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地域がん登録全国協議会第 回学術集会実務者研修会

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地域がん登録全国協議会第 回学術集会実務者研修会
(
)
年(平成
年) 月
日
広島県医師会速報(第
号)
昭和
年
月
日 第
種郵便物承認
地域がん登録全国協議会第 回学術集会実務者研修会
がん登録のデータ品質の評価
~国際がん登録の父 パーキンス先生の
年論文を読み解く~
と き 平成 年 月 日㈭ と き 平成 年 月 日㈮ ところ 秋田キャッスルホテル ところ 秋田県総合保健センター 大会議室
広島県医師会常任理事 有田 健一
がん登録実務者研修会
がん登録のデータ品質の評価
第
部「がん登録データの品質」
比較可能性・妥当性・即時性
愛知県がんセンター
伊藤 秀美
I
ARC(国際がん研究機関)のテクニカルレ
ポートの要約について説明する。はじめに、現
代において地域がん登録の役割は従来の数を数
えるという役割からがん対策、研究や医療の質
の評価などさまざまな分野へと拡大している。
しかし、このような役割を果たすためにはがん
登録の統計データとしての品質が担保されてい
なくてはならない。
ここでは、比較可能性・妥当性・即時性につ
いて解説する。比較可能性とは、ある程度合意
された国際ガイドラインに則って実施されてい
ることで、他のがん登録との比較によりそれぞ
れのがん登録を評価することが可能になる。
妥当性とは、正確度ともいい、基資料が正確
であるかどうかや、コード化する際に正確に行
われているかに関わっている。利用可能なデー
タになるまでの過程でどれだけ正確な作業が行
われているかが問われる。
昭和
年
月
日 第
種郵便物承認
広島県医師会速報(第
即時性とは、がん登録のデータが利用可能に
なるまでの時間で、できるだけ迅速に報告する
こともがん登録の重要な役割である。この後、
大木先生が解説する完全性と即時性は相反する
関係にある。遅れて報告される症例もあること
から、即時性を求めすぎると過小評価になって
しまう。そこで、過小評価の推定による罹患率
の調整、基準を設けるなどして早く正確なデー
タ発表ができるように努力が行われている。
完全性
栃木県立がんセンター
大木いずみ
がん登録における完全性とは、発生したすべ
てのがんが登録されているか、と言うことであ
る。真の罹患率を知ることでがん対策などに生
かせるようになる。これまで日本のがん登録
データは推定値であったが今年度より全国 都
道府県でがん登録が開始され、実数での罹患率
の集計ができるようになる。これで完全性には
一歩前進したといえる。しかしながら、すべて
の都道府県において高い登録率を実現できてい
るとは言えない。
完全性が高くなければがんの真の罹患率を求
めることはできない。そこで完全性を高めるた
めの取り組みについて一例を示す。栃木県にお
いては、他県との比較を行いグラフの変化など
を観察し、登録漏れの件数の増減などを予測し
ている。大陸のがん登録との比較を行い、変化
のある部分にはフラグ立てを行い、統計的な考
え方で完全性にアプローチを行うこともできる。
完全性を高めるためには環境を整える側の責
任も大きくなる。地域がん登録を担当する人と
行政の人がタッグを組めば高めることができる
と思われる。
第
号)
年(平成
年) 月
日(
)
域がん登録である。診断時住所と郵便番号、年
齢、性別、人種。昔から植民地を持っていた国
なので多くの人種が居住している。そしてNHS
ナンバー。これはイギリスの公的医療機関を受
診するために必要な保険証番号で、 人 番号で
簡単に個人同定が可能である。がんの情報とし
ては原発部位、ステージ、診断根拠、診断日、
治療情報、死亡日、死因などが登録項目となっ
ている。これに加えて独自項目がいくつかある。
スコットランドでは家系の情報を収集している。
イギリスの医療制度に左右される部分が多い
のも特徴である。日本と同じ国民皆保険制度で
あるが患者は医療費を税金として払っているの
で病院で払う必要がない。さらに受診する病院
は住む地域により決められているので治療はほ
ぼ同一地区で完結する形となっている。
イギリスのがん登録は症例の多い病院にはス
タッフを常駐させ、症例がそれほど多くない病
院へは出張採録を行っている。さらに、病理検
査の委託先からも情報を得ているというところ
がイギリスのがん登録の特徴である。そこから
さらに遡り調査を行い、現在のDCO(死亡情報
の み で 登 録 さ れ た 患 者:Deat
h Cer
t
i
f
i
cat
e
Onl
y)割合は %台前半で推移している。
イギリスのがん登録の精度の高さの要因は、診療
情報の追跡が容易であること、院内の診断情報と病
理診断情報のふたつの情報を集めているという点、
地域がん登録データを使う動機があるという点が挙
げられる。特に地域がん登録データを使う動機があ
るという部分は医療計画などの立案に使用するとい
う明確な目的を国だけでなく地域でも持っているた
めさまざまな部分で地域がん登録に対して協力的と
なっている。以上の点を総合した形が精度の高いイ
ギリスの地域がん登録と言える。
仏国のがん登録
国立がん研究センター
部「世界のがん登録」
松田 智大
英国のがん登録
弘前大学大学院
松坂 方士
イギリスは連合王国で つの国が集まってい
る。がんの統計もそれぞれの国で出している。
保険行政、教育行政は別々に法律があり、地域
がん登録においてもその影響が色濃くあった。
イングランドには元々 つのがん登録があり、今
年から つのがん登録にまとまった。 つの国で
それぞれ統計を出し、それを合わせて連合王国
としての統計を出すという形式がイギリスの地
フランスのがん登録は
年から医療関係者
が自発的に事業を開始した。この点は日本の事
業開始と似ている。法律の裏付けは届け出の義
務という形式の法律ではなく、患者の同意なし
にがんの情報を集めて良いというものである。
運営については民間が行っている。
民間の運営ではあるが個人情報を扱うための
認可が必要で、 つの組織の認可を受け、立ち入
り検査などの安全管理措置のチェックを受けて
いる。全がんの情報を収集しているわけではな
く、部位別に集めている。しかし、消化器のがん
(
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年(平成
年) 月
日
広島県医師会速報(第
や小児がんや白血病は全国で情報を集めている。
データ収集の方法は病院からの登録ではなく、
病院に赴いて採録を行う形式を取っている。生
存確認情報の利用が近年使えるようになり、生
存率の計測に役立っている。
登録項目に共通項目などは特になく、それぞ
れの地域で独自の項目で収集している。個人同
定方法は日本と同様に氏名、生年月日、住所、
病院などで行う。
研究をし、発表をすることが、がん登録の動
機となっているのでスタッフも研究者が自然と
集まってくる形である。私自身も膀胱がん患者
のQOLの研究のためにがん登録に関わったが、
個人情報を扱うための認可の更新のためにも実
績が必要となるので、地域がん登録のデータを
用いた論文なども多く発表されている。
現在も研究者ベースで気概を持ってがん登録
を運営している点は日本も見習うべき点かもし
れない。
学術集会
会長講演
真実は個にあり~医療のなかの科学~
秋田県総合保健事業団顧問
加藤 哲郎
歴史をひもとくと、近代科学の創始はガリレ
オ・ガリレイに行きつく。彼は、
「自然現象はす
べて粒子の振る舞いであり観察することが可能
である」とし、
「s
c
i
e
nz
a
」
(科学)という言葉を
初めて用いた。ギリシャ時代からすべての学問
分野が「phi
l
os
ophy」(哲学) という概念で包
括されてきた歴史に一線を画すものであった。
イタリア語の「s
ci
enza
」は知るという意味
で、英語では「s
c
i
e
nc
e
」
(科学)、ドイツ語では
「Wi
s
s
e
ns
ha
f
t
」(知識)、わが国では科学と訳さ
れた。いずれにせよ、科学とは自然の摂理を知
ることであり、その究極は自然現象を数学で表
現することにあるとされる。エネルギーと質量
2
が、世界で最も美し
と光速の関係を示すE=mc
い数式といわれる所以である。
医学も生物学の一領域であり、生理現象の究
明という命題を担う科学である。今では遺伝子
レベルの解明が進んでいる。だが、 兆個の細
胞からなる生体では医学が科学の入口にたどり
着いたばかりである。
すでに 世紀には、生命現象にはあまりにも
不確定要素が多いため、数学的な処置は平均値
号)
昭和
年
月
日 第
種郵便物承認
にとどまり、それから 世紀半後の現在でも、膨
大な情報を統計処理はできても、扱うのが平均
値であることに変わりはない。
科学は分子から原子そして素粒子の世界に入
り、さらに宇宙の %が実態不明であることが
判明した。われわれの身体も宇宙の一部である
ことを思うと、常に新しい知見を追い求める必
要性を感ずる。
では何処から手をつけたらよいのか、そのヒ
ントはタイトルにも掲げた「真実は個にあり」
という言葉に求めたい。画一化した数値に惑わ
されることなく、個々の頭脳と感性で問題点を
見つけ探求することに科学があるように思える。
地域がん登録においても、「va
r
i
a
t
i
o
n」(変化)
を尊重する姿勢ががん医療の進歩につながる新
知見を生むと期待する。
招請講演
シロクマと北極圏生物の不可思議
秋田大学医学部教授
妹尾 春樹
北極圏の生物にはホッキョクグマを頂点とす
るシンプルな食物連鎖が存在している。近年、
北極圏の動物がビタミンAを肝臓に大量に貯蔵
していることを発見した。シロクマ、アザラシ、
トナカイ、カモメなどの北極圏に住むさまざま
な動物の体内ビタミンAの量を解析したところ、
食物連鎖の上位に位置する動物はヒトの 倍か
ら
倍もの高濃度のビタミンAを肝臓に貯蔵し
ている。シロクマは大量のビタミンAを肝臓星
細胞に貯蔵している。シロクマは食物連鎖の中
でアザラシなどの限られた食物を食べざるを得
ないため、食物とともに大量のビタミンAを摂
取している。よって大量のビタミンAを摂取し
ても生体が耐えられるように進化してきたと考
えられる。
昭和
年
月
日 第
種郵便物承認
広島県医師会速報(第
これらの動物では肝臓星細胞の数はヒトや
ラットと同じであり、個々の星細胞のビタミン
A貯蔵能力が大きいことが判明した。
それではこれらの北極圏動物における肝臓星
細胞のビタミンA貯蔵はどのような意味を持つ
のであろうか。動物のみでなく自然全体を観察
し、食物網、食物連鎖などの着想を得て、無機
物質から始まる食物網の予想をした。
もし、肝臓星細胞が持つ、このビタミンA摂
取と貯蔵の許容量が少なければ、これらの動物
はビタミンA中毒のため北極圏の食物網の上位
に位置することは困難で、今日みられる北極圏
における生物多様性は樹立も維持もされなかっ
たことと推測される。この細胞はビタミンAの
貯蔵という機能を発揮することで、北極圏の動
物の食物網の成立と維持に大切な役を果たして
おり、それはこの地域における生物多様性の成
立と維持にも役立っていると言える。
学術奨励賞受賞講演
地域がん登録における収集方法の違いによ
る完全性と収集情報の精度への影響
(公財)放射線影響研究所
杉山 裕美
地域がん登録のデータ収集方法は、医療機関
から届出される届出方式と、がん登録室スタッ
フが医療機関へ出向いて医療記録からがん情報
を収集する採録方式がある。採録方式の広島市
地域がん登録、病理診断の届出方式の広島県腫
瘍登録、届出方式の広島県地域がん登録のデー
タを用いて、収集方法の違いにより、完全性と
収集した情報の精度を検討し、罹患集計報告に
どのような影響があるかを検討した。
完全性については、広島県における つの登録
データを集約した
年診断データにおいて、
広島県全域と、採録も行われている広島市内に
おいて、地域がん登録データの完全性を比較検
討した。採録データは広島市域の総罹患数のう
ち %のカバー率であったが、死亡票で初めて
登録されたものの割合(DCN)は広島県域と広
島市域でそれぞれ .%と .%、死亡票のみ
で登録されたものの割合(DCO)はそれぞれ
.%と .%で、完全性に大きな違いは見られ
なかった。従って、届出票と病理登録のみでも
完全性については一定の精度を満たすことが分
かった。
広島市地域がん登録における採録協力病院の
うち、がん診療連携拠点病院(拠点)の 病院と
号)
年(平成
年) 月
日(
)
非拠点の 病院の合計 病院において、
年か
ら
年に登録された症例 , 件を対象とし、
集約されたがんについて最初に届出された届出
票と採録票を比較した。結果としては、診断年
の一致率は .%であった。がんの部位につい
て、I
CDOT-の 桁目までの一致率は、 .%
であった。がんの形態について、Be
r
gの分類の
一致率は、 .%であった。いずれの項目の一
致率についても拠点と非拠点で違いはなかった。
また、がんの部位不明の割合は、採録票のみ、
届出票のみ、および採録票と届出票と病理登録
を加えて集約した場合で、順に .%、 .%、
.%であった。すなわち、届出情報のみでは
がんの部位や形態の不明割合がもっとも高く、
それに比べ採録では不明割合が低く、病理登録
情報を加えた場合と同程度であった。これは採
録では病理記録も含めた医療記録から詳細な情
報を収集しているためと考える。
以上のことから、届出方式での収集でも登録
の完全性は一定の精度を満たし、がんの部位別
集計などの標準的集計は可能であるが、詳細部
位の解析や、組織型別の集計については、部位
や形態不明割合が高くなる可能性が考えられる。
また、病理登録情報を付加することにより、よ
り正確な形態名が判明し、詳細な解析にも耐え
うる情報が蓄積できるだろう。日本の地域がん
登録においては、コストやマンパワーの面から
も届出方式が一般的な方式となっているが、定
期的に採録方式によるモニタリングを行い、が
ん登録情報の精度について検討していくことは
重要であると考える。
学術委員会企画シンポジウム
地域がん登録の課題と展望
県外で医療を受けたがん患者情報の把握に
ついて
国立がん研究センター
松田 智大
日本の医療において、国民皆保険制度と併せ
て特徴的な制度が、医療機関へのフリーアクセ
スである。患者は、医療機関の種類・場所を問
わず、自身の選択で受診することができ、この
ことは、都道府県でのがんの実態把握には、患
者の移動の把握を避けて通れないことを意味す
る。大都市を抱える都道府県であれば、他県在
住者の受診は 割に達するところもある。しかし
ながら、
年に地域がん登録全国協議会で実
施した「地域がん登録における登録票の県間移
(
)
年(平成
年) 月
日
広島県医師会速報(第
送状況調査( 都道府県対象)
」の結果から、他
県在住者の登録票を自主的に収集していると回
答したのは全体の .%にとどまり、また収集
している都道府県でも、 /強の地域しか他県に
届出票を転送していないことが明らかとなった。
県外受診患者の把握には、各都道府県の自助
努力によって、届出票を収集し、定期的に管轄
県に送付する方法、エリア単位での情報蓄積を
実現する方法、の つが考えられてきた。日本で
は、地域がん登録の成り立ちとも相俟って、各
県による移送の努力がなされてきた。近年、北
関東や近畿圏では、その県間移送方式をより形
式的に整備し、県間の取り決めに基づいた移送
が実施されている。都道府県によっては、実施
要綱に自県在住者の情報のみを収集対象と規定
している場合があるため、もとより情報収集が
できず、医療機関から他県への情報提供が県の
個人情報保護条例の適用対象外となるか不透明
という問題がある。
行政組織の壁を越えたデータベースの維持
や、資金確保において、クリアしなければなら
ない課題は多い。
月に公表されたがん登録法の骨子案では、エ
リア単位の方法を発展させ、県間の移送および
突合作業は国が一括して実施することとされて
いる。この計画は、がん登録を国の事業とし、
都道府県への法定受託事務と位置付けることで、
都道府県の自主的な活動では乗り越えることが
難しいこれまでの問題点をクリアし、国の予算
措置が期待できるという根本的な解決策である。
一方で、県間の症例突合作業の実務は「未知の
領域」であることから、不安もつきまとう。現
在の突合キーに加え、他の情報を吟味して同一
人物の判断をする他、住所が違う場合には、必
要に応じて住民票照会などによって転居を確認
することも検討すべきであろう。
法制化に伴い、患者の移動というわが国のが
ん登録に固有の問題を解決する糸口が見えた今、
慎重を期しつつも、関係者で力を合わせ、確実
に一歩前進することが重要である。
予後情報把握のための住基ネットの活用
国立がん研究センター
号)
昭和
年
月
日 第
種郵便物承認
するには、各県の「住民基本台帳法に基づく本
人確認情報の利用及び提供に関する条例」に基
づき、地域がん登録事業における生存確認調査
業務を「住基ネットを利用する事務」とするこ
とについて承認される必要がある。
「住民基本台
帳法に基づく本人確認情報の利用及び提供に関
する条例」が制定されていない都道府県もあり、
その場合は条例の制定が始めの第一歩になる。
また、住基ネットは全国の住民基本台帳情報と
つながっているにも関わらず、地域がん登録事
業においてアクセスできる情報の範囲は当該県
内までに限られ、登録された患者が県外に転出
した場合は、住基ネットによる追跡はその時点
で打ち切りになってしまう。そのため、地域が
ん登録の法制化にあたって、地域がん登録が住
基ネットを利用する場合の手続きの簡略化と、
全国の情報にアクセスできるようになることが
期待されていたが、平成 年 月に出された「が
ん登録等の推進に関する法律案骨子」の中には
地域がん登録における住基ネットの利用につい
て、特別の便宜を図る法文は盛り込まれていな
い。
この判断に至った見解は主に以下の 点であ
る。一点目、現在認められている住民基本台帳
法に基づく本人確認情報の利用および提供に関
する国の事務は、すべて個々の住民利益に関わ
るものであって、公衆衛生目的での利用はない
ため。生存確認情報について代替手段があるの
ならば、そちらを優先するほうがよい。二点目、
住基ネットを利用できるようにしたとしても、
住民基本台帳法に基づく本人確認情報の利用お
よび提供の仕組みによって得た情報は当該業務
における利用に制限され、法律上、医療機関な
どへの生存確認情報などの還元はできない。
この見解は、これまで制定された各都道府県
による、住民基本台帳法に基づく本人確認情報
の利用および提供に関する条例で、地域がん登
録事業における生存確認調査事務を承認するこ
とを妨げるものではない。さらに、各県のがん
登録に関する都道府県条例において、住民基本
台帳ネットワークから得た情報を医療機関に情
報還元することまでを生存確認調査事務に含め
ていれば、医療機関などへの情報提供も問題な
い。
柴田亜希子
近年、地域がん登録に登録された患者の追跡
にいくつかの県が、住民基本台帳ネットワーク
を利用するようになった。しかし、現行法の下
に地域がん登録事業において住基ネットを利用
施設間and/or
地域間生存率較差の評価への活用
大阪府立成人病センター
井岡亜希子
地域がん登録で計測される生存率は、特定の
昭和
年
月
日 第
種郵便物承認
広島県医師会速報(第
施設や患者に偏らない地域全体を代表する値で
あり、がん医療水準均てん化の進捗をモニター
する上で、必須の指標である。大阪府では、住
民票照会を含む生存確認調査を古くから実施し、
これに基づく 年相対生存率を、地域別のみなら
ず、治療医療機関別にも算出し、生存率の地域
や施設格差の課題に取り組んできた。施設間、
地域間生存率較差評価における大阪府での地域
がん登録資料の活用事例を紹介する。
都道府県がん対策推進計画を進めていくため
には、医療圏や市町村レベルでの取り組みも重
要であり、大阪府では、医療圏および市町村レ
ベルの最新がん統計値を簡単に取り出せるサイ
ト「統計でみる大阪府のがん」を構築した。わ
が国に多いがん(胃、大腸、肝、肺、乳房)の
医療圏別 生存率では、 ~ ポイントの生存
率較差が観察された。
大阪府には国指定がん拠点病院が計 施設、
府指定がん拠点病院が計 施設あり、大阪府に
おけるがん診療の中心的役割を担っている。国
および府指定がん拠点病院で主治療を受けた患
者の生存率を、大阪府全体の生存率と比較する
と、例えば難治がんである肝がんと肺がん(限
局)では生存率較差が ポイント以上あり、その
較差は国指定がん拠点病院と大阪府全体の比較
でさらに大きいことが判明した。このことは、
この分野でのがん医療の均てん化に課題がある
ことを示している。
国指定がん拠点病院で主治療を受けた患者の
生存率は、部位により程度の差はあるが大阪府
全体の生存率を上回る。そこで、いずれの医療
圏でも国指定がん拠点病院の治療成績が得られ
ると仮定し、国指定がん拠点病院の進行度別 年相対生存率をあてはめ、その際の期待生存率
(期待値)を算出すると、
「がん医療の均てん化」
により、実際の生存率(実測値)の向上をどの
くらい期待できるかの推計が可能となる。おお
むね ポイント以上の生存率の向上が見込まれる
場合は課題が大きいと考えている。大阪府では、
医療圏によって実測値と期待値の差は異なり、
また部位別には、例えば肝がんと肺がんでは、
国指定がん拠点病院とそれ以外の医療機関との
生存率差が反映され、実測値と期待値の差が大
きい傾向にあった。なお、期待値の医療圏間で
の差異は、医療圏間での進行度分布の相違を反
映していると考えられ、胃がんや大腸がんでは
最大値と最小値の差が ポイント以上となった。
現在、大阪府では、
「がん医療の均てん化」の
実現に向けて、国指定/
府指定がん拠点病院の医
号)
年(平成
年) 月
日(
)
療機関ごとの診療実績を公表している。
がん検診精度管理のための記録照合
福井県立病院
服部 昌和
福井県の地域がん登録データを用いて大腸が
ん集団検診の制度について調査を行った。同時
に記録照合作業に伴う問題点(集約ルール、作
業手順、人、時間および予算など)の検討を行
い、今後の継続的な精度管理を行うために必要
な点を紹介する。
年から開始された福井県地域がん登録資
料を用いて、
年 月 日から
年 月 日
までの福井県大腸がん集団検診受診者データと
の記録照合を行い、検診感度の測定と中間期癌
の臨床病理学的検討およびこの照合作業におけ
る問題点の抽出とその検討を行った。
集団検診受診率は
年開始以来、 数%前
後と依然低迷している。がんのt
r
e
nd解析からは
罹患率と死亡率の間に乖離効果は認めていない
が、 年相対生存率は集団検診受診者で有意に高
値であった。今回の記録照合による検診感度は
. 、特異度 . であった。検診受診者の 年相
対生存率は真陽性群が .%、中間期群 .%
に対し、精検未受診群が .%と低値を示した。
記録照合作業については、がん登録データの集
約、データ照合の調整、データ算出と分析およ
び全体としての照合体制についてさまざまな問
題点が浮かび上がった。
福井県における特徴は、がん登録精度が高く、
全市町の対策型検診が福井県健康管理協会に一
元化して実施されており、福井県がん検診精度
管理委員会が一括して精度管理を行っているこ
とである。
これらを背景に地域がん登録を用いた集団検
診の精度管理などの調査がこれまでに 度行わ
れ、貴重なデータが算出されている。これら指
標の解析、結果の発表・周知および活用法の検
討から、検診精度や受診率向上につながる多く
の努力がなされ効果を挙げてきている。
しかし今後も信頼性の高い指標を継続的に算
出していくためには、今回明らかになった問題
点を認識し可能な限り解決していくこと、さら
には地域がん登録事業および検診事業体制を含
め、がん検診精度管理に人材や予算措置などの
整備を行っていくことがますます重要であると
考える。
(
)
年(平成
年) 月
日
広島県医師会速報(第
がん検診の効果モニタリングとしての活用
宮城県立がんセンター研究所
西野 善一
検診においてはその効果を定期的にモニタリ
ングしていくことが必要である。
対策型検診における目的は対象集団における
当該がん死亡率の減少であり、死亡率がモニタ
リングにおける基本となり、かつ最終的な評価
指標となるが、検診の効果が死亡率の減少とし
て反映するにはかなりの時間がかかる。中間と
なる評価指標として対象集団における進行がん
の罹患率や病期分布が挙げられる。また、子宮
頚がん検診は上皮内がんや前がん病変の発見を
通した浸潤がん罹患率の減少検診の効果を評価
する指標であり、便潜血検査による大腸がん検
診も発見された腺腫の摘除を通し浸潤がんの罹
患率を減少させる可能性がある。これらの指標
に関する情報は地域がん登録から得られるもの
である。
一方で、受診率のモニタリングも重要である
が、市区町村や職域などでそれぞれ検診が実施
号)
昭和
年
月
日 第
種郵便物承認
されている日本ではその正確な把握はしばしば
困難であり、代わるものとして地域がん登録か
ら把握できるがん罹患全体に占める検診発見が
んの割合が検診の普及状況の指標となり得る。
このように、地域がん登録は検診の効果に関す
る評価指標をモニタリングしていく上の情報源
として重要な役割を持つ。
日本では、
年に大腸がん検診が老人保健
法の保健事業に導入されるとともに、その後厚
生労働省から出された「がん予防重点健康教育
及びがん検診実施のための指針」において、
年の一部改正で乳がん検診においてマンモ
グラフィが 歳以上を対象に導入、
年の改
正では子宮がん検診の対象年齢が 歳以上とな
るとともに、 歳代においてもマンモグラフィ
検診を実施することとなった。このような検診
の対象年齢や実施の判断材料としてモニタリン
グの結果が使われており、今後、地域がん登録
から把握されたデータから新たな検診の実施に
つながる可能性もある。
広島県食育推進功労者表彰
新 田 康 郎 氏
・新田小児科(広島市)
(
月
日㈮ 県庁にて表彰)
おめでとうございます。今後ますますのご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。
東芝エアコン無償点検修理のお知らせ
東芝エアコンの室内機について、一部に発煙発火の恐れがあるため、平成 年 月から無償点
検修理が進められているところですが、本年 月末現在、全て終了していない状況にあります。
該当製品を使用されている可能性がありますので、お手持ちの関連機器を確認いただき、同様の
事故の発生防止について十分ご留意いただきますようお願いいたします。
<お問い合わせ>
ht
t
p:
/
/
www.
t
o
s
hi
ba
c
a
r
r
i
e
r
.
c
o
.
j
p/
i
nf
o
/
a
r
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i
c
l
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r
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i
c
l
e
0
2
.
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Fly UP