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前方および後方への模擬転倒時に出現する防御動作とその性差

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前方および後方への模擬転倒時に出現する防御動作とその性差
Title
前方および後方への模擬転倒時に出現する防御動作とそ
の性差
Author(s)
井上, 馨; 渡辺, 明日香; 浅賀, 忠義; 齊藤, 展士; 笠原, 敏史;
坪, 亜希子; 久留利, 浩代
Citation
Issue Date
北海道大学医療技術短期大学部紀要, 15: 1-7
2002-12
DOI
Doc URL
http://hdl.handle.net/2115/37661
Right
Type
bulletin (article)
Additional
Information
File
Information
15_1-8.pdf
Instructions for use
Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP
原
著
原 著
前方および後方への模擬転倒時に出現する紡御動作とその性差
前方および後方への模擬転倒時に出現する防御動作とその性差
ギ
井上
馨 1) ・渡辺明日香 1) ・ 浅 賀 忠 義 2) ・ 斉 藤 展 士 2)
井上 馨1)・渡辺明日香ユ〉・浅賀 忠義2>・齊藤 展士2)
笠 原 敏 史2) ・ 坪 亜 希 子 3) ・久留利浩代4)
笠原敏史2)・坪亜希子3)・久留利浩代4)
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Satoshi Kasahara2), Akiko Tsubo3), Hiroyo Kururi4)
2
3
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Abstract
Abstract
We
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females respectively. Subjects natura11y fell on a 40℃m・thick mat from stand沁g height.
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During falls, their arrest strategic motions were analyzed by using videotape system. Almost
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all strategic motions, the motions of upper limbs, the hands striking the ground, the flexion of
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Keywords:forward fall, backward fall, arrest strategy, motion analysis
要
要
ら離す動作は高い出現率を示したが,体幹の回
ら離す動作は高い出現率を示したが,体幹の回
旋はほとんど観察されなかった。頭部の床面へ
旋はほとんど観察されなかった。頭部の床面へ
ヒ2
旨
日
男性,女性それぞれ4
0名の被験者を用いて,
男性,女性それぞれ40名の被験者を用いて,
立位から
40cm厚のマット上に前方および後方
立位から40cm厚のマット上に前方および後方
の接地は女性が男性より有意に出現率は高かっ
の接地は女性が男性より有意に出現率は高かっ
た
。
た。
へ自由に転倒し,落下時の防御動作をビデオ撮
へ自由に転倒し,落下時の防御動作をビデオ撮
影し記録した。前方転倒,後方転倒共に,上肢
影し記録した。前方転倒,後方転倒共に,上肢
キーワード:前方転倒,後方転倒,防御動作,
キーワード 前方転倒,後方転倒,防御動作,
を動かす,手をつく,体の前屈,頭部を床面か
を動かす,手をつく,体の前屈,頭部を床面か
動作解析
動作解析
1
) 北海道大学医療技術短期大学部作業療法学科
1)北海道大学医療技術短期大学部作業療法学科
2
)北海道大学医療技術短期大学部理学療法学科
2)北海道大学医療技術短期大学部理学療法学科
3
)花川病院
3)花川病院
4
)東苗糠病院
4)東越穂病院
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1)Department of Occupational Therapy, College of Medical Technology, Hokkaido University
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2)Department of Physical Therapy, College of Medical Technology, Hokkaido University
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3)Hanakawa HospitaI
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4)Higashi−Naebo HospitaI
-1一1一
井上
馨・渡辺明日香・浅賀忠義・斉藤展士・笠原敏史・坪亜希子・久留利治代
井上 馨・渡辺明日香・浅賀 忠義・齊藤 展士・笠原 敏史・坪 亜希子・久留利浩代
は
じめに
はじめに
、
高齢者の転倒は,それによる骨折など外傷や
高齢者の転倒は,それによる骨折など外傷や
再度の転倒への恐怖から生活の質の大きな低下
再度の転倒への恐怖から生活の質の大きな低下
転倒
に結び、つくため,高齢化社会にともない大きな
に結びつくため,高齢化社会にともない大きな
問題となってきている九高齢者の転倒の頻度
問題となってきている1)。高齢者の転倒の頻度
マット
は高<.
65歳以上の高齢者の 1
/
3から 1
/
2は 1
は高く,65歳以上の高齢者の1/3から1/2は,1
1度の転倒経験がある 2)。転
年間に少なくとも
年間に少なくとも1度の転倒経験がある2)。転
台
倒する方向は高齢者の場合,前方と後方が多
倒する方向は高齢者の場合,前方と後方が多
国
1 後方転倒の摸式図
図1 後方転倒の摸式図
い九転倒への対策を考える上で,転倒時にどの
い3)。転倒への対策を考える上で,転倒時にどの
ような防御動作を行うかを知ることは重要で、あ
ような防御動作を行うかを知ることは重要であ
(
1
)力を抜く, (
2
)体を丸く
り,過去の知見から
り,過去の知見から(1)力を抜く,(2)体を丸く
す
る, (
3
)手を先に着きブレーキの役目をする,
する,(3)手を先に着きブレーキの役目をする,
(
4
)上体を起こす, (
5
)体を回旋させる,などが
(4)上体を起こす,(5)体を回旋させる,などが
考えられている
o しかし,転倒を実際に観察す
考えられている。しかし,転倒を実際に観察す
る機会は極めて少なく,転倒者の記憶も陵昧で
る機会は極めて少なく,転倒者の記憶も曖昧で
1
5
4
0
. デイケイエイチ製)を用いて画面に時間
1540.デイケイエイチ製)を用いて画面に時間
経過を挿入してビデオテープに録画した。転倒
経過を挿入してビデオテープに録画した。転倒
回数は各々
3回ずつ,各被験者について計 6囲
回数は各々3回ずつ,各被験者について計6回
の転倒を行った。前方と後方の転倒順は両者が
の転倒を行った。前方と後方の転倒順は両者が
同数になるように被験者8
0
名を無作為に割り当
同数になるように被験者80名を無作為に割り当
て
た。
てた。
あり,実際にそのような紡御動作がどのような
あり,実際にそのような防御動作がどのような
割合で出現するかという知見はみられない。そ
割合で出現するかという知見はみられない。そ
こで本研究では,出現頻度が高い前方および後
こで本研究では,出現頻度が高い前方および後
実験に先立ち,北海道大学医療技術短期大学
実験に先立ち,北海道大学医療技術短期大学
部作業療法学科研究検討会にて実験計画の審査
部作業療法学科研究検:討会にて実験計画の審査
方転倒を実際に実験室内で模擬的に起こさせ,
方転倒を実際に実験室内で模擬的に起こさせ,
そのときの動作をビデオ撮影し動作解析を行
そのときの動作をビデオ撮影し動作解析を行
が行われ,承認された。被験者には,実験内容
が行わ.れ,承認された。被験者には,実験内容
を口頭と文書を用いて説明し,文書により被験
を口頭と文書を用いて説明し,文書により被験
い,防御動作がどのような割合で出現するか検
い,防御動作がどのような割合で出現するか検
討した。
討した。
者の同意を得た。
者の同意を得た。
2
. 観察方法
2.観察方法
方
法
法
方
1.転倒方法
1.車云倒=方法
二方向から撮影したビデオテープを再生して
二方向から撮影したビデオテープを再生して
全転倒の動作を動作項目(表
1)が記入されて
全転倒の動作を動作項目(表1)が記入されて
被験者には男女大学生 (18歳 ~36歳,平均年
被験者には男女大学生(18歳∼36歳,平均年
齢
;21
.9歳,男性;22.7歳,女性;21
.3歳)各
齢;21.9歳,男性;22.7歳,女性;21.3歳)各
いる記録用紙に記録した。観察する動作項目は
いる記録用紙に記録した。観察する動作項目は
これまでの文献
4-6)から転倒時に行われている
これまでの文献4−6)から転倒時に行われている
4
0名,合計8
0名を用いた。被験者を高さ 40cmの
40名,合計80名を用いた。被験者を高さ40cmの
木製の台
(90X90cm)に直立させ,台に隣接し
木製の台(90×90cm)に直立させ,台に隣接し
と予想され,外部から観察できる防御動作,
(
1
)
と予想され,外部から観察できる防御動作,(1)
た4
0cm厚のスポーツマット (
3
.
0X2
.
0XO
.4m
た40cm厚のスポーツマット(3.0×2.OxO,4m
ミズノ製)上に,検者が被験者の骨盤部をゆっ
ミズノ製)上に,検者が被験者の骨盤部をゆっ
「上肢を動かす
J:崩れた体のバランスを回復
「上肢を動かす」:崩れた体のバランスを回復
2
)I
手をつく J:手を先についてブレー
す
る, (
する,(2)「手をつく」:手を先についてブレー
キをかける,
(
3
)I
体を前屈させる J:体を丸く
キをかける,(3)「体を前屈させる」:体を丸く
くり押すことにより前方および後方に転倒させ
くり押すことにより前方および後方に転倒させ
た(図1)
0 その際,できるだけ自然に転倒する
た(図1)。その際,できるだけ自然に転倒する
して転倒高度を低くし,かつ衝突の接触部位を
して転倒高度を低くし,かつ衝突の接触部位を
分散させる,
(
4
)I
頭部を床面から離す J:頭部
分散させる,(4)「頭部を床面から離す」:頭部
こと,足を台より踏み出さないようにすること
こと,足を台より踏み出さないようにすること
を
指 示 し た 。 転 倒 動 作 は ビ デ オ カ メ ラ 2台
を指示した。転倒動作はビデオカメラ2台
保護のため前方転倒では背屈,後方転倒では前
保護のため前方転倒では背屈,後方転倒では前
屈となる,
(
5
)I
体幹を回旋させる J:安全な部
屈となる,(5)「体幹を回旋させる」:安全な部
(
SCC-C350,SONY製)を 1台はマットの
(SCC−C350, SONY製)を,1台はマットの
正面,もう
1台はマットに対し前方4
5
'の場所に
正面,もう1台はマットに対し前方45.の場所に
位で着地する,の
5種類の動作を設定した。こ
位で着地する,の5種類の動作を設定した。こ
れらに「頭部の接地
J:頭部の保護,の項目を加
れらに「頭部の接地」:頭部の保護,の項目を加
設
置 し て 撮 影 し , ビ デ オ カ ウ ン タ ー (PH
設置して撮影し,ビデオカウンター(PH一
え,全体で
6項目を大項目とした。大項目の動
え,全体で6項目を大項目とした。大項目の動
2
一2一
前方および後方への模擬転倒時に出現する防御動作とその性差
前方および後方への模擬転倒時に出現する防御動作とその性差
表
l 観察記録の大項目と小項目
表1 観察記録の大項目と小項目
大
項目
大項目
車調民向
輯到方向
自坊嗣~J
欄
手を!lìIJIJ~寸
手を動がす
上肢をつく
」:肢をつく
休を屈める
体を屈める
上体あ包とす
上体を起こす
体新め回旋
E
惑附剃
頭音剛影也
I
J
¥
項目
小項目
小
項目
4引目
小
項目
小項目
4唄目
小
項目
小項目
A
、
唄
目
ノ」丁目
手
を 体 幹 腕を外
腕を外 有
有
手を体幹
無
無
キ
す
無
無
有
有
無
無
吉
田
立
剖立
│苅之転 有
膝
屈 体
全体!面 殿部接地時頭部
体全体屈
襯脳こ転
有
殿部接地時頭部 棒
膝屈
無
無
有
有
無
無
音
│
粒
部立
曲
ネ
る
の 位 置 腕砂ト
後
対 部J 手
後方輻到
腕を外 有
有
手の位置
が体幹よ
]させ
ェ体幹よ 転させ
り
体鈴伸展
有
体幹1帳 有
座り込む
座り込む
膝
屈 体全体屈
体全体屈
膝屈
曲
ネ
の前に出
]させ
フ前に出 転させ
ノ」・項目
第一概虫
第一欄虫
無
無
ネ
出
曲
ネ
カ渉事矛より
ヘ鉄転子より
│
倒
る
前
│直と│後
前 直h 後
前│後
前後
作の詳細を観察するために大項目の中に下記に
作の詳細を観察するために大項目の中に下記に
示すいくつかの小項目を設定した。これらの項
示すいくつかの小項目を設定した。これらの項
は前屈の程度を示すものとして「腎部接地時に
は前屈の程度を示すものとして「田部接地時に
頭部が大転子より前および直上
j
,i
腎部接地時
頭部が大転子より前および直上」,「腎部接地時
目の範囲に入らない動作については備考欄に記
目の範囲に入らない動作については備考欄に記
述した。また,
i
第一接触部位」としてマット面
述した。また,「第一接触部位」としてマット面
に頭部が大転子より後方
jを
, i
体幹の回旋」に
に頭部が大転子より後方」を,「体幹の回旋」に
関しては[あり
j
,i
なし Jという項目を設定し
関しては「あり」,「なし」という項目を設定し
に最初に接触した部位を観察した。
に最初に接触した部位を観察した。
た
。
た。
前方転倒時の観察項目
前方転倒時の観察項目
「上肢を動かす」に関しては「手を体幹の前
「上肢を動かす」に関しては「手を体幹の前
3
. 分析方法
3.分析方法
方に出す
j, i
上肢を外転させる j の小項目を設
方に出す」,「上肢を外転させる」の小項目を設
定
し, i
手をつく j には「つく Jと「つかない j
定し,「手をつく」には「つく」と「つかない」
を
, i
体を前屈させる jに関しては[膝を屈曲す
を,「体を前屈させる」に関しては「膝を屈曲す
る
ji
体幹を屈曲する Jを
, i
頭部を床面から離
る」「体幹を屈曲する」を,「頭部を床面から離
防御動作の出現率
防御動作の出現率
8
0人の被験者全ての転倒について観察項目に
80人の被験者全ての転倒について観察項目に
そって動作を分類した。観察者の主観性を排除
そって動作を分類した。観察者の主観性を排除
するために
2人の検者が各々独自に分類を行
するために2人の検者が各々独自に分類を行
す
jに関しては, i
体幹の伸展Jを設定した。こ
す」に関しては,「体幹の伸展」を設定した。こ
い,その結果が異なった場合は再度ビデオテー
い,その結果が異なった場合は再度ビデオテー
プで確認・討論し,一つの結果を出した。側方
プで確認・討論し,一つの結果を出した。側方
こでの「座り込む」動作とは膝を強〈屈曲し上
こでの「座り込む」動作とは膝を強く屈曲し上
体を起こし,下腿部から着地する動作を指す。
体を起こし,下腿部から着地する動作を指す。
と後方転倒の各々
3回の転倒のうち 2回以上
と後方転倒の各々3回の転倒のうち,2回以上
同じ動作を示すものを,その被験者の転倒動作
同じ動作を示すものを,その被験者の転倒動作
j
,i
な
「体幹を回旋させる」に関しては「あり
「体幹を回旋させる」に関しては「あり」,「な
と
し 3固とも違う動作を示したものについて
とし,3回とも違う動作を示したものについて
は,一定の動作パターンがないものとして解析
は,一定の動作パターンがないものとして解析
から排除した。したがって,解析に用いられた
から排除した。したがって,解析に用いられた
jという項目を作成した。「頭部の接地」にも
し
し」という項目を作成した。「頭部の接地」にも
「
あり j
,i
なし j という小項目を設定した。
「あり」,「なし」という小項目を設定した。
後方転倒時の観察項目
後方転倒時の観察項目
「上肢を動かす Jに関しては, i
手を体幹の前
「上肢を動かす」に関しては,「手を体幹の前
j
,i
手を体幹の後方に出す j
,i
上肢を
方に出す
方に出す」,「手を体幹の後方に出す」,「上肢を
3
9名,女性4
0名,後方転
のは前方転倒では男性
のは前方転倒では男性39名,女性40名,後方転
3
8名,女性3
9名であった。
倒では男性
倒では男性38名,女性39名であった。
大項目,小項目,第一接触部位について男性,
大項目,小項目,第一接触部位について男性,
外転させる」という小項目を設定した。「上肢を
外転させる」という小項目を設定した。「上肢を
女性別に出現率を算出した。出現率は当該動作
女性別に出現率を算出した。出現率は当該動作
の出現数を分析に用いられた転倒数で除した値
の出現数を分析に用いられた転倒数で除した値
j と「つかない」を, i
体を前
つく」には「つく
つく」には「つく」と「つかない」を,「体を前
である。また,
6種類の大項目についてど分布
である。また,6種類の大項目についてκ2分布
Jに関しては「膝を屈曲する j, i
体幹を
屈する
屈する」に関しては「膝を屈曲する」,「体幹を
を用いて男女聞の出現率に有意差があるか検定
を用いて男女間の出現率に有意差があるか検定
し
た。
した。
屈曲する」を,
i
頭部を床面から離す jに関して
屈曲する」を,「頭部を床面から離す」に関して
3
一3一
井上
馨・渡辺明日香・浅賀忠義・舜藤展士・笠原敏史・坪亜希子・久留利治代
井上 馨・渡辺明日香・浅賀 忠義・齊藤 展士・笠原 敏史・坪 亜希子・久留利浩代
高
吉
結
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j
,r
体 の 前 屈j
,r
頭部を床面から離す」高い
く」,「体の前屈」,「頭部を床面から離す」高い
出
現率がみとめられ, r
体 幹 の 回 旋J
はほとんど
出現率がみとめられ,「体幹の回旋」はほとんど
果
果
出
現 し な か っ た 。 表 2に は そ れ ぞ れ の 大 項 目 に
出現しなかった。表2にはそれぞれの大項目に
1.防御動作の出現率
1.防御動作の出現率
図 2A, Bに 大 項 目 の 出 現 率 を 示 し た 。 前 方
図2A, Bに大項目の出現率を示した。前方
含
まれる小項目の出現率とそれぞれの組みあわ
含まれる小項目の出現率とそれぞれの組みあわ
転
倒 , 後 方 転 倒 共 に 「 上 肢 を 動 か すj
, 手をつ
転倒,後方転倒共に「上肢を動かす」,「手をつ
せ
の出現率を示した。
せの出現率を示した。
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A
A
B
B
前方転倒
前方転倒
1
00
100
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男性
罷男性
︿決)回附隠姐
80
*
1
80
感
女性
鎧女性
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後方転倒
後方転倒
100
100
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80
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図
2 男性と女性の大項目の出現率。
図2 男性と女性の大項目の出現率。
A:前 方 転 倒 B 後 方 転 倒 。 * 男
性 と 女 性 の 出 現 率 に 有 意 差 (p<
0.05)
.男性と女性の出現率に有意差(P<0.05)
A:前方転倒,B:後方転倒。*
表
2 小項目の出現率
表2 小項目の出現率
前方転倒
後方転倒
前方転倒
後方転倒
小項目
小項目
男(%) 女(%)
勇(%)女(%)
小項目 男(%) 女(%)
小項目 男(%) 女(%)
上肢を動かす
手を体幹の前に出す
6
9
.
2 7
2
.
5 外転し後方に動かす
7
.
9 5
.
1
上肢を動かす
手を体幹の前に出す 69。2 72.5
外転し後方に動かす 7.9 5.1
手を外転し体幹の前に出す
2
5
.
6
2
.
5 外転し前後方向に動かす
2
.
6 5
.
1
外転し前後方向に動かす 2.6 5.1
手を外転し体幹の前に出す 25.6 2.5
手を外転させる
0
.
0 2
5
.
0 外転し前方に動かす
1
3
.
2 7
.
7
外転し前方に動かす 13.2 7。7
手を外転させる 0.0 25.0
動かさない
5
.
1
0
.
0 後方
1
5
.
8 1
7
.
9
動かさない 5.1 0。0
後方 15.8 17.9
外転
0
.
0 2
.
6
外転 0.0 2.6
前後方向に動かす
7
.
9 2
.
6
前後方向に動かす 7.9 2,6
前方
5
.
3 15.
4
前方 5,3 15.4
0
.
0
動かさない
4
7
.
4 4
3
.
6
0.0
動かさない 47.4 43.6
っ
く
9
4
.
9 1
0
0
.
0っ
く
7
8
.
9 8
7
.
2
つく 94.9 !00.0
つく 78.9 87.2
手をつく
手をつく
5
.
1
0
.
0 つかない
つかない
21
.1 1
2
.
8
ツかない 5.1 0.0
ツかない 21.1 12.8
体を前屈させる
勝の屈曲
74.
4 7
5
.
0 膝の屈曲
.
1
5
.
3 5
体を前屈させる
膝の屈曲 74.4 75.0
膝の屈曲 5。3 5.1
体幹の屈曲
5
.
1
2
.
5 体幹の屈曲
47.
4 2
8
.
2
体幹の屈曲 5.1 2.5
体幹の屈曲 47.4 28.2
7
.
7 1
0
.
0 膝と体幹の屈曲
1
5
.
8 3
8
.
5
膝と体幹の周幽
膝と体幹の屈曲 7.7 窪0.0
膝と体幹の屈曲 15.8 38.5
屈曲なし
1
2
.
8 1
2
.
5 屈曲なし
8
.
2
3
1
.
6 2
屈曲なし 12.8 12.5
屈曲なし 31,6 28.2
頭部を床商から離す
2
.
6
5
.
0 殿部接地時に顕は大転子の直上及び前
7
.
9 6
4
.
1
殿部接地時に頭は大転子の直上及び前 7.9 64.1
頭部を床面から離す 座り込む
座り込む 2.6 5.0
体幹の伸展
7
9
.
5 6
0
.
0 殿部接地時に頭は大転子より後
9
2
.
1 3
5
.
9
体幹の伸展 79.5 60.0
殿部接地時に頭は大転子より後 92.1 35.9
体幹の伸展と座り込み
0
.
0
5
.
0 棒状に転倒
0
.
0 0
.
0
体幹の伸展と座り込み 0.0 5.0
棒状に転倒 0.0 0.0
1
7
.
9 3
0
.
0
動作なし
動作なし 17.9 30.0
7
.
7
7
.
5あ
体幹の閏旋
2
.
6 0
.
0
あ
り
り
体幹の回旋
あり 7.7 7.5
あり 2.6 0.0
なし
9
2
.
3 9
2
.
5な
97.
41
0
0
.
0
し
なし 97.4 100.0
なし 92.3 92.5
頭部の接地
有
り
5
6
.
4
8
7
.
5
3
9
.
5
1
7
.
9
あ
り
頭部の接地
有り 56.4 87.5 あり 39.5 17.9
大項目
大項目
4
3
.
6 1
2
.
5 なし
2
.
1
6
0
.
5 8
なし
なし 43.6 12.5
なし 60.5 82.1
被験者数
40名
39名
被験者数 39名 40名
4
一4一
被験者数
38名 39名
被験者数 38名 39名
前方および後方への模擬転倒時に出現する防御動作とその性差
前方および後方への模擬転倒時に出現する防御動作とその性差
前方転倒
前方転倒
図 2Aには前方転倒の防御動作の出現率を示
図2Aには前方転倒の防御動作の出現率を示
j は男性94%,女性 100%
した。「上肢を動かす
した。「上肢を動かす」は男性94%,女性100%
に出現した。そのなかで男性,女性ともに「体
に出現した。そのなかで男性,女性ともに「体
を体幹の前に出す」が大きな割合をしめ,次に
を体幹の前に出す」が大きな割合をしめ,次に
多くみられたのは男性では「手を外転し体幹の
多くみられたのは男性では「手を外転し体幹の
的には女性は男性に比べて頭部接地しやすいと
的には女性は男性に比べて頭部接地しやすいと
い
える。
いえる。
後方転倒
後方転倒
図 2Bには後方転倒の出現率を示した。「上肢
図2Bには後方転倒の出現率を示した。「上肢
を動かす」は男性
52%,女性56%に出現した。
を動かす」は男性52%,女性56%に出現した。
であった。「手をつく
j
動作は男性で95%,女性
であった。「手をつく」動作は男性で95%,女性
小項目にみられる上肢の動き方で、は後方への動
小項目にみられる上肢の動き方では後方への動
きが若干多いが,他は強い傾向はみられなかっ
きが若干多いが,他は強い傾向はみられなかっ
100%出現した。「休の前屈」は男性87%,女
で
で100%出現した。「体の前屈」は男性87%,女
8
7%に出現した。その中では「膝のみ屈曲」
性
性87%に出現した。その中では「膝のみ屈曲」
が大部分を占めた。「頭部を床面から離す
jは男
が大部分を占めた。「頭部を床面から離す」は男
た。「頭部を床面から離す
j は男性,女性とも
た。「頭部を床面から離す」は男性,女性とも
1
00%出現した。後方転倒の場合は頭部を床面か
100%出現した。後方転倒の場合は頭部を床面か
前に出す」であり,女性では「手を外転させる」
前に出す」であり,女性では「手を外転させる」
性
82%,女性70%に出現した。この多くの部分
性82%,女性70%に出現した。この多くの部分
は「体幹の背屈」によってしめられたが,ごく
は「体幹の背屈」によってしめられたが,ごく
少数には「座り込み」がみられた。「体幹の回旋」
少数には「座り込み」がみられた。「体幹の回旋」
は男性
7 %,女性 7%と共に低い出現率であっ
は男性7%,女性7%と共に低い出現率であっ
た。「頭部の接地」は男性
56%,女性87%の出現
た。「頭部の接地」は男性56%,女性87%の出現
78%,女性87%で出現し
た。「手をつく」は男性
た。「手をつく」は男性78%,女性87%で出現し
ら離すためには前屈が必要とり,前屈の程度は
ら離すためには前屈が必要とり,前屈の程度は
小項目の観察から殿部接地時に頭が大転子の直
小項目の観察から殿部接地時に頭が大転子の直
7%,女性64%で
上および前になった例は男性
上および前になった例は男性7%,女性64%で
あり,頭が大転子より後ろになった例は男性で
あり,頭が大転子より後ろになった例は男性で
9
2%,女性で35%であった。すなわち,女性が
92%,女性で35%であった。すなわち,女性が
率で男性が有意
(p<O.Ol)に接地する例は少な
率で男性が有意(p<0.01)に接地する例は少な
男性より明らかに前屈の程度が大きかった。「体
男性より明らかに前屈の程度が大きかった。「体
かった。男性と女性の大項目においては「頭部
かった。男性と女性の大項目においては「頭部
jのみに出現率の有意な差 (
p<0.05)が
の接地
の接地」のみに出現率の有意な差(p<0.05)が
幹の回旋
j の出現率は男性で 2%,女性で 0%
幹の回旋」の出現率は男性で2%,女性で0%
であり,ほとんど体幹の回旋は認められなかっ
であり,ほとんど体幹の回旋は認められなかっ
認められたが,他では認められなかった。
認められたが,他では認められなかった。
前方転倒の第一接触部位は,膝が男性66%,
前方転倒の第一接触部位は,膝が男性66%,
1
7%で有意 (p<0.05)に女性が頭部を接地する
17%で有意(p〈0。05)に女性が頭部を接地する
た。「頭部の接地
j
があったのは男子39%,女性
た。「頭部の接地」があったのは男子39%,女性
75%を占め,手が男性25%,女性 10%,膝
女性
女性75%を占め,手が男性25%,女性10%,膝
5 %,女性
と手を同時に接触させたのが男性
と手を同時に接触させたのが男性5%,女性
割合が高かった。
割合が高かった。
0
%名,膝以外の下腿が男性 2 %,女性 15%で
0%名,膝以外の下腿が男性2%,女性15%で
あった(図
3A)。
あった(図3A)。
以上の結果をまとめると,標準的な前方転倒
以上の結果をまとめると,標準的な前方転倒
殿部と手,轡部と下肢,あわせて殿部を最初に
殿部と手,腎部と下肢,あわせて早早を最:初に
後方転倒の第一接触部位については,殿部,
後方転倒の第一接触部位については,殿部,
80%を越えた。手を
着いた例は男性,女性とも
着いた例は男性,女性とも80%を越えた。手を
最初に着くことに関する小項目,手,啓部と手,
最:初に着くことに関する小項目,手,轡部と手,
のしかたは,体を回旋させず,落下時に体幹を
のしかたは,体を回旋させず,落下時に体幹を
そらせて手を前方に出して,膝,手という順番
そらせて手を前方に出して,膝,手という順番
手と下肢をあわせると男性,女性とも約
50%に
手と下肢をあわせると男性,女性とも約50%に
に接地し,上肢で体を支える動作を行う。最終
に接地し,上肢で体を支える動作を行う。最:終
以上から標準的な後方転倒のしかたは,体を
以上から標準的な後方転倒のしかたは,体を
みられた(図
3B)。
みられた(図3B)。
B
後方転倒時の第一接触部位
B後方転倒時の第一接触部位
A
前方転倒での第一接触部位
A 前方転倒での第一接触部位
Z
膝
z膝
女
性
女性
機務機ri1m
圖手
圃手
膝と手
團膝と手
女性
女性
図下腿
國下腿
男性
男性
m
殿部
團岡部
圃手
国手
悶下肢
圏下肢
E
盟殿部と手
翅殿部と田
圃殿部と下肢
図乙部と下肢
図手と下肢
園手と下肢
男性
男性
0
% 20% 40% 60% 80% 100%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
0%
20% 40% 60% 80% 100%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
図
3 男性と女性の第一接触部位の出現率。
図3 男性と女性の第一接触部位の出現率。
A:前方転倒。 B:後方転倒。
A:前方転倒。B:後方転倒。
5
一5一
井上
馨・渡辺明日香・浅賀忠義・斉藤展士・笠原敏史・坪亜希子・久留利治代
井上 馨・渡辺明日香・浅賀 忠義・齊藤 展士・笠原 敏史・坪 亜希子・久留利浩代
回旋きせず,落下時に体の前屈を行い,管部と
回旋させず,落下時に体の前屈を行い,智部と
手で接地し,女性は頭部が接地しやすいといえ
手で接地し,女性は頭部が接地しやすいといえ
る。
る
。
考
考
r
に後方転倒では,
体幹前屈 jの動作は「頭部を
に後方転倒では,「体幹前屈」の動作は「頭部を
床面から離す」動作と一致するため,男女とも
床面から離す」動作と一致するため,男女とも
1
00%にみられた。しかし,この頭部を守る動作
100%にみられた。しかし,この頭部を守る動作
は殿部が先につくため,殿部を守るときには逆
は弾歌が先につくため,殿部を守るときには逆
効果となる可能性もある。また,
頭部を床面か
効果となる可能性もある。また,「頭部を床面か
察
r
r
本実験において, 体幹の回旋jをのぞいて予
本実験において,「体幹の回旋」をのぞいて予
想された防御動作のほとんどが出現した。本稿
想された防御動作のほとんどが出現した。本稿
で防御動作としてあげているものが,実際に衝
で防御動作としてあげているものが,実際に衝
撃力をどのようにして減弱するかという実験的
撃力をどのようにして減弱するかという実験的
データは非常に少ない。したがって,これらの
データは非常に少ない。したがって,これらの
動作の有効性を論ずるのは現時点では推測の域
動作の有効1生を論ずるのは現時点では推測の域
を出ないが,出現した防御動作について以下の
を出ないが,出現した防御動作について以下の
ようなことが考えられる
ようなことが考えられる。o
「上肢を動かす J動作自体は衝撃力を緩衝す
「上肢を動かす」動作自体は衝撃力を緩衝す
る働きはない。これは転倒という非常事態に対
る働きはない。これは転倒という非常事態に対
する反射運動と次の防御動作への準備と考えら
する反射運動と次の防御動作への準備と考えら
j が見られた
れる。多くの場合「上肢を動かす
れる。多くの場合「上肢を動かす」が見られた
のは,被験者が転倒を予期していたにもかかわ
のは,被験者が転倒を予期していたにもかかわ
らず,落下し始めると一種の軽いパニック状態
らず,落下し始めると一種の軽いパニック状態
に陥り,実際の転倒に近い反応を起こすことが
に陥り,実際の転倒に近い反応を起こすことが
j
動作については,接地
示唆される。「手をつく
示唆される。「手をつく」動作については,接地
後に腕を屈曲させ衝撃を緩衝させる働きがある
後に腕を屈曲させ衝撃を緩衝させる働きがある
と考えられる
o 1
mの高さから前方に転倒した
と考えられる。1mの高さから前方に転倒した
ら離す」は前方転倒では「手をつく」動作と関
ら離す」は前方転倒では「手をつく」動作と関
連が深い。体幹を背屈することと,手を先につ
連が深い。体幹を背屈することと,手を先につ
いて衝撃を緩衝することは一連の動作と思われ
いて衝撃を緩衝することは一連の動作と思われ
J
は,その動作をとることによ
る。「体幹の回旋
る。「体幹の回旋」は,その動作をとることによ
り,筋と皮下組織の厚い殿部や肩から接地する
り,筋と皮下組織の厚い殿部や肩から接地する
ので,危険度を減少させる働きがあると考えら
ので,危険度を減少させる働きがあると考えら
れる。しかし,前方転倒と後方転倒とも,回旋
れる。しかし,前方転倒と後方転倒とも,回旋
の出現率は非常に少なかった。これは本実験の
の出現率は非常に少なかった。これは本実験の
条件が,柔らかいマットの上に転倒することが
条件が,柔らかいマットの上に転倒することが
予期されているため,回旋によって転倒時の恐
予期されているため,回旋によって転倒時の恐
怖を軽減するという動作をとらなかったとも考
怖を軽減するという動作をとらなかったとも考
えられる。また,回旋という動作を落下時に行
えられる。また,回旋という動作を落下時に行
える余裕がなかったという可能性も考えられる
える余裕がなかったという可能性も考えられる
2中には示していない
が,側方転倒の場合,表
が,側方転倒の場合,表2中には示していない
が,測定結果の過半数が体幹の回旋をしており,
が,測定結果の過半数が体幹の回旋をしており,
このことから推測すると,回旋を行おうとした
このことから推測すると,回旋を行おうとした
ら可能で、あったと考えられる
o
頭部の接地」は
ら可能であったと考えられる。「頭部の接地」は
r
マット上での出現率であり,普通の床面で接地
マット上での出現率であり,普通の床面で接地
するかどうかは判断できない。しかし,防御動
するかどうかは判断できない。しかし,防御動
場合に両手を先に着くことにより衝撃を緩衝さ
場合に両手を先に着くことにより衝撃を緩衝さ
せ
ると, 27%
衝撃力を減少させるという報告が
せると,27%衝撃力を減少させるという報告が
ミ
ある九
また,上肢が床面に着く場合は多くの
ある7)。 また,上肢が床面に着く場合は多くの
作の結果としてどの程度頭部を防御できたかと
作の結果としてどの程度頭部を防御できたかと
いう指標になる。「頭部の接地
jは女性が有意に
いう指標になる。「頭部の接地」は女性が有意に
場合,他の部位も接地するため,接触面が広く
場合,他の部位も接地するため,接触面が広く
なり,衝撃を分散する働きもあると考えられる。
なり,衝撃を分散する働きもあると考えられる。
出現率が高かった。他の防御動作は男女聞に有
出現率が高かった。他の防御動作は男女間に有
意な差はみられないので,女性の場合は防御動
意な差はみられないので,女性の場合は防御動
「体の前屈
Jと「頭部を床面から離す j は前方
「体の前屈」と「頭部を床面から離す」は前方
転倒と後方転倒においては強い関連がある
J体
転倒と後方転倒においては強い関連がある。「体
作が頭部保護に対して効果が弱いことが示唆さ
作が頭部保護に対して効果が弱いことが示唆さ
れる
れる。o
j は膝の屈曲と体幹の屈曲という二つの
の前屈
の前屈」は膝の屈曲と体幹の屈曲という二つの
要素から成り立っており,この要素のどちらか
要素から成り立っており,この要素のどちらか
本研究の特長的な点は,第一は実際に転倒を
本研究の特長的な点は,第一は実際に転倒を
起こす実験であることである。これまで転倒の
起こす実験であることである。これまで転倒の
一方で、も出現した場合「体の前屈」という動作
一方でも出現した場合「体の前屈」という動作
とみなした。体を前屈することにより転倒高度
とみなした。体を前屈することにより転倒高度
研究は転倒がどのようにして起こるかという転
研究は転倒がどのようにして起こるかという転
倒が起こるまでのことに注目が集まってきた。
倒が起こるまでのことに注目が集まってきた。
を低くし,床面との衝突速度を減少させる効果
を低くし,床面との衝突速度を減少させる効果
があると考えられる。前方転倒においては前屈
があると考えられる。前方転倒においては前屈
は膝の屈曲という形で現れた。体幹の前屈は「頭
は膝の屈曲という形で現れた。体幹の前屈は「頭
本研究によりどのようにして転倒しているかを
本研究によりどのようにして転倒しているかを
理解するための知見の一端を得ることが出来
理解するための知見の一端を得ることが出来
Jという防御動作に反するた
部を床面から離す
部を床面から離す」という防御動作に反するた
め,ほとんどみられなかったと考えられる。逆
め,ほとんどみられなかったと考えられる。逆
た。第二に多くの被験者を用いて実際に被験者
た。第二に多くの被験者を用いて実際に被験者
を用いたことである。実際の転倒は予期しない
を用いたことである。実際の転倒は予期しない
と
きに, しかも一瞬のうちに起こる出来事であ
ときに,しかも一瞬のうちに起こる出来事であ
6一6一
前方および、後方への模擬転倒時に出現する防御動作とその性差
前方および後方への模擬転倒時に出現する防御動作とその性差
り,その原因と転倒の様子も千差万別で、ある
り,その原因と転倒の様子も千差万別である。 o
これらの全体像を理解するには多くの被検者を
これらの全体像を理解するには多くの被検者を
用いる必要があった。また,このことにより統
用いる必要があった。また,このことにより統
計検定を実施でき,客観性を増強することが出
計検定を実施でき,客観性を増強することが出
来
た。
来た。
本研究の測定における限界点は,第一に実際
本研究の測定における限界点は,第一に実際
の転倒とは異なった模擬転倒であることにあ
の転倒とは異なった模擬転倒であることにあ
る。すなわち,マットの上で転倒したことは転
る。すなわち,マットの上で転倒したことは転
倒への恐怖心を減少させ,実際の転倒でみられ
倒への恐怖心を減少させ,実際の転倒でみられ
る動作が起こらなかった可能性も考えられる。
また,予期されている転倒であることも大きい。
また,予期されている転倒であることも大きい。
予期しない転倒は実験室内で作り出すことは非
予期しない転倒は実験室内で作り出すことは非
常に困難で、あるため,本研究では条件を限定し
常に困難であるため,本研究では条件を限定し
た模擁的な転倒をおこなった。限定された転倒
た模擬的な転倒をおこなった。限定された転倒
ではあるが,落下時は恐怖心もあり,各種の反
ではあるが,落下時は恐怖心もあり,各種の反
射運動もおこるので,転倒時の動作の多くが,
予期しない転倒を反映していると考えられる。
予期しない転倒を反映していると考えられる。
の特徴, pp8-12,I
高齢者の転倒とその対策 j
の特徴,pp 8−12,「高齢者の転倒とその対策」
異野行生編,医歯薬出版,東京, 1
9
9
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眞野行生編,医歯薬出版,東京,1999,
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5)Kroonenberg AJ, Hayes WC, McMahon TA:
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また,バランスが崩れたときには,ステップを
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して転倒から身を守るのが一般的動作で,この
して転倒から身を守るのが一般的動作で,この
立て直しに失敗すると転倒に至る。本実験では
立て直しに失敗すると転倒に至る。本実験では
転倒することが目的動作のため,便宜上ステッ
転倒することが目的動作のため,便宜上ステッ
プ動作を割愛して転倒を行ったが,このことが
プ動作を割愛して転倒を行ったが,このことが
防御動作にどのような影響を与えるかについて
防御動作にどのような影響を与えるかについて
は現在のところ不明である。この解明について
は現在のところ不明である。この解明について
は今後の課題としたい。第二の限界点は,高齢
は今後の課題としたい。第二の限界点は,高齢
者を目標としているにもかかわらず,高齢者を
者を目標としているにもかかわらず,高齢者を
被験者に用いた転倒ではないことである。
被験者に用いた転倒ではないことである。
以上の限界点を解決するためには,若干経済
以上の限界点を解決するためには,若干経済
的には問題を残すが,ダミーなどを利用した
的には問題を残すが,ダミーなどを利用した
少々複雑な実験や,新たな数学モデルを用いた
少々複雑な実験や,新たな数学モデルを用いた
シミュレーションなどが今後期待される。
シミュレーションなどが今後期待される。
引用文献
引用文献
1)井上馨,渡辺明日香,浅賀忠義,斉藤展士,笠
1)井上馨,渡辺明日香,浅賀忠義,齊藤展士,笠
原敏史.高齢者の骨折危険率への生体力学的
原敏史:高齢者の骨折危険率への生体力学的
:167-172,2
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アプローチ,生理人類誌、, 6
アプローチ,生理人類誌,6:16卜172,2001.
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1:240-246,1
41:240−246,1989.
3
)異野行生,中根理恵,渡部一郎:高齢者の転倒
3)眞野行生,中根理恵,渡部一郎:高齢者の転倒
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