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2. 教育プログラム - 九州大学大学院総合理工学府

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2. 教育プログラム - 九州大学大学院総合理工学府
2.
教育プログラム
2.1. 教育の特色
(1) 授与する博士の学位の分野・名称
本プログラムの修了者に対して,博士(工学),博士(理学)あるいは博士(学術)を授与
する。ただしいずれについても「九州大学グリーンアジア国際戦略プログラムを修了した
者」を付記する。
(2) 学位授与の方針
本プログラムのディプロマポリシーは以下の通りである。
①
グリーンアジア国際戦略コースの定める期間在学し,同コースの教育,研究の理念と
目的に基づいて設定したカリキュラムに従った教育と研究指導を受け,かつ所定の年
限内に以下の要件をすべて満たした者に学位を授与する。
要件 1:博士研究論文の審査および試験に合格すること。
要件 2:研究力,実践力,国際力および俯瞰力コースに含まれる科目を履修し,それぞ
れのコースについて基準以上の単位を修得すること。
②
高度専門知識に基づく研究力に加えて,実践力,国際力および俯瞰力を兼ね備え,産
学官界の国際的リーダーとして我が国とアジアの国々の産業・経済・社会の発展に貢
献する能力と学識を身につけているかどうかがコース修了の基準である。
③
プログラム後期課程における研究が高度な倫理性と強固な責任感とをもって実施され
グリーンアジアの理念に合致するものであるかどうか,さらに博士論文提出者がこの
ことを論理的に説明する能力があるかどうかもコース修了の際に考慮されるべき点で
ある。
④
学修による能力獲得および研究の成果が著しいと認められる者については,在学期間
を最大半年短縮してコースを修了することができる。
なお,本プログラムにおける履修科目等の詳細は 2.2.に述べる。
(3) 課程を通じて修得すべき知識・能力
本プログラム修了のために備えるべき研究力,実践力,国際力,俯瞰力および牽引力
を獲得するためのコースワーク(授業,演習・研修)およびリサーチワークは,表 2-1 及び図
2-1 のとおりである。詳細は後述する。
(4) 学位プログラムの内容
5 年一貫制の博士課程となる本学位プログラムは,グリーンアジア戦略のリーダーに必
要な研究力,俯瞰力,国際力,実践力および牽引力を養成するために,コースの学生がこ
れらの能力をバランスよく獲得し,同時に能力養成過程が自・他から見えるように設計さ
れている。カリキュラムの概要を図 2-2 に示す。特徴ある,学生指導・ケアユニットや,学
位の質を保証するためのステージゲート制の導入を初め,他大学からも多くの学生(7 割以
上)を集めてリーダーを養成するシステムである。
9
能力
研究力
実践力
国際力
俯瞰力
牽引力
表 2-1. プログラム修了のために備えるべき研究力と取得方法,科目
主な修得方法等
対応する科目等
①三つの異分野研究室における研究,② ①研究室ローテーション制のもとでの
先端研究を通じた高度専門知識の修得, 講究,②ステージゲート制のもとでの博
③複数専攻に跨がる専門科目履修
士論文研究,③主専門科目・拡張専門科
目,等
①国内,海外の研究開発現場における実 ①プラクティス・スクール(国内企業),
践活動,②企業等から招聘する講師によ インターンシップ(海外機関,国内機
る講義
関),②実践産業科目,他
①英語での表現力,議論力,記述力の鍛 ①2つのタイプの国際演習(A・B),②社
錬,②社会学,経済学の修得
会・環境・経済システム学科目履修,他
①経済・社会学,環境学の学修,②理工 ①社会・環境・経済システム学科目履修,
系・人文社会系の知の統合
②国際演習 A(グリーンアジアフォーラ
ム)と自由課題論文作成,他
①2種の国際演習におけるリーダーの担 ①国際演習 B,②プラクティス・スクー
当,②国内外の研究開発リーダーに接し ルおよび国際・国内インターンシップ,
て行う実践,③後輩学生への研究指導演 ③研究指導演習,他
習
俯瞰力 国際力 実践力 牽
研究力 引力 博士研究 (III) 博士研究 (II) 博士研究 (I) 国際演習(B3) 国際演習 (B1)(B2) 国際演習 (A4) 国際演習 (A1)(A2)(A3) 国内インターンシップ 海外インターンシップ プラクティス・スクール 講究 (I)(II)(III) 環
実践
産
実践英語科目 業科目 境・社会経済科目 専門・拡張専門科目 0% 25% 50% 75% 100% 図 2-1. 各科目において養成する能力の分布
10
(プレ課程)
(プレ課程)
前期課程
前期課程
00
学府入学
学府入学
研究力
研究力
22
33
QE
QE
研究レビュー
研究レビュー
・提案
・提案
11
プログラム
プログラム
入試(学内)
入試(学内)
研究室ローテション
研究室ローテション
後期課程
後期課程
44
Interim
Interim
report
report
55
GA論文
学位
GA論文 学位
審査
審査
審査 審査
博士論文研究
博士論文研究
主専門・拡張専門
主専門・拡張専門
コースワーク(科目履修)
コースワーク(科目履修)
俯瞰力
俯瞰力
環境学
環境学コースワーク
コースワーク
社会・経済学
社会・経済学コースワーク
コースワーク
実践英語
実践英語
国際力
国際力
グリーンアジアセミナー
グリーンアジアセミナー
(グリーンアジア科学技術論)
(グリーンアジア科学技術論)
国際インターン
国際インターン
シンポジウム企画
シップ
シンポジウム企画
シップ
国際演習
国際演習
コースワーク
コースワーク
プラクティス
プラクティス
スクール
スクール
実践力
実践力
グリーンアジア(GA)
グリーンアジア(GA)
自由課題論文
自由課題論文
実践産業
実践産業
国内インターンシップ
国内インターンシップ
コースワーク
コースワーク
牽引力
牽引力
研究指導演習
研究指導演習
00
プログラム
プログラム
入試
入試
研究力
研究力
前期課程
前期課程
22
33
QE
QE
研究レビュー
研究レビュー
・提案
・提案
11
学府入学
学府入学
入コース
入コース
研究室ローテション
研究室ローテション
後期課程
後期課程
44
Interim
Interim
report
report
55
GA論文
学位
GA論文 学位
審査
審査
審査 審査
博士論文研究
博士論文研究
主専門・拡張専門
主専門・拡張専門
コースワーク(科目履修)
コースワーク(科目履修)
俯瞰力
俯瞰力
国際力
国際力
実践力
実践力
環境学
環境学コースワーク
コースワーク
社会・経済学
社会・経済学コースワーク
コースワーク
実践英語
実践英語
コースワーク
コースワーク
プラクティス
プラクティス
スクール
スクール
実践産業
実践産業
コースワーク
コースワーク
牽引力
牽引力
グリーンアジア(GA)
グリーンアジア(GA)
自由課題論文
自由課題論文
グリーンアジアセミナー
グリーンアジアセミナー
(グリーンアジア科学技術論)
(グリーンアジア科学技術論)
国際インターン
国際インターン
シンポジウム企画
シップ
シンポジウム企画
シップ
国際演習
国際演習
国内インターンシップ
国内インターンシップ
研究指導演習
研究指導演習
図 2-2. カリキュラムの実施時期(上:国内入コース生,下:留学生)
本プログラムは国際標準に合わせて秋入学(入コース)を前提としている。学内入コー
ス生については,4 月に九州大学大学院修士課程に入学後,半年間のプレプログラム課程(プ
レ課程)と 4.5 年間(0.5 年×9 期)の実質プログラム課程を合わせての 5 年となるように組ま
れている。
一方,秋入学の留学生についてはプレ課程がなく,プログラムの前期を 2 年(0.5 年×4
期。学内入コース生は 1.5 年)とし,プログラム正規生である期間は 5.0 年間(0.5 年×10 期)
となる。これらにより,学内入コース生がプレ課程で修得する基礎学力確認を入試で行う
こと前提に,国内の研究環境に不慣れな留学生が博士論文研究に十分な準備・遂行期間を
持てるシステムとなっている。以降に,本プログラムの特徴や工夫の詳細をステージゲー
ト(図 2-3〜2-5)ごとに述べる。
11
図 2-3. プログラムのステージゲート(経過年数は国内入コース生の分を示す)
学 による提出
物
生
コースワーク(講義) コースワーク(演習) リサーチワーク 生
受講科目履修成績 国際演習A/Bのcumulativeレポート MCUによるバイマンスリーレポートおよび期末レポート(全期間) 第 5〜6 期 第9期 Stage Gate 5 研究レビュー&プロポーザル レビュー論文投稿 海外&国内インターンシップ報告書 海外メンター・技術メンター による指導報告書 原著論文投稿 国際学会発表 Interim レポート 原著論文投稿 グリーンアジア自
国際学会発表 課題論文 自主ジャーナル等への論文投稿 グリーンアジア国際戦
略
Stage Gate 4 指導報告書 由
第 7〜8 期 Stage Gate 3 3名のホスト教員による指導報告書 プラクティス・スクール報告書 技術メンターによる 博士論文指導教員によるバイマンスリーおよび期末レポート(第5〜9期) 第 1〜3 期 講究報告書 第4期
Stage Gate 1 Stage Gate 2 教員による 報告書等 学 による成果 Stage Gate 0 会議 報告書 自主ジャーナルへの掲載 原著論文投稿 国際学会発表 博士研究論文提出 学位授与 図 2-4. 検証可能な能力獲得のエビデンスとしての提出物,成果物および教員報告書の累積
12
Stage Gate 0 プログラム入試 産
120 =単位数×3.0 43.8 39.0 国際力 18.6 実践力 12.6 引力 6.0 GPA累計 144 審査合格 研究力 54.4 必要単位数の取得 博士研究開始資格認定審査
ステージゲート通過の要件 第 5〜6 期 22.8 実践力 15.3 引力 7.5 GPA累計 180 63.6 俯瞰力 51.6 国際力 29.1 実践力 26.3 引力 9.5 GPA累計 207 研究力 66.6 俯瞰力 54.0 国際力 33.0 牽
研究力 Stage Gate 3 Interim Report審査 第 7〜8 期 国際演習A3 (2) 国際演習A4 (2) 国際演習B2 (1) 研究指導演習(I/II) (2) 博士研究(III) 19.7 Stage Gate 4 グリーンアジア論文審査
第9期 GPA累計 国際演習B3 (2) 博士研究(III)(6) 81.0 俯瞰力 57.6 国際力 34.2 実践力 35.0 引力 23.3 学位授与 100%
率
80%
60%
40%
20%
0%
0
1
2
3
ステージゲート
4
5
号
学位認定時までに 養成される能力 研究力:俯瞰力:国際力:
実践力: 引力
=35:25:15:15:10
(能力別GPAスコア基準)
牽
博士論文審査 俯瞰 実践 231 研究力 牽
Stage Gate 5 研究 国際 引
番
33.8 引力 牽
実践力 所定数以上のGPA累計 所定数以上の養成能力別
GPA累計(五つの力) 牽
国際演習A1/A2 (2/2) 国際演習B1 (1) 海外インターンシップ (2) 国内インターンシップ (1) 博士研究(II) (4) 44.4 国際力 産
研究レビュー・提案審査
俯瞰力 牽
主専門・拡張専門 (2) 社会・経済・ 境システム学 (2) 業実践 (1) 英語実践 (1) 博士研究(I) (2) 環
第4期
博士論文課題・指導教員選択 Stage Gate 2 養成能力による内訳 俯瞰力 GPA累計スコアの到達
Stage Gate 1 GPA累計 研究力 牽
主専門・拡張専門 (16) 社会・経済・ 境システム学 (10) 業実践 (3) 英語実践 (3) 講究(3研究室ローテーション) (6) プラクティススクール (2) 環
第 1〜3 期 ( )内の数字:必要単位数 図 2-5. ステージゲートと各科目において養成する能力の分布
第 0 ステージゲート:プログラム入試
本学を含む国内大学の修士課程に入学した者にとっては,入試前の半年間はプログラ
ム入試合格のために必要な能力開発に充てる期間であり,5 年間の大学院修学を躊躇する者
にとって入学を熟慮する期間となる。入試では,従来の大学院修士課程入試をベースとし
つつも,次の①~⑤によって選抜する学生の質を保証する。①受験者の指導経験がある教
員等による複数の推薦書の提出を求める,②筆答試験,面接を英語で実施する,③筆答試
験では,従来の修士課程入学試験よりも難度を高めた理工系専門科目試験に加えて小論文
を課し,受験者の論理力・思考力・英語力・記述力を測る,④学部在籍時の成績提出を求
める,⑤英語検定試験(TOEIC など)のスコアを求める。なおプログラム入学合格者には,
入学前の大学院科目履修による取得単位の一部を本プログラムが指定する履修科目群への
転用を認めるオプションを用意する。これは本学府以外からの受験者を増やし,優秀な学
生を集めるために有効な措置である。
秋入学の留学生の入試についても同様の手順と内容で実施されるが,理工系専門科目
13
については国及び大学間のカリキュラムの差が大きいことに配慮し,プログラム開始にあ
たり必要な基礎的な知識と考え方を習得しているかの確認に重点を置く。
一貫制博士課程前期(修士課程相当):有機的コースワークでの「五つの力」の基礎養成
コース学生にはシステム工学,物質材料科学,資源工学のいずれかを専門分野とし,
この分野の科目(専門)に加えて,他二分野の拡張専門科目の履修を課す。これにより,研
究力と俯瞰力も養う。社会・環境・経済システム学,実践産業および実践英語科目の履修
は,俯瞰力,国際力,実践力の基礎を固めるために必須とする。
プラクティス・スクール(国内長期インターンシップ)では,実践力と牽引力を養うこ
とを中心に据え,指導・ケアユニット(MCU,後述)の指導のもと,学生が 1 ヶ月をかけて
課題を設定し,その後の 2 ヶ月間に,企業において研究開発現場のリーダー(技術メンター)
に接しながら課題に取り組み解決することを目標に,企業インターンシップないしは産学
共同研究への参画を実施する。
この間の研究活動には研究室ローテーション制を適用する。一人の学生が 3 つの異な
る研究室において,それぞれ約 3 ヶ月間研究を実施する(講究)。選択する研究室が二つ以
上の専攻に跨がることを奨励し,従来の修士論文研究とは異なり「異分野の研究方法論の
獲得」に主眼を置いた研究指導を実施する。
第 1 ステージゲート:博士論文研究開始資格認定審査(QE)
学生は,一貫制博士課程 2 年(修士課程 2 年)末に博士論文研究開始資格認定審査(QE)
に臨む。それまでの履修科目成績に関する要件(単位数,GPA 累計スコア,養成能力別 GPA
累計スコア)を全て満足した者に限って受験資格が与えられる。QE では,複数専攻に跨が
る「講究」ならびに「プラクティス・スクール」での実践活動の成果(自己評価)を英語で
口頭発表し,質疑を受ける(プラクティス・スクールの時期によっては,発表は事前に実施
済)。「筆答試験」では専門科目に関する能力と「科学技術のあり方」に対する考え方を問
う(英語小論文)。これらに対する評価と,MCU による報告書(メンター・技術メンターの
所見)を総合して QE の成績を決める。QE で「可」判定を受けた者のみ一貫制博士課程 3
年(博士後期課程 1 年)に進級できる。
第 2 ステージゲート:研究レビュー・提案審査
博士論文研究への取り組みを開始する一貫制博士課程 3 年(博士後期課程 1 年)前期で
は,研究プロポーザル(プレゼンテーション,提案書提出)を行い,期末に審査を受ける。
審査は,提案とレビューが先端研究に相応しい質と独創性を有することを基準として行う。
この審査に合格して「博士研究(I)」の単位を取得するが,これも含めて必要単位数,GPA
累計,養成能力別 GPA 累計がいずれも必要数に達している者に限って一貫制博士課程 3 年
後期への移行を認める。
第 3 ステージゲート:中間審査
一貫制博士課程 4 年(博士後期課程 2 年)前期末に中間報告(Interim Report)を提出,審査
を受ける。審査は「独創性」「科学的意義」「グリーンエンジニアリングの観点からの意義」
「レポートの技術的質」を主基準とし,個々について評価する。この審査に合格し,しか
14
も単位数,GPA 累計,養成能力別 GPA 累計の要件を満足した者だけが一貫制博士課程 4 年
後期に移行できる。
第 4 ステージゲート:グリーンアジア自由課題論文審査
一貫制博士課程 5 年(修士課程 3 年)前期では,一貫制博士課程 3 年後期から始まる国
際演習 A「グリーンアジア科学技術論」において,グリーンアジアの理念を実現するための
科学技術・産業構造,アジアの産業連携,社会と経済のあり方等に関する議論と討論を通
じて培った知を,専門知と統合し,自らが設定した課題に関する論文を作成する。論文審
査は,国際演習 A を担当の社会科学系教員,プログラム担当者,外部識者若干名が担当し
「グリーン化・経済成長の同時達成に貢献するポテンシャルのある提案があるかどうか」
「環境・社会・経済学の知と専門知の結合・融合しているかどうか」
「アジア大の科学技術・
産業連携に関する俯瞰的考察がなされているかどうか」を主基準として評価する。この審
査に合格し,これまでの単位数,GPA 累計,養成能力別 GPA 累計の要件を満足した者だけ
が一貫制博士課程 5 年後期に移行できる。
第 5 ステージゲート:博士論文審査&最終 QE
一貫制博士課程 5 年後期末に学位授与のために最終要件である博士論文審査を行う。
ここでは,学位の専門性という視点での博士論文審査に加えて,最終 QE として,第 3 ステ
ージゲート(QE)と同様の基準での審査を行う。海外で活躍する国際的研究者 1 名以上をレ
フェリーに加えること,博士論文を構成する研究成果が審査付き学術誌に掲載(受理)済み
であることも要件に加える。これら審査の合格に加えて,取得した単位数(77 単位以上),
累積 GPA スコア(231 以上),養成能力別累積 GPA スコアが所定数以上である者について,
研究力,俯瞰力,国際力,実践力,牽引力,およびこれらの総合力について所定以上の能
力を有する者と認め,本プログラムによる学位取得の資格が与えられ,最終的にアドミッ
ションポリシーに従い学位が授与される。
本プログラムの特徴のひとつは,学生の能力獲得過程(積分過程)が,取得単位や科目
履修成績の蓄積(図 2-5)に加えて,コースワーク(演習)とリサーチワークにおいて,多くが
シリーズとして累積する提出物と成果物によって自他から見えることである(図 2-6)。
次に本プログラムを特徴づける演習科目の概要等を以下に説明する。
国際演習 A
前述の「グリーンアジア科学技術論」では,社会科学系教員が総括リーダーとなり,
講義(外部講師を含む),グリーンアジアの理念に沿った課題を据えたセミナーと討論会を
月 1 回の頻度で開催する。学生は独自の研究課題(科学技術論,社会・産業論)を見いだし,
総括リーダー,MCU の支援を受けながら研究を進める。国際演習 A4(一貫制博士課程 5 年
前期)では,自身の研究について発表するととともに,その課題に関するセミナーのリーダ
ーとなって議論を総括し,その成果を踏まえ,
「グリーンアジア自由課題論文」を作成,第
4 ステージゲートに臨む。審査に合格した論文は,本プログラムの自主ジャーナル「Evergreen」
に掲載する。さらに社会科学系教員と学生の連名による学術誌等への論文投稿を目指す。
15
国際演習 B
本プログラムでは年 1 回の頻度で「International Forum for Green Asia」を開催し,本プ
ログラムの進捗報告,アジアの産業界や学界リーダーによる講演,社会科学・科学技術・
産業技術・政策の融合による国際シンポジウムをオーガナイズする。学生は,自らの研究
発表に加えて,この会議の企画・運営に参画し,所定の役割を果たす。
国際インターンシップ
国際インターンシップは,海外コア連携あるいは他の機関の研究者,技術者がホスト
となり,学生による研究開発実践を指導する。ホストは「海外メンター」となり,MCU の
一員としてその後も当該学生の指導にあたる。
国内インターンシップ(短期)
このプログラムは,それまでのインターンシップ活動,研究,科目履修の経験を踏ま
えて,能力向上を自己検証することを主目的とする。一貫制博士課程 1,2 年(修士課程相
当)時に実施される「プラクティス・スクール」と同じ現場でこの活動を行うことによって,
技術メンターによる「成長」の自己評価が可能になる。
牽引力の養成
本プログラムは,演習科目の全てにおいてリーダーシップに不可欠な牽引力を養成で
きるように工夫されている。「プラクティス・スクール」および「国際インターンシップ」
では,研究開発の場で活躍するリーダーに接しながら課題に取り組む。これらのリーダー
は,それぞれ技術メンター,海外メンターとして MCU に加わり,学生の指導にあたる。
「実
践産業科目」では,産業界で活躍するリーダーによる「リーダーシップ論」を吸収する。
「国
際演習 B」では,年 1 回開催する「International Forum for Green Asia」の企画と運営に参画
する。「国際演習 A」の最終期では,講演者招聘,議論・討論の課題設定,リーダー・モデ
レータの役を担う。一貫制博士課程 4,5 年次では,修士課程学生の研究指導の一部を担当
する演習(研究指導演習)を行い,専門分野研究の指導経験を積む。
学生の指導・支援体制(指導・ケアユニット,MCU)
シニア教員(メンター,原則としてプログラム担当者),若手教員(チューター,プログ
ラム協力教員),海外メンターおよび技術メンター(原則はそれぞれ国際インターンシップ
およびプラクティス・スクールにおける指導者)から成る指導・ケアユニット(MCU)が一人
の学生に対して一貫して指導・支援を行う。ただし,技術メンターはプラクティス・スク
ールの課題設定時期に,海外メンターは学生の後期課程に移行時に MCU に加わる。またプ
ログラム担当教員は,同一の学生に対してメンターと博士論文研究の指導教員(主査)を兼
ねない。このように専門の枠を超えた指導・支援環境のもとで,学生は俯瞰力につながる
知識の幅を拡張できる。
一貫制博士課程前期(修士課程に相当)にある学生は,国内企業(国内連携機関)におい
て,1 ヶ月の課題設定と 1~2 ヶ月の実行を標準とする本格的インターンシップ(プラクティ
ス・スクール)に参加し,現場の技術メンターの指導もとで企業の研究開発等を経験する。
国際インターンシップ(課題設定 1 ヶ月,実行 2 ヶ月)では,メンターと海外メンターとの
16
連携,グリーンアジア国際リーダー教育センターとリーディングプログラム支援室との連
携により,学生支援を行う。
2.2. 教育理念,内容および実施状況
本プログラムがスタートした直後に,総合理工学府と工学府に新コース「グリーンア
ジア国際戦略コース」の設置を本学に申請し,学務委員会において認められた(2012 年 11
月 1 日)。本プログラムは修士・博士一貫のプログラムであり,一貫制博士課程の 2 年次(修
士過程 2 年に相当)から 3 年次(博士後期過程 1 年に相当)に進むに当たり,ステージゲート
として博士論文研究開始資格認定試験(Qualifying Examination,QE)(大学院通則第 27 条の 2
各号に掲げる試験及び審査をいう)が実施される。なお同時期に,所属専攻の規定に従い,所
定の資格(必要単位の取得と修士論文試問会での合格)を経た者に対しては,QE の結果によらず
修士の学位が与えられる。そのため,QE の不合格者についても必要な条件を満たせば,修士号
の取得と通常の(グリーンアジアコースではない)博士後期課程への進学は可能となっている。
QE 合格及びコース修了の要件およびの要件は以下のとおり。
<博士論文研究開始資格認定試験(QE)>
本コースの修士課程として取り扱うものとする博士課程の前期の課程に 2 年以上在学
し,下記に掲げる単位を含む 40 単位以上を取得し,かつ二年次に行う QE に合格する
こと。
1. 実践英語科目
3 単位
2. 実践産業科目
3 単位
3. インターンシップ科目
4. 研究科目
2 単位
6 単位
5. 社会・環境・経済システム学科目から
6. 主専門・拡張専門科目から
10 単位
16 単位
<コース修了要件>
博士課程に 5 年以上在学し,下記に掲げる単位を含む 77 単位以上を修得し,かつ必要
な研究指導を受けた上,博士論文の審査及び最終試験に合格すること。
1. 実践英語科目
4 単位
2. 実践産業科目
4 単位
3. インターンシップ科目
4. 国際演習科目
5. 研究科目
5 単位
16 単位
18 単位
6. 社会・環境・経済システム学科目から
7. 主専門・拡張専門科目から
12 単位
18 単位
科目は,以下の 7 群に分けられる。
1. 実践英語科目(科目数=4,各科目の単位数=1)
2. 実践産業科目(科目数=4,各科目の単位数=1)
17
3. インターンシップ科目(科目数=3,各科目の単位数=1 あるいは 2)
4. 国際演習科目(科目数=9,各科目の単位数=1 あるいは 2)
5. 研究科目(科目数=6,各科目の単位数=2, 4 あるいは 6)
6. 社会・環境・経済システム学科目(科目数=10,各科目の単位数=2)
7. 主専門・拡張専門科目(科目数=96,各科目の単位数=1 あるいは 2)
7 つの群に含まれる科目を表 2-2 に列記する。
表 2-2. 科目の区分,名称,配当年次および単位数
区分
実践英語
実践産業
インターンシップ
国際演習
研究
社会・環境・経済
システム学
主専門・拡張専門
科目
授業科目の名称
実践英語(I)
実践英語(II)
実践英語(III)
実践英語(IV)
実践産業(I)
実践産業(II)
実践産業(III)
実践産業(IV)
プラクティス スクール
国際インターンシップ
国内インターンシップ
国際演習 A1
国際演習 A2
国際演習 A3
国際演習 A4
国際演習 B1
国際演習 B2
国際演習 B3
研究指導演習(I)
研究指導演習(II)
講究(I)
講究(II)
講究(III)
博士研究(I)
博士研究(II)
博士研究(III)
社会システム学(I)
社会システム学(II)
社会システム学(III)
環境システム学(I)
環境システム学(II)
環境システム学(III)
環境システム学(IV)
経済システム学(I)
経済システム学(II)
経済システム学(III)
電離反応工学基礎
電離反応工学特論
光エレクトロニクス基礎
光エレクトロニクス特論
結晶物性工学基礎
配当年次
1~3
1~3
1~3
1~3
1~3
1~3
1~3
1~3
1,2
3,4
3,4
3
4
4
5
3,4
4,5
5
4
5
1
2
2
3
3+4
4+5
1~3
1~3
1~3
1~3
1~3
1~3
1~3
1~3
1~3
1~3
1~3
1~3
1~3
1~3
1~3
18
単位数
必修
選択
1
1
1
1
1
1
1
1
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2
自由
主専門・拡張専門
科目
結晶物性工学特論
非線形物性学基礎
非線形物性学特論
ナノマテリアル化学基礎
ナノマテリアル化学特論
機能分子工学基礎
機能分子工学特論
材料電気化学特論
化学反応工学基礎
化学反応工学特論
機能有機材料化学特論
素子材料工学基礎
量子プロセス理工学基礎第一
量子プロセス理工学基礎第二
量子プロセス理工学基礎第三
物理化学 I
物理化学 II
物理化学 III
材料科学 I
材料科学 II
材料科学 III
有機化学 I
有機化学 II
有機化学 III
有機機器分析
材料機器分析学
表面構造学
理論物質学
固体表面化学
高分子材料物性学
分子分光学
材料科学特論
機能材料科学
構造材料科学
固体イオニクス
有機化学特論 I
有機化学特論 II
有機化学特論 III
有機化学特論 IV
物質理工学特別講義第一
物質理工学特別講義第二
物質理工学特論第一
物質理工学特論第二
物質理工学国際講義第一
物質理工学国際講義第二
物質理工学基礎第一 ※
物質理工学基礎第二 ※
物質理工学基礎第三 ※
環境エネルギー工学基礎第一
環境エネルギー工学基礎第二
環境エネルギー工学基礎第三
環境エネルギー工学特論
エンジン工学
圧縮性流体力学
環境システム数理解析
※
※
※
※
※
※
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地域熱環境工学
エコエネルギー工学
乱流工学
熱エネルギー利用システム工学
資源地質学第一
資源地質学第二
鉱物工学
地球情報学第一
地球情報学第二
地球情報学第三
地球熱学特論
地熱工学特論
地熱系モデリング
資源開発環境学
資源生産システム学
安全工学特論
岩盤工学特論第一
岩盤工学特論第二
開発機械システム工学特論
資源処理工学特論第一
資源処理工学特論第二
資源処理工学特論第三
エネルギー資源工学特論
石油貯留層工学
物質移動工学特論
地球資源システム工学特別講義第一
地球資源システム工学特別講義第二
地球資源システム工学特別講義第三
地球工学国際連携特論
資源システム工学国際連携特論
エネルギー資源工学国際連携特論
国際産学連携研究
地球資源システム工学国際連携演習
国際フィールド演習
地球資源システム工学基礎第一 ※
地球資源システム工学基礎第二 ※
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2
主専門・拡張専門科目の多くは,本プログラムの運営主体である四専攻が日本語で開
講した実績にある講義を内容の再検討を経て英語化したものであるが,表 2-2 中に※印をつ
けた 11 科目は,各専攻が他専攻の学生に新たに設計した科目である。主専門・拡張専門以
外の科目群の科目はすべてを新規に設けた。表 2-3 に各科目の内容を示す。
20
表 2-3.主専門・拡張専門科目以外の科目内容
科目名
実践英語(I)
実践英語(II)
実践英語(III)
内容,ねらい等
(1) Rhythm & Beat トレーニングによって英語の音ルールを理解するとともに,語順処理
能力を向上させる.(2) 基礎的な記述トレーニングによって学術論文・レポート作成等の
ための記述力を向上させる.(3) 基礎的な読解演習によって学術論文等の読解力を向
上させる.
(1) 英語表現の実践的トレーニングによって英語の運用能力と話す能力を開発し,向
上させる.(2) 実践英語 I よりもレベルを上げた記述および読解演習によって記述力と
読解力を中級レベルに向上させる.
(1) 実践的な会話トレーニング等を通じて会話能力を向上させる.(2) 実践英語 II よりも
レベルを上げた記述および読解トレーニングによって記述力と読解力を上級レベルに
向上させる.
実践英語(IV)
(1) 英語での対人表現法を学び,実践トレーニングを通じてプレゼンテーション能力を
向上させる.(2) 実践英語 III よりレベルを上げた記述・読解演習に加えて速読法を学
び,記述力と読解力をさらに向上させる.
実践産業(I)
わが国,アジア諸国の生産や技術開発(大学の研究開発現場を含む)の現場を見学
し,そこで活動する技術者,研究者等とのコミュニケーション(質疑応答,議論)を通じて
アジアの産業に関する基礎知識を得る.
実践産業(II)
生産,製品開発,製造,サービスの分野で活躍する企業人等を講師とする講義.複数
の部門が連携,協同して課題の解決に取り組むシステムズアプローチの考え方とその
実践法を,課題解決の実例を通じて学ぶ.
実践産業(III)
実践産業(IV)
プラクティス スクール
国際インターンシップ
国内インターンシップ
国際演習 A1
国際演習 A2
国際演習 A3
国際演習 A4
国際演習 B1
生産,製品開発,製造,サービスの分野で活躍する企業人等講師とする講義.原理を
製品開発や実用化につなげるシーズ展開,製品付加価値の最大化の手法,製造業に
おける資源・エネルギー原単位や環境負荷低減の手法を学び,実践例を知る.
国際標準化機構 ISO における活動内容,日本工業規格 JIS の策定・開発の手順と
Vienna agreement,国際規格に整合した JIS 開発の必要性といった標準化の概要を概
説し,ISO/TC146(Air Quality)分野での標準化作業を例にとりながら,NP の作成・提案
からロールプレイによる仮想国際会議といった具体的演習を経験することで,
Convener,Expert として国際標準化に携わるための基礎を学ぶ.
国内の企業あるいは研究機関において研究開発業務あるいは生産・サービス等の業
務を実習する.標準的な実習期間は 1〜2 ヶ月程度とする.
国外の研究機関あるいは研究機関において研究開発(業務)あるいは生産・サービス
等の業務を実習する.標準的な実習期間は 1〜2 ヶ月程度とする.
国内の企業あるいは研究機関において研究開発(業務)あるいは生産・サービス等の
業務を実習する.標準的な実習期間は 2 週間程度とする.
(1)グリーンアジアフォーラムに参加し,グリーンアジア産業論およびこれに関連する科
学技術,社会・経済,環境あるいは政策の課題について学習する.(2)同フォーラムに
おける討論会に参加し,これを通じて得た知見や考えをレポートに纏めて報告する.
(1)グリーンアジアフォーラムに参加し,グリーンアジア産業論およびこれに関連する科
学技術,社会・経済,環境あるいは政策の課題について学習する.(2)同フォーラムに
おける討論会に参加し,これを通じて得た知見や考えをレポートに纏めて報告する.(3)
グリーンアジア産業論に関する課題を決定し,調査・研究を行う.
(1)グリーンアジアフォーラムに参加し,グリーンアジア産業論およびこれに関連する科
学技術,社会・経済,環境あるいは政策の課題について学習する.(2)グリーンアジア産
業論に関する課題に関する調査・研究を継続し,その成果に基づき報告書を作成,担
当教員に提出する.
(1)グリーンアジアフォーラムに参加し,グリーンアジア産業論およびこれに関連する科
学技術,社会・経済,環境あるいは政策の課題について学習する.(2)グリーンアジア産
業論に関する課題に関する調査・研究を継続し,その成果に基づきグリーンアジア自
由課題論文を作成,担当教員に提出のうえ,審査を受ける.
(1)グリーンアジア国際戦略会議において,自らの研究(博士論文研究)の成果を発表
する.(2)同会議における討論会に参加し,指導教員等により与えられるテーマについ
て討論する.
21
国際演習 B2
(1)グリーンアジア国際戦略会議において,自らの研究(博士論文研究)の成果を発表
する.(2)担当教員の指導のもと,同会議における討論会を企画し,テーマを策定,さら
に,討論会のモデレータの役割を担う.(3)担当教員の指導のもとに同会議の企画〜会
議当日の運営に参画し,指導教員により与えられた役割を担う.
国際演習 B3
(1)グリーンアジア国際戦略会議において,自らの研究(博士論文研究およびグリーンア
ジア自由課題研究)の成果を発表する.(2)同会議における討論会に参加し,指導教員
等により与えられるテーマについて討論する.
研究指導演習(I)
研究指導演習(II)
講究(I)
講究(II)
講究(III)
博士研究(I)
博士後期課程学生が,自らの博士論文研究の指導を受ける教員が指導する修士課程
(博士前期課程)の学生を対象に,当該学生の指導教員による修士論文研究あるいは
講究(グリーンアジア国際戦略コースの学生の場合)指導の補助を行い,そのなかで研
究指導法を学ぶ.
博士後期課程学生が,自らの博士論文研究の指導を受ける教員とは別の指導教員が
指導する修士課程(博士前期課程)の学生を対象に,当該学生の指導教員による修士
論文研究あるいは講究(グリーンアジア国際戦略コースの学生の場合)指導の補助を
行い,そのなかで研究指導法を学ぶ.
講究指導教員の指導のもとで,当該教員の専門研究分野あるいは関連研究分野の特
定の課題に関する研究を一定期間行う.研究内容は,受講者,メンター,チューターお
よび講究指導教員で計画し,研究の成果は報告書に纏め提出する.
講究(I)とは異なる講究指導教員の指導のもとで,当該教員の専門研究分野あるいは
関連研究分野の特定の課題に関する研究を一定期間行う.研究内容は,受講者,メン
ター,チューターおよび講究指導教員で計画し,研究の成果は報告書に纏め提出す
る.
講究(I)および(II)とは異なる講究指導教員の指導のもとで,当該教員の専門研究分
野あるいは関連研究分野の特定の課題に関する研究を一定期間行う.受講者,メンタ
ー,チューター,講究指導教員で計画し,研究の成果は報告書に纏め提出し,その後
に講究(I)(II)(III)の成果を纏め発表を行う.
(1)博士論文研究課題を決定し,当該研究に関連する既往の研究のクリティカルレビュ
ーを行い,レビュー論文を作成する.(2)博士論文研究の目的,方法および期待される
成果を含む研究提案書を作成し,博士論文研究主査に提出する.(3)レビュー論文お
よび研究提案の内容を口頭で発表する.
博士研究(II)
(1)博士論文研究を行う.(2)研究の成果を中間報告書(Interim Report)に纏め,博士論
文研究主査に提出する.(3)研究成果を口頭で発表する.
博士研究(III)
(1)博士論文研究を行う.(2)博士論文研究(I)および(II)の成果を含む研究の成果を博
士論文に纏め,博士論文研究主査に提出する.(3)博士論文の内容を口頭発表する.
社会システム学(I)
国家間,企業間の資源・食糧獲得競争,世界規模の環境問題,食糧問題,人口問題,
経済的インバランスなどが顕在化するグローバル社会の現在を俯瞰し,同時に,アジア
諸国が共生して経済成長,省資源,低環境負荷社会を両立する「グリーンアジア」と国
際社会におけるリーダー像を自らが描くための基礎力を,学内外の講師による講話,先
人が残した智の蓄積に触れることを通じて養う.
社会システム学(II)
アジア諸国の社会,経済,産業および文化,ならびに諸国間の経済・産業的関係に関
する総合的な解説を通じて,アジア社会論の基礎を学ぶ.
社会システム学(III)
資本の国際間移動が顕著に進む経済のグローバリゼーションの特徴や,これがもたら
す産業,社会,文化への影響を理解する.20 世紀初頭〜第一次世界大戦の第一次グ
ローバリゼーション,第二次世界大戦後のブレトンウッズ体制,20 世紀末から現在まで
の第二次グローバリゼーションと続く歴史についても触れる.
環境システム学(I)
温暖化をはじめとする地球規模の環境問題に関して,問題の主原因,問題解決のため
の国際的取り組み,環境保全のための政策と産業技術,環境保全技術とシステムが産
業活動や経済に及ぼす影響等を解説する.
環境システム学(II)
世界とわが国の水資源問題およびこの問題に密接に関連する食糧生産の課題につい
て解説し,これらの問題に対する国際的な対応と具体的な活動内容,関連する産業技
術についても学ぶ.
22
環境システム学(III)
世界における炭素資源と他の鉱物資源の利用と消費の現状,資源グローバリズムの進
展とこれらによる諸問題を理解する.資源消費がもたらす環境問題とこの問題に対処す
る技術,産業・社会システム,政策についても学ぶ.
環境システム学(IV)
都市・交通工学・都市環境システム工学,リスク工学(社会分析).ライフラインの工学,
都市インフラの工学(都市経営工学),都市システムマネジメント,エネルギーシステム
マネジメントに関して基礎を学ぶ.
経済システム学(I)
わが国,アジア諸国の経済の動態や特徴を知るとともに,これらを経済統計等から理解
するための基礎を学ぶ.キーワード:所得,生産・分配・支出,消費,投資,貯蓄,負
債,付加価値,国内総生産(GDP),名目 GDP,実質 GDP,潜在 GDP,国民総所得
(GNI),三面等価の原則,成長率,GDP デフレータ,国富(生産資産),所得移転,国
債,純輸出
経済システム学(II)
経済システム学(I)を踏まえて,わが国とアジア諸国の経済動態を数量的に理解するた
めの経済学の基礎を学ぶ.キーワード:マネーサプライ,マネタリーベース,マネースト
ック,マネーフロー,金融関連指数,雇用関連指数,物価指数,消費者物価指数
(CPI),コアコア CPI,需要と供給,貨幣,インフレーション,デフレーション,スタグフレ
ーション,インフレ・デフレギャップ,内需と外需,経済成長,国際経済,貿易,為替,固
定相場・変動相場,自由貿易,関税,非関税障壁
経済システム学(III)
経済学 I および II の知識を基礎に,マクロ経済学などにおいて展開されてきた理論の基
礎,これらの理論が不況(インフレーション,デフレーション)への対処政策として適用さ
れてきた事例を知る.
※以上の科目内容は,コース設置が認められた時点のものであり,開講するにあたっては内容を再検討し,
開講・実施の実績があるものであっても年次改良を行う。
2.3. 講義
(1) 社会・環境・経済システム学
本プログラムでは,学生が自らの専門領域を広く社会的文脈の中で理解する視点を養
うために「社会システム学」「経済システム学」
「環境システム学」の 3 つのカテゴリーに
分類される人文社会科学系科目を準備し,アジア各国の政治社会の仕組みや経済状況,さ
らには環境政策の特質,形成過程について講義を行っている。学生はこれらの科目の受講
を通じて環境問題に関する一般的な知識を得るだけでなく,他の学生などとの議論を通じ
て環境問題解決に向けての思考力を涵養することが期待されている。またこれら講義は,
一貫制博士課程後期におけるグリーンアジア論文の作成の上で重要な環境問題に関する認
識枠組みや構想力の形成に資するものと考えられる。
平成 25 年度及び 26 年度に実施した科目をそれぞれ表 2-4,2-5 に記す。
表 2-4.平成 25 年度に実施した主専門・拡張専門科目以外の科目内容
科目名
講師
テーマ
社会システム学(I)
塚田俊三(立命館アジア太平洋大 開発経済学,国際協力論
学)
社会システム学(II) 渡邉智明(GA センター)
日本をはじめアジア諸国の政治制
度と環境政策の形成過程,地球環
境問題に対する国際社会の取り組
みについて
経済システム学(II) 三宅伸治(西南学院大学)
マクロ経済学
23
新炭素資源環境学に関わる概要に
【環境特論Ⅰ】
原田明,藤田敏之,松井紀久男, ついて
伊藤一秀,寺岡靖剛,佐々木久郎
(九州大学)
【環境特論Ⅲ】
新炭素資源利用学に関わる概要に
林潤一郎,尹聖昊,平島剛,永島 ついて
英夫,深井潤,岡田重人(九州大学)
【環境特論Ⅱ】
環境問題についての英語での討論
Andrew Spring,渡邉貴史,渡邉智
明(GA センター)
環境システム学(II) 渡邉智明(GA センター)
環境政策論(水問題,海洋,河川を
土肥勲嗣(九州大学)
事例に)
GA センター:グリーンアジア国際リーダー教育センター
この他,大学院共通科目「STI 政策専修科目」(九州大学・科学技術イノベーションセンター(STI)
主宰)を人文社会科学系科目の 1 つとして「認定」した。
環境システム学(I)
(環境特論(I)~(III)
のうち 2 科目を選
択)
表 2-5.平成 26 年度に実施した主専門・拡張専門科目以外の科目内容
科目名
講師
テーマ
社会システム学(I)
塚田俊三(立命館アジア太平洋大 開発経済学,国際協力論
学)
社会システム学(II) 渡邉智明(GA センター)
日本をはじめアジア諸国の政治制
度と環境政策の形成過程,地球環
境問題に対する国際社会の取り組
みについて
社 会 シ ス テ ム 学 アフタヌーン・コロキウム
アフタヌーン・コロキウムによる
(III)
(詳細は 2.6(1))
振替
経済システム学(I)
堀史郎(福岡大学)
国際経済,エネルギー経済政策
経済システム学(II) 三宅伸治(西南学院大学)
マクロ経済学
新炭素資源環境学に関わる概要に
環境システム学(I)
【環境特論Ⅰ】
原田明,伊藤一秀,佐々木久郎, ついて
横山士吉,松井紀久男,藤田敏之
(九州大学)
【環境特論Ⅲ】
新炭素資源利用学に関わる概要に
林潤一郎,尹聖昊,平島剛,永島 ついて
英夫,深井潤,岡田重人(九州大学)
【環境特論Ⅱ】
環境問題についての英語での討論
渡辺貴史(GA センター)
環 境 シ ス テ ム 学 Kwadwo Osseo-Asare(ペンシルバ 水性系(Aqueous System)について
(IV)
ニ ア 州 立 大 学 , Nelson Mandela
African Institute of Science and
Technology)
同志社大学,広島大学のリーディ
(臨時開講科目)
<科目責任者・原田明>
社 会 環 境 経 済 シ ス 笹木圭子(九州大学)他,同志社大 ングプログラムとの合同研修(地
テム学特別講義(I)
学,広島大学,JICA(国際協力事業 熱発電見学研修,環境/国際関係/
エネルギー討論)
団)の講師
GA センター:グリーンアジア国際リーダー教育センター
24
(2) 実践英語
実践英語講義の目的は,総じて,英語による表現力およびコミュニケーション能力を
高め,実務上の議論や交渉のための能力を高めることである。これら実践的な英語能力の
発展を前提に,さらに科学論文の作成,プレゼンテーションにおける説明能力および質疑
応答に的確に対応する能力などを獲得することもまた重要な目的として設定されている。
講義は筑紫キャンパス(総合理工学府)と伊都キャンパス(工学府)に分かれて実施した。平成
25 年度及び 26 年度に実施した科目と内容を表 2-6 に示す。
実施時期,科目名
平成 25 年前期
実践英語(II)
平成 25 年後期
実践英語(I)
平成 25 年後期
実践英語(III)
平成 26 年前期
実践英語(II)
平成 26 年前期
実践英語(VI)
平成 26 年前期
実践英語(特別)
平成 26 年後期
実践英語(I)
平成 26 年後期
実践英語(III)
平成 26 年後期
実践英語(VI)
平成 26 年後期
実践英語(集中)
表 2-6.実践英語の実施内容
内容(回数)
クラス,受講者
Creative Speaking (5)
筑紫 1:6 名
Speaking & Communication (10)
筑紫 2:8 名
伊都:7 名
Rhythm & Beat(R&B)(10)
筑紫:7 名
Reading (1)
伊都:2 名
Writing (4)
Speaking & Communication (15)
筑紫:10 名
伊都:2 名
Creative Speaking (5)
筑紫:6 名
Speaking & Communication (10)
伊都:2 名
Debate & Discussion (15)
筑紫:8 名
Presentation & Speed Reading (15) 筑紫:3 名
TOEIC 対策(12)
筑紫:10 名
Rhythm & Beat(R&B)(10)
Reading (1)
Writing (4)
Debate & Discussion (15)
Academic English (15)
Academic English (15)
筑紫:5 名
Speaking & Communication (15)
Presentation & Speed Reading (15)
Presentation Intensive (7 時間×3
日)
筑紫:7 名
伊都:5 名
筑紫 1:9 名
筑紫 2:7 名
伊都:2 名
伊都:2 名
筑紫 1:5 名
筑紫 2:5 名
伊都:5 名
平成 25 年度の授業実施後には,クラスの人数の偏りや日程の集中などいくつかの問題
が指摘された。クラス人数の偏りは学生が受講可能な日程が限られていたために生じたと
考えられる。そのため授業日程については,あらかじめ学生の都合を聴取してできる限り
参加しやすい日程を組むように心がけた。また平成 26 年度からは,複数の異なる内容の授
業を準備することで学生が自身の英語レベルに応じて授業を選べるようにした。例えば,
留学生の中にはすでに相当レベルの英語力を保持する者もあるので,彼らには英語論文作
25
成やディベートの技術を磨くための授業を準備した。あるいは QE を控えた M2 学生ために,
プレゼンテーションに特化した授業を組んだ。
写真 2-1.実践英語の授業風景
実施の効果
本講義は実践的な英語会話能力,すなわちプレゼンテーション能力,ディベートの能
力や研究者として必要な英語論文読解および作成能力を養成するものであり,TOFEL 等の
点数向上を目指すものではない。そのため受講前後における各学生の成績の比較は行って
いない。講義の実施効果は平成 27 年度初頭に受講生に対する試験によって達成度を確認し
た。前年度に実施していないために以前の結果との厳密な比較はできないが,かなりの数
の学生に英語能力全般の向上が見られたようである。ただしそれは日常的に英語を使用す
る留学生たちに著しいものの,一部の日本人学生には点数の低下が見られた。
平成 27 年度に向けての改善点
これまでに実施されてきた当プログラムの英語教育は相当の成果を上げてきたと考え
られ,それは QE を含む学生のプレゼンテーションで確認することができた。入学当初は英
語を不得意にしていた学生であっても年を追うごとに顕著な上達を見せていることからも,
当プログラムの英語教育は一定の成果を出していることが明らかである。一方で,一部の
学生には英語テストの点数の低下が見られた。また英語論文の読解および作成能力につい
ては,未だ多くの学生が困難を抱えているように思われる。
したがって平成 27 年度からは,
英語テキストの読解や英語論文の作成に重点を置いたカリキュラムも作成することとした。
実際には,これまで外部の英語教育専門の会社に委託していた英文作成の授業を,極めて
高度の英語専門知識をもつ教員を独自に雇用することにした。これによってあらかじめ教
員の資質を当プログラム内で確認することができ,また当該教員との打合せをより密接に
行うことによって,問題点や改善点を明確に特定することが可能になると考えられる。
(3) 実践産業
実践産業科目の履修は,本プログラム修了のために備えるべき力のうち特に俯瞰力,
国際力,実践力の基礎を固めるための必須科目に位置づけられ,さらには産業界で活躍す
るリーダーによる「リーダーシップ論」を吸収することをその目的とする。
26
具体的には当該科目において下記を学ぶ。
・
日本やアジア諸国の生産や技術開発(大学の研究開発現場を含む)の現場を見学し,
そこで活動する技術者,研究者等とのコミュニケーション(質疑応答,議論)を通
じてアジアの産業に関する基礎知識を得る。
・
生産,製品開発,製造,サービスの分野で活躍する企業人等を講師とする講義。
複数の部門が連携,協同して課題の解決に取り組むシステムズアプローチの考え
方とその実践法を,課題解決の実例を通じて学ぶ。
・
生産,製品開発,製造,サービスの分野で活躍する企業人等講師とする講義。原
理を製品開発や実用化につなげるシーズ展開,製品付加価値の最大化の手法,製
造業における資源・エネルギー原単位や環境負荷低減の手法を学び,実践例を知
る。
・
国際標準化機構 ISO における活動内容,日本工業規格 JIS の策定・開発の手順と
Vienna agreement,国際規格に整合した JIS 開発の必要性といった標準化の概要を
概説し,ISO/TC146(Air Quality)分野での標準化作業を例にとりながら,NP の作
成・提案からロールプレイによる仮想国際会議といった具体的演習を経験するこ
とで,Convener,Expert として国際標準化に携わるための基礎を学ぶ。
平成 25 年度,26 年度に実施された実践産業科目をそれぞれ表 2-7,2-8 に示す。この
うち講義については本章内で詳述し,海外短期実習,国内実習については別章(3.3. 実習)
に記載した。
以下,実践産業科目として開講された講義「International Standardization and Certification」
(平成 25 年度,平成 26 年度開講)および「プロジェクト・マネージメント」(平成 26 年度
開講)について述べる。
表 2-7.平成 25 年度実施した実践産業科目の内容
名称
内容
海外短期実習(マレーシア実習)
平成 25 年 2 月 10 日〜15 日に実施。GA コース生 17 名が
参加。
海外短期実習(タイ実習)
タイ国内の情勢悪化のため年度内の実施を中止(延期)。
国内実習(住友金属鉱山・菱刈鉱 平成 26 年 1 月 29 日にマレーシア実習の事前研修として実
山見学)
施。GA コース生 17 名が参加。
国内研修(ダイキン工業・滋賀製 タイ実習の事前研修として実施。GA コース生 7 名,GA
作所見学)
リサーチアシスタント生 5 名が参加。
講義「International Standardization 平成 26 年 1 月 24 日実施。講義内容は国際標準化(ISO 組
and Certification」
織概要や制定手順および演習)について。
講師:和泉章氏(経済産業省),松原浩司氏(経済産業省),
伊藤一秀准教授(九州大学)
27
表 2-8.平成 26 年度に実施した実践産業科目の内容
名称
内容
海外短期実習(バングラデシュ実 バングラデシュ国内の情勢悪化のため年度内の実施を中
習)
止(延期)。
海外短期実習(タイ実習)
平成 27 年 3 月 10 日〜15 日に実施。GA コース生 19 名,
GA リサーチアシスタント生 9 名が参加。
国内実習(国内企業見学ツアー)
平成 27 年 3 月 17 日〜20 日に実施。海外短期実習(タイ実
習)と関連する実践産業科目の一部として新日鐵住金(千
葉),フジクラ(千葉),ダイキン工業(滋賀)を訪問,施設
見学を実施。GA コース生 27 名、GA リサーチアシスタン
ト生 12 名が参加。
講義「プロジェクト・マネージメ 平成 26 年 4 月 25 日~7 月 11 日の間に 4 回に分けて実施。
ント」
(財)エンジニアリング協会の講座として,千代田化工建設
株式会社が担当して開講。
講師:池田誠一郎氏(千代田化工建設執行役員,海外ガス・
LNG 第一事業本部)。
講義「International Standardization 平成 27 年 3 月 2 日及び 9 日の 2 日間で実施。講義内容は、
and Certification」
国際標準化(ISO 組織概要や制定手順および演習)。
講師: 和泉章氏(経済産業省),伊藤一秀准教授(九州大学)
実践産業(IV)・講義「International Standardization and Certification」(平成 25 年度,26 年
度開講)
本プログラムでは,経済産業省の産業技術環境局ならびに基準認証広報室と協力し,
実践産業(IV)として国際標準化に関する講義を開設した。この講義では,国際標準化機構
ISO に関して,その組織概要から ISO 制定手順,全体の動向に関する基礎知識の習得を目指
し,産業競争力戦略における国際標準化政策の重要性を講義すると共に,具体的課題に関
する演習を行った。
平成 25 年度は筑紫キャンパスにて,1 月 24 日(金)の午後 1 時から午後 7 時すぎまで殆
ど休憩無しのハードな集中講義として開催した。まず始めに伊藤一秀准教授(九州大学)よ
り「Introduction and Background of International Organization for Standardization -ISO」と題した
導入教育を行った。伊藤准教授は ISO/TC146/SC6 のエキスパートやワーキンググループ事
務局を 10 年以上務めた経験があり,日本工業規格 JIS を基に ISO 提案するための手順を苦
労話を交えながら紹介した。続いて経済産業省産業技術環境局認証課の和泉章課長より,
「Importance of International Standardization and Certification」と題して国際標準化と認証の重
要性を講義頂いた(写真 2-2)。最後に「実際の製品やサービスで標準化が進められ市場の拡
大につながっている例を挙げよ」「ビジネスの観点から,デジュール標準化を進めることが
デファクト標準を狙うことよりも優れているところ,劣っているところは何か」「日本の
ISO/IEC における国際標準化活動が欧米のそれよりもなぜ劣っているのかその理由は何か」
「日本の国際標準化活動をより活性化する方策は何か」といった論点で全体ディスカッシ
ョンを行った。
事前にディスカッションの課題を例示し,比較的意見を述べやすい環境の作出に配慮
したこともあり,積極的な挙手で多くの意見が述べられた。大変アクティブなディスカッ
ションであったと云えるが,一部,一方通行的に意見を述べるだけで,議論が深まらない
場合も散見された。学生の語学力向上の他,より効果的なディスカッションの誘導も課題
28
である。
平成 26 年度は,ISO 規格案作成までの具体的な手順とエキスパートとして必要な能力
を養成するため,より実践的な課題に取り組むための時間を確保し、平成 27 年 3 月 2 日、
9 日の 2 日間で実施された。
写真 2-2.経済産業省 和泉章課長の講義
写真 2-3.講義「International Standardization and Certification」の様子
実践産業(III)・講義「プロジェクト・マネージメント」(平成 26 年度開講)
平成 26 年度の実践産業(III)は,一般財団法人エンジニアリング協会の講座として千代
田化工建設株式会社が担当して開講された。講師は千代田化工建設執行役員の池田誠一郎
氏(海外ガス・LNG 第一事業本部)に担当いただき「プロジェクト・マネージメント(PM)
とは何か?」
「プロジェクトを成功に導くために“knowledge”,“tools”,“processes”,“techniques”
をどう活用するか?」など,PM の基礎を GA コース生 16 名が計 4 日間にわたり 1 単位の
科目として学んだ(表 2-9)。
1 日に 2 コマずつ合計 8 コマという短期集中的な講義であったが,池田講師(写真 2-4)
の海外での豊富な経験談のほか,ユニークかつ実践的な実習を織り交ぜた講義形式によっ
て正に実践産業にふさわしい講義となった。
29
表 2-9.実践産業(III)「プロジェクト・マネージメント」の講義内容
実施日
時限
内容
場所
4 月 25 日
3限
Orientation - Project Management (S. Ikeda)
筑紫&伊都
4限
Project organization and Team building (S. Ikeda)
5 月 30 日
3限
Case study of project management (HRM & S. Ikeda)
筑紫
4限
Scope definition and Work breakdown structure (S. Ikeda)
6 月 27 日
3限
Project Control (S. Ikeda)
筑紫&伊都
4限
Project Control (S. Ikeda)
7 月 11 日
3限
Actual project execution (S. Ikeda)
筑紫
4限
Case study for actual Project (S. Ikeda)
3 限:13:00〜14:30,4 限:14:50〜16:20。伊都キャンパスは TV 会議システムを使用。
写真 2-4.池田誠一郎氏(千代田化工建設)
5 月 30 日に行われた「Case study of project management」では,学生がチームを作り PM
のケーススタディの実習を行った(写真 2-5)。様々な付帯条件下での最適なプラント内設備
配置の問題に皆で意見を出しつつ,安全かつ作業工程の流れに沿った効果的配置について
考えをまとめ,講義の最後に各チームが各々の結果について発表を行った
写真 2-5.「Case study of project management」(5 月 30 日 3 限)の講義風景
30
また 6 月 27 日の「Project Control」では、提示された住宅建設がどれだけの期間とコス
トで完了できるかエクセルや電卓を駆使して各自がスケジューリングを行い,マネージメ
ント能力が試された(写真 2-6)。
写真 2-6.「Project Control」(6 月 27 日)の講義風景
本講義を通して学生はプロジェクト・マネージメントという仕事の重要さ,我々の生
活との密接なかかわり,そしてプロジェクト遂行における苦労や遣り甲斐について学ぶこ
とができた。学生にとって新たな視点・物の見方が備わる貴重な機会になったのではない
かと考える。
本実践産業(III)は,(財)エンジニアリング協会の講座として千代田化工建設(株)が担
当して開講されたものであることを重ねて申し添えるとともに,平成 27 年度の実践産業
(III)についても,同社(千代田化工建設)による講義が予定されていることを加えて述べて
おきたい。
2.4. 実習,演習
(1) 国際演習
① 国際演習 A
国際演習 A では,社会学系教員が総括リーダーとなり,講義(外部講師を含む),グリ
ーンアジアの理念に沿った課題を据えたセミナーと討論会を月 1 回の頻度で開催する。こ
の演習を通じ,学生は独自の研究課題(科学技術論,社会・産業論)を見いだし,総括リー
ダー,MCU の支援を受けながら研究を進める(図 2-6)。
国際演習 A1(一貫制博士課程 3 年後期)では,自身の博士論文研究に関する科学技術の
社会的背景や社会的意義をレビューし評価するためのテーマや方法論を決定する。国際演
習 A2(同 4 年前期)~A3(同 4 年後期)では,決定したテーマや方法論に従って月 1 回のミー
ティングを重ねながら,調査・研究を継続して行う。国際演習 A4(同 5 年前期)では、自身
の研究について発表するとともに,その課題に関するセミナーのリーダーとなって議論を
31
総括し,その成果を踏まえ「グリーンアジア自由課題論文」を作成,第 4 ステージゲート
に臨む。審査に合格した論文は,本プログラムの自主ジャーナル「EVERGREEN」に掲載す
る。さらに社会科学系教員と学生の連盟による学術誌などへの論文投稿を目指す。
図 2-6.国際演習 A の概要
平成 26 年度は月 1 回の LCA や環境影響評価に関する講義と全体ミーティングを行い,
調査・研究課題を決定し,提案書の提出・発表を実施した(写真 2-7)。学生は社会科学的な
思考方に初めて触れたということもあって,本演習の趣旨を捉え,自身の研究課題を決定
するのに多くの時間を要した様である。しかしながら新たな視点を得たことにより,自身
の研究に関する視野が広がったと考えられる。平成 27 年度は提案書を基に月 1 回の講義や
全体ミーティングを踏まえ,調査・研究を継続していく予定である。
写真 2-7.国際演習 A の様子
32
② 国際演習 B
本プログラムでは年 1 回の頻度で「International Forum for Green Asia」を開催しており,
プログラムの進捗報告,アジアの産業界や学界リーダーによる公演,社会科学・科学技術・
産業技術・政策の融合によるグリーンアジアシンポジウムをオーガナイズしている。本演
習では,学生が自らの研究発表に加えて,この会議の企画・運営に参画し,所定の役割を
果たす(図 2-8)。
図 2-8.国際演習 B の概要
国際演習 B1(一貫制博士課程 3 年後期)では,自身の博士論文研究成果を国際演習 A1
でレビュー・評価する社会的意義の解説を含んで発表する。また学生セッションやアフタ
ヌーンコロキウムでの討論会に参加する。国際演習 B2(同 4 年後期)では,国際演習 B1 の
内容に加えて,会議の企画・運営に参画し,学生セッションのトピックスを提案する。国
際演習 B3(同 5 年後期)では,国際演習 B1,B2 の内容に加えて,学生セッションのモデレ
ーターを担当し,さらに他分野の研究者,技術者とのコミュニケーション能力を養う。
平成 26 年度は学生の博士論文研究成果のポスター発表を実施した(写真 2-8)。ポスタ
ーの内容は,それぞれの研究成果を国際演習 A1 で研究した社会的背景や意義を中心とした
形でまとめたものとなった。教員や他学年からの質疑応答も活発に行われ,有意義なもの
となった。また,学生セッションにおいて決められたトピックスに関して学生達はグルー
プに分かれて討論し(写真 2-8),その結論について発表した。短い時間であったにも関わら
ずそれぞれのグループで興味深い結論が導かれ,あるトピックスについて様々な分野の学
生と討論する機会を得たことによって,学生達も新たな視点を得られたと考えられる。学
生セッションに関しては,この討論を踏まえてさらに学生自身が考察したものを含んだ報
告書を学生は提出した。また他のフォーラムにも積極的に参加した。平成 27 年度は 26 年度
33
に実施した内容と,さらにフォーラムの企画・運営に学生が参画し,学生セッションにお
いても学生自身でトピックスを提案していく予定である。
写真 2-8.ポスターセッションと学生セッションの様子
(2) インターンシッププログラム
グリーンアジアコース生は 5 年間の在学期間中に 3 回のインターンシップ活動への参
加が課せられている。その対象は日本国内外の企業や研究機関で,産業界での実践的な就
労体験を通じて,国際社会で活躍する人材として必要なリーダーシップを養うことを目的
としている。インターンシップは「プラクティススクール」(一貫制博士課程 1~2 年生時に
実施)と「国際インターンシップ」「国内インターンシップ」(いずれも 3~4 年生時に実施)
に分けられている(図 2-9)。
Master Course
前期2年間 / 修士課程相当
0
1
Doctoral Course
後期3年間 / 博士後期課程相当
2
3
4
5
Years
Practice school
Overseas Internship Domestic Internship
プラクティススクール 国際インターンシップ 国内インターンシップ
図 2-9.各インターンシップのスケジュール
① プラクティス・スクール
プラクティス・スクールは主に日本国内の企業や研究機関が対象で,コース生はメン
ターと相談の上で行先機関を決定し,現地受け入れ担当者の指導の下実習を行う。この受
け入れ担当者には,差支えの無い範囲で技術メンター(メンタリングケアユニットの一人)
としての協力をお願いしている。実習終了後,コース生は実習成果をまとめて「プラクテ
ィス・スクール成果発表会」で発表をする(この発表会には技術メンターも招待している)。
発表会で合格が認められれば必修科目「プラクティス・スクール」の単位として認定され
る。プラクティス・スクールへの参加からおよそ 2 年後に,コース生は再び同じ企業・研
34
究機関に赴き「国内インターンシップ」として技術メンター指導の下 2 度目の実習を行う
ことになっている。
1 期生(平成 24 年度入コース,6 名)は平成 25 年 9 月までにプラクティス・スクールを
終了した(表 2-10,写真 2-9)。
表 2-10.1 期生のプラクティス・スクール実施状況
受け入れ先
学生
実施期間
赤嶺 大志
H25.8-9
物質・材料研究機構(NIMS)
儀間 弘樹
H25.7-8
物質・材料研究機構(NIMS)
花田 尊徳
H25.7-8
産業技術総合研究所(AIST)
佐藤 幹
H25.7-8
電力中央研究所(CRIEPI)
正木 悠聖
H25.8
電力中央研究所(CRIEPI)
松本 親樹
H25.4-5
Waterloo 大学(カナダ)フィールドスクール
写真 2-9.プラクティス・スクールでの実習(1 期生)
全員の実習が終了して約 1 か月後の平成 25 年 10 月 25 日に,技術メンターを招待して
の発表会を行い,1 期生は普段の大学院では経験することのできない幅広い体験や得た知識
について発表した(写真 2-10)。なお発表内容が企業の知的財産管理に抵触することが無い
よう,十分に留意するよう事前に指導した。
写真 2-10.プラクティス・スクールの計画書・レポートと発表会(1 期生)
2 期生(16 名)のプラクティス・スクールについては,1 期生と比較して当初若干の懸念
があった。それは企業が留学生のインターンシップ受け入れについて難色を示すのではな
いかという点である。これは如何ともし難い日本の現状であるが,ふたを開けてみれば多
35
くの企業が留学生の受け入れを快諾してくれ,当初の不安は杞憂に終わった(表 2-11)。
表 2-11.2 期生のプラクティス・スクール実施状況
学生
実施期間
受け入れ先
楢﨑 優
H26.8-9
物質・材料研究機構(NIMS)
滝沢 里奈
H26.8-9
新日鐵住金(株)技術開発センター
田邉 和大
H26.7-8
日本電信電話(株)先端技術総合研究所
張 建勲
H26.8-9
産業技術総合研究所(AIST)
米田 亮太
H25.4-6
日本電信電話(株)マイクロシステムインテ
グレーション研究所
濱田 夏彦
H26.8-9
(株)東芝
田中 雅仁
H26.7-8
(独)海洋研究開発機構(JAMSTEC)
Anis Syazwani Binti Shuhaimi
H26.8
電力中央研究所(CRIEPI)
Zayda Faizah Zahara
H26.7-8
産業技術総合研究所(AIST)
Tarek Mahmoud Atia Mostafa
H26.8-10
サンエジソンジャパン(株)
Ryan Imansyah
H26.7-8
(株)フジクラ
Azizah Intan Pangesty
H26.7-8
グンゼ(株)
Pennapa Tungjiratthitikan
H27.4
(共)自然科学研究機構 分子科学研究所
Khanam Marzia
H26.8-9
三重大学
Pal Animesh
H26.9-10
カルソニックカンセイ(株)
Sendy Dwiki
H26.9
水 ing(株)
平成 26 年 10 月 30 日に,それまでにプラクティス・スクールを終えた 15 名の学生の
発表を行った(写真 2-11)。また一部学生については平成 27 年 2 月 12 日に実施した。今回
より発表に際して「実習内容の専門的内容についてではなく,実習を通じて学んだこと・
経験したこと等を中心に発表する」ようにコース生に指導した。これは理系の学生が普段
経験する学会等での発表とは異なるスタイルであるため,多くのコース生には十分に理解
が行き届かなかったようであった。しかし一方で,この指導を踏まえて自身の経験や感想
を巧みに発表したコース生もいたため,次年度からは指導をより充実させ,コース生が実
習を計画および参加している段階からその目的を強く意識してインターンシップに臨んで
もらえるよう改善したい。
写真2-11
2-11.プラクティス・スクール発表会(2
写真
.プラクティス・スクール発表会(2期生)
期生)
36
36
② 国際インターンシップ
国際インターンシップは海外の企業や研究機関を実習先とし,日本とは異なる環境で
の就労経験や英語によるコミュニケーションを通じて,国際社会で働くことを経験して学
ぶことを目的としている。プラクティス・スクールと同様に,受け入れ機関の担当者には
海外メンターとしての協力をお願いしており,実習と課題を修了したコース生には必修科
目「国際インターンシップ」の単位が与えられる。
平成 27 年 4 月時点で 1 期生の国際インターンシップが現在進行形であるため,本件に
ついては予定を含めて表 2-12 にまとめた。
学生
赤嶺 大志
儀間 弘樹
花田 尊徳
正木 悠聖
松本 親樹
表 2-12.1 期生の国際インターンシップ実施状況
実施期間
受け入れ先
平成 26 年 5 月〜平成 27 年 2 月
Antwerp 大学(ベルギー)
平成 27 年 5 月〜8 月(予定)
Institute NEEL CNRS/UJF(フランス)
平成 26 年 6 月〜8 月
UBE Thechnical Center Ltd(タイ)
平成 26 年 6 月〜9 月
Bangor 大学(イギリス)
平成 26 年 8 月,平成 27 年 2 月〜3 月 バンドン工科大学(インドネシア)
(3) 海外短期実習
① マレーシア実習(平成 25 年度)
平成 26 年 2 月 10 日〜15 日の日程で,
実践産業科目としてマレーシア実習が行われた。
参加者は学生 16 名,教員 10 名,事務スタッフ 5 名の計 31 名で,マレーシア国民大学
(Universiti Kebangsaan Malaysia),マレーシア工科大学(Universiti Teknologi Malaysia)のマレ
ーシア日本国際工科院(Malaysia-Japan International Institute of Technology, MJIIT),及びマレ
ーシア SH エレクトロニクス社を訪問した。
実習初日の 11 日にはマレーシア国民大学を訪問した。まず太陽エネルギー研究所(Solar
Energy Research Institute,SERI)の Director である Dato’ Kamaruzzaman Sopian 教授より SERI
の研究・教育活動について説明を受け,次いで谷本教授よりグリーンアジアプログラムに
ついての説明がなされた。SERI は太陽エネルギーと再生可能エネルギーの世界レベルの研
究をおこなうことを目的とし,10 年ほど前にマレーシア政府により設立された施設である。
その後,各研究室で教員及び院生から実験装置などについて説明を受け,短いながらも活
発な意見交換,質疑応答がなされた(写真 2-12)。
翌 12 日にはマレーシア工科大学のマレーシア日本国際工科院(MJIIT)を訪問した。
MJIIT は講座制(i-Kohza)などの日本式の工学研究にならった教育課程を設置し,2010 年に
設立された組織である。ここでは本プログラムと MJIIT とのジョイントワークショップを
開催し,基調講演 3 件(池田章一郎教授(MJIIT),Mohamed Mahmoud EI-Sayed Nasef 教授
(MJIIT),谷本潤教授(九大)),招待講演 3 件,及び学生の研究発表 10 件が行われた(写真
2-13,図 2-10)。学生の発表としては,本プログラムからは 1 期生 6 名全員が研究報告をお
こなった。本会で学生は,エネルギー,環境,材料化学などに関する最新研究の動向につ
いて,公式・非公式に議論する良い機会を得たと思われる。
37
写真 2-12.SERI 訪問
写真 2-13.GA-MJIIT ジョイントワークショップ
13 日にはマレーシア SH エレクトロニクス社を訪問した(写真 2-14)。ここは先に本短
期実習の事前研修(後述,2.4.(4)①)として菱刈鉱山を見学させてもらった住友金属鉱山
(株)の製錬事業海外グループ会社である。事業所は 1989 年に設立され,従業員は 450 名,
主にリードフレームの製造をおこなっている。最初に秋山社長と担当者の方からマレーシ
ア SH エレクトロニクス社の概要と工場における製造課程についての説明があり,その後質
疑応答の時間が設けられた。その後,工場の食堂で昼休みの貴重な時間を割いていただき,
社員の方と話しながら昼食をとった。昼食後作業服に着替え,少人数のグループに分かれ
て工場内を見学させてもらった。また水処理などの環境対策についても説明を受けた。
38
図 2-10.GA-MJIIT ジョイントワークショップのプロシーディングス
写真 2-14.マレーシア SH エレクトロニクス工場見学
一連のマレーシア実習の中ではマレーシア文化に触れる機会もあった。ツインタワー
のような高層建築が立ち並び,モータリゼーションが進むクアラルンプールという都市の
成長を目の当たりにした。また,イスラム教徒が多い国柄から,関連した建物や装飾を多
く見かけたが,マレーシアでは珍しいヒンドゥ教の寺院であるバトゥ洞窟を見る機会もあ
った。
② タイ実習(平成 25 年度)[中止,延期]
実践産業科目としてのタイ実習が,G-COE「新炭素資源学」と合同で平成 26 年 2 月 2
日〜7 日の日程で計画された。参加者は学生が 13 名(グリーンアジアコース生 7 名,新炭素
資源学コース生 6 名),教員 7 名,事務局スタッフ 4 名の計 24 名でマヒドン大学サラヤキ
ャンパス(3 日)及びパヤタイキャンパス(4 日)と Daikin Industries(Thailand)(5 日)を訪問し,
マヒドン大学では双方の学生の発表も予定されていた。
しかしながら,本実習の事前研修として,ダイキン工業(株)滋賀製作所の見学(後述,
2.4.(4)②)は実施されたものの,前年の反政府デモに端を発する政情不安からバンコク市内
での移動と安全の確保が難しいという判断がなされ,実施直前に中止された。この実習で
39
実践産業の単位を取得予定であったグリーンアジアコース 1 期生 2 名については,QE まで
の単位取得が必要であったことから,急遽マレーシア実習(前述,2.4.(3)①)に参加した。
また本実習は,翌平成 26 年度に再度計画・実施された(後述,2.4.(3)④)。
③ バングラデシュ実習(平成 26 年度)[延期]
平成 26 年度の海外短期実習として,当実習には本校の学生と教職員合わせて 30 名が
平成 27 年 1 月 27 日から 31 日までバングラデシュのダッカ市を訪問する計画であった。本
実習の主な目的は(1)ダッカ市を本拠地とする株式会社 Beximco Pharmaceuticals Ltd.を訪問
して工場見学や学生と会社の方々を交えたディスカッションを行い,学生の知見を深める
こと(2)ダッカ大学を訪問し「グリーンアジアのためのグローバル戦略」に関するワークシ
ョップを行うことであった。
しかしながら,バングラデシュ国内の政情不安が突如緊迫したために情報収集などを
進めて慎重に検討した結果,学生の安全を十分に確保することができないと判断され,渡
航を断念することにした。
④ タイ実習(平成 26 年度)
平成 26 年度の実践産業(I)と実践産業(II)として,平成 27 年 3 月 10 日~15 日の日程で
タイへの短期実習を実施した(表 2-13)。参加者は、GA の学生が 19 名、キャンパスアジア
の学生が 1 名、新炭素資源の学生が 8 名、教員やスタッフが 10 名の計 38 名であった。
マヒドン大学 パヤタイキャンパス訪問(3 月 11 日)
タイ実習の初日(3 月 11 日)は首都バンコクの中心部にあるマヒドン大学パヤタイキャ
ンパスを訪問した(写真 2-15)。パヤタイキャンパスは重厚な作りの建物が多く,図書館や
扇状の大講義室などの施設があり,また週末にはキャンパス内に露店が出されるなど自由
な雰囲気のキャンパスである。
午前中はマヒドン大学側からは大学及び理学部の紹介とともに,学部教育について映
像で紹介され,九州大学側からは大学及びグリーンアジア,新炭素資源学、キャンパスア
ジアの説明を行った。その後,それぞれの大学の教員による研究に関する講演が行われた。
午後からは双方の学生 8 名がモデルセミナーで様々な分野の発表を行った。異分野の学生
にも理解しやすい発表を行うという工夫がなされたことにより,活発な質疑応答や議論が
行われた。様々な分野の研究アプローチに触れることにより,学生は新たな視点を得られ
たと考えられる。さらにそれぞれの国の研究に関する情報を得る貴重な機会となった。そ
の後,両校の教員らは研究協力についてディスカッションを実施した。その結果,継続し
て研究協力が可能であるということを改めて認識した。またそれと同時刻に学生はキャン
パス及び研究室ツアーを実施し,タイの学生生活や研究室の様子を学んだ。
マヒドン大学 サラヤキャンパス訪問(3 月 12 日)
2 日目(3 月 12 日)の実習では,首都バンコクの中心から少し離れた場所にあるマヒド
ン大学サラヤキャンパスを訪問した。サラヤキャンパスはパヤタイキャンパスよりも新し
く,教養部,巨大なホール,大学寮やサークル施設など多数の設備がある自然も豊富なキ
ャンパスで,学生は循環バスにてキャンパス内を移動する。
40
表 2-13.タイ実習のスケジュール
実施日
3/11(火)
訪問先,スケジュール
マヒドン大学パヤタイキャンパス
9:10
9:30
10:00
11:20
11:40
13:00
15:00
16:00
16:45
3/12(水)
マヒドン大学サラヤキャンパス
9:00
9:10
9:25
10:20
11:00
12:30
13:30
14:35
16:30
3/13(木)
理学部長表敬
マヒドン大学及び理学部についてのプレゼンテーション
九州大学及び GA プログラム,新炭素資源学,キャンパスアジア
についての紹介
九州大学 辻教授による講演
九州大学 Spring 助教による講演
昼食
モデルセミナー
両校の研究協力についての議論(教員),研究室見学(学生)
学生生活についての情報交換
閉会
副学長表敬
サラヤキャンパスについての紹介
有機化学や高分子化学の研究活動についての紹介
九州大学についての紹介
九州大学 小山教授による講演
マヒドン大学 Siwaporn 助教による講演
モデルセミナー
昼食
研究室ツアー
キャンパスツアー
閉会
ダイキン インダストリーズ タイランド訪問
9:30
10:00
11:00
ダイキン インダストリーズ タイランドについての説明
工場見学
質疑応答
写真 2-15.パヤタイキャンパス訪問
午前中はマヒドン大学の有機化学,高分子化学の分野の教員や学生が集まり,マヒド
ン大学側は高分子化学工学部の教員や研究活動の紹介,九州大学側はグリーンアジア,新
41
炭素資源学,キャンパスアジアの説明を行った。その後,双方の教員による講演や学生 13
人によるモデルセミナーを実施した(写真 2-16)。前日に続き異分野の研究発表がなされた
が,内容を理解しやすい説明であったため,双方の学生がそれぞれの分野の研究に興味関
心を持ち,積極的な質疑応答や議論が行われた。午後は高分子化学工学部の研究室及び実
験室の見学を実施した。タイの基幹産業となる天然ゴム,合成ゴムに関する高度な研究が
印象的であった。学生もゴムに関する実験のデモンストレーションを見学し,それに関す
る情報に深い興味関心を抱いていた。その後バスに乗ってキャンパスツアーを行った。新
しく広大なキャンパスということもあり,新しい施設や九州大学にはない施設などもあり
非常に興味深かった。またマヒドン大学の学生から様々な施設の説明を受け,九州大学の
学生が質問を行うなど,研究以外でも活発なコミュニケーションが行われた。タイでの学
生生活やキャンパスの様子を知ることができる非常に貴重な経験となった。
写真 2-16.モデルセミナー(サラヤキャンパス)
ダイキン インダストリーズ タイランド訪問(3 月 13 日)
3 日目(3 月 13 日)の実習では,首都バンコクから車で 1 時間半ほどの Chonburi 地区に
ある「ダイキン インダストリーズ タイランド」を訪問した。ダイキン インダストリーズ
がタイでのビジネスを 1967 年に開始し,現在は 5 つの関連企業がタイにある。その中のダ
イキン インダストリーズ タイランドは 1990 年に設立され,今年で 25 年目となる。設立
当初は生産のみであったが,2005 年からは研究開発を行い,ASEAN 発の地域特化商品の独
自開発着手している。その過程で各種認証を取得し,様々な部門で総理大臣賞を受賞して
いる。
ダイキン インダストリーズ タイランドの人員構成は正社員 2,312 人,支援従業員 2,293
人の計 4,605 人(平成 27 年 2 月 28 日現在)となっている。その内日本人は 20 名で,ほとん
ど外国人で構成されている。これはダイキン インダストリーズがローカルの人を育成する
というミッションで経営しているからである。ここでは日本の指示を仰ぐのではなく,地
域に合った独自の経営がなされている。
説明の後にトレーニングセンターと組み立て工場の見学を行った。トレーニングセン
ターでは,工場で働く適正があるかどうかの様々なテストや,事故を起こさないための徹
底的な教育がなされている。それに合格後,各工程の組み立て作業をトレーニングし,実
際の現場に配属される。ここではタイ人の性格に特化した教育がなされている印象を受け
た。組立工場は手作業の部分以外は全てコンピューター管理されており,2 種の組み立て方
法で様々な国の型を混合して組み立てている。そのときミスが起きないような管理も徹底
42
されていた。人の手が確実に必要な部分以外をオートメーション化することで,高効率で
高品質な製品を製造していると感じた。環境対策も各種認証を取得するほど温暖化に関し
て省エネ技術を取り入れていくといった形でリードしており,日本のダイキン工業と同等
の意識で工場経営がなされている。また現地に開発部門をおいたことにより,環境にも配
慮した地域特有の機能を装備した製品を製造すべく年々改良されているということも感じ
られた。
工場見学後は現地スタッフとの質疑応答が行われ(写真 2-17),学生は「環境に考えた
うえで今後どのようなことに取り組んでいくのか」
「改善という言葉が浸透しているがそれ
を実施するのにどれだけの苦労があったか」など積極的に質問し,有意義な議論を行うこ
とができた。
写真 2-17.ダイキン インダストリーズ タイランド見学
(4) 国内短期実習
① 住友金属鉱山(株)菱刈鉱山見学(平成 25 年度)
平成 26 年 1 月 29 日に,実践産業の一環,マレーシア実習(前述,2.4.(3)①)の事前研
修として国内実習となる菱刈鉱山見学を行った(写真 2-18)。参加者は学生 17 名(日本人 10
名、留学生 7 名),教員 4 名であり,バスをチャーターして鹿児島への日帰りの実習となっ
た。
グリーンアジアの連携企業である住友金属鉱山(株)が所有する菱刈鉱山は日本唯一と
なった金属鉱山であり,30 年前より金を産出している。まず鉱山概要と会社説明を映像に
て紹介していただき,本鉱山の金品位が通常の金鉱山の 10 倍以上と飛びぬけて高いこと,
鉱内掘りにより採掘された金鉱石は色により人の手で選別され,銅等の精錬所に送られて
回収されることなどが説明された。引き続いてバスによる鉱山見学が行われ,鉱山の外観、
選鉱場、堆積場や機械設備、温水の排水パイプラインなどを周回した。鉱内掘りによる環
境負荷の低減,鉱内からくみ出される温水を温泉に還元するなど,環境と地域住民に極力
配慮した会社の姿勢がうかがわれた。その後社員の方を交えた討議を行い,会社の沿革・
理念や今後の事業展開,環境,地域社会との関係などについての活発な議論が行われた。
資源の学生以外にとって鉱山の見学は珍しく,貴重な経験となったと思われる。鉱山はグ
リーンアジアの重要な理念の一つである遡及性の一番上に存在し,またその規模の大きさ
や社会,環境の影響を含めて,今後社会全体のシステムの構築を考えていく必ず配慮して
いかなければならない分野であると考えられる。
43
43
写真 2-18.住友金属鉱山(株)菱刈鉱山見学
② ダイキン工業(株)滋賀製作所見学(平成 25 年度)
グリーンアジアの 1 期の実践産業(II)および 2 期の実践産業(I)として海外短期実習の
タイ実習(前述,2.4.(3)②)が計画されていたが,この事前研修としてダイキン工業(株)滋
賀製作所の見学会が平成 26 年 1 月 6 日に実施された。
まずダイキン工業の歴史と現状,及びダイキン工業が進めている「Production of DAIKIN
System(PSD)」についての説明があった(写真 2-19)。一般に一つの生産ラインでは一種類
の製品を造る方が単純なコストと生産効率の点からは利点が大きいと考えられる。しかし
ながら,空調機のような季節や天候による需要の差が大きい製品については,過剰・過少
生産のリスクがある。ダイキン工業では売れ行きに応じて生産をコントロールする「ハイ
サイクル生産」,一つの生産ラインで複数の製品を生産する「多品種混合生産」を導入し,
総合的に効率的な生産システムを確立しているということであった。
写真 2-19.ダイキン工業(株)滋賀製作所見学
その後,実際の生産現場を英語班と日本語班の 2 つのグループに分かれて見学した。
一つの生産ラインで同時にいろいろな種類の空調機が生産されていく様子は興味深かった。
また工場内では作業環境の改善と作業効率の向上のために様々な「からくり」が利用され
ていた。最先端の生産システムの中に日本伝統のローテクが活用されていることは一見ミ
スマッチに見えたが,電力などの運用コストがかからない合理的な方法であると感じた。
またこれらの「からくり」を考案するための専用の作業場や教育システムなどがある点も
大変興味深かった。最後にショールームで最新のダイキン工業製品の説明を受けた後,見
44
学会全体についての質疑応答がなされた。
なお 2 月上旬に実施される予定であったタイへの海外短期実習(前述,2.4.(3)②)につ
いては,バンコク市内で続いていた政情不安が収まらずに実施直前に中止された。タイ実
習は平成 26 年度に改めて計画・実施され(2.4.(3)④),付随してダイキン工業滋賀製作所の
見学も国内企業見学ツアー(2.4.(4)③)の一部として再度行われた。
③ 国内企業見学ツアー(平成 26 年度)
実践産業科目である海外短期実習の一部として,アジア地域を含む海外において活躍
している国内企業 3 社を連続して訪問・見学する GA 国内企業見学ツアーを平成 27 年 3 月
17 日~20 日に実施した(表 2-14)。本ツアーの中で,製鉄・光ファイバ・空調機器の各々に
おける国内最大の開発拠点を巡り,施設見学だけでなく製造開発に携わる方々に直接話を
伺うことができた。本ツアーには GA コース生 27 名,GA リサーチアシスタント生 12 名,
教員 7 名の計 47 名が参加し,実施期間・参加人数ともに GA の国内実習としては最大規模
となった。
実施日
3/18(水)
3/19(木)
3/20(金)
表 2-14.国内企業見学ツアーのスケジュール
訪問先,スケジュール
新日鐵住金(株)君津製鉄所(千葉・君津),富津 RE センター(千葉・富津)
13:10
君津製鉄所 到着
13:10-13:30 (20 min)
君津製鉄所 紹介
13:40-14:50 (70 min)
2 グループに分かれ製鉄所内を見学
14:50-15:00 (10 min)
質疑応答
移動
15:20
富津 RE センター 到着
15:20-17:00 (100 min) RE センターの紹介,GA の紹介,RE センター見学
17:00-17:40 (40 min)
質疑応答
17:40
RE センター 出発
(株)フジクラ 佐倉事業所(千葉・佐倉)
13:10
佐倉事業所 到着
13:20-13:50 (30 min)
佐倉事業所 紹介,GA の紹介
13:10-16:05 (115 min) 4 グループに分かれ事業所内を見学
16:10-16:40 (30 min)
質疑応答
16:50
RE センター 出発
京エコロジーセンター(京都市環境保全活動センター)(京都)
京エコロジーセンター 見学
ダイキン工業(株)滋賀製作所(滋賀)
13:00
滋賀製作所 到着
13:10-13:30 (20 min)
滋賀製作所紹介
13:40-14:45 (60 min)
2 グループに分かれ製作所内を見学
14:50-15:30 (40 min)
PSD(Production of DAIKIN System)の紹介
15:30-16:20 (50 min)
質疑応答
16:30
滋賀製作所 出発
新日鐵住金(株)訪問
企業訪問初日の 3 月 18 日には,千葉県内の新日鐵住金(株)君津製鉄所および富津 RE
センターを訪問した。JR 君津駅からバスで 15 分程度のところに所在する君津製鉄所をまず
45
訪問した。企業側から製鉄所の説明を受けた後,2 グループに分かれて施設見学を行った。
構内はバスで移動し,その際,構内専用ナンバーを付けた自動車が走っていることや,構
内専用列車が走るための線路(および踏み切り)が敷かれていることなど,構内独自の移
動・輸送手段が発達していることに驚かされた。見学施設として最初に訪れたのは第四高
炉である(写真 2-20)。通称「お立ち台」と呼ばれるスペースから見た高炉の姿は圧巻の一
言であった。次に向かったのが厚板の圧延施設である。巨大な赤熱した鉄が豪快に熱や音
を発しながら延ばされていく様子は迫力の光景であった。
写真 2-20.君津製鉄所・第四高炉見学(「お立ち台」より)
そ の 後 , 君 津 製 鉄 所 か ら バ ス で 20 分 程 度 の と こ ろ に あ る 富 津 RE(Research &
Engineering)センターに移動した。企業側から富津 RE センターの説明を受けた後,新日鐵
住金が行っている様々な研究を見学した。その中には一見製鉄とは関係なさそうな研究テ
ーマもあり,例えばミネラルの供給不足による磯焼け現象に対して、製鉄プロセスで発生
する副産物(スラグ)の活用を研究している部署を見学した。また、機械の強度をミクロな
立場から理解するための原子レベルで材料内の組成を調べる研究等も見学した。その後,
富津 RE センターにて 40 分間の意見交換(Q&A)を行った(写真 2-21)。多くの質問により活
発な意見交換となったとともに,製造開発に関するご苦労や工夫など現場での貴重な話を
伺うことができた。
写真 2-21.新日鐵住金(株)富津 RE センターでの Q&A の様子
46
写真 2-22.新日鐵住金(株)富津 RE センターにて
(株)フジクラ訪問
翌 3 月 19 日は,同県 JR 佐倉駅からバスで約 10 分の距離にあり,光ファイバや導線の
製造開発で知られる(株)フジクラ佐倉事業所を訪問した。企業側から佐倉事業所に関する
説明を受けた後,4 グループに分かれ事業所内をバスで移動しつつ施設見学を行った。まず
光ファイバの紡糸施設を見学したが,6 階建ての建物(JR 駅から見える高い建物とのこと)
の上からファイバ母材をつるし下方向に延伸する。巨大な母材から数層からなる内部構造
を保持したまま極細に延ばしていく技術は驚きであった。また光ファイバを融着接続する
など,メンテナンス用の小型機器を見学した。従来,経験・技術を必要とした作業が今で
は多くの工程が自動化されており,作業者の負担軽減と作業の質の確保に繋がっている。
そのほか超電導線材等の説明を受けた。見学の各地点に説明者を準備頂き,VTR やサンプ
ルの演示を絡めつつ製造開発での工夫や苦労を教えて頂いた。
見学後 30 分程度の質疑応答の時間を設けたが,様々な視点からの質問に対して丁寧に
答えていただき,非常に有意義な意見交換の場となった(写真 2-23)。
写真 2-23.(株)フジクラ佐倉事業所での Q&A
47
写真 2-24.(株)フジクラ佐倉事業所にて
京エコロジーセンター見学
翌 3 月 20 日の午前中は,京都府内の京エコロジーセンター(京都市環境保全活動セン
ター)を見学した(千葉から京都へは前日中に移動)。建物そのものがエコロジー技術を展示
するもので,当センターでは環境問題・省エネルギー・省資源に対する様々な知恵と工夫,
提案等を身近に体験することができた。
ダイキン工業(株)訪問
3 月 20 日の午後に滋賀県に移動し,JR 草津駅からバスで約 30 分のところにあるダイ
キン工業(株)滋賀製作所を訪問した。企業側からの滋賀製作所の説明を受けた後,2 グルー
プに分かれて製作所内を見学した。所内でまず驚かされたのが無人搬送車である。「重力」
や「勢い(慣性)」を最大限に利用した様々なからくりによって,少しのエネルギーも無駄
にせず部品の投入作業などが自動で行われている。また“Kaizen(改善)”をテーマとした様々
な工夫(作業者個々に合わせた作業環境向上など)や,マイスター制度・留学支援など人材
育成への注力にも驚かされた。
その後,ライン上で同じものを作らないことでストックを作らないという変種変量生産
の理念~ダイキン工業の生産方式“PDS(Production of DAIKIN System)”~について説明を
受けた。
その後,50 分程度質疑応答の時間を設け活発な意見交換を行った(写真 2-24)。タイ短
期実習でダイキンインダストリーズ・タイ工場を見学した学生から海外拠点との違いに関
する質問が出て,大変興味深い議論に発展した。
今回の国内実習では、訪問企業 3 社には多忙期にも係わらずスケジュールを調整いた
だいた。そのお蔭で,国内有数の産業拠点を一度に見ることのできる 3 日間連続の企業見
学ツアーという学生・教員にとっても貴重な実習となった。また,可能な限りの英語対応
についても快諾いただいた(対応が困難な部分については GA 帯同教員による通訳を入れ
た)。なお,特定場所以外での写真撮影の許可が得られなかったため,施設見学に関する写
真資料が少ないことを参考までに申し添えておく。
48
写真 2-24.ダイキン工業(株)滋賀製作所での Q&A の様子
写真 2-25.ダイキン工業(株)滋賀製作所にて
今回,参加学生が多く統率が取りにくいことも理由であるが,リーダーシップ養成の
一環として,国内実習中の学生の移動についてチームリーダーのもと班単位で行動させた。
国内生・留学生間,あるいは学年間でコミュニケーションをとらせるため,学生の混合班
を 8 班作り,各チームに 1 人ずつリーダーを任命した。教員が常に帯同しないため遅刻な
どの心配もしていたが,班行動は考えていた以上に機能し,特に目立ったトラブルは無か
った。班行動によって学生各自,特にチームリーダーが責任感をもち行動できた現われで
はないかと思われる。
(5) 三大学リーディングプログラム合同研修
平成 26 年 9 月 8 日から 11 日にかけて,同志社大学「グローバルリソースマネージメン
ト」,広島大学「たおやかで平和な共生社会創生プログラム」と連携して三大学リーディン
グ合同研修が行われた(写真 2-26)。学生の参加者は各大学約 10 名(GA からは 9 名),教職
員多数が参加した。本合同研修は同志社大学の呼びかけにより,本年度は地熱を主テーマ
に別府と福岡にて行われ,地熱施設の見学および各大学教員,企業,JICA 職員によるエネ
ルギー,環境,国際社会についての講義と学生プレゼンテーションが実施された。
まず別府にあるアジア太平洋大学にてキックオフミーティング,プログラム紹介が行
われた。この場で異なる大学の学生からなるグループに分け,最終日の学生プレゼンテー
ションの課題が発表された。同志社大学の和田教授(リーディングコーディネータ)の大変
49
分かりやすいエネルギーに関する講義の後,別府杉乃井ホテル地熱発電所,京都大学地熱
研究施設を見学した。これら興味のある場所の見学に加え,道中,十文字原展望台など展
望の素晴らしい場所での野外講義もあり,夜の食事の際には学生同士が完全に打ち解けて
おり,本研修の成功が確信された。2 日目は八丁原地熱発電所にて日本最大の地熱発電所見
学を行い,その背景および持続可能性について説明を受けた。規模や毎年 200 億円分の化
石燃料を節約しているということが学生の印象に残ったようだった。その後福岡に戻り,
九州大学西新プラザにて九州大学西島潤助教より地熱発電に関する講義,広島大学教員よ
りネパール農村に関する講義が行われた。3 日目は地熱開発で評価の高い西日本技術開発
(株)の会議室にて,丸一日講義が行われた。内容はアフリカに関する講義,国際開発に関
する講義,地熱発電に関する講義,九州大学笹木圭子教授による環境材料に関する講義で
あった。アフリカ,国際開発に関する講義は,この分野で長くまた成果を残しておられる
同志社大学の 2 名の教員及び JICA 職員からのものである。地熱発電に関する講義は,本分
野では権威である西日本技術開発(株)池田直継氏により行われた。産学官の協力により大
変高いレベルの興味深い講義がなされた。最終日は午後から学生のプレゼンテーションが
行われるため,これまでの研修後の夜から最終日の午前中を利用し学生は真剣にプレゼン
テーションの準備を行った。文部科学省職員による挨拶,激励のプレゼンテーションの後,
学生は各グループ 60 分間のプレゼンテーションを行った。3 グループの学生はそれぞれケ
ニア,インドネシア,フィリピンにおける地熱発電の現状と展望について発表を行ったが,
専門分野の基調講演と比較しても遜色ないもので,産学官各参加者からも高く評価された。
写真 2-26.三大学リーディングプログラム合同研修
学生は大変過密なスケジュールの中で毎夜遅くまでディスカッションを行い,また各
種見学や講義にも積極的に参加して研修先や参加教員からの評価も高かった。また異なる
大学と専攻からなるグループにおいても問題なく研修は行われ,最終日のプレゼンは非常
にレベルが高かった。チームワークの大切さ,学生の可能性の高さが伺え,また大きな目
標に対する共同での問題解決能力が培われた事例として参考にするべきだと思われる。3 つ
のリーディングプログラムによる研修と言うのは例が少なく,外部からの評価も高かった
ことから,今後も是非続けていくべきだと思われる。
50
2.5. 研究室ローテーション
グリーンアジアコース生には,通常コースでの修士課程に相当する一貫制博士課程前
期の 2 年の間に,学習・研究活動の一環として研究室ローテーションを課している(図 2-11)。
これは本来の所属研究室(主専攻)とは異なる 2 か所の研究室で,それぞれ 3 か月程度の研
究活動を行うものである。一般の修士課程とは大きく異なるこの制度は,主専攻とは異な
る分野での研究を通じて,プログラムが目標とする広い分野の専門知識とその問題解決の
方法論を習得することに主眼を置いている。そのためコース生が行先研究室を選定するに
あたっては,自分の所属する専攻・専門分野とは異なる分野の研究室を選択することが強
く推奨されている。表 2-15 に 1 期生(平成 24 年度入コース)及び 2 期生(平成 25 年度入コ
ース)が行った研究室ローテーションの実施状況をまとめた。多くの学生が(自分の主専攻
とは緩やかな関連性を持ちつつも)異なる専門の研究室を選択している。特に,理系の学生
でありながら社会系(国際政治学)や環境系(環境・遺産マネジメント)の研究室を選択した
学生も複数おり,コース生たちがプログラムの主旨に理解・同意し,この制度を活用して
積極的に知識と経験を得ようとしてくれていることは,運営側として嬉しい限りである。
Master Course
前期2年間 / 修士課程相当
0
1
Doctoral Course
後期3年間 / 博士後期課程相当
2
3
4
5
Years
Laboratory Rotation
研究室ローテーション
Doctoral Thesis Research
博士研究
図 2-11.グリーンアジアコース生に課される研究活動のスケジュール
氏名
(期)
赤嶺大志
(1)
儀間弘樹
(1)
花田尊徳
(1)
佐藤 幹
(1)
正木悠聖
(1)
松本親樹
(1)
楢﨑 優
(2)
滝沢里奈
(2)
表 2-15.1 期生と 2 期生の研究室ローテーション実施状況
I
II
III(主専攻)
研究室(専攻等)期間
研究室(専攻等)期間
研究室(専攻等)
非線形物性学(量子)
材料強度学(工学)
結晶物性工学(量子)
H25.1-3
H25.10-H26.1
結晶物性工学(量子)
表面物質学(物質)
量子材料物性学(量
H25.1-5
H25.11-H26.2
子)
表面物質学(物質)
先端機能デバイス(量子) 量 子 材 料 物 性 学 ( 量
H25.1-3
H25.10-12
子)
熱環境システム(環境)
国際政治学(GA)
都市建築環境工学(環
H25.3-6
H25.10-12
境)
資源処理・環境修復工学 機能無機材料工学(物質) 資源処理・環境修復工
(資源)
H25.3-7
学(資源)
H25.7-11
資源処理・環境修復工学 エネルギー資源工学(資 岩盤開発・機械システ
(資源)
源)
ム工学(資源)
H25.1-4
H25.9-H26.1
機能分子工学(量子)
高分子材料物性学(物質) 分子物質化学(理学)
H26.5-8
H26.9-12
ナノマテリアル化学(量子) 結晶塑性学(工学)
結晶物性工学(量子)
H26.7-10
H26.10-12
51
田邉和大
(2)
張 建勲
(2)
先端機能デバイス(量子)
H26.10-12
化学反応工学(量子)
H26.10-12
光エレクトロニクス
(量子)
素子材料工学(量子)
国際政治学(GA)
H26.10-12
電離反応工学(量子)
H26.10-12
無機生物圏地球科学(理
学)
H26.4-6
熱エネルギー変換システ
ム学(環境)
H26.10-12
機能無機材料工学(物質)
H26.12-H27.3
フォトニックシステム
(量子)
先端機能デバイス(量子)
H26.10-12
フォトニックシステ
ム(量子)
高エネルギープラズ
マ力学(先端)
資源処理・環境修復工
学(資源)
Anis Syazwani
Binti Shuhaimi
(2)
Zayda Faizah
Zahara(2)
Tarek Mahmoud
Atia Mostafa(2)
Ryan Imansyah
(2)
高分子材料物性学(物質)
H26.8-11
熱エネルギー変換システ
ム学(環境)
H26.5-8
先端機能デバイス(量子)
H26.3-9
国際政治学(GA)
H26.8-12
資源処理・環境修復工学
(資源)
H26.4-6
環境・遺産マネジメント
(芸術工学)
H26.5-8
国際政治学(GA)
H26.7-11
機能無機材料工学(物質)
H26.6-10
高分子材料物性学(物質)
H26.6-9
量子材料物性学(量
子)
光エレクトロニクス
(量子)
Azizah Intan
Pangesty(2)
高分子材料物性学(物質)
H26.1-H27.3
有機合成化学(GA)
H26.10-12
先端材料強度学(物
質)
Pennapa
Tungjiratthitikan
(2)
Khanam Marzia
(2)
反応創造化学(物質)
H26.8-10
分子計測学(物質)
H27.2-
有機合成化学(GA)
熱環境システム(環境)
H26.5-8
化学反応工学(量子)
H26.11-H27.1
熱エネルギー変換シ
ステム学(環境)
Pal Animesh
(2)
化学反応工学(量子)
H26.5-8
素子材料工学(量子)
H26.12-H27.2
熱エネルギー変換シ
ステム学(環境)
Sendy Dwiki
(2)
資源処理・環境修復工学 応用地質(資源)
(資源)
米田亮太
(2)
濱田夏彦
(2)
田中雅仁
(2)
化学反応工学(量子)
化学反応工学(量子)
岩盤開発・機械システ
ム工学(資源)
量子:総合理工学府量子プロセス理工学専攻,物質:同物質理工学専攻,環境:同環境エネルギー
工学専攻,先端:同先端エネルギー理工学専攻,資源:工学府地球資源システム工学専攻,GA:
グリーンアジア国際リーダー教育センター,工学:資源以外の工学府,理学:理学府,芸術工学:
芸術工学府
2.6. シンポジウム,フォーラム
(1) アフタヌーンコロキウム
アフタヌーンコロキウムとは,主に金曜日の午後にコース生および関連教員が集い,
提題者が提供する話題を巡って討論する場である。講義や演習の形式を採ることにはこだ
わらずに,より自由な雰囲気で教師も学生も同等の立場に立って,多方面から提供される
話題に関して討論する。コロキウムで取り上げられる話題は「環境」
「アジア」
「国際化」
「学
52
際」等々に緩やかに繋がり,提題者である教員の専門や興味に近いものなど,特に限定を
加えることなく多様な内容を論じる(表 2-16)。
アフタヌーンコロキウムの目的は以下のようなものである。
1.
自然科学及び人文科学に関する包括的かつ基本的な知識を得て,多様な問題につ
いて議論できる能力を涵養すること。
2.
教師を交えた議論を行う中で批判的な思考能力を身につけること。とりわけ講義
において得られた情報を論理的に分析し,独自の考察を加えた上で多様な問題に
対応する能力を養うこと。
3.
コミュニケーション能力を高め,現代のグローバルな諸問題に対して論文や対話
によって自身の考えを論理的かつ明確に発しする能力を養うこと。
講義の内容は基本的に提題者が自由に決めることができる。例えば,自身の経験をも
とに専門以外のことについて話してもよく,その場合でも学生には参考になると思われる。
専門分野に特化して講義を行う場合であっても,提題者の研究内容についてパワーポイント
等を使って部外者にも分かりやすく説明する形のものが多かった。たとえば文学部哲学科の
教授は,自身の研究を学生に分かる程度に噛み砕いて説明していた。また他の担当者は,自
身の研究領域とは異なる文学・歴史に関する話をしていた。
形式として以下のように実施した。
1.
平成 26 年度以降は英語で行っている。
2.
当日学生には資料としてパワーポイントのコピーを配布している。講義室後方の
席に座った学生にはパワーポイントが見にくいためであり,また学生の理解を深
めるためである。
3.
コロキウムの目的は教員と学生との間の活発なコミュニケーションを通じて,異
分野への興味関心を高めるという点にある。したがって従来の一方通行的な講義
形式は 2 時間の講義時間中 1 時間程度に抑え,残りの 1 時間は学生間のディスカ
ッションおよび学生によるプレゼンテーションなどに割り当てるようにあらかじ
め担当者に伝え,より活気のある講義を目指した。基本的には、以下の諸点に留
意して進めるように配慮した。
(a) 講義をはじめる前に,あらかじめディスカッションのテーマを 2 つ程度学生に
示しておく。
(b) テーマに関連する講義を行った後,学生をいくつかのグループに分けてテー
マを選択させ,議論させる。
(c) 各グループより代表者によるプレゼンテーションおよび質疑応答を行う。
平成 26 年度より,コロキウムを履修することによって在学中の時期を問わず 10 回出
席し,毎回規定の分量のサマリーを提出して評価を受ければ「社会システム学(III)」として
2 単位が与えられることになった。サマリーは A4 紙一枚に 250 語以上の英文で書いて講義
の日から 3 日以内(翌週の月曜日まで)に事務局に提出せねばならない。これは 10 点満点で
評価し,規定の 10 回分の成績を平均して最終成績とした。
53
実施日
開催場所
H25.4.5
筑紫
H25.4.19
筑紫
H25.6.7
伊都
H25.8.23
筑紫
H25.9.13
筑紫
H25.9.27
筑紫
H25.12.6
筑紫
H26.4.11
筑紫
H26.4.18
筑紫
H26.5.9
筑紫
H26.5.23
筑紫
H26.6.27
筑紫
H26.7.25
筑紫
H26.8.8
筑紫
H26.8.22
筑紫
H26.8.27
筑紫
H26.9.9
伊都
H26.9.24
伊都
H26.9.26
筑紫
H26.10.6-10
西新
H26.10.15
筑紫
表 2-16.アフタヌーンコロキウム実施状況
話題提供者氏名(所属)
テーマ
谷本 潤(九大院総理工)
小川玲子(九大院法)
藤田敏之(九大院経済)
恒吉隆裕(福岡県商工部国際
戦略総合特区推進室室長)
円谷裕二(九大院人文科学)
な ぜ 英 語 を 学 ば ね ば な ら な い か ―Lingua
franca(リングア・フランカ)とローカル言語
「少子高齢化と移民の受け入れ」
「超高齢社会の
介護はどうなる?」など
ゲーム理論と環境問題
近藤加代子(九大院芸術工)
グリーンアジア国際戦略特区;背景,現況,未
来
「自然とは何か。or 自然と文化の関係。or 自然
科学と人間科学。」
Life Style and Energy Consumption Behavior
豊島利仁(住友金属鉱山(株)
資源事業本部技術部)
Mining Development: Working in Harmony with
Nature
浜本貴一(九大院総理工)
大瀧倫卓(九大院総理工)
Multi-Mode Multiplexing Technology for Future
Internet Data Traffic
Mining and Its Environmental Impact through
History in Japan
Physics of Sustainable Energy
西田 稔(九大院総理工)
Merits and Demerits of Citation
尹 聖昊(九大先導研)
Carbon Saves the Earth!
伊藤一秀(九大院総理工)
Indoor Environment
萩島 理(九大院総理工)
Urban Climatology and Urban Planning
岡田重人(九大先導研)
Revolution in Material
渡邉公一郎(九大院工)
The 2nd Forum of Integrated Research and Education Center for Energy Production,
Storage, Saving, and Transfer Technologies: Energy Conversion and Storage I
11th Inamori Frontier Research Symposium
Jayanta Bhattacharya(Indian
Institute of Technology,
Kharagpur)
宮崎隆彦(九大院総理工)
Environmental Problems with the Development of
Resources: Acid Mine Drainage
Global Warming and Air Conditioning
Japan-France CDV Diamond Power Device Workshop
谷本 潤(九大院総理工)
Modeling Human-Environment-Social System and
Evolutionary Game Theory
54
H26.11.27-28
筑紫
H27.1.23
筑紫
H27.1.30
筑紫
H27.3.5
筑紫
H27.3.6
筑紫
H27.3.27
筑紫
H27.3.30-31
筑紫
第1回統合創・省・基盤技術エネルギー教育研究拠点国際シンポジウム
吉武 剛(九大院総理工)
What Are Required for Renewable Energies?
年光昭夫(京大化研)
Intellectual Property for Innovation
堀江正樹(台湾・国立清華大)
Conjugated Polymers for Use in Organic Electronic
Devices
Soft Crystals Composed of Supermolecules
堀江正樹(台湾・国立清華大)
Kandadai Srinivasan(西オース
トラリア大)
吉中昌國(アルク教育社)
Business Thermodynamics
Cultural Diversity in the Global Era: An
Intercultural Communication Workshop for Students
in the Green Asia Program
写真 2-27.アフタヌーンコロキウム(平成 27 年 3 月 5 日の堀江正樹准教授の講義)
(2) グリーンアジア国際セミナー(International Forum for Green Asia)
① International Forum for Green Asia 2013
平成 25 年 11 月 29 日,30 日の両日に筑紫キャンパスの総合研究棟(C-Cube)筑紫ホール
において,グリーンアジア国際セミナーを開催した(図 2-12,2-13,写真 2-28)。本セミナ
ーはグリーンアジアプログラムの国際セミナーと,毎年秋に開催されている「総理工セミ
ナー」(総合理工学府主催)との合同セミナー(International Forum for Green Asia 2013)として
実施した。当プログラムコース生は一貫制博士課程 4 年後期の国際演習 B2 において,国際
セミナーを企画・準備・運営することが予定されており,1 期生はまだ 2 年生ではあったが,
本セミナーは国際演習を見据えての実施となった。今回は初めての試みということもあり,
全体としてのテーマを絞らずに政治,経済,環境,科学技術などに関してグローバルな視
点から広く学ぶための会とした。また英語版の Proceedings を発行した(図 2-12)。
29 日午後は中島英治総合理工学府長の挨拶と総合理工学府の紹介,原田明プログラム
コーディネーターからの当プログラムの説明の後,企業の第一線で活躍されているお二方
に講演いただいた。九州電力(株)の原田達朗博士には電力システムの改革,電力自由化,
再生可能エネルギーなどの観点から,国内の電力エネルギーの現状と将来について,また
宇部興産(株)の大田正芳氏には,スペインとタイを例に総合化学メーカーとしての UBE グ
55
55
ループの
ループの海外進出
海外進出の実際と成功
成功の鍵などについて
などについて,
,それぞれお
それぞれお話しいただいた
しいただいた。
翌 30 日は午前中
午前中に環境
環境をキーワードとしたセッションを
をキーワードとしたセッションを行
をキーワードとしたセッションを行った。まず
まず本セミナー
セミナー唯一
の学生講演者
学生講演者(博士後期課程在学中
博士後期課程在学中)である
博士後期課程在学中 である京都大学大学院地球環境学舎
京都大学大学院地球環境学舎
京都大学大学院地球環境学舎の
の前奈緒子氏
氏より,
家電や
や車を例に消費者
消費者の環境行動
環境行動の評価法
評価法ついての
ついての研究発表があった
があった。続
続いて九州大学大
九州大学大
学院経済学研究院
学院経済学研究院の藤田敏之
敏之教授には,
,ゲーム理論
理論と環境問題
環境問題の多国間協定
多国間協定のシミュレー
のシミュレー
ションなどについて
ションなどについて講演いただいた
いただいた。
昼食休憩
昼食休憩を挟
挟み,午後からのセッションはグローバル
からのセッションはグローバル をキーワードとした。
からのセッションはグローバル化をキーワードとした
をキーワードとした 双日
双日(株)
顧問の
の田邉弘幸氏
氏にはご自身
自身の豊富な海外経験
海外経験を基
基に,世界の
の変遷とグローバル
とグローバル化,
,その
中での
での総合商社の
の役割などについて
などについて特別講演
特別講演としてお
としてお話いただいた
いただいた。九州大学大学院比較
九州大学大学院比較
社会文化研究院
社会文化研究院の
の施光恒准教授
准教授には,現在
現在のグローバル
のグローバル化について
について疑問を
を呈し,再評価
再評価す
る立場
立場から講演いただいた
いただいた。
。
最後
最後に「政治経済
政治経済とグローバリズム
とグローバリズム
とグローバリズム」をテーマにパネルディスカッションをおこなっ
をテーマにパネルディスカッションをおこなっ
た。前氏
前氏を除く
く 5 名の講演者
講演者がパネリストとして
がパネリストとして登壇
登壇し,いくつかのテーマに
いくつかのテーマに対して
いくつかのテーマに して自由
に発言
発言いただき,
,また会場とも
とも意見交換
意見交換がなされた
がなされた。司会進行
司会進行は谷本潤プログラム
プログラム副
副コー
ディネーターが
ディネーターが務
務めた。
講演
講演のうち
のうち 4 件とパネルディスカッションは
とパネルディスカッションは
とパネルディスカッションは日本語
日本語で,講演
講演の 4 件が
が英語で行われた
われた
が,本
本セミナーは
セミナーは一般にも案内
案内されており
されており,また当
当プログラムの
プログラムの海外コア
コア連携大学より
より教
員及び
び学生を招聘
招聘していたことから
していたことから,日本語
日本語・英語
英語の同時通訳付
同時通訳付きで実施
実施された。そのた
そのた
め日本語
日本語での講演
講演,パネルディスカッションに
パネルディスカッションに
パネルディスカッションに対しても
しても,海外
海外からの参加者
参加者から活発
活発な質
問,意見
意見が出されていた
されていた。
なお
なお海外コア
コア連携大学の
の教員は学生数名
学生数名ずつと
ずつと来日,本フォーラムと
フォーラムと第
フォーラムと 10 回新炭素資
源学国際
源学国際シンポジウム
シンポジウム(本プログラム
プログラム共催
共催,4.3.)に参加
参加してもらった
してもらった。さらに
さらに教員には
には当プ
ログラムの
ログラムの国際アドバイザリーボード
アドバイザリーボード(
アドバイザリーボード(IAB)ミーティング
ミーティング(12 月 1 日,4.1.
4.1.)にも出席しても
しても
らった
らった。
本
本セミナーは
セミナーは国内外から
から 132 名の参加者
参加者があり
があり,盛会のうちに
のうちに終わることができた
わることができた
わることができた。
図 2-12.International
International Forum for Green Asia 2013 のポスター
のポスター(左)と Proceedings(右)
Proceedings
56
図 2-13.International Forum for Green Asia 2013 のプログラム
57
写真 2-28.International Forum for Green Asia 2013
② International Forum for Green Asia 2014
平成 26 年度のグリーンアジア国際セミナーは,11 月 28 日,29 日の両日で昨年と同じ
筑紫キャンパス総合研究棟(C-Cube)筑紫ホールにて開催された(図 2-14,2-15)。昨年に引
き続き総理工セミナーとの合同セミナーとして実施したが、本年は新しい試みとして,学
生によるポスター発表と学生セッションを行った。また英語版の Proceedings を発行した(図
2-14)。
International Forum for
Green Asia 2014
2014 グリーンアジア国際セミナー・総理工セミナー
November 28 (Friday) & 29 (Saturday), 2014
C-Cube (1F) Chikushi Hall
Chikushi Campus, Kyushu University
November 28 (Friday)
14:00 Opening Remarks
Prof. Hideharu Nakashima
Dean of Interdisciplinary Graduate School of Engineering Science,
Kyushu University
Introduction of the Green Asia Program
Prof. Akira Harata
Interdisciplinary Graduate School of Engineering Science, Kyushu University
Program Coordinator of the Green Asia Program
14:30 Invited Lecture
Prof. Tetsuo Hayashi
15:30 Invited Lecture
Dr. Mitsuaki Ueda
Interdisciplinary Graduate School of Engineering Science, Kyushu University
Institute of Advanced Research and Education, Doshisha University
16:30 Poster Session
17:30 Banquet
November 29 (Saturday)
10:00 Invited Lecture
Prof. Yukihiro Shimatani
11:00 Keynote Address
Mr. Seiichiro Ikeda
Graduate School of Engineering, Kyushu University
CHIYODA CORPORATION, Vice President, Gas & LNG Project Operation No.1
CHIYODA CCC ENGINEERING LTD, Board Director & Project Operations Manager
13:15 Keynote Address
Prof. Kwadwo Osseo-Asare
Pennsylvania State University, USA
Nelson Mandela African Institute of Science and Technology, Tanzania
14:15 Student Session
Contact Information:
お申込み・お問合せ先
C-Cube (1F) Chikushi Hall
Chikushi Campus, Kyushu University
Green Asia Education Center Office
グリーンアジア国際リーダー教育センター事務局
http://www.tj.kyushu-u.ac.jp/leading/en/index.html
Email: [email protected]
Tel: 092- 583 -7823 / 7825 Fax: 092- 583 - 8909
図 2-14.International Forum for Green Asia 2014 のポスター(左)と Proceedings(右)
58
International Forum for Green Asia 2014
2 0 1 4 グ リ ー ン ア ジ ア 国際セ ミ ナ ー ・ 総理工セ ミ ナ ー
DATE:
November 28 (Fri) & 29 (Sat), 2014
VENUE:
C-Cube (1F) Chikushi Hall at Chikushi Campus, Kyushu University
NOVEMBER 28 (FRI)
14:00
Opening Remarks
Prof. Hideharu Nakashima Dean of the Interdisciplinary Graduate School of Engineering Sciences, Kyushu University
中島 英治 教授
九州大学大学院総合理工学研究院長
Explanation about International Forum for Green Asia 2014
Interdisciplinary Graduate School of Engineering Sciences, Kyushu University
Prof. Jun Tanimoto
Vice-Coordinator of the Green Asia Program
谷本 潤 教授
九州大学大学院総合理工学研究院・ グリ ーン ア ジ ア プ ロ グラ ム副コ ーディ ネータ ー
Introduction of the Advanced Graduate Program in Global Strategy for Green Asia (Green Asia Program)
Interdisciplinary Graduate School of Engineering Sciences, Kyushu University
Prof. Akira Harata
Coordinator of the Green Asia Program
原田 明 教授
14:30
九州大学大学院総合理工学研究院・ グリ ーン ア ジ ア プ ロ グラ ムコ ーディ ネータ ー
Invited Lectures
Thermal and Ventilation Network Simulation for Passive Solar Houses
熱・ 換気回路網によ る パッ シ ブ 住宅の温熱環境シ ミ ュ レ ーシ ョ ン
Interdisciplinary Graduate School of Engineering Sciences, Kyushu University
Prof. Tetsuo Hayashi
林 徹夫 教授
15:30
九州大学大学院総合理工学研究院
Invited Lectures
Attempts of Cross-cutting Education: The Case of Doshisha University’s Global Resource Management
(GRM) Program
分野横断的教育の試み: 同志社大学グロ ーバル・ リ ソ ース ・ マ ネジ メ ン ト ・ プ ロ グラ ムのケース
Institute of Advanced Research and Education, Doshisha University
Dr. Mitsuaki Ueda
上田 光明 博士
16:30
Poster Session
17:30
Banquet
10:00
Keynote Address
同志社大学高等研究教育機構
NOVEMBER 29 (SAT)
The Quest for Transparent Earth: Resource Development in Africa and the Human Capacity Challenge
Prof. Kwadwo Osseo-Asare
Pennsylvania State University, USA
Nelson Mandela African Institute of Science and Technology, Tanzania
11:00
Keynote Address
Chiyoda Corporation Globalization
エ ン ジ ニ ア リ ン グ企業の海外展開事例
Mr. Seiichiro Ikeda
CHIYODA CORPORATION, Vice President, Gas & LNG Project Operations No.1
CHIYODA CCC ENGINEERING LTD, Board Director & Project Operations Manager
池田 誠一郎 氏
千代田化工建設株式会社 執行役員海外ガス ・ LN G第一事業本部
千代田・ CCCエ ン ジ ニ ア リ ン グ会社 取締役兼プ ロ ジ ェ ク ト オぺレ ーシ ョ ン 本部長
13:15
Student Session
16:00
Closing Remarks
図 2-15.International Forum for Green Asia 2014 のプログラム
59
28 日午後は中島英治総合理工学府長の挨拶,原田明プログラムコーディネーターから
の当プログラムの紹介,及び谷本潤副プログラムコーディネーターからの本セミナーの主
旨説明に続いて,大学において研究教育活動をされているお二方に講演いただいた(写真
2-29)。九州大学総合理工学研究院の林徹夫教授には,パッシブ住宅の温熱環境シミュレー
ションについて基本的な事柄からわかりやすく解説いただいた。また同志社大学高等研究
教育機構の上田光明博士には,同大学のリーディングプログラム「グローバル・リソース・
マネジメント」における教育活動の実施例などについて紹介いただいた。その後会場を
C-Cube 3 階のホールに移し,当プログラムの一貫制博士課程 3 年生及びグリーンアジアリ
サーチアシスタント採用学生(GA-RA 生)のポスター形式による研究発表が行われた(写真
2-30)。発表件数は計 14 件とそれほど多くなかったが,活発な議論,質疑応答がなされて
いた。
写真 2-29.2014 International Forum for Green Asia の招待講演(左:林徹夫教授,右: 上田光明博士)
写真 2-30.ポスターセッション
翌 29 日は午前中に 2 件の基調講演をお願いした(写真 2-31)。ペンシルバニア州立大学
/Nelson Mandela African Institute of Science and Technology の Kwadwo Osseo-Asare 教授には,
アフリカにおける資源開発の現状と問題について,千代田化工建設(株)/千代田・CCC エン
ジニアリング会社の池田誠一郎氏にはエンジニアリング企業の海外展開について,それぞ
れ解説,紹介いただいた。
60
写真 2-30.2014 International Forum for Green Asia の基調講演(左: Kwadwo Osseo-Asare 教授,右:
池田誠一郎氏)
午後からは学生セッションを実施した(表 2-17,写真 2-32)。当プログラムコース生と
GA-RA 生は事前に 4 つにグループ(各グループ 13 名ないし 14 名)に分けられ,グループリ
ーダーの GA-RA 生からは事前にテーマとキーワードが提出されていた。当日はこれらにつ
いてグループ毎で議論,意見交換をし,まとめたものを代表者が口頭発表した。なお学生
セッションとポスター発表は、当プログラムの「国際演習 B」及び本会共催の G-COE プロ
グラム「新炭素資源学」の「国際演習」の一部としても行われた。
本フォーラムには昨年に引き続き海外コア連携大学の担当教員(一部代理出席)を招待
し,参加してもらった。また学生セッションのグループミーティングの時間と並行して,
第 4 回国際アドバイザリーボードミーティングも開催された(4.1.国際連携)。
グループ
A
B
C
D
表 2-17.2014 International Forum for Green Asia の学生セッション
議題とキーワード,ポイント
Resource, Development and Conservation
1. How to be connected to each other.
2. Development and conservation, which has the priority?
3. How to achieve the balanced use and growth without pollution.
Heat Transfer Types for Passive Solar Home System
1. Solar energy
2. Convective heat transfer
3. Radiative heat transfer
4. Passive solar building design
Life, Education, Economy and Water Problems
1. What is water issue particularly in developing country?
2. Why dose those kind of problem exist? For example, the reason for flood occurring.
3. What is the role of government and international organization, such as WHO, JICA,
in this problem?
How to Manage the (Natural) Resources in Developing Countries?
1. Poverty-environmental linkages
2. Rural livelihoods and natural resources degradation
3. Environmental education policy
61
写真 2-32.学生セッションの様子
(3) 新炭素資源学国際シンポジウム
平成 25 年 12 月 2 日に筑紫キャンパスの総合研究棟(C-Cube)筑紫ホールにおいて,第
10 回新炭素資源学国際シンポジウムが開催された。本シンポジウムは九州大学 G-COE プロ
グラム「新炭素資源学」が主催し,グリーンアジアプログラムは共催で参加したが,前述
のグリーンアジア国際フォーラム(International Forum for Green Asia 2013)に招待した当プロ
グラムの海外コア連携先の学生,及びプログラムコース生全員が本シンポジウムの学生セ
ッションに参加し,両イベントは合同に近い形で実施された。
シンポジウムでは,まず 5 つの研究分野(バイオマス,ディーゼル車排ガス浄化,熱電
変換素子,風力発電,核廃棄物除去材料)に関連する講演が行われた。昼食時の G-COE プ
ログラム生のポスター発表を挟み,午後からは講演内容にリンクするテーマについて学生
のグループミーティングとプレゼンテーションが実施された(写真 2-33,表 2-18)。
写真 2-33.学生セッションの様子
表 2-18.第 10 回新炭素資源学国際シンポジウムの講演と学生セッション
分野と講演
学生セッションのテーマ
1. バイオマス
Xun Hu 博士(オーストラリア・カーティ
ン大学)
Green Furls and Biomass: Research &
Development in Fuels and Energy
Technology Institute in Curtin University
グループ A-1 & A-2
(1) Availability of biomass and scheduled production
of fuels and energy
(2) Present situateion and future of biomass
utilizeation dependent on the area (East Asia,
South-Asia, Oceania, India etc.) and courty
62
2. ディーゼル車排ガス浄化
Hong He 教授(中国科学院)
After Treatment System in Heavy Duty
Diesel Vehicle Pollution Control
3. 熱電変換素子
Ngo Van Nong 博士(デンマーク工科大
学)
High-Temperature Thermoelectric Materials
and Devices for Waste Heat Recovery
4. 風力発電
Peter Jamieson 博士(英国・ストラスクラ
イド大学)
The Development of Wind Energy
Technology
5. 核廃棄物除去材料
Sridhar Komarneni 教授(米国・パンシルバ
ニア州立大学)
Synthetic and Modified Clays for Uptake of
Nuclear Waste Ion
グループ B-1 & B-2
(1) Automobiles and air quality problem
(2) Cross-border polluteon
and
international
cooperation
グループ C-1 & C-2
(1) How to use thermoelectronic materials in daily
life?
(2) Cost-effective production and efficient use of
thermoelectronic materials and devices
グループ D-1 & D-2
(1) Histrical trend and perspectives of wind turbine
technology
(2) Conditions to apply innovative technologies to
commercial wind turbine
グループ E-1 & E-2
(1) Histrical
and
current
environmental
contamination example (water, soil and air) and
its solution to remediation
(2) Proposal of compatibility of industrialization and
environmental protection on fast economyc
growth in developing country
(4) グリーンアジアレクチャーシリーズ
グリーンアジアに関連する様々な分野,トピックスについて学び,議論する場として,
講義あるいはミニシンポジウム形式の会を「グリーンアジアレクチャーシリーズ」として
不定期に開催している。平成 25 年度,26 年度に実施したものは以下のとおり。
Material Innovation for Green Asia
平成 25 年 9 月 9 日(伊都キャンパス)
Prof. K. Osseo-Asare(Pennsylvania State University, USA)
“All Wet or Not: Explorations in Aqueous Processing System”
Prof. A. Nguyen(University of Queensland, Australia)
“Flotation Chemistry
Prof. M. Nicol(Murdoch University, Australia)
“Prospects for Energy Minimization in the Electrowinning of Base Metals
Seeds and Needs of Energy Storage Devices in India
平成 25 年 11 月 22 日(筑紫キャンパス)[新炭素資源学フォーラムと共同開催]
Dr. S. Gopukumar(Central Electrochemical Research Inst. (CSIR), India)
“Solar Chargeable New Lithium Ion Batteries”
Prof. A. Shukla(Indian Inst. of Science (IISc), India)
“Essentials of Electrochemical Capacitors”
63
Computational Chemistry, Analytical Chemistry, and Electrochemistry
平成 26 年 2 月 8 日(筑紫キャンパス)[新炭素資源学フォーラムと共同開催]
小口多美夫教授(大阪大学)
“First-Principles Calculation: Can It Save the Earth?”
脇田久伸教授(佐賀大学)
“What is an EXAFS?”
(5) 共催,関連イベント
本プログラムは上記以外にも,他のプログラム等が主催するイベントに共催等の形で
積極的に関与している。平成 25 年度,26 年度に実施されたものは以下のとおり。
グリーンアジアのためのミネラルプロセッシングと環境修復[共催]
(資源・素材 2013(札幌)内企画発表)
平成 25 年 9 月 3 日(札幌)
フクオカ サイエンスマンス[共催]
平成 25 年 11 月 9 日,10 日(福岡)
Cross Straits Symposium on Energy and Environmental Sciences and Technology
(CSS-EEST)(3 校セミナー)[共催]
平成 25 年 11 月 25 日〜27 日(筑紫キャンパス)
第 1 回エネルギー基盤センターシンポジウム[後援]
平成 26 年 3 月 13 日(筑紫キャンパス)
第 1 回エネルギー基盤センター講演会[連携]
平成 26 年 6 月 4 日(筑紫キャンパス)
第 11 回稲森フロンティア研究講演会[協賛]
平成 26 年 9 月 9 日(伊都キャンパス)
第 61 回有機金属化学討論会[後援]
平成 26 年 9 月 23 日〜25 日(病院キャンパス)
日仏 CVD ダイヤモンドパワーデバイス研究会[共催]
平成 26 年 10 月 6 日〜10 日(福岡,大分)
フクオカ サイエンスマンス[共催]
平成 26 年 11 月 1 日,2 日(福岡)
64
エネルギー基盤技術国際教育研究センター講演会[協賛]
平成 26 年 11 月 21 日(筑紫キャンパス)
統合創・省基盤技術エネルギー教育研究拠点国際シンポジウム[共催]
平成 26 年 11 月 27 日(筑紫キャンパス)
2015 先導物質化学研究所国際シンポジウム[共催]
平成 27 年 1 月 28 日(筑紫キャンパス)
JSPS 頭脳循環国際ワークショップ[共催]
平成 27 年 3 月 2 日(筑紫キャンパス)
2.7. 博士論文研究資格認定試験
本プログラムの特徴の一つがステージゲート制である。一般的な博士課程教育(修士課
程を含む)では,修了および博士の学位取得に必要とされる大きな関門は修士論文・博士論
文それぞれの学位審査の計 2 回であるが,本プログラムではそれぞれ主旨の異なる計 5 回
の関門(ステージゲート)が設けられており,これによって教育の水準・質の継続的な保証
を目指している。そしてプログラムコース生が初めて挑むステージゲートが,入学後約 2
年経過時に行われる博士論文研究資格認定試験(Qualifying Examination,QE)である。時期
的には一般学生の修士論文試問会と同時期であるが,その目的・内容は大きく異なってい
る。修士論文試問会は修士の学位授与審査であるのに対して,QE は今後のカリキュラムを
履修する上での基礎的能力を身に付けているか(身に付けてきたか)を認定する試験である
(但し,後述するように QE 不合格者に対する考慮として,QE は修士の学位授与審査を一部
内包している)。このため QE で課される項目は,質・量ともにかなり高い。まずコース生
が QE に臨むためには「必修単位を 40 単位以上取得」という受験要件を満たさなければな
らない(一般学生の修士修了要件は「30 単位以上取得」)。受験要件を満たしたコース生は,
QE で(1)講究(研究室ローテーション)の成果発表報告,(2)プラクティススクール(インタ
ーンシップ)の成果発表報告,(3)小論文試験,(4)専門科目筆記試験が課せられる。もちろ
んこれら試験は全て英語で行われる。これらに加えて(5)取得単位の GPA が 3.0 以上という
要件を満たして,晴れてコース生は QE に合格し,続く 3 年間のカリキュラム(一貫制博士
課程後期)に進級できることになる。QE の受験要件と合格要件を以下に示す
受験要件
次の単位を含む 40 単位以上の修得
(1)
実践英語科目
3 単位
(2)
実践産業科目
3 単位
(3)
インターンシップ科目 2 単位
(4)
研究科目
(5)
社会・環境・経済システム学科目から 10 単位
(6)
主専門・拡張専門科目から 16 単位(内部進学生については入コース前に履修
6 単位
65
した専門系科目を含む)
メンターによる所見書の提出
合格要件
(1)
上記 40 単位の GPA が 3.0 以上
(2)
講究(研究室ローテーション)の成果を口頭発表
(3)
プラクティススクールの成果を口頭発表
(4)
小論文
(5)
自身の専門分野に関する筆頭試験
プログラムでは 1 期生(平成 24 年度年入コース)の QE 実施に先立ち,QE 実施に係る詳
細な検討とルール作りが行われた。QE はいわば「進級試験」であるので「不合格」となる
コース生が現れることも想定され,不合格となってしまった学生に対しては,今後の学位
授与や進路等について道筋を示す必要がある。こうした点やその他の詳細なルールに関し
て,プログラム担当者内で認識の確認と明確化を行った。これらの内容は QE 実施のスケジ
ュールと合わせて「QE 実施要項」としてまとめ,関係教職員・コース生に配布した(写真
2-34)。ちなみに,QE で具体的に試験として課せられる項目は上述の(1)~(4)であるが,
このうち「(2)プラクティス・スクールの成果発表報告」は,可能な学生に関しては時期を
前倒しして(QE の前年 10 月)に行っている。この理由には,多くのコース生が夏季にプラ
クティス・スクールに参加しているため成果発表まで時間が空きすぎるという点と,2 月に
行う QE での実施項目を少なくして学生・スタッフの負担を分散したいという点の 2 点が挙
げられる。
写真 2-34.平成 25 年度 QE 実施要項
以下に 1 期生と,2 期生(平成 25 年度年入コース)の内部進学生に対して実施した QE
の詳細について記載する。
(1) 平成 25 年度 QE(1 期生対象)
1 期生の QE は平成 26 年 2 月 24 日に丸一日かけて行われた。
まず午前中に「(1)講究(研
究室ローテーション)の成果発表報告」が実施され,2 年間に実施した異なる 3 研究室での
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研究全般について発表された(写真 2-35)。発表時間は 15 分,質疑応答時間は 10 分と,一
般的な修士論文試問会よりも長めとした。聴講者からは研究に関する厳しい質問が飛び交
った。午後からは「(3)小論文試験」
「(4)専門科目筆記試験」が行われた。小論文のテーマ
の詳細について本稿では伏せておくが,この 2 年間の勉学・研究を総合的に振り返るよう
な内容とした。
結果は速やかに採点・集計され,翌々日の査定会議にて結果が話し合われ,第 1 生の 6
名については全員が合格の判定が下された(表 2-19)。それぞれに対して評価に違いはある
ものの,皆今後もコース生として学ぶ上での基礎的素養は十分に備えているとの判断で,
今回の QE は締めくくられた。
写真 2-35.平成 25 年度 QE(1 期生)
表 2-19.1 期生の QE 対象者,受験者および合格者
専攻
対象者
受験者
合格者
総理工・量子プロセス理工学専攻
3
3
3
総理工・環境エネルギー工学専攻
1
1
1
工・資源システム工学専攻
2
2
2
計
6
6
6
第 1 回の QE に関する所感をまとめると,1 期生の 6 名は皆もともと良い素質を有して
いたが,この 1 年半でその素質を大きく伸ばしていることが如実に感じられた。特に英語
プレゼンテーションの能力向上が顕著であった。小論文に関しては,修士 2 年生レベルと
しては語学力・論理性ともにかなり上手く書けていたが,全体的に粗削りな印象を受けた
ので今後のさらなる上達を期待したい。プログラム運営体制の反省として,プログラム開
始後初めての QE という事もあり,QE の前後に各種講義や海外実習等が立て続けに予定と
して組まれ,コース生には過密スケジュールを強いてしまった。これは QE のみならず今後
のプログラム運営における大きな問題点と認識しており,速やかな改善が必要と認識した。
(2) 平成 26 年度 QE(2 期生内部進学者対象)
2 期生のうち内部進学者の QE は平成 27 年 2 月 12 日に行われた(写真 2-36)。今回は新
たに,博士後期課程から本プログラムに参加する編入コース生の募集も行った。編入コー
ス生については,通常のコース生との間で入コースの難易度に著しい差が生じないよう注
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意深くルールを制定した。即ち,編入希望学生に対しても QE 受験並びに編入コースの最低
限の要件として上述の QE 受験・合格要件をそのまま(「インターンシップ参加」や「人文
社会系の単位を一定数以上取得」も含めて)課している。もちろん非グリーンアジアコース
生が履修してきた科目は本プログラムで用意しているものとは当然異なるので,単位区分
の読み替え等の配慮は行った。今回は九大総理工の「エネルギー環境理工学グローバル人
材育成のための大学院協働教育プログラム(通称:キャンパスアジア EEST)」を修了し,修
士のダブルディグリーを持つ 2 名の学生が本コースへの編入を希望し,6 名のグリーンアジ
アコース生とともに QE に臨んだ(表 2-20)。
写真 2-36.平成 26 年度 QE(2 期生内部進学者)
表 2-20.2 期生の内部進学者の QE 対象者,受験者および合格者
専攻
対象者
受験者
合格者
4 (1)
5 (1)
6 (1)
総理工・量子プロセス理工学専攻
1
1
1
総理工・物質理工学専攻
1 (1)
1 (1)
1 (1)
総理工・環境エネルギー工学専攻
1
1
1
工・資源システム工学専攻
計
9 (2)
8 (2)
7 (2)
()は編入希望者
今回の QE では,残念ながら 1 名の学生が合格基準に達しなかったため不合格となった。
QE には不合格となったものの,前年に定めた学位授与・進路選択のルールに沿って当該学
生には修士号が授与され,また本人の意思により通常の博士後期課程へと進学している。
運営体制としては,前年の過密スケジュールの反省を踏まえ早い段階での準備を進め
た結果,コース生・スタッフともに前年ほどの負担がかかることは無かった。次回は 2 期
留学生の QE が 2015 年夏に控えている。留学生の QE は初めてであるため,1 期生の時のよ
うな過密スケジュールが生じることの無いように 2015 年 4 月現在早々に準備を始めている。
2.8. 成績管理
コース学生が入コース以後に受講した授業科目の成績,メンターによるレポート(指導
報告書),コース生による提出物(実践産業科目のレポート等)は,コース生毎にポートフォ
リオとして整理,管理している(写真 2-37)。コース生の提出物についてはプログラム教員
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による英文添削等の履歴がわかるようにしている。
写真 2-37.ポートフォリオ
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