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移植医療・再生医療のための臓器灌流蘇生システムの開発(PDF:1.12

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移植医療・再生医療のための臓器灌流蘇生システムの開発(PDF:1.12
平成25年度 研究成果発表会
平成 25 年度
研究成果発表会
移植医療・再生医療のための臓器灌流蘇生システムの開発
○小原
弘 道 *1)、 松 野
直 徒 *1)
*2)
、平野
俊 彦 *3)、 絵 野 沢
伸 *2)、 水 沼
博 *1)
1.はじめに
臓器移植とは、臓器機能を失った患者に提供者(ドナー)臓器を移植し、機能回復を期
待 す る 医 療 で あ る 。移 植 後 の QOL( Quality of Life)の 大 幅 な 改 善 が 期 待 さ れ 、確 立 さ れ た
医療として臓器移植は認識されている。しかしながら、移植待機患者の数と提供される臓
器数との差は大きく、移植のための臓器不足は国内のみならず世界的にも深刻な課題であ
る 。こ の 課 題 を 解 決 す る た め に 、移 植 可 否 の 判 断 の 難 し い 臓 器 の 機 能 を 診 断 す る 評 価 技 術 、
臓器機能を維持し、さらに機能改善をはかる技術など、新しい医療技術開発が求められて
い る 。こ う し た 背 景 の 中 、血 管 内 に 臓 器 保 存 液 を 灌 流 す る 機 械 灌 流 保 存 が 注 目 さ れ て い る 。
本研究では、心臓停止後に機能喪失の著しい肝臓に着目し、臓器機能を評価、判定し、
積極的な流動・温度・液性管理により、臓器機能の保存・改善から蘇生を視野に入れた機
械灌流システムを開発し、コンピュータを用いた流動解析、ブタを用いた実験によりその
特性を評価した。当該システムは移植医療の高度化のみならず、細胞から組織・臓器を目
指す再生医療の基盤技術としても期待される。
3.結果・考察
結 果 の 一 例 と し て 、 本 稿 の 復 温 灌 流 ( RMP) と 低 温 灌 流
保 存 ( HMP) の 保 存 終 了 時 に お け る 、 臓 器 劣 化 の 指 標 と な
る 逸 脱 酵 素( こ こ で は LDH)の 灌 流 前 後 で の 変 化 量 を 示 す
( 図 2)。同 じ 心 停 止 条 件( WIT60)に お い て 、RMP は HMP
に比較して大幅に逸脱酵素量を低減させており、臓器の劣
化を低減させ、その機能を維持可能である。本研究では、
これらの逸脱酵素による評価をはじめ、保存した臓器を移
植する移植実験を行い、最適な条件に関して検討を進めて
いる。
LDH IU/l
2.臓器灌流蘇生システム
本システムは、臓器内に保存液を灌流し、機能
を評価し、保存・回復をはかるための灌流条件積
極 制 御 可 能 な 装 置 ( 図 1) と 、 保 存 液 、 こ れ ら の
制 御 則 よ り な る 。本 稿 で は 装 置 を 中 心 に 紹 介 す る 。
⼼停⽌後臓器
移植可能
装置は、保存液管理用の流路系、低温から常温ま
で管理可能な温度管理系、データ記録・制御コン
ピュータにより構成されている。肝臓の特徴であ
る二重血行支配に対して、それぞれ独立して門
臓器機能評価・回復
脈・肝動脈の 2 系統に同時灌流可能であり、それ
図 1. 臓 器 灌 流 蘇 生 シ ス テ ム
ぞれポンプ、流量計、圧力計ならびにエアトラッ
プ等が配置され、保存液に酸素を供給可能である。実験は
ブ タ を 用 い 、心 臓 の 停 止 時 間 に 相 当 す る 温 阻 血 時 間( WIT、
p<0.05
3000
Warm ischemic time)を 経 て 摘 出 し た 。特 に 、本 稿 で は 低 温
( 4-10℃ ) か ら 室 温 ま で の 復 温 灌 流 に 着 目 し 評 価 し た 。
2500
2000
1500
1000
500
0
WIT0
WIT60
HMP
図 2.
RMP
灌流後逸脱酵素量変化
4.まとめ
移植医療の高度化、再生医療の基盤技術として期待される臓器灌流システムによる臓器
機能判定、機能維持可能であることを示し、蘇生に向けた可能性について示した。
*1)首 都 大 学 東 京 、 *2)独 立 行 政 法 人 国 立 成 育 医 療 研 究 セ ン タ ー 臨 床 研 究 セ ン タ ー 、*3)東 京
薬科大学
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