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JETRO 定期報告:フィリピンIT事情 FY2008-No.2

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JETRO 定期報告:フィリピンIT事情 FY2008-No.2
JETRO 定期報告フィリピン IT 事情
2008 年度 No. 2 (2009 年 1 月 5 日)
JETRO 定期報告: フィリピン IT 事情
FY2008-No.2
フィリピンソフトウェア産業協会による日本トレードミッション特集
今号の目次
1 はじめに ...........................................................................1
2 日本からのオフショア・ソフトウェア開発とフィリピン 1
3 PSIA 日本市場グループの活動と JETRO による支援......1
4 PSIA による日本トレードミッションの目的と主な活動 .2
5 PSIA として初めて JISA を訪問 ......................................2
6 フィリピン IT 投資セミナーへの出席 ...............................3
7 アジア IT ビジネス研究会との交流会 ...............................4
8 組込みシステム技術協会(JASA)との面談 ........................5
9 PSIA コロネル会長からのメッセージ .............................5
10 まとめ ...............................................................................6
げた。さらに2008年には、日本各地のIT業界団体による視察団
の訪問や、未だフィリピンとの協業実績のない複数の大手日系
SI企業による視察なども相次いだ。また、イオンクレジットサ
ービスは、2008年2月にフィリピンにシステム開発会社を設立
している。
図 1:日本企業による今後のオフショア開発規模の推計2
1 はじめに
JETROでは、2004 年度から「JETRO 定期報告 フィリピン
IT 事情」の発行を続けてきた。フィリピンのIT 産業事情につ
いて日本語で最新の情報を発信することにより、IT サービ
ス・IT 活用サービス分野における日本企業のフィリピンに対
する認知度・関心を高めるための取組みが5 年目となった本年
度は、情報発信からさらに一歩踏み込んだビジネスマッチング
支援として、フィリピンソフトウェア産業協会(PSIA)への様々
1
な支援を実施 している。その主要な柱の一つとして、JETRO
では、2008年11月17日から19日にかけてPSIAが実施した日本
トレードミッションを支援した。今回のレポートは、このPISA
日本トレードミッションの特集号である。
2 日本からのオフショア・ソフトウェア開発とフィリピン
日本のソフトウェア開発産業では、コスト削減による国際競
争力維持のためだけでなく、今後も深刻化が確実な人材不足対
策の観点からも海外人材(グローバルリソース)の活用ニーズ
が高まっている。(図1 参照)独立行政法人 情報処理推進機
構(IPA) の調査によると、2005 年時点での日本企業によるソ
フトウェア開発のオフショア先としては中国、インドがそれぞ
れ1位、2位で、フィリピンは第3 位につけてはいるもののシェ
アは4.8%と小さく、今後のオフショア先としてはフィリピンよ
りも断然高い関心を集めているベトナムが急成長している。日
本企業によるフィリピンの人材を活用したソフトウェア開発
は、1980 年代後半から20 年の歴史があり、現在約30社前後
の日系企業がフィリピンにソフトウェア開発拠点を置いてい
る。ただ、言葉(日本語)の壁を初めとする様々な課題があり、
残念ながら日本企業のオフショアにおけるソフトウェア開発
先として急激に拡大する勢いはない。
その一方で、勢いでは中国、インド、ベトナムに及ばないも
のの、日本企業によるフィリピンへの関心が高まっている傾向
も伺える。2007 年には、日本から複数の大手調査機関やSI 企
業がオフショア先としてのフィリピンの調査を数回にわたっ
て行っているほか、日経コンピュータや毎日コミュニケーショ
ンズなどの主要な業界誌、また朝日新聞やNHK などの大手メ
ディアもソフトウェア開発拠点としてのフィリピンをとりあ
1
2008年5月には、PSIAのウェブサイトの日本語版を開設し、その後
毎月2件以上のニュースを提供している。ウェブサイト開設後7ヶ月時
点での同サイトのページビューは7,000を越えている。
Copyright © 2008 JETRO Manila Center
フィリピンソフトウェア産業協会(PSIA)では、日本からフィ
リピンへの関心の高まりをチャンスとしてとらえ、日本市場向
けの輸出拡大に取組むため、2007年10月、日本市場に関心の
3
ある会員企業による日本市場グループを結成した。 日本市
場グループ会員企業の情報は、JETROの支援で開発・運営され
ているPSIAのウェブサイトからダウンロードできる。(下記リ
ンク)
http://jp.psia.org.ph/index.php?option=com_content&view=article&id=8&Itemid=8
3 PSIA 日本市場グループの活動と JETRO による支援
JETROでは、日本とフィリピンのITビジネス交流を持続的に
拡大させることを目標に、PSIA、特に日本市場グループの活動
に対して以下のような支援を行ってきている。
2007年
:日本市場向けの実績又は関心のある在比IT企
業40社(PSIA日本市場グループ会員企業を含む)
の情報を掲載した企業ディレクトリを作成・配布
4
2008年02月:eServices Philippines 2008における日本からの
視察団とPSIAの交流企画・実施を支援
2008年05月:PSIA日本語版ウェブサイト(http://jp.psia.org.ph)
開設とコンテンツ保守を支援
2008年06月:オフショア・ソフトウェア開発 フィリピン活
2
(独)情報処理推進機構ITスキル標準センターIT人材市場動向予備調査
【調査結果報告】(中編)(2008年3月)
3
PSIA 日本市場グループについては、
http://jp.psia.org.ph/index.php?option=com_content&view=article&id=8
&Itemid=8 を参照。
4
同企業ディレクトリの入手問合せ先は、JETRO の貿易開発部
(03-3582-5170 または [email protected] )。
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JETRO 定期報告フィリピン IT 事情
2008 年度 No. 2 (2009 年 1 月 5 日)
5
用事例集の発行
2008年08月:PSIA会員企業による日本市場向けのビジネスの
現状 および課題についてのクイックサーベイ実
施を支援、日本語報告書は9月にPSIA日本語版ウ
ェブサイトより公開
2008年09月:アジアで最大の最先端IT・エレクトロニクス総合
展「CEATEC JAPAN」でJETROが開催した日本
企業と海外企業の間の個別商談会「JETRO
BIZMATCH @CEATEC JAPAN 2008」において、
フィリピンから初めて参加資格を満たしたPSIA
会員企業 MorphLabs社の同商談会参加を支援。
2008年11月:PSIAとして初の日本トレードミッションを支援
繋げます)を日本市場向けのスローガンとした。
4 PSIA による日本トレードミッションの目的と主な活動
今回のミッションでは、PSIA会長を含む会員企業8社が初め
てJISAを訪問し、副会長兼専務理事の河野 憲裕氏、国際部の
河内 淳子主任調査役と面談・意見交換を行った。
2008 年 11 月に実施された、PSIA 初の日本トレードミッショ
ンの目的は次の 2 点である。
1) より多くの日本企業に、2009 年 2 月実施予定の eServices
Philippines 2009 視察参加を呼びかけること
2) 日本の IT 関連業界団体と PSIA との間で、業界団体間の関
係構築を始める活動を行うこと
5 PSIA として初めて JISA を訪問
JETROでは、2008年2月に情報サービス産業協会(JISA)と面
談し、PSIAとの業界団体間の協力関係構築等の可能性に向けた
ヒアリングを行った。その際は、フィリピン政府・フィリピン
のIT産業界全般について、「日本市場に対する積極姿勢の点で
ベトナムに見务りがする」という趣旨のコメントがあった。こ
のようなJISAのコメントはJETROからPSIAの日本市場グルー
プにも伝えられ、PSIAとしても会長自らがJISAを直接訪問し
た上で今後の協力関係構築を訴える必要性を認識していた。
上記の目的を念頭に、2008年11月17日から19日までの3日間
で、日本情報サービス産業協会(JISA)訪問と意見交換、日本ア
セアンセンターとフィリピン大使館が共催した「フィリピンIT
投資セミナー」への出席と参加企業とのネットワーキング、
NPO法人アジアITビジネス研究会との交流会、横須賀リサーチ
パーク及び企業訪問、社団法人 日本組込みシステム技術協会
(JASA)幹部との意見交換などの日程が組まれた。
今回の日本トレードミッションには、PSIA日本市場グループ
6
の8社、17名が参加し、JETROも同行した。
1) Advanced World Systems (AWS)
2) Ayala Systems Technology (ASTI)
3) Computer Professionals (CPI)
4) Imperium Technology
5) J-SYS Philippines
6) Pointwest Technologies
7) Software Ventures International (SVI)
8) Tsukiden Software Philippines (TSPI)
PSIAでは、日本訪問に先立ち、日本向けのマーケティングス
ローガンを策定するため、日本市場グループ会員企業によるワ
ークショップを実施した。PSIAのマーケティング資料は、これ
まで主に米国市場向けのメッセージを強く打ち出したもので、
それを単純に日本語訳しただけでは日本市場向けに効果的な
メッセージにはならないと判断したからである。ちなみに、米
国向けのスローガンは、”The Philippines : the missing piece in
your GLOBAL SOURCING STRATEGY”というもので、「あな
たのグローバル調達戦略に欠けているもの、それがフィリピン
です」というメッセージであった。これを、非常に限られた時
間の中で、ワークショップ参加者9名が議論し、”PSIA: The
Global Link in Your Value Chain” (バリューチェーンを世界に
5
活用事例集は、http://www.jetro.go.jp/world/asia/ph/reports/05001559
からダウンロード可能。
6
各社の紹介資料は
http://jp.psia.org.ph/images/docs/nov2008-psia-jpmkt-group-missionbr
ochure-14companies.pdf からダウンロード可能。(PDF 形式 1.3MB)
Copyright © 2008 JETRO Manila Center
(写真)JISAを訪問したPSIA日本トレードミッションメンバー
JISAの河野氏からは、「ここ10年の間に日本からのオフショ
ア開発の規模が大きく拡大してきている中で、特に中国、イン
ドへの発注が多く、最近ベトナムも増えてきているものの、フ
ィリピンへのオフショアはあまり多くないと認識している。今
後のIT産業は、海外への展開が必要で、最大の課題は優秀な人
材の確保である。日本では、少子高齢化によって人材不足は深
刻化すると予測されるため、アジア諸国との人材面での協力は
非常に重要になってくる。フィリピンに対しても、期待すると
ころは大きい。ただ、日本の市場にアプローチするにあたって
は、日本語を学ぶ必要があることを理解していただきたい。」
という趣旨のメッセージが送られた。
また、河内氏からは、日本の情報サービス産業の概要紹介の
ほか、PSIAに対して次のようなアドバイスがあった。
 「商談会」と銘打ってしまうと、構えてしまって参加しにく
いと感じる日本企業が多く、人が集まらない。それよりも、
コンベンション等に参加し、その後のパーティなどで交流を
深めるといった日常の地道な交流が重要である。
 フィリピンとインドでは、実はフィリピンの方がオフショア
の長い歴史があるし、規模以外でフィリピンが务るとは思わ
ない。インドはインフラ不足にもかかわらずブームになって
いる。フィリピンは宣伝不足だろうと思う。
 ASOCIO(アジア・オセアニア・コンピューティング産業機
構)やWITSA(世界情報サービス産業機構)等の国際組織にも
積極的に参画することでフィリピンのプレゼンスを高める
ことができるだろう。
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JETRO 定期報告フィリピン IT 事情
2008 年度 No. 2 (2009 年 1 月 5 日)
これに対し、コロネル会長は、PSIAとしてのASOCIOや
WITSAへの参加の可能性・方法を前向きに検討していくと答え
7
た。
PSIAのコロネル会長からは、あらかじめ日本語翻訳版を準備
した資料を用い、日本のIT産業の海外展開にあたって、フィリ
ピンは日本企業のバリューチェーンを世界に繋げるためのパ
ートナーとしてフィリピンが最適であるとアピールした。
図 2:PSIA から日本市場へのメッセージを伝えるプレゼンテーション
の一部
6 フィリピン IT 投資セミナーへの出席
2008年11月17日、東京のホテルニューオータニにおいて、
日本アセアンセンターと駐日フィリピン大使館の共催による
「フィリピンIT投資セミナー」が開催され、フィリピンのIT産
8
業・ITサービス産業に関して下記のような講演が行われた。
 e サービス フィリピンの優位性
エルマー・C・ヘルナンデス フィリピン貿易産業省次官
 フィリピンの IT・IT サービス産業におけるソフトウェア産
業の最新事情
安部 妙 スパイスワークス・コンサルタンシー ゼネラ
ル・マネージャー/シニアコンサルタント
 フィリピンビジネス事例~フィリピン人技術者の活用とマ
ネージメント~
川村 慶 (株)アストラ代表取締役
同セミナーには120名ほどの参加があり、会場はほぼ満席の
盛況ぶりだった。ここに、PSIAのトレードミッション参加企業
9
も全社が出席し、PSIA各社についても、簡単な企業紹介 がな
された。PSIAからの参加企業紹介の概要は以下の通りである。
Advanced World Systems (AWS)
日本及びフィリピンに拠点を持つ100%日系資本企業。日本
のトップ企業に、高品質のソフトウェア開発サービスを競争
力のある価格にて提供してきた実績と経験が豊富。ISO-9001
及びISMS (ISO27001) 認証を取得済み。
(ウェブサイト: www.awsys-i.com)
Ayala Systems Technology (ASTI)
比国最大のコングロマリットである、アヤラ・グループのIT
分野のパイオニアとして1988に設立。2006年に日本法人ASJ
を設立。オンショア、オフショア、サービスの他、フィリピ
ン大学と提携した「インキュベーション・サービス」を提供。
(ウェブサイト:www.ayalasystems.com)
Computer Professionals (CPI)
Oracleプラットフォームとオープンソースに特化したソフ
トウェア開発及びコンサルティング企業。同社が開発した損
害保険向けパッケージシステム GENIISYSはフィリピンの
マーケットリーダーである。100%フィリピン資本。
(ウェブサイト:www.cpi.com.ph)
今回の訪問と交流を契機に、JISAとPSIAでは業界団体間で
の協力関係の強化を図っていくという意向を確認している。
Imperium Technology
オープンソースソリューション、ネットワーキング、セキュ
リティ分野における受託開発サービス及びサポートを提供
する100%フィリピン資本企業。バーテラ(Virtela)社のマネー
ジドネットワークサービスのグローバル販売パートナーで
もある。
(ウェブサイト:www.imperium.ph)
J-SYS Philippines
日揮情報システム株式会社(J-SYS)の100%子会社。高い教育
8
7
現在、ASOCIO へは ITAP(Information Technology Association of the
Philippines)が、WITSA へは BPA/P(Business Processing Association of
the Philippines)がフィリピンからの加盟団体となっている。
Copyright © 2008 JETRO Manila Center
講演資料は日本アセアンセンターウェブサイトの下記アドレスで公
開されている。http://www.asean.or.jp/invest/archive/philippines.html
9
各社の紹介資料は、PSIA の日本語版ウェブサイトの下記アドレスで
公開されている。
http://jp.psia.org.ph/index.php?option=com_content&view=article&id=1
5:original-resources-for-japanese-site&catid=8:resources&Itemid=13
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JETRO 定期報告フィリピン IT 事情
2008 年度 No. 2 (2009 年 1 月 5 日)
を受け、最新のアプリケーションソフトウェアや開発ツール
に精通し、日本語能力を有し、日本の職場環境で仕事のでき
る人材を備えている。
(ウェブサイト:www.jpi.com.ph)
Pointwest Technologies
フィリピン資本の企業としては最大規模 (約500人) の受託
ITサービス提供企業。第8回eServices Philippinesでは「最も
成長の著しいフィリピン企業」という賞を受賞。また第2回
国際ICTアワード(2008年)では、フィリピン資本の中規模ア
ウトソーシング企業として最優秀賞。CMMIレベル3。
(ウェブサイト:www.pointwest.com.ph)
い時間がかかる。時間をかけて相互の信頼関係がを築いた上で
ないと商談が成立しない。そこで苦労した。その代わり、日本
企業は、商談成立後に問題が発生しても一緒に解決しようとい
う姿勢がある。一方アメリカの企業の場合は、信頼関係よりも
契約本位の傾向が強く、短時間で商談成立するケースも多いが、
問題が発生した場合、契約どおりにできないなら訴訟に持ち込
む・・という脅しになるケースもある。
」という回答があった。
また、同じく日本でのビジネスでの難しさの一つとして、日
本向けのオフショア開発で15年以上の実績を持つ企業からは、
「プロセスの標準化がされていないお客様が多い。プロセスに
ついて、お客様に教えながら進めなければいけない。」という
声も聞かれた。
Software Ventures International (SVI)
CMM レベル 5 及び ISO 9001:2000 に準拠。
法務、
財務会計、
医療記録管理、文書管理などの BPO 及び、アプリケーショ
ン開発、保守、ソフトウェアリアンジニアリング、ソフトウ
ェアテストなどの IT サービスを提供。日本法人あり。
(ウェブサイト:www.svi.com.ph)
Tsukiden Software Philippines (TSPI)
日本の月電ソフトウェア株式会社の100%子会社。フィリピ
ンでの組込みシステム及びASIC開発アウトソーシングのパ
イオニア。品質保証テスト、通信システム、ビジネスアプリ
ケーション、組込みシステムの設計、開発などのニーズに答
える。CMMIレベル3。
(ウェブサイト:www.tspi.com.ph)
図 3:日本トレードミッションに参加した PSIA 会員各社のロゴ
(写真: アジアITビジネス研究会でPSIAの紹介をするコロネル会長)
7 アジア IT ビジネス研究会との交流会
2008年11月18日には、PSIAと日本のNPO法人アジアITビジ
ネス研究会 (www.asia-itbiz.com) の、アジアソフトウェアビジ
ネステーマ部会との交流会を実施した。日比双方合わせて35
名ほどが参加したこの交流会では、フィリピンソフトウェア産
業の最新事情報告、PSIAの紹介、参加各社の紹介に続いてフリ
ーディスカッションが行われた。
まず日本側から、フィリピンの各社における情報セキュリテ
ィ対策についての質問が出された。これについては、AWS、
TSPI、Pointwestなど各社が、ISMSに基づくセキュリティ管
理・監視、従業員教育などの実践状況を具体的に説明した。
また、日本と仕事をするときの難しさは何かという質問もあ
った。アメリカと日本の両方の顧客企業とのつきあいのある企
業の代表から、
「我々は、初め米国企業との取引が多かったが、
日本企業とのビジネスを始めてみて、商談の進め方が全く違う
ことで面食らった。日本のお客様との商談は、決まるまでに長
Copyright © 2008 JETRO Manila Center
(写真: アジアITビジネス研究会との交流会へは、日比双方合わせて35
名ほどが参加した。)
交流会終了後も夕食をとりながらの懇親会が行われた。アジ
アITビジネス研究会との交流会・懇親会は、参加人数こそ前日
の投資セミナーの120名強よりかなり小規模の35名ではあった
が、打解けた雰囲気の中で日比の参加者同士が一層理解を深め
合う非常によい機会となった。日本へのミッション終了後、参
加者を対象にPSIAが実施した評価アンケートでは、アジアIT
ビジネス研究会との夕食懇親会について、7割の参加者が「非
常に意義深かった」残り3割が「意義深かった」と評価してお
り、今回の日本ミッション全体の中でも最も高い評価を受けた
セッションであった。
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JETRO 定期報告フィリピン IT 事情
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8 組込みシステム技術協会(JASA)との面談
PSIAによる日本トレードミッション最終日の11月19日、
PSIAの一行は、横浜のパシフィコ横浜で開幕した組込み総合技
術展2008を見学した。またこの日、社団法人 組込みシステム
技術協会(JASA)とPSIAの面談も行われた。JASAからは、松尾
隆徳会長、崎詰 素之副会長、平根 知文専務理事、門田 浩理
事事業本部長が出席し、PSIA側を代表してAdvanced World
Systems(AWS)のピーター・タン(Peter Tan)氏からフィリピン
のIT産業、ソフトウェア産業、組込み産業の概要、AWSとTSPI
各社の事例を紹介した。
フィリピンの組込みシステム関連産業については、統計デー
タも乏しく、全体像の把握が難しいが、PSIAが作成した資料に
よると、電子回路、ASIC、IC設計や組込みソフトウェア開発、
製品評価などのサービスを提供する企業や、EMS(Electronics
Manufacturing Services)企業が数多く進出している。フィリピ
ンにおける日本企業の組込み系の開発は、自社子会社を設立し
て対応しているケースが多く、PSIAのような業界団体に加盟し
ているところは少ないが、今回のミッションに参加したPSIA
会員企業の中では、AWS, TSPI、CPIなどが組込み系の開発サ
ービスや製品保証サービスなどを提供している。
Advanced World Systems (AWS)の組込み開発事例
 マルチメディア・ディスプレイ端末開発
10
 NAS 開発
 デジタル複合機ファームウェア開発
Tsukiden Software Philippines (TSPI)の組込み開発事例
 通信系アプリ開発
 プリンタ用ファームウェア開発、組込 Linux 開発、LSI 設計
 品質保証サービス
PSIA としては、情報交換、交流イベント開催、セミナーへ
の参加や人材育成活動支援、トレードミッション等 JASA との
協力関係を構築し、フィリピンも日本の組込みソフトウェア産
業の人材不足解消の一翼を担いたいと伝えた。これに対し、
出席した JASA 幹部側からは、
「フィリピンの IT は実績があり、
技術者のレベルも高い」との評価や、「日本の組込みソフトは
今後グローバル化を図ることが課題となっている。日本、フィ
リピンそれぞれの特徴を活かししながら、ライバル関係からパ
ートナー関係に結びつけて行きたい。」等のコメントがあり、
組込み分野における日比業界のネットワーク構築の第一歩と
なる有意義な意見交換となった。
9 PSIA コロネル会長からのメッセージ
図 4:PSIA による JASA へのプレゼン資料の一部
今回、日本トレードミッションの全日程に参加した PSIA の
コロネル会長は、ミッションを終えて次のようなメッセージを
寄せてくれた。
「先ごろ実施されましたフィリピンソフトウェア産業協会
(PSIA)による日本へのトレードミッションは、日本市場へのア
プローチの道を開く一つのきっかけであり、「フィリピンの IT
企業は何ができるのか」ということを日本の皆様に知っていた
だくよい機会となりました。得るものの大きいトレードミッシ
ョンが実施できたことをうれしく思っております。しかしなが
ら、ミッションの終了をもって目的が達せられたわけではあり
ません。むしろ、今回実施した日本トレードミッションは、今
後私どもが日本市場におけるビジネスチャンスを開拓し、受注
に結びつけ、計画したプログラムを確実に実行し、お約束・コ
ミットしたことをきちんと遂行することによって、今回お会い
した日本の皆様との協力関係を強固なものにしていくための
出発点という認識でおります。
このたびのミッションの成功は、今後の取り組みを継続して
いくための大きな励みとなります。私どもは、日本企業のバリ
ューチェーンをグローバルに繋げることに貢献できると自信
を持っています。日本の皆様にも、ぜひフィリピンとのパート
ナーシップでグローバルビジネスを目指すという意気込みを
共有していただければと思います。双方が同じ方向を向いてこ
そ、世界市場に向けた製品やサービスを日本とフィリピンが共
に開発し、市場投入し、サポートする協業関係が構築できるは
ずです。ぜひ、腕まくりでもして、まずは 1 つ目のプロジェク
トに取り掛かり、成功事例を積み上げていこうではありません
か。その積み重ねによってこそ、日比協業によるグローバル市
場での成功につながっていくでしょう。」
10
NAS (Network Attached Storage): ネットワークに直接接続して使
用するファイルサーバ専用機。(参照:IT 用語辞典 e-Words)
Copyright © 2008 JETRO Manila Center
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JETRO 定期報告フィリピン IT 事情
2008 年度 No. 2 (2009 年 1 月 5 日)
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まとめ
日本トレードミッション参加者を対象に行った事後アンケ
ートでは、今回のミッションが「大成功だった」という評価が
13%、
「成功だった」が 87%で、概ね成功したといえるものの、
今後に向けて改善を要する点も多々あった。また、日本トレー
ドミッションを今後も継続すべきかどうかという質問に対し
ては 93%が継続すべきと回答しており、次回よりよい成果を挙
げるための具体的な提案も数多く出された。今回、初めて実施
したミッションでの教訓を、PSIA がいかに今後の行動計画に
反映させ、実際に遂行していけるかどうかがソフトウェア分野
における日比の協業が拡大していくかどうかを大きく左右す
るだろう。
事後アンケートに書かれた参加者からのコメントの行間か
らは、フィリピンのビジネススタイルではあまり馴染みがない
ものの、日本とのビジネスにおいてはインフォーマルなネット
ワーキングの席でこそ、率直な意見交換や相互理解が進み、そ
の後の商談のステップに向けた重要な布石になることを、参加
したフィリピン人の多くが身をもって感じたことが伺えた。
eServices Global Sourcing Conference 2009
のご案内
www.e-servicesphils.com
フィリピンで毎年 2 月に開催される eServices は、特に
IT サービス又は IT を活用したサービスのアウトソーシング
やオフショアリングに関する国際展示会・会議イベントであ
る。世界中から ITO/BPO(IT Outsourcing / Business Process
Outsourcing)業界のリーダーや識者が参加するこの催しも、
2009 年で第 9 回目を迎える。
日本からも毎回視察団が訪れており、過去 8 回の開催を合
計すると日本からの視察団参加者数は、延べ 156 社から 232
人に上る。日本アセアンセンターでは、eServices 2009 の
視察を含む 6 日間の投資環境視察ミッション(2009 年 2 月 8
日~13 日)を企画し、参加者を募集している。詳細は下記資
料を参照の上、ぜひ多くの方にご参加いただきたい。
http://www.asean.or.jp/invest/event/img/pmission08com.pdf
eServices Global Sourcing Convention 2009 の開催概要
は以下の通り。
日時:
場所:
2009 年 2 月 9 日-10 日(2 日間)
マニラ首都圏パサイ市
SMX コンベンションセンター
主催:
貿易産業省(DTI) 国際貿易センター(CITEM)
趣旨:
グローバルな ICT 産業、BPO 産業のリーダーや
意思決定責任のある人々にとって、
 グローバル IT ビジネスの新たなトレンドを知
り、課題に取組むための交流とコラボレーショ
ンの場
 IT 関連製品、サービス事業におけるビジネス
パートナーとの出会いの場
 グローバル IT 産業の新たなアイディアやソリ
ューションを創造する場
ウェブサイト:www.e-servicesphils.com
(写真:PSIA 日本トレードミッション参加者の懇親会風景)
PSIA 日本トレードミッションにおいては、3 日間という限
られた時間の中で、前述の 2 つの目的達成を念頭においたスケ
ジュールをこなした。フィリピン IT 投資セミナーや各団体と
の面談において eServices Philippines 2009 視察への参加呼び
かけ、JISA、JASA 等の主要な IT 関連業界団体の幹部と面談は、
今後の協力関係構築を始めるきっかけとして有意義な意見交
換の場となった。今回のミッション参加企業を中心に、PSIA
日本市場グループが今後も日本との交流と理解を深め、ソフト
ウェア産業における日比のビジネス拡大につなげていくこと
を期待したい。
Copyright © 2008 JETRO Manila Center
JETRO 定期報告フィリピン IT 事情 2008 年度 No. 2 終り
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