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2016 年は中国の経済成長、米国における利上げペース

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2016 年は中国の経済成長、米国における利上げペース
機関投資家向け資料
FROM THE FIXED INCOME DESK
リアンチューン・コー 日興アセットマネジメント アジア リミテッド債券運用部ヘッド
MONTHLY OUTLOOK
2016 年は中国の経済成長、米国における利上げペース、新興国の動向が焦点に
2016 年 1 月
本レポートは、英語による 2016 年 1 月発行「FROM THE FIXED INCOME DESK」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。
サマリー
• 12 月、FRB(米連邦準備制度理事会)は政策金利を引き上
げたが、緩やかなペースでの利上げを表明し、これを受け
て、米 2 年国債利回りは 1.05%、米 10 年国債利回りは
2.27%と、前年末より高い水準で 2015 年の取引を終えた。
一方、原油価格は供給過剰の長期化懸念を背景に急落し
た。
• 中国では、13 通貨のバスケットに対する人民元の価値を表
わす新たな貿易加重ベースの人民元指数が公表された。
• ムーディーズは韓国国債の信用格付を一段階引き上げて
Aa2 とした。また、韓国銀行は 2016~2018 年の消費者物
価上昇率の目標値を 2%に設定した。
• インドでは、2016 年度の経済成長率予想が+7.0~7.5%に
下方修正された。インドネシアでは、中央銀行が、主要政策
金利の据え置きを決定したほか、2016 年の経済成長率は
+5.2~5.6%となるとの見通しを示した。
• 12 月のアジア・クレジット市場は、米国債利回りの上昇や、
市場における流動性懸念の高まりによる信用スプレッドの
拡大を背景に、下落した。
• 12 月のアジア投資適格債のリターンは-0.20%となり、ア
ジア・ハイイールド債の-0.49%を上回った。
• 中国当局による追加金融緩和観測への期待を背景に、12
月の中国クレジット市場は相対的に堅調に推移した。
• 12 月のアジア・クレジットのプライマリー市場は閑散とした
状況で、投資適格債の新規発行が 5 銘柄で合計 48 億米ド
ル、ハイイールド債の新規発行が 4 銘柄で合計約 40.5 億
米ドルにとどまった。
• インド国債とインドネシア国債については、ポジティブな見
方をしている。また、フィリピンペソとインドルピーについて
は、今後のアウトパフォームを予想している。
• 2016 年においては、中国の経済成長、米国の利上げペー
ス、新興国の動向が鍵になると考えている。
• 2016 年のアジア・クレジットのリターンは前年よりもやや弱
含みそうだが、アジア投資適格債のトータルリターンは
2.1%前後、アジア・ハイイールド債のトータルリターンは
4.3%前後になるのではないかと予想している。
アジア諸国の金利と通貨
投資環境
• 米国債利回りは上昇
12 月の米国債市場は、比較的狭いレンジ内で推移する展開と
なり、下落して月末を迎えた。当月、FOMC(米連邦公開市場委
員会)メンバーは、全会一致で短期金利の 0.25%引き上げを
可決し、FRB は政策金利正常化のプロセスに入った。それに伴
なう声明や記者会見では、市場に向けて、今後の利上げペー
スが緩やかなものになること、さらなる利上げについては主に
インフレ見通しに応じて判断することが示唆された。一方、原油
市場においては、供給過剰の長期化懸念を背景に 原油価格
がまたも急落した。月末にかけて 350 億米ドルの米国債入札
が行なわれたが、投資家からの需要は 2009 年以来の低水準
となった。米 2 年国債と米 10 年国債の利回りは、それぞれ、
11 月末の水準と比べて約 0.117%と約 0.063%上昇し、1.05%
と 2.27%で年末を迎えた。2014 年末と比べると、米 2 年国債
利回りは 0.383%、米 10 年国債利回りは 0.098%の上昇となっ
た。
日興アセットマネジメント株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 368 号
加入協会/一般社団法人 投資信託協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、日本証券業協会
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機関投資家向け資料
<HSBC アジア・ローカル・ボンド・インデックス(ALBI)>
相手国の 13 通貨が含まれ、構成比率上位 3 通貨は、米ドル
(26.4%)、ユーロ(21.4%)、円(14.7%)となっている。
2015 年 12 月 31 日までの 1 ヵ月間
ALBI
タイ
台湾
韓国
シンガポール
フィリピン
マレーシア
インドネシア
インド
香港
中国(オフショア)
中国
• ムーディーズが韓国を格上げ、韓国銀行はインフレ目標
-0.1%
達成の決意を改めて強調
ムーディーズは 12 月、「強固で弾力性のある」信用力と慎重な
財政政策を評価し、韓国の信用格付を Aa3 から Aa2 へと引き
上げた。これにより、韓国の信用格付は中国を一段階上回り、
日本を二段階上回ることとなった。一方、韓国銀行は、インフレ
率の目標レンジの設定を廃止して、インフレ目標を単一の数値
とすることを選択し、2016 年からの 3 年間の消費者物価指数
(CPI)の上昇率目標を 2.0%に設定した。韓国銀行は、将来に
おいて総合 CPI の実績値が 6 ヵ月連続で目標値から逸脱した
場合、公式にその説明を行なうと表明した。
-4%
-2%
債券
0%
2%
通貨
2014 年 12 月 31 日から 2015 年 12 月 31 日までの 1 年間
ALBI
タイ
台湾
韓国
シンガポール
フィリピン
マレーシア
インドネシア
インド
香港
中国(オフショア)
中国
-20%
• インド当局が GDP 成長率予想を下方修正
インド当局は、中期経済報告において、2016 年度の実質 GDP
成長率予想を、予算編成時の見積りであった+8.1~8.5%から、
+7~7.5%へと大幅に下方修正した。インド財務省は、消費需
要と民間投資の低迷が同国経済にとっての主な逆風になると
強調し、2016 年度は緩和的な金融・財政政策がとられるべき
だと表明した。
-3.2%
• インドネシアの中央銀行はハト派的な姿勢を維持
12 月、BI(インドネシア銀行)は政策金利を据え置いたが、記者
会見において「今後の金融緩和余地は大きいと見ている」と発
言するなど、近い将来 BI が金融緩和を行なう可能性は高まっ
た。インドネシアの 11 月の総合 CPI 上昇率は、前月から約
136 ベーシスポイント低下し、前年同月比+4.9%となった。BI
は 12 月の総合 CPI 上昇率は前年同月比+3%を下回る可能
性があると見ており、それは BI に景気刺激策のための利下げ
の余地を提供するだろう。また、BI は、同国政府による財政出
動拡大の発表を受け、2016 年の経済成長率が 2015 年の
+4.8%(予想)から+5.2~5.6%に改善すると見込んでいる。
-10%
債券
0%
10%
通貨
(注) 各国債券のリターンは現地通貨ベース、各国通貨と ALBI の
リターンは米ドル・ベース。グラフ・データは過去のものであり、
将来の運用成果等を約束するものではありません。
(出所)信頼できると判断した情報をもとに日興アセット
マネジメント アジア リミテッドが作成
(2015 年 12 月 31 日現在)
• CFETS が新たな人民元指数を公表
PBoC(中国人民銀行)は、人民元取引のさらなる自由化に向け
て歩みを進めた。CFETS( 中国外国為替取引システ ム)は、
2015 年 12 月 11 日、米ドルに対する人民元の連動性へのフォ
ーカスを弱め、通貨バスケットに対する人民元の価値変動にフ
ォーカスを移すことを目的とすると見られる貿易加重ベースの
人民元指数を公表した。通貨バスケットには中国の主要貿易
今後の見通し
• インドネシア国債とインド国債についてはポジティブな見方
米国の政策金利の上昇が緩やかなものになるとの予想の下で、
相対的に利回りの高い債券が恩恵を受けると見ている。インド
ネシア国債については、ポジティブな見方をしている。インドネ
シアでは、政策金利が比較的高い水準にあることの効果で、物
価上昇圧力が和らぐと考えられる。そのことは、BI に景気刺激
のための利下げの余地を提供するとともに、同国の対外収支
を安定化させ、相対的に利回りの高い債券へのニーズによっ
てインドネシア国債への需要を増加させる働きをするだろう。イ
ンドについても、2016 年にはインド準備銀行による追加利下げ
の発表があるものと予想している。また、実質金利が相対的に
高いことや、HSBC アジア・ローカル・ボンド・インデックスにおい
てインド国債の構成比率が引き上げられる可能性があることな
ども、同国の国債にとっての支援材料となっている。
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加入協会/一般社団法人 投資信託協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、日本証券業協会
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機関投資家向け資料
• フィリピンペソとインドルピーのアウトパフォームを見込む
フィリピンペソについては、同国株式市場からの資金流出の影
響によって下落圧力にさらされる可能性はあるが、足元の経常
黒字と、地域内の各国に対するフィリピンの、相対的に強い、
ポジティブな経済成長見通しが、そのアウトパフォームに拍車
をかけるものと見ている。さらに、フィリピンの中央銀行は、地
域内の他の金融当局とは異なり、インフレリスクの高まりを受
けて、よりタカ派的な金融政策スタンスをとる可能性が高いこと
も、フィリピンペソを選好する理由となっている。インドルピーに
ついても、同国証券市場への資金流入の増加予想や、原油安
の継続を好感しており、ポジティブな見通しを持っている。
<JP モルガンアジア・クレジット・インデックス(JACI)>
インデックスの推移(期間:2014 年 12 月 31 日~2015 年 12 月 31 日)
108
106
104
102
100
98
96
94
2014年12月
2015年3月
JACI
アジア・クレジット
投資環境
• 12 月のアジア・クレジット市場は下落
12 月のアジア・クレジット市場のリターンは、米国債利回りの上
昇や信用スプレッドの拡大を背景に、マイナスとなった。当月の
アジア・クレジットの信用スプレッド拡大の背景には、ある米国
ハイイールド債ファンドによる解約制限の発動を受けた流動性
懸念の高まり、コモディティ価格のさらなる急落、南アフリカや
ブラジルなど複数の新興国を巡る懸念の強まりなどの影響が
ある。12 月のアジア投資適格債のリターンは-0.20%となり、
アジア・ハイイールド債の-0.49%を上回った。
2015年6月
JACI 投資適格債
2015年9月
2015年12月
JACI ハイイールド債
(注) リターンは米ドル・ベース。2014 年 12 月 31 日を 100 として指
数化。グラフ・データは過去のものであり、将来の運用成果等
を約束するものではありません。
(出所) JP Morgan (2015 年 12 月 31 日現在)
今後の見通し
• 2016 年は中国の経済成長、米国の利上げペース、新興国
の動向が焦点に
アジア諸国の 2016 年の経済成長率については、概ね安定的
な推移が続くものと予想している。投資家の注目は、引き続き
中国の経済指標に集まるだろう。中国では、当局が金融緩和、
• 追加金融緩和への期待が中国クレジット市場を下支え
財政出動、特定のセクターに的を絞った、リバランスを通じて経
12 月、中国では CEWC(中央経済工作会議)が開催された。そ 済を下支えしており、緩やかな成長鈍化が予想される。それほ
のプレスリリースの中では、安定成長に向けてさらなる政策緩 ど広がりのある問題ではないが、インドとインドネシアでは、改
和が必要であると述べられた。加えて、財政政策はプロアクテ 革期待が高まり始めてから 2 年が経過しており、今後の パフ
ィブでなければならないとされ、中国政府が企業の負担軽減措 ォーマンスの伸びが下支えされるためには、目に見える改革路
置を導入予定であることへの言及もなされた。中国政府は、出 線の成果が必要となってくるだろう。アジア諸国の国内資金調
稼ぎ労働者に都市部での住宅購入を奨励することで、不動産 達環境は厳しい状況が続く見通しだが、企業は資本支出を縮
セクターの需要押し上げを目指すと述べ、また、在庫調整を促 小し、引き続き M&A も控えていることから、コモディティセクタ
進するために、不動産デベロッパーに値下げをより一層奨励し ーを除き、アジア投資適格社債の発行体の信用力は概ね安定
ていく考えを示した。これらの発表を受けて不動産セクターに した状態が続くと考えられる。アジア・ハイイールド債市場では、
対するセンチメントが改善したことを追い風に、中国クレジット 世界のコモディティ価格に回復が見られない場合、金属・鉱業
市場は相対的に堅調に推移した。
セクターや石油・ガスセクターの発行体はさらなる逆風にさらさ
れる可能性がある。しかし、中国不動産セクターのハイイール
• 12 月は新規発行が減少
ド債については、オンショア社債市場の開放によって資金調達
年末の休暇シーズンを迎えて市場が閑散とした状態となるな コストが低下し、その恩恵を受ける可能性がある。アジア・ハイ
か、アジア・クレジット、特に投資適格債の新規発行が減少した。 イールド債のデフォルト率は、引き続き上昇するものと予想さ
12 月は、投資適格債の新規発行はわずか 5 銘柄で、発行額 れているが、償還期限がより扱い易いものになることを背景に、
は合計約 48 億米ドルとなり、そのうち約 35 億米ドルはインド 2015 年の 2.9%から、若干低下するものと見られる。
ネシアの海外発行ソブリン債 2 銘柄であった。ハイイールド債
については、新規発行額は 4 銘柄で、発行額は合計約 40.5 • 2016 年のアジア・クレジットのリターンは前年よりやや弱含
億米ドルとなり、そのうち約 30.5 億米ドルは中国建設銀行が
む見通し
発行した Tier 1 資本証券であった。
緩やかではあろうものの米国の追加利上げの可能性、新興国
市場の低迷、足元でのバリュエーション水準を背景に、2016 年
のアジアの投資適格債とハイイールド債のリターンは、前年よ
りやや弱含む見通しだ。アジア投資適格債については、幾分の
ボラティリティを伴うものの、+2.1%前後のトータルリターンに
なるのではないかと予想している。ここからいくらか信用スプレ
ッドが縮小しても、FRB が金融引き締めを続けて米国債利回り
が上昇することによって、相殺か、それ以上になる可能性があ
り、リターンの大半を左右するのは結局のところキャリーの水
準となると考えられる。アジア・ハイイールド債については、大
方のセクターのファンダメンタルズが未だ厳しい状況にあるが、
特に、中国不動産セクターのように、ファンダメンタルズが相対
日興アセットマネジメント株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 368 号
加入協会/一般社団法人 投資信託協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、日本証券業協会
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機関投資家向け資料
的に良好なセクターが割高な水準で取引されている場合には、
信用スプレッドがある程度拡大する可能性がある。ただ、アジ
ア・ハイイールド債は相対的にキャリー水準が高く、信用スプレ
ッド拡大やリスクフリーレート上昇の影響をある程度吸収できる
と見込めるため、アジア・ハイイールド債の 2016 年のリターン
は+4.3%前後になるのではないかと予想している。なお、主な
下方リスクとしては、他の新興国市場におけるさらなる悪化の
影響が波及するリスク、想定以上に景気が減速するリスク、中
国の金融システム不安が深刻化するリスク、米国において予
想以上に早いペースで利上げが実施されるリスクなどが挙げ
られる。
当資料は、日興アセットマネジメント アジア リミテッド(弊社)が市況環境などに
ついてお伝えすること等を目的として作成した資料(英語)をベースに、日興ア
セットマネジメント株式会社が作成した日本語版であり、特定商品の勧誘資料
ではなく、推奨等を意図するものでもありません。また、当資料に掲載する内容
は、弊社および日興アセットマネジメントのファンドの運用に何等影響を与える
ものではありません。資料中において個別銘柄に言及する場合もありますが、
これは当該銘柄の組入れを約束するものでも売買を推奨するものでもありま
せん。当資料の情報は信頼できると判断した情報に基づき作成されています
が、情報の正確性・完全性について弊社および日興アセットマネジメントが保
証するものではありません。当資料に掲載されている数値、図表等は、特に断
りのない限り当資料作成日現在のものです。また、当資料に示す意見は、特に
断りのない限り当資料作成日現在の見解を示すものです。当資料中のグラフ、
数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありませ
ん。当資料中のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するもので
はありません。なお、資料中の見解には、弊社および日興アセットマネジメント
のものではなく、著者の個人的なものも含まれていることがあり、予告なしに変
更することもあります。日興アセットマネジメント アジア リミテッドは、日興アセッ
トマネジメント株式会社のグループ会社です。
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