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[1.86MB : PDF] 35000人で安全を守る
※ 私たち JAL グループにとって、安全運航は存立基盤であり、社会的責務です。 運航・整備・客室・空港をはじめとした全ての社員が力を合わせ、 一便一便のフライトを作り上げています。 3 5 ,0 0 0人で安全を守る ※ 業務委託先を含む 優先させてお客さまに快適な空の旅を いかなる状況においても、安全を最 レ ー タ ー だ け で 行 う か、「 実 機 」 も 用 に行う小型ジェット機訓練をシミュ しば。例えば、小型プロペラ機のあと かる実機での訓練を行わない選択をし 提供することが、私たち J AL グルー 輸送分野における安全のリーディン て い ま す が、J AL で は 実 施 す る こ いるか。多くの航空会社はコストがか グカンパニーを目指して尽力する社員 とにしました。ジェット機のスピード プの使命です。 名の、安全に対する思いをご紹介し のなかで実際の管制通信を行い、変化 想定される多様なリスクを訓練生自身 す。そのため何が危険なのかを教育し、 対極である危険を知る必要がありま 堀 川 は、 「安全を守るためにはその 判断したためです。 は、コストをかける価値が十分あると する気流のなかで操縦を習得すること ます。 運航 「安全」のために どうあるべきかが判断の軸 日本航空 運航訓練部フェニックス訓練室長 堀川 裕史 (1989 年入社) アメリカ・アリゾナ州フェニックス。 こ こ で は、 明 日 の J AL の 運 航 を 担 うパイロット訓練生が日々トレーニン グに励んでいます。経営破たん後、中 断されていたパイロット養成は、新た に法制化された、初期段階から操縦士 二人による運航を前提にしたラインセ ンス方式に基づく新訓練体系を採用し て再開しました。自身も機長を務める 堀川は、フェニックス訓練室の総括と して赴任しました。 国内に前例がない訓練をゼロから作 り上げていく過程では、教官やスタッ フと何時間も議論を重ねることもしば 明日の翼 Vol.04 09 8 に考えさせ、常にリスク軽減の対策を 立てる習慣をつけるよう指導していま す 」 と 言 い ま す。 ま た、 「お客さまの 尊い命をお預りするためには、緊急の 整備 安全のためには 妥協を許さない 日本航空 米州技術品質保証部長 査の方法は、航空会社によってさまざ まです。検査を他社に委託している会 社 も 少 な く あ り ま せ ん が、J AL で は日々の検査から常駐社員が行ってい ま す。 桂 田 は、「 メ ー ル や 電 話、 指 示 客室 全社員の安全の原点に 日本航空 バンコク空港所 客室乗員セクション 御巣鷹山事故後に航空機メーカーに こともあります。担当者と実際の機体 や細かいニュアンスが伝わりきらない めに、フライト中はどんな些細なこと J OM は、 「お客さまをお守りするた バンコク基地の客室乗務員である (2004 年入社) に状況を把握し、判断しなければなり 対する品質監視・技術連携の強化を目 を見ながら話をすることは、品質向上 に も 注 意 を 払 わ な け れ ば な り ま せ ん。 桂田 健 (1983 年入社) ) M O J ( i a j m o J n i l a h p n o m o K 事態にも対処できる能力を身に付けな ません。そのためには、手順が定めら 的とし設置された組織がアメリカ・ワ に大きな効果があります」と直接対話 書だけだと当社が要求する品質レベル れている背景をまず理解することが重 シントン州シアトルの米州技術品質保 ければなりません。非常時には、瞬時 要です。その上でシミュレーターで非 全のリーディングカンパニーなのかど J AL グループが輸送分野における安 検査の精度は非常に高いレベルを求 うかは、最終的にはお客さまが決める にこだわる理由を話します。 めます。例えば、客室の収納スペース ことです。私たちは常にベストを尽く 証部です。ここにはボーイング社の機 フ で ボ ー イ ン グ 787 型 機 を 受 領 し のドアの軋み。ドアが軋む音が、お客 します」と、保安要員としての客室乗 常時を模擬経験することで臨機応変に て日本の空へと届けています。ここで さまを不安にさせてしまうかもしれな 体製造工場があり、現在、 名のスタッ より安全なフライトを実現するた は、お客さまに安全かつ高品質の航空 いためです。このようなことを文化が 対応できる能力を身に付けることも重 め、J ALの パ イ ロ ッ ト 養 成 に お い 機にお乗りいただけるよう、地道な努 要です」と続けます。 ては初期からそうした「考える力」を 年目。当 年目だった桂田は、ご遺族の する場合があります。天候が突然変わ 更の可能性のある「条件付き」運航と は、出発地への引き返しや着陸空港変 陸できないことが予想される場合に い思いの原点となっています。 妥協を許さない桂田の安全に対する強 なりません」と語ります。その経験は、 していくということを決して忘れては ないように、わずかなリスクでも排除 れがたい現実でした。二度と繰り返さ 方 々 の ケ ア を 担 当 し ま し た。「 受 け 入 時入社 今年は御巣鷹山事故から てのお客さまの安心につながります。 とともに作り上げていくことは、すべ 安全で高品質な航空機をボーイング社 時 に 大 変 な こ と も あ り ま す。 し か し、 異 な る 相 手 に 理 解 し て も ら う こ と は、 力が重ねられています。 製造工場内での検査や新造機領収検 運航管理 「家族が乗っていたら」の視点 日本航空 OCC 運航管理室 第2グループ 小清水 勇二 (1992 年入社) 安全は小さな作業の積み重ね 日本航空 金浦空港所 旅客セクション e y H a D e e L 募集を目にし、事故の教訓を伝える安 ンコントロールセンター(OCC)は、 航管理者 時間 。J AL のオペレーショ 『地上のパイロット』と呼ばれる運 ています。そのため、気象庁や気象専 し、パイロットに詳しい情報を提供し 条件付きの運航であることをお知らせ の兆候をつかみ、出発前にお客さまへ ナ ルコンテ ス ト 」 を 開 催 し てい ま す。 して、 「空港サービスのプロフェッショ ビススタッフの接客技術向上を目的と J AL グループでは、空港旅客サー (2006 年入社) 全啓発センターと御巣鷹の尾根を訪れ 一 日 約 740 便 の フ ラ イ ト を ることも多いなか、できるだけ早くそ 空港旅客サービス 養っています。 「日々反省を繰り返し、 努力を怠ってはならない。たとえ完璧 に近いフライトができたとしても、次 はもっと上を目指す。なぜなら、油断 した瞬間に心に隙ができ、危機意識が 薄れてしまうから。訓練生には繰り返 しこう話しています」より高い運航品 質を実現する人財育成に妥協はありま せん。 年 間、J OM 務員の業務の大切さを訴えます。 2009 年 か ら の はフライトを続けながら、バンコク基 地のセーフティーチームのインストラ クターとして、安全推進活動に携わり ま し た。 「多くの方が亡くなった場所 体制で支える現場です。 ました。その時、御巣鷹山慰霊登山の 30 に立ち、志半ばでこの世を去らなけれ │ 3 6 人形を目の当たりにし、年月は経ても い気持ちになりました。お供えの花や を思うと、とても悲しく、やり場のな ばならなかった方々や残されたご遺族 る気象の解析が一番難しい」と小清水 る た め の 飛 行 計 画 の 作 成。「 日 々 異 な を安全かつ定時に目的地までお運びす 運航管理者の主な業務は、お客さま ざまなケースを想定し、万全な体制で データをもとに予測することで、さま 霧などの予想は困難ですが、蓄積した の予想を立てています。急に発生する これまでの知識や経験をもとに独自 門 会 社 の 予 報 を 参 照 す る だ け で な く、 まのお話をよく聞き、次にもし自分が て い る の か 訊 ね る と、 「 第 一に お 客 さ のように高いホスピタリティを実現し 浦空港に勤める Lee でした。普段ど した 2014 年度の優勝は、ソウル金 初めて海外空港からもスタッフが参加 気象資料を相手に格闘する日々です。 私が思う最高の安全です」と、今日も した気持ちでお乗りいただけることが、 機に不安を感じることなくゆったりと す。 「お客さまがご自身の乗られる飛行 だくことの大切さを痛感したといいま そうな表情を見て、安心して搭乗いた がありました。そのときの両親の不安 ため着陸できず目的地を変更したこと ろ、両親と乗った飛行機が急な濃霧の 務にあたっています。入社したてのこ の飛行機に乗っていたら」と考えて業 小清水は常に「もし自分の家族がそ のです。 フライトができるように準備している は言います。悪天候のため目的地に着 ています。 決意を胸に、日々、フライトにあたっ な け れ ば な り ま せ ん。 」J OM は そ の 持ち、立ち止まることなく成長し続け 客室乗務員は安全に対する強い意識を 心 し て 快 適 に お 乗 り い た だ く た め に、 「すべてのフライトでお客さまに安 山をできる機会を増やしています。 ループでは、海外で働く社員が慰霊登 の 重 要 性 を 述 べ ま す。 近 年 J AL グ 員も御巣鷹山慰霊登山に参加すること 同じ気持ちを共有すべき」と、海外社 会社で働く社員として、国境を超えて 「 御 巣 鷹 山 事 故 は、 安 全 の 原 点。 同 じ した」 とその時の思いを振り返ります。 変わらないものがそこにあると感じま 24 10 明日の翼 Vol.04 明日の翼 Vol.04 11 2 お客さまの立場だったらと考え、でき るだけプラスアルファの提案ができる ように心がけています」と答えました。 空港旅客サービススタッフに求めら れるのは、高い接客能力だけではあり 営業 販売グループ 自分たちの商品への誇り ジャルセールス 本店法人販売部 第 近藤 英夫 (1994 年入社) しでも不安がある飛行機の座席を販売 するわけにはいかないという強い思い がありました。運航停止に至る決断が 速かったこともあり、かえって信頼を 寄せてくださったお客さまもいらっ 予約 予約から紡ぐ安全 J ALナビア 予約室 第一グループ 古川 麻衣 (2003 年入社) 行機には航空法で定められたお預かり す」と Lee は言います。例えば、飛 お客さまへのサービスを提供していま に直接携わる社員だけが持っているも 安全に対する強い思いは、運航の現場 近 藤 は、 迷 う こ と な く 言 い 切 り ま す。 ることは安全です」 │ 機メーカーのお客さまから専門性の高 客さまのもとに説明に伺いました。電 う、近藤は整備部門の社員とともにお 運航再開。より安心していただけるよ その後、さまざまな対策が施されて 山 に 参 加 し た の は 2010 年。 事 故 施 し て い ま す。 古 川 が 初 め て 慰 霊 登 して、毎年御巣鷹山への慰霊登山を実 のある職場ですが、独自の取り組みと 会社です。運航の現場からは少し距離 グループ便の予約・発券を行っている J ALナビアは、主に電話でJ AL できない荷物(航空輸送危険品)があ の で は あ り ま せ ん。2013 年 いご質問を寄せられたときには、整備 の際に山の稜線に刻まれた跡やご被 しゃいました。 りますが、その搭載可否の判断は、自 ボ ー イ ン グ 787 型 機 の バ ッ テ リ ー 部門の社員がその場で丁寧にお答え 災者の名前が記された多数の銘標を目 「私たちが何よりも重要と考えてい 身の記憶に頼らず必ず最新の規程を直 にトラブルが生じ、運航が停止される し、お客さまに十分にご理解いただく ま せ ん。 「 常 に 安 全 を 意 識 し な が ら、 接確認することを徹底しています。医 ことになりました。お客さまにはご迷 の当たりにし、言葉にできないほどの 月、 。営業部門の 療用機器や、機器に内蔵されたリチウ ことができました。 「現場の社員が作り上げる安全や安 心をしっかりお客さまにお伝えするこ とは、私たちの大切な役目だと思って い ま す。 お 客 さ ま に は J AL グ ル ー プの便に安心してお乗りいただきたい ですから」営業部門の社員は、直接運 航 に か か わ る わ け で は あ り ま せ ん が、 安全に対して確固たる思いを持って 日々の業務に励んでいます。 残存機体の運搬は、非常に神経を使う 作業でした。施設企画部門や整備部門 の協力も得ながら移転作業を進めるこ そ れ は、 「安全」に対しては妥協し 日本航空安全啓発センター。ここで 故の悲惨さを痛感しました。移転に際 受けた残存機体を目の当たりにし、事 全啓発センターを訪れ、激しく損傷を 「 私 自 身、 新 入 社 員 の 時 に 初 め て 安 者も。 ま に 接 す る 者 も、 電 話 で 予 約 を 承 る 地 上 に い る 時 も、 直 接 対 面 で お 客 さ な い 者 も、 飛 行 機 が 上 空 に あ る 時 も、 直 接 運 航 に 携 わ る 者 も、 そ う で は ないという姿勢と強い意志。 は、御巣鷹山事故機の残存機体などが しては、見学した社員一人一人が安全 J AL グ ル ー プ で は、 す べ て の 社 とができました。 8人に共通していること 惑をおかけしましたが、近藤には、少 『安全の礎』で学んだことを 生かして 安全推進 ムイオン電池など、その取り扱いが一 様でない場合も少なくありません。こ うした航空輸送危険品が、万一でも飛 行機の火災や損傷につながることのな い よ う、 細 心 の 注 意 を 払 っ て い ま す。 あたり前のこと、小さな作業の積み重 ねかもしれませんが、常にお客さまの 安全を考え、徹底して業務を遂行して います。 笑顔の接客サービスの根幹には、安 全へのゆるぎない思いがあるのです。 ショックを受けたと言います。 「普段、 直接は飛行機に接しない私たちです が、同僚たちにも事故を自分自身の問 題と捉え、安全について深く考えてほ 展示され、安全意識の向上のための社 運航の大切さを改めて噛みしめ、日々 員が安全のプロフェッショナルとし 日本航空 安全推進本部 運営グループ で ご 遺 族 の 美 谷 島 邦 子 さ ん と 出 会 い、 員 研 修 を 行 っ て い ま す。2013 年、 の業務において何をすべきかを考える て、わずかの妥協も許さない高い意識 月、 御 巣 鷹 山 する取り組みに加わりました。 そ し て 2014 年 小畑 眞一郎 (2009 年入社) 美谷島さんから「安全を守っていくと 羽田地区の施設再編計画の一環として、 施設となるように努めました。 ここは、 し い と 強 く 思 い ま し た 」 と、J AL いうことを、皆さんと一緒に考えてい 安全啓発センターも新整備場地区へ移 ナビア社内の御巣鷹山慰霊登山を企画 きたい」 というお話を直接伺いました。 年目の小畑は、移転工事の主担当を任 長らく中断していたパイロット養 ングカンパニーとして、日々一便一便 て、輸送分野における安全のリーディ と、具体的な行動により、今後も安全 されました。 「最初は責任の大きさに戸 成。小畑は訓練開始を待つ訓練生の一 の安全運航を着実に積み重ねてまいり J AL グループの安全の礎なのです」 く、どのように業務につなげていくか 惑いもありました。しかし、多くの方々 人です。 「安全推進の中枢組織で学んだ ます。 転することとなりました。当時入社 を深く考えるようになりました。例え のご協力のお蔭で、無事にプロジェク ことを生かし、パイロットの立場から 古川は「事故をただ悼むだけではな ば、お客さまからいただいた情報を簡 ト を 完 遂 す る こ と が で き ま し た 」 と、 J AL グループの安全の層を厚くして の層をさらに厚くしていきます。そし 潔明瞭に予約記録に入力し、空港での mにも と小畑は言葉に力を込めます。 スムーズなチェックインをサポートす 振り返ります。なかでも長さ なる垂直尾翼や圧力隔壁などの大きな いきます」と、決意をのぞかせました。 ること。それによりスタッフの焦りな どを減らすことでエラーを防ぎ、最終 2006 年 4 月 24日開設。御巣鷹山事故の 残存機体、コクピット・ボイスレコーダー、 事故を報道した新聞や現場写真などを展 示しています。JALグループ 社員の研修 施設ですが航空安全に関心のある一般の 方もご見学いただけます。 (ご予約をお願 いしております) 的には安全へとつながっていきます」 ⃝ 東京都大田区羽田空港 3-5-1 ⃝ http://www.jal.com/ja/f light/safety/ center/index.html ⃝ 累計来館者数 159,317 名 (2015 年 2 月 28 日現在) と語ります。 予約センターという視点から航空安 全 を 考 え つ つ、 「いってらっしゃいま せ」という言葉に、旅の無事の祈りを 込めています。 ◉日本航空安全啓発センター 14 12 明日の翼 Vol.04 明日の翼 Vol.04 13 2 1 5 10