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近畿大学法科大学院 自己点検・評価報告書 〔第1号〕 平成 18年3月

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近畿大学法科大学院 自己点検・評価報告書 〔第1号〕 平成 18年3月
近畿大学法科大学院
自己点検・評価報告書
〔第1号〕
平成 18年3月
ま え が き
近畿大学は、医学部や農学部等をも擁する、私立大学としては関西で唯一ともいえる文
字通りの総合大学であるが、司法制度改革の趣旨に応えるべく、平成16(2004)年4月、
本法科大学院が、専門職学位課程の大学院法務研究科法務専攻として、既存の修士及び博
士課程の大学院法学研究科とは独立した組織の形をとって設立され、近畿大学の歴史に新
たな1頁を加えることになった。
司法制度改革審議会意見書(平成13年6月12日)によれば、法科大学院の「教育理
念」として「法科大学院における法曹養成教員の在り方は、理論的教育と実務的教育を架
橋するものとして、公平性、開放性、多様性を旨としつつ、以下の基本的理念を統合的に
実現するものでなければならない」とされ、次の3点が掲げられている。
1.
「『法の支配』の直接の担い手であり、
『国民の社会生活上の医師』としての役割を期
待される法曹に共通して必要とされる専門的資質・能力の習得と、かけがえのない人生を
生きる人々の喜びや悲しみに対して深く共感しうる豊かな人間性の涵養、向上を図る」。
2.
「専門的な法知識を確実に習得させるとともに、それを批判的に検討し、また発展さ
せていく創造的な思考力、あるいは事実に即して具体的な法的問題を解決していくため必
要な法的分析能力や法的議論の能力等を育成する」。
3.
「先端的な法領域について基本的な理解を得させ、また、社会に生起する様々な問題
に対して広い関心を持たせ、人間や社会の在り方に関する思索や実際的な見聞、体験を基
礎として、法曹としての責任感や倫理観が涵養されるよう努めるとともに、実際に社会へ
の貢献を行うための機会を提供しうるものとする」。
この「教育理念」を十全に実現するには、個々の法科大学院の努力はもとよりのこと、
国の財政的支援や司法試験の在り方など外的条件の整備に待つところも少なくなく、多く
の困難を伴うが、本法科大学院は、教員と事務職員とが一体となって率直に意見を交換し、
学生の意見・要望を汲み取りつつ、様々な試行錯誤を重ねながら、法科大学院の「教育理
念」の実現に向けて懸命に歩みを進めてきた。
本法科大学院の位置する東大阪市とその周辺は、日本経済を牽引してきた世界で活躍す
る多くの中小企業が存在するが、このような企業やここに住む市民にとって充分な法的サ
ービスが行き届かない地域であった。本法科大学院は、このような地元地域に対して、世
界に通用する優れた法的サービスや情報を提供することのできる拠点とならなければなら
ないという使命を担っていることも自覚しているところである。
本報告書は、設立後2年近く経った平成18年3月10日現在の本法科大学院について
の『自己診断書』というべきものである。与えられた諸条件の中でよくぞここまで辿り着
けたと思う面があると同時に、様々な問題・課題があることも自覚しており、努力の至ら
ぬところは率直に反省しなければならないと考えている。ここに記した様々な課題につい
て、教員、職員及び院生が連帯感を保持しつつ、果敢にかつねばり強く取り組み、
「教育理
念」に忠実なきらりと光る法科大学院へと発展させて行きたいと思う。
法科大学院長
佐 藤 幸 治
目
次
まえがき
第1部 自己点検・評価
第1章 法科大学院の理念・目的および基本組織・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
第2章 教育内容・方法等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
第1節 教育課程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
第2節 教育活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
第3章
学生の支援体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
第1節 学習支援・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
第2節 生活支援・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
第4章 入学者選抜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
第5章 教員組織・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
第6章 管理運営・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
第7章 自己点検・評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35
第8章 施設・設備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・39
第1節 施設・設備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39
第2節 図書室および情報化への対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
第9章 社会への対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44
第1節 国際化への対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44
第2節 社会との連携・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45
第2部 教員の研究・教育・社会活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49
資料
第1部
自己点検・評価
現況
(1)法科大学院(研究科専攻・課程)
近畿大学大学院法務研究科法務専攻
専門職学位課程
(2)所在地
大阪府東大阪市小若江 3−4−1
(3)学生数および教員数
(平成 18 年 3 月 10 日現在)
学生数:70 人
教員数:16 人(うち実務家教員 4 人)
1
第1章
1
法科大学院の理念・目的および基本組織
理念と目的
国際化の時代を迎え、複雑化・多様化した今日の社会において、各種法的問題を「法の
支配」の理念に基づき迅速かつ適切に処理するための社会的基盤の整備が求められている。
今般の司法制度改革は、人的基盤の拡充、制度的基盤の整備、国民的基盤の確立をめざし
て、諸般の施策を講じようとするものである。法科大学院構想は、これら諸施策の根底に
ある人的基盤整備にかかわり、「法の支配」が貫徹された公正な社会を実現するための担い
手である法曹を養成しようとする国家的な一大事業である。
本法科大学院の設置は、このような国家的事業の目的達成の一端を担おうとするもので
あるとともに、母体である近畿大学の「人に愛される人、信頼される人、尊敬される人を
育成する」という建学精神、および「人格の陶冶、実学主義」という教育理念を尊重しつ
つ、広い教養と良識、また、健全な市民感覚とグローバルで多角的な視座を持ち、チャレ
ンジ精神旺盛な法曹を養成することを、その基本理念および目的としている。これらを実
現するために、本法科大学院は、法学教育に関する伝統的資産を活用して、社会の要請に
応える新たな実学重視の教育を行ない、21世紀の市民社会に貢献しようとするものであ
る。
この基本理念と目的の下に、具体的には次の目標をめざしている。
(1)
市民生活法曹の養成
法曹には、豊かな人間性や感受性、幅広い教養と専門的知識、柔軟な思考力、説得・交
渉の能力などの基本的資質が求められる。本法科大学院では、非法学部出身者や社会人に
も開かれた選抜方法をとるとともに、少人数の双方向教育を通じて、これらの基本的資質
の涵養をはかり、「国民の社会生活上の医師」にふさわしい法曹(市民生活法曹)の養成を
めざしている。今日、グローバル化が進み、国内外の動向を視野に入れ、個人、企業、行
政、政治をはじめとする幅広い分野で高度の専門性をもって活躍する法曹が強く求められ
ており、また、これまで日本では司法の過疎が放置されてきたが、全国どの街でも市民が
適切な法的救済を受けられるような社会となることも強く要請されている。社会生活上の
医師としての法曹の養成は、まさに本学の建学の精神と教育理念を実践するものに他なら
ない。
(2)
国際性豊かなビジネス法曹の養成
上記(1)に述べた法曹として求められる基本的資質を前提に、本法科大学院では、さら
に、国際性を備えた法曹の養成をめざしている。わが国の社会・経済は、否応なく国際化
を遂げているものの、法曹の国際化は十分ではなく、今回の司法制度改革の遠因の一つも
そこにあると考えられる。層の厚い法曹を背景とする諸外国の弁護士サービスなどの進出
に対抗していけるだけの能力を備えた国際性豊かなビジネス法曹(国際ビジネス法曹)の
養成が必要である。そのような資質を身につけることは、直接に国際ビジネスに携わる法
2
曹だけでなく、上記の市民生活法曹にとっても、また、次に述べる地域経済の発展に貢献
する法曹にとっても、今後ますます要求されるものと思われる。
本学が位置する東大阪市とその周辺には、日本経済を牽引してきた世界で活躍する中小
企業が多く存在する。このような立地環境に鑑みるとき、中小規模の企業の法的需要に十
分応えられる法曹の養成も重要な目標でなければならない。経済活動の国際化に伴い、こ
れらの企業も、従来型の法的紛争のみならず、国際的あるいは先端的分野の法的紛争に対
して新たな対応を迫られている。これまで司法の容量不足のため十分に法的サービスが受
けられなかった地域社会に対し、本法科大学院が世界に通用する法的サービスや情報を供
給することのできる拠点となることも重要な役割であると考える。
2
基本組織
本法科大学院は、既存の法学部に基礎を持たず、法学研究科などの他の大学院からも独
立の、専門職大学院として大学の組織上位置づけられている。このことによって、司法改
革の理念にそった新しい高度専門教育・研究の組織として、独自に運営することが可能な
環境が保障されている。(資料1:大学の組織図)
本学では、法科大学院は、法曹養成をめざす教育機関として、法学部は、それ以外の法
律関係職従事者、法的素養を持った社会人、各種の公務員等を養成する教育機関として、
それぞれ特化している。また、法学研究科においては、従来から税理士、司法書士、およ
び公務員等をめざす者が多く、法律関係職従事者の養成に一定の役割を果たしており、法
科大学院教育との役割分担も明確になされている。
このような組織上の独立を前提に、本法科大学院では、第一線において活躍中の研究者
教員12名と、弁護士や検察実務に豊かな経験を持つ専任実務家教員4名、さらに、研究・
実務に精通した学内からの兼担教員8名、学外からの兼任教員14名、兼任実務家教員1
4名(派遣裁判官および検察官2名を含む)、学習指導教員3名を擁して密度の高い専門教
育の実現に取り組んでいる。これを支えるものとして、独立の事務組織と図書室を備えて
いる。学生については、入学定員を60名とし、隅々まで眼の行きとどく態勢を整えてい
る。このような比較的少人数の学生を対象とすることにより、個々の学生の学習到達度を
勘案した、丁寧な教育指導の態勢を整えていることは、本法科大学院の特徴の一つである。
3
現状の説明
1において述べた、司法制度改革にそった本法科大学院の設置趣旨、教育の基本的理念
と目的、具体的目標については、募集要項、法科大学院案内、ホームページ上で明記し、
公表している。
国際化、生活価値観の多様化に直面する現代の日本社会においては、従来になく多様で
複雑な紛争が、行政、企業活動、日常生活などのあらゆる分野で生じてきており、それに
対処するために、多様な資質を持った優れた法曹が全国に広く活躍し、求められる高度の
3
専門性を提供していかなければならない。しかし、ここで要求されている法曹教育とは、
単に多様化と専門性の追求だけでなく、「法の支配」が貫徹された公正な社会を実現するた
めの担い手としての法曹の養成である。本法科大学院においては、その実現のために、従
来の法学の学習にみられがちであった、知識や論点の暗記型の学習方法ではなく、「法の支
配」の理念を深く理解することのできる、主体的・発展的な思考能力を身につけた法曹教
育に取り組んでいる。
この教育方針の下に、カリキュラムの編成においては、法律基本科目群、実務基礎科目
群、基礎法学・隣接科目群、展開・先端科目群の4群の区分を設け、その下に多様な授業
科目を開設しつつ教育目標の実現に努めており、また、授業における双方向・多方向教育、
授業に関する定期アンケート調査およびピア・レヴューの実施、授業補完のための学習指
導教員制、専任教員によるクラス担任制、その他充実した図書室、自習室、演習室等の施
設の自由な使用など、一人一人の学生の学習効果の向上に万全を期している。
市民生活法曹の養成、国際性豊かなビジネス法曹の養成をめざした教育のより具体的な
内容については第2章に詳述する。
4
今後の方針と課題
本法科大学院がめざす上記の理念と目的は、これに携わる教員のみならず、何より本法
科大学院に学ぶ学生が深くこれを共有するものでなければならない。幸い、「法の支配」に
基づく社会の実現の重要性と、そこにおいて必要な主体的・発展的思考能力を備えた法曹
の養成という基本理念については、この2年間の教育や啓発活動を通して徐々に学生の間
に浸透しつつある。今後は、この教育理念と目的の具体的実現をめざして、より効果的な
教育方法の探求、および、そのために必要な人的・物的資源の充実に向け、自己点検や第
三者評価を勘案しつつ、漸進的な発展を図る必要がある。さらに、より具体的な目標とし
ての(1)市民生活法曹の養成に関しては、第9章第2節に詳述する地域社会との連携の
方途を検討する必要がある。また(2)国際性豊かなビジネス法曹の養成に関しては、こ
の目標に寄与すると思われる多様な科目を開設しているが、さらなる充実を検討する必要
がある。
4
第2章
第1節
教育内容・方法等
教育課程
Ⅰ
現状の説明
1
教育課程の構成
教育課程の構成は、法律基本科目群、実務基礎科目群、基礎法学・隣接科目群、および
展開・先端科目群の4群の区分を設け、段階的な学習を考慮して各科目の学年配当を行な
っている。
また、第1章1に詳述した教育理念と目的に基づき、法曹としての専門性を培うことが
できるよう「市民生活法曹」および「国際ビジネス法曹」志望者への履修モデルを提示し
て、計画的履修ができるように配慮している(資料2:履修モデル)。
開講科目は、後掲の開講科目一覧に示すとおりである。(資料3−1、3−2:開講科目一覧)
(1)
法律基本科目群においては、1年次には基礎的な法知識を確実に修得するととも
に、基本的な考え方を体系的に理解することが目的とされる。公法系科目としては、統治
の基本構造、基本的人権の基礎、行政法、民事法系科目としては、民法の基礎理論、契約
法、担保法、不法行為法、家族法、会社法、商法総則・商行為、民事訴訟法の基礎・応用、
刑事法系科目としては、刑法総論・各論、刑事訴訟法に関する科目が開講されており、す
べて必修科目である。
2年次の演習は、応用的・発展的な問題を学びながら、法的思考力・分析能力をより高
度なものとすることを目的としている。学習効果を高めるための演習におけるクラス分け
については、第2節Ⅰ1(1)(イ)に詳述する。
さらに、法律基本科目の仕上げとして、実体法と手続法を統合し、個別法分野を超えた
法制度間の相互関係を理解させるために、公法、民事法、刑事法の総合演習の開設を構想
し、一部実施している。
「刑事法総合演習」については、担当教員が刑法と刑事訴訟法の両
分野を専門としていることから、このような総合的な内容が実現されている。公法につい
ては「公法総合演習」は行なっていないが、「憲法演習 B」において憲法訴訟と行政法が総
合された内容の授業を行なっている。「民事法総合演習」も民事法と民事訴訟法の融合を念
頭におき要件事実論の授業を行なっている。これらの総合演習における課題については、
この節のⅡ2(2)に詳述する。
(2)
実務基礎科目群については、理論と実務の架橋を重視し、とくに民事訴訟実務の
基礎や刑事訴訟実務の基礎に関して、法曹三者の立場の違いを明らかにする趣旨で、「民事
裁判」「民事弁護」「刑事裁判」「検察実務」「刑事弁護」の5科目を、3年次の必修科目と
して開講し、それぞれ関係実務家が担当している。
「リーガル・リサーチ」および「法曹倫理」は、必修科目として一年次に配当している
が、既修者コース入学者には初年度に履修させている。
5
2・3年次には「リーガルクリニック」(第9章第2節に詳述する)および「エクスター
ンシップ」を、3年次には「法文書作成」「模擬裁判」を、それぞれ選択必修科目として開
講している。ただし、「模擬裁判」については、科目設置後2年間履修者ゼロの状態が続い
ており、その問題点についてはこの節のⅡ2(3)に詳述する。
(3)
基礎法学・隣接科目については、法のあり方を根本から考える上で重要な基礎科
目として、「法理学」や「法社会学」を開講するとともに、本法科大学院が重視している国
際関係科目として「英米法」「アジア法」「比較法史」を開講している。
(4)
展開・先端科目については、「市民生活法曹」および「国際ビジネス法曹」という
2つの履修モデルに従って履修できるように、公法系4科目、民事法系 12 科目、刑事法系
4 科目、国際法務系9科目を開設している。これらのうちには、中小企業の多い東大阪市と
その周辺での貢献を念頭においた「知的財産法 A・B」「閉鎖会社法」「金融取引法」「倒産
処理法」「特別演習(企業活動におけるコンプライアンス)
」などがある。「市民生活法曹」
養成との関連では「消費者法」「特別演習(情報ネットワーク法)」「特別演習(行政訴訟)」
「特別演習(損害賠償責任法)」などがある。「国際ビジネス法曹」養成との関連では「国
際私法」「国際取引法」「国際租税法」「国際倒産法」「特別演習(刑事手続と外国人)」「英
語法文書講読」などがある。これらは2・3年次配当の選択科目となっている。
3年次には基本的な法律英語の修得と文書作成の方法を学ぶ「英語法文書作成」をアメ
リカ人弁護士の担当により開講している。
(5)
展開・先端科目において、租税法、知的財産法、倒産処理法、国際法、国際私法
の事例演習を平成18年度から3年次において開設することを決定した。これは、展開・
先端科目における多様な科目の開設という従来の方針に加え、学生からの要望の多い科目
についてより深く学ぶことが可能となるように配慮したものである。
2 授業時間の設定
授業時間は学習量の多さを考慮し、可能な限りの余裕をもたせるように配慮している。
(1)
学年を前期と後期に分けるセメスター制を採用しており、前期は4月1日から9
月20日まで、後期は9月21日から3月31日までとしている。
(2)
単位の計算基準は、講義および演習については毎週1時間15週をもって1単位
とし、毎週2時間(90分)の授業を行なっている。1 単位の授業科目については毎週2時
間で8回の授業を行なっている。
なお、期末試験は、2単位科目については15回の授業終了後、1単位科目については
8回の授業終了後に実施している。
(3) 授業時間は、月曜日から土曜日まで1時限(9:00-10:30)
・2時限(10:40-12:10)・
3時限(13:10-14:40)
・4 時限(14:50-16:20)
・5 時限(16:30-18:00)としている。授業時
間割は、学生が一日に受講可能な授業数や、授業間の空き時間の確保に留意して作成され
ていることについては、本章第2節Ⅰ1(3)アに詳述する。
(4)
過剰な科目履修による学習効果の低減を防ぐために、各学年次で履修制限を設け
6
ており、1 年次は36単位、2年次は36単位、3年次は44単位としている(エクスター
ンシップは除く)。
(5)
休講に対する補講は、授業の連続性と学生の学習効率を考慮して、その都度行な
っている。補講通知は、インターネットによる学習支援システムである「TKC 法科大学院
教育研究支援システム」の電子掲示板に掲載している。その他の補習や勉強会については、
本章第2節および第3章第1節に詳述する。
Ⅱ
評価と課題
1
評価すべき点
(1)
実務基礎科目中、「刑事裁判」「検察実務」「刑事弁護」「民事裁判」「民事弁護」に
関しては、法曹三者それぞれの立場の違いを理解させるため、それぞれ独自の1単位科目
とし、裁判官ないし裁判官経験者・検察官・弁護士にそれぞれ授業担当を割り振っている。
(2)
カリキュラムの内容や学年・学期の科目配当について、学習効果や学生の要望を
勘案しつつ、常に改善に努めている。
(3)
平成18年度から展開・先端科目において事例演習が新たに開設され、学生の要
望の強い専門分野についての学習の深まりが期待できる。
2
課題
(1)
平成18年度から展開・先端科目の一部において事例演習を開設することを決定
したが、学生の要望に応える形で、さらに多くの科目について開設しうるよう、教員の確
保の問題とも合わせて検討する必要がある。
(2)
前述のⅠ1(1)でふれたように、法律基本科目の段階的学習の仕上げとしての
総合演習科目として、現在、2年次に「刑事法総合演習」と「憲法演習 B」を開講している。
また「民事法総合演習」も2年次に行なっている。しかし、現在では3年次に法律基本科
目の配置がないこと、また行政法の基本的知識が前提となる「憲法演習 B」が、行政法の授
業と平行して2年次に行なわれているために、段階的学習上の不都合があることから、3
年次にこれらの総合演習科目の内容を整備して、配置するべきではないかという議論がな
されている。
また、平成17年度における「民事法総合演習」の授業内容は、要件事実にしたがって
事実を分析するという、民法方法論の基礎としての、民事訴訟法と民法の融合を念頭に置
いた要件事実論であった。しかしながら、要件事実論は従来司法修習の前期において学ば
れていたものであり、法科大学院の理論と実務の架橋という目的にそって重視されている
科目でもある。そこで、要件事実論を実務基礎科目として独立させ、
「民事法総合演習」を
当初の構想どおり民事法における手続法と実体法の総合的内容を有する科目とすることを
検討する必要がある。
(3)
3年次配当の「模擬裁判」は、開設以来、学生の履修がない状態が続いている。
学生の全体数が少ないことも一因であるが、他の選択可能な実務基礎科目に比して負担が
7
重いことも敬遠の理由である可能性がある。そこで、これをエクスターンシップのように、
休暇期間中に集中的に行なう可能性につき現在検討がなされている。
また、実務基礎科目における必要修得単位数と科目選択範囲の観点から、模擬裁判の履
修者数の問題は、依頼事務所の数が限られているエクスターンシップの履修者数、相談数
の限られているリーガルクリニックの履修者数の問題とも関連する。学生はエクスターン
シップ、リーガルクリニック、模擬裁判、法文書作成のうちのいずれか一つの選択で必要
単位を充足できるからである。そこで、これら4科目間での学生の相互の履修状況を適当
なものとするための方策を検討する必要がある。この問題は次の(4)とも関係する。
(4)
法律基本科目群、実務基礎科目群、基礎法学・隣接科目群、展開・先端科目群の
中から、それぞれの科目群の修了に必要な単位数を超えていずれかの科目を履修し、4単
位以上を修得しなければならないものとする自由選択の制度が検討されている。例えば、
現在の展開・先端科目群の修了に必要な単位数を24単位から20単位に減らし、これを
上述のような自由選択とする方法などが考えられる。これにより、学生の自主的な科目選
択の余地を全般的に拡大することができるとともに、(3)で述べた問題に対しては、実務
基礎科目の選択科目からも2科目以上の履修が可能になることで、模擬裁判の受講を促進
する効果が生じるのではないかと考えられている。
第2節
教育活動
Ⅰ
現状の説明
1
授業における教育活動
本法科大学院は、徹底した少人数教育を大きな特徴の一つとしており、この点について
は(1)に現状を詳述する。なお、入学定員を60名としているが、責任をもって教育で
きる入学生の資質を維持・確保するために、入学試験において厳正な選考を行なっている
結果、実際の入学者数は、入学定員をかなり下回っている。この状況については、第4章
に詳述する。
また、事例の検討を教員と学生の間での質疑応答により行なう「ケースメソッド方式」
「ソ
クラテスメソッド方式」を用い、双方向・多方向の授業を行なっている。その具体的状況
については(2)に詳述する。
このような授業方法が成果をあげるためには、学生が十分に予習と復習を行なうことが
必要であるため、(3)に述べる措置を講じている。
(1)
少人数教育の徹底
(ア)
1年次配当の法律基本科目である16科目については、必修科目であるため、1
年生全員が一つの教室で同時に受講している。平成16年度の受講生は各科目とも24名、
平成17年度の受講生は各科目とも41名(2名は、入学後休学)であった。1年次配当
の法律基本科目は、法的知識の修得や基本的な法思考の鍛錬にとどまるため、2年次配当
8
の法律基本科目である演習科目に比して、双方向・多方向による授業の必要性は若干弱い
といえ、また、体系的な知識の修得のためには講義という授業方式を加味することにも一
定の合理性が認められる。したがって、受講生を40∼50名とする授業によっても十分
な教育効果が期待できる。
(イ)
2年次配当の法律基本科目である必修の12科目は、判例や複数の判例を参考に
作成した詳細な事例などを学生に与え、双方向・多方向の授業によって、事実関係の分析、
問題発見および問題解決などの能力を涵養する演習科目である。このような科目において
は、授業への学生の主体的な参加を促すため、とくに少人数で行なうことが望ましい。そ
こで、設置初年度の法学未修者(24名)が進級する平成17年度から、各科目のクラス
を2つに分け、一教室の受講者が多くとも20名程度の規模にとどまるように配慮した。
なお、平成16年度に入学した既修者は6名だったので、各科目とも1クラスで授業を行
なった。
ちなみに、このクラス分けに際しては、学生の習熟度別でこれを行なうか否かが検討さ
れた。双方向・多方向による「ケースメソッド方式」「ソクラテスメソッド方式」の授業で
は、同じ学力程度の学生同士での発言・討論が可能な点で、習熟度別のクラス分けには利
点が存在する。しかし、そうすれば、習熟度の低いクラスに配属させられた学生(ことに
そのクラスの成績上位の学生)の学習意欲への影響の問題に直面するし、過度に競争意識
をあおる結果につながりかねないとの懸念について議論がなされた結果、クラス分けにつ
いては、成績上位の学生から下位の学生まで各クラスとも均等になるように、学生を配属
させる方法によった。
(ウ)
基礎法学・隣接科目である選択必修の5科目については、平成16年度において
は、2年生が6名であったため、双方向・多方向授業の効果を十全のものとするには、学
生が少なすぎるという困難が生じた。しかし、学生が自主的に複数人でまとまって履修科
目の選択を心掛けたことで、この困難の幾分かは緩和された。その結果、不開講科目があ
ったことは、甘受しなければならない不都合であろう。
平成17年度は、2年生の数の増加にともない、ほとんどの科目が開講され、その多く
においては、双方向・多方向授業を効果的に行なうことができたが、一名のみの履修で多
方向授業は行ない得なかった科目も若干存在した。
(エ)
実務基礎科目のうち、リーガル・リサーチや法曹倫理等の7科目は、必修科目で
あり、上述(ア)の法律基本科目と全く同一の状況にある。また、法文書作成や模擬裁判
等の選択必修科目については、履修科目の選択が可能であり、上述の基礎法学・隣接科目
の状況と同一である。
なお、エクスターンシップ、リーガルクリニックの履修状況と問題点については、前節
Ⅱ2(3)に詳述した。
(オ)
「展開・先端科目」(25科目)については、すべて選択科目であり、上述の「基
礎法学・隣接科目」における状況とほぼ同じである。(資料4−1、4−2:履修登録者数)
9
(2)
双方向・多方向授業
上述のような少人数の受講生という条件の下で、授業は、従来の法学部教育にみられた
ような、教員による一方的な講義の方式によるものではなく、双方向・多方向の方式によ
って進められるべきことが、専任教員をはじめ全教員によって強く意識されている。した
がって、すべての科目(リーガルクリニックなど授業内容の性格からこうした授業方式を
採用できない科目を除く)において、担当教員は、授業ごとに用意された座席表を用いて、
基本書や論文における重要な法的知識の確認をしたり、判例における重要な事実や法的推
論を確認したり、それらから発展・敷衍できる一定の法的結果や法理論を構築するため、
学生に対し質問を発してそれに応答させ、かつそれらを他の学生にも吟味させる形で授業
を進めている。
(3)
学生の予習・復習のための具体的措置
(ア)
授業の時間割は、①十分な予習時間を確保するために、1日に2科目をこえて必
修科目を履修することがないように各科目を配置している(1年次はすべての科目が必修
科目である)
。また、②授業の延長(かなりの授業科目でその延長がなされている)が次の
授業開始の支障となることを避けるため、また授業終了後の質問(ほとんどの授業科目で
30分程度にわたり複数の学生より質問がなされるのを常態とする)の時間を十分確保す
るために、必修科目2科目を連続した時間帯に配置しないようにしている。(資料5−1、5
−2:法科大学院時間割表)
(イ)
授業における学習の効果を高めるために、各科目の授業のシラバスを配付し、授
業概要、学習・教育目標および到達目標、成績評価基準、授業計画の項目・内容および到
達目標を事前に学生に公表している。また、これは、
「TKC 法科大学院教育研究支援システ
ム」によっても公開されている。
(ウ)
学生の効率的な予習のために、すべての科目について、各回の授業に関連する判
例や文献をあらかじめ指定し、本法科大学院で独自に作成された15回分の教材冊子を、
学期が始まる10日前には配付している。その教材には、判例や事例問題を掲載するとと
もに、これに関連する教員からの質問を加えるなどして、学生の予習や復習に役立てるよ
う努めている。
教材の分量については、これが過多となると、学生の予習時間と復習時間のバランスを
欠くことになるため、適切な分量についての検討を重ねている。この点については、本節
Ⅱ2(1)および第7章Ⅰ1(4)
(ア)にも述べる。
(エ) 各回の授業の前後に、
「TKC 法科大学院教育研究支援システム」を活用して、授業
で使用する追加レジュメの提供や復習課題の提示をする科目も、少なからず存在する。
(オ)
各科目の担当教員は、授業内容に関する学生の理解度を確認するために、適宜小
テストを実施し、あるいはレポートの提出を求め、それらを採点、添削のうえ返却してい
る。
(カ)
授業の前提となる基礎知識を習得し、予習復習の効果を高めるため、また学習相
10
談のために、第3章第1節4、5に詳述するような、専任教員や非専任教員による補習や
学習会、オフィスアワー(専門学習指導のための時間)の制度、若手弁護士による学習指
導教員の制度など、多様な学習指導体制を整備している。
2
成績評価と進級・修了認定
すでに述べたような教育課程にしたがって、学年末試験、成績評価、進級および修了認
定については、ことに厳正と客観性を旨としてこれを行なっている。進級認定については
カリキュラムが1年次から3年次までの段階的学習を目的として作成されていることから、
(3)で述べるような進級制を採用している。
(1)
成績評価
、B(7
(ア) 各科目の成績は、A+(90点以上)、A(80点以上)、B+(75点以上)
0点以上)、C(60点以上)、D(60点未満)の6段階で評価する。ただし、リーガル
クリニック、エクスターンシップおよび模擬裁判は、科目の性質上、
「合・否」のみで評価
する。また、GPA(Grade Point Average)制度を取り入れ、平均値を算出し、成績を各科
目ごとのみならずトータルに認識できるようにしている。
「KINKI UNIVERSTY LAW SCHOOL 2005 Bulletin23頁」
3.成績平均点(GPA:
Grade Point Average)
(1)
成績証明書および成績通知書には、成績平均点を表示します。
(2)
成績平均点(GPA)は、以下の式で算出します。
GPA=(「A+取得単位数×5+「A」取得単位数×4+「B+」取得単位数×3+
「B」取得単位数×2+「C」取得単位数×1+「D」取得単位数×0)÷(総履修単位数−
「P」取得単位数−「N」取得単位数)
*「P」取得単位数は合・否のみで評価する科目で合格した単位数
「N」取得単位数は入学前に修得した単位、他大学大学院において修得した単位、および法学既修者につき既に修得し
たとみなす認定単位数
各科目の成績評価の基準については、学期末試験、平常点、レポート・起案などの課題
の評価要素が占める割合を科目ごとにシラバスで公表することにしている。さらに、確認
の意味も含めて、全科目ついての評価基準の一覧を「TKC 法科大学院教育研究支援システ
ム」電子掲示板において掲載している。これらの評価要素の割合においては、最も客観的
な評価を可能にする学期末試験の割合が70%を下回ることのないように、教員間での申
し合わせがある。
成績分布は、A+が履修者の5%以内、AがA+を含めて履修者の25%以内とし、これ
以外の成績ランクについては、とくに分布の基準を設けていない。また、受講生が概ね1
0名以内の科目については、この基準を若干修正できるものとしている。このような成績
11
評価方法における課題については本節Ⅱ2(3)に詳述する。
(イ)
履修した科目の成績評価についての説明を希望する学生に対しては、各科目の担
当者がその根拠を十分に説明することにしている。それでも納得できない学生に対しては
異議の申し立てを認め、法科大学院長が、調査のため教務委員長他専任教員の中から調査
委員を選任し、その異議申立てについての審査をする。そして、その結果を、異議を申し
立てた学生に対して、試験答案の写しなどを提示しながら説明することになっている。
この異議申立て制度は、平成16年度の後期試験に際して、学生より異議の申立てがあ
った際に、これとほぼ同様の対応をしたのを契機として、平成17年度より制度化したも
のである。
(ウ) 学期末試験の答案については、その匿名性を確保するために、採点の際には整理
番号のみが記載された答案を担当教員が受け取り、採点が終了した後に、事務部で答案
の整理番号と氏名を照合し、採点結果が成績報告表に記入されることになっている。
(エ)
全科目の成績評価の分布表が専任教員に配付されている。これによって、各科目
の担当教員がどのような成績分布で成績評価をしているのかを知ることができ、各自で自
己の担当科目の成績評価と比較することを通じて、成績評価の適切性や相対性の確保に大
きく寄与している。
(オ)
学生に対して成績評価を発表する際に、各科目の学期末試験については、その採
点基準や解答の指針、または模範答案や優秀答案に教員のコメントを付したものを、各
学生に配付している。さらに、各学生が相対的にどの程度の成績を収めているのかを把
握できるようにするため、
「GPA ランキング」
(全学生の GPA の一覧表で氏名を伏せた
もの)や各科目の「成績分布表」(各科目の期末テストの得点分布を柱状グラフで表示
したもの)も公表している。
(2)
学年末試験等
(ア)
学期末試験は、平成16年度は各科目とも90分(担当者の希望により延長可能)
で実施していたが、平成17年度は法律基本科目は120分、その他の科目は90分(担
当者の希望により延長可能)で実施した。これによって、試験問題の内容・水準の一層の
向上が図られることになった。
(イ)
学期末試験において所定の点数に達しない学生に対して、通常試験の終了後一ヶ
月程度の準備期間をおいて、再試験を実施している。平成16年度は、60点が合格点で
あるところ、70点未満の評価を受けた科目につき4科目まで再試験資格を認めていた(再
試験における採点の最高点は70点とする)が、平成17年度は、60点未満の評価を受
けた科目についてのみ認めることに変更した。これは、平成16年度においては、各科目
60点台の合格での進級および修了をできるだけ回避し、再試験において70点に到達す
る機会を与えようとの趣旨が存在していたためである。しかし(3)
(ア)に詳述するよう
に、平成17年度からは進級・修了要件として別途 GPA 基準(進級につき1.8以上、修
了につき2.2以上)を導入することにより、低い合格点での進級及び終了を回避する方
12
法に改めた。なお、平成17年度以降において、再試験において合格した場合の成績は、
C−の評価で GPA は0.5となる。ただし、例外として再試験において70点を超えると
評価される成績を収めた場合は、Cの評価で GPA は1.0としている。これは、再試験に
おいて学生に一層の奮起を促すための方策として採用した。
(ウ)
一定のやむを得ない事情から通常の学期末試験を受験できなかった学生に対して
は、追試験が認められている。授業や試験等の日程の都合上、追試験は再試験と同一の日
時・同一の問題で実施することを余儀なくされている。そして、追試験では既に通常の学
期末試験における問題のみならず、解答の指針または優秀答案などが公表されていること
を考慮して、受験生間の公平性を確保する観点から、当該追試験における答案の採点は素
点の0.9倍としている。
(3)
進級制
(ア)
1年次から2年次への進級および2年次から3年次への進級に必要な要件は、い
ずれの場合も、①当該学年で26単位以上修得し、かつ②当該学年の GPA 1.8以上の成
績を収めることである。なお、この GPA 基準は、平成17年に追加したものである(その
ため、この要件は、平成17年度以降の入学生に対してのみ適用する)。これは、
(2)
(イ)
にふれたように、諸科目の合格点数に一切かかわらず所定の単位数を修得するだけで進級
を認めることは、段階的学習の実現を妨げると考えたからである。
同時に、学習到達度を GPA 基準とは異なった観点から測ることによりその万全を期し、
また、学生に学期末試験後の学習による成績向上の機会を提供するために、進級認定試験
の制度を導入した。すなわち、当該学年で26単位以上修得し、かつ GPA1.3以上1.
8未満の学生は、憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法の7科目で
実施する進級認定試験を受験することができ、それに合格すれば進級できるものとした。
(イ) 進級ができなかった者がその年度に履修した科目の単位取得は、A 以上の成績評価
を受けた科目を除いて無効とされる。したがって、無効とされた必修科目については、必
ず再履修を必要とする。これは、厳格な進級制を採用したことから生じる当然の帰結であ
る。
(ウ)
以上の進級基準や進級認定試験については、学則、Bulletin およびその他の文書
によって、学生に対して公表し、周知徹底に努めている。
(4)
修了認定
修了要件は、①所定の期間(原則として3年以上)在学し、②法律基本科目群から56
単位、実務基礎科目群から必修科目8単位を含む10単位以上、基礎法学・隣接科目群か
ら4単位以上、展開・先端科目群から24単位以上、合計94単位以上修得し、③在学期
間中の GPA が2.2以上の成績を有することである。なお、この GPA 基準は、進級要件
と同様、厳正な修了認定を目的として平成17年に追加したため、平成17年度以降の入
学生に対してのみ適用される。
ただし、法学既修者の修了に必要な単位数は、1年次の配当科目のうち30単位を既に
13
修得したものとみなされ、合計64単位以上となっている。すなわち、法学既修者が本法
科大学院のカリキュラムにおいて実際に修得しなければならないのは、法律基本科目群か
ら26単位、実務基礎科目群から必修科目8単位を含む10単位以上、基礎法学・隣接科
目群から4単位以上、展開・先端科目群から24単位以上の、合計64単位以上である。
また、上述したとおり修了要件に GPA 基準を導入したことに伴い、進級認定の場合と同
様の趣旨から、所定の期間在学し、94単位以上(法学既修者は64単位以上)修得し、
かつ在学期間中の GPA が1.7以上2.2未満の学生には、憲法、行政法、民法、商法、
民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法の7科目で実施する修了認定試験の受験を認め、それに合
格すれば修了できるものとした。
Ⅱ
評価と課題
1評価すべき点
(1)
各年度の実際の入学者が40名程度であることからも、すべての科目で、少人数
教育が徹底して実施されている。とくに、2年次に配当されている法律基本科目はすべて
演習科目であり、その授業は、双方向・多方向授業の効果が最大限に発揮できるように、
各科目の授業クラスを2つに分けて、同一の担当教員のもと1クラス20名以内で行なわ
れている。
(2) 1 年次の法律基本科目においても、判例や簡単な事例を利用しながら、双方向・多
方向授業によって、「自ら考えながら学習する」方法が徹底されている。
(3)
学生に対して成績評価を発表する際に、学期末試験についての採点基準もしくは
解答の指針または模範答案もしくは優秀答案に教員のコメントを付したものを学生に配付
している。また、
「GPA ランキング」や「成績分布表」も同時に配付している。これらによ
って、成績評価の客観性が相当程度において確保されている。
(4)
成績評価に関し担当教員の説明に納得できない学生に対しては、異議を申し立て
ることを認め、その申立手続を整備している。これまで異議申立てが3件あり、いずれに
も適切な対応がなされた。
(5)
再試験については、これが救済試験ではないことを明確にし、この試験において
合格点である60点以上の成績を収めた場合でも、その成績はC−評価で GPA を0.5と
している。ただし、再試験を受験する学生の奮起を促すため、この試験において70点以
上と評価される成績を収めた場合には、その成績は通常のC評価で GPA を1.0としてい
る。
(6)
進級認定および修了認定の厳格さについて、常に現状に対応しながら、それを一
層確実なものにしようと試みている。すなわち、平成16年度は、成績に関連する進級お
よび修了要件は修得単位数のみであったが、平成17年度に GPA 基準を導入した。それに
伴い、進級・修了認定に万全を期すため、また学期末試験後に再度、学生の学力向上の機
会を与えるため、進級・修了認定試験の制度を設けている。
14
(7)
進級または修了できなかった者に対し、A以上の成績を収めた科目以外の科目を
再履修させることによって、原級留置が当該学生の習熟度の向上に大きく寄与するように
配慮している。
2
課題
(1)
予習を要する教材の分量が過多であるとの学生による授業評価アンケートの結果
を参考にしつつ、全体として削減を図ったが、さらに適切な分量についての検討を重ねる
必要がある。
(2)
教育効果を高めるため専任教員が補習や学習会などを行なっているが、これらの
中でも、恒常的に開設する必要があるものについては、修了要件(94単位以上)に算入
される選択科目として、それを開設する方途を検討する必要がある。
(3)
2年次の法律基本課目である演習科目のクラス分け(1クラス20人程度)につ
いて、双方向・多方向授業の効果が最大限に発揮できるようするために、習熟度別による
クラス分けの方向が検討されている。ただし、その際には、下位の習熟度クラスに所属す
る学生の学習意欲に対する配慮などの諸問題を慎重に検討する必要がある。
(4)
各科目の成績については、A+、A、B+、B、C、Dの6段階で評価し、その分
布は、A+が履修者の5%以内、AがA+を含めて履修者の25%以内として相対評価を一
部取り入れている。これ以外の成績ランクについては、とくに分布の基準を設けない絶対
評価となっている。本法科大学院のように学生数がそれほど多くないところでは、成績の
相対評価が必ずしも適切かつ公正な評価とはならないことから、成績の絶対評価を基本と
しながら、相対評価を加味する方法によっているものである。
絶対評価についてはその評価の適切な基準について、各科目の成績分布表などの資料を
もとに、専任教員の間ではある程度の共通認識がある。しかし、非専任教員も、そのよう
な認識を共有できているとは必ずしもいえない。今後は、全教員間において、絶対評価に
おける基準の適切性に関する明確な合意の実現を図る必要がある。
さらに、GPA 制度の導入にともなって、比較的高得点をとり易い科目を受講して、GPA
の高得点化を図る学生が生じるなどの弊害を避けるために、相対評価の原則の導入とその
あり方についても検討する必要がある。
(5)必修科目等に相対評価を導入するのであれば、修了認定の要件である GPA の基準が
厳しすぎないかについて、慎重に検討する必要がある。
15
第3章
第1節
学生の支援体制
学習支援
Ⅰ
現状の説明
1
ガイダンス
授業開始に先立ち、入学者を含めた全員についてガイダンスを行なっている。平成17
年度は『KINKI UNIVERSITY LAW SCHOOL 2005 Bulletin』、「平成17年度 法科大学
院履修ガイダンス」、「時間割表」、
「学習指導教員勉強会案内」、「Web を利用した授業アン
ケートの回答方法について」(新入生のみ)、「セクシュアルハラスメント防止のためのガイ
ドライン」(新入生のみ)を資料として配付し、法科大学院長からの挨拶、教務委員長によ
る成績評価や科目履修手続等の教務事項の説明の後、学年別に重要事項についてのガイダ
ンスを行なった。学年別ガイダンスでは1年生は法科大学院における学習の仕方について、
2年生は演習科目についての重要点について、3年生は最終学年における取り組み方や新
司法試験などについて説明し、学生との質疑応答を行なった。
2
履修指導
1年次は全科目必修であり、2年次以降の科目履修については、前年度の12月に一定
期間を設けて、担当教員が科目履修に関する学生からの相談、指導にあたっている。平成
16年度は、学生が自己の将来の法曹像についても科目履修と併せて相談できるように、
実務家教員に担当を依頼したが、実務家教員が1年次の科目を担当していないこともあっ
てか、相談件数が比較的少なかった。そこで17年度は、クラス担任と教務委員が担当し
た。その結果、学生の相談件数は増加した。12月に履修指導を行なっているのは、学生
の履修の予備登録を早期に提出させて、授業の教材準備を開始する必要があるためである。
3
入学予定者への支援
入試合格発表後の入学予定者に対して、法科大学院での学習に対する準備を促すために、
次のような支援を行なっている。
(1)
開講前補習
法学完全未修者(未修者の中には、法学部出身者と初めて法律を勉強する者とがいる。
完全未修者とは、後者をさす)を主たる対象に、授業開始前に、法学における基本的な考
え方を学習し、また法科大学院における双方向・多方向授業を予め経験することを目的と
して、開講前補習を行なっている。
初年度は、教材として、法学における基本的かつ根本的な考え方を扱った、伊藤眞『法
律学への誘い』(2003年、有斐閣)を選定して、4日間、8項目にわたり、双方向・多
方向での高度な思考訓練のモデル的授業をめざして行なった。
その結果、法科大学院での授業方法に対する学生の心構えを促す効果は生じたが、必ず
しも1年次の授業内容との関連が十分意識されていなかったのではないかという反省から、
16
次年度は、憲法、行政法、刑法、刑事訴訟法、民法、商法、民事訴訟法について、基礎的
な内容の授業を各担当教員が行なうことにした。
しかし、その後さらに、完全未修者には、法律文献の読み方や法解釈の基本的用語につ
いての補習が必要であるという認識から、平成18年度の開講前補習には、法解釈の基本
用語の意味と法律文献の読み方についての授業を2回組み込んだ。また授業内容との関連
を考えて、入学前には前期開講科目についての基礎的な授業を行なうこととした。後期開
講科目については、夏休みにその基本的な内容について補習を行なう。
(2)
法学未修者に対して、憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑事法全般、刑
法、刑事訴訟法について各一冊ずつ入門書的な内容の入学前推薦図書を指定し、開講前に
読み終えておくように指示している。図書一覧は合格通知書とともに送付している。
(3)
15回に分けて、定期的にメールで情報を配信している。内容は、教員による各
法分野の学習の内容、実務家教員による法曹経験者としてのメッセージ、在学生からの法
科大学院での学習の様子を伝えるメッセージなどである。これは、入学予定者に本法科大
学院での学習や将来の職業についての適切な理解を促し、入学後の学習に対する準備を進
めてもらうためである。
4 専任教員による学習相談、学習指導
(1)
専任教員によるオフィスアワーを設けて、希望する学生の個別的な教育・指導を
行なっており、各専任教員のオフィスアワーであれば、学生は自由にその教員の研究室を
訪れ、質問などができるようにしている。
(2)
総合的な学習指導や生活指導、進路指導を行なうために、クラス担任制を設けて
いる。1クラスの規模は、15∼20名程度であり、クラス担任は前期・後期に複数回個
人面談を行なっている。平成18年度からは、クラス担任を学生委員会の構成員として、
きめ細かな学習・生活・進路指導を行なうこととなった。
(3)
毎年3月上旬には、専任教員による個人面談の実施があり、個々の学生の学業成
績評価をもとに今後の学習のあり方などについて学生と協議する場を設けている。平成1
6年度は、本法科大学院長、同補佐、教務委員、実務家教員が各学生との個人面談を実施
した。17年度は、専任教員が二人一組になり、各組は学生十数人との個人面談を実施し
た。
(4)
専任教員による補習や学習会が実施されている。
手続法の学習の初期に、実体法とは異なった発想をとるために、困難を感じるとの学生
からの相談を契機として、1年次の法学未修者を対象に、民事訴訟法については5回、刑
事訴訟法については10回の自由参加型の補習を行なっている。大幅な改正が行なわれた
新会社法についても自由参加型の補習を数回行なっている。
また、法律基本科目の学習の補完として、3年生を対象とした自由参加型「事例演習」
や、判例等を素材にして事例の処理にあたる際の実務的能力・感覚を培う、実務家教員に
よる学習会も複数存在する。
17
完全未修者に対しては、法律文献の読み方や法解釈の基本的用語についての授業が必要
であるという認識から、授業開始後、7月に「法学入門ゼミ」、9月に「判例の読み方―民
法と刑法の判例の読み方の違いについて」として、基本書の読み方や判例の読み方に関す
る学習会を行なった。平成18年度からは、この内容が前述3に述べた開講前補習に組み
込まれることとなった。
5
教育補助者や事務部による学習相談、学習指導
(1)
法学部教員による刑事訴訟法の学習会が10数回行なわれている。
(2)
学習指導教員(若手弁護士)3名が正規の授業ではカバーしきれない事項につい
て、個々の学生の個別的な相談に応じて、補完的な指導、レポートの作成指導などを「学
習指導室」で行なっている。その他に、学習指導教員による民法、商法、刑法に関する勉
強会が開かれている。
(3) 2年生および3年生から2名程度をティーチング・アシスタントとして採用し、授
業の準備や授業に対する補助的な指導、勉強会などを必要に応じて行なっている。
(4)
事務部には、学生が学習についての相談に常時訪れており、その相談内容が事務
部から関係教員に伝えられている。平成17年度5月に3年生から事務部に寄せられた3
年次の学習のあり方についての相談を契機として、最終年次の学習や自習についての問題
確認を行なうために、本法科大学院長と関係教員数人が3年生全員と面談を行なった。こ
の面談の内容を踏まえて、FD 研修会でも議論がなされ、対応がなされたことについては、
第7章Ⅰ2(4)ウに詳述する。
6
「基礎知識および学習到達度確認システム」と基礎知識補強講座
法科大学院の授業では、基礎的な知識については授業では扱わず、自習が基本となる。
そこで、とくに学生の法律基本科目に関する基礎知識の自習を効率化するために、「基礎知
識および学習到達度確認システム」を導入している。
学生は、学内 LAN および自宅からのアクセスにより PC 上で、択一式の問題に解答する
ことにより、基礎的な知識および学習到達度を確認することができる。その問題は、専任
教員および学習指導教員が協力して作成している。このシステムの開発と導入は、文部科
学省の「平成16年度法科大学院等専門職大学院形成支援プログラム」の一つに選定され
たものである(資料6:文部科学省「平成16年度法科大学院等専門職大学院形成支援プログラ
ム」に選定)。
この「基礎知識および学習到達度確認システム」と同時に、平成16年度は夏・冬・春
の休暇時に3回、平成17年度は夏・冬の休暇時に2回「基礎知識補強講座」を開催して
いる。これは、法律基本科目の基礎知識に関し、主として基本的な概念や制度の理解を記
述式で問う試験を行ない、採点した答案を返却後、解答についての解説を担当教員が行な
うものである。
基礎知識補強講座と「基礎知識および学習到達度確認システム」の関係については、当
初は基礎知識補強講座において、穴埋めや択一式の問題を出題し、それを「基礎知識およ
18
び学習到達度確認システム」の問題として活用していく計画であった。しかし、基本的な
概念や制度の趣旨についての記述問題が、学生の知識の確認および定着に有効であるとの
認識に達し、このような記述問題は PC 上での解答および自己採点のシステムにはそぐわな
いため、「基礎知識補強講座」として別途行ない、択一式を中心とする「基礎知識および学
習到達度確認システム」との相互補完を行なうこととした。
7
各種講演会等
学生が、将来の日本社会のあり方を視野に入れつつ、法科大学院での教育のあり方や法
曹のあり方についての見識に広くふれる機会を持つことを目的として、各界の有識者によ
るシンポジウムや講演会を定期的に開催している。これについては、第9章第2節Ⅰ2に
詳述する。
Ⅱ
評価と課題
1
評価すべき点
(1)
履修指導が適切に行なわれるように、学生の相談状況をみて、指導を担当する教
員の変更などの対応を行なっている。
(2)
学生の学習上の相談に事務部がきめ細かく対応し、関係教員に連絡しているため
に、各学年や各学生の学習上の問題や状況についての情報が多く得られる状況にある。
(3)
開講前補習については、開始以来、法学未修者に必要な教育内容が何であるかに
ついて、授業における学生の対応や、その要望を訊くことによって検討が重ねられ、適切
な方向への変更がなされている。
(4)
学生の学習効果を高めるために、専任教員や法学部教員による補習ないし学習会
が行なわれ、また、学習指導教員やティーチング・アシスタントによる勉強会ないし学習
会が行なわれ、多様な形態での学習指導が行なわれている。
(5)
基礎知識および学習到達度確認システムの導入および実施は、文部科学省の「平
成16年度法科大学院等専門職大学院形成支援プログラム」の一つに選定された。
2
課題
(1)
現在、3人の学習指導教員が、民法・商法・刑法について分担して学習指導を行
なっており、また若手の法学部教員が刑事訴訟法についての学習指導を行なっているが、
学生の要望の多い公法分野について専門の担当者がいないために、これを補う方法を検討
する必要がある。
(2)
法学完全未修者に対しては、これまでも基本書や判例の読み方の学習会を行なう
などして対応を試みているが、より抜本的な対応策が必要であると認識されており、その
方法について検討する必要がある。
第2節
生活支援
19
Ⅰ
現状の説明
1
特待生制度
本法科大学院では、成績優秀者への特待生制度を設けており、入学者特待生は入学試験
で一定基準の成績を収めた者の中から上位の順に、最大で授業料全額免除5名、同半額免
除12名を予定している。成績優秀者特待生は前年度に所定の基準を満たす成績を収めた
者の中から上位の順に、最大で授業料全額免除5名、同半額免除12名を予定している。
運用状況は、平成16年度1年生については全額免除該当者なし、半額免除9名であり、
2年生については全額免除3名、半額免除3名の合計15名となっている。平成17年度
1年生については全額免除5名、半額免除2名、2年生については全額免除2名、半額免
除6名、3年生については全額免除2名、半額免除4名の合計21名となっている(資料7:
成績優秀者特待生の状況)。
2
近畿大学奨学金制度
(1)
奨励型奨学金制度には、給付奨学金と貸与奨学金がある。
近畿大学給付奨学金制度は、1人30万円(月額 25,000 円×12 ヶ月分)で、毎年4月初
旬ころに募集し、その要項は「TKC 法科大学院教育研究支援システム」で知らせている。
その運用状況は、平成16年度1年生2名、2年生該当者なし、給付金額合計60万円、
平成17年度は1年生2年生とも該当者なしとなっている。
近畿大学貸与奨学金制度(無利子)は、貸与年額80万円であり、1 年間貸与の場合は返
還総額80万円、返還年額10万円、返還回数8回(8年)、2年間貸与の場合は返還総額
160万円、返還年額10万円、返還回数16回(16年)、3年間貸与の場合は返還総額
240万円、返還年額12万円、返還回数20回(20年)となっている。
その運用状況は、平成16年度1年生6名、2年生(既修認定者)1名、平成17年度
1年生6名、2年生(既修認定者を含む)6名となっている(資料8:近畿大学奨学金の貸与・
給付状況)。
(2)
救済型奨学金制度には、災害特別奨学金制度と応急奨学金がある。
近畿大学災害特別奨学金(貸与・無利子)は、本大学院に在学している者で、過去5年
以内に災害に遭い、「罹災証明書」の発行を受けた者で、経済的理由により修学が困難な学
生に対して、1 年度限りで年額60万円を一括して貸与し、卒業後に一定金額を2∼20年
にかけて返還するものである。
近畿大学応急奨学金制度(貸与・無利子)は、本大学院に在学している者で、家計支持
者の失職・破産・会社の倒産・死亡等により家計が急変し、学業の継続が困難な学生に対
して、1 年度限りで年額60万円を一括して貸与し、卒業後に一定金額を2∼20年にかけ
て返還するものである。
平成16年度および同17年度には、これらの奨学金制度の利用はなかった。
3
日本学生支援機構奨学金制度
学生が利用できる日本学生支援機構奨学金制度には、第1種(貸与・無利子)と第2種
20
(貸与・有利子)がある。
第1種は、貸与月数24ヵ月、貸与月額 87,000 円、返還総額 2,088,000 円、返還月賦額
12,428 円、返還回数168回(14 年)となっている。
第2種〔きぼう21プラン〕は、貸与月額5万円・8万円・10万円・13万円、貸与
月額24ヵ月・36ヵ月の中から、学生が必要に応じて選択できるものである。
その運用状況は、平成16年度は合計14名、平成17年度は合計34名となっている
(資料9:日本学生支援機構奨学金の貸与状況)。
この日本学生支援機構奨学金により、学生の約半数が何らかの経済的援助を受けている。
4
教育ローン
教育ローンは、国民生活金融公庫によるものが融資額200万円で、返済期間は5年と
10年のものがある。銀行提携ローンについては、銀行と大学との提携により、非提携ロ
ーン比 0.3%∼1.5%の優遇措置が取られており、融資金額は300∼500万円以内、返済
は毎月元利均等返済となっている。
平成16年度、同17年度はこの制度の利用者はなかった。
5
法科大学院生教育研究賠償責任保険
法科大学院生教育研究賠償責任保険は、法科大学院協会からの要請を受けて、臨床実習
に関わる新たなリスクに対応するために作られ、財団法人日本国際教育支援協会が運営・
登録手続きを扱っているものである。保険の範囲は、臨床実習も含めて生活上の幅広い賠
償責任に対するものとなっており、平成18年度から本法科大学院では大学の費用で全員
加入とすることを決定した。(資料10:法科大学院生教育研究賠償責任保険(略称:法科賠・L
コース)の概要)
6
学生健保共済会
学生健保共済会は、学生(会員)が心身ともに健康な生活を送ることのできることを目
的として設立されており、健康増進事業と保険共済事業を展開している。後者の事業では、
病気やけがについて治療後の診察料を給付している。また、学費補償制度も運営している。
この年会費は 6,500 円である。
その医療費給付状況は、平成16年度13名、給付件数85、給付金額 406,100 円、平
成17年度(平成18年2月28日現在)24名、給付件数170、給付金額 976,100 円
となっている(資料11:学生健保共済会医療費給付状況)。
7
保健管理センター
保健管理センターは、医師や臨床心理士が常駐して、健康相談、応急手当、カウンセリ
ング、健康診断などを行なっており、治療が必要なときは医師や臨床心理士が医療機関へ
紹介している。また、定期健康診断は、毎年4月下旬に行なっている。委託医療機関およ
び附属医療機関も配備している。
保健管理センター健康相談等の曜日・時間およびその利用状況については、資料参照。(資
料12:健康相談等の曜日・時間、保健管理センター利用状況)。
21
8
学生委員会およびクラス担任制
学生委員会を設置して生活指導などに当たる他、クラス担任制を設けて、総合的な生活
指導や相談にあたっている。(資料13:各種委員会等の構成員)
平成18年度からは、学生の修学および学生生活について適切な指導および助言を行な
うために、クラス担任は学生委員会委員とすることにした。
9
セクシュアル・ハラスメント
セクシュアル・ハラスメントについては、ガイダンスの際に「セクシュアル・ハラスメ
ント防止のためのガイドライン」を新入生に配付する他、大学院内にセクシュアル・ハラ
スメント相談員(男女教員各1名)を配置している。(資料13:各種委員会等の構成員)これ
までのところ相談は寄せられていない。
10
障害のある学生に対する支援
本法科大学院は、全館バリアフリーになっており、その点では身体障害者の受験や修学
のための設備上の配慮が存在するが、障害の種類や程度に応じた特別措置および組織的対
応については、今後の検討に委ねられている。
11
キャリア支援委員会
キャリア支援委員会については、平成18年度から実務家教員を中心に構成する委員会
を新設する。その目的として、裁判官、検察官、弁護士という異なった法曹のあり方につ
いて、説明会を開催するなどの方法で、学生各自に自己の将来の法曹像をより具体的に検
討する機会を提供することと、司法試験合格後の弁護士事務所への就職の相談窓口となる
ことなどがあげられる。
Ⅱ
評価と課題
1
評価すべき点
(1)
学生の経済的支援に対する、種々の方法を提供しており、特待生制度は充実して
いる。本学では救済型と給付型の両方の奨学金を用意している。日本学生支援機構奨学金
制度の利用者は学生の約半数に達している。
(2)
法科大学院の臨床実習に対応するために新設された法科大学院生教育研究賠償責
任保険への加入を決定している。
(3)
学生生活については、クラス担任制、学生委員会およびセクシュアル・ハラスメ
ント相談員の設置の他、全学的な学生健保共済会、保健管理センター、定期健康診断の実
施などにより、その支援体制の整備に努めており、これらの制度・施設が有効に利用され
ている。
(4)
2
平成18年度に、新たにキャリア支援委員会を発足させることとした。
課題
(1)
障害のある学生に対する支援体制につき、問題点を確認し、いかなる措置を講ず
るべきかを検討する必要がある。
22
(2)
キャリア支援委員会の新設に伴って、その活動の具体的あり方につき検討する必
要がある。司法試験不合格となった卒業生に対しても、いかなる職業支援を行なうべきか
について検討する必要がある。
23
第4章
入学者選抜
Ⅰ
現状の説明
1
アドミッションポリシーについて
本法科大学院のアドミッションポリシーは以下の通りであり、公平性・開放性・多様性
に十分配慮している。
(募集要項から抜粋)「本法科大学院の入学者選抜にあたっては、公平性、開放性、多様性
を旨とし、多様なバックグラウンドを持ち、良き法曹となる資質を有する学生を広く受け
入れます。
(1) 公平性を確保するために、本学出身者枠を設けるなどの優遇措置はいっさい講じず、
志願者をすべて公平に扱います。また、法学既修者認定に際し、本学法学部出身者を含む
法学部出身者を一律に法学既修者と認定することはいたしません。
(2) 開放性、多様性を確保するために、学部段階での専門分野を問わず、多様なバック
グラウンドを有する者を広く受け入れることとします。また、社会人等にも広く門戸を開
放し、入学定員の3割以上の合格者を社会人や非法学部出身者から選抜することをめざし
ます。」
このアドミッションポリシーについては、募集要項の他、ウェブサイト・法科大学院パ
ンフレットにおいても周知を図っている。入学者選抜の方法についても同様である。新聞
広告や学外での合同説明会や学内での説明会でも周知を図っている。
入学者選抜の実施については、法科大学院入学者選抜委員会規程に従い、法科大学院長
を委員長とする法科大学院入学者選抜委員会が担当している。ただし、入学試験そのもの
の実施と合否判定の原案作成以外の入試に関する日常業務については、法科大学院長以外
の入学者選抜委員会の構成員の中から別に入試委員会とその委員長をおき、担当させてい
る。(資料13:各種委員会等の構成員)
2
アドミッションポリシーの実施について
公平性・開放性・多様性を基本とするアドミッションポリシーを実施するため、本法科
学院の入学者選抜においては、合格者の決定と既修者の認定を分離し、法律学についての
学習の有無が合否を左右することのないようにしている。法学既修者認定試験(以下既修
者認定試験という)は入学者選抜の合格者について実施するものとしており、入学者選抜
において、いわゆる既修者枠・未修者枠等を設けることは行なっていない。
(1)
入学者選抜は、500 点満点のうち、適性試験が 300 点、小論文試験が 100 点、そ
の他(プレゼンテーションシートおよび学部での学業成績の評価等)が 100 点の配点とし、
法律学の知識が合否を左右することのないように適性試験を重視している。
小論文の出題についても、プレゼンテーションシートの採点についても、法律学の素養
が、他の素養と比較して大きく作用することのないよう配慮している。
(2)
これまで3年間の入試実施状況の検討を踏まえて、平成18年度入試からは、以
24
下のように、若干の改善を図ることが決定されている。
第1に、平成18年度からは上述の配点を、適性試験 200 点、小論文 200 点、その他 100
点と改める。これは、適性試験重視の原則に変更はないものの、
(1)に述べたとおりの 60%
という配点が、適性試験で所期の成績を収めることができなかった受験生について消極的
に作用しているのではないかとの懸念に対応すると同時に、3年間5回にわたる入学試験
の実施実績も踏まえ、本法科大学院が独自に実施している小論文試験について十分な考慮
を払おうとするものである。
第2に、小論文試験に代えて、既修者認定試験を受験することで、入学者選抜を受験す
るという方式をあらたに導入する。これは、法学既修者としてのみ入学しようとする者に
受験方法の選択肢を与えようとするものである。
以上の改善は、新司法試験の合格率への懸念などから、法科大学院の志願者が全国的に
減少傾向にあり(大学入試センター適性試験受験者数は平成15年は 39,350 人、平成16
年は 24,036 人、平成17年は 19,859 人と推移した)、また、その志願者の中心が法学部出
身者、中でも現役の 4 年生に偏りつつある現状の中で、5に詳述するように、定員の確保
について課題を抱えている本法科大学院が、司法制度改革審議会の答申の理念に忠実な法
科大学院を実現するという目標を維持しつつも、柔軟な対応を試みようとしたものであり、
入学者選抜の判定基準の難易度において、法学部出身者を優遇するものではない。
(3)
入学者選抜に際して、自校出身者を優遇する措置は一切講じていない。自校出身
者の入学者に占める割合は、平成16年度には30名中 3 名、平成17年度には44名中 6
名にとどまる(資料14−1、14−2:入試概要)。
(4) 法学関係学部以外の出身者の割合を入学生についてみると、平成16年度が 43.3%、
平成17年度が 31.8%、社会人の割合をみると、平成16年度が 66.7%、平成17年度が
38.6%となっている。(資料14−1、14−2:入試概要)社会人の定義については次の3(3)
に詳述する。
3
入学者選抜について
入学者選抜は、2(1)に述べたように、適性試験、小論文試験、その他によって行な
っている。募集定員約50人の A 日程と募集定員約10人の B 日程を実施している。入学
者選抜に関するデータについては、本人からの開示請求に応じている。
(1)
適性試験
入学者選抜にあたっては、適性試験について 500 点満点中 300 点という高率での配点を
行なってきた(平成18年度以降にあっても 500 点満点中 200 点)。なお、本法科大学院で
は大学入試センター実施の適性試験のみを利用している。
(2)
小論文試験
本法科大学院で独自に作成・実施している小論文試験には 100 点を配点し、長文を読ま
せた上で、人間や社会についての思考力を問うている。問題は、文章の理解を問うものと、
自己見解も含めて問うものを出題している。
25
(3)
その他
残りの 100 点については「その他」とし、プレゼンテーションシート(本法科大学院独
自のもの)、学業成績証明書、その他の提出書類について審査を行ない、必要に応じて面接
の結果を加味して採点を行なっている。
プレゼンテーションシートには、資格・専門的スキル、学業における自己評価、法曹を
めざす理由、学業以外の活動実績(該当者のみ)、社会人としての活動実績(該当者のみ)
が記載されているが、これらのうち、資格・専門的スキルについては、多様なバックグラ
ウンドを有する法曹を育てるという観点から、法律に関係するものに限らず広く評価の対
象として採点を実施している。資格・専門的スキル以外についても、評価担当者の裁量を
尊重しつつ、適切な評価が実施されるよう、評価のガイドラインを作成している。
「その他」の採点に際しては、1 名の志願者について面接を担当する 2 名の採点者を配置
し、客観的に評価可能な要素については両者が一致するまで事前の準備を行なうこととし、
裁量による部分についても相互にチェックすることによって公正な採点が行なわれるよう
配慮している。
大学等の在学者については、プレゼンテーションシートに学業以外の活動実績について
の記入欄を設け、評価を行なっている。ただし、面接での検証には限界があり、とくにボ
ランティアなどの記述に関し、安易な加点を行なうのはかえって問題であると認識してい
る。
社会人について、平成16年度は、大学を卒業して 3 年以上経った者は自動的に社会人
として扱ったが、この方法では適切に社会人を識別することができない懸念があったので、
平成17年度入試から、社会人の定義を、
「自営または企業公共団体等の勤務経験を 3 年以
上有する者又はこれに準ずる者」と限定し、運用している。
社会人についても、プレゼンテーションシートに、社会人としての活動実績の記入欄を
設け、評価を行なっている。その際、所属先等および業績に応じて適切な評価が行なわれ
るよう、ガイドラインを作成している。
(4)
面接試験については単独で数値化することはせず、プレゼンテーションシートの
評価に際して参考にする場合がある他、法曹としての適格性を総合的に判断することを目
的として実施している。
4
既修者認定について
法学既修者認定試験は、入学試験の合格者に対して、入学までに別途実施している。
ただし、平成16年度は、合格発表後に改めて既修者認定試験を実施したが、平成17
年度以降は、受験生の便宜や補欠合格者についての既修者認定の可能性を考慮し、入学試
験の受験者のうち希望する者全員について、既修者認定試験の受験を認めることとし、面
接・小論文試験を実施する第 1 日目の試験に続いて、第 2 日目に既修者認定試験を実施し
ている。
既修者認定試験は、憲法・民法・刑法・商法(保険・海商法を除く)・ 民事訴訟法(上
26
訴・再審を除く)
・刑事訴訟法(上訴・非常救済手続を除く)の範囲について行なっている。
平成16年度は以上の6科目についてそれぞれ試験を実施したが、平成17年度以降は憲
法・民事法系・刑事法系の3系統に分けて実施している。配点は、憲法 100 点、民事法系
200 点、刑事法系 150 点であり、民事法系については4問中2問が民法、1 問が商法、1 問
が民事訴訟法からの出題、刑事法系については2問が刑法、1問が刑事訴訟法からの出題
となっている。
なお、出題範囲の限定は、平成17年度から行なっているもので、これは既修者認定試
験の実施が2月であった平成16年度と異なり、平成17年度以降は A 日程の入学試験が
秋に行なわれることに伴い、学部4回生の学習進度に配慮したものである。
既修者認定試験の出題に際しては、法学部で単位を修得できる程度の学習が進んでいる
かどうかをみる程度に留めるよう、出題者間で確認している。本学では法科大学院と法学
部は完全に組織上分離しているが、なお、法科大学院の教員も 1 科目程度は法学部での講
義を担当している場合があるので、出題には公正を保つよう、教授会などの場で注意を喚
起している。もっとも、本法科大学院では、本学法学部出身者の受験生・入学者に占める
比率は低い(資料14−1、14−2:入試概要)。既修者認定試験の採点は答案を匿名化して行
なわれている。採点は各科目 1 名の採点者と 1 名の採点確認者とによって行なわれている。
5
定員の確保について
本法科大学院の入学定員は60名であるところ、平成16年度の志願者は641名、入
学許可者は99名、入学者は30名であり、平成17年度の志願者は350名、入学許可
者137名、入学者は44名であった。
定員と入学者数に乖離が生じている状態を解消するために、平成17年度からは B 日程
の入試を実施することとし、これにより、入学者数と入学定員との乖離は、平成16年度
の30名から平成17年度の16名へと大幅に減少した。
さらに、本章Ⅰ2に詳述したように、平成18年度入試から、適性試験への配点を 300/500
から 200/500 に変更するとともに、小論文試験に代えて、既修者認定試験により受験する
方式をあらたに導入することとし、より多様な選択肢を提供することとしている。
Ⅱ
評価と課題
1
評価すべき点
(1)
開放性・公平性・多様性を徹底して実現した結果、実際に多くの非法学部出身者
と社会人出身の学生を集めている。これは、入学者選抜と既修者認定を分離することによ
って法学部出身者を優遇することを排除し、多様なバックグラウンドをもつ法曹を育てる
ため、広汎な資格やスキルについて適正な評価を実施するべく入試のマニュアルを整備し
ていること、適性試験を重視した配点を実施していることなどによるものであると考えら
れる。
(2)
厳正な審査の上で能力の高い志願者のみを選抜して入学許可を出している点や入
27
学試験に関する個人情報について本人への開示体制を整備していることも評価に値する点
であると考えられる。
2
課題
(1)
入学者数が入学定員を下回っている点につき、これまでも対策を講じてきたが、
さらに検討を重ねる必要がある。
入学定員を下回る状況が今後も継続する場合には、ある程度の定員削減という方向での
検討を行なう可能性もあると考えている。
(2)
面接試験については、今後受験者数が増加した場合に備えて、面接時間、同時面
接人数、面接内容について検討を行なっておく必要がある。
(3)
本法科大学院では適性試験を重視する方針を打ち出しているが、適性試験の結果
と法曹としての能力の相関関係を今後の調査により明らかにしていく必要があり、それに
伴い適性試験の位置づけを再考することも視野に入れる必要がある。
(4)
平成18年度以降、小論文試験に代えて既修者認定試験による受験を認めること
としたが、このことにより非法学部出身者や社会人からも多様な資質を備えた学生を受け
入れる方針に歯止めがかかることのないよう、プレゼンテーションシートの評価方法を再
考するなどの検討が必要である。
28
第5章
教員組織
Ⅰ
現状の説明
1
教員組織の基本構成
本法科大学院は、専門職学位課程の大学院法務研究科法務専攻として、既存の修士およ
び博士課程の大学院法学研究科とは独立した組織として設立されている。学生の入学定員
は60名、収容定員は180名であり、制度上必要とされる最低限の専任教員数は12名
であるところ、みなし専任教員を含め16名の専任教員が置かれている。(資料15:教員紹
介)
専任教員の内訳は、①研究者専任教授6名、②研究者専任助教授4名、③法学部兼任の
研究者専任教授2名、④実務家専任教授2名、⑤実務家みなし専任教授2名である。教授
12名、助教授4名、計16名ということになる。
研究者専任教授・助教授12名は、本報告書第二部で示すように、いずれも各専門分野
において既に確立した評価を得ている業績を有する者である。
実務家専任教授は、①20年間の検事経験および14年間の弁護士経験を有し、とくに
経済犯罪事件に豊富な経験を有する者、②31年間の裁判官経験および6年間の弁護士経
験を有し民事事件に精通した者、③27年間の弁護士経験を有し、とくに損害賠償事件に
ついて豊富な経験を有する者、④22年間の弁護士経験を有し、米国弁護士事務所での外
国法カウンセラーとしての勤務経験もあり、渉外事件とくに国際倒産事件について豊富な
経験を有する者、の4名から成っており、その実務経験を活かして「刑事訴訟法演習」「刑
事政策」「特別演習(経済犯罪)」、「民事裁判」「リーガルクリニック」「エクスターンシッ
プ」、「法曹倫理」「法文書作成」「特別演習(損害賠償責任法)」、「倒産処理法」「国際倒産
法」「特別演習(企業活動におけるコンプライアンス)」などの科目を担当している。
専任教員の年齢構成は、70歳代2名、60歳代6名、50歳代4名、40歳代1名、
30歳代3名となっている。平均年齢は教授63.3歳、助教授は38.8歳、あわせる
と57.2歳となる。教授陣の年齢層がやや高くなっているが、これは設置申請時の教員
人事上の困難に起因するものであり、平成19年度以降の人事計画により徐々に解消して
いく予定である。
2
教員の採用・昇任
(1)専任教員の採用・昇任
専任教員の任用および昇格の基準は、「法科大学院教員選考基準」による。同「基準」に
よれば、専任教員の任用および昇格に当たっては、人格、識見、経歴、研究教育経験、実
務経験、健康状態、年令および担当科目の性質などを考慮し、原則として次のような条件
により判断することになっている。
まず「教授」については、
「高度の法学専門教育能力を有すると認められる者」であって、
①大学において教授の経歴を有する者、②大学における研究教育歴(大学院博士後期課程
29
における研究歴を含む。以下、同じ。)および法曹としての実務歴(司法研修所における修
習歴を含む。以下、同じ。)をあわせて、おおむね10年以上の経歴を有する者、または③
その他、企業、公私の研究教育機関等に所属し、②の者と同等以上の研究教育能力を有す
ると認められる者とする。
「助教授」については、同様に「高度の法学専門教育能力を有すると認められる者」で
あって、①大学において助教授の経歴を有する者、②大学における研究教育歴および法曹
としての実務歴をあわせて、おおむね4年以上の経歴を有する者、または③その他、企業、
公私の研究教育機関等に所属し、②の者と同等以上の研究教育能力を有すると認められる
者とする。
「講師」・「助手」については、主要科目につき直ちにこれを担当することは予定されて
いないため、とくに「高度の法学専門教育能力を有すると認められる者」である必要はな
く、「講師」については、①大学において講師の経歴を有する者、②大学における研究教育
歴および法曹としての実務歴をあわせて、おおむね2年以上の経歴を有する者、または③
その他、企業、公私の研究教育機関等に所属し、②の者と同等以上の研究教育能力を有す
ると認められる者とし、
「助手」については、修士課程を修了した者又は法科大学院の課程
を修了し司法試験に合格した者で、法科大学院の教員として将来性に富むと認められる者
としている。
教員昇格人事の手続については、構成教員数が現在16 名と少ないことも考慮して、さ
しあたり法科大学院長が専門分野の教員との協議をふまえて発議し、人事教授会で専任さ
れた審査員による審査を経て、人事教授会で決定することにしている。任用手続について
も、原則としてこれに準じて行なっている。人事教授会と教授会の構成の別については第
6章Ⅰ1に詳述する。
(2)非常勤教員の採用
非常勤教員の採用については、当該担当科目の教育能力に重点を置きつつ専任教員の任
用基準に準じて判断するものとし、関係専門分野の教員による選考および教務委員会にお
ける調整を経て、教授会において審議・決定するものとしている。
3
主要科目における専任教員の配置
本法科大学院におけるカリキュラムは、第2章第1節1に詳述したように、法律基本科
目群、実務基礎科目群、基礎法学・隣接科目群、展開・先端科目群の4群から構成されて
いる。また、課程の修了要件は、第2章第2節2(4)で述べたとおり、法律基本科目群
56単位必修、実務基礎科目群8単位必修を含む10単位以上、基礎法学・隣接科目群4
単位以上、展開・先端科目群24単位以上の合計94単位の取得となっている。そのうち
必修科目は、法律基本科目群の全28科目56単位および実務基礎科目群のうち7科目8
単位となっている。
そして、開講科目一覧(資料3−1、3−2)に示すとおり、法律基本科目群公法系科目は全
6科目、同民事法系科目は16科目中10科目、同刑事法系科目は6科目中5科目を、専
30
任教員が担当しており、法律基本科目群での専任教員の担当率は、科目数および単位数と
もに75パーセントとなっている。また、実務基礎科目群中必修科目としている7科目の
うち、「法曹倫理」「民事裁判」の2科目を専任教員が担当している。刑事訴訟実務の基礎
は「検察実務」「刑事裁判」「刑事弁護」の3科目に分けて実施しているが、前2者につい
ては法務省および最高裁判所からの派遣教員が兼任教員として担当している。実務基礎科
目群のみの専任教員の担当率は、科目数では29パーセント、単位数では38パーセント
となっている。法律基本科目群と実務基礎科目群をあわせた必修科目全体で専任教員の担
当率をみると、科目数では66パーセントであるが、単位数では70パーセントとなって
いる。
なお、必修科目ではないが準必修と位置づけている民事法での重要分野を扱う「特別演
習(民事執行・保全)」、企業法務での重要性が指摘されている「特別演習(企業活動にお
けるコンプライアンス)
」についても、専任教員が担当している。
4
教員の授業負担
教員の授業負担は、開講科目一覧(資料3−1、3−2)に示すとおりである。法科大学院の
授業にともなう負担は、従来の法学部などの授業負担と比較すると、授業準備に多大の労
力を必要とするのみならず、授業後もこれに関連する中間レポートや課題に対する解答の
添削・採点など、極めて重いものがある。それゆえ、充実した授業を実施するためには、
専任教員の授業負担自体を、適正な範囲に限定していくことが不可欠である。
専任教員のうち、公法系科目担当者は憲法2名・行政法1名で、3名とも法科大学院で
は法律基本科目のみを担当している。法学部での兼担科目を含めても年間12単位以内と
なっている。民事系科目担当者は民法2名・商法2名・民事訴訟法1名で、民法担当の助
教授1名は法科大学院での法律基本科目を12単位担当しており、他の専任教員と比較し
てやや負担過剰とはなっているが、法学部での兼担科目を含めて年間18単位以内となっ
ている。刑事系科目担当者は実務家専任教員を含めて3名とも法学部での兼担科目を含め
て18単位以内となっている。
基礎法学・隣接科目担当教員は法学部科目を含めて年間12単位、展開・先端科目担当
者は法学部および他大学非常勤を含めて20単位にとどめている。実務基礎科目担当の実
務家専任教員は7単位、実務家みなし専任教員はそれぞれ6単位となっており、刑事系担
当実務家専任教員とともに負担過剰にならないよう配慮している。
Ⅱ
評価と課題
1
評価すべき点
(1)
専任教員16名という小規模な法科大学院であることも幸いして、本法科大学院
における専任教員間の意思疎通は、研究者教員間のみならず、研究者教員・実務家教員間
でも、きわめて良好な状況にある。
(2) 学則上は、
「教授会は、本大学院の専任教授をもって構成する。ただし、当分の間、
31
非常勤の実務家専任教授については、実務基礎教育を中心とするカリキュラム編成などを
審議する会議のみの構成員とすることができる」とされているが、現実には、当初より実
務家みなし専任教授も教授会の正規メンバーとして審議に参加する形で運用されてきてお
り、議決権はもちろん、学院長選挙における選挙権も有している。その他、入試実施業務
にも試験委員として関わるなど、専任教員と全く同一の職責を果たし、本法科大学院の意
思形成や運営に重要な寄与をなしてきている。
(3)
学生の教育指導に関して、実務家みなし専任教員を含め実務家教員全員が、実務
基礎科目や先端・展開科目のみならず、法律基本科目それ自体、また法律基本科目の補充
的な指導についても率先してこれを引受け、学生の学力向上に重要な寄与をなしてきてい
る。そして、それらを通じて、学生一人ひとりの学習状態などに関しても、研究者教員と
の間で情報交換や意見交換が緊密に行なわれており、上記の教授会への参加状況などとと
もに、研究者専任教員・実務家専任教員が一丸となって法科大学院の管理運営や学生の教
育に専心する体制ができ上がっていることは、他に誇れる本法科大学院の特色である。
2
課題
本法科大学院設立時点での人事政策上の齟齬などもあり、教員組織の面では、とくに民
法関係科目の専任教員が、教授・助教授各1名と手薄であり、その補充につき緊急の対応
が必要となっている。この点に関しては、適切な人材を確保するのが全国的にみても極め
て困難なのが現状といってよいが、設立以来人材確保に鋭意努力してきた結果、幸いにも
平成19年度には1名の教授を充員できることになっている。平成19年度には、知的財
産法担当の教授1名も充員できることになっており、先端・展開科目についても充実の方
向にある。さらに、労働法、環境法、国際私法等の担当専任教員を確保することが、今後
の課題である。これらの課題解決を通じて、年齢構成上の偏りの是正や主要科目に関する
専任教員担当率の改善を図っていくこともできよう。
なお、実務家専任教員についても、平成18年3月に1名の実務家専任教員が定年退職
するので、その補充やさらなる充員が課題となっている。
32
第6章
管理運営
Ⅰ
現状の説明
1
管理運営の基本組織
本法科大学院の運営に関する重要事項を審議する会議として、教授会を置いている。法
科大学院学則では、
「教授会は、本大学院の専任教授をもって構成する。ただし、当分の間、
非常勤の実務家専任教授については、実務基礎教育を中心とするカリキュラム編成等を審
議する会議のみの構成員とすることができる」と定めており、当初は但書を適用して「み
なし専任教員」の負担を軽減することを考えていた。しかし、発足にあたり第 1 回教授会
で「みなし専任教授」も教授会の正規メンバーとして審議に参加する形で運用することが
合意され、以後、「みなし専任教員」も教授会に常時出席して全ての事項につき審議・決定
に加わる他、学院長選挙においても選挙権を行使するなど、本文に従った運用がなされて
いる。
ただ、本法科大学院は専任教員16名の小規模な組織であるため、通常の審議事項につ
いては教授会構成員に助教授も加えた会議で審議することとしており、教員の採用や人事
にかかわる事項を審議する場合にのみ、専任教授のみで構成される会議を開催している。
内部的には、前者は「教授会」、後者は「人事教授会」と称して、運用されている。
2
事務組織
法科大学院は、法曹養成に特化した実践的な教育を行なう専門職大学院であり、従来の
研究中心の考え方から真の教育重視への大きな転換に向けて相当な自己変革が求められて
いる。このことから従来の大学院研究科の事務を担当する各教務部教務課および学務部第
一課とは別に、独立した「法科大学院事務部」を設置している。
事務部は、専任職員3名、派遣職員2名、計5名の職員で構成されている。3名の専任
職員は、平成14年10月1日から「法科大学院設置準備室」に配属され、設置準備各種
委員会に関わり、法科大学院の目的と理念を理解しつつ、法律分野の知識も身につけた職
員である。5名の構成員は、分掌事務の処理、教員の教育上および研究上の職務の補助、
学生の学習・生活上の相談、教材の印刷、製本についても教員とよく連携をとりながら業
務を遂行している。
Ⅱ
評価と課題
1
評価すべき点
教授会を中核とした教員組織、法科大学院事務部による事務組織は新設の専門職大学院
に相応しい独立性を備えており、教員組織と事務組織の間の連携は、当初より本法科大学
院の開設に向けて協力体制を築いてきたこともあり、非常に緊密である。
2
課題
今後は、より適切な教育体制を築くために、教員組織と事務組織の拡大も含めて整備を
33
行なっていく必要がある。とくに事務組織については、法科大学院の事務に特化した貴重
なノウハウが蓄積されつつあることから、安定した人事計画の策定が望まれる。
34
第7章
自己点検・評価
Ⅰ
現状の説明
1
自己点検・評価委員会の構成
自己点検および評価の実施体制としては、本法科大学院の開設当初から二名の専任教員
により構成される自己点検・評価委員会が置かれていたが、平成17年度末にはこれを4
名に増員強化して自己点検・評価活動にあたっている。(資料13:各種委員会等の構成員)
2
自己点検・評価の方法
自己点検・評価の方法ないし活動としては、自己点検・評価書の作成、学生による授業
評価アンケート、ピア・レヴューの実施、FD 研修会の開催、外部評価がある。
(1)
自己点検・評価書の作成について
自己点検・評価委員会が、事務部、関係委員会、関係者などから意見を聴取し、あるい
は、文書の提出を求める方法によって、二年ごとに自己点検・評価書を作成し、公表する
ことになっている。
また、自己点検・評価の一環として、研究教員の研究活動実績、実務家教員の各専門実
務分野での活動実績等については、自己点検・評価書やホームページにおいて、外部に公
表する。(本自己点検・評価書第二部)
(2)
学生による授業評価アンケートについて
学生による授業評価アンケートは、学期の中間と学期末に授業ごとに行なっている。調
査項目は、資料16−1、16−2のとおりの7項目と、①教材について、②授業につい
て、③その他の自由記述である。その結果は、各授業についてはその担当教員に、全授業
分を冊子にまとめたものについては全専任教員に、配付している。(資料16−1、16−2:
授業評価アンケート)
学生に対しては、学期中のアンケートの終了後第一回目の授業の際に、各教員がアンケ
ートに記載された要望や意見に対して、何らかの回答を行なうようにしている。さらに、
そのような回答の内容の明確性を高め、アンケート結果と照らし合わせて授業の改善の方
法の探求に関する情報を教員間で共有するために、回答内容を文書化して公開することと
した。平成17年度後期は、経過措置として専任教員のみの回答を文書化し公開するが、
18年度からは全授業担当教員についてこれを実施する予定である。(資料17:学生による
授業評価アンケートへの対応)
(3)
ピア・レヴューの実施
平成17年度から、非専任教員による授業を含めた全授業について、ピア・レヴューを
行なっている。学生による学期中間アンケートの終了後の第5回、第6回、第7回の授業
のうち教員の指定した回に、専任教員のうちから2名が出席し、報告書を提出する形で行
なっている。ピア・レヴューを行なう教員には、レヴューする授業に対する学生のアンケ
ート結果を予め配付している。受講者が一名の授業に対しては一名の教員がレヴューを行
35
なう。レヴューする教員の1名は、担当科目の内容が比較的近く、レヴューする科目に対
する基本的理解と関心が高いと思われる者を選んで依頼している。他の1名は、相互性の
観点からむしろ異分野の教員に依頼している。非専任教員など、依頼教員以外も参加は自
由である。
ピア・レヴューの結果は全科目の報告書を本法科大学院授業担当者全員に配付し、参考
に供している。
(4)
FD 研修会
本法科大学院では、平成16年の開設前を含め、第一年目の終了時までに、計4回の「近
畿大学法科大学院教育内容・方法等研修会」を開催したが、それを引き継ぐものとして、
平成17年度から、前述の(2)学生による授業評価アンケート、(3)ピア・レヴューの
実施に伴い、教授会での議論などを前提により検討を深め対策を講じるために、専任教員
による FD 研修会を開催している。第1回 FD 研修会(平成17年6月)においては、次の
ような改善案が検討された。
(ア)
予習に要する時間が膨大であり、復習が不可能であるばかりか、予習自体が十分
にできないというアンケート結果に対して、全体として予習課題を削減することが合意さ
れた。これについては第2章第2節Ⅰ1(3)
(ウ)にもふれた。また法律文献を読み慣れ
ない未修者もいることから、文献のどこが重要であるのかなどを示す、予習の指針として
のレジュメの改善方法について話し合われた。
また、レポート課題が複数の授業で同時期に重なり、学生の学習負担が過重になること
を避けるために、全科目共通のレポート課題一覧表を常時事務部に示すこととした。
(イ)
授業の難易度が全体的に高すぎるとのアンケート結果に対して、段階的な学習に
よる理解の深まりを実現するために、基本科目と応用的科目の相互調整を各分野で検討す
ることとした。
(ウ)
3年生に対する法律基本科目の授業が存在しないことは問題であると認識され、
カリキュラムの再編を検討する必要が確認されたが、目下の対策として3年生の要望をき
くこととした。その結果、大幅な改正のあった会社法については15回の補習を行なった。
また、法律的な文章を書く機会が限られているとの3年生の懸念に対しては、限られた時
間内に一定の資料や設例から、法的問題を発見し、文章化する能力を高めるために、法律
基本科目全般について、教員が問題を作成し、解答を添削・指導することにより対応した。
同様に第2回 FD 研修会(平成17年12月)では、次のような改善案が検討された。
(ア)
アンケートやピア・レヴューの結果、双方向・多方向の授業方法が全科目につい
て必ずしも徹底していないことが判明し、今後は非専任教員も含めて参加する FD 研修会を
開催することが決定された。
(イ)
2年生の演習のクラス分けの方法について、その成果と今後の方針について議論
がなされ、とくに習熟度別のクラス分けの是非について詳細な検討がなされた。
(ウ)
学生による授業評価アンケート実施の成果を確実なものとするため、アンケート
36
に対する教員のコメントを文書化して公開する方法が検討された。また、FD 研修会の議事
要旨についてもウェブ上で学生に公開することが望ましいとされた。
(5)
外部評価委員
本法科大学院における自己点検・評価の結果について、外部者による検証を受けるため、
外部評価委員の制度を平成18年度に導入することになっている。
外部評価委員は、本学の教職員以外の者で、法律実務に従事し、法科大学院の教育に関
し広くかつ高い識見を有する者を含む3名程度に依頼する。この委員は、(1)本法科大学
院がまとめた自己点検・評価報告書の内容分析等の書面調査、
(2)実地調査( 自己点検・
評価報告書に基づく事情聴取・質疑応答等、 授業観察、 施設設備の視察、 学生インタビ
ュー等)、(3)調査結果報告書の作成を行なうものとする。
Ⅱ
評価と課題
1
評価すべき点
(1) 学生による授業評価アンケート、ピア・レヴュー、FD 研修会の開催など多角的な
方法で、かつ積極的に自己点検・評価を行なっている。
(2)
学生による授業評価アンケートは、学期中の授業の改善や学生の要望への対応、
また教員側からの説明やアドヴァイスを可能にするために、中間期に第一回目を行ない、
それを踏まえて学期末に第二回目を行なっている。
(3)
非専任教員による授業も含めた全授業について、3週間にわたり専任教員が2名
づつ参加して行なうピア・レヴューは、学期中における恒例行事として、教員側にも学生
側にも定着しつつある。レヴューした教員による報告書は全てまとめられ、冊子として専
任教員に配付されている。
当初、このような全般的なピア・レヴューの制度は、従来の大学教育においてなじみの
ないものであったことから、教員の負担感につながるのではないかとの懸念をともなって
いた。しかし、法科大学院においては、理論と実務を架橋するという内容の点においても、
教員と学生との間での双方向・多方向での議論による論理的かつ実践的な思考能力の向上
をめざすという方法の点においても、従来の法学部教育とは異なった授業が要請されてお
り、ピア・レヴューは、各教員の試行錯誤の成果を共有し授業の多様なあり方や改善方法
について議論するために相応しい方法の一つであるとして、その制度的導入が決定された。
実施の結果、自己の授業に対して他の教員から貴重な意見が得られるのみならず、他の
授業を参観する意義も大きいことが認識された。学生の授業に対する反応や集中度、質疑
応答の効果などを、各自が授業を行なっている場合とは異なった視点で観察することがで
きたためである。
さらに学生にとっては、授業参観の緊張感とともに、教員が授業の改善に積極的に取り
組んでいる姿勢が示されることにより、教員との間に信頼感や親近感が生まれ、また学年
や選択する科目によって、授業では通常接する機会のない教員とのコミュニケーションが
37
生じるという副次的効果も伴った。
2
課題
(1)
学生による授業評価アンケートについては、その回答率をあげるための方策を講
じる必要がある。資料の16−1、16−2にみられるとおり、回答率は平成16年度前
後期、平成17年度前後期とそれぞれ、84%、72%、60%、53%と低下している。
回答率の低下については、アンケートに対する教員側の回答や改善のあり方いかんが影響
している可能性もある。そのため、第2回 FD 研修会において、教員の回答を文書化して学
生に公開することが決定され、専任教員については平成17年度末に本自己点検・評価書
においてこれが実現された。ただ、回答文書の形式が定まっていなかったために体裁や長
短に幅が生じており、この点の統一化を図る必要がある。また、今後は非専任教員につい
ても回答の公開措置を広げていく必要がある。
(2)
自己点検・評価の体制を、2年ごとの自己点検・評価書作成に向けていっそう強
化していく必要がある。そのためには、毎年各委員会や事務部から評価項目について資料
の提出を求めるなど、自己点検・評価委員会の恒常的な活動体制を整備する必要がある。
(3)
外部評価についても、その具体的な実施のあり方について、さらに検討を重ねる
必要がある。
38
第8章
第1節
施設・設備
施設・設備
Ⅰ
現状の説明
1
教室等の設備について
本法科大学院が使用している施設は、一部の教室を除いて専用施設である。法科大学院
図書室は中央図書館の分室であるため、本学全学生が利用対象者ではあるが、法科大学院
と中央図書館との連携の下に、法科大学院教員および学生の教育研究活動を最優先する方
針で運営されている。各教室および研究室等は次のように配置されている。
(1)
授業の実施のために、60名収容の講義室を2室、30名収容の演習室を3室専
用として使用し、さらに、60名収容のマルチメディア対応教室(MM 教室)を1室共用
で使用している。ほとんどの教室に移動式の机を配置し、科目の特性や履修者数に合わせ
て、効果的な授業が実施できるようにレイアウトして授業を行なっている。
(2)
実務基礎科目であるリーガルクリニックを実施するために、リーガルクリニック
室およびその準備室を設けている。リーガルクリニック室には相談ブースが4室あり、同
時に4組までの法律相談が実施できる。また、模擬裁判を実施するための法廷教室は、本
学法学部と共用の施設として、法学部棟(18号館)に設置している。
(3)
教員研究室は、8階に7室、9階に9室の計16室があり、各研究室の広さは約
26㎡である。また、非常勤講師室には全教員に専用ロッカーを設置するとともに、PC 設
置のブースを7席用意し、授業などの準備を適切に行なうことができるよう配慮している。
(4)
教員が学生を指導・面談するためには、専任教員は教員研究室、非専任教員は非
常勤講師室を主として使用しているが、リーガルクリニックを実施していない時間帯は、
リーガルクリニック室を学習指導室として利用している。この部屋の相談ブースは、グル
ープでの指導・面談にも利用可能である。
(5)
法科大学院事務部は独立した事務室で業務を行なっており、事務室内に着席して
対話が可能な学生相談カウンターを備えており、常時相談を受け付けている。また、事務
室とは別に教材や資料作成のための作業室と保存文書等を収納する倉庫を備えている。
(6)
学生の自習室は9階に3室設置している。席数はそれぞれ75席・56席・58
席の計189席あり、全学生に書架とワゴンを備え付けた固定席を与え、専用の入退室カ
ードを使って24時間の自習環境を確保している。また、全学生に PC を貸与し、共有のコ
ピー機およびプリンターを設置し、
「TKC 法科大学院教育研究支援システム」を導入して、
授業の予習・復習をサポートしている。専用の入退室カードにより、法科大学院図書室も
24時間利用できるため、自習時に必要となる文献や資料も常時利用可能となっている。
2
技術的設備および備品
各教室や研究室等の技術的設備および備品は以下のように設置されている。
39
(1)
講義室・演習室すべてに情報コンセントを設置し、また、講義室のうち1室には
ビデオやDVDなどのAV設備を常備し、教材などをプロジェクターで投影することもで
きる。さらに、MM 教室には、AV設備の他に、授業収録システムおよびサテライトシス
テムが備えられており、会議や講演会などのイベントにも利用することが可能である。
(2)
教員研究室には、机、書架、ミーティングテーブル、両開き書庫、PC、プリンタ
ー、ロッカーなど必要な備品を完備している。ミーティングテーブルは6人掛けであるた
め、オフィスアワーでの指導には余裕をもって対応できる。また、幅90cm 高さ240c
mの書架を二重連として10連程度備え、収納効率を上げ、快適な教育・研究環境を確保
している。
(3)
学生の自習室は、学生個人にパーテーションで仕切ったキャレルデスクを固定席
として使用させ、個人管理としている。各席には情報コンセント・120cmの書架・3
段引出し付きワゴンを備え、前述のように全学生に PC を貸与し、自習室にはそれぞれ2か
ら3台のプリンターおよびコピー機を備えて学習の便宜を図っている。24時間の入退室
システムを導入しており、停電や断水など特別な事情がない限り、夏期および冬期休暇中
も利用可能としている。
(4) 作業室には教材や資料を作成するためのコピー機・輪転機・帳合機を備えている。
また、コピー機のスキャナー機能と専用 PC の仕組みにより、必要な文献や図表などの資料
をPDFファイルに加工して各教員研究室で利用できる。
(5)
事務室には、業務を行なうにあたって必要な備品を完備している。各職員に机と
PC を用意し、コピー機・プリンター・シュレッダーを各 1 台備えている。ミーティングテ
ーブルと作業台を各1台、さらに、4席の学生相談カウンターを設けている。自習室の入
退室システムを管理する PC も事務室内に設置しており、トラブルなどへの対応も迅速にで
きるようになっている。
Ⅱ
評価と課題
1
評価すべき点
(1)
本法科大学院の施設、設備は、法科大学院開設と同時に完成した新校舎にあり、
様々な機器を備え付けた円形の MM 教室や専用の自習室を擁するなど非常に充実したもの
である。法科大学院は新校舎の8階・9階・10階を利用しており、生駒山を望み、眼下
に東大阪市街を見渡すことのできる快適な環境である。
(2)
自習室は3室に分けて189席用意し、収容定員180名全員が固定席で学習で
きる環境を提供している。専用の入退室カードにより、24時間利用を可能にしており、
それぞれのライフスタイルに合わせた効果的な学習ができる環境である。また、
「TKC 法科
大学院教育研究支援システム」を導入し、全学生に貸与している PC を使用して、授業の予
習・復習をサポートし、必要な情報を電子掲示板で提供している。
(3)
教員研究室は学内他学部他学科の研究室と比較して広く作られており、学生との
40
面談にも余裕をもって対応できる。非常勤講師室には PC 設置のブースを7席設け、授業な
どの準備を行なうとともに、授業の前後に学生からの質問に答えるためのミーティングテ
ーブルも設けている。
(4) その他の法科大学院関連施設も、法廷教室を除いて、法科大学院棟の8階・9階・
10階にあるため、図書室と自習室との連携をはじめ、各施設間で有機的な連携をもち、
教員および学生の研究・教育・学習に最適な環境を提供している。
2
課題
将来、学生定員が充たされた場合には講義室・演習室の狭隘さが問題となる可能性があ
るため、この点について検討する必要がある。1 学年の入学定員60名を 1 クラスとして、
現在の講義室で授業を実施しようとすると、机の大きさの点や教室内の通路の点で、やや
余裕がなくなると考えられる。また、法科大学院棟は完全な専用施設ではないため、授業
を延長せざるを得ない場合や、授業後の質問に教室内で解答する場合に、廊下が騒がしく
なるなどの問題が生じている。
第2節
図書室および情報化への対応
Ⅰ
現状の説明
1
図書室および図書
本法科大学院設置と同時に、法科大学院図書室が開設されており、所蔵資料、担当職員、
設備がそれぞれ整えられている。
(1)
法科大学院図書室は、近畿大学中央図書館の分室であり、法科大学院における高
度な法学教育および研究ならびに学生の学習を支援するために、蔵書、データベースの所
蔵資料が法学関連のものに特化された法律専門図書室である。法科大学院所属の教員およ
び学生は、貸与されている入室用解錠カードにより、法科大学院図書室を24時間利用す
ることが可能である。所蔵資料の貸出は、法科大学院教員および学生のみが可能であり、
基本的に、法科大学院専用図書室として利用されている。
(2)
法科大学院図書室には3名の担当職員が配置されており、3名全員が司書の資格
を有している。この3名の図書業務経験年数は短い者で7年、長い者は42年におよび、
いずれも図書館業務に精通した職員である。担当職員はいずれも法律関連のセミナーや学
会などに継続的に参加して能力向上に努めており、ロー・ライブラリアンとして教員の研
究・教育および学生の学習に必要な法情報調査・提供などを行なうことができる。とくに
学生の図書あるいはデータベースなどによる学習上必要な法情報の収集を支援するために、
入学者向けの図書館ガイダンスや学生向けの講習会を実施している。
また、法科大学院教員および学生を対象としたメールマガジン(「法科大学院図書室だ
より」。概ね月2回刊)を発行して、図書室の運用状況などを速やかに連絡して教員およ
び学生の利用の便宜を図るとともに、法情報調査に資するデータベースや効率的な文献検
41
索の方法を紹介することによって、教育および学習支援を行なっている。
(3) 法科大学院図書室は、法科大学院棟内に416㎡のスペースを有し、75,000 冊の
図書が収容可能である。そして、利用者が閲覧あるいは自習に利用できる座席は45席設
けられている。平成18年2月現在の蔵書数は、22,327 冊(内訳は和図書 13,846 冊、洋
図書 2,228 冊、製本雑誌 6,253 冊)であり、また、カレント雑誌は、和雑誌286種類、
洋雑誌56種類を購入している。図書あるいは雑誌等の資料は、教員の研究や学生の学習
に必要かつ有益と思われる内容のもの以外にも、実務的な内容の資料、例えば、リーガル
クリニックなどの実務関連教育に利用可能であるものも備えるように配慮している。
さらに、法科大学院図書室では、判例検索、文献検索および外国法検索等用データベー
スとして26種類のデータベースを提供している。(資料18:法科大学院図書室提供データ
ベース)。その他、語学事典等のデータベース12種類も利用可能である(同資料18)。これ
らのデータベースは、図書室に設けられた文献検索コーナーに設置された利用者用 PC5台
で利用することができるようになっており、法科大学院教員および学生は、備え付けのプ
リンターによって印刷することも可能である。
なお、法科大学院図書室の所蔵資料については、図書室に備え付けられたコピー機2台
により、教員および学生がコピーカードを用いて複写することも可能となっている。
(4)
上記所蔵図書および雑誌等の法科大学院図書室所蔵資料の選定は、担当職員の協
力も得て、専任教員全員が定期的に図書目録などによって、各教員の専門的知見をもとに
責任をもって行なっている。とくに、実務的な内容の資料については、実務家教員の助言
を得て、研究者教員とともに検討・選定することによって、研究および教育の両面からみ
て、偏向ないし遺漏のない所蔵資料となるよう格別の配慮をしている。
2
情報支援システム
情報化への対応としては、法学習のための基本的な資料に学生が効率的にアクセスでき
るように、インターネット環境とデータベースの整備に努めている。
(1) 「TKC 法科大学院教育研究支援システム」は、全学生に貸与の PC から、インター
ネット環境があれば24時間自由にアクセスできるロー・ライブラリーを提供している。
その項目は以下の通りである。
【各出版社データベースデータ収録状況('06/2/28 現在)】
・日本評論社殿提供
法律時報・・・・・・・・・・・・・1 巻 1 号('29/12/1 発行)∼77 巻 1 号('05/1/1 発行)
学界回顧・・・・・・・・・・・・・2 巻 12 号('30/12/1 発行)∼76 巻 13 号('04/12/1 発行)
判例回顧と展望・・・・・・・9 巻 12 号('37/12/1 発行)∼76 巻 6 号('04/5/24 発行)
私法判例リマークス・・・1 号('90/7/25 発行)∼ 29 号('04/07/30 発行)
法学セミナー・・・・・・・・・・1 号('56/4/01 発行)∼601 号('05/1/1 発行)
42
(2)
同様に、第一法規法情報総合データベースへのアクセスも可能であり、現行法規
検索、履歴現行法規検索、判例体系、法律判例文献情報の4種が備えられている。
このような情報システムの導入とその使い方に関する指導により、学生は必要な判例や
文献を効率的に入手できる仕組みとなっている。
Ⅱ
評価と課題
1
評価すべき点
(1)
図書室は自習室とは別の独立した施設であるため、閲覧スペースよりも資料の充
実を念頭に設計し、75,000 冊の図書が収納可能となっている。現在、22,000 冊余の図書を
所蔵している。図書室は中央図書館の分室であるため、大学としては図書資料の重複所蔵
を控える方針ではあるが、Law Library としての機能充実を優先課題として、基本図書や
利用頻度の高い図書、コア・ジャーナル等は中央図書館所蔵分と重複して所蔵している。
(2) 図書室には司書を 3 名配置し、教員の教育研究や学生の学習支援に当たっている。
(3) 各種判例等の検索は、全学生に貸与している PC や図書室に設置している専用端末、
また「TKC 法科大学院教育研究支援システム」を使用して、必要な時にアクセスできる環
境にある。
2
課題
(1)
他大学の紀要に欠落部分があり、本学の中央図書館や法学部資料室との連携も含
めて、漸次改善していくように検討する必要がある。
(2)
古い蔵書や外国文献等の整備が不十分であり、とくに教員の研究活動に支障の生
じる恐れがあり、この点も(1)と同様に漸次改善していく必要がある。
43
第9章
第1節
社会への対応
国際化への対応
Ⅰ
現状の説明
1
授業カリキュラム
本法科大学院の教育目標の一つは国際性を備えた法曹を養成することである。
授業のカリキュラム中では、展開・先端科目群において、専任教員によるものをも含め
「国際法」「国際私法」「国際取引法」
「国際倒産法」などの科目を開講しており、またアメ
リカのロースクール出身のアメリカ人弁護士を担当者とした「英語法文書作成」も開講し
ている。
また、基礎法学・隣接科目群において、「英米法」「アジア法」を開講しており、それぞ
れ、上記アメリカ人と中国人の教員によって行なわれている。外国の法思想や法制度のあ
り方を学ぶことにより、学生は日本法について、またその背景である日本社会について、
異なった観点から理解することができる。これらの授業が学生にとっても非常に興味深い
ものであることは、学生による授業評価アンケートの結果にも示されている。
2
渉外法務に関するサマーセミナー
平成16年度には、モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所から12名の講師
を招き、弁護士・研究者・他大学法科大学院生にも公開の、渉外実務に関する夏季特別セ
ミナーを5日間にわたって開催した。(資料19:近畿大学法科大学院サマーセミナーのお知ら
せ)
3
TOEIC 受験の支援
近畿大学では、全学的に、学生向けの TOEIC 学内テストを低料金で行なっている。本法
科大学院でも、学生の語学力の向上のために、ポスターを掲示して受験を推奨している。
16年度は6名、17年度は2名が受験した。
Ⅱ
評価と課題
1
評価すべき点
(1)
展開・先端科目群における「国際法」
「国際私法」
「国際取引法」「国際倒産法」そ
の他の科目、またアメリカのロースクール出身の弁護士を教員とした「英語法文書作成」
については、学生による評価はおおむね好評である。とくに「英語法文書作成」は、アメ
リカ法と法律英語についての知識がともに修得しうる科目として好評であった。
また、基礎法学・隣接科目群における、「英米法」「アジア法」については、昨年度は2
年生が6人であったため開講しない科目も存在したが、今年度は全て開講された(資料4−
2:履修登録者数)。とくに「アジア法」では、文化的背景の違いから生じる法制度の違いと
いう観点から、中国法に対する関心の高まりが認められた。
44
(2)
平成16年度に開講したモリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所の12
名の講師による夏季特別セミナーについては、国際的に活躍する実務家から直接に仕事の
内容やそれをとりまく状況について話をきくことができたという点で、参加者の評価は高
かった。(資料20:サマーセミナーアンケート集計)外部からの参加者や本法科大学院の教員の
参加は、5日間で計180人であった。
2
課題
サマーセミナーに対する外部参加者の評価はアンケートにみられるように高かったが、
本法科大学院生の参加は少数にとどまった。その原因としては、講師と外部からの参加の
便を考慮して梅田で開催したこと、内容的に渉外実務に関する専門的なセミナーであった
ことなどが考えられる。今後は、このようなセミナーを行なう場合には、学生の学習段階
や、興味関心に即した内容で行なうことも検討課題の一つといえよう。
第2節
社会との連携
Ⅰ
現状の説明
1
リーガルクリニック
リーガルクリニックは、2年・3年生向けの実務基礎科目のひとつとして実施されてい
る。その目的は、学生に対して、生の事実に接しながら生きた法律を学ぶ機会を与えると
ともに、本法科大学院の立地する東大阪の市民や中小企業に対して民事および商事に関す
る様々な法的サービスを無償で提供するところにある。施設としては、法科大学院棟にリ
ーガルクリニック室および準備室を設けている。リーガルクリニック室には相談ブースが
4室あり、同時に4組までの法律相談を実施することができる。
リーガルクリニック実施要領(抜粋)
実施目的
法科大学院での講義や演習等と連携させつつ、理論と実務を架橋する実務基礎科目の一
つとして、主として近畿大学の立地する東大阪市の市民や中小企業に対して民事および商
事に関する様々な法的サービスを原則として無償で提供しながら、法科大学院の学生が具
体的相談事件を通して実務の基礎を学ぶ機会を提供することを目的とする。学生はリーガ
ルクリニックの履修により、具体的事実に対して法的に何が問題かを知る能力、問題解決
能力、法的思考能力などを養い、文書作成などのロイヤリングについても学習する。
平成17年度は、後期授業期間中(全15回)の毎週水曜日5、6時限に実施した。実
施内容を本学ホームページに掲載するとともに、大阪府下の市役所・区役所・町役場等6
2ヶ所にリーフレットを送付し、また新聞社からの取材にも応じるなど、広く広報を行な
った。
1件の相談者に対して、教員(弁護士)1名と学生2∼3名を1グループとして、1日
最大4件の法律相談を完全予約制で受け付けた(但し、事件の受任は行なわない)
。教員(弁
45
護士)の指導を受けながら、学生が主体的に法律相談を実施する形をとっている。学生に
は、事前に事案の概略について検討させた上で、教員(弁護士)の指導の下で直接相談者
に発問させている。さらに、相談終了後、教員(弁護士)とともにディスカッションを行
ない、事案を検討している。事前打合せ→相談(17時∼18時)→相談(18時∼19
時)→ディスカッション(全員で)という手順で、今年度は、延べ34件の法律相談に応
じた。
東大阪市市政だよりに本法科大学院の法律相談に関する記事が掲載されたこともあり、
相談者の65%が東大阪市民であった。その意味で、地域市民へのリーガルサービスの一
助を担い得たと考えている。
また、アスベスト問題との関係で、東大阪商工会議所の要請に応じ、2日間にわたって、
教員と学生による出張法律相談も実施した。
(東大阪商工会議所リフォームなんでも相談会
実行委員会主催「リフォームなんでも相談会」
)。
来年度については、地域の法的拠点という本法科大学院の役割を考え、授業期間外にも
法律相談を受け付け、また東大阪市だけではなく、近隣の八尾市などにも広報を依頼し、
連携をとっていく予定である。
2
各種講演会の開催等
本法科大学院の主催により、毎回各界の有識者を招き、公開のシンポジウムや講演会を
開催している。これは、第3章第1節Ⅰ7にふれたように、学生の啓発とともに、今後の
日本社会のあり方を探る中で、今般の司法改革とそれに基づく新しい法科大学院制度の趣
旨、そこにおける教育のあり方や、めざされる法曹像についての関心を、広く社会に喚起
し、議論の活性化を促す趣旨で行なわれているものである。
平成16年5月には「近畿大学法科大学院開設記念シンポジウム・法科大学院になにを
期待するか」と題したシンポジウムを行なった(資料21:「近畿大学法科大学院開設記念シン
ポジウム・法科大学院になにを期待するか」)。以降は、秋期や春期に著名な裁判官や弁護士を
招き、講演会を開催している(資料22:「近畿大学法科大学院秋期講演会」、資料23:「近畿大
学法科大学院講演会」)
。
Ⅱ
評価と課題
1
評価すべき点
(1)
これまで、東大阪市内で経常的に法律相談を行なっている大学がなかったため、
本法科大学院によるリーガルクリニックの実施は、地域へのリーガルサービスの一助とな
ったと思われる。平成17年度が、リーガルクリニック開設初年度であったが、その相談
件数からみて、初年度としては、一定の成果を挙げられたといえる。また、法的サービス
の拠点となるためには、本法科大学院に連絡をすれば、常に法律相談を受けることができ
る状況が望ましいことから、来年度からは、休暇中にも月に2回実施することとし、すで
に広報を開始している。
46
同じ相談者が何度も訪れた例があり、これは一般の人には法律が理解しにくいためと思
われるが、同時に本法科大学院の法律相談に一定の評価が与えられたことも示していると
思われる。
(2)
公開のシンポジウムや講演会を積極的に開催することにより、法科大学院での教
育や新たな法曹像についての関心と理解を広く社会に喚起することに努めている。
2
課題
リーガルクリニックにおいて、社会との連携を促進するため、東大阪市市政だよりへの
記事掲載や、東大阪商工会議所のイベントへの参加などを行なってきたが、より本格的な
連携の方法を検討する必要がある。具体的には、東大阪近辺の地域密着型法律事務所とし
て活躍中の弁護士との連携が考えられ、今後そのような連携の可能性と方法について検討
する必要がある。例えば、受任相当事件について受任を前提として継続相談を受けてもら
うことが考えられる。現在は、大阪弁護士会を紹介する方法のみであり、地域の弁護士と
連携をとることによって、さらに充実したサービスが提供できると考える。
また、東大阪市だけではなく、近隣の市民にも広く利用してもらうために、八尾市その
他の近隣の自治体との連携を進める必要がある。すでに八尾市との話し合いは進んでおり、
平成18年度は、八尾市市政だよりへの記事掲載が予定されている。今後さらに、どのよ
うな連携がとれるか、各市役所などと検討し、地域の法的拠点となるための努力をする必
要がある。
47
第2部
教員の研究・教育・社会活動
専任教員の自己点検・評価項目フォーマット
Ⅰ
研究活動
Ⅰ−1
現在の研究テーマと最近の活動
Ⅰ−2
最近5年間(2001 年 4 月∼2006 年 3 月)の研究成果
(1)公表された著作
①著
書
②論
文
③その他
(2)学会報告・講演等
(3)共同プロジェクトへの参加(国内研究プロジェクト、国際学会、研究集会等)
Ⅱ
教育活動(最近2年間)
法科大学院
Ⅱ−2
法
学
部
Ⅱ−3
そ
の
他
Ⅲ
Ⅱ−1
学外活動(最近2年間)
他大学非常勤講師・兼任教授等
Ⅲ−2
各種学外委員
Ⅲ−3
所属学会及び学会役員等
Ⅲ−4
受賞の状況
Ⅳ
Ⅲ−1
今後の研究計画と展望
49
飯田 俊二
<教授>
実務家
IIDA Shunji
Ⅰ
実務活動
Ⅰ−1 現在の実務テーマと最近の活動
民事訴訟事件多数
主に損害賠償請求事件
保険金請求事件
Ⅰ−2 最近5年間(2001 年 4 月∼2006 年 3 月)の研究成果
(1)公表された著作
な
し
(2)学会報告・講演等
な
し
(3)共同プロジェクトへの参加(国内研究プロジェクト、国際学会、研究集会等)
な
Ⅱ
し
教育活動(最近2年間)
Ⅱ−1 法科大学院
実務家専任教授として法曹倫理、特別演習(損害賠償責任法)、法文書作成を担当。
なお、法文書作成は履修者なしのため不開講。
Ⅱ−2 法学部
な
し
Ⅱ−3 その他
法科大学院特別授業
<前期>
(1) 要件事実の基礎を講義形式にて行う。2年生対象。
(2) 民法判例百選Ⅰ、Ⅱ及び民事訴訟判例百選を要件事実論を踏まえながら読むこ
とを継続で行う。3年生対象。
(3) 即日起案。3年生希望者対象。
(4) 民法の基本書の輪読をしながら、法学教室・NBL・新聞等でトピックを拾って
50
身近な法律問題を考える。1年生対象。
<後期>
(1) 即日起案、講評・ディスカッション。3年生対象。
第1問「ケースブック
要件事実・事実認定」伊藤滋夫・山崎敏彦から出題
民法の問題
第2問「ゼミナール要件事実2」大江忠から出題
民事訴訟の小問題
(2) 民法判例百選Ⅰ、Ⅱ及び民事訴訟判例百選を要件事実論を踏まえながら読む。
2年生対象。
(3) 民法の基本書の輪読をしながら、法学教室・NBL・新聞等でトピックを拾って
身近な法律問題を考える。1年生対象。
Ⅲ
学外活動(最近2年間)
Ⅲ−1 他大学非常勤講師・兼任教授等
な
し
Ⅲ−2 各種学外委員
大阪府収用委員会委員
Ⅲ−3 所属学会及び学会役員等
な
し
Ⅲ−4 受賞の状況
な
Ⅳ
し
今後の研究計画と展望
51
大沼 容之
<教授>
実務家
OHNUMA Yasuyuki
Ⅰ
実務活動
Ⅰ−1 現在の実務テーマと最近の活動
関与民事・刑事事件(最近 5 年間)
1
(1) 民事:医療過誤、建築紛争、PL 法関連、特許(薬品)関連、国賠その他
約 50 件
(2) 刑事:国選(1 審、控訴審)、少年付添人事件、当番弁護士事件等約 20 件
2
弁護士会委員会活動
(1) 家事事件審理改善協議委員会委員(1998 年以降)
(2) 司法改革推進本部委員会裁判所制度部会委員(1999 年以降)
(3) 紛議調停委員会委員(2003 年以降)
3
裁判所関係委員活動
(1) 大阪地方裁判所、大阪簡易裁判所民事調停委員(1998 年以降)
(2) 大阪簡易裁判所司法委員(2000 年以降)
Ⅰ−2 最近5年間(2001 年 4 月∼2006 年 3 月)の研究成果
(1)公表された著作
* 家事事件審理改善に関する意見書(共同執筆)
(判例タイムズ社 2001 年)
* Q&A 新人事訴訟法解説(共同執筆)
(日本加除出版 2004 年)
(2)学会報告・講演等
な
し
(3)共同プロジェクトへの参加(国内研究プロジェクト、国際学会、研究集会等)
な
Ⅱ
し
教育活動(最近2年間)
Ⅱ−1 法科大学院
実務家専任教授として民事裁判、エクスターンシップ、リーガルクリニックの 3 科
52
目を担当
Ⅱ−2 法学部
な
し
Ⅱ−3 その他
な
Ⅲ
し
学外活動(最近2年間)
Ⅲ−1 他大学非常勤講師・兼任教授等
な
し
Ⅲ−2 各種学外委員
な
し
Ⅲ−3 所属学会及び学会役員等
日本法社会学会(2000 年 5 月以降)
Ⅲ−4 受賞の状況
な
Ⅳ
し
今後の研究計画と展望
53
佐藤 幸治
<教授>
憲法
SATO Koji
Ⅰ
研究活動
Ⅰ−1 現在の研究テーマと最近の活動
これまで、主権、立法権、行政権、司法権、憲法訴訟、法の支配、人権の基礎、人格
的自律権(自己決定権)
、表現の自由・情報公開制度、プライバシーの権利・個人情報保
護制度、集会・結社の自由、部分社会等々の個別的テーマとともに、憲法の新しい解釈
体系の構築に関心をもち、研究を進めてきた。
その研究の成果は、それぞれの時点で論文の形で公にするとともに、『憲法訴訟と司法
権』(昭和 59 年、日本評論社)、『現代国家と司法権』(昭和 63 年、有斐閣)等の書物と
して公刊し、また、
『憲法』
(昭和 56 年、青林書院新社、
〔新版〕平成 2 年、青林書院、
〔第
3 版〕平成 7 年)、『注釈日本国憲法(上)(下)
』
(共著)(昭和 59 年、青林書院新社、昭
和 63 年、青林書院)、『注解法律学全集・憲法Ⅰ∼Ⅳ』(平成 6 年、9 年、10 年、16 年、
青林書院)、
『国家と人間』(平成 9 年、放送大学教育振興会)等を公刊した。
そうした中にあって、平成 7 年には行政改革委員会専門委員、平成 8 年には中央銀行
研究会委員、行政改革会議委員、平成 10 年には中央省庁等改革推進本部顧問、法制審議
会委員、平成 11 年には司法制度改革審議会委員、平成 13 年には中央教育審議会委員、
平成 14 年には司法制度改革推進本部顧問等を務めることになり、日本の統治構造の現実
とその問題点に触れ、従来の研究の延長線上においていろいろと考えるところがあった。
その過程において幾つかの論文を書き講演を行ったが、書物としては『司法制度改革』
(共
著)
(平成 14 年、有斐閣)、
『日本国憲法と「法の支配」』
(平成 14 年、有斐閣)、
『憲法と
その”物語“性』(平成 15 年、有斐閣)を公刊した。
現在、この「10 年」の経験を通して得た知見を整理するとともに、日本の「国のかた
ち(constitution)」の現実と課題およびあるべき方向を全体的に解明する書物を公刊す
べく準備中である。また、人権の基礎、人格的自律権(自己決定権)
、プライバシーの権
利・個人情報保護制度等を一冊の書物に取りまとめることを永年の課題としてきたが、
本年中には『現代国家と人権』(有斐閣)として公刊できる見込みである。さらに、『憲
法〔第 3 版〕』以来既に 10 年が経過しており、版を新たにすることもこの 1、2 年の大き
な課題である。
Ⅰ−2 最近5年間(2001 年 4 月∼2006 年 3 月)の研究成果
(1)公表された著作
①
著
書
54
* 『司法制度改革』(共著)(有斐閣 2002.10)
2002.12)
* 『日本国憲法と「法の支配」』(有斐閣
* 『憲法とその“物語”性』(有斐閣
2003.6)
* 『注解法律学全集・憲法Ⅳ』(共著)(青林書院
②
論
2004.2)
文
* 「『司法ネット』実現の課題」 『法律のひろば』第 56 巻 8 号(ぎょうせ
い
2003.8)
* 「司法制度改革の経緯と展望」 『ジュリスト』1260 号(有斐閣
* 「『法の支配』と正義へのアクセス」
イムズ社
2004.1)
『判例タイムズ』1143 号(判例タ
2004.4)
* 「『公開裁判原則』再論−人事訴訟制度に関連して−」 『憲法論集−樋口
2004.9)
陽一先生古稀記念』(創文社
* 「司法制度改革の背景と理論」
せい
『法律のひろば』第 58 巻 3 号(ぎょう
2005.3)
* 「憲法秩序と『国際人権』に対する覚え書き」 『国際人権』16 号(信山
社
③
2005.10)
その他
* 「憲法学を生きてⅠ∼Ⅲ」
『書斎の窓』507∼509 号(有斐閣
2001.9
∼11)
* 「巻頭言・憲法と『国のかたち』」 『会計検査』25 号(会計検査院
2002.3)
* 「法科大学院構想を考える」 『IDE・現代の高等教育』445 号(2002.12)
* 『コンサイス法律学用語辞典』(編集代表)(三省堂
2003.12)
* 「巻頭言・地方自治にとっての司法の意味を真剣に考える」
自治』245 号(ぎょうせい
『判例地方
2004.1)
* 「巻頭言・司法改革①∼⑨」 『書斎の窓』533∼542 号(有斐閣
2004.4
∼2005.3)
* 「司法制度改革における法教育の役割」 『ジュリスト』1266 号(有斐閣
2004.4)
* 「『国民の司法』を目指して」 『学士会会報』 850 号(学士会
2005.1)
* 「日本司法支援センターへの期待」 『法律扶助だより』88 号(法律扶助
協会
2005.5)
* 「司法改革」
『戦後史大事典〔増補新版〕』
(三省堂
(2)学会報告・講演等
55
2005.7)
* 「日本国憲法と『国のかたち』」 法曹緑会創立 70 周年記念講演 『ばん
べーる(法曹緑会会報)
』に掲載
2002.11
* 「司法制度改革の意義と位置づけ」
日本記者クラブ会報(記録版)124
号に掲載 2004.5
* 「司法改革と法科大学院」新潟大学法科大学院開校記念講演
2004.6
* 「佐々木惣一と日本国憲法を考える」鳥取県主催の「地方自治と日本の民
主主義を考えるフォーラム」特別講演
鳥取県『地方自治と日本の民主主
義を考えるフォーラム(報告書)』に掲載
2004.9
* 「司法制度改革と法科大学院」同志社大学法科大学院講演会
2005.1
* 「司法制度改革と法科大学院・新司法試験」東北大学法科大学院講演会
2005.1
* 「(座談会)司法制度改革の成果を振り返る(1)∼(4)」
ろば』第 58 巻 4∼7 号に掲載
『法律のひ
2005.1
* 「裁判員制度の根底にあるもの」千葉大学法科大学院講演会
2005.11
* 「21 世紀の日本の司法について−裁判員制度の導入に関連して−」
20 回京都大学未来フォーラムにおける講演
第
2005.12
(3)共同プロジェクトへの参加(国内研究プロジェクト、国際学会、研究集会等)
な
Ⅱ
し
教育活動(最近2年間)
Ⅱ−1 法科大学院
平成 16 年度は、1 年生配当の憲法 A(統治機構)と 2 年生配当の憲法演習 A(基本
的人権)を担当。
憲法 A では、基礎知識を習得するための参考書として佐藤幸治『憲法〔第 3 版〕』
(平
成 7 年、青林書院)を指定し、統治機構の部分を中心に折に触れて読むことを求める
とともに、判例・論文・解説・報告書等を収めた教材を作成して院生に配付し、前期
15 回分の授業計画に沿って授業を行った。教育方法は双方的・多方向的で密度の濃い
ものとするという法科大学院の趣旨に従い、毎回事前に予習すべき教材の個所を指示
し、院生が読んでくることを前提に質疑応答形式で授業を進めた。
憲法演習 A では、憲法全般について基礎的知識を習得したこと、および行政法その
他の法律科目についても基礎的な学習が済んでいることを前提に、基本的人権につい
て、理論的な側面でより高度で複雑な論点を含む事案について裁判的救済に焦点をあ
てて検証を深めることを目的として、授業を行った。教材には、初宿・大石・松井・
市川・高井・藤井・土井・毛利・松本・中山・上田著の『ケースブック憲法〔人権−
56
展開編〕』(この段階では未だプリント)を使用し、前期 15 回分の授業計画に沿って、
毎回事前に予習すべき個所を指示し、院生が十分に読み込んでくることを前提に質疑
応答形式で授業を進めた。
平成 17 年度も、16 年度と同様、憲法 A(統治機構)と憲法演習 A(基本的人権)を
担当。
憲法 A では、前年度の教材の分量が多すぎたことを反省し若干縮小整理するととも
に、毎回指定参考書の予め読むべき範囲を明示し、教材を読むにあたって留意すべき
論点を示すよう心掛けた。因みに、15 回で扱ったテーマは、次の通りである。①∼③
付随的違憲審査制(1)∼(3)、④「法の支配」と法治国家、⑤司法制度改革、⑥司法権と
違憲審査制に関する復習的な全体的検討、⑦⑧国会の性格と地位(1)(2)、⑨議員自律権・
議員の免責特権、⑩行政権の意味、⑪内閣制度、⑫行政各部と独立行政委員会、⑬財
政立憲主義、⑭財政立憲主義および地方分権改革の現状と評価、⑮地方分権改革の現
状と評価。
憲法演習 A では、前年度と同じ教材を使い(プリントは著者によってより整理され
たものとなっている)、基本的に同様の姿勢で授業に臨んだ。因みに、当初予定した 15
回のテーマは、次の通りである。①生と死のあり方と自己決定権、②名誉毀損と表現
の自由、③プライバシーの侵害、④平等訴訟における違憲審査基準、⑤積極的差別是
正措置と法の下の平等、⑥⑦選挙権と法の下の平等(1)(2)、⑧⑨目的効果基準論(1)(2)、
⑩差別的表現の規制、⑪表現活動に対する国家の援助、⑫パブリック・フォーラム、
⑬表現の自由な流通とマス・メディア、⑭法人・団体をめぐる問題、⑮法律と人権保
障。もっとも、時間の関係で、⑭にはほとんど入れず、⑮には触れ得なかったことは
残念であった。
Ⅱ−2 法学部
平成 16 年度および平成 17 年度において、憲法Ⅱ(基本的人権)を担当。教科書と
して佐藤幸治『憲法〔第 3 版〕』(平成 7 年、青林書院)を使用し、その第 4 編「基本
的人権の保障」における記述の順序に従って、①総論(人権思想の史的展開、人権の
憲法的保障とその保障の限界、人権の享有主体、人権の妥当範囲等)
、②包括的基本権
(生命・自由および幸福追求権、法の下の平等)、③消極的権利(精神活動の自由、経
済活動の自由等)、④積極的権利(受益権、社会国家的基本権)、⑤能力的権利を扱っ
たが、時間の関係で④⑤等について十分に立ち入れなかったことが心残りであった。
なお、教科書の版が若干旧いため、その後の判例・学説や社会の新たな動向等につい
て適宜補充したことはいうまでもない。
Ⅱ−3 その他
な
し
57
Ⅲ
学外活動(最近2年間)
Ⅲ−1 他大学非常勤講師・兼任教授等
な
し
Ⅲ−2 各種学外委員
・ 大阪府個人情報保護審議会委員(会長)(平成 8 年 5 月より)
・ 法制審議会委員(平成 10 年 10 月より平成 16 年 6 月まで)
・ 中央教育審議会委員(平成 13 年 1 月より平成 16 年 7 月まで)
・ 司法制度改革推進本部顧問(会議座長)
(平成 13 年 12 月より平成 16 年 11 月まで)
・ 関西電力株式会社監査懇話会委員(平成 14 年 4 月より)
・ 大阪府人権施策推進審議会委員(平成 15 年 9 月より)
・ 法科大学院協会副理事長(理事長代行)(平成 16 年 3 月より平成 17 年 3 月まで)
・ 独立行政法人大学評価・学位授与機構法科大学院認証評価委員会委員(平成 16 年
5 月より)
・ 皇室典範に関する有識者会議委員(平成 17 年 1 月より同年 11 月まで)
・ 法科大学院協会理事長(平成 17 年 3 月より)
・ 会計検査懇話会委員(平成 17 年 4 月より)
Ⅲ−3 所属学会及び学会役員等
・ 日本公法学会、日米法学会、比較法学会、国際人権法学会に所属し、理事・監事等
を歴任
・ 日本公法学会理事長(平成 16 年 10 月より)
Ⅲ−4 受賞の状況
な
Ⅳ
し
今後の研究計画と展望
Ⅰ−1で述べたように、まず、今年は『現代国家と人権』
(有斐閣)を公刊することが
最大の目標である。人格的自律権(自己決定権)論、プライバシーの権利論を中心にこ
れまで進めてきた研究を現段階で一応集大成するという意味をもつ。第 2 に、
『憲法〔第
3 版〕』を改訂する作業に着手したいと考えている。第 3 に、行政改革や司法改革等に関
与して得た知見に基づき、これらの改革の背景・過程・結果等について整理するととも
に、憲法学的見地からその意義を解明することに努めたいと考えている。
58
杉原 高嶺
<教授>
国際法
SUGIHARA Takane
Ⅰ
研究活動
Ⅰ−1 現在の研究テーマと最近の活動
私の国際法の研究は、これまで国際裁判と海洋法の分野を中心に進めてきた。前者に
ついては、とりわけ国際司法裁判所の訴訟制度、裁判の機能および判例研究など、裁判
の全般にわたって研究を続けてきた。平成 8 年 6 月、これらの研究を総括する意味で、
著書(『国際司法裁判制度』)を刊行した。
海洋法については、平成 16 年、日本海洋法研究会の研究業績第 1 巻として『海洋法の
歴史的展開』
(共編著)を出した(全 5 巻を予定)。
平成 4 年に刊行した『現代国際法講義』
(共著)は、平成 7 年に改訂版(第 2 版)を出
したが、その後の国際法の発展を考慮して、平成 15 年 10 月に第 3 版を刊行した。今秋
には早くも第 4 版の刊行が計画されている。これとは別に、数年前より、単独の国際法
の体系書の執筆に挑んでいる。
Ⅰ−2 最近5年間(2001 年 4 月∼2006 年 3 月)の研究成果
(1)公表された著作
①
著
書
* 『日本と国際法の 100 年・第 3 巻「海」』
(国際法学会編、編集責任者)三
省堂
2001.10
* 『解説条約集(第 10 版)』(編集員)三省堂
2003
* 『現代国際法講義(第 3 版)』(共著)有斐閣
2003.10
* 『海洋法の歴史的展開−現代海洋法の潮流(第 1 巻)−』
(共編著)有信堂
2004.10
* 『解説条約集 2005』(共編・編集代表)三省堂
②
論
2005.5
文
* 「国際司法裁判所による安保理決定の司法審査について」
148 巻 5・6 号(京都大学法学会
『法学論叢』
2001.3)
* 「みなみまぐろ仲裁裁判事件の先決的抗弁−書面手続における主張の分析
−」
『国際法外交雑誌』100 巻 3 号(国際法学会
2001.3)
* 「国際司法裁判所の役割と展望」 『日本と国際法の 100 年・紛争の解決』
(第 9 巻)所収
(国際法学会
59
2001.10)
* 「The International Court of Justice − Towards a Higher Role in the
International Community」N. Ando et al.(eds.), Liber Amicorum Judge
Shigeru Oda (Kluwer Law International
* 「近代国際法の法規範性に関する一考察
2002.2)
−戦争の位置づけとの関係にお
いて」 『国際社会の法構造−その歴史と現状』
(上巻)所収
有信堂
2003
* 「海洋法の発展の軌跡と展望−mare liberum から mare commune へ−」
『海洋法の歴史的展開−現代海洋法の潮流(第 1 巻)』所収
③
有信堂
2004
その他
* 「ロッカービー航空機事故をめぐるモントリオール条約の解釈・適用事件
−先決的抗弁−」
『国際法外交雑誌』 99 巻 6 号(国際法学会)2001.2
* 「人権委員会の特別報告者の訴訟免除に関する紛争」 『国際法外交雑誌』
101 巻 4 号(国際法学会)2003.1
* 「国際司法裁判所裁判官」
『法学教室』269 号(有斐閣)2003
* 『国際関係法辞典』(改訂版)(国際法学会編・編集委員・執筆者)2004
(2)学会報告・講演等
* 「フランコニア号事件と領海制度−領海の法的地位−」
会
日本海洋法研究
2003
* 「国際法における人道的干渉論の史的系譜」
* 「国際法の普遍性と相対性」
京都大学春秋講義
京都大学法学会秋季講演
2004
2004
(3)共同プロジェクトへの参加(国内研究プロジェクト、国際学会、研究集会等)
* 「国際司法裁判所による安保理決定の司法審査について」
助金(基盤研究(C))につき研究代表者
科学研究費補
2000∼2001
* 「国際裁判制度の多元化に伴う国際紛争の司法的処理手続の再検討」
学研究費補助金(基盤研究(C))につき研究代表者
2002∼2004
* 「国際司法裁判所の合法性審査機能の発展とその法的位置づけ」
究費補助金(基盤研究(C))につき研究代表者
2003∼2006
* 「国際司法裁判所判例研究会」委員(代表)
* 「日本海洋法研究会」委員(副会長)
Ⅱ
教育活動(最近2年間)
60
科学研
2005∼
* 「現代海洋法秩序の法史的分析と総合的体系化の研究」
金(基盤研究(B))の研究分担者
科
科学研究費補助
Ⅱ−1 法科大学院
* 平成 16 年度
京都大学法科大学院の国際法1(前期)と国際法2(後期)を担当。
* 平成 17 年度
近畿大学法科大学院の国際法 A(前期)と国際法 B(後期)を担当。
Ⅱ−2 法学部
* 平成 16 年度
京都大学法学部の国際法第 2 部と国際法演習を担当。
* 平成 17 年度
近畿大学法学部の国際法Ⅱおよび外国法政演習Ⅰを担当。
Ⅱ−3 その他
* 平成 16 年度
京都大学経済学部の国際法第 2 部を担当。
Ⅲ
学外活動(最近2年間)
Ⅲ−1 他大学非常勤講師・兼任教授等
* 平成 16 年度
同志社大学法学部の国際法Ⅱと同志社大学大学院の国際法特講演習Ⅰを担当。
* 平成 17 年度
同志社大学法学部の国際法Ⅰと同志社大学大学院の国際法特講演習Ⅱを担当。
Ⅲ−2 各種学外委員
・ 法科大学院協会司法試験等検討委員会委員
Ⅲ−3 所属学会及び学会役員等
・ 国際法学会(理事)
・ 世界法学会(理事、平成 17 年より理事長)
・ 日本国際法協会会員
Ⅲ−4 受賞の状況
な
Ⅳ
し
今後の研究計画と展望
61
私の国際法の研究は、主として国際裁判と海洋法に向けられてきたが、これらについ
て研究すべき重要なテーマはまだ限りなく存在する。今後とも、この分野の研究を続け、
研究のいっそうの発展をはかるつもりである。数年前より、国際法の体系的書物に取り
組んでいるにもかかわらず、進捗状況ははかばかしくない。何はともあれ、その早期脱
稿が目下の目標である。
62
鈴木 茂嗣
<教授>
刑事法
SUZUKI Shigetsugu
Ⅰ
研究活動
Ⅰ−1 現在の研究テーマと最近の活動
研究テーマ:
刑事実体法と手続法の交錯領域の研究。
最近の活動:
近畿大学法科大学院論集・創刊号に「犯罪論は何のためにあるか―法
科大学院・裁判員時代の刑法学」を発表し、犯罪論の新たな展開を提唱。
Ⅰ−2 最近5年間(2001 年 4 月∼2006 年 3 月)の研究成果
(1)公表された著作
①
著
な
書
②
し
論
文
* 「公訴事実の同一性」廣瀬・多田編『田宮裕博士追悼論集・上巻』(2001
年 5 月、信山社)93∼111 頁。
* 「刑法における危険概念」
『光藤景皎先生古稀祝賀論文集・下巻』
(2001 年
12 月、成文堂)1001∼1023 頁。
* 「刑事手続と実体法的評価」寺崎・白取編『能勢弘之先生追悼論集・激動
期の刑事法学』(2003 年 8 月、信山社)11∼28 頁。
* 「犯罪論と量刑論」前野育三ほか編『松岡正章先生古稀祝賀・量刑法の総
合的検討』(2005 年 2 月、成文堂)3∼23 頁。
* 「犯罪論は何のためにあるか―法科大学院・裁判員時代の刑法学―」近畿
大学法科大学院論集・創刊号(2005 年 3 月)111∼134 頁。
* 「平野龍一博士の刑事訴訟法学―いわゆる基礎理論を中心に―」刑法雑誌
45 巻 2 号(2006 年 1 月)297∼307 頁。
③
その他
* 書評「刑事法学の動き〔上口裕『公訴事実の同一性』光藤古稀祝賀論文集・
上巻 379 頁以下〕」法律時報 74 巻 6 号(2002 年 5 月)120∼123 頁。
* 書評「刑事法学の動き〔現代刑事法 66 号・特集『構成要件論の再生』
〕」法
律時報 76 巻 12 号(2004 年)85∼88 頁。
* 判例解説「概括的・択一的認定と訴因変更の要否」ジュリスト 1224 号『平
63
成 13 年度重要判例解説』
(2002 年 6 月)195∼197 頁。
* 判例解説「久留米駅事件」別冊ジュリスト 166 号『刑法判例百選Ⅰ総論〔第
五版〕』(2003 年 4 月)32∼33 頁。
(2)学会報告・講演等
* 2005 年 6 月 19 日開催の日本刑法学会第 83 回大会において、平野博士追悼
企画の一環として、「平野龍一博士の刑事訴訟法学」について報告。
(3)共同プロジェクトへの参加(国内研究プロジェクト、国際学会、研究集会等)
な
Ⅱ
し
教育活動(最近2年間)
Ⅱ−1 法科大学院
*
2004 年度
前期: 「刑法 A(総論)」2 単位および「刑法演習」2 単位を担当。
後期:
*
「刑事法総合演習」2 単位を担当。
2005 年度
前期: 「刑法 A(総論)」2 単位および「刑法演習」2 単位を担当。
後期:
「刑事法総合演習」2 単位を担当。
Ⅱ−2 法学部
*
2004 年度
通年:
*
「刑法研究演習Ⅱ」4 単位を担当。
2005 年度
通年:
「刑法Ⅰ」4 単位を担当。
Ⅱ−3 その他
* 2004 年度
法学研究科前期課程において「刑事法特論演習」(研究指導)を担当。
法学研究科後期課程において「刑事法特殊研究」を担当。ただし、在籍者なし。
*
2005 年度
法学研究科前期課程において「刑事法特論演習」(研究指導)を担当。
法学研究科後期課程において「刑事法特殊研究」を担当。ただし、在籍者なし。
Ⅲ
学外活動(最近2年間)
64
Ⅲ−1 他大学非常勤講師・兼任教授等
な
し
Ⅲ−2 各種学外委員
* 下級裁判所裁判官指名諮問委員会大阪地域委員会・委員長(2003 年 5 月∼)。
Ⅲ−3 所属学会及び学会役員等
*
日本刑法学会、日米法学会、日独法学会、法と心理学会。
Ⅲ−4 受賞の状況
な
Ⅳ
し
今後の研究計画と展望
年来の課題である「刑事実体法と手続法の交錯領域の研究」をさらに深化させること
をめざしている。近時の研究の一応の総括が、2005 年 3 月に本法科大学院の論集に公表
した論文「犯罪論は何のためにあるか」である。今後とも、手続法的観点からの伝統的
刑法学の問題点の再検討を通じて、実体法的問題と手続法的問題それぞれの純化を図り
つつ、真の意味で両者の架橋を図ることを目標に研究を進めて行きたい。
65
高田 敏
<教授>
行政法
TAKADA Bin
Ⅰ
研究活動
Ⅰ−1 現在の研究テーマと最近の活動
研究テーマ:
法治主義の展開と普遍化の動向−21世紀の法治主義に向けて
最近の活動:
『近畿大学法科大学院論集』第2号に「形式的法治国・実質的法治国」
概念の系譜と現状−その検討と普遍化的法治主義の提唱−を発表した。
Ⅰ−2 最近5年間(2001 年 4 月∼2006 年 3 月)の研究成果
(1)公表された著作
①
著
書
* 『行政法-法治主義具体化法としての-〔改訂版-増補〕』
〔編著者〕高田敏〔共
著者〕高橋明男・小山正善・佐藤英世・廣瀬肇・岡田雅夫・浅川千尋・松
浦寛・森口佳樹・頓田充・三吉修・川内劦・平岡久
有斐閣
2001.04
* 『ドイツ憲法集〔第3版〕』
〔編著者〕高田敏・初宿正典〔共著者〕高田篤・
倉田原志・松本和彦
信山社
2001.05
* 『資料で考える憲法〔第2版〕』〔編著者〕山中永之佑・高田敏・奥正嗣・
三吉修・白石玲子・高倉史人
法律文化社
2001.05
* 『やさしく学ぶ法学〔第2版〕』
〔編者〕中川淳〔共著者〕高田敏・松浦寛・
小林武・生田勝義・田中泰子・貝田守・辻義教・沢津久司・古橋エツ子・
竹田壽紀・今西康人・釜田泰介・伊藤正巳・紺谷浩司・東泰介・畝村繁
律文化社
法
2003.04
* 『ファンダメンタル 地方自治法』村上武則氏と共編
法律文化社
2004.04
②
論
文
* 「法治主義のヨ−ロッパ化とヨ−ロッパの法治主義化」
統合−歴史と展望』
OIU ヨーロッパ問題研究会
『ヨ−ロッパの
2004.12
* 「『形式的法治国・実質的法治国』概念の系譜と現状−その検討と普遍化的
法治主義の提唱」
③
『近畿大学法科大学院論集』2 号
2006.03
その他
* 「高速増殖炉型原発の設置の許可と原子力法の合憲性−カルカ−決定」
『ド
66
イツの憲法判例』〔第2版〕
信山社
2003.12
* 「オ−ストリア連邦憲法」
(翻訳)阿部照哉/畑 博行編『世界の憲法集[第
3 版]』
有信堂高文社
2005.07
* 「地方議会議員の懲罰と司法審査」
『別冊ジュリスト No.155-憲法判例百選
Ⅱ〔第4版〕
』(402 頁∼403 頁)有斐閣
2006
(2)学会報告・講演等
* 「
Entwicklungstendenzen
des
Rechtsstaates
und
der
Gesetzmaessigkeit der Verwaltung in Japan aus rechtsvergleichender
Sicht」
Internationalisierung von Staat und Verfassung im Spiegel des
deutschen und japanischen Staats-und Verwaltungsrecht, 2002(145 頁
∼172 頁)
Speyer 行政科学大学においてドイツ憲法 50 年を記念して開催されたシン
ポジウム「独日公法の国際化」において、行政法の今日的問題に関する諸報
告の冒頭に行われた行政法総論的報告。そこでは、まず、行政法が法治国家
における法律による行政の結果成立した法であることを鑑み、法治主義を手
懸りに、第二次大戦後における行政法・行政法学の発展を四つの時代区分の
もとに比較法的にあとづけた。そしてそのあと、法律の留保論に問題をしぼ
り、ドイツ、オーストリーと日本におけるその問題を比較法的に考察し、か
つての対称的な展開から近時の接近にいたっている過程を、明らかにしよう
とした。そして最後に、21 世紀の法治主義と行政法を展望している。
(3)共同プロジェクトへの参加(国内研究プロジェクト、国際学会、研究集会等)
* 平成 15 年度・16 年度科学研究費補助金(基盤研究 B・2)による共同プ
ロジェクト「『法の支配』と『法治国家』−新世紀統治システムの型と文脈」
に参加した。
Ⅱ
教育活動(最近2年間)
Ⅱ−1 法科大学院
*
*
2004 年度
前期:
「行政法」2 単位を 2 クラス担当。
後期:
「行政法演習」2 単位を担当。
2005 年度
前期:
「行政法」2 単位を担当。
67
後期:
「行政法演習」2 単位を 2 クラス担当。
Ⅱ−2 法学部
な
し
Ⅱ−3 その他
な
Ⅲ
し
学外活動(最近2年間)
Ⅲ−1 他大学非常勤講師・兼任教授等
大阪国際大学法政経学部
*
2004 年度
通年:「演習Ⅱ」4 単位を担当。
大阪国際大学大学院総合社会科学研究科
*
2004 年度
通年:「特別研究」8 単位を担当。
前期:「法治主義論」2 単位を担当
後期:「行政統制・救済法」2 単位を担当
Ⅲ−2 各種学外委員
*
大阪府収用委員会委員(会長代理)(’79.2∼’91.1)
*
大阪府建築審査会委員(会長)
(’91.4∼’05.3)
*
吹田市情報公開審議会会長(’87.4∼)
Ⅲ−3 所属学会及び学会役員等
*
日本公法学会
*
日独法学会
*
比較憲法学会名誉理事
*
日独文化研究所理事
Ⅲ−4 受賞の状況
な
Ⅳ
し
今後の研究計画と展望
68
これまでに公にした諸論稿に未公表のものを加えて、
「法治国家観の展開−法治主義の
普遍化的近代化と現代化」および「法治行政論の展開と転回」とそれぞれ題する二つの
モノグラフィーをまとめる計画である。
69
瀧 賢太郎
<教授>
実務家
TAKI Kentaro
Ⅰ
実務活動
Ⅰ−1 現在の実務テーマと最近の活動
実務に関するテーマとしては、特定分野を対外的に示しているわけではない。民事・
刑事全般についての事件を担当しているが、民事においては、火災保険についてのモラ
ルリスク事案(すなわち、契約者の関与した放火による火災の疑いがあり、保険会社が
契約者からの保険金請求に対し、いわゆる事故招致免責を主張し、請求を排斥する事案)
には、保険会社代理人として深くかかわっており、捜査当局としては刑事事件として立
件できないケースにつき、調査機関との共同体制により契約者の関与した放火の疑いの
あることを立証し、勝訴に導いたケースは少なからず存する。
また、刑事事件としては、最近においてはゼネコンによる競売入札妨害、贈収賄事件
等の公判活動のほか、牛乳による中毒事件について、関与者を不起訴に導き、大手石油
会社の石油タンク解体時の墜落死亡事件について、関与者を不起訴に導くなどに関与し
ている。
Ⅰ−2 最近5年間(2001 年 4 月∼2006 年 3 月)の研究成果
(1)公表された著作
な
し
(2)学会報告・講演等
な
し
(3)共同プロジェクトへの参加(国内研究プロジェクト、国際学会、研究集会等)
国連の組織である国連アジア極東犯罪防止研修所(府中に所在)の事業を支援す
るアジア刑政財団大阪支部を、平成7年7月に、元大阪市長大島靖氏や関西電力首
脳部らと立ち上げ、フィジーなどの太平洋島嶼国家との友好協定を結んで、刑事司
法分野における援助活動を行うほか、上記研修所に集まるアジア各国の刑事司法の
担当者による汚職防止などの会議に際し、研修生と司法修習生や関西の刑事司法関
係者との懇談会を催すなどしている。
平成15年10月6日には、オーストラリア・メルボルン市で開催された、米・
加・豪によるクライムストッパーズ国際会議(犯罪防止を警察とメディアと市民の
相互協力により行い、犯罪抑止に貢献している団体の国際会議)に大阪市からの要
70
請でアジア刑政財団大阪支部の代表として出席し、我が国の犯罪防止についてプレ
ゼンテーションを行う。
Ⅱ
教育活動(最近2年間)
Ⅱ−1 法科大学院
平成16年4月∼平成18年1月
刑事訴訟法演習、刑事政策、経済犯罪
Ⅱ−2 法学部
平成16年4月∼平成17年2月
刑事訴訟法
Ⅱ−3 その他
な
Ⅲ
し
学外活動(最近2年間)
Ⅲ−1 他大学非常勤講師・兼任教授等
な
し
Ⅲ−2 各種学外委員
な
し
Ⅲ−3 所属学会及び学会役員等
な
し
Ⅲ−4 受賞の状況
な
Ⅳ
し
今後の研究計画と展望
刑事司法の運用と犯罪防止をテーマとし、刑事司法担当者のみならず、国民参加によ
る犯罪防止方策を研究し、また、国際協力による犯罪防止にも努めたい。
71
中川 淳
<教授>
民法
NAKAGAWA Jun
Ⅰ
研究活動
Ⅰ−1 現在の研究テーマと最近の活動
研究テーマ: 家族法における 21 世紀の課題
Ⅰ−2 最近5年間(2001 年 4 月∼2006 年 3 月)の研究成果
(1)公表された著作
①
著
書
* 編著『現代女性と法』
世界思想社
* 編著『現代法学を学ぶ人のために』
* 編著『民法入門の入門Ⅰ(財産編)
』
* 単著『夫婦・親子関係の法理』
2002.5
2003.9
世界思想社
法律文化社
世界思想社
2004.7
2004.10
* 共編著『新版注釈民法(25)親権・後見・保佐及び補助・扶養』
(改訂版)
2004.12
有斐閣
* 共編著『はじめての民法』
②
論
法律文化社
2005.12
文
* 「昭和家族法と私(13−63)」 戸籍時報 526∼592 号
* 「家族関係と家事調停」ケース研究 268 号
2001.8
* 「養子死亡後の離縁」法令ニュース 649 号
2002.2
* 「扶養義務と子の大学学費負担」法令ニュース 651 号
* 「熟慮期間後の相続放棄」法令ニュース 653 号
2001.4∼2005.12
2002.4
2002.6
* 「遺留分」新版注釈民法(28)前注・民法 1028−1031 条執筆
2002.10
* 「日本における家族の現状と家族法の動向」龍谷大学国際社会文化研究所
紀要 5 号
2003.3
* 「日本家族法の歩んだ道−戦後の立法を中心に」立命館法学 292 号
2004.3
* 「自筆証書遺言の要件−日本最高裁判例の考察」亜細亜女性法学 7 号(韓
国)
2004.9
* 「親子関係の確定と家族法の理念」
(井上編『現代家族のアジェンダー親子
関係を考える』所収)2004.10
* 「婚姻外の関係と内縁保護」民事研修 586 号
72
2006.2
③
その他
* 判例研究「内縁の夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に民法
768 条の規定を類推適用することの可否」(平成 12 年 3 月 10 日最高裁判
例)判例評論 503 号
2001.1
* 判例研究「遺言の証人となることができない者が同席してされた公正証書
遺言の効力」
(平成 13 年 3 月 27 日最高裁判例)私法判例リマークス 24 号
2002.2
(2)学会報告・講演等
* 韓国家族法学会(ソウル)から招待され研究報告
テーマ「日本家族法の歩んだ道」2003.10.27
(3)共同プロジェクトへの参加(国内研究プロジェクト、国際学会、研究集会等)
な
Ⅱ
し
教育活動(最近2年間)
Ⅱ−1 法科大学院
* 平成 17 年度
近畿大学法科大学院「民法 F(家族法)」2 単位を担当。
Ⅱ−2 法学部
な
し
Ⅱ−3 その他
な
Ⅲ
し
学外活動(最近2年間)
Ⅲ−1 他大学非常勤講師・兼任教授等
*京都女子大学現代社会学部
家族法担当
Ⅲ−2 各種学外委員
*
京都府社会福祉審議会専門委員(継続)
*
弁護士(継続)
73
2004.4∼2005.7
Ⅲ−3 所属学会及び学会役員等
*
工業所有権法学会理事
*
日本法政学会名誉理事
*
国際家族法学会
*
家族(社会と法)学会
*
私法学会
Ⅲ−4 受賞の状況
な
Ⅳ
し
今後の研究計画と展望
21 世紀の課題として家族立法学を中心に研究する。
74
中島 健仁
<教授>
実務家
NAKASHIMA Kenji
Ⅰ
実務活動
Ⅰ−1 現在の実務テーマと最近の活動
・ 会社更生事件における更生管財人
・ 民事再生事件における再生手続申立代理人
・ 上場企業の社外取締役
・ 上場企業の非常勤監査役
・ 企業法務相談
・ 一般民事事件処理
Ⅰ−2 最近5年間(2001 年 4 月∼2006 年 3 月)の研究成果
(1)公表された著作
* 狙われる!個人情報・プライバシー―被害救済の法律と実務―(共著、民事法
研究会)
* 再生・再編事例集4「第三セクターの再生」(共著、商事法務)
* 普及仕儀の下での国際倒産の様相―各国手続きの調整とプロトコルの活用(共
著、社団法人国際商事仲裁協会)
* Q&A民事再生法の実務「担保権消滅請求の対象」(共著、新日本法規出版)
(2)学会報告・講演等
* 改正会社法∼どう変わる?敵対的買収の防衛策やM&A」
(近税正風会)
(3)共同プロジェクトへの参加(国内研究プロジェクト、国際学会、研究集会等)
* 経済産業省「事業再生に資する人材育成事業」プロジェクト
第三セクターの
事業再生ケース教材作
Ⅱ
教育活動(最近2年間)
Ⅱ−1 法科大学院
実務家専任教授として倒産処理法、国際倒産法、特別演習(企業活動におけるコン
プライアンス)の 3 科目を担当
75
Ⅱ−2 法学部
な
し
Ⅱ−3 その他
職業人紹介授業
Ⅲ
神戸商業高校、歌敷山中学校、太山寺中学校
学外活動(最近2年間)
Ⅲ−1 他大学非常勤講師・兼任教授等
な
し
Ⅲ−2 各種学外委員
な
し
Ⅲ−3 所属学会及び学会役員等
・ 事業再生実務家協会
・ 全国倒産弁護士ネットワーク(理事)
・ 環太平洋法律会協会
・ 国際倒産学会(International Insolvency Institute)
Ⅲ−4 受賞の状況
な
Ⅳ
し
今後の研究計画と展望
経済産業省委託事業として、地方自治体の再生ケーススタディー(米国カリフォルニ
ア州オレンジカウンティーの事例研究)
76
永井 博史
<教授>
民事訴訟法
NAGAI Hirofumi
Ⅰ
研究活動
Ⅰ−1 現在の研究テーマと最近の活動
研究テーマ: 民事訴訟における当事者の陳述の法的規整について(1.特に当事者聴
取と当事者尋問の峻別論の見直しや、2.陳述書の法的規整など)。
最近の活動:
法科大学院における授業を中心とした教育活動が大半を占める。
Ⅰ−2 最近5年間(2001 年 4 月∼2006 年 3 月)の研究成果
(1)公表された著作
①
著
書
* 石川
明編『「はじめて学ぶ法学<四訂版>」
(三嶺書房、2001 年 10 月)、
分担執筆(13-21、107-214、257-266、267-276 頁)
* 石川 明・三上威彦編『破産法・民事再生法』(青林書院、2003 年 6 月)、
分担執筆(203-238 頁)
* 石川
明=永井博史=皆川治廣編『プライマリー法学・憲法』(不磨書房、
2005 年 4 月)、編集および分担執筆(7-12、210-215 頁)
* 石川 明編『みぢかな民事訴訟法』(不磨書房、2005 年 5 月)、分担執筆
(179-199 頁)
②
論
文
* 「釈明処分における当事者聴取」(経営実務法研究 5 号 41-63 頁、2002 年
6 月)、単著
* 「当事者尋問および当事者聴取における自白の成否」
(近畿大学法科大学院
論集 2 号 65-103 頁、2006 年 3 月)、単著
③
その他
* 「除斥事由−前審への関与」(民事訴訟法判例百選<第三版>18-19 頁、
2003 年 12 月)、単著
* 「認知無効の訴えと認知の訴えの併合審理の可否」(判例リマークス 30
号 102-105 頁、2005 年 2 月)、単著
(2)学会報告・講演等
77
* 「釈明処分における当事者聴取」日本経営実務法学会
2002 年 7 月 28 日
(3)共同プロジェクトへの参加(国内研究プロジェクト、国際学会、研究集会等)
* 「民事訴訟実態調査」(科研費補助・<代表>竹下守夫):調査のための研
究会一員として、平成 17 年度大阪地裁における訴訟の実態調査に参加
Ⅱ
教育活動(最近2年間)
Ⅱ−1 法科大学院
「民事訴訟法A(基礎)
」
(2 単位)と「特別演習(民事執行・保全)」
(2 単位)を担当。
①
「民事訴訟法A(基礎)」は、1年次生に対する授業で、いわゆる完全未修者と
実質既修者が受講生として混在している。そこで、受講生の理解度のレベルの差
が大きいことに最も苦慮している。
このことに関する対策として、完全未修者のための補講を毎学期5∼6コマ(90
分)行っている。
②
「特別演習(民事執行・保全)」では、判例・事例中心の双方向授業に加えて、
複雑な手続の説明もある程度丁寧にするように務めている。民事執行・保全の手
続の複雑さと、それに伴う教科書・基本書の難解さ(とっつきにくさ)に対処す
るためである。そうすると、いきおい授業においては、伝達可能な情報量がオー
バーする傾向にある。その結果、早口になったり、学生が十分に消化できない間
に次の問題に移るなどの弊害が生じている。
今後は、個々の手続の説明といった情報は、必要最小限のものに留めるよう決
断するしかないと考える。
Ⅱ−2 法学部
「民事執行法」(4 単位)
、「研究演習Ⅰ」(平成 17 年のみ)、「研究演習Ⅱ」を担当。
①
「民事執行法」は、大教室(約 150 人)の授業である。手続が難解でとっつき
にくいので、毎回、極めて簡単な事例問題をもとに授業を組み立てている。また、
受講生はかなり多いが、可能な限りで双方向の授業を試みている。さらに、学生
の理解を容易にするため、毎回B4判 1 枚から2枚のレジメを配布している。
双方向授業の試みによって、教室内の学生 20∼30 人は目の輝きを以前より増し
たような印象を受ける。少しは効果があるものと思われる。しかし、まだ大半の
学生は授業に対して消極的な姿勢に終始しており、教員が質問をするも、他人事
のように「沈黙」するか「分かりません」と答えるのみである。学生の予習を容
易にする教材の開発・作成や成績評価に平常点を加味するなどの工夫を必要とす
るであろう。
78
②
「研究演習Ⅰ、Ⅱ」では、判例研究を主たる課題としながら、学生の基調報告
とそれに続く質疑応答形式で進めている。しかし、来年度からは、研究演習を担
当しない。
Ⅱ−3 その他
な
Ⅲ
し
学外活動(最近2年間)
Ⅲ−1 他大学非常勤講師・兼任教授等
な
し
Ⅲ−2 各種学外委員
* 東大阪市公害審査会委員 (1996 年 8 月∼現在)
*
東大阪市感染症診査協議会委員(2001 年 4 月∼現在)
Ⅲ−3 所属学会及び学会役員等
*
民事訴訟法学会、私法学会、比較法学会、日本経営実務法学会
Ⅲ−4 受賞の状況
な
Ⅳ
し
今後の研究計画と展望
同一の当事者の陳述でありながら、
「口頭弁論」における主張や陳述、釈明処分として
の「当事者聴取」における陳述、および証拠調べとしての「当事者尋問」における供述
と、これら当事者の陳述は完全に区別され、訴訟における意味・評価を異にする。この
ように考えるのが、現在の確固たる学説および実務である。しかし、こうした「弁論と
証拠の峻別論」に対して疑念を表明し、特に「当事者聴取」と「当事者尋問」の関係を
改めて問い直したい。
これまで、「弁論」と「証拠」の峻別がいささかでも緩和されるべきことを、以下の二
つの問題において提言した。すなわち、当事者聴取にも緩やかな意味ではあるが「証拠
機能」を認めるべきこと、また、「弁論」における当事者の陳述だけではなく、「証拠」
としての当事者の陳述にも(準)自白が成立する可能性を認めることがそれである。
今後は、抜本的かつ体系的な研究として、ドイツ法における当事者聴取と当事者尋問
の手続を比較する中で、日本における両者の法的規整を検討したい。さしあたり、今年
79
度はドイツとの比較法を中心にした研究を進めていくつもりである。
さらに将来的には、日本では明文規定がないにもかかわらず実務では一般的に利用さ
れている「陳述書」(特に当事者による陳述書)の機能を探り、その法的な規整を検討し
たい。ある意味で、この陳述書(その法的性質が一義的でないのは極めて日本的である
と評してよかろう)は、当事者聴取の代替的な機能を果たしていると思われるからであ
る。この陳述書は法的な基礎付けを有さない制度であるからこそ、その法的規整は急務
の課題であると言えよう。
80
藤田 勝利
<教授>
商法
FUJITA Katsutoshi
Ⅰ
研究活動
Ⅰ−1 現在の研究テーマと最近の活動
① 現在の研究テーマ:(ア)航空運送法の研究および(イ)新・会社法の研究
②
(ア)については、航空運送法委員会や日本空法学会に報告を含め積極的に参
加しながらテキスト(編著)や文献目録(編集代表)の出版だけでなく、40年
の研究成果をまとめる研究論文(単著)の出版を準備中である。
(イ)については、3月末刊行予定のテキスト(編著)のほか、代表を務める
関西企業法研究会を3月27日・28日に福岡大学担当で開催し、新・会社法の
シンポジウムの企画をしている。毎月第4土曜日に開催している関西商事法研究
会の常任幹事として学者・実務家との共同研究、大阪弁護士会の会社法実務研究
会の顧問、および中国人留学生との日中比較企業法務研究会を主催するなどの研
究会活動に従事している。
Ⅰ−2 最近5年間(2001 年 4 月∼2006 年 3 月)の研究成果
(1)公表された著作
①
著
書
* 『プライマリー会社法』(古瀬村邦夫・北村雅史との共編著)2002.11, 法
律文化社
* 『プライマリー会社法(補訂版)』(古瀬村邦夫・北村雅史との共編著)
2004.04, 法律文化社
* 『プライマリー商法総則・商行為法』(北村雅史との共編著)2004.04, 法
律文化社
* 『航空宇宙法の新展開』関口雅夫教授追悼論文集(工藤聡一との共編著)
2005.03, 八千代出版
②
論
文
* 「日本の航空法における若干の法的側面―モントリオール条約の成立を契
機としてー」
(韓国語)2001.04, 韓国航空宇宙法学会誌 13 号(325 頁∼340
頁)
* 「1999 年モントリオール条約について」 2001.05, 空法 42 号(1頁∼19
頁)
81
* 「国際航空機事故補償制度の新展開―1999年モントリオール条約の成
立 と 裁 判 実 務 の 最 近 の 動 向 」『 現 代 企 業 法 の 新 展 開 』( 小 島 康 裕
教授退官記念)2001, 信山社(423 頁∼459 頁)
* “A New Trend Towards the Compensation System for International
Air Carrier Accidents;the Establishment of the Montreal Convention
of 1999 and Recent
Airlines Cases in Japan” 2002, The Japanese
Annual of International Law,No.44(2001)
pp.86~111
* 「金融ビッグバンの進展と個人投資家の保護―金融商品販売法の施行を契
機としてー」2002.12, 証券研究年報 16 号 41 頁∼56 頁
* “ Rechtliche
Probleme
des
digitalen
Handels
in
Japan
”
2002,Rechtsfragen des Internet und der Informationsgesellshaft,
herausgaben von Dieter Leiport,C.F.Muller(pp.141~153)
* 「日本における電子商取引の法的諸問題―会社法務の電子化を中心にー」
2002.12, 『インターネット・情報社会と法―日独シンポジウムー』信山社
(273 頁∼292 頁)
* 「米国型のコーポレート・ガバナンス(企業統治)と日本の公開株式会社
の選択」2003.11, 『最新
会社法をめぐる理論と実務』新日本法規(172
頁∼189 頁)
* 「日本における海商法判例の最近の動向とジャスミン号事件・最高裁判決
の波紋」2004.03, 近畿大学法学 51 巻 3・4 号(1 頁∼22 頁)
* “ On the Dramatic Decision of December 26,2003 by the Nagoya
District Court in
Japan -In re China Airlines Disaster of April
24,1994-” June 2004,Proceedings of the International Symposiumu on
Advancement of Aerospace Education and Collaborative Research in
the 21st Century(pp. 389-402).
* 「2003 年 12 月 26 日名古屋地裁・中華航空機事故訴訟判決によせて」
2005.03, 『航空宇宙法の新展開』八千代出版(323 頁∼382 頁)
③
その他
* 「企業防衛のための自己株式の許否」・「帳簿閲覧権の対象である「会計ノ
帳簿及書類」の範囲」 2002.02, 『平成会社判例 175 集』商事法務 40 頁・
41 頁、364 頁・365 頁
* 「ワルソー条約 22 条 2 項の適用範囲」2002.10, 別冊ジュリスト商法総則・
商行為)判例百選(第四版)200 頁・201 頁
* 「大韓航空機墜落事件と航空運送人の責任」 2003.03, 『現代ビジネス判
例』法律文化社(287 頁∼298 頁)
82
* 「保険契約者兼保険金受取人が会社である生命保険契約において当該取締
役による被保険者故殺があった場合に保険者が免責されないとされた事
例」2004, 私法判例リマークス(’04 上)114 頁∼117 頁
* 「人的抗弁切断後の手形取得」2004.10, 別冊ジュリスト手形小切手判例百
選(第六版)60 頁、61 頁
* 公開シンポジウム「国境を越える生殖医療と法」報告 2004.12.24, 日本学
術会議第 2 部
ニューズレター第 19 期第 6 号
* 「受託手荷物の延着による航空運送人の責任」平成 17 年私法判例リマー
クス 31 号 82 頁∼85 頁
* 「温泉ブームと温泉騒動で思うこと」 2005.07, 学術の動向
オアシス 47
頁
* 『国際関係法辞典』(第2版)2005.09, 三省堂「グアテマラ議定書」194
頁、「国際航空運送に関するモントリオール条約」277,278 頁、「国際航空
運送に関するワルソー条約」278,279 頁、「ハーグ改正条約」709 頁、
「モ
ントリオール協定」845 頁、
「モントリオール第三追加議定書」845,846 頁、
「モントリオール第四議定書」846 頁
(2)学会報告・講演等
* フライブルグ大学における「法と情報社会」に関する日独法学シンポジウ
ムで報告(ドイツ語) 2001.09
* 韓国釜山大学校で日本の金融商品販売法に関する講演 2001.12
* 韓国釜山大学校で日本の電子商取引の法的諸問題に関する講演 2002.05
* 中国・上海財経大学法学院で日本の金融ビッグバンと個人投資家の保護に
関する講演 2002.09
* 韓国釜山大学校における韓国海上保険法学会主催の日韓海上保険研究会で
「日本における海上保険判例の最近の動向」の報告) 2003.09
* 中国・上海財経大学法学院で「米国型のコーポレート・ガバナンス(企業
統治)と日本の公開株式会社の選択」の講演 2003.11
* 「上海クラブ発足記念シンポジウム
のチャンスを探る」講演
中国ビジネス成功の秘訣―これから
大阪・クリスタルタワー 2004.05
* 韓 国 航 空 大 学 校 に お け る 航 空 宇 宙 に 関 す る シ ン ポ ジ ウ ム で "On the
Dramatic
Court in
Decision of December 26,2003 by the Nagoya District
Japan -In re China Airlines Disaster of April 24, 1994-"
と
いうテーマの講演(英語) 2004.06
* 中国・上海財経大学法学院で「日本におけるマネーロンダリング対策とそ
の取組」について講演 2004.11
83
(3)共同プロジェクトへの参加(国内研究プロジェクト、国際学会、研究集会等)
* カナダ・マギル大学航空宇宙法研究所創立50周年記念国際会議に参加
2002.04
* 日本学術会議主催の公開シンポジウム「国境を越える生殖医療と法」を企
画し、コーデイネーターをする。2004.12
* 温泉学会第6回全国大会の実行委員長として「地域力としての温泉パワー」
のシンポジウムを企画し、コーデイネーターを務める。2006.03
* 福岡大学で関西企業法研究会代表として「新会社法を巡る諸問題」のシン
ポジウムを企画し実施する。2006.03
Ⅱ
教育活動(最近2年間)
Ⅱ−1 法科大学院
* 平成 16 年度:商法A(商法総論・会社法総論)
、商法演習A(商取引法)
の 6 単位
* 平成 17 年度:商法A(新・会社法)、商法演習A(商取引法)、会社法特別
演習、リーガルクリニックの 14 単位分担当
Ⅱ−2 法学部
* 平成 16 年度:商法演習(会社法)、大学院―商法特論Ⅰ(会社法研究)の
8 単位
* 平成 17 年度:商法Ⅱ(会社法)、大学院―商法特論Ⅰ(会社法研究)の 8
単位担当
Ⅱ−3 その他
* 平成 17 年 3 月に法科大学院1年生対象の春休み合宿で5コマ分の事例研究
を実施
Ⅲ
学外活動(最近2年間)
Ⅲ−1 他大学非常勤講師・兼任教授等
な
し
Ⅲ−2 各種学外委員
* 平成 17 年 9 月まで日本学術会議第2部会員(第 19 期)
84
* 航空運送法委員会委員
* 平成 16 年 7 月より日本法律家協会会員
Ⅲ−3 所属学会及び学会役員等
* 所属学会:日本私法学会、日本空法学会、日本海法学会、経済法学会、比
較法学会、日独法学会、日本保険学会,
国際法協会(International Law
Association in London),韓国航空宇宙法学会(in Seoul)、温泉学会
* 学会役員:日本空法学会、日本海法学会および温泉学会の理事
Ⅲ−4 受賞の状況
な
Ⅳ
し
今後の研究計画と展望
平成 18 年 3 月末刊行予定の3冊のテキスト(会社法、商法総則・商行為法および航空
法)が完成次第、40 年の研究成果をまとめる航空賠償責任法の研究(仮題)の刊行と準
備中の航空・宇宙法の文献目録の編纂ならびに日・中・韓の比較会社法の共同研究を行
い、いずれも2年内に刊行する予定である。
85
山本 正樹
<教授>
刑事訴訟法
YAMAMOTO Masaki
Ⅰ
研究活動
Ⅰ−1 現在の研究テーマと最近の活動
現在の研究テーマは,適正手続主義を基軸とした刑事訴訟法の体系化である。適正手
続が阻害された刑事裁判は,誤判という形で現われる。そこで,再審の問題に取り組ん
だ。また,適正手続主義が刑事手続において維持されているかどうかを検証するために,
弁護権の実質的・実効的保障の問題,とりわけ接見交通の問題に取り組んだ。刑法各論
については,興味ある問題について取り組んだ。
Ⅰ−2 最近5年間(2001 年 4 月∼2006 年 3 月)の研究成果
(1)公表された著作
①
著
書
* 執筆分担,「第 1 編第 9 章
当番弁護士制度」庭山英雄・岡部泰昌編・刑
事訴訟法〔新版〕青林書院刊(2002.01)
②
論
文
* 「拘置所接見の機会と時間についての考察」季刊刑事弁護 26 号(2001.04)
* 「逮捕前置主義の意義」刑事訴訟法の争点〔第 3 版〕(2002.04)
* 「接見交通権の保障について−平成 11 年最高裁判決を契機に−」近畿大学
法学 50 巻 2・3 号(2003.01)
* 「放火罪に関する一考察」近畿大学法学 53 巻 3・4 号(2006.03)
③
その他
* 資料:三井誠ほか編・刑事法辞典(10 項目担当)信山社刊(2003.03)
(2)学会報告・講演等
な
し
(3)共同プロジェクトへの参加(国内研究プロジェクト、国際学会、研究集会等)
な
Ⅱ
し
教育活動(最近2年間)
86
Ⅱ−1 法科大学院
「刑事訴訟法」(1 学年配当;半期開講科目・2 単位)
Ⅱ−2 法学部
「刑事訴訟法」(法学部法律学科 3・4 学年配当;通年開講科目・4 単位)
「刑事法研究演習Ⅰ」(法学部 3 学年配当;通年開講科目・4 単位)
「刑事法研究演習Ⅱ」(法学部 4 学年配当;通年開講科目・4 単位)
Ⅱ−3 その他
な
Ⅲ
し
学外活動(最近2年間)
Ⅲ−1 他大学非常勤講師・兼任教授等
な
し
Ⅲ−2 各種学外委員
な
し
Ⅲ−3 所属学会及び学会役員等
な
し
Ⅲ−4 受賞の状況
な
Ⅳ
し
今後の研究計画と展望
適正手続主義の中心部分に位置する黙秘権の実効的保障を刑事手続においていかに果
たすかという問題に取り組んでいる。具体的な成果は未だないが,その歴史的な意義・
内容・展開を研究中であり,その一端は本年中に発表する予定である。
刑法各論,少年法についても,さらに問題意識を深めていきたいと考えている。
87
浅野 有紀
<助教授>
法哲学
ASANO Yuki
Ⅰ
研究活動
Ⅰ−1 現在の研究テーマと最近の活動
現在の研究テーマは権利論と秩序論である。法において社会秩序が重視されるとき、
個人主義に立脚する権利の意義はどのようにして説明できるのか。この問題を考察する
ために、最近では契約制度における権利論や自由意思論、知的財産権論、取引的不法行
為における自己決定権論などをとりあげて研究活動を行っている。
Ⅰ−2 最近5年間(2001 年 4 月∼2006 年 3 月)の研究成果
(1)公表された著作
①
著
書
* 『法と社会的権力』(岩波書店、2002 年)単著
* 『政策学的思考とは何か』
「政策としての結社の自由」
(ケイソウ書房、2005
年)共著
②
論
文
* 「契約の自由と結社の自由」『法哲学年報 2001』131−138 頁(有斐閣、2002
年)
* 浅野有紀=横溝大「抵触法における権利と政策一アメリカ抵触法革命に対
する批判の我が国への示唆」金沢法学45巻1号、91−144 頁(2002 年)
* 浅野有紀=横溝大「抵触法におけるリアリズムの意義と限界」金沢法学4
5巻2号、247−310 頁(2003 年)
* 「最高裁判例にみる『裁判を受ける権利』」法律時報7月号、33−40 頁
(2003 年)
* 「過失相殺法理の継受における日本的特殊性」
(21 世紀 COE プログラム
「21 世紀型法秩序形成プログラム」
)日韓国際シンポジウム『西欧型国家
体制とアジアの近代化』―報告書−199−207 頁(京都大学大学院法学研究
科、2004 年 3 月)
* 「契約の自由と国家」近畿大学法科大学院論集創刊号、135−180(2005
年)
* 「リバタリアニズムと契約の自由」
『法哲学会年報2004』105−111(有
斐閣、2005 年)
88
* 「法における権利保護の意義と限界」法の理論、21−45(成文堂、2005
年)
③
その他
な
し
(2)学会報告・講演等
* 京都大学 COE 企画日韓国際シンポジウム『西欧型国家体制とアジアの近
代化』「過失相殺法理の継受における日本的特性」(2004 年 2 月 21 日)
* 法哲学会統一テーマ『リバタリアニズムと法理論』シンポジウムにおける
コメント「リバタリアンと交換的正義」(2004 年 11 月 14 日)
* 法理学研究会一月例会報告「契約の自由と国家」(2005 年 1 月 22 日)
(3)共同プロジェクトへの参加(国内研究プロジェクト、国際学会、研究集会等)
な
Ⅱ
し
教育活動(最近2年間)
Ⅱ−1 法科大学院
2・3年生向けに「法理学」と「不法行為法の法哲学的検討」の二科目を各2単位
で開講。前者においては契約法・不法行為法・国際私法における正義論や権利論をと
りあげている。後者においては差止と損害賠償における絶対権理論や利益衡量論など
の基礎理論と戦争責任論をとりあげている。
Ⅱ−2 法学部
3・4年生向けに「法理学」を昼夜各四単位で開講。自然法論と法実証主義の対立
を基本軸に、19 世紀から 20 世紀にかけての英米・ドイツの法哲学の発展を論じている。
Ⅱ−3 その他
な
Ⅲ
し
学外活動(最近2年間)
Ⅲ−1 他大学非常勤講師・兼任教授等
法理学集中講義(金沢大学、平成 16 年度)
Ⅲ−2 各種学外委員
89
長浜市情報公開審査会・個人情報保護審査会委員
Ⅲ−3 所属学会及び学会役員等
日本法哲学会、法社会学会、日本公共政策学会
Ⅲ−4 受賞の状況
な
Ⅳ
し
今後の研究計画と展望
自己決定権に関する論文を完成・公表し、そこで残された課題である私法における秩
序論の諸相を研究する。
90
下村 信江
<助教授>
民法
SHIMOMURA Toshie
Ⅰ
研究活動
Ⅰ−1 現在の研究テーマと最近の活動
民法の規定する典型担保物権の特質の解明とそれが具体的事案における処理準則にど
のような影響を及ぼすかが、大阪大学大学院法学研究科入学以来の研究テーマであり、
現在もそれを継続している。具体的には、これまで、抵当権の物上代位、先取特権の特
質について検討してきたので、現在は、質権の要物契約性を検討している。
また、近年は、民事責任にも関心があり、特に、不法行為法の拡張が顕著であるとこ
ろから、その拡張の限界を確定できないか、フランス法上の不法行為制度について研究
している。
Ⅰ−2 最近5年間(2001 年 4 月∼2006 年 3 月)の研究成果
(1)公表された著作
①
著
書
な
②
論
し
文
* 「フランスにおける affectation の一側面(1)―物的担保の物上代位との
関連において―」
2001.11
NBL725 号
53-58 頁
* 「賃料債権への物上代位と将来の賃料の一括的譲渡」
法学の理論と実務の交錯
2001.12
現代民
37-59 頁
* 「フランスにおける動物保管者の責任」
2002.3
民法学の軌跡と展望
33-62 頁
* 「フランスにおける affectation の一側面(2)―物的担保の物上代位との
関連において―」
2002.8
NBL743 号
54-63 頁
* 「フランスにおける affectation の一側面(3)―物的担保の物上代位との
関連において―」
2002.9
NBL745 号
44-52 頁
* 「フランスにおける動産質(1)」 2005.3 近畿大学法科大学院論集創刊
号
181-194 頁
* 「フランス法における建造物責任の機能に関する一考察」 2005.11
法学 55 巻 3・4 号
③
1063-1084 頁
その他
91
阪大
* 「売買的色彩が強い製作物供給契約における製作物供給者が、相手方の元
発注者に対する代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権
2001.7 判例タイムズ 1059 号
を行使することができるとされた事例」
35-41 頁
* 「ベイシック法学用語辞典」
2001.10
有斐閣
12 項目担当。編集代表
國井和郎、三井誠
* 「賃料債権に対する抵当権者の物上代位権行使と賃借人による相殺―平成
13 年 3 月 13 日最高裁第三小法廷判決―」
2002.1 阪大法学 51 巻 5 号
997-1022 頁
* 「製作物供給契約と動産売買先取特権に基づく物上代位」
判例リマークス 24 号
2002.2 私法
26-29 頁
* 「ジュヌヴィエーヴ・ヴィネ『過失責任原則の妥当性』」 2002.3
の軌跡と展望
3-31 頁(翻訳)
* 「民法Ⅲ【債権総論】」
2002.4 青林書院
* 「今期の主な裁判例(民法判例レビュー76
ムズ 1084 号
民法学
担当部分
担保)」
139-169 頁
2002.5
判例タイ
55-58 頁
* 「根抵当権設定の当初から金銭消費貸借契約がなかった事案につき、民法
398 条ノ 20 第一項第一号による根抵当権の担保すべき元本の確定を認め
2002.5
た事例」
判例タイムズ 1084 号
58-62 頁
* 「賃料債権に対する抵当権者の物上代位による差押えと当該債権への敷金
2002.10
の充当」
法学教室 265 号
140-141 頁
* 「賃料債権に対する抵当権者の物上代位差押と敷金の充当」
法判例リマークス 26 号
2003.5 民商法雑誌
253-260 頁
* 「今期の主な裁判例(民法判例レビュー
1136 号
私
22-25 頁
* 「契約の性質が譲渡担保契約であるとされた事例」
128 巻 2 号
H15.2
担保)
」 2004.2 判例タイムズ
73-76 頁
* 「破産終結決定がされて法人格が消滅した会社を主債務者とする保証人が
主債務の消滅時効を援用することの可否」
号
2004.2
判例タイムズ 1136
88-91 頁
* 「建築士法等による規制の実効性を失わせた建築士の行為と不法行為」
2005.2
私法判例リマークス 30 号
54-57 頁
* 「動産売買先取特権者の物上代位権行使と目的債権の譲渡」
例タイムズ 1197 号
89-93 頁
(2)学会報告・講演等
92
2006.2
判
* 平成 15 年度「日本の担保制度について」
(法務総合研究所国際協力部
第
21 回ベトナム法整備支援研修)
* 平成 16 年度「担保・執行法改正について」(大阪国税局職員研修)
* 平成 17 年度「平成 16 年民法改正について」(大阪国税局職員研修)
(3)共同プロジェクトへの参加(国内研究プロジェクト、国際学会、研究集会等)
* 民法判例研究会
* 京都大学民法研究会
Ⅱ
教育活動(最近2年間)
Ⅱ−1 法科大学院
* 平成 16 年度:「民法演習B(事例演習)」「民法B」「民法D」担当
* 平成 17 年度:「民法演習A(判例演習)」「民法演習B(事例演習)」「民法
B」「民法D」「リーガルクリニック」担当
Ⅱ−2 法学部
な
し
Ⅱ−3 その他
な
Ⅲ
し
学外活動(最近2年間)
Ⅲ−1 他大学非常勤講師・兼任教授等
*
平成 16 年度
大阪税務大学校
「民法演習」担当
Ⅲ−2 各種学外委員
な
し
Ⅲ−3 所属学会及び学会役員等
*
日本私法学会、比較法学会、金融法学会、日仏法学会
Ⅲ−4 受賞の状況
な
Ⅳ
し
今後の研究計画と展望
93
現在、質権制度に関する研究の途中であるので、これを継続し、わが民法の中でも比
較的利用されることの多いと言われる債権質の特質を明らかにし、その特殊性に由来す
る問題点を析出し、平成 15 年の担保法改正後も未解決のまま残されている問題として、
考察する予定である。また、留置権および先取特権に関する公刊裁判例の分析を行い、
これらの担保権の機能と問題点を抽出し、各種典型担保物権の存在意義を確認し、これ
らと非典型担保との関係を吟味し、非典型担保に関する規範定立を試みていきたい。か
かる作業の過程においては、改正破産法や執行法からの視点も重要であろうと考えてい
る。
また、これまで、比較法の対象素材としてきたフランス民法典の改正作業が進んでい
ることから、改正草案等を検討し、わが法に対する示唆の有無を検討したいと考えてい
る。
さらに、民事責任についても、消費者保護の場面などに限定するなどして、民事責任
のあり方につき掘り下げて検討し、また、他方、各種特殊的不法行為制度に関する比較
法的検討を継続していきたい。
94
周田 憲二
<助教授>
商法
SUDA Kenji
Ⅰ
研究活動
Ⅰ−1 現在の研究テーマと最近の活動
Ⅰ−2 最近5年間(2001 年 4 月∼2006 年 3 月)の研究成果
(1)公表された著作
①
著
書
* 蓮井良憲・平田伊和男編『新現代商法入門』(法律文化社、2001/3/10)共
同執筆による商法の教科書。91-101 頁の資金調達の項を執筆。(共著者)
蓮井良憲・西山芳喜・松村寛治・松本博・城戸善和・末永敏和・藤井俊雄・
内海淳一・板倉大治・畠田公明・平田伊和男・田邊宏康・吉村信明・片木
晴彦・藤川研策。
* 蓮井良憲・平田伊和男編『新現代商法入門〔第2版〕』 (法律文化社、
2003/2/20)共同執筆による商法の教科書。94-104 頁の資金調達の項を執
筆。
(共著者)蓮井良憲・西山芳喜・松本博・城戸善和・末永敏和・藤井俊
雄・内海淳一・板倉大治・畠田公明・平田伊和男・田邊宏康・吉村信明・
片木晴彦・藤川研策。
* 蓮井良憲・西山芳喜編『入門講義会社法』(法律文化社、2004/6/20)共同
執筆による会社法の教科書。116−126 頁の監査役・会計監査人・検査役の
項を執筆。
(共著者)蓮井良憲・石田眞得・芳賀良・徳本穫・笠原武朗・楠
本純一郎・西山芳喜・畠田公明・久保寛展・藤川研策・品谷篤哉・田中慎
一
* 山下眞弘・三木義一編『税法と会社法の連携』
(税務経理協会、2003/8/10)
259−275 頁「会社分割、営業譲渡」
* 山下眞弘・三木義一編『税法と会社法の連携(増補改訂版)』(税務経理協
会、2003/8/10)267−283 頁「会社分割、営業譲渡」
②
論
文
* 「ドイツにおける分社について」島大法学 45 巻 1 号 45-74 頁 2001/5/31
* 「ドイツにおける子会社株式譲渡」島大法学 45 巻 4 号 271-291 頁
2002/3/20
95
* 「ドイツにおけるコンツェルン合併」島大法学 46 巻 1 号 1−27頁
2002/5/31
③
その他
な
し
(2)学会報告・講演等
な
し
(3)共同プロジェクトへの参加(国内研究プロジェクト、国際学会、研究集会等)
な
Ⅱ
し
教育活動(最近2年間)
Ⅱ−1 法科大学院
商法B、商法演習B、閉鎖会社法を担当した。
Ⅱ−2 法学部
商法Ⅰ、商法総則・商行為法を担当した。
Ⅱ−3 その他
な
Ⅲ
し
学外活動(最近2年間)
Ⅲ−1 他大学非常勤講師・兼任教授等
*
島根大学法文学部非常勤講師(平成16年度、17年度)
Ⅲ−2 各種学外委員
な
し
Ⅲ−3 所属学会及び学会役員等
*
日本私法学会
Ⅲ−4 受賞の状況
な
し
96
Ⅳ
今後の研究計画と展望
組織再編法については引き続き研究を継続するほか、それ以外の商事法の研究を行う
予定である。組織再編法については、会社法制定に伴う再検討を行い従来の研究成果を
発表することができることと思われるほか、会社法制定に伴う教科書その他の特集文献
の原稿を執筆中であり、近く公刊される予定である。
97
松本 哲治
<助教授>
憲法
MATSUMOTO Tetsuji
Ⅰ
研究活動
Ⅰ−1 現在の研究テーマと最近の活動
これまで経済的自由権、自己決定権の分野について、論文を公表し、判例評釈等を公
表してきており、このところは法科大学院用のケースブックの作成や学生用の判例解説
集の分担執筆に際して、両分野に加えて、プライバシー、表現の自由、租税法律主義に
関連する項目を担当しており、関連した研究を深めている。
また、法科大学院で事実上公法総合として位置づけられている憲法演習Bを担当して
いることから、行政事件訴訟法、民事訴訟法についても若干の研究を進めつつある。
Ⅰ−2 最近5年間(2001 年 4 月∼2006 年 3 月)の研究成果
(1)公表された著作
①
②
著
書
* 共著 憲法
Cases and Materials 人権
【展開編】 (2005 年、有斐閣)
* 共著 憲法
Cases and Materials 人権
【基礎編】 (同上)
論
文
な
③
し
その他
* 項目分担執筆
* 判例評釈
コンサイス法律学用語辞典(2003 年、三省堂)
「上場会社等の役員・主要株主の短期売買差益返還規定の合憲
性」(2003 年)法学教室 270 号別冊付録判例セレクト 2002
9頁
(2)学会報告・講演等
な
し
(3)共同プロジェクトへの参加(国内研究プロジェクト、国際学会、研究集会等)
な
Ⅱ
し
教育活動(最近2年間)
98
Ⅱ−1 法科大学院
2004 年度、2005 年度ともに 1 年生配当の憲法B(基本的人権の基礎)と 2 年生配
当の憲法演習B(憲法訴訟)を担当した。
2004 年度の憲法Bでは、自ら分担執筆して刊行準備中であった(2005 年度に刊行さ
れた)ケースブックの人権の基礎編のプリント版を用いて、ソクラティック・メソッ
ドで、①幸福追求権、②法の下の平等、③思想・良心・学問の自由、④信教の自由と
政教分離、⑤表現の自由の優越的地位、⑥検閲と事前抑制の禁止、⑦表現の自由の内
容中立的規制、⑧職業選択の自由、⑨財産権、⑩健康で文化的な最低限度の生活、⑪
教育を受ける権利、⑫労働基本権、⑬人身の自由の保障と適正な刑事手続、⑭基本的
人権の享有主体、⑮基本的人権の妥当範囲の予定で取り上げた。ただし⑬については
省略した。
2004 年度の憲法演習Bでは、事実上公法総合科目として、狭義の憲法訴訟論だけで
はなく、行政事件訴訟法、ひろくは民事訴訟法の理解とも関連づけた理解を促すよう
配慮した授業を行った。予定では、①事件性の要件(1)争訟の具体性、②事件性の
要件(2)公権力性 事件性の要件、③主観的利益性、④客観訴訟、⑤憲法判例、⑥「部
分社会」論、⑦宗教団体と司法権、⑧裁判の公開、⑨統治行為論、⑩立法不存在の違
憲審査、⑪国家賠償と損失補償、⑫憲法上の争点を提起する当事者適格、⑬憲法判断
回避の準則・合憲限定解釈、⑭憲法判断の方法と効力、⑮実効的権利救済を取り上げ
るはずであったが、既修者のみのクラスで、統治機構の授業を実施していないことも
あり、冒頭に憲法Aの冒頭に相当する司法権論をとりあげたこともあり、⑫以下は自
学自習に委ねることとなった。教材としては、やはり分担執筆中であったケースブッ
ク(2006 年度に刊行予定)のプリント版を用いつつ、欠落も多かったので、自ら判例
の抜粋や質問表を作成して利用した。
なお、2004 年度は佐藤教授の憲法Aおよび憲法演習Aにも参加した。
2005 年度の憲法Bでは予定のすべてのテーマを取り上げた。ケースブックの刊行は、
前期の授業終了後となったが、2004 年度よりは優れた教材を用いることができた。
2005 年度の憲法演習Bでは、憲法Aについての補習はカットし、予定の内、⑫-⑭を
除くすべてのテーマを取りあつかった。この年度はとくに改正行政事件訴訟法が施行
されたので、同法の分析に相当の時間を費やした。
なお、2005 年度も同教授の憲法演習Aについて、共同担当の形態で参加した。
また、2005 年度については演習科目は 2 クラス編成として実施している。
以上の授業科目いずれについても、定期試験については即日ないしは翌日採点を実
施し、正式の結果通知の前に院生に結果(とくに再試験該当)を通知する便宜を図る
とともに、毎回丸 1 日近くを費やして、希望する院生すべてに個別の答案の復習指導
を実施した。
以上の正規の授業科目の他、基礎知識補強講座に関し、実施システムについて法科
99
大学院等専門職大学院形成支援費の獲得を責任者として実現するともに、導入後のシ
ステム管理の担当者を勤め、憲法関係の出題を担当した。
Ⅱ−2 法学部
2004 年度は憲法Ⅰ(統治機構)、2005 年度は憲法Ⅱ(基本的人権)を担当した。
いずれの場合もB4判 1 枚程度(最大 4 枚)のレジュメを配布して授業を行った。
とくに新法と新判例の紹介にスペースを要した。授業構成はいずれも標準的な者で、
両科目あわせて憲法の全範囲を一通り講義できるよう配慮した。
Ⅱ−3 その他(教材作成)
上記 Cases and Materials シリーズとして人権の基礎編と展開編の2巻が 2005 年に
刊行されたケースブックの作成にあたった。同書は,アメリカのロースクールで最も
標準的なケースブックの一つとして活用されている G. Stone, et al., Consitutional
Law (Aspen)を範にとり,判例と学説と問いが有機的に結合された形式で,法科大学院
憲法ケースブックのデファクトスタンダードを狙うものである。作成に当たっては,
原案作成について4章分を担当したが,試作版を授業で利用しつつ,共著者がいくつ
かのグループに分かれて相互に朱を入れ,検討を重ねて書籍版を作成した(以上の経
緯をふまえ,執筆区分は示さないことになっている)。なお,同シリーズは,現在法科
大学院憲法演習Bで使用している試作版が 2006 年度に第3巻目の憲法訴訟編として刊
行される予定である(うち1章の原案作成を担当)。
Ⅲ
学外活動(最近2年間)
Ⅲ−1 他大学非常勤講師・兼任教授等
な
し
Ⅲ−2 各種学外委員
・ 奈良県上牧町情報公開審査会会長
・ 同個人情報保護審査会副会長
・ 奈良県三郷町情報公開及び個人情報公開審査会会長
Ⅲ−3 所属学会及び学会役員等
・ 日本公法学会、日米法学会
Ⅲ−4 受賞の状況
な
し
100
Ⅳ
今後の研究計画と展望
まず、判例解説集のうち残りのプライバシー、表現の自由に関する項目と、財産権に
関する記念論文集への寄稿を早期に完成させた後、次年度以降は、自己決定権、連邦制、
収用条項に関する複数のやはり記念論文集への寄稿について取り組む予定である。法科
大学院の授業で出題したり解説したりしている論点について、救済方法等について従来
の学説から多少なりとも踏み出している点については、院生からの要望も多く、自らの
研究論文として法科大学院紀要上に公表することを責務と考えている。
101
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