌検査法に関する
研究」第 5 回班会議
厚生労働科学研究「生活習慣改善によるがん予防法の開発と評
価」第 1 回班会議
厚生労働科学研究「HIV 検査相談」班等 3 班合同地研グループ会
議
厚生労働科学研究「食品からの腸管出血性大腸菌検査法に関する
研究」第 6 回班会議
厚生労働科学研究「農薬等のポジティブリスト化に伴う検査の精
度管理に関する研究」第 1 回班会議
厚生労働科学研究「化学物質による子どもへの健康影響に関する
研究」第 1 回班会議
東京都
微生物部
東京都
所長、化学部
東京都
微生物部
東京都
企画情報部
札幌市
微生物部
東京都
微生物部
大阪市
化学部
東京都
毒性部
18. 9.15
18.10. 5
18.12.21
18.12.22
18.12.25
19. 1.22
19.1.26
19. 1.30
19. 2. 7
19. 3. 8
厚生労働省エイズ対策事業「薬剤耐性 HIV 発生動向把握のための
検査方法・調査体制確立に関する研究」班 バリデーションおよ
び標準化についての会議
厚生労働科学研究「食品からの腸管出血性大腸菌検査法に関する
研究」第 7 回班会議
厚生労働科学研究「生活習慣改善によるがん予防法の開発と評
価」第 2 回班会議
厚生労働科学研究「食品によるバイオテロの危険性に関する研
究」第 2 回班会議
厚生労働科学研究「食品中の農薬に関する検査法評価ガイドライ
ンの作成」班会議
厚生労働科学研究「化学物質、特に家庭内の化学物質の暴露評価
手法の開発に関する研究」第 3 回班会議
厚生労働科学研究「ウイルス性食中毒の予防に関する研究」班会
議
厚生労働科学研究「広域における食品由来感染症を迅速に探知す
るために必要な情報に関する研究」
厚生労働科学研究「化学物質による子どもへの健康影響に関する
研究」第 2 回班会議
厚生労働科学研究「農薬等のポジティブリスト化に伴う検査の精
度管理に関する研究」第 2 回班会議
名古屋市
微生物部
東京都
微生物部
東京都
企画情報部
東京都
化学部
東京都
化学部
東京都
毒性部
東京都
微生物部
東京都
微生物部
東京都
毒性部、生活科学部
大阪市
化学部
東京都
東京都
札幌市
東京都
名古屋市
東京都
東京都
東京都
東京都
和歌山市
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
化学部
化学部
微生物部
化学部
微生物部
化学部
化学部
化学部
生活科学部
化学部
化学部
化学部
生活科学部
化学部
化学部
微生物部
化学部
生活科学部
【その他の会議】
18. 4.21
18. 5.18
18. 6.30
18. 7.13
18. 8. 4
18. 8. 4
18. 9. 7
18. 9.22
18.10.17
18.10.20
18.11.22
18.12.11
18.12.17
19. 1.17
19. 2.13
19.3.3
19. 3. 7
19. 3.13
第 1 回日本薬局方原案審議委員会化学薬品委員会
第 1 回日本薬局方原案審議委員会化学薬品小検討委員会
感染症流行予測調査事業担当者会議
第 2 回日本薬局方原案審議委員会化学薬品小検討委員会
第 54 回日本ウイルス学会学術集会プログラム委員会
第 2 回日本薬局方原案審議委員会化学薬品委員会
第 3 回日本薬局方原案審議委員会化学薬品小検討委員会
第 3 回日本薬局方原案審議委員会化学薬品委員会
鉱泉分析法指針改定検討調査委員会
第 41 回全国薬事指導協議会
第 4 回日本薬局方原案審議委員会化学薬品委員会
第 4 回日本薬局方原案審議委員会化学薬品小検討委員会
鉱泉分析法指針改定検討調査委員会
第 5 回日本薬局方原案審議委員会化学薬品委員会
第 5 回日本薬局方原案審議委員会化学薬品小検討委員会
ウイルス性下痢症研究会幹事会
第 6 回日本薬局方原案審議委員会化学薬品委員会
鉱泉分析法指針改定検討調査委員会
Ⅱ 学会(自費参加*を含む)
年月日
18. 4.14-16
18. 4.20-21
18. 5.11-12
18. 6.15-16
18. 6.17
18. 7. 7- 8
18. 7.13-14
18. 8. 6-10
学
会
名
日本内科学会総会*
日本感染症学会総会*
日本食品衛生学会第91回学術講演会
日本食品化学学会第12回学術大会
日本循環器学会・地方会
日本渡航医学会
第17回日本微量元素学会
11th IUPAC International Congress of
Pesticide Chemistry(第11回IUPAC国際
農薬科学会議)
主催機関
日本内科学会
日本感染症学会
日本食品衛生学会
日本食品化学学会
日本循環器学会
日本渡航医学会
日本微量元素学会
開催地
横浜市
東京都
東京都
名古屋市
名古屋市
東京都
静岡市
出席者所属
所長
所長、微生物部
化学部
化学部
所長
研究監
化学部
IUPAC
神戸市
化学部
18. 8.27
18. 9. 5- 7
18. 9.21-22
18.10.19-20
18.10.25-27
18.10.25-27
18.11. 4- 5
18.11.11-12
18.11.12-14
18.11.19-21
19. 1.26-27
19. 2. 4
19. 2.17-18
19. 2.23-24
19. 3.23-24
19. 3.26-28
19. 3.26-28
19. 3.28-30
19. 3.28-30
平成18 年度日本獣医公衆衛生学会(中部)
日本温泉科学会第 59 回大会
第 27 回日本食品微生物学会学術総会
第 43 回日本細菌学会中部支部総会
日本公衆衛生学会
日本食品衛生学会第92 回学術講演会
日本循環器学会東海北陸合同会議
環境ホルモン学会第 9 回研究発表会
化学物質の環境リスクに関する国際シン
ポジウム
第 54 回日本ウイルス学会学術集会
第 17 回日本疫学会学術総会
日本小児科学会東海地方会
第 18 回日本臨床微生物学会総会
平成 18 年度日本獣医師会学会年次大会
2007 年度日本海洋学会春季大会
第80回日本細菌学会総会
第76回日本衛生学会総会
日本薬学会第127年会
2007 年度日本水産学会春季大会
中部獣医師会連合会
日本温泉科学会
日本食品微生物学会
日本細菌学会
日本公衆衛生学会
日本食品衛生学会
日本循環器学会
環境ホルモン学会
新潟県
秋田市
堺市
岐阜市
富山市
春日井市
名古屋市
東京都
毒性部
生活科学部
微生物部
微生物部
所長
毒性部、化学部
所長
毒性部
環境省
釧路市
毒性部
日本ウイルス学会
日本疫学会
日本小児科学会
日本臨床微生物学会
日本獣医師会
日本海洋学会
日本細菌学会
日本衛生学会
日本薬学会
日本水産学会
名古屋市
広島市
名古屋市
長崎市
さいたま市
東京都
大阪市
大阪市
富山市
東京都
微生物部
企画情報部
微生物部
微生物部
毒性部
生活科学部
微生物部
毒性部
化学部
毒性部
Ⅲ 研究会
年 月 日
名
【地研協議会関連の研究会】
称
主催機関
開催地
出席者所属
(地研協:地方衛生研究所全国協議会)
18.6.29-30
第 27 回衛生微生物技術協議会研究会
地研協
札幌市
18. 9.28-29
地研協東海・北陸支部環境保健部会
地研協・東海北陸支部
名古屋市
18.11. 1- 2
第 43 回全国衛生化学技術協議会年会
全国衛生化学技術協議会
米子市
所長、研究監、
微生物部
所長、研究監、
企画情報部、
毒性部
毒性部、
化学部、
生活科学部
18.11.3012. 1
18.12.14-15
地方衛生研究所地域ブロック研修会
地研協・近畿地区自然毒中
姫路市
毒協議会
地研協・東海北陸支部
名古屋市
19. 1.25-26
地方衛生研究所地域ブロック研修会
地研協・東海北陸支部
名古屋市
19. 2. 8- 9
地研協東海・北陸支部衛生化学部会
地研協・東海北陸支部
富山市
19. 3. 8- 9
東海・北陸支部微生物部会
地研協・東海北陸支部
富山市
化学部
研究監、
微生物部
化学部、
生活科学部
微生物部
第21回ヘルペスウイルス研究会
第 10 回腸管出血性大腸菌感染症シンポ
ジウム
第 18 回ウイルス性下痢症研究会
第 29 回農薬残留分析研究会
岐阜大学
腸管出血性大腸菌感染症
シンポジウム
下痢症研究会
日本農薬学会
岐阜県
微生物部
東京都
微生物部
名古屋市
大阪市
微生物部
化学部
第 40 回腸炎ビブリオシンポジウム
腸炎ビブリオシンポジウム
東京都
微生物部
第 33 回東海花粉症研究会
愛知県公衆衛生研究会
沿岸環境モニタリングの継続性を支え
る制度・資金・人の現状と課題
東海花粉症研究会
名古屋市
愛知県
大府市
沿岸環境関連学会連絡協
東京都
議会・日本水産学会
全国自然毒中毒研修会
毒性部
【その他の研究会】
18. 6.8-10
18.8.31-9.1
18.11.18
18.11.21-22
18.11.3012.1
18.12. 9
19. 1.19-20
19. 2.17
企画情報部
研究監
毒性部
Ⅳ 職員が受講した研修
1.中期・長期研修講習会
年 月 日
18.9.25-10.6
名
称
特別課程疫学統計コース
主催機関
国立保健医療科学院
開催地
和光市
出席者所属
化学部
2.講演会・講習会
年 月 日
主催機関
開催地
出席者所属
新任管理職研修(合同)
課長級セミナー
情報化リーダー緊急全体研修
RI 教育訓練講習会
平成 18 年度食品安全行政講習会
第十五改正日本薬局方について
新任管理職研修(クラス別)
産業医研修会
愛知県保健所長会研修会
産業医研修会
産業医研修会
自治研修所
自治研修所
情報企画課
日本アイソトープ協会
厚生労働省
日本公定書協会
自治研修所
愛知県医師会
愛知県保健所長会
愛知県医師会
愛知県医師会
名古屋市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
東京都
大阪市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
18. 7- 9 月
総務事務システム班長研修
研修課
名古屋市
18. 7- 8 月
18. 7. 4
研修課
愛知県医師会
名古屋市
名古屋市
健康対策課
名古屋市
微生物部
18. 7.12
18. 8. 1
18. 8. 4
総務事務システム研修
産業医研修会
HIV 即日検査導入に係るカウンセリング
研修
産業医研修会
人材育成等アドバイザーによる講演会
産業医研修会
微生物部、化学部
微生物部、化学部
企画情報部
化学部
化学部
化学部
微生物部
研究監、微生物部
研究監
研究監、微生物部
研究監
所長、研究監、
各部
各部
研究監
名古屋市
名古屋市
名古屋市
研究監
研究監
研究監
18. 8.16,23
HIV 抗体検査研修会
名古屋市
微生物部
18. 8.22
産業医研修会
名古屋市
研究監
18. 8.31-9.1
LC/MS/MS API4000 研修会
東京都
化学部
18. 9.12
18. 9.26
18.10.12
18.10.13
産業医研修会
産業医研修会
産業医研修会
愛知県保健所長会研修会
名古屋市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
研究監、
微生物部
研究監
微生物部
研究監、微生物部
18.10.12-13
LC/MS/MS API4000 研修会
東京都
化学部
18.10.23
18.10.26
18.10.31
18.11. 3
18.11.10
18.11.20
産業医研修会
医薬品の安全確保をめぐる諸問題
アルボース食品衛生セミナー2006
産業医研修会
愛知県保健所長会研修会
産業医研修会
愛知県医師会
研修課
愛知県医師会
保健所 HIV 抗体検査
県・市連絡会議
愛知県医師会
アプライドバイオシ
ステムズジャパン
愛知県医師会
愛知県医師会
愛知県医師会
愛知県保健所長会
アプライドバイオシ
ステムズジャパン
愛知県医師会
日本公定書協会
名古屋市
大阪市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
研究監、微生物部
化学部
微生物部
微生物部
研究監
研究監
18.11.22
産業医研修会
名古屋市
微生物部
18.12. 5
産業医研修会
名古屋市
研究監
18.12. 5
RI 安全管理講習会
名古屋市
化学部
18.12. 6
産業医研修会
名古屋市
微生物部
18.12.11
産業医研修会
名古屋市
研究監、微生物部
18.
18.
18.
18.
18.
18.
18.
18.
18.
18.
18.
4.25
5. 9
5.11
5.19
5.25-26
5.29
5.30
6. 7
6. 9
6.14
6.27
18. 7. 6
名
称
(株)アルボース
愛知県医師会
愛知県保健所長会
愛知県医師会
愛知県産業保健推進
センター
愛知県医師会
日本アイソトープ協
会
愛知県産業保健推進
センター
愛知県医師会
18.12.18
19. 1.10
19. 1.16
19. 1.19
産業医研修会
産業医研修会
平成 18 年度水道水等安全対策研修会
新興・再興感染症講演会
19. 1.20
産業医研修会
19. 2. 9
愛知県保健所長会研修会
19. 2. 9
最近の医薬品添加剤をめぐる諸問題
19. 2.14
産業医研修会
19. 2.19
平成 18 年度水道水質講演会
19. 3.24
産業医実地研修
3.技術研修会等
年月日
19. 2.15-16
19. 2.23
19. 3. 2
19. 3.20
題
名
愛知県医師会
愛知県医師会
生活衛生課
名古屋市医師会
愛知県産業保健推進
センター
愛知県保健所長会
日本医薬品添加剤協
会
愛知県医師会
木曽川水系水道水質
協議会
愛知県産業保健推進
センター
講
師
名古屋市
名古屋市
名古屋市
名古屋市
研究監
微生物部
生活科学部
微生物部
名古屋市
微生物部
名古屋市
研究監、微生物部
大阪市
化学部
名古屋市
微生物部
名古屋市
生活科学部
名古屋市
微生物部
開催場所
平成 18 年度希少感染症診断技術 厚生労働省健康局・結核感 国立感染症研
研修会
染症課、国立感染症研究所 究所戸山庁舎
東海大学、(独)肥飼料検査 JRセントラル
食品安全技術情報セミナー
所、神戸市環境保健研究所 タワーズ
国立病院機構三重病院
麻疹・風疹・ムンプス最近の話題
衛生研究所
庵原俊昭院長
国立感染症研究所
国立感染症研
病原大腸菌検査法の技術研修
感染症情報センター第 5 室
究所村山庁舎
伊藤健一郎室長
受講者
微生物部
微生物部
所員、県職員
微生物部
Ⅴ 所内研究会等
衛生研究所研究発表会(第 24 回)
年月日
演
題
19. 2.22 愛知県花粉飛散状況調査に基づくスギ・ヒノキ科花粉長期及び短期予測について
食品中のカーバメート系農薬の迅速分析法
水道原水中の微量化学物質の存在に関する調査研究
クリプトスポリジウム(Cr)の汚染状況に関する研究
−動物から検出された Cr の遺伝子型別について−
Diffuse outbreak を迅速に検出するためのパルスフィールドゲル電気泳動法
(Pulsed-field gel electrophoresis,PFGE)画像診断に基づくシステム(通称パルスネ
ット)構築を目的とした研究班活動について
愛知県におけるノロウイルス感染症の発生状況
発 表 者
續木雅子
後藤智美
猪飼誉友
都築秀明
松本昌門
小林慎一
Ⅵ 施設見学
年 月 日
見 学 来 所 者
18. 6. 8
18. 6.27
18. 8.23
18.10.30
愛知経済連営農支援センター
愛知医科大学医学部教員及び学生
JAあいち知多食品安全分析センター
岡山市保健所
18.11. 9
名古屋大学附属高等学校生徒
人数
1名
20 名
1名
2名
備
考
化学部:残留農薬検査方法の概要
所長、各部:社会医学実習
化学部:残留農薬検査方法の概要
化学部:残留農薬検査体制の現状
微生物部、企画情報部:総合人間学習
1名
(インフルエンザについて)
18.11.16
名古屋市立東星中学校生徒
18.11.28
愛知県技術士会会員
愛知教育大学附属岡崎中学校及び愛知工業大
学附属名電高等学校生徒
幡豆郡一色町立一色中学校
中部大学教員及び学生
長野市保健所
春日井市水道部配水管理事務所
18.12.22
19.
19.
19.
19.
微生物部、企画情報部:訪問学習(イ
ンフルエンザについて)
微生物部、企画情報部:特許について
25 名
等
5名
2.28
3. 1
3. 6
3.20
第5節
3 名 微生物部:エイズについて
3名
11 名
1名
2名
化学部:食品添加物の Q/A
全所
化学部:残留農薬検査機器の整備
微生物部:嫌気性芽胞菌の測定法
国際活動
毎年多くの外国人が日本を訪問しており、また、多くの日本人が海外へ出かけている今日、当所における日常業務に
おいても、調査研究のみではなく、いわゆる輸入感染症や輸入食品等に関する試験検査を始め、多くの分野において国
際的視野基盤に立った業務の遂行が必要とされている。
さらに、平成 17 年 2 月には中部国際空港(セントレア)が開港し、この地域の一層の国際化の進展が見込まれるの
で、様々な分野・形態での当所の国際活動に関する責務もますます重大になるものと思われる。
このような状況の中、当所においても従来から、開発途上国の技術者に対する研修指導のみではなく、海外への短・
長期の派遣及び年休を活用しての海外学会への参加など積極的な国際的活動を展開している。
Ⅰ 研修受入
年月日
18. 6.16
研 修 名
平成 18 年度 JICA 研修
「アフリカ地域 地域母子保健行政」研修
国 名
参加職種
ナイジェリア
タンザニア
ジンバブエ
担当部
医師 1 名、保健師等 2 名
医師 4 名、保健師等 3 名
医師 1 名
全所
Ⅱ 海外派遣及び海外での学会参加等(自費参加*を含む)
年月日
国 名
派遣先(参加)学会名
開催地(派遣地)
参加者
内
容
18.5.21-25
ギリシャ
6th European Pesticide Residue
Workshop 2006、コルフ*
上野英二
山田貞二
玄米中の農薬モニタリングの GPC、固
相抽出精製による GC/MS、LC/MS 分析
法並びに欧州政府等の食品中残留農
薬分析結果及び最新の農薬等残留分
析研究発表
18. 7. 6- 9
タイ
The 6th Asian Conference on
Clinical Pharmacy、バンコク*
三上栄一
DHEA 含有サプリメントの品質に関す
る検討
広瀬かおる
「アジア太平洋における乳がん協同
研究のための検討委員会」参加及び
「第 3 回アジア太平洋がん予防学会
学術総会」における研究発表
18.10.31
-11. 6
タイ
UICC、バンコク
18.11.12-16
アメリカ
米国心臓病学会、シカゴ*
宮
豊
循環器疾患の基礎・臨床 疫学的研究
発表
第 5 章 情報提供
第1節 刊行物の発行等
Ⅰ 衛生研究所年報
当所において実施した調査研究をはじめとする事業の概要を整理し、「愛知県衛生研究所年報」(本誌)として刊行し、
その効果的な活用を図るため県健康福祉部や、県内各保健所などの関係行政機関をはじめ、大学、国等の公衆衛生に関
わる研究機関、感染症法に基づく発生動向調査の病原体定点医療機関等へ提供している。
Ⅱ 愛知県衛生研究所報
公衆衛生に関する諸課題について、各部ですすめている研究成果を学会等において発表した後、論文形式にまとめて
「愛知県衛生研究所報」として刊行、関係機関へ提供している。なお、学術専門誌上に発表したものについては、「他
誌掲載論文抄録」として抄録を本誌に収録した。
本年度は、平成 19 年 3 月に第 57 号を発行したが、その内容は情報提供-表1のとおりである。
情報提供-表1
愛知県衛生研究所報に掲載された研究論文
表
題
著
腸管凝集性大腸菌耐熱性腸管毒 EAST1 遺伝子 astA を保有
する大腸菌(血清型 O1:H45)が腸管毒素原性大腸菌と同
時に検出された食中毒事例
パッシブサンプリング法を用いた揮発性有機化合物の測
定−シックハウス症候群患者の曝露量調査−
水中ヒ素化学形態別分析における試料の保存について
LC-ICP-MS による愛知県の水道原水中ヒ素について
逆相 TLC/スキャンデンシトメトリーによる生薬分析
―オウゴン、シャクヤク、カンゾウ、アロエ、ボタンピ、
センブリ、オウレン、センナの確認試験―
畜水産食品中の PCBs、クロルデン類および有機塩素系農
薬の一斉分析におけるゲル浸透クロマトグラフィーおよ
びシリカゲルカラムクロマトグラフィーの応用
者
ページ
山
貢、松本昌門、秦 眞美、小林慎
一、皆川洋子、松井博範、榮 賢司、木
村 隆、宮
豊
近藤 文雄、山崎 貢、林 留美子、木村
隆、鳥居 新平
大沼章子、小池恭子、遠山明人
大沼章子、小池恭子、遠山明人
25∼35
37∼48
大野 勉、池田清栄、三上栄一
49∼53
椛島由佳、上野英二、大島晴美、大野 勉
55∼64
1∼11
13∼23
Ⅲ 衛研技術情報
衛研技術情報は公衆衛生に必要な情報のうち、各種の試験検査における意義、試験検査成績の判読に関する問題点、
試験検査方法の検討など、主として試験検査担当者の必要とする諸問題を中心に編集している。 昭和 52 年 9 月 1 日に
第 1 号を発行し、現在年 4 回発行している。平成 12 年度第 4 号からは、愛知県衛生研究所のウェブサイト
〔http://www.pref.aichi.jp/eiseiken〕にも掲載している。平成 18 年度の内容は情報提供-表2のとおりである。
情報提供-表2 衛研技術情報
VOL
No.
掲載年月日
掲
載
タ
イ
ト
ル
担当部
30
2
18. 6. 1
水道水中のウラン
30
3
18. 9.12
医薬品分析のための試料調製法
30
4
19. 2.26
イムノクロマトグラフィー法の原理と特徴
微生物部
31
1
19. 3.30
食品からの腸管出血性大腸菌検出法の公定法改定について
微生物部
生活科学部
化学部
Ⅳ 健康危機管理マニュアルの作成
愛知県内において、健康危機に関わる健康被害等が発生したとき、若しくは発生の恐れがあるとき、地域における科
学的・技術的中核機関としての衛生研究所の責務を遂行するために、迅速・円滑な原因究明に向けた検査体制の確保、
情報の収集・解析・提供及び支援体制等を確立し、県民の健康保持、適切な医療等への支援、住民の不安解消と被害の
軽減を図ることを目的として、平成 14 年 3 月に愛知県衛生研究所健康危機管理マニュアルを作成、17 年度及び 18 年度
に一部改正を行った。
第2節 ウェブサイトによる情報提供
平成 11 年 11 月 30 日に衛生研究所ウェブサイトを開設した
(http://www.pref.aichi.jp/eiseiken)。
情報提供−表 3 月別衛生研究所ウェブサイ
トへのアクセス件数
その内容は、衛生研究所の共通のページ(沿革、組織図、案内図な
ど)と各部のページから構成されており、平成 18 年度のアクセス件
アクセス件数
平成 18 年
数は 1,612,315 件(一日平均 4,417 件、前年度 754,944 件、前年度比
2.1 倍)であった。また、当所のウェブサイト開設以来平成 19 年 3
月末までのアクセス件数は、
4,982,683 件である。
(情報提供−表 3)
。
各部のページに掲載している主な内容は以下のとおりである。
【企画情報部】
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成
11 年 4 月 1 日施行、平成 15 年 10 月 16 日一部改正)に基づき基幹地
方感染症情報センター(名古屋市、豊田市、豊橋市及び岡崎市を含む
愛知県全域の感染症に関する情報センター)が愛知県衛生研究所に置
かれていることから、法律に規定されている感染症(86 疾患)に関
する説明や、愛知県感染症情報(週報及び月報)の内容を掲載し、広
く県民に健康に関する情報の提供を行っている。
【微生物部】
平成 19 年
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10 月
11 月
12 月
1月
2月
3月
18 年度合計
(開設以来の合計)
74,161
86,581
94,601
97,914
94,600
85,617
105,276
228,954
283,430
213,537
138,350
109,294
1,612,315
(4,982,683)
微生物部では、感染症の病原体に関する情報提供に努めている。平成 18 年度下半期はノロウイルス大流行を受け、
一時アクセスが集中した。細菌に関しては病原性大腸菌、食中毒を起すサルモネラやカンピロバクター、ビブリオ属な
どについて解説記事を提供している。マイコプラズマに関する記事も好評である。一方ウイルスに関しては、ノロウイ
ルスのほか、鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(SARS)
、チクングニヤなど新興再興
感染症、新たに発見されたウイルス(ヒトパレコウイルス、ヒトメタニューモウイルスなど)
、感染症発生動向調査に
基づく病原体検索結果(ウイルス検出情報、インフルエンザ集団発生)
、感染症流行予測調査結果(愛知県民の抗体保
有状況)などの情報を提供・随時更新している。
【毒性部】
毒性部では、私たちの身の回りにある様々な毒性物質{魚介類の毒、重金属、内分泌かく乱化学物質(いわゆる環境ホル
モン)、ダイオキシン、アオコの毒、O157 の毒素、新築住宅内のホルムアルデヒドなど}や、名古屋市内唯一の定点と
しての花粉飛散状況、寄生虫(回虫、アニサキス、広節裂頭条虫など)
、原虫(クリプトスポリジウム、ジアルジアな
ど)に関する情報を提供している。
【化学部】
化学部では、食品の安全確保対策としての残留農薬、残留動物用医薬品、環境汚染物質、有害金属等の微量精密検査、
食品添加物、食品容器・包装の規格基準検査の概要を、医薬品等の安全・品質確保対策としての医薬品、医薬部外品、
化粧品、医療機器等の試験の概要を、また、繊維製品、洗浄剤等の家庭用品中の有害物質の検査概要を紹介している。
更に食品、医薬品等に関する調査研究内容を併せて紹介している。
トピックスとして平成 18 年度中に農薬等のポジティブリスト制、残留農薬検査の強化、食品中に検出された化学物質
の安全情報等 8 報、健康食品に配合された医薬品の検出情報等 4 報、合計 12 報をウェブサイトにて情報提供した。
【生活科学部】
愛知県は良質な水源に恵まれていることもあって全国的にみてもおいしい水道水が供給されていることや、県内では
約 100 か所もの温泉が利用されており、そのなかには 1,000m以上も深く掘削されたものもあること、それに、ヨ−ロ
ッパ方面から輸入された食品の放射能検査を行っていることなど、生活科学部の業務に関連した内容の一部を紹介して
いる。
第3節 報道機関等への情報提供
平成 18 年度における報道機関等による取材とその対応は情報提供-表4のとおりである。
情報提供-表4 情報提供一覧
年月日
提供機関
番組・掲載紙等
提供内容
担当部
18. 5.30
中京テレビ
番組「リアルタイム」 プール熱について
企画情報部
微生物部
18. 7
環境文化創造研究所
月刊「クリンネス」
カンピロバクターの走査電子顕微鏡写真
微生物部
18. 8
(株)少年写真新聞社
「小学保健ニュース」
カンピロバクターの走査電子顕微鏡写真
微生物部
18.11.16
中京テレビ
感染性胃腸炎
微生物部
18.11.16
NHK
ノロウイルスの透過電子顕微鏡写真
微生物部
18.12.10
中日新聞
こどもタイムズ
「胃腸風邪大流行」
ノロウイルス・インフルエンザウイルス 微生物部
18.12.22
中日新聞
朝刊
ノロウイルスの透過電子顕微鏡写真
微生物部
夕刊
花粉の飛散について
企画情報部
NHK ニュース
インフルエンザウイルス検査
微生物部
19. 2.20
朝日新聞
19.2
NHK 名古屋
18.1.
取材分
19.2.16
中京テレビ
19.2.26
CBCテレビ
ウイルスについて、インフルエンザ警報 企画情報部
について
微生物部
スギ花粉の観測(捕捉から検査まで)及
情報番組「イッポウ」
毒性部
び花粉の写真
番組「リアルタイム」
第4節 電話相談等
平成 18 年度における電話等による発信者別問い合わせ件数は情報提供-表 5 のとおりである。
情報提供-表 5 電話相談件数
(平成 18 年 4 月∼19 年 3 月)
一般住民
検査が可能かどうかの照会に関するもの
検査法・検査技術に関するもの
学術的な知識に関するもの
文献の問い合わせに関するもの
保健情報に関するもの
その他
計
*
:地方衛生研究所
業者
行政各課 保健所
地研*
その他
計
10
0
9
0
5
3
9
10
3
0
0
2
6
4
4
0
3
10
1
11
2
2
7
19
0
11
0
1
0
3
2
4
3
1
11
6
28
40
21
4
26
43
27
24
27
42
15
27
162
編集情報運営委員会
委員長:竹内一仁
委 員:續木雅子(企画情報部)
、鈴木匡弘(微生物部・細菌)
、山下照夫(微生物部・ウイルス)
、
林留美子(毒性部)
、山田貞二(化学部)
、大沼章子(生活科学部)
愛知県衛生研究所年報
第 35 号
平成 19 年 6 月 30 日 発行
〒462-8576 名古屋市北区辻町字流 7 番 6
愛知県衛生研究所
所長 増井 恒夫
愛知県衛生研究所ウェブサイト:http://www.pref.aichi.jp/eiseiken
電話:ダイヤルイン
所
長
次
室:052-910-5604
毒性部・毒性病理科:052-910-5654
長:052-910-5683
毒性部・毒性化学科:052-910-5664
研
究
監:052-910-5684
化学部・生活化学科:052-910-5638
総
務
課:052-910-5618
化学部・環境化学科:052-910-5639
企 画 情 報 部:052-910-5619
化学部・薬品化学科:052-910-5629
微生物部・細菌:052-910-5669
生活科学部・水質科:052-910-5643
微生物部・ウイルス:052-910-5674
生活科学部・環境物理科:052-910-5644
FAX: 052-913-3641
(この刊行物は古紙再生紙を使用しています)
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