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例会 抄録集(PDF形式 3074キロバイト)

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例会 抄録集(PDF形式 3074キロバイト)
第53回 日 本 消 化 器 病 学 会 甲 信 越 支 部 例 会
第75回 日本消化器内視鏡学会甲信越支部例会
合同支部例会
第30回 日本消化器病学会甲信越支部教育講演会
抄 録 集
会
期:平成25年11月23日(土)~24日(日)
会
場:山梨県立図書館 (かいぶらり)
会
長:榎本 信幸
(山梨大学医学部内科学講座第1教室)
ご挨拶
第53回日本消化器病学会甲信越支部例会、第75回日本消化器内視鏡学会甲信越支部
例会、ならびに第30回日本消化器病学会甲信越支部教育講演会の合同開催を担当させ
て頂くにあたり、一言ご挨拶申し上げます。
日々の診療等でご多忙の中、78題の演題をいただくことができました。会員の先生
方のご協力に深謝申し上げます。今回も会場は2会場として、十分な討論の時間をお
とりいたしました。一症例一症例が貴重な症例ですので、是非、議論を深めていただ
き、今後の診療、研究に役立つ教訓やアイディア、情報を開陳して頂ければと存じま
す。
教育講演会は、肝臓分野は信州大学の田中榮司先生に「B型肝炎とde novo B型肝
炎」として、現在種々の面で見直しが進んでおりますB型肝炎についてご教授頂きま
す。消化管分野は国立がん研究センター中央病院病理・臨床検査科の九嶋亮治先生に
「胃癌診療における病理診断の役割」として、最近の胃癌病理診断についてご解説頂
く予定です。さらに胆膵分野からは国立がん研究センター 研究所・難治がん研究分野
の谷内田真一先生に「ゲノムの進化でがんを理解する」と題しまして、膵癌を中心に
がんのゲノム解析の最新の成果をお話し頂くことになっております。
ランチョンセミナーでは、来年の第50回日本肝臓学会会長でもあります武蔵野赤十
字病院の泉並木先生に最近急速に進展しておりますC型肝炎治療につきまして最新の
情報をお聞かせいただける予定です。
今回は、甲府駅前に新設されました山梨県立図書館を会場とさせていただきました。
場所はよろしいのですが、何分にも学会などの専用の施設ではなく、また初めての利
用でありいろいろ会員の皆様にはご不自由をおかけすることがあろうかと存じます。
しかし、いつも同じ会場で同じように開催するよりは、多少のトラブルはあっても新
しいことに挑戦することも皆様の記憶に残るのではないかと考えております。どうか
皆様のご協力で「学会の運営は今一つだったが、内容は良かった」とご容赦いただけ
るような学会になれば幸いです。
最後に、甲信越支部の発展と、会員の皆様のますますのご活躍・ご健勝を祈念いた
しまして、ご挨拶とさせて頂きます。
2013年11月
第53回 日本消化器病学会甲信越支部例会
第75回 日本消化器内視鏡学会甲信越支部例会
合同支部例会
第30回 日本消化器病学会甲信越支部教育講演会
会長 榎本 信幸
山梨大学内科学講座第1教室
会場案内図
至 武田神社
お車でお越しになられる先生方へ
大変ご迷惑をおかけして申し訳ございませんが、無料で
利用できる駐車場がございません(150円/30分)。
さらに、会場(図書館)の駐車場は、一般の方も利用す
るため台数に限りがあります。
周辺の有料駐車場をご利用いただくか、公共交通機関
(JR、高速バス)でのご来場に変更をお願いいたします。
駐車場
図書館駐車場
図書館北側に153台収容の専用駐車場(有料)があり
ます。
総合案内・サービスカウンターでの手続きを得て1時間
無料となります。
県立
図書館
陸橋
北口
駐車場
山梨
YBS
甲府藤村記念館
甲府駅
至 松本
至 東京
駅ビル
タクシー
バス停
デパート
学会会場:山梨県立図書館(かいぶらり)
〒400-0024 山梨県甲府市北口2丁目8番1号
TEL: 055-255-1040
交通アクセス:JR甲府駅北口から徒歩1分
会場案内
1階
イベントスペース 東
第1会場
第3会場
受付
西
11/23
評議員会
教育講演会
11/24
学会事務局
スタッフ控室
クローク
正面入り口
スタッフ控室(11/23)
講師控え室(11/23)
学会事務局
クローク
(11/23)
休憩スペース
(11/23)
2階
〒400-0024 山梨県甲府市北口2丁目8番1号
TEL: 055-255-1040
交通アクセス:JR甲府駅から徒歩1分
幹事会
(11/23)
第2会場
学会発表および質疑応答についてのお願い
会員の先生方へのお願い
1. 当日、会場整理費として2000円を徴収させていただきます。また、消化器病学会教育講演会にご出席の方は、別に
1000円を徴収させていただきます。
2. 参加者には、日本消化器病支部例会参加証、日本消化器内視鏡学会支部例会参加証、教育講演会参加証をお渡しいたし
ます。また、「日本消化器病学会専門医更新単位登録票」に関しては、必要事項を記入の上受付に提出して、確認印を
押印した登録票控えを受け取って下さい。
3. 参加証は、所属・氏名をご記入の上、会場内では必ずご着用ください。
4. 質問およびコメントがある場合には、あらかじめ会場に設置してあるマイクの前でお待ちください。
5. 原則として、演者への謝辞は不用です。
座長の先生方へのお願い
1. 座長の先生は、予定時間の30分前までに受付にお越しください。
2. 進行を円滑にするため、演題目の紹介は省略してください。
3. 時間厳守での進行にご協力くださいますようお願い致します。
演者の先生方へのご案内
1. 口演時間は5分、討論時間は4分です。時間厳守でお願いいたします。
2. コンピューターによるプレゼンテーションに限ります(1面)。
3. 発表予定時間の1時間前までにPC受付にて、発表データの試写確認ならびにご提出を行ってください。メディアは、
CD-RまたはUSBメモリでお願い致します(必ず最新のウイルスチェックソフトでスキャンを行ってください)。
4. Macintoshをご使用の場合は、必ずご自身のPCをお持ちください。
※ 発表データを持ち込まれる方へ(Windowsのみ)
1) Microsoft PowerPoint 2003/2007/2010/2013で作成し、次のOS標準フォントをご使用ください。
〔日本語〕 MSゴシック・MSPゴシック・MS明朝・MSP明朝
〔英 語〕 Arial・Arial Black・Century・Century Gothic・Times New Roman
2) 動画ファイルなどスライドにリンクするファイルは、1つのフォルダに入れて下さい。
Windows Media Playerで再生可能なものに限ります。動画ファイルはWMV形式でお願い致します。
3) 発表のためお預かりしたデータは、例会終了後に事務局で責任を持って消去致します。
※ PCをご持参いただく方へ
1) 外部出力端子はMnini D-sub 15ピンとなります。一部のノートパソコンでは本体附属のコネクターが必要な場合があ
りますので、必ず各自でご用意ください。
2) スクリーンセーバー、省電力設定、ウイルスチェックならびに起動時のパスワードはあらかじめ解除しておいてくださ
い。
3) 電源ケーブルを必ずご持参ください。バッテリーでのご使用はトラブルの原因となります。
4) 念のため予備のバックアップデータをお持ちください。
※ 発表時における利益相反の開示
発表に際しては、発表演題に関する利益相反状態の自己申告および開示が必要となります。つきましては、COI 開示
スライドを発表時にご提示くださいますようお願い致します。
日本消化器病学会評議員の先生方へのお願い
研修医支部奨励賞は、平成25年より評議員会で選出することになりました。評議員会の際に投票用紙を配布致しますの
で、ご自分の施設以外から研修医1演題、専修医1演題を選び、受付横の投票箱にご投票ください。後日、各県の上位演題
に対して支部事務局より支部奨励賞が郵送されます。
日本消化器内視鏡学会 優秀演題表彰式
日本消化器内視鏡学会甲信越支部例会として優秀演題を表彰します。卒後5年までの演者の中から予め数名を選出し、プレ
ナリー演題として発表していただき、この中から優秀演題を当日午後に表彰致します。また、プレナリー演題を除く全演題
の中から優秀演題題選出し、次回の例会の際に表彰します。
合同懇親会のお知らせ
日時:11月23日(土)20:00から
会場:フレンチレストラン キャセロール
会費:5,000円
※ 学会当日は、抄録集をご持参ください。
第53回 日 本 消 化 器 病 学 会 甲 信 越 支 部 例 会
第75回 日本消化器内視鏡学会甲信越支部例会
合同支部例会
第30回 日本消化器病学会甲信越支部教育講演会
平成25年11月23日(土)
9:20
9:30
9:40
9:50
10:00
10:10
10:20
10:30
10:40
10:50
11:00
11:10
11:20
11:30
11:40
11:50
12:00
12:10
12:20
12:30
12:40
12:50
13:00
13:10
13:20
13:30
13:40
13:50
14:00
14:10
14:20
14:30
14:40
14:50
15:00
15:10
15:20
15:30
15:40
15:50
16:00
16:10
16:20
16:30
16:40
16:50
17:00
17:10
17:20
17:30
17:40
17:50
18:00
18:10
18:20
18:30
18:40
18:50
19:00
19:10
19:20
タイムスケジュール
第1会場
イベントスペース東
セッション
演題
座長
会長挨拶
1
2
中山康弘
肝1
(山梨大)
3
4
5
6
梅村武司
肝2
7
(信州大)
8
9
10
11
川合弘一
肝3
12
(新潟大)
13
14
15
塩路和彦
胆1
16
(新潟大)
17
ランチョン
セミナー
(肝)
胆2膵1
膵2
膵3
泉並木
先生
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
セッション
内視鏡
プレナリー
食道
胃・
十二指腸
1
胃・
十二指腸
2
第2会場
多目的ホール
演題
PL1
PL2
PL3
PL4
PL5
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
座長
第3会場
イベントスペース西
セッション
講師
山口達也
(市立甲府
病院)
竹内 学
(新潟大)
高橋亜紀子
(佐久総合
病院)
小馬瀬一樹
(山梨大)
坂本 穣
(山梨大)
進藤浩子
(山梨大)
古川浩一
(新潟市民
病院)
越智泰英
(長野市民
病院)
座長
評議員会
50
51
山本香織
(丸の内病院)
52
53
54
胃・
神田達夫
55
十二指腸
(三条総合
56
4
病院)
57
58
胃・
門倉 信
十二指腸
59
(市立甲府
5
病院)
60
61
62
長屋匡信
小腸
63
(信州大)
64
65
内視鏡学会優秀演題表彰式
胃・
十二指腸
3
教育講演
1
九嶋亮治
先生
大高雅彦
教育講演
2
谷内田
真一
先生
佐藤 公
教育講演
3
田中栄司
先生
榎本信幸
平成25年11月24日(日)
9:20
9:30
9:40
9:50
10:00
10:10
10:20
10:30
10:40
10:50
11:00
11:10
11:20
11:30
11:40
11:50
12:00
12:10
12:20
12:30
12:40
第1会場
イベントスペース東
セッション
演題
座長
30
比佐岳史
31
膵4
(佐久総合
32
病院)
33
34
川井田博充
膵5
35
(山梨大)
36
専門医
セミナー
1
肝
井上泰輔
専門医
セミナー
1
胆膵
高野伸一
閉会挨拶
セッション
大腸
1
大腸
2
第2会場
多目的ホール
演題
66
67
68
69
70
71
72
73
座長
杉村一仁
(新潟市民
病院)
須藤 誠
(山梨大)
第1会場
第1日目
11月23日
プログラム
肝1
1-病
9:30~10:10
座長
中山 康弘(山梨大地域医療臨床研修学)
肝癌治療に対するバイポーラRFAシステムの特徴
山梨大学
2-病-専
医学部
第一内科
S1肝細胞癌の診断で肝切除を施行した肝血管筋脂肪腫の一例
新潟市民病院
3-病-専
肝2
消化器内科
小川 光平
肝細胞癌副腎転移の一例
長野中央病院
4-病
鈴木 雄一朗
消化器内科
小林 奈津子
化学療法抵抗性の多発骨転移を伴い、腹膜播種をきたした細胆管細胞癌の一例
新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科
10:10~11:00
座長
佐野 知江
梅村 武司(信州大消化器内科)
5-病
Peg-IFNα-2b+Ribavirin併用療法によりSVRが得られたGenotype 3a型C型慢性肝炎の
タイ人女性の一例
きたむらクリニック 北村 敬利
6-病
次世代シークエンサーにて耐性変異を確認したtelaprevirを含む3剤併用療法でbreakthroughを
おこした1例
山梨大学 第一内科 辰巳 明久
7-病
外来化学療法におけるB型肝炎ウイルス再活性化の予防対策
新潟県立がんセンター新潟病院
8-病-専
9-病-研
肝3
加藤 俊幸
当院におけるB型急性肝炎3例の経験
市立甲府病院
消化器内科
加藤
亮
中肝静脈血栓症を契機に急激な経過を辿ったBudd-Chiari症候群の一例
長野赤十字病院
消化器内科
小玉
聡
11:00~11:50
座長
川合 弘一(新潟大3内)
10-病-専 繰り返す腹痛発作と肝機能異常が診断の契機となった赤芽球性プロトポルフィリン症の親子例
信州大学医学部 消化器内科 杉浦 亜弓
11-病
全身性エリテマトーデスを合併した自己免疫性胆管炎の1例
長野県立須坂病院
12-病-研 脾門部動静脈瘻により門脈圧亢進症をきたし,塞栓術で改善した1例
山梨大学
医学部
内科
張 淑美
第1内科
沼野 史典
13-病-研 Segmental arterial mediolysisが成因と考えられた脾動脈瘤破裂の1剖検例
済生会新潟第二病院 消化器内科
根布屋 悟
14-病-専 肝胃間膜に発生した孤立性Castleman diseaseの一例
信州大学
医学部
第一外科
寺田 志洋
胆1
11:50~12:20
座長
塩路 和彦(新潟大光学診療部)
15-病-専 小児総胆管結石症の一例
諏訪赤十字病院
16-内
17-病
消化器科
藤森 尚之
乳頭部胆管の壁肥厚を内視鏡的に確認し得たOddi括約筋機能不全(SOD)の1例
佐久総合病院 肝胆膵内科
清水 雄大
SpyGlass&regの使用経験
新潟市民病院消化器内科
胆2・膵1
18-病
13:40~14:20
座長
細径気管支鏡により内瘻化が可能であった胆管狭窄の一例
新潟大学医歯学総合病院
古川 浩一
進藤 浩子(山梨大1内)
消化器内科
熊木 大輔
消化器センター内科
榎本 貴士
19-病-研 胆道出血を契機に見つかった胆嚢癌の1例
立川綜合病院
20-病-専 皮下結節性脂肪壊死を合併した慢性膵炎の1例
長岡中央綜合病院
内科
盛田 景介
21-病-研 膵動静脈奇形による消化管出血に対し、経動脈的コイル塞栓術を施行した一例
JA長野厚生連 佐久総合病院
内科
上條 祐衣
膵2
22-内
14:20~15:00
座長
古川 浩一(新潟市民病院)
胃内出血を来した自己免疫性膵炎の1例
安曇野赤十字病院
消化器内科
樋口 和男
23-内-専 Mixed acinar-endocrine carcinomaの一例
新潟県立新発田病院
内科
24-病-専 IgG4関連多臓器リンパ増殖性疾患(IgG4+MOLPS)群と診断された自己免疫性膵炎の1例
新潟市民病院 消化器内科
清野 智
倉岡 直亮
25-病-研 診断に苦慮した膵嚢胞性病変の1例
山梨大学
膵3
15:00~15:40
医学部
座長
第一内科
高岡 慎弥
越智 泰英(長野市民病院)
26-病-研 WDHA症候群を呈したVIP産生膵内分泌腫瘍の1例
新潟市民病院消化器内科
27-病
28-内
三宅
望
女性に発症した膵lymphoepithelial cystの2例
長野中央病院
消化器内科
田代 興一
EUS-FNAで確定診断しえたAdult T cell Leukemia/Lymphomaの1例
信州上田医療センター
消化器内科
伊東 哲宏
29-病-研 膵仮性嚢胞内出血をきたしたアルコール性慢性膵炎の一例
糸魚川総合病院
萩本 聡
第2日目
膵4
30-内
11月24日
9:20~10:00
座長
比佐 岳史(佐久総合病院)
胃への穿破を認めた膵粘液癌の1例
1) JA長野厚生連
篠ノ井総合病院
31-病-専 脾梗塞による腹痛を契機に見いだされた膵尾部癌の一例
立川綜合病院
消化器内科
消化器センター内科
児玉
亮
品川 陽子
32-病-専 膵管内乳頭粘液性腫瘍の経過観察中に浸潤性膵管癌を発症した3例
山梨大学
33-病
膵5
34-病
嚢胞壁に石灰化を伴う膵管内乳頭粘液性腫瘍の1例
新潟大学
10:00~10:30
医歯学総合病院
座長
医学部
田中 佳祐
消化器内科
河久 順志
川井田 博充(山梨大1外)
当院における小膵癌切除例の検討
JA長野厚生連
佐久総合病院
肝胆膵内科
桃井
環
35-病
当院における切除不能局所進行膵癌およびborderline resectable膵癌に対するS-1併用化学放射線
療法の現状
県立新発田病院 岡 宏充
36-病
非典型的な画像所見を呈した膵管内乳頭粘液性腫瘍由来浸潤癌(膵IPMC)の一例
長野市民病院 消化器内科
多田井 敏治
第2会場
第1日目
11月23日
プログラム
内視鏡学会プレナリ-セッション 9:30~10:20
座長
山口
達也(市立甲府病院)
PL1-内-専 食道胃静脈瘤破裂例の検討
山梨大学
医学部
第1内科
原井 正太
消化器内科
荒生 祥尚
PL3-内-専 発症前からの内視鏡所見を遡及的に追えたCronkhite-Canada Syndromeの1例
佐久総合病院 胃腸科
宜保 憲明
PL2-内-専 ESD術後3病日に遅発性穿孔を来たし保存的に軽快した早期胃癌の1例
新潟医歯学総合病院
PL4-内-専 ワーファリンとミコナゾールゲルの併用による大量血便を契機として発見されたサイトメガロウイ
ルス腸炎合併の高齢AIDS患者の一例
新潟県 厚生連 長岡中央綜合病院 消化器内科 中島 尚
PL5-内-研 留置9か月後に十二指腸ステントの破損を認めた膵鉤部癌の1例
信州大学
食道
10:20~11:10
37-病-専
座長
39-内-研
40-内-専
41-内
竹内
食道アカラシアに対してPer-oral endoscopic myotomyを施行した1例
佐久総合病院
Mallory-Weiss症候群が診断の契機となった好酸球性食道炎の1例
長野市民病院
胃腸科
藤原 直幸
高橋 亜紀子
消化器内科
坂 めぐみ
都留市立病院
若尾 聡士
R-CHOP療法にて寛解を得た食道原発悪性リンパ腫の1例
食道潰瘍が契機で発見された急性骨髄性白血病の1例
胃・十二指腸1
11:10~11:50
座長
外科
中村 二郎
高橋 亜紀子(佐久総合病院)
上部消化管内視鏡の左右アングル設定に関する考察
長野中央病院
43-内
学(新潟大3内)
消化器病センター
軽井沢病院
42-内
松野 淳洋
消化器病医が施行する嚥下内視鏡検査の実際
昭和伊南総合病院
38-内
消化器内科
消化器内科
小島 英吾
ESDにて切除した胃早期粘液癌の1例
松本協立病院
芹澤 まさし
44-内
ESD困難な早期胃癌に対してNon-exposed Endoscopic Wall-inversion Surgery (NEWS)
を施行した1例
佐久総合病院 胃腸科 森主 達夫
45-病
EUS-FNA施行後遅発性偶発症を呈した2例
信州大学医学部附属病院
消化器内科
浅野 純平
胃・十二指腸2
46-内
11:50~12:30
座長
小馬瀬 一樹(山梨大1内)
H.pylori 陰性胃に発生した高分化型および未分化型同時多発胃癌の1例
長野市民病院
47-病
消化器内科
肝転移を伴った胃低分化型神経内分泌癌の一例
富士吉田市立病院
48-病
49-病
51-内
52-内-専
内科
山崎 貴久
胃癌、小腸癌を合併した若年性消化管ポリポーシスの1例
丸の内病院
消化器内科
中村
丸の内病院
消化器内科
山本 香織
13:30~14:10
座長
進行胃癌術後に遅発性乳び腹水を呈した1例
立川綜合病院
山本 香織(丸の内病院)
消化器センター
消化器内科
小林 由夏
魚骨による十二指腸水平脚穿通に対し内視鏡摘出後保存的に治療できた1例
富士見高原病院
小松
放射線性胃炎に対してメサラジン内服が有用であった可能性のある1例
山梨大学附属病院
胃・十二指腸4
54-内-研
55-病-専
14:10~14:50
座長
第1内科
酸性洗浄剤服用後の食道・胃狭窄性変化を経時的に観察しえた1例
長岡赤十字病院
外科
大上 康広
第一外科
細村 直弘
当科における消化管GISTに対するスニチニブの使用経験
14:50~15:20
医学部
座長
門倉
9ヶ月で急速に発育し、遡及的検討が可能であった胃原発DLBCLの一例
佐久総合病院
信(市立甲府病院)
胃腸科
山田 崇裕
胃病変で発見された濾胞性リンパ腫の1例
長野県立
60-病-研
井上 良介
消化管出血を伴った胃GISTの3例
胃・十二指腸5
59-内
張 高正
消化管転移で発見された乳癌の2例
山梨大学
58-内-専
津久井 雄也
消化器内科
飯田市立病院
57-病
菅野 智之
神田 達夫(三条総合病院)
済生会新潟第二病院消化器内科
56-病-専
修
胃癌の診断を契機に発見されたサルコイドーシスの1例
済生会新潟第二病院
53-内
直
腹部大動脈瘤(AAA)による十二指腸通過障害を呈した一例
胃・十二指腸3
50-病
伊藤 哲也
須坂病院
消化器内科
徳竹 康二郎
閉塞性黄疸で発症した十二指腸Burkittリンパ腫の1例
済生会新潟第二病院
消化器内科
熊谷 和樹
小腸
15:20~16:10
61-内-研
62-内-研
座長
カプセル内視鏡検査が診断に有用であった血便発症の小腸悪性リンパ腫の1例
山梨県立中央病院 消化器内科
消化器内科
65-病-専
山田 沙季
回盲部単純性潰瘍の1例
長野県立木曽病院
64-病
岡 怜史
鑑別困難な回腸輪状潰瘍の1例
済生会新潟第二病院
63-病-専
長屋 匡信(信州大2内)
サイトメガロウイルス感染による小腸穿孔の1例
信州大学
医学部
内科
中村
晃
外科学第一
消化器外科
荒井 義和
保存的治療後に緊急手術を施行した上腸間膜静脈血栓症の1例
長野赤十字病院
消化器内科
小林 惇一
第2日目
11月24日
大腸1
9:20~10:00
66-病-研
67-病-研
座長
再燃の毎に壊疽性膿皮症の増悪を伴う潰瘍性大腸炎の1例
山梨県立中央病院
69-病-専
肝膿瘍を契機に発見された上行結腸癌の一例
JA長野厚生連
篠ノ井総合病院
70-病-専
医学部
10:00~10:40
72-病
73-病-専
牧野 暁嗣
消化器内科
水戸 正人
消化器内科
鳥居
消化器内科
倉石 康弘
座長
旬
須藤
誠(山梨大1外)
イレウスを生じなかったパテンシーカプセル滞留の一例
飯田市立病院
71-病
消化器内科
AIDS発症で判明した消化管Kaposi肉腫の1例
信州大学
大腸2
一仁(新潟市民病院)
壊疽性膿皮症を伴った潰瘍性大腸炎の一例
新潟大学医歯学総合病院
68-病-研
杉村
当院において過去 5年間に経験された腸管気腫症のまとめ
信州大学 医学部附属病院
大腸SM癌転移・再発例の検討
新潟県厚生連長岡中央綜合病院
消化器内科
内科学第二講座
消化器病センター
外科
日原
優
北畠 央之
川原 聖佳子
保存的治療で軽快した門脈ガス血症の一例
糸魚川総合病院
高木 宏明
内視鏡学会プレナリーセッション
PL-1
9:30~10:20
座長
山口
達也(市立甲府病院)
食道胃静脈瘤破裂例の検討
原井 正太、大高 雅彦、津久井 雄也、小林 祥司、吉田 貴史、浅川 幸子、小馬瀬 一樹、山口 達也、
植竹 智義、井上 泰輔、坂本 穣、佐藤 公、榎本 信幸
山梨大学 医学部 第1内科
目的:食道胃静脈瘤破裂例の危険因子を検討した。対象:2005年1月より2009年9月まで当施設で食道
胃静脈瘤を加療した延べ258例。破裂例は62例(24.0%)。方法は年齢,性,食道静脈の部位,形態,RCの有
無,Lg有無,入院日の検査(Alb,T-Bil,血小板数,PT%),腹水有無,脳症有無,HCC有無,肝疾患原因がアルコール
性 か 否 か , を 検 討 し た 。 内 訳 は 平 均 年 齢 65.1 歳 , 男 165(64.0%), 女 93,Location s 54(20.9%),m
164(63.6%),i 40(15.5%),Form 0 と 1 204(79.1%),2 と 3 54(20.9%),RC 陽 性 233(90.3%),Lg あ り
109(42.2%),Alb3.2g/dl 未 満 145(56.2%),T-Bil 1.4 以 上 79(30.6%), 血 小 板 76000 未 満
204(79.1%),PT% 63.4未満139(53.9%),腹水あり128(49.6%),脳症あり54(20.9%), HCC109(42.2%),
アルコール性35(13.6)。統計学的処理はχ二乗検定および多重ロジスティック回帰分析を用いた。結果:
年 齢 (p=0.2623), 性 (0.1045), 部 位 (0.2166), 形 態 (0.4678),RC の 有 無 (0.3264),Lg 有 無
(0.812),Alb(Odds 3.13 p=0.0004),T-Bil(Odds 2.56 p=0.0015), 血 小 板 数 (Odds 0.3509
p=0.0004),PT%(Odds 1.95 p=0.0264),腹水有(p=0.1267),脳症有(0.4687),HCC有(0.216),アルコー
ル 性 肝 障 害 (0.0508) 。 多 重 ロ ジ ス テ ィ ッ ク 回 帰 分 析 で は Alb p=0.0032 oddds 1.2472 1.48687.1933,T-bil p=0.0188 odds 2.4168 1.1574-5.0467, 血小板数 p=0.0001 odds 0.2689 0.13750.5258, PT% p=0.3932 odds 1.3810 0.6582-2.8975.考察 対象を静脈瘤治療の緊急例・待機例・
予防例としたため、内視鏡所見に有意差は得られなかった。多変量解析で3.2g/dl未満のAlb低下例とTBil 1.4以上肝機能進行例は破裂の危険の独立危険因子として抽出された。高度肝障害者では定期的な上部
消化管内視鏡検査により静脈瘤の状態を調べる必要が示唆された。
PL-2
ESD術後3病日に遅発性穿孔を来たし保存的に軽快した早期胃癌の1例
荒生 祥尚1、小林 正明2、本田 博樹1、影向 一美1、水野 研一2、橋本 哲2、高村 昌昭1、竹内 学1、佐藤 祐一1、
青柳 豊1
1
新潟医歯学総合病院 消化器内科、2新潟大学医歯学総合病院 光学医療診療部
症例は60歳代男性。3年前に前医で胃体上部大弯の0-I型早期胃癌に対してESDを施行した。除菌後の経過
観察中に下咽頭癌と胃角大弯にGroup 2の発赤陥凹を認めたため当科に紹介された。再検で胃病変は
Group 5 (tub1, pap)であったため、早期胃癌と下咽頭癌に対して手術室でESD , ELPSの順に施行した。
術中トラブルはなくESD術時間は40分であった。しかし術後3病日に突然筋性防御を伴う激しい腹痛を自
覚、CTではfree airを認めESD後遅発性穿孔と診断した。消化器外科にコンサルトしたが、保存的加療の
方針となり、禁飲食、抗生剤、胃管による減圧を継続した。CRP値は術後4病日の12.8mg/dlをピークと
して下降し、術後9病日の内視鏡検査では潰瘍底はほぼ一様の白苔で覆われ穿孔部は認められなかった。
術後12病日の造影で造影剤の漏出は認めなかったため飲水を開始し、食事開始後も順調で術後22日病日
に退院した。病理結果はtub1, pT1a(M), ly(-), v(-), pHM0, pVM0, 0-IIc, 23×14mm, L, Gre、切除径
31×29mmであった。遅発性穿孔を、「術中明らかな穿孔所見を認めないが、術後に腹膜刺激症状が出
現し、画像でfree airを認めたもの」と定義すると、これまでに当科では本症例を含め6例(0.4%)経験して
いる。平均年齢は77.0歳(63-84歳)、局在はいずれも体部で大弯2例、小弯2例、前壁1例、残胃大弯1例
であった。3例で腹膜炎および全身症状悪化のため緊急手術が施行された。過去の報告では残胃に伴う胆
汁の逆流、筋層の損傷、過凝固、体部病変が遅発性穿孔のリスクファクターと考えられている。本症例は
大弯病変であり、胆汁貯留の関与が疑われた。遅発性穿孔は稀であるが、致命的になりうる後期合併症で
あり、当科の経験症例の考察も含め報告する。
PL-3
発症前からの内視鏡所見を遡及的に追えたCronkhite-Canada Syndromeの1例
宜保 憲明、篠原 知明、小山 恒男、山田 崇裕、森主 達夫、若槻 俊之、久保 俊之、岸埜 高明、高橋 亜紀子、
友利 彰寿
佐久総合病院 胃腸科
【症例】患者は60歳代女性で、特筆すべき既往歴、家族歴はない。検診目的に前医で受けた上部消化管内
視鏡検査では、胸部中部食道から腹部食道に微細な顆粒状変化が認められた。胃は、びまん性にアレアが
発赤腫大し、一部はポリープ様に隆起していた。また、十二指腸に特筆すべき異常は認められず、慢性胃
炎と診断された。1ヶ月後より口渇、味覚異常を自覚するようになり、爪甲や手掌をはじめとした皮膚の
黒ずみも徐々に出現した。2ヶ月後から1日7-8回の水様便が認められ、脱毛も出現した。3ヶ月後に前医
で施行された大腸内視鏡検査で、全大腸に発赤した平坦隆起が非連続性に存在し、一部はポリープ状に隆
起していた。全身症状を伴う原因不明の大腸炎として、精査加療目的に紹介された。【経過】入院時の血
液検査でTP 5.7g/dL、Alb 3.2g/dLの低蛋白血症を認めたが、貧血はなかった。上部消化管内視鏡検査で
は、食道はほぼ正常化し、穹隆部から体上部の粘膜発赤は改善傾向が認められた。しかし、体下部から前
庭部ではアレアの発赤腫大が増悪し、ポリープ状隆起が大きくなっていた。NBI拡大観察では、腫大した
アレアの表面に円形から星芒状の腺管開口部がみられたが、不整な血管は認められなかった。また、十二
指腸には褪色調の微細顆粒がびまん性に認められた。計9個の胃生検では、粘膜固有層の浮腫状変化と好
酸球浸潤を認めた。これらの病理所見は、隆起部のみならず平坦部の褪色粘膜にも認められた。以上より、
Cronkhite-Canada Syndrome(CCS)と診断した。絶食による保存的加療が奏効せず、プレドニゾロ
ン投与を40mgから開始したところ、下痢、味覚異常は速やかに改善した。プレドニゾロン漸減後も症状
再発することなく経過し、治療開始3ヶ月後の上部消化管内視鏡、大腸内視鏡検査ではポリポーシスの消
退傾向を確認した。【まとめ】Pubmed及び医中誌で検索したところ、これまでに発症前の内視鏡画像を
得られたCCSが6例報告されていたが、発症前の上部消化管内視鏡検査にて所見を得られたのは本例が初
めてであった。
PL-4
ワーファリンとミコナゾールゲルの併用による大量血便を契機として発見され
たサイトメガロウイルス腸炎合併の高齢AIDS患者の一例
中島 尚、福原 康夫、盛田 景介、堂森 浩二、佐藤 明人、渡辺 庄治、佐藤 知巳、富所 隆、吉川 明
新潟県 厚生連 長岡中央綜合病院 消化器内科
【はじめに】ミコナゾールは代表的なCYP2C9阻害薬であり、ワルファリンの作用を増強することが知ら
れている。今回我々はワルファリンとミコナゾールゲルの併用による抗凝固作用の増強で大量血便が出現
し、それを契機にサイトメガロウイルス腸炎、AIDSと診断した高齢者の一例を経験したので報告する。
【症例】72歳男性。2年前から発作性心房細動でワルファリン内服中。2013年6月12日近医受診時に上部消
化管内視鏡検査で食道カンジダ症と診断。ミコナゾールゲルを処方され内服を開始した。6月19日深夜か
ら6月20日朝にかけて大量の血便が出現し当院救急外来へ搬送された。血液検査ではPT-INR 8.45(PT-ACT
5%以下)と著明な凝固異常を認めたことからミコナゾールゲルによるワルファリン作用の増強が疑われ、
そのことによる下部消化管からの出血が考えられた。入院後大腸内視鏡検査を行うとBauhin弁上に打ち抜
き様潰瘍を認め、同部位からの生検より核内封入体が存在。PCR法でサイトメガロウイルス感染症と診断
した。また入院時の血液検査でHIV抗体 82.00 S/COと陽性であり、さらにHIV Western blot陽性、HIV
PCR 460,000 copy/mlと陽性であったことからAIDSの診断へと至った。その後輸血や凝固異常の補正を行
い他院感染症内科へAIDSの加療目的に転院した。
【考察】ミコナゾールはワルファリンの作用を増強することが広く知られており、本例のように大量の出
血を来たす報告も少なくないため、併用には厳重な注意が必要である。サイトメガロウイルス腸炎は
Bauhin弁上に最もよく見られ、打ち抜き潰瘍を高率に認めることが報告されている。さらに高齢者のAIDS
患者も年々増加傾向にあり、サイトメガロウイルス感染症やカンジダ感染症と診断した際にはAIDSを念頭
において診療を行うべきと考えられる。
PL-5
留置9か月後に十二指腸ステントの破損を認めた膵鉤部癌の1例
松野 淳洋1、金井 圭太1、小口 貴也1、浅野 純平1、丸山 真弘1、渡邉 貴之1、村木 崇1、新倉 則和2、
田中 榮司1
1
信州大学 消化器内科、2信州大学 内視鏡センター
症例:60 歳代女性。2012年9月中旬より悪心・嘔吐が出現したため前医を受診した。腹部CTで十二指腸
水平部に狭窄を指摘され、上部消化管内視鏡検査でも同部位に狭窄を認めた。狭窄部からの生検病理組織
はadenocarcinomaであった。9月下旬に当院を紹介受診し、施行したCT・MRI所見と前医生検結果か
ら膵鈎部癌・十二指腸浸潤と診断した。画像上、上腸間膜動脈への浸潤が疑われたため、化学療法をおこ
なう方針とした。10月上旬よりGEM 1 g/m²で治療を開始したが、2回目投与後にGrade4の血液毒性を
認めたため投与を中止した。経過で十二指腸通過障害も増悪したことから、10月下旬に十二指腸ステント
(Nitis社製:120×22 mm)を十二指腸狭窄部に対して留置し、11月よりTS-1 60 mg/日で治療を再開し
た。2013年4月に施行したCTで、腫瘍は増大傾向にあったためTS-1を80 mg/日に増量した。7月に施行
した腹部レントゲンで、十二指腸ステントの破損を認めた。通過障害を示唆する症状や発熱、腹痛なども
認めなかったことから十二指腸ステントを追加で留置する方針とした。ステント留置前の上部消化管造影
では、トライツ靭帯口側に膵癌の浸潤と考える狭窄を認め、その肛門側で十二指腸ステントは破損してい
た。stent in stentの形で十二指腸ステント(Nitis社製:120×22 mm)を追加留置したが、留置後に明ら
かな偶発症や通過障害は認めずTS-1 80mg/日内服を継続し経過観察中である。十二指腸ステント破損は
稀な偶発症であり貴重な症例と考えられたため報告する。
一般演題
肝1
9:30~10:10
1
座長
中山 康弘(山梨大地域医療臨床研修学)
肝癌治療に対するバイポーラRFAシステムの特徴
鈴木 雄一朗、中山 康弘、廣瀬 純穂、佐藤 光明、小松 信俊、辰巳 明久、三浦 美香、井上 泰輔、前川 伸哉、
坂本 穣、榎本 信幸
山梨大学 医学部 第一内科
【背景】2013年1月から肝癌局所治療に対しバイポーラRFAシステム(Celon POWER 、Olympus社)が
使用可能となったが、モノポーラシステムとの相違を理解して使用する必要がある。今回バイポーラRFA
の初期使用経験を検討し、モノポーラと比較した利点/欠点を提示する。【対象と方法】対象はすべて肝細
胞癌で、2013年8月から9月までバイポーラRFAシステムを用いて当科でRFAを施行した7例8結節。基
本的な焼灼はOlympusから提供された資料(ドジメトリーテーブル)に従った。【結果】(1)患者年齢中央値
は71(57-81)歳で、すべて男性。背景肝はCH/LC=1/6例でetiologyはHBV/HCV=1/6例で、肝予備能は
Child-Pugh A5 点 /A6 点 /B7 点 相 当 = 3/3/1 例 。 腫 瘍 径 中 央 値 は 14.5(5-23)mm で 占 拠 部 位 は
S3/S6/S7/S8=1/2/1/3例であった。(2)穿刺針はすべて30mm-20cmで1/2/3本使用がそれぞれ1/4/3例
で、それぞれの腫瘍径中央値は1本穿刺が5mm、2本穿刺は12.5(12-16)mm、3本穿刺は23(17-23)mm
であった。(3)負荷した熱量は概ね上記資料に準じたが、1本穿刺が16kJ、2本穿刺が23(20-27)kJ、3本
穿刺は35(35-36)kJで、2本穿刺の2結節でUSでの焼灼範囲予測から予定の80%で終了した。平均焼灼時
間は1本穿刺が13分、2本穿刺は11(10-13)分、3本穿刺は12(12-13)分であった。8結節中5結節で腫瘍
の辺縁で穿刺しNon-touch ablationを目指せた。(4)8結節中6結節が1回の焼灼で5mm以上のマージン
を得られたが、負荷熱量が少なかった2結節でマージンが不足し追加焼灼を要した。その後の追加で局所
制御は良好となった。(5)8結節の焼灼中目立ったpoppingは1例も認めず肝機能低下や出血など有害事象
は認めなかった。ただし深い病変で先端の視認性が不良の症例が2例あった。【考察】バイポーラRFAシ
ステムは焼灼が短時間で済み、低分化癌に対する焼灼に有用(Non-touch ablationが可能、popping少な
い) な利点があるが、2本穿刺でのマージンが不足しやすいこと、先端の視認性が不良であることに注意を
要すると思われた。【結語】バイポーラRFAシステムは有用であるが、モノポーラとの差異を理解し場合
により使い分ける必要があると考えた。
2
S1肝細胞癌の診断で肝切除を施行した肝血管筋脂肪腫の一例
小川 光平1、和栗 暢生1、倉岡 直亮1、五十嵐 俊三1、佐藤 里映1、佐藤 宗広1、相場 恒男1、米山 靖1、
古川 浩一1、杉村 一仁1、五十嵐 健太郎1、眞部 祥一2、横山 直行2、大谷 哲也2、片柳 憲雄2、橋立 英樹3、
渋谷 宏行3
1
新潟市民病院 消化器内科、2新潟市民病院 消化器外科、3新潟市民病院 病理科
【症例】70歳代男性。4年前、前医腹部エコーでS1領域に15mm大の高エコー腫瘤を指摘され肝血管腫を
疑われた。造影CTにて早期濃染を認めていたが、この時点では経過観察とされた。他院から精査を依頼さ
れ腹部CTを再度撮影したところ腫瘤の増大を認めた。MRIで早期濃染、wash outおよび肝細胞相での低
吸収を認め、肝細胞癌を疑われ精査目的に当院に紹介され入院した。【経過】入院時の血液検査では腫瘍
マーカーおよびウィルスマーカーは陰性で、その他、特記すべき異常所見は認めなかった。肝動脈造影で
S1単発の20mm大の腫瘍濃染を認めた。CTHAで腫瘍は早期濃染しコロナ様濃染を呈しながらwash out
した。肝細胞癌の原因となる肝疾患はなかったが、画像所見よりS1単発の肝細胞癌と診断し、肝部分切除
術を施行した。病理結果で腫瘍内部は筋性血管、成熟脂肪組織に富み、免疫染色でHMB-45陽性、Melan
A陽性、SMA陽性の類上皮様腫瘍細胞を主体とする肝血管筋脂肪腫と診断した。Ki67およびp53陽性細胞
は低頻度であったが、腫瘍の肝細胞への浸潤性発育および門脈内浸潤を認めた。【考察】一般的に血管筋
脂肪腫は良性腫瘍であるが、脈管侵襲や異型上皮細胞、凝固壊死、遠隔転移などが悪性化を示唆する所見
である。またKi67 index 3%以上の増殖能や多中心性発育様式は再発傾向が強いという報告例がある。さ
らに門脈浸潤を伴う血管筋脂肪腫の報告例もあり腫瘍悪性度との関連が示唆されている。本症例では周囲
肝細胞組織への浸潤性発育および門脈内浸潤を認めたことよりmalignant potentialを持つ腫瘍と考えら
れた。しかし悪性の指標とされているKi67およびp53陽性細胞の頻度は低いことから、現時点でただちに
悪性とは言い難い。本症例の今後の経過が本腫瘍の悪性度評価へ与えるインパクトは大きいものと考え報
告する。
3
肝細胞癌副腎転移の一例
小林 奈津子1、松村 真生子1、田代 興一1、小島 英吾1、大野 順弘2
1
長野中央病院 消化器内科、2長野中央病院 病理科
症例は, 76歳男性. 平成22年11月に肝S7に発生した直径15mmのC型肝炎関連肝細胞癌に対して肝動脈化
学塞栓療法が行われ, 以降再発なく定期通院していた. 平成24年9月のCT検査では異常を認めなかったが,
翌年2月に撮影したCT検査にて肝S7と右副腎の間に造影早期相で濃染し, 後期相で低濃度化する60mm大
の腫瘤が指摘された. MRIT2強調画像では肝と等からやや高信号で, 内部に変性を疑う強い高信号を認め
た. 脂肪の存在は指摘できなかった. 腫瘤が前回治療部位と接していたことから肝内の遺残再発を疑ったが,
血管造影検査では腫瘤は右下横隔膜動脈と右腎動脈からの分枝で栄養されており, 肝内からの血流は認め
られなかった. MRI所見は褐色細胞腫として非典型的であり, 増大速度が非常に速いことや内部信号が不均
一であること, 肝細胞癌の既往があることから副腎癌もしくは肝細胞癌の転移が鑑別に上げられた. しかし
各種副腎ホルモンが正常範囲内であり, AFP2500ng/mlと著名な高値を認めたことから, 肝細胞癌副腎転
移の可能性が高いと診断した. 他臓器への転移を認めず, 原発巣もコントロールされている肝細胞癌副腎
転移については切除することにより生存期間の延長が得られることが報告されている. 本例も肝内を含め,
副腎以外に再発所見を認めなかったため, 開腹下右副腎切除術を施行した. 術中, 副腎と肝臓が強固に癒着
していたため, 肝の一部も含めて切除した. 病理学的には肝臓とは被膜を隔てており, 周囲を進展された副
腎皮質に覆われた中分化型肝細胞癌の像であり, 肝細胞癌副腎転移と診断された. 術後約半年経過するが再
発は認めていない. 肝細胞癌の副腎転移はまれではなく, その頻度は 剖検例を対象とした全国集計で約
10%と報告されている.今回われわれは短期間で急速に増大した肝細胞癌副腎転移に対して外科的切除を
施行した一例を経験したので文献的考察を踏まえ報告する.
4
化学療法抵抗性の多発骨転移を伴い、腹膜播種をきたした細胆管細胞癌の一例
佐野 知江1、渡辺 ゆかり1、木村 成宏1、上村 博輝1、山本 幹1、兼藤 努1、本田 穣1、塩路 和彦1、川合 弘一1、
野本 実1、渡辺 佳緒里3、廣瀬 雄己2、味岡 洋一3、若井 俊文2、青柳 豊1
1
新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科、2新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器・一般外科、3新潟
大学大学院医歯学総合研究科 分子・診断病理学
症例は、53歳、男性。HBVキャリアにて外来経過観察中、約1年半前にダイナミックCTで肝S4に35mm
大の腫瘤を認めた。腫瘤辺縁部は動脈相で高吸収、平衡相で等吸収、中心部の造影効果は乏しく、平衡相
でごく軽度増強された。EOB-MRIでは、多結節癒合状の形態で、T1WI低信号、T2WI高信号、拡散強調
像高信号、ダイナミックCTと同様の血行動態を示し、肝細胞相では低吸収だった。CTAPでは同部の欠損
域内に肝静脈が貫通しており、CTHAでは早期相から後期相まで不均一な濃染が持続し、corona様濃染
は認めなかった。AFP 3.0 ng/ml、DCP 20 mAU/ml、CEA 1.5 ng/ml、CA19-9 11 U/mlと腫瘍
マーカーの上昇は認めず、肝予備能はChild-Pugh Aだった。細胆管細胞癌(CoCC)を最も強く疑い、肝
切除を予定していたが、術前MRI、CTにて多発性胸腰椎転移を指摘され、全身化学療法の方針となった。
化学療法前に肝腫瘍生検を施行し、CoCCと診断した。約1年間、レジメンを変更しながら全身化学療法を
行い(GEM、TS-1、TS-1+CDDP、ソラフェニブ)、肝内病巣に著変を認めなかったが、多発骨転移巣
は増大傾向を示し、腰痛が出現、増悪したため、約1か月間、化学療法を中止し骨転移に対し緩和的放射
線照射を行った。その後、疼痛は軽快したが、原発巣の増大と多発肝内転移による閉塞性黄疸が出現した。
内視鏡的胆管ステント留置術を行ったが黄疸は改善せず、リンパ節転移、腹膜播種、癌性腹膜炎による大
量腹水、肝不全、腎機能障害も加わり、急速に全身状態が悪化し死亡した。
CoCCは比較的稀な疾患であり、その進展形式や予後については明らかになっていない。本症例は、化
学療法により肝内病巣の進展は制御されていたが、多発骨転移巣は増大傾向を示し、終末期には腹膜播種
をきたし、腫瘍発見から約1年半で死亡した。CoCCの進展形式や予後に関して示唆に富む症例と考え、病
理解剖結果、文献的考察を加え報告する。
肝2
10:10~11:00
5
座長
梅村 武司(信州大消化器内科)
Peg-IFNα-2b+Ribavirin併用療法によりSVRが得られたGenotype 3a型C型
慢性肝炎のタイ人女性の一例
北村 敬利
きたむらクリニック
【症例】46歳タイ人女性。既往歴:特記事項なし。輸血歴:なし。手術歴:43歳時にタイで豊胸術。
薬物使用歴:なし。刺青:40歳時に日本で刺青。現病歴:会社の検診で肝機能異常を指摘され当院を受診。
AST 36, ALT 52, HCV抗体陽性で、C型慢性肝炎と診断した。HCVセログループは判定不能だったが、
Genotype測定で3a型陽性。HCV-PCR 5.9LogIU/mLと高ウイルス量だったが、Genotype 3aはIFNへ
の反応性が良好であるとの報告からGenotype 2高ウイルス量に準じて、Peg-IFNα-2b+Ribavirin併用
療法を行った。体重からPeg-IFNα-2b 80μg、Ribavirin 600mgで投与を開始し、投与開始から2週で
HCV-RNAは陰性化した。投与4週から貧血のためにRibavirinを400mgに減量、6週から好中球減少の
ためにPeg-IFNα-2bを40μgに減量したが、24週の治療を完遂し、SVRが得られた。【考察】日本にお
けるHCV感染例のほとんどはGenotype 1b、2a、2bであり、輸入血液製剤による一部の感染例を除き、
その他のウイルス型は非常に稀である 。一方、海外においてはウイルスの分布には地域性があり 、
Genotype 3や6が高度に浸透している地域もある。海外での感染や外国人労働者の増加により、今後、日
本国内でも1b,2a,2b以外のHCVに遭遇する機会も増えることが予想されるため、示唆に富む症例と考え
報告する。
6
次世代シークエンサーにて耐性変異を確認したtelaprevirを含む3剤併用療法
でbreakthroughをおこした1例
辰巳 明久、佐藤 光明、前川 伸哉、鈴木 雄一朗、廣瀬 純穂、小松 信俊、三浦 美香、中山 康弘、井上 泰輔、
坂本 穣、榎本 信幸
山梨大学 第一内科
【背景】Telaprevir(TVR)+ペグインターフェロン(PEG-IFN)+リバビリン(RBV)による3剤併用
療法は1b高ウイルス量のC型肝炎に対する高い有効性が確認されている。近年、次世代シークエンサーの
開発により少量の薬剤耐性クローンをシークエンス可能となった。そこでTVRを含む3剤併用療法を行い
breakthroughした症例について次世代シークエンサーにて耐性変異を検討したので報告する。【症例】
70歳男性のC型慢性肝炎。PEG-IFN+RBV治療でNRであったため3剤併用療法を行った。ウイルス因子
は1b type、HCV-RNA 7.0 log IU/ml、コア70野生型、ISDR0個変異、IRRDR3個変異、宿主因子は肝
組 織 F3A2 、 IL-28B は T/T で あ っ た 。 TVR1500mg+PEG-IFN100μg+RBV600mg で 治 療 を 開 始 、
HCV-RNAは1週間後2.8 log IU/ml 、4週間後<1.2logIU/ml、6週間後にウイルスは陰性化した。薬剤
減量は行わず継続したが治療12週間でHCV-RNA 2.4 log IU/mlでbreakthroughとなった。次世代シー
クエンサーにて既知の耐性変異割合を検討したところ 、治療前には耐性変異は認めなかったが 、
breakthrough後HVC-RNAが6.4 log IU/mlまで上昇した際のシークエンス結果ではNS3-A156Fの変異
クローンが97.5%を占め、さらにウイルスが増加すると耐性変異の割合は19.3%まで減少しwild typeに
置き換わった。【結語】TVRを含む3剤併用療法を行いbreakthroughした症例に対して、次世代シーク
エンサーにてダイナミックに変異を確認しうることができた。非常に示唆に富む症例と考え文献的考察を
ふまえ報告する。
7
外来化学療法におけるB型肝炎ウイルス再活性化の予防対策
加藤 俊幸、栗田 聡、青柳 智也、佐々木 俊哉、船越 和博、本山 展隆、成澤 林太郎
新潟県立がんセンター新潟病院
【目的】造血器腫瘍に対するリツキシマブ導入によりHBs抗原陰性例からのHBV再活性化が報告され、肝
炎は重症化しやすいため免疫抑制・化学療法においても再活性化対策が求められている。2009年にガイ
ドラインも作成されたが、固形癌ではリスクが低いためか、がん専門病院でも関心が薄く問題である。
【方法】2012年と2013年の外来化学療法施行患者におけるB型肝炎ウイルス検査の実施率を調査した。
【成績】1.2012年6月-7月の外来化学療法施行は1,636件485例であったが、HBsAg,Anti-HBs,AntiHBcのウイルス検査が実施されていたのは17%にすぎなかった。2.施行医に注意を喚起した結果、2013
年6-7月の同期間では1,606件530例が化療され、HBVウイルス検査は48.3%に実施されていた。しかし、
HBsAg陰性のみで抗体が追加検査されなかったものが45.9%、HBsAgも未検査であったのは5.8%であっ
た。HBsAg陽性は1.3%で、抗ウイルス剤の予防投与が行われ 、HBsAg陰性でAnti-HBc(+) and/or
Anti-HBs(+)の高リスク群は8.3%で、HBV-DNAモニタリングが行われている。現在までは、化学療法後
のHBV再活性化は認めていない。3.対象疾患は、造血器腫瘍8.7%、乳癌35.0%、消化器癌37.9%、肺癌
12.8%、婦人科癌6.4%などであり、外科医への啓蒙が必要であった。
【結論】固形癌の化学療法によるHBV再活性化と重症肝炎は、当院の外来化学療法では発生していないが、
HBVスクリーニング検査の実施率がまだ低い。施行医への注意啓蒙を繰り返す一方で、外来化療箋のダブ
ルチェックを有効に活用すべきである。
8
当院におけるB型急性肝炎3例の経験
加藤 亮1、雨宮 史武1、早川 宏1、石田 泰章1、川上 智1、門倉 信1、山口 達也1、大塚 博之1、中山 康弘2、
井上 泰輔2、前川 伸哉2、坂本 穣2、榎本 信幸2
1
市立甲府病院 消化器内科、2山梨大学 医学部 第一内科
【症例1】26歳男性。交際している台湾人のパートナーがHBs Ag陽性を指摘されたため、心配になり近
医を受診し血液検査を受けたところALT 208 IU/ml、HBs抗原陽性、HBV-DNA>9.1 logcopy/mlの結
果であり当科に紹介となった。ALT 1180 IU/ml、IgM-HBc抗体陽性、過去にHBs抗原陽性を指摘され
ていないことからB型急性肝炎と診断した。genotypeはAであった。入院時59%だったPT%が第5病日に
45%まで低下し、脳症の出現は認めなかったが重症化が危惧されたため同日からentecavirの投与を開始
した。肝障害は遷延したがentecavir開始から4週間で改善した。HBs抗原の消失はentecavir開始から24
週後、HBs抗体が陽性となったのは32週後であった。【症例2】51歳男性。腹痛で近医を受診し血液検査
でALT>1000IU/ml、T.Bil 5.0mg/dlを指摘され当科に紹介された。3か月前に山梨県内の風俗産業に
従事する女性との接触がありHBs抗原陽性(2年前の検診でHBs抗原陰性)、IgM-HBc抗体陽性からB型
急性肝炎と診断した。genotypeはCであった。肝障害は2週間で速やかに改善し、HBs抗原は発症後20週
で検出感度以下になったがHBs抗体は32週後でも陽性にならずそのままdropしてしまった。【症例3】
50歳男性。人間ドックを受けた際に、昨年まで陰性であったHBs抗原が陽性、およびALT>1000 IU/ml
を指摘され当院を受診した。ALT 1437 IU/ml、IgM-HBc抗体陽性から急性B型肝炎と診断した。ドック
を受ける4か月前にフィリピンへ旅行に行き現地の女性と性的接触があった。GenotypeはAであり入院後
2週間で肝障害は改善したが12週経ってもウイルスは陰性化せず現在経過観察中である。【考察】現在全
国的にgenotype AのB型急性肝炎が急増している。当院で経験した3例もすべて性的接触による水平感染
が疑われ、2例がgenotype Aでありうち1例は重症化が危惧されentecavirを使用せざるを得なかった。
Genotype Aは成人感染でも10%程度が慢性化するとされており、水平感染で新たな感染源になりうる可
能性を考えると今後感染拡大予防のためにHBV universal vaccinationが必要であると考える。
9
中肝静脈血栓症を契機に急激な経過を辿ったBudd-Chiari症候群の一例
小玉 聡、小林 惇一、田中 景子、宮島 正行、今井 隆二郎、三枝 久能、藤澤 亨、森 宏光、松田 至晃、
和田 秀一
長野赤十字病院 消化器内科
症例は39歳男性。主訴は吐血。既往歴では1年前に検診にて胃静脈瘤を指摘されている。家族歴に特記事
項無し。平成25年3月下旬、微熱、全身倦怠感を主訴に近医内科を受診し感冒と診断された。4月5日に吐
血し、前医に搬送され、食道静脈瘤破裂に対しEVLによる止血処置が行われた。CT検査ではBudd-Chiari
症候群が疑われ、肝不全を伴っていたため当科紹介となった。身体所見では肝性脳症2度、黄疸、腹部膨
満、羽ばたき振戦を認め、血液検査ではPT濃度37%、AST 629 IU/L、ALT 632 IU/L、LDH 782
IU/L、ALP 353 IU/L、T-Bil 6.6 mg/dLと肝機能障害がみられた。EGDを施行したところ食道静脈瘤が
あり、Ls, F3, Cb, RC1, white plug, Lg-fの所見であった。造影CTでは左右肝静脈と中肝静脈の吻合、
中肝静脈血栓、脾腫、門脈側副路、胸腹水を認めた。以上から重症度5のBudd-Chiari症候群と診断し、
肝移植の適応と考えた。
生体肝移植の適合者がいないため、脳死肝移植登録を行い、保存的加療を行いながら待機することとした。
第6病日に食道静脈瘤が再破裂したためEVLの追加を行ったが、全身状態不良のためこれ以上の処置は行
えなかった。基礎疾患については全身状態が不良のため充分な検索は出来なかったが、ループス安置コア
グラントや抗カルジオリピン抗体は陰性であった。肝障害は徐々に進行し、第34病日から急激に呼吸状態
が悪化し、第45病日に死亡した。本症例は、もともとBudd-Chiari症候群があり、左右肝静脈は中肝静脈
に吻合し、中肝静脈が唯一の肝の排出静脈として機能していたものが、血栓による閉塞が合併したことで
急性肝不全に陥ったと考えられた。本症例と同様に肝静脈完全閉塞により急性肝不全をきたした症例は検
索した範囲では5例報告されているのみであり、稀な病態と考えられ文献的考察を加え報告する。
肝3
11:00~11:50
10
座長
川合 弘一(新潟大3内)
繰り返す腹痛発作と肝機能異常が診断の契機となった赤芽球性プロトポルフィリン
症の親子例
杉浦 亜弓1、小松 通治1、柴田 壮一郎1、木村 岳史1、森田 進1、梅村 武司1、古庄 知己2、田中 榮司1
1
信州大学医学部 消化器内科、2信州大学医学部附属病院 遺伝子診療部
症例1は20代男性。幼少期より日光過敏症を認め、10代後半に原因不明の腹痛発作を繰り返していた。同
時に肝機能異常を認め,入院精査の結果赤芽球性プロトポルフィリン症(EPP)を疑われた。遺伝子検索を
行ったところフェロキラターゼ(FEHC)遺伝子変異を認めEPPの確定診断に至った。異常であった肝機能検
査値はUDCAとラクツロース製剤の内服により基準値内となった。症例2は50代女性で症例1の母親。幼
少期に日光過敏症があったが20代の妊娠を契機に症状は落ち着いていた。40代で糖尿病を指摘され食事
療法で治療されていた。EPPは常染色体優性遺伝疾患であることより遺伝子検査を行ったところ、同一の
遺伝子変異を認めた。γ-GTPの上昇を認めたため肝生検を行い、組織中にわずかにポルフィリンの沈着を
認めた。尚、家族調査では症例1の兄弟に遺伝子変異は認めなかった。EPP症状の出現程度は様々であり、
発作時にはブドウ糖の大量補液が有効であるが肝不全例は予後不良である。本年8月より本邦でも発作時
に投与するヘミン製剤が発売されたが、慢性期の治療法に関しては未だ確立されていない。また症例2に
おいて糖尿病が腹痛発作や肝機能異常の症状を軽減させた可能性も考えられた。本2症例はEPPの経過や
治療法を考える上で示唆に富む症例と考えられたので文献的考察を加え報告する。
11
全身性エリテマトーデスを合併した自己免疫性胆管炎の1例
張 淑美1、赤松 泰二2、下平 和久1、坂口 みほ1、徳竹 康二郎1
1
長野県立須坂病院 内科、2長野県立須坂病院 内視鏡センター
70歳代の女性。体調不良をきっかけに近医を受診し肝機能障害と肝内胆管拡張を指摘されて、2012年12
月当科へ紹介された。検査入院を予定したが、患者の希望でいったん入院をキャンセルした。その約2ヵ
月後、再び入院を希望しERCPを施行した。総胆管から左肝管分岐まで狭小化を認めたが細胞診にて悪性
細胞を認めず、また自覚症状は無かったため外来で経過観察の方針とした。さらに2ヵ月後の定期受診時、
CRPが12mg/dlに上昇し、胆管炎の診断で再入院した。抗生剤の投与にて加療を開始したが、その後心不
全兆候を呈し心エコーでは心嚢水の貯留を認めた。血液検査上、炎症反応高値、肝・胆道系酵素上昇、入
院前 に 提 出し て い た抗 核 抗体 (ANA) が1280 倍 以 上で 抗 Sm 抗体 19 .4U/ ml、 抗ds-DNA-IgG 抗体
181IU/ ml と陽性で、臨床症状と併せると全身性エリテマトーデス(SLE)の診断基準を満たしていた。抗
ミトコンドリア抗体(AMA)陰性、血清IgG 4029mg/dl、IgG4 238 mg/dlと高値であった。ERCP
を再検したところ、肝門部を中心にびまん性に広狭不整を認め、IDUSでは全層性の壁肥厚を認めた。生
検では形質細胞と成熟好中球の浸潤が目立つ肉芽様組織で特異的な所見は無く、炎症性変化と考えられた。
さらに肝生検を施行したところ、細胆管周囲にリンパ球主体の細胞浸潤がみられ、細胆管の増生も伴い、
非特異的な胆管炎と考えられた。また、IgG、IgG4染色を施行したが明らかな陽性細胞は認められなかっ
た。SLEに伴う自己免疫性胆管炎と診断し、プレドニン40mg/日内服を開始したところ、症状は速やかに
改善し現在は外来にて内服加療中である。【考察】自己免疫性胆管炎はAMA陰性でANAが陽性を示す胆
汁鬱滞を主体とする新しい概念の肝疾患として提唱されたが、現在は原発性硬化性胆管炎の亜型と考えら
れている。しかしながらその診断基準に対してはコンセンサスが得られていない。また原発性胆汁性肝硬
変の10%には診断時にAMA陰性となる症例がある。近年SLEやシェーグレン症候群などに胆・膵疾患が
合併することが報告されており本例はオーバーラップした病態と考えられた。
12
脾門部動静脈瘻により門脈圧亢進症をきたし,塞栓術で改善した1例
沼野 史典1、廣瀬 純穂1、鈴木 雄一朗1、佐藤 光明1、小松 信俊1、中山 康弘1、井上 泰輔1、坂本 穣1、
荒木 拓次2、榎本 信幸1
1
山梨大学 医学部 第1内科、2山梨大学 医学部 放射線科
【緒言】今回我々は, 脾動静脈瘻により門脈圧亢進症を来たし, 塞栓術により軽快したと考えられる1例を
経験したので, 若干の考察を加えて報告する。【症例】79歳, 男性【主訴】腹部膨満感【現病歴】1992年,
C型慢性肝炎に対しインターフェロン(IFN)治療しSustained viral response(SVR)となり, 以後肝機能は
正常化していた。2013年4月, 検診の上部消化管内視鏡 (EGD)にて食道胃静脈瘤を認め当科紹介受診。そ
の後,5月末より急激な腹水増悪にて入院。【既往歴】1992年:急性胆嚢炎で胆嚢摘出術, 2009年:総胆管結
石で内視鏡的砕石術(EST), 2010年:感染性心内膜炎で弁置換術。【身体所見】血圧:138/97mmHg, 脈
拍:75bpm,腹水多量を認め, 肝は触知しない。圧痛なし。【検査所見】WBC:3730/μl,RBC:335万/μl,
Hb:10.4g/dl, PLT:5.7 万 /μl, Alb:3.4g/dl, T-Bil:1.0mg/dl, BUN:40.0mg/dl, Cre:2.16mg/dl,
PT%:80.6%, NH3:144μg/dl, HCV PCR:陰性,HBV RCR:陰性, ANA:320倍, AMA M2:陰性, 腹水性
状:漏出性。感染徴候なし。EGD:食道胃静脈瘤Ls, F2,Cb,RC+,Lg-cf RC-。US:門脈血栓なし, 求肝性の門
脈血流。Dynamic CT:肝萎縮あり, 脾臓は腫大し, 脾動脈・脾静脈は拡張,動脈相で脾静脈・門脈が動脈と
同レベルに濃染されていた。【臨床経過】C型慢性肝炎は完治しており, CT所見より脾門部動静脈瘻によ
る門脈圧亢進を疑った。食道静脈瘤に対し内視鏡的結紮術施行し, 慢性腎不全/難治性腹水に対しては血液
透析を導入した。腹部血管造影で拡張した脾動脈・脾静脈にはっきりした側副血行路を認め、動静脈瘻と
判断し,コイル塞栓術を施行した。合併症なく経過良好で, 自覚症状は改善, 現在経過観察中である。【結
語】原因不明の門脈圧亢進症の際は, 動静脈瘻の有無も考慮すべきと考える。
13
Segmental arterial mediolysisが成因と考えられた脾動脈瘤破裂の1剖検例
根布屋 悟1、本間 照1、石原 法子2、渡邉 雄介1、関 慶一1、岩永 明人1、阿部 聡司1、石川 達1、菅野 智之1、
井上 良介1、吉田 俊明1
1
済生会新潟第二病院 消化器内科、2済生会新潟第二病院 病理診断科
手術などに伴わない脾動脈瘤破裂は、男性に多い動脈硬化によるものや、経産婦における成因不明の変化
によるものなどが原因として考えられてきたが、近年segmental arterial mediolysis, SAMが注目されて
いる。今回われわれは、ショック状態で搬送され、緊急CTで脾動脈瘤破裂と上腸間膜動脈近位部解離性動
脈瘤を認め、急激な転機をたどった1例を経験し、剖検の機会を得た。症例は51歳、男性。上腹部痛を主
訴に救急搬送された。痛みの局在は不明瞭で、苦悶のため身の置き所がない様子で盗汗著明であった。腹
壁は軟、反跳痛は見られなかった。来院時、橈骨動脈を触れなかったが、外液の輸液を開始したところ、
収縮期血圧は100mmHgを保てるようになり橈骨動脈も触知可能となった。CTでは脾動脈近位部に軽度
高吸収の腫瘤を認め、腫瘤内に造影剤の漏出を認めた。上腸間膜動脈近位部にもflapを伴う径の拡大を認
めた。帰室後に意識レベルが低下しCPAとなった。すぐにCPRを開始したが反応せず死亡確認した。脾動
脈瘤は瘤破裂による出血性ショックを生じた後、網嚢内に血液が貯留し一時的に止血され循環動態が安定
するが、その後腹腔内に再破裂し重篤な状態となるdouble rupture phenomenonが知られている。本症
例もこの現象が生じたと考えられる。SAMは腹部大動脈から分岐する中型筋性動脈に好発し、中膜融解に
より解離性動脈瘤を形成し、多くの場合破裂に至る急性疾患である。本例でも剖検の結果、脾動脈以外の
中型の腹腔内動脈にも異常が認められ、segmental arterial mediolysisが背景に存在したものと考えられ
た。
14
肝胃間膜に発生した孤立性Castleman diseaseの一例
寺田 志洋、本山 博章、大久保 洋平、野竹 剛、北川 敬之、酒井 宏司、古澤 徳彦、清水 明、横山 隆秀、
小林 聡、宮川 眞一
信州大学 医学部 第一外科
症例は54歳,女性.健康診断時の画像検査にて上腹部腫瘤を指摘された.同腫留はPET-CTにてSUVmax 6.4の異常集積を呈していたため,悪性腫瘍を疑われ加療目的に当科紹介となった.腫瘍は胃小弯肝
胃間膜内に存在し,内部石灰化を伴う径24mmの病変として認められた.病変は遅延性濃染像を呈し,
MRIではT2WI高信号,及び拡散強調像で高信号として描出された.傍大動脈リンパ節孤立性腫大(直径
10mm)を認めたがPET-CTでの集積性は認められなかった.悪性リンパ腫の鑑別として可溶性IL-2
receptor値を測定したが,基準値以下であった.以上の所見より腸管外GISTを疑い,傍大動脈リンパ節
サンプリング及び腫瘍摘出術を施行する方針とした.術中迅速診断にて傍大動脈リンパ節には腫瘍性変化
を認めず,腫瘍摘出術を施行した.肝胃間膜腫瘍は永久標本での病理組織検査により,孤立性Castleman
diseaseと診断された.腹腔内に発生する孤立性Castleman diseaseは稀であり,文献的考察を加え報告
する.
胆1
11:50~12:20
15
座長
塩路 和彦(新潟大光学診療部)
小児総胆管結石症の一例
藤森 尚之、太田 裕志、溜田 茂仁、渡邊 一弘、進士 明宏、小林 正和、武川 建二
諏訪赤十字病院 消化器科
症例は12歳の女性。これまで成長・発達に異常は指摘されておらず、既往・家族歴にも特記すべき事項は
なかった。今回、朝食後に嘔吐および腹痛が出現し、改善しないため当院を受診された。身長 166 cm、
体重 52.8 kg。心窩部に圧痛を認め、腸蠕動音は亢進していた。血液検査でAST 73 IU/l、ALT 41 IU/l、
LDH 282 IU/l、ALP 726 IU/lと肝胆道系酵素の上昇があり、腹部CTで胆嚢結石および総胆管結石を認
めた。総胆管結石症と診断し、内視鏡的逆行性胆管造影を行い下部胆管に5mm大の結石を認めた。内視
鏡的バルーン乳頭拡張術を付加し、バスケットを用い結石除去を行った。術後に症状は軽快し、経口摂取
再開後も再燃なく経過した。胆嚢結石に対しては長期休業中の胆嚢摘出術を予定し、第7病日に退院とし
た。しかし、1ヶ月後に再度腹痛発作が出現したため当院を再受診された。胆石発作を疑い腹部CTを施行
したが、結石は胆嚢および総胆管内になく骨盤内小腸に認められ自然排石されたと考えられた。ICの結果、
現時点では胆嚢摘出術を予定せずに経過観察の方針に変更となった。
小児の胆石症は比較的稀な疾患で、遺伝性球状赤血球症、先天性胆道拡張症などの基礎疾患を有する場
合が多いとされている。しかし、近年の食生活の変化などから成人同様の特発性胆石症がしばしば報告さ
れてきている。今回、我々は特発性胆石症による小児総胆管結石症に対して内視鏡的治療を施行した一例
を経験した。小児の急性腹症に対して、胆石症および総胆管結石症も鑑別が必要であることの示唆に富む
症例と考えられたため報告する。
16
乳頭部胆管の壁肥厚を内視鏡的に確認し得たOddi括約筋機能不全(SOD)の1例
清水 雄大、比佐 岳史、宜保 憲明、若槻 俊之、桃井 環、古武 昌幸、高松 正人
佐久総合病院 肝胆膵内科
【症例】患者は80歳代、女性。主訴は発熱、上腹部痛。初診9か月前、近医で肝胆道系酵素上昇を指摘さ
れたが、経過観察で正常化した。初診2日前、発熱、上腹部痛を認め、近医を受診した。肝胆道系酵素上
昇および、腹部造影CTで肝内・肝外胆管および主膵管の拡張を認め、精査加療目的に当科紹介となった。
CTでは胆管・主膵管の末端部に壁肥厚が疑われた。EUSでは乳頭部領域の胆管壁に全周性肥厚を認めたが、
明らかな腫瘤や結石はなかった。以上より、乳頭炎あるいはOddi括約筋機能不全(SOD) と診断した。
ERCPを施行したが、胆管挿管が困難であった。主膵管内にガイドワイヤを留置し、Transpancreatic
sphincterotomyを施行した。竹輪の縦切り状となった肥厚した乳頭部胆管が露出し、胆管挿管が可能と
なった。胆管IDUSでは胆管末端部に全周性の壁肥厚を認めた。腫瘍除外目的に擦過細胞診を施行したが、
Class IIIであった。3ヶ月後、胆管擦過細胞診を再検し、Class IIであった。術後1年が経過した現在、腹
痛や肝胆道系酵素の上昇はなく、画像上胆管および主膵管径は縮小し気腫を認めている。
【考察】本例はCT、EUS、胆管IDUSで乳頭部胆管の壁肥厚像を認め、内視鏡的に確認しえた。
17
SpyGlass&regの使用経験
古川 浩一1、橋立 英樹1,2、小川 光平1、倉岡 直亮1、五十嵐 俊三1、佐藤 宗広1、相場 恒夫1、米山 靖1、
和栗 暢夫1、五十嵐 健太郎1、杉村 一仁1
1
新潟市民病院消化器内科、2同病理科
スパイグラスは内視鏡医が胆道・膵管内を直視下で観察・治療をすることを可能にしたプラットホームで
あり、専用に開発された生検鉗子スパイバイトによる確実な組織による正診率の向上が期待されている。
昨年、本邦でも器具承認がなされ、当科で4例に使用を試みたので操作性、視認性、生検検体状況につき
報告する。まず操作性では、ERCP用スコープに装着して一人操作が可能である。しかし、先端部は4方向
にダイヤル操作にて動かせるものの可動範囲は限定されており、ガイドワイヤー留置後の挿入が前提と考
えられた。また、ダイヤル操作と画面の軸は固定されていないため操作に慣れが必要であった。次に、視
認性については小型6,000ピクセル光ファイバープローブを装着し生検部位の観察が可能であった。一方、
得られた画像からは質的診断には不十分な印象であり、生検部位への誘導や粗大病変の目視のための使用
が望ましいと考えられた。胆汁、膵液細胞診はそれぞれClass IIまたはIIIであり、胆汁膵液細胞診での悪
性診断が困難な症例であったのに対し、スパイバイトによる生検では免疫組織学検討を含め3例に悪性診
断が可能であった。また、術後の有害事象は4症例とも認めなかった。以上より、SpyGlassを併用しての
生検による診断精度の向上が期待できると考えられた。
胆2、膵1
18
13:40~14:20
座長
進藤 浩子(山梨大1内)
細径気管支鏡により内瘻化が可能であった胆管狭窄の一例
熊木 大輔1、塩路 和彦1、上村 顕也1、小林 雄司1、阿部 寛幸1、高橋 祥史1、水野 研一1、竹内 学1、青柳 豊1、
大崎 暁彦2、渡辺 順2
1
新潟大学医歯学総合病院 消化器内科、2新潟県厚生連佐渡総合病院 消化器内科
【はじめに】経皮胆道鏡検査はPTBD後に16~18 Fr程度の瘻孔拡張を必要とし、比較的侵襲の高い検査
手技である。頻回の検査が困難な症例に対し、細径気管支鏡を用いることで瘻孔拡張を行わず、治療が可
能であった症例を経験したので報告する。【症例】40歳代女性。高度精神遅滞で施設入所中。脊椎側弯症
にて手術既往あり。2013年1月16日 黄疸が出現し前医CTで胆管拡張を認めた。ERCPが試みられたが、
脊椎側弯症術後のためか十二指腸の変形が強く、乳頭を認識出来ずに終了した。1月21日 ERCP目的で当
院紹介入院。乳頭が確認できたため造影すると乳頭部が嚢腫状に拡張、さらに造影すると膵管が造影され
た。嚢腫状に拡張した部分は乳頭部胆管と考えられ、膵胆管合流異常と先天性胆道拡張症
(choledochocele)と診断した。しかし肝側胆管は造影されず、ドレナージは不成功に終わった。
ERCP後膵炎および重症MRSA肺炎を発症したが、保存的治療で軽快。黄疸も自然軽快したため前医へ転
院となった。4月22日 黄疸が再燃し、胆管炎も発症。経乳頭的処置は危険と判断し、高度精神遅滞のため
鎮静下にPTBDが施行された。その後施設への入所を目指し内瘻化が試みられたが、わずかに十二指腸側
が造影されるもののガイドワイヤーが通過しなかった。7月5日 内瘻化目的で再度当院転院。胆道鏡下で
の内瘻化を行う方針となったが、頻回の瘻孔拡張は困難と判断。7月10日 細径気管支鏡(BF-XP260F)
を使用し、経皮胆道鏡下に内瘻化を行った。胆道鏡観察では、下部胆管は瘢痕様で腫瘍を疑う所見は認め
なかった。胆管内腔と思われるpin holeを認め、同部からガイドワイヤーを十二指腸まで進める事が可能
であり、内瘻化に成功した。【まとめ】BF-XP260Fは外径 2.8 mm, 1.2 mmの鉗子口径を有する気管支
鏡で、10 Frシースを通して使用した。頻回の検査が困難な症例に対し、瘻孔拡張を行わずに短期間で経
皮胆道鏡下に内瘻化を行う事が可能であった。
19
胆道出血を契機に見つかった胆嚢癌の1例
榎本 貴士1、大関 康志1、杉谷 想一1、上野 亜矢1、藤原 真一1、小林 由夏1、飯利 孝雄1、大矢 敏裕2、
小林 寛3
1
立川綜合病院 消化器センター内科、2立川綜合病院 消化器内視鏡科、3立川綜合病院 病理科
症例は83歳の女性で発熱と息苦しさを認め近医を受診し、貧血と心雑音を認めたため精査目的に当院を紹
介受診した。心エコーにて重度僧帽弁閉鎖不全症を認め、血液検査では貧血と肝胆道系逸脱酵素の軽度上
昇を認めた。腹部造影CT検査で胆嚢の腫大と胆嚢底部に結石を認めた。胆嚢管~胆嚢頸部は拡張し胆嚢頸
部は造影効果を示す結節性病変を認め、MRIで胆嚢頸部病変は拡散強調像で高信号を認め、胆嚢癌が疑わ
れた。腫大した胆嚢内腔はT2強調像で軽度低信号、T1強調像で高信号を呈し、胆嚢内は血液により充満
していると考えられた。ERCPでは、十二指腸乳頭部の開口部は開大し凝血塊の流出を認め、胆管内はミ
ミズ様の血腫を認めた。胆嚢管は凝血塊のため描出されなかった。胆汁の細胞診はclass3であった。以上
より、胆道出血を合併した胆嚢癌が疑われたため、手術を行うこととした。手術は胆嚢摘出術+肝床切除
術を行った。胆嚢内は血性胆汁が充満しており、胆嚢頸部に70×45mmの隆起性病変を認めた。病理組
織学的診断では、乳頭浸潤型の高分化型管状腺癌(乳頭浸潤型 tub1>pap)を認めたが、肝床浸潤は認
めなかった。また、腫瘍に明らかな露出血管は認めなかったが、比較的血管が豊富な乳頭状腫瘍であり、
腫瘍からの出血が疑われた。本症例は貧血を契機に発見された胆道出血を伴った胆嚢癌でありまれな症例
と考えられた1例である。若干の文献的考察を加え報告する。
20
皮下結節性脂肪壊死を合併した慢性膵炎の1例
盛田 景介、吉川 明、富所 隆、佐藤 知巳、渡辺 庄治、福原 康夫、佐藤 明人、堂森 浩二、中島 尚
長岡中央綜合病院 内科
【はじめに】皮下結節性脂肪壊死は、膵疾患に伴う稀な疾患であり、四肢に好発する軟性皮下結節として
見られる。今回我々は皮下結節性脂肪壊死を合併したアルコール性慢性膵炎の1例を経験したので報告す
る。【症例】65歳男性。平成25年5月3日に急性膵炎にて当科へ入院、保存的治療で軽快した。以降は外
来通院していたが、8月中旬より食欲不振、上腹部痛を自覚し、8月20日に当科を受診。血液、画像検査
所見より膵炎の再発と診断、同日当科へ入院した。絶飲食、大量輸液、抗生物質、蛋白分解酵素阻害薬等
で治療を開始し、腹痛は一時軽快傾向であったが、8月24日頃より血中アミラーゼの再上昇傾向を認めた。
9月1日頃からは両下腿に有痛性の浸潤性紅斑が出現し、次第に増加、増大傾向を認めた。皮膚生検を行い、
皮下結節性脂肪壊死の診断を得た。MRCPで膵管狭窄が高アミラーゼ血症の原因と考えられたため、9月2
日に膵管ドレナージ目的のERCPを施行。主乳頭からのアプローチは主膵管の屈曲、狭窄が強く困難で
あったため、副乳頭よりERPDチューブを留置した。以降は血液検査で改善が見られ、皮膚病変も軽快傾
向を認めたため、9月21日に退院した。【考察】皮下結節性脂肪壊死症は下腿に好発する有痛性ないし無
症候性の皮下結節で、膵炎や膵腫瘍によって逸脱した膵酵素が皮下脂肪に作用して脂肪壊死を生じ、皮下
脂肪織炎を生じると考えられている。一般的には膵疾患に準じた治療をすることで皮疹の軽快をみること
が多く、今回の症例もステントを留置し膵管のドレナージを行ったことが奏功した。腹部症状が見られず
皮膚症状のみの症例、皮膚症状が先行する症例が比較的多いことから背景にある膵疾患の診断、治療が遅
れ予後が悪化する可能性がある。皮下結節性脂肪壊死は、いまだ発症機序も不明で日常臨床で遭遇する機
会は少ないが、潜在する膵疾患の早期診断のためにも、膵疾患の皮膚病変として念頭に置くべきであると
考える。
21
膵動静脈奇形による消化管出血に対し、経動脈的コイル塞栓術を施行した一例
上條 祐衣、桃井 環、古武 昌幸、若槻 俊之、清水 雄大、比佐 岳史、高松 正人
JA長野厚生連 佐久総合病院 内科
【症例】60歳代男性。【主訴】腹痛、黒色便。【現病歴】4日間持続する黒色便を主訴に他院受診。上部、
下部内視鏡を施行し異常を認めず、当院を紹介受診した。当院にてカプセル内視鏡を行ったが異常はな
かった。4か月後に再度黒色便を認めたため、上部下部内視鏡再試行、腹部単純CT、腹部MRIを施行され、
当院でカプセル内視鏡を再施行したが異常を認めなかった。膵管胆道からの出血除外のため、超音波内視
鏡目的に当科へ紹介された。超音波内視鏡で膵頭部に蛇行する拡張血管の集簇を認め、膵動静脈奇形が疑
われた。腹部造影CTでは、肝動脈-門脈短絡が疑われたため、血管造影を施行した。血管造影では、上腸
間膜動脈造影で下膵十二指腸動脈から細動脈を介して、門脈への短絡路を認めた。さらに腹腔動脈造影で
は、胃十二指腸動脈、後上十二指腸動脈、胆管周囲動脈叢から細動脈を介して門脈への短絡路を認めた。
胃十二指腸動脈が出血責任血管である可能性が高いと判断し、胃十二指腸動脈のコイル塞栓術を施行した。
塞栓後の総肝動動脈造影では短絡路の造影残存を認めた。術後の腹部超音波にて、膵頭部にドプラで血流
シグナルを認める分葉状無エコー域が指摘され、肝動脈-門脈短絡残存を認めた。今後再出血する可能性は
あるが、塞栓による虚血性臓器障害を考慮し、追加のコイル塞栓術は施行せず退院とした。1か月後の外
来診察で、活動性出血を示唆する所見を認めなかったが、腹痛の持続を認めた。【考察】膵動静脈奇形は
消化管出血の原因として、まれではあるが、時に致命的な出血を起こす。本症例では、上部、下部内視鏡
とカプセル内視鏡検査で出血源が不明であった消化管出血に対し、超音波内視鏡、腹部造影CTで膵動静脈
奇形と診断、経動脈的コイル塞栓術を行った。一定の止血効果が得られたが、腹痛が残存し、治療法の選
択には検討が必要と考えられた。【結語】まれな膵動静脈奇形による消化管出血の例を経験したので、若
干の文献的考察も加え報告する。
膵2
14:20~15:00
22
座長
古川 浩一(新潟市民病院)
胃内出血を来した自己免疫性膵炎の1例
樋口 和男、須藤 貴森、望月 太郎、一條 哲也
安曇野赤十字病院 消化器内科
胃内出血を来した自己免疫性膵炎の1例症例は74歳男性。2003年頃から、検診腹部エコー検査(US)で脾
臓の異常を指摘されていた。2006年人間ドックUSで脾腫瘍を疑われ、2006年2月20日に他院を受診し
た。血清アミラーゼ(以下Amy) 136・膵Amy 106と軽度高値を認め、造影CTで膵体尾部周囲の液体貯留
と同部から連続し脾を取り囲むような仮性嚢胞様の被膜下液体貯留を認め、2006年3月17日当科紹介受
診した。来院時Amy 217と上昇も、CRP・血算・腫瘍マーカー等も正常で禁酒指示し、カモスタットメ
シル酸塩(以下FOY錠)等の内服加療継続となった。2006年3月27日上部消化管内視鏡検査(以下EGD)で、
胃体上部大彎に、粘膜充血・腫脹を認めた。2006年12月10日より黒色便出現し、動悸も出現したため、
12月19日当院受診。EGDで同部の腫大した襞上のびらんより湧出性出血を認め、止血処置を行ない入院、
禁酒を指示した。以後、数年間経過良好で、2010年、2011年のEGDでも異常を認めなかった。2011年
からは飲酒再開し、FOY錠内服も終了とした。2012年11月頃より心窩部痛が出現。12月12日Amy、
CRPは正常も、膵Amy 62と軽度高値であり、CT所見とあわせ慢性膵炎の急性増悪と診断し、禁酒と
FOY錠の内服を再開した。しかし2013年2月14日夕、心窩部痛再度増悪し入院した。EGDで、同部位の
襞は腫大し・充血していたが、出血は軽微であった。血清IgG 2245・IgG4 156で、ERP像で膵尾部の
狭窄、PETで膵尾部から脾門部にわたる中等度の集積像を認めた。以上より自己免疫性膵炎と診断し、3
月16日よりプレドニゾロン(PSL)治療を開始し、改善あり退院、PSL漸減し治療継続していた。2013年4
月12日、黒色便・息切れを主訴に外来受診。著明な貧血あり、EGDにて同部に湧出性出血認め止血処置
行い入院した。病変周囲の生検組織所見では、背景間質はIgG4染色陽性で、IgG4陽性形質細胞も少数認
められた。以後現在まで、膵炎・出血とも経過良好である。自己免疫性膵炎による慢性炎症の波及から、
7年前より同様の部位に胃びらんの再燃を繰り返し、出血を来したと考えられ、自己免疫性膵炎の合併症
として貴重と考え報告する。
23
Mixed acinar-endocrine carcinomaの一例
上條 祐衣、桃井 環、古武 昌幸、若槻 俊之、清水 雄大、比佐 岳史、高松 正人
JA長野厚生連 佐久総合病院 内科
今回、我々は腺房細胞癌(ACC)と神経内分泌癌(NEC)の併存腫瘍を経験したので報告する。症例は
60歳代の男性で、高血圧症、糖尿病、高脂血症の既往があり、飲酒歴は機会飲酒程度であった。臍周囲部
の違和感を主訴に近医を受診し、腹部USで膵頭部に低エコー腫瘤を指摘されたため当科を紹介された。身
体所見に異常を認めなかったが、検査成績ではDUPAN-2とelastase 1が上昇していた。腹部CTでは膵頭
部に辺縁部が軽度造影される6cm大の類円形の充実性腫瘤を認め、その尾側膵管は軽度拡張していた。腫
瘍はMRIのT1強調像で概ね低信号、T2強調像で中心部高信号、辺縁部低信号、拡散強調像で中心部低信
号、辺縁部高信号を呈し、中心部の壊死が示唆された。ERCPでは拡張した膵頭部主膵管内に腫瘍栓と思
われる透亮像を認めた。以上の画像所見からACCあるいは神経内分泌腫瘍を疑い、EUS-FNAを施行した。
採取された検体には一部に管腔形成を伴い胞巣状に増殖する腫瘍を認め、免疫染色で腫瘍細胞はantitrypsin陽性、anti-chymotrypsin陽性であることからACCと診断された。総肝動脈への浸潤が疑われた
ためgemcitabineとS-1による化学療法を2コース施行後に新潟県立がんセンター外科に転院し、亜全胃温
存 膵 頭 十 二 指 腸 切 除 術 を 施 行 さ れ た 。 腫 瘍 内 に は 術 前 に 診 断 さ れ た ACC の 他 に 、 免 疫 染 色 で
synaptophysin陽性、chromogranin A陽性の腫瘍細胞が索状に配列する成分が併存していた。この成分
はKi-67 labeling indexが約40%であることからWHO分類におけるNECに相当し、腫瘍全体としては
Mixed acinar-endocrine carcinoma(MAEC)と診断された。MAECは比較的稀な腫瘍であり、若干
の文献的考察を加えて報告する。
24
IgG4関連多臓器リンパ増殖性疾患(IgG4+MOLPS)群と診断された自己免疫性
膵炎の1例
倉岡 直亮1、古川 浩一1、小川 光平1、五十嵐 俊三1、佐藤 宗広1、相場 恒男1、米山 靖1、和栗 暢生1、
杉村 一仁1、五十嵐 健太郎1、橋本 茂久2、渡辺 順2、橋立 英樹3、長谷川 尚4
1
新潟市民病院 消化器内科、2新潟市民病院 耳鼻咽喉科、3新潟市民病院 病理診断科、4新潟市民病院
腎膠原病内科
自己免疫性膵炎は種々の多臓器障害を併存するといわれ、以前は個々の疾患として考えられてきたが、
IgG4関連疾患としての一つの疾患概念が確立されつつある。2010年度にはあらたな診断手引きとして
IgG4 関 連 多 臓 器 リ ン パ 増 殖 性 疾 患 群 ( 以 下 IgG4+MOLPS) が 提 唱 さ れ た 。 今 回 、 わ れ わ れ は
IgG4+MOLPSを背景とした自己免疫性膵炎の1例を経験したので報告する 。【症例】70歳代男性、
2009年頃より倦怠感を自覚。白内障のため近医眼科受診中であったが、同時期よりdry eyeのため点眼薬
を使用開始し、口腔内の乾燥、耳下腺の腫脹も自覚。2011年春頃より食欲低下みられ、A病院を受診し、
肝障害及び耳下腺腫脹を指摘され精査加療目的に2011年11月当院消化器内科紹介受診となる。【臨床経
過 】 当 院 血 液 検 査 に て 血 清 ア ミ ラ ー ゼ 375IU/L 、 血 清 リ パ ー ゼ 276IU/L と 高 値 を 示 し た 。 IgG
2672mg/dl、IgG4は184mg/dlであった。画像所見ではCTにて膵尾部腫大、capsule like rimを認め自
己免疫性膵炎と診断。両側の耳下腺腫脹、また左総腸骨動脈周囲に軟部腫瘤を認め後腹膜線維症と考えら
れた。また、左下葉に結節性病変あり炎症性偽腫瘍と診断。IgG4関連肺病変が疑われた。ERCPにて肝内
胆管に不整で多発する狭窄像がみられ硬化性胆管炎と診断。当院耳鼻科にて耳下腺より腫脹したリンパ節
の生検を施行した。リンパ節は腫瘍性変化のない正常リンパ節であったが、免疫染色にてIgG4の著明な発
現を認めた。以上、画像所見及び病理所見よりとIgG4+MOLPSと診断した。テロイド内服にて治療を開
始となる。【結語】IgG4+MOLPSは比較的新しい疾患概念であるが、自己免疫性膵炎の診断に際しては
十分な全身検索を行う必要があると考えられた。
25
診断に苦慮した膵嚢胞性病変の1例
高岡 慎弥1、高橋 英1、加藤 亮2、横田 雄大1、進藤 浩子1、門倉 信2、高野 伸一1、深澤 光晴1、佐藤 公1、
榎本 信幸1
1
山梨大学 医学部 第一内科、2市立甲府病院
症例は72歳、男性、大酒家。既往歴は気管支喘息。2012年1月中旬より心窩部痛が出現。2月下旬に前医
受診、血液検査では膵酵素上昇、炎症反応上昇のいずれも認めなかった。腹部超音波検査、腹部造影CTで
は膵頭部腫大と頭部背側に14mm大の嚢胞性病変を認めた。主膵管拡張は認めなかった。慢性膵炎に伴う
仮性嚢胞を疑いERPを行うと主膵管に狭窄は認めず、頭部の主膵管から嚢胞が造影された。膵管が破綻し
て仮性嚢胞を形成したと考え,主膵管に膵管ステントを留置した。EUSでは嚢胞周囲に低エコー領域を認め、
慢性膵炎と膵癌の鑑別が困難であり、EUS-FNAを行ったがclassIIであった。その後の経過で嚢胞の縮小
を認めないことから,膵管ステントは留置2カ月後に抜去した。8月に再度膵炎を起こし入院となった。CT
で嚢胞は著変なかったが、周囲に25mm大の低吸収域を認めた。再度ERPを行い、ENPD留置による連続
細胞診は最高でclassIIIであった。画像所見より膵癌を否定できないため、嚢胞周囲の低エコー領域に対し
てEUS-FNA再検の方針となった。25G針で穿刺を行い、細胞診で不規則な重積を示す細胞集団が見られ、
クロマチンの増量および大型核小体も認めたため、腺癌が疑われた。膵頭部癌cStageIIIの術前診断で膵頭
十二指腸切除術を施行した 。病理標本では分枝膵管から嚢胞壁の一部まで上皮内癌が広範に進展し
(35mm)、数カ所で微小な浸潤を認めた。CTでの低吸収領域は慢性膵炎像であった。Invasive ductal
carcinoma,StageIと最終診断した。分枝膵管内に上皮内癌が広範に進展したことで膵液の流出障害がお
こり、限局性膵炎、貯留嚢胞をきたしたと考えられた。
膵3
15:00~15:40
26
座長
越智 泰英(長野市民病院)
WDHA症候群を呈したVIP産生膵内分泌腫瘍の1例
三宅 望1、古川 浩一1、林 雅博1、和栗 暢夫1、倉岡 直亮1、小川 光平1、五十嵐 俊三1、佐藤 宗広1、米山 靖1、
相場 恒夫1、杉村 一仁1、五十嵐 健太郎1、橋立 英樹2
1
新潟市民病院消化器内科、2同病理科
症例は30歳代、男性。主訴は水様下痢、体重減少、筋力低下。現病歴では5ヶ月前から下痢症状出現、増
悪。近医にて内服治療を受けるも軽快せず当科紹介。外来腹部CTにて膵腫瘍、多発肝転移腫瘍を認め精査
加療目的に入院。臨床所見、血液生化学所見からは血管作動性腸管ポリペプチド(以下VIP)1210pg/ml
と高値を示し、VIP産生腫瘍による水様下痢低カリウム血症無胃酸症候群(以下WDHA)症候群が疑われ
た。肝腫瘍生検を施行し、synaptophysin(+)、chromogranin A (+)、gulucagon(-)、inshulin(-)、
somatostatin(-)、prolactin(-)の腫瘍組織が確認された。以上より症候性非切除膵島腫瘍にてオクトレチ
ドを開始。投薬による下痢症状の一時的な改善傾向は認めたが再増悪。CVポート増設にて大量輸液(一日
の輸液量5000ml-7000ml、K 240-320 mEq、NaCH3 80-1000mEq)および内服重曹6g、グル
コン酸カリウム(4mEq/g)9gを継続し、在宅療養可能となり、復職した。しかし、VIP値は高値を持続
し、病勢コントロールを目標にEverolimus併用を試みるもGrade 3の口内炎にて休止。肝転移巣に対し
肝動注を開始するも抗癌剤による有害事象にて中断となる。その後も種々の化学療法を試みるも奏功は得
られなかった。高度の下痢が継続し、電解質異常による入退院を繰り返し、治療開始後25カ月目に腎前性
腎不全、代謝性アシドーシス、臀部蜂か織炎、真菌性敗血症、DICにて永眠された。VIP産生膵内分泌腫
瘍は希少であり、切除不能の場合は治療に難渋するといわれる。診療上示唆に富む症例と考えられ報告す
る。
27
女性に発症した膵lymphoepithelial cystの2例
田代 興一1、小島 英吾1、小林 奈津子1、松村 真生子1、壇原 哲也2、成田 淳2、吉澤 明彦3
1
長野中央病院 消化器内科、2長野中央病院 外科、3長野中央病院 病理科
症例1は50歳代後半の女性で,検診でCA19-9が1007.1 U/mlと高値を認め当科受診となった.精査にて
CTで膵尾部に60×44 mmの多房性の嚢胞性腫瘤を認め,嚢胞壁と隔壁は造影効果を認めた.腹部超音波
では嚢胞内にdebrisを認めた.MRIでは嚢胞はT1WIで低信号,T2WIで高信号,DWIで低信号だが,房
の一部はDWIで高信号を示した.ERPでは尾側膵管の頭側への偏位を認めたが,膵管と嚢胞との交通は認
めなかった.尾側膵切除を行った.固定標本では嚢胞は黄色ゼリー状の物質で満たされていた.嚢胞壁は
扁平細胞で被覆され,間質にはリンパ濾胞を認め,lymphoepithelial cystと診断された.症例2は60歳
代後半の女性で,体重減少のため腹部超音波検査を行ったところ,膵尾部に腫瘤を認め当科受診となった.
CA19-9は126.0 U/mlだった.CTでは膵尾部に50×40 mmの腫瘤を認め,内部には多数の造影される
隔壁様構造を認めた.MRIではT2WIで高信号,脂肪抑制T1WIで軽度高信号,DWIで高信号を示し,隔
壁様の構造を除いて造影効果を認めなかった.EUSでは腫瘤はやや不均一にhypoechoicであった.ERP
では異常所見を認めなかった.尾側膵切除を行った.固定標本では多房性の嚢胞性病変で,嚢胞は白色の
チーズ状の物質で満たされており,嚢胞壁は扁平細胞で被覆され,間質にはリンパ濾胞を認め,
lymphoepithelial cystと診断された.Lymphoepithelial cystは良性疾患で,診断がついた場合は経過
観察が可能と考えられている.しかし画像検査による術前診断は困難とされ,ほとんどの症例で手術が行
われきている.最近海外ではEUS-FNAにより扁平細胞とリンパ球を検出することで診断した報告がみら
れるが,本邦では嚢胞性病変に対しての穿刺検査はまだ一般化しているとはいい難い.本疾患は男性に多
い(男性/女性は9/1~4/1とされる)ことから,女性ではさらに診断が困難と考えられた.
28
EUS-FNAで確定診断しえたAdult T cell Leukemia/Lymphomaの1例
伊東 哲宏1、丸山 雅史1、藤森 一也1、滋野 俊1、吉澤 要1、前島 俊孝2、柳沢 隆司3
1
信州上田医療センター 消化器内科、2信州上田医療センター 臨床病理、3信州上田医療センター 臨床検査科
症例は66歳、女性、出身地は長野県。既往は不眠症、交通事故による脊髄損傷、胆のう摘出術。2013年
3月に持続する上腹部痛を主訴に近医を受診、CTにて腹腔内リンパ節の腫大と腸間膜肥厚を認め当科紹介
受診した。悪性リンパ腫を念頭に精査を進めたが表在リンパ節の腫脹は認めず、患者および家族の理解能
力、意思決定能力の欠如により開腹リンパ節生検の同意が得られず診断に苦慮していた。患者および家族
に十分なインフォームド・コンセントのうえ無治療で経過観察の方針としたが、腹腔内リンパ節の顕著な
増大と全身状態の増悪を認め、生命予後が短期間であると判断されたため組織学的診断目的で5月下旬に
EUS-FNAを施行した。穿刺針はBoston scientific社製expect 19G針を使用した。フローサイトメト
リーで は CD2(+)、CD3(+)、CD4(+)、CD5(+) 、 CD7(-)、CD8(+) 、CD10(-)、CD19(-)、CD20(-) 、
CD23(-)、CD16(-)、CD56(-)、CD25(-)、CD30(-)の表面形質を持った細胞を多数認めた。細胞診では
N/C比が高く、クロマチンの増量と核形不整や核小体腫大を伴った裸核様の異型細胞が確認され、核は過
分葉し花弁様:flower-likeであった。 組織診では異型リンパ球の密な増殖巣を認め 、免疫染色では
CD3(+)、CD20(-)、CD79a(-)、CD56(-)でありT細胞系の悪性リンパ腫の所見であった。採取組織を用い
たG-banding検査は分析可能な培養細胞が得られずに不可能であった。血清学的検索においてATLA(+)、
HTLV-1抗体(+)、GP.46抗体(+)、P.53抗体(+)、P.24抗体(+)、P.19抗体(+)でありHTLV-1感染の存在が
明らかとなったためリンパ腫型のAdult T cell Leukemia/Lymphoma:ATLLと診断し6月よりCHOP療
法を継続中である。また、本例ではEUS-FNA後に急速な腹水の増加を認め、腹水中にも同様の異型リン
パ球が検出されたが治療とともに腹水の著明な改善が得られた。悪性リンパ腫におけるEUS-FNAの診断
ではフローサイトメトリーと免疫染色を併用することでその分類に寄与することが報告されている。EUSFNAを用いて診断しえたATLLの報告例はこれまでになく、貴重な症例と考え報告する。
29
膵仮性嚢胞内出血をきたしたアルコール性慢性膵炎の一例
萩本 聡、高木 宏明、金山 雅美、野々目 和信、月城 孝志、康山 俊学、樋口 清博
糸魚川総合病院
【症例】63歳男性。【主訴】左季肋部痛と左背部痛。【現病歴】15年前にアルコール性慢性膵炎と診断
され、4年前に膵尾部の膵石及び膵仮性嚢胞を指摘されたが、その後も断続的に飲酒を続けていた。本年5
月に腹部CTにて膵仮性嚢胞の増大を認め、以降は断酒を行うも、その2ヶ月後に左季肋部痛と左背部痛を
生じたため入院となった。入院時の腹部CTでは、膵仮性嚢胞は出血によりさらに増大し、腹部ドップラー
エコーにて嚢胞内への動脈性の噴出性出血所見を認めた。同日、血管造影を行い、脾動脈下極枝の穿破に
よる嚢胞内出血と診断し、マイクロコイルを用いて同枝を塞栓した。後日行われたERCPでは、膵尾部膵
管は膵石により描出されず、副膵管内にも結石による陰影欠損を認めた。その後、膵炎の治療を継続しな
がら経口摂取を再開するも膵尾部に限局した膵炎の再発を繰り返したため、外科的に膵尾部・脾切除術が
施行された。【考察とまとめ】膵仮性嚢胞における出血の頻度は6-10%で、重篤な合併症の一つである。
膵仮性嚢胞は、6週間を経過しても消失せず腹痛や出血などの症状を呈する場合に治療の対象となる。治
療として経消化管的内視鏡治療や経乳頭的内視鏡治療及び外科的治療が挙げられる。経消化管的治療の適
応は消化管壁と癒着し、嚢胞壁が安定化した仮性嚢胞である。また経乳頭的治療は仮性嚢胞と主膵管との
間に交通がある場合もしくは仮性嚢胞の乳頭側主膵管に狭窄があった場合が適応である。本症例では仮性
膵嚢胞が膵尾部であり消化管および主膵管との距離に乖離があったため適応とならなかった。本症例は
IVRにて出血コントロールすることが可能であったが、膵石を伴う膵尾部膵炎を繰り返し、再出血の危険
性が高いと考えられたため、内視鏡的治療やESWLを行わず外科的治療を行うことを選択した。今後副膵
管結石を内視鏡的に採石する予定である。
膵4
9:20~10:00
30
座長
比佐 岳史(佐久総合病院)
胃への穿破を認めた膵粘液癌の1例
児玉 亮1、牛丸 博泰1、池野 龍雄2
1
1) JA長野厚生連 篠ノ井総合病院 消化器内科、2JA長野厚生連 篠ノ井総合病院 外科
症例は75歳男性。2012年8月に急性膵炎で入院した。その際に行われた腹部CT検査で膵体部に嚢胞性腫
瘤を指摘されたが、嚢胞内に充実成分を認めず急性膵炎後の膵仮性嚢胞と考えられ外来で経過観察となっ
た。2013年5月下旬に心窩部痛が出現し、当院を受診した。腹部CT検査で膵体部の嚢胞性病変の明らか
な増大を指摘された。精査目的で当科に紹介となり入院した。入院後第7病日にERCPを行った際に、胃体
中部小彎に1cm大の瘻孔を認め、瘻孔より粘液塊の露出を認めた。膵管造影では嚢胞を介して主膵管から
胃内へ造影剤が流出した。嚢胞内へ内視鏡を挿入したが粘稠度の高い粘液が多く嚢胞壁の詳細な観察は困
難であった。粘液塊の病理検査で粘液癌と診断した。病変は腹腔動脈根部を巻き込んでおり根治切除は困
難と考えた。絶食、中心静脈栄養管理とし、第14病日より化学療法を開始した。第18病日にショックと
なりCT検査で嚢胞内に血腫を認め、嚢胞内出血と診断したが自然に止血した。第24病日に再度ショック
となった。緊急で血管造影検査を行ったところ脾動脈本幹に仮性動脈瘤を認めコイル塞栓を行った。出血
のコントロールと経口摂取のために手術が必要と考え、第34病日に膵体尾部切除、胃全摘術の予定で手術
を行った。しかし、腫瘍は肝外側区や横行結腸間膜根部、更に腹腔動脈、上腸間膜動脈の根部付近に浸潤
しており、切除不能と判断した。第40病日より食事開始したが特に問題を起こさず経過し、第49病日よ
り化学療法を再開した。現在外来で化学療法を継続中である。膵粘液癌は膵癌取扱い規約上、通常型浸潤
性膵管癌の一亜型に分類されるが、本邦の膵癌登録によれば通常型膵管癌の1.4%と稀な腫瘍であり、胃へ
穿破した症例の報告はさらに少ない。本症例は貴重な症例と考えられ、文献的考察を加え報告する。
31
脾梗塞による腹痛を契機に見いだされた膵尾部癌の一例
品川 陽子、杉谷 想一、大関 康志、上野 亜矢、藤原 真一、小林 由夏、飯利 孝雄、大矢 敏裕
立川綜合病院 消化器センター内科
【症例】64歳男性
【主訴】左季肋部痛、左背部痛【家族歴】特記事項なし【既往歴】右下肢深部静脈血栓症で、61才より
ワーファリン内服中【生活歴】機会飲酒、喫煙20本×20年間【現病歴】 平成25年4月17日に左季肋部及
び左背部に持続する痛みが出現した。翌18日痛みが持続するため当院を受診した。【身体所見】左季肋部
に圧痛を認める以外に特記事項なし。【検査】CRP 1.00mg/dl以外の採血検査には異常を認めなかった。
CTで、膵尾部に境界明瞭な乏血性の膵腫瘍と脾臓内部に造影効果のない低吸収域を認め、脾梗塞と診断し
た。
【経過】脾梗塞の診断で同日入院した。保存的加療で6病日には速やかに痛みは消失した。CEA、CA199、DUPAN2、SPAN1の上昇を認め、膵尾部癌と診断した。画像上は腫瘍内を貫通する脾動脈分枝と、
腫瘍に圧排された脾静脈において、血管の狭小化と壁不正を認め、腫瘍による血管侵襲が否定できない所
見であったが、遠隔転移やリンパ節転移がないため、5月10日膵尾部切除術と脾摘を施行した。経過は良
好で術後16病日に軽快退院した。【病理所見】T3N0M0組織診断では浸潤性膵管癌(高+中分化型腺癌)、
v2 であった。腫瘍の浸潤は脾動脈では血管壁周囲にとどまり、血管壁の破壊はなく、脾動脈内の腫瘍塞
栓もなかった。腫瘍境界部では血管周囲に炎症を認め、一部の血管内皮に器質化した血栓を認めた。
【考察】脾梗塞は一般的に血液疾患による血管内凝固能亢進状態、感染性心内膜炎や心房細動による心原
性塞栓、動脈硬化による血栓、膵炎、腫瘍浸潤等があるが、本例では、術後の病理所見では脾動脈内の腫
瘍塞栓は無かった。また明らかな膵炎はなかったが、脾動脈分枝に血管炎を認めており炎症による脾動脈
血栓が原因であったと考えた。
32
膵管内乳頭粘液性腫瘍の経過観察中に浸潤性膵管癌を発症した3例
田中 佳祐、進藤 浩子、深澤 光晴、横田 雄大、高橋 英、高野 伸一、佐藤 公、榎本 信幸
山梨大学 医学部
【症例1】 70代男性. 2011年8月の健診の腹部超音波検査で膵鉤部に40mm大の多房性嚢胞性病変を指
摘され当院紹介受診. CT, 超音波内視鏡検査施行し分枝型の膵管内乳頭粘液性腫瘍 (以下IPMN)と診断した.
壁在結節は3.5mm, 主膵管径は3mm, また膵液細胞診はclassIIのため外来経過観察とした. 4~6か月毎に
画像で経過をみていたところ, 2012年12月の超音波内視鏡検査で膵鉤部IPMNとは別に膵体部に15mm
大の低エコー結節を認め, EUS-FNAでclassIIIbと膵臓癌が強く疑われ, 2013年1月膵体尾部切除が行われ
最終診断は以下の通りであった. Invasive ductal carcinoma, tub2, pTS1 (18x9mm), pT3, s(+), pN0,
M0 stageIII【症例2】 70代男性. 2012年6月の健診の腹部超音波検査で膵鉤部に25mm大の嚢胞性病変
を指摘され, 同年9月CA19-9 137 U/mlと上昇認めたため同年10月に当院紹介受診. 前医CTと超音波内
視鏡検査より分枝型IPMNと診断. 明らかな壁在結節はなく, 主膵管径は2.7mmと悪性所見に乏しいこと
から外来経過観察とした. 2013年1月MRCPで膵体部主膵管に途絶所見認め, 膵液細胞診でclassVの診断
となった. 同年3月膵体尾部切除術が行われ最終診断は以下の通りであった. Invasive ductal carcinoma,
por, pTS2(24mm), pT3, s(+), pN0, M0 stageIII.【症例3】 80代男性. 2011年10月CTで膵体部に
24mm大の多房性嚢胞性病変認め, 超音波内視鏡検査で分枝型IPMNの診断. 明らかな壁在結節はなく, 主
膵管径は3.0mmと悪性所見に乏しいことから外来経過観察とした. 4~6か月毎に画像で経過をみていたと
ころ, 2013年5月CTで膵鉤部に10mm大の乏血性結節を認め, EUS-FNAでclassVの診断となった. 同年8
月膵頭十二指腸切除術が行われ最終診断は以下の通りであった. Invasive ductal carcinoma, tub2>por,
pTS1(14mm), pT4, pv(+), pN0, M0 stageIVa【考察】IPMNはいずれも悪性を疑う所見に乏しかった
が定期的に画像評価行うことで, 併存膵癌の検出が可能であった. IPMNを経過観察していく上で示唆に富
む症例であり, 文献的考察を含め報告する.
33
嚢胞壁に石灰化を伴う膵管内乳頭粘液性腫瘍の1例
河久 順志1、塩路 和彦2、山本 幹2、小林 正明2、成澤 林太郎2、青柳 豊1、高野 可赴3、黒崎 功3、梅津 哉4
1
新潟大学 医歯学総合病院 消化器内科、2新潟大学 医歯学総合病院 光学医療診療部、3新潟大学 医歯学
総合病院 消化器外科、4新潟大学 医歯学総合病院 病理部
症例は70歳代の男性。2008年8月、人間ドックの腹部超音波検査にて膵嚢胞を指摘され当科紹介。腹部
CTにて膵体部に32mm大の嚢胞壁に卵殻状の石灰化を伴う嚢胞性腫瘤を認めた。ERCPで主膵管と嚢胞の
交通を確認、膵管内には粘液と思われる透亮像を認めた。以上より嚢胞壁に石灰化を伴うという点でやや
atypicalではあるが、分枝型の膵管内乳頭粘液性腫瘍と診断。明らかな悪性所見は認めず、膵液細胞診で
もClass IIIであったため、経過観察の方針となった。以後定期的にCT、MRI、EUSで経過観察されてい
たが徐々に嚢胞径が増大。2012年9月、CTにて壁在結節は認めないものの、大きさが54mmまで増大し
た。EUSにて嚢胞内に粘液と思われるデブリ様エコーは認めるものの壁在結節は指摘されなかった。膵液
細胞診もClass IIIであり明らかな悪性所見は得られなかった。しかし、上部消化管内視鏡検査にて嚢胞が
胃を圧排しており、胃に穿破するリスクも考えられたため手術適応と考えた。当初膵体尾部切除を予定し
ていたが、術前に行ったERCPで膵頭部主膵管からの生検にて腫瘍細胞の存在が疑われたため膵全摘術の
方針となった。2012年11月、手術施行。術中迅速組織診でも膵頭部主膵管に腫瘍細胞の存在を認めたた
め、予定通り膵全摘術が施行された。最終診断は嚢胞内腔の上皮と主膵管の一部に種々の異型と乳頭状増
殖を認めたものの浸潤した領域は認めず、Intraductal papillary-mucinous adenoma (IPMA)と診断さ
れた。嚢胞壁には石灰化を認め、一部に骨化を伴っていた。膵管内乳頭粘液性腫瘍で嚢胞壁に石灰化を伴
うことは稀であり、貴重な症例と考えられたので報告する。
膵5
10:00~10:30
34
座長
川井田 博充(山梨大1外)
当院における小膵癌切除例の検討
桃井 環1、比佐 岳史1、大久保 浩毅2、宜保 憲明1、若槻 俊之1、清水 雄大1、古武 昌幸1、高松 正人1
1
JA長野厚生連 佐久総合病院 肝胆膵内科、2JA長野厚生連 佐久総合病院 外科
【目的】小膵癌切除症例の検討から膵癌早期診断の方策を考察すること。【方法】1998年5月~2013年
3月の間に当院で手術を施行し、組織学的腫瘍径20mm以下の浸潤性膵管癌(以下TS1膵癌)24例を対象と
した。対象の内訳は、年齢が52~85歳(中央値68.5歳)、男女比が14:10、病変部位が頭部12例、体部
11例、尾部1例、組織学的腫瘍径が10~20mm(中央値15mm)であった。検討項目は、発見契機、各種検
査所見、病理所見、予後とした。【結果】●発見契機:黄疸が5例、膵に関連しない非特異的症状が6例、
糖尿病の悪化が3例、ドックUSが4例、膵疾患フォロー中が2例、他疾患精査が4例であった。糖尿病を10
例に認め、うち5例は急性増悪、2例は新規発症であった。発見契機となった検査はUSが16例、CTが7例、
PET-CT が 1 例 で あ っ た 。 ● 検 査 所 見 : 腫 瘤 描 出 能 は US 23/24(96 % ) 、 CT 13/24(54 % ) 、 EUS
21/23(91%)、MRI 13/20(65%)であり、腫瘤尾側の主膵管拡張を14/20例(70%)に認めた。ERPでは
腫瘤部主膵管の狭窄あるいは途絶を23/23例(100%)に認めた。細胞診陽性例(ClassIVあるいはV)は8/16
例(50%)であった(膵管擦過細胞診5/13、膵液吸引細胞診0/6、ENPDによる膵液細胞診3/6)。●病理所
見:stageIが10例、stageIIIが13例、stageIVaが1例であった。18/24例(72%)に癌内部あるいは癌周囲
の主膵管内進展を認めた。11/24例(44%)に癌辺縁の貯留嚢胞を認めた。●予後:観察期間は109~
4239日(平均1305日)で、生存13例(無再発9例、再発4例)、死亡7例、不明4例(転院など)であった。【考
察】TS1膵癌の全例に狭窄あるいは途絶などの何らかの主膵管異常を、約40%に癌周囲の貯留嚢胞を認め
たことから、主膵管異常、膵嚢胞を捉えることが膵癌早期診断に重要と考えられた。
35
当院における切除不能局所進行膵癌およびborderline resectable膵癌に対する
S-1併用化学放射線療法の現状
岡 宏充、夏井 正明、清野 智、瀧澤 一休、坪井 清孝、青木 洋平、山崎 和秀、松澤 純、渡辺 雅史
県立新発田病院
当院における切除不能局所進行膵癌およびborderline resectable膵癌(BR膵癌)に対するS-1併用化学
放射線療法(CRT)の現状につき報告する。2012年7月から、切除不能局所進行膵癌1例、BR膵癌3例
に対し、S-1併用CRTを施行した。放射線療法は1回1.8Gy/日、28回照射、計50.4Gy施行し、S-1は
80mg/m2/日を4週間投与、2週間休薬のスケジュールとした。
症例1は、53歳、男性。膵頭部の3cm大の腫瘍で、門脈浸潤を認め、BR膵癌と判断し、CRTを施行。治
療後CTは、SDの判定。S-1の化学療法1コース追加後に、手術施行し、pT3N1M0、StageIII、R0であっ
た。症例2は、71歳、女性。膵頭部の33mm大の腫瘍で、門脈および胃十二指腸動脈への浸潤を認めBR
膵癌と判断し、CRTを施行。治療後のCTは、SDの判定。S-1の化学療法を1コース追加後に、手術施行し、
pT3N0M0, StageIII, R0であった。症例3は、49歳、女性。膵頭部の25mm大の腫瘍で、門脈および胃
十二指腸動脈への浸潤を認め、BR膵癌と判断し、CRTを施行。治療後のCTは、SDの判定。S-1の化学療
法1コース追加後に、手術施行し、pT3N1M0、StageIII、R0であった。症例4は、50歳、男性。膵体部
の5cm大の腫瘍で、腹腔動脈へ全周性の浸潤あり、切除不能と判断し、CRTを施行。治療後のCTで、腫
瘍は著明に縮小し、CRの判定。S-1の化学療法を2コース追加後に、手術施行。病理結果は、原発巣に腫
瘍の残存はなく、リンパ節にわずかに腫瘍を認めるのみであった。
症例数は少ないものの、切除不能局所進行膵癌およびBR膵癌に対する、S-1併用CRTは有用な可能性があ
り、若干の文献的考察を加え報告する。
36
非典型的な画像所見を呈した膵管内乳頭粘液性腫瘍由来浸潤癌(膵IPMC)の一例
多田井 敏治1、長谷部 修1、原 悦雄1、越知 泰英1、関 亜矢子1、伊藤 哲也1、岩谷 勇吾1、保坂 典子2、
成本 壮一3
1
長野市民病院 消化器内科、2同 病理診断科、3同 消化器外科
症例は66歳、男性。既往歴・家族歴は特記事項なし。飲酒歴なし。2013年2月、人間ドックの腹部超音
波検査で膵体尾部の嚢胞性腫瘤を指摘され当科に紹介となった。同部は、腹部造影CT、MRI検査では
56×60mmの薄い被膜で覆われた単房性嚢胞性腫瘤であり、内部に30×10mm程度の早期濃染を伴う充
実性結節を認めた。EUSでは嚢胞性腫瘤内部に40×27mmの低~高エコーが混在した充実性結節を認め、
厚い被膜様構造やcyst in cyst、cyst by cyst様所見は認めなかった。ERPでは主膵管の拡張は認めず、嚢
胞性腫瘤は膵尾部で圧排された分枝膵管と交通していた。膵液細胞診はClass 3であった。各種画像所見
より、非典型的ではあるが、分枝型IPMNと診断し、鑑別診断としてリンパ上皮嚢胞、仮性嚢胞、貯留嚢
胞、MCN、SPN、嚢胞変性を伴うNETを考え、5月27日当院外科にて膵体部切除を施行した。切除標本
では6×5×4cmの表面平滑な嚢胞性腫瘤であり、内腔に35×20mmの充実性部分を認め、表面に白色調
の柔らかい物質の付着を認めた。嚢胞壁は繊維性間質で被われており、嚢胞内腔の上皮は脱落した部分が
多かったが、非脱落部には乳頭状増殖を伴う腺腫成分を認めた。その一部に核形不整、核の大小不同を伴
う癌成分を認め、繊維性間質へわずかに浸潤していた。腫瘍部(癌、腺腫)は粘液産生を伴っていた。同
時に切除された膵組織には分枝膵管が確認されたが、正常上皮で、腫瘍や粘液による閉塞は認めなかった。
白色調の柔らかい部分に関しては、フィブリンと壊死物質からなっており、壊死物質の一部に癌が混在し
ていた。TS3(60mm)、i-TS(6mm)、T1、n0 pStage1であった。本症例は、比較的大きな分枝型
IPMNでありながら、単房性腫瘤を呈していた。非典型的な画像所見を呈した要因について、病理組織所
見と対比して報告する。
食道
10:20~11:10
37
座長
竹内
学(新潟大3内)
消化器病医が施行する嚥下内視鏡検査の実際
藤原 直幸、堀内 朗、多田 治代、一瀬 泰之、黒河内 明子、加藤 尚之、梶山 雅史
昭和伊南総合病院 消化器病センター
【目的】消化器病医は日本の多くの施設で誤嚥性肺炎の治療や内視鏡的胃瘻造設術を担当しているが,摂
食嚥下障害の評価や治療に携わることは少ないと思われる。当院では消化器病医が言語聴覚士とともに嚥
下内視鏡検査(VE) を積極的に施行しているのでその実際を報告する。【方法】対象は当院にて嚥下スク
リーニング検査(改訂水飲みテスト)にて陽性であったためVEを施行した症例。当院におけるVEは、4%
塩酸リドカインを鼻腔内に噴霧後、座位の姿勢で経鼻内視鏡検査にて使用されるオリンパス社製GIFN260あるいは富士フイルム社製EG530Nを鼻腔より挿入し、内視鏡画像をビデオ録画しながら消化器病
医が言語聴覚士ともに実施する。VEを施行した症例の臨床像、経口摂取可能と判定された症例およびその
時の食事形態、経口摂取に影響する因子についてretrospective に検討した。【結果】2006年5月より
2011年6月の期間にVEを実施した症例は458例(男285例(62%)、平均年齢80歳(39-97歳)。大半の症
例は認知症あるいは脳血管障害を有していた。VE検査により経口摂取可能と判定された症例は268例
(59%)。その可能と判定された食事形態はトロミ調整食品(トロミ剤)を使用した嚥下調整食が237例
(88%)、常食が31例であった。その237例中、ペースト状の食事形態である嚥下調整食初期レベルで経口
摂取可能と判定された症例は76%(181/237)であった。VE時、検査開始時の唾液貯留や検査食の残留を
認めない症例では経口摂取可能と判定されることが多かった。【結論】消化器病医が言語聴覚士とともに
経鼻内視鏡検査と同様の手技で施行するVEにより経口摂取可能かどうかの判定や適切な食事形態の判断が
可能であった。今後、高齢化に伴い摂食嚥下障害者の増加が予想されるので内視鏡的胃瘻造設術に関与す
る消化器病医は経鼻内視鏡を利用したVEについても検討してみる価値はあると思われた。
38
食道アカラシアに対してPer-oral endoscopic myotomyを施行した1例
高橋 亜紀子、小山 恒男、友利 彰寿、篠原 知明、岸埜 高明、久保 俊之、森主 達夫、山田 崇裕
佐久総合病院 胃腸科
症例は60歳代男性。20数年間前に食道アカラシアと診断され、近位にて合計100回以上の拡張術が施行
された。しかし最近では通過障害が改善せず、嘔吐や体重減少を認めたため紹介受診となった。
EGDでは食道内に残渣を認め、食道内腔は拡張し、多発性のびらんを認めた。食道透視では内腔は約3cm
に拡張し、異常蠕動波を認めた。以上より、食道アカラシア(紡錘型、grade I)と診断した。
バルーン拡張術無効例に対する標準的治療法は外科的治療であること、保険適応外であるがPOEMという
新しい治療法が開発されたことをご説明したところ、POEMを希望された。そこで、倫理委員会の承認後
に十分なインフォームドコンセントの上、自費診療にてPOEMを施行した。
挿管全身麻酔下に、切歯より30cmの食道右壁側にグリセオールを局注し、フックナイフにて約2cmの粘
膜縦切開を施行した。その後、フックナイフとSpray 凝固effect 2, 60Wを用いて粘膜下層をトンネル状
に剥離した。切歯より43cmの部位にEGJが存在し、さらに2cm胃側まで全長約15cmの粘膜下層トンネ
ルを作成した。
その後、粘膜下層入口部から約3cm肛門側より内輪筋切開を開始した。フックナイフを内腔側へ向け、背
側を固有筋層に接触させた状態でSpray凝固、effect 2, 60Wで短時間通電すると、内輪筋のみが切開さ
れた。この後、Water jetを用いて内輪筋と外縦筋の隙間に生理食塩水を注入し、内輪外縦筋間にスペース
を確保しつつ筋層切開を継続した。最後に粘膜切開部をクリップ8本にて閉鎖した。出血はほとんどなく、
手術時間は48分であった。
術後疼痛や発熱はなく、翌日のEGDにて出血やクリップに脱落が無いことを確認した。また、食道造影に
て造影剤の通過は極めて良好で異常蠕動波は消失していた。同日から経口摂取を再開したが、嚥下は極め
て良好で第5病日に退院した。
POEMでは腹腔鏡下筋層切開術に比べ、より長い食道筋層切開ができるため、高い効果が期待されている。
現時点では自費診療だが、患者のためには先進医療適応が望まれ、申請に必要な10例以上の手術経験を積
むためにもセンター化が必要と思われる。
39
Mallory-Weiss症候群が診断の契機となった好酸球性食道炎の1例
坂 めぐみ1、岩谷 勇吾1、多田井 敏治1、伊藤 哲也1、関 亜矢子1、越知 泰英1、原 悦雄1、長谷部 修1、
保坂 典子2
1
長野市民病院 消化器内科、2長野市民病院 病理診断科
症例は30代男性。主訴は吐血。既往に卵アレルギーがある。また以前より頻繁に食道のつかえ感を自覚し
ていた。某日飲酒後数回の嘔吐ののち血性嘔吐が見られたため当院受診し緊急上部消化管内視鏡検査が施
行された。胃食道接合部2時方向の食道粘膜に裂創を認めたが明らかな胃粘膜の損傷はなく、Zeifer分類I
型のMallory-Weiss症候群と診断した。PPI投与下に絶食入院とし,翌々日に2nd lookを行ったところ、
Mallory-Weiss裂創は改善傾向を認めていた。また食道全体に数条の縦走溝や輪状溝・白斑の多発を認め、
食道各部の生検で30個/HPF以上の好酸球浸潤を認めた。末梢血中の好酸球は12.5%と軽度の上昇を認め
た。以上の内視鏡所見、病理所見などから好酸球性食道炎と診断した。退院後もPPI投与を継続していた
がつかえ感の頻度や程度は変わりなく,ステロイド投与を検討中である。
Zeifer分類I型のMallory-Weiss症候群は極めてまれとされており,好酸球性食道炎により脆弱化した食道
粘膜が裂創の原因となった可能性が示唆されたが,Mallory-Weiss症候群と好酸球性食道炎の合併例の報
告はなく,貴重な症例と考えられたため文献学的考察を加えて報告する。
40
R-CHOP療法にて寛解を得た食道原発悪性リンパ腫の1例
若尾 聡士1、保坂 稔1、山崎 玄蔵1、落合 田鶴枝1、渡辺 千尋1、鈴木 正史1、山根 徹2
1
都留市立病院、2山梨大学人体病理学教室
症例は81歳男性。既往歴に前立腺肥大症、B型肝炎既感染、高血圧症、肺気腫を認めている。2010年7月
より喉のつかえ感を自覚し、近医で上部内視鏡を実施され逆流性食道炎と診断されたが、症状が改善せず
2011年1月12日当院を受診した。理学所見では表在リンパ節を含めて異常所見は認めなかった。血液生
化学検査では可溶性IL-2レセプターが734U/mlと軽度な増加を認めた。上部内視鏡で上部-中部食道にか
けて食道粘膜壁が肥厚しており、一部びらんと粘膜の脱落を認めたが、腫瘤性病変や狭窄による食道の通
過障害は認めなかった。同部の生検にてCD20陽性、CD79a陽性のBリンパ球系の腫瘍細胞の増殖を認め
た。胸部X線検査では縦隔の腫大は認められず、CT検査では上部食道の全周性壁肥厚及びNo106、
No109傍食道リンパ節の腫大を認めた。PET検査では胸上部食道全域と、右反回神経周囲リンパ節、中下
部食道傍リンパ節にFDG集積を認めた。以上より、食道原発悪性リンパ腫(Diffuse B cell lymphoma)、
Musshoff分類 stageΙΙE2と診断した。食道における外科的切除術は侵襲性が高く、本症例においては
高 齢 で あ る こ と を 考 慮 し 化 学 療 法 を 選 択 し た 。 70 % 用 量 の R-CHOP 療 法 (rituximab,
cyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, prednisolone)を開始し、骨髄抑制のため2クール目よ
り40%用量への減量を要したが、8クールまで継続し2011年10月完全寛解を得た。発症から2年が経過
したが再発や転移を認めず経過良好である。
消化管原発悪性リンパ腫は節外性悪性リンパ腫の30-50%に認められるが、胃原発が57-80%、小腸原発
が20-29%、大腸原発が3-15%を占めており、食道原発悪性リンパ腫は稀な疾患である。今回、我々は化
学療法が奏功した食道原発悪性リンパ腫の1例を経験したので、若干の考察を加えて報告する。
41
食道潰瘍が契機で発見された急性骨髄性白血病の1例
中村 二郎
軽井沢病院 外科
【はじめに】白血病の経過中に髄外病変として消化器病変を認めることはなれではないが、今回我々は腫
瘍細胞浸潤による食道潰瘍が契機となり急性白血病が発見された症例を経験したので報告する. 【症例】
60歳代、男性. 主訴:食事のつかえ感. 2013年4月上旬より食事のつかえ感、食欲不振が出現し当院内科
を受診. 内視鏡検査で下部食道に潰瘍性病変を認め食道癌疑いで外科紹介となった. 【Laboratory data】
初診時: WBC3890, Hb14.3, Plt10×104, TP7.1, Alb3.7, FBS275, HbA1c(NGSP)12.4で軽度低ア
ルブミン血症と高度糖尿病を認めた. 内視鏡後追加検査:CEA 2.1, CA19-9 32, SCC 0.7 腫瘍マーカー
に異常値を認めず.【内視鏡所見】下部食道に亜全周性の潰瘍性病変を認めた. 潰瘍形態は不整型も潰瘍辺
縁は比較的整でpunched out様の陥凹を示した. 潰瘍底も凹凸を示すもののヨード散布ではまだらに染色
されていた.【生検病理】necrotic mass, no atypia. ulceration of the esophagus, negative for
cancerであった.【CT所見】下部食道の壁肥厚と噴門部小弯に径13mm大のLN腫大を認めた.下部食道
癌+LN転移疑い であった.【経過】生検では悪性所見を認めなかったが、CT所見などから完全に悪性疾
患も否定できず短期の定期観察が必要と判断した. また未治療の糖尿病は、糖尿病内科に精査加療を依頼
した. 内科2回目の受診時採血でWBC18800と上昇を認め、1週間後の再検では WBC35290と急増を
認めたため、白血病を疑い血液内科のある基幹病院に紹介した. 精密検査が施行され急性骨髄性白血病と
診断された.【考察・結語】白血病の髄外病変はまれではないが、慢性の経過中や再燃時に認められること
が多い. 消化管病変としては、びらん、潰瘍、消化管出血、腫瘤形成などの報告があるが、腫瘍細胞浸潤
に伴う消化管潰瘍が白血病発見の契機となる症例はまれである. 消化管の非典型潰瘍性病変を認めた場合
は、ウィールス感染や非特異的炎症性腸疾患だけでなく血液疾患も念頭に置いて精査をすすめる必要があ
ると思われた.
胃・十二指腸1 11:10~11:50
42
座長
高橋 亜紀子(佐久総合病院)
上部消化管内視鏡の左右アングル設定に関する考察
小島 英吾、小林 奈津子、田代 興一、松村 真生子
長野中央病院 消化器内科
内視鏡観察や処置を行うのにあたり,上下および左右アングルが重要な役割を果たしていることはいうま
でもない.特に処置の際には,アップアングルを十分にかけて見上げの状態で行うことが多く,この状態
での左右アングルの動き方が非常に大切となっているが,スコープの種類によって異なった仕様となって
いることはあまり知られていない.従来型のオリンパス社製の上部汎用内視鏡は,アップアングルを十分
かけた状態で左右アングルを動かしても先端の位置が固定される設定(ツイスト型)となっていたが,最新
型汎用内視鏡HQ290は先端部分も含め内視鏡軸そのものが回転する設定(Jターン型)に変更され,富士フ
イルム社製汎用内視鏡の設定と同様となった.今回われわれは,HQ290(Jターン型)と従来型内視鏡で
あるH260(ツイスト型)の動きの違いがどのように現れるかについてファントムを用いて検討を行った.
Jターン型は,一般的に観察がしにくいといわれる胃体上部小弯の観察において左アングルをひねるだけ内
視鏡先端が前壁から後壁に移動する動きが得られるため,先端の位置が変わらないツイスト型に比べれば
観察しやすい.一方胃体部後壁の観察においては,Jターン型は視野中央にスコープそのものが常に存在す
る上に,内視鏡の先端の軸が後壁の接線方向に向いてしまうため観察しにくい.処置の際は先端から至近
の対象物に対して微妙に角度を変えることが必要となるが,ツイスト型の場合は左右アングルを動かして
も捉え方の角度が変わるだけで対象物そのものは視野の中心からはほとんどずれない.一方Jターン型では,
先端軸そのものが回転するために,左右アングルを動かすと直ちに対象物そのものも視野から動いてしま
う.これを補正するためには,トルク操作も加えながら動かす必要があり手間がかかってしまうことが判
明した.以上の検討から,とくに反転操作での処置が多い内視鏡においてはツイスト型の方が左右アング
ルの設定として適しているものと思われた.
43
ESDにて切除した胃早期粘液癌の1例
芹澤 まさし
松本協立病院
症例】80歳代男性。【現病歴】虚血性心疾患の既往あり当院循環器内科外来へ通院中であった。平成25
年6月、定期検査として施行された上部消化管内視鏡検査にて胃前庭部大弯に発赤した陥凹性病変を認め
た。NBI拡大観察にて崩れたネットワーク血管を認め分化型腺癌を疑った。また流水では取れない白色
の物質が目立っていた。抗血栓薬2剤内服中であったため1剤休薬してでの生検を勧めたが、患者本人の希
望により生検せずに内視鏡治療を行うこととなった。【経過】7月にESD施行し一括切除した。病理では
粘膜に広く広がる粘液癌主体の癌であり、極一部に粘液が粘膜下層に浸潤しており深達度はsmと判定され
た。粘液癌は表層近くにあり癌は表面に露出していた。【考察】粘液癌は早期胃癌の約1%の頻度で認め
られる稀な病変である。これまでその内視鏡所見についての報告は少なく、特に拡大観察を行った報告は
ほとんど認められない。わずかに小澤らの報告が認められるが、今回の症例でも小澤らの言う円形の白色
物質が一部で認められ、これが粘液癌の早期のものの内視鏡所見である可能性がこの症例からも示唆され
た。既報との相違も含め、報告する。
44
ESD困難な早期胃癌に対してNon-exposed Endoscopic Wall-inversion
Surgery (NEWS)を施行した1例
森主 達夫1、小山 恒男1、友利 彰寿1、高橋 亜紀子1、篠原 知明1、岸埜 高明1、久保 俊之1、山田 崇裕1、
宮田 佳典2、竹花 卓夫3、山本 一博3
1
佐久総合病院 胃腸科、2佐久総合病院腫瘍内科、3佐久総合病院外科
症例は60歳代、男性。胃穹窿部前壁に粘膜集中像を伴う黄色調の浅い陥凹性病変を認め 、UL合併の
adenocarcinoma,tub2,T1a(M)と診断した。穹窿部前壁は水がたまりやすく近接しづらい部位であり、
瘢痕合併もあることから、ESDは可能であるが偶発症のリスクが高いと判断された。そこで十分なICを
行った上で同病変に対しNEWSを行う方針とした。挿管・全身麻酔管理下に1.内視鏡を用いてマーキング
を行い、次に内腔側からマーキング部をナイフで押した状態で腹腔鏡で漿膜面を観察し、漿膜上にマーキ
ングを行った。2.内視鏡的にグリセオールを粘膜下層に局注し、腹腔鏡でマーキング外側の漿膜・筋層を
全周切開した。次に,病変を内反させながら病変周囲の健常部の漿膜・筋層を手縫いで縫合した。3.内視鏡
で粘膜を全周切開し、漿膜筋層切開部に至るまで粘膜下層を剥離して、病変を全層性に一括切除し経口的
に回収した。手術時間は6時間41分、出血量は50mlだった。術後経過は良好で合併症はなく、術後5日後
より経口摂取を開始し、9日後に退院となった。病理組織学的診断ではadenocarcinoma,tub2>>
tub1,T1a(M),ly0,v0,HM0,VM0,0-IIc+uls,24×18mm(in 38×32mm),U,Antと診断された。胃全層切
除術においてLaparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery(LECS)の有用性が報告されてい
るが、創を開放するため癌を播種させる可能性が否定できない。NEWSやCLEAN-NETは腹腔と胃内腔を
交通させることなく胃病変を全層切除する術式である。ともに粘膜切開線と筋層切開線がずれる危険を伴
うが、NEWSでは内視鏡下に粘膜切開を行うため、病巣を正確に切除可能という利点がある。NEWSは
ESD困難な早期胃癌に対する、有力な内視鏡下手術の1つであり、文献的考察を含めて報告する。
45
EUS-FNA施行後遅発性偶発症を呈した2例
浅野 純平1、村木 崇1、小口 貴也1、金井 圭太1、丸山 真弘1、渡邊 貴之1、新倉 則和2
1
信州大学医学部附属病院 消化器内科、2信州大学医学部附属病院 内視鏡センター
【背景】超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)は低侵襲に病理学的検索が可能な検査である。しかし、そ
の頻度は稀ではあるが、出血・穿孔といった偶発症の報告がある。今回、我々はEUS-FNA施行後遅発性
偶発症を呈したと考えられた2例を経験したため報告する。【症例1】70歳代、女性。2010年、胃体上部
前壁に径20mm程の粘膜下腫瘍を認め翌年には径35mm程まで増大し粘膜に発赤が出現したため精査目的
に当科紹介となった。19Gで20ストローク1回穿刺にてEUS-FNAを施行した。穿刺直後、軽度の出血を
認めたが自然止血した。翌日、貧血なく同日退院となり組織学的にGISTと診断された。検査19日後より
黒色便が出現し、26日後当科受診し貧血を認め緊急内視鏡を施行した。粘膜下腫瘍頂部に潰瘍形成を認め
同部より出血していた。APC焼灼にて止血後、後日、腹腔鏡下胃部分切除術を施行した。【症例2】50歳
代、女性。肺癌(cT4N3M1b stage4)にて当院呼吸器内科入院中、血便・貧血を認めた。腹部CTにて骨盤
内小腸に径40mm程の腫瘤を認め、出血源と考えられた。絶食補液のみでは止血が得られなかったが全身
状態が不良のため外科的治療は困難であった。止血目的の放射線照射・化学療法が必要と考え、病理学的
診断のために、経結腸的に22Gで20ストローク3回穿刺にてEUS-FNAを施行した。組織学的にGISTと診
断した。穿刺9日後より腹痛が出現し、CTにて骨盤内腫瘤の破裂と診断し、緊急小腸部分切除術を施行し
た。【結語】EUS-FNAは粘膜下腫瘍に対し病理組織診断を得るための安全かつ有効な検査として確立し
ている。しかし、本症例のように出血・穿孔といった偶発症が遅発性に生じることがあり、留意を要する。
胃・十二指腸2
46
11:50~12:30
座長
小馬瀬 一樹(山梨大1内)
H.pylori 陰性胃に発生した高分化型および未分化型同時多発胃癌の1例
伊藤 哲也1、多田井 敏治1、岩谷 勇吾1、関 亜矢子1、越知 泰英1、原 悦雄1、長谷部 修1、的場 久典2、
保坂 典子2
1
長野市民病院 消化器内科、2長野市民病院 臨床病理診断科
症例は68歳男性。平成25年3月より上腹部不快感があり近医にて上部消化管内視鏡検査を受けた。その際、
幽門前庭部後壁にタコイボびらんを認め生検にてGroup 2であった。2か月後の内視鏡では同部の生検は
Group1であったが、胃角大弯に約10mmの平坦な褪色領域を認め、生検にてsigと診断されたため精査治
療目的に当科紹介となった。当科での再検内視鏡では背景粘膜に明らかな萎縮粘膜を認めず、胃体部全体
にRAC陽性でありH.pylori非感染と考えられた。胃角大弯の平坦褪色病変は、villi様構造とpit様構造が混
在した表面構造からなり、やや拡張、蛇行した微小血管を伴っていた。病変径10mm、0-IIb、sig、深達
度M、UL(-)と術前診断した。その際に施行した周辺4点生検で腫瘍細胞は認めなかった。また、幽門
前庭部後壁のタコイボびらんは、陥凹内部がやや不整なvilli様構造を呈しており、生検で腺腫以上の病変
が疑われた。前者は適応拡大病変となるが、十分なICのもと、2病変に対し一期的にESDを行う方針とし
た。尚、術前に施行した胸腹部造影CTではリンパ節転移や遠隔転移を疑う病変は認められなかった。切除
標本の病理組織学的所見では、前者が0-IIb、8mm、sig、M、ly0、v0、HM0、VM0、後者が0-IIc、
5mm、tub1、M、ly0、v0、HM0、VM0であった。H.pylori 感染の評価はESD標本の鏡検法、血中抗
H.pylori抗体および便中H.pylori抗原で施行し、いずれも陰性であった。H.pylori陰性胃癌は胃癌全体の
0.5-3%ほどと報告されており、H.pylori以外の発癌因子としてEBV、A型胃炎、遺伝性胃癌などが挙げら
れている。本症例には明らかな家族歴はなく、内視鏡的および病理組織学的に胃底腺領域の萎縮がみられ
ず、リンパ球浸潤も認めないことから、H.pylori 以外の因子は否定的であった。医学中央雑誌による検索
では、H.pylori陰性多発胃癌の報告は1例のみと稀であるため、若干の文献的考察を加えて報告する。
47
肝転移を伴った胃低分化型神経内分泌癌の一例
山崎 貴久、中川 元希、高橋 正一郎
富士吉田市立病院 内科
【症例】78歳、男性。【主訴】肝機能障害。【現病歴】心筋梗塞後などで近医に通院中。2011年3月28
日頃より肝機能障害を認め、当初は薬剤性肝障害が疑われ、原因と思われる薬剤を中止したが改善しな
かったため、2011年12月8日に当院へ紹介となった。【経過】血液検査で肝機能障害及びCA19-9高値
を認め、単純CTで多発肝腫瘍を認めた。また腹部超音波検査で背景肝に脂肪肝及び脾腫を認めた。造影
CTでは壊死・脱落を伴う多血性の肝腫瘍であった。鑑別目的のため、肝腫瘍生検を施行した。病理結果を
待ち、内視鏡検査の予定であったが、吐血された。緊急上部内視鏡検査を施行したところ、胃体下部小彎
後壁寄りに潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様病変を認め、露出血管から噴出性出血をしていた。内視鏡的止血術を
施行し、後日、生検した。肝腫瘍生検の結果は、一次報告でpoorly differentiated adenocarcinomaで
あ っ た が 、 胞 体 の 少 な い N/C 比 の 高 い 細 胞 で あ り 、 免 疫 染 色 を 追 加 し た 。 chromograninA と
synaptophysinは陽性で、CD56は軽度陽性であり、metastatic neuroendocrine tumorが疑われた。
胃腫瘍の病理ではpoorly differentiated adenocarcinomaであったが、胃腫瘍が粘膜下腫瘍様の形態を
呈し、肝腫瘍と同様に小型の細胞であったことから免疫染色を追加したところ、同様にchromograninA
とsynaptophysinは陽性で、CD56は軽度陽性であった。以上より胃低分化型神経内分泌癌の肝転移と診
断した。【考察】胃低分化型神経内分泌癌は、比較的稀な腫瘍であり、極めて予後不良とされる。本例は
転移性肝腫瘍がきっかけとなり、また胃原発巣からの出血も合併し、診断に至った。若干の文献を加えて
報告する。
48
胃癌、小腸癌を合併した若年性消化管ポリポーシスの1例
中村 直1、山本 香織1、五十嵐 淳2、前島 さやか3、平野 真理3、中村 真一郎4、太田 浩良5
1
丸の内病院 消化器内科、2丸の内病院 消化器外科、3高山内科明生会、4信州大学 医学部附属病院 消化器
内科、5信州大学 医学部 保健学科 検査技術学専攻 生体情報検査学講座
症例は60代の男性で、高血圧、心房細動で近医にて加療を受けていた。2年前に貧血のため行ったEGDで
前庭部のポリープが認められていたが、生検では過形成性変化のみで悪性所見は認められなかった。その
2年後に再度EGDを行ったところ、前庭部の易出血性のポリープが増大、多発しており精査のため当院へ
紹介となった。尚、父、姉、姪に胃癌の家族歴がある。入院時の血液検査ではHb10.8g/dl、Alb3.3g/dl
と貧血と低タンパク血症を認めた。当院で行ったEGDでは透明感のある分葉状ポリープが前庭部に多発し
て認められた。大きめのポリープを数個EMRし組織学的に検索すると、嚢胞形成を伴った腺窩上皮の過形
成と間質の浮腫が主体で、若年性ポリープの所見であった。部分的には形状不整、大小不同を示す異型腺
管が認められ、高分化型腺癌を含んでいた。内視鏡的には癌の部分の同定が困難であること、慢性の貧血
と低タンパク血症を繰り返していることから胃全摘が必要と判断した。全消化管を検索したところ、大腸
内視鏡では上行結腸を中心に腺腫と若年性ポリープが散発性に認められ、小腸では回腸に単発の高分化型
腺癌を認めた。PETでは小腸にわずかな集積が見られる以外に胃や他臓器への集積はなかった。大腸ポ
リープは後日内視鏡治療を行うこととして、胃全摘術および小腸部分切除術を施行した。全摘された胃に
は前庭部を中心に多発する隆起性病変を認め、組織学的に若年性ポリープの所見であった。細胞異型、構
造異型の強い腺管に一致してP53が陽性で高分化型腺癌の部分が2カ所に認められた。小腸腫瘍は大きさ
25ミリのIIc型腫瘍で、高分化から中分化型の腺癌であった。胃腫瘍、小腸腫瘍ともに粘膜内病変で脈管
侵襲、リンパ節転移は認めなかった。後日大腸ポリープに対して内視鏡切除を行い、組織学的には腺腫と
若年性ポリープであった。胃に発生する若年性ポリポーシスは胃癌の合併が多く報告されているが、小腸
癌を合併した若年性消化管ポリポーシスの報告はまれである。手術に際しては病変が多発する可能性を考
慮して全消化管の検索が必須と考える。
49
腹部大動脈瘤(AAA)による十二指腸通過障害を呈した一例
山本 香織、中村 直
丸の内病院 消化器内科
症例は67歳の男性。2012年9月頃より食後に嘔吐するようになり、3ヶ月間で2.5kgの体重減少を認めて
いた。2012年12月当院受診し、上部消化管内視鏡検査施行した。十二指腸まで観察したが、慢性胃炎を
背景に前庭部小弯に15x10mmのIIc病変を認める以外、嘔吐の原因となる病変はなかった。2013年1月
外来再診、この1ヶ月間でさらに3.5kg体重減少していた。腹部造影CT検査を施行したところ、胃から十
二指腸にかけての著明な拡張がみられ、十二指腸水平脚で先細りの狭窄像を認めた。同部位には径50mm
大の腹部大動脈瘤を認めており、大動脈瘤による十二指腸通過障害Aorto-duodenal syndromeと診断し
た。胃管を挿入して減圧を図った後、ガイドワイヤー操作にて狭窄部より肛側へチューブを進め経鼻経管
栄養を開始したが、十二指腸の拡張によるたわみが強く抜けてしまい継続できなかった。一度胃内が減圧
された効果により、流動食からミキサー食程度であれば嘔吐なく経口摂取することが可能となった。しか
し、その後も経口摂取量の増加は困難で、体重増加もみられなかった。動脈瘤の治療につき信州大学病院
心臓血管外科と検討した。瘤径が大きくはないため、動脈瘤手術によって経口摂取が可能となるかどうか
は不明であるという旨を充分に説明したうえで、腹部大動脈瘤人工血管置換術を行った。術後経過は順調
で、消化器症状は消失し、普通の食事が摂れるようになった。動脈瘤手術までの半年で最終的に10kg減少
した体重も、術後に5kg増加した。その後に胃のIIc病変に対しESDを行った。一般的に大動脈瘤非破裂例
では自覚症状に乏しく、十二指腸狭窄による通過障害をきたす症例は稀であるとされている。しかし、本
症例のように50mmと大きくはない大動脈瘤であっても十二指腸通過障害の原因として考慮する必要があ
ると考えられた。
胃・十二指腸3
50
13:30~14:10
座長
山本 香織(丸の内病院)
進行胃癌術後に遅発性乳び腹水を呈した1例
小林 由夏1、杉谷 想一1、品川 陽子1、上野 亜矢1、藤原 真一1、大関 康志1、飯利 孝雄1、大矢 敏裕1、
蛭川 浩史2、多田 哲也2
1
立川綜合病院 消化器センター 消化器内科、2立川綜合病院 消化器センター 外科
【はじめに】胃癌術後乳び腹水は比較的稀な合併症であり、その治療法に確立されているものはない。ま
た一度発症すると、治療に難渋することも多いとされている。【症例】81歳、男性【主訴】腹部膨満【既
往歴】糖尿病、高血圧、非定型抗酸菌症、肺気腫【現病歴】平成24年6月より食欲低下を認め、上部内視
鏡検査にて前庭部2型胃癌と診断された。7月に幽門側胃切除およびD2リンパ節郭清を行った。術後病理
検索にて1群リンパ節転移を認め、Stage IIIaと診断された。8月より術後補助化学療法を導入予定であっ
たが、腹部膨満、下肢浮腫が出現、増悪するため精査加療目的に入院となった。【経過】腹部エコー上多
量腹水の貯留を認め、穿刺にて乳白色の混濁した腹水を認めた。細胞診はclass II、腹水中蛋白2.5g/dl、
中性脂肪528mg/dl、糖156mg/dl、リバルタ反応は陰性で術後遅発性乳び腹水と診断した。絶食、高カ
ロリー輸液、ソマトスタチン持続皮下注を行い、腹部膨満に対してはドレーン挿入せずに間欠的腹水透析
によって症状をコントロールした。第30病日より成分栄養経口摂取から開始し、腹水の増加がないことを
確認しながら徐々に食事量を増量、第60病日に退院となった。【考察】胃癌術後乳び腹水の報告は、ほと
んどがD3リンパ節郭清後であり、発症時期は術後5-7日目とされる。治療は保存的治療が中心であり絶
食、中心静脈栄養、中鎖脂肪酸投与、ソマトスタチン投与などが報告されているが確立されていない。一
度おこると難治性で栄養状態の低下やそれにともなう感染症などの合併症により死亡率は11.1%ともされ
る。本症例ではD2リンパ節郭清にとどまっており乳び腹水の機序は明らかではないが、呼吸器合併症を有
する高齢者であり、術前から少量の腹水を認めていたことが、なんらかのきっかけになった可能性がある。
治療として、絶食、中心静脈栄養ととともに症状コントロール目的の腹水透析導入や、成分栄養の経口投
与が有用であったと考えられ報告する。
51
魚骨による十二指腸水平脚穿通に対し内視鏡摘出後保存的に治療できた1例
小松 修、岸本 恭、塩沢 秀樹、安達 亙
富士見高原病院
魚骨の十二指腸水平脚穿通に対して内視鏡的摘出後保存的に治療できた1例:症例は高血圧、糖尿病にて
当院通院中の78歳女性。入院当日朝に鯉を食べた。13時半頃より冷や汗、嘔吐、腹痛、背部痛が出現し
たため、救急外来を受診した。理学所見は腹部弾性軟で圧痛はないが左背部に圧痛があった。血液検査で
は白血球1.8万血小板40.5万CRP0.05だった。腹部CTでは十二指腸水平脚の腫脹がみられ、内腔には
3cm程の長さの細い骨のようなものが存在し、一方の先端が上壁を貫いており、先端部周囲の後腹膜に少
量の遊離ガスを認めた。以上より魚骨による十二指腸水平脚穿通と診断され、外科入院となる。第2病日
には腹痛軽減し、検査所見に著変がないため家族本人の同意を得て、まず内視鏡により魚骨を摘出した。
その後絶食抗生剤にて症状検査所見も改善、第12病日に退院となった。検索した範囲では、十二指腸水
平脚に刺さった魚骨を内視鏡で摘出し保存的に治療した症例はまれであるため文献的検索を加えて報告す
る。
52
胃癌の診断を契機に発見されたサルコイドーシスの1例
菅野 智之、関 慶一、窪田 智之、西倉 健、石原 法子、井上 良介、渡邉 雄介、阿部 聡司、岩永 明人、
石川 達、本間 照、吉田 俊菅野 智之、関 慶一、窪田 智之、西倉 健、石原 法子、井上 良介、渡邉 雄介、
阿部 聡司、岩永 明人、石川 達、本間 照、吉田 俊明
済生会新潟第二病院
サルコイドーシスは消化管に発生することは稀であるがその大部分は胃に発生する。一方、悪性腫瘍に伴
うサルコイド反応は本邦では胃癌、肺癌に多いと報告されている。今回我々は早期癌類似進行胃癌と同時
に胃壁、領域リンパ節にサルコイド肉芽腫の多発を認めた1例を経験した。症例は50歳代の女性。心窩部
痛を主訴に当院を受診し、CTにて胃小弯に1cm弱の腫大リンパ節を指摘された。EGDで幽門輪の変形と、
幽門前壁部~幽門輪に褪色調の不整な陥凹局面の多発を認めた。また胃体部にはヒダ集中を伴う黄白色調
の平坦ないし平坦隆起性病変が多発していた。穹隆部には中心陥凹を伴う大きさ5mm程のSMT様の黄白
色調小隆起を2個認めた。幽門部を主病変とする胃癌の粘膜下進展および壁内転移、胃原発の悪性リンパ
腫等を疑い病変部から生検した。生検では幽門部の病変は低分化腺癌を伴う印環細胞癌、胃体部および穹
隆部の病変からは粘膜深層から粘膜下層に多発する非乾酪性類上皮肉芽腫が認められた。胃癌に対し幽門
側胃切除+D2郭清が施行された。外科切除標本の病理組織診断はIIc+IIa-like advanced with ulcer
scar ,45x28 mm, por2 > sig , pT2 (MP), sci, INFc, ly0, v0, pN0, pPM0 , pDM0, pStageIBであっ
た。腫大が疑われた領域リンパ節に癌の転移は認めずそのほとんどで肉芽腫の形成を認めた。胃壁にも腫
瘍周囲や体部の瘢痕部に一致して粘膜深層から固有筋層に肉芽腫が多発していた。特殊染色では血管炎、
抗酸菌感染、真菌感染は否定的であった。胸部CTでは肺野末梢に小粒状影を認め、サルコイドーシスに矛
盾しない所見であった。以上より胃MP癌とサルコイドーシスの胃病変の合併例と考えられた。胃癌に伴
うサルコイド反応との鑑別が問題となるが、癌腫切除後の残胃の肉芽腫病変の経時変化がその一助になる
と考え、内視鏡所見も含めてその後の経過を報告する。
53
放射線性胃炎に対してメサラジン内服が有用であった可能性のある1例
津久井 雄也、大高 雅彦、田中 佳祐、小林 祥司、佐藤 光明、吉田 貴史、浅川 幸子、小馬瀬 一樹、
中山 康弘、井上 泰輔、植竹 智義、坂本 穣、榎本 信幸
山梨大学附属病院 第1内科
症例は75歳、男性。2011年12月頃より食欲低下が出現し、半年間で12kgの体重減少を認めた。2012
年5月に人間ドックを受け、肝腫瘤を指摘され、6月1日に当科を紹介初診、非B非C肝細胞癌の診断となる。
肝S1を主体とする最大径95mm大の病変のほか、肝内には病変が多発しており、門脈左枝基部に浸潤
(VP3)も認め、stageIVAと診断した。肝内病変に対しては繰り返す経カテーテル治療を行い、門脈腫瘍栓
に対しては姑息的な放射線治療を行った(56Gy/28Fr 6月18日~7月26日)。9月21日頃より心窩部
痛を認め、9月24日に行った上部消化管内視鏡検査で前庭部から幽門部にかけて多発潰瘍と毛細血管拡張
を認め、幽門輪には狭窄を伴っていた。放射線の照射部位からも放射線の有害事象として矛盾なく、放射
線性潰瘍と考えた。ラベプラゾールを10mg/日から20mg/日に増量したところ、潰瘍の縮小を認めたが
残存し、毛細血管拡張からは湧出性出血を伴っていた。11月6日にラベプラゾールを40mg/日に更に増量
し、粘膜保護剤も併用した。16日後の内視鏡検査では潰瘍と出血は改善なく、メサラジン1.5g/日を粉砕
内服投与した。潰瘍は改善傾向となり、毛細血管拡張からの出血も改善した。その後、潰瘍の縮小と共に
幽門輪は狭窄し、幽門輪の狭窄に対して3回のバルーン拡張を行った。現在、狭窄は残るも経鼻鏡は通過
し、潰瘍は瘢痕化、毛細血管拡張も目立たず出血症状も改善している。放射線性直腸炎に対するメサラジ
ンの有用性の報告は散見されるが、放射線性胃炎に対する報告はあまりない。放射線性胃炎に対してメサ
ラジンを投与したところ改善した症例を経験したので、若干の文献的考察を含め報告する。
胃・十二指腸4
54
14:10~14:50
座長
神田 達夫(三条総合病院)
酸性洗浄剤服用後の食道・胃狭窄性変化を経時的に観察しえた1例
張 高正、星 隆洋、川田 雄三、高野 明人、吉川 成一、山田 聡志、三浦 努、柳 雅彦
長岡赤十字病院 消化器内科
【はじめに】酸性洗浄剤サンポール®服用後に食道入口部・幽門前部狭窄を来し、保存的加療を行っている
1例を経験したので報告する。【症例】35歳男性。アルコール依存症にて精神科入院歴あり。平成25年3
月より厚生施設に入所していた。6月13日、自殺企図で酸性洗浄剤サンポール®を500ml服用。同居者に
発見され、当院救急外来受診。服用後、1時間以内の来院であったため、胃洗浄施行。第2病日のCTにて
下咽頭~食道~胃の浮腫性壁肥厚がみられた。上部消化管内視鏡検査(EGD)では咽喉頭から食道全体に
強い発赤と白苔の付着がみられた。胃内は全体に黒色調の粘膜を呈していた。第20病日のEGDにて咽頭
部の発赤は改善したが、食道全体および胃前底部から体部にかけての発赤・白苔に加えて潰瘍形成がみら
れた。幽門前部は全周性にやや狭窄しており、壁の進展性は不良であった。第21病日より食事開始。当初、
順調であったが、第23病日から食事摂取不良や頻回の嘔吐が見られた。第30病日のEGDにて幽門前部は
ピンホール状に狭窄し、細経内視鏡でも通過しなかった。第34病日、幽門前部に対し、バルーン拡張施行。
食道入口部はやや狭窄がみられた。第36病日より経管栄養開始。第50病日、細経内視鏡にて食道入口部
を通過し、幽門前部・食道入口部に対してバルーン拡張施行。第76病日、細経内視鏡にて食道入口部・幽
門前部の通過可能。第78病日、食事開始。第86病日、細経内視鏡で食道入口部を通過せず。第92病日、
鎮静下でも同様であり、バルーン拡張は断念した。この状態でもムセなく、食事摂取は可能であった。第
100病日、バリウム造影にて食道入口部・幽門前部の狭窄あり。造影剤の通過は良好であるが、食事のと
きに咽頭部つかえ感が出現し始めており、治療を検討中である。【考察】文献的には腐食性消化管障害の
治療では外科手術を要することが多いとされている。当症例では内視鏡的拡張を行っているが、対応に苦
慮している。その後の経過も含めて報告する。
55
消化管転移で発見された乳癌の2例
井上 良介1、岩永 明人1、窪田 智之4、桑原 明史2、石原 法子3、菅野 智之1、渡辺 雄介1、阿部 聡史1、
関 慶一1、石川 達1、本間 照1、吉田 俊明1
1
済生会新潟第二病院消化器内科、2済生会新潟第二病院外科、3済生会新潟第二病院病理診断科、4新潟臨港病院
消化器内科
乳癌の遠隔転移部位は肺、肝、骨の頻度が高い。消化管転移は稀とされており、進行例末期の全身転移の
一部分症として認められるとの報告が多い。そのため、初発に消化管症状を訴えた場合、転移性乳癌の診
断に難渋することも少なくない。今回私たちは、消化管病変から乳癌の転移と診断した2症例を経験した
ので、その臨床的特徴につき報告する。症例1、80歳代女性。嘔吐、腹部膨満感を訴え、EGDで胃内に大
量の残渣と多発性胃瘍を指摘され当科紹介。当院初回EGDでは、十二指腸下行脚は浮腫状に狭小化してい
たが、腫瘍性病変として認識できなかった。その後の腹部CTで、膵頭部を含め、十二指腸下行脚から水平
脚に全周性の腫瘤性病変が疑われたため、EGD再検し、同部からの生検で粘膜下層に孤在性に印環細胞癌
様の異形細胞の浸潤を認め、他臓器よりの浸潤か転移が疑われた。一方、数年前より本人は右乳房にしこ
りを自覚しており、経皮的針生検から浸潤性小葉癌と診断された。十二指腸病変組織との類似性から乳癌
の十二指腸転移と診断した。症例2、50歳代女性。排便困難感を訴えて当科を初診。大腸内視鏡検査で直
腸は全周性、浮腫状に狭小化を認めた。同部よりの生検で悪性所見を指摘できなかった。以後、漸次排便
困難感は増悪し、約1か月後の内視鏡再検時には狭窄性変化も進行していた。再度同部位よりのボーリン
グ生検にて、粘膜下層主体に浸潤した低分化型腺癌を認めた。原発か転移かの判断はつかなかったが、症
状も切迫していたため、外科的切除の方針とした。開腹時すでに広範な腹膜播種が認められたため、横行
結腸にstomaを造設し閉腹した。播種巣の病理組織で、乳癌が疑われる所見であった。術後胸部CTにて右
乳房に径2cmの腫瘤性病変を認め、針生検で浸潤性小葉癌であった。症例1同様、乳癌の転移と診断した。
現在、内分泌療法を施行中である。
56
消化管出血を伴った胃GISTの3例
大上 康広、内野 学、前田 知香、北沢 将人、伊藤 勅子、水上 佳樹、牧内 明子、平栗 学、北原 博人、
新宮 聖士、堀米 直人、金子 源吾
飯田市立病院 外科
胃gastrointestinal stromal tumor(GIST)には出血が合併することがあり、貧血や吐血を主訴に受診し
GISTと診断される症例も少なくない。今回我々は消化管出血を伴った胃GISTを3例経験したため文献的
考察を含め報告する。症例1)82歳男性、近医にて貧血を指摘され、上部消化管内視鏡を施行された。胃
体中部小彎~後壁にかけて粘膜下腫瘍を認めた。腫瘍の中心部は壊死を伴っており易出血性であった。
GIST 疑 い で 当 院 へ 紹 介 受 診 さ れ 、 幽 門 側 胃 切 除 ( Billroth 2 法 ) を 行 っ た 。 病 理 診 断 で は 腫 瘍 は
50×45×40mm大でCD34(+)、c-kit(+)からGIST(高リスク)と診断された。症例2)74歳男性、
黒色吐物、タール便を主訴に受診され、緊急内視鏡を施行したところ胃体中部に粘膜下腫瘍を認め頂部に
は露出血管を認め活動性の出血を認めた。同部位に対しクリップ及びHSE局注し良好な止血が得られた。
その後、胃粘膜下腫瘍に対し胃部分切除術を施行した。病理診断では腫瘍径は40×30mm大で、CD34
(+)、c-kit(+)でありGIST(低リスク)と診断された。症例3)82歳女性、吐血を主訴に当院へ救急
搬送された。緊急内視鏡を施行したところ胃穹窿部後壁に5cm大の粘膜下腫瘍を認め、その大彎側に
delleを認めた。同部位から活動性の出血を認めたためクリップにて止血した。その後のCTにて胃底部内
腔 に 56×54mm 大 の 腫 瘤 を 認 め GIST が 疑 わ れ 、 胃 部 分 切 除 術 を 施 行 し た 。 病 理 診 断 で は
65×55×50mm大、CD34(+)、c-kit(+)でGIST(中リスク)と診断された。
57
当科における消化管GISTに対するスニチニブの使用経験
細村 直弘1、河口 賀彦1、赤池 英憲1、土屋 雅人1、森 義之1、宮坂 芳明3、三浦 和夫2、藤井 秀樹1
1
山梨大学 医学部 第一外科、2加納岩総合病院 外科、3山梨県立中央病院 外科
【はじめに】イマチニブ耐性GISTに対する薬物療法はスニチニブとレゴラフェニブがある。これらには副
作用が多く、継続投与に難渋する症例も多いと思われる。当科で、スニチニブを投与した消化管GISTの2
例を経験したので報告する。【症例1】58歳、男性。前医で2007年12月小腸GISTを手術した際、腹膜播
種を認めた。術後、イマチニブ400mg/日を開始し、6か月後のCTで抗腫瘍効果がPDのため、スニチニブ
導入目的に当科紹介となる。スニチニブ50mg/日で開始した。開始12日目に嘔吐のため中止した。その
後も、心房細動やGrade2の下痢を認めた。スニチニブを37.5mg/日に減量して再開したが、その3日後
に再び嘔吐を認め、再度内服中止した。開始30日目のCTで抗腫瘍効果はSDであった。スニチニブをさら
に25mg/日に減量して再開した。再開20日目に血小板数の低下を認めたため中止し、その2日後に高ア
ンモニア血症による見当識障害とはばたき振戦が出現した。アミノレバン投与により徐々に症状は改善し
たが、その後はスニチニブの再開は行っていない。【症例2】57歳、女性。既往歴に糖尿病があるが、血
糖値は問題なく内服はしていない。前医で2002年3月胃GISTと肝転移に対して手術施行。その1年後、胃
前壁に再発を認めたのでイマチニブ400mg/日を開始したが、副作用が強いため200mg/日を週3回投与
とした。その後、肝転移と腹膜播種に対し2回手術を施行。2012年10月切除不能多発肝転移を認め、ス
ニチニブ50mg/日で開始した。開始当日に低血糖発作を認め、ブドウ糖の持続点滴を6日間施行した。開
始3日目にgrade3の好中球減少を認め、スニチニブを中止した。投与開始19日目のCTで、計測可能病変
は13.6%増大しており、また、スニチニブ中止後28日目でも好中球減少がgrade2から改善しないため、
イマチニブを再開した。【まとめ】今回、高アンモニア血症や低血糖といったまれな副作用を経験した。
スニチニブはイマチニブ耐性GIST治療薬としてガイドラインに記載されており、今後投与機会の増加が予
想される。スニチニブ投与時は発症頻度の少ない副作用にも注意する必要がある。
胃・十二指腸5
58
14:50~15:20
座長
門倉
信(市立甲府病院)
9ヶ月で急速に発育し、遡及的検討が可能であった胃原発DLBCLの一例
山田 崇裕、小山 恒男、宮田 佳典、友利 彰寿、高橋 亜紀子、篠原 知明、岸埜 高明、久保 俊之、森主 達夫
佐久総合病院 胃腸科
患者は60歳代男性。人間ドックのEGDにて、萎縮性胃炎・過形成ポリープと診断された。また、腹部超
音波検査(US)にて3mm大の膵嚢胞が認められ、3カ月後のUS再検でも同様の所見であった。7カ月後に腹
部膨満が出現し、9カ月後に近医を受診した。腹部骨盤単純CTにて胃壁全体の壁肥厚と、腹水を認めたこ
とからスキルス胃癌による腹膜播種を疑われ当院紹介受診となった。 EGDにて、胃前庭部小彎にやや発
赤調の辺縁隆起を伴う発赤調の不整形潰瘍性病変を認めた。NBI拡大にて陥凹部は表面構造が不明瞭化し
ており、辺縁隆起はWhite zoneが不均一なvillous patternを呈していた。また、体部大彎のfoldは不整
に腫大し、giant foldを呈していた。 腹部骨盤造影CTで広範な胃壁肥厚と胃小彎側・大動脈周囲のリン
パ節腫大、大網の肥厚、腹水貯留を認めた。また、胸部単純CTにて右胸水貯留と葉間胸膜の肥厚所見を認
めた。腹水細胞診及び生検にてびまん性大細胞型リンパ腫(DLBCL)、StageIV(Lugano分類)と診断した。
EPOCH療法1コースを開始した所、3日目より腫瘍崩壊症候群と思われる高K血症(6.2mEq/ml)が出現し
たため、EPOCH療法1コースは3日目で中止した。GI療法を施行したが状態は改善せず、血液透析を2回
施行した。腎機能障害・高K血症が改善した後に、EPOCH療法2コース目を施行したが副作用なく、胃壁
の肥厚は著明に改善し、腹水やリンパ節腫大は消失していた。その後、CHOP療法を1コース、R-CHOP
療法を4コース、Rituximabを2コース施行し、約13ケ月CRが継続している。<考察>発症9カ月前の
EGDを再度検討したが、慢性萎縮性胃炎以外には所見がなく、また6カ月前の腹部エコーでもリンパ節腫
大や腹水を認めなかったことから短期間に高度進行した胃原発DLBCLと考えた。
59
胃病変で発見された濾胞性リンパ腫の1例
徳竹 康二郎1、赤松 泰次1、下平 和久1、坂口 みほ1、張 淑美1、藤川 祐子2
1
長野県立 須坂病院 消化器内科、2長野県立 須坂病院 血液内科
症例は70代の男性。2013年1月、当院人間ドックでのEGDにて体下部大彎にヒダ集中を伴う陥凹病変を
認め、MALTリンパ腫を疑って生検を行った。明らかな異型上皮は認めず、上皮下に全体的にリンパ球が
浸潤しLELも伴っていた。リンパ球はCD20陽性のB細胞で、CD10陽性の濾胞様構造を呈する部分も存在
し濾胞性リンパ腫の可能性が示唆された。全身検索として行った腹部造影CTでは腸間膜を挟むように
8x4cm大の腫瘤を認め、腫瘤の内部を脈管構造が通過するsandwich signを呈していた。経口および経肛
門的小腸内視鏡では回腸、空腸に白色顆粒状病変の散在を認め、同部の生検でも濾胞構造を有するB細胞
リンパ球の浸潤を認めたが、腸管濾胞性リンパ腫の好発部位とされる十二指腸には異常所見は認めなかっ
た。FDG-PETでは腸間膜の他に縦隔リンパ節や骨盤骨に集積を認めた。以上より、腸間膜原発の濾胞性
リンパ腫(Grade2)、AnnArbor分類StageIVAと診断し、4月よりR-CHOPを開始した。4コース終了
後のFDG-PET再検査では、病変を示す異常集積はいずれも消退しており、今後は8コースまで治療を予
定している。
一般的に濾胞性リンパ腫はslow growingな経過を辿ることが多く、また、消化管原発濾胞性リンパ腫
は初期段階で内視鏡的に十二指腸病変を契機に発見される症例が多い。一方、腸間膜を原発とする場合は
大きくなるまでに症状に乏しいため腹部腫瘤で発見される事が多いと考えられた。
60
閉塞性黄疸で発症した十二指腸Burkittリンパ腫の1例
熊谷 和樹1、井上 良介1、阿部 聡司1、岩永 明人1、石原 法子2、本間 照1、関 慶一1、石川 達1、渡邉 雄介1、
菅野 智之1、吉田 俊明1
1
済生会新潟第二病院 消化器内科、2済生会新潟第二病院 病理診断科
近年、十二指腸原発濾胞性リンパ腫が注目され報告例も増えている。一方、十二指腸Burkittリンパ腫の報
告は稀である。閉塞性黄疸を来たしたリンパ腫の報告は少なく、閉塞機転の多くは腫大したリンパ節によ
る胆道狭窄であり、十二指腸腫瘤による乳頭部狭窄の報告は少ない。またリンパ腫初発症状としての閉塞
性黄疸も稀である。症例は79歳男性。4,5日前から右季肋部痛、発熱が出現した。近医で黄疸を指摘され、
腹部超音波検査で急性胆管炎を疑われ当科紹介受診した。CTで十二指腸球部~下行脚は、壁の層構造が消
失、肥厚し腫瘤状となり、早期相で低吸収、門脈相~後期相にかけ徐々に造影された。十二指腸乳頭も腫
瘤状部分に含まれ、拡張した総胆管~肝内胆管、主膵管は同部で先細り、十二指腸腫瘍による閉塞性黄疸
と診断された。肝十二指腸靱帯や十二指腸周囲には5mm前後の小リンパ節が散在していたが、他に有意
な腫大リンパ節は認めなかった。EGDでは幽門輪が変形狭窄しスコープが通過せず、球部前壁に白苔の
覆った潰瘍底が覗くだけであった。内視鏡的胆道ドレナージをあきらめ、翌日PTCDを行った。十二指腸
腫瘍の形態を評価するため低緊張十二指腸造影を行った。幽門~球部は変形狭窄し、下行脚は壁に沿って
凹凸のある隆起、潰瘍形成、襞の肥厚を認めた。以上から十二指腸癌も疑われたが、悪性リンパ腫を強く
疑った。潰瘍辺縁からの生検組織で腺管形成のない異型細胞を認め、後日免疫染色の結果、Burkittリンパ
腫と診断された。骨髄吸引細胞診ではリンパ腫細胞は認めなかった 。病期診断はLugano国際分類で
stageII-1であった。血液内科へ転科しR-THP-COP療法を行っている。腸管壁全層に浸潤した症例では、
化学療法中に出血や穿孔などの合併症が多く、化学療法奏功後も胆道あるいは十二指腸の瘢痕狭窄を来た
すことがあると報告されており、これらに充分注意しながら経過観察中である。
小腸
15:20~16:10
61
座長
長屋 匡信(信州大2内)
カプセル内視鏡検査が診断に有用であった血便発症の小腸悪性リンパ腫の1例
岡 怜史1、深澤 佳満1、小嶋 裕一郎1、倉富 夏彦1、久野 徹1、細田 健司1、鈴木 洋司1、望月 仁1、高橋 和徳2、
中山 裕子2、長堀 薫2、進藤 弘雄3、小山 敏雄4、小俣 政男1
1山梨県立中央病院 消化器内科、2山梨県立中央病院 外科、3山梨県立中央病院 血液内科、4山梨県立中央病院
病理
症例:70歳代、男性。主訴:血便。既往歴:C型慢性肝炎、心房細動(ワーファリン内服中)、脳梗塞、
狭心症、大動脈弁・僧帽弁置換術。現病歴:2009年1月人間ドックで肝S3に突出する腫瘤を指摘され、
当院紹介受診となった。肝細胞癌と診断とされ、2009年3月に当院外科にて肝部分切除術施行した。
2011年1月肝S3に肝細胞癌の再発を認めRFAを施行し、以後再発なく通院中であった。2013年4月血便、
貧血にて入院。大腸鏡検査では終末回腸にびらんを認めクリップを施行している。ほか上行結腸に憩室を
認める以外、特記所見を認めなかった。上部消化管内視鏡検査ではRC sign陰性の食道静脈瘤を認めた。
入院後血便はなく、以後外来経過通院中であった。2013年6月血便、貧血にて再入院。大腸鏡検査では前
回と同様に上行結腸憩室、終末回腸のびらんを認めたが、出血源は認められなかった。カプセル内視鏡検
査では、小腸に潰瘍性病変が多発しており、同部が出血源と考えられた。2013年7月経口ダブルバルーン
小腸内視鏡検査の予定であったが、検査施行前日に突然の腹痛あり、CTでは小腸壁の断裂とfree airを認
め小腸穿孔と診断し、当院外科で緊急開腹術を施行した。手術所見では、回盲部より80cmの部位に壁肥
厚像とピンホール状の穿孔部位を認め、同部を含め小腸部分切除を実施した。肉眼所見では腫瘍の中心部
の壁の菲薄化した部位に壊死を認め、組織学的にはDiffuse large B-cell lymphomaの診断であった。現
在当院血液内科にてR-CHOP療法施行中である。
診断にカプセル内視鏡が有用であり小腸穿孔を呈した悪性リンパ腫の1例を経験したので、若干の文献敵
考察を加えて報告する。
62
鑑別困難な回腸輪状潰瘍の1例
山田 沙季1、井上 良介1、本間 照1、岩永 明人1、石原 法子2、西倉 健2、味岡 洋一3、阿部 聡司1、石川 達1、
渡邉 雄介1、菅野 智之1、吉田 俊明1
小腸腸間膜付着側の縦走潰瘍あるいは小潰瘍の縦走配列はクローン病に特異性の高い所見である。小腸輪
状潰瘍の鑑別にはクローン病の他に結核、虚血、NSAIDsなどが挙げられる。今回われわれは、イレウス
を来たした小腸癌と診断し、外科切除の結果、終末回腸に高度狭窄を来たした輪状潰瘍と、その口側回腸
腸間膜付着側に不整型小潰瘍が縦走配列を示す症例を経験した。症例は40歳代、男性。介護職で高齢者と
の接触多い。家族内に結核患者はいない。20歳代後半から下痢、腹痛を繰り返していたが自然消退してい
た。再発性あるいは多発口腔内アフタはなく、痔瘻などの肛門部病変の既往もない。NSAIDsを含む薬剤
服用歴なし。5年前、腹痛が2カ月続き食べられなくなり当科受診したが、自然軽快した。当時の腹部Xp
を見直すと腸管の一部が径5cmと著明に拡張しガス貯留像を認めた。3月前から再び食後腹部膨満感強く
なり食事量も減少し6kg/3月の体重減少あり、当科受診した。腸蠕動音は金属音、腹部Xpで小腸鏡面像を
認めイレウスと診断した。CRP 4.05mg/dl、貧血Hb 12.9g/dl、低蛋白TP 4.8g/dl、低アルブミンAlb
2.0g/dlの状態であった。CTで、終末回腸付近に高度の管腔狭小化を伴う全周性壁肥厚と口側小腸の広範
な拡張を認め、回結腸動脈リンパ節腫大も見られた。EGDでは竹の節様所見を含め異常所見は見られな
かった。回結腸動脈リンパ節転移を伴う小腸癌によるイレウスと診断し緊急手術となった。術中所見では、
回盲部から20cmに狭窄部があり、同部で回腸は折れ返るように癒着し、腫瘍は認めなかった。切除標本
では狭窄部はピンホール状となり裂溝形成を伴う潰瘍を認めた。口側腸管には腸間膜付着側に浅い不整型
~縦長の潰瘍が縦走傾向を示し散在していた。残存小腸に大きさ3cm、5cmの糞石を認め摘出した。ク
ローン病を疑い、術後消化器内科へ転科となった。ツ反陰性。切除標本の病理組織では類上皮肉芽腫は認
めずクローン病とは確定できず、鑑別困難な回腸輪状潰瘍として経過観察中である。
63
回盲部単純性潰瘍の1例
中村 晃1、山崎 智生1、富永 新平1、竹内 和航1、北原 桂1、飯嶌 章博1、小山 佳紀2、河西 秀2、小出 直彦2、
下条 久志3
1
長野県立木曽病院 内科、2長野県立木曽病院 外科、3信州大学医学部付属病院 病理学教室
症例は32歳男性。4月中旬より特に誘因なく上腹部痛が出現した。痛みが増悪し、食事がとれなくなった
ため5月初旬に近医を受診した。上部消化管内視鏡検査では異常をみとめず、PPIを処方されたが痛みの改
善はなかった。近医再診時の血液検査でWBC 11,000/μl, CRP 7.1mg/dlと炎症反応の上昇を認めたた
め精査加療目的に当科入院となった。外来での経過中、下痢や血便など便通異常は認めなった。腹部造影
CTで上行結腸に壁肥厚を認めたことから上行結腸憩室炎と診断し、絶食のうえ抗生剤(SBT/CPZ 2g/
日)を開始した。しかし38℃台の発熱と腹痛が持続し、炎症反応の改善もみられなかった。入院第8病日
より咽頭痛を認め、口腔内アフタが出現した。精査目的に上下部消化管内視鏡検査を施行した。上部消化
管内視鏡検査では口腔内に類円形の潰瘍を散見したが食道から十二指腸には異常所見は認めなかった。下
部消化管内視鏡検査では回盲弁から終末回腸に深掘れ潰瘍を認め、その他の結腸、直腸には所見を認めな
かった。HLA-B51は陽性であったが身体所見、内視鏡所見、病理組織検査などから総合的に単純性潰瘍
と診断した。第13病日よりPSL 40mg/日、5-ASA製剤3g/日の内服および成分栄養剤による栄養療法を
開始した。第14病日には36℃台に解熱し、CRPも改善傾向を示した。第18病日(PSL開始6日目)には
腹痛は軽減し、CRPも陰性となった。第20病日(PSL開始8日目)よりPSL30mg/日に減量し、その後は
5mg/週ずつ漸減したが、発熱、腹痛、炎症反応の再燃を認めず、第45病日にPSL15mg/日で退院した。
またPSL開始1か月後に下部消化管内視鏡検査を施行したところ、回盲部の潰瘍は縮小していた。その後
外来にてPSL5mg/週ごと減量したが、発熱や腹部症状の増悪を認めなかったため、第70病日にPSL終了
とした。5-ASA製剤の内服のみ継続としたが、通院が途絶えたため無治療となった。通院が途絶えてから
約11ヵ月後に健診異常で受診したが、腹部症状の再燃はなく経過良好とのことであった。今回我々は上行
結腸憩室炎や腸管ベーチェット病などとの鑑別を要した回盲部単純性潰瘍の1例を経験したため、考察も
踏まえて報告する。
64
サイトメガロウイルス感染による小腸穿孔の1例
荒井 義和1、石曽根 聡1、杉山 聡1、高須 香吏1、竹内 大輔1、村中 太1、荻原 裕明1、鈴木 彰1、宮川 雄輔1、
杉山 舞2、小平 日実子3、佐野 健司3、宮川 眞一1
1
信州大学 医学部 外科学第一 消化器外科、2信州大学 医学部 第二内科 腎臓内科、3信州大学 医学部 附属
病院 臨床検査科 病理部
症例は47歳,女性.主訴は心窩部痛.10年前にIgA腎症にて献腎移植術を施行された.1ヶ月前にIgA腎
症の急性増悪に対して,ステロイドパルス療法,エンドキサンパルス療法が施行された.以後,免疫抑制
剤とステロイドの内服を継続しつつ当院腎臓内科通院中であった.心窩部痛,食欲不振が出現したため,
当院腎臓内科を受診し,精査加療目的に入院となった.絶食と補液にて症状は軽快傾向となったが,原因
精査のため行った下部消化管内視鏡検査にて,生検で異形な封入体様の大型核を持った細胞を認め,免疫
染色にてサイトメガロウイルス(CMV)の存在を認めCMV腸炎と診断された.ガンシクロビル(GCV)の
投与にて症状も消失,経口摂取も十分となった.第17病日に急激な腹痛が出現,腹部CTにて,腹腔内に
free airを認めた.消化管穿孔の診断にて緊急手術となった.開腹所見では腹腔内に漿液性の腹水を多量
に認め,Treitz靱帯より20 cmの空腸の腸間膜反対側に5 mm大の穿孔を認めた.浮腫状であった穿孔部
周囲の空腸を含めて約35 cmの小腸を部分切除した.術後は集中治療室に入室し,抗菌薬,GCVの投与を
行った.術後1日目にシクロスポリンの持続静注を再開.術後3日目にCMVアンチゲネミアの再上昇を認
めたため,CMV高力価γグロブリン製剤の投与を行った.術後4日目より経口摂取を再開した.その後の
経過は概ね良好であり,術後11日目にCMVアンチゲネミアの陰性化を確認,術後20日目に退院となった.
病理組織学的検査所見は,穿孔部周囲の空腸には好中球,単核球の浸潤を認め,免疫染色にて粘膜内に
CMV陽性細胞を認め,CMV腸炎による穿孔と診断した.腎移植後は長期の免疫抑制剤,副腎皮質ステロ
イドの内服を必要とし,易感染状態からCMV腸炎などの日和見感染症を発症しやすい.CMV腸炎による
消化管穿孔はまれであるが,背景疾患や免疫不全の状態も影響し,その予後は不良である.今回,腎移植
後10年目に発症したサイトメガロウイルス腸炎による消化管穿孔に対して,集学的治療にて救命し得た1
例を経験したので報告する.
65
保存的治療後に緊急手術を施行した上腸間膜静脈血栓症の1例
小林 惇一1、田中 景子1、宮島 正行1、今井 隆二郎1、三枝 久能1、藤澤 亨1、森 宏光1、松田 至晃1、
和田 秀一1、草間 啓2
1
長野赤十字病院 消化器内科、2長野赤十字病院 外科
【症例】49歳男性【主訴】腹痛、下痢【既往歴】特記事項なし【家族歴】血栓症なし
【病歴】2013年6月14日に38℃台の発熱と頭痛を認め、近医を受診した。CRP 12mg/dl台であったが、
ガレノキサシンを処方され解熱した。17日より軽度の腹痛と1日8行程度の下痢がはじまり、19日には血
性下痢となった。そのため、20日前医を受診したところ、WBC 11600 /μl, CRP 15.03 mg/dlと炎症
反応が高値であったため、腹部造影CTが施行された。CTでは門脈本幹から上腸間膜静脈末梢に至る血栓
を認め、同院に入院した。翌21日未明に腹痛が増悪し、採血上炎症所見も増悪していたため、精査加療目
的に当院転院となった。CT上腸管壊死や穿孔は明らかではなく、外科との検討で腸管切除は短腸症候群が
必発と考えられたため、上腸間膜動脈からのウロキナーゼ持続動注と、ダルテパリンナトリウム静注を併
用した保存的療法を選択した。腹部所見は増悪なく、炎症反応や凝固マーカーは改善傾向となったため、
経時変化評価のため入院第20日に造影CTを施行したところ、小腸壁の破綻が指摘された。翌第21日に緊
急小腸切除術が施行され、計80cmの小腸が切除された。穿通していた小腸は、炎症や周囲の腸管で被包
化されており、汎発性腹膜炎への進展を免れていた状態であった。遡って検討したところ、腹部X線で壊
死腸管の小腸ガス像が入院時より不変であったため、入院当初より継続して強い虚血状態であった可能性
も考えられた。
【考察】上腸間膜静脈血栓症は、一部の特発性の症例の他、手術、腹腔内の炎症や血栓素因などに伴う続
発性の血栓症が知られている。本症例では潜在的な血栓素因は指摘されていないが、先行した腹腔内の炎
症の存在は否定できない。上腸間膜静脈血栓症は比較的稀な疾患であり、若干の文献的考察を加えて報告
する。
大腸1
66
9:20~10:00
座長
杉村 一仁(新潟市民病院)
再燃の毎に壊疽性膿皮症の増悪を伴う潰瘍性大腸炎の1例
牧野 暁嗣1、久野 徹1、小嶋 裕一郎1、倉富 夏彦1、深澤 佳満1、細田 健司1、鈴木 洋司1、望月 仁1、
塚本 克彦2、小山 敏雄3、小俣 政男1
1
山梨県立中央病院 消化器内科、2山梨県立中央病院 皮膚科、3山梨県立中央病院 病理
症例:60歳代、男性。主訴:血便。既往歴:特記事項なし。現病歴:2011年12月、血便を主訴に前医受
診。大腸鏡検査(CS)にて左側結腸に縦走潰瘍を認めたため、Crohn病を疑い5-ASA 3000 mg/day、
prednisolone (PSL) 50 mg/dayにて加療開始した。その後も症状の改善なく、2012年1月6日当科紹介
となった。CSにて直腸から肝彎曲部まで潰瘍を伴う浮腫状発赤粘膜を認め、全大腸炎型潰瘍性大腸炎
(UC)・中等症と診断した。便検査でCD toxin陽性であり、metronidazole内服、PSL 40 mg/day、5ASA 4000mg/dayにて加療、その後外来にてPSL漸減し臨床的に寛解していた。2012年4月下旬PSL
5mg漸減時より内服を自己中断した。5月初旬より後頭部、前胸部、四肢に膿疱、中心部潰瘍を伴う圧痛
のある浸潤性紅斑が多発し、当院皮膚科の生検にて真皮中層に炎症細胞浸潤を認め、壊疽性膿皮症の診断
となった。血便の増悪あり、CSでは全大腸にわたり再燃を認めた。また、CMV抗原陽性であった。
Ganciclovir、PSL 60mg/day、5-ASA 4000mg/dayに加え、6-mercaptopurine 30mg/dayも導入。
壊疽性膿皮症、UCともに改善した。以降寛解していたが、2013年4月より再度通院を自己中断し、8月5
日血便を主訴に当院救急受診し入院加療となった。壊疽性膿皮症の増悪を認め、UCの重症度は中等症で
あった。PSL 60mg/day導入、壊疽性膿皮症、UCともに改善を認め、第20病日退院となった。
壊疽性膿皮症はUCの腸管外合併症として知られているが、本症例ではUCの再燃と一致してその都度増悪
しており興味深く、文献的考察を加えて報告する。
67
壊疽性膿皮症を伴った潰瘍性大腸炎の一例
水戸 正人1、熊木 大輔1、横山 純二1、本田 穣1、鈴木 健司1、小林 雄司1、水野 研一1、上村 顕也1、竹内 学1、
青柳 豊1、下村 尚子2、藤川 大基2、貴舩 夏子2
1
新潟大学医歯学総合病院 消化器内科、2新潟大学医歯学総合病院 皮膚科
【症例】50代男性【臨床診断】#1. 潰瘍性大腸炎(UC),#2. 壊疽性膿皮症,#3. 左頬粘膜癌【既往歴】
2011年7月 血便で3週間入院(他院)【入院までの経過】2013年5月上旬 発熱出現。左前脛部の自発痛が
出現し、徐々に腫脹。また、時期不詳だが、左後頸部、左背部にも同様の腫脹が出現し、排膿も認めた。
5月下旬 発熱が持続するため、近所の総合病院を受診し、全身精査で頬粘膜癌と診断された。6月11日 頬
粘膜癌治療目的で当院紹介入院。【入院後経過】<#1. UC>入院後、血便が出現。6月19日 下部消化管
内視鏡検査(CS)施行し、潰瘍性大腸炎(全大腸炎型・活動期・中等症)と診断した。プレドニゾロン内服開
始し、約1ヵ月で臨床的・内視鏡的に寛解。<#2. 壊疽性膿皮症>入院時、左前脛部膿瘍、背部潰瘍、左
耳介後部潰瘍、左中指腫脹を認めた。切開排膿、抗生剤投与、抗生剤軟膏塗布を行ったが全身の皮膚症状
は改善せず。膿瘍からの頻回の培養検査ではほぼ全て無菌性であった。背部潰瘍の皮膚生検では好中球性
皮膚症所見は認めなかったが、総合的に判断し壊疽性膿皮症と診断した。その後、左前脛部潰瘍が拡大。
他部位の皮膚所見は改善。7月2日 左前脛部潰瘍に対し顆粒球吸着療法(GCAP)開始し、以後週2回施行。
潰瘍の拡大が停止し、GCAP全10回終了後、徐々に肉芽の色調が紅色調に改善。8月9日 創閉鎖までの期
間短縮を期して局所陰圧閉鎖療法(VAC)開始。開始後、上皮化が進行してポケットも消失。8月19日
VAC終了。以後、軟膏塗布を継続し、潰瘍は治癒傾向。9月20日 左前脛部潰瘍は縮小。<#3. 頬粘膜癌
>8月20日 切除術施行。術後経過良好。【まとめ】UCの腸管外合併症として壊疽性膿皮症が知られてい
る。本症例では、全身に壊疽性膿皮症による皮膚所見を認め、左前脛部潰瘍の治療に当初難渋したが、
GCAPおよびVAC療法により改善を認めた。
68
肝膿瘍を契機に発見された上行結腸癌の一例
鳥居 旬1、児玉 亮1、牛丸 博泰1、池野 龍雄2
1
JA長野厚生連 篠ノ井総合病院 消化器内科、2JA長野厚生連 篠ノ井総合病院 外科
症例は70歳女性.喘息と原因不明の正球性正色素性貧血で近医に通院していた.糖尿病の既往はなく,ス
テロイドは吸入のみで内服歴はない.2013年7月に3日間続く39℃台の発熱と悪寒戦慄,全身倦怠感を主
訴に当科を受診した.受診時の身体所見は体温39.2 ℃,血圧96/71 mmHg,脈拍150 /分,胸部に異常
所見は認めず,腹部では上腹部に圧痛を認めた.血液検査ではWBC 10700 /μl,CRP 22.56 mg/dlと
炎症所見,および鉄欠乏性貧血を認めた.腹部CT検査では,肝臓に境界明瞭な分葉状の腫瘤を複数認め,
内部は造影されないが造影早期相で周囲が造影されることから肝膿瘍が疑われた.敗血症および肝膿瘍の
診断で入院した.エコーガイド下に経皮的膿瘍穿刺を行ったところ,白色調の濃性液を吸引した.入院時
の血液培養検査と膿瘍穿刺液の培養にてともにKlebsiella pneumoniaeが同定された.膿瘍穿刺液の細胞
診はClass Iであった.抗生剤(MEPM,感受性確認後はCEZ)の投与により肝の多発腫瘤は縮小した.
炎症所見が落ち着いた後に肝膿瘍の原因精査を行ったところ,下部消化管内視鏡検査にて上行結腸に全周
性の2型腫瘍を認め,生検で高分化から中分化の管状腺癌と診断した.全身検索でおこなった胸腹部CT検
査にてほかに明らかな転移の所見は認めなかった.当院外科へ紹介し,9月に右半結腸切除術を施行した.
病理結果はtub1+tub2, ss, ly1, v2, N1, stageIIであった.現在外科外来にて化学療法を継続中である.
本例は胆石,胆嚢炎,胆管炎などの経胆道感染を示唆する所見はなかった.また,全身検索で敗血症の原
因となりうる感染所見は認めなかったことから,大腸癌からの経門脈的感染が推測された.肝膿瘍の診断,
治療においては,原因疾患として大腸癌の可能性を念頭においた下部消化管精査が必要であると考えられ
た.
69
AIDS発症で判明した消化管Kaposi肉腫の1例
倉石 康弘1、奥原 禎久1、関口 智裕1、北畠 央之1、丸山 康弘1、岡村 卓磨1、小林 聡1、大工原 誠一1、
中村 真一郎1、野沢 祐一1、福澤 慎也2、山田 重徳1、長屋 匡信1、菅 智明1、新倉 則和2、田中 榮司1、
牛木 淳人3、金井 信一郎3、上原 剛4
1
信州大学 医学部 消化器内科、2信州大学 医学部附属病院 内視鏡センター、3信州大学 医学部 呼吸器・
感染症内科、4信州大学 医学部 臨床検査部
症例は50歳代、男性。30歳代にB型肝炎ウイルスキャリアと診断された。 2012年秋より腹部から両下
肢にかけて帯状疱疹が出現し、同時期より左上腕に紅色の皮疹が出現し、12月頃より左頸部に腫瘤を自覚
していた。2013年2月頃より咽頭違和感を自覚し、3月に当院の耳鼻科を紹介受診し、左口蓋扁桃に発赤
調の隆起性病変を認めた。その後、全身倦怠感が出現し改善せず、黄疸も認めたため当科に紹介となった。
肝胆道系酵素、HBs抗原の高値を認め、B型肝炎の再燃と診断し精査加療目的に入院した。 また、2カ月
以上持続する咳嗽、入院時より間欠熱を認めていた。血液検査上HIV陽性であり、CD4<200 /μl、CD4
<CD8、リンパ球<1200 /μlと免疫不全状態であった。入院時、咽頭・皮膚のKaposi肉腫疑う所見、B
型肝炎急性増悪、ニューモシスチス肺炎を疑う所見を認めAIDS発症と考え、テノホビルとラルテグラビル
によるHAART療法開始した。また、入院後、上下部消化管内視鏡検査を施行し、頸部食道から十二指腸
にかけて多発する発赤調の平坦病変と直腸に散在する発赤調の隆起性病変を認め、消化管Kaposi肉腫と判
断した。Kaposi肉腫はAIDS患者に高頻度に合併する悪性腫瘍で、消化管の頻度は皮膚に次いで多いとさ
れる。今回我々は消化管Kaposi肉腫を経験し、内視鏡的に経過観察し得たので、文献的考察を加え報告す
る。
大腸2
10:00~10:40
70
座長
須藤
誠(山梨大1外)
イレウスを生じなかったパテンシーカプセル滞留の一例
日原 優1、高橋 俊晴1、持塚 章芳1、木畑 穣2、白籏 久美子2、岡庭 信司1、水上 佳樹3、堀米 直人3、
中村 喜行1
1
飯田市立病院 消化器内科、2飯田市立病院 総合内科、3飯田市立病院 消化器外科
パテンシーカプセル(PPC)はPillCam®SB2カプセル(CE)による小腸内視鏡検査に先立ちCE通過性
の確認目的に使用されるが、PPCそのものの滞留によるイレウス発症も報告されている。今回、小腸の
通過性は良好であったものの、イレウス症状を起こすことなく長期間結腸内にPPCが滞留した1例を経
験したので報告する。
【症例】30歳代男性。Peutz-Jeghers 症候群に伴う腸重積にて7歳時、17歳時に開腹、ポリープ切除
術、34歳時に直腸癌に対する低位前方切除術(直腸S状結腸端側吻合)、多発小腸ポリープに対する開
腹ポリープ切除術の既往がある。【経過】CEによる小腸ポリープ検索に先立ち、PPCを内服。31時間
後来院時までに排便無く目視による排泄確認が出来ず、腹部X線検査で左側横行結腸に原型を留めたまま
存在することを確認し小腸開通性ありと判定。便秘傾向であり直腸S状結腸吻合部での通過性確認も必要
と考え、CEは延期した。当日下剤内服し翌日受診したが排便なく56時間後に腹部X線検査を実施。PP
Cは下行結腸へ移動していた。吻合部での通過を確認できないためCEは実施せず、8日目に再度X線検
査を実施。PPCは原型のまま直腸S状結腸吻合部付近に存在した。この間、便通異常や腹部症状は認め
ず、通常の食事を摂取していた。同日GE60mlで前処置しCSを施行。吻合部が狭小化しておりCF-H2
60AIが通過せず15mmまでバルーン拡張を行った。吻合部より口側に挿入したところ、端側吻合の盲
端側結腸内にほぼ原型の形状を留めたPPCを認めた。PPCは把持鉗子で容易に変形し回収しえた。【考
察】PPCは時間経過にて軟化し変形することで消化管狭窄部位を通過するか、通過不能ならイレウス症
状を起こすものと思われるが、本症例では端側吻合の盲端側に留まったため変形せず無症状で経過し、排
泄されなかったものと思われる。【結論】小腸通過性ありと判定できても、大腸通過性確認を必要とする
場合がある。PPCの滞留部位によってはイレウスを生じない場合がある。
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当院において過去 5年間に経験された腸管気腫症のまとめ
北畠 央之、長屋 匡信、丸山 康弘、福澤 慎哉、中村 真一郎、野沢 祐一、大工原 誠一、小林 聡、
岡村 卓磨、奥原 禎久、山田 重徳、菅 智明
信州大学 医学部附属病院 内科学第二講座
腸管気腫症は腸管壁内に気腫像を認める病態の総称である。以前は嚢胞様気腫症と呼ばれて比較的稀な病
態と考えられてきたが、近年は画像診断の向上に伴い発見例が増加しており、嚢胞様気腫以外の気腫像を
呈することが知られている。発症要因には諸説あるが、主に腸管粘膜脆弱性と腸管内圧上昇が背景として
疑われている。
今回我々は院内で確認された腸管気腫症のうち、腸管気腫症に関する全国調査に準じた背景検索が可能で
あった34例を検討した。うち代表的な3例を提示すると共に、若干の文献的考察を加えつつ、当院におけ
る腸管気腫症の傾向をまとめる。
【症例1】70歳代、男性。糖尿病に対してα-GIの長期内服歴がある。慢性的な便秘に加えて腹部膨満感が
出現したことから下部消化管内視鏡検査を施行され、S状結腸を中心とした嚢胞様気腫の多発を認めた。
高圧酸素療法と腸管蠕動亢進薬の投与で症状は改善した。
【症例2】50歳代、女性。強皮症に対してPSL・PPIの長期内服歴がある。誘引なく出現した頻回水様
便・腹痛・背部痛に対して腹部単純レントゲン写真を撮影したところ、小腸壁に一致して線状気腫像を認
めた。絶食・高圧酸素療法による保存的治療で気腫像・症状ともに消失した。
【症例3】90歳代, 女性。既往歴・内服歴とも特記すべきことはない。腹部違和感・食思不振を主訴に受
診され、腹部CTで回盲部~終末回腸に嚢胞様気腫像の多発を認めた。低流量酸素の投与で症状は改善した。
詳細な暴露経路は不明であるが,尿中トリクロロエチレンが検出された。
72
大腸SM癌転移・再発例の検討
川原 聖佳子1、西村 淳1、新国 恵也1、田島 陽介1、富所 隆2、佐藤 明人2
1
新潟県厚生連長岡中央綜合病院 消化器病センター 外科、2新潟県厚生連長岡中央綜合病院 消化器病センター
内科
【はじめに】大腸SM癌はSM浸潤度1000μm以上でリンパ節転移を12.5%に認め、また、まれに遠隔転
移を来すこともあり、大腸癌治療ガイドラインで推奨された手術適応基準に従って治療が行われているが、
患者側因子によっては外科切除をするべきかどうか迷う場合もある。【目的】大腸SM癌の転移・再発例
をretrospectiveに検討し、現在の治療が適切であるかどうかを明らかにする。【対象】2003年1月~
2011年12月に内視鏡的・外科的切除された大腸SM癌214例(内視鏡治療のみ63例、内視鏡治療後追加
外科切除54例、最初から外科切除97例)とSM癌とされ内視鏡治療後追加切除したうちpSMでなかった症
例。【結果】1. 外科切除された151例中リンパ節転移は17例(11.3%)に認めた。その内訳はSM浸潤度
1000μm以上12例(70.6%)、ly陽性6例(35.3%)、v陽性5例(29.4%)、muc 2例(11.8%)で、
全て手術適応基準のものであった。SM浸潤度1000μm以上のみの場合のリンパ節転移は7例(4.6%)で
あった。再発例はpN0だった2例(1.3%、肺転移1例、肝転移1例、いずれも切除し生存)であり、原病
死は無かった。2. 内視鏡治療のみでガイドラインに従って経過観察されたのは42例(66.7%)で再発や
原病死は無かった。手術適応基準だったが経過観察されたのは21例(33.3%)でそのうち4例(19.0%、
断端陽性が3例)に再発を認めた。外科切除されたが、1例(4.8%)は原病死した。3. SM癌とされ内視
鏡治療後追加切除したがpSMでなかった症例は3例(いずれも断端陽性か遺残あり)で、そのうち1例は
手術後5ヶ月で腹膜播種を来たし10ヶ月後に原病死した。<まとめ>ガイドラインに従って外科切除され
た大腸SM癌の成績は良好であるが、内視鏡治療再発後の外科切除例では死亡例があり、断端陽性や遺残
例では強く外科手術を勧めるべきである。また断端陽性や遺残例は深達度が不明確であるため、進行癌の
可能性を考慮する必要がある。SM浸潤度1000μm以上のみの場合のリンパ節転移率は低く、患者側の因
子によっては、経過観察も考慮されうるが、遠隔転移が0ではないことを念頭においたフォローアップが
必要である。
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保存的治療で軽快した門脈ガス血症の一例
高木 宏明、中本 美郁、金山 雅美、野々目 和信、月城 孝志、康山 俊学、樋口 清博
糸魚川総合病院
門脈ガス血症は腸管壊死で認められる重篤かつ予後不良の徴候とされ、緊急手術適応の一つの指標とされ
てきた。しかし近年、腸管壊死に起因しない門脈ガス血症に対して保存的加療にて軽快した報告が散見さ
れるようになり、必ずしも緊急手術の適応の指標ではなくなっている。今回我々は、門脈ガス血症と診断
し保存的に加療を行い軽快した1症例を経験し、死亡例との比較をふまえ報告する。【症例】82歳女性
【既往歴】心房細動、骨粗鬆症【現病歴】20XX年8月22日に下腹部痛を生じ、当院を受診した。その際
の理学所見、バイタルサイン、末梢血液検査や動脈血液ガス検査では明らかな異常所見は認められなかっ
た。腹部造影CT検査では、腸管壊死や上腸間膜動脈血栓塞栓などの明らかな所見はなかったが、門脈ガス
と腸管壁内ガスを認めた。門脈ガス血症を認めるも明らかな虚血を疑う所見はないため、保存的加療目的
に入院となった。【経過】入院第2病日には下腹部痛は残存し、採血検査では高度の炎症を認めた。CT検
査で上行結腸の浮腫状変化と腹水を認めるも、腸管の虚血性変化はなく、門脈ガスは消失したため保存的
加療を継続した。第5病日には腹痛が消失し、炎症反応も軽快傾向となり、第15病日には経口摂取が開始
可能となった。その後、腹痛の再発もなく退院となった。【結語】門脈ガス血症は腸管壊死や腹腔内膿瘍
など重篤な疾患を診断する際の手がかりとなり、本症を見たときはその原因疾患の特定に努めるべきであ
る。本症例での門脈ガス血症の原因としては、下部消化管内視鏡検査での上行結腸生検にて一部に虚血性
変化があったことから、心房細動による一過性の血栓が原因として考えられる。バイタルサインが安定し
ており、腹膜刺激症状がなく、CT等の検査で腸管壊死を示唆する所見がない場合は、今回の症例の様に緊
急手術を視野に入れながら注意深く経過観察することで保存的治療が可能な症例が存在すると考えられる。
ランチョンセミナー
12:30~13:30
第30回
日本消化器病学会甲信越支部
教育講演会
会
会
会
期:平成25年11月23日(土)
16:30~19:30
場:山梨県立図書館
長:榎本 信幸(山梨大学第1内科)
第30回 日本消化器病学会甲信越支部教育講演会
プログラム
教育講演1 16:30
座長 大高 雅彦
(山梨大学地域医療臨床研修学)
胃癌診療における病理診断の役割
国立がん研究センター中央病院 病理・臨床検査科
九嶋
教育講演2 17:30
亮治 先生
座長 佐藤
公
(山梨大学第1内科)
ゲノムの進化でがんを理解する
国立がん研究センター 研究所・難治がん研究分野
谷内田
教育講演3 18:30
真一 先生
座長 榎本 信幸
(山梨大学第1内科)
B型肝炎とde novo B型肝炎
信州大学医学部内科学第二講座
田中
榮司 先生
教育講演1
座長 大高 雅彦
胃癌診療における病理診断の役割
国立がん研究センター中央病院 病理・臨床検査科
九嶋
亮治 先生
くしま りょうじ
氏 名
九 嶋 亮 治
生年月日 昭和35年10月8日 京都市生まれ
現職
独立行政法人 国立がん研究センター中央病院病理・臨床検査科副科長
略 歴
1986年 滋賀医科大学医学部医学科卒業
1989年まで 滋賀医科大学医学部附属病院研修医および医員
1989年~1993年 滋賀医科大学大学院医学研究科(病理学第一講座)
1993年~1998年 滋賀医科大学病理学第一講座助手
この間1995~1996年 デュッセルドルフ大学病理学研究所(ドイツ連邦共和国フンボルト財団奨学生)
1998年 恩賜財団 済生会滋賀県病院病理科医長
2000年 滋賀医科大学臨床検査医学講座および附属病院病理部助教授(准教授)
2009年 国立がんセンター中央病院 臨床検査部医長
2011年 (独)国立がん研究センター中央病院 病理・臨床検査科 医長
2013年 (独)国立がん研究センター中央病院 病理・臨床検査科 副科長
学 位
平成5年12月17日 医学博士 滋賀医科大学
(テーマ: 胃型腺癌の組織発生と特性、胃癌の進展に伴う腸型化について)
学会及び社会における活動
日本病理学会(評議員)、日本胃癌学会(評議員、胃癌取扱い規約委員)、
大腸癌研究会(大腸癌取扱い規約委員),早期胃癌研究会(運営幹事)
胃と腸(編集委員)など
Editorial Board (Gastric Cancer, Pathology International)
受賞
平成19年6月
日本ヘリコバクター学会:上原H. pylori優秀賞
平成22年10月
滋賀医科大学同窓会:湖医会賞
ヨーロッパDDW(2000年), アメリカDDW(2008年):優秀ポスター賞
講演要旨
胃癌のみならず癌の病理診断は「癌か否か(黒か白か)」という古典的な最終診断としての役割に加
えて,より臨床の現場に密接した内容が求められるようになった。胃癌診療における今日的な病理診
断の役割について,1.Group分類,2.ESD, 3.分子標的治療の3つの観点から述べる。
1.胃癌取扱い規約改定にあたり、Group分類は廃止を含めその意義が討議された。2009年にウ
イーン分類の考え方も盛り込まれて変更された大腸癌取扱い規約のGroup 分類に整合性をもたせ、
同様の考え方で胃と大腸生検を分類できるようにした。Group分類は単なる「数字」であるので,
「生検診断にあたっては,組織学的診断名を記載したうえでGroup 分類を付記する」とした。
「正常あるいは非腫瘍性の良性病変(Group 1)」,「腺腫 (Group 3)」と「癌 (Group 5)」に分類
し,さらに「非腫瘍か腫瘍かの判定が困難な病変(Indefinite for neoplasia」をGroup 2,「腫瘍
と判定される病変のうち癌が疑われる病変」をGroup 4 と分類した。胃生検診断に際して問題と
なることの多い「再生異型」,「低異型度癌」,「腺腫or 分化型癌」などについてGroup分類に絡め
て解説する。
2.胃癌の内視鏡的切除は原則的にリンパ節転移の可能性が限りなくゼロに近く、原発巣の一括切除
が期待できる症例に対して施行される。EMRが主流であった時代、「2cm以下、分化型、潰瘍
(UL)なし」が絶対適応とされていた。ESDが普及し、未分化型癌やより大きな分化型癌への適応が
拡大されるようになってきた。胃癌のESD適応条件拡大に関連して、「組織混在型」「潰瘍瘢痕の
判定」など,これまであまり記載されてなかった病理診断上の問題点を呈示したい。
3.癌の分子標的治療が広く施行されるようになり,HER2過剰発現の確認された治癒切除不能な胃
癌または胃食道接合部癌に対して、HER2タンパクに特異的に結合するトラスツズマブが分子標的
薬(抗体薬)として承認された。胃癌はこれまでHER2検査が長く行われてきた乳癌に比べて組織
学的多様性が強く、HER2発現も不均一なものが多い。また,未分化型癌にくらべて分化型癌での
発現頻度が高いことが知られている。胃切除標本では腫瘍の10%以上でHER2が発現し,胃生検標
本では5個以上の染色細胞からなる細胞集塊がひとつでもあれば陽性とすることになっている。臨
床病理の現場における胃癌HER2検査の問題点と最近の知見を紹介する。
教育講演2
座長 佐藤
公
ゲノムの進化でがんを理解する
国立がん研究センター 研究所・難治がん研究分野
谷内田
所属
国立がん研究センター 研究所・難治がん研究分野
氏名
谷内田(やちだ) 真一
生年月日 昭和44年11月17日(43歳)
略歴
1. 学歴・資格等
昭和63年3月
平成6年3月
平成10年6月
平成15年12月
平成19年1月
平成20年3月
平成23年6月
香川県立高松高校卒業
鳥取大学医学部医学科卒業 医師免許取得(第360824号)
香川医科大学大学院卒業 医学博士(博甲 第246号)
日本外科学会・外科専門医(第1908037号)
日本消化器外科学会・消化器外科専門医(第3003468号)
消化器がん外科治療認定医(第3334号)
日本消化器外科学会・消化器外科指導医(第5056号)
2. 職歴
平成10年7月
平成11年6月
平成14年6月
平成14年9月
平成16年6月
平成19年7月
平成23年1月
平成24年4月
香川医科大学医学部附属病院 医員
国立がんセンター中央病院 外科レジデント
香川医科大学医学部附属病院 医員
香川医科大学医学部第一外科 助手
香川大学医学部第一外科 学内講師
米国・ジョンズホプキンス医学研究所 博士研究員
香川大学医学部消化器外科 助教
国立研究センター研究所・難治がん研究分野 ユニット長
3. 栄誉・賞等
平成23年12月 公益財団法人 日本膵臓病研究財団 膵臓病研究奨励賞
平成24年11月 公益財団法人 日本医師会医学研究奨励賞
4. 所属学会
日本外科学会(専門医)
日本消化器外科学会(専門医・指導医)
日本癌学会
日本膵臓学会
日本消化器癌発生学会(評議員)
5. 専攻分野
消化器外科学(特に肝・胆・膵)
消化器がん(特に肝・胆・膵)の臨床ゲノム学
6. 研究内容
がんゲノムの進化に関する研究
次世代シークエンサーを用いた難治がんの早期診断法の開発と個別化医療
メタボローム解析によるがんの代謝に関する研究
生体内細菌叢のメタゲノム解析と発がんメカニズムの解明
本邦における家族性膵臓がんの本態解明
真一 先生
講演要旨
がんには前がん病変があり、多段階発がん過程を経て、浸潤がんとなる。理論的には、モノクロー
ナルで線状の進化を示すがんであるが、我々が臨床の場でみるがんは、肉眼的、組織学的にも単一の
腫瘍内で非常に不均一性、多様性(Heterogeneity)を有している。
がんは遺伝子の病気である。私は、膵臓がんを研究対象に、がんのHeterogeneityやがんゲノムの
進化に関する研究を行ってきた。膵臓がんは、診断時に転移を認めることが多く、全患者の7〜8割が
手術適応にない。すなわち、死亡時に原発巣と他臓器に多数の遠隔転移巣を同時にもつため、その解
剖症例はがんのHeterogeneityやがんの進展・転移の研究には理想的な研究対象となる。
米国・ジョンズホプキンス大学で迅速解剖を行った7人の患者の転移巣における全遺伝子
(20,661)のエクソン・シークエンス解析を、サンガー法で行った。その転移巣は平均61個の突然
変異(41〜77遺伝子/患者)を有し、その変異の有無を同一患者の原発巣と他の転移巣で比較した。
原発巣内には突然変異のHeterogeneityが存在し、すべての病巣で認められる変異(”Founder” 変
異 )のみをもつ ”Parental Clone” とさら多くの変異(”Progressor” 変異)をもつ多数の
“Subclone” に分けられた。興味深いことに、転移巣と類似の変異パターンをもつ “Subclone”
が 原 発 巣 に も 存 在 し 、 そ れ は “ Parental Clone” と は 異 な る Clone で あ っ た 。 膵 臓 が ん で
は、”Parental Clone”に”Progressor” 変異が加わり、クローナルなゲノムの進化を遂げ、転移
能を有する“Subclone”を形成すると考えられた。さらに、がんクローンは原発巣でHeterogeneity
を形成しながら、時間的および空間的な広がりをみせて進化することを証明した(Yachida S, Jones
S, et al. Nature 2010)。
さらに突然変異のうち付随的・偶然の突然変異(”Passenger” 変異)の頻度と細胞増殖速度に基
づき数理解析を行い、膵臓がんのClonal Evolutionの時間経過を推測すると、最初の突然変異から転
移能を獲得するまでの期間は15年以上であった。つまり膵臓がんでは腫瘍発生のイニシエーションか
ら転移には長い時間経過が存在することも明らかになった。
次世代シークエンサーを用いて、染色体再編成の観点からも同様の検討を行った。膵臓がんに特徴
的 な 染 色 体 再 編 成 を 認 め ( ” Fold-back Inversion” ) 、 同 一 患 者 の 病 変 で 染 色 体 再 編 成 の
Heterogeneityを認めた。また、転移巣は転移先の臓器毎に類似の染色体再編成の蓄積パターンを認
め、転移の臓器特異性の存在が示唆された(Campbell PJ, Yachida S, et al. Nature 2010)。
膵臓がんでは、腫瘍発生のイニシエーションからから、ランダムな突然変異が細胞集団に遺伝学的
多様性を作りだすと考えられる(図)。しかし、この遺伝学的に不均一な集団の中から、微小環境で
増殖し生き残るのに有利となるような形質を授かった細胞が、淘汰圧によって選択されて、次世代の
主要な細胞集団を構成するいわゆる『ダーウィン的進化』を遂げ、”Parental Clone”を形成すると
考えられる。臨床的に観察されるがんの不均一性(Heterogeneity)は、この”Parental Clone”に
さらに遺伝子異常が次々と蓄積して、形成されると予想している。 がんゲノムの進化は、構成される
変異遺伝子とともにその蓄積のパターンも、がんの発生臓器によって異なり、この違いこそが発生臓
器ごとのがん腫の臨床的な特徴を反映していると考えられる。
がんの進化は、生物の進化系統樹では何千万年〜何億年とかかった現象が、わずか数十年の間にお
こっている非常にダイナミックな生命現象である。がんの進化に関する研究は、がん研究だけでなく
様々な生命科学の研究分野に、普遍的な情報も提供してくれる可能性を秘めている。
教育講演3
座長 榎本 信幸
B型肝炎とde novo B型肝炎
信州大学医学部内科学第二講座
田中
榮司 先生
田中榮司(たなか えいじ)
信州大学医学部内科学第二講座
《略歴》
昭和53年3月
昭和57年6月
平成10年
平成13年6月
平成20年1月
平成7-8年
金沢大学医学部医学科卒業
信州大学大学院医学研究科修了
長野冬季オリンピック選手村総合診療所副所長
信州大学医学部内科学第二講座 助教授
信州大学医学部内科学第二講座 教授
米国国立衛生研究所留学(Dr. Harvey J Alter)
【所属学会】
日本内科学会(認定医、指導医)、日本消化器病学会(専門医、指導医、評議員)、
日本消化器内視鏡学会(専門医)、日本肝臓学会(専門医、指導医、理事)、
日本肝移植研究会(世話人)、日本癌学会、日本ウイルス学会
American Association for the Study of Liver Diseases
【その他】
信州大学医学部付属病院 副院長
信州大学肝移植適応委員会委員長
信州大学病院内視鏡センター長
信州大学医学部図書館長
長野県特定疾患等対策協議会委員
講演要旨
B型肝炎ウイルス(HBV)が発見されて半世紀が過ぎようとしている。B型肝炎は多彩な病態を呈す
ることが特徴で、HBVの活動性と宿主の免疫応答から病期に分類されている。免疫寛容期ではHBV増
殖は活発であるがALT値は正常で、組織学的にも正常か軽度の炎症に留まる。免疫排除期ではHBV排
除に働く宿主の免疫反応が起こり、肝炎が惹起される。免疫監視期ではHBVに対する宿主の免疫が優
位になり、HBVの増殖は持続的に低下する。この時期は非活動性キャリアとも呼ばれ、肝炎は沈静化
し肝発癌率も低い。非活動性キャリアを経過した後、一部ではHBs抗原が陰性化し回復期となる。た
だし、HBs抗原は陰性化しても肝細胞の核内にcccDNAの形でHBV遺伝子が残存するので、HBVが
完全に排除されたことにはならない。同様の現象はHBVの一過性感染でもみられる。このため、持続
感 染 と 一過 性 感染 を 含め 、 HBVの 既 往感 染 者( HBs 抗体 and/or HBc 抗 体 陽 性) で は HBVが
cccDNAの形で潜伏感染しており、健常者では宿主の免疫がHBVの再活性化を抑制している。
近年、B型肝炎再活性化の問題が広く注目を集めるようになった。この背景には、より強力な免疫抑制
薬や治療法が多くの領域で一般的に用いられるようになったことがある。一方、HBV感染インパクト
は強く、世界では22億人(人口の1/3 )がHBVに感染したことがあり、この内3億5千万人がキャリ
アであること、また、日本では2,600万人(人口の1/5)がHBVに感染したことがあり、この内140
万人はキャリアであることが推定されている。B型肝炎再活性化はキャリアのみならず既往感染者も対
象となるため、その影響範囲は広い。
B型肝炎の再活性化は大きく2つに分類される。一つは非活動性キャリアからの再活性化であり、もう
一つは既往感染者からの再活性化である。前者の病態は以前より知られており注意が喚起されていた。
後者はde novo B型肝炎とも呼ばれ、1990年代に肝移植が行われるようになったことを契機に知ら
れるようになった病態である。劇症化しやすく死亡率も高いことから、その対策が重要である。
再活性化対策の最初はHBVマーカーの確認であり、免疫抑制療法や化学療法を受ける患者では治療開
始前に検査を行う。具体的には、最初にHBs抗原を検査し、陰性であればHBs抗体とHBc抗体を検査
する。HBVキャリアでは核酸アナログ薬を投与し再活性化を予防する。既往感染者では定期的にHBV
DNAを測定し、陽性となった時点で再活性化と判断し核酸アナログ薬を投与する。肝移植後の再活性
化予防では核酸アナログ薬に加えHBIGやワクチンでHBs抗体価を維持することも行われている。再
活性化の対策は整いつつあるが、いずれの対策もコストや手間のかかることが問題点として残されて
いる。再活性化の危険性は状況により大きくことなるので、これらの点を加味した、よりパーフォー
マンスの良い対策への進化が望まれている。
日本消化器病学会甲信越支部
専門医セミナー
会
会
会
期:平成25年11月24日(日)
10:40~12:40
場:山梨県立図書館
長:榎本 信幸(山梨大学第1内科)
専門医セミナー
肝
10:40~11:40
症例検討Ⅰ
症 例:
司 会:
症例提示:
討論者:
肝臓疾患
井上泰輔(山梨大学地域医療臨床研修学)
佐藤光明(山梨大学第1内科)
中田岳成(JA厚生連長野松代病院)
一條哲也(安曇野赤十字病院)
専門医セミナー
胆膵
11:40~12:40
症例検討Ⅱ
症 例:
司 会:
症例提示:
討論者:
胆・膵臓疾患
高野伸一(山梨大学第1内科)
岩本史光(山梨大学第1内科)
村木 崇(信州大学消化器内科)
塩路和彦(新潟大学光学診療部)
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