...

受配電・制御機器コンポーネントの現状と展望

by user

on
Category: Documents
12

views

Report

Comments

Transcript

受配電・制御機器コンポーネントの現状と展望
受配電・制御機器
コンポーネント
特集
受配電・制御機器コンポーネントの現状と展望
Current status and future outlook for power distribution and control equipment
淺川 浩司 ASAKAWA Koji
受配電・制御機器コンポーネントは,工業の原動力である電気設備に不可欠な構成要素として大きく進化してきた。富士
電機は市場動向を踏まえ,さまざまな取組みを行ってきた。海外の主要規格に対応することでグローバル化を進め,直流高
電圧用機器の開発でエネルギー・環境分野への対応を強化している。高度情報化を支える受変電設備においては電力供給の
安定性・信頼性を向上するとともに,保守点検を容易にすることでライフサイクルコストを低減した。また,開閉機器や低
圧遮断器,中国・アジアなどの新興国向け専用品,電力監視機器では,小型化や高性能化を実施した。
最新機器の特徴技術
Power distribution and control equipment have greatly evolved as the elements of indispensable electrical equipment that drives
industry. Fuji Electric has made various efforts with market trends in mind. It has globalized by complying with major foreign standards
and strengthened its support for energy and environmental fields through the development of high-voltage direct current equipment.For the
substation facilities that support advanced informationization, Fuji Electric has increased the stability and reliability of power supplies while
also reducing lifecycle costs by simplifying maintenance inspections. It has also miniaturized and increased the performance of switches and
low-voltage circuit breakers, products intended for developing countries such as China and Asia, and power monitoring equipment.
まえがき
表
に示す。
⑴ グローバル化への対応
〈注 1〉
富士電機は資源循環型社会の実現を目指して,環境とエ
1993 年に EC 指令 が発行され,1995 年に CE マーキン
ネルギーの事業に注力しており, 受配電・制御機器コン
グが義務付けられた。国ごとに規格認証の制度が強化さ
ポーネント(図 )は,環境とエネルギーの事業を下支え
れ,例えば中国では,CCC 強制認証 の対応が必須になっ
している,工業の原動力である電気設備の主要なコンポー
た。近年では,顧客の海外進出の加速,JIS の IEC 化,世
ネントとして大きく進化してきた。本稿では,これまでの
界的な IEC の普及で,国内標準品を IEC に対応した商品
市場・環境の変化と,富士電機の対応を振り返りながら近
とする開発を行っている。さらに,IEC だけでなく UL な
年の商品を紹介し,今後の取組みについて述べる。
どの海外主要規格に対応したマルチ規格対応の商品,例え
〈注 2〉
ば「G-TWIN ブレーカ」を開発し市場に提案した。
⑴〜 ⑺
また,機械装置においては安全性の要求が高まり,ISO
市場動向と富士電機の取組み
12100“機械類の安全性−基本概念,設計のための基本概
富士電機は,変化する市場動向を的確に捉え,顧客によ
念,一般原則”をはじめさまざまな国際安全規格が発行さ
り大きな付加価値を提供できる商品の供給に努めてきた。
れた。国内ではこれらは順次 JIS に取り込まれた。富士電
主な受配電・制御機器コンポーネントの歩みを図
に示す。
また,近年の受配電・制御機器コンポーネントの新商品を
機は,この安全規格と,2006 年に改正された「労働安全
衛生法」の安全基準に対応するため,非常停止用押しボ
タンスイッチのラインアップを強化し,低圧遮断器では電
源断路機器の規格の要求に応えるアイソレーション機能
電気を自在に操るパワーエレクトロニクスの主要コンポーネント
開閉・制御機器
を標準装備とした。電磁接触器の「SC シリーズ」
(SC-03
〜 SC-N16)では,強制開離機構や安全開離機能接点(ミ
電気のオン - オフを制御
ラーコンタクト)を標準装備とすることで対応した。
電磁開閉器
⑵ 新興国の市場拡大への対応
受配電機器
コマンド
スイッチ
配線用遮断器
漏電遮断器
中国は 1990 年以降市場開放が進み,世界の工場から市
場としても大きく発展してきた。今後も中国やアジア圏の
発展は継続し,社会インフラ関連は投資拡大の傾向にある。
さらに,最近の円高もあり,日本の製造業の輸出事業がこ
の地域での生産にいっそうシフトするものと予想される。
真空遮断器
系統・負荷の保護と監視
電力監視機器
進出した顧客がこの市場での競争優位性を確保できるよう
〈注 1〉EC 指令:180 ページ「解説 1」参照
図
富士電機の受配電・制御機器コンポーネント
富士時報 2012 Vol.85 No.2
106(2)
〈注 2〉CCC 強制認証:180 ページ「解説 2」参照
受配電・制御機器コンポーネントの現状と展望
年 代
1990
2000
バブル崩壊
経済環境
アジア
通貨危機
2010
IT 不況
高度情報化加速
リーマン
ショック
新興国市場拡大
東日本大震災
新エネルギー加速
市場ニーズ
地球環境問題
CE マーキング
JIS の
IEC 化
中国 CCC 強制認証
規制・規格化
京都議定書
環境規制
(RoHS 指令)
省エネ法
改正①
環境規制
(REACH 規則)
省エネ法
改正②
安全規格 JIS 化
環境規制(POPs 条約)
省エネ法
改正③
省エネ法
改正④
労働安全衛生法改定
開 閉
NEO SC シリーズ
新 SC シリーズ
FC シリーズ
FJ シリーズ
SK シリーズ
SC-E シリーズ
制
φ16 minico シリーズ
φ30 AR30
非常停止機種拡充
低
圧
TWIN ブレーカシリーズ
G-TWIN シリーズ
α-TWIN シリーズ
スーパー TWIN シリーズ
小型 63 AF
直流高電圧
高
圧
マルチ VCB
インテリジェント VCB
電力監視
F-MPC04
表
近年の受配電・制御機器コンポーネントの新商品
機器群
新商品
開閉機器
ミニコンタクタ・サーマルリレー
「SK シリーズ」
制御機器
φ 16「minico シリーズ」
「G-TWIN シリーズ」125 ∼ 800 AF
低圧遮断器
新興国向け
エネルギー・
環境
F-MPC60B/50/30
F-MPC Web
F-MPC04E
Fe-PSU
受配電・制御機器コンポーネントの歩み
グローバル化
QHA シリーズ
VMC・HN シリーズ
図
市場ニーズ
Auto V
定書」に基づく行動枠組みに従って,
「エネルギーの使用
の合理化に関する法律」
(省エネ法)の改正が繰り返され,
大規模事業者から小規模事業者へ規制対象が拡大してきた。
「F-MPC シリーズ」のモデルチェン
電力監視機器では,
ジやラインアップの充実でこれまでの規制強化に対応して
きた。さらに,東日本大震災を発端に,これまで以上に再
小型 32 ∼ 63AF 低圧遮断器
生可能エネルギーの拡大や省エネ・節電に対する意識が高
開閉機器
ミニコンタクタ「FJ シリーズ」
まっている。一般住宅では,直流を活用した省エネがエコ
低圧遮断器
直流高電圧用ブレーカ
ハウスとして注目されている。情報通信の分野では,デー
電力監視機器
1 回路形交流電力監視ユニット
「F-MPC04E」
タセンターを中心に直流 400 V クラスが検討されている。
低圧遮断器
IDC 向け低圧遮断器
電力監視機器
Igr 絶縁監視装置「F-MPC Igr」
高圧受配電用ディジタル形
保護継電器「QHA シリーズ」
高度情報化
高圧機器
ドライエア密閉形キュービクル用
真空遮断器
再生可能エネルギーの利用拡大では,太陽光発電が注目
されている。メガソーラー用の太陽光発電設備では,エネ
ルギーの利用効率の改善をはじめ,発電コストを低減する
ために直流 1,000 V を超える高電圧化が世界的に進められ
ている。富士電機では,2007 年に発売した「G-TWIN シ
リーズ」の直流回路専用ブレーカ(開閉器含む)の高電圧
化を図ってきた。さらなる高電圧化の要求に対応し,直流
に,富士電機は低い価格レベルに応えるためにこの地域に
高電圧品(DC750 V,
DC1,000 V)の取組みを強化している。
最適化した商品のラインアップを行っている。
⑷ 高度情報化への対応
⑶ エネルギー・環境への対応
1990 年代中頃から,インターネットやパソコンが普及
地球環境の保全や改善に対する関心が 1990 年後半に高
しはじめ,高度情報化社会が到来した。高圧受変電設備で
まり,エコ商品や省エネルギー(省エネ)
,新エネルギー
は,高度情報化システムのサービス損失を防ぐために電力
に注目が集まってきた。省エネは,1997 年の気候変動枠
供給の安定性や信頼性向上が重要であり,近年,これらの
組条約第 3 回締約国会議(COP3)で採択された「京都議
要求は厳しさを増している。これまで小型・軽量化に合わ
富士時報 2012 Vol.85 No.2
107(3)
最新機器の特徴技術
φ22 AM22
御
受配電・制御機器の歩み
φ22 AR22
受配電・制御機器コンポーネントの現状と展望
せて高機能化を図った,マルチ VCB,Auto V などの商品
に示す。
に迫っている。これまでの変遷を図
を開発してきたが,さらにライフサイクルコスト(LCC)
1988 年に 2.2 〜 4 kW 容量の電動機用小容量電磁接触器
の低減に向けて,保守点検周期の延長,点検項目の低減,
である「新 SC シリーズ」を開発し,オプションの充実,
予防保全の要求に応える高圧遮断器を開発している。
長寿命化,海外規格対応(CE,UL)を図った。
また,電力供給にトラブルが発生したときの波及影響を
1999 年に 5.5 〜 200 kW 容量の大容量電磁接触器である
最小限に抑えるため,使用する保護継電器には確実な動作
「NEO SC シリーズ」を開発し,安全規格,環境規制,新
と保護協調,および日常点検の負担軽減など設置と使用の
JIS,海外規格(CE,UL,CCC)に対応した。
2002 年に「SC-E シリーズ」を開発し,世界市場の小
容易化が求められている。
さらに,太陽光発電などの分散型電源の拡大により,系
型デファクト寸法 45 mm 幅,電線直接接続端子,主回路
統連系に対応できる商品が必要になっている。このような
3 極,モジュール化,リンクドコンタクトに対応し,小型
市場動向を踏まえ,保護継電器の新製品を開発した。
化しながら世界市場を視野に入れた商品を投入した。また,
データセンターや半導体工場などでは 24 時間でノンス
電動機回路保護を高度化したマニュアルモータスタータ
トップの操業が求められるなど,特に信頼性が重要である。
(MMS)を開発し,配線用遮断器とサーマルリレーをコン
工場・生産設備のみならずオフィスビルや商業施設におい
パクトに一体化した。高い短絡保護協調の実現や省配線を
ても,省スペース・省エネで信頼性の高い受配電・給電シ
考慮したブスバーシステムに対応した。また,MMS を電
磁接触器および組み合わせて,コンビネーションスタータ
として使いやすくした。
このように海外規格対応や海外仕様などのグローバル対
図っている。
応,リンクドコンタクトなどの安全性,配線用遮断器と電
開閉機器・制御機器・低圧遮断器の小型・高性
磁接触器およびサーマルリレーの高度な組合せ,ブスバー
システムなどの省配線などを提案し,市場動向を先取りし
能化への取組み
ながら開閉機器を進化させてきた。
富士電機は,開閉機器,制御機器,低圧遮断器のグロー
バル化要求に対応して,小型化や高性能化,配線性などの
120
使いやすさの向上を図りながら,常に業界をリードする商
品を開発してきた。低圧遮断器を例に,小型化の推移につ
いて図
に示す。低圧遮断器の 100 AF クラスでは,1990
年代の TWIN ブレーカと比較して,最新機種では 63 % に
小型化を実現しつつ高性能化を達成している。
⑹,⑺
.
100%
100
体積比(%)
最新機器の特徴技術
ステムを構成することの重要性が増しており,この分野向
けの低圧遮断器や電力監視機器のラインアップの充実を
77%
80
63%
60
40
TWIN
ブレーカ
シリーズ
開閉機器
α-TWIN
シリーズ
小型
63 AF
20
富士電機は,電動機の始動停止を行う電磁接触器なら
びに過負荷保護を行うサーマルリレーなどの開閉機器を,
0
1954 年にわが国で初めて製造・発売し,市場要求や顧客
1990
2000
2010
(年代)
ニーズにいち早く対応できる国内トップブランドとして業
界を牽引(けんいん)してきた。生産台数の総計は 3 億台
低圧遮断器の小型化
RC シリーズ
新 SC シリーズ
NEO SC シリーズ
SC-E シリーズ
コンビネーションスタータ
SK シリーズ
<1954 年 >
製造・販売開始
<1988 年 >
<1999 年 >
<2002 年 >
<2002 年 >
<2011 年 >
7.5 ∼ 15 kW
電動機制御回路を
コンパクトに構成
マニュアルモータ
スタータと
電磁接触器の組合せ
0.75 ∼ 5.5 kW
電動機用ミニコンタクタ
世界最小で低消費電力
安全性,実用性
JIS,CE,CCC,UL
に標準対応
2.2 ∼ 45 kW
電動機用電磁開閉器
の製造・販売開始
図
図
2.2 ∼ 4 kW
電動機用小容量
電磁接触器
オプションの充実
長寿命化
海外規格対応
(CE 品,UL 品)
開閉機器の変遷
富士時報 2012 Vol.85 No.2
108(4)
5.5 ∼ 200 kW
2.2 ∼ 45 kW
電動機用中,大容量
電動機用電磁接触器
電磁接触器
直配線端子装備
安全性,環境性の向上
主回路 3 極幅狭
新 JIS 対応,海外規格
海外規格対応
対応(CE 品,CCC 品, (CE 品,UL 品)
UL 品)
受配電・制御機器コンポーネントの現状と展望
近年,さらなる制御盤の小型化,感電保護を含めた安全
しながら,電磁接触器との組合せにおいて従来よりも大幅
性,制御電源の直流化などの市場ニーズが高まっている。
な小型化を実現した。安全性については,各相に保護素子
そこで,国内や海外のすべての規格に準拠した真のグロー
を設けて欠相保護も可能な仕様を実現している。配線性に
バル対応でありながら,さらに世界最小サイズとなるミニ
ついては,小型でありながら主回路端子と補助端子を並列
コンタクタ「SK シリーズ」およびサーマルリレー「TK12
配置とし,配線作業時に主回路または補助回路の電線が干
シリーズ」を開発した。
渉しない端子配列とした。外観を図
⑴ ミニコンタクタ「SK シリーズ」
⒜ 安全性の向上
標準品が過負荷・欠相保護の 2E サーマルリレー
SK シリーズは大きさが世界最小でありながら,2 kW
⒝ 小型化
以下のモータの制御用途では世界最小クラスの低消費電力
,
™ 電磁接触器との組合せで従来比 87%(取付け面積)
(従来比 86 %)を達成している。さらに感電保護やミラー
コンタクトなどの安全機能を備え,世界の主要規格(JIS,
55%(体積)
™寸法:W45×H97.5×D55(mm)
IEC,CCC,UL,TÜV)を標準品で対応している。
外観を図
に,特徴を次に示す。
に,特徴を次に示す。
⒞ 配線性の向上
™丸形圧着端子接続が可能
⒜ 世界最小のミニコンタクタ
™寸法:W45 × H48 × D49(mm)
™電磁接触器 2 次側から電線引出しが可能
™交流制御品と直流制御品を同一外形寸法化
™配線作業時に主回路または補助回路の電線が干渉し
™従来比 86 %(低消費 DC コイル 1.2 W)
⑶ コンビネーションスタータ
MMS と電磁接触器を組み合わせたコンビネーションス
⒞ 豊富なラインアップ
™6,9,12 A の 3 定格
。
タータをラインアップした(図 )
™制御コイル:交流,直流,低消費電力形
MMS は電動機の手動開閉器として,単独でも使用され
⒟ 豊富なオプション
™追加補助接点ユニット(2 極,4 極)
™コイルサージ吸収ユニット
™インタロックユニット
電磁接触器
™接続モジュール(MMS コンビネーション)
⒠ 安全性,実用性の向上
™着脱可能な端子カバーを標準装備(IP20)
™ミラーコンタクト機能装備
™ 短 絡 電 流 定 格 値(SCCR:Short-Circuit Current
Rating)AC480 V 50 kA
™UL 定格 AC480 V 5HP
サーマルリレー
™IEC 定格 AC480 V 12 A(AC3)
(a)
サーマルリレー
(b)
電磁開閉器
⒡ 世界の主要規格を標準品で取得
,UL,TÜV
™JIS,IEC,GB(CCC)
図
サーマルリレー「TK12 シリーズ」と電磁開閉器
図
コンビネーションスタータ
⑵ サーマルリレー「TK12 シリーズ」
TK12 シリーズは,高いレベルの配線性・安全性を実現
図
ミニコンタクタ「SK シリーズ」
富士時報 2012 Vol.85 No.2
109(5)
最新機器の特徴技術
ない端子配列
⒝ 低消費電力
受配電・制御機器コンポーネントの現状と展望
るが,一般的には電磁接触器と組み合わせて使用されるこ
100 AF までサイズを統一した小型の商品で,幅広い分野
とが多い。MMS は高い限流性能を持つので,組合せによ
に使用されている(図
)
。
り短絡電流定格値(SCCR)の拡大に貢献できる。コンビ
近年,開閉機器と同様に低圧遮断器もいっそうの小型化
ネーションスタータは,MMS と電磁接触器を専用の配線
や,感電保護を含めた安全性が求められている。小型化を
部材で結合したものであり,配線作業の簡素化とスペース
追求する機械装置・制御盤用途がある一方で,盤の標準化
の削減が図れる。
を目的に外形サイズを統一する受配電用途があり,低圧遮
断器に求められる機能は二極化する市場環境になってきた。
⑻
.
そこで機械装置・制御盤用途向けに,32 〜 63 AF の小型
低圧遮断器
富士電機は,電線保護や感電保護を担う低圧遮断器(配
。
低圧遮断器を開発した(図 0 )
小型 32 〜 63 AF 低圧遮断器は,業界トップクラスの最
線用遮断器,漏電遮断器)を,1968 年から製造・販売し,
これまで 40 年以上にわたり,市場を先取りする商品を開
発してきた。これまでの変遷を図
に示す。
小サイズでありながら,高遮断性能,付属品のバリエー
ションの充実,端子部の高い安全性,世界の主要規格(JIS,
1990 年 に 30 〜 225 AF に お い て,
「TWIN ブ レ ー カ シ
IEC,CCC,UL,TÜV)に対応するなど,次に記す特徴
リーズ」を開発し,業界で初めて配線用遮断器と漏電遮断
がある。
器を同一外形サイズとし好評を得た。現在では,国内市場
⑴ 製品外形サイズ
™3 極品の製品外形サイズ:業界最小の幅 54 mm
のデファクトスタンダードとして定着している。また,各
最新機器の特徴技術
™設置面積:従来比 72 % に小型化
フレーム間の基本寸法の統一や高遮断容量化,コンパクト
⑵ 遮断容量
化およびオプション・応用品の充実を図った
™従来機種の 1.5 倍
1992 年に 400 〜 800 AF 容量の「スーパー TWIN シリー
ズ」を開発し,TWIN ブレーカの開発思想を大容量領域
まで拡大し,内装付属品を顧客自身で取り付けられるよう
にした。
32 ∼ 63 AF
2001 年に 32 〜 100 AF
において,
「α-TWIN
シリーズ」
機械・装置
メーカー向け
を開発し,業界最小の統一サイズ,高遮断容量化,コンパ
従来の
ラインアップ
クト化,アイソレーション機能などの安全対応と海外規格
(CE,CCC,UL)の取得を行った。
100 AF
32 ∼ 100 AF まで同一外形サイズ
受配電
メーカー向け
W75×H100×D68(mm)
2007 年に 125 〜 800 AF の「G-TWIN シリーズ」を開
発した。基本寸法で,IEC,CCC,UL などの海外主要規
機械・装置
メーカー向け
格に対応した。また,UL489(AC480 V)に適合した機器
新
ラインアップ
のシリーズ化,漏電遮断器の IEC 仕様(3 相電源標準,耐
圧スイッチ)
,内装付属品の統一化,環境規制にも対応し,
真のグローバル商品とした。
W54×H100×D68 W75×H100×D68
(mm)
(mm)
取付面積・従来比
−28%
受配電
メーカー向け
このように富士電機は,小型かつ統一サイズのコンセ
プトを提案し,機械装置,制御盤,受配電盤などの幅広
い市場ニーズに応えてきた。α-TWIN ブレーカは 32 〜
図
TWIN ブレーカ
シリーズ
<1990 年 >
スーパー TWIN
シリーズ
<1992 年 >
30 ∼ 225 AF
MCCB と ELCB の
奥行を 60 mm に
小型化
30 ∼ 225 AF
MCCB と ELCB の
外形を業界で初めて
同一化
30 ∼ 800 AF
MCCB と ELCB の
同一外形化
付属装置の
カセット化
低圧遮断器の変遷
富士時報 2012 Vol.85 No.2
110(6)
低圧遮断器の 100 AF 以下の新旧ラインアップ
デプス 60 mm
シリーズ
<1980 年 >
<1968 年 >
製造・販売開始
1968 年
MCCB の製造・
販売開始
1972 年
ELCBの製造・
販売開始
図
α-TWIN
シリーズ
<2001 年 >
30 ∼ 100 AF
小型同一外形化
付属装置のカセット化
の拡充
海外規格対応
(CE 品,CCC 品,
UL 品)
G-TWIN
シリーズ
<2007 年 >
30 ∼ 800 AF
IEC,CCC,UL
を基本寸法サイズで対
応
グローバル化
UL489(480 V)
適合品をシリーズ化
受配電・制御機器コンポーネントの現状と展望
電力品質
PowerLogic シリーズ
PM800
ION7650
(デジタルパワーメータ) (電力品質監視モニタ)
シュナイダー製品
電力監視
F-MPC シリーズ
F-MPC04E F-MPC04S F-MPC04P F-MPC04
図
32 ∼ 63 AF の小型低圧遮断器
新製品
富士電機製品
™Ics=100 % × Icu(AC200 V 系)
図
⑶ 端子部
電力監視機器のラインアップ
™内部付属装置の豊富なバリエーション
™密着取付けなどの付属装置機能の充実
電力監視機器の取組み
⑸ ねじと DIN レールの 2 種類の取付けが可能
⑹ 各種国際規格に対応し,用途に合わせた 2 種類をライ
ンアップ
省エネ法が 2010 年に改正され,エネルギー管理義務の
対象が工場・オフィス・店舗などの小規模事業者に拡大し
™スタンダード:JIS,IEC,CCC,TÜV
たことで,今後いっそうのエネルギー管理の手軽さが求め
™グローバル:JIS,IEC,CCC,TÜV,UL489
られている。
〈注 3〉
⑺ RoHS 指令 をはじめとした各種環境規制に標準対応
このような ニーズに応えるため,DIN レール 取付 けタ
イプの 1 回 路形交流電 力監視 ユニット「F-MPC04E」を
新興国向け専用品
開発し,F-MPC シリーズの機種拡充を図った。表示器を
オプションとし,
従来のパネル取付けタイプ「F-MPC04S」
開閉機器,低圧遮断器,制御機器は,国内では JIS の
に比べて体積を 1/2 に小型化した。RS-485 通信を標準搭
IEC 化が進み,国内と海外で統一した仕様の商品が主流で
載し,電力監視システム「F-MPC シリーズ」標準のプロ
ある。しかし,国内の圧着端子接続に対して,海外では電
トコルに加え,MODBUS/RTU プロトコルにも対応して
線直接接続というように工業文化による方式の違いがある
システム適合性を強化した。
ため,富士電機の電磁開閉器では,電線直接接続が可能な
また,PowerLogic シリーズ(フランス・シュナイダー
海外向けの SC-E シリーズをラインアップして,世界のど
エレクトリック社製)は,電力品質の監視が可能で,設備
この市場においても対応できるようにしている。
中国・アジアなどの新興国では,現地からの輸出用装置
やエレベータなど安全上重要とされる回路には,日本と同
のトラブルを未然に回避する機能や,万一のトラブルでも
早期解決を助ける機能を持つ。F-MPC シリーズと合わせ,
。
電力監視機器のラインアップの充実を図っている(図 1 )
じ高品質,開閉寿命,主要な海外規格認証の対応が求めら
さらに,省エネだけでなく,データセンターや半導体製
れるが,現地用装置においては必ずしも必要とされていな
造工場など設備の停止が困難な事業所を中心に,設備点検
の自動化や定期点検の周期を延長したいという電気保安業
い。
このため現地用装置向けの専用品として,現地仕様に適
合させた「FJ シリーズ」を開発し,2011 年 4 月に中国で
販売を開始した。
今後,海外市場や顧客動向を見ながら,コンタクタだけ
でなく海外専用品のラインアップの充実を図っていく。
務に関するニーズがある。
このようなニーズに対応するためには,ケーブルの対地
容量成分および高調波に影響を受けない方式による漏洩
(ろうえい)電流の常時監視が必要となる。
富士電機は,これを実現するとともに相線式に関わらず
適用が可能で,相間対地静電容量の不均衡の影響を受け
〈注 3〉RoHS 指令:電子電気機器における特定有害物質の使用制限に
ついての EU(欧州連合)の指令
ずに絶縁劣化検出が可能な Igr 形絶縁監視装置を開発した。
4 回路および 8 回路用の集合形計測装置をラインアップし
て系統規模に応じた選択を可能とし,RS-485 通信を介し
た F-MPC シリーズとの容易な接続により,同一プロトコ
富士時報 2012 Vol.85 No.2
111(7)
最新機器の特徴技術
™IP20 標準対応
⑷ 付属装置
受配電・制御機器コンポーネントの現状と展望
ナーを目指していく所存である。
絶縁監視+電力監視の統合システム
設備絶縁劣化の監視や漏電の見える化
多回路絶縁監視
F-MPC Igr
電力監視
F-MPC04シリーズ
多機能リレー
F-MPC60B,50
参考文献
⑴ 久保山勝典. 低圧受配電・開閉機器および監視制御機器の
現状と展望. 富士時報. 2008, vol.81, no.3, p.232-236.
⑵ 鹿野俊介ほか. 低圧配電システムのネットワーク化と省エ
ネルギー支援機器. 富士時報. 2006, vol.79, no.2, p.184-189.
⑶ 小塙明比古. 低圧開閉機器の技術動向と富士電機の対応. 富
士時報. 2001, vol.74, no.11, p.596-603.
⑷ 高松巌, 喜多村忠雄. 汎用受配電機器の現状と展望. 富士時
報. 1993, vol.66, no.3, p.161-164.
⑸ 高松巌ほか. 配線用遮断器・漏電遮断器の技術動向と新シ
図
同一プロトコルによる電力監視と絶縁監視
リーズの開発. 富士時報. 1990, vol.63, no.2, p.125-130.
⑹ 井出安俊. 世界市場を目指す低圧開閉機器. 富士時報. 2003,
ルを使って電力監視と絶縁監視を同一システムで連携・管
。
理できる(図 2 )
vol.76, no.7, p.425-428.
⑺ 田畑進ほか. 電磁開閉器の技術動向とNEO SCシリーズの
最新機器の特徴技術
開発. 富士時報. 1999, vol.72, no.7, p.357-362.
あとがき
⑻ 内田直司, 小塙明比古. 低圧遮断器の動向と富士電機の対
応. 富士時報. 2006, vol.79, no.2, p.156-159.
グローバル化が進展する中,社会や市場は目まぐるしく
変化し,俊敏な対応が求められている。未来を見つめなが
淺川 浩司
ら環境・市場の変化と技術の進化を鋭敏に感知し,知恵を
低圧遮断器の開発設計,低圧機器全般の商品企画
絞った技術開発でタイムリーに商品を提供し,同時に永続
開発本部開発部長。
的にお客さまの要求に応えることが使命と考えている。
今後も,お客さまの多様なニーズに応える機器やサービ
スを提供することを通じて,社会や産業のベストパート
富士時報 2012 Vol.85 No.2
112(8)
に従事。現在,富士電機機器制御株式会社技術 ・
*本誌に記載されている会社名および製品名は,それぞれの会社が所有する
商標または登録商標である場合があります。
Fly UP