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印刷 - HKTDC

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印刷 - HKTDC
2009 年 6 月 18 日
印刷
概要
•
印刷業界は、技術の進歩が直接トレンドに反映されるが、最近では各種
プリプレスとポストプロダクションを組み合わせるのが一般的な傾向
となっており、精度の向上とコスト削減に繋がっている。新型の印刷機
械もこの点を考慮して考案されているほか、業界全体として環境に配慮
した原材料を使用するなど環境保護意識が高まっている。
•
プレス(印刷)に対応可能となった製品の種類が増えているが、例えば
壁紙、デスクパッド、マウスパッド、布製ポスター、プラスチック・ラ
ベルなどにも直接印刷ができるようになっている。
•
香港は世界の主要な印刷センターの 1 つである。香港が持つ自由な情報
フローと出版の自由が保障されていることから、多数の地場及び海外の
新聞、ジャーナル、定期刊行物、宗教関連の書籍やテキストブックが香
港で印刷されている。
業界の特徴
印刷業界は出版、広告、様々な軽工業・消費者製品業界(玩具、食品、化粧品
など)を支えており、香港の主導産業の地位を占めている。その多くは中小企
業であるが、90 年代中頃から中国本土へ活動拠点の移転が進む一方、インタ
ーネットの普及によって新聞、雑誌等の印刷媒体は売上高減により低迷してい
る。
香港の印刷業者は多岐に亘る印刷物を製造しており、書籍、冊子、パンフレッ
ト、チラシ、紙ラベル板紙製ラベル、広告用資材、商用カタログ、カレンダー、
ポストカード、グリーティングカード、などが含まれている。中には、児童向
け飛び出す絵本などの特殊書籍、小切手帳、パスポート、請求書、計算書、証
券、事業内容説明書など、高度技術や高額な資本投資や信用を必要とする高付
加価値製品やハイテク印刷物の製造に特化した企業もある。
海外の顧客に対しては、小口で多頻度のオーダーにおいても利益率を確保する
ために、迅速な対応・納期の遵守に注力している。香港の印刷業者はその質の
高さ、迅速な納入体制、競争力のある価格、急な注文への対応能力で知られて
おり、品質についても、パイオニアの米国、ドイツ、日本に匹敵する印刷技術
を有することで知られている。この技術面における高品質な必要要件を満たす
能力が、激化する中国本土の印刷業者との価格競争にもかかわらず、香港を世
界トップの印刷及び出版センターの地位に押し上げている。
香港の優れた電気通信ネットワークの印刷業界への貢献度は高い。出版業者は
世界中の情報に瞬時にアクセスできるが、スピードが鍵を握る出版業界におい
て、このことは欠くことのできない優位性となっている。また、中国本土に近
く、出版の自由が認められた香港では多数の海外出版社、報道機関(特にメデ
ィア企業)がリージョナルセンターを設置している。「フィナンシャル・タイ
ムズ(アジア版)」、「エコノミスト」、「インターナショナル・ヘラルド・
トリビューン」、「アジアン・ウォール・ストリート・ジャーナル」、「USA
トゥデイ・インターナショナル・アジア」、「日本経済新聞」、「ファーイー
スタン・エコノミック・レビュー」などが香港で印刷されており、その一部は
中国本土にも出荷されている。香港地場向けには、約 50 に及ぶ新聞と 700 以
上の雑誌やその他の定期刊行物が発行されている。
印刷業界は技術の向上が顕著な産業であり、生産技術の進歩に追従することが
不可欠である。その点において、香港の印刷業者は最新型レーザーセッター、
カラー・スキャナー、電子組版システム、デジタル・プリンター、自動仕上げ
システム、1 色刷から 5 色刷の印刷機を導入して体制を整えている。また、多
くの香港企業がラミネート装置、ダイカッティング、紙裁断機、収縮包装機、
紙折り機、ホットスタンピング、製本装置などを導入するなど、全ての製造プ
ロセスをインハウスで行うことで、更なる品質確保に努めている。中には CTP
(Computer-to-plate)や証券印刷機を導入している企業もある。
香港の印刷物の輸出実績 ^
2007 年
2008 年
2009 年 1 月~4
月
百万香港 前年比 百万香港
%
ドル
ドル
国内輸出
前年
比
%
百万香
前年比%
港ドル
2,814
*
2,281
- 19
552
- 20
再輸出
16,380
+12
17,742
+8
4277
- 12
中国本土生産品の輸出
15,708
+14
17,056
+9
4099
- 12
輸出合計
19,194
+10
20,024
+4
4831
- 13
2007 年
市場別
2008 年
2009 年 1 月~4 月
構成比% 前年比 構成比% 前年比 構成比% 前年比
%
%
%
米国
34.3
+5
31.8
-3
29.1
- 20
EU (27)
26.7
+30
29.4
+15
29.5
-7
英国
14.1
+32
13.8
+2
12.8
- 13
3.1
+24
3.8
+27
4.1
+10
11.2
-5
10.0
-8
11.6
- 10
アセアン域内
7.4
+6
7.2
+2
8.1
- 20
オーストラリア
4.5
+23
4.8
+11
4.3
- 12
日本
2.5
- 19
2.3
-3
3.4
+43
カナダ
1.7
+11
1.6
-4
1.6
-6
ドイツ
中国本土
2007
カテゴリー別
2008
Jan - Apr 2009
構成比% 前年比 構成比% 前年比 構成比% 前年比
%
%
%
各種書籍、パンフレ
ットなど
49.9
+14
53.4
+12
51.1
- 13
あらゆる種類の紙
類・板紙ラベル
20.9
+3
19.4
-3
19.9
- 20
写真、絵、塗り絵
9.9
+33
9.8
+3
10.1
- 11
印刷済みまたはイラ
スト入りのポストカ
ード、印刷済みのカ
ード
8.0
+20
6.1
- 20
7.6
+15
トランスファー
2.6
+1.5
2.4
-3
2.7
- 33
流通広告用素材、商
用カタログなど
2.2
+10
2.3
+11
2.2
- 24
^三国間貿易が通常貿易の統計に計上されなていないため、これらの数字は必
ずしも香港企業によって行われた輸出ビジネスを反映しているとは限らない。
* 極小値
販売チャネル
輸出の約 60~70%は海外からの直接注文と推定され、このうちの 4 分の 1 は
在香港の海外の大手出版社からの注文である。輸出注文は、主として既に海外
顧客との間に安定した取引関係にある大手印刷業者又はディーラーが扱って
いる。また、香港の大手印刷業者は、海外におけるビジネス確保のため海外に
オフィスを設置している。
香港製造業者と流通業者は、ビジネス・ネットワークの拡大、市場機会の探求、
海外での企業イメージの構築などのため、香港貿易発展局(HKTDC)主催の
「香港国際印刷・包装展」などのトレード・フェアやスタディー・ミッション
に参加している。HKTDC ではスタディー・ミッションやマッチ・メーキング・
ミッションも主催しており、特定市場を訪問して、香港の製造業者にとっての
潜在顧客の探索と新たなビジネス関係の構築を振興している。その他の重要な
フェアとしては、Drupa、IPEX、All in Print、Graph Expo、Print 01 などがあ
る。
業界のトレンド
印刷業界のトレンドの多くは、新たな技術の導入や生産技術革新によってもた
らされている。CTP などのフィルムレスプリント・プロセスは、既に円熟の
域に入っており、CTP 技術によって色彩管理や色分解フィルムの作成を行わ
ずに画像を亜鉛版に直接転写することができるようになっている。このことは、
プリプレス作業時間の短縮とより鮮明な画像を実現することを可能にしてい
る。
デジタル印刷では、プレートを使わずにテキストとグラフィックデータを直接
コンピューターから印刷機に転写することが可能となり、印刷工程の短縮とコ
スト削減、速度・精度・品質の向上に繋がっている。操作が簡単でフレキシビ
リティに優れ、準備期間も短縮可能で、カスタマイズ対応もできることから少
量印刷にも適している(例:広告、個人用ダイレクトメール、チケットなどの
印刷)。
印刷業者の中には、デザイン、データ処理、翻訳、編集、電子出版などの補助
サービスを含む「総合ソリューション」を提供している会社もある。一部の大
手印刷業者は、紙の価格変動による影響を軽減し、資材供給の管理を向上させ
るため、自ら製紙や用紙売買を行い、サプライヤーと戦略的パートナーシップ
を構築するなど垂直統合を進めている。その他、以前は外注していた色分解(カ
ラーセパレーション)などの特定の処理プロセスを、現在はインハウス化する
傾向が見られる。このことは、例えばコールド・フォイル技術、ダイカッティ
ング、コーティングなどのプリプレス又は仕上げ機能を組み込んだ自動化新型
装置によって可能となっており、印刷業者は規模の経済効果のみならず、品質
管理強化と生産プロセスの合理化を実現している。また、多くの大手印刷業者
は ISO 9002 の認証を受けている。
一般に、印刷業界は社会経済の動向から、多大なる影響を受けやすい。ホーム・
プリントが普及する中、印刷業界では例えば複雑なフォーマットを用いた 4
色刷での大量印刷、メタリック・カラー、フォイルスタンピング、蛍光色など
の高度印刷技術の開発に努めている。更に CD-ROM や電子出版物の普及によ
って従来の出版物の役割が今後揺らぐ可能性は否めない。
運営費削減のため、香港地場印刷業者(主に大手企業)は業務の大半を中国に
移転させている。しかしながら海外注文を受けるための香港オフィスはそのま
ま残しており、ブロードバンド接続による海外バイヤーからの受注をはじめ、
積極的にハイテクを導入してコスト削減に努めている。この受注形態は、海外
バイヤーが香港の印刷業者に対する信頼を置き、長期に亘るビジネス関係を維
持することを望んでいるという見解に基づいている。オンラインでは、必要要
件の特定、問合せ、サンプル・ドラフトの確認、変更、注文確定など全てのプ
ロセスに対応することができる。また、生産プロセスもコンピューター・シス
テムによって自動化され、情報技術を用いて生産プロセスを管理する印刷業者
が増えている。
CEPA(香港・中国経済貿易緊密化協定)
CEPAは 2003 年 6 月に締結され、その後 2004 年~2006 年にかけて適用範囲
が拡大されてきている。CEPAでは香港で製造された全製品は、CEPA原産国
規則のもと、中国本土に免税(関税フリー)で輸入できるようになった。詳細
については次のリンクを参照。
http://www.tid.gov.hk/english/cepa/tradegoods/files/mainland_2009.pdf
製品トレンド
児童書は、子供にとって読むだけに限らず、聞いたり話したり、模型を作った
り、パズルを解いたり、付属のソフト玩具で遊んだりできるように、高度化す
る傾向にある。
先生と生徒が地理的に離れているという遠隔教育の増加に伴い、情報交換の手
段としては、電子デバイスの他に印刷物も用いられている。そのため教育関連
の印刷物に対する需要が拡大することが予想されている。
従来の印刷物については、多様な市場セグメントのニーズに合わせて革新的な
デザインが求められている。例えば、カレンダーなどの日用品でも、卓上用か
ら大型 3D 壁掛けカレンダーまで様々な形態がある。また高品質が要求される
印刷物には 5 色刷や 7 色刷工程が導入されている。更に、インクについても
香り付きインクの開発・導入などの技術革新が見られる。
ホログラムは 3 次元物体のイメージを完全に記録及び再現する方法で、クレジ
ットカードなど特定の目的にしか使われてこなかった。しかし技術の進歩によ
ってホログラムの大量生産が可能となり、ラベルを含む包装など様々なフォー
ムに利用されるようになっている。また、流通セクターのオペレーション体制
の変更に伴い、バーコード印刷の需要が増加傾向にある。
以前に比べて包装自体が重要視されるようになったため、より高品質の素材が
求められるようになっており、高度に装飾された折りたたみボックス、タンパ
ー防止や安全機能性、ラベルに見えない感圧性接着ラベル、耐媒体・耐熱素材、
急速凍結素材、などに対する需要が高まってきている。
また、出版業者が環境保護方針の強化を打ち出しているため、印刷業者も、例
えばリサイクル紙や合成紙(印刷の品質に影響を及ぼす可能性があり、印刷業
者による微調整が必要になる)、UV インクや大豆を原料としたインク(洗浄
の際に化学溶剤の使用量削減になる)などより環境を配慮した原材料の利用が
進んでおり、薬品が不要なケミカルフリーのプレート・システムも導入されて
いる。
印刷機で生産できる製品の種類は増加傾向にあり、布(例えばポリエステルや
絹)に直接印刷して布製ポスターを生産することができるようになった他、市
販用壁紙や、デスクパッドやマウスパッドのようなプラスチックにも直接印刷
が可能となっている。
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