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次代の学校事務を担う事務職員の支援と育成 ∼学校事務指導員の役割

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次代の学校事務を担う事務職員の支援と育成 ∼学校事務指導員の役割
次代の学校事務を担う事務職員の支援と育成
∼学校事務指導員の役割と任務∼
西宮市立山口中学校
学校主幹
山崎
達雄
1.はじめに
平成 16 年度に「西宮市立学校事務職員研修要項」(以下、「研修要項」という。)が施行
され、学校事務職員(以下、
「事務職員」という。)の体系的な研修制度が誕生しました。研
修要項では、
「西宮市教育員会は事務職員研修を充実させるために、指導主事の他に学校事
務部門における専門的な見識と指導力を有した事務職員を「学校事務指導員」(以下、「指
導員」という。)として委嘱し、事務職員研修の充実を図る。指導員は西宮市教育委員会(研
修グループ)の事務職員研修の企画・実施に参画し、初任者研修対象事務職員(以下、
「初任
者」という。)に対して指導・助言をおこなうものとする」と規定されています。
以下は、平成 20∼23 年度の4年間、私が指導員として事務職員研修の充実に取り組ん
だ実践報告です。
2.取組の内容
(1)
事務職員研修の体系
初任者研修 年 10 回
事務職員研修は、職務
研修(指定研修)と一般研
年次研修
修(課題別研修)とがあり
さらに職務研修は年次研
(経験年数1年以上∼10 年未満)
中堅研修 年1回
職務研修
(経験年数 10 年以上∼25 年未満)
修と共通研修とに分かれ
右のような研修体系にな
若手研修 年2回
共通研修(全事務職員) 年 2回
っています。
(2)
指導員の役割と任務
指導員は、研修グループ長の命を受け、下記の専門的事項の事務を行います。
① 初任者研修の企画・実施
(①を除く)
及び指導助言
(3)
② 事務職員研修の企画・実施
③ 学校事務に関する
専門的事項の研究
研修内容
①
初任者研修の目的
研修要項の規定に基づき実施する初任者研修は、公務員としての基本的な心構えや
学校教育活動における学校事務のあり方及び学校教育の一般的な内容について理解す
るとともに、事務職員として必要な基礎的知識や技能の習得を図ることを目的とし、
所属学校長、指導員及び初任者指導事務職員(以下、
「指導事務職員」という。)の理解
と協力のもとに実施します。
②
初任者研修の企画・提案
実施期間
5月∼11 月
受講者
平成 23 年度は8名(正規5臨時3)
原則第3金曜日
研修場所
西宮市立総合教育センター
研修時間
およそ2時間 30 分
研修会は、各回のテーマに従って、
「制度・規定の概要説明(導入)→事務処理の流れ・
手続(展開)→帳票の作成や問題(演習)→解説・確認(まとめ)」といった流れで進めま
す。資料は、指導員がテーマごとに毎回作成しますが、テキストとして常時活用して
いるのが「事務便覧」です。これは、西宮市立小中特別支援学校事務研究会(以下、
「事
務研究会」という。)が発行している「給与事務の手引書」です。平成4年度の初版発
行以来 20 年の実績があり、今では事務職員の「座右の書」となっています。
③
事務職員研修の企画・提案
事務職員研修(一般研修を除く)の中核をなすのが、年次研修(若手研修及び中堅研修)
と共通研修です。それぞれの研修内容(実施時期、テーマ、講師等)は「研修目標」に
沿って、研修グループ(主任研修指導員)と事務研究会(会長及び指導員)とが協議・調整
し決定します。指導員は、研修内容が職務の円滑な遂行に資するものか、今日的な要
請にあったものか等の観点から企画・提案します。
○学校教育の内容にかかる専門的な知識や法的な事項に精通するとともに、公務
若手研修
員としての資質の向上を図る
○事務効率の向上に取り組むことができるとともに、教育資源の効果的な配分や
活用がおこなえる管理能力を養う
研修目標
○学校経営上必要な学校管理や教育内容にかかる専門的な知識を習得し、より効
中堅研修
率的、創造的な学校経営に参画できる能力を養う
○経験年数の浅い事務職員を専門的事項について指導できるとともに、公務員倫
理についても指導できる能力を養う
共通研修
④
○教育に対する知見を深めるとともに、職務を円滑に遂行するため能力を養う
学校事務に関する専門的事項の研究
指導員は、学校事務に関する
専門的事項について研究し、そ
の成果を毎年、共通研修で発表
します。
研究内容は主に「事務職員の
標準的な職務領域」<表 1>を対
象としています。指導員にとっ
ては重みのある任務ですが、初
任者にもわかりやすい内容であ
ること、また職務の理解や改善
につなげること等を目標に研究
に取り組みます。
⑤
<表 1>事務職員の標準的な職務領域と主な内容
・学校活性化のための企画、調整及び運営に関する領域
→予算の企画・編成・執行事務及び決算事務に関すること
・教職員の勤務条件に関する領域
→人事、給与、旅費、服務事務に関すること
・情報の効果的・効率的な活用を図るための領域
→情報及び文書の整理・保管、個人情報の保護に関すること
・学校施設等環境を整備し、推進するための領域
→施設設備の維持管理に関すること
・児童生徒の就学保障に関する領域
→就学援助及び就学奨励に関すること
・教職員の福利厚生を推進するための領域
→公立学校共済組合及び学校厚生会に関すること
管外研修の企画・提案
指導員の任務は、上記②∼④の他に「管外研修の企画・提案」があります。昨今の
学校の情報化の進展にともなう情報機器の活用や管理方法、あるいは学校の安全性や
エコなど先進的な取組をしている学校や施設を訪問し、その実践に学び教育環境の整
備を図ることが目的です。研修グループの主任研究指導員とともに企画・提案します。
3.取組の成果
(1)
初任者研修の実施
平成 20∼23 年度の初任者研修受講者は延べ 27 名です。初任者研修で学んだことを基
礎に経験を積み、次代の学校事務を担う事務職員として成長することを期待しています。
①
指導員による初任者研修
平成 23 年度に指導員が実施した初任者研修は次のとおりです。
実施月
項目
5月
内容
給料・手当
事務職員の職務領域、出産・育児休業にともなう事務手続き、期末勤勉手当(演習問題)
6月
旅費
旅費事務の流れ、旅費請求書作成、旅費の調整基準、給与支給明細書の見方(演習問題)
7月
服務
出勤簿取扱要項、勤務状況報告書、服務関係事務手続き、電算帳票の作成(演習問題)
8月
人事
履歴書の記入・整理、履歴事項変更届、昇給内申、復職調整(演習問題)、永年勤続表彰
9月
財務
財務事務の概要、財務事務取扱要綱、学校運営費標準及び設備基準
10 月
予算
予算の計画、執行、決算、施設管理、予算委員会、理科教育等設備台帳、監査資料作成
11 月
福利厚生
②
福利厚生(共済組合・学校厚生会等)、公務災害・通勤災害、就学奨励金、学校徴収金
「西宮方式の初任者研修体制」の実現
平成 22 年度から「市町立学校
初任者指導事務職員設置要項」
が施行され、県下の市町立学校
において指導事務職員が定期的
に学校を訪問し、初任者の職務
遂行を指導・支援することにな
指
指
総合教育
初
導
センター
任
者
員
初任者研修
りました。冒頭でもふれたよう
所属校
導
事
校
倫理研修
務
長
実務研修
職
員
に、本市では初任者研修を充実
指導方法等についての協力・連携
するために所属学校長、指導員
及び指導事務職員の3者の協力・連携体制のもとに実施しており、上図のように県下
でも例のない「西宮方式の初任者研修体制」を実現することができました。
(2)
事務職員研修の実施
①
若手研修及び中堅研修
平成 23 年度に実施した若手研修及び中堅研修は次のとおりです。
若手研修(2回)
6月
中堅研修(1回)
法規研修(憲法、教育基本法、学校教育法、教特法等)
10 月
9月
研修−プラス思考の心理学−
学校組織・学校経営参画研修
②
カウンセリングパワーアップ
共通研修
平成 23 年度に実施した共通研修は次のとおりです。
8月
夢はぐくむ教育のまち西宮(教育長講話)
11 月
税制・社会保険制度の理解と周知(指導員)
※
西宮教育推進の方向(研修グループ長講話)
学校情報化研修(学校情報化推進グループ)※
学校情報化研修について
本市では、平成 21 年度に「にしのみや e スクールネットワーク
管理要綱」が施行され、事務職員は「CIO(チーフ・インフォメーシ
(3)
学校事務の専門的事項に関する研究
ョン・オフィサー)補佐」となり、学校情報化の一翼を担うことに
なりました。
−学校 CIO 補佐の主な役割−
・ICT 機器の保守・管理
・ICT 環境の整備
・個人情報の保護
等
①
研究内容
過去4年間の共通研修において発表した研究内容は次のとおりです。
年度
研究テーマ
内容
平成 20 年度
学校環境マネジメント
施設管理の視点、手法、プラン、予算及び資源の活用
平成 21 年度
教職員の福利厚生
共済制度(短期給付と長期給付)の理解と活用
平成 22 年度
教職員の給与・休暇制度
育児・介護休暇制度を中心に
平成 23 年度
税制・社会保険制度の理解と周知
扶養控除等の申告誤りの是正処理
②
研究成果を広める!
平成 21∼22 年度には、兵庫県立教育研修所での小中学校事務職員経験者研修におい
て講師を務めさせていただきました。
「学校における施設管理と危機管理」をテーマに
施設管理の視点や手法、予算やプラン、資源の活用等について研究成果を県下の事務
職員の方々に広めることができました。
(4)
管外研修の実施
過去4年間に実施した管外研修は次のとおりです。
年度
研修先
内容
平成 20 年度
関西学院初等科
学校の安全性、私立学校の事務室経営
平成 21 年度
宝塚市立長尾小学校
エコスクール見学、環境教育への取組
平成 22 年度
関西大学高槻ミューズキャンパス
情報機器の活用・管理、施設見学
平成 23 年度
兵庫県立淡路景観園芸学校・北淡震災記念公園
校地環境の維持・管理、震災に学ぶ
4.課題及び今後の取組の方向
(1)
事務職員研修の充実・発展に向けて
団塊世代の大量退職にともない、教員と同様に事務職員も世代交代が進んでいます。
初任者の支援と育成については、指導員は所属学校長・指導事務職員との協力・連携
を一層図るとともに事務職員の資質向上に向けて研修の充実・発展に努めます。
(2)
業務の見直し・改善への取組
本市では、平成 23 年度から「総合財務会計システム」が稼働し、全庁で財務会計の
統一的な運用が始まりました。また、
「給食費の公金化」に向けて学校徴収金の取扱に
ついても検討が始まっています。情報化の進展により、校務の省力化が図られる一方
で、制度改正にともなう新たな課題も発生しています。これらの課題に対処するため、
業務の整理・見直しをおこない改善への取組を進めます。
(3)
教員の事務負担軽減の取組
学校を取り巻く環境が大きく変化する中で、教職員が対応すべき課題が複雑化・多
様化しています。事務職員は学校組織の要として、学校運営参画を通して、教育環境
の整備・充実を図るという重要な役割を担っています。そこで「事務職員の標準的な
職務領域」の視点から「教員の事務負担軽減」に取り組みます。具体的には、会計事
務処理の集中化・効率化を図ること、安全で快適な学校環境づくりを推進すること、
ICT 機器の保守管理と個人情報の保護に努めること等があります。
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