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(EPA)、2011年8月1日発効 - ベーカー&マッケンジー法律事務所

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(EPA)、2011年8月1日発効 - ベーカー&マッケンジー法律事務所
International Trade & Commerce
Tokyo
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日印経済連携協定(EPA)、2011 年 8 月 1 日発効
August 2011
日印 EPA のポイント
2011 年 8 月 1 日に発効した日印経済連携協定(EPA)により、即時あるいは
段階的に税率が削減されることから、10 年間で日印貿易の 94%について現存
する関税が撤廃されることになります。
インドの工業品については、ほぼ全製品について日本の関税が撤廃され、多
くの農産品についても関税が撤廃されます。日本は、主要工業品に関するイ
ンドの関税撤廃による恩恵を享受することができます。
日印 EPA の主要な規定
関税撤廃・削減
日印間の往復貿易額の約 94%について協定発効後 10 年間で関税が撤廃されま
す。その 10 年間で、インドでは日本からの輸入の約 90%が、日本ではイン
ドからの輸入の約 97%が無税となります。
日本側の市場アクセス改善の概要
(a) 鉱工業分野
ほぼ全ての品目について、即時に関税が撤廃されます。
(b) 農林水産分野
以下のような主要農水産品について、市場アクセスの改善がみられます。
農産品:
ドリアン(2.5%)・アスパラガス(3%):即時関税撤廃
とうがらし(生鮮・冷凍)(3%)・スイートコーン(生鮮・冷凍)(6%):
7 年間で関税撤廃
カレー(3.6%)・紅茶(3kg 超・飲用)(2.5%):10 年間で関税撤廃
林産品:
製材(3.6%):即時関税撤廃
水産品:
えび(1-2%):即時関税撤廃
冷凍たこ(5%):7 年間で関税撤廃
えび調製品(3.2%-5.3%)・くらげ(7%):10 年間で関税撤廃
インド側の市場アクセス改善の概要
(a) 鉱工業分野
以下の主要な日本側関心品目について、日本企業からのアクセスが容易となります。
自動車部品:
ギアボックス:12.5%→ 8 年間で 6.25%まで段階的に引き下げ
ディーゼルエンジン:12.5%→
6 年間で 5%まで段階的に引き下げ
マフラー(消音装置):10%→
10 年間で関税撤廃
鉄鋼製品:
熱延・冷延鋼板:5%→ 5 年間で関税撤廃
合金鋼:5%→
5 年間で関税撤廃
亜鉛メッキ鋼板:5%→ 5 年間で関税撤廃
電気電子製品:
リチウムイオン電池:10%→
DVD プレーヤー:10%→
10 年間で関税撤廃
10 年間で関税撤廃
ビデオカメラ:10%→ 10 年間で関税撤廃
一般機械:
ブルドーザー:7.5%→ 10 年間で関税撤廃
トラクター:10%→
10 年間で関税撤廃
(b) 農林水産分野
以下のような主要農水産品について、市場アクセスの改善がみられます。
盆栽:5%→ 5 年間で関税撤廃
ながいも:30%→
10 年間で関税撤廃
桃:30%→ 10 年間で関税撤廃
いちご:30%→
10 年間で関税撤廃
柿:30%→ 10 年間で関税撤廃
2 日印 EPA 2011 年 8 月 1 日発効 ⎜ August 2011
その他の改善点
日印 EPA においては、その他に、本件 EPA によって関税が撤廃・削減され
た原産品に対して日印間においてのみとられる二国間セーフガード措置の適
用のための規則の制定、より厳格な原産地規則の採用及びより貿易促進的な
産品特有の原産地規則の制定、サービス貿易の一層の自由化及び自然人の移
動の促進、後発医薬品の承認審査の迅速化、等が改善点として挙げられます。
本件 EPA により、インドは、日本にとって最も重要な EPA 相手国の一つと
なります。
日印 EPA の課題
段階的低減措置の期間及び原産地規則
関税が即時に撤廃される産品もありますが、段階的な関税の低減において、
10 年という期間は比較的長い期間であるといえます。その結果、日印 EPA の
成果の検証には少し時間がかかる場合もあります。
日印 EPA における原産地規則は、日本が締結しているその他の EPA と比較
して、厳格であるといえます。例えば、非原産材料を使用して生産される産
品の原産地規則は、付加価値基準 35%以上かつ関税分類変更基準 HS6 桁水準
(CTSH)となっています。但し、インドと韓国間の FTA の基準はこれと同
じ基準です。他方、品目別規則で、より貿易促進的なルールを採用している
とされていますが、どこまで貿易促進的となっているか、品目ごとに確認す
ることが重要です。
ビジネス環境整備の必要性
日印間で EPA が締結されても、貿易を阻害する可能性を含むビジネス環境は、
依然として改善の余地があります。その一例として、2011 年 2 月 4 日、イン
ドに進出している日本企業で構成されるインド日本商工会は、「インド政府
への建議書」をインド政府に提出しました。これには、以下の内容が含まれ
ます。
(1) 税制
(i)
特別追加関税(SAD)免除の自動車分野への適用及び SAD 払戻し遅
延の解消
(ii)
移転価格税制の適用範囲の明確化及び適正価格の事前確認制度
(APA)の導入
(iii) 商品サービス税(GST)の迅速な導入
(iv) 輸入品への最大小売価格(MRP)ベース課税廃止
(v)
配当分配税の受取側からの徴収
(2) 査証問題
(i)
出張者へのビジネス査証の発給
(ii)
第三国でのインドビジネス査証・就労査証の取得条件の緩和
(iii) X-VISA 更新時の結婚・出生証明提出義務廃止
3 日印 EPA 2011 年 8 月 1 日発効 ⎜ August 2011
(iv) FRRO(Foreign Regional Registration Offices)発行の滞在許可期間を査
証有効期間と整合
(3) インフラ
港湾、鉄道、道路等に関するインフラ整備の必要
(4) 通行許可(Road Permit)のシステム化、あるいは簡素化
(5) 土地取得制度の透明化、適正化
(6) 社会保障協定の早期締結
(7) 社会保障準備基金の払戻し規制の見直し
(8) 通関手続きを含む物流の改善
(9) 金融制度の改善、手続き迅速化
(10) インドで新たな合弁を立ち上げる際の、既存の合弁相手企業からの NOC
(Non Objection Certificate)取得義務(Press Note 1)を撤廃
(11) IT 機器(プリンター等)の政府調達における原価算出根拠(Bill of
Entry)の提出義務の廃止
インドは約 12 億の人口を擁し、過去 5 年間における平均経済成長率は 8.3%
となっています。したがってインドは、日本にとって巨大な市場ですが、イ
ンドの機関あるいは企業との円滑なビジネス上の関係構築には、解決・改善
が必要な点があることが伺えます。互いに相手国の習慣に馴染み、ビジネス
の発展のために好ましい環境を構築することが、両国の課題でもあるといえ
ます。
パートナーとしての日本
日印 EPA が発効し、日本は、インドと商業的な関係を構築しようとしている
他国との競争にさらされることになります。2010 年には、主要国の大統領あ
るいは首相がこぞってインドを訪問しました。その中には、200 人の米国の
経営者とともにインドを訪問した米国のオバマ大統領も含まれます。インド
と中国の貿易は、急速に拡大しています。また、インドと ASEAN との自由
貿易協定(FTA)は、18 億人の市場を創出することになります。インドと韓
国間の EPA は、2010 年 7 月に発効し、二国間の貿易を成長させています。
インド側の対日貿易額は、その貿易総額の 2%余りであり 1 、日本側の対印貿
易額は、その貿易総額の 1%未満です 2 。インドで日本の印象を聞いたアン
ケートによれば、インド人が日本について抱いている印象は、「先進技術を
____________________
1
出典:ジェトロ。
2
出典:総務省・統計局・政策統括官(統計基準担当)・統計研修所。
http://www.stat.go.jp/data/sekai/09.htm
4 日印 EPA 2011 年 8 月 1 日発効 ⎜ August 2011
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有する国」「経済力のある国」というもので 3 、しかしながら、このような印
象を与える国は、日本のみではありません。また、インドには、先進技術を
有しており、あるいは経済力のある潜在的な通商パートナーがたくさん存在
します。魅力的なパートナーとして二国間において良好な関係を構築するた
めには、単に高品質の物を売買するだけでは足りず、包括的な二国間のビジ
ネス環境を改善するために、努力を傾注する必要があるでしょう。
EPA までの交渉
日印 EPA は、2011 年 2 月に署名され、2011 年 8 月 1 日に発効しました。
インドにとって、本件EPAは、シンガポール、韓国とのEPAに続く、3 つ目の
包括的経済連携協定(CEPA)となります。また、インドはマレーシアとも
CEPAに署名をしています。インドはCEPAの他に、スリランカ及びASEANと
の間で自由貿易協定(FTA)を、タイ、アフガニスタン、メルコスールとの
間で特恵関税協定(PTA)を、ネパールとの間で貿易協定(TA)を締結して
います。インドは、南アジア自由貿易地域(SASTA)及びアジア太平洋貿易
協定(バンコク協定)の加盟国であり、他にも、枠組協定や覚書(MOU)を
締結しています。 4
日本は、ASEAN、ブルネイ、チリ、インドネシア、マレーシア、メキシコ、
フィリピン、シンガポール、スイス、タイ、及びベトナムとの間で EPA を締
結しており(発効済み)、ペルーとも 2011 年 5 月に EPA に署名をしました。
本件 EPA は、日本にとっては 12 番目の EPA となります。
____________________
3
出典:NHK.
4
https://www.jetro.go.jp/world/asia/in/trade_01/
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5 日印 EPA 2011 年 8 月 1 日発効 ⎜ August 2011
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