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自分の免疫力で 癌(がん)に克つ

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自分の免疫力で 癌(がん)に克つ
第140回琉球フォーラム講演会
2004年11月10日 ザ・ナハテラスホテル
自分の免疫力で
癌(がん)に克つ
講師
杉
山 治 夫 氏
(大阪大学教授)
大好きな沖縄にお招きをいただきまして
ありがとうございます。
癌(がん)の治療は、手術、抗癌剤、放射
線という三つの方法が中心になっておりま
すが、今後、 これからの時代は分子標的療
法だと思います。
現 行 の 癌 療 法
手術は副作用が比較的少ないということ
ですが、転移があればどうしようもありま
せん。抗癌剤は副作用が非常に強い。 放射
線は、 癌が放射線を照射する場所以外に転
すぎやま・はるお
1949年生まれ。大阪大学医学部を卒業し、現在、
移すると効かないということになります。
しかし、今後の治療としての分子標的療法
同大学院医学系研究科教授。最近、WT1ワクチン
は、 癌細胞のみを殺して副作用がほとんど
癌治療法で注目されている。専門分野は内科学、
ないという治療法で、 世界が今この治療法
免疫学、血液学。研究テーマは発癌機構の分析、
に集中しておりまして、 いかにこういう薬
癌免疫、造血幹細胞の増殖分化機構の解析に関す
を作るかが、今後の製薬会社の運命がかかっ
る研究。10年以上の研究の結果、WT1タンパクは、
強力な癌抗原(癌細胞の目印)であることが分かっ
た。この WT1タンパクを標的にした癌の免疫療法
が WT1ワクチン治療法で、杉山教授は大阪大学で
の臨床試験代表者である。
ておりますし、治療開発する人間が皆んな
ここに集中するという状況になりつつあり
ます。
分子標的療法というのは、 癌細胞のみを
殺し、 正常な細胞は殺さないという治療法
です。 癌細胞と正常な細胞が体の中にあり
2
自分の免疫力で癌
(がん)
に克つ
まして、普通の治療は癌細胞も死ぬが正常
り最後は免疫療法ではないかと考えていま
な細胞も死ぬので、癌細胞も消えたが本人
す。 また、 モノクローナル抗体療法も最初
も消えましたということになることもある
は日本でもやっておりましたが、
「抗体を打っ
わけです。いかに癌を消すかという思いが
て癌を治すことはむずかしいこと…」と止
強いほど、患者さんも消してしまうという
めてしまって、アメリカではコツコツとやっ
ことが起こりがちになります。
ていて、たまたまうまくいってハーセプチ
分子標的療法というのは、 癌細胞だけを
ンという抗体療法に成功してしまったとい
殺しますので、正常細胞はまったく傷まず
に残るので、癌だけを消して副作用が全く
ないという治療です。 こういう治療方法が
だんだん世の中に出始めているわけです。
癌の分子標薬の最初のものは、 慢性骨髄
性白血病に対するグリベックという薬で副
作用がかなり少なく、 治療効果もすぐれて
いますが、おそらくこの薬だけでは完治し
ないと多くの医者は思っております。やは
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第140回琉球フォーラム講演会
うことです。これを打ちますと、 ある程度
2つがバランスを取りながら癌を殺すのに
の頻度で、乳癌に効くということで、何千
働いています。
億円も売り上げてしまうということになり
免疫には、 自然免疫と獲得免疫というの
ました。分子標的という副作用がないとい
があることが分かってまいりました。自然
うことが非常に大きい市場を作ることになっ
免疫というのは、まったく勉強が嫌いで勉
てしまうのです。
強をしなくてもある点数は採れるという、
生まれつき覚えている免疫です。 獲得免疫
免疫療法への移行
は勉強しないとダメという免疫です。そし
て強い免疫を得るには、 まず勉強しなくて
そこで次々に世界中がいろいろのモノク
もいい自然免疫が起こり、 次に勉強が必要
ローナル抗体を作っているわけです。世界
な獲得免疫が起こり、 この2つの免疫が強
中の製薬会社が争って癌に対する抗体を作っ
く起こらないと癌は治せないということに
ています。しかし、モノクローナル抗体療
なります。
法は一過性のもので、 将来的には癌抗原免
自然免疫をになう細胞に、 例えばNKと
疫療法になってしまうと考えています。近
いうのはナチュラルキラーと言って、生ま
い将来は免疫療法が、 かなりの癌を治すの
れつきの殺し屋で、悪いのを見るとすぐに
ではないかということを、 みんな思ってい
殺しにいくという、何も考えない単細胞の
るわけです。免疫療法には特異的と非特異
殺すだけ専門の細胞がいます。 何かを食べ
的というものがあります。 非特異的と言わ
るとNKが上がるとか、 あるいは健康診断
れるものには有名なBCGなどがあるわけ
でNKを測ります。あるいはリンゴジュー
です。
スや何とかを飲むとNK細胞が上がるとか
血液細胞には、 赤血球と酸素を運ぶ白血
というのは、ほとんどNK細胞を測ってい
球、それから血小板があるわけです。白血
るわけでして、これが上がると癌に本当に
球の部分が癌を治すという免疫を全部担っ
効くかどうか分かりませんが、 何となくそ
ているということです。癌にならないため、
う思っています。 NK細胞は、 生まれつき
癌を予防するためには、 この白血球を非常
の殺し屋です。
に可愛がってあげるということが大切です。
NK細胞などは自然免疫をつかさどる生
リンパ球はTとBというリンパ球に分か
まれつきの殺し屋ですので、 こいつは悪い
れまして、Tリンパ球は細胞性免疫という
奴だから殺しなさいと教える必要がないと
ものをつかさどり、Bリンパ球は抗体を作
いうことです。ですから、癌が出来た場合
るということです。Bリンパ球は骨髄から
は、 まずこういうNK細胞、 マクロファー
出てまいりまして、Tリンパ球は胸腺から
ジ、 単球、 顆粒球などの生まれつきの殺し
出てきます。T細胞は細胞性免疫を担い、
屋たちが頑張らないといけないわけです。
このリンパ球が癌を殺しにいきます。Bリ
彼らが頑張ると、より高等なB細胞やT細
ンパ球は抗体を作って癌に働きます。この
胞が、 そろそろ自分達も頑張ってみようか
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自分の免疫力で癌
(がん)
に克つ
と考えるわけです。ですから自然免疫が頑
ですから全ての免疫は、 まず抗原提示細
張らないと、獲得免疫(BとT細胞)は頑張
胞という、非常に原始的な自然免疫をにな
れないのです。獲得免疫を頑張らせるため
い、 何かが来れば何も考えずに食べてしま
にどうするかということが、 癌の免疫療法
うという細胞がまず抗原を食べて、 そして
の最初のポイントになるわけです。 獲得免
それを消化して、非常に分かりやすい形に
疫を頑張らせるためには、 まず自然免疫を
して、 B細胞やT細胞に抗原を教えるとい
頑張らせないといけないということです。
うことによって、次のより高等な免疫が起
抗原が来ますと抗原提示細胞というもの
こってくるということになります。 この一
がまず抗原を食べて、 よく噛み砕いてB細
連のことがうまくいかないと、 まったく免
胞やT細胞にこの抗原を分かりやすく教え
疫が起こりません。 癌の免疫法は、 こうい
ないと、高等な獲得免疫は起こりません。
う抗原提示細胞に、癌抗原というものを強
B細胞やT細胞に抗原を教え込んで初めて
く認識してもらい、それによってB細胞と
B細胞は抗体を作り、 T細胞はキラーT細
かT細胞などに頑張ってもらって、 癌細胞
胞という癌を殺しにいく細胞になるわけで
を殺すということです。
す。
抗原提示細胞が非常に重要な免疫の引き
金を引きます。これは樹状細胞と呼ばれた
抗原 提示 細 胞の 重要 性
り、 マクロファージや単球とか呼ばれてお
ります。例えば皮膚の表面の何割かに、ず
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第140回琉球フォーラム講演会
らっと抗原提示細胞がおります。 喉や消化
す。
管などあらゆるところに抗原提示細胞がお
これを絵に描きますと、 抗体が癌を攻撃
りまして、空気中は非常に汚いわけで、埃
し、キラー細胞が、 K細胞、 LAK細胞、
が飛んでいます。その埃には細菌がついて
NKナチュラルキラー細胞、NKT細胞、
おります。それをいつも吸いながらも感染
活性化好中球などが一気に癌を攻撃してく
しないのは、皮膚や気道などにいる抗原提
れれば、癌もなかなか生きにくいという状
示細胞が抗原を食べて、 免疫系に見せて細
況になると考えられます。
菌が体に入ってこないようにすることで感
染を予防しています。 リンパ球は直接抗原
免疫反応を強める
を認識することはできないので、 抗原提示
細胞が抗原を食べて、 より簡単な形にする
癌の免疫療法は、患者さんの体内で起こっ
ことによってリンパ球に抗原を見せると、
ている癌に対する免疫反応を強めるという
リンパ球は抗原を認識できるようになるの
ことです。癌患者さんの体の中では、 癌が
です。 抗原を認識することによってリンパ
どんどん増えておりますので、 癌が壊れま
球が癌を殺すとか、感染症を抑えるという
して癌抗原が漏れて出ております。 この癌
ことになります。
抗原を抗原提示細胞が食べて小さく消化し
抗原提示細胞は木のように枝を出してい
て、 非常に小さくしたものをキラー細胞に
るので樹状細胞と呼ばれています。 これが
教え込みます。するとキラー細胞が増えて
皮膚にびっしり敷きつめられています。皮
癌を殺しに行くということです。 癌になっ
膚は外界と接触していますので危険で、毎
た場合、人間の体の中ではこういうことが
日感染を受けているわけです。 皮膚でまず
自然に起こっているわけです。 しかし癌に
感染を防御しないと、 人間はすぐに死んで
ならなくても、 数千個、 数万個、 数千万個
しまいます。ですから皮膚の表面に樹状細
といろいろな説がありますが、 それぐらい
胞が敷石状に敷きつめられていて、 皮膚に
体の中で癌細胞が、毎日できているわけで
来る菌をおいしくもないのに毎日毎日食べ
す。それでも癌にならないのは、毎日キラー
ています。その食べたものを消化して、キ
T細胞によって癌細胞が殺されているため
ラーT細胞やB細胞に教えているわけです。
と考えられています。
するとキラーT細胞が頑張って、例えば、
もしも何らかの事情でキラー細胞がうま
癌なら癌を殺すということになってきます。
く働かない、あるいは非常にストレスのか
いずれにしても、この抗原提示細胞が免疫
かる生活をしたために、 キラーT細胞の活
の引き金の最初になります。
性化が十分でなかったために、 どんどん癌
癌免疫には抗体による細胞性免疫とT細
細胞が増えてしまうという事情で、結局、
胞によって起こる細胞性免疫があります。
癌細胞がこの免疫に勝ってしまうというこ
細胞性免疫では生まれつきの殺し屋ナチュ
とになります。いずれにしましても、 患者
ラルキラーやT細胞が、 癌を殺しに行きま
さんの体内では免疫活動が起こっているわ
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自分の免疫力で癌
(がん)
に克つ
けですので、免疫療法というのは、 体内で
Gの投与は、結核の方に癌が少ないという
起こっている癌免疫の力を強めてやるとい
ことで考えられました。 ビシバニールとい
う自然な方法です。ですから副作用が出な
う免疫賦活剤は殺してある溶連菌そのもの
いということになります。
です。 レンチナンやフレスチンなどのキノ
癌免疫療法の基本的な考え方として、癌
コの成分を打つということもあります。そ
は自分の体の一部ですので、 免疫細胞が攻
れから核酸(DNA)を打つ方法もありま
撃をためらっている可能性があるわけです。
す。 菌体や、 菌成分の一部を打つというこ
癌は自分自身でありまして、 免疫から見ま
とは、 細菌感染が起ったと体は間違ってし
すと愛すべき自分です。 外からの感染症、
まって、非常事態として免疫力が上がり、
例えば結核菌が侵入してきたら、 これは異
それによって癌も縮むという理屈です。
物だと思いますので攻撃を始めます。癌は
それから非特異的免疫療法としてのDN
自分自身、愛すべき自分ですので普通は攻
A薬も開発されていますが、 これは細菌の
撃しないわけです。免疫というのは自分自
DNAでないとダメで、 人のDNAを注射
身は攻撃しないようになっているわけです。
しても効きません。犬でも猫でも猿でも哺
攻撃すると病気になりますので、 普通は攻
乳類のDNAはダメです。 細菌のDNAを
撃しないようにうまく調整されています。
打つと「自分の皮膚に細菌がくっついた。
ですから、癌の場合はどんどん癌細胞が増
これは大変だ」ということを感じるわけで
えるのです。攻撃しないというより、自分
す。 そして一気に免疫が上がって、 癌も一
自身ですから癌を攻撃したくないのでしょ
緒に殺すというメカニズムです。
う。
要するに細菌感染が起こると、自然免疫、
そこで、 免疫療法では、癌は、 体の一部
先程言いました学習しなくてもいい免疫が
ではなくて悪いものだということを教えな
活発になり、それによってB細胞やT細胞
いといけないのです。 教えないと、 癌を自
が活性化されます。細菌は異物であります
分らの親戚だと思って免疫が気楽になって
ので、非常に強い免疫が起こります。 進化
しまうのです。そのうち、癌はどんどん大
の過程でもの凄く強く起こるように人間の
きくなってしまい、終いには自分を殺して
体はなっています。 しかし、 癌は自分自身
しまうのです。要するに、癌細胞は自分自
ですので強く起こらないので、 こういうも
身ではない、悪い奴だということをまず体
の (免疫活性剤)を打つことによって菌が
に教えないといけません。
感染したと誤解させるわけです。 菌が感染
その教え方には特異的方法、 非特異的方
法など、いろいろな方法があります。
したと思い必死になって体が免疫を高めて
いくと「癌があるから、これも一緒に殺そ
うか」という、 そんなイメージになると思
結核 患者 に 癌が 少な い
います。
非特異的免疫療法としては、 例えばBC
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第140回琉球フォーラム講演会
癌はお金のある人ほど助かりやすく長生き
特異 的癌 の免 疫療 法
しやすい病気だと思います。 例えばラック
(LAK)療法という治療法は、リンパ球を
皮膚が感染するとは大変なことですから、
免疫細胞が必死になって頑張ります。する
と癌抗原をパクパク食べ、 食べるとキラー
T細胞がどんどん活性化されます。 それに
よって癌細胞がどんどん殺されるというイ
体外に取り出して、それをまた患者さんに
戻して癌を殺そうという方法です。
特異的癌の免疫療法は、 このようにいく
つかに分類できます。
樹状細胞療法もよく行なわれていまして、
メージになります。例えば結核の方に癌が
これは抗原提示細胞を末梢血から取り出し
少ないということとか、 感染ということを
て、 これに癌抗原をまぶして、 抗原提示細
どんどん起こしていれば、免疫が上がって、
胞に癌抗原を教え込みます。 そして抗原提
癌自身も殺すのではないかという考えにな
示細胞を本人に戻すことにより癌抗原をリ
ります。本当の感染を起こすと危険ですが、
ンパ球に教えるということによって免疫を
感染と間違わせるということになります。
上げて癌を治そうという方法です。 このよ
ある意味では毎日風邪をひいていれば、ひょっ
うに一回一回患者さんからリンパ球を取り
としたら、癌になりにくいかも知れません。
出すという、操作自体が大変なことであり、
それからリンパ球療法という、 これは一
お金もかかることで、 多くの癌患者さんに
回で25万円∼30万円かかりますが、よ
実施することはなかなかできません。です
く行なわれておりまして、今の時点では、
から、この療法が普及して、 癌の治療法の
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自分の免疫力で癌
(がん)
に克つ
中心になるということはむつかしいと思い
獲得免疫という経路を通して一気に癌免疫
ます。
が上がるというものです。
3番目に、 時おり新聞にも出ております
ここで癌患者と比べていただきたいのは、
が、遺伝子療法です。これは本人から癌細
感染免疫です。微生物が感染しますと一気
胞を取り出しまして、 そこに免疫を増強す
に自然免疫→獲得免疫という経路で、B細
る遺伝子を入れます。 それに放射線を照射
胞やT細胞が活性化されて、 非常に強い免
して殺して本人に戻すと、 要するに先程言
疫が起こり感染を治します。 癌の免疫療法
いましたように、癌は自分自身ですので免
というのは微生物の代わりに菌体生物、あ
疫は無視します。 しかし、こういう遺伝子
るいは癌抗原を皮膚に打つことにより感染
を入れることによって自分ではない、おか
免疫と同じようなルートに乗せて一気に癌
しな奴だと教え込むわけです。 それを本人
を治してしまおうということです。 癌細胞
に戻すと、異物だと思って必死になって攻
は、 自分にとっていかに異物であるかとい
撃して、癌が消えるという治療法です。こ
うことを、早く自分自身の免疫に教えない
の方法も一部で行なわれていまして、ある
といけないわけです。
程度効いていると思いますが、 こういうこ
癌 免 疫 療法 の 歴史 を 見 てみ ま すと 、
とを多数の患者さんに行なうことは出来ま
1960年、BCGを打つ、 これは結核菌
せんので一般的に普及することはむつかし
で感染様の刺激を与える訳です。 次にキノ
いでしょう。
コの成分を打つというものです。これらは、
その当時ものすごく売れました。しかし、
免疫 回路 を作 る方 法
そんなに効かないのにと批判を浴びて、一
気に売り上げは落ちました。 今後はまた重
次にお話しますのは、 おそらく近い将来
要になってくると思います。 その後いろい
癌の免疫療法の中心になると考えられてい
ろなものが出て、1990年代から癌抗原
る方法です。癌抗原を皮膚に打つというこ
ペプチド療法や樹状療法が出て、 今後は癌
とです。皮膚の樹状細胞 (抗原提示細胞)
の抗原を打つようなものが中心になり、副
は敷石状に皮膚表面に存在しています。こ
作用のない癌治療の時代が来るのではない
こに抗原が来ますと、 これをパクッと食べ
かと考えております。
まして、例えば脇の下のリンパ球まで抗原
を持ちながらびっくりするくらいの凄い勢
WT 1遺 伝子 の発 見
いで走って行きます。ものすごく早いです。
そして脇の下のリンパ節では、 キラーT細
ここから我々の研究をご紹介させていた
胞が待っています。それに抗原を教え込み
だきます。WT1という名前の付いた遺伝
ますと、キラーT細胞が活性化されて癌を
子をやっております。 これはちょっと難し
殺しに行くということになります。
いと思いますが、転写因子をコードしてお
癌抗原を皮膚に打ちますと、 自然免疫→
り、 癌抑制遺伝子と言われていましたがこ
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第140回琉球フォーラム講演会
れは間違いで、我々の12年間の研究から、
胞にも皮膚に打ったものと同じペプチドが
これは癌遺伝子であり、 白血病とすべての
出ていますので、 これを認識して、 癌細胞
種類の固形癌で非常に強く発現する、汎腫
を殺すということになります。 ですから研
瘍マーカーであることを見つけまして、現
究の第一歩は、皮膚に打つ9個のアミノ酸
在保険採用になるために保険申請中です。
からペプチドをどのようなペプチドにすれ
WT1は、非常に強い免疫原生を有して、
ばよいかという研究から始まりました。
すべての癌に対する癌抗原ということがわ
この研究にだいたい数年かかりました。
かり、 これを用いた癌の免疫治療を始めま
クラスⅠの溝の形は生まれた時からすべて
した。
決まっています。生まれた後で変えること
WT1という遺伝子が作るWT1タンパク
はできません。生まれた時から一人ひとり
抗原には4種類ありまして、全ての癌の種類
決まっています。A-2402という型の方
にこの4つのタンパクが出ており、 これが
は、日本人の約60%です。A-0201と
癌抗原になっているわけです。
いう型のものは約20%です。 タイプに応
癌細胞があるとWT1というタンパクが
じてそれぞれ異なる9個のアミノ酸からな
出ており、それが小さく9個ぐらいに切れ
るププチドを打ちます。A-2402向けの
ると、 クラスⅠという分子の小さな溝には
ペプチドは現在製薬メーカーが薬にしてい
まります。癌の免疫療法は、 癌細胞のクラ
まして、かなり良い物ができてきています
スⅠという分子にはまっている9個のアミ
ので、 近い将来これが薬として世界中に売
ノ酸からなるペプチドを皮膚に打ちます。
られることと思います。 さらに5種類のペ
すると樹状細胞(抗原提示細胞)が同じよう
プチドを見つければ、 日本人の95%に打
にクラスⅠという分子を持っていますので、
つことができます。
クラスⅠの溝にはまります。 すると樹状細
白人は逆に、 A-0201が60%でA-
胞が活性化されてリンパ節に動いて、そこ
2402が20%です。 いずれにしてもこ
でキラーT細胞に抗原を教えます。 すると
の2種類のペプチドで世界中の80%の癌
キラーT細胞がどんどん増えて全身に散ら
患者さんを治療できることになります。ま
ばります。そして癌細胞に達すると、癌細
ず第Ⅰ相臨床試験というのをはじめました。
10
自分の免疫力で癌
(がん)
に克つ
これは副作用がないことを確かめながら効
白血病や肺癌の細胞に含まれるWT1と呼
果を見るという臨床試験です。
ばれる遺伝子からタンパク質を作り患者に
WT1ペプチドを用いた、 世界初の癌ワ
注射します。このタンパク質は免疫細胞に
クチン臨床試験ということで、 スタートす
癌細胞を異物として認識させ、 ワクチンの
る時に新聞(朝日新聞)に紹介されました。
ように免疫の働きを活性化させるというこ
テレビ (NHK)ニュース でも紹介され
ました。
(録画再生)
とで、 マウスを使った実験では癌細胞がほ
とんどなくなったということです。 今回の
臨床試験では、肺癌や白血病の患者およそ
『癌細胞に含まれるタンパク質を体に注射
30人に、それぞれ3回づつ注射して、副
することで、ワクチンのように免疫の働き
作用や治療の効果を見るというものです』
を活性化させて癌細胞を攻撃する新しい治
杉山教授コメント−
療の臨床試験が、大阪大学附属病院で始ま
『例えば大きい癌は切除しますが、 結果的
りました。この治療法は、大阪大学の杉山
に採れない残った癌を免疫でもってきれい
治夫教授などの研究グループが開発し、こ
に掃除してもらう。将来的には癌になりや
のほど肺癌などの患者を対象に臨床試験を
すい方に前もって投与して、 癌にならない
始めました。免疫細胞は、体の中に入った
ように予防するという、 本当にワクチンと
異物を敵と認識して攻撃しますが、 癌細胞
いう感じの時代が来るのではないかと考え
は元々は正常な細胞が変化したもので異物
ます』
と認識されにくいため治療が難しいのが実
状です。今回開発された治療法では、まず
11
第140回琉球フォーラム講演会
てきました。こういう病気は骨髄移植以外
皮膚 に打 つワ クチ ン
直せないのですが、将来的には本当に副作
用のないこのような治療で、 まったく副作
このように皮膚に癌抗原ペプチドを打っ
てキラーT細胞を誘導して癌を殺します。
用がなく治ってしまう時代が来るのではな
いかと思います。
正常な細胞はまったく殺しませんので、副
急性白血病は、正常な血液細胞がまだ残っ
作用は起こりません。 こういうキラーT細
ていますので強い免疫をおこしても副作用
胞は癌だけを見て、正常細胞は見ないので、
は出ません。
癌細胞しか殺しません。
急性白血病の人にWT1ペプチドを入れ
こういう治療法は癌抗原ペプチドが主役
ますと、正常な白血球はまったく影響を受
ですが、脇役としてアジュバントというも
けずに、白血病細胞だけが骨髄の中に2.
7
のがいるのです。 普通は油で、 油と一緒に
%、1.0%というように消えていきます。
打たないと免疫は起こりません。 油と混ぜ
(癌部位の写真を指して)こういうように白
て皮膚に打ちます。
副作用は紅斑が出ます。 副作用はこのよ
うな紅斑だけです。
例えば骨髄異型成症候群(前白血病)の人
血病細胞が見えなくなるということです。
肺癌の人で抗癌剤がまったく効かずに、
(右上がり折れ線グラフを指して)ものすご
い勢いでマーカーが上がり、
(グラフ頂点で)
に、1回0.3mgのペプチドを打ってしま
WT1ペプチド癌ワクチンの投与後は(右
えば、 一気に白血細胞が減ってしまいまし
下がりグラフ)このようにマーカーが下がっ
た。二人目もそうでして、これは一週間目
てきます。
から白血病細胞が減るという、 抗癌剤以上
に良く効いたということになります。
副 作 用 が な い
なぜこんなに効くかというと、 ちょっと
難しい話になりますが、 正常造血は一個の
もう一人の肺癌の方は医者ですが、手術
幹細胞から全ての血液が出来ております。
して癌細胞がまだ残ったのすが、余病を持っ
骨髄異形成症候群では全ての血液細胞が癌
ているので何もしないでくれというので無
になっているので、癌細胞の元のところを
治療でしたが、その後再燃してきました。
一気にキラーT細胞が叩いたために白血病
そこで、WT1ペプチド癌ワクチンを2回
細胞がなくなったと考えています。 ですか
打ったところ、マーカーが正常化しました
ら、 弱い免疫でゆっくり白血病細胞を移し
が、 まったく副作用がありません。 どんど
ていけばいいのではないかと考え、 WT1
ん投与していきますと、 非常に強い皮膚の
ペプチドCYTWNQMNLを5μg/body
反応が起こってきて、 免疫が強くなってき
というごく少量を皮内投与しましたところ、
たことがわかります。
弱い免疫反応がおこりゆっくりと白血細胞
PETという癌の診断法がありますが、
が、まったく副作用なしにこんなふうに減っ
これは放射能を出すブドウ糖を注射します。
12
自分の免疫力で癌
(がん)
に克つ
すると癌がそれを取り込みます。 WT1ペ
ろな臓器障害もまったく出てきません。免
プチド癌ワクチンを投与して有効な人では、
疫というのはそういうものでありまして、
癌の放射性ブドウ糖の取り込みが減り、有
まったくと言っていいほど副作用はありま
効性がわかります。
せん。免疫療法は本来、体の中で起こって
ある乳癌の方は、乳癌の部分切除後、リ
ンパ節転移、骨転移をきたし、 抗癌剤が効
いることを強めるだけですので、 非常に自
然です。
かずに大腸に転移して癌性腹膜炎を起こし
癌患者さんは、 我々の癌ワクチンを打つ
ました。それで腸閉塞を起こしました。癌
前に、 癌を殺すWT1キラーT細胞のパー
性腹膜炎や腸閉塞を起こしますと、 普通は
センテージをみると非常に上がっているわ
皆さん1∼2ヵ月で亡くなります。 この方
けです。ということは、癌になった時点で
にWT1ペプチドを打ちました。 今で1年
癌細胞に対して自ら反応してキラーT細胞
8ヵ月経っていますが、 本人は今すごく元
を作っているということになります。作っ
気です。
ているのですが、先程言いましたように自
WT1ペプチドを打つ前は、 寝たきりで
分自身のものですので、 多分癌細胞を攻撃
したがWT1ペプチド2回打っただけで廊
するのをためらっているわけです。癌になっ
下を歩くようになり、 まったく食べられな
て免疫力は下がっているのではなくて、必
かった方が、ゼリーとかそういうものを食
死になって癌細胞を何とかしようとしてい
べられるようになりました。 5回投与後に
るのです。だけど負けてしまうのです。で
すから外から先程のように皮膚にもう一度
癌抗原を打つことによって、「こいつは悪い
奴なんだ。癌は自分自身の分身ではないん
だ」 ということを考え直してもらうという
治療方法になっているわけです。 外から癌
抗原をうつと、一気にキラーT細胞が癌を
殺しに行って、先程のような臨床効果が出
るということであります。
一連のデータを癌学会で発表しましたら
退院致しまして、9回投与後会社勤めをし
て、 現在1年8ヵ月越えて普通に生活して
「ヨミウリ・ウィークリー」にちょっと派手
な記事が出ました。
ますます元気だということです。 この方は
奇跡の人と呼ばれております。
世界 が注 目 する WT 1
第1相臨床試験を終了した26名の患者
について言えますのは、 正常造血のある人
今 年 3 月、 ベ ル リン で 、 私 とド イ ツの
では、 注射を打った部分が赤くなること以
Thiel 教授の2人で第1回のWT1に関する
外、副作用がないということです。 いろい
国際会議を開催しました。来年日本で、私
13
第140回琉球フォーラム講演会
と Thiel 教授で第2回の国際会議を開きま
性と有効性を見るものです。
す。 WT1癌免疫療法がますます世界の注
先程の第Ⅰ相臨床試験では、 2週間に1
目を集めております。 我々自分で言うのも
回のWT1ペプチドの投与でしたが、今度
変ですが、おそらくWT1は世界で一番の
は毎週打つという臨床実験をやっています。
癌抗原だと思います。 要するに良い癌抗原
急性白血病の一人の患者では (グラフを
を打たないとダメで、 全てはどういう癌抗
指して)すごい勢いで白血病が再発してお
原を打つかで決まってしまいます。 打つの
ります。毎週投与することで、 6ヵ月間再
は誰が打っても一緒で、 どんなよい癌抗原
発を抑え込むことができました。 全く副作
を打つかが全てです。
用はありません。普通抗癌剤でやると大変
WT1はたまたま非常に強い癌抗原であっ
なことになります。
たということになります。 僕らは最初から
多発性骨髄腫は、 確立された治療法がな
そういうことを分かっててやったわけでは
い病気です。この病気の一人の方は、 WT
ありません。いろいろな研究からそういう
1ペプチドを投与することによって骨髄の
可能性があるということでやってきて、や
中の癌細胞が、(グラフを指して)86が74に
はりそうだったということです。 アメリカ
なり、24に減っていきました。 この病気は
やヨーロッパなど、世界が我々の真似を始
世界中で確立された治療方法がなく、困っ
めまして、かなりの激戦になりつつありま
ていました。WT1免疫療法が確立されれ
す。
ば、 いつの間にかこの病気を治せるという
最近、 新しい臨床試験を始めました。こ
れは第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験ということで、安全
14
ことになるでしょう。
膵臓癌の方でまったく食べられなかった
自分の免疫力で癌
(がん)
に克つ
方にWT1ペプチドを打ちますと、 癌マー
とか、 手術をしても癌が残った人に対して
カーが横ばいになり、 食事を自分で採れる
投与しました。
ようになり元気になってきました。
ある脳腫瘍の方では、 WT1癌ワクチン
食道癌の末期の方にWT1ペプチドを打
を打つ前は非常に腫瘍の進行が早く、日に
ちましたところ、大きな癌の塊が1カ月で
日に寝たきりになり、 顔面も強張って言葉
かなり縮みました。私はこれを見まして自
も言えない状況になってきました。 ところ
信を深めたのは、大きな癌の塊は免疫療法
が1回ワクチンを打ち始めたら、 4∼5日
では絶対に治らないと皆が思っていて、世
目からは顔面に表情が出てきて、 ロレツが
界中でそう言っていました。 免疫療法とい
少し回るようになってきました。 脳腫瘍は
うのは本当に小さいものを何とかするとか、
ちょっと大きくなれば神経を圧迫し、それ
取り残したものを何とかするぐらいで、大
がちょっと取れれば神経症状が非常に良く
きな癌細胞の塊に免疫療法が効くはずがな
なるように思います。 4回投与後からは車
いと皆が言っていたわけです。 しかしそう
椅子に座って散歩したり、食事したり、新
ではなくて、うまく条件があえば、 大きな
聞を読んだり字を書いたりできるようにな
癌の塊が僅か1ヵ月でこんなにも縮んでし
りました。短い会話もできるようになりま
まうのだということが分かったわけです。
して、会話中も微笑むようになりまして、
5回投与後には「おはようございます」と
結果が示す有効性
言えるようになり、15回投与後には再手
術を致しました。脳腫瘍のグリオブラストー
この患者さんを見ると、 将来どんな大き
マの治療は、聞くところによると30年間
な癌の塊であっても、 免疫療法で治るので
まったく治療方法が変わっていないと聞い
はないかということを思わせます。 癌の免
ておりまして、大袈裟に言いますとこのよ
疫療法として、9個のアミノ酸を打つだけ
うな新しい治療は30年ぶりのことだと思
で、まったく副作用もなく知らない間に治っ
います。
てしまうということが、 現実的になってく
二人目の脳腫瘍の方では、 再発を致しま
るのではないかと、この事例を見ると思え
したのでWT1ペプチドを打ちました。す
てくるのです。
ると打った直後から腫瘍の縮少がはじまり
我々は文系ではありませんで理系です。
理系というのは証拠を見せる以外ないわけ
まして50%縮小し、 いわゆる部分寛解と
いう状態になりました。
でありまして、この事例は上記のように考
ただ、 この方はワクチンが効き出すまで
えられる証拠ではないかと思うわけであり
は段々悪くなりまして、 2回目を打った時
ます。
には昏睡状態になってしまいました。その
脳腫瘍にはよく効きます。 これはグリオ
後、 4回、 7回とだんだん少しづつ効いて
ブラストーマという最高に悪性度が高いも
まいりまして、8回後には意識もシャキッ
のですが、6人に投与しました。 再発の方
となりまして、子どもさんと歌を歌ったり、
15
第140回琉球フォーラム講演会
9回後には普通に喜怒哀楽を表してテレビ
も観るようになりました。
おります。
新しい治療の開発はスポーツと同じであ
3回投与後のいわゆる昏睡状態の時の脈
りまして、例えば野球でいかにホームラン
拍は、50、20、40とか、時々は止まっ
を打つかは、打ち方を言ってもしょうがな
たりしました。これは、どんどん脳腫瘍が
いことで、打ってみなさいと言われて打て
大きくなって心臓を動かしている神経が圧
なかったら終わりというのが私たちの世界
迫されて止まってしまうということで、こ
です。 私がいくら免疫療法はこうだああだ
うして死ぬわけです。 医者は何も出来ませ
と理屈をこねて言ってもダメで、 ネズミで
んので、ただ見ているだけということにな
試してみたらものすごく効きましたと言っ
ります。9回後に意識が戻った時には、脈
てもダメで、ネズミの癌を治す治療法はた
拍は70ぐらいに戻りました。
くさんあります。 実際、ネズミの癌はよく
再発したグリオブラストーマの生存日数
治ります。しかしネズミに対する癌の免疫
ですが、阪大の脳外科のデータでは4百数
十日で再発された方は全員死亡されます。
現在投与している2人の方は皆さん生きて
おられます。
手術で癌病巣を十分に取り除けなかった
人は診断した日から620日以内に全員亡
くなります。現在4人にWT1癌ワクチン
を投与していますが、 最高619日で全員
生きておられます。
療法のおおくは、 人には効かないのです。
癌は優しく治せる
ですから、癌治療法の開発においてはどん
なに賢いことを言っても、 賢い本を書いて
以上、 ここで症例の提示を終わらせてい
もダメで、野球などでホームランを 「では
ただきますが、おそらく近い将来、 免疫療
打ってみてください」と言われて打てなかっ
法が大きく発展しまして、 優しく癌を治せ
たら 「申し訳ございません」 と言って退場
る時代がきっと来るだろうと私は考えてい
する以外にないという、 スポーツと同じく
ます。免疫療法については、「あんな免疫療
非常に厳しい環境でやっております。打て
法など全く効かない。 ああいうのはまやか
るか打てないかと、毎日そればかりを考え
しだ、詐欺だ」 と書いておられる方もおら
てやっているわけです。(癌治療として)効
れます。知らない方はそう言っております。
くか効かないか、 それしかないわけで、新
しかし、実際は、近い将来、ニコニコ笑っ
しい治療法というのは、 そういう非常に激
ている内に免疫療法で癌が治ってしまうと
しい競争の中から生まれてきます。
いう時代が必ず来るのではないかと考えて
16
そして新薬の成功する確率は、12,00
自分の免疫力で癌
(がん)
に克つ
0分の1です。まず、これはこの薬で治る
て、 古くなった薬をごみ箱に捨てる時には
のではないかと、みんなその時点で凄いネ
拝んで捨てます。神様をいくら拝んでも癌
タと考えるわけです。 みんなこれは薬にな
は治りませんが、良い薬なら癌は治ります
るかも知れないと思うわけですが、 次々と
ので、 薬というのは本当に素晴らしいもの
失敗していくわけです。 マウスで実験して
です。
みても効かない、あるいはマウスでやると
効くが人にやると効かないとか、 何人かの
新 薬 開 発 の 障壁
人に効いたので良かったと思って、 一万人
の人に投与すると一人の人に副作用が出た
免疫療法を開発していく難しさは、まず
とかなれば、ダメです。まだその先にも恐
ネズミに効くか効かないかを実験しますが、
ろしいことが待っています。 人に投与する
ネズミで効いても多くは人には効きません。
時には、最初数十人に投与するわけです。
というのは、ネズミと人とは体質が違いま
それがうまくいっても、 次に数千人に投与
す。 ですから、 ネズミで効いた治療が人で
すると思いがけないことが起きてくること
も効く場合は、ネズミ体質の人にしか効か
があります。そこでまたダメになります。
ないということです(笑)。しかしネズミで
結局、12,000分の1しか残らないわけ
効かないものを人には投与できないのです。
です。
極端なことを言えば、 ネズミ体質の人にし
私は、 薬を神様より偉いと思っていまし
か効かないことになります。 ネズミと人と
17
第140回琉球フォーラム講演会
共通項があるような、 それを狙った治療法
できないと誰も相手にしません。 ノーパテ
なら、 ネズミにも人にも効くということに
ント、ノーキュア(NO PATENTS, NO CURE)
なります。しかし、実際ネズミと人とは違
ということがあります。 もし何かの事情で
います。特に免疫療法はすごく違います。
誰も特許を取らなかったとします。 それが
そこでネズミで効いても人に効かないとい
もの凄い良い治療法だとしても、 結局それ
う矛盾が出てくるのと、 もっともったいな
は薬になりません。もの凄い薬だと思って
いのは、ネズミに効かなくても人に効くも
も、 製薬会社は薬を作りません。 薬を作っ
のが絶対にあるはずです。 しかしネズミに
た時点で皆が真似をします。 まず誰かに作
効かなかったら、もうその治療法はそこで
らせていけると思ったら、 すぐ誰かが真似
終わりです。この12,000分の1に入っ
します。ですから最初に誰も走らないとい
てしまって失敗してしまいます。だから、
うことになります。特許があるから独占で
本当はネズミを通さずにいければいいので
きるので、リスクを犯してでも薬を作ろう
すが、誰も許してくれません。「まずネズミ
とします。誰かが特許を取ってくれないと、
でやりなさい」ということになります。で
人類として非常に損失になるということで
すから非常に難しいです。いずれにしても、
す。 パテント競争は非常に激しく、 誰かが
12,000分の1の確率でしか成功しない
勝たなければ、できたら日本人が勝って欲
ということです。
しいと思いますが、パテントがないと人類
日本が作る薬は、 日本の知性の誇りだと
思います。薬を作れない国は寂しく、薬を
作れる国は素晴らしいと思います。 ここに
いらっしゃる力のある方は、 ぜひそういう
に薬をもたらすことはできないということ
になります。
以上でございます。 ご静聴ありがとうご
ざいました。
(拍手)
行政をやっていただきたいと、 いつも思っ
ております。
厳 し い 特 許 競争
質疑応答−
■永井
寛氏(琉球大学工学部教授)
私、 琉球大学の工学部にいますが、同じ
それに輪をかけて、 さらに激しい特許競
科学者、研究者としまして最後の話はとて
争があります。12,000分の1でうまく
も共鳴しました。とても含蓄のあるお言葉
いっても、特許競争で、(特許庁への届け出
だったと思いました。御礼申し上げます。
が)一週間負けても終わりです。 特許競争
私の質問はうんと素人ぽい「お前、まだ
に負けますと薬は作れません。 それぐらい
そんなことも知らなかったのか」 と言われ
もの凄い競争をしております。12,000
るような質問になるのを恐れますが、丸山
分の1の確率と特許競争、 この2つの難関
ワクチンですが、 私が聞いた話では 「すご
をクリアできないと、 自分の治療法を新し
く良いけれど、日本では正規の治療法とし
く世界に広めることはできません。 これが
ては認められていないんだよ」 というふう
18
自分の免疫力で癌
(がん)
に克つ
に聞いた覚えがありますが、 今はどういう
癌を治せないのです。
評価になっておられるのか、 この免疫療法
一般論ですが、 何とかや何とかが効いた
とどう関連するのか、 もう少し補足してい
と言いますが、効いたとしても千人にひと
ただければと思います。
りでは、それは効いたことにならないとい
うことです。私は経験もしていますが、癌
■杉山治夫教授
一番答えたくない質問でして、 我々医療
が何らかのきっかけで自然に消える場合が
あります。
界はどうしても狭いですから、 自分のこと
例えば先程の感染症など、 大きな感染を
を自分の責任で言うのはいいのですが、他
受けると同時に、癌が消えるかも知れませ
の方を悪いなどというのは非常に難しい部
ん。そういうことが千人に1人とかに起こっ
分がありまして、私は極力言わないように
ていると思います。それを自分たちの治療
しています。しかし質問をいただきました
法と結びつけて言っている可能性もあると
ので、 ちょっと奥歯にものを挟みながら申
思います。ですから千人に1人とか、 百人
し上げたいと思います。
に1人とかに効いても、 それは治療法では
私が言っているのではありませんが、(丸
ないと考えています。 やはり何割かに効か
山ワクチンは)あまり効いていないと思わ
ないと治療法ではないと思います。 そうい
れているのではないでしょうか。 免疫療法
う意味で、我々の間では丸山ワクチンの話
という新しいものを作っている我々は、完
は全く出ませんし、関心もありません。
全に無視しています。 それぐらいの力では
19
第140回琉球フォーラム講演会
■事務局より
ニコニコしながら癌を治すというお話で
から始まりますので、 それでも私たちが早
くて、勝っていると思います。
したが、実用化のメドはいかがでしょうか。
■小林氏
■杉山治夫教授
よく分かりました。昨年、 産学官の会を
このワクチンは大手製薬企業が製剤化し
小泉首相がトップになって開いた時に、そ
ておりまして、かなり出来てきました。最
こにアメリカのひとつの事例としてファイ
短時間で薬になって、 私の夢として、日本
ザーの代表が来られまして、 やはり先生と
人が作った薬を世界中の人々が注射して欲
同じように新薬の開発については10万分
しいと思っています。 そういうふうになる
の1の確率で進めているというお話があり
ように進んでいます。
ました。ぜひ次回はファイザーでご講演を
されたらいいなと思いました。 どうもあり
■小林陽一氏(沖縄総合通信事務所調査官)
私も役所の関係で、 最近になって知財戦
略本部のスキームを受けまして、 知財セミ
ナーなどで、今、先生が懸念されていた件
もやっと行政も動き出したという感じです。
具体的に治療法、その他のお話がありまし
たが、 先生のその辺の手続きは全て終わっ
ているのでしょうか。
■杉山治夫教授
手続きは既に終わっておりまして、私よ
り2ヵ月遅れてアメリカが特許を出し、3
ヵ月遅れでイギリスが出しました。 ですか
ら2ヵ月アメリカに勝ったことになります。
専門家は「まず間違いなく私が勝っている
だろう」と言うのですが、アメリカには先
発明主義という、要するに誰が最初にアイ
ディアを持っていたかというのがあります。
日本は先願主義ですから、 特許庁に早く届
ければ勝ちだということで、 ヨーロッパも
そうです。ですから、日本とヨーロッパで
は完全に私たちが勝っています。 アメリカ
では最初に誰が思いついたかというところ
20
がとうございました。
■
歌 っ て い る場 合 で はな い
ハーバード大学のエズラ・ボーゲル教授
ていて、希望すれば先取り可能なのだそうだ。
が 『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を出
アメリカは伸びる子は伸ばすシステムに
版したのは1979年である。 第1次石油危機
なっている。ライス新国務長官は15 歳で高
後のインフレを克服し、 失業率を高めず、
校を卒業してしまったのだからすごい。
経常黒字を維持、財政もまだまだ健全な状
翻って日本であるが、 教科書の彼我の差
態だった日本が、高く評価されたのだった。
を見ると、やはり「大丈夫なのか」 と思っ
話はかなりずれるが、私の上の娘は、ア
てしまう。日本の教育は詰め込みといわれ
メリカの6年生になった。 算数の教科書を
てきたが、その詰め込みの部分でさえ、か
のぞいてみると、ルートやマイナスの加減
なり負けている。米国では教室内の討論と
乗除、関数……と、私の世代は中学で習っ
かプレゼンテーションとかの訓練もあって、
たことが続々と出てくる。社会科でも、ロー
ここでも負けている。 国際語である英語の
マ帝国の成立とか、アレクサンダー大王の
能力ははじめからかなわないし……。
東征とかやたら詳しい。 こちらは日本の高
校レベルである。
「アメリカ・アズ・ナンバーワン」とい
うつもりでないが、ノーベル賞の数とかオ
娘は土曜日だけ開校する日本語学校にも
リンピックのメダルを日米で比べると人口
通っていて日本の教科書も習う。ところが、
比をはるかに越える大差がついている。日
アメリカの教科書に比べて、 あまりの内容
本ではちょっと前、「明日があるさ」という
の薄さに愕然としてしまう。 社会科は日本
リバイバルソングがはやったが、 そんな暢
の歴史だが、明治維新の後、日清、日ロの両
気な歌を歌っている場合なのか。
戦争を習い、次はいきなり太平洋戦争にと
沖縄には世界一の研究水準を目指す大学
んでしまう。算数も、場合の数とか確率と
院ができるというし、 国連機関を誘致する
いった確か昔は6年生でやった内容がない。
動きもある。世界を目指す心意気はとても
もちろん、 アメリカの6年生がみんなが
すばらしい。
みんな関数を解いているわけでなく、もっ
ただし、 ナンバーワンになるには、それ
と基礎的なところをやっている子もいる。
を裏付ける努力がなければならない。「世界
しかし、進んでいる子にはどんどん難しい
一」 が突然どこからか降ってくると思って
ことをやらせる。カリキュラム表を見ると、
いたら二度とナンバーワンの座はもどって
高校で大学の数学の単位が取れるようになっ
こないのではないか。
21
第141回 琉球フォーラム 講師紹介
◆ 日
時
2004年12月8日(水)12:00∼14:00
◆ 場
所
沖縄ハーバービューホテル
◆ 講
師
高畑昭男氏(毎日新聞論説委員)
◆ 演
題
「ブッシュ再選と今後の日米関係」
高畑昭男(たかはた・あきお) 1949年、東京生まれ。国際基
督教大学教養学部ジャーナリスト学科を卒業し、73年4月、毎
日新聞入社。千葉支局を振り出しに、東京本社学芸部、外信部を
経て、82年8月∼87年10月、ロンドン特派員。以後、外信部
記者(国際軍事戦略、東西核戦略担当)、ウィーン支局長、東欧特
派員、ワシントン特派員、外信部副部長(米・西欧担当)、ワシン
トン支局長(北米総局長兼務)。2000年4月から論説委員(米
外交、 国連、 軍事安全保障担当)。著書「クリントンの大逆転」
(毎日新聞社)、
「図解雑学アメリカ大統領」(ナツメ社)など。
第 1 4 2 回 琉 球 フ ォ ー ラ ム( 1 月 例 会 )案 内
◆
日 時 2005年1月7日(金)11:30−14:00
◆
場 所 沖縄ハーバービューホテル
◆
講 師 田
◆
演 題
原 総一朗 氏(ジャーナリスト)
「2005年、時代を読む」
講演のあと新年会を開催します。
32
1993年
◇ 4・14
◇ 5・12
◇ 6・18
◇ 7・14
◇ 8・11
◇ 9・ 8
◇10・13
◇11・10
◇12・ 8
細川連立政権発足し上原康助長官誕生 コメ大量輸入
パレスチナ暫定自治宣言 全県でウリミバエ根絶達成
ユネスコ事務総長特別顧問 磯村尚徳 「新世界秩序の中の日本」
東京海上研究所理事長 下河辺淳 「21世紀は地方の時代」
野村総合研究所理事長 鈴木淑夫 「日本経済の景気はいつ回復するか」
前駐中国大使 橋本 恕 「中国の現状と今後の日中関係」
政治評論家 三宅久之 「今だから話せる政界再編のウラ話」
長崎オランダ村専務取締役 高田征知 「オランダ村そしてハウステンボス」
住宅金融公庫総裁 高橋 進 「住宅をめぐる現状と課題」
中東調査会理事長 三宅和助 「イスラエルとPLOの歴史的合意と今後の中東」
東京芸術大学長・日本画家 平山郁夫 「私と芸術とシルクロード」
自・社・さで村山政権が発足 北朝鮮の金日成首席が死去
知事選で大田氏が再選 大江健三郎氏にノーベル文学賞
毎日新聞編集局顧問・政治評論家 岩見隆夫 「激動の政局を読む」
矢野経済研究所代表取締役副社長 矢野 弾 「日本の経済の現状と課題」
沖縄開発庁長官 上原康助 「激動する国政に携わって∼沖縄からの視点」
外務省前北米局長 佐藤行雄 「今後の新しい日米関係」
毎日新聞論説委員長 清水幹夫 「最近の政治情勢」
三和総合研究所理事長・経済評論家 原田和明 「最近の経済動向」
国際流通グループヤオハン代表 和田一夫 「ヤオハングループの挑戦」
上海国際問題研究所日本研究室室長 呉 寄南 「最近の中国経済事情」
東京工業大学教授 渡辺利夫 「東アジアの発展動態をどう捉えるか」
KDD総合研究所取締役調査部長 伊藤英一 「マルチメディアの現状と将来」
新王子製紙㈱代表取締役名誉会長 河毛二郎 「経営者 今昔」
サイマル会長 村松増美 「異文化との付き合い方∼沖縄に始まる私の世界」
1994年
◇ 1・13
◇ 2・ 9
◇ 3・12
◇ 4・13
◇ 5・11
◇ 6・ 8
◇ 7・11
◇ 8・ 3
◇ 9・ 7
◇10・12
◇11・ 9
◇12・14
1995年
◇ 1・11
◇ 2・15
◇ 3・ 8
◇ 4・ 5
◇ 5・10
◇ 6・14
◇ 7・19
◇ 8・10
◇ 9・13
◇10・11
◇11・14
◇12・13
阪神大震災で死者5500人余 米兵が少女暴行事件
平和の礎が完成 ラビン首相暗殺 地下鉄サリン事件
臨済宗東福寺管長・東福寺専門道場師家 福島慶道 「心の開発」
中央大学学長 外間 寛 「21世紀に向けての人材教育∼大学の対応∼」
花王取締役 平坂敏夫 「企業経営と情報戦略∼リエンジニアリング成功への課題∼」
通商産業省顧問 岡松壯三郎 「わが国をめぐる国際経済情勢∼日米交渉を中心に∼」
政治評論家 森田 実 「参院選と今後の政局」
元駐米大使 松永信雄 「世界の中の日米関係」
日本将棋連盟棋士九段・永世棋聖 米長邦雄 「棋士から見た 21 世紀の日本」
『ワシントン・ポスト』極東総局長 トム・R・リード 「自信のない時代の日米関係」
住友生命保険相互会社名誉会長 新井正明 「古典に学ぶ経営の心」
国立予防衛生研究所室長 根路銘国昭 「縄文人を育てた琉球の人たち」
米国ハワイ州知事 ベンジャミン・J・カエタノ 「最近のハワイ経済事情」
米コロンビア大学名誉教授・日本文学者 ドナルド・キーン 「私と日本文学」
1996年
普天間基地の返還合意 ペルーの日本大使公邸占拠事件
基地問題で県民投票 又吉栄喜氏「豚の報い」に芥川賞
◇ 1・10 NHK解説主幹 西田善夫 「スポーツ人間像―名勝負、名場面に学ぶ」
◇ 2・14 上智大学文学部教授 アルフォンス・デーケン 「人間関係におけるユーモアの役割」
◇ 3・13 毎日新聞編集局政治部長 岸井成格 「橋本政権の行方」
◇ 4・10 満学協会総裁 愛新覚羅顕琦 「日中両国のはざまにて」
33
◇ 5・15
◇ 6・12
◇ 7・10
◇ 8・14
◇ 9・11
◇10・ 7
◇11・13
◇12・10
学習院大学法学部教授 砂田一郎 「大統領選挙と今日のアメリカ政治」
シンガポール紙コラムニスト 陸 培春(ル・ペイチュン)「アジア人が見た日本・沖縄」
駐ペルー大使 青木盛久 「フジモリ政権のペルーと日本・沖縄」
愛知学院大学大学院教授 島袋嘉昌 「今 沖縄企業に求められているのは何か」
香港大学亜洲研究中心客員研究員 丸屋豊二郎 「香港返還と沖縄」
のこ
株式会社ローヤル社長 鍵山秀三郎 「小さく生きて大きく遺す」
沖縄県副知事 吉元政矩 「沖縄基地の整理縮小と国際都市形成」
大和総研特別顧問・経済企画庁長官 宮崎 勇 「来年の日本経済展望と沖縄」
拓銀と山一が破綻 香港返還 世界同時株安 ダイアナ元妃が事故死
屋良朝苗氏が死去 名護市で住民投票 知念かおり女流本因坊に輝く
首相補佐官(沖縄問題担当) 岡本行夫 「あすの沖縄を考える」
1997年
◇ 1・14
ウミンチュ
◇ 2・ 7
日本セイルトレーニング協会理事長 大儀見薫 「世界の海人がやってくる」
◇ 3・12 地域振興整備公団総裁 工藤敦夫 「都市開発と地域振興」
◇ 4・ 9 静岡県立大学国際関係学部教授 伊豆見元 「朝鮮半島情勢と沖縄」
◇ 5・14 衆議院議員 山中貞則 「沖縄復帰25周年を語る」
◇ 6・11 世界FTZ協会代表理事 レイモンド・ヨシテル・オータニ 「日本の改革は沖縄から」
◇ 7・ 8 沖縄懇談会座長 島田晴雄 「沖縄の自立発展のために」
◇ 8・13 大和総研副理事長 賀来景英 「ビッグバン時代に備える」
◇ 9・10 元沖縄開発庁長官 植木光教 「首里城復元5周年 沖縄の風土と文化への愛着」
◇10・ 8 東海大学教授 唐津 一 「めざせ日本一 沖縄活性化への道」
◇11・ 7 東京外国語大学学長 中嶋嶺雄 「香港返還後のアジアと日本」
◇12・ 4 早稲田大学総長 奥島孝康 「グ ロ ー バ ル ・ス タ ン ダ ー ド の時代を担う若者の育成を考える」
現職の大田氏破り稲嶺知事誕生 ドイツで18年ぶりに政権交代
未曾有の不況で失業者増加 小渕政権が誕生 毒入りカレー事件
衆議院議員・前内閣官房長官 梶山静六 「アジア・太平洋時代とあすの沖縄」
NHK解説主幹 小林和男 「日ロの外交戦略と沖縄」
日本経済新聞大阪本社編集局長 久保庭啓一郎 「混迷の政局を読む」
日本総合研究所理事長 若月三喜雄 「アジア経済危機と日本経済」
駐日ロシア大使 アレクサンドル・N・パノフ 「ロシア側から見た日ロ関係」
毎日新聞東京本社経済部長 菊池哲郎 「政府の総合経済政策で景気は良くなるか」
駐日米国大使特別補佐官 ケント・E・カルダー 「アジア太平洋時代の日米関係」
白 大学法学部教授=政治学 福岡政行 「参院選の結果と政局」
毎日新聞社会長・日本新聞協会会長 小池唯夫 「日本の危機をどうするか」
日本公認会計士協会会長 中地 宏 「これからの企業経営」
南ドイツ新聞 ゲプハルト・ヒールシャー 「コール独首相の退陣と今後のヨーロッパ」
朝日新聞編集委員 船橋洋一 「いま同盟を考える」
1998年
◇ 1・14
◇ 2・10
◇ 3・11
◇ 4・ 8
◇ 5・13
◇ 6・10
◇ 7・ 8
◇ 8・12
◇ 9・ 9
◇10・14
◇11・11
◇12・ 9
沖尚がセンバツで全国制覇 2000年沖縄サミット決まる
コソボ紛争が解決 普天間飛行場の代替にシュワブ沿岸
国連難民高等弁務官 緒方貞子 「世界を回って考えること」
代議士・元科学技術庁長官 田中眞紀子 「21世紀の扉を前にして」
軍事評論家 江畑謙介 「朝鮮半島情勢とアジアの安全保障」
日本経済研究センター会長 香西 泰 「沖縄振興の課題」
沖縄県副知事 牧野浩隆 「基地問題と沖縄経済」
日本経済新聞論説副主幹兼編集委員 田勢康弘 「だれが日本を救うのか」
日本放送協会 会長 海老沢勝二 「デジタル時代の公共放送」
東京女子大学名誉教授 猿谷 要 「多元文化世界の中の沖縄」
駐日米国大使 トーマス・S・フォーリー 「アジアの中の日米関係と沖縄」
1999年
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2・10
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5・12
6・ 9
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8・11
9・14
◇10・15 宮城県知事 浅野史郎 「地方から政治を考える」
◇11・17 著述業 ジャック・ハルペン 「日本人とユダヤ人の発想の違い」
◇12・ 8 野村総研上席エコノミスト 植草一秀 「2000年の日本経済」
沖縄サミット開催
琉球王国のグスクが世界遺産に
朝鮮半島で南北和平会議
那覇市政32年ぶり保守が奪還
浴風会病院院長 大友英一 「ぼけになりやすい人、なりにくい人」
日本国際問題研究所理事長 外務省顧問 小和田恆 「沖縄サミットの意義」
アサヒビール 名誉会長 樋口廣太郎 「2000年!日本経済新生への提言」
公共広告機構理事長 寺尾睦男 「女性の時代。女房なんて怖くない−と言ってみたい」
経済評論家 佐高 信 「異議あり!日本」
プロ野球セ・リーグ会長 高原須美子 「21世紀は心の時代−フィンランドと日本」
東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長 中村祐輔 「21世紀はヒトゲノム時代」
慶応大学教授 小此木政夫 「韓国情勢、北朝鮮情勢」
毎日新聞社編集委員 岸井成格 「森政権と今後の政局」
京都大学大学院教授 家森幸男 「長命から長寿への食生活−沖縄サミットでの報告から−」
駐日中国特命全権大使 陳 健 「沖縄から見る東アジア地域の協力」
戦略国際問題研究所上級副所長 カート・M・キャンベル 「アジア安全保障の将来と沖縄」
2000年
◇ 1・12
◇ 2・16
◇ 3・14
◇ 4・12
◇ 5・10
◇ 6・14
◇ 7・12
◇ 8・ 9
◇ 9・19
◇10・11
◇11・ 8
◇12・13
米中枢同時テロ
小泉内閣発足
国内初の狂牛病
米テロで沖縄観光に打撃
米兵事件頻発し地位協定改定世論高まる
ノンフィクション作家 秋尾沙戸子 「アジアの女たち」
駐横浜大韓民国総領事 徐 賢燮 「新しい韓日関係を目指して」
台北駐日経済文化代表處代表 羅 福全 「台湾の新政権と東アジア」
ブルッキングス研究所上級特別研究員 ラエル・ブレナード 「日米経済関係の新局面」
ドイツ‐日本研究所所長 イ ル メ ラ ・ 日 地 谷 ‐ キ ル シ ュ ネ ラ イ ト 「文 化 比較 か ら 何を 学 べる か 」
富士通総研理事長 福井俊彦 「日本経済の展望」
神戸大学大学院法学研究科教授 五百旗頭 真 「アジア太平洋に生きる」
自由民主党元幹事長 加藤紘一 「参院選後の政局」
京都大学東南アジア研究センター教授 濱下武志 「アジアネットワークの中の沖縄」
多摩大学名誉学長 グレゴリー・クラーク 「クラーク先生の日本人論」
元ソ連大統領 ミハイル・ゴルバチョフ「グロ ー バリ ゼ ーシ ョン の 時代 − ロシ ア と沖 縄 の経 済 交流 」
共同通信社論説副委員長 春名幹男 「米中枢同時テロで激変した世界」
2001年
◇ 1・17
◇ 2・14
◇ 3・14
◇ 4・11
◇ 5・ 9
◇ 6・14
◇ 7・11
◇ 8・ 8
◇ 9・17
◇10・10
◇11・15
◇12・12
初の日朝首脳会談―拉致被害者5人帰国 国連のイラク査察再開
サッカーW杯で日本躍進 ノーベル賞初の日本人W受賞 沖縄振興新法スタート
厚生労働大臣 坂口 力 「差別なき社会をめざして−雇用・失業、狂牛病、ハンセン病問題」
北海道大学法学部教授 山口二郎 「小泉改革・政治の行方」
毎日新聞社社長 斎藤 明 「新聞ジャーナリズムのこれまでとこれから」
駐日シンガポール大使 チュー・タイスー 「日本・シンガポール関係の発展−沖縄の可能性」
総務省総務審議官 月尾嘉男 「IT革命と社会変革」
元西鉄ライオンズ投手 稲尾和久 「鉄腕稲尾の人生論」
沖縄担当大臣 尾身幸次 「沖縄新大学院大学構想について」
三井物産戦略研究所所長 寺島実郎 「21世紀の日米関係と沖縄」
慶応大学経済学部教授 金子 勝 「アメリカのバブル破綻と日本経済の動向」
弁護士 堀田 力 「生きがい大国への道」
ジャーナリスト 歳川隆雄 「小泉訪朝の内幕と朝鮮半島情勢の行方」
日本共産党委員長 志位和夫 「日本外交、日本経済の未来と日本共産党」
2002年
◇ 1・12
◇ 2・13
◇ 3・13
◇ 4・10
◇ 5・ 8
◇ 6・12
◇ 7・13
◇ 8・14
◇ 9・18
◇10・ 9
◇11・13
◇12・11
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2003年
◇ 1・15
◇ 2・12
◇ 3・ 5
◇ 4・ 9
◇ 5・14
◇ 6・11
◇ 7・ 9
◇ 8・13
◇ 9・10
◇10・15
◇11・19
◇12・10
米英がイラク戦争 邦人外交官2人がイラクで殺害される
新型肺炎(SARS)が世界的流行 沖縄都市モノレールが開業
台風14号が宮古島で猛威
岩手県知事 増田寛也 「地方の自立のために」
在日中国人ジャーナリスト 莫 邦富 「中国最新事情−日本企業がなぜ中国に敗れるのか」
法政大学総長 清成忠男 「新振計はベンチャーの気概で」
ヨット冒険家 堀江謙一 「未知への航海」
ジャーナリスト、アラブ研究者 平山健太郎 「イラク戦争後の中東」
東京大学医学部名誉教授 養老孟司 「脳と現代社会」
大阪大学産業科学ナノテクノロジーセンター長 川合知二 「ナノテクノロジーがひらく社会」
チャイコフスキー財団総裁 アンドレイ・シェルバック 「ロシア―沖縄を結ぶ音楽交流の提案」
エコノミスト 國定浩一 「阪神タイガース優勝の経済効果」
マサチューセッツ工科大学教授 ジェローム・フリードマン 「科学の力と沖縄大学院大学」
毎日新聞社編集委員 岸井成格 「総選挙の結果と今後の政局」
音楽評論家 青木 誠 「沖縄音楽の魅力」
2004年
◇ 1・14
◇ 2・10
◇ 3・10
◇ 4・10
◇ 5・10
◇ 6・ 9
◇ 7・14
◇ 8・11
◇ 9・ 8
◇10・13
◇11・10
◇12・ 8
36
元自由民主党幹事長 野中広務 「今、日本を憂う」
前駐レバノン大使 天木直人 「これでいいのか日本外交」
アジア経済研究所参事 酒井啓子 「イラク復興と自衛隊」
堀場製作所会長 堀場雅夫 「自今生涯―産学連携と経営」
埼玉県志木市長 穂坂邦夫 「地方行政刷新と元気なまちづくり−ピンチをチャンスに変える」
韓国・世宗研究所首席研究委員 白 鶴淳 「金正日体制と韓国・北朝鮮統一の展望」
東京農業大学教授 小泉武夫 「琉球礼賛―泡盛、発酵食品、スローフード」
全米インディアンゲーミング協会研究部長 キャサリン・A・スピルディ「カジノ・ギャンブルの社会的影響」
東京大学名誉教授 畑村洋太郎 「失敗学のすすめ」
国立民族学博物館教授 石森秀三 「観光立国の未来像」
大阪大学大学院医学系研究科教授 杉山治夫 「自分の免疫力でがんに克つ」
毎日新聞論説委員 高畑昭男 「ブッシュ再選と今後の日米関係」
編 集 後 記
●…「近い将来、 ニコニコ笑いながら癌治
しく書かれていまが、 今年の8月にその奥
療が可能になる」
。杉山教授のひと言は強い
様も亡くなりました。 田原氏は日曜日のテ
インパクトを残しました。 癌治療は、癌の
レビ討論番組「サンデープロジェクト」で厳
苦しみはもとより、抗癌剤や放射線治療の
しい司会進行をしていますが、
「私たちの愛」
副作用に患者は苦しめられます。脱毛、吐
では、 弱気な素顔が映し出されています。
き気など、 患者の苦痛は深刻です。これら
「僕は君が死んだら、すぐに後を追うよ」−。
の副作用がない「癌ワクチン」 が開発され
本の帯にも書かれた田原氏の心情です。 こ
つつあるということですが、 狐につままれ
の台詞が示すように、 癌との闘いを通して
た会員もいたのではないでしょうか。しか
2人の愛はさらに深まっていきます。 ニコ
し、臨床試験は最終段階にきており、国の
ニコ笑いながら癌治療ができたらそういう
承認審査が予定通りいけば、 数年後には新
悲壮な台詞も不要となるでしょう(…か)。
薬が誕生する運びになっているようです。
●…さて、今年も最後の琉球フォーラムと
●…癌と言えば、来年1月の講師としてお
なりました。イラクでは硝煙が上り続けて
迎えする田原総一朗氏は二人の奥様を乳癌
いますが、米国民は結局、 ブッシュ大統領
で亡くしています。お互いに家庭を持ちな
を再選しました。「ブッシュの戦争」を支持
がら恋愛関係を続け、晴れて結婚に至った
して自衛隊派遣に踏み込んだ小泉政権の行
過程は近刊の「私たちの愛」(講談社)に詳
方はどうなるのでしょうか。
月刊・琉球フォーラム
(N)
第140号
2004年12月8日発行
発
編集人
仲
田
清
喜
発行人
比
嘉
辰
博
行
琉球新報社琉球フォーラム事務局
〒900-8525 那覇市泉崎1−10−3
TEL.098(865)
5177 FAX. 098
( 869)9171
印
刷
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TEL.098(858)
7895 FAX.098
(858)7893
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