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2.心理臨床家の基本課題 2.心理臨床家の基本課題

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2.心理臨床家の基本課題 2.心理臨床家の基本課題
「福祉臨床心理学(箕口)」
講義資料②
2.心理臨床家の基本課題
2.心理臨床家の基本課題
1)臨床心理的アセスメント(心理査定)
面接や観察をおこなったり、必要に応じて各種心理検査を用いてクライエントの心的状態や環境状
態を把握し、その問題や障害の程度や性質について査定するとともに、適切な対処の方法を検討す
ることである。
◆心理検査によるアセスメント
◆心理面接によるアセスメント
2)臨床心理面接(心理面接・カウンセリング・心理療法)
アセスメントの所見に応じ、問題の内容や年齢や環境条件などに応じた臨床心理学的技法を用い
ながら、個人および集団の心の問題の改善に向けて援助することである。広い意味で心理療法的か
かわりを中心とするが、ここにはコンサルテーションやリエゾン(
紹介・
連携)
も含まれる。
◆カウンセリング
◆行動療法
◆催眠面接法
◆動作法
◆グループ・アプローチ
◆家族療法
◆遊戯療法
◆箱庭療法
◆芸術療法
3)臨床心理学的地域援助(コミュニティ援助)
心の問題を、よりよい方向に解決するためには、学校や職場、地域社会の人びとへの働きかけが
必要になることがある。個人のプライバシーを守りながら、その人を支える関係機関や他の専門家と
連携体制をつくりながら援助していく方法である。また、コミュニティにおける心の増進活動にに積極
的に関わり、社会や生活環境の健全な発展のため、心理的情報を提供し、提言をおこなうなどの啓
発活動も含まれる。この分野は、とくにコミュニティ心理学と呼ばれている。
◆コンサルテーション・リエゾン
◆危機介入
◆サポートネットワークづくり
-1 -
4)研究活動
心理臨床の実践をより豊かに実りあるものにするため、クライエントについての理解を進めること、
援助方法の開発、意義や効果判定に関する研究、研究法に関する研究がある。
<参考文献>下山晴彦(
編) 2000 臨床心理学研究の技法
福村出版
※以上、4つの領域は相互に関連し合っている。例えば、適切な方針をもって心理療法をするため
には、アセスメントが適切になされていなければならない。また、アセスメントを適切にするためには、
どこに、どのように焦点を合わせ、どのように問いかけるかについて、臨床心理面接の技法を身につ
けている必要がある。また、個人を援助するためには、その個人をとりまく環境にも同時に働きかけ
ていく必要がある。また、臨床心理的研究は、常に実践と結びついており、研究者は同時に実践家で
もあり、研究と実践は同時におこなわれているのである。
5)
職業倫理
5−1 心理臨床家の職業倫理
◆職業倫理の基本的な考え方は、人権を尊重し、人びとの福祉と健康のために専門知識・専門技
術を用いることによって、社会的な責任を果たすことである。
◆心理臨床における職業倫理は、第一に、クライエントの人権や人格を守るためのものである。第
二に、職業倫理には、臨床心理学という分野が社会において占める立場を規定し、社会の一員
として果たす役割を明らかにする役目がある。第三に、職業倫理によってクライエントを守るこ
とにより、その結果として、臨床心理学という分野自体を守ることができる。さらに、職業倫理は
「専門職」
や法律とも密接に関係しあっている。すなわち、法律は社会からの外的な規制であり、
倫理は職能集団内の内的な規制である。
◆職業倫理とは、元来、現状や社会の習慣を追認するものではなく、専門家の集団として心理臨
床家が目指す目標を定め、それに向かって邁進し、現在よりも高いレベルに専門家の行動を高
めていくことを社会に向かって宣言するものである。
◆心理臨床の現場は、常に複雑かつ流動的で、いつ何が起こるか予測が不可能である。しかも、
つ
ねに即時の判断が求められるのも心理臨床の現実である。そうした日々の心理臨床活動の
中
で、具体的な行動・
行為として倫理をあらわさなくてはならない。そのためには、単に倫理規定
の文面をおぼえるのではなく、倫理的な判断・意志決定のプロセスを身につけることが必要で
ある。すなわち、臨床技術と同様、倫理的意志決定・倫理的行為を心理臨床家の養成・
訓練の重
要な一部としていく必要がある。
◆一般的にいって、かくあるべしといった倫理要綱を設けるだけで職業倫理が確立されるわけで
はない。倫理要綱を定めた団体は、メンバーの職業行為が倫理綱領に沿っているかどうかのチ
ェック機能をもった委員会を組織しているのが普通である。
5−2 職業倫理の七原則(
金沢,1998:APA,1992;
日本心理臨床学会,1999;日本臨床心理士資格認定協会,2000)
-2 -
◆第一原則:
相手を傷つけない、傷つけるような恐れのあることをしない
◆第二原則:
十分な資質・
訓練によって身につけた専門的な行動の範囲内で、相手の健康と福祉
に寄与する
◆第三原則:
相手を利己的に利用しない
◆第四原則:
一人ひとりを人間として尊重する
◆第五原則:
秘密を守る
1)クライエント自身の記録へのアクセス権
2)警告(保護)義務
3)コンサルテーション・ケース検討会における秘密保持
4)未成年のクライエントの秘密保持
◆第六原則:
インフォームド・コンセントを得、相手の自己決定権を尊重する
◆第七原則:
すべての人びとを公平に扱い、社会的な正義と公正・
平等の精神を具現する
[引用文献]
American Psycholpgical Association 1992 Ethicalprinciplesof psychologistand code of conductAmerican
.
Psychologist,42,696 -703.
American Psycholpgical AssociationEthics
,
Committee 1995 Report of the
Ethics Committee,1994. AmericanPsychologist,50,706-713.
金沢吉展 1998 カウンセラー―専門家としての条件― 誠信書房.
村上英治 1995 こころの専門家の基本倫理
大塚義孝(
編) 臨床心理士入 門,8 -11,日本
評論社
日本心理臨床学会 1999 日本心理臨床学会会員のための倫理基準(http://wwwnetsu.
rfnejp/pajcp/indexhtml
. .
.
)
日本臨床心理士資格認定協会
2000 臨床心理士倫理要綱
日本臨床心理士資 格認定協会
監修 臨床心理士になるために(
第13版)
,87 -88,誠信書房
野島一彦 2000 研究の倫理
小此木啓吾
下山晴彦 編
臨床心理学研究の技法,27-33, 福村出版
1992 治療者―患者間のセックス 精神療法,18,422-433
6)
自己研修・自己管理・
他職種との連携・
交流 (
資料参照)
[参考文献]
大塚義孝(編) 1998 臨床心理士入門 日本評論社
下山晴彦(編) 1999 43人が語る心理学と社会 第4巻:
臨床・
福祉・
犯罪―21世紀の扉を開く,ブ
レーン出版
(財)
日本臨床心理士資格認定協会監修 2001 臨床心理士になるために(
第14版) 誠信書房
-3 -
「福祉臨床心理学(箕口)」
講義資料③
2ー1)
2ー1)臨床心理的アセスメント(心理査定)
∼パ−ソナリ
ティとメンタルヘルスのアセスメント
パ−ソナリティとメンタルヘルスのアセスメント
Ⅰ.パーソナリティとは?
◆パーソナリティ Personality 人格
語源:Persona
ペルソナ(ラテン語)
→仮面
→劇の中で演じる役割、俳優自身
→個性・
特徴・
性質全体
◆オルポート AllportGW
, . .の定義
「
パーソナリティとは、個人の内部に存在する精神身体システムをもった力動体制であり、その
人を特徴づけている行動や思考を決定するもの」
◆パーソナリティの3つの側面
①能力的側面→知能
②情意的側面→性格
③指向的側面→価値観・人生観・
興味
※ただし、「
人格」ということばにふくまれる道徳的・
倫理的側面は含まれない
◆総合的定義
「
パーソナリティとは、知能や性格、さらに価値観や人生観興味など、人間の行動や思考を決定
する内的要因すべてを含む包括的概念である。」
◆ character
性格
語源:ラテン語で「
刻み込まれた」「彫りつけられた」もの
定義:個人における感情および意志の比較的恒常的な反応総体をいう
※情意的・意志的側面の行動様式
※知的側面はふくまない
◆ temperament 気質
定義:
個人の情動的反応の特徴
刺激に対する感受性/反応の強さ・
早さ/その人に固有の根本気分
◇「
知能」「個性」「人生観」もパーソナリティの下位概念
-4 -
Ⅱ.パーソナリティの諸理論
※パーソナリティをどのようにとらえるか?
↓
古代ギリシア∼現代までさまざまな理論が展開
↓
いずれも不十分
↓
★統一的なパーソナリティ理論はいまだ確立されていない
1)類型論−−分類・固定的
一見複雑なパ−ソナリティをいくつかの型(タイプ)に分類し、理解しようとする試み。
①身体的特徴にもとづくもの
クレッチマー(EKretshmer
.
)
細長型−分裂気質/肥満型−そううつ気質/闘士型−てんかん(粘着)気質
②心理学的特徴にもとづくもの
ユング(CGJung
. .
)
∼ 内向性−外向性
③価値観にもとづくもの
シュプランガー(ESpranger
.
)
○複雑で多様なパ−ソナリティを統一的に、全体的に把握できる
●典型例のみが強調されやすく、その中間型や移行型が無視される傾向にある
2)特性論−−要素・
網羅的
パ−ソナリティをいくつかの要素(特性)に分け、その程度を測定することによって、パ−ソナリ
ティの全体像を記述し、説明しようとする試み。YG性格検査、MMPI
などの質問紙によって、量
的に把握する。
○類型論のように固定的ではなく、流動的、力動的にパ−ソナリティをとらえることができる。
●得られるパ−ソナリティ像は、断片的かつ部分的で、個人の全体像、独自性を明らかにして
いない。
3)その他の理論
①精神分析理論−−力動的
②アドラー心理学−−目的論的
③人間学的心理学−−成長促進的
-5 -
Ⅲ. パーソナリティの測定(アセスメント)
面接法 / 行動観察法 / 評定尺度法
1)質問紙法 questionnaire
特定のパーソナリティ特性、興味、態度をとらえるために用意された質問項目に対し、被検者が自
己を内省して回答(自己評定)
する形式のテスト・・・向性検査/YG性格検査/MPI
・
MMPI
など
・実施が簡単
・短時間に多数に実施できる
・処理が客観的におこなえる
・自己評定であるため、回答に意図的な歪みが生じやすい
2)投影(映)法 projective technique
主として精神分析的な理論にもとづいた方法であり、被験者にあいまい(
多義的)な刺激を提供し、
自由に思い浮かぶことを述べさせることにより、被験者自身も明確に意識していない深層面もとらえ
ようとする方法・
・
・
ロールシャッハ・
テスト/TAT/PFスタディ・SCT・描画法 など
・被験者が意図的に回答を歪ませることができにくい
・パーソナリティの全体的・力動的な姿をとらえることができる
・分析・解釈に熟練を要する
3)作業検査法 performancetest
被験者に一定の作業を課し、その反応の性質から、とくに意志力を中心としたパーソナリティの特
徴を知るための検査。
・意図的に回答を歪めることがむずかしい
・パーソナリティの限定された側面しか測定できない
Ⅳ. パーソナリティの形成
遺伝 か 環境 か?
「
カエルの子はカエル」 「
氏より育ち」
↓
輻輳説 シュテルン(ドイツ)
どちらも独立して加算的に関係する/遺伝(
○%)+環境(△%)
↓
相互作用説
遺伝と環境は互いに作用しながらパーソナリティの形成に寄与する
遺伝も環境も
-6 -
◆ パーソナリティを形成する要因
1遺伝的要因
パーソナリティの形成における遺伝の影響を調べる方法
①家系研究法∼ 知能・特殊才能・
精神病・犯罪など
正確な資料が得にくい、環境要因の影響を区別しにくい
②双生児法∼ 一卵性双生児と二卵性双生児の比較<対差>
身体・知能に比べてパーソナリティの側面は遺伝の影響が少ない
2身体的要因
①生理・神経学的機能
内分泌系:
興奮しやすい−思考力減退
自律神経系:情緒不安定・
神経質・うつ
②体格
クレッチマーの類型論(
体格と性格)
③容貌・健康状態
身体的ハンディキャップや虚弱体質⇒劣等感と補償
3環境的要因
①家族・家庭的要因
1)きょうだいの影響∼誕生順位(
長子−中間子−末子)
2)両親の影響∼家族価値・雰囲気/親の養育態度
②文化・社会的要因
1)家庭の社会・
経済的地位、教育水準
2)友人集団と友人関係
3)居住地域
4)学校・職場環境
5)文化の型∼言語 · 生活 · 思考様式/価値観/民族 · 国民 · 県民性、宗教、教育など
4主体(認知)的要因
①自己のライフスタイルの決断
人生目標の主体的選択
②自己実現と自己成長力
自己理想に向かって自身のパーソナリティを変える
↓
カウンセリング・
心理療法・
勇気づけ
-7 -
Ⅵ.パ−ソナリティ診断とメンタルヘルス上の問題
1) 多重人格(障害)
DSM−Ⅳ(
米・
精神障害の分類と診断の手引き)
→解離性障害 と分類
正常に統合されている自己の同一性や記憶、意識
などの機能が障害/変化する心の病気
◆解離性同一障害(
多重人格障害)
◆解離性健忘(記憶の障害)
◆解離性とん走(日常生活からの逃避)
何らかの心的外傷体験(trauma ) が原因とされている
↓
■被虐待体験
■犯罪被害 ■事故・事件・災害
2)心的外傷後ストレス障害 (PostTraumaic StressDisorder )
事故・
事件・
犯罪・
災害・
被虐待体験などの重大な心的外傷を受けた人が、長期にわたって、精
神的な症状を呈する状態
◆出来事の再体験(
強迫的想起・再燃)
◆関連刺激からの回避/無感覚・
感情鈍麻
◆心理的な過覚醒
↓
■大震災などの被災者・
救援者 ■ベトナム戦争兵士
■被虐待児
3)人格障害
DSM Ⅳ(米・精神障害の分類と診断の手引き)
A群(行動が奇妙で風変わり)
B群(
演技的・感情的・移り気)
C群(不安・恐怖)
◆妄想型人格障害
◆反社会性人格障害
◆回避性人格障害
◆分裂病質人格障害
◆演技性人格障害
◆依存性人格障害
◆分裂病型人格障害
◆自己愛性人格障害
◆強迫性人格障害
↓
◆境界性パーソナリティ障害
①きわめて不安定な対人関係
④否定的感情
②操縦的な自殺企図
⑤自我−異質的な精神病体験
③不安定な自己感
⑥衝動性
⑦低い達成能力
↓
<タッフに葛藤や分裂をもたらす2つの要因>
1)異なったスタッフに対して異なった感情や情報を示す
2)投影的同一視の機制:本人が抱いているある感情(
怒りなど)
を、スタッフの誰かに投
影し、その投影の確証となるような反応(
怒り、回避など)を引き出すように振る舞う
↓
スタッフ自身が抱いている逆転移感情を分析する/スタッフ間のコミュニケーションを図る
-8 -
-9 -
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