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1980年4月号 - TOK2.com

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1980年4月号 - TOK2.com
なせミュラード形に
清畠したか
現在の管球アンプは国の内外を闘わ
+,たいへん少なくなっている.これ
は世界的に真空管の塑造が少なくなっ
ているからで,わが国でも2-3年前
に中止になっているが,大都会の真空
管専門店でも国産の真空管はだんだん
なくなってきて,輸入業者が世界のす
みすみからかき集めた少数の種類の真
空管を管球ファンに提供しているだけ
諺.
一飯に規格なども知られている真空
管として,出力管では2A3, 6L6
cc, KT-66, KT-88, EL84 (6
BQ5), EL34(6CA7),低周波
用の増幅管としては6cc7/6FQ
7, 6J5, 6SJ7, 6SL7, 6
SN7GTB, 12BH7A, ECC81
(12AT7), ECC82 (12AU7), ら
CC83 (12AX7), ECC85 (6A
Q8), EF00(6267)等がある・
そこでこれらの真空管を使って何か
アンプを作れないかと,著名アンプの
回路図をひっくりかえしていたら,イ
ギリスのミュラード型のアンプがEF
的 ECC83, EL84の組合わせで載
っていたのでこれを作ろうと思った
ら F86は国産では6267としてナショナ
ルが, ECC83は12AX7, EL84は
6BQ5としで国産品があるので,ど
こかの球屋か ジャンクボックスのす
みにある球ばかりだということも考慮
した.
ミュラード型のアンプは最近のアン
プの主流であり,今でも使われている
◆
ということは現代トーンとしてマッチ
真空管式パワー・アンプの中でI3,回玲構成が比較的簡単なわりlこ
するはずであるとの予想で,製作にか
利得が大きく,フィードバック量も大きくとれるミュラード型回路
かることにした.
は,従来からメーカー製品にも多く採用され,またアマチュアもい
ミュラード回路の考えかた
ろいろな真空管を用いて拭作しています.今回は,このミュラード
型原回指を検討して,よりその特徴を生かした彰の小型パワー・ア
ンプを試作していただきました.出力は12W,高能率化に進みつつ
ある最近の中級SPシステムならば十分の音量が得られるパーソナ
ル・アンプとしておすずめします. (〟)
◆
ミュラード・アンプのオリジナルは
第1回のような回路で.よくみかける
何のへんてつもない回路のようにみえ
る.ところがなかなかよく考えられて
いることが,分析してゆくうちにわか
ってくる.
肌2015 i∴ 1980年4月号より ∴ 139
回路の初段Vlは5極管の増階段
で.カソードのバイアスもかけている.
6267のプレート供給電圧を約150V,
カソード笛流を0.5mAと推察する
ど, gmは0.8m取 5極管の増幅度
Aを,
A-g-x謀×o・95
から求めてみると, ー
A-04Ex0--.15・ 5
A≒115 (倍)
くらいで動作していそうである.
(1 )位相反振回路の増帽度
V2へは直結となっていて,次段
VI2はカソード結合型位相反転回路と
なっている.この他相反転回路は英国
でよく使われ, I)-ク型アンプにも使
われている.回路は入力側でない方の
(第1図) LP初期に発表された高利得位相反転回路をもつミュラード形アンプの原回路
グリッドが大容量コンデンサでアース
グリッドが交流的にアースされている
され,グリッドが交流的にアース電位
Ⅴ'2のカソードが㊥になり.グリッド
であり,カソードで結合されているの
側はアースされているから,この球の
で,カソード結合型と呼ばれている.
プレートには㊥が生じることになる.
動作はV2の入力に㊥を加えると,そ
P-K分割型では100%の電流帰還を
のプレートには当然eの出力が出ると
かけているので.増幅度は全くない
同時に,カソードは㊥となる.これは
那,カソード結合型位相反転は.一般
P-K分割型の位相反転と同じだが,
の抵抗容量結合型の増慣段のように,
08
位相反転させながら増幅する利点があ
3極管の増態度は「股に A-p・αl
球の内部抵抗, Rな)は次段の負荷抜
読, 輿,1はプレート負荷掻抗, R自i
結合カソードの抵抗値を示す.本回路
の場合はrpは55kQ, A.1-820kQ.
R。1-100kQ, Rk-飴k【l. 〟-100だか
ら, R814Rpl≒89k2として,
(1+100)68 6800
つまり2.1%のアンバランスとなる.
で表わせる. αはR,lllに対する係数,
804
しかし,Rkが68knと大きく, Liも100
lはEbb-0. 3IlI300に対する係数で.
12AX7のLlは100, R, itl00kQ,
02
Ebbは約180Vとすれば,
0
(1 + LL)RB
のアンバランスを生じる.ここでrpは
m=・- 55+89 ≡_壬生=0.021
ら.
06
m =重訂Rgl〟Rp,
I 2 3 4 6
Rp/r(m)
(第2図) 3撞管の増照度の係数α
7.0
R塵器㈱'- 1
と大きいのでこれだけの誤差ですみ,
わざわざ補正しなくてもいいが,もし
シビアに考えれば,グリッドが交流的
にアースしてある方のプレート負荷握
抗R,Bと次段の負荷抵抗R暮2との並
第2回よりα-0.4,
Ebb-0・ SLL-180-0・ 3× 100=0. 5
列値(この場合,並列値は89kQ)に2
%の補遺をする.
300 300
89 × 1. 02≒91(kQ),
08
第3回よりl-0.9となるから,
A-100×0.4×0.9-36 (倍)
qaS
04
えるのは好ましくないので, R。2を変
になりそうだが,カソード・パスコン
える.合成抵抗をRとすると, R-
かないので, 25倍になるだろう.
R。2×R82I(良,2+R。2)だから.
(2)利得の補正は必要か
またカソード結合型位相反転回路は
a2
R82は時定数を変化させるので,蕊
グリッドを交流的にアースした球の利
∴ Rp2=R・Rg2/(RBs-R)
91×820 74620
820 - 91 729
0 02 04 06' 08 LO
(fbら-arm)/GW
(第3図) 3痘苗の増幅度の係数1
140
得が有限なので,理論的に,
≒ 102(kO)
つまりプレート負荷抵抗を102kOとす
ラ ジオ技術
鯛醒計銅蛾
慧
蒜
∽
- の し け ( ペ
ソ 転 か か 図 す
カ反生分蕗は
5が高能率管だけにかなりいけそうだ
eカソード結合型位相反転回路のグ
が高LL3極管(これは位相反転回路の
バランスをよくするため)のために高
が',ミュラード回路の本質とかけ離れ
リッドを交流的にアースするコンデン
てしまい,おもしろくないので,やめ
サを0・lIIFから0.33LLFとし,時定
利得で,ループ内利得が驚くほど高い.
ることにした.
数を330(LLF・kQ)とした.
このため出力管には大入力型の出力管
2A3, 6L6(T)等が使える.
その加わりにせっかくいい低域を大
切にする意味で,
0部品と球数がアルテック型に次い
で少ないことは,廉価だJ'し故障の確率
e出力段のカソード・バイアス回路
は6BQ5のペアー・チェ-ブの使用
0初段6267のスクリーン・パスコン
を0. 2LLFから20LLFに変更.
で共通カソード式としだ ただし,ペ
アー・チューブの入手できない場合は
も低く,メインテナンスも容易であ
る
e各段のデカップリングが直列(カ
スケード型)なので,ノイズや発振に
強い.
e総合利得が大きいので,充分な
NFBをかけても最大出力を出す入力
電圧が少なくてすみ,プリアンプの設
計が楽である.
・∴」∴ 凉R
●6267, 12AX7
6BQ5という簡
素な構成の本棲.
まずは初心者から
∴
OL/〈)
∴∴
中級ファンに恰好
実際の回路は手を加えた
ミュラード型は高利得の反面,高域
のパワー・アンプ
だ.
塁(\\Jei譲筋 ∴∴∴∴∴∴ ∴∴∴∴- 佇抹2
陳
^
鵠性が好ましくないので,各段のカッ
トオフ周波数を高くするため,位相反
転管を低〟管にし(バランスは補正抵
抗で荷正する),初段の5極筈も3極
管接演にし,低利得になっても6BQ
142
ラ ジオ技術
へ%)掛をhJT
4 2 0 8 6 4 2 α 8 6 4
ili 劔
NF8あリ 劔
-
○
劔k
剪
白
・I曇
05%- 劔I
4 68教義7 2 4 88m 2 4 6 81ar
周波数の
7
▲ (第12図)本棟の出力対周波数特性
I
ド(Svingin'Steam的(東芝EMI・TP
00詣)を聞いてみる.このレコードは
二"一.一一
ツ
1 (第11図)本機のひ
-fHftz 劔
ずみ率特性.比較約-ドディストーション
OI 2 4 6 810 2 4 6 8IO
出力の
形を示している
備回転で蒸気機関車の音と汽車に関係
した音楽(くティキング・オフ)や〈銀
河鉄道999))をうまくあわせた楽しい
に58kQの代りに51kQ Lなかったの
0.0005V入力で2.8Vの出力だから,
レコードだ 高域の下り気味は全く気
で,これを使ってNFBをかけてみる
約5600倍(75dB)の利得だったもの
にならず,とても蒸気機関車の音がな
ど,聞けつ発振が起きだ オリジナル
が, NFをかけたことにより0.005V
まなましく再現してくれる・定位も良
回路をみると, NFB抵抗RIに並列に
の入力で0.18W,つまり80端子には
く,音像がはっきりしていて,ステレ
補正コンデンサCfが入っている.
1.2Vの出力電圧を得ているわけだか
オ感も抜請llWのパワーにしてはカ
ためしに100pFのコンデンサをだか
せてみた 発振はピックリ止まり,
lkHz, 10kHzの方形波(低入力)を
ら,約240倍(47.5dB)の利得になっ
強いが,音はあくまでもやかましくな
ており,この差, 75-47.5-27.5dB
く繊細である.次にフォークのレコー
の多量のがかかっていることになる.
ドやディスコものを聞いても,どれる
無難にこなしてくれる・
生発振もみられなかったので,この状
これだけ多量のNFがシングル・ル
ープでかかるとは大した回路だし,ス
態にして測定に入る.
タガ比の設定が良かったのだろう
あったのでちょっとつないでみたが.
入れてもオシロの上でリンギングや寄
まず入出力特性である. 0.005Vの
念のためにスピーカー出力端子(8
たまたまオーラトーン5Cが手元に
オーラトーン自体が狭帯域のせいか,
おとなしすぎ ワイルドさに欠ける.
入力で0.18W, 0.01Vの入力で0.69
0)に0.47pFのコンデンサをたかせ
W, 0.02Vの入力で2.8W, 0. 033Vの
てNFの安定をみたが,発振らしさも
どちらかといえば 広帯域で繊細な音
入力で8W, 0.04V入力で11.3W,
のも出ない安定ぶりだった.
を出すタンノイ系やヤマハ系のスピー
カーがいいかも知れないJBLでは,
0.042V入力で11.8Wときれいな波形
試 聴
である.最大出力は12Wあたりで急に
クリップする(第10図).
次にひずみ率特性をl kHz, 10kHz,
多量のNFBだし,高域がやや(1・5
dB)位下がっているので,どんな音が
ハイのやかましさがうずれて,やや物
足りないかも知れない・
ミュラード型は,十分すぎる利得を
100Hzの3周波数で測定する. 0.1W
するか楽しみで, JBL4301に接続し,
以下はノイズのため正確に測定できな
プリアンプはおなじみ自作のCR-N
テート的な特性が出せ,現代風に鳴っ
かった. 7.5Wまでは0.1%以下のひず
Fイコライザのものを,カートリッジ
てくれるので,今でも管球メーカーに
みだし, llWでも0.5%以下のひずみ
もおなじみのオーディオテクニカAT
-5で,最近入手した楽しいレゴー
よって設計に採用されることがよくわ
とたいへん優秀な値を示してくれだ
このひずみ率特性(第11図)をみると,
トランジスタ・パワー・アンプの特性
に似ている.
安定にNFにまわして,ソリッド・ス
かった.
●入力レベル調整がひ
とつついただけの簡
単な撥成
周波数特性もlWの時とllWの時を
測定してみたlWの時は20kHzで
1.2dBのダウン. llWも1.5dBとあま
り変らない. NFBをかけない時の値
よりもいい(第12図).
NFはどのくらいかかっているか試
算してみると, NFBをかけない時は
JUL. 2015
145
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